(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2019145230
(43)【公開日】20190829
(54)【発明の名称】電解質、電池、電子機器、電解質および電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20190802BHJP
   C04B 35/50 20060101ALI20190802BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20190802BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20190802BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20190802BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20190802BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20190802BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20190802BHJP
   C01G 33/00 20060101ALI20190802BHJP
   C01G 35/00 20060101ALI20190802BHJP
   C04B 35/624 20060101ALI20190802BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20190802BHJP
【FI】
   !H01B1/06 A
   !C04B35/50
   !H01M10/0562
   !H01M4/13
   !H01M4/62 Z
   !H01M10/0585
   !H01M10/052
   !H01B13/00 Z
   !C01G33/00 A
   !C01G35/00 C
   !C04B35/624
   !H01B1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】36
(21)【出願番号】2018025777
(22)【出願日】20180216
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区新宿四丁目1番6号
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100194102
【弁理士】
【氏名又は名称】磯部 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 均
【住所又は居所】長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコーエプソン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】横山 知史
【住所又は居所】長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコーエプソン株式会社内
【テーマコード(参考)】
4G048
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC08
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4G048AD06
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4G048AE08
5G301CA02
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5G301CD01
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5H029AL02
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5H029AM12
5H029BJ04
5H029CJ02
5H029CJ08
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5H029DJ17
5H029DJ18
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5H029HJ02
5H029HJ13
5H029HJ14
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA10
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA13
5H050EA12
5H050FA19
5H050FA20
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA02
5H050HA13
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】焼成温度が低下すると共に、粒界抵抗を低減し、リチウムイオン伝導性を向上させた電解質、電池、電子機器、電解質および電池の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の電解質3は、組成式(1)で表される結晶質のリチウム複合金属酸化物を構成する元素のうち、1種類以上の元素が、78pm以上の結晶半径を有する第1金属元素で置換されている第1電解質部31と、Liおよび第1電解質部31に含まれるLi以外の1種類以上の第2金属元素を含む、非晶質の第2電解質部32と、を備える。
Li7(La3-xNdx)Zr212 ・・・(1)
(但し、0.0<x≦0.6を満たす。)
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記組成式(1)で表される結晶質のリチウム複合金属酸化物を構成する元素のうち、1種類以上の元素が、78pm以上の結晶半径を有する第1金属元素で置換されている第1電解質部と、
Liおよび前記第1電解質部に含まれるLi以外の1種類以上の第2金属元素を含む、非晶質の第2電解質部と、を備える電解質。
Li7(La3-xNdx)Zr212 ・・・(1)
(但し、0.0<x≦0.6を満たす。)
【請求項2】
前記第1電解質部は、前記リチウム複合金属酸化物を構成する元素のうちのZrの一部が、前記第1金属元素で置換されている、請求項1に記載の電解質。
【請求項3】
前記第1電解質部は、下記組成式(2)で表される結晶質のリチウム複合金属酸化物を含む、請求項2に記載の電解質。
Li7-y(La3-xNdx)(Zr2-yy)O12 ・・・(2)
(但し、0.0<x≦0.6、0.1≦y≦1.0を満たし、Mは、前記第1金属元素を表す。)
【請求項4】
前記第1電解質部は、前記第1金属元素として、Nb、Sb、Taのうちの1種類以上を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電解質。
【請求項5】
前記第2電解質部は、前記第2金属元素として、Nb、Sb、Taのうちの1種類以上、およびLi、La、Zrを含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電解質。
【請求項6】
前記第1電解質部および前記第2電解質部に接する、Liを含む非晶質の第3電解質部を備える、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電解質。
【請求項7】
前記第3電解質部は、Li、B、Oを含む、請求項6に記載の電解質。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電解質、および活物質を含む複合体と、
前記複合体の一方の側の電極と、
前記複合体の他方の側の集電体と、を備えた電池。
【請求項9】
前記活物質は、Liを含む正極活物質である、請求項8に記載の電池。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の電池を備えた電子機器。
【請求項11】
下記組成式(1)で表される結晶質のリチウム複合金属酸化物を構成する元素と、78pm以上の結晶半径を有する第1金属元素とが、それぞれに含まれる複数種の原材料を混合して混合物を調製する工程と、
前記混合物に加熱処理を施して、結晶質の第1電解質部および非晶質の第2電解質部を形成する工程と、を備えた電解質の製造方法。
Li7(La3-xNdx)Zr212 ・・・(1)
(但し、0.0<x≦0.6を満たす。)
【請求項12】
前記原材料を溶媒に溶解させる工程を備え、前記混合物は前記溶媒を含み、
前記加熱処理は、加熱温度が500℃以上、650℃以下の第1の加熱処理と、前記第1の加熱処理の後に行われ、加熱温度が800℃以上、1000℃以下の第2の加熱処理と、を含む請求項11に記載の電解質の製造方法。
【請求項13】
下記組成式(1)で表される結晶質のリチウム複合金属酸化物を構成する元素と、78pm以上の結晶半径を有する第1金属元素とが、それぞれに含まれる複数種の原材料を溶媒に溶解させ、混合して混合物を調製する工程と、
活物質を用いて第1の成形体を形成する工程と、
前記混合物を、前記第1の成形体に含浸させた状態で加熱処理を施して反応させ、反応後に得られる結晶質の第1電解質部および非晶質の第2電解質部と、前記第1の成形体とを含む複合体を形成する工程と、
前記複合体に、集電体を形成する工程と、を備えた電池の製造方法。
Li7(La3-xNdx)Zr212 ・・・(1)
(但し、0.0<x≦0.6を満たす。)
【請求項14】
下記組成式(1)で表される結晶質のリチウム複合金属酸化物を構成する元素と、78pm以上の結晶半径を有する第1金属元素とが、それぞれに含まれる複数種の原材料を溶媒に溶解させ、混合して混合物を調製する工程と、
活物質を用いて第1の成形体を形成する工程と、
前記混合物を、前記第1の成形体に含浸させた状態で加熱処理を施して反応させ、反応後に得られる結晶質の第1電解質部および非晶質の第2電解質部と、前記第1の成形体とを含む第2の成形体を形成する工程と、
前記第2の成形体に、Li、B、Oを含む第3電解質を接触させた状態で、加熱によって前記第3電解質を溶融させ、前記第2の成形体に前記第3電解質の融液を充填する工程と、
前記第3電解質の融液が充填された前記第2の成形体を冷却して、前記第1電解質部、前記第2電解質部、第3電解質部、前記活物質を含む複合体を形成する工程と、
前記複合体に、集電体を形成する工程と、を備えた電池の製造方法。
Li7(La3-xNdx)Zr212 ・・・(1)
(但し、0.0<x≦0.6を満たす。)
【請求項15】
前記加熱処理は、加熱温度が500℃以上、650℃以下の第1の加熱処理と、前記第1の加熱処理の後に行われ、加熱温度が800℃以上、1000℃以下の第2の加熱処理と、を含む請求項13または請求項14に記載の電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質、電池、電子機器、電解質および電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無機系の電解質として、ガーネット型結晶構造の化合物を用いた電池が知られていた。例えば、特許文献1には、ガーネット型結晶構造のジルコン酸ランタンリチウムにおいて、リチウムイオン伝導性を向上させるために、ジルコニウムの一部のサイトをニオブ、タンタルなどの元素で置換したガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−202499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物では、焼結(焼成)の温度が1200℃と高温であるため、結晶粒界での副反応やリチウムの揮散が発生しやすいという課題があった。結晶粒界での副反応やリチウムの揮散が発生すると、リチウムイオン伝導性が低下するおそれがあった。また、従来よりも低温で焼成すると、結晶粒子同士の界面が十分に焼結せず、結晶粒子の粒界抵抗が低減されにくく、リチウムイオン伝導性(総イオン伝導率)が向上しにくいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例]本適用例に係る電解質は、下記組成式(1)で表される結晶質のリチウム複合金属酸化物を構成する元素のうち、1種類以上の元素が、78pm以上の結晶半径を有する第1金属元素で置換されている第1電解質部と、Liおよび第1電解質部に含まれるLi以外の1種類以上の第2金属元素を含む、非晶質の第2電解質部と、を備える。
Li7(La3-xNdx)Zr212 ・・・(1)
(但し、0.0<x≦0.6を満たす。)
【0007】
本適用例によれば、結晶質の第1電解質部と非晶質の第2電解質部とを備えることから、電解質が結晶質のみで構成され、第1電解質部同士が接合される場合と比べて、第1電解質部の結晶界面に生じる抵抗(粒界抵抗)が低減される。これに加えて、第1電解質部において、正方晶から立方晶への相転移温度が低下する。そのため、従来よりも低い温度で第1電解質部の結晶(立方晶)が成長する。したがって、従来より低温で焼成しても、第1電解質部における結晶(立方晶)の安定化が促進されて、電解質のリチウムイオン伝導性を向上させることができる。
【0008】
第1電解質部は、組成式(1)を基本構成とする結晶質のリチウム複合金属酸化物である。このようなガーネット型結晶またはガーネット類似型結晶を第1電解質部として用いることにより、電解質において、バルクのリチウムイオン伝導率(粒子バルク内伝導率)を向上させることができる。
【0009】
第1電解質部は、組成式(1)の構成元素の1種類以上が、第1金属元素で置換されている。そのため、第1金属元素を含む第1電解質部と、第2金属元素を含む第2電解質部との間において、金属元素の濃度勾配が生じて境界が曖昧な状態になり、イオンの拡散が促進される。これにより、上記の境界が明確である場合と比べて、粒界抵抗が低減されてリチウムイオン伝導性をより向上させることができる。また、第1金属元素は、比較的に高温の焼成においても第1電解質部から抜けにくく、安定したリチウムイオン伝導性を得ることができる。
