(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2019144180
(43)【公開日】20190829
(54)【発明の名称】アーク放電検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20060101AFI20190802BHJP
   H02B 3/00 20060101ALI20190802BHJP
【FI】
   !G01R31/12 A
   !H02B3/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】2018030298
(22)【出願日】20180223
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
【住所又は居所】京都府京都市下京区塩小路通堀川東入南不動堂町801番地
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸茂 克也
【住所又は居所】京都府京都市下京区塩小路通堀川東入南不動堂町801番地 オムロン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】川島 靖史
【住所又は居所】京都府京都市下京区塩小路通堀川東入南不動堂町801番地 オムロン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】梅木 創
【住所又は居所】京都府京都市下京区塩小路通堀川東入南不動堂町801番地 オムロン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】小端 順二
【住所又は居所】京都府京都市下京区塩小路通堀川東入南不動堂町801番地 オムロン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】矢野 慧介
【住所又は居所】京都府京都市下京区塩小路通堀川東入南不動堂町801番地 オムロン株式会社内
【テーマコード(参考)】
2G015
【Fターム(参考)】
2G015AA15
2G015BA04
2G015BA10
2G015CA01
(57)【要約】
【課題】制御盤におけるアーク放電の発生を確実に検知できるようにしたアーク放電検知装置を構成する。
【解決手段】アーク放電検知装置101は、電力系統と負荷2A,2Bとの間に接続される制御盤1に生じるアーク放電を検知する。制御盤1は、負荷2A,2Bへ電源電圧を供給する電源回路10A,10Bと、配線を接続する接続部と、を有する。制御盤1は、電力系統から制御盤1へ流れる系統電流の急激な増大を検出する、第2カレントトランス12を含む系統電流検出部と、電源回路10A,10Bに流れる個別電流の急激な増大を検出する、第1カレントトランス11A,11Bを含む個別電流検出部とを備える。アーク放電検知部4は、系統電流の検出信号と個別電流の検出信号とに基づいて、制御盤内で生じるアーク放電を、系統に流入するサージとは分離して識別する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統と負荷との間に接続される制御盤に生じるアーク放電を検知する装置であって、
前記制御盤は、前記負荷へ電源電圧を供給する電源回路と、配線を接続する接続部とを有し、
前記電力系統から前記制御盤へ流れる系統電流の急激な増大を検出する系統電流検出部と、
前記電源回路に流れる個別電流の急激な増大を検出する個別電流検出部と、
前記系統電流検出部による前記系統電流の検出信号と前記個別電流検出部による前記個別電流の検出信号とに基づいて、前記制御盤内で生じるアーク放電を、前記電力系統に流入するサージとは分離して識別するアーク放電検知部と、
を備える、アーク放電検知装置。
【請求項2】
電力系統と負荷との間に接続される制御盤に生じるアーク放電を検知する装置であって、
前記制御盤は、前記負荷へ電源電圧を供給する電源回路と、配線を接続する接続部とを有し、
前記電源回路に流れる個別電流の急激な増大を検出する個別電流検出部と、
