(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2019145225
(43)【公開日】20190829
(54)【発明の名称】燃料電池システムと、それに用いられるスタックのエージング方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20190802BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20190802BHJP
   H01M 8/2483 20160101ALI20190802BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20190802BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20190802BHJP
【FI】
   !H01M8/04 Z
   !H01M8/2465
   !H01M8/2483
   !H01M8/0258
   !H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】2018025605
(22)【出願日】20180216
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区城見2丁目1番61号
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】松田 博明
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 パナソニック株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】梅田 孝裕
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 パナソニック株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】若松 英俊
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 パナソニック株式会社内
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA08
5H126AA11
5H126AA23
5H126AA28
5H126BB06
5H126EE11
5H126EE33
5H126EE37
5H126FF09
5H127AA06
5H127AB23
5H127AC01
5H127AC07
5H127AC18
5H127BA05
5H127BA12
5H127BA34
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127CC07
5H127EE02
5H127EE26
5H127EE29
5H127GG02
5H127GG10
(57)【要約】
【課題】スタックと、その下方に配置された電力変換回路基板とを接続するハーネスにおける電力ロスを低減し、また、エージング時の作業性を良好にすることを目的とする。
【解決手段】スタック1と、その下方に配置されスタック1の集電板と電気的に接続された電力変換回路基板16とを備え、集電板は、冷却水マニホールドの冷却水入口及び冷却水出口よりも上方から電流を取り出す上部端子11と、スタック1の下部から電流を取り出す下部端子12とを備え、電力変換回路基板16は、下部端子12のみとハーネス17で電気的に接続されるように構成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜−電極接合体を一対のセパレータで挟んだセルが略水平方向に多数積層された積層体の積層方向の両端に、一対の集電板を備えたスタックと、
前記スタックの下方に配置され前記集電板と電気的に接続された電力変換回路基板と、を備えた燃料電池システムであって、
前記スタックは、前記セルを貫通して前記セルに反応ガスを供給排出する反応ガスマニホールドと、前記セルを貫通して前記セルで発電時に発生する熱を回収する冷却水を供給排出する冷却水マニホールドとを有しており、
前記集電板のそれぞれは、前記冷却水マニホールドの冷却水入口及び冷却水出口よりも上方から電流を取り出す上部端子と、前記スタックの下部から電流を取り出す下部端子とを備え、
前記電力変換回路基板は、前記下部端子のみとハーネスで電気的に接続されている、燃料電池システム。
【請求項2】
