【背景技術】
【0002】
一般的に、筐体の開口を扉で開閉する構造を有するユニットや装置において、扉は、蝶番等により回動可能に筐体の開口部に支持される(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、ガスケットの圧縮を均一にし、確実に密封状態を作ることができる扉構造が開示されている。具体的には、扉のヒンジ部の雌部を長孔にした扉構造である。この扉構造によれば、扉を筐体へねじで締めた際に、扉を筐体側へスライド可能となり、扉と筐体間に嵌められたガスケットを均一に圧縮できる。
【0004】
特許文献1の扉構造では、扉を固定するねじを緩めた際のねじ落下が考慮されておらず、導体等の活線部が露出して設置されるユニットといった、ねじを落下させたくないユニットや装置には適さない。また、蝶番を使用した場合、蝶番の取付工数やコストが発生することとなる。
【0005】
そこで、図7で示すような、扉8を筐体9に回動可能に支持する扉構造が提案されている。図8に示すように、この扉構造は、扉8と筐体9の間に座金10を挟んで、扉8と筐体9をリベット11と留め具12で固定することで、蝶番を使うことなく簡易的に扉8の開閉機能が実現される。このように、扉8・筐体9間に扉8が回動可能な隙間を作ることで、コスト・組立性を考慮した扉構造が実現される。しかし、この扉構造では、振動により鉄粉が発生するおそれがある。そこで、扉8の開閉動作の操作性向上と留め具の落下のリスクを避けるために、プラスチック製の小型ファスナ13(例えば、ライナッチ(登録商標)等の留め具)が取り付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プラスチック製の小型ファスナで扉を筐体に固定することで、簡単に扉を固定することができるが、プラスチック製の小型ファスナは破損するおそれがある。
【0008】
また、ねじを用いて扉を固定することで、扉の耐震性の向上が見込めるが、ねじ落下のおそれがある。そして、万が一ねじが落下すると、筐体内で短絡事故が発生するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ねじで扉を固定する扉構造において、ねじ落下を防止する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の扉構造の一態様は、
開口が形成された筐体と、
前記筐体に支持され、前記開口を開閉する扉と、
前記筐体の開口の縁部に備えられ、前記開口を閉塞した扉を固定するねじと、を備え、
前記扉は、
前記筐体の開口を塞ぐ主面部と、前記主面部の端部から垂直方向に延在する側部を備え、
前記扉の主面部には、前記ねじが通過可能な径の大きな穴と、前記ねじが固定される径の小さな穴が、一部が重なるように並んで形成されたダルマ穴が形成され、
前記扉の側部には、前記扉を筐体に支持する支持部材が設けられ、前記扉が前記支持部材を回転軸として回動可能に支持された、ことを特徴としている。
【0011】
また、上記目的を達成する本発明の扉構造の他の態様は、上記扉構造において、
前記扉の主面部の端部には、前記ねじが固定される切欠きが形成された、ことを特徴としている。
【0012】
また、上記目的を達成する本発明の扉構造の他の態様は、上記扉構造において、
前記扉の側部に、前記支持部材が挿通される長孔が形成された、ことを特徴としている。
【0013】
また、上記目的を達成する本発明の扉構造の他の態様は、上記扉構造において、
前記縁部の前記筐体内側に摺動可能に設けられ、前記ねじが固定される器具板を備え、
前記縁部には、前記器具板に備えられたねじの軸が挿通される長孔が形成された、ことを特徴としている。
【0014】
また、上記目的を達成する本発明の扉構造の他の態様は、上記扉構造において、
前記筐体と前記扉の間に、ガスケットが備えられた、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
以上の発明によれば、ねじで扉を固定する扉構造において、ねじ落下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る扉構造を構成する扉の斜視図である。