前記電力系統の電圧の急激な上昇を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部による前記系統電圧の検出信号と前記個別電流検出部による前記個別電流の検出信号とに基づいて、前記制御盤内で生じるアーク放電を、前記電力系統に流入するサージとは分離して識別するアーク放電検知部と、
を備える、アーク放電検知装置。
【請求項3】
前記系統電流検出部は、
前記電力系統から前記制御盤へ流れる電流を検出する第2カレントトランスと、
前記第2カレントトランスの二次側に出力される電力で前記系統電流の検出信号を無線送信する第2無線送信部と、
前記第2無線送信部の送信信号を受信する第2無線受信部と、
で構成される、
請求項1に記載の、アーク放電検知装置。
【請求項4】
前記個別電流検出部は、
前記電源回路に個別に流れる電流を検出する第1カレントトランスと、
前記第1カレントトランスの二次側に出力される電力で前記個別電流の検出信号を無線送信する第1無線送信部と、
前記第1無線送信部の送信信号を受信する第1無線受信部と、
で構成される、
請求項1から3のいずれかに記載の、アーク放電検知装置。
【請求項5】
前記個別電流検出部により検出される前記個別電流の、所定期間における変化回数を計数する電流変化計数部と、
前記電流変化計数部による検出結果に基づいて、アーク放電の発生状況を検知するアーク放電発生状況検知部と、を更に備える、
請求項1から4のいずれかに記載の、アーク放電検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統と負荷との間に接続される制御盤に生じるアーク放電を検知するアーク放電検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば電源装置等の電力を扱う装置において、配線の接続部や端子等において、緩みがあると、その部分にアーク放電が発生して、火災に至るなど、大事故につながる虞がある。
【0003】
そのため、比較的大電力を扱う工場ではアーク放電を起因とする事故を未然に防止するため、アーク放電の発生を検知することで対応している。
【0004】
アーク放電を直接検出する方法としては、アーク放電発生時に発生する特有の光を検出する方法と、アーク放電発生時に配線に流れる電流の大きな変化を検出する方法とがある。
【0005】
例えば特許文献1には、分電盤内の配線に流れる電流の測定値を、分電盤の外部に配置されている機器へ無線送信する無線通信システムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−167704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の、アーク放電発生時に発生する光を検出する方法では、その光を受けることのできる箇所に光検出部を設けることになるので、監視対象が限られる。配線の電流の変化を検出する方法であれば、特許文献1に示されるようなシステムで、監視対象の電流値の急激な変化を検出すればよいが、アーク放電以外に、電力系統に由来するサージであっても、それによる電流変化をアーク放電として誤検知するおそれがある。つまり、電流の急激な変化を検出するだけでは確実なアーク放電検知ができない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、制御盤におけるアーク放電の発生を確実に検知できるようにしたアーク放電検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一例としてのアーク放電検知装置は、電力系統と負荷との間に接続される制御盤に生じるアーク放電を検知する装置である。この制御盤は、負荷へ電源電圧を供給する電源回路と、配線を接続する接続部とを有する。そして、本開示の一例としてのアーク放電検知装置は、電力系統から制御盤へ流れる系統電流を検出する系統電流検出部と、電源回路に流れる個別電流を検出する個別電流検出部と、系統電流検出部による系統電流の検出信号と個別電流検出部による個別電流の検出信号とに基づいて、制御盤内で生じるアーク放電を、誘導雷等により電力系統に流入するサージとは分離して識別するアーク放電検知部と、を備える。
【0010】
この構成では、アーク放電検知部は、系統電流の検出信号と個別電流の検出信号とに基づいて、制御盤内で生じるアーク放電を、電力系統に流入するサージとは分離して識別するので、サージによる電流の急激な変化をアーク放電として誤検知することが抑制される。