前記上部端子は、前記集電板の上端面よりも上方に突出しており、前記下部端子は、前記集電板の下端面よりも下方に突出している、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記電力変換回路基板は、前記電力変換回路基板における上部に、前記ハーネスで前記下部端子と電気的に接続される接続端子を備えた、請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記冷却水入口は、前記冷却水出口よりも上方に位置し、前記冷却水は、前記セルに対して上から下に向かって流れる、請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記反応ガスマニホールドの反応ガス入口は、前記反応ガスマニホールドの反応ガス出口よりも上方に位置し、前記反応ガスは、前記セルに対して上から下に向かって流れる、請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料電池システムに用いられるスタックのエージング方法であって、
前記スタックの前記上部端子と、エージング装置とを、ハーネスで電気的に接続してエージングを行う、スタックのエージング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタックと、このスタックに接続された電力変換回路基板とを備えた固体高分子型の燃料電池システムと、それに用いられるスタックのエージング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素などの燃料ガスと空気などの酸化剤ガスを電気化学的に反応させて、電気と熱を同時に発生させるものである。
【0003】
固体高分子型の燃料電池は、電解質膜−電極接合体(以下、「MEA」という)を一対のセパレータで挟んだセルで構成されている。
【0004】
MEAは、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜(以下、「電解質膜」ともいう)の両主面に一対の電極を備えている。
【0005】
セパレータは、MEAの両面に配置されてMEAを機械的に固定すると共に、隣接するMEA同士を互いに電気的に直列に接続するため導電性を有している。
【0006】
セパレータのMEAと接触する面には、電極に水素や空気などの反応ガスを供給し、且つ反応により発生したガスや余剰のガスを運び去るためのガス流路となる溝が形成されている。セパレータのMEAと接触する面と反対の面には、反応により発生した熱を回収する冷却水を供給排出するための冷却水流路となる溝が形成されている。
【0007】
多くの燃料電池は、MEAとセパレータを数多く重ねた積層構造を採っており、さらにその積層方向の両端には、反応によって発生した電気を外部に取り出すための一対の集電板が配されている。このような積層体をスタックと呼ぶ。
【0008】
スタックは、セルを貫通してセパレータのガス流路に反応ガスを供給排出する反応ガスマニホールドと、セルを貫通してセパレータの冷却水流路に冷却水を供給排出する冷却水マニホールドを有している。
【0009】
スタックで発生した電流は、集電板と電気的に接続された電力変換回路基板によって調整されたのち、燃料電池システムの外部へと取り出される。集電板と電力変換回路基板はハーネスで接続されており、集電板には、ハーネスを取り付けるための端子が設けられている。
【0010】
燃料電池システム内におけるスタックと電力変換回路基板の位置関係は、レイアウトの都合により様々な形態を採ることができ、図7に示すように、スタック31の上方に電力変換回路基板32を配置して両者をハーネス33で接続する場合(例えば、特許文献1参照)や、図8と図9に示すように、スタック31の前後左右方向(横方向、略水平方向)に電力変換回路基板32を配置して両者をハーネス33で接続する場合(例えば、特許文献2参照)などがある。
【0011】
どちらの場合も、隔壁34により燃料電池システムの筐体内を、スタック31と燃料改質器を配置した空間と、電力変換回路基板32などの高電圧回路を配置した空間とに区分けしている。
【0012】
スタック31と電力変換回路基板32が、特許文献1と特許文献2のいずれの位置関係にある場合でも、接続するハーネス33の長さを可能な限り短くすることで、ハーネス33のIR損による電力ロスを最小限にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010−092750号公報
【特許文献2】特開2009−158463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記従来例のようにスタック31の上方やスタック31の前後左右方向(横方向、略水平方向)に電力変換回路基板32を配置する場合には、スタック31の上部に集電板の端子を設けることが一般的である。
【0015】
スタック31の下方に電力変換回路基板32を配置する場合は、スタック31の上部に集電板の端子を設けると、ハーネス33が長くなるので、スタック31の下部に集電板の端子を設けることが考えられる。
【0016】
ところで、スタックの製造工程において、MEAを構成する材料である電解質膜およびイオノマーが水分を失ったり、触媒層の製造プロセス中で触媒表面に不純物が付着したりすると、組立直後のMEAおよびスタックが本来発生すべき性能を発揮できない。
【0017】
