(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2019144207
(43)【公開日】20190829
(54)【発明の名称】反応容器及びその反応容器を用いる蛍光測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/13 20060101AFI20190802BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20190802BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20190802BHJP
【FI】
   !G01N21/13
   !G01N21/03 Z
   !G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】2018031099
(22)【出願日】20180223
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
【住所又は居所】京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高岡 直子
【住所又は居所】京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地 株式会社島津製作所内
(72)【発明者】
【氏名】四方 正光
【住所又は居所】京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地 株式会社島津製作所内
(72)【発明者】
【氏名】二宮 健二
【住所又は居所】京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地 株式会社島津製作所内
(72)【発明者】
【氏名】小林 慎一郎
【住所又は居所】京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地 株式会社島津製作所内
【テーマコード(参考)】
2G043
2G057
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA06
2G043DA08
2G043EA01
2G043FA06
2G043FA07
2G043LA02
2G043MA01
2G043NA01
2G057AA04
2G057AA12
2G057BA03
2G057CB01
2G057FA05
2G057HB01
(57)【要約】
【課題】蛍光測定装置に対する反応容器の設置方向を認識することができるようにする。
【解決手段】反応容器は、検体を収容するための複数のウェルを同一平面上又は同一直線上に有する。当該ウェルプレートのウェルのうち点対象の中央となるウェル以外の特定ウェルが蛍光色素の配置された位置判別用ウェルとなっている。当該反応容器は、蛍光色素から発せられる蛍光を利用して位置判別用ウェルの位置を特定することができ、それによって反応容器の向きを認識することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を収容するための複数のウェルが同一平面上又は同一直線上に設けられている反応容器であって、
前記複数のウェルのうち点対称の中央となるウェル以外の特定のウェルが、蛍光色素の配置された位置判別用ウェルとなっている、反応容器。
【請求項2】
前記反応容器は、複数の前記ウェルが前記平面内においてマトリクス状に配列されたものであり、
前記位置判別用ウェルは、前記平面の角部又はその近傍に設けられているウェルである、請求項1に記載の反応容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の反応容器を設置するための反応容器設置部と、
前記反応容器設置部に設置された前記反応容器に設けられているそれぞれのウェル内からの測定対象の波長の光の強度を測定するための測定部であって、前記反応容器の位置判別用ウェル内に配置された蛍光色素から発せられる蛍光を検出する機能を有する測定部と、を備えた蛍光測定装置。
【請求項4】
前記反応容器の前記位置判別用ウェルの蛍光色素から発せられる蛍光の波長が前記測定対象の波長と同一である場合に、前記反応容器の位置判別用ウェルについての前記測定部による測定値のベースラインと他の前記ウェルについての前記測定部による測定値のベースラインとの差分に基づき、前記位置判別用ウェルについての測定値を補正するように構成された測定値補正部を備えた、請求項3に記載の蛍光測定装置。
【請求項5】
前記反応容器の前記位置判別用ウェルの蛍光色素から発せられる蛍光の波長が前記測定対象の波長と異なっている、請求項3に記載の蛍光測定装置。