【0010】
これらによって、従来よりも焼成温度が低下すると共に、粒界抵抗を低減し、リチウムイオン伝導性を向上させた電解質を提供することができる。
【0011】
上記適用例に記載の電解質において、第1電解質部は、リチウム複合金属酸化物を構成する元素のうちのZrの一部が、第1金属元素で置換されていることが好ましい。
【0012】
これによれば、Zrの一部が、第1金属元素で置換されることから、優れたリチウムイオン伝導性を実現することができる。
【0013】
上記適用例に記載の電解質において、第1電解質部は、下記組成式(2)で表される結晶質のリチウム複合金属酸化物を含むことが好ましい。
Li7-y(La3-xNdx)(Zr2-yy)O12 ・・・(2)
(但し、0.0<x≦0.6、0.1≦y≦1.0を満たし、Mは、第1金属元素を表す。)
【0014】
これによれば、Zrの一部が、第1金属元素で置換されることから、優れたリチウムイオン伝導性を実現することができる。また、組成式(2)において、yが0.1以上であることから、第2電解質部が形成されやすくなる。yが1.0以下であることから、第1金属元素のみの酸化物の生成を抑制して、リチウムイオン伝導性をより向上させることができる。
【0015】
上記適用例に記載の電解質において、第1電解質部は、第1金属元素として、Nb、Sb、Taのうちの1種類以上を含むことが好ましい。
【0016】
これによれば、第1電解質部は、リチウム複合金属酸化物を構成する元素のうち、1種類以上の元素が、Nb、Sb、Taで置換されることから、優れたリチウムイオン伝導性を実現することができる。
【0017】
上記適用例に記載の電解質において、第2電解質部は、第2金属元素として、Nb、Sb、Taのうちの1種類以上、およびLi、La、Zrを含むことが好ましい。
【0018】
これによれば、Nb、Sb、Taでは、第1電解質部の結晶格子への入りやすさに差があることから、第1電解質部から第2電解質部に亘って、Nb、Sb、Taのうちの1種類以上の金属元素の濃度勾配が生じる。すなわち、第1電解質部から第2電解質部に亘って、上記入りやすさが高い(入りやすい)金属元素は濃度が漸減し、上記入りやすさが低い(入りにくい)金属元素は濃度が漸増する。この構成により、第1電解質部と第2電解質部との境界が曖昧になって、イオンの拡散が促進される。したがって、上記の境界が明確である場合と比べて、粒界抵抗が低減されてリチウムイオン伝導性をさらに向上させることができる。
【0019】
上記適用例に記載の電解質において、第1電解質部および第2電解質部に接する、Liを含む非晶質の第3電解質部を備えることが好ましい。
【0020】
これによれば、第1電解質部は、第2電解質部に加えて第3電解質部とも接合されるため、第1電解質部の結晶界面に生じる抵抗がさらに低減される。これに加えて、電解質のリチウムイオン伝導性をいっそう向上させることができる。
【0021】
上記適用例に記載の電解質において、第3電解質部は、Li、B、Oを含むことが好ましい。
【0022】
これによれば、非晶質の第3電解質部を形成することが容易となり、電解質のリチウムイオン伝導性をよりいっそう向上させることができる。
【0023】
[適用例]本適用例に係る電池は、上記適用例に記載の電解質、および活物質を含む複合体と、複合体の一方の側の電極と、複合体の他方の側の集電体と、を備える。
【0024】
本適用例によれば、粒界抵抗を低減し、リチウムイオン伝導性を向上させた電解質を用いることから、充放電特性を向上させた電池とすることができる。
【0025】
上記適用例に記載の電池において、活物質は、Liを含む正極活物質であることが好ましい。
【0026】
これによれば、リチウム供給源となる正極活物質を備えることから、充放電特性をさらに向上させることができる。また、電池を従来よりも大容量化することができる。
【0027】
[適用例]本適用例に係る電子機器は、上記適用例に記載の電池を備える。
【0028】
本適用例によれば、充放電特性が向上し、小型で高品位な電池を電力供給源として備えた電子機器を提供することができる。
【0029】
[適用例]本適用例に係る電解質の製造方法は、下記組成式(1)で表される結晶質のリチウム複合金属酸化物を構成する元素と、78pm以上の結晶半径を有する第1金属元素とが、それぞれに含まれる複数種の原材料を混合して混合物を調製する工程と、混合物に加熱処理を施して、結晶質の第1電解質部および非晶質の第2電解質部を形成する工程と、を備える。
Li7(La3-xNdx)Zr212 ・・・(1)
(但し、0.0<x≦0.6を満たす。)
【0030】
本適用例によれば、組成式(1)で表される結晶質のリチウム複合金属酸化物を構成する元素のうちのZrの一部が、第1金属元素で置換された第1電解質部と、第2金属元素およびLi、La、Zrを含む非晶質の第2電解質部と、を同じ工程で形成することができる。詳しくは、組成式(1)のリチウム複合金属酸化物を構成するZrの一部が、第1金属元素で置換され、第1電解質部の結晶が形成される。このとき、結晶質の第1電解質部とならなかった原材料によって、第1電解質部に接合した状態で、第2金属元素を含む非晶質の第2電解質部が形成される。このような電解質の製造方法によれば、第1電解質部と第2電解質部との間では、金属元素の濃度勾配が生じ、第1電解質部と第2電解質部との境界が曖昧となって、イオンの拡散が促進される。そのため、粒界抵抗を低減し、リチウムイオン伝導性を向上させた電解質を製造することができる。また、第1電解質部と第2電解質部とを同じ工程で形成するため、電解質の製造工程を簡略化することができる。
【0031】
上記適用例に記載の電解質の製造方法において、原材料を溶媒に溶解させる工程を備え、混合物は溶媒を含み、加熱処理は、加熱温度が500℃以上、650℃以下の第1の加熱処理と、第1の加熱処理の後に行われ、加熱温度が800℃以上、1000℃以下の第2の加熱処理と、を含むことが好ましい。
【0032】
これによれば、第1電解質部と第2電解質部とが液相法によって形成される。特に、第1電解質部の結晶粒子は、混合物の溶液から結晶化されるため、固相法と比べて微細化することが容易になる。また、第1の加熱処理によって、混合物に含まれる溶媒や不純物などの有機物が分解されて低減される。そのため、第2の加熱処理において、純度を高めて第1電解質部および第2電解質部を形成することができる。また、加熱処理の温度を1000℃以下とすることにより、結晶粒界での副反応やリチウムの揮散の発生を抑えることができる。これらによって、リチウムイオン伝導性がさらに向上した電解質を製造することができる。
【0033】
[適用例]本適用例に係る電池の製造方法は、下記組成式(1)で表される結晶質のリチウム複合金属酸化物を構成する元素と、78pm以上の結晶半径を有する第1金属元素とが、それぞれに含まれる複数種の原材料を溶媒に溶解させ、混合して混合物を調製する工程と、活物質を用いて第1の成形体を形成する工程と、混合物を、第1の成形体に含浸させた状態で加熱処理を施して反応させ、反応後に得られる結晶質の第1電解質部および非晶質の第2電解質部と、第1の成形体とを含む複合体を形成する工程と、複合体に、集電体を形成する工程と、を備える。
Li7(La3-xNdx)Zr212 ・・・(1)
(但し、0.0<x≦0.6を満たす。)
【0034】
本適用例によれば、活物質を含む第1の成形体の表面を含む内部に、液相法にて第1電解質部、第2電解質部が形成されて、複合体が製造される。そのため、活物質と、第1電解質部および第2電解質部とが接して、複合体が形成される。このような構成の複合体を容易に製造できることに加えて、該構成により電解質の粒界抵抗を低減し、リチウムイオン伝導性を向上させた電池を製造することができる。
【0035】
[適用例]本適用例に係る電池の製造方法は、下記組成式(1)で表される結晶質のリチウム複合金属酸化物を構成する元素と、78pm以上の結晶半径を有する第1金属元素とが、それぞれに含まれる複数種の原材料を溶媒に溶解させ、混合して混合物を調製する工程と、活物質を用いて第1の成形体を形成する工程と、混合物を、第1の成形体に含浸させた状態で加熱処理を施して反応させ、反応後に得られる結晶質の第1電解質部および非晶質の第2電解質部と、第1の成形体とを含む第2の成形体を形成する工程と、第2の成形体に、Li、B、Oを含む第3電解質を接触させた状態で、加熱によって第3電解質を溶融させ、第2の成形体に第3電解質の融液を充填する工程と、第3電解質の融液が充填された第2の成形体を冷却して、第1電解質部、第2電解質部、第3電解質部、活物質を含む複合体を形成する工程と、複合体に、集電体を形成する工程と、を備える。
Li7(La3-xNdx)Zr212 ・・・(1)
(但し、0.0<x≦0.6を満たす。)
【0036】
本適用例によれば、活物質を含む第1の成形体の表面を含む内部に、液相法にて第1電解質部、第2電解質部が形成されて、第2の成形体が製造される。さらに、第2の成形体の表面を含む内部に、第3電解質の融液が充填されて複合体が製造される。そのため、活物質と、第1電解質部および第2電解質部と、第3電解質部とが接して、複合体が形成される。このような構成の複合体を容易に製造できることに加えて、該構成により電解質の粒界抵抗を低減し、リチウムイオン伝導性を向上させた電池を製造することができる。
【0037】
上記適用例に記載の電池の製造方法において、加熱処理は、加熱温度が500℃以上、650℃以下の第1の加熱処理と、第1の加熱処理の後に行われ、加熱温度が800℃以上、1000℃以下の第2の加熱処理と、を含むことが好ましい。
【0038】
これによれば、第1の加熱処理によって、混合物に含まれる溶媒や不純物などの有機物が分解されて低減される。そのため、第2の加熱処理において、純度を高めて第1電解質部および第2電解質部を形成することができる。また、加熱処理の温度を1000℃以下とすることにより、結晶粒界での副反応やリチウムの揮散の発生を抑えることができる。したがって、リチウムイオン伝導性がさらに向上した電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施形態1に係る電池としてのリチウム電池の構成を示す概略斜視図。
【図2】リチウム電池の構成を示す概略断面図。
【図3】電解質の構成を示す模式図。
【図4】リチウム電池の製造方法を示す工程フロー図。
【図5A】リチウム電池の製造方法を示す模式図。
【図5B】リチウム電池の製造方法を示す模式図。
【図5C】リチウム電池の製造方法を示す模式図。
【図5D】リチウム電池の製造方法を示す模式図。
【図6】実施例および比較例に係る固体電解質の組成を示す表。
【図7】実施例および比較例に係るリチウムイオン伝導率の評価結果を示す表。
【図8】実施例3のインピーダンススペクトルであるCole−Coleプロットを示すグラフ。
【図9】実施例3のX線回折チャートを示す図。
【図10】実施例3のラマン散乱スペクトルを示す図。
【図11】実施例および比較例のリチウム電池の充放電条件および評価結果を示す表。
【図12】実施形態2に係る電池としてのリチウム電池の製造方法を示す工程フロー図。
【図13】実施形態3に係るウェアラブル機器の構成を示す概略図。
【図14】変形例1に係る電池としてのリチウム電池の構成を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0041】
(実施形態1)
<電池>
まず、本実施形態に係る電池について、図1を参照して説明する。本実施形態では、電池としてリチウム電池を例に挙げて説明する。図1は、実施形態1に係る電池としてのリチウム電池の構成を示す概略斜視図である。
【0042】
図1に示すように、本実施形態のリチウム電池100は、電解質3および活物質2bを含む複合体としての正極9と、正極9の一方の側に電解質層20を介して設けられた電極としての負極30と、正極9の他方の側に接して設けられた集電体としての第1集電体41と、を備えている。
【0043】
すなわち、リチウム電池100は、順に、第1集電体41、正極9、電解質層20、負極30が積層された積層体である。電解質層20において、負極30と接する面を一面20aとし、正極9において、第1集電体41と接する面を表面9aとする。なお、電解質層20に対して、負極30を介して第2集電体(図示せず)を適宜設けてもよく、リチウム電池100は、正極9および負極30のうち少なくとも一方と接する集電体を有していればよい。
【0044】
[集電体]
第1集電体41および第2集電体は、正極9および負極30と電気化学反応を生じず、かつ電子伝導性を有している形成材料であれば、いずれも好適に用いることができる。第1集電体41および第2集電体の形成材料としては、例えば、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、およびパラジウム(Pd)からなる群からのうちの1種類の金属(金属単体)や、上記の群のうちの1種類以上の金属元素を含む合金、ITO(Tin-doped Indium Oxide)、ATO(Antimony-doped Tin Oxide)、およびFTO(Fluorine-doped Tin Oxide)などの導電性金属酸化物、窒化チタン(TiN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化タンタル(TaN)などの金属窒化物などが挙げられる。
【0045】
第1集電体41および第2集電体の形態は、電子伝導性を有する上記形成材料の薄膜の他、金属箔、板状、編み目状または格子状、導電体微粉末を粘結剤とともに混練したペーストなど、目的に応じて適当なものが選択可能である。このような第1集電体41および第2集電体の厚さは、特に限定されないが、例えば、およそ20μmである。第1集電体41および第2集電体の形成は、正極9や負極30などを形成した後であっても、あるいはそれらを形成する前であってもよい。
【0046】
[負極]
