前記高分子化合物として、スチレン−ブタジエンゴム及びスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の負極合材。
前記芳香環を有する高分子化合物として、スチレン−ブタジエンゴム及びスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を用いる、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の製造方法。
前記有機溶媒(E)として、1,3,5−トリメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン及びメチルフェニルエーテルからなる群から選択される少なくとも一種を用いる、請求項6乃至10のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.負極合材
本開示の負極合材は、全固体リチウムイオン二次電池用の負極合材であって、前記負極合材は、負極活物質(A)、固体電解質(B)、導電材(C)及び結着剤(D)を含有し、前記負極活物質(A)は、Siを含み、前記固体電解質(B)は、硫化物固体電解質を含み、前記導電材(C)は、炭素六員環を有する繊維状炭素材料を含み、前記結着剤(D)は、芳香環を有する高分子化合物を含むことを特徴とする。
【0011】
Liと合金を形成可能な金属自体はイオン伝導性及び電子伝導性が低いことから、通常、当該金属を負極活物質として用いる場合には、負極中に負極活物質と共に導電材と固体電解質を含有させる。
【0012】
また、負極活物質としてLiと合金を形成可能な金属(以下、Liと合金を形成可能な金属をMと記載することがある。)を使用する場合、リチウムイオン二次電池の充電に伴い、負極において、下記式(1)に示すような、いわゆる電気化学的合金化反応が起こる。
式(1) xLi
+ + xe
− + yM → Li
xM
y
また、リチウムイオン二次電池の放電に伴い、負極では、下記式(2)に示すように、前記SiとLiとの合金からLiイオンの離脱反応が起こる。
式(2) Li
xM
y → xLi
+ + xe
− + yM
Liと合金を形成可能な金属を負極活物質として使用したリチウムイオン二次電池では、上記式(1)及び式(2)に示すLiの挿入・離脱反応に伴う体積変化が大きい。
【0013】
本研究者らは、特許文献1に開示されているような全固体リチウムイオン二次電池では、充放電に伴う負極活物質の体積膨張収縮が大きいため、充放電を繰り返すと、負極活物質と導電材との接触が維持されない部分(以下、接触不良部分という)が発生し、接触不良部分において電子伝導が阻害され、内部抵抗が大きく上昇することを知見した。
Siを含有する負極活物質を用いた負極における、導電材と負極活物質との接触不良部分発生のメカニズムは以下の通りである。
まず、Liイオン挿入時(充電時)に、負極活物質が大幅に体積膨張すると共に、負極活物質周辺の導電材が、膨張する負極活物質により押されて、Liイオン挿入前の位置から移動する。その後、Liイオン脱離時(放電時)に負極活物質が体積収縮すると共に、位置移動した導電材が、負極活物質の体積収縮に追従できないことにより、導電材と負極活物質との接触不良部分が発生する。
【0014】
本開示の負極合材を全固体リチウムイオン二次電池に用いることにより、充放電の繰り返しに伴う、内部抵抗の上昇を抑制できる推定メカニズムは、以下の通りである。
繊維状炭素材料は、アスペクト比が大きく、一方向に伸長した結晶構造を有するため、例えば鱗片状の結晶構造を有する炭素材料と比較すると、負極活物質との接触部位を、より確保し易いという利点がある。一方、繊維状炭素材料は、互いに凝集し易く、凝集体を構成する各々の繊維状炭素材料が負極合材中に分散され難いため、その分、負極活物質との接触が制限されるという欠点があった。
図1Aは、繊維状炭素材料の凝集体中に、結着剤(D)の高分子化合物の芳香環が侵入する前の様子を示す模式図である。図1Bは、繊維状炭素材料の凝集体中に、結着剤(D)の高分子化合物の芳香環が侵入する様子を示す模式図である。なお、本開示の繊維状炭素材料及び結着剤(D)は、必ずしもこれらの図に示す態様に限定されない。
本開示の負極合材は、図1Aに示すように、導電材(C)に含まれる繊維状炭素材料13の凝集体10に、例えばその長軸方向から、結着剤(D)に含まれる高分子化合物11の芳香環12の一部が接近して凝集体10の内部に侵入し、繊維状炭素材料13同士の凝集を解離させる。さらに、図1Bに示すように、凝集体10の内部に侵入した芳香環12のπ電子と、繊維状炭素材料13の炭素六員環との間で発生する静電反発力により、繊維状炭素材料13の間の隙間が拡張される。以上より、炭素六員環を有する繊維状炭素材料を含む導電材(C)と、芳香環を有する高分子化合物を含む結着剤(D)とを用いることで、負極合材中における繊維状炭素材料の分散性が向上し、繊維状炭素材料が負極活物質(A)と接触できる接触可能部位が増大する。