【請求項6】
前記測定部によるそれぞれの前記ウェルについての測定値に基づいて前記位置判別用ウェルの位置を特定するように構成されたウェル位置特定部をさらに備えた、請求項3から5のいずれか一項に記載の蛍光測定装置。
【請求項7】
前記ウェル位置特定部により特定された前記位置判別用ウェルの実際位置と予め規定された前記位置判別用ウェルの本来位置とが一致しているか否かを判定するように構成されたウェル位置判定部をさらに備えた、請求項6に記載の蛍光測定装置。
【請求項8】
前記ウェル位置判定部は、前記ウェル位置特定部の前記実際位置と前記本来位置とが一致していないときに、ユーザに対して警告を発するように構成されている、請求項7に記載の蛍光測定装置。
【請求項9】
前記反応容器設置部に設置される前記反応容器のそれぞれの前記ウェルに収容された検体に関する情報である検体情報をそれぞれの検体が収容されているウェルの位置と対応付けて記憶する検体情報記憶部と、
前記ウェル位置判定部により前記ウェル位置特定部の前記実際位置と前記本来位置とが一致していないと判定されたときに、前記ウェル位置特定部により特定された前記位置判別用ウェルの実際位置に基づいて、前記検体情報記憶部に記憶されている前記検体情報がそれぞれの検体が実際に収容されている前記ウェルの位置と対応付けられるように、前記検体情報記憶部の前記検体情報の前記ウェルの位置との対応関係を補正する対応関係補正部と、をさらに備えた請求項7又は8に記載の蛍光測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子を含む検体を収容するための複数のウェルを有する反応容器と、その反応容器の各ウェルに収容された検体からの蛍光を測定する蛍光測定装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遺伝子検査分野では、複数のウェルを有するウェルプレートや連接チューブなどの反応容器がよく用いられる(例えば、特許文献1参照。)。検体はPCR反応試薬などの試薬とともに反応容器のウェル内に収容され、その反応容器がリアルタイムPCR装置などの測定装置に設置される。リアルタイムPCR装置は、検体内の特定の遺伝子を増幅する遺伝子増幅処理と並行して蛍光色素によって標識化された検体中の遺伝子からの蛍光強度を測定し、その測定結果を用いて種々の解析処理を行なうことができる。このように、蛍光色素によって標識化された検体中の遺伝子からの蛍光強度を測定する装置を蛍光測定装置と総称する。
【0003】
市販されている反応容器の1つである96ウェルプレートは、96個のウェルが縦に8列、横に12列にマトリクス状に配列されている。そのようなウェルを扱う蛍光測定装置では、ウェルプレートのそれぞれのウェルの位置が、縦の列の位置を表わす符号(例えば、A〜H)と横の列の位置を表わす符号(例えば、1〜12)の組合せからなる識別符号(例えば、A10(A列の左端から10番目)、C7(C列の左端から7番目)など)によって特定されるようになっている。
【0004】
蛍光測定装置で測定を開始する前に、ユーザは、反応容器のそれぞれのウェルに収容されている検体の検体IDや実施すべき解析項目といった検体に関する情報を装置に登録しておくことが可能である。ユーザによって入力された検体に関する情報は、その検体が収容されているウェルの識別符号と関連付けられて登録される。これにより、各ウェルに収容された検体についての解析結果をそれぞれのウェルに収容された検体IDと対応付けられた状態で得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007−526767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウェルプレートなどの反応容器は、縦方向と横方向にそれぞれ対称な形状となっているため、ユーザにとって反応容器の向きが判別しにくい。そのため、反応容器の外周に設けられている10mm程度の幅のフレームに、ウェルの位置を表わす識別符号(例えば、縦にA〜H、横に1〜12など)が記載されているものもある。また、外周のフレームの1つの角、例えば右上のA12のウェルの傍)に、反応容器の向きを示す切込みが設けられているものも存在する。
【0007】
しかし、反応容器のフレームに印字される識別符号は、反応容器を樹脂成型する際に同時に形成されるものであり、反応容器と同色であるため、視認性が悪い。また、フレームに設けられた切込みの位置もメーカーによって異なっているため、ユーザが反応容器の向きを誤認する虞がある。その結果、ユーザが気づかずに蛍光測定装置への反応容器の設置方向を間違うことがあった。
【0008】
