(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2019145826
(43)【公開日】20190829
(54)【発明の名称】トランジスタ及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20190802BHJP
【FI】
   !H01L29/78 618B
【審査請求】有
【請求項の数】38
【出願形態】OL
【全頁数】95
(21)【出願番号】2019082045
(22)【出願日】20190423
(62)【分割の表示】2017201782の分割
【原出願日】20171018
(31)【優先権主張番号】2016206732
(32)【優先日】20161021
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】2016231956
(32)【優先日】20161130
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
【住所又は居所】神奈川県厚木市長谷398番地
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
【住所又は居所】神奈川県厚木市長谷398番地 株式会社半導体エネルギー研究所内
【テーマコード(参考)】
5F110
【Fターム(参考)】
5F110BB02
5F110CC02
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5F110GG01
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5F110GG58
5F110HJ01
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5F110HK01
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5F110NN03
5F110NN04
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5F110NN22
5F110NN23
5F110NN24
5F110NN27
5F110NN35
5F110NN40
5F110QQ11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規な材料、および新規な材料を用いたトランジスタを提供する。
【解決手段】少なくとも2つの領域を有する複合酸化物であって、第1の領域002は、In、Znおよび元素M1(元素M1は、Al、Ga、Si、B、Y、Ti、Fe、Ni、Ge、Zr、Mo、La、Ce、Nd、Hf、Ta、W、Mg、V、Be、またはCuのいずれか一つ、または複数)を含む。第2の領域001は、In、Znおよび元素M2(元素M2は、Al、Ga、Si、B、Y、Ti、Fe、Ni、Ge、Zr、Mo、La、Ce、Nd、Hf、Ta、W、Mg、V、Be、またはCuのいずれか一つ、または複数)を含む。第1の領域002における元素M1は、第2の領域001における元素M2よりも少なく、エネルギー分散型X線分光法におけるマッピング解析により、第1の領域の周辺部がボケて観察される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも前記Inの濃度が高い領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記Gaの濃度が高い領域である、
トランジスタ。
【請求項2】
金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inが相対的に多い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaが相対的に多い領域である、
トランジスタ。
【請求項3】
金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inの割合が前記Gaの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaの割合が前記Inの割合又は前記Znの割合より高い領域である、
トランジスタ。
【請求項4】
金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも前記Inの濃度が高い領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記Gaの濃度が高い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域はナノ粒子を有する、
トランジスタ。
【請求項5】
金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inが相対的に多い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaが相対的に多い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域はナノ粒子を有する、
トランジスタ。
【請求項6】
金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inの割合が前記Gaの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaの割合が前記Inの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域はナノ粒子を有する、
トランジスタ。
【請求項7】
金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも前記Inの濃度が高い領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記Gaの濃度が高い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域は、粒径が0.5nm以上10nm以下の粒子を有する、
トランジスタ。
【請求項8】
金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inが相対的に多い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaが相対的に多い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域は、粒径が0.5nm以上10nm以下の粒子を有する、
トランジスタ。
【請求項9】
金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inの割合が前記Gaの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaの割合が前記Inの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域は、粒径が0.5nm以上10nm以下の粒子を有する、
トランジスタ。
【請求項10】
微結晶を有する金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも前記Inの濃度が高い領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記Gaの濃度が高い領域である
トランジスタ。
【請求項11】
微結晶を有する金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inが相対的に多い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaが相対的に多い領域である、
トランジスタ。
【請求項12】
微結晶を有する金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inの割合が前記Gaの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaの割合が前記Inの割合又は前記Znの割合より高い領域である、
トランジスタ。
【請求項13】
非単結晶である金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも前記Inの濃度が高い領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記Gaの濃度が高い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域は、粒径が0.5nm以上の粒子を有する、
トランジスタ。
【請求項14】
非単結晶である金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inが相対的に多い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaが相対的に多い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域は、粒径が0.5nm以上の粒子を有する、
トランジスタ。
【請求項15】
非単結晶である金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inの割合が前記Gaの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaの割合が前記Inの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域は、粒径が0.5nm以上の粒子を有する、
トランジスタ。
【請求項16】
アモルファス構造でない金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも前記Inの濃度が高い領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記Gaの濃度が高い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域は、粒径が3nm以下の粒子を有する、
トランジスタ。
【請求項17】
アモルファス構造でない金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inが相対的に多い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaが相対的に多い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域は、粒径が3nm以下の粒子を有する、
トランジスタ。
【請求項18】
アモルファス構造でない金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inの割合が前記Gaの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaの割合が前記Inの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域は、粒径が3nm以下の粒子を有する、
トランジスタ。
【請求項19】
金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも前記Inの濃度が高い領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記Gaの濃度が高い領域であり、
前記金属酸化物は、電子回折パターンにより、リング状の領域に複数のスポットが観察される領域を有する、
トランジスタ。
【請求項20】
金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inが相対的に多い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaが相対的に多い領域であり、
前記金属酸化物は、電子回折パターンにより、リング状の領域に複数のスポットが観察される領域を有する、
トランジスタ。
【請求項21】
金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inの割合が前記Gaの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaの割合が前記Inの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記金属酸化物は、電子回折パターンにより、リング状の領域に複数のスポットが観察される領域を有する、
トランジスタ。
【請求項22】
金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも前記Inの濃度が高い領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記Gaの濃度が高い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域は、粒径が0.5nm以上の粒子を有し、
前記金属酸化物は、電子回折パターンにより、リング状の領域に複数のスポットが観察される領域を有する、
トランジスタ。
【請求項23】
金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inが相対的に多い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaが相対的に多い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域は、粒径が0.5nm以上の粒子を有し、
前記金属酸化物は、電子回折パターンにより、リング状の領域に複数のスポットが観察される領域を有する、
トランジスタ。
【請求項24】
金属酸化物をチャネル形成領域に有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inの割合が前記Gaの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaの割合が前記Inの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域は、粒径が0.5nm以上の粒子を有し、
前記金属酸化物は、電子回折パターンにより、リング状の領域に複数のスポットが観察される領域を有する、
トランジスタ。
【請求項25】
ゲートドライバに配置されたトランジスタであって、
前記トランジスタはチャネル形成領域に金属酸化物を有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも前記Inの濃度が高い領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記Gaの濃度が高い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域は、粒径が0.5nm以上の粒子を有し、
前記金属酸化物は、電子回折パターンにより、リング状の領域に複数のスポットが観察される領域を有する、
トランジスタ。
【請求項26】
ゲートドライバに配置されたトランジスタであって、
前記トランジスタはチャネル形成領域に金属酸化物を有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inが相対的に多い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaが相対的に多い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域は、粒径が0.5nm以上の粒子を有し、
前記金属酸化物は、電子回折パターンにより、リング状の領域に複数のスポットが観察される領域を有する、
トランジスタ。
【請求項27】
ゲートドライバに配置されたトランジスタであって、
前記トランジスタはチャネル形成領域に金属酸化物を有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inの割合が前記Gaの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaの割合が前記Inの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第1の領域又は前記第2の領域は、粒径が0.5nm以上の粒子を有し、
前記金属酸化物は、電子回折パターンにより、リング状の領域に複数のスポットが観察される領域を有する、
トランジスタ。
【請求項28】
請求項19乃至請求項27のいずれか一において、
前記電子回折パターンは、プローブ径が1nmの電子線を照射して得られる、
トランジスタ。
【請求項29】
ゲートドライバに配置されたトランジスタであって、
前記トランジスタはチャネル形成領域に金属酸化物を有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも前記Inの濃度が高い領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記Gaの濃度が高い領域である、
トランジスタ。
【請求項30】
ゲートドライバに配置されたトランジスタであって、
前記トランジスタはチャネル形成領域に金属酸化物を有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inが相対的に多い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaが相対的に多い領域である、
トランジスタ。
【請求項31】
ゲートドライバに配置されたトランジスタであって、
前記トランジスタはチャネル形成領域に金属酸化物を有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inの割合が前記Gaの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaの割合が前記Inの割合又は前記Znの割合より高い領域である、
トランジスタ。
【請求項32】
画素に配置されたトランジスタであって、
前記トランジスタはチャネル形成領域に金属酸化物を有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも前記Inの濃度が高い領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記Gaの濃度が高い領域である、
トランジスタ。
【請求項33】
画素に配置されたトランジスタであって、
前記トランジスタはチャネル形成領域に金属酸化物を有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inが相対的に多い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaが相対的に多い領域である、
トランジスタ。
【請求項34】
画素に配置されたトランジスタであって、
前記トランジスタはチャネル形成領域に金属酸化物を有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inの割合が前記Gaの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaの割合が前記Inの割合又は前記Znの割合より高い領域である、
トランジスタ。
【請求項35】
画素に配置された第1のトランジスタと、ゲートドライバに配置された第2のトランジスタとを有し、
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタはそれぞれ、チャネル形成領域に金属酸化物を有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記第2の領域よりも前記Inの濃度が高い領域であり、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも前記Gaの濃度が高い領域である、
半導体装置。
【請求項36】
画素に配置された第1のトランジスタと、ゲートドライバに配置された第2のトランジスタとを有し、
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタはそれぞれ、チャネル形成領域に金属酸化物を有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inが相対的に多い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaが相対的に多い領域である、
半導体装置。
【請求項37】
画素に配置された第1のトランジスタと、ゲートドライバに配置された第2のトランジスタとを有し、
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタはそれぞれ、チャネル形成領域に金属酸化物を有し、
前記金属酸化物は、Inと、Gaと、Znとを有する第1の領域と、Inと、Gaと、Znとを有する第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記Inの割合が前記Gaの割合又は前記Znの割合より高い領域であり、
前記第2の領域は、前記Gaの割合が前記Inの割合又は前記Znの割合より高い領域である、
半導体装置。
【請求項38】
請求項29乃至請求項37のいずれか一において、
前記金属酸化物は、微結晶を有する、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシン
、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。特に
、本発明の一態様は、金属酸化物、または当該金属酸化物の製造方法に関する。または、
本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装
置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法に関する。
【0002】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装
置全般を指す。トランジスタなどの半導体素子をはじめ、半導体回路、演算装置、記憶装
置は、半導体装置の一態様である。撮像装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、電気
光学装置、発電装置(薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池等を含む)、及び電子機器は、半
導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0003】
In−Ga−Zn系の金属酸化物を用いてトランジスタを作製する技術が開示されている
(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、非特許文献1では、トランジスタの活性層として、In−Zn酸化物と、In−G
a−Zn酸化物との2層積層の金属酸化物を有する構造が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−96055号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】John F. Wager、「Oxide TFTs:A Progress Report」、Information Display 1/16、SID 2016、 Jan/Feb 2016、Vol.32,No.1, p.16−21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1では、チャネル保護型のボトムゲート型のトランジスタにおいて、トランジ
スタの活性層として、インジウム亜鉛酸化物と、IGZOとの2層積層とし、チャネルが
形成されるインジウム亜鉛酸化物の膜厚を10nmとすることで、高い電界効果移動度(
μ=62cm−1−1)を実現している。一方で、トランジスタ特性の一つである