このため、本開示の負極合材を用いた全固体リチウムイオン二次電池において充放電サイクルを繰り返したときに、負極活物質(A)の体積膨張収縮が生じても、繊維状炭素材料と負極活物質(A)との接触性が維持され易くなる。従って、充放電の繰り返しに伴う、導電材(C)と負極活物質(A)との接触不良部分の発生を抑制し、内部抵抗の上昇を抑制できる。なお、芳香環12の侵入態様は、上記図1Bに示す態様に限定されない。例えば、芳香環12は、凝集体10の長軸方向に対して略直交する方向から、繊維状炭素材料13の隙間を通って、凝集体10の内部に侵入してもよく、凝集体10の長軸方向に対して所定の角度傾いた方向から、繊維状炭素材料13の隙間を通って、凝集体10の内部に侵入してもよい。
【0015】
以下、負極活物質(A)、固体電解質(B)、導電材(C)及び結着剤(D)について順に説明する。
【0016】
(負極活物質(A))
前記負極活物質(A)は、Siを含む。
負極合材中の負極活物質(A)の割合は、特に限定されるものではないが、例えば40質量%以上であり、50質量%〜90質量%の範囲内であってもよく、50質量%〜70質量%の範囲内であってもよい。
負極活物質(A)の形状には特に制限はなく、例えば、粒子状、膜状の形状等が挙げられる。
【0017】
(固体電解質(B))
固体電解質(B)としては、硫化物固体電解質を用いる。
前記硫化物固体電解質は、Liを含む化合物と、Sを含む化合物とを含んでいてもよい。前記硫化物固体電解質は、例えば、Li
2S、LiBr及びLiIからなる群より選ばれる少なくとも1つのリチウム化合物と、P
2S
5及びSiS
2からなる群より選ばれる少なくとも1つの硫黄化合物とを含んでいてもよい。具体例としては、Li
2S−SiS
2、LiI−Li
2S−SiS
2、LiI−Li
2S−P
2S
5、LiI−Li
2S−P
2O
5、LiI−Li
3PO
4−P
2S
5、Li
2S−P
2S
5−LiBr、Li
2S−P
2S
5、LiI−LiBr−Li
2S−P
2S
5等が挙げられる。また、前記硫化物固体電解質としては、Li
10GeP
2S
12等のLGPS系の固体電解質も挙げられる。
負極合材中の固体電解質(B)の割合は、特に限定されるものではないが、例えば10質量%以上であり、20質量%〜50質量%の範囲内であってもよく、25質量%〜45質量%の範囲内であってもよい。
前記固体電解質(B)の原料は、密度が2.0〜2.5g/cm
3であってもよい。
【0018】
固体電解質(B)の調製方法の一例を以下に述べる。
まず、固体電解質(B)の原料、分散媒、及び分散用ボールを容器に投入する。この容器を用いてメカニカルミリングを行うことにより、固体電解質の原料を粉砕する。その後、得られた混合物について適宜熱処理を行うことにより、固体電解質(B)が得られる。
【0019】
(導電材(C))
導電材(C)は、炭素六員環を有する繊維状炭素材料を含む。
本開示において、繊維状炭素材料とは、一方向に伸長した結晶構造を有し、かつ炭素六員環を含む炭素材料であれば特に限定されない。導電材(C)が、炭素六員環を有する繊維状炭素材料を含むことで、当該繊維状炭素材料において、負極活物質(A)との接触部位が確保され易い。このため、導電材(C)は、負極活物質(A)に対して良好な接触性を有する。
【0020】
繊維状炭素材料は、アスペクト比が10〜100であり、かつ繊維径が10〜600nmのものであってもよい。
本開示において、アスペクト比とは、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察した任意に選択した炭素繊維200本について、炭素繊維の断面の直径aと炭素繊維の長さbとの比b/aの平均をいう。
また、本開示において、繊維径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したときに、任意に選択した炭素繊維200本の繊維断面の直径の平均値を示す。
繊維状炭素材料のアスペクト比は、好ましくは20〜70であり、より好ましくは30〜50である。また、繊維状炭素材料の繊維径は、好ましくは50〜400nmであり、より好ましくは100〜200nmである。
【0021】
また、導電材(C)として、炭素六員環を有する繊維状炭素材料を用いることで、図1Bに示すように、繊維状炭素材料13の炭素六員環と、結着剤(D)に含まれる高分子化合物11の芳香環12のπ電子との間で、静電反発力が生じる。この静電反発力により、繊維状炭素材料13の間の隙間が拡張され、繊維状炭素材料13の分散性が向上する。
炭素六員環を有する繊維状炭素材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、及び、カーボンナノファイバーからなる群より選ばれる少なくとも一種の炭素系素材であってもよく、当該カーボンナノチューブ、及び、カーボンナノファイバーは気相成長炭素繊維(VGCF)であってもよい。