【図2】(a)扉の支持部の拡大斜視図、(b)扉の端部の拡大斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る扉の開閉動作を説明する説明図であり、(a)ねじで扉が固定された状態を示す図、(b)扉を固定するねじが緩められた状態を示す図、(c)扉をスライドさせた状態を示す図、(d)扉を回動させた状態を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る扉構造を構成する扉の斜視図である。
【図5】(a)筐体の側部の分解斜視図、(b)器具板の斜視図、(c)扉の下端部の斜視図である。
【図6】第2実施形態に係る扉の開閉動作を説明する説明図であり、(a)ねじで扉が固定された状態を示す図、(b)扉を固定するねじが緩められた状態を示す図、(c)器具板をスライドさせた状態を示す図、(d)扉を回動させた状態を示す図である。
【図7】従来技術に係る扉構造の斜視図である。
【図8】(a)扉の支持部の拡大斜視図、(b)扉の支持部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る扉構造について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態に係る扉構造を示す図であり、扉1は、筐体2に回動可能に支持される。
【0019】
筐体2は、扉1により開閉される開口2aを有しており、開口2aの縁部2bには、開口2aを塞いだ扉1を固定するねじ3が設けられる。また、筐体2の開口面と垂直に設けられる筐体2の側部2cの隅には、扉1を回動可能に支持するリベット4が設けられる。縁部2bは、開口2aの周りに設けられた幅を持った部分であり、例えば、筐体2の側部2cの開口2a側の端部を折り曲げて形成される。
【0020】
ねじ3は、扉1の回転軸に対して垂直方向に延びる1対の縁部2bにそれぞれ設けられる。ねじ3を締結して、扉1が筐体2に固定される。実施形態の説明では、各縁部2bに2つのねじ3が設けられた例を示しているが、ねじ3は各縁部2bに1つ以上備えればよい。また、ねじ3を、扉1の回転軸と平行に延びる縁部に設ける態様とすることもできる。
【0021】
リベット4は、筐体2の向かい合う1対の側部2cに設けられる。リベット4は、側部2cに形成された孔に設けられる。図8(b)に示したリベット11と同様に、扉1と筐体2の間には座金(図示せず)が設けられ、扉1と筐体2の間に座金を挟んでリベット4(および留め具)で固定して、扉1が回転可能に筐体2に支持される。そして、リベット4を回転軸として扉1が回動し、扉1の開閉動作が行われる。
【0022】
扉1は、筐体2の開口2aを塞ぐ主面部1aと、主面部1aの側端から垂直方向に延在する側部1bを備える。側部1bは、扉1の回転軸に対して垂直方向に延びる主面部1aの側端にそれぞれ設けられる。主面部1aには、ねじ3の固定部であるダルマ穴1cおよび切欠き1dが形成される。また、扉1の側部1bには、リベット4が挿通される長孔1eが形成される。ダルマ穴1cおよび切欠き1dは、筐体2の開口2aを閉じたときに筐体2の縁部2bと向かい合う主面部1aに形成される。
【0023】
図2(a)に示すように、ダルマ穴1cは、ねじ3が通過可能な径の大きい穴と、ねじ3の軸が設けられ、ねじ3で固定される径の小さい穴が、一部が重なるように並んで形成された形状をしている。ダルマ穴1cは、扉1を回動して開口2aを閉じた後、扉1をスライドさせる方向に、径の小さい穴と径の大きな穴が順に並ぶように配置される。また、図2(b)に示すように、扉1の端部では、ねじ3が通過可能な径の大きい穴を省略することが可能となるので、ねじ3の軸が設けられ、ねじ3で固定される小さな穴である切欠き1dが形成される。なお、図2(a)、(b)では、説明のため、ねじ3およびリベット4の記載を省略している。
【0024】
また、図2(a)に示すように、扉1の側部1bには、リベット4が挿通される長孔1eが形成される。長孔1eは、扉1の回転軸に対して垂直方向(扉1の主面と平行方向)に延びるように形成される。長孔1eを形成することで、扉1の主面と平行方向に扉1をスライド可能となる。
【0025】
