(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2019145524
(43)【公開日】20190829
(54)【発明の名称】安定化された(部分)リチオ化グラファイト材料、その製造方法およびリチウム電池のための使用
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20190802BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20190802BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20190802BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20190802BHJP
【FI】
   !H01M4/587
   !H01M4/1393
   !H01M4/36 C
   !H01M4/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】32
(21)【出願番号】2019089508
(22)【出願日】20190510
(62)【分割の表示】2016551823の分割
【原出願日】20150213
(31)【優先権主張番号】102014202657.1
(32)【優先日】20140213
(33)【優先権主張国】DE
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】513159239
【氏名又は名称】アルベマール ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Albemarle Germany GmbH
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 フランクフルト・アム・マイン インドゥストリーパーク ヘーヒスト ゲボイデ ゲー 879
【住所又は居所原語表記】Industriepark Hoechst, Gebaeude G 879, D−65926 Frankfurt am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ヴィーテルマン
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 フリードリヒスドルフ ロートハイマー シュトラーセ 19
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラ ニッケル
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 ハイガー ハウケネストヴェーク 9ベー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン シェーラー
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 グリースハイム ヴィルヘルム−ロイシュナー−シュトラーセ 160アー
(72)【発明者】
【氏名】ウテ エメル
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 フランクフルト・アム・マイン ルートヴィヒ−ヘンスラー−シュトラーセ 50
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ブーアメスター
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 ダルムシュタット シューマンシュトラーセ 9
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ハーバー
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 バート・ゾーデン パウル−ライス−シュトラーセ 5
(72)【発明者】
【氏名】ゲアト クレーマー
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 バート・フィルベル クライスシュトラーセ 41
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA17
5H050CB08
5H050FA18
5H050GA22
5H050HA02
5H050HA14
5H050HA18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大容量のアノード材料の提供。
【解決手段】コーティングされた(部分)リチオ化グラファイト粉末であって、該グラファイト粉末は、非電気化学的方法で金属リチウムと粉末状グラファイトから製造されて、電気化学セルの外部でコーティング層の施与によって安定化されていることを特徴とする前記コーティングされた(部分)リチオ化グラファイト粉末;カソードと、リチウム導電性の電解質・セパレータ系と、コーティングされた(部分)リチオ化グラファイト粉末を含有するアノードとを含むガルバニ電池が記載されており、ここで、前記グラファイト粉末の(部分)リチオ化およびコーティングは、非電気化学的方法でガルバニ電池の外部(ex−situ)で行われる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式LiCx(式中、x=6〜600)の(部分)リチオ化グラファイト粉末において、流動性の該グラファイト粉末は、インターカレートされたリチウムを含み、かつ熱力学的に安定したリチウム塩ならびに/または別の有機および無機成分でコーティングされていることを特徴とする前記(部分)リチオ化グラファイト粉末。
【請求項2】
2種類の原子のモル比Li:Cは、1:少なくとも3〜1:最大600、好ましくは1:少なくとも5〜1:最大600であることを特徴とする、請求項1に記載の(部分)リチオ化グラファイト粉末。
【請求項3】