負極合材中の導電材(C)の割合は、負極合材の質量を100質量%としたとき、1.0質量%以上であり、1.0質量%〜12.0質量%の範囲内であってもよく、2.0質量%〜10.0質量%の範囲内であってもよい。
なお、導電材(C)としては、導電材(C)全体の質量のうち、5質量%以下の範囲で、炭素六員環を有する繊維状炭素材料以外の炭素系素材を含んでいてもよい。炭素六員環を有する繊維状炭素材料以外の炭素系素材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックが挙げられる。
【0022】
(結着剤(D))
結着剤(D)は、芳香環を有する高分子化合物を含む。
上述したように、結着剤(D)として、芳香環を有する高分子化合物を用いることで、導電材(B)に含まれる繊維状炭素材料の分散性が向上する。
【0023】
芳香環を有する高分子化合物としては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)、スチレン−イソブチレン共重合体(SIB)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)及びスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)からなる群より選ばれる少なくとも一種の高分子化合物を用いることができる。
繊維状炭素材料の分散性の向上の観点から、結着剤(D)としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)及びスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)からなる群から選択される少なくとも一種であってもよい。
負極合材中の結着剤(D)の割合は、負極合材の質量を100質量%としたとき、0.1質量%以上であり、0.1質量%〜2.0質量%の範囲内であってもよく、0.2質量%〜1.0質量%の範囲内であってもよい。
なお、結着剤(D)としては、結着剤(D)全体の質量のうち、5質量%以下の範囲で、芳香環を有する高分子化合物以外の高分子化合物を含んでいてもよい。芳香環を有する高分子化合物以外の高分子化合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ブチレンゴム(BR)、ポリビニルブチラール(PVB)、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0024】
負極合材中における、導電材(C)と結着剤(D)との含有比率は、導電材(C)1質量部に対して、結着剤(D)が、0.1〜1質量部、より好ましくは0.1〜0.5質量部の範囲で含まれる含有比率であってよい。
【0025】
負極合材には上記成分以外の、他の成分が含まれていてもよい。
エネルギー密度が高くなることから、本開示に係る負極合材は、負極活物質(A)以外の成分が少ないものであってもよい。
【0026】
2.負極合材の製造方法
本開示の負極合材の製造方法は、全固体リチウムイオン二次電池用の負極合材の製造方法であって、Siを含む負極活物質(A)と、硫化物固体電解質を含む固体電解質(B)と、炭素六員環を有する繊維状炭素材料を含む導電材(C)と、芳香環を有する高分子化合物を含む結着剤(D)と、芳香環を有する有機溶媒(E)と、を含む負極合材用原料を準備する負極合材用原料準備工程(I)と、前記負極合材用原料を乾燥する乾燥工程(II)と、を有することを特徴とする。
【0027】
以下、図1A及び図1Bにおいて、結着剤(D)に含まれる高分子化合物11が、有機溶媒(E)14に置き換わっていてもよいものとする。
本開示の負極合材の製造方法は、炭素六員環を有する繊維状炭素材料を含む導電材(C)と、芳香環を有する高分子化合物を含む結着剤(D)と、芳香環を有する有機溶媒(E)と、を用いることで、図1Aに示すように、負極合材用原料中において、結着剤(D)に含まれる高分子化合物11の芳香環12の一部、及び有機溶媒(E)14の芳香環12の一部が、繊維状炭素材料13の凝集体10の長軸方向から接近して、凝集体10の内部に侵入し、負極合材用原料中において、繊維状炭素材料13同士の凝集を解離させる。
さらに、図1Bに示すように、凝集体10の内部に侵入した、高分子化合物11の芳香環12のπ電子及び有機溶媒(E)14の芳香環12のπ電子と、繊維状炭素材料13の炭素六員環との間で発生する静電反発力により、負極合材用原料中において、繊維状炭素材料13の間の隙間が拡張される。
以上より、炭素六員環を有する繊維状炭素材料を含む導電材(C)と、芳香環を有する高分子化合物を含む結着剤(D)と、芳香環を有する有機溶媒(E)と、を用いることで、負極合材用原料中における、繊維状炭素材料の分散性が向上する。従って、当該負極合材用原料を乾燥させた後、繊維状炭素材料の分散性が高められ、繊維状炭素材料が負極活物質(A)と接触できる接触可能部位が増大された負極合材を得ることができる。