負極30が含む負極活物質(形成材料)としては、例えば、五酸化ニオブ(Nb25)、五酸化バナジウム(V25)、酸化チタン(TiO2)、酸化インジウム(In23)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)、酸化ニッケル(NiO)、ITO(Tin-doped Indium Oxide)、ATO(Antimony-doped Tin Oxide)、FTO(Fluorine-doped Tin Oxide)アルミニウム(Al)が添加された酸化亜鉛(AZO)、ガリウム(Ga)が添加された酸化亜鉛(GZO)、TiO2のアナターゼ相、Li4Ti512、Li2Ti37などのリチウム複合酸化物、リチウム(Li)、シリコン(Si)、錫(Sn)、シリコン−マンガン合金(Si−Mn)、シリコン−コバルト合金(Si−Co)、シリコン−ニッケル合金(Si−Ni)、インジウム(In)、金(Au)などの金属および合金、炭素材料、炭素材料の層間にリチウムイオンが挿入された物質などが挙げられる。
【0047】
負極30の厚さは、およそ50nmから100μm程度が好ましいが、所望の電池容量や材料特性に応じて任意に設計することが可能である。
【0048】
リチウム電池100は、例えば、円盤状であって、外形の大きさは直径約10mm、厚さは約150μmである。小型、薄型であることに加え、充放電可能であって大きな出力エネルギーが得られることから、携帯情報端末などの電力供給源(電源)として好適に用いることができる。なお、リチウム電池100の形状は円盤状であることに限定されず、例えば多角形の盤状であってもよい。このような薄型のリチウム電池100は、単体で用いてもよいし、複数のリチウム電池100を積層させて用いてもよい。積層させる場合には、リチウム電池100において、第1集電体41と、第2集電体とは必ずしも必須な構成ではなく、一方の集電体を備える構成であってもよい。
【0049】
次に、リチウム電池100に含まれる正極9および電解質層20などの構造について、図2を参照して説明する。図2は、リチウム電池の構造を示す概略断面図である。
【0050】
電解質層20は電解質3を含み、正極9は活物質2bと電解質3とを含んでいる。活物質2bは粒子状であって、複数の活物質2bの粒子が寄せ集まって、粒子状の活物質2bの間に複数の孔を有する活物質部2を構成している。
【0051】
[正極]
正極9における活物質部2の複数の孔は、活物質部2の内部で互いに網目状に連通している。また、活物質2b同士が接触することによって活物質部2における電子伝導性が確保されている。電解質3は、活物質部2の複数の孔を埋め、さらに活物質部2全体を覆って設けられている。すなわち、活物質部2と電解質3とが複合化されて、複合体(正極9)が形成されている。そのため、活物質部2が複数の孔を有さない場合や、孔内まで電解質3が設けられていない場合と比べて、活物質2bと電解質3との接触面積が大きくなる。これにより、界面抵抗が低減され、活物質部2と電解質3との界面において良好な電荷移動が可能となる。
【0052】
本実施形態のリチウム電池100のように、第1集電体41を正極9側に使用する場合に、活物質2b(活物質部2)には、リチウム(Li)を含む正極活物質であるリチウム複合金属化合物を用いる。なお、図2は活物質2bを模式的に示したものであり、実際の粒径や大きさは必ずしも同じではない。
【0053】
正極活物質として用いるリチウム複合金属化合物とは、リチウムを含み、かつ全体として2種類以上の金属元素を含む酸化物などの化合物であって、オキソ酸イオンの存在が認められないものを指している。
【0054】
リチウム複合金属化合物としては、例えば、リチウム(Li)を含み、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)のうちの1種類以上の元素を含む複合金属化合物が挙げられる。このような複合金属化合物としては、特に限定されないが、具体的には、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24、Li2Mn23、LiCr0.5Mn0.52、LiFePO4、Li2FeP27、LiMnPO4、LiFeBO3、Li32(PO43、Li2CuO2、LiFeF3、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4、NMC(Lia(NixMnyCo1-x-y)O2)、NCA(Li(NixCoyAl1-x-y)O2)などが挙げられる。また、本実施形態においては、これらのリチウム複合金属化合物の結晶内の一部原子が、他の遷移金属、典型金属、アルカリ金属、アルカリ希土類、ランタノイド、カルコゲナイド、ハロゲンなどで置換された固溶体もリチウム複合金属化合物に含むものとし、これらの固溶体も正極活物質として用いることができる。
【0055】
活物質部2の形成材料に、活物質2bとしてリチウム複合金属化合物を用いることにより、活物質2bの粒子間で電子の受け渡しが行われ、活物質2bと電解質3との間でリチウムイオンの受け渡しが行われる。これによって、活物質部2としての機能を良好に発揮させることができる。
【0056】
活物質部2は、嵩密度が50%以上、90%以下であることが好ましく、50%以上、70%以下であることがより好ましい。活物質部2がこのような嵩密度を有することによって、活物質部2の孔内の表面積を広げ、活物質部2と、電解質3との接触面積を大きくしやすくなる。これにより、リチウム電池100において、従来よりも高容量化が容易となる。
【0057】
上記の嵩密度をβ(%)、活物質部2の孔も含めた見かけの体積をv、活物質部2の質量をw、活物質2bの粒子の密度をρとすると、下記数式(a)が成り立つ。これにより嵩密度を求めることができる。
β={w/(v・ρ)}×100 ・・・(a)
【0058】
活物質部2の嵩密度を上記の範囲とするためには、活物質2bの平均粒子径(メジアン径)を、0.3μm以上、10μm以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.5μm以上、5μm以下である。活物質2bの平均粒子径は、例えば、活物質2bをノルマルオクチルアルコールに0.1質量%以上、10質量%以下の範囲の濃度となるように分散させ、光散乱式粒度分布測定装置ナノトラック(商標)UPA−EX250(製品名、マイクロトラック・ベル社)を用いて、メジアン径を求めることにより測定することが可能である。
【0059】
活物質部2の嵩密度は、活物質部2を形成する工程にて造孔材を用いることによって制御してもよい。
【0060】
活物質部2の抵抗率は、700Ω・cm以下であることが好ましい。活物質部2がこのような抵抗率を有することにより、リチウム電池100において、充分な出力を得ることができる。抵抗率は、活物質部2の表面に、電極としての銅箔を付着させ、直流分極測定を行うことにより求めることが可能である。
【0061】
活物質部2では、複数の孔が内部で網目状に連通するとともに、活物質部2同士も連結して網目構造を形成している。例えば、正極活物質であるLiCoO2は、結晶の電子伝導性に異方性があることが知られている。そのため、上記の孔が機械加工で形成されたような、特定の方向に孔が延在しているような構成では、結晶における電子伝導性の方向によっては、電子伝導性が低下することがある。これに対して、本実施形態では、活物質部2が網目構造であるため、結晶の電子伝導性またはイオン伝導性の異方性によらず、電気化学的に活性な連続表面を形成することができる。そのため、用いる形成材料の種類によらず、良好な電子伝導性を担保することができる。
【0062】
正極9では、活物質2b同士をつなぎ合わせるバインダー(結着剤)や、活物質部2の嵩密度を調節するための造孔材が含まれる量は、可能な限り低減することが好ましい。バインダーや造孔材は活物質部2(正極9)の中に残存すると、電気特性に悪影響をおよぼす場合があるため、後工程の加熱を入念に実施して除去する必要がある。具体的には、本実施形態においては、正極9を400℃で30分加熱した場合の質量減少率を、5質量%以下としている。上記質量減少率は3質量%以下がより好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、質量減少が観測されない、または測定誤差範囲内であることがより好ましい。正極9がこのような質量減少率を有すると、所定の加熱条件において、蒸発する溶媒や吸着水、燃焼または酸化されて気化する有機物などの量が低減される。これによって、リチウム電池100の電気特性(充放電特性)をさらに向上させることができる。
【0063】
正極9の質量減少率は、熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)を用い、所定の加熱条件における加熱前後の正極9の質量値から求めることが可能である。
【0064】
リチウム電池100において、第1集電体41から法線方向に遠ざかる方向(図2の上方)を上方向としたとき、正極9の上側の表面は、電解質層20と接している。正極9の下側の表面9aは、第1集電体41と接している。正極9において、電解質層20と接する上側が一方の側であり、第1集電体41と接する下側が他方の側である。
【0065】
正極9の表面9aには、活物質部2が露出している。そのため、活物質部2と第1集電体41とは接して設けられ、双方は電気的に接続されている。電解質3は、活物質部2の孔内まで設けられて、活物質部2の孔内を含む、第1集電体41と接する面以外の活物質部2の表面と接している。このような構成の正極9では、第1集電体41と活物質部2との接触面積より、活物質部2と電解質3との接触面積が大きくなる。これによって、活物質部2と電解質3との界面が、電荷移動のボトルネックとなりにくく、そのため、正極9として良好な電荷移動を確保しやすく、正極9を用いたリチウム電池100において、高容量化や高出力化が可能になる。
【0066】
[電解質]
次に、正極9に含まれる電解質3の構成について、図3を参照して説明する。図3は、電解質の構成を示す模式図である。
【0067】
電解質3は、下記組成式(1)で表される結晶質のリチウム複合金属酸化物を構成する元素のうち、1種類以上の元素が、78pm(ピコメートル)以上の結晶半径を有する第1金属元素で置換されている第1電解質部31と、リチウム(Li)および第1電解質部31に含まれるリチウム(Li)以外の1種類以上の第2金属元素を含む、非晶質の第2電解質部32と、第1電解質部31および第2電解質部32に接する、リチウム(Li)を含む非晶質の第3電解質部33と、を有している。
Li7(La3-xNdx)Zr212 ・・・(1)
(但し、0.0<x≦0.6を満たす。)
【0068】
第1電解質部31は、組成式(1)に示すようにLa(ランタン)の一部がNd(ネオジム)で置換される。そのため、第1電解質部31は、La(ランタン)の一部がNd(ネオジム)で置換されていない場合と比べて、正方晶−立方晶転移温度(相転移温度)が低下することで、より低い温度で立方晶転移後の結晶が成長しやすくなる。正方晶から立方晶への相転移は、一般的に、微少な吸熱を伴う二次転移であり、相転移に必要な温度および熱量によって起こる。また、ラマン散乱分析やリチウムイオン伝導性の評価により、正方晶においては、リチウムの動きが制限されている一方で、立方晶においては、リチウムが動きやすくなりリチウムイオン伝導性が向上することが分かっている。
【0069】
詳しくは、図3に示すように、電解質3は、第1電解質部31を含む第1の部分3Aと、第2電解質部32を含む第2の部分3Bと、第3電解質部33を含む第3の部分3Cと、を有している。第3の部分3Cは、電解質3の内部で連通している。
【0070】
このような電解質3の構造は、例えば透過型電子顕微鏡などによって確認することが可能である。本実施形態の電解質3においては、第1の部分3Aと第2の部分3Bとの境界は必ずしも明確ではない。第1電解質部31および第2電解質部32に含まれる1種類以上の金属元素の濃度は、第1の部分3Aと第2の部分3Bとの間で連続的に変化しており、該金属元素には濃度勾配が存在している。そのため、第1の部分3Aと第2の部分3Bとの境界が曖昧な状態となっている。
【0071】
この濃度勾配は、上記組成式(1)の結晶質のリチウム複合金属酸化物に対する、第1金属元素の、結晶格子への入りやすさの差に由来している。すなわち、第1電解質部31から第2電解質部32に亘って、上記入りやすさが高い金属元素は濃度が漸減し、上記入りやすさが低い金属元素は濃度が漸増する。言い換えれば、第1金属元素のうちで上記入りやすさが低い金属元素が第2金属元素となり、第1電解質部31に含まれるリチウム(Li)などと共に第2電解質部32が形成される。したがって、このような濃度勾配を生じさせるためには、第1電解質部31および第2電解質部32の形成時に、第1金属元素を2種類以上用いる。
【0072】
なお、図3は、このような電解質3の構成について、透過型電子顕微鏡を用いた構造観察による状態を模式的に図示したものであって、必ずしも実際の状態と一致するものではない。
【0073】
ここで、本実施形態のリチウム電池100においては、第3電解質部33は必ずしも必須ではない。すなわち、第3電解質部33を用いずに、第1電解質部31および第2電解質部32で電解質3を形成してもよい。
【0074】
第1電解質部31は、上記組成式(1)で表されるリチウム複合金属酸化物のうちのジルコニウム(Zr)の一部が、第1金属元素で置換され、下記組成式(2)で表される結晶質のリチウム複合金属酸化物を含むことが好ましい。
Li7-y(La3-xNdx)(Zr2-yy)O12 ・・・(2)
(但し、0.0<x≦0.6、0.1≦y≦1.0を満たし、Mは、第1金属元素を表す。)
【0075】
これにより、優れたリチウムイオン伝導性を発現させることができる。また、組成式(2)において、yが0.1以上であることから、第2電解質部32が形成されやすくなる。yが1.0以下であることから、上記金属元素のみの酸化物の生成を抑制して、リチウムイオン伝導性をより向上させることができる。
【0076】