前記コーティング剤は、N2、CO2、CO、O2、N2O、NO、NO2、HF、F2、PF3、PF5、POF3、炭酸エステル、リチウムキレートボレート溶液、硫黄有機化合物、窒素含有有機化合物、リン酸または有機リン含有化合物、フッ素含有有機および無機化合物、および/またはケイ素含有化合物から選択されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の(部分)リチオ化グラファイト粉末。
【請求項4】
前記コーティング剤として、非プロトン性有機溶媒中のリチウムキレートボレート溶液が使用され、ここで、リチウムキレートボレートは、好ましくはリチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムビス(サリチラト)ボレート、リチウムビス(マロナト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレートから選択されており、かつ前記非プロトン性有機溶媒は、好ましくは酸素含有複素環式化合物、ニトリル、カルボン酸エステルまたはケトンから選択されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の(部分)リチオ化グラファイト粉末。
【請求項5】
前記粉末状のグラファイトのリチオ化を、金属リチウムから出発する非電気化学的方法によってリチウムのインターカレーションをすることにより行い、安定化コーティング層を、電気化学セルの外部で非電気化学的方法によって施与することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のコーティングされた(部分)リチオ化グラファイト粉末を製造するための方法。
【請求項6】
前記コーティングを0℃〜150℃の温度範囲で行うことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のコーティングされた流動性の(部分)リチオ化グラファイト粉末の、リチウム電池の電極の構成要素/活物質としての使用。
【請求項8】
前記使用が、カソードと、リチウム導電性の電解質・セパレータ系と、グラファイト含有アノードとを含むガルバニ電池において行われ、セル製造に際して(つまり、初回の充電サイクルの前に)前記アノードに非電気化学的方法でコーティングされた流動性の(部分)リチオ化グラファイト粉末が添加されることを特徴とする、請求項7に記載の前記使用。
【請求項9】
アノード中のグラファイト(C)と電気化学的に活性なリチウム(Li)とのモル比は、少なくとも3:1且つ最大600:1であることを特徴とする、請求項7または8に記載の使用。
【請求項10】
リチウム電池のアノードを製造するための方法であって、非電気化学的方法で(部分)リチオ化された粉末状且つコーティングされたグラファイトを、不活性条件または乾燥空間条件下に少なくとも1つの結合剤材料と、任意に2V(vs Li/Li+)以下の電気化学的電位を有する1つもしくは複数の別の粉末状のリチウム挿入材料と、並びに任意に導電性改良添加剤とも、並びに非水有機溶媒と、混合し且つ均質化して、この分散液を、被覆法によって導電体シートに塗布し且つ乾燥させることを特徴とする前記方法。
【請求項11】
前記別の粉末状のリチウム挿入材料は、以下の材料群:グラファイト、グラフェン、層構造化されたリチウム遷移金属窒化物、リチウムと合金化可能な金属粉末、還元された形態で(つまり金属として)リチウムと合金化する金属を有する主族金属酸化物、金属水素化物、リチウムアミド、リチウムイミド、テトラリチウム窒化水素化物、黒リン、またはリチウムと変換機構により反応してリチウムを収容することができる遷移金属酸化物から選択されていることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非水有機溶媒は、好ましくは炭化水素、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ケトン、ラクトンおよび/または環状エーテルから選択されていることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記結合剤が、好ましくはポリビニリデンジフルオライド、テフロン、ポリアクリレートおよびポリイソブテンから選択されていることを特徴とする、請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウムイオン電池のための電気化学セルは、標準的に放電状態で組み立てられる。これは、2つの電極が空気および水に対して安定した形態で存在していることが利点である。ここで、電気化学的に活性なリチウムは、もっぱらカソード材料の形態で導入される。カソード材料は、リチウム金属酸化物、例えば酸化リチウムコバルト(LiCoO2)を電気化学的活性成分として含む。現在市販されている電池のアノード材料は、放電状態で活性材料として372Ah/kgの理論的な電気化学容量を有するグラファイト材料を含む。一般に、このグラファイト材料は全くリチウムを含んでいない。将来的な構造では、比較的高い比容量を有する(同じくリチウムを含まない)材料、例えば合金アノード、しばしばケイ素またはスズをベースとする合金アノードも使用され得る。
【0002】
実際の電池系では、このリチウムの一部は、不可逆過程によって特に初回の充電・放電工程の間に失われる。さらに、リチウムを含まないグラファイトをアノードとして有する典型的なリチウムイオン電池構造は、リチウムを含まない潜在的なカソード材料(例えばMnO2)が使用できないことが欠点である。
【0003】
グラファイトの場合、特に、酸素を含有する表面基が、初回の充電過程でリチウムと不可逆的に反応して安定した塩になることを出発点とする。このリチウムの一部は、後続の電気化学的な充電/放電過程の間に失われる。それというのは、形成された塩は、電気化学的に不活性であるからである。合金アノード、例えばケイ素アノード材料またはスズアノード材料の場合でも同様である。酸化物の不純物は、リチウムを以下の通り消費する:
【化1】
【0004】
Li2Oの形態で結合されているリチウムは、もはや電気化学的に活性ではない。約1.5Vより小さい電位を有するアノード材料を使用する場合、リチウムの別の一部は、負極上で不動態層(いわゆるsolid electrolyte interface、SEI)を形成するために不可逆的に消費される。グラファイトの場合、このようにして正極材料(つまり、カソード材料)によって導入されたリチウムの合計約7質量%から20質量%までが失われる。スズまたはケイ素アノードの場合、この損失は一般にさらに大きい。以下の方程式(2)により脱リチオ化された「残留している」遷移金属酸化物(例えばCoO2)は、活性リチウムがないためガルバニ電池の可逆的な電池化学的容量に寄与できない:
【化2】
【0005】
初回の充電/放電サイクルのこの不可逆的損失を最小限に抑えるか、または完全に補うことを目標とする研究は多い。この制約は、追加のリチウムを金属形態で、例えば安定化された金属粉末(「SLMP」)として電池セルに導入することによって乗り越えられる(例えばUS2008283155A1;B.Meyer、F.Cassel、M.Yakovleva、Y.Gao、G.Au、Proc.Power Sourc.Conf.2008、43rd、105〜108)。しかし、これは、リチウムイオン電池の電池電極を製造するための通常の方法を実施できないことが欠点である。例えば、先行技術によれば、不動態化されたリチウムは空気主成分の酸素および窒素と反応する。この反応の速度は、確かに安定化されていないリチウムと比べて非常に遅くなっているが、比較的長い間空気に曝露される場合、乾燥空間条件下でも表面の変化および金属含有率の減少は避けられない。さらに深刻な欠点としては、Li金属粉末と、多くの場合、電極準備に使用される溶媒のN−メチルピロリドン(NMP)とのきわめて激しい反応が見られることである。確かに、安定化またはコーティングされたリチウム粉末を準備することによって安全な取り扱いに向けて重要な進歩を達成することができたが、先行技術により安定化されたリチウム粉末の安定性は、実際条件下で、NMPをベースにする電極製造法(懸濁法)の場合、不動態化されたリチウム粉末を危険なく使用することを保証するには不充分であることが多い。コーティングされていないか、または不充分にコーティングされた金属粉末は、すでに室温で短い誘導時間の後にすでにNMPと激しく(熱暴走(thermisches run away))反応しうる一方、このプロセスは、コーティングされたリチウム粉末の場合、高温(例えば30℃または80℃)で初めて行われる。例えば、US2008/0283155には、例1のリン酸でコーティングされたリチウム粉末が30℃で混合した直後にきわめて激しく(暴走)反応する一方、さらにワックスでコーティングされた粉末は、30℃ではNMP中で少なくとも24時間安定していることが記載されている。WO2012/052265に記載のコーティングされたリチウム粉末は、約80℃まではNMP中で反応速度が安定しているが、それをさらに超過する温度では発熱的に、多く場合、暴走のような現象下に分解する。主にこの理由から、リチウム粉末の、リチウムイオン電池のためのリチウムリザーバー(Lithiumreservoir)としての使用、もしくは電極材料のプレリチオ化(Praelithiierung)のための使用は、これまで商業的に定着できなかった。
【0006】
代替的に、グラファイト・リチウム層間化合物(LiCx)をアノードに添加することによって、さらなる電気化学的に活性なリチウムを電気化学的なリチウムセルに導入することもできる。そのようなLi層間化合物は、電気化学的または化学的に製造することができる。
【0007】
電気化学的製造は、慣用のリチウムイオン電池の充電時に自動的に行われる。このプロセスによって、最大1:6.0のリチウム:炭素の化学量論を有する材料を得ることができる(例えばN.Imanishi、「Development of the Carbon Anode in Lithium Ion Batteries」:M.Wakihara and O.Yamamoto(ed).:Lithium Ion Batteries、Wiley−VCH、Weinheim 1998参照)。そのようにして製造された部分的または全体的にリチオ化された材料は、基本的に、充電されたリチウムイオン電池から保護ガス雰囲気(アルゴン)下に取り出すことができ、相応の条件調整(好適な溶媒による洗浄および乾燥)の後、新たな電池セルのために使用することができる。それに伴う費用が高いため、この工程は分析試験の目的のためにのみ選択される。この方法は、経済的な理由から実践的な重要性はない。
【0008】
さらに、グラファイト材料をリチオ化するための化学的調製方法がある。リチウム蒸気は、400℃の温度以上でグラファイトと反応してリチウム挿入化合物(Lithiumeinlagerungsverbindungen)(リチウムのインターカレート物(Lithiuminterkalaten))になることは公知である。しかし、450℃を超過すると、不所望の炭化リチウムLi22が形成される。この挿入反応は、高配向性グラファイト(HOPG=ighly riented yrolytic raphite)によって良好に作用する。液体リチウムを使用する場合、すでに350℃の温度で充分である(R.Yazami、J.Power Sources 43〜44(1993)39〜46)。一般的に、高温の使用はエネルギー的な理由から不都合である。リチウムを使用する場合、アルカリ金属の高い反応性および腐食性がそれに加わる。したがって、この製造変法も同じく商業的に重要ではない。
【0009】
極端に高い圧力(2GPa、20,000atmに相当)を使用する場合、リチウムのインターカレーションは、すでに室温で達成することができる(D.Guerard、A.Herold、C.R.Acad.Sci.Ser.C.、275(1972)571)。そのような高圧は、殊に特別な液圧プレスでしか達成することができず、これは最小の研究室量の製造にしか適さない。つまり、商業的な量のリチウム・グラファイト層間化合物を製造するための工業的・産業的に好適な方法ではない。
【0010】