このため、本開示の製造方法により製造された負極合材を用いた全固体リチウムイオン二次電池において、充放電サイクルを繰り返したときに、負極活物質(A)の体積膨張収縮が生じても、繊維状炭素材料と負極活物質(A)との接触性が維持され易くなる。従って、充放電の繰り返しに伴う、導電材(C)と負極活物質(A)との接触不良部分の発生を抑制し、内部抵抗の上昇を抑制できる。
なお、各芳香環12の侵入態様が上記図1Bに示す態様に限定されないのは、上述した通りである。
【0028】
(I)負極合材用原料準備工程
本工程で準備する負極合材用原料は、負極活物質(A)と、固体電解質(B)と、導電材(C)と、結着剤(D)と、有機溶媒(E)と、を含有する。
【0029】
負極活物質(A)、固体電解質(B)、導電材(C)及び結着剤(D)に関しては、それぞれ、「1.負極合材」で説明したのと同様の材料を用いることができる。負極活物質(A)、固体電解質(B)、導電材(C)及び結着剤(D)の、負極合材用原料中の配合割合は、上記(A)〜(D)の各成分が、それぞれ固形分換算で、「1.負極合材」で説明した割合で含まれるように秤量して、配合すればよい。
【0030】
(有機溶媒(E))
有機溶媒(E)としては、芳香環を有する有機溶媒を用いる。
上述したように、有機溶媒(E)として、芳香環を有する有機溶媒を用いることで、負極合材用原料及びこれを乾燥させて得られる負極合材において、繊維状炭素材料の分散性が向上する。
【0031】
芳香環を有する有機溶媒(E)としては、例えば、トルエン、キシレン(異性体を含む)、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン(異性体を含む)、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン及びメチルフェニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種の有機溶媒を用いることができる。
繊維状炭素材料の分散性の向上の観点から、有機溶媒(E)としては、1,3,5−トリメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン及びメチルフェニルエーテルからなる群から選択される少なくとも一種であってもよい。
【0032】
但し、芳香環を有する有機溶媒であっても、分子中にヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含む有機溶媒は、負極合材用原料に含有させないことが好ましい。分子中にヒドロキシル基やカルボキシル基を含む有機溶媒は、負極合材用原料中において、硫化物固体電解質と反応し、硫化物固体電解質のLiイオン伝導性を低下させる可能性があるためである。Liイオン伝導性が低下した硫化物固体電解質を含む負極合材を、全固体リチウムイオン二次電池用に用いると、その電池性能が低下する可能性がある。分子中にヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を含む有機溶媒としては、例えば、クレゾール、安息香酸等が挙げられ、これらは負極合材用原料に含有させないことが好ましい。
【0033】
また、芳香環を有する有機溶媒であっても、分子中にハロゲン原子を含む有機溶媒は、負極合材用原料に含有させないことが好ましい。分子中にハロゲン原子を含む有機溶媒は、負極合材中に残留すると、当該負極合材中において電気化学反応して分解する可能性があるためである。ハロゲン原子を含む有機溶媒の分解物を含む負極合材を、全固体リチウムイオン二次電池用に用いると、電池性能を低下させる可能性がある。分子中にハロゲン原子を含む有機溶媒としては、例えば、クロロベンゼン、ブロモベンゼン等が挙げられ、これらは負極合材用原料に含有させないことが好ましい。
【0034】
負極合材用原料中の有機溶媒(E)の割合は、負極合材用原料の質量を100質量%としたとき、30質量%以上であり、40質量%〜80質量%の範囲内であってもよく、45質量%〜60質量%の範囲内であってもよい。
【0035】
負極合材用原料の調製方法は特に制限されない。例えば、負極活物質(A)、固体電解質(B)、導電材(C)、結着剤(D)及び有機溶媒(E)の混合物を、超音波分散装置や振とう器等を用いて攪拌することにより、負極合材用原料が得られる。
【0036】
好適には、負極活物質(A)、固体電解質(B)、導電材(C)、結着剤(D)を、有機溶媒(E)により分散させて、ペースト状の負極合材用原料を作製し、当該ペースト状の負極合材用原料を、基材に塗布する塗布工程を、乾燥工程(II)の前に行う。