【0011】
また、本開示の一例としてのアーク放電検知装置は、電力系統と負荷との間に接続される制御盤に生じるアーク放電を検知する装置である。この制御盤は、負荷へ電源電圧を供給する電源回路と、配線を接続する接続部とを有する。そして、本開示の一例としてのアーク放電検知装置は、電源回路に流れる個別電流の急激な増大を検出する個別電流検出部と、電力系統の電圧の急激な上昇を検出する電圧検出部と、この電圧検出部による系統電圧の検出信号と個別電流検出部による個別電流の検出信号とに基づいて、制御盤内で生じるアーク放電を、電力系統に流入するサージとは分離して識別するアーク放電検知部と、を備える。
【0012】
この構成では、アーク放電検知部は、系統電圧の検出信号と個別電流の検出信号とに基づいて、制御盤内で生じるアーク放電を、電力系統に流入するサージとは分離して識別するので、サージによる電流の急激な変化をアーク放電として誤検知することが抑制される。
【0013】
また、本開示の一例では、系統電流検出部は、電力系統から制御盤へ流れる電流を検出する第2カレントトランスと、第2カレントトランスの二次側に出力される電力で系統電流の検出信号を無線送信する第2無線送信部と、第2無線送信部の送信信号を受信する第2無線受信部と、で構成される。
【0014】
この構成では、電力系統から制御盤へ流れる電流の検出信号をアーク放電検知部は無線通信で受けるので、アーク放電検知部を制御盤とは別の場所に配置でき、既存設備に対する適合性が高い。
【0015】
また、本開示の一例では、個別電流検出部は、電源回路に個別に流れる電流を検出する第1カレントトランスと、第1カレントトランスの二次側に出力される電力で個別電流の検出信号を無線送信する第1無線送信部と、第1無線送信部の送信信号を受信する第1無線受信部と、で構成される。
【0016】
この構成では、電源回路に個別に流れる電流の検出信号をアーク放電検知部は無線通信で受けるので、アーク放電検知部を制御盤とは別の場所に配置でき、既存設備に対する適合性が高い。
【0017】
また、本開示の一例では、個別電流検出部により検出される個別電流の、所定期間における変化回数を計数する電流変化計数部と、この電流変化計数部による検出結果に基づいて、アーク放電の発生状況を検知するアーク放電発生状況検知部と、を更に備える。
【0018】
この構成では、電流変化計数部による計数結果に基づいて、アーク放電の発生頻度の急増を検知して、例えば端子緩み等による、アーク放電の発生状況を検知でき、例えば定期メンテナンスに頼らずに保全確認ができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、制御盤におけるアーク放電の発生を確実に検知でき、アーク放電による事故を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の実施形態に係るアーク放電検知装置101の構成を示す図である。
【図2】図2は電源回路10Aについての波形図の例である。
【図3】図3は電源回路への入力電圧および入力電流の典型的な波形図である。
【図4】図4は、図1に示したアーク放電検知部4の処理内容を示すフローチャートである。
【図5】図5は、図1に示した無線送信部21Aの構成を示す図である。
【図6】図6は電力系統から制御盤1へ入力される系統電圧の波形図である。
【図7】図7はアーク放電検知部4の別の処理内容を示すフローチャートである。
【図8】図8は、図1に示した第1無線送信部21A,21Bからの検出信号を受信する毎にその回数を計数したときの、経時変化の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、幾つかの図を参照して説明する。
【0022】
・適用例
先ず、図1を参照しながら、本発明が適用される一例について説明する。図1は本発明の実施形態に係るアーク放電検知装置101の構成を示す図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係るアーク放電検知装置101は、電力系統と負荷2A,2Bとの間に接続される制御盤1に生じるアーク放電を検知する装置である。この制御盤1は、電力系統に接続されるブレーカ13と、負荷2A,2Bへ電源電圧を供給するAC/DC電源回路10A,10Bと、各ユニット間を接続する配線と、それらの接続部とを有する。アーク放電検知装置101は、電力系統から制御盤1へ流れる系統電流を検出する系統電流検出部、電源回路10A,10Bに流れる個別電流を検出する個別電流検出部、およびアーク放電検知部4を備える。アーク放電検知部4は、系統電流の検出信号と個別電流の検出信号とに基づいて、制御盤内で生じるアーク放電を、電力系統に流入するサージとは分離して識別する。