78pm以上の結晶半径を有する第1金属元素としては、例えば、マグネシウム(Mg)、スカンジウム(Sc)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)などが挙げられる。これらの中でも、第1電解質部31は、ジルコニウム(Zr)の置換のされやすさや、リチウムイオン伝導性を向上させる効果などに優れる、ニオブ(Nb)、アンチモン(Sb)、タンタル(Ta)のうちの1種類以上を含むことが好ましい。これらの元素の結晶半径は、結晶・分子構造設計プログラム CrystalMaker(登録商標)(Hulinks社)によれば、ニオブ(Nb)が78pm、アンチモン(Sb)が90pm、タンタル(Ta)が78pmである。また、これらの他に、ガーネット型結晶またはガーネット類似型結晶を形成可能な金属元素を用いてもよい。
【0077】
第2電解質部32は、上述した第1電解質部31に含まれるリチウム複合金属酸化物を用いて形成された非晶質であって、第2金属元素として、ニオブ(Nb)、アンチモン(Sb)、タンタル(Ta)のうちの1種類以上、およびリチウム(Li)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)を含んでいる。
【0078】
第3電解質部33の形成材料としては、融点が、活物質2b、第1電解質部31、および第2電解質部32の融点より低い固体電解質を用いてもよい。具体的には、例えば、LiBH4(268℃)、LiF(848℃)、LiCl(605℃)、LiBr(552℃)、LiI(469℃)、Li3BO3(817℃)、Li2+x1-xx3(0.01<x<0.5)(680℃〜750℃)などの酸化物、ハロゲン化物、水素化物、ホウ化物あるいは、それらの部分置換体の非晶質、および部分結晶化ガラスなどが挙げられる。上述した化合物名に付記した括弧内の温度は、化合物の融点である。これらの中でも、リチウム(Li)、ホウ素(B)、酸素(O)を含む固体電解質を用いることが好ましく、リチウム(Li)、ホウ素(B)、炭素(C)、酸素(O)を含む固体電解質を用いることがより好ましい。これによれば、非晶質の第3電解質部33を形成することが容易となり、電解質3のリチウムイオン伝導性をよりいっそう向上させることができる。
【0079】
また、上記の化合物の一部原子が他の遷移金属、典型金属、アルカリ金属、アルカリ希土類、ランタノイド、カルコゲナイト、ハロゲンなどで置換された固溶体も、第3電解質部33の形成材料として用いてもよい。上述した固体電解質は、1種類単独または2種類以上を混合して用いてもよい。
【0080】
本実施形態では、第3電解質部33の形成材料として、Li2+x1-xx3(0.01<x<0.5)を用いる。具体的には、Li2.20.80.23などが挙げられる。上記の形成材料を第3電解質部33に用いることにより、リチウムの偏析によるデンドライトの発生を抑えて、緻密な構造の複合体(正極9)が形成される。これにより、正極9におけるリチウムイオン伝導性をさらに向上させることができる。
【0081】
電解質3におけるリチウムイオン伝導性の指標としての総イオン伝導率は、2.0×10-4S/cm以上であることが好ましい。電解質3がこのようなイオン伝導率を有することにより、活物質部2の表面から離れた位置の電解質3に含まれるイオンが、活物質部2の表面に到達することが容易になる。これにより、上記イオンも活物質部2における電池反応に寄与することが可能となり、リチウム電池100をより高容量とすることができる。
【0082】
ここで、電解質3のイオン伝導率とは、電解質3自身の伝導率としての粒子バルク内伝導率と、電解質3が結晶質である場合に、結晶の粒子間の伝導率としての粒界伝導率と、それらの総和である総イオン伝導率をいう。また、電解質3における粒界抵抗の指標は粒界伝導率であり、粒界伝導率が増加すれば、粒界抵抗は低減される。電解質3のイオン伝導率の測定方法は後述する。
【0083】
[電解質層]
図2に戻り、電解質層20は、上述したように、正極9と負極30との間に設けられている。電解質層20は、電解質3を含み、活物質2bを含んでいない。電解質層20には、上述した、正極9と同様な電解質3を用いることができる。活物質2bを含まない電解質層20が、正極9と負極30との間に介在することにより、正極9と負極30とが電気的に接続されにくくなり、短絡の発生が抑えられる。正極9および電解質層20は、電解質3を含むため、製造時に双方の電解質3を同時に形成してもよい。すなわち、リチウム電池100の製造工程においては、活物質部2の形成と、電解質層20の形成とを一度に行ってもよい。また、電解質層20を、電解質3とは異なる形成材料を用いて形成してもよい。その場合には、正極9と電解質層20とを、別々の製造工程にて形成する。
【0084】
電解質層20の厚さは、0.1μm以上、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.2μm以上、10μm以下である。電解質層20の厚さを上記範囲とすることによって、電解質層20の内部抵抗を低減し、かつ正極9と負極30との間での、短絡の発生を抑制することができる。
【0085】
なお、電解質層20の一面20a(負極30と接する面)に、必要に応じて各種成形法、加工法を組み合わせて、トレンチ、グレーチング、ピラーなどの凹凸構造を設けてもよい。
【0086】
<電池の製造方法>
本実施形態に係る電池としてのリチウム電池100の製造方法について、図4、図5A、図5B、図5C、図5Dを参照して説明する。図4は、リチウム電池の製造方法を示す工程フロー図である。図5Aから図5Dは、リチウム電池の製造方法を示す模式図である。なお、図4に示した工程フローは一例であって、これに限定されるものではない。
【0087】
図4に示すように、本実施形態のリチウム電池100の製造方法は、以下の工程を備えている。工程S1では、下記組成式(1)で表される結晶質のリチウム複合金属酸化物を構成する元素と、78pm以上の結晶半径を有する第1金属元素とが、それぞれに含まれる複数種の原材料を溶媒に溶解させ、混合して混合物を調製する。工程S2では、活物質2bを用いて第1の成形体としての活物質部2を形成する。工程S3では、混合物を、活物質部2に含浸させた状態で加熱処理を施して反応させ、反応後に得られる結晶質の第1電解質部31および非晶質の第2電解質部32と、活物質部2とを含む第2の成形体を形成する。工程S4では、第2の成形体に、リチウム(Li)、ホウ素(B)、酸素(O)を含む第3電解質33aを接触させた状態で、加熱によって第3電解質33aを溶融させ、第2の成形体に第3電解質33aの融液を充填する。工程S5では、第3電解質33aの融液が充填された第2の成形体を冷却して、第1電解質部31、第2電解質部32、第3電解質部33、活物質部2(活物質2b)を含む正極9を形成する。工程S6では、正極の一方の側に電解質層20を介して負極を形成する。工程S7では、正極9の他方の側(表面9a)に第1集電体41を形成する。
Li7(La3-xNdx)Zr212 ・・・(1)
(但し、0.0<x≦0.6を満たす。)
【0088】
ここで、リチウム電池100の製造方法には、本実施形態の電解質3のうちの、第1電解質部31および第2電解質部32の製造方法が含まれる。すなわち、本実施形態の第1電解質部31および第2電解質部32の製造方法は、上記組成式(1)で表される結晶質のリチウム複合金属酸化物を構成する元素と、第1金属元素とが、それぞれに含まれる複数種の原材料を混合して混合物を調製する工程と、混合物に加熱処理を施して、結晶質の第1電解質部31および非晶質の第2電解質部32を形成する工程と、を備えている。これらの工程は、上記リチウム電池100の製造方法のうち、工程S1と工程S3とに含まれている。なお、本実施形態の第1電解質部31および第2電解質部32の製造方法は、液相法を例に挙げて説明する。
【0089】
[混合物の調製]
工程S1では、第1電解質部31および第2電解質部32の原材料としての前駆体を、溶媒に溶解させて溶液を作製した後、それらを混合して混合物を調製する。すなわち、混合物は、上記原材料(前駆体)を溶解する溶媒を含んでいる。第1電解質部31および第2電解質部32の前駆体には、上記組成式(1)のリチウム複合金属酸化物を構成する元素を含む金属化合物と、第1金属元素を含む金属化合物とを用いる。
【0090】
上記組成式(1)のリチウム複合金属酸化物を構成する元素を含む金属化合物としては、リチウム化合物、ランタン化合物、ネオジム化合物、ジルコニウム化合物を用いる。これらの化合物の種類は特に限定されないが、それぞれ、リチウム、ランタン、ネオジム、ジルコニウムの金属塩または金属アルコキシドの1種類以上であることが好ましい。
【0091】
リチウム化合物としては、例えば、塩化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウムなどのリチウム金属塩、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムプロポキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムノルマルブトキシド、リチウムイソブトキシド、リチウムセカンダリーブトキシド、リチウムターシャリーブトキシド、ジピバロイルメタナトリチウムなどのリチウムアルコキシドなどが挙げられ、この群のうちの1種類以上が採用可能である。
【0092】
ランタン化合物としては、例えば、塩化ランタン、硝酸ランタン、酢酸ランタンなどのランタン金属塩、ランタントリメトキシド、ランタントリエトキシド、ランタントリプロポキシド、ランタントリイソプロポキシド、ランタントリノルマルブトキシド、ランタントリイソブトキシド、ランタントリセカンダリーブトキシド、ランタントリターシャリーブトキシド、トリス(ジピバロイルメタナト)ランタンなどのランタンアルコキシドなどが挙げられ、この群のうちの1種類以上が採用可能である。
【0093】
ネオジム化合物としては、例えば、臭化ネオジム、塩化ネオジム、フッ化ネオジム、蓚酸ネオジム、酢酸ネオジム、硝酸ネオジム、硫酸ネオジム、トリメタクリルネオジム、ネオジムトリアセチルアセテート、トリ2−エチルヘキサン酸ネオジムなどのネオジム金属塩、トリイソプロポキシネオジム、トリメトキシエトキシネオジムなどのネオジムアルコキシドなどが挙げられ、この群のうちの1種類以上が採用可能である。
【0094】
ジルコニウム化合物としては、例えば、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウムなどのジルコニウム金属塩、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムテトライソブトキシド、ジルコニウムテトラセカンダリーブトキシド、ジルコニウムテトラターシャリーブトキシド、テトラキス(ジピバロイルメタナト)ジルコニウムなどのジルコニウムアルコキシドなどが挙げられ、この群のうちの1種類以上が採用可能である。
【0095】
78pm以上の結晶半径を有する金属元素を含む金属化合物としては、ニオブ化合物、アンチモン化合物、タンタル化合物などを用いる。これらの化合物の種類は特に限定されないが、それぞれ、ニオブ、アンチモン、タンタルなどの金属塩または金属アルコキシドの1種類以上であることが好ましい。
【0096】
ニオブ化合物としては、例えば、塩化ニオブ、オキシ塩化ニオブ、蓚酸ニオブ、ニオブトリアセチルアセトナート、ニオブペンタセチルアセトナートなどのニオブ金属塩、ニオブペンタエトキシド、ニオブペンタプロポキシド、ニオブペンタイソプロポキシド、ニオブペンタセカンダリーブトキシドなどのニオブアルコキシドが挙げられ、この群のうちの1種類以上が採用可能である。
【0097】
アンチモン化合物としては、例えば、臭化アンチモン、塩化アンチモン、フッ化アンチモンなどのアンチモン金属塩、アンチモントリメトキシド、アンチモントリエトキシド、アンチモントリイソプロポキシド、アンチモントリノルマルプロポキシド、アンチモントリイソブトキシド、アンチモントリノルマルブトキシドなどのアンチモンアルコキシドが挙げられ、この群のうちの1種類以上が採用可能である。
【0098】
タンタル化合物としては、例えば、塩化タンタル、臭化タンタルなどのタンタル金属塩、タンタルペンタメトキシド、タンタルペンタエトキシド、タンタルペンタイソプロポキシド、タンタルペンタノルマルプロポキシド、タンタルペンタイソブトキシド、タンタルペンタノルマルブトキシド、タンタルペンタセカンダリーブトキシド、タンタルペンタターシャリーブトキシドなどのタンタルアルコキシドが挙げられ、この群のうちの1種類以上が採用可能である。
【0099】
第1電解質部31および第2電解質部32の前駆体を含む溶液が含む溶媒としては、上述した金属塩または金属アルコキシドを溶解可能な、水あるいは有機溶媒の単溶媒、または混合溶媒を用いる。有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、アリルアルコール、エチレングルコールモノブチルエーテル(2−ブトキシエタノール)などのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチルなどのエステル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、ギ酸、酢酸、2−エチル酪酸、プロピオン酸などの有機酸類、トルエン、o−キシレン、p−キシレンなどの芳香族類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類などが挙げられる。
【0100】
上述した第1電解質部31および第2電解質部32の前駆体を、以上の溶媒に溶解して、第1電解質部31および第2電解質部32の前駆体を、それぞれ含む複数の溶液を調製する。次いで、複数の溶液を混合して混合物を調製する。このとき、混合物には、第1電解質部31および第2電解質部32の組成に従った所定の割合で、リチウム、ランタン、ネオジム、ジルコニウムに加えて、ニオブ、アンチモン、タンタルのうちの1種類以上を含有させる。このとき、それぞれを含む複数の溶液を調製せずに、前駆体を混合してから溶媒に溶解し、混合物を調製してもよい。
【0101】
なお、後工程における加熱によって、上記組成中のリチウムが揮散することがある。そのため、加熱の条件に合わせて、あらかじめ混合物中のリチウム化合物の含有量を、所望の組成に対して0.05モル%から30モル%程度過剰に配合してもよい。
【0102】