S値(Subthreshold Swing、SSともいう)が0.41V/deca
deと大きい。また、トランジスタ特性の一つである、しきい値電圧(Vthともいう)
が−2.9Vであり、所謂ノーマリーオンのトランジスタ特性である。
【0008】
上述の問題に鑑み、本発明の一態様は、新規な金属酸化物を提供することを課題の一とす
る。または、本発明の一態様は、半導体装置に良好な電気特性を付与することを課題の一
とする。または、信頼性の高い半導体装置を提供することを課題の一とする。または、新
規な構成の半導体装置を提供することを課題の一とする。または、新規な構成の表示装置
を提供することを課題の一とする。
【0009】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題
は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図
面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、少なくとも2つの領域を有する複合酸化物であって、領域の1つは、
In、Zn、および元素M1(元素M1は、Al、Ga、Si、B、Y、Ti、Fe、N
i、Ge、Zr、Mo、La、Ce、Nd、Hf、Ta、W、Mg、V、Be、またはC
uのいずれか一つ、または複数)を含み、領域の他の1つは、In、Zn、および元素M
2(元素M2は、Al、Ga、Si、B、Y、Ti、Fe、Ni、Ge、Zr、Mo、L
a、Ce、Nd、Hf、Ta、W、Mg、V、Be、またはCuのいずれか一つ、または
複数)を含み、複合酸化物を、エネルギー分散型X線分光法により分析した際に、前記元
素M1を含む領域における元素M1は、前記元素M2を含む領域における元素M2よりも
、少なく検出され、エネルギー分散型X線分光法におけるマッピング解析により、前記元
素M1を含む領域の周辺部がボケて観察される。
【0011】
上記態様において、2つの領域は、それぞれ独立して微小粒を有する。
【0012】
また、上記態様において、微小粒の大きさは、0.5nm以上3nm以下である。
【0013】
また、本発明の一態様は、上記記載の複合酸化物と、ゲート、ソース、及びドレインと、
を有し、複合酸化物は、トランジスタのチャネル領域として用いられることを特徴とする
トランジスタである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様により、新規な金属酸化物を提供することができる。または、本発明の一
態様により、半導体装置に良好な電気特性を付与することができる。または、信頼性の高
い半導体装置を提供することができる。または、新規な構成の半導体装置を提供すること
ができる。または、新規な構成の表示装置を提供することができる。
【0015】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は
、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面
、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】金属酸化物の構成の概念図。
【図2】トランジスタ、および該トランジスタにおけるエネルギー準位の分布を説明する模式図。
【図3】トランジスタにおける概略バンドダイアグラムのモデルを説明する図。
【図4】トランジスタにおける概略バンドダイアグラムのモデルを説明する図。
【図5】トランジスタにおける概略バンドダイアグラムのモデルを説明する図。
【図6】半導体装置を説明する上面図及び断面図。
【図7】半導体装置を説明する上面図及び断面図。
【図8】半導体装置を説明する断面図。
【図9】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【図10】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【図11】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【図12】半導体装置を説明する上面図及び断面図。
【図13】半導体装置を説明する上面図及び断面図。
【図14】半導体装置を説明する上面図及び断面図。
【図15】半導体装置を説明する上面図及び断面図。
【図16】本発明に係る金属酸化物の原子数比の範囲を説明する図。
【図17】表示パネルの構成例を説明する図。
【図18】表示パネルの構成例を説明する図。
【図19】本実施の形態における金属酸化物のモデル、および状態密度を説明する図。
【図20】本実施の形態における不純物を追加した金属酸化物のモデルの局所構造、および状態密度を説明する図。
【図21】本実施の形態における不純物を追加した金属酸化物のモデルの局所構造、および状態密度を説明する図。
【図22】本実施の形態における不純物を追加した金属酸化物のモデルの局所構造、および状態密度を説明する図。
【図23】実施例に係る試料のXRDスペクトルの測定結果を説明する図。
【図24】実施例に係る試料の断面TEM像、および電子回折パターンを説明する図。
【図25】実施例に係る試料の平面TEM像、断面TEM像、および電子回折パターンを説明する図。
【図26】実施例に係る試料の平面TEM像およびその画像解析像を説明する図。
【図27】六角形の回転角を導出する方法を説明する図。
【図28】ボロノイ図の作成方法を説明する図。
【図29】実施例に係るボロノイ領域の形状の個数、および割合を説明する図。
【図30】実施例に係る試料の平面TEM像、断面TEM像、およびEDXマッピングを説明する図。
【図31】実施例に係る試料のEDXマッピングを説明する図。
【図32】実施例に係る試料のId−Vg特性のグラフ。
【図33】実施例に係る試料の+GBTストレス前後のId−Vg特性のグラフ。
【図34】トランジスタのId−Vg特性及びId−Vd特性を説明する図。
【図35】GCAから計算されたId−Vg特性と移動度曲線(線形・飽和)を説明する図。
【図36】実施例に係る試料の断面TEM像、および電子回折パターンを説明する図。
【図37】実施例に係る試料の平面TEM像およびその画像解析像を説明する図。
【図38】実施例に係るボロノイ領域の形状の個数、および割合を説明する図。
【図39】実施例に係る試料の平面TEM像、断面TEM像、およびEDXマッピングを説明する図。
【図40】実施例に係る試料のEDXマッピングを説明する図。
【図41】実施例に係る試料の平面TEM像、断面TEM像、およびEDXマッピングを説明する図。
【図42】実施例に係る試料のId−Vg特性のグラフ。
【図43】実施例に係る試料の断面TEM像、EDXマッピング、および原子数比を説明する図。
【図44】実施例に係る試料の平面TEM像、EDXマッピング、および原子数比を説明する図。
【図45】Id−Vg特性を説明する図。
【図46】Id−Vg特性を説明する図。
【図47】界面準位密度の計算結果を説明する図。
【図48】Id−Vg特性を説明する図。
【図49】欠陥準位密度の計算結果を説明する図。
【図50】欠陥準位密度の計算結果を説明する図。
【図51】トランジスタのId−Vg特性を説明する図。
【図52】実施例に係る試料のXPS測定結果を用いた各原子の割合を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異な
る態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及
び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、
以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0018】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場
合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模
式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。
【0019】
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混
同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0020】
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置
関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係
は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した
語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0021】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む
少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン
領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間に
チャネル領域を有しており、チャネル領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流
すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル領域とは、電流が主と
して流れる領域をいう。
【0022】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動
作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細
書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする
【0023】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの
」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの
」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタ
などのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有す
る素子などが含まれる。
【0024】
また、本明細書等において、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として、窒素よりも酸素
の含有量が多い膜を指し、窒化酸化シリコン膜とは、その組成として、酸素よりも窒素の
含有量が多い膜を指す。
【0025】
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指
す符号は異なる図面間でも共通して用いる場合がある。
【0026】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度
で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また
、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態を
いう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されてい
る状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」
とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0027】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、場合によって
は、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」
という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語
を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0028】
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」とし
ての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「絶縁体」は境界が曖昧であり、厳密
に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「絶縁体」と
言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「絶縁体」は、「半導体
」と言い換えることができる場合がある。
【0029】
なお、本明細書等について、In:Ga:Zn=4:2:3またはその近傍とは、原子数
の総和に対して、Inが4の場合、Gaが1以上3以下(1≦Ga≦3)であり、Znが
2以上4以下(2≦Zn≦4)とする。また、In:Ga:Zn=5:1:6またはその
近傍とは、原子数の総和に対して、Inが5の場合、Gaが0.1より大きく2以下(0
.1<Ga≦2)であり、Znが5以上7以下(5≦Zn≦7)とする。また、In:G
a:Zn=1:1:1またはその近傍とは、原子数の総和に対して、Inが1の場合、G
aが0.1より大きく2以下(0.1<Ga≦2)であり、Znが0.1より大きく2以
下(0.1<Zn≦2)とする。
【0030】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である複合酸化物について説明する。なお、複合酸化
物とは、CAC(Cloud−Aligned Composite)構成を有する酸化
物である。複合酸化物として、例えば、複数の金属元素を有する金属酸化物がある。
【0031】
なお、本明細書において、本発明の一態様である複合酸化物が、半導体の機能を有する場
合、CAC−OS(OxideSemiconductor)と定義する。
【0032】
また、CAC−OS、またはCAC−metal oxideは、マトリックス複合材(
matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal m
atrix composite)と称する場合もある。
【0033】
本発明の一態様の複合酸化物は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特にイン
ジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、元素M(元素Mは、ア
ルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン
、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウ
ム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ば
れた一種、または複数種)が含まれていてもよい。
【0034】
また、本発明の一態様の複合酸化物は、窒素を有すると好ましい。具体的には、本発明の
一態様の複合酸化物において、SIMSにより得られる窒素濃度が、1×1016ato
ms/cm以上、好ましくは1×1017atoms/cm以上2×1022ato
ms/cm以下とすればよい。なお、複合酸化物に窒素を添加すると、バンドギャップ
が狭くなり、導電性が向上する傾向がある。従って、本明細書等において、本発明の一態
様である複合酸化物は、窒素などが添加された複合酸化物も含むものとする。また、窒素
を有する複合酸化物を複合酸窒化物(Metal Oxynitride)と呼称しても
よい。
【0035】
ここで、複合酸化物が、インジウム、元素M及び亜鉛を有する場合を考える。なお、複合
酸化物が有するインジウム、元素M、及び亜鉛の原子数比のそれぞれの項を[In]、[
M]、および[Zn]とする。
【0036】
<複合酸化物の構成>
本発明におけるCAC構成を有する複合酸化物である金属酸化物の概念図を図1に示す。
【0037】
CAC−OSとは、例えば、図1に示すように、金属酸化物を構成する元素が偏在するこ
とで、各元素を主成分とする領域001、および領域002を形成し、各領域が、混合し
、モザイク状に形成される。つまり、金属酸化物を構成する元素が、0.5nm以上10
nm以下、好ましくは、3nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成で
ある。なお、以下では、金属酸化物において、一つあるいはそれ以上の金属元素が偏在し
、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、3nm以下、
またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
【0038】
例えば、CAC構成を有するIn−M−Zn酸化物とは、インジウム酸化物(以下、In
X1(X1は0よりも大きい実数)とする。)、またはインジウム亜鉛酸化物(以下、
InX2ZnY2Z2(X2、Y2、およびZ2は0よりも大きい実数)とする。)と
、元素Mを含む酸化物などと、に材料が分離することでモザイク状となり、モザイク状の
InOX1、またはInX2ZnY2Z2が、膜中に分布した構成(以下、クラウド状
ともいう。)である。なお、本明細書において、分離したInOX1、またはInX2
Y2Z2に、微量のガリウム(Ga)が混和し、固溶状態を呈していてもよい。
【0039】
別言すると、本発明の一態様の金属酸化物は、In酸化物、In−M酸化物、M酸化物、
MーZn酸化物、In−Zn酸化物、及びIn−M−Zn酸化物の中から選ばれた、少な
くとも2以上の複数の酸化物または複数の材料を有する。
【0040】
代表的には、本発明の一態様の金属酸化物は、In酸化物、In−Zn酸化物、In−A
l−Zn酸化物、In−Ga−Zn酸化物、In−Y−Zn酸化物、In−Cu−Zn酸
化物、In−V−Zn酸化物、In−Be−Zn酸化物、In−B−Zn酸化物、In−
Si−Zn酸化物、In−Ti−Zn酸化物、In−Fe−Zn酸化物、In−Ni−Z
n酸化物、In−Ge−Zn酸化物、In−Zr−Zn酸化物、In−Mo−Zn酸化物
、In−La−Zn酸化物、In−Ce−Zn酸化物、In−Nd−Zn酸化物、In−
Hf−Zn酸化物、In−Ta−Zn酸化物、In−W−Zn酸化物、及びIn−Mg−
Zn酸化物の中から選ばれた、少なくとも2以上を有する。すなわち、本発明の一態様の
金属酸化物を、複数の材料または複数の成分を有する複合金属酸化物ともいえる。
【0041】
ここで、図1に示す概念が、CAC構成を有するIn−M−Zn酸化物であると仮定する
。その場合、領域001が元素Mを含む酸化物を主成分とする領域、領域002がIn
ZnY2Z2、またはInOX1を主成分とする領域であるといえる。このとき、元
素Mを含む酸化物が主成分である領域と、InX2ZnY2Z2、またはInOX1
主成分である領域と、少なくともZnを有する領域とは、周辺部が不明瞭である(ボケて
いる)ため、それぞれ明確な境界が観察できない場合がある。
【0042】
つまり、CAC構成を有するIn−M−Zn酸化物は、元素Mを含む酸化物が主成分であ
る領域と、InX2ZnY2Z2、またはInOX1が主成分である領域とが、混合し
ている金属酸化物である。従って、金属酸化物を複合金属酸化物と記載する場合がある。
なお、本明細書において、例えば、領域002の元素Mに対するInの原子数比が、領域
001の元素Mに対するInの原子数比よりも大きいことを、領域002は、領域001
と比較して、Inの濃度が高いとする。
【0043】
なお、CAC構成を有する金属酸化物とは、組成の異なる二種類以上の膜の積層構造は含
まないものとする。例えば、Inを主成分とする膜と、Gaを主成分とする膜との2層か
らなる構造は、含まない。
【0044】
具体的には、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OS(なお、CAC−OSの中で
もIn−Ga−Zn酸化物を、特にCAC−IGZOと呼称してもよい。)について説明
する。In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSは、InOX1、またはInX2
Y2Z2と、ガリウムを含む酸化物などと、に材料が分離することでモザイク状とな
り、モザイク状のInOX1、またはInX2ZnY2Z2がクラウド状である金属酸
化物である。
【0045】
つまり、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSは、ガリウムを含む酸化物が主成
分である領域と、InX2ZnY2Z2、またはInOX1が主成分である領域とが、
混合している構成を有する複合金属酸化物である。また、ガリウムを含む酸化物が主成分
である領域と、InX2ZnY2Z2、またはInOX1が主成分である領域とは、周
辺部が不明瞭である(ボケている)ため、明確な境界が観察できない場合がある。
【0046】
例えば、図1に示す概念図において、領域001がガリウムを含む酸化物を主成分とする
領域に相当し、領域002がInX2ZnY2Z2、またはInOX1を主成分とする
領域に相当する。ガリウムを含む酸化物を主成分とする領域、及びInX2ZnY2
、またはInOX1を主成分とする領域を、それぞれナノ粒子と呼称してもよい。当該
ナノ粒子は、粒子の径が0.5nm以上10nm以下、代表的には1nm以上2nm以下
である。また、上記ナノ粒子は、周辺部が不明瞭である(ボケている)ため、明確な境界
が観察できない場合がある。
【0047】
なお、領域001、および領域002のサイズは、エネルギー分散型X線分光法(EDX
:EnergyDispersiveX−rayspectroscopy)を用いて取
得したEDXマッピングで評価することができる。例えば、領域001は、断面写真のE
DXマッピングにおいて、領域001の径が、0.5nm以上10nm以下、または3n
m以下で観察される場合がある。また、領域の中心部から周辺部にかけて、主成分である
元素の密度は、徐々に小さくなる。例えば、EDXマッピングで示される元素の濃度(以
下、存在量ともいう)が、中心部から周辺部に向けて減少すると、断面写真のEDXマッ
ピングにおいて、領域の周辺部が不鮮明な状態(不明瞭な(ボケた)状態)で観察される
。例えば、InOX1が主成分である領域において、In原子は、中心部から周辺部にか
けて徐々に減少し、代わりに、Zn原子が増加することで、InX2ZnY2Z2が主
成分である領域へと段階的に変化する。従って、EDXマッピングにおいて、GaOX3
が主成分である領域の周辺部は不鮮明な状態で観察される。
【0048】
従って、In−Ga−Zn酸化物が有する領域001、または領域002において、[I
n]を1とした場合、[Ga]および[Zn]は、整数に限らない。つまり、領域001
、または領域002は、周辺部が不明瞭であり、領域001、および領域002において
も、各金属元素の濃度分布が生じているため、[In]を1とした場合、[Ga]および
[Zn]は、必ずしも整数ではない。従って、領域001、および領域002を有するI
n−Ga−Zn酸化物においても、[In]を1とした場合、[Ga]および[Zn]は
、整数に限らない。
【0049】
ここで、In−M−Zn酸化物を、例えば、InMZnといった形式で表現でき
るとした場合、本発明の一態様の複合酸化物が有する領域001は、InMm1Znn1
p1、として表すことができる。同様に本発明の一態様の複合酸化物が有する領域00
2は、InMm2Znn2p2で表すことができる。なお、上述のm、n、p、m1、
n1、p1、m2、n2、およびp2は、整数または非整数である。
【0050】
そこで、本明細書等では、InMZn、InMm1Znn1p1、またはIn
m2Znn2p2で表されるIn−M−Zn酸化物をInMZnO系酸化物、と称す
る場合がある。InMZnO系酸化物とは、化学量論比において、Inを1とした場合、