そこで、燃料電池システムの製造過程において、スタックは組み立てられてから燃料電池システムに搭載される前に、電解質膜およびイオノマーを湿潤させたり、触媒の表面をクリーニングしたりすることを目的として、スタックをエージング装置に接続して、スタックの活性化処理としての予備的な発電をさせたり、スタックの性能検査をしたりする。
【0018】
エージング時にはスタックの端子とエージング装置がハーネスで電気的に接続される。スタックの下部に集電板の端子を設けていると、ハーネスの取り付けの作業性が悪いために端子やハーネスを損壊してしまう可能性がある。また、ハーネスとの接続が不十分となり接触抵抗が高くなってしまう可能性がある。いずれも、端子に電流が流れる際に不安全となることが考えられる。
【0019】
エージング装置のハーネスおよびその付近には、種々の計測用の配線なども配置されるため、スタックの下部にある集電板の端子に取り付けを行う際には、燃料電池システムへ搭載する時よりも作業性の悪化への影響が大きい。
【0020】
なお、スタックの下部に集電板の端子を設けて、エージング時にはスタックの上下を逆向きにして、上下反転させたスタックとエージング装置を接続することが考えられる。
【0021】
しかしながら、上下反転させたスタックをその状態で保持することが構造的に困難であったり、もし、反応ガスと冷却水がスタックの内部を重力方向に流れるように設計されている場合には、反応ガスと冷却水を本来の入口側からスタックに流入させるためにエージング時は反応ガスと冷却水がスタックの内部を重力に逆らうように流れることになる、もしくは、反応ガスと冷却水がスタックの内部を重力方向に流れるようにエージング時は反応ガスと冷却水を本来の出口側からスタックに流入させることになるために、性能検査の結果が本来の性能と異なる可能性があるという課題がある。
【0022】
本発明は、上記課題に鑑み、スタックの下方に電力変換回路基板を配置しても、電力ロ
スを最小限にすると共に、エージング時の作業性の良好な燃料電池システムと、それに用いられるスタックのエージング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するため、本発明の燃料電池システムは、電解質膜−電極接合体を一対のセパレータで挟んだセルが略水平方向に多数積層された積層体の積層方向の両端に一対の集電板を備えたスタックと、前記スタックの下方に配置され前記集電板と電気的に接続された電力変換回路基板と、を備えた燃料電池システムであって、前記スタックは、前記セルを貫通して前記セルに反応ガスを供給排出する反応ガスマニホールドと、前記セルを貫通して前記セルで発電時に発生する熱を回収する冷却水を供給排出する冷却水マニホールドとを有しており、前記集電板のそれぞれは、前記冷却水マニホールドの冷却水入口及び冷却水出口よりも上方から電流を取り出す上部端子と、前記スタックの下部から電流を取り出す下部端子とを備え、前記電力変換回路基板は、前記下部端子のみとハーネスで電気的に接続されていることを特徴とする。
【0024】
この構成によって、スタックの下方に電力変換回路基板を配置しても、スタックと電力変換回路基板を接続するハーネスの長さを短くすることができるため、ハーネスのIR損による電力ロスを最小限にすることができる。さらに、エージング時には上部端子をエージング装置との接続に利用することができるため、エージングの作業性が良好になる。
【0025】
また、本発明のスタックのエージング方法は、上記の本発明の燃料電池システムに用いられるスタックのエージング方法であって、前記スタックの前記上部端子と、エージング装置とを、ハーネスで電気的に接続してエージングを行うことを特徴とし、この方法によって、エージングの作業性が良好になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、スタックの下方に電力変換回路基板を配置し、スタックの下部端子のみとハーネスで接続されているため、ハーネスの長さを短くすることができ、ハーネスのIR損による電力ロスを最小限にすることができる。これにより発電効率の高い燃料電池システムを提供することができる。
【0027】
スタックの下方に電力変換回路基板を配置することで、万が一スタックから水素などの可燃性の燃料ガスが漏れた場合でも、これらの燃料ガスは空気よりも軽くスタックの上方へ流れていくため、高電圧となる電力変換回路基板に流入する可能性が低くなり、引火などの不具合が発生する可能性が低い。これにより安全性の高い燃料電池システムを提供することができる。
【0028】
さらに、エージング時には上部端子をエージング装置との接続に利用することができるため、エージング時の作業性も確保でき、生産性の高い燃料電池システムを提供することができる。
【0029】
また、本発明のスタックのエージング方法は、本発明の燃料電池システムに用いられるスタックの上部端子とエージング装置とをハーネスで電気的に接続してエージングを行うので、エージングの作業性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1の燃料電池システムに用いられるスタックを一対の冷却水マニホールドの中心軸を含む平面で切断した場合の断面を示す概略縦断面図