混合物の調製は、具体的には、例えば図5Aに示すように、パイレックス製ビーカー81に、第1電解質部31および第2電解質部32の前駆体を、それぞれ含む複数の溶液を入れる。そこに、磁石式撹拌子(マグネチックスターラーバー)82を入れ、マグネチックスターラー83にて撹拌しながら混合する。これにより、混合物3Xを得る。そして、工程S2へ進む。
【0103】
[第1の成形体の形成]
工程S2では、第1の成形体としての活物質部2を形成する。本実施形態では、活物質部2の形成材料(活物質2b)として、リチウム複合金属化合物のLiCoO2を用いる。まず、LiCoO2(シグマアルドリッチ社)の粒子に、湿式遠心分離機LC−1000型(製品名、Krettek社)を用いてノルマルブタノール(ブタノール)中で分級操作を行い、平均粒子径が5μmの活物質2bを得る。次に、図5Bに示すように、成形型84を使用して活物質2bを圧縮成型する。具体的には、LiCoO2の粉末を、624MPaの圧力にて成形型84(内径10mmの排気ポート付きダイス)を用いて2分間加圧し、LiCoO2(活物質2b)の円盤状成形物(直径10mm、実効径8mm、厚さ150μm)を作製する。
【0104】
その後、活物質2bの上記成形物を基板に載置し、900℃にて8時間かけて熱処理を施して、活物質部2を得る。この熱処理によって活物質2bの粒子同士が焼結され、上記成形物の形状が保持されやすくなる。また、活物質2b同士が接触して結合し、電子の移動経路が形成される。上記基板の形成材料としては、特に限定されないが、活物質2bや電解質3と反応しにくい材料を用いることが好ましく、例えば酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0105】
熱処理の温度は、例えば850℃以上であって、活物質2bの融点未満の温度が好ましい。これにより、活物質2b同士を焼結させて、一体化した多孔質の活物質部2が得られる。熱処理の温度を850℃以上とすることによって、焼結が十分に進行するとともに、活物質2bの結晶内の電子伝導性が確保される。熱処理の温度を活物質2bの融点未満とすることによって、活物質2bの結晶内のリチウムイオンが過剰に揮散することを抑え、リチウムのイオン伝導性が維持される。これにより、正極9の電気的な容量を確保することが可能となる。熱処理の温度は、より好ましくは875℃以上、1000℃以下である。これによって、正極9を用いるリチウム電池100において、適切な出力および容量を付与することができる。
【0106】
熱処理の時間は、例えば5分以上、36時間以下とすることが好ましい。より好ましくは、4時間以上、14時間以下である。以上の処理によって、複数の孔を有する、活物質部2が得られる。そして、工程S3へ進む。
【0107】
[第2の成形体の形成]
工程S3では、工程S1で調製した混合物3Xを活物質部2に接触、含浸させて加熱処理を施し、混合物3Xの反応により、結晶質の第1電解質部31および非晶質の第2電解質部32を製造する。これにより、活物質部2の複数の孔内を含む表面に、第1電解質部31および第2電解質部32が形成され、第2の成形体が得られる。
【0108】
まず、混合物3Xと活物質部2とを接触させて、混合物3Xを活物質部2へ含浸させる。具体的には、図5Cに示すように、基板86上に活物質部2を載置する。基板86は、例えば酸化マグネシウム製である。
【0109】
次いで、活物質部2に、マイクロピペット87などを用いて、活物質部2の孔内を含む表面に、混合物3Xを塗布する。このとき、作製した第2の成形体の嵩密度が、およそ75%以上、85%以下程度となるように混合物3Xの塗布量を調節する。換言すれば、活物質部2の空隙(孔)のおよそ半分の体積が、第1電解質部31および第2電解質部32で充填されるように混合物3Xの塗布量を調節する。第2の成形体の嵩密度は、上述した活物質部2の嵩密度と同様にして求めることができる。
【0110】
混合物3Xの塗布方法としては、マイクロピペット87による滴下の他に、例えば、浸漬、吹き付け、毛細管現象による浸透、スピンコートなどの手段を用いることが可能であり、これらを組み合わせて実施してもよい。混合物3Xは流動性を有するため、毛細管現象によって活物質部2の孔内へも到達しやすくなっている。活物質部2の孔内を含む表面全体に、混合物3Xが濡れ広がるように塗布する。
【0111】
ここで、電解質層20を電解質3と同一の形成材料で形成する場合には、活物質部2の片面に、混合物を過剰に塗布してもよい。この状態で後述する加熱処理を施すことにより、第1電解質部31および第2電解質部32に活物質部2が完全に埋没して、電解質層20が形成される。
【0112】
次いで、活物質部2に含浸させた混合物3Xに、加熱処理を施す。加熱処理は、加熱温度が500℃以上、650℃以下の第1の加熱処理と、第1の加熱処理の後に行われ、加熱温度が800℃以上、1000℃以下の第2の加熱処理と、を含んでいる。第1の加熱処理により、混合物3Xに含まれる溶媒や不純物などの有機物が分解されて低減される。そのため、第2の加熱処理において、純度が高められて反応が促進され、第1電解質部31および第2電解質部32を形成することができる。また、加熱処理の温度を1000℃以下とすることにより、結晶粒界での副反応やリチウムの揮散の発生を抑えることができる。これらによって、リチウムイオン伝導性をさらに向上させることができる。なお、加熱処理は、乾燥大気下、酸化雰囲気下、不活性ガス雰囲気下などで行ってもよい。加熱処理の方法としては、例えば、電気マッフル炉などを用いて行う。
【0113】
次いで、加熱処理の後に室温まで徐冷する。加熱処理によって混合物3Xにおける反応が進行し、その後の冷却によって、上記組成式(2)に示した、ジルコニウムの一部がニオブ、アンチモン、タンタルの少なくとも1種で置換されたリチウム複合金属酸化物を含む結晶質の第1電解質部31と、非晶質の第2電解質部32とが形成される。すなわち、結晶質の第1電解質部31の形成に伴い、第1電解質部31の形成に寄与しなかった残分によって非晶質の第2電解質部32が形成される。
【0114】
このとき、上記組成式(2)のリチウム複合金属酸化物に対して、ニオブ、アンチモン、タンタルによる結晶格子への入りやすさには差がある。この差によって、上述した第1の部分3Aと第2の部分3B(共に図3参照)との境界における、ニオブ、アンチモン、タンタルの濃度勾配が生じる。つまり、第1の部分3A側では、結晶格子に入りやすい金属元素の濃度が高く、第2の部分3B側では、結晶格子に入りにくい金属元素の濃度が高くなる。
【0115】
結晶格子への入りやすさは、ニオブ、アンチモン、タンタルでは、ニオブが最も高く(入りやすく)、次いでアンチモンが高く、タンタルは入りにくい。例えば、第1電解質部31および第2電解質部32を形成する際に、ニオブとアンチモンとの2種を用いると、第1の部分3A(第1電解質部31)では、ニオブの濃度が高くなり、第2の部分3B(第2電解質部32)では、逆にアンチモンの濃度が高くなる。アンチモンとタンタルとでは、第1の部分3Aではアンチモンの濃度が高く、第2の部分3Bではタンタルの濃度が高くなる。また、ニオブ、アンチモン、タンタルの3種を用いると、第1の部分3A(第1電解質部31)では、ニオブの濃度が高くなり、第2の部分3B(第2電解質部32)では、逆にアンチモン、タンタルの濃度が高くなる。
【0116】
このような結晶格子への入りやすさは、結晶半径の大きさと、金属元素が有するジルコニウムサイトへの侵入エネルギーの大きさによる。したがって、結晶質の第1電解質部31と非晶質の第2電解質部32との境界を曖昧な状態で形成するには、第1金属元素として、結晶半径が78pm以上であって、ジルコニウムサイトへの侵入エネルギーが異なる、少なくとも2種の金属元素をそれぞれ含む金属化合物を用いる。
【0117】
以上により、活物質部2、第1電解質部31、第2電解質部32が複合化された第2の成形体が得られる。第2の成形体は、嵩密度がおよそ75%以上、85%以下程度であり、複数の孔を有している。なお、本実施形態では、液相法を用いて第1電解質部31および第2電解質部32を形成したが、これに限定されない。第1電解質部31、第2電解質部32などを、固相法を用いて形成してもよい。そして、工程S4へ進む。
【0118】
[第3電解質の充填]
工程S4では、第2の成形体の孔内に、第3電解質部33の形成材料を含む第3電解質33aの融液を充填する。本実施形態では、第3電解質33aとして、Li2.20.80.23(以下、「LCBO」ともいう。)を用いる。まず、LCBOの粒子(紛体)を作製する。具体的には、例えば、Li2CO3およびLi3BO3をモル混合比4:1で混合し、工程S2で用いた成形型84を用い、30MPaの圧力にて2分間加圧し錠剤型とする。その後、高温炉に入れ、650℃にて4時間焼成して、LCBOの固形物を作製する。この固形物を、乾式ミルなどを用いて粉砕し、粉末状としてLCBO粒子(第3電解質33aの粒子)を得る。
【0119】
ここで、作製したLCBOの粒子について、熱重量示差熱分析装置TG−DTA2000SA(製品名、ブルカーAXS社)を用いて融点を測定した結果、およそ685℃であった。融点の測定条件については、実施例にて説明する。なお、粒子状の第3電解質33aの製造方法は、上述した方法に限定されず、公知の方法が採用可能である。
【0120】
次に、第2の成形体に第3電解質33aの融液を含浸させる。具体的には、図5Dに示すように、第2の成形体9Xを、支持体89を介して坩堝88内に載置する。さらに第2の成形体9Xの上面9b(天井面)に、粒子状の第3電解質33aを載置する。
【0121】
坩堝88は、例えば酸化マグネシウム製であり、支持体89は、例えば金(Au)製である。本実施形態では、第2の成形体9Xの上面9bと対向する面(下面)が、正極9(図1参照)の表面9aとなる。
【0122】
上面9bに載置する第3電解質33aの質量は、第2の成形体9Xの複数の孔を埋めるに足る質量以上とすることが好ましい。また、上面9bを、活物質部2が第1電解質部31および第2電解質部32に完全に埋没した面としてもよい。これによれば、上記質量を調節して、正極9と同時に電解質層20を形成することが可能である。この場合には、上面9bが、電解質層20の一面20aとなる。本実施形態では、正極9と電解質層20とを同時に形成する。
【0123】
上述した状態で、粒子状の第3電解質33aを単独、または粒子状の第3電解質33aおよび第2の成形体9Xを含む全体を加熱する。この際の加熱温度は、第3電解質33aの融点より高く、第1電解質部31の融点より低ければ、任意に設定することが可能である。本実施形態では、加熱温度を700℃とする。加熱方法としては、電気マッフル炉、レーザーアニールなどが挙げられる。なお、粒子状の第3電解質33aから成形ペレットを作製し、この成形ペレットを第2の成形体9Xに載置して加熱してもよい。
【0124】
第3電解質33aは融点を超えて加熱されることにより、溶融して融液となる。融液は、第2の成形体9Xの上面9bから孔内に浸透しながら、第2の成形体9X全体を包含する。
【0125】
ここで、第2の成形体9Xへの第3電解質33aの充填方法は、上述した第3電解質33aの融液を浸透させる方法に限定されない。その他の形成方法としては、例えば、第3電解質33aの前駆体を含む溶液を用いた、浸漬、滴下、吹き付け、毛細管現象による浸透、スピンコートなどが挙げられ、後工程にて加熱を施して、上記溶液中の溶媒の除去と第3電解質33aの焼成を行ってもよい。そして、工程S5へ進む。
【0126】
[正極の形成]
工程S5では、第3電解質33aの融液および第2の成形体9Xを放冷して、第3電解質33aの融液を固化させる。このとき、第3電解質33aの融液は、第2の成形体9Xにおける、活物質部2の表面に設けられた、第1電解質部31および第2電解質部32と接触した状態で固化する。これにより、活物質部2、第1電解質部31、第2電解質部32、第3電解質部33が複合化された正極9が形成される。
【0127】
なお、第3電解質部33を用いずに、第1電解質部31および第2電解質部32で電解質3を形成してもよい。その場合は、工程S3を反復して実施することにより、第2の成形体9Xの空隙を充填して複合体(正極9)を形成する。そして、工程S6へ進む。
【0128】
[負極の形成]
工程S6では、電解質層20の一面20a側に負極30を形成する。負極30の形成方法は、有機金属化合物の加水分解反応などを伴う、所謂ゾル・ゲル法や、有機金属熱分解法などの溶液プロセスの他、適切な金属化合物とガス雰囲気を用いたCVD法、ALD法、固体電解質粒子のスラリーを使用したグリーンシート法やスクリーン印刷法、エアロゾルデポジション法、適切なターゲットとガス雰囲気を用いたスパッタリング法、PLD法、真空蒸着法、めっき、溶射など、を用いることができる。また、負極30の形成材料としては、上述した負極活物質が採用可能であり、本実施形態ではリチウム(Li)金属を用いる。そして、工程S7へ進む。
【0129】
[第1集電体の形成]
工程S7では、まず、正極9の電解質層20を形成した面(一面20a)と対向する面(下面)側を研磨する。このとき、研磨加工によって、活物質部2を確実に露出させて、表面9aを形成する。これにより、活物質部2と、この後に形成する第1集電体41との電気的な接続を確保可能にする。なお、上述した工程において、正極9の下面側に活物質部2が十分に露出している場合は、この研磨加工を省略してもよい。
【0130】
次に、表面9aに第1集電体41を形成する。第1集電体41の形成方法としては、適当な接着層を別途設けて接着する方法、PVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、PLD(Pulsed Laser Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法およびエアロゾルデポジション法などの気相堆積法、ゾル・ゲル法、有機金属熱分解法およびめっきなどの湿式法などが挙げられ、形成面との反応性や電気回路に望まれる電気伝導性、電気回路設計に応じて、適当な方法を用いることができる。また、第1集電体41の形成材料としては、上述した形成材料が採用可能である。以上の工程を経てリチウム電池100が製造される。
【0131】
以上に述べたように、上記実施形態に係る電解質3、電解質3の製造方法、リチウム電池100、リチウム電池100の製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0132】