【0024】
・構成例
次に、本発明の実施形態に係るアーク放電検知装置の構成について、図を参照して説明する。上述のように、図1は本発明の実施形態に係るアーク放電検知装置101の構成を示す図である。
【0025】
制御盤1は、電源回路10A,10Bに個別に流れる電流を検出する第1カレントトランス11A,11Bと、電力系統から制御盤1に流れる系統電流を検出する第2カレントトランス12を備える。
【0026】
第1カレントトランス11AはAC/DC電源回路10Aの三相入力電流を検出する。同様に、もう一つの第1カレントトランス11BはAC/DC電源回路10Bの三相入力電流を検出する。第2カレントトランス12は電力系統から制御盤1への三相入力電流を検出する。図1においては、カレントトランス11A,11B,12をそれぞれ一つのブロックとして表しているだけであり、これらは零相変流器(ZCT)ではない。
【0027】
なお、図1では、三相の電力系統から三相交流電圧を取り出す例を示すが、本発明は二相交流や単相交流についても同様に適用できる。
【0028】
また、制御盤1は、第1カレントトランス11A,11Bの検出信号を無線送信する第1無線送信部21A,21Bと、第2カレントトランス12の検出信号を無線送信する第2無線送信部22を備える。
【0029】
第1無線送信部21Aは第1カレントトランス11Aの二次側に出力される電力で、第1カレントトランス11Aの検出信号を無線送信する。同様に、第1無線送信部21Bは第1カレントトランス11Bの二次側に出力される電力で、第1カレントトランス11Bの検出信号を無線送信する。第2無線送信部22は、第2カレントトランス12の二次側に出力される電力で、第2カレントトランス12の検出信号を無線送信する。
【0030】
アーク放電検知装置101は、制御盤1とは別に、第1無線送信部21A,21Bと第2無線送信部22の送信信号を受信する受信機3と、この受信機3の受信信号を基にアーク放電を検知するアーク放電検知部4とを備える。
【0031】
第1無線送信部21A,21Bは、第1カレントトランス11A,11Bの検出値が所定の閾値を超える急激な増大であるとき、その検出信号を無線送信する。また、第2無線送信部22は、第2カレントトランス12の検出値が所定の閾値を超える急激な増大であるとき、その検出信号を無線送信する。
【0032】
第1カレントトランス11A,11Bと第1無線送信部21A,21Bと、受信機3とで、本発明に係る「個別電流検出部」が構成される。また、第2カレントトランス12と第2無線送信部22と、受信機3とで、本発明に係る「系統電流検出部」が構成される。
【0033】
なお、図1では、第1カレントトランス11A,11BはAC/DC電源回路10A,10Bの入力側に設けたが、これらを(出力側)負荷側に設けて、直流負荷電流を検出してもよい。そのことで、直流アーク放電の検知も容易となる。
【0034】
図2は電源回路10Aについての波形図の例である。図2において、波形Eは電源回路10Aの印加電圧の波形、波形Iは電源回路10Aへの流入電流の波形、波形Pは負荷2Aの電力波形である。この例は、時刻t0で電源回路10Aに入力電圧が投入され、その直後から、電源回路10Aに繋がる配線の接続部にアーク放電が発生し、時刻t1でアーク放電が停止した例である。
【0035】
電源回路10Aに繋がる配線の接続部に緩み等があると、電源回路10Aの電圧投入直後に、その緩み部にアーク放電が発生する場合がある。例えば、電圧投入時に配線に電流が流れ始めても、接続部の緩み等によって電流経路が一旦開路されると、その部分にアーク放電が発生する。この過渡現象によって、電流波形Iは大きく変動する。
【0036】
上述の過渡時の各波形は電源回路10Bについても同様である。
【0037】