【図2】本発明の実施の形態1の燃料電池システムに用いられるスタックを各マニホールドの出入口側から見た場合の概略側面図
【図3】本発明の実施の形態1の燃料電池システムの構成を示す概略縦断面図
【図4】本発明の実施の形態1の燃料電池システムに用いられるスタックの外観斜視図
【図5】本発明の実施の形態1の燃料電池システムに用いられるスタックをエージングしている時のスタックとエージング装置の接続状態を示す概略側面図
【図6】本発明の実施の形態1の燃料電池システムにおけるスタックと電力変換回路基板の接続状態を示す要部概略側面図
【図7】特許文献1に開示された従来の燃料電池システムにおけるスタックと電力変換回路基板の接続状態を示す要部概略斜視図
【図8】特許文献2に開示された従来の燃料電池システムにおけるスタックと電力変換回路基板の接続状態を示す要部概略上面図
【図9】特許文献2に開示された従来の燃料電池システムにおけるスタックと電力変換回路基板の接続状態を示す要部概略側面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
第1の発明は、電解質膜−電極接合体を一対のセパレータで挟んだセルが略水平方向に多数積層された積層体の積層方向の両端に一対の集電板を備えたスタックと、前記スタックの下方に配置され前記集電板と電気的に接続された電力変換回路基板と、を備えた燃料電池システムであって、前記スタックは、前記セルを貫通して前記セルに反応ガスを供給排出する反応ガスマニホールドと、前記セルを貫通して前記セルで発電時に発生する熱を回収する冷却水を供給排出する冷却水マニホールドとを有しており、前記集電板のそれぞれは、前記冷却水マニホールドの冷却水入口及び冷却水出口よりも上方から電流を取り出す上部端子と、前記スタックの下部から電流を取り出す下部端子とを備え、前記電力変換回路基板は、前記下部端子のみとハーネスで電気的に接続されていることを特徴とする。
【0032】
この構成によって、スタックの下方に電力変換回路基板を配置しても、スタックの上部端子と電力変換回路基板をハーネスで接続する場合よりも、スタックと電力変換回路基板を接続するハーネスの長さを短くすることができるため、ハーネスのIR損による電力ロスを小さくすることができる。
【0033】
また、スタックの下方に電力変換回路基板を配置することで、万が一スタックから水素などの可燃性の燃料ガスが漏れた場合でも、これらの燃料ガスは空気よりも軽くスタックの上方へ流れていくため、高電圧となる電力変換回路基板に流入する可能性が低くなり、引火などの不具合が発生する可能性を低くすることができる。
【0034】
さらに、エージング時には上部端子をエージング装置との接続に利用することができるため、エージング時の作業性も確保できる。
【0035】
第2の発明は、第1の発明における前記上部端子が、前記集電板の上端面よりも上方に突出しており、前記下部端子が、前記集電板の下端面よりも下方に突出していることを特徴とする。
【0036】
この構成によって、上部端子をスタックの(積層体の)上端面よりも上方に突出させることができるため、エージング時の作業性をより向上することができる。また、下部端子をスタックの(積層体の)下端面よりも下方に突出させることができるため、スタックと電力変換回路基板を接続するハーネスの長さをさらに短くすることができ、ハーネスのIR損による電力ロスをさらに小さくすることができる。
【0037】
第3の発明は、第1または第2の発明における前記電力変換回路基板が、前記電力変換回路基板における上部に、前記ハーネスで前記下部端子と電気的に接続される接続端子を
備えたことを特徴とする。
【0038】
この構成によって、スタックと電力変換回路基板を接続するハーネスの長さをさらに短くすることができ、ハーネスのIR損による電力ロスをさらに小さくすることができる。
【0039】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明における前記冷却水入口が、前記冷却水出口よりも上方に位置し、前記冷却水が、前記セルに対して上から下に向かって流れることを特徴とする。
【0040】
この構成によって、スタックの上部の温度をより低くすることができる。エージング時に上部端子を使用する際、スタックの温度がより低い上部に集電板の上部端子が位置することになる。
【0041】
エージング時にスタックの性能検査のために燃料電池システム搭載時よりも高い電流や高い温度で発電させることがあれば、集電板の上部端子は、より高温になるため、不安全となる可能性が考えられる。スタックの上部の温度をより低くした構成で、エージング時に上部端子を使用することで、上部端子の温度をより低く抑えることができる。これにより、エージング時の安全性を向上することができる。
【0042】