ペースト状の負極合材用原料を作製する場合、分散の方法としては、特に限定されないが、例えば、ホモジナイザー、ビーズミル、シェアミキサー、ロールミル等を用いる方法が挙げられる。
【0037】
(II)乾燥工程
本工程では、負極合材用原料準備工程(I)で得られた負極合材用原料を乾燥する。
例えば、前述したような塗布工程を行う場合には、基材に塗布した負極合材用原料を乾燥し、適宜焼成して、有機溶媒(E)を除去することにより、基材上に、膜状の負極合材を得る。
例えば、(I)負極合材用原料準備工程で調製したペースト状の負極合材用原料を、固体電解質層や負極集電体層等の上に塗布する。ペースト状の負極合材用原料の塗布方法は、公知の塗布方法から適宜選択することができる。
基材に塗布した膜状の負極合材用原料を乾燥する方法は、特に限定されない。例えば、ホットプレート等の十分に加熱した熱源によって乾燥する方法が挙げられる。
【0038】
なお、有機溶媒(E)は、負極合材用原料を乾燥する乾燥工程(II)において、略全てが除去されるが、乾燥後に得られた負極合材中に、有機溶媒(E)が少量残留していてもよい。
負極合材中に残留する有機溶媒(E)は、例えばGC−MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)や、TPD−MS(加熱発生ガス質量分析法)等により検出することが可能である。
【0039】
繊維状炭素材料を含む負極合材用原料を膜状に成形する場合には、従来であれば、負極合材用原料中における、繊維状炭素材料の移動可能距離が制限されるため、得られる負極合材中における繊維状炭素材料の分散性が向上し難かった。
本工程では、上述した図1A及び図1Bに記載した現象が発生することで、膜状に成形した負極合材用原料中において、繊維状炭素材料の分散性を向上させることができる。
【0040】
負極合材用原料を基材上に塗布しない場合には、例えば、負極合材用原料をそのまま乾燥し、適宜焼成することにより有機溶媒(E)を除去して、粉末状の負極合材を得ることができる。
負極合材用原料を、基材上に塗布することなく乾燥する場合の乾燥方法は、特に限定されない。例えば、ホットプレート等の十分に加熱した熱源によって乾燥する方法が挙げられる。
粉末状の負極合材は、例えば、圧縮成形してもよい。粉末状の負極合材を圧縮成形する場合には、通常、400〜1,000MPa程度のプレス圧を負荷する。また、ロールプレスでもよく、その際の線圧は10〜100kN/cmとしてもよい。
また、負極合材用原料中に、除去可能な結着成分を含む場合には、負極合材用原料を乾燥して粉末状の負極合材を得た後、粉末を圧縮成形して焼成することにより結着成分を除去してもよい。
【0041】
3.全固体リチウムイオン二次電池
二次電池として機能し、かつ上記負極合材を含む負極を備えるものであれば、本開示の全固体リチウムイオン二次電池の構成に特に制限はない。図2に示すように、典型的には、正極2、負極3、並びに、当該正極2及び当該負極3の間に配置される固体電解質層1を備え、正極−固体電解質層−負極集合体101として構成される。正極2は、正極集電体を含んでいてもよく、負極3は、負極集電体を含んでいてもよい。この正極−固体電解質層−負極集合体101は、正極、固体電解質層及び負極がこの順序で配列され、直接または他の材料からなる部分を介して接合していてもよく、さらに、正極上の固体電解質層が存在する位置とは反対側(正極の外方側)、及び、負極上の固体電解質層が存在する位置とは反対側(負極の外方側)のうちの片方又は両方の側に、他の材料からなる部分が接合していてもよい配列構造を有する各部の集合体である。
上記の正極−固体電解質層−負極集合体101に、集電体等の他の部材を取り付けることにより、全固体電池の機能的単位であるセルが得られ、当該セルをそのまま全固体リチウムイオン電池として用いてもよいし、複数のセルを集積して電気的に接続することによりセル集合体として、本開示の全固体リチウムイオン電池として用いてもよい。
正極−固体電解質層−負極集合体の正極と負極それぞれの厚みは、通常0.1μm〜10mm程度であり、固体電解質層の厚みは、通常0.01μm〜1mm程度である。
【0042】
3−1.正極
前記正極は、全固体リチウムイオン二次電池の正極として機能するものであれば、特に制限はないが、通常、Liを含有する正極活物質を含み、必要に応じ、結着剤、固体電解質、及び導電材等の他の成分を含む。
本開示においてLiを含有する正極活物質は、Li元素を含む活物質であれば特に制限されるものではない。負極活物質との関係で電池化学反応上の正極活物質として機能し、Liイオンの移動を伴う電池化学反応を進行させる物質であれば、特に制限されず正極活物質として用いることができ、従来リチウムイオン電池の正極活物質として知られている物質も、本開示において用いることができる。
正極活物質の原料としては、全固体リチウムイオン二次電池に使用できるものであれば、特に制限はない。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、Li