ユーザが蛍光測定装置への反応容器の設置方向を間違った場合、各検体が収容されているウェルが配置される位置が装置に登録されている検体の位置情報(ウェルの位置を示す識別符号)と相違してしまい、各検体に対してユーザの指定した解析処理と異なる解析処理がなされたり、各検体に対する解析結果を取り違えたりするという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、蛍光測定装置に対する反応容器の設置方向が間違っている場合でも結果を正しく認識することを容易にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る反応容器は、検体を収容するための複数のウェルを同一平面上又は同一直線上に有するウェルプレート又は連接チューブであって、前記複数のウェルのうち点対象の中央となるウェル以外の特定のウェルに蛍光色素が配置されたものである。蛍光色素が配置されたウェルを位置判別用ウェルと称する。すなわち、本発明の反応容器では、蛍光色素から発せられる蛍光を利用して特定のウェルの位置、あるいは反応容器の向きを判別する。
【0011】
前記蛍光色素として、フルオレセインやフルオレセインアミダイト、ローダミンなどの蛍光色素から目的に合った蛍光波長を持つものを選択して利用できる。通常は、反応試薬に含まれる増幅DNA検出用蛍光色素と異なる蛍光波長を持つ蛍光色素を選択するが、蛍光量のベースラインの増加で判別できる場合は同じ蛍光波長の蛍光色素を選択してもよい。
【0012】
反応試薬としては、例えば、遺伝子の発現量を測定するRT−PCR反応試薬、遺伝子型を判定するSNP解析のための試薬である。そのような反応試薬が添加されたときに呈色する蛍光色素としては、SYBR(登録商標、ThermoFisher Scientificの製品) Green Iのほか、核酸に結合して蛍光を発する蛍光色素や核酸検出するプローブに標識された蛍光色素を用いることができる。
【0013】
前記蛍光色素は、前記位置判別用ウェルに反応試薬が添加されたときに溶解するように固相化された状態で当該位置判別用ウェルに配置されていてもよい。
【0014】
本発明の反応容器が複数の前記ウェルが前記平面内においてマトリクス状に配列されたものである場合、前記平面の角部又はその近傍に設けられているウェルが前記位置判別用ウェルであることが好ましい。そうすれば、ウェルプレートの平面内における位置判別用ウェルの位置関係が判別しやすくなり、反応試薬を添加するユーザの操作性が向上する。
【0015】
本発明に係る蛍光測定装置は、上記した本発明の反応容器を設置するための反応容器設置部と、前記反応容器設置部に設置された前記反応容器に設けられているそれぞれのウェル内からの測定対象の波長の光の強度を測定するための測定部であって、前記反応容器の位置判別用ウェル内に配置された蛍光色素から発せられる蛍光を検出する機能を有する測定部と、で構成される。
【0016】
本発明に係る蛍光測定装置はさらに、前記反応容器の前記位置判別用ウェルの蛍光色素から発せられる蛍光の波長が前記測定対象の波長と同一である場合に、前記反応容器の位置判別用ウェルについての前記測定部による測定値のベースラインと他の前記ウェルについての前記測定部による測定値のベースラインとの差分に基づき、前記位置判別用ウェルについての測定値を補正するように構成された測定値補正部を備えることができる。これにより、反応容器の位置判別用ウェルに配置されている蛍光色素が、測定対象の波長と同じ波長の蛍光を発するものであっても、蛍光色素から発せられる蛍光による測定への影響を除去することができる。
【0017】
上述のように、本発明の反応容器は、特定の位置に位置判別用ウェルを備えており、その位置判別用ウェルには蛍光色素が配置されている。反応容器の各ウェルからの蛍光強度を測定部により測定すると、予め蛍光色素が配置されている位置判別用ウェルにのみ存在する蛍光色素からの蛍光や蛍光強度のベースラインが他のウェルのものよりも高くなる。そのため、本発明の蛍光測定装置では、位置判別用ウェルについての蛍光や測定値のベースラインと他のウェルについての測定値のベースラインとの差分の測定を行なうことができる。
【0018】
なお、本発明に係る蛍光測定装置は、前記反応容器の前記位置判別用ウェルの蛍光色素から発せられる蛍光の波長が前記測定対象の波長と異なる場合にも対応することができる。
【0019】
このように、位置判別用ウェル内に配置されている蛍光色素からの蛍光を測定することによって、また、位置判別用ウェル内に配置されている蛍光色素が検体の測定に用いられる波長と同一である場合には、位置判別用ウェルの測定値のベースラインと他のウェルの測定値のベースラインとを比較することによって、反応容器設置部に設置されている反応容器の位置判別用ウェルの位置を特定することができる。