図3は電源回路への入力電圧および入力電流の典型的な波形図である。時刻t0で、電源回路へ入力電圧が投入されると、投入時に突入電流が流れ、その後の定常状態では負荷変動に応じて入力電流が変動する。この変動は突入電流より小さい。
【0038】
入力電圧投入時の突入電流は上記アーク放電が発生しなくても流れる。但し、アーク放電発生時に比べて突入電流は小さい。そこで、電流値が所定の閾値を超えるか否かによって、正常な突入電流とアーク放電による急激な電流変動とを識別する。例えば、正常な突入電流が数A、アーク放電の発生によるピーク電流値が数十Aである場合、閾値を10Aに設定する。
【0039】
電力系統にサージが流入することにより、電力系統から制御盤に入力される系統電流は、上記突入電流より大きい。そこで、電流値が所定の閾値を超えるか否かによって、正常な突入電流とサージ電流とを識別する。例えば、正常な突入電流が数A、サージ電流が数十Aである場合、閾値を10Aに設定する。
【0040】
つまり、第1無線送信部21A,21Bは、第1カレントトランス11A,11Bの検出値が、電源回路10A,10Bへの電圧投入時に流れる突入電流より高い閾値を超えるとき、この検出信号を無線送信する。また、第2カレントトランス12の検出値が上記突入電流より高い閾値を超える急激な増大であるとき、その検出信号を無線送信する。
【0041】
図4は、図1に示したアーク放電検知部4の処理内容を示すフローチャートである。この図に示すとおり、第1無線送信部21A,21B、第2無線送信部22のいずれからも検出信号を受信していなければ、ここでは何も処理しない(S1→S2→S3→END)。つまり、系統電流にも個別電流にも急激な増大がなければ、ここでは処理をしない。第1無線送信部21A,21Bのどちらか一方から検出信号を受信していれば、アーク放電検知時の処理を行う(S1→S2→S5、またはS1→S4→S5)。この「アーク放電検知時の処理」は、アーク放電の発生を検知したことに伴う処理であり、例えば警報表示等を出力する。また、後述するように、アーク放電検知回数を計数する。
【0042】
第1無線送信部21A,21B、第2無線送信部22の全てから検出信号を受信していれば、系統サージ検知時の処理を行う(S1→S4→S6→S7)。この「系統サージ検知時の処理」としては、例えば、電力系統にサージが流入したことを示す表示を行う。
【0043】
第2無線送信部22から検出信号を受信していて、第1無線送信部21A,21Bのいずれからも検出信号を受信していなければ、制御盤1の電力系統側でアーク放電が生じたものと見なし、それに応じた処理を行う(S1→S2→S3→S8)。つまり、系統サージの場合は電力系統および電力系統につながる個別電源の入力電流が増大するが、電力系統側でアーク放電が生じた場合は、個別電源にまで影響を及ぼすことがない。この違いを利用して、電力系統でアーク放電を検知する。
【0044】
上述のとおり、第1無線送信部21A,21Bからの検出信号と、第2無線送信部22からの検出信号とに基づいて、電流の急激な増大が、電力系統起因のサージであるのか、制御盤1内で発生したアーク放電であるのかの識別を行う。
【0045】
図5は、図1に示した無線送信部21Aの構成を示す図である。この無線送信部21Aにおいては、第1カレントトランス11Aの二次側出力にシャント抵抗Rが接続されていて、さらにダイオードブリッジによる整流回路が接続されている。整流回路の出力部には平滑・蓄電用キャパシタC1と、保護用のツェナーダイオードZDとが接続されている。キャパシタC1で平滑・蓄電された電圧はレギュレータで安定化され、キャパシタC2に蓄電される。この蓄電電圧が所定値を超えるとRFモジュールは無線信号を出力する。RFモジュールとアンテナとの間にはインピーダンス整合を行うマッチング回路が接続されている。
【0046】
このような構成で、第1カレントトランス11Aの二次側出力の電力で、第1カレントトランス11Aの検出信号を無線送信する。
【0047】
図5に示した構成は無線送信部21B,22についても同様である。
【0048】
これまでに示した例では、第1無線送信部21A,21Bからの検出信号と、第2無線送信部22からの検出信号とに基づいて、電力系統起因のサージと制御盤1でのアーク放電とを識別する例を示したが、次に述べるように、電力系統のサージによる電圧上昇を検出し、それを一つの情報として上記サージとアーク放電との識別を行ってもよい。