1+xNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2(0≦x<0.3)、Li
1+xMn
2−x−yM
yO
4(MがAl、Mg、Co、Fe、Ni、Znから選ばれる1種以上の元素)で表される組成の異種元素置換Li−Mnスピネル、チタン酸リチウム(Li
xTiO
y)、リン酸金属リチウム(LiMPO
4、M=Fe、Mn、Co、Ni等)等を挙げることができる。
前記正極活物質は、リチウムイオン伝導性を有し、かつ、活物質や固体電解質と接触しても流動せず、被覆層の形態を維持し得る物質を含有する被覆層を有していてもよい。当該物質としては、例えば、LiNbO
3、Li
4Ti
5O
12、Li
3PO
4が挙げられる。
前記正極活物質の形状は特に限定されないが、膜状であっても粒子状であってもよい。
正極中の正極活物質の割合は、特に限定されるものではないが、例えば60質量%以上であり、70質量%〜95質量%の範囲内であってもよく、80質量%〜90質量%の範囲内であってもよい。
【0043】
正極に含まれる前記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ブチレンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルブチラール(PVB)、アクリル樹脂等を用いることができ、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)であってもよい。
正極中の結着剤の割合は、正極の質量を100質量%としたとき、0.1質量%以上であり、0.1質量%〜1.0質量%の範囲内であってもよく、0.2質量%〜0.7質量%の範囲内であってもよい。
【0044】
固体電解質、導電材の原料としては、負極で使用する材料と同様のものを用いることができる。
【0045】
3−2.固体電解質層
前記固体電解質層も、全固体リチウム二次電池の固体電解質として機能するものであれば、特に制限はないが、通常、固体電解質原料を含み、必要に応じ、結着剤等の他の成分を含む。
固体電解質、結着剤の原料としては、負極で使用する材料と同様のものを用いることができる。
【0046】
固体電解質材料層中の固体電解質原料の割合は、特に限定されるものではないが、例えば50質量%以上であり、70質量%〜99.99質量%の範囲内であってもよく、90質量%〜99.9質量%の範囲内であってもよい。
【実施例】
【0047】
1.負極合材の製造
[実施例1]
(1)硫化物固体電解質の合成工程
下記硫化物固体電解質用原料をメノウ乳鉢に加えた。
・硫化リチウム(Li
2S、フルウチ化学製、純度99.9%)0.550g
・五硫化二リン(P
2S
5、Aldrich社製、純度99%)0.887g
・ヨウ化リチウム(LiI、日宝化学製、純度99%)0.285g
・臭化リチウム(LiBr、高純度化学製)0.277g
上記材料をメノウ乳鉢で5分間混合した後、遊星型ボールミルに投入し、脱水ヘプタン(関東化学工業製、4g)を投入した。さらに、ZrO
2ボールを投入し、容器を完全に密閉した(Ar雰囲気)。この容器を遊星型ボールミル機(フリッチュ製)に取り付け、台盤回転数毎分300回転で、40時間のメカニカルミリング処理を行い、適宜乾燥することで、硫化物固体電解質(LiI−LiBr−Li
2S−P
2S
5)を得た。
【0048】
(2)負極合材の製造工程
容器に下記負極合材用原料を加えた。かっこ内の数値は、(A)〜(D)の総質量を100質量%としたときの割合を意味する。
・負極活物質(A):Si粒子(高純度化学製)1.0g(54質量%)
・固体電解質(B):上記硫化物固体電解質(LiI−LiBr−Li
2S−P
2S
5)0.776g(42質量%)
・導電材(C):気相成長炭素繊維(VGCF、昭和電工社製)0.04g(2質量%)
・結着剤(D):スチレン−ブタジエンゴム(SBR)(商品名「タフデン1000」;旭化成株式会社製)0.01g(1質量%)
・有機溶媒(E):脱水ヘプタン(関東化学工業製)1.7g
導電材として用いたVGCF(昭和電工社製)のアスペクト比は40、繊維径は150nmであった。
VGCFのアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で任意に選択した炭素繊維200本を観察し、炭素繊維の繊維断面の直径aと繊維の長さbとを、観察画像から特定し、その比b/aを算出し、選択した炭素繊維の比b/aの平均をとった。
また、VGCFの繊維径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で炭素繊維を観察し、任意に選択した炭素繊維200本の繊維断面の直径を、観察画像から特定し、その平均値から算出した。