【0020】
そこで、本発明の蛍光測定装置に、前記測定部によるそれぞれの前記ウェルについての測定値に基づいて前記位置判別用ウェルの位置を特定するように構成されたウェル位置特定部を具備させることが好ましい。位置判別用ウェルの位置を特定することができれば、その情報を用いて反応容器の設置方向を自動で判別することが可能になる。
【0021】
また、位置判別用ウェルの反応容器における位置は決まっているので、その位置を位置判別用ウェルの本来の位置(本来位置)として装置に記憶させておけば、上記のウェル位置特定部の機能を用いて、反応容器が反応容器設置部に正しい向きに設置されているか否かを確認することもできる。
【0022】
そこで、本発明の蛍光測定装置では、予め規定された位置判別用ウェルの本来位置と上記ウェル位置特定部により特定された位置判別用ウェルの実際位置とが一致しているか否かを判定するように構成されたウェル位置判定部をさらに備えることもできる。
【0023】
前記ウェル位置判定部は、前記ウェル位置特定部の前記実際位置と前記本来位置とが一致していないときに、ユーザに対して警告を発するように構成されていてもよい。そうすれば、ユーザが反応容器の設置方向の間違いを容易に認識することができるようになる。
【0024】
ところで、反応容器のそれぞれのウェルに収容された検体に関する情報(検体情報)は、それぞれの検体が収容されているウェルの位置と対応付けて装置に登録される。本願では、そのような検体情報を記憶する部分を検体情報記憶部と称する。反応容器が間違った向きに設置された場合、予め装置に登録されている反応容器設置部上での各検体の配列と、実際に反応容器設置部上に設置された各検体の配列とが相違してしまう。
【0025】
これに対し、上記のウェル位置特定部の機能を用いれば、反応容器設置部に反応容器がどのように設置されているかを装置が認識することができる。そこで、本発明の蛍光測定装置では、前記ウェル位置判定部により前記ウェル位置特定部の前記実際位置と前記本来位置とが一致していないと判定されたときに、前記ウェル位置特定部により特定された前記位置判別用ウェルの実際位置に基づいて、前記検体情報記憶部に記憶されている前記検体情報がそれぞれの検体が実際に収容されている前記ウェルの位置と対応付けられるように、前記検体情報記憶部の前記検体情報の前記ウェルの位置との対応関係を補正する対応関係補正部を備えていることが好ましい。そうすれば、ユーザが反応容器設置部への反応容器の設置方向を間違えた場合でも、装置がそれを自動的に認識して予め登録された検体情報とウェルの位置との対応関係を補正するので、検体に対する解析結果を取り違えるといった事態は生じなくなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る反応容器は、すべてのウェルのうち点対象の中央となるウェル以外の特定の位置に設けられているウェルが、蛍光色素の配置された位置判別用ウェルとなっているので、蛍光色素から発せられる蛍光を利用して反応容器の向きを容易に判別することができる。当該反応容器は、PCR測定装置でのPCR測定だけでなく、PCR測定装置でPCR処理がなされた後の検体の融解曲線測定にも用いることができる。更にはPCRだけでなく蛍光検出を利用する抗原抗体反応や酵素反応などにも応用できる。
【0027】
本発明に係る蛍光測定装置では、上記反応容器のそれぞれのウェルからの測定対象の波長の光を測定するための測定部が、位置判別用ウェルに配置されている蛍光色素からの蛍光を検出する機能を有するので、反応容器の位置判別用ウェルの位置を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ウェルプレートの一実施例を示す斜視図である。
【図2】同実施例の平面図である。
【図3】蛍光測定装置の一実施例を示す概略断面構成図である。
【図4】同実施例による通常のウェルと位置判別用ウェルの検出信号波形の一例を示す図である。
【図5】同実施例の動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】ウェルプレートが間違った向きに設置されたときの各ウェルの配列を示すウェルプレートの平面図である。
【図7】同実施例の動作の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、反応容器及び蛍光測定装置の一実施例について、図面を用いて説明する。
【0030】
まず、反応容器の一実施例について、図1を用いて説明する。
【0031】