最後に、ボールミルにおける高エネルギー粉砕を用いるリチオ化された天然グラファイト(セイロングラファイト)の製造が記載された。そのために、現在のスリランカ産の主に六方晶系構造の天然グラファイトとリチウム粉末(平均粒径170μm)が、1:6、1:4および1:2のLi:C比で反応させられた。モル比1:2によってしか目的のモル比LiC6にするための完全なリチオ化を行うことができなかった(R.Janot、D.Guerard、Progr.Mat.Sci.50(2005)1〜92)。この合成変法も工業的・商業的に不都合である。一方では、充分または完全なリチオ化を達成するために、きわめて高いリチウム過剰量が必要とされる。リチウムの大部分は失われるか(ミル内で、およびミルボール上で)、もしくはリチウムの大部分は、インターカレートされない(つまり、依然として単体の形態で存在している)。他方、一般的に、リチウムイオン電池のアノードを製造する場合、条件調整されていない天然グラファイトは使用されない。それというのは、天然グラファイトの機械的完全性が、電池サイクル時の溶媒和されたリチウムイオンのインターカレーションによるいわゆる剥離(Exfoliierung)の結果、不可逆的に損なわれるからである(P.Kurzweil、K.Brandt、「Secondary Batteries−Lithium Rechargeable Systems」:Encyclopedia of Electrochemical Power Sources、J.Garche(ed.)、Elsevier Amsterdam 2009、Vol.5、1〜26ページ参照)。したがって、比較的安定した合成グラファイトが使用される。そのような合成グラファイトは、結晶性があまり高くなく、比較的低いグラファイト化度を有している。最後に、天然グラファイトに必要とされる好ましくは12時間の長い粉砕時間(29ページ)は不都合である。したがって、記載された方法は商業化されなかった。
【0011】
JanotおよびGuerardによる上記文献には、リチオ化されたセイロングラファイトの適用特性も記載されている(第7章)。電極製造は、グラファイトを銅メッシュに単純に押し付けることによって行われる。対向電極および参照電極としてリチウムリボン(Lithiumbaender)、電解質としてEC/DMC中のLiClO4溶液1Mが使用される。単純に押し付けることによって電極を準備する方法は、商業的な電池電極製造において適用される先行技術に相応しない。結合剤を使用せずに単純にプレスし、場合によって導電性添加剤を添加することは、安定した電極をもたらさない。それというのは、充電/放電時に起こる体積変化は不可避に電極を粉々にするに違いなく、それによって電池セルの機能性が損なわれるからである。
【0012】
グラファイト・リチウムのインターカレートを使用する場合の別の欠点は、このインターカレートが、官能化された溶媒、例えばエチレンカーボネート(EC)に対して反応性の挙動を示す、つまり、発熱的に反応しうることにある。例えば、Li0.996とECからなる混合物は、150℃を超過すると明らかに発熱性を示す。ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを有する類似の混合物は、すでに約110℃以上でリチウム・グラファイト層間化合物と反応する(T.Nakajima、J.Power Sources 243(2013)581)。
【0013】
本発明の基礎をなす課題は、部分的または全体的にリチオ化されてリチウムインターカレートを形成する、リチウム電池のアノードにおける使用に好適なグラファイト系材料を示すことであり、この材料は、
・標準空気に接しても良好かつ特に危険なく取り扱うことができるものであり、
・通常の製造法、つまり、特に、溶媒をベースにする分散液の流し込み法もしくは分散液の被覆法を使用してアノードの製造を可能にし、かつ
・特に、反応性の高い溶媒、例えばN−メチルピロリドン(NMP)を危険なく使用することを可能にするものである。
【0014】
前述の課題は、粉末状のグラファイトを非電気化学的方法で部分的または全体的にLiC6の化学量論限界までリチオ化して(以下においてこのプロセス工程は「(部分)リチオ化」と呼ばれる)、後続の工程において、安定化被覆(コーティング)の施与により改良することによって解決される。この安定化されたリチウム含有グラファイトは、驚くべきことに、安定化されていないグラファイトと比べて、空気および官能化された溶媒に対して実質的に反応性があまり高くなく、したがってより一層取り扱いやすいにもかかわらず、このリチウム含有グラファイトは、大容量のアノード材料および/または活性リチウムの源としてリチウム電池で使用することができる。
【0015】
本発明による安定化された(部分)リチオ化グラファイト粉末は、好ましくは非電気化学的方法によって製造される。最初のプロセス工程では、粉末状のグラファイトはリチウム金属粉末と混合されて、撹拌、粉砕および/またはプレスによって反応させられて、組成LiCx(式中、x=6〜600)のLi・グラファイトインターカレートが形成される。所望の最終化学量論に応じて、前述の2つの原料は、Li:Cのモル比が1:最小3〜1:最大600、好ましくは1:最小5且つ1:最大600で使用される。化学量論限界のLiC6を上回って導入されたリチウムは、グラファイト表面に単体の、微細に分布した形態で存在していると推測される。
【0016】
前述の反応は、0℃から180℃まで、好ましくは20℃から150℃までの温度範囲で、真空で、または成分が金属リチウムおよび/またはリチウム・グラファイト層間化合物と反応しないか、または受け入れられるほどゆっくりとしか反応しない雰囲気下に行われる。これは、好ましくは乾燥空気または希ガスであり、特に好ましくはアルゴンである。
【0017】
リチウムは、5μm〜500μm、好ましくは10μm〜200μmの平均粒径を有する粒子からなる粉末形態で使用される。コーティングされた粉末、例えばFMC社によって提供される、少なくとも97質量%のリチウム含有率を有する安定化された金属粉末(Lectromax powder 100、SLMP)も、例えば合金を形成する元素で被覆された少なくとも95質量%の金属含有率を有する粉末(WO2013/104787A1)も使用されてよい。99質量%以上の金属含有率を有する、コーティングされていないリチウム粉末が使用されるのが特に好ましい。電池分野で使用する場合、金属不純物に関する純度は、きわめて高くなければならない。特に、ナトリウム含有率は、200ppm超であってはならない。Na含有率は、100ppm以下であるのが好ましく、80ppm以下であるのが特に好ましい。
【0018】