負極合材用原料中における導電材(C)と結着剤(D)との含有比率は、導電材(C)1質量部に対して結着剤(D)が0.25質量部である。
負極合材用原料((A)〜(E))の総質量を100質量%としたとき、有機溶媒(E)は48質量%である。
容器中の混合物を、超音波ホモジナイザー(SMT社製、UH−50)により60秒間攪拌混合して、ペースト状の負極合材用原料を得た。次いで、負極合材用原料を、アプリケータにより基材上に塗布した後、100℃で60分間乾燥することにより、膜状の負極合材を得た。
【0049】
[実施例2]
実施例1に使用した結着剤(D)を、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)0.01gからスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)(商品名「102T」;株式会社カネカ製)0.01gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、負極合材(実施例2)を製造した。
【0050】
[実施例3]
実施例1に使用した有機溶媒(E)を、脱水ヘプタン1.7gから1,3,5−トリメチルベンゼン(関東化学工業製)1.7gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、負極合材(実施例3)を製造した。
【0051】
[実施例4]
実施例1に使用した有機溶媒(E)を、脱水ヘプタン1.7gからイソプロピルベンゼン(ナカライテスク株式会社製)1.7gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、負極合材(実施例4)を製造した。
【0052】
[実施例5]
実施例1に使用した有機溶媒(E)を、脱水ヘプタン1.7gからメチルフェニルエーテル(関東化学工業製)1.7gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、負極合材(実施例5)を製造した。
【0053】
[比較例1]
実施例1に使用した結着剤(D)を、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)0.01gからフッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合体(PVdF−HFP)(商品名「ソレフ21510」;日本ソルベイ株式会社製)0.02gに変更し、有機溶媒(E)を、脱水ヘプタン1.7gから酪酸ブチル(キシダ化学株式会社製)2.5gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、負極合材(比較例1)を製造した。
【0054】
[比較例2]
実施例1に使用した導電材(C)を、VGCF 0.04gから、鱗片状炭素材料であるSFG10(TIMCAL社製)0.04gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、負極合材(比較例1)を製造した。
導電材(C)として用いたSFG10のアスペクト比は8、繊維径は1.2μmであった。
SFG10のアスペクト比及び繊維径は、実施例1においてVGCFのアスペクト比及び繊維径を測定したのと同様にして行った。
【0055】
[比較例3]
実施例1に使用した結着剤(D)を、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)0.01gからブタジエンゴム(BR)(商品名「ジエンNF35R」;旭化成株式会社製)0.01gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、負極合材(比較例1)を製造した。
【0056】
[比較例4]
実施例1に使用した結着剤(D)を、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)0.01gからブタジエンゴム(BR)0.01gに変更し、有機溶媒(E)を、脱水ヘプタン1.7gから1,3,5−トリメチルベンゼン1.7gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、負極合材(比較例1)を製造した。
【0057】
[比較例5]
実施例1に使用した導電材(C)を、VGCF 0.04gからSFG10 0.04gに変更し、結着剤(D)を、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)0.01gからブタジエンゴム(BR)0.01gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、負極合材(比較例1)を製造した。
【0058】
2.全固体リチウムイオン二次電池の製造
(1)正極合材製造工程
容器に下記正極用原料を加えた。