第5の発明は、第4の発明における前記反応ガスマニホールドの反応ガス入口が、前記反応ガスマニホールドの反応ガス出口よりも上方に位置し、前記反応ガスが、前記セルに対して上から下に向かって流れることを特徴とする。
【0043】
この構成によって、スタックの上部に反応ガス入口と冷却水入口が互いに近接して位置することになる。反応ガス入口付近では反応ガスの濃度が高いために発電反応が集中して起こることから、この付近のスタック温度がより高くなるが、冷却水入口が反応ガス入口付近にあることで効率的に冷却することができ、反応ガス入口付近の温度上昇を抑制することができる。
【0044】
これにより、スタックの上部と下部の温度分布をより均一化することができるため、高温による局所的な劣化を抑制することができ、その結果、スタックの耐久性を向上させることができる。
【0045】
また、スタック内の反応ガス流路で凝縮水が発生した場合でも、反応ガスの流れと重力を利用して凝縮水をスタックの反応ガス出口から排出することができ、反応ガス流路で発生した凝縮水が反応ガスの流れを妨げることを抑制できる。
【0046】
第6の発明は、第1から第5のいずれかの発明における燃料電池システムに用いられるスタックのエージング方法であって、前記スタックの前記上部端子と、エージング装置とを、ハーネスで電気的に接続してエージングを行うことを特徴とする。
【0047】
この方法によって、下部端子に接続する場合よりも、スタックとエージング装置をハーネスで接続する際の作業性を良好にすることができる。スタックの端子とハーネスとの接続が不十分なために不安全になることを抑制することができる。これにより、エージング時の作業効率と安全性を向上することができる。
【0048】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0049】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の燃料電池システムに用いられるスタックを一対の冷却水マニホールドの中心軸を含む平面で切断した場合の断面を示す概略縦断面図である。図2は本発明の実施の形態1の燃料電池システムに用いられるスタックを各マニホールドの出入口側から見た場合の概略側面図である。図3は本発明の実施の形態1の燃料電池システムの構成を示す概略縦断面図である。
【0050】
図4は本発明の実施の形態1の燃料電池システムに用いられるスタックの外観斜視図である。図5は本発明の実施の形態1の燃料電池システムに用いられるスタックをエージングしている時のスタックとエージング装置の接続状態を示す概略側面図である。図6は本発明の実施の形態1の燃料電池システムにおけるスタックと電力変換回路基板の接続状態を示す要部概略側面図である。
【0051】
図1から図6に示すように、本実施の形態の燃料電池システム15に用いられるスタック1は、MEA2を一対のセパレータ3で挟んだセル4aを多数積層した積層体4の積層方向の両端に一対の集電板5を備える。スタック1に締結圧力を与えて一体として保持するため、一対の集電板5における積層体4と対向する面と反対側の面に(集電板5のさらに外側に)一対の端板6を配置し、環状バンド22で両端板6を、積層体4と一対の集電板5と一対の端板6が積層方向に圧縮される力が加わるように締結する。
【0052】
スタック1は、セル4aを貫通してセル4aに反応ガスを供給排出する反応ガスマニホールド7と、セル4aを貫通してセル4aで発電時に発生する熱を回収する冷却水を供給排出する冷却水マニホールド8とを有している。
【0053】
スタック1を一対の冷却水マニホールド8の中心軸を含む平面で切断した場合の断面を示す図1では、反応ガスマニホールド7が示されていないが、スタック1を一対の反応ガスマニホールド7の中心軸を含む平面で切断した場合の断面は、図1の冷却水マニホールド8と冷却水入口9と冷却水出口10を、反応ガスマニホールド7と反応ガス入口13と反応ガス出口14に、それぞれ置き換えた構成に相当する。
【0054】
集電板5は、冷却水マニホールド8の冷却水入口9及び冷却水出口10よりも上方から電流を取り出す上部端子11と、スタック1の下部から電流を取り出す下部端子12とを備える。上部端子11はスタック1の上面から上方に突出しており、下部端子12はスタック1の積層部分の下面から下方に突出している。なお、一対の端板6には下部端子12よりも下方に突出する脚部6aが一体に設けられる。
【0055】
一対の端板6のうちの一方の端板6には、反応ガスマニホールド7の反応ガス入口13及び反応ガス出口14、冷却水マニホールド8の冷却水入口9及び冷却水出口10がそれぞれ設けられている。反応ガスは水素などの燃料ガスと空気などの酸化剤ガスが必要となるため、反応ガス入口13及び反応ガス出口14はそれぞれ二つずつ設けられている。
【0056】
燃料電池システム15の筐体内において、スタック1の下方に電力変換回路基板16が配置され、下部端子12のみとハーネス17によって電気的に接続されている。スタック1で発電した電力は、電力変換回路基板16で調整されたのち、燃料電池システム15の外部へと取り出される。電力変換回路基板16は、昇圧回路やインバータ回路などの回路類と電圧センサーや電流センサーなどのセンサー類などから構成される。