MおよびZnは、整数、または非整数である。また、領域内において、化学量論比の値が
ばらついている場合も含む。
【0051】
なお、CAC構成を有するIn−Ga−Zn酸化物における結晶構造は、特に限定されな
い。また、領域001、および領域002は、それぞれ、異なる結晶構造を有していても
よい。
【0052】
ここで、In−Ga−Zn−O系の金属酸化物をIGZOと示す場合があるが、IGZO
は通称であり、In、Ga、Zn、およびOによる1つの化合物をいう場合がある。In
−Ga−Zn−O系の金属酸化物の一例としては、結晶性の化合物が挙げられる。結晶性
の化合物は、単結晶構造、多結晶構造、またはCAAC(c−axis aligned
crystalline)構造を有する。なお、CAAC構造とは、複数のIGZOの
ナノ結晶がc軸配向を有し、かつa−b面においては配向せずに連結した層状の結晶構造
である。
【0053】
一方、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSにおいて、結晶構造は副次的な要素
である。本明細書において、CAC−IGZOとは、In、Ga、Zn、およびOを含む
金属酸化物において、Gaを主成分とする複数の領域と、Inを主成分とする複数の領域
とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している状態の金属酸化物と定義することが
できる。
【0054】
例えば、図1に示す概念図において、領域001がGaを主成分とする領域に相当し、領
域002がInを主成分とする領域に相当する。なお、Gaを主成分とする領域、及びI
nを主成分とする領域を、それぞれナノ粒子と呼称してもよい。当該ナノ粒子は、粒子の
径が0.5nm以上10nm以下、代表的には3nm以下である。また、上記ナノ粒子は
、周辺部が不明瞭である(ボケている)ため、明確な境界が観察できない場合がある。
【0055】
なお、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSにおける結晶性は、電子回折で評価
することができる。例えば、電子回折パターン像において、リング状に輝度の高い領域が
観察される。また、リング状の領域に複数のスポットが観察される場合がある。
【0056】
以上より、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSは、金属元素が均一に分布した
IGZO化合物とは異なる構造であり、IGZO化合物と異なる性質を有する。つまり、
In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSは、ガリウムを含む酸化物などが主成分で
ある領域と、InX2ZnY2Z2、またはInOX1が主成分である領域と、に互い
に分離し、各元素を主成分とする領域がモザイク状である構造を有する。
【0057】
ここで、InX2ZnY2Z2、またはInOX1が主成分である領域は、ガリウムを
含む酸化物などが主成分である領域と比較して、導電性が高い領域である。つまり、In
X2ZnY2Z2、またはInOX1が主成分である領域を、キャリアが流れることに
より、酸化物半導体としての導電性が発現する。従って、InX2ZnY2Z2、また
はInOX1が主成分である領域が、酸化物半導体中にクラウド状に分布することで、高
い電界効果移動度(μ)が実現できる。なお、InX2ZnY2Z2、またはInO
が主成分である領域は、導電体の性質に近い、半導体の領域ともいえる。
【0058】
一方、ガリウムを含む酸化物などが主成分である領域は、InX2ZnY2Z2、また
はInOX1が主成分である領域と比較して、絶縁性が高い領域である。つまり、ガリウ
ムを含む酸化物などが主成分である領域が、酸化物半導体中に分布することで、リーク電
流を抑制し、良好なスイッチング動作を実現できる。なお、InGaZnなど
が主成分である領域は、絶縁体の性質に近い、半導体の領域ともいえる。
【0059】
従って、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSを半導体素子に用いた場合、ガリ
ウムを含む酸化物などに起因する絶縁性と、InX2ZnY2Z2、またはInOX1
に起因する導電性とが、相補的に作用することにより、高いオン電流(Ion)、高い電
界効果移動度(μ)、および、低いオフ電流(Ioff)を実現することができる。
【0060】
また、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSを用いた半導体素子は、信頼性が高
い。従って、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSは、ディスプレイをはじめと
するさまざまな半導体装置に最適である。
【0061】
<金属酸化物を有するトランジスタ>
続いて、上記金属酸化物を半導体としてトランジスタに用いる場合について説明する。
【0062】
なお、上記金属酸化物を半導体としてトランジスタに用いることで、電界効果移動度が高
く、かつ、スイッチング特性が高いトランジスタを実現することができる。また、信頼性
の高いトランジスタを実現することができる。
【0063】
図2(A)は、上記金属酸化物をチャネル領域に用いたトランジスタの模式図である。図
2(A)において、トランジスタは、ソースと、ドレインと、第1のゲートと、第2のゲ
ートと、第1のゲート絶縁部と、第2のゲート絶縁部と、チャネル部と、を有する。トラ
ンジスタは、ゲートに印加する電位によって、チャネル部の抵抗を制御することができる
。即ち、第1のゲート、または第2のゲートに印加する電位によって、ソースとドレイン
との間の導通(トランジスタがオン状態)・非導通(トランジスタがオフ状態)を制御す
ることができる。
【0064】
ここで、チャネル部は、第1のバンドギャップを有する領域001と、第2のバンドギャ
ップを有する領域002と、がクラウド状であるCAC−OSを有している。なお、第1
のバンドギャップは、第2のバンドギャップよりも大きいものとする。
【0065】
例えば、チャネル部のCAC−OSとして、CAC構成を有するIn−Ga−Zn酸化物
を用いる場合について説明する。CAC構成を有するIn−Ga−Zn酸化物は、領域0
01として、領域002よりもGaの濃度が高いInGaZnを主成分とする
領域と、領域002として、領域001よりもInの濃度が高いInX2ZnY2Z2
、またはInOX1が主成分である領域と、に材料が分離することでモザイク状となり、
InGaZnと、InOX1、またはInX2ZnY2Z2が、膜中に分布
した構成(クラウド状)である。なお、InGaZnを主成分とする領域00
1は、InX2ZnY2Z2、またはInOX1が主成分である領域002よりも、大
きなバンドギャップを有する。
【0066】
ここで、CAC−OSをチャネル部に有する図2(A)に示すトランジスタの伝導モデル
について説明する。図2(B)は、図2(A)に示すトランジスタのソースとドレインと
の間におけるエネルギー準位の分布を説明する模式図である。また、図2(C)は、図2
(A)に示すトランジスタにおいて、X−X’で示す実線上における伝導バンド図である
。なお、各伝導バンド図において、実線は伝導帯下端のエネルギーを示す。また、E
示す一点鎖線は電子の擬フェルミ準位のエネルギーを示す。また、ここでは、第1のゲー
ト電圧として、ゲートとソースとの間にマイナスの電圧を印加し、ソースとドレインとの
間にドレイン電圧(V>0)を印加している。
【0067】
図2(A)に示すトランジスタに、マイナスのゲート電圧を印加すると、図2(B)に示
すように、ソースとドレインとの間に、領域001に由来する伝導帯下端のエネルギーC
001と、領域002に由来する伝導帯下端のエネルギーCB002と、が形成される
。ここで、第1のバンドギャップは第2のバンドギャップよりも大きいため、伝導帯下端
のエネルギーCB001におけるポテンシャル障壁は、伝導帯下端のエネルギーCB00
のポテンシャル障壁よりも大きい。つまり、チャネル部におけるポテンシャル障壁の最
大値は、領域001に起因する値をとる。従って、CAC−OSをチャネル部に用いるこ
とで、リーク電流を抑制し、スイッチング特性が高いトランジスタとすることができる。
【0068】
また、図2(C)に示すように、第1のバンドギャップを有する領域001は、第2のバ
ンドギャップを有する領域002より、バンドギャップが相対的に広いので、第1のバン
ドギャップを有する領域001のEc端は、第2のバンドギャップを有する領域002の
Ec端よりも相対的に高い位置に存在しうる。
【0069】
例えば、第1のバンドギャップを有する領域001の成分が、In−Ga−Zn酸化物(
In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比])であり、第2のバンドギャップを有する領
域002の成分がIn−Zn酸化物(In:Zn=2:3[原子数比])である場合を仮
定する。この場合、第1のバンドギャップは、3.3eV、またはその近傍であり、第2
のバンドギャップは、2.4eV、またはその近傍となる。なお、バンドギャップの値は
、各材料の単膜をエリプソメータで測定して得られる値を用いる。
【0070】
上記の仮定の場合、第1のバンドギャップと、第2のバンドギャップとの差は0.9eV
である。本発明の一態様においては、第1のバンドギャップと、第2のバンドギャップと
の差が、少なくとも0.1eV以上あればよい。ただし、第1のバンドギャップを有する
領域001に由来する価電子帯上端のエネルギーの位置と、第2のバンドギャップを有す
る領域002に由来する価電子帯上端のエネルギーの位置が異なる場合があるので、第1
のバンドギャップと、第2のバンドギャップとの差が、好ましくは0.3eV以上、さら
に好ましくは0.4eV以上であるとよい。
【0071】
また、上記の仮定の場合、CAC−OS中にキャリアが流れる際に、第2のバンドギャッ
プ、すなわちナローバンドで
あるIn−Zn酸化物に起因してキャリアが流れる。この際に、第2のバンドギャップか
ら第1のバンドギャップ、すなわちワイドバンドであるIn−Ga−Zn酸化物側にキャ
リアが溢れる。別言すると、ナローバンドであるIn−Zn酸化物の方がキャリアを生成
しやすく、当該キャリアは、ワイドバンドであるIn−Ga−Zn酸化物に移動する。
【0072】
なお、チャネル部を形成する金属酸化物中において、領域001と、領域002とは、モ
ザイク状であり、領域001、および領域002は不規則に偏在している。そのため、X
−X’で示す実線上における伝導バンド図は一例である。
【0073】
基本的に、図3(A)に示すように、領域002が領域001に挟まれたバンドを形成し
ていればよい。または、領域001が領域002に挟まれたバンドを形成していればよい
【0074】
また、実際のCAC−OSでは、第1のバンドギャップを有する領域001と第2のバン
ドギャップを有する領域002との接合部は、領域の凝集形態や組成に揺らぎが生じてい
ると考えられる。従って、図3(B)、および図3(C)に示すように、バンドは不連続
ではなく、連続的に変化している場合がある。すなわち、CAC−OS中にキャリアが流
れる際に、第1のバンドギャップと、第2のバンドギャップとが連動すると言い換えても
良い。
【0075】
図4に、図2(A)に示すトランジスタのX−X’で示す方向において、図2(B)に示
す模式図に対応する概略バンドダイアグラムのモデルを示す。なお、第1のゲートに電圧
を印加する場合、第2のゲートにも同じ電圧を同時に印加している。図4(A)には、第
1のゲート電圧Vとして、ゲートとソースとの間にプラスの電圧(V>0)を印加し
た状態(ON State)を示す。図4(B)には、第1のゲート電圧Vを印加しな
い(V=0)状態を示す。図4(C)には、第1のゲート電圧Vとして、ゲートとソ
ースとの間にマイナスの電圧(V<0)を印加した状態(OFF State)を示す
。なお、チャネル部において、破線は電圧が印加されていない場合の伝導帯下端のエネル
ギーを示し、実線は電圧が印加された場合の伝導帯下端のエネルギーを示す。また、E
で示す一点鎖線は電子の擬フェルミ準位のエネルギーを示す。
【0076】
CAC−OSをチャネル部に有するトランジスタは、第1のバンドギャップを有する領域
001と第2のバンドギャップを有する領域002とが、電気的に相互作用を及ぼす。別
言すると、第1のバンドギャップを有する領域001と第2のバンドギャップを有する領
域002とが、相補的に機能する。
【0077】
つまり、図4(A)に示すように、順方向電圧が印加された場合、領域002の伝導帯と
比べて、領域001の伝導帯の方がより下がる。従って、領域002の伝導帯だけでなく
、領域001の伝導帯でもキャリアが流れることで、大きなオン電流が得られると考えら
れる。一方、図4(B)、および図4(C)に示すように、逆方向電圧が印加された場合
、領域001、および領域002の伝導帯が上がることから、ソースドレイン間に流れる
電流は極めて小さくなると考えられる。
【0078】
また、図5に、図2(A)に示すトランジスタのX−X’で示す実線上において、図2(
C)に示す模式図に対応する概略バンドダイアグラムのモデルを示す。なお、第1のゲー
ト電極に電圧を印加する場合、第2のゲート電極にも同じ電圧を同時に印加している。図
5(A)には、第1のゲート電圧Vとして、ゲートとソースとの間にプラスの電圧(V
>0)を印加した状態(ON State)を示す。図5(B)には、第1のゲート電
圧Vを印加しない(V=0)状態を示す。図5(C)には、第1のゲート電圧V
して、ゲートとソースとの間にマイナスの電圧(V<0)を印加した状態(OFF S
tate)を示す。なお、チャネル部において、実線は伝導帯下端のエネルギーを示す。
また、Eで示す一点鎖線は電子の擬フェルミ準位のエネルギーを示す。ここで、領域0
01の伝導帯下端のエネルギーと領域002の伝導帯下端のエネルギー差をΔEcとする
。さらに、ΔEc(Vg=0)は電圧を印加しない(V=0)状態のΔEc、ΔEc(
Vg>0)はトランジスタをオン状態にする方向の電圧(V>0)を印加した状態のΔ
Ec、ΔEc(Vg<0)はマイナスの電圧(V<0)を印加した状態のΔEcのこと
を指す。
【0079】
図5(A)に示すように、トランジスタをオン状態にする電位(V>0)が、第1のゲ
ートに印加されると、ΔEc(Vg>0)<ΔEc(Vg=0)となる。従って、Ec端
の低い第2のバンドギャップを有する領域002が主な伝導経路となり、電子が流れると
同時に、第1のバンドギャップを有する領域001にも電子が流れる。このためトランジ
スタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流および高い電界効果移動
度を得ることができる。
【0080】
一方、図5(B)、および図5(C)に示すように、第1のゲートにしきい値電圧未満の
電圧(V≦0)を印加することで、第1のバンドギャップを有する領域001は、誘電
体(絶縁体)として振る舞うので、領域001中の伝導経路は遮断される。また、第2の
バンドギャップを有する領域002は、第1のバンドギャップを有する領域001と接し
ている。従って、第1のバンドギャップを有する領域001は、自らに加えて第2のバン
ドギャップを有する領域002へ電気的に相互作用を及ぼし、第2のバンドギャップを有
する領域002中の伝導経路すらも遮断する。これでチャネル部全体が非導通状態となり
、トランジスタはオフ状態となる。従って、ΔEc(Vg=0)<ΔEc(Vg<0)と
なる。
【0081】
以上より、トランジスタにCAC−OSを用いることで、トランジスタの動作時、例えば
、ゲートと、ソースまたはドレインとの間に電位差が生じた時に、ゲートと、ソースまた
はドレインと、の間のリーク電流を低減または防止することができる。
【0082】
また、トランジスタには、キャリア密度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。高純
度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物は、キャリア発生源が少ないため、キ
ャリア密度を低くすることができる。また、高純度真性または実質的に高純度真性である
金属酸化物は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0083】
また、金属酸化物のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く
、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い金
属酸化物にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合があ
る。
【0084】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、金属酸化物中の不純物濃度を低
減することが有効である。また、金属酸化物中の不純物濃度を低減するためには、近接す
る膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、アルカリ金属、
アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0085】
ここで、金属酸化物中における各不純物の影響について説明する。
【0086】
金属酸化物において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、金属酸化
物において欠陥準位が形成される。このため、金属酸化物におけるシリコンや炭素の濃度
と、金属酸化物との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS
:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる
濃度)を、2×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1017atoms/
cm以下とする。
【0087】
また、金属酸化物にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成
し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含
まれている金属酸化物を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このた
め、金属酸化物中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好まし
い。具体的には、SIMSにより得られる金属酸化物中のアルカリ金属またはアルカリ土
類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016ato
ms/cm以下とする。
【0088】
また、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、
酸素欠損(V)を形成する場合がある。該酸素欠損(V)に水素が入ることで、キャ
リアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と
結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている金属
酸化物を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、金属酸化物
中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において
、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm未満、好ましく
は1×1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm
未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満とする。
【0089】
なお、金属酸化物中の酸素欠損(V)は、酸素を金属酸化物に導入することで、低減す
ることができる。つまり、金属酸化物中の酸素欠損(V)に、酸素が補填されることで
、酸素欠損(V)は消失する。従って、金属酸化物中に、酸素を拡散させることで、ト
ランジスタの酸素欠損(V)を低減し、信頼性を向上させることができる。
【0090】
なお、酸素を金属酸化物に導入する方法として、例えば、金属酸化物に接して、化学量論
的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物を設けることができる。つまり、酸化
物には、化学量論的組成よりも酸素が過剰に存在する領域(以下、過剰酸素領域ともいう
)が形成されていることが好ましい。特に、トランジスタに金属酸化物を用いる場合、ト
ランジスタ近傍の下地膜や、層間膜などに、過剰酸素領域を有する酸化物を設けることで
、トランジスタの酸素欠損を低減し、信頼性を向上させることができる。
【0091】
不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル領域に用いることで、安
定した電気特性を付与することができる。
【0092】
<金属酸化物の成膜方法>
以下では、金属酸化物の成膜方法の一例について説明する。
【0093】
金属酸化物を成膜する際の温度としては、室温以上140℃未満とすることが好ましい。
なお、室温とは、温度調節を行わない場合だけでなく、基板を冷却するなど温度調節を行
う場合も含むものとする。
【0094】
また、スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、希ガス及び酸素の
混合ガスを適宜用いる。混合ガスの場合、成膜ガス全体に占める酸素ガスの割合が、0%
以上30%以下、好ましくは5%以上20%以下とする。
【0095】
なお、スパッタリングガスとして酸素を含むと、金属酸化物の成膜と同時に、下層の膜に
、酸素を添加し、過剰酸素領域を設けることができる。また、スパッタリングガスの高純
度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとして用いる酸素ガスやアルゴンガスは
、露点が−40℃以下、好ましくは−80℃以下、より好ましくは−100℃以下、より
好ましくは−120℃以下にまで高純度化したガスを用いることで金属酸化物に水分等が
取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0096】
また、スパッタリング法で金属酸化物を成膜する場合、スパッタリング装置におけるチャ
ンバーは、金属酸化物にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプ
のような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空(5×10−7Paから1×10−4
a程度まで)排気することが好ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを
組み合わせて排気系からチャンバー内に気体、特に炭素または水素を含む気体が逆流しな
いようにしておくことが好ましい。
【0097】
また、ターゲットとして、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲットを用いることができる
。例えば、[In]:[Ga]:[Zn]=4:2:4.1[原子数比]、または[In
]:[Ga]:[Zn]=5:1:7[原子数比]、またはその近傍値の原子数比である
金属酸化物ターゲットを用いることが好ましい。
【0098】
また、スパッタリング装置において、ターゲットを回転または移動させても構わない。例
えば、成膜中にマグネットユニットを上下または/及び左右に揺動させることによって、
本発明の複合金属酸化物を形成することができる。例えば、ターゲットを、0.1Hz以
上1kHz以下のビート(リズム、拍子、パルス、周波、周期またはサイクルなどと言い
換えてもよい。)で回転または揺動させればよい。または、マグネットユニットを、0.