この実施例の反応容器2は、複数の容器4が同一平面内に配列されて連結されたものである。各容器4は、上方が開口したウェル6を内部に備えている。ウェル6は、内部に検体や反応試薬を収容するためのものである。この実施例では、ウェル6が縦8列、横12列に並んで、マトリクス状に配列されている。各ウェル6の位置を識別するために、ウェルプレート2の上面の左端と上端にそれぞれ、縦方向の列を示すA〜Hの識別符号と横方向の列を示す1〜12の識別符号が付されている。
【0032】
反応容器2に設けられているウェル6のうち、点対象の中央以外の特定の位置に設けられているウェル6には蛍光色素8が配置されている。この実施例では、反応容器2の右下端に位置するH12(H列の左から12番目)のウェル6に蛍光色素8が配置されている。以下では、蛍光色素8が配置されているウェル6を、他のウェル6と区別するために位置判別用ウェル6sと称する。なお、蛍光色素8が配置される位置判別用ウェル6sの位置は、すべてのウェル6における点対象の中央以外のウェルの位置であればよい。
【0033】
位置判別用ウェル6sに配置されている蛍光色素8は、例えば乾燥によって固相化されたものである。蛍光色素8としては、当該位置判別用ウェル6sに反応試薬が添加されたときに溶解して呈色する性質を有するものであることが好ましいが、必ずしも反応試薬の添加によって呈色する必要はなく、励起光の照射によって蛍光を発するものであればよい。なお、蛍光色素8は必ずしも固相化されている必要はなく、何らかの手段によって位置判別用ウェル6s内に封入されていればよい。蛍光色素としては、SYBR(登録商標)Green IやSYBR(登録商標)Gold、EvaGreen(登録商標)などを用いることができる。
【0034】
位置判別用ウェル6s内に反応試薬が添加されたときに呈色する性質を有する蛍光色素が固定されていることで、位置判別用ウェル6sに反応試薬が添加されたときに、図2に示されているように、特定の位置に設けられている位置判別用ウェル6sが呈色するので、反応容器2の向きを目視によって把握することができる。なお、蛍光色素8として、反応試薬を添加しなくても励起光の照射によって蛍光を発するものを用いた場合には、必ずしも位置判別用ウェル6sに反応試薬を添加する必要はなく、各ウェル6に励起光を照射して得られる蛍光強度を測定することで、位置判別用ウェル6sの位置を判別することができる。
【0035】
次に、上記の反応容器2を用いる蛍光測定装置の一実施例について、図3を用いて説明する。
【0036】
蛍光測定装置は、反応容器2を設置するための反応容器設置部9を備えている。反応容器設置部9は、熱伝導性の金属材料で構成されており、例えばペルチェ素子やヒータによって温度調節がなされるものである。反応容器設置部9には、反応容器2の各容器4を収容するための窪み10を備えている。
【0037】
反応容器設置部9の上方に測定部12が設けられている。測定部12は光センサ14を備えている。光センサ14は、鉛直下方へ励起光を発する発光素子と励起光によって励起された検体からの蛍光を検出するための受光素子を有するものである。
【0038】
測定部12は、測定中に、反応容器2の各ウェル6を順にスキャンするように各ウェル6の直上の位置に光センサ14を配置し、各ウェル6に収容されている検体からの測定対象の波長の光の強度を測定するためのものである。また、測定部12は、反応容器2の位置判別用ウェル6sに配置されている蛍光色素からの蛍光を光センサ14によって検出する機能を有する。光センサ14で得られた検出信号は演算処理装置18に取り込まれる。演算処理装置18は、専用のコンピュータ又は汎用のパーソナルコンピュータによって実現されるものである。演算処理装置18には表示部30が接続されている。表示部30は、例えば液晶ディスプレイによって実現することができる。
【0039】
演算処理装置18は、光センサ14からの検出信号に基づいて種々の解析処理を行なう機能を有する。演算処理装置18で実施される解析処理には、例えば、測定検体の濃度を求める絶対定量解析、遺伝子に対する相対発現量を求める相対定量解析、遺伝子型を判定するSNP解析などがある。ユーザは、測定対象の検体ついて実施したい解析処理を測定条件として設定することができる。
【0040】
なお、測定部12は反応容器設置部9の下方で水平面内を移動するように設けられていてもよい。その場合は、測定部12の光センサ14によって各ウェル6に収容された検体からの測定対象の波長の光を測定することができるように、反応容器設置部9の窪みの底部に測定用の開口が設けられる。
【0041】
演算処理装置18は、測定値補正部20、ウェル位置特定部22、ウェル位置判定部24、対応関係補正部26、及び検体情報記憶部28を備えている。測定値補正部20、ウェル位置特定部22、ウェル位置判定部24、及び対応関係補正部26は、演算処理装置18に設けられたCPUなどの演算素子が所定のプログラムを実行することによって得られる機能である。検体情報記憶部28は、演算処理装置18に設けられた記憶装置の一部の領域によって実現される機能である。