電解質3によれば、結晶質の第1電解質部31と非晶質の第2電解質部32とを備えることから、電解質3が結晶質のみで構成されて、第1電解質部31同士が接合される場合と比べて、第1電解質部31の結晶界面に生じる抵抗が低減される。これに加えて、第1電解質部31において、正方晶から立方晶への相転移温度が低下する。そのため、従来よりも低い温度で第1電解質部31の結晶が成長する。したがって、従来より低温で焼成しても、第1電解質部31における結晶(立方晶)の安定化が促進されるため、電解質3のリチウムイオン伝導性を向上させることができる。
【0133】
第1電解質部31は、上記組成式(1)を基本構成とする結晶質のリチウム複合金属酸化物であり、このようなガーネット型結晶またはガーネット類似型結晶を第1電解質部31として用いることにより、電解質3において、バルクのリチウムイオン伝導率(粒子バルク内伝導率)を向上させることができる。また、リチウム金属による還元反応が生じにくくなるため、電解質3の安定性も向上させることができる。
【0134】
第1電解質部31のジルコニウム(Zr)の一部が、ニオブ(Nb)、アンチモン(Sb)、タンタル(Ta)のうちの1種類以上の金属元素によって置換されるため、第1電解質部31から第2電解質部32に亘って、ニオブ(Nb)、アンチモン(Sb)、タンタル(Ta)のうちの1種類以上の金属元素の濃度勾配が生じる。すなわち、第1金属元素を含む第1電解質部31から、第2金属元素を含む第2電解質部32に亘って、結晶格子への入りやすさが高い金属元素は濃度が漸減し、上記入りやすさが低い金属元素は濃度が漸増する。この構成により、第1電解質部31と第2電解質部32との境界が曖昧な状態になり、イオンの拡散が促進される。これにより、上記の境界が明確である場合と比べて、粒界抵抗が低減されてリチウムイオン伝導性をより向上させることができる。また、結晶半径が78pm以上の、ニオブ(Nb)、アンチモン(Sb)、タンタル(Ta)などの金属元素は、比較的に高温の焼成においても第1電解質部31から抜けにくく、安定したリチウムイオン伝導性を得ることができる。
【0135】
第3電解質部33を用いることにより、第1電解質部31が、第2電解質部32および第3電解質部33と接合されるため、第1電解質部31の結晶界面に生じる抵抗がさらに低減される。これに加えて、電解質3のリチウムイオン伝導性をいっそう向上させることができる。また、第3電解質部33の形成材料としてLCBOを用いることにより、非晶質の第3電解質部33を形成することが容易となる。
【0136】
電解質3、リチウム電池100の製造方法によれば、第1電解質部31と第2電解質部32とを同じ工程で形成することができる。詳しくは、結晶質の第1電解質部31とならなかった原材料によって、非晶質の第2電解質部32が、第1電解質部31に接合した状態で形成される。これにより、第1金属元素を含む第1電解質部31と第2金属元素を含む第2電解質部32との間には、上記金属元素の濃度勾配が生じ、第1電解質部31と第2電解質部32との境界が曖昧なものとなる。また、第1電解質部31と第2電解質部32とを同じ工程で形成するため、電解質3、リチウム電池100の製造工程を簡略化することができる。
【0137】
液相法を用いることから、第1電解質部31の結晶粒子が、混合物3Xの溶液から結晶化される。そのため、固相法と比べて、結晶粒子を微細化することが容易になる。また、第1の加熱処理(500℃以上、650℃以下)によって、混合物3Xに含まれる溶媒や不純物などの有機物が分解されて低減される。そのため、第2の加熱処理(800℃以上、1000℃以下)において、純度を高めて反応を促進し、第1電解質部31および第2電解質部32を形成することができる。また、加熱処理の温度を1000℃以下とすることにより、結晶粒界での副反応やリチウムの揮散の発生を抑えることができる。これらによって、リチウムイオン伝導性がさらに向上した電解質3、リチウム電池100を製造することができる。
【0138】
活物質部2(活物質2b)を含む第1の成形体の表面を含む孔内に、液相法にて第1電解質部31、第2電解質部32が形成されて、第2の成形体9Xが製造される。さらに、第2の成形体9Xの表面を含む孔内に、第3電解質33aの融液が充填されて正極9が形成される。そのため、活物質部2と、第1電解質部31および第2電解質部32とが接し、第1電解質部31および第2電解質部32と第3電解質部33とが接して、正極9が形成される。このような構成の正極9を容易に製造できることに加えて、該構成により電解質3の粒界抵抗を低減することができる。
【0139】
リチウム電池100によれば、粒界抵抗を低減し、リチウムイオン伝導性を向上させた電解質3を用いることから、リチウム電池100の充放電特性を向上させることができる。また、活物質2bとして、リチウム(Li)を含む正極活物質を用いることから、充放電特性のさらなる向上と、リチウム電池100の大容量化が可能となる。
【0140】
次に、上記実施形態の電解質としての固体電解質について実施例と比較例とを示し、上記実施形態の効果をより具体的に説明する。図6は、実施例および比較例に係る固体電解質の組成を示す表である。なお、下記の実験における秤量は、分析用天秤ME204T(メトラー・トレド社)を用いて0.1mgの単位まで行った。
【0141】
(実施例および比較例)
<金属化合物溶液の調製>
まず、リチウム化合物、ランタン化合物、ネオジム化合物、ジルコニウム化合物、ニオブ化合物、アンチモン化合物、タンタル化合物および溶媒を用いて、それぞれの金属化合物を含む金属元素源として、以下の金属化合物溶液を調製した。
【0142】
[1mol/kg 硝酸リチウムの2−ブトキシエタノール溶液]
マグネチックスターラーバー(磁石式撹拌子)を入れた30gのパイレックス(Pyrex:CORNING社商標)製試薬瓶へ、純度99.95%の硝酸リチウム(関東化学社 3N5)1.3789gと、2−ブトキシエタノール(エチレングルコールモノブチルエーテル)(関東化学社 鹿特級)18.6211gとを秤量した。次いで、ホットプレート機能付きマグネチックスターラーに載せ、190℃にて1時間撹拌しながら、硝酸リチウムを2−ブトキシエタノールに完全に溶解し、室温(約20℃)まで徐冷して、1mol/kg濃度の硝酸リチウムの2−ブトキシエタノール溶液を得た。なお、硝酸リチウムの純度は、イオンクロマトグラフィー質量分析計を用いて測定することが可能である。
【0143】
[1mol/kg 硝酸ランタン・六水和物の2−ブトキシエタノール溶液]
マグネチックスターラーバーを入れた30gのパイレックス製試薬瓶へ、硝酸ランタン・六水和物(関東化学社 4N)8.6608gと、2−ブトキシエタノール11.3392gとを秤量した。次いで、ホットプレート機能付きマグネチックスターラーに載せ、140℃にて30分間撹拌しながら、硝酸ランタン・六水和物を2−ブトキシエタノールに完全に溶解し、室温まで徐冷して、1mol/kg濃度の硝酸ランタン・六水和物の2−ブトキシエタノール溶液を得た。
【0144】
[1mol/kg 硝酸ネオジム,含水の2−ブトキシエタノール溶液]
マグネチックスターラーバーを入れた20gのパイレックス製試薬瓶へ、硝酸ネオジム,含水(n=5:高純度化学研究所社、4N)4.2034gと、2−ブトキシエタノール5.7966gとを秤量した。次いで、ホットプレート機能付きマグネチックスターラーに載せ、140℃にて30分間撹拌しながら、硝酸ネオジム,含水(n=5)を2−ブトキシエタノールに完全に溶解し、室温まで徐冷して、1mol/kg濃度の硝酸ネオジム,含水(n=5)の2−ブトキシエタノール溶液を得た。なお、用いた硝酸ネオジム,含水の水和数nは、燃焼実験による質量減少の結果から、5であった。
【0145】
[1mol/kg ジルコニウムテトラノルマルブトキシドのブタノール溶液]
マグネチックスターラーバーを入れた20gのパイレックス製試薬瓶へ、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド(和光純薬工業社)3.8368gと、ブタノール(ノルマルブタノール)6.1632gとを秤量した。次いで、マグネチックスターラーに載せ、室温にて30分間撹拌しながら、ジルコニウムテトラノルマルブトキシドをブタノールに完全に溶解して、1mol/kg濃度のジルコニウムテトラノルマルブトキシドのブタノール溶液を得た。
【0146】
[1mol/kg ニオブペンタエトキシドの2−ブトキシエタノール溶液]
マグネチックスターラーバーを入れた20gのパイレックス製試薬瓶へ、ニオブペンタエトキシド(和光純薬工業社)3.1821gと、2−ブトキシエタノール6.8179gとを秤量した。マグネチックスターラーに載せ、室温にて30分間撹拌しながら、ニオブペンタエトキシドを2−ブトキシエタノールに完全に溶解して、1mol/kg濃度のニオブペンタエトキシドの2−ブトキシエタノール溶液を得た。
【0147】
[1mol/kg アンチモントリノルマルブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液]
マグネチックスターラーバーを入れた20gのパイレックス製試薬瓶へ、アンチモントリノルマルブトキシド(和光純薬工業社)3.4110gと、2−ブトキシエタノール6.5890gとを秤量した。マグネチックスターラーに載せ、室温にて30分間撹拌しながら、アンチモントリノルマルブトキシドを2−ブトキシエタノールに完全に溶解して、1mol/kg濃度のアンチモントリノルマルブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液を得た。
【0148】
[1mol/kg タンタルペンタノルマルブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液]
マグネチックスターラーバーを入れた20gのパイレックス製試薬瓶へ、タンタルペンタノルマルブトキシド(高純度化学研究所社)5.4640gと、2−ブトキシエタノール4.5360gとを秤量した。マグネチックスターラーに載せ、室温にて30分間撹拌しながら、タンタルペンタノルマルブトキシドを2−ブトキシエタノールに完全に溶解して、1mol/kg濃度のタンタルペンタノルマルブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液を得た。
【0149】
<混合物の調製>
次に、実施例および比較例において、図6に示した第1電解質部および第2電解質部の組成に従って、混合物としての第1電解質部および第2電解質部の前駆体を含む溶液を調製した。
【0150】
[実施例1および実施例2のLi6.9La2.95Nd0.05Zr1.9Nb0.05Sb0.0512の前駆体を含む溶液]
実施例1および実施例2では、Li6.9La2.95Nd0.05Zr1.9Nb0.05Sb0.0512の前駆体を含む溶液を調製する。まず、ガラス製ビーカーへ、1mol/kg濃度の硝酸リチウムの2−ブトキシエタノール溶液8.2800g、1mol/kg濃度の硝酸ランタン・六水和物の2−ブトキシエタノール溶液2.9500g、1mol/kg濃度の硝酸ネオジム,含水(n=5)の2−ブトキシエタノール溶液0.0500g、1mol/kg濃度のジルコニウムテトラノルマルブトキシドのブタノール溶液1.9000g、1mol/kg濃度のニオブペンタエトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.0500g、1mol/kg濃度のアンチモントリノルマルブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.0500gを秤量し、マグネチックスターラーバーを投入した。次いで、マグネチックスターラーを用いて、室温にて30分間撹拌し、実施例1および実施例2の混合物を得た。
【0151】
[実施例3および実施例4のLi6.9La2.95Nd0.05Zr1Ta0.3Sb0.712の前駆体を含む溶液]
実施例3および実施例4では、Li6.9La2.95Nd0.05Zr1Ta0.3Sb0.712の前駆体を含む溶液を調製する。まず、ガラス製ビーカーへ、1mol/kg濃度の硝酸リチウムの2−ブトキシエタノール溶液8.2800g、1mol/kg濃度の硝酸ランタン・六水和物の2−ブトキシエタノール溶液2.9500g、1mol/kg濃度の硝酸ネオジム,含水(n=5)の2−ブトキシエタノール溶液0.0500g、1mol/kg濃度のジルコニウムテトラノルマルブトキシドのブタノール溶液1.0000g、1mol/kg濃度のタンタルペンタノルマルブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.3000g、1mol/kg濃度のアンチモントリノルマルブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.7000gを秤量し、マグネチックスターラーバーを投入した。次いで、マグネチックスターラーを用いて、室温にて30分間撹拌し、実施例3および実施例4の混合物を得た。
【0152】
[実施例5および実施例6のLi6La2.4Nd0.6Zr1Nb0.3Ta0.712の前駆体を含む溶液]
実施例5および実施例6では、Li6La2.4Nd0.6Zr1Nb0.3Ta0.712の前駆体を含む溶液を調製する。まず、ガラス製ビーカーへ、1mol/kg濃度の硝酸リチウムの2−ブトキシエタノール溶液7.2000g、1mol/kg濃度の硝酸ランタン・六水和物の2−ブトキシエタノール溶液2.4000g、1mol/kg濃度の硝酸ネオジム,含水(n=5)の2−ブトキシエタノール溶液0.6000g、1mol/kg濃度のジルコニウムテトラノルマルブトキシドのブタノール溶液1.0000g、1mol/kg濃度のニオブペンタエトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.3000g、1mol/kg濃度のタンタルペンタノルマルブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.7000gを秤量し、マグネチックスターラーバーを投入した。次いで、マグネチックスターラーを用いて、室温にて30分間撹拌し、実施例5および実施例6の混合物を得た。