1Hz以上1kHz以下のビートで揺動させればよい。
【0099】
例えば、スパッタリングガスとして、酸素のガス比が10%程度の希ガス、および酸素の
混合ガスを用い、基板温度を130℃とし、[In]:[Ga]:[Zn]=4:2:4
.1[原子数比]のIn−Ga−Zn金属酸化物ターゲットを揺動させながら成膜を行う
ことで、本発明の金属酸化物を形成することができる。
【0100】
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態または他の実施例に示す構成と適宜、
組み合わせて用いることができる。
【0101】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置及び半導体装置の作製方法について、図
6乃至図15を参照して説明する。
【0102】
<2−1.半導体装置の構成例1>
図6(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100の上面図であり、
図6(B)は、図6(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し
、図6(C)は、図6(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当
する。なお、図6(A)において、煩雑になることを避けるため、トランジスタ100の
構成要素の一部(ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜等)を省略して図示している。また
、一点鎖線X1−X2方向をチャネル長方向、一点鎖線Y1−Y2方向をチャネル幅方向
と呼称する場合がある。なお、トランジスタの上面図においては、以降の図面においても
図6(A)と同様に、構成要素の一部を省略して図示する場合がある。
【0103】
図6(A)(B)(C)に示すトランジスタ100は、所謂トップゲート構造のトランジ
スタである。
【0104】
トランジスタ100は、基板102上の絶縁膜104と、絶縁膜104上の金属酸化物1
08と、金属酸化物108上の絶縁膜110と、絶縁膜110上の導電膜112と、絶縁
膜104、金属酸化物108、及び導電膜112上の絶縁膜116と、を有する。
【0105】
また、金属酸化物108は、絶縁膜110を介して、導電膜112が重畳する領域を有す
る。例えば、金属酸化物108は、Inと、M(MはAl、Ga、Y、またはSn)と、
Znと、を有すると好ましい。
【0106】
また、金属酸化物108は、導電膜112が重畳せずに、且つ絶縁膜116が接する領域
において、領域108nを有する。領域108nは、先に説明した金属酸化物108が、
n型化した領域である。なお、領域108nは、絶縁膜116と接し、絶縁膜116は、
窒素または水素を有する。そのため、絶縁膜116中の窒素または水素が領域108nに
添加されることで、キャリア密度が高くなりn型となる。
【0107】
また、金属酸化物108は、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有すると好ま
しい。一例としては、金属酸化物108のIn、M、及びZnの原子数の比を、In:M
:Zn=4:2:3近傍とすると好ましい。
【0108】
なお、金属酸化物108は、上記の組成に限定されない。例えば、金属酸化物108のI
n、M、及びZnの原子数の比を、In:M:Zn=5:1:6近傍としてもよい。ここ
で近傍とは、Inが5の場合、Mが0.5以上1.5以下であり、且つZnが5以上7以
下を含む。
【0109】
金属酸化物108が、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有することで、トラ
ンジスタ100の電界効果移動度を高くすることができる。具体的には、トランジスタ1
00の電界効果移動度が10cm/Vを超える、さらに好ましくはトランジスタ10
0の電界効果移動度が30cm/Vを超えることが可能となる。
【0110】
例えば、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、ゲート信号を生成するゲートドラ
イバに用いることで、額縁幅の狭い(狭額縁ともいう)表示装置を提供することができる
。また、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、表示装置が有する信号線からの信
号の供給を行うソースドライバ(とくに、ソースドライバが有するシフトレジスタの出力
端子に接続されるデマルチプレクサ)に用いることで、表示装置に接続される配線数が少
ない表示装置を提供することができる。
【0111】
一方で、金属酸化物108が、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有していて
も、金属酸化物108の結晶性が高い場合、電界効果移動度が低くなる場合がある。
【0112】
なお、金属酸化物108の結晶性としては、例えば、X線回折(XRD:X−Ray D
iffraction)を用いて分析する、あるいは、透過型電子顕微鏡(TEM:Tr
ansmission Electron Microscope)を用いて分析するこ
とで解析できる。
【0113】
まず、金属酸化物108中に形成されうる酸素欠損について説明を行う。
【0114】
金属酸化物108に形成される酸素欠損は、トランジスタ特性に影響を与えるため問題と
なる。例えば、金属酸化物108中に酸素欠損が形成されると、該酸素欠損に水素が結合
し、キャリア供給源となる。金属酸化物108中にキャリア供給源が生成されると、金属
酸化物108を有するトランジスタ100の電気特性の変動、代表的にはしきい値電圧の
シフトが生じる。したがって、金属酸化物108においては、酸素欠損が少ないほど好ま
しい。
【0115】
そこで、本発明の一態様においては、金属酸化物108近傍の絶縁膜、具体的には、金属
酸化物108の上方に形成される絶縁膜110及び金属酸化物108の下方に形成される
絶縁膜104のいずれか一方または双方が、過剰酸素を含有する構成である。絶縁膜10
4及び絶縁膜110のいずれか一方または双方から金属酸化物108へ酸素または過剰酸
素を移動させることで、金属酸化物中の酸素欠損を低減することが可能となる。
【0116】
金属酸化物108に混入する水素または水分などの不純物は、トランジスタ特性に影響を
与えるため問題となる。したがって、金属酸化物108においては、水素または水分など
の不純物が少ないほど好ましい。
【0117】
なお、金属酸化物108としては、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い金属酸化物を
用いることで、優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができ好ましい。こ
こでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真性
または実質的に高純度真性とよぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化
物は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、該
金属酸化物にチャネル領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる
電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実
質的に高純度真性である金属酸化物は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低
くなる場合がある。また、高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物は、オ
フ電流が著しく小さく、チャネル幅が1×10μmでチャネル長が10μmの素子であ
っても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲に
おいて、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10
13A以下という特性を得ることができる。
【0118】
また、図6(A)(B)(C)に示すように、トランジスタ100は、絶縁膜116上の
絶縁膜118と、絶縁膜116、118に設けられた開口部141aを介して、領域10
8nに電気的に接続される導電膜120aと、絶縁膜116、118に設けられた開口部
141bを介して、領域108nに電気的に接続される導電膜120bと、を有していて
もよい。
【0119】
なお、本明細書等において、絶縁膜104を第1の絶縁膜と、絶縁膜110を第2の絶縁
膜と、絶縁膜116を第3の絶縁膜と、絶縁膜118を第4の絶縁膜と、それぞれ呼称す
る場合がある。また、導電膜112は、ゲート電極としての機能を有し、導電膜120a
は、ソース電極としての機能を有し、導電膜120bは、ドレイン電極としての機能を有
する。
【0120】
また、絶縁膜110は、ゲート絶縁膜としての機能を有する。また、絶縁膜110は、過
剰酸素領域を有する。絶縁膜110が過剰酸素領域を有することで、金属酸化物108中
に過剰酸素を供給することができる。よって、金属酸化物108中に形成されうる酸素欠
損を過剰酸素により補填することができるため、信頼性の高い半導体装置を提供すること
ができる。
【0121】
なお、金属酸化物108中に過剰酸素を供給させるためには、金属酸化物108の下方に
形成される絶縁膜104に過剰酸素を供給してもよい。この場合、絶縁膜104中に含ま
れる過剰酸素は、領域108nにも供給されうる。領域108n中に過剰酸素が供給され
ると、領域108n中の抵抗が高くなり、好ましくない。一方で、金属酸化物108の上
方に形成される絶縁膜110に過剰酸素を有する構成とすることで、導電膜112と重畳
する領域にのみ選択的に過剰酸素を供給させることが可能となる。
【0122】
<2−2.半導体装置の構成要素>
次に、本実施の形態の半導体装置に含まれる構成要素について、詳細に説明する。
【0123】
[基板]
基板102の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の
耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サフ
ァイア基板等を、基板102として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンを材料
とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基
板、SOI基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられ
たものを、基板102として用いてもよい。なお、基板102として、ガラス基板を用い
る場合、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200
mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800
mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等の大面積基板を用いることで、大
型の表示装置を作製することができる。
【0124】
また、基板102として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ100
を形成してもよい。または、基板102とトランジスタ100の間に剥離層を設けてもよ
い。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板102より分
離し、他の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ100は耐熱
性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。
【0125】
[第1の絶縁膜]
絶縁膜104としては、スパッタリング法、CVD法、蒸着法、パルスレーザー堆積(P
LD)法、印刷法、塗布法等を適宜用いて形成することができる。また、絶縁膜104と
しては、例えば、酸化物絶縁膜または窒化物絶縁膜を単層または積層して形成することが
できる。なお、金属酸化物108との界面特性を向上させるため、絶縁膜104において
少なくとも金属酸化物108と接する領域は酸化物絶縁膜で形成することが好ましい。ま
た、絶縁膜104として加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜を用いることで、加熱処
理により絶縁膜104に含まれる酸素を、金属酸化物108に移動させることが可能であ
る。
【0126】
絶縁膜104の厚さは、50nm以上、または100nm以上3000nm以下、または
200nm以上1000nm以下とすることができる。絶縁膜104を厚くすることで、
絶縁膜104の酸素放出量を増加させることができると共に、絶縁膜104と金属酸化物
108との界面における界面準位、並びに金属酸化物108に含まれる酸素欠損を低減す
ることが可能である。
【0127】
絶縁膜104として、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化
シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa−Zn酸化物な
どを用いればよく、単層または積層で設けることができる。本実施の形態では、絶縁膜1
04として、窒化シリコン膜と、酸化窒化シリコン膜との積層構造を用いる。このように
、絶縁膜104を積層構造として、下層側に窒化シリコン膜を用い、上層側に酸化窒化シ
リコン膜を用いることで、金属酸化物108中に効率よく酸素を導入することができる。
【0128】
[導電膜]
ゲート電極として機能する導電膜112、ソース電極として機能する導電膜120a、ド
レイン電極として機能する導電膜120bとしては、クロム(Cr)、銅(Cu)、アル
ミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、タン
タル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、ニッケル(N
i)、鉄(Fe)、コバルト(Co)から選ばれた金属元素、または上述した金属元素を
成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いてそれぞれ形成するこ
とができる。
【0129】
また、導電膜112、120a、120bには、インジウムと錫とを有する酸化物(In
−Sn酸化物)、インジウムとタングステンとを有する酸化物(In−W酸化物)、イン
ジウムとタングステンと亜鉛とを有する酸化物(In−W−Zn酸化物)、インジウムと
チタンとを有する酸化物(In−Ti酸化物)、インジウムとチタンと錫とを有する酸化
物(In−Ti−Sn酸化物)、インジウムと亜鉛とを有する酸化物(In−Zn酸化物
)、インジウムと錫とシリコンとを有する酸化物(In−Sn−Si酸化物)、インジウ
ムとガリウムと亜鉛とを有する酸化物(In−Ga−Zn酸化物)等の酸化物導電体また
は金属酸化物を適用することもできる。
【0130】
ここで、酸化物導電体について説明を行う。本明細書等において、酸化物導電体をOC(
Oxide Conductor)と呼称してもよい。酸化物導電体としては、例えば、
金属酸化物に酸素欠損を形成し、該酸素欠損に水素を添加すると、伝導帯近傍にドナー準
位が形成される。この結果、金属酸化物は、導電性が高くなり導電体化する。導電体化さ
れた金属酸化物を、酸化物導電体ということができる。一般に、金属酸化物は、エネルギ
ーギャップが大きいため、可視光に対して透光性を有する。一方、酸化物導電体は、伝導
帯近傍にドナー準位を有する金属酸化物である。したがって、酸化物導電体は、ドナー準
位による吸収の影響は小さく、可視光に対して金属酸化物と同程度の透光性を有する。
【0131】
特に、導電膜112に上述の酸化物導電体を用いると、絶縁膜110中に過剰酸素を添加
することができるので好適である。
【0132】
また、導電膜112、120a、120bには、Cu−X合金膜(Xは、Mn、Ni、C
r、Fe、Co、Mo、Ta、またはTi)を適用してもよい。Cu−X合金膜を用いる
ことで、ウエットエッチングプロセスで加工できるため、製造コストを抑制することが可
能となる。
【0133】
また、導電膜112、120a、120bには、上述の金属元素の中でも、特にチタン、