図3を参照して、扉1の開閉動作について説明する。図3(a)に示すように、開口2aを閉じた扉1は、ねじ3(4点)で固定される。扉1を開く際、ねじ3が筐体2の縁部2bから外れない程度に緩められる(図3(b)に示す)。次に、扉1の主面(筐体2の開口面)と平行方向に扉1がスライドされる(図3(c))。図3(c)において、扉1の移動方向を矢印で示す。そして、図3(d)に示すように、リベット4を回転軸として扉1を回動して、扉1が開かれる。このとき、ダルマ穴1cや切欠き1dによって、緩めたねじ3を避けることができ、ねじ3を外すことなく扉1を開けることができる。扉1を閉める際には、扉1を開ける動作と逆の動作を行うことによって、扉1が閉じられる。
【0026】
以上のような、本発明の第1実施形態に係る扉構造によれば、ねじ3を緩めるだけで、扉1の開閉が可能となる。つまり、ねじ3を落とすリスクなく、ねじ3を用いて扉1を強固に筐体2に固定することができる。その結果、扉1の耐震性能が向上する。また、蝶番を使用することなく、非常に簡単な構造で扉1の開閉を行う扉構造を構成することができる。
【0027】
すなわち、扉1の側部1bにリベット4が挿通される長孔1eを形成することで、扉1の回転軸に対して垂直方向に扉1がスライド可能となる。また、扉1の主面部1aにダルマ穴1cおよび切欠き1dを形成することで、緩めたねじ3を避けて扉1を回動させることができる。
【0028】
また、本発明の第1実施形態に係る扉構造によれば、ねじ3の脱落を防止できるだけでなく、ねじ3(例えば、金属製のねじ3)を用いて扉1を固定することで、扉1を固定する固定具の破損を抑制し、鉄粉等の発生も抑制することができる。その結果、筐体2の内部に通電部があった場合でも、ねじ3の脱落や鉄粉の発生による短絡事故の発生を抑制することができる。
【0029】
また、扉1または筐体2に扉1の密閉性を向上させるガスケットを備えた場合でも、ねじ3を締結することで扉1と筐体2の間に設けられたガスケットに均一に圧力をかけることができる。例えば、扉1の4点をねじ3で固定する等、ねじ3を各縁部2bに複数備えることで、ガスケットに均一に圧力をかけることができる。その結果、防水や防塵のために筐体2の開口2aを密閉することができる。
【0030】
図4は、本発明の第2実施形態に係る扉構造を示す図であり、扉5は、筐体6に回動可能に支持される。なお、第2実施形態に係る扉構造の説明において、第1実施形態に係る扉構造と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0031】
扉5は、筐体6の開口6aを塞ぐ主面部5aと、扉5の主面部5aの側端に設けられる側部5bを備える。側部5bは、扉5の回転軸に対して垂直方向に延びる主面部5aの側端にそれぞれ備えられる。主面部5aには、ねじ3の固定部であるダルマ穴5cおよび切欠き5dが形成される。また、側部5bには、リベット4が挿通される孔が形成される。ダルマ穴5cおよび切欠き5dは、筐体6の開口6aを閉じたときに筐体6の縁部6bと向かい合う主面部5aに形成される。
【0032】
筐体6は、扉5により開閉される開口6aを有しており、開口6aの縁部6bには、開口6aを塞いだ扉5を固定するねじ3が設けられる。ねじ3は、縁部6bに沿って設けられる器具板7に設けられる。また、筐体6の開口面と垂直に設けられる筐体6の側部6cの隅には、扉5を回動可能に支持するリベット4が設けられる。リベット4を回転軸として扉5が回動する。リベット4は、筐体6の向かい合う側部6cにそれぞれ設けられる。
【0033】
図5(a)に示すように、縁部6bは、開口6aの周りに設けられた幅を持った部分であり、例えば、筐体6の側部6cの開口6a側の端部を折り曲げて形成される。さらに、縁部6bの開口6a方向に延在した先端部に、折り曲げ部6dが設けられる。折り曲げ部6dは、例えば、断面コ字状に折り曲げられており、この折り曲げ部6dにより器具板7が縁部6bに摺動可能に支持される。また、縁部6bには、ねじ3の軸が挿通される長孔6eが形成される。扉5の回転軸から遠い方の縁部6bの端部には、切欠き6fが形成されており、この切欠き6fにおいて、器具板7の端部(後に詳細に説明する器具板7のつまみ部7b)が露出している(例えば、図5(c)に示す)。
【0034】