【0057】
スタック1には空気ブロア18から一方の反応ガス入口13に空気が供給され、発電に使用された後の余剰なガスは一方の反応ガス出口14から排出される。また、燃料改質器19から他方の反応ガス入口13に水素を含む燃料ガスが供給され、発電に使用された後の余剰なガスは他方の反応ガス出口14から燃料改質器19に備えられたバーナーへと供
給され、燃料改質器19の温度を維持するためにバーナーの燃焼に用いられる。燃料改質器19には燃料ガスの原料となる都市ガスなどの原料ガスが燃料電池システム15の外部から供給され、水素を含む燃料ガスへと改質される。
【0058】
スタック1には、熱交換器20から冷却水入口9に冷却水が供給され、スタック1を流れる冷却水によって、発電によってスタック1で発生した熱を回収した後、冷却水出口10から再び熱交換器20へと戻される。
【0059】
熱交換器20には貯湯槽21から温度の低い温水が供給され、冷却水と熱交換して温度が高められた後、再び貯湯槽21へと戻される。貯湯槽21からは温水が燃料電池システム15の外部へと供給され、代わりに外部から水が補給される。
【0060】
本実施の形態は、スタック1の下方に電力変換回路基板16が配置され、下部端子12のみとハーネス17によって電気的に接続されていることを特徴とする。これにより、ハーネス17の長さを短くすることができる。下方とは、電力変換回路基板16の上端面がスタック1の下端面と同じ高さか低い位置にあることを言う。電力変換回路基板16がスタック1よりも大幅に下方にあるとハーネス17の長さが長くなってしまうため、スタック1の近傍に配置することが好ましい。
【0061】
本実施の形態では、スタック1の上部に配置された集電板5の端子を上部端子11と呼んでいるが、上部端子11はスタック1の上端面、つまり集電板5の上端面よりも上方に突出していることが好ましい。これにより、エージング時の作業性をより向上することができる。
【0062】
上部端子11の他の構成として、集電板5の上端面と同じ高さで水平方向に突出している構成や、集電板5の上端面よりも低い高さで水平方向に突出している構成なども採ることができる。
【0063】
本実施の形態では、スタック1の下部に配置された集電板5の端子を下部端子12と呼んでいるが、下部端子12はスタック1の下端面、つまり集電板5の下端面よりも下方に突出していることが好ましい。これにより、スタック1と電力変換回路基板16を接続するハーネス17の長さを短くすることができる。
【0064】
下部端子12の他の構成として、集電板5の下端面と同じ高さで水平方向に突出している構成や、集電板5の下端面よりも高い位置で水平方向に突出している構成なども採ることができる。
【0065】
集電板5の形状としては、積層されるセパレータ3やMEA2と同じ面積を有する長方形の板に、端子が突出した形状であることが一般的である。集電板5の端子(上部端子11と下部端子12)とハーネス17の接続は、確実な接続を確保するためにボルトとナットを使用することが一般的である。
【0066】
従って、ボルトを挿入するためのボルトを入れる穴があいている。あるいはU字端子形状でも良い。ハーネス17の取り付け作業性をより良くするために、あらかじめ集電板5の端子(上部端子11と下部端子12)部または、ハーネス17の端子部にカシメナットが付けることが好ましい。
【0067】
集電板5の材質としては、アルミや真鍮など導電率の高い金属が使用される。さらに、セパレータ3と接する部分およびハーネス17と接する部分には、接触抵抗が低く耐食性の高い、金などの金属によるメッキあるいはカーボンコートなどを施していることが好ま
しい。
【0068】
スタック1における冷却水入口9及び冷却水出口10の配置は、種々の位置を採ることができるが、冷却水入口9が冷却水出口10よりも上方に位置し、冷却水が、セル4aに対して上方から下方に向かって流れることが好ましい。
【0069】
これにより、上部端子11の温度をより低く抑えることができる。また、エージング時に上部端子11を使用する際、上部端子11の温度が上昇することになった場合でも、上部端子11の温度をより低く抑えることができるため、安全性を向上することができる。
【0070】
スタック1における反応ガス入口13および反応ガス出口14の配置は、種々の位置を採ることができるが、冷却水入口9が冷却水出口10よりも上方に位置し、冷却水が、セル4aに対して上方から下方に向かって流れる構成の場合には、反応ガス入口13が反応ガス出口14よりも上方に位置し、反応ガスが、セル4aに対して上方から下方に向かって流れることが好ましい。
【0071】
これにより、発電反応が集中して起こる反応ガス入口13付近の温度をより低く抑えることができる。スタック1の上部と下部の温度分布をより均一化することができるため、スタック1の耐久性を向上させることができる。
【0072】