タングステン、タンタル、及びモリブデンの中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有
すると好適である。特に、導電膜112、120a、120bとしては、窒化タンタル膜
を用いると好適である。当該窒化タンタル膜は、導電性を有し、且つ、銅または水素に対
して、高いバリア性を有する。また、窒化タンタル膜は、さらに自身からの水素の放出が
少ないため、金属酸化物108と接する導電膜、または金属酸化物108の近傍の導電膜
として、好適に用いることができる。
【0134】
また、導電膜112、120a、120bを、無電解めっき法により形成することができ
る。当該無電解めっき法により形成できる材料としては、例えば、Cu、Ni、Al、A
u、Sn、Co、Ag、及びPdの中から選ばれるいずれか一つまたは複数を用いること
が可能である。特に、CuまたはAgを用いると、導電膜の抵抗を低くすることができる
ため、好適である。
【0135】
[第2の絶縁膜]
トランジスタ100のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜110としては、プラズマ化学
気相堆積(PECVD:(Plasma Enhanced Chemical Vap
or Deposition))法、スパッタリング法等により、酸化シリコン膜、酸化
窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフ
ニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜
、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜および酸化ネオジム膜を一種以
上含む絶縁層を用いることができる。なお、絶縁膜110を、2層の積層構造または3層
以上の積層構造としてもよい。
【0136】
また、トランジスタ100のチャネル領域として機能する金属酸化物108と接する絶縁
膜110は、酸化物絶縁膜であることが好ましく、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含
有する領域(過剰酸素領域)を有することがより好ましい。別言すると、絶縁膜110は
、酸素を放出することが可能な絶縁膜である。なお、絶縁膜110に過剰酸素領域を設け
るには、例えば、酸素雰囲気下にて絶縁膜110を形成する、もしくは成膜後の絶縁膜1
10を酸素雰囲気下で熱処理すればよい。
【0137】
また、絶縁膜110として、酸化ハフニウムを用いる場合、以下の効果を奏する。酸化ハ
フニウムは、酸化シリコンや酸化窒化シリコンと比べて比誘電率が高い。したがって、酸
化シリコンを用いた場合と比べて、絶縁膜110の膜厚を大きくできるため、トンネル電
流によるリーク電流を小さくすることができる。すなわち、オフ電流の小さいトランジス
タを実現することができる。さらに、結晶構造を有する酸化ハフニウムは、非晶質構造を
有する酸化ハフニウムと比べて高い比誘電率を備える。したがって、オフ電流の小さいト
ランジスタとするためには、結晶構造を有する酸化ハフニウムを用いることが好ましい。
結晶構造の例としては、単斜晶系や立方晶系などが挙げられる。ただし、本発明の一態様
は、これらに限定されない。
【0138】
また、絶縁膜110は、欠陥が少ないことが好ましく、代表的には、電子スピン共鳴法(
ESR:Electron Spin Resonance)で観察されるシグナルが少
ない方が好ましい。例えば、上述のシグナルとしては、g値が2.001に観察されるE
’センターが挙げられる。なお、E’センターは、シリコンのダングリングボンドに起因
する。絶縁膜110としては、E’センター起因のスピン密度が、3×1017spin
s/cm以下、好ましくは5×1016spins/cm以下である酸化シリコン膜
、または酸化窒化シリコン膜を用いればよい。
【0139】
[金属酸化物]
金属酸化物108としては、先に示す金属酸化物を用いることができる。
【0140】
<原子数比>
以下に、図16(A)、図16(B)、および図16(C)を用いて、本発明に係る金属
酸化物が有するインジウム、元素Mおよび亜鉛の原子数比の好ましい範囲について説明す
る。なお、図16(A)、図16(B)、および図16(C)には、酸素の原子数比につ
いては記載しない。また、金属酸化物が有するインジウム、元素M、および亜鉛の原子数
比のそれぞれの項を[In]、[M]、および[Zn]とする。
【0141】
図16(A)、図16(B)、および図16(C)において、破線は、[In]:[M]
:[Zn]=(1+α):(1−α):1の原子数比(−1≦α≦1)となるライン、[
In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):2の原子数比となるライン、[I
n]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):3の原子数比となるライン、[In
]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):4の原子数比となるライン、および[
In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):5の原子数比となるラインを表す
【0142】
また、一点鎖線は、[In]:[M]:[Zn]=5:1:βの原子数比(β≧0)とな
るライン、[In]:[M]:[Zn]=2:1:βの原子数比となるライン、[In]
:[M]:[Zn]=1:1:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]
=1:2:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:3:βの原子
数比となるライン、および[In]:[M]:[Zn]=1:4:βの原子数比となるラ
インを表す。
【0143】
また、図16(A)、図16(B)、および図16(C)に示す、[In]:[M]:[
Zn]=0:2:1の原子数比、およびその近傍値の金属酸化物は、スピネル型の結晶構
造をとりやすい。
【0144】
また、金属酸化物中に複数の相が共存する場合がある(二相共存、三相共存など)。例え
ば、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の近傍値である場合、スピネル
型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。また、原子数比が[In]:[
M]:[Zn]=1:0:0の近傍値である場合、ビックスバイト型の結晶構造と層状の
結晶構造との二相が共存しやすい。金属酸化物中に複数の相が共存する場合、異なる結晶
構造の間において、結晶粒界が形成される場合がある。
【0145】
図16(A)に示す領域Aは、金属酸化物が有する、インジウム、元素M、および亜鉛の
原子数比の好ましい範囲の一例について示している。
【0146】
金属酸化物は、インジウムの含有率を高くすることで、金属酸化物のキャリア移動度(電
子移動度)を高くすることができる。従って、インジウムの含有率が高い金属酸化物はイ
ンジウムの含有率が低い金属酸化物と比較してキャリア移動度が高くなる。
【0147】
一方、金属酸化物中のインジウムおよび亜鉛の含有率が低くなると、キャリア移動度が低
くなる。従って、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=0:1:0、およびその近傍
値である場合(例えば図16(C)に示す領域C)は、絶縁性が高くなる。
【0148】
従って、本発明の一態様の金属酸化物は、キャリア移動度が高い、図16(A)の領域A
で示される原子数比を有することが好ましい。
【0149】
特に、図16(B)に示す領域Bでは、領域Aの中でも、キャリア移動度が高く、信頼性
が高い優れた金属酸化物が得られる。
【0150】
なお、領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=4:2:3から4.1、およびその近傍
値を含む。近傍値には、例えば、[In]:[M]:[Zn]=5:3:4が含まれる。
また、領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=5:1:6、およびその近傍値、および
[In]:[M]:[Zn]=5:1:7、およびその近傍値を含む。
【0151】
なお、金属酸化物が有する性質は、原子数比によって一義的に定まらない。同じ原子数比
であっても、形成条件により、金属酸化物の性質が異なる場合がある。例えば、金属酸化
物をスパッタリング装置にて成膜する場合、ターゲットの原子数比からずれた原子数比の
膜が形成される。また、成膜時の基板温度によっては、ターゲットの[Zn]よりも、膜
の[Zn]が小さくなる場合がある。従って、図示する領域は、金属酸化物が特定の特性
を有する傾向がある原子数比を示す領域であり、領域A乃至領域Cの境界は厳密ではない
【0152】
また、金属酸化物108が、In−M−Zn酸化物の場合、スパッタリングターゲットと
しては、多結晶のIn−M−Zn酸化物を含むターゲットを用いると好ましい。なお、成
膜される金属酸化物108の原子数比は、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金
属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。例えば、金属酸化物108に用
いるスパッタリングターゲットの組成がIn:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]
の場合、成膜される金属酸化物108の組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数
比]の近傍となる場合がある。また、金属酸化物108に用いるスパッタリングターゲッ
トの組成がIn:Ga:Zn=5:1:7[原子数比]の場合、成膜される金属酸化物1
08の組成は、In:Ga:Zn=5:1:6[原子数比]の近傍となる場合がある。
【0153】
また、金属酸化物108は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以
上である。このように、エネルギーギャップの広い金属酸化物を用いることで、トランジ
スタ100のオフ電流を低減することができる。
【0154】
また、金属酸化物108は、非単結晶構造であると好ましい。非単結晶構造は、例えば、
後述するCAAC−OS、多結晶構造、微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶
構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高い。
【0155】
[第3の絶縁膜]
絶縁膜116は、窒素または水素を有する。絶縁膜116としては、例えば、窒化物絶縁
膜が挙げられる。該窒化物絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化
シリコン等を用いて形成することができる。絶縁膜116に含まれる水素濃度は、1×1
22atoms/cm以上であると好ましい。また、絶縁膜116は、金属酸化物1
08の領域108nと接する。したがって、絶縁膜116と接する領域108n中の不純
物(例えば、水素)濃度が高くなり、領域108nのキャリア密度を高めることができる
【0156】
[第4の絶縁膜]
絶縁膜118としては、酸化物絶縁膜を用いることができる。また、絶縁膜118として
は、酸化物絶縁膜と、窒化物絶縁膜との積層膜を用いることができる。絶縁膜118とし
て、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸
化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa−Zn酸化物などを用いればよい。
【0157】
また、絶縁膜118としては、外部からの水素、水等のバリア膜として機能する膜である
ことが好ましい。
【0158】
絶縁膜118の厚さは、30nm以上500nm以下、または100nm以上400nm
以下とすることができる。
【0159】
<2−3.トランジスタの構成例2>
次に、図6(A)(B)(C)に示すトランジスタと異なる構成について、図7(A)(
B)(C)を用いて説明する。
【0160】
図7(A)は、トランジスタ150の上面図であり、図7(B)は図7(A)の一点鎖線
X1−X2間の断面図であり、図7(C)は図7(A)の一点鎖線Y1−Y2間の断面図
である。
【0161】
図7(A)(B)(C)に示すトランジスタ150は、基板102上の導電膜106と、
導電膜106上の絶縁膜104と、絶縁膜104上の金属酸化物108と、金属酸化物1
08上の絶縁膜110と、絶縁膜110上の導電膜112と、絶縁膜104、金属酸化物
108、及び導電膜112上の絶縁膜116と、を有する。
【0162】
なお、金属酸化物108は、図6(A)(B)(C)に示すトランジスタ100と同様の
構成である。図7(A)(B)(C)に示す、トランジスタ150は、先に示すトランジ
スタ100の構成に加え、導電膜106と、開口部143と、を有する。
【0163】
開口部143は、絶縁膜104、110に設けられる。また、導電膜106は、開口部1
43を介して、導電膜112と、電気的に接続される。よって、導電膜106と導電膜1
12には、同じ電位が与えられる。なお、開口部143を設けずに、導電膜106と、導
電膜112と、に異なる電位を与えてもよい。または、開口部143を設けずに、導電膜
106を遮光膜として用いてもよい。例えば、導電膜106を遮光性の材料により形成す
ることで、第2の領域に照射される下方からの光を抑制することができる。
【0164】
また、トランジスタ150の構成とする場合、導電膜106は、第1のゲート電極(ボト
ムゲート電極ともいう)としての機能を有し、導電膜112は、第2のゲート電極(トッ
プゲート電極ともいう)としての機能を有する。また、絶縁膜104は、第1のゲート絶
縁膜としての機能を有し、絶縁膜110は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0165】
導電膜106としては、先に記載の導電膜112、120a、120bと同様の材料を用
いることができる。特に導電膜106として、銅を含む材料により形成することで抵抗を
低くすることができるため好適である。例えば、導電膜106を窒化チタン膜、窒化タン
タル膜、またはタングステン膜上に銅膜を設ける積層構造とし、導電膜120a、120
bを窒化チタン膜、窒化タンタル膜、またはタングステン膜上に銅膜を設ける積層構造と
すると好適である。この場合、トランジスタ150を表示装置の画素トランジスタ及び駆
動トランジスタのいずれか一方または双方に用いることで、導電膜106と導電膜120
aとの間に生じる寄生容量、及び導電膜106と導電膜120bとの間に生じる寄生容量
を低くすることができる。したがって、導電膜106、導電膜120a、及び導電膜12
0bを、トランジスタ150の第1のゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極として
用いるのみならず、表示装置の電源供給用の配線、信号供給用の配線、または接続用の配
線等に用いる事も可能となる。
【0166】
このように、図7(A)(B)(C)に示すトランジスタ150は、先に説明したトラン
ジスタ100と異なり、金属酸化物108の上下にゲート電極として機能する導電膜を有
する構造である。トランジスタ150に示すように、本発明の一態様の半導体装置には、
複数のゲート電極を設けてもよい。
【0167】
また、図7(B)(C)に示すように、金属酸化物108は、第1のゲート電極として機
能する導電膜106と、第2のゲート電極として機能する導電膜112のそれぞれと対向
するように位置し、2つのゲート電極として機能する導電膜に挟まれている。
【0168】
また、導電膜112のチャネル幅方向の長さは、金属酸化物108のチャネル幅方向の長
さよりも長く、金属酸化物108のチャネル幅方向全体は、絶縁膜110を間に挟んで導
電膜112に覆われている。また、導電膜112と導電膜106とは、絶縁膜104、及
び絶縁膜110に設けられる開口部143において接続されるため、金属酸化物108の
チャネル幅方向の側面の一方は、絶縁膜110を間に挟んで導電膜112と対向している
【0169】
別言すると、導電膜106及び導電膜112は、絶縁膜104、110に設けられる開口
部143において接続され、且つ金属酸化物108の側端部よりも外側に位置する領域を