器具板7は、ねじ3可動用の部材である。図5(b)に示すように、器具板7は、縁部6bの筐体6内側に摺動可能に支持される板状の部材である。器具板7には、ねじ3が設けられる孔7aが形成される。孔7aは、例えば、バーリング加工により形成される。また、器具板7の端部には、縁部6bに沿って器具板7を摺動させるためのつまみ部7bが設けられる。つまみ部7bは、器具板7の摺動面よりも筐体6の外側に突出するように備えられる。つまみ部7bは、縁部6bの端部と係止可能な状態で、切欠き6fに設けられる。
【0035】
図5(c)に示すように、ダルマ穴5cは、第1実施形態に係る扉構造のダルマ穴1cと同様であり、ねじ3が通過可能な径の大きい穴と、ねじ3の軸が設けられ、ねじ3で固定される径の小さい穴が、一部が重なるように並んで形成された形状をしている。また、扉5の端部では、ねじ3が通過可能な径の大きい穴を省略することが可能となるので、ねじ3の軸が設けられ、ねじ3で固定される小さな穴である切欠き5dが形成される。
【0036】
図6を参照して、扉5の開閉動作について説明する。図5(a)に示すように、開口6aを閉じた扉5は、ねじ3(4点)で固定される。ねじ3を器具板7に締結することで、扉5と筐体6の縁部6bが固定される。扉5を開く際、ねじ3が器具板7から外れない程度に緩められる(図5(b)の状態)。ねじ3を緩めることで、筐体6と器具板7の間に隙間ができ、器具板7のスライドが可能となる。次に、器具板7が縁部6bに沿ってスライドされる(図5(c)の状態)。図5(c)において、器具板7のスライド方向を図中に黒矢印で示す。そして、図5(d)に示すように、扉5がリベット4を回転軸として回動して、扉5が開かれる。このとき、ダルマ穴5cや切欠き5dによって、緩めたねじ3を避けることができ、ねじ3を外すことなく扉5を開けることができる。扉5を閉める際には、扉5を開ける動作と逆の動作を行うことによって、扉5が閉じられる。
【0037】
以上のような、本発明の第2実施形態に係る扉構造によれば、ねじ3を緩めて器具板7をスライドするだけで、扉5の開閉が可能となる。つまり、ねじ3を落とすリスクなく、ねじ3を用いて扉5を強固に筐体6に固定することができる。その結果、扉5の耐震性能が向上する。また、蝶番を使用することなく、非常に簡単な構造で扉5の開閉動作を行う扉構造を構成することができる。
【0038】
すなわち、筐体6の縁部6bと摺動可能な器具板7を設けることで、扉5の回転軸に対して垂直方向(すなわち、筐体6の開口面と垂直方向)に扉5を固定するねじ3がスライド可能となる。また、扉5の主面部5aにダルマ穴5cおよび切欠き5dを形成することで、緩めたねじ3を避けて扉5を回動させることができる。
【0039】
また、本発明の第2実施形態に係る扉構造によれば、ねじ3の脱落を防止できるだけでなく、ねじ3(例えば、金属製のねじ3)を用いて扉5を固定することで、扉5を固定する固定具の破損を抑制し、鉄粉等の発生も抑制することができる。その結果、筐体6の内部に通電部があった場合でも、ねじ3の脱落や鉄粉の発生による短絡事故の発生を抑制することができる。
【0040】
また、扉5や筐体6に扉5の密閉性を向上させるガスケットを備えた場合でも、ねじ3を締結することで扉5と筐体6の間に備えられたガスケットに均一に圧力をかけることができる。例えば、扉5の4点をねじ3で固定する等、ねじ3を各縁部6bに複数備えることで、ガスケットに均一に圧力をかけることができる。その結果、防水や防塵のために筐体6の開口6aを密閉することができる。
【0041】
以上、具体的な実施形態を示して本発明の扉構造について説明したが、本発明の扉構造は、実施形態に限定されるものではなく、その特徴を損なわない範囲で適宜設計変更が可能であり、設計変更されたものも、本発明の技術的範囲に属する。
【0042】
例えば、扉1に形成された長孔1eや筐体6の縁部6bに形成される長孔6eは、必ずしも長孔の形状に限定されるものではなく、扉1(または、器具板7に設けられたねじ3)がスライド可能であれば、径の大きな孔であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…扉
1a…主面部、1b…側部、1c…ダルマ穴、1d…切欠き、1e…長孔
2…筐体
2a…開口、2b…縁部、2c…側部
3…ねじ
4…リベット(支持部材)
5…扉
5a…主面部、5b…側部、5c…ダルマ穴、5d…切欠き
6…筐体
6a…開口、6b…縁部、6c…側部、6d…折り曲げ部、6e…長孔、6f…切欠き
7…器具板
7a…孔、7b…つまみ部