グラファイトとして、あらゆる粉末状のグラファイト品種が使用されてよく、天然由来のもの(いわゆる「天然グラファイト」)も、合成/工業的に製造された種類(「合成グラファイト」)も使用されてよい。マクロ結晶性(makrokristallin)のフレークグラファイトも、非晶質または微晶質のグラファイトも使用可能である。
【0019】
前述の反応(つまり、(部分)リチオ化)は、リチウム粉末とグラファイト粉末の2つの成分の混合、プレスおよび/または粉砕の間に行われる。実験室規模では、粉砕は、乳鉢および乳棒を用いて行われてよい。しかし、その反応が機械的ミル、例えばロッドミル、振動ミルまたはボールミルで行われるのが好ましい。この反応が遊星ボールミルで行われるのが特に有利である。その場合、実験室規模では、例えばFritsch社の遊星ボールミルPulverisette 7 premium lineが使用されてよい。遊星ボールミルを使用する場合、驚くべきことに、10時間未満、多くの場合それどころか1時間未満のきわめて有利に短い反応時間を実現することができる。
【0020】
リチウム粉末とグラファイト粉末からなる混合物は、好ましくは乾燥状態で粉砕される。しかし、それらの2つの物質に対して不活性の流体が、最大1:1(Li+Cの合計:流体)の質量比まで添加されてもよい。不活性の流体は、無水炭化水素溶媒、例えば液体のアルカンもしくはアルカン混合物または芳香族溶媒であるのが好ましい。溶媒を添加することによって、粉砕工程の強度は弱められて、グラファイト粒子はあまり強く粉砕されない。
【0021】
粉砕時間は、種々の要求およびプロセスパラメーターによる:
・ミルボールの生成物混合物に対する質量比
・ミルボールの種類(例えば硬さおよび密度)
・粉砕強度(ミルボールの回転数)
・リチウム粉末の反応性(例えばコーティングの種類)
・Li:Cの質量比
・生成物に特異的な材料特性
・所望の粒度など。
【0022】
当業者は、好適な条件を簡単な最適化実験によって見いだすことができる。一般に、粉砕時間は、5分から24時間まで、好ましくは10分から10時間までの間で変化する。
【0023】
(部分)リチオ化グラファイト粉末は、環境条件(空気および水)ならびに多くの官能化された溶媒(例えばNMP)および液体電解質溶液に対して「活性」である、つまり、比較的長い曝露時間で反応もしくは分解する。標準空気中で貯蔵する場合、含まれているリチウムは反応して熱力学的に安定した塩、例えば水酸化リチウム、酸化リチウムおよび/または炭酸リチウムになる。この欠点を少なくとも充分に回避するために、(部分)リチオ化グラファイト粉末は、第二のプロセス工程、コーティング法によって安定化される。そのために、(部分)リチオ化グラファイト粉末は、気体状または液体のコーティング剤と好適な方法で反応させられる(「不動態化される」)。好適なコーティング剤は、金属リチウムならびにリチウム・グラファイト層間化合物に対して反応性の官能基または分子成分を含んでおり、それゆえ、表面利用可能なリチウムと反応する。リチウムを含む表面帯域の反応が行われて、空気に反応しないか、またはあまり空気に反応しない(つまり、熱力学的に安定している)リチウム塩(例えば炭酸リチウム、フッ化リチウム、水酸化リチウム、リチウムアルコラート、カルボン酸リチウムなど)が形成される。このコーティング工程では、粒子表面には存在していないリチウム(例えばインターカレートされた部分)の大部分は活性形態で、つまり、約1V(vs.Li/Li+)以下の電気化学的電位を有して保たれている。そのようなコーティング剤は、負極のためのin−situ塗膜形成剤(SEI形成剤とも呼ばれる)として、リチウムイオン電池技術から公知であり、例えば以下の調査論文に記載されている:A.Lex−Balducci、W.Henderson、S.Passerini、Electrolytes for Lithium Ion Batteries:Lithium−Ion Batteries、Advanced Materials and Technologies、X.Yuan、H.Liu and J.Zhang(eds.)、CRC Press Boca Raton、2012、147〜196ページ。以下に好適なコーティング剤を例示的に記載する。気体として、N2、CO2、CO、O2、N2O、NO、NO2、HF、F2、PF3、PF5、POF3などが好適である。好適な液体のコーティング剤は、例えば炭酸エステル(例えばビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC));リチウムキレートボレート溶液(例えばリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB);リチウムビス(サリチラト)ボレート(LiBSB);リチウムビス(マロナト)ボレート(LiBMB);リチウムジフルオロオキサラトボレート(LiDFOB)を好ましくは以下から選択される有機溶媒中の溶液として;酸素含有複素環式化合物、例えばTHF、2−メチル−THF、ジオキソラン、炭酸エステル(カーボネート)、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよび/またはエチルメチルカーボネート、ニトリル、例えばアセトニトリル、グルタロジニトリル、カルボン酸エステル、例えば酢酸エチル、ギ酸ブチルおよびケトン、例えばアセトン、ブタノン);硫黄有機化合物(例えば亜硫酸エステル(亜硫酸ビニルエチレン、亜硫酸エチレン)、スルホン、スルトンなど);N含有有機化合物(例えばピロール、ピリジン、ビニルピリジン、ピコリン、1−ビニル−2−ピロリジノン)、リン酸、有機リン含有化合物(例えばリン酸ビニル)、フッ素含有有機および無機化合物(例えば部分フッ化炭化水素、BF3、LiPF6、LiBF4、非プロトン性溶媒中に溶解した後者2つの化合物)、ケイ素含有化合物(例えばシリコーン油、アルキルシロキサン)などである。
【0024】
液体のコーティング剤を使用する場合、コーティングプロセスは、一般に不活性ガス雰囲気(例えばアルゴン保護雰囲気)下に0℃から150℃までの温度で行われる。コーティング剤と(部分)リチオ化グラファイト粉末との接触を高めるために、混合および撹拌条件は有利である。コーティング剤と(部分)リチオ化グラファイト粉末との所要接触時間は、コーティング剤の反応性、その時の温度およびその他のプロセスパラメーターによる。一般に、1分から24時間までの時間が有効である。気体状のコーティング剤は、純粋な形態で使用されるか、または好ましくはキャリアガス、例えば希ガス、例えばアルゴンとの混合物として使用される。