有する。
【0170】
このような構成を有することで、トランジスタ150に含まれる金属酸化物108を、第
1のゲート電極として機能する導電膜106及び第2のゲート電極として機能する導電膜
112の電界によって電気的に取り囲むことができる。トランジスタ150のように、第
1のゲート電極及び第2のゲート電極の電界によって、チャネル領域が形成される金属酸
化物108を電気的に取り囲むトランジスタのデバイス構造をSurrounded c
hannel(S−channel)構造と呼ぶことができる。
【0171】
トランジスタ150は、S−channel構造を有するため、導電膜106または導電
膜112によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に金属酸化物108に印加す
ることができるため、トランジスタ150の電流駆動能力が向上し、高いオン電流特性を
得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能であるため、トランジスタ
150を微細化することが可能となる。また、トランジスタ150は、金属酸化物108
が導電膜106、及び導電膜112によって取り囲まれた構造を有するため、トランジス
タ150の機械的強度を高めることができる。
【0172】
なお、トランジスタ150のチャネル幅方向において、金属酸化物108の開口部143
が形成されていない側に、開口部143と異なる開口部を形成してもよい。
【0173】
また、トランジスタ150に示すように、トランジスタが、半導体膜を間に挟んで存在す
る一対のゲート電極を有している場合、一方のゲート電極には信号Aが、他方のゲート電
極には固定電位Vbが与えられてもよい。また、一方のゲート電極には信号Aが、他方の
ゲート電極には信号Bが与えられてもよい。また、一方のゲート電極には固定電位Vaが
、他方のゲート電極には固定電位Vbが与えられてもよい。
【0174】
信号Aは、例えば、導通状態または非導通状態を制御するための信号である。信号Aは、
電位V1、または電位V2(V1>V2とする)の2種類の電位をとるデジタル信号であ
ってもよい。例えば、電位V1を高電源電位とし、電位V2を低電源電位とすることがで
きる。信号Aは、アナログ信号であってもよい。
【0175】
固定電位Vbは、例えば、トランジスタのしきい値電圧VthAを制御するための電位で
ある。固定電位Vbは、電位V1、または電位V2であってもよい。この場合、固定電位
Vbを生成するための電位発生回路を、別途設ける必要がなく好ましい。固定電位Vbは
、電位V1、または電位V2と異なる電位であってもよい。固定電位Vbを低くすること
で、しきい値電圧VthAを高くできる場合がある。その結果、ゲートーソース間電圧V
gsが0Vのときのドレイン電流を低減し、トランジスタを有する回路のリーク電流を低
減できる場合がある。例えば、固定電位Vbを低電源電位よりも低くしてもよい。一方で
、固定電位Vbを高くすることで、しきい値電圧VthAを低くできる場合がある。その
結果、ゲート−ソース間電圧Vgsが高電源電位のときのドレイン電流を向上させ、トラ
ンジスタを有する回路の動作速度を向上できる場合がある。例えば、固定電位Vbを低電
源電位よりも高くしてもよい。
【0176】
信号Bは、例えば、導通状態または非導通状態を制御するための信号である。信号Bは、
電位V3、または電位V4(V3>V4とする)の2種類の電位をとるデジタル信号であ
ってもよい。例えば、電位V3を高電源電位とし、電位V4を低電源電位とすることがで
きる。信号Bは、アナログ信号であってもよい。
【0177】
信号Aと信号Bが共にデジタル信号である場合、信号Bは、信号Aと同じデジタル値を持
つ信号であってもよい。この場合、トランジスタのオン電流を向上し、トランジスタを有
する回路の動作速度を向上できる場合がある。このとき、信号Aにおける電位V1及び電
位V2は、信号Bにおける電位V3及び電位V4と、異なっていても良い。例えば、信号
Bが入力されるゲートに対応するゲート絶縁膜が、信号Aが入力されるゲートに対応する
ゲート絶縁膜よりも厚い場合、信号Bの電位振幅(V3−V4)を、信号Aの電位振幅(
V1−V2)より大きくしても良い。そうすることで、トランジスタの導通状態または非
導通状態に対して、信号Aが与える影響と、信号Bが与える影響と、を同程度とすること
ができる場合がある。
【0178】
信号Aと信号Bが共にデジタル信号である場合、信号Bは、信号Aと異なるデジタル値を
持つ信号であってもよい。この場合、トランジスタの制御を信号Aと信号Bによって別々
に行うことができ、より高い機能を実現できる場合がある。例えば、トランジスタがnチ
ャネル型である場合、信号Aが電位V1であり、かつ、信号Bが電位V3である場合のみ
導通状態となる場合や、信号Aが電位V2であり、かつ、信号Bが電位V4である場合の
み非導通状態となる場合には、一つのトランジスタでNAND回路やNOR回路等の機能
を実現できる場合がある。また、信号Bは、しきい値電圧VthAを制御するための信号
であってもよい。例えば、信号Bは、トランジスタを有する回路が動作している期間と、
当該回路が動作していない期間と、で電位が異なる信号であっても良い。信号Bは、回路
の動作モードに合わせて電位が異なる信号であってもよい。この場合、信号Bは信号Aほ
ど頻繁には電位が切り替わらない場合がある。
【0179】
信号Aと信号Bが共にアナログ信号である場合、信号Bは、信号Aと同じ電位のアナログ
信号、信号Aの電位を定数倍したアナログ信号、または、信号Aの電位を定数だけ加算も
しくは減算したアナログ信号等であってもよい。この場合、トランジスタのオン電流が向
上し、トランジスタを有する回路の動作速度を向上できる場合がある。信号Bは、信号A
と異なるアナログ信号であってもよい。この場合、トランジスタの制御を信号Aと信号B
によって別々に行うことができ、より高い機能を実現できる場合がある。
【0180】
信号Aがデジタル信号であり、信号Bがアナログ信号であってもよい。または信号Aがア
ナログ信号であり、信号Bがデジタル信号であってもよい。
【0181】
トランジスタの両方のゲート電極に固定電位を与える場合、トランジスタを、抵抗素子と
同等の素子として機能させることができる場合がある。例えば、トランジスタがnチャネ
ル型である場合、固定電位Vaまたは固定電位Vbを高く(低く)することで、トランジ
スタの実効抵抗を低く(高く)することができる場合がある。固定電位Va及び固定電位
Vbを共に高く(低く)することで、一つのゲートしか有さないトランジスタによって得
られる実効抵抗よりも低い(高い)実効抵抗が得られる場合がある。
【0182】
なお、トランジスタ150のその他の構成は、先に示すトランジスタ100と同様であり
、同様の効果を奏する。
【0183】
また、トランジスタ150上にさらに、絶縁膜を形成してもよい。図7(A)(B)(C
)に示すトランジスタ150は、導電膜120a、120b、及び絶縁膜118上に絶縁
膜122を有する。
【0184】
絶縁膜122は、トランジスタ等に起因する凹凸等を平坦化させる機能を有する。絶縁膜
122としては、絶縁性であればよく、無機材料または有機材料を用いて形成される。該
無機材料としては、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シ
リコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜等が挙げられる。該有機材料として
は、例えば、アクリル樹脂、またはポリイミド樹脂等の感光性の樹脂材料が挙げられる。
【0185】
<2−4.トランジスタの構成例3>
次に、図7(A)(B)(C)に示すトランジスタ150と異なる構成について、図8を
用いて説明する。
【0186】
図8(A)(B)は、トランジスタ160の断面図である。なお、トランジスタ160の
上面図としては、図7(A)に示すトランジスタ150と同様であるため、ここでの説明
は省略する。
【0187】
図8(A)(B)に示すトランジスタ160は、導電膜112の積層構造、導電膜112
の形状、及び絶縁膜110の形状がトランジスタ150と異なる。
【0188】
トランジスタ160の導電膜112は、絶縁膜110上の導電膜112_1と、導電膜1
12_1上の導電膜112_2と、を有する。例えば、導電膜112_1として、酸化物
導電膜を用いることにより、絶縁膜110に過剰酸素を添加することができる。上記酸化
物導電膜としては、スパッタリング法を用い、酸素ガスを含む雰囲気にて形成すればよい
。また、上記酸化物導電膜としては、例えば、インジウムと錫とを有する酸化物、タング
ステンとインジウムとを有する酸化物、タングステンとインジウムと亜鉛とを有する酸化
物、チタンとインジウムとを有する酸化物、チタンとインジウムと錫とを有する酸化物、
インジウムと亜鉛とを有する酸化物、シリコンとインジウムと錫とを有する酸化物、イン
ジウムとガリウムと亜鉛とを有する酸化物等が挙げられる。
【0189】
また、図8(B)に示すように、開口部143において、導電膜112_2と、導電膜1
06とが接続される。開口部143を形成する際に、導電膜112_1となる導電膜を形
成した後、開口部143を形成することで、図8(B)に示す形状とすることができる。
導電膜112_1に酸化物導電膜を適用した場合、導電膜112_2と、導電膜106と
が接続される構成とすることで、導電膜112と導電膜106との接続抵抗を低くするこ
とができる。
【0190】
また、トランジスタ160の導電膜112及び絶縁膜110は、テーパー形状である。よ
り具体的には、導電膜112の下端部は、導電膜112の上端部よりも外側に形成される
。また、絶縁膜110の下端部は、絶縁膜110の上端部よりも外側に形成される。また
、導電膜112の下端部は、絶縁膜110の上端部と概略同じ位置に形成される。
【0191】
トランジスタ160の導電膜112及び絶縁膜110をテーパー形状とすることで、トラ
ンジスタ160の導電膜112及び絶縁膜110が矩形の場合と比較し、絶縁膜116の
被覆性を高めることができるため好適である。
【0192】
なお、トランジスタ160のその他の構成は、先に示すトランジスタ150と同様であり
、同様の効果を奏する。
【0193】
<2−5.半導体装置の作製方法>
次に、図7(A)(B)(C)に示すトランジスタ150の作製方法の一例について、図
9乃至図11を用いて説明する。なお、図9乃至図11は、トランジスタ150の作製方
法を説明するチャネル長方向、及びチャネル幅方向の断面図である。
【0194】
まず、基板102上に導電膜106を形成する。次に、基板102、及び導電膜106上
に絶縁膜104を形成し、絶縁膜104上に金属酸化物膜を形成する。その後、金属酸化
物膜を島状に加工することで、金属酸化物108aを形成する(図9(A)参照)。
【0195】
導電膜106としては、先に記載の材料を選択することで形成できる。本実施の形態にお
いては、導電膜106として、スパッタリング装置を用い、厚さ50nmのタングステン
膜と、厚さ400nmの銅膜との積層膜を形成する。
【0196】
なお、導電膜106となる導電膜の加工方法としては、ウエットエッチング法及びドライ
エッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態では、ウエットエ
ッチング法にて銅膜をエッチングしたのち、ドライエッチング法にてタングステン膜をエ
ッチングすることで導電膜を加工し、導電膜106を形成する。
【0197】
絶縁膜104としては、スパッタリング法、CVD法、蒸着法、パルスレーザー堆積(P
LD)法、印刷法、塗布法等を適宜用いて形成することができる。本実施の形態において
は、絶縁膜104として、PECVD装置を用い、厚さ400nmの窒化シリコン膜と、
厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜とを形成する。
【0198】
また、絶縁膜104を形成した後、絶縁膜104に酸素を添加してもよい。絶縁膜104
に添加する酸素としては、酸素ラジカル、酸素原子、酸素原子イオン、酸素分子イオン等
がある。また、添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理法
等がある。また、絶縁膜104上に酸素の脱離を抑制する膜を形成した後、該膜を介して
絶縁膜104に酸素を添加してもよい。
【0199】
上述の酸素の脱離を抑制する膜として、インジウム、亜鉛、ガリウム、錫、アルミニウム
、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、ニッケル、鉄、コバルト、またはタングステ
ンの1以上を有する導電膜あるいは半導体膜を用いて形成することができる。
【0200】
また、プラズマ処理で酸素の添加を行う場合、マイクロ波で酸素を励起し、高密度な酸素
プラズマを発生させることで、絶縁膜104への酸素添加量を増加させることができる。
【0201】
また、金属酸化物108aを形成する際に、酸素ガスに、不活性ガス(例えば、ヘリウム
ガス、アルゴンガス、キセノンガスなど)を混合させてもよい。なお、金属酸化物108
aを形成する際の成膜ガス全体に占める酸素ガスの割合(以下、酸素流量比ともいう)と
しては、0%以上30%以下、好ましくは5%以上20%以下である。
【0202】
また、金属酸化物108aの形成条件としては、基板温度を室温以上180℃以下、好ま
しくは基板温度を室温以上140℃以下とすればよい。金属酸化物108aの形成時の基
板温度を、例えば、室温以上140℃未満とすると、生産性が高くなり好ましい。
【0203】
また、金属酸化物108aの厚さとしては、3nm以上200nm以下、好ましくは3n
m以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上60nm以下とすればよい。
【0204】
なお、基板102として、大型のガラス基板(例えば、第6世代乃至第10世代)を用い
る場合、金属酸化物108aを成膜する際の基板温度を200℃以上300℃以下とした
場合、基板102が変形する(歪むまたは反る)場合がある。よって、大型のガラス基板
を用いる場合においては、金属酸化物108aの成膜する際の基板温度を室温以上200
℃未満とすることで、ガラス基板の変形を抑制することができる。
【0205】
また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとして
用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が−40℃以下、好ましくは−80℃以下、より
好ましくは−100℃以下、より好ましくは−120℃以下にまで高純度化したガスを用
いることで金属酸化物に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0206】
また、スパッタリング法で金属酸化物を成膜する場合、スパッタリング装置におけるチャ
ンバーは、金属酸化物にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプ
のような吸着式の真空排気ポンプを用いて、高真空(5×10−7Paから1×10−4
Pa程度まで)に排気することが好ましい。特に、スパッタリング装置の待機時における
、チャンバー内のHOに相当するガス分子(m/z=18に相当するガス分子)の分圧
を1×10−4Pa以下、好ましく5×10−5Pa以下とすることが好ましい。
【0207】
本実施の形態においては、金属酸化物108aの形成条件を以下とする。
【0208】
金属酸化物108aの形成条件を、In−Ga−Zn金属酸化物ターゲットを用いて、ス
パッタリング法により形成する。また、金属酸化物108aの形成時の基板温度と、酸素
流量比は、適宜、設定することができる。また、チャンバー内の圧力を0.6Paとし、
スパッタリング装置内に設置された金属酸化物ターゲットに2500WのAC電力を供給
することで、酸化物を成膜する。
【0209】
なお、成膜した金属酸化物を、金属酸化物108aに加工するには、ウエットエッチング
法及びドライエッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。
【0210】
また、金属酸化物108aを形成した後、加熱処理を行い、金属酸化物108aの脱水素
化または脱水化をしてもよい。加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板の歪み
点未満、または250℃以上450℃以下、または300℃以上450℃以下である。
【0211】
加熱処理は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または窒