【0153】
[実施例7および実施例8のLi6.9La2.4Nd0.6Zr1.9Nb0.05Sb0.0512の前駆体を含む溶液]
実施例7および実施例8では、Li6.9La2.4Nd0.6Zr1.9Nb0.05Sb0.0512の前駆体を含む溶液を調製する。まず、ガラス製ビーカーへ、1mol/kg濃度の硝酸リチウムの2−ブトキシエタノール溶液8.2800g、1mol/kg濃度の硝酸ランタン・六水和物の2−ブトキシエタノール溶液2.4000g、1mol/kg濃度の硝酸ネオジム,含水(n=5)の2−ブトキシエタノール溶液0.6000g、1mol/kg濃度のジルコニウムテトラノルマルブトキシドのブタノール溶液1.9000g、1mol/kg濃度のニオブペンタエトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.0500g、1mol/kg濃度のアンチモントリノルマルブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.0500gを秤量し、マグネチックスターラーバーを投入した。次いで、マグネチックスターラーを用いて、室温にて30分間撹拌し、実施例7および実施例8の混合物を得た。
【0154】
[実施例9および実施例10のLi6.2La2.94Nd0.06Zr1.2Ta0.4Sb0.412の前駆体を含む溶液]
実施例9および実施例10では、Li6.2La2.94Nd0.06Zr1.2Ta0.4Sb0.412の前駆体を含む溶液を調製する。まず、ガラス製ビーカーへ、1mol/kg濃度の硝酸リチウムの2−ブトキシエタノール溶液7.4400g、1mol/kg濃度の硝酸ランタン・六水和物の2−ブトキシエタノール溶液2.9400g、1mol/kg濃度の硝酸ネオジム,含水(n=5)の2−ブトキシエタノール溶液0.0600g、1mol/kg濃度のジルコニウムテトラノルマルブトキシドのブタノール溶液1.2000g、1mol/kg濃度のタンタルペンタノルマルブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.4000g、1mol/kg濃度のアンチモントリノルマルブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.4000gを秤量し、マグネチックスターラーバーを投入した。次いで、マグネチックスターラーを用いて、室温にて30分間撹拌し、実施例9および実施例10の混合物を得た。
【0155】
[実施例11のLi6.3La2.95Nd0.05Zr1.3Ta0.2Sb0.512の前駆体を含む溶液]
実施例11では、Li6.3La2.95Nd0.05Zr1.3Ta0.2Sb0.512の前駆体を含む溶液を調製する。まず、ガラス製ビーカーへ、1mol/kg濃度の硝酸リチウムの2−ブトキシエタノール溶液7.5600g、1mol/kg濃度の硝酸ランタン・六水和物の2−ブトキシエタノール溶液2.9500g、1mol/kg濃度の硝酸ネオジム,含水(n=5)の2−ブトキシエタノール溶液0.0500g、1mol/kg濃度のジルコニウムテトラノルマルブトキシドのブタノール溶液1.3000g、1mol/kg濃度のタンタルペンタノルマルブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.2000g、1mol/kg濃度のアンチモントリノルマルブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.5000gを秤量し、マグネチックスターラーバーを投入した。次いで、マグネチックスターラーを用いて、室温にて30分間撹拌し、実施例11の混合物を得た。
【0156】
[比較例1のLi7La2.4Nd0.6Zr212の前駆体を含む溶液]
比較例1では、Li7La2.4Nd0.6Zr212の前駆体を含む溶液を調製する。まず、ガラス製ビーカーへ、1mol/kg濃度の硝酸リチウムの2−ブトキシエタノール溶液8.4000g、1mol/kg濃度の硝酸ランタン・六水和物の2−ブトキシエタノール溶液2.4000g、1mol/kg濃度の硝酸ネオジム,含水(n=5)の2−ブトキシエタノール溶液0.6000g、1mol/kg濃度のジルコニウムテトラノルマルブトキシドのブタノール溶液2.0000gを秤量し、マグネチックスターラーバーを投入した。次いで、マグネチックスターラーを用いて、室温にて30分間撹拌し、比較例1の混合物を得た。
【0157】
[比較例2のLi6.5La3Zr1.5Nb0.25Sb0.2512の前駆体を含む溶液]
比較例2では、Li6.5La3Zr1.5Nb0.25Sb0.2512の前駆体を含む溶液を調製する。まず、ガラス製ビーカーへ、1mol/kg濃度の硝酸リチウムの2−ブトキシエタノール溶液7.8000g、1mol/kg濃度の硝酸ランタン・六水和物の2−ブトキシエタノール溶液3.0000g、1mol/kg濃度のジルコニウムテトラノルマルブトキシドのブタノール溶液1.5000g、1mol/kg濃度のニオブペンタエトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.2500g、1mol/kg濃度のアンチモントリノルマルブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.2500gを秤量し、マグネチックスターラーバーを投入した。次いで、マグネチックスターラーを用いて、室温にて30分間撹拌し、比較例2の混合物を得た。
【0158】
[比較例3のLi6.3La3Zr1.3Ta0.2Sb0.512の前駆体を含む溶液]
比較例3では、Li6.3La3Zr1.3Ta0.2Sb0.512の前駆体を含む溶液を調製する。まず、ガラス製ビーカーへ、1mol/kg濃度の硝酸リチウムの2−ブトキシエタノール溶液7.5600g、1mol/kg濃度の硝酸ランタン・六水和物の2−ブトキシエタノール溶液3.0000g、1mol/kg濃度のジルコニウムテトラノルマルブトキシドのブタノール溶液1.3000g、1mol/kg濃度のタンタルペンタノルマルブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.2000g、1mol/kg濃度のアンチモントリノルマルブトキシドの2−ブトキシエタノール溶液0.5000gを秤量し、マグネチックスターラーバーを投入した。次いで、マグネチックスターラーを用いて、室温にて30分間撹拌し、比較例3の混合物を得た。
【0159】
実施例1から実施例11、比較例1から比較例3の混合物(前駆体を含む溶液)では、後工程の加熱によるリチウムの揮散分(脱離分)を勘案し、各所定の理論組成に対して、モル比で1.2倍となるように1mol/kg濃度の硝酸リチウムの2−ブトキシエタノール溶液を配合した。他の金属化合物溶液は、理論組成に対して、等モル比となるように配合した。
【0160】
<固体電解質ペレットの作製>
以上で調製した、実施例1、実施例3、実施例5、実施例7、実施例9、実施例11、比較例1、比較例2、比較例3の混合物(前駆体を含む溶液)を用いて、評価用の固体電解質ペレットを作製する。まず、内径50mmφ×高さ20mmのチタン製シャーレに、前駆体を含む溶液を入れる。これをホットプレートに載せ、ホットプレートの設定温度を180℃として1時間加熱し、溶媒を除去する。続いて、ホットプレートの設定温度を360℃として30分間加熱し、含まれる有機成分の大部分を燃焼により分解させる。その後、ホットプレートの設定温度を540℃として1時間加熱し、残存する有機成分を燃焼、分解させる。その後、ホットプレート上で室温まで徐冷して、540℃仮焼成体を得る。
【0161】
次に、540℃仮焼成体をメノウ乳鉢に移して充分に粉砕、混合する。そこから0.2000gを秤量して、0.624kN/mm2(624MPa)の圧力にて成形型(内径10mmの排気ポート付きダイス)を用いて5分間加圧し、540℃仮焼成体ペレット(540℃仮焼成体の円盤状成形物)を作製する。なお、実施例11および比較例3については、後述する熱分析(相転移温度および融点の測定)のみを行うため、540℃仮焼成体を粉砕、混合した状態の試料を用いる。
【0162】
さらに、540℃仮焼成体ペレットを酸化マグネシウム製のルツボに入れ、酸化マグネシウム製の蓋をして、電気マッフル炉にて900℃で8時間焼成を施す。次いで、電気マッフル炉を室温まで徐冷してペレットを取り出し、直径約9.5mm、厚さ約800μmの評価用固体電解質ペレットとする。
【0163】
以上の操作を、実施例および比較例の前駆体を含む溶液について行い、各固体電解質ペレットを作製した。なお、実施例2、実施例4、実施例6、実施例8、実施例10は、それぞれ実施例1、実施例3、実施例5、実施例7、実施例9と第1電解質部および第2電解質部が同一組成であるため、評価を省略した。
【0164】
<固体電解質の評価>
[リチウムイオン伝導性]
実施例1、3、5、7、9および比較例1、比較例2の固体電解質ペレットについて、以下の方法にて、リチウムイオン伝導性の指標としてリチウムイオン伝導率の評価を行い、その結果を図7に示した。
【0165】
固体電解質ペレットの表裏両面に、リチウム蒸着にて8mmφの金電極(イオン活性化電極)を作製した。次いで、インピーダンスアナライザーSI1260(ソーラトロン社)を用いて、交流インピーダンス測定を行った。測定時のAC振幅は10mV、測定周波数は107Hzから10-1Hzとした。得られたインピーダンススペクトルであるCole−Coleプロットの一例として、実施例3を用いて説明する。図8は、実施例3の固体電解質ペレットの表裏両面に、リチウム蒸着にて8mmφのリチウム電極(イオン活性化電極)を作製した試料の、インピーダンススペクトルであるCole−Coleプロットを示すグラフである。図8においては、横軸はインピーダンスの実数成分(Z’)、縦軸はインピーダンスの虚数成分(Z”)を示している。実施例1、3、5、7、9および比較例1、比較例2のインピーダンススペクトル(Cole−Coleプロット)では、粒子バルク内成分と粒界成分とが一体となっており分離できなかった。そのため、総イオン伝導率のみ算出して、図7に示した。
【0166】
リチウムイオン伝導性について、図7を参照して説明する。図7は、実施例および比較例に係るリチウムイオン伝導率の評価結果を示す表である。当評価を行った実施例および比較例では、上述した通り、粒子バルク内成分と粒界成分とが一体となっており、分離できなかった。そのため、図7における粒子バルク内成分および粒界成分の欄は、「−」と表記した。すなわち、これらの水準では粒界抵抗が低減されていることが示された。また、実施例における総イオン伝導率は、2.0×10-4S/cm以上が確保された。特に、実施例3および実施例9の総イオン伝導率は、5.0×10-4S/cm以上と、良好な数値が得られた。これにより、実施例の固体電解質ペレットでは、リチウムイオン伝導性が向上していることが示された。
【0167】
一方、比較例1および比較例2における総イオン伝導率は、2.0×10-4S/cm未満となり、実施例よりもリチウムイオン伝導性が劣っていることが分かった。
【0168】
[XRD分析]
実施例および比較例の固体電解質ペレットについて、X線回折(XRD)分析を行った。具体的には、X線回折分析装置MRD(フィリップス社)を用いて、夾雑物の副生などを調査した。代表例として実施例3のX線回折チャートを図9に示した。
【0169】
固体電解質ペレット中の夾雑物の副生などの調査結果について、図9を参照して説明する。図9は、実施例3(固体電解質ペレット)のX線回折チャートを示す図である。図9においては、横軸は2θ、縦軸は強度を示している。図9に示したように、実施例3では、ガーネット型結晶構造を持つLi6.9La2.95Nd0.05Zr1Ta0.3Sb0.712と同一の回折ピークのみが観察され、夾雑物に由来する回折ピークは検出されなかった。すなわち、実施例3においては、夾雑物が未検出であり、夾雑物の含有量がX線回折分析装置の検出下限以下であることが分かった。その他の実施例および比較例の固体電解質ペレットについても、実施例3と同様に、夾雑物の発生が抑えられたガーネット型結晶構造であることが分かった。
【0170】
[ラマン散乱分析]
実施例および比較例の固体電解質ペレットについて、ラマン散乱分析を行った。具体的には、ラマン分光装置S−2000(日本電子社)を用いてラマン散乱スペクトルを取得し、固体電解質ペレットの結晶構造を確認した。代表例として実施例3のラマン散乱スペクトルを図10に示した。
【0171】
固体電解質ペレットの結晶構造について、図10を参照して説明する。図10は、実施例3(固体電解質ペレット)のラマン散乱スペクトルを示す図である。図10においては、横軸は波数、縦軸は強度(上方が強度大)を示している。図10に示したように、実施例3では、370cm-1付近の24dサイト、260cm-1付近の48gサイトに由来するラマン散乱スペクトルが、ブロードになっている。これは、実施例3の固体電解質ペレットでは、結晶構造が立方晶ガーネット型構造を有していることを示している。その他の実施例および比較例2の固体電解質ペレットについても、立方晶ガーネット型結晶構造であることが分かった。これに対し、比較例1の固体電解質ペレットは、結晶構造が正方晶であることが分かった。
【0172】
[熱分析]
実施例11および比較例3の540℃仮焼成体試料について、熱分析により正方晶−立方晶転移温度および融点を測定した。具体的には、上述した熱重量示差熱分析装置TG−DTA2000SA(製品名、ブルカーAXS社)を用いて、540℃仮焼成体試料20mgをアルミナ製サンプルパンに秤量した。ブランク水準を空の上記サンプルパンとし、測定条件は、温度範囲を25℃から1300℃、昇温速度を10℃/分、測定雰囲気を乾燥空気(流量100ml/分)として測定を実施した。
【0173】
上記測定の結果、正方晶−立方晶転移温度は、実施例11が874℃、比較例3が908℃であった。また、融点は、実施例11が1163℃、比較例3が1043℃であった。これにより、実施例11は、ネオジム(Nd)を含むことによって、正方晶−立方晶転移温度が低下すること、融点が上昇することが示された。
【0174】
<リチウム電池の作製>