【0025】
コーティングは、電極(一般にアノード)製造における取扱特性および安全性を改善するだけでなく、電気化学的電池セルの適用特性も改善する。つまり、あらかじめコーティングされたアノード材料を使用する場合、(部分)リチオ化グラファイトアノード材料と電池セルの液体電解質との接触におけるSEI(olid lectrolyte nterface)のin situ形成が省略される。予備コーティングによって生じた電気化学セルの外部でのアノードフィルム(Anodenfilmung)は、その特性においていわゆる人工的なSEIに相当する。理想的な場合、電気化学セルのその他に必要な形成プロセスは省略されるか、または少なくとも簡略化される。
【0026】
上記方法により(部分)リチオ化且つ安定化されたグラファイト粉末は、電池電極を製造するために使用することができる。そのために、不活性条件または乾燥空間条件下に少なくとも1つの結合剤材料と、任意に、2V(vs Li/Li+)以下の電気化学的電位を有する1つまたは複数の別の粉末状のリチウム挿入材料と、同じく任意に導電性改良添加剤(例えば、カーボンブラックまたは金属粉末)と、非水有機溶媒とを混合し均質化して、この分散液を被覆法(流し込み法、スピンコーティングまたはエアブラシ法)によって導電体に塗布し乾燥する。本発明による方法により製造された安定化された(部分)リチオ化グラファイト粉末は、驚くべきことに、N−メチルピロリドン(NMP)および別の官能化された有機溶媒に対してあまり反応性が高くない。したがって、このグラファイト粉末は、問題なく溶媒のNMPおよび結合剤材料のPVdF(ポリビニリデンジフルオライド)と一緒に加工して流し込み可能またはスプレー可能な分散液にすることができる。代替的に、溶媒のN−エチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、環状エーテル(例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン)、ケトン(例えばアセトン、ブタノン)および/またはラクトン(例えばγ−ブチロラクトン)が使用されてもよい。好適な結合剤材料のさらなる例は、特に以下の通りである:カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸、ポリアクリレート、テフロンおよびポリイソブチレン(例えばBASF社のOppanol)。ポリイソブチレン結合剤を使用する場合、好ましくは炭化水素(芳香族化合物、例えばトルエンまたは飽和炭化水素、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン)が使用される。
【0027】
任意に使用される別の粉末状のリチウム挿入材料は、グラファイト、グラフェン、層構造化されたリチウム遷移金属窒化物(例えばLi2.6Co0.4N、LiMoN2、Li7MnN4、Li2.7Fe0.3N)、リチウムと合金化可能な金属粉末(例えばSn、Si、Al、B、Mg、Ca、Znまたはそれらからなる混合物)、還元された形態で(つまり、酸化数がゼロの金属として)リチウムと合金化する金属を有する主族金属酸化物(例えばSnO2、SiO2、SiO、TiO2)、金属水素化物(例えばMgH2、LiH、TiNiHx、AlH3、LiAlH4、LiBH4、Li3AlH6、LiNiH4、TiH2、LaNi4.25Mn0.755、Mg2NiH3.7)、リチウムアミド、リチウムイミド、テトラリチウム窒化水素化物、黒リン、ならびにリチウムと変換機構により反応してリチウムを収容することができる遷移金属酸化物(例えばCo34、CoO、FeO、Fe23、Mn23、Mn34、MnO、MoO3、MoO2、CuO、Cu2O)の群から選択されるのが好ましい。使用可能なアノード材料のうちの多くについての概要は、X.Zhangら、Energy & Environ.Sci.2011、4、2682の調査論文から読み取ることができる。非電気化学的方法で製造された安定化された(部分)リチオ化合成グラファイト粉末を含む本発明により製造されたアノード分散液は、好ましくは薄い銅板またはニッケル板からなる導電体シートに塗布され、乾燥されて好ましくはカレンダー処理される。そのように製造されたアノードシートは、リチウム導電性の電解質・セパレータ系と、2V(vs Li/Li+)より大きい電位を有するリチウム化合物(例えばリチウム金属酸化物、例えばLiCoO2、LiMn24、LiNi0.5Mn1.52または硫化物、例えばLi2S、FeS2)を含む好適なカソードシートと組み合わせることによって、先行技術と比べて容量が高められたリチウム電池にすることができる。そのようなガルバニ電池(しかし、本発明によりコーティングされた(部分)リチオ化グラファイト粉末は使用しない)の工業的な製造は、充分に公知であり、例えばP.Kurzweil、K.Brandt、Secondary Batteries、Lithium Rechargeable Systems:Overview:Encyclopedia of Electrochemical Power Sources、ed.J.Garche、Elsevier、Amsterdam 2009、Vol.5、1〜26ページに記載されている。
【0028】
本発明は、詳細には以下に関する:
・インターカレートされたリチウムを含み、非電気化学的方法によって、熱力学的に安定したリチウム塩、例えば炭酸リチウム、フッ化リチウム、水酸化リチウム、リチウムアルコレート、カルボン酸リチウム、ならびに場合によって別の有機および無機成分でコーティングされ、それによって安定化される、式LiCx(式中、x=6〜600)のコーティングされた(部分)リチオ化グラファイト粉末。
・非電気化学的方法において金属リチウムと粉末状のグラファイトとから製造され、且つ安定化コーティング層が電気化学セルの外部で施与される、コーティングされた(部分)リチオ化グラファイト粉末。
・2種類の原子のモル比Li:Cが、1:最小3〜1:最大600、好ましくは1:最小5〜1:最大600である、コーティングされた(部分)リチオ化グラファイト粉末。