素を含む不活性雰囲気で行うことができる。または、不活性雰囲気で加熱した後、酸素雰
囲気で加熱してもよい。なお、上記不活性雰囲気及び酸素雰囲気に水素、水などが含まれ
ないことが好ましい。処理時間は3分以上24時間以下とすればよい。
【0212】
該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで
、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため加熱処
理時間を短縮することができる。
【0213】
金属酸化物を加熱しながら成膜する、または金属酸化物を形成した後、加熱処理を行うこ
とで、金属酸化物において、SIMSにより得られる水素濃度を5×1019atoms
/cm以下、または1×1019atoms/cm以下、5×1018atoms/
cm以下、または1×1018atoms/cm以下、または5×1017atom
s/cm以下、または1×1016atoms/cm以下とすることができる。
【0214】
次に、絶縁膜104及び金属酸化物108a上に絶縁膜110_0を形成する。(図9(
B)参照)。
【0215】
絶縁膜110_0としては、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を、プラズマ化学
気相堆積装置(PECVD装置、または単にプラズマCVD装置という)を用いて形成す
ることができる。この場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気
体を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシ
ラン、トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化
二窒素、二酸化窒素等がある。
【0216】
また、絶縁膜110_0として、堆積性気体の流量に対する酸化性気体の流量を20倍よ
り大きく100倍未満、または40倍以上80倍以下とし、処理室内の圧力を100Pa
未満、または50Pa以下とするPECVD装置を用いることで、欠陥量の少ない酸化窒
化シリコン膜を形成することができる。
【0217】
また、絶縁膜110_0として、PECVD装置の真空排気された処理室内に載置された
基板を280℃以上400℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内におけ
る圧力を20Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上250Pa以下
とし、処理室内に設けられる電極に高周波電力を供給する条件により、緻密である酸化シ
リコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0218】
また、絶縁膜110_0を、マイクロ波を用いたPECVD法を用いて形成してもよい。
マイクロ波とは300MHzから300GHzの周波数域を指す。マイクロ波は、電子温
度が低く、電子エネルギーが小さい。また、供給された電力において、電子の加速に用い
られる割合が少なく、より多くの分子の解離及び電離に用いられることが可能であり、密
度の高いプラズマ(高密度プラズマ)を励起することができる。このため、被成膜面及び
堆積物へのプラズマダメージが少なく、欠陥の少ない絶縁膜110_0を形成することが
できる。
【0219】
また、絶縁膜110_0を、有機シランガスを用いたCVD法を用いて形成することがで
きる。有機シランガスとしては、珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC
、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH)、テトラメチルシクロテトラ
シロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキ
サメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC)、ト
リスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH)などのシリコン含有化合物を
用いることができる。有機シランガスを用いたCVD法を用いることで、被覆性の高い絶
縁膜110_0を形成することができる。
【0220】
本実施の形態では絶縁膜110_0として、PECVD装置を用い、厚さ100nmの酸
化窒化シリコン膜を形成する。
【0221】
次に、絶縁膜110_0上の所望の位置に、リソグラフィによりマスクを形成した後、絶
縁膜110_0、及び絶縁膜104の一部をエッチングすることで、導電膜106に達す
る開口部143を形成する(図9(C)参照)。
【0222】
開口部143の形成方法としては、ウエットエッチング法及びドライエッチング法のいず
れか一方または双方を用いればよい。本実施の形態においては、ドライエッチング法を用
い、開口部143を形成する。
【0223】
次に、開口部143を覆うように、導電膜106及び絶縁膜110_0上に導電膜112
_0を形成する。また、導電膜112_0として、例えば金属酸化膜を用いる場合、導電
膜112_0の形成時に絶縁膜110_0中に酸素が添加される場合がある(図9(D)
参照)。
【0224】
なお、図9(D)において、絶縁膜110_0中に添加される酸素を矢印で模式的に表し
ている。また、開口部143を覆うように、導電膜112_0を形成することで、導電膜
106と、導電膜112_0とが電気的に接続される。
【0225】
導電膜112_0として、金属酸化膜を用いる場合、導電膜112_0の形成方法として
は、スパッタリング法を用い、形成時に酸素ガスを含む雰囲気で形成することが好ましい
。形成時に酸素ガスを含む雰囲気で導電膜112_0を形成することで、絶縁膜110_
0中に酸素を好適に添加することができる。なお、導電膜112_0の形成方法としては
、スパッタリング法に限定されず、その他の方法、例えばALD法を用いてもよい。
【0226】
本実施の形態においては、導電膜112_0として、スパッタリング法を用いて、膜厚が
100nmのIn−Ga−Zn酸化物であるIGZO膜(In:Ga:Zn=4:2:4
.1(原子数比))を成膜する。また、導電膜112_0の形成前、または導電膜112
_0の形成後に、絶縁膜110_0中に酸素添加処理を行ってもよい。当該酸素添加処理
の方法としては、絶縁膜104の形成後に行うことのできる酸素の添加処理と同様とすれ
ばよい。
【0227】
次に、導電膜112_0上の所望の位置に、リソグラフィ工程によりマスク140を形成
する(図10(A)参照)。
【0228】
次に、マスク140上から、エッチングを行い、導電膜112_0、及び絶縁膜110_
0を加工する。また、導電膜112_0及び絶縁膜110_0の加工後に、マスク140
を除去する。導電膜112_0、及び絶縁膜110_0を加工することで、島状の導電膜
112、及び島状の絶縁膜110が形成される(図10(B)参照)。
【0229】
本実施の形態においては、ドライエッチング法を用い、導電膜112_0、及び絶縁膜1
10_0を加工する。
【0230】
なお、導電膜112_0、及び絶縁膜110_0の加工の際に、導電膜112が重畳しな
い領域の金属酸化物108aの膜厚が薄くなる場合がある。または、導電膜112_0、
及び絶縁膜110_0の加工の際に、金属酸化物108aが重畳しない領域の絶縁膜10
4の膜厚が薄くなる場合がある。また、導電膜112_0、及び絶縁膜110_0の加工
の際に、エッチャントまたはエッチングガス(例えば、塩素など)が金属酸化物108a
中に添加される、あるいは導電膜112_0、または絶縁膜110_0の構成元素が金属
酸化物108中に添加される場合がある。
【0231】
次に、絶縁膜104、金属酸化物108、及び導電膜112上に絶縁膜116を形成する
。なお、絶縁膜116を形成することで、絶縁膜116と接する金属酸化物108aの一
部は、領域108nとなる。ここで、導電膜112と重畳する金属酸化物108aは、金
属酸化物108とする。(図10(C)参照)。
【0232】
絶縁膜116としては、先に記載の材料を選択することで形成できる。本実施の形態にお
いては、絶縁膜116として、PECVD装置を用い、厚さ100nmの窒化酸化シリコ
ン膜を形成する。また、当該窒化酸化シリコン膜の形成時において、プラズマ処理と、成
膜処理との2つのステップを220℃の温度で行う。当該プラズマ処理としては、成膜前
に流量100sccmのアルゴンガスと、流量1000sccmの窒素ガスとを、チャン
バー内に導入し、チャンバー内の圧力を40Paとし、RF電源(27.12MHz)に
1000Wの電力を供給する。また、成膜処理としては、流量50sccmのシランガス
と、流量5000sccmの窒素ガスと、流量100sccmのアンモニアガスとを、チ
ャンバー内に導入し、チャンバー内の圧力を100Paとし、RF電源(27.12MH
z)に1000Wの電力を供給する。
【0233】
絶縁膜116として、窒化酸化シリコン膜を用いることで、絶縁膜116に接する領域1
08nに窒化酸化シリコン膜中の窒素または水素を供給することができる。また、絶縁膜
116の形成時の温度を上述の温度とすることで、絶縁膜110に含まれる過剰酸素が外
部に放出されるのを抑制することができる。
【0234】
次に、絶縁膜116上に絶縁膜118を形成する(図11(A)参照)。
【0235】
絶縁膜118としては、先に記載の材料を選択することで形成できる。本実施の形態にお
いては、絶縁膜118として、PECVD装置を用い、厚さ300nmの酸化窒化シリコ
ン膜を形成する。
【0236】
次に、絶縁膜118の所望の位置に、リソグラフィによりマスクを形成した後、絶縁膜1
18及び絶縁膜116の一部をエッチングすることで、領域108nに達する開口部14
1a、141bを形成する(図11(B)参照)。
【0237】
絶縁膜118及び絶縁膜116をエッチングする方法としては、ウエットエッチング法及
びドライエッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態において
は、ドライエッチング法を用い、絶縁膜118、及び絶縁膜116を加工する。
【0238】
次に、開口部141a、141bを覆うように、領域108n及び絶縁膜118上に導電
膜を形成し、当該導電膜を所望の形状に加工することで導電膜120a、120bを形成
する(図11(C)参照)。
【0239】
導電膜120a、120bとしては、先に記載の材料を選択することで形成できる。本実
施の形態においては、導電膜120a、120bとして、スパッタリング装置を用い、厚
さ50nmのタングステン膜と、厚さ400nmの銅膜との積層膜を形成する。
【0240】
なお、導電膜120a、120bとなる導電膜の加工方法としては、ウエットエッチング
法及びドライエッチング法のいずれか一方または双方を用いればよい。本実施の形態では
、ウエットエッチング法にて銅膜をエッチングしたのち、ドライエッチング法にてタング
ステン膜をエッチングすることで導電膜を加工し、導電膜120a、120bを形成する
【0241】
続いて、導電膜120a、120b、及び絶縁膜118を覆って絶縁膜122を形成する
【0242】
以上の工程により、図7(A)(B)(C)に示すトランジスタ150を作製することが
できる。
【0243】
なお、トランジスタ150を構成する膜(絶縁膜、金属酸化物膜、導電膜等)としては、
上述の形成方法の他、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD)法、真空蒸着法、パル
スレーザー堆積(PLD)法、ALD法を用いて形成することができる。あるいは、塗布
法や印刷法で形成することができる。成膜方法としては、スパッタリング法、プラズマ化
学気相堆積(PECVD)法が代表的であるが、熱CVD法でもよい。熱CVD法の例と
して、有機金属化学気相堆積(MOCVD)法が挙げられる。
【0244】
熱CVD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、原料ガスと酸化剤を同時にチャ
ンバー内に送り、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を行
う。このように、熱CVD法は、プラズマを発生させない成膜方法であるため、プラズマ
ダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。
【0245】
MOCVD法などの熱CVD法は、上記記載の導電膜、絶縁膜、金属酸化物膜などの膜を
形成することができる。
【0246】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒と
ハフニウム前駆体を含む液体(ハフニウムアルコキシドや、テトラキスジメチルアミドハ
フニウム(TDMAH、Hf[N(CH)やテトラキス(エチルメチルアミド
)ハフニウムなどのハフニウムアミド)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてオゾン(
)の2種類のガスを用いる。
【0247】
また、ALDを利用する成膜装置により酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶媒と
アルミニウム前駆体を含む液体(トリメチルアルミニウム(TMA、Al(CH
など)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてHOの2種類のガスを用いる。他の材料
としては、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アル
ミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)などが
ある。
【0248】
また、ALDを利用する成膜装置により酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサクロ
ロジシランを被成膜面に吸着させ、酸化性ガス(O、一酸化二窒素)のラジカルを供給
して吸着物と反応させる。
【0249】
また、ALDを利用する成膜装置によりタングステン膜を成膜する場合には、WFガス
とBガスを順次導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WFガスとH
ガスとを用いてタングステン膜を形成する。なお、Bガスに代えてSiHガスを
用いてもよい。
【0250】
また、ALDを利用する成膜装置により金属酸化物、例えばIn−Ga−Zn−O膜を成
膜する場合には、In(CHガスとOガスを用いてIn−O層を形成し、その後
、Ga(CHガスとOガスとを用いてGaO層を形成し、更にその後Zn(CH
ガスとOガスとを用いてZnO層を形成する。なお、これらの層の順番はこの例
に限らない。また、これらのガスを用いてIn−Ga−O層やIn−Zn−O層、Ga−
Zn−O層などの混合化合物層を形成しても良い。なお、Oガスに代えてAr等の不活
性ガスで水をバブリングして得られたHOガスを用いても良いが、Hを含まないO
スを用いる方が好ましい。
【0251】
<2−6.トランジスタの構成例4>
図12(A)は、トランジスタ300Aの上面図であり、図12(B)は、図12(A)
に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図12(C)は、図12
(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。なお、図12(
A)において、煩雑になることを避けるため、トランジスタ300Aの構成要素の一部(
ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜等)を省略して図示している。また、一点鎖線X1−
X2方向をチャネル長方向、一点鎖線Y1−Y2方向をチャネル幅方向と呼称する場合が
ある。なお、トランジスタの上面図においては、以降の図面においても図12(A)と同
様に、構成要素の一部を省略して図示する場合がある。
【0252】
図12に示すトランジスタ300Aは、基板302上の導電膜304と、基板302及び
導電膜304上の絶縁膜306と、絶縁膜306上の絶縁膜307と、絶縁膜307上の
金属酸化物308と、金属酸化物308上の導電膜312aと、金属酸化物308上の導
電膜312bと、を有する。また、トランジスタ300A上、より詳しくは、導電膜31
2a、312b及び金属酸化物308上には絶縁膜314、316、及び絶縁膜318が
設けられる。
【0253】