実施例1から実施例10、比較例2の混合物(前駆体を含む溶液)を用いて、それぞれリチウム電池を作製した。具体的には、正極活物質としてLiCoO2を、負極としてリチウム箔(厚さ約150μm)を、第1集電体および第2集電体として銅箔(厚さ約100μm)をそれぞれ用いた。正極の厚さは約150μm、電解質層の厚さは約15μm、実効径は約8mmとした。なお、比較例1については、上述したように固体電解質ペレットの総イオン伝導率が2.6×10-7と低いため、リチウム電池としての評価は省略した。
【0175】
ここで、実施例1、実施例3、実施例5、実施例7、実施例9は、第3電解質部を用いず、第1の成形体の形成(工程S2)を繰り返して、第1電解質部および第2電解質部にて電解質を形成し、リチウム電池を作製した。これに対して、実施例2、実施例4、実施例6、実施例8、実施例10、比較例2では、第3電解質部としてLCBOを用いて、上述した方法によりリチウム電池を作製した。
【0176】
<電池特性評価>
実施例および比較例のリチウム電池について、25℃環境下で充放電を行い、電池特性の指標として放電容量維持率を評価した。その際の充放電条件を図11に示した。図11は、実施例および比較例のリチウム電池の充放電条件および評価結果を示す表である。
【0177】
図11に示したように、実施例1、実施例3、実施例5、実施例7、実施例9では、充放電電流を50μA(充放電レート0.1C)とし、実施例2、実施例4、実施例6、実施例8、実施例10では、充放電電流を150μA(充放電レート0.3C)とした。比較例2では、充放電電流を20μA(充放電レート0.04C)とした。
【0178】
上記の充放電を繰り返した際の充放電容量を測定した。具体的には、初期(1回目)の充放電容量と、充放電を10サイクル繰り返した後(10回目)の充放電容量を測定し、充放電1回目に対する充放電10回目の放電容量維持率を計算した。その結果を図11に示した。
【0179】
図11に示したように、実施例1から実施例10のリチウム電池では、いずれも放電容量維持率が90%を確保できることが分かった。これにより、実施例のリチウム電池は、安定したサイクル特性を有し、電池特性に優れることが示された。
【0180】
一方、比較例2のリチウム電池では、放電容量維持率70%を確保できず、実施例と比べてサイクル特性が安定せず、電池特性が劣ることが分かった。
【0181】
(実施形態2)
<電池の製造方法>
本実施形態に係る電池としてのリチウム電池の製造方法について、図12を参照して説明する。図12は、実施形態2に係る電池としてのリチウム電池の製造方法を示す工程フロー図である。本実施形態の製造方法には、第1電解質部および第2電解質部の製造方法が含まれる。なお、図12に示した工程フローは一例であって、これに限定されるものではない。また、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。
【0182】
本実施形態のリチウム電池の製造方法は、第1の成形体(活物質部2)を形成せずに、第1電解質部および第2電解質部の形成材料である仮焼成体と、活物質2bとから、直接的に複合体としての正極を形成する製造方法である。
【0183】
[混合物の調製]
図12に示した工程S11では、実施形態1と同様にして、第1電解質部および第2電解質部の原材料としての前駆体を含む混合物を調製する。
【0184】
[仮焼成体の作製]
工程S12では、混合物から仮焼成体を作製する。具体的には、混合物に第1の加熱処理を施して、溶媒の揮発による除去と、有機成分の燃焼または熱分解による除去とを行う。加熱温度は、500℃以上、650℃以下とする。次いで、得られた混合物の固形物を粉砕、混合して粉体状の仮焼成体を作製する。
【0185】
工程S13では、紛体状の仮焼成体と、活物質とを混合して混合体を調製する。まず、活物質2bを準備する。本実施形態においても、活物質として、実施形態1と同様に分級操作を行ったLiCoO2を用いる。次いで、紛体状の仮焼成体0.0550gと、LiCoO20.0450gとを充分に撹拌、混合して0.1000gの混合体とする。
【0186】
工程S14では、複合体としての正極を形成する。具体的には、成形型84を使用して、混合体を圧縮成形する。例えば、成形型84(図5B参照)(内径10mmの排気ポート付きダイス)を用いて、1019MPaの圧力にて2分間加圧し、混合体の円盤状成形物(直径10mm、実効径8mm、厚さ350μm)を作製する。
【0187】
その後、円盤状成形物を基板などに載置し、第2の加熱処理を施す。第2の加熱処理における加熱温度は、800℃以上、1000℃以下とし、活物質2bの粒子同士の焼結と、結晶質の第1電解質および非晶質の第2電解質の形成とを促進させる。加熱処理の時間は、例えば5分以上、36時間以下とすることが好ましい。より好ましくは、4時間以上、14時間以下である。
【0188】
これにより、活物質2bから活物質部2が形成されて電子の移動経路が形成されると共に、活物質部2、第1電解質部、第2電解質部が複合化された正極が形成される。
【0189】
工程S15では、電解質層を形成してから負極を形成する。次いで、工程S16で第1集電体を形成し、本実施形態のリチウム電池を製造する。工程S15以降では、実施形態1と同様な製造方法が採用可能である。
【0190】
以上に述べたように、本実施形態に係るリチウム電池の製造方法によれば、実施形態1での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。第1電解質部および第2電解質部の形成材料である仮焼成体と、活物質2bとから、直接的に正極を形成することから、800℃以上の加熱処理が1回で済むなど、製造工程を簡略化することができる。
【0191】
(実施形態3)
<電子機器>
本実施形態に係る電子機器について、図13を参照して説明する。本実施形態では、電子機器として、ウェアラブル機器を例に挙げて説明する。図13は、実施形態3に係る電子機器としてのウェアラブル機器の構成を示す概略図である。
【0192】
図13に示すように、本実施形態のウェアラブル機器400は、バンド310を用いて、人体の、例えば手首WRに腕時計のように装着され、人体に係る情報を入手する情報機器である。ウェアラブル機器400は、電池305、表示部325、センサー321、処理部330を備えている。電池305には、上記実施形態のリチウム電池を用いている。
【0193】
バンド310は、装着時に手首WRに密着するように、ゴムなどの可撓性を備えた樹脂を用いた帯状を成している。バンド310の端部には、手首WRの太さに対応して結合位置を調整可能な結合部(図示せず)が設けられている。
【0194】
センサー321は、バンド310において、装着時に手首WRに触れるよう、バンド310の内面側(手首WR側)に配置されている。センサー321は、手首WRと触れることによって、人体の脈拍や血糖値などに関する情報を入手し、処理部330へ出力する。センサー321としては、例えば光学センサーが用いられる。
【0195】
処理部330は、バンド310に内蔵され、センサー321および表示部325と電気的に接続されている。処理部330としては、例えば集積回路(IC)が用いられる。処理部330は、センサー321からの出力に基づいて、脈拍や血糖値などの演算処理を行って、表示部325に表示データを出力する。
【0196】
表示部325は、処理部330から出力された、脈拍や血糖値などの表示データを表示する。表示部325としては、例えば受光型の液晶表示装置を用いる。表示部325は、ウェアラブル機器400の装着時に、表示データを装着者が読み取れるように、バンド310の外面側(センサー321が配置された内面と対向する側)に配置されている。
【0197】
電池305は、表示部325、センサー321、処理部330へ電力を供給する電力供給源として機能する。電池305は、着脱可能な状態にてバンド310に内蔵されている。
【0198】
以上の構成により、ウェアラブル機器400は、手首WRから装着者の脈拍や血糖値に係る情報を入手し、演算処理などを経て、脈拍や血糖値などの情報として表示することができる。また、ウェアラブル機器400は、リチウムイオン伝導性が向上し、小型ながら大きな電池容量を有する、上記実施形態のリチウム電池を適用しているため、軽量化が可能であり、稼働時間を伸長させることができる。さらには、上記実施形態のリチウム電池は、全固体型の二次電池であるため、充電による繰り返しの使用が可能であることに加え、電解液などの漏洩の懸念がないため、長期間かつ安全に使用が可能なウェアラブル機器400を提供することができる。
【0199】
本実施形態では、ウェアラブル機器400として腕時計型のウェアラブル機器を例示したが、これに限定されるものではない。ウェアラブル機器は、例えば、足首、頭、耳、腰などに装着されるものであってもよい。
【0200】
また、電力供給源としての電池305(上記実施形態のリチウム電池)が適用される電子機器は、ウェアラブル機器400に限定されない。その他の電子機器としては、例えば、ヘッドマウントディスプレイなどの頭部装着型ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、携帯電話機、携帯情報端末、ノート型パソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレイヤー、ワイヤレスヘッドホン、携帯ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器は、例えば、データ通信機能、ゲーム機能、録音再生機能、辞書機能などの他の機能を有していてもよい。
【0201】
また、本実施形態の電子機器は、一般消費者向けの用途に限定されず、産業用途へも適用が可能である。さらに、上記実施形態のリチウム電池が適用される機器は、電子機器に限定されない。例えば、上記実施形態のリチウム電池を、移動体の電力供給源として適用してもよい。移動体としては、具体的には、自動車、バイク、フォークリフト、無人飛行機等の飛行体などが挙げられる。これによれば、イオン伝導性が向上した電池を、電力供給源として備えた移動体を提供することができる。
【0202】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0203】
(変形例1)
本変形例に係る電池について、図14を参照して説明する。本変形例では、電池としてリチウム電池を例に挙げて説明する。図14は、変形例1に係る電池としてのリチウム電池の構成を示す概略断面図である。
【0204】
図14に示すように、本変形例のリチウム電池200は、一対の集電体241,242の間に、正極209、電解質層220、負極230が挟持されたものである。
【0205】
電解質層220は、結晶質の第1電解質部221と、非晶質の第2電解質部222とを含む。第1電解質部221および第2電解質部222は、実施形態1の電解質と同様な形成材料を用いて形成することが可能である。
【0206】
電解質層220を形成する方法としては、例えばグリーンシート法が採用可能である。具体的には、粒子状の第1電解質部221の原材料を含むスラリーを用い、仮焼成を施してシートを形成する。該スラリーは、第1電解質部221の原材料の他に、結着剤や造孔材などを含んでいる。次いで、第2電解質部222を構成する元素を含む金属化合物と、該金属化合物を溶解可能な溶媒とを含む電解質前駆体溶液を調製する。上記シートに電解質前駆体溶液を含浸させ、乾燥、焼成を繰り返した後に、800℃以上、1000℃以下の温度で加熱処理を施す。なお、上記シートに電解質前駆体溶液を含浸させた後、第3電解質の融液を含浸させて、第3電解質部を形成してもよい。第3電解質(第3電解質部の形成材料)としては、実施形態1と同様なものが採用可能である。
【0207】
これにより、上記シートの内部において、第1電解質部221の粒子の間に、非晶質の第2電解質部222が充電される。それと共に、第1電解質部221と第2電解質部222との間では、第1電解質部221に含まれる金属元素の濃度勾配が生じる。そのため、第1電解質部221と第2電解質部222との境界が曖昧となり、イオンの拡散が促進される。
【0208】
正極209を形成する方法としては、例えばグリーンシート法が採用可能である。具体的には、実施形態1と同様な活物質部2を構成する正極活物質(活物質2b)を用い、シート状に形成した電解質層220に積層して形成してもよい。同様にして、負極230を形成する方法としては、例えばグリーンシート法により、実施形態1の負極30を構成する負極活物質を用いて、シート状の電解質層220に積層して形成してもよい。このようにして作製した正極209、電解質層220、負極230が積層されたシート状の積層体を、所望の大きさおよび形状に型抜きすることによって、ペレット状の電池セルが得られる。
【0209】
上記電池セルに集電体241,242を形成する方法としては、実施形態1と同様に、適当な接着層を別途設けて接着する方法、PVD法、CVD法、PLD法、ALD法およびエアロゾルデポジション法などの気相堆積法、ゾル・ゲル法、有機金属熱分解法およびめっきなどの湿式法などが挙げられ、形成面との反応性や電気回路に望まれる電気伝導性、電気回路設計に応じて、適当な方法を用いることができる。集電体241,242の形成材料としては、実施形態1と同様な形成材料が採用可能である。なお、集電体241,242は、必ずしも両方が必要ではなく、いずれか一方を備える構成であってもよい。
【0210】
以上に述べたリチウム電池200とその製造方法によれば、電解質層220において優れたリチウムイオン伝導性が実現可能である。したがって、薄型で電池特性と量産性とが優れたリチウム電池200を、提供あるいは製造することができる。
【符号の説明】
【0211】
2…第1の成形体としての活物質部、2b…活物質、3…電解質、3X…混合物、9…複合体としての正極、9X…第2の成形体、20…電解質層、20a…一面、30,230…負極、31,221…第1電解質部、32,222…第2電解質部、33…第3電解質部、33a…第3電解質、41…集電体としての第1集電体、100,200…電池としてのリチウム電池、305…電池、400…電子機器としてのウェアラブル機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】