・コーティング剤は、N2、CO2、炭酸エステル、非プロトン性溶媒中のリチウムキレートボレート溶液、硫黄有機化合物、窒素含有有機化合物、リン酸または有機リン含有化合物、フッ素含有有機および無機化合物、および/またはケイ素含有化合物から選択されるコーティングされた(部分)リチオ化グラファイト粉末。
・コーティング剤として、非プロトン性有機溶媒中のリチウムキレートボレート溶液が使用され、ここで、リチウムキレートボレートは、好ましくはリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウムビス(サリチラト)ボレート(LiBSB)、リチウムビス(マロナト)ボレート(LiBMB)、リチウムジフルオロオキサラトボレート(LiDFOB)から選択され、および非プロトン性有機溶媒は、酸素含有複素環式化合物、例えばテトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン(2−メチル−THF)、ジオキソラン、カーボネート、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよび/またはエチルメチルカーボネート、ニトリル、例えばアセトニトリル、グルタロジニトリル、カルボン酸エステル、例えば酢酸エチル、ギ酸ブチルおよびケトン、例えばアセトン、ブタノンから選択されるコーティングされた(部分)リチオ化グラファイト粉末。
・コーティングは、0℃〜150℃の温度範囲で行われるコーティングされた(部分)リチオ化グラファイト粉末。
・コーティングされた、非電気化学的方法で(部分)リチオ化された粉末状のグラファイトは、不活性条件または乾燥空間条件下に、少なくとも1つの結合剤材料と、任意に2V(vs Li/Li+)以下の電気化学的電位を有する1つまたは複数の別の粉末状のリチウム挿入材料と、同じく任意に導電性改良添加剤と、溶媒と混合され均質化されて、この分散液は、被覆法によって導電体シートに塗布され乾燥される、リチウム電池のアノードを製造するための方法。
・任意に使用される別の粉末状のリチウム挿入材料は、好ましくはグラファイト;グラフェン;層構造化されたリチウム遷移金属窒化物;リチウムと合金化可能な金属粉末;還元された形態(つまり、金属として)リチウムと合金化する金属を有する主族金属酸化物;金属水素化物;リチウムアミド;リチウムイミド;テトラリチウム窒化水素化物;黒リン;リチウムと変換機構により反応してリチウムを収容することができる遷移金属酸化物の群から選択されるリチウム電池のアノードを製造するための方法。
・本発明による方法により製造されたコーティングされた(部分)リチオ化グラファイト粉末の、リチウム電池電極の構成要素/活物質としての使用。
・カソードと、リチウム導電性の電解質・セパレータ系と、グラファイトを含有するアノードとを含むガルバニ電池、ここで、前述のアノードは、セル製造において(つまり、初回の充電サイクルの前に)グラファイトとリチウム粉末とから非電気化学的方法で製造された(部分)リチオ化され、その後コーティングされたグラファイト粉末を含むか、またはそれからなるガルバニ電池。
【0029】
実施例
例1:コーティングされていないLiCx(x=約6)を、合成グラファイトSLP30とコーティングされていないリチウムから遊星ボールミルで製造
保護ガス雰囲気下(アルゴン充填グローブボックス)で、酸化ジルコニウム製の乳鉢(50mL)にTimcal社の合成グラファイト粉末SLP30 5.00gと、平均粒径D50=123μm(測定方法:レーザー反射、Mettler Toledo社の機器Lasentec FBRM)のコーティングされていないリチウム粉末0.529gを入れてヘラで混合した。次に、酸化ジルコニウムミルボール(ボール直径3mm)約27gを入れた。この混合物を、遊星ボールミル(Fritsch社のPulverisette 7 premium line)で15分、回転数800rpmで粉砕した。
【0030】
粉砕された生成物をグローブボックス内でふるいにかけ、黒色で、金色光沢のある流動性の粉末4.6gを得た。
【0031】
X線回折法によって、C:インターカレートしたLiの化学量論が約12:1である画一的な生成物が形成されたことを示すことができる。金属リチウムは、もう検出できなかった。
【0032】
比較例1:例1のコーティングされていないリチオ化合成グラファイトの、NMPならびにEC/EMCとの接触における安定性
熱安定性の試験は、Systag社(スイス)の装置Radex−Systemを使用して行った。そのために、試験する物質または物質混合物を、容量約3mlの鋼製オートクレーブに秤量導入して加熱する。炉および容器の温度測定から熱力学的データを導き出すことができる。
【0033】
この場合、Li/C混合物もしくはLi/C化合物0.1gをEC/EMC2gと一緒に不活性ガス条件下に秤量し、250℃の最終炉温に加熱した。約180℃を超過すると発熱性の分解現象が認められる。
【0034】
例1のLi/C化合物とNMPを混合したところ、自発的であるが弱い反応(暴走現象はない)が観察される。それに続くRadex実験では、250℃の最終温度まで著しい発熱効果は観察されない。熱分解された混合物は、依然として液体である。
【0035】
例2:EC/EMC中のLiBOB溶液による、化学量論LiC6のリチオ化合成グラファイト粉末のコーティング
例1によって製造されたリチオ化合成グラファイト粉末4.5gを、アルゴン雰囲気下にフラスコ内で、無水のEC/EMC(質量1:1)中の1%LiBOB溶液(LiBOBはリチウムビス(オキサラト)ボレートである)10mlと混合して、2時間室温で撹拌した。次にこの分散液を、空気を排除してろ過し、ジメチルカーボネートで3回、ジエチルエーテルおよびヘキサンでそれぞれ1回洗浄した。室温で3時間真空乾燥した後、金色光沢のある暗色の粉末4.3gが得られた。
【0036】
例3:例2の本発明によりコーティングされた生成物の、コーティングされていない中間生成物と比較したEC/EMCおよびNMPにおける安定性
例3のコーティングされた材料と、使用された未処理のリチオ化グラファイト粉末装入物(例1の指示により製造)の試料とをRadex装置で熱安定性についてEC/EMC混合物の存在下に試験した。