【0042】
測定値補正部20は、反応容器2の位置判別用ウェル6s内に配置されている蛍光色素から発せられる蛍光の波長が測定対象の波長と同一である場合に、ウェルプレート2の位置判別用ウェル6sに収容されている検体の測定対象の波長の光の強度の測定値を補正するように構成されている。反応容器2の位置判別用ウェル6s内に配置されている蛍光色素から発せられる蛍光の波長が測定対象の波長と同一である場合、反応容器2の各ウェル6からの蛍光強度を光センサ14によって測定すると、図4に示されているように、予め蛍光色素が配置されている位置判別用ウェル6sの蛍光強度のベースラインは通常のウェル6よりも高くなる。測定値補正部20は、通常のウェル6の蛍光強度のベースラインと位置判別用ウェル6sの蛍光強度のベースラインとの差分ΔSを求め、位置判別用ウェル6sの検体についての測定値から差分ΔSを差し引くことで、位置判別用ウェル6sの検体の測定値を補正するように構成されている。これにより、位置判別用ウェル6sを通常のウェル6と同様に使用して検体の蛍光強度の測定を行なうことができる。なお、通常のウェル6のベースラインとしては、例えば、反応容器2に設けられているウェル6のうち位置判別用ウェル6s以外のすべてのウェル6のベースラインの平均値を用いることができる。
【0043】
ウェル位置特定部22は、反応容器2の各ウェル6についての蛍光強度の測定値の比較により、反応容器設置部9上における位置判別用ウェル6sの実際の位置を特定するように構成されている。反応容器2の位置判別用ウェル6s内に配置されている蛍光色素から発せられる蛍光の波長が測定対象の波長と同一である場合は、予め蛍光色素が固定されている位置判別用ウェル6sについての測定対象の波長の光の強度の測定値は、他のウェル6についての測定対象の波長の光の強度の測定値よりも大きくなる。このため、各ウェル6について光センサ14により測定した蛍光強度の比較することで、位置判別用ウェル6sが反応容器設置部9上においてどのような位置に配置されているかを特定することができる。また、反応容器2の位置判別用ウェル6s内に配置されている蛍光色素から発せられる蛍光の波長が測定対象の波長と異なる場合には、蛍光色素から発せられる波長の光が検出されるウェル6を探索することにより、位置判別用ウェル6sの位置を特定することができる。
【0044】
ウェル位置判定部24は、ウェル位置特定部22により特定された位置判別用ウェル6sの位置が規定の位置に正しく配置されているか否かを判定するように構成されている。演算処理装置18には、反応容器2において位置判別用ウェル6sが設けられている特定の位置、例えばH12の位置が規定の位置として予め登録されている。この規定の位置は、反応容器2が正しい向きに反応容器設置部9に設置されたときに位置判別用ウェル6sが配置されるべき位置である。ウェル位置判定部24は、ウェル位置特定部22によって特定された位置判別用ウェル6sの実際の位置と規定の位置とが一致するか否かを判定するように構成されている。
【0045】
反応容器2が反応容器設置部9に正しい向きに設置されていれば、ウェル位置特定部22によって特定された位置判別用ウェル6sの実際の位置と規定の位置とが一致する。しかし、図6に示されているように、反応容器2の向きが間違っている場合、位置判別用ウェル6sは規定の位置(H12の位置)とは異なる位置(図6ではA1の位置)に配置されるため、ウェル位置特定部22によって特定された位置判別用ウェル6sの実際の位置と規定の位置とが一致しない。これにより、反応容器2の設置方向が正しいか否かを装置側で自動的に判定することができる。
【0046】
対応関係補正部26は、反応容器2の各ウェル6に収容される各検体に関する検体情報とそれぞれの検体が収容されるウェル6の位置との対応関係を補正するように構成されている。
【0047】
測定が開始される前に、ユーザは、例えば、各ウェル6に収容された検体の検体ID、検体ごとの測定条件などを検体情報として登録する。各検体の検体情報は、各検体の測定に使用するウェル6の位置と対応付けられて登録される。ユーザによって装置に登録されたこれらの検体情報は、検体情報記憶部28によって記憶される。
【0048】
しかし、図6のように、ユーザが反応容器2の向きを間違えて反応容器設置部9に設置した場合、各検体が収容されているウェル6の反応容器設置部9上での実際の位置は検体情報記憶部28に記憶されている情報と相違することになる。図6でいえば、反応容器2のA1の位置に設けられているウェル6は反応容器設置部9上ではH12の位置に配置され、反応容器2のA2の位置に設けられているウェル6は反応容器設置部9上ではH11の位置に配置されることになる。
【0049】