本実施の形態では、スタック1の側面を囲むように環状バンド22を配置して、環状バンド22が端板6を締結する力でスタック1を一体として固定している。スタック1の端板6を締結する方法としては、他に複数のボルトとナットを用いる方法もあるが、環状バンド22を用いることで構造を簡易にすることができ、また、スタック1の組み立ての作業性も向上するため、より好ましい。
【0073】
環状バンド22の上端は、スタック1の上端面と同じ高さか上端面よりも低い位置となるように配置されており、上部端子11にエージング装置のハーネスを取り付ける際の障害とならない構成となっている。
【0074】
同様に、環状バンド22の下端は、スタック1(脚部6aを除く)の下端面と同じ高さか下端面よりも高い位置となるように配置されており、下部端子12に電力変換回路基板16と接続するためのハーネス17を取り付ける際の障害とならない構成となっている。
【0075】
スタック1の下部(下面の四隅)には、端板6と一体に構成された脚部6aが下方に突出している。脚部6aの高さは、下部端子12がスタック1(脚部6aを除く)の下端面よりも下方に突出している長さよりも高くなっており、スタック1を平坦な台の上に設置した場合でも下部端子12が台と接触しないようになっている。
【0076】
脚部6aは、下部端子12に意図せず人の手や導電性の物体などが接触して危険にならないように下部端子12を保護する役割もある。一方で、下部端子12に電力変換回路基板16と接続するためのハーネス17を取り付ける際の障害とならないよう、隣接する脚部6aの間にハーネス17や工具を挿入できるだけの隙間が設けられている。
【0077】
本発明のスタック1は、上部端子11と、エージング装置とを、ハーネスで電気的に接続してエージングを行うことが好ましい。ハーネスはエージング装置専用のものを使用しても良いし、燃料電池システム15に搭載されるハーネス17を使用しても良い。
【0078】
上部端子11および下部端子12は、ハーネスを接続することができる範囲で、可能な限り短く構成される。これにより、端子でのIR損による電力ロスを低減することができ
る。
【0079】
このため、スタック1をエージング装置23の平坦な作業台の上に設置した場合、スタック1の下方には下部端子12の長さに対応した狭い空間しか確保することができず、ハーネス17を取り付けたり、固定用のボルトを回したりする際の作業空間が十分に取れない。しかしながら、図5に示すように、エージング時に上部端子11を使用することで、エージング時の作業効率と安全性を向上することができる。
【0080】
以上のように本実施の形態の燃料電池システム15は、MEA2を一対のセパレータ3で挟んだセル4aが略水平方向に多数積層された積層体4の積層方向の両端に一対の集電板5を備えたスタック1と、スタック1の下方に配置され集電板5と電気的に接続された電力変換回路基板16と、を備える。
【0081】
そして、スタック1は、セル4aを貫通してセル4aに反応ガスを供給排出する反応ガスマニホールド7と、セル4aを貫通してセル4aで発電時に発生する熱を回収する冷却水を供給排出する冷却水マニホールド8とを有している。
【0082】
また、集電板5のそれぞれは、冷却水マニホールド8の冷却水入口9及び冷却水出口10よりも上方から電流を取り出す上部端子11と、スタック1の下部から電流を取り出す下部端子12とを備える。また、電力変換回路基板16は、下部端子12のみとハーネス17で電気的に接続されている。
【0083】
この構成によって、スタック1の下方に電力変換回路基板16を配置しても、スタック1の上部端子11と電力変換回路基板16とをハーネス17で接続する場合よりも、スタック1と電力変換回路基板16を接続するハーネス17の長さを短くすることができるため、ハーネス17のIR損による電力ロスを小さくすることができる。
【0084】
また、スタック1の下方に電力変換回路基板16を配置することで、万が一スタック1から水素などの可燃性の燃料ガスが漏れた場合でも、これらの燃料ガスは空気よりも軽くスタック1の上方へ流れていくため、高電圧となる電力変換回路基板16に流入する可能性が低くなり、引火などの不具合が発生する可能性を低くすることができる。
【0085】
さらに、エージング時には上部端子11をエージング装置23との接続に利用することができるため、エージング時の作業性も確保できる。
【0086】
また、本実施の形態におけるスタック1では、上部端子11が集電板5の上端面よりも上方に突出しており、下部端子12が集電板5の下端面よりも下方に突出している。
【0087】
この構成により、上部端子11をスタック1の(積層体4の)上端面よりも上方に突出させることができるため、上部端子11をスタック1の側面の上部から突出させた場合よりもエージング時の作業性をより向上することができる。また、下部端子12をスタック1の(積層体4の)下端面よりも下方に突出させることができるため、下部端子12をスタック1の側面の下部から突出させた場合よりもスタック1と電力変換回路基板16を接続するハーネス17の長さをさらに短くすることができ、ハーネスのIR損による電力ロスをさらに小さくすることができる。