【0037】
コーティングされていない材料は、すでに約130℃以上で分解し始める一方、コーティングされた粉末は、約170℃を超えて初めて発熱反応することが明らかに認められる。
【0038】
NMPを混合したところ、室温では反応はまったく観察されない。Radex実験では、きわめて弱い発熱反応が90℃超で初めて確認される。
【0039】
その混合物は液体のままである。
【0040】
例4:例2の本発明によりコーティングされた生成物の、コーティングされていない中間生成物と比較した空気安定性
例3のコーティングされたリチオ化グラファイト粉末と、後処理されていないリチオ化グラファイト粉末それぞれ約1gの材料試料を秤量瓶に移し入れて、約23℃および37%の相対大気湿度の空気で貯蔵した。時々、質量増加を書き留めた。コーティングされた粉末が30分超にわたってその金色光沢のある色を維持した一方、コーティングされていない材料は、ほぼ即座に(60秒未満で)黒色に変色した。
【0041】
空気(23℃、相対湿度37%)での貯蔵実験では、コーティングされていないリチオ化粉末は、すでに最初の5分で質量が5質量%超増加することが認められる。酸素、空気湿分、二酸化炭素および窒素との反応によって相応のリチウム塩が形成される。それに対してコーティングされた粉末は、はるかに安定している。しかし、比較的長い貯蔵時間を超えると、含まれているリチウムが同じように反応する。
【手続補正書】
【提出日】20190514
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされたリチオ化グラファイト粉末を製造するための方法であって、粉末状のグラファイトのリチオ化を、金属リチウムから出発する非電気化学的方法によってリチウムのインターカレーションをすることにより行い、ここで、最初のプロセス工程では、粉末状のグラファイトはリチウム金属粉末と混合されて、撹拌、粉砕および/またはプレスによって反応させられて、Li・グラファイトインターカレートが形成され、かつ所望の最終化学量論に応じて、前述の2つの原料は、Li:Cのモル比が1:最小3〜1:最大600で使用され、ならびに安定化コーティング層を、電気化学セルの外部で非電気化学的方法によって施与し、前記コーティング剤は、N2、CO2、CO、O2、N2O、NO、NO2、HF、F2、PF3、PF5、POF3、炭酸エステル、リチウムキレートボレート溶液、硫黄有機化合物、窒素含有有機化合物、リン酸または有機リン含有化合物、フッ素含有有機および無機化合物、および/またはケイ素含有化合物から選択されていることを特徴とする、コーティングされたリチオ化グラファイト粉末を製造するための方法。
【請求項2】
2種類の原子のモル比Li:Cは、1:少なくとも5〜1:最大600であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティング剤として、非プロトン性有機溶媒中のリチウムキレートボレート溶液が使用され、ここで、リチウムキレートボレートは、好ましくはリチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムビス(サリチラト)ボレート、リチウムビス(マロナト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレートから選択されており、かつ前記非プロトン性有機溶媒は、好ましくは酸素含有複素環式化合物、ニトリル、カルボン酸エステルまたはケトンから選択されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティングを0℃〜150℃の温度範囲で行うことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項により得られたコーティングされた流動性のリチオ化グラファイト粉末の、リチウム電池の電極の構成要素/活物質としての使用。
【請求項6】
前記使用が、カソードと、リチウム導電性の電解質・セパレータ系と、グラファイト含有アノードとを含むガルバニ電池において行われ、セル製造に際して(つまり、初回の充電サイクルの前に)前記アノードに非電気化学的方法でコーティングされた流動性のリチオ化グラファイト粉末が添加されることを特徴とする、請求項に記載の前記使用。
【請求項7】
アノード中のグラファイト(C)と電気化学的に活性なリチウム(Li)とのモル比は、少なくとも3:1且つ最大600:1であることを特徴とする、請求項またはに記載の使用。
【請求項8】
請求項1から4までのいずれか1項により得られた、非電気化学的方法でリチオ化された粉末状且つコーティングされたグラファイトからリチウム電池のアノードを製造するための方法であって、グラファイトを、不活性条件または乾燥空間条件下に少なくとも1つの結合剤材料と、任意に2V(vs Li/Li+)以下の電気化学的電位を有する1つもしくは複数の別の粉末状のリチウム挿入材料と、並びに任意に導電性改良添加剤とも、並びに非水有機溶媒と、混合し且つ均質化して、この分散液を、被覆法によって導電体シートに塗布し且つ乾燥させることを特徴とする前記方法。
【請求項9】
前記別の粉末状のリチウム挿入材料は、以下の材料群:グラファイト、グラフェン、層構造化されたリチウム遷移金属窒化物、リチウムと合金化可能な金属粉末、還元された形態で(つまり金属として)リチウムと合金化する金属を有する主族金属酸化物、金属水素化物、リチウムアミド、リチウムイミド、テトラリチウム窒化水素化物、黒リン、またはリチウムと変換機構により反応してリチウムを収容することができる遷移金属酸化物から選択されていることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記非水有機溶媒は、好ましくは炭化水素、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ケトン、ラクトンおよび/または環状エーテルから選択されていることを特徴とする、請求項またはに記載の方法。
【請求項11】
前記結合剤が、好ましくはポリビニリデンジフルオライド、テフロン、ポリアクリレートおよびポリイソブテンから選択されていることを特徴とする、請求項から10までのいずれか1項に記載の方法。
【外国語明細書】