そこで、対応関係補正部26は、ウェル位置特定部22によって特定された位置判別用ウェル6sの反応容器設置部9上での位置に基づいて反応容器2がどのような向きで反応容器設置部9上に設置されているかを割り出し、各検体が収容されているウェル6の反応容器設置部9上における実際の位置に対応付けられるように、検体情報記憶部28に記憶されている各検体の検体情報を補正する。
【0050】
図5を用いて、この実施例の動作の一例について説明する。
【0051】
まず、ユーザが検体情報を入力し、各検体の検体情報を各検体が収容されているウェル6の位置と対応付けて検体情報記憶部28に記憶させる(ステップS1)。その後、ユーザは反応容器2を反応容器設置部9に設置する(ステップS2)。これによって、測定準備が完了する。なお、反応容器2を反応容器設置部9に設置する前に、ユーザがウェルプレート2の各ウェル6に試薬を添加したときに位置判別用ウェル6のみが呈色するため、ユーザはウェルプレート2の向きを認識しやすい。
【0052】
測定準備が完了した場合、ユーザはそのことを示す何らかの動作を行なう。測定準備の完了を示す動作としては、その旨を演算処理装置18へ入力する動作のほか、反応容器設置部9の上方を覆うカバー(図示は省略)を閉じる動作等が挙げられる。ユーザがこのような動作を行なうと、ウェル位置特定部20は、測定準備が完了したことを認識し、測定部12の光センサ14を用いて反応容器2のすべてのウェル6をスキャンすることで、位置判別用ウェル6sの位置を特定する(ステップS3)。
【0053】
位置判別用ウェル6sの位置が特定された後、ウェル位置判定部24は、位置判別用ウェル6sの位置が規定の位置にあるか否かを判定し(ステップS4)、規定の位置にある場合は測定が開始される(ステップS7)。測定では、位置判別用ウェル6sの検体についての測定値が測定値補正部20によって補正される。
【0054】
位置判別用ウェル6sの位置が規定の位置にない場合、ウェル位置判定部24は、ユーザに対して警告を発する(ステップS5)。警告としては、例えば演算処理装置18に接続された表示部30にその旨を表示することや、警告音を発することなどが挙げられる。なお、ユーザへの警告は必ずしもなされる必要はない。
【0055】
位置判別用ウェル6sの位置が規定の位置にない場合、対応関係補正部26は、各検体が収容されているウェル6の反応容器設置部9上における実際の位置に対応付けられるように、検体情報記憶部28に記憶されている各検体の検体情報を補正する(ステップS6)。その後、測定が開始される(ステップS7)。
【0056】
なお、上記に限らず、対応関係補正部26は、測定が終了した後で、測定によって得られた測定データが検体と正しく対応付けられるように、測定データと検体情報との対応関係を補正するようになっていてもよい。
【0057】
なお、対応関係補正部26は必須の構成要件ではない。したがって、反応容器2の設置方向が間違っていた場合でも、検体情報とウェルの位置情報との対応関係が自動的に補正されるようになっていなくてもよい。
【0058】
対応関係補正部26を備えていない蛍光検出装置の動作の一例について、図7を用いて説明する。
【0059】
図7の例においても、ユーザが検体情報を入力し(ステップS11)、反応容器2を反応容器設置部9に設置した後(ステップS12)、ウェル位置特定部20が位置判別用ウェル6sの位置を特定する(ステップS13)。位置判別用ウェル6sの位置が特定された後、ウェル位置判定部24は、位置判別用ウェル6sの位置が規定の位置にあるか否かを判定し(ステップS14)、規定の位置にある場合は測定が開始される(ステップS15)。
【0060】
一方で、位置判別用ウェル6sの位置が規定の位置にない場合は、ウェル位置判定部24がユーザに対して警告を発し、測定を開始することなく待機する(ステップS16)。ユーザは、その警告によって反応容器2の設置方向が間違っていたことを認識し、ウェルプレート2を設置し直す(ステップS12)。その後、ウェル位置特定部20が位置判別用ウェル6sの位置を特定し(ステップS13)、ウェル位置判定部24が位置判別用ウェル6sの位置が規定の位置にあるか否かを判定し(ステップS14)、規定の位置にある場合は測定が開始される(ステップS15)。
【符号の説明】
【0061】
2 反応容器
4 容器
6 ウェル
6s 位置判別用ウェル
8 蛍光色素
9 反応容器設置部
10 窪み
12 測定部
14 光センサ
16 ガイドレール
18 演算処理装置
20 測定値補正部
22 ウェル位置特定部
24 ウェル位置判定部
26 対応関係補正部
28 検体情報記憶部
30 表示部
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】