【0049】
図6(A)、図6(B)は電力系統から制御盤1へ入力される系統電圧の波形図である。図6(A)に示す例では、時刻t0で電力系統に例えば誘導雷サージが発生して、系統電圧が一瞬上昇している。図1に示したアーク放電検知部4はこの系統電圧の瞬時上昇を検出する。図6(B)に示す例では、時刻t0で電力系統にアーク放電が生じて電力系統からの入力電圧が一瞬低下している。
【0050】
図7はアーク放電検知部4の処理内容を示すフローチャートである。この図に示すとおり、系統電圧に瞬時上昇があれば、系統サージ検知時の処理を行う(S1→S6)。例えば、電力系統にサージが発生したことを示す表示を行う。
【0051】
第1無線送信部21A,21Bのいずれかから検出信号を受信していれば、アーク放電検知時の処理を行う(S4)。例えば警報表示等を出力する。また、アーク放電検知回数を計数する。
【0052】
また、系統電圧に瞬時低下があれば、電力系統でアーク放電が生じたものと見なし、それに応じた処理を行う(S4→S7)。
【0053】
系統電圧に瞬時上昇、瞬時低下が無く、第1無線送信部21A,21Bのいずれからも検出信号を受信していなければ、ここでは何も処理しない(S1→S2→S3→S4→END)。
【0054】
このようにして、電力系統のサージによる電圧上昇を検出し、それを一つの情報として上記サージとアーク放電との識別を行ってもよい。また、電力系統でのアーク放電による電圧低下を検出し、それによって、電力系統でのアーク放電の発生を検知してもよい。
【0055】
以上に示したアーク放電検知部4の処理内容は、アーク放電を検知する毎にその時点で何らかの処理を行う例であったが、次に述べるように、所定期間における、第1無線送信部21A,21Bから受信した検出信号の統計情報に基づいてアーク放電の発生状況を検知するようにしてもよい。
【0056】
図8は、図1に示した第1無線送信部21A,21Bからの検出信号を受信する毎にその回数を計数したときの、経時変化の例を示す図である。この例では、時刻taで計数値が上昇し始めていて、時刻tbで計数値の増大は停止している。その後、時刻tcで計数値が急増している。所定期間における計数値の増大傾向が所定の基準値より大きくなったとき、つまり、第1無線送信部21A,21Bからの検出信号の受信頻度が異常に高くなったとき、例えば配線の接続部の緩みが生じたものと見なして、その警告出力を行う。所定期間における計数値の増大率が小さい状態では、電力系統のサージに起因するものと見なせるが、例えば配線の接続部の緩みが生じた場合には、電源回路10A,10Bを起動する毎に高頻度でアーク放電が生じる。また、アーク放電による部品や塵埃の炭化が進行するほどアーク放電が発生しやすくなるので、計数値の増大率は更に高くなる。
【0057】
図1に示したアーク放電検知部4は上記計数値の増大率を検出し、これが所定の閾値を超えたとき、アーク放電が確実に発生する状況にあることを検知する。本実施形態のアーク放電検知部4は、本発明に係る「アーク放電発生状況検知部」にも相当する。
【0058】
このようにしてアーク放電の発生状況を検知することで、例えば定期メンテナンスに頼らずに、制御盤の保全確認ができる。
【0059】
最後に、上述の発明を実施するための形態の説明は、改めて述べるまでもなく、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。
【0060】
例えば、電流検出のために、増幅回路への電源電圧の供給が可能であれば、カレントトランス以外に、磁気コア、ホール素子、および増幅回路を用いた電流センサを用いてもよい。ホール素子を用いた電流センサであれば、電源回路10A,10Bと負荷2A,2Bとの間に流れる直流電流を検出することも可能となる。
【符号の説明】
【0061】
C1…蓄電用キャパシタ
C2…キャパシタ
R…シャント抵抗
ZD…ツェナーダイオード
1…制御盤
2A,2B…負荷
3…受信機
4…アーク放電検知部
10A,10B…AC/DC電源回路
11A,11B…第1カレントトランス
12…第2カレントトランス
13…ブレーカ
21A,21B…第1無線送信部
22…第2無線送信部
101…アーク放電検知装置
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】