・正極活物質:LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2粒子、(日亜化学工業社製、LiNbO
3による表面処理粒子)1.5g
・固体電解質:上記硫化物固体電解質(LiI−LiBr−Li
2S−P
2S
5)0.239g
・導電材:VGCF(昭和電工社製)0.023g
・結着剤:PVdF(クレハ製)0.011g
・分散媒:酪酸ブチル(キシダ化学社製)0.8g
容器中の混合物を、超音波ホモジナイザー(SMT社製、UH−50)により60秒間攪拌混合した後、適宜乾燥して、正極合材を得た。
【0059】
(2)電池の組み立て工程
上記硫化物固体電解質(LiI−LiBr−Li
2S−P
2S
5)を0.065g秤量し、底面積1cm
2のセラミックス製の型に入れ、1ton/cm
2のプレス圧でプレスして、固体電解質層(セパレート層)を作製した。
次いで、前記正極合材0.018gを秤量し、上記にて作製した固体電解質層(セパレート層)の一方の面側に加え、1ton/cm
2のプレス圧でプレスして、正極を作製した。
次いで、実施例1−実施例5及び比較例1−比較例5のうちいずれか1つの膜状の負極合材0.0054gを秤量し、固体電解質層(セパレート層)の他方の面側に加え、4ton/cm
2のプレス圧でプレスして負極を作製した。
次いで、上記で作製した正極上に、アルミ箔を積層し、正極集電体を形成した。また、上記で作製した負極上に、銅箔を積層して、負極集電体を形成し、全固体リチウムイオン二次電池を得た。
このように、実施例1−実施例5及び比較例1−比較例5の各負極合材について、全固体リチウムイオン二次電池を製造した。
【0060】
3.評価
(1)充放電サイクル時の内部抵抗測定
(i)初期充放電
0.245mAの電流値(充電レート)で、定電圧−定電流の条件下で通電して、4.35Vまで充電を行った。その後、0.245mAの電流値(放電レート)で、定電圧−定電流の条件下で通電して、3.00Vまで放電を行った。
【0061】
(ii)初期内部抵抗測定
次に、電流値0.245mAにて通電して、3.7Vまで充電を行った後、7.35mAで5秒間放電し、放電中の電圧値を充放電装置(東洋システム社製)により測定し、その電圧値の変化から、内部抵抗を算出した。
【0062】
(iii)充放電サイクル
(ii)にて初期内部抵抗測定を行った後のリチウムイオン二次電池を、恒温槽内に入れて60℃に温度設定した状態で、電圧範囲3.2〜4.2Vで、電流値4.9mAの定電流の条件下で、充放電を300サイクル行った。
【0063】
(iv)充放電サイクル後の内部抵抗測定
次いで、(iii)の300サイクルの充放電を行った後のリチウムイオン二次電池に対して、更に(i)の初期充放電を行った後、(ii)で説明したのと同様にして、内部抵抗測定を行った。
【0064】
(iv)にて得られた内部抵抗測定値から、(ii)にて得られた初期内部抵抗の測定値を減じた値を、内部抵抗増加量として算出した。
表1に、実施例1−5及び比較例2−5について、比較例1の内部抵抗増加量を100%としたときの、比内部抵抗増加量を示す。
下記表1には、実施例1−5及び比較例1−5の比内部抵抗増加量を、導電材(C)、結着剤(D)及び有機溶媒(E)の情報と併せて示している。
【0065】
【表1】
【0066】
3.考察
上記表1に示すように、実施例1−5の比内部抵抗増加量は、導電材(C)として繊維状炭素材料を用いていない比較例2、5よりも、いずれも大きく下回る。これは、実施例1−5の全固体リチウムイオン二次電池では、負極合材中の導電材(C)の繊維状炭素材料(VGCF)が、鱗片状炭素材料と比較して、負極活物質(A)に対する接触性が良好であり、且つ、繊維状炭素材料(VGCF)の分散性が、芳香環を有する高分子化合物である結着剤(D)により高められたことで、導電材(C)と負極活物質(A)との接触性が向上し、導電材と負極活物質との接触不良部分の発生が抑制されたためであると考えられる。
一方、比較例1、3,4は、導電材(C)として、繊維状炭素材料を用いているが、比内部抵抗増加量は、実施例1−5と比較して高い。これは、比較例1,3,4は、結着剤(D)として、芳香環を有する高分子化合物を用いていないため、繊維状炭素材料(C)の凝集状態が、負極合材用原料及び負極合材中において解消されず、導電材(C)と負極活物質(A)との接触性が十分に向上しないため、導電材と負極活物質との接触不良部分が発生したためと考えられる。
【0067】
なお、結着剤(D)として芳香環を有する高分子化合物を用い、且つ、有機溶媒(E)として芳香環を有する有機溶媒を用いて調製した負極合材用原料を用いて、負極合材を製造した実施例3−5の比内部抵抗増加量は、実施例1−2の比内部抵抗増加量を、更に下回る。これは、負極合材用原料中において、芳香環を有する高分子化合物である結着剤(D)及び芳香環を有する有機溶媒(E)により、繊維状炭素材料(VGCF)の分散性がより高められたためであると考えられる。