【0088】
また、スタック1の側面を囲むように環状バンド22を配置して、環状バンド22が端板6を締結する力でスタック1を一体として固定している場合は、上部端子11と下部端子12が環状バンド22の邪魔にならない。
【0089】
なお、上部端子11または下部端子12がスタック1の側面から突出している場合は、上部端子11または下部端子12が環状バンド22によるスタック1の締結、一体化の邪魔にならないように、特に環状バンド22が金属製(導電性)の場合は、上部端子11または下部端子12が環状バンド22に接触しないように、環状バンド22に、上部端子11または下部端子12を避ける切り欠きや穴が必要になり、その切り欠きや穴が環状バンド22の製造コストを高めたり、環状バンド22の強度を低下させたりする。
【0090】
また、本実施の形態における電力変換回路基板16は、電力変換回路基板16における上部に、ハーネス17で下部端子12と電気的に接続される接続端子16aを備えたことにより、電力変換回路基板16における上部以外の箇所に接続端子16aを備えた場合よりも、スタック1と電力変換回路基板16を接続するハーネス17の長さをさらに短くすることができ、ハーネス17のIR損による電力ロスをさらに小さくすることができる。
【0091】
また、本実施の形態におけるスタック1の冷却水入口9が、冷却水出口10よりも上方に位置し、冷却水が、セル4aに対して上から下に向かって流れるので、スタック1の上部の温度を他の部分よりも低くすることができる。スタック1のエージング時に上部端子11を使用する際、スタック1の温度がより低い上部に集電板5の上部端子11が位置することになる。
【0092】
エージング時にスタック1の性能検査のために燃料電池システム15搭載時よりも高い電流や高い温度で発電させることがあれば、集電板5の上部端子11は、より高温になるため、不安全となる可能性が考えられる。
【0093】
本実施の形態は、スタック1の上部の温度をより低くした構成で、エージング時に上部端子11を使用することで、上部端子11の温度をより低く抑えることができる。これにより、エージング時の安全性を向上することができる。
【0094】
また、本実施の形態におけるスタック1の反応ガスマニホールド7の反応ガス入口13が、反応ガスマニホールド7の反応ガス出口14よりも上方に位置し、反応ガスが、セル4aに対して上から下に向かって流れることによって、スタック1の上部に反応ガス入口13と冷却水入口9が互いに近接して位置することになる。反応ガス入口13付近では反応ガスの濃度が高いために発電反応が集中して起こることから、この付近のスタック1の温度がより高くなるが、冷却水入口9が反応ガス入口13の付近(近傍)にあることで効率的に冷却することができ、反応ガス入口13の付近(近傍)の温度上昇を抑制することができる。
【0095】
これにより、スタック1の上部と下部の温度分布をより均一化することができるため、高温による局所的な劣化を抑制することができ、その結果、スタック1の耐久性を向上させることができる。
【0096】
また、スタック1内の反応ガス流路で凝縮水が発生した場合でも、反応ガスの流れと重力を利用して凝縮水をスタック1の反応ガス出口14から排出することができ、反応ガス流路で発生した凝縮水が反応ガスの流れを妨げることを抑制できる。
【0097】
また、本実施の形態でのスタック1のエージングは、スタック1の上部端子11と、エージング装置23とを、ハーネス17で電気的に接続してエージングを行う。
【0098】
このスタック1のエージング方法によって、下部端子12にエージング装置23をハーネス17で接続する場合よりも、スタック1とエージング装置23をハーネス17で接続する際の作業性を良好にすることができる。スタック1の端子とハーネス17との接続が
不十分なために不安全になることを抑制することができる。これにより、エージング時の作業効率と安全性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の燃料電池システムは、スタックと電力変換回路基板を接続するハーネスの長さを短くすることができ、また、エージング時の作業性を確保することができるため、家庭用コージェネレーション用をはじめとする多様な方式の燃料電池システムとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0100】
1 スタック
2 MEA
3 セパレータ
4 積層体
4a セル
5 集電板
6 端板
6a 脚部
7 反応ガスマニホールド
8 冷却水マニホールド
9 冷却水入口
10 冷却水出口
11 上部端子
12 下部端子
13 反応ガス入口
14 反応ガス出口
15 燃料電池システム
16 電力変換回路基板
16a 接続端子
17 ハーネス
23 エージング装置
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】