なお、トランジスタ300Aにおいて、絶縁膜306、307は、トランジスタ300A
のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜314、316、318は、トランジスタ3
00Aの保護絶縁膜としての機能を有する。また、トランジスタ300Aにおいて、導電
膜304は、ゲート電極としての機能を有し、導電膜312aは、ソース電極としての機
能を有し、導電膜312bは、ドレイン電極としての機能を有する。
【0254】
なお、本明細書等において、絶縁膜306、307を第1の絶縁膜と、絶縁膜314、3
16を第2の絶縁膜と、絶縁膜318を第3の絶縁膜と、それぞれ呼称する場合がある。
【0255】
図12に示すトランジスタ300Aは、チャネルエッチ型のトランジスタ構造である。本
発明の一態様の金属酸化物は、チャネルエッチ型のトランジスタに好適に用いることがで
きる。
【0256】
<2−7.トランジスタの構成例5>
図13(A)は、トランジスタ300Bの上面図であり、図13(B)は、図13(A)
に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図13(C)は、図13
(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
【0257】
図13に示すトランジスタ300Bは、基板302上の導電膜304と、基板302及び
導電膜304上の絶縁膜306と、絶縁膜306上の絶縁膜307と、絶縁膜307上の
金属酸化物308と、金属酸化物308上の絶縁膜314と、絶縁膜314上の絶縁膜3
16と、絶縁膜314及び絶縁膜316に設けられる開口部341aを介して金属酸化物
308に電気的に接続される導電膜312aと、絶縁膜314及び絶縁膜316に設けら
れる開口部341bを介して金属酸化物308に電気的に接続される導電膜312bとを
有する。また、トランジスタ300B上、より詳しくは、導電膜312a、312b、及
び絶縁膜316上には絶縁膜318が設けられる。
【0258】
なお、トランジスタ300Bにおいて、絶縁膜306、307は、トランジスタ300B
のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜314、316は、金属酸化物308の保護
絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜318は、トランジスタ300Bの保護絶縁膜として
の機能を有する。また、トランジスタ300Bにおいて、導電膜304は、ゲート電極と
しての機能を有し、導電膜312aは、ソース電極としての機能を有し、導電膜312b
は、ドレイン電極としての機能を有する。
【0259】
図12に示すトランジスタ300Aにおいては、チャネルエッチ型の構造であったのに対
し、図13(A)(B)(C)に示すトランジスタ300Bは、チャネル保護型の構造で
ある。本発明の一態様の金属酸化物は、チャネル保護型のトランジスタにも好適に用いる
ことができる。
【0260】
<2−8.トランジスタの構成例6>
図14(A)は、トランジスタ300Cの上面図であり、図14(B)は、図14(A)
に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図14(C)は、図14
(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
【0261】
図14に示すトランジスタ300Cは、図13(A)(B)(C)に示すトランジスタ3
00Bと絶縁膜314、316の形状が相違する。具体的には、トランジスタ300Cの
絶縁膜314、316は、金属酸化物308のチャネル領域上に島状に設けられる。その
他の構成は、トランジスタ300Bと同様である。
【0262】
<2−9.トランジスタの構成例7>
図15(A)は、トランジスタ300Dの上面図であり、図15(B)は、図15(A)
に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、図15(C)は、図15
(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
【0263】
図15に示すトランジスタ300Dは、基板302上の導電膜304と、基板302及び
導電膜304上の絶縁膜306と、絶縁膜306上の絶縁膜307と、絶縁膜307上の
金属酸化物308と、金属酸化物308上の導電膜312aと、金属酸化物308上の導
電膜312bと、金属酸化物308、及び導電膜312a、312b上の絶縁膜314と
、絶縁膜314上の絶縁膜316と、絶縁膜316上の絶縁膜318と、絶縁膜318上
の導電膜320a、320bと、を有する。
【0264】
なお、トランジスタ300Dにおいて、絶縁膜306、307は、トランジスタ300D
の第1のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜314、316、318は、トランジ
スタ300Dの第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。また、トランジスタ300D
において、導電膜304は、第1のゲート電極としての機能を有し、導電膜320aは、
第2のゲート電極としての機能を有し、導電膜320bは、表示装置に用いる画素電極と
しての機能を有する。また、導電膜312aは、ソース電極としての機能を有し、導電膜
312bは、ドレイン電極としての機能を有する。
【0265】
また、図15(C)に示すように導電膜320bは、絶縁膜306、307、314、3
16、318に設けられる開口部342b、342cにおいて、導電膜304に接続され
る。よって、導電膜320bと導電膜304とは、同じ電位が与えられる。
【0266】
なお、トランジスタ300Dにおいては、開口部342b、342cを設け、導電膜32
0bと導電膜304を接続する構成について例示したが、これに限定されない。例えば、
開口部342bまたは開口部342cのいずれか一方の開口部のみを形成し、導電膜32
0bと導電膜304を接続する構成、または開口部342b及び開口部342cを設けず
に、導電膜320bと導電膜304を接続しない構成としてもよい。なお、導電膜320
bと導電膜304とを接続しない構成の場合、導電膜320bと導電膜304には、それ
ぞれ異なる電位を与えることができる。
【0267】
また、導電膜320bは、絶縁膜314、316、318に設けられる開口部342aを
介して、導電膜312bと接続される。
【0268】
なお、トランジスタ300Dは、先に説明のS−channel構造を有する。
【0269】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み
合わせて実施することができる。
【0270】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を用いた表示装置の表示部等に用いるこ
とのできる表示パネルの一例について、図17及び図18を用いて説明する。以下で例示
する表示パネルは、反射型の液晶素子と、発光素子との双方を有し、透過モードと反射モ
ードの両方の表示を行うことのできる、表示パネルである。なお、本発明の一態様の金属
酸化物、及び当該金属酸化物を有するトランジスタは、表示装置の画素のトランジスタ、
または表示装置を駆動させるドライバ、あるいは表示装置にデータを供給するLSI等に
好適に用いることができる。
【0271】
<表示パネルの構成例>
図17は、本発明の一態様の表示パネル600の斜視概略図である。表示パネル600は
、基板651と基板661とが貼り合わされた構成を有する。図17では、基板661を
破線で明示している。
【0272】
表示パネル600は、表示部662、回路659、配線666等を有する。基板651に
は、例えば回路659、配線666、及び画素電極として機能する導電膜663等が設け
られる。また図17では基板651上にIC673とFPC672が実装されている例を
示している。そのため、図17に示す構成は、表示パネル600とFPC672及びIC
673を有する表示モジュールと言うこともできる。
【0273】
回路659は、例えば走査線駆動回路として機能する回路を用いることができる。
【0274】
配線666は、表示部662や回路659に信号や電力を供給する機能を有する。当該信
号や電力は、FPC672を介して外部、またはIC673から配線666に入力される
【0275】
また、図17では、COG(Chip On Glass)方式等により、基板651に
IC673が設けられている例を示している。IC673は、例えば走査線駆動回路、ま
たは信号線駆動回路などとしての機能を有するICを適用できる。なお表示パネル600
が走査線駆動回路及び信号線駆動回路として機能する回路を備える場合や、走査線駆動回
路や信号線駆動回路として機能する回路を外部に設け、FPC672を介して表示パネル
600を駆動するための信号を入力する場合などでは、IC673を設けない構成として
もよい。また、IC673を、COF(Chip On Film)方式等により、FP
C672に実装してもよい。
【0276】
図17には、表示部662の一部の拡大図を示している。表示部662には、複数の表示
素子が有する導電膜663がマトリクス状に配置されている。導電膜663は、可視光を
反射する機能を有し、後述する液晶素子640の反射電極として機能する。
【0277】
また、図17に示すように、導電膜663は開口を有する。さらに導電膜663よりも基
板651側に、発光素子660を有する。発光素子660からの光は、導電膜663の開
口を介して基板661側に射出される。
【0278】
<断面構成例>
図18に、図17で例示した表示パネルの、FPC672を含む領域の一部、回路659
を含む領域の一部、及び表示部662を含む領域の一部をそれぞれ切断したときの断面の
一例を示す。
【0279】
表示パネルは、基板651と基板661の間に、絶縁膜620を有する。また基板651
と絶縁膜620の間に、発光素子660、トランジスタ601、トランジスタ605、ト
ランジスタ606、着色層634等を有する。また絶縁膜620と基板661の間に、液
晶素子640、着色層631等を有する。また基板661と絶縁膜620は接着層641
を介して接着され、基板651と絶縁膜620は接着層642を介して接着されている。
【0280】
トランジスタ606は、液晶素子640と電気的に接続し、トランジスタ605は、発光
素子660と電気的に接続する。トランジスタ605とトランジスタ606は、いずれも
絶縁膜620の基板651側の面上に形成されているため、これらを同一の工程を用いて
作製することができる。
【0281】
基板661には、着色層631、遮光膜632、絶縁膜621、及び液晶素子640の共
通電極として機能する導電膜613、配向膜633b、絶縁膜617等が設けられている
。絶縁膜617は、液晶素子640のセルギャップを保持するためのスペーサとして機能
する。
【0282】
絶縁膜620の基板651側には、絶縁膜681、絶縁膜682、絶縁膜683、絶縁膜
684、絶縁膜685等の絶縁層が設けられている。絶縁膜681は、その一部が各トラ
ンジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁膜682、絶縁膜683、及び絶縁膜68
4は、各トランジスタを覆って設けられている。また絶縁膜684を覆って絶縁膜685
が設けられている。絶縁膜684及び絶縁膜685は、平坦化層としての機能を有する。
なお、ここではトランジスタ等を覆う絶縁層として、絶縁膜682、絶縁膜683、絶縁
膜684の3層を有する場合について示しているが、これに限られず4層以上であっても
よいし、単層、または2層であってもよい。また平坦化層として機能する絶縁膜684は
、不要であれば設けなくてもよい。
【0283】
また、トランジスタ601、トランジスタ605、及びトランジスタ606は、一部がゲ
ートとして機能する導電膜654、一部がソース又はドレインとして機能する導電膜65
2、半導体膜653を有する。ここでは、同一の導電膜を加工して得られる複数の層に、
同じハッチングパターンを付している。
【0284】
液晶素子640は反射型の液晶素子である。液晶素子640は、導電膜635、液晶層6
12、導電膜613が積層された積層構造を有する。また導電膜635の基板651側に
接して、可視光を反射する導電膜663が設けられている。導電膜663は開口655を
有する。また導電膜635及び導電膜613は可視光を透過する材料を含む。また液晶層
612と導電膜635の間に配向膜633aが設けられ、液晶層612と導電膜613の
間に配向膜633bが設けられている。また、基板661の外側の面には、偏光板656
を有する。
【0285】
液晶素子640において、導電膜663は可視光を反射する機能を有し、導電膜613は
可視光を透過する機能を有する。基板661側から入射した光は、偏光板656により偏
光され、導電膜613、液晶層612を透過し、導電膜663で反射する。そして液晶層
612及び導電膜613を再度透過して、偏光板656に達する。このとき、導電膜66
3及び導電膜635と導電膜613の間に与える電圧によって液晶の配向を制御し、光の
光学変調を制御することができる。すなわち、偏光板656を介して射出される光の強度
を制御することができる。また光は着色層631によって特定の波長領域以外の光が吸収
されることにより、取り出される光は、例えば赤色を呈する光となる。
【0286】
発光素子660は、ボトムエミッション型の発光素子である。発光素子660は、絶縁膜
620側から導電膜643、EL層644、及び導電膜645bの順に積層された積層構
造を有する。また導電膜645bを覆って導電膜645aが設けられている。導電膜64
5bは可視光を反射する材料を含み、導電膜643及び導電膜645aは可視光を透過す
る材料を含む。発光素子660が発する光は、着色層634、絶縁膜620、開口655
、導電膜613等を介して、基板661側に射出される。
【0287】
ここで、図18に示すように、開口655には可視光を透過する導電膜635が設けられ
ていることが好ましい。これにより、開口655と重なる領域においてもそれ以外の領域
と同様に液晶が配向するため、これらの領域の境界部で液晶の配向不良が生じ、意図しな
い光が漏れてしまうことを抑制できる。
【0288】
ここで、基板661の外側の面に配置する偏光板656として直線偏光板を用いてもよい
が、円偏光板を用いることもできる。円偏光板としては、例えば直線偏光板と1/4波長
位相差板を積層したものを用いることができる。これにより、外光反射を抑制することが
できる。また、偏光板の種類に応じて、液晶素子640に用いる液晶素子のセルギャップ
、配向、駆動電圧等を調整することで、所望のコントラストが実現されるようにすればよ
い。
【0289】
また導電膜643の端部を覆う絶縁膜646上には、絶縁膜647が設けられている。絶
縁膜647は、絶縁膜620と基板651が必要以上に接近することを抑制するスペーサ
としての機能を有する。またEL層644や導電膜645aを遮蔽マスク(メタルマスク
)を用いて形成する場合には、当該遮蔽マスクが被形成面に接触することを抑制するため
のスペーサとしての機能を有していてもよい。なお、絶縁膜647は不要であれば設けな
くてもよい。
【0290】
トランジスタ605のソース又はドレインの一方は、導電膜648を介して発光素子66
0の導電膜643と電気的に接続されている。
【0291】
トランジスタ606のソース又はドレインの一方は、接続部607を介して導電膜663
と電気的に接続されている。導電膜663と導電膜635は接して設けられ、これらは電
気的に接続されている。ここで、接続部607は、絶縁膜620に設けられた開口を介し
て、絶縁膜620の両面に設けられる導電層同士を接続する部分である。
【0292】
基板651と基板661が重ならない領域には、接続部604が設けられている。接続部
604は、接続層649を介してFPC672と電気的に接続されている。接続部604
は接続部607と同様の構成を有している。接続部604の上面は、導電膜635と同一
の導電膜を加工して得られた導電層が露出している。これにより、接続部604とFPC
672とを接続層649を介して電気的に接続することができる。
【0293】
接着層641が設けられる一部の領域には、接続部687が設けられている。接続部68
7において、導電膜635と同一の導電膜を加工して得られた導電層と、導電膜613の
一部が、接続体686により電気的に接続されている。したがって、基板661側に形成
された導電膜613に、基板651側に接続されたFPC672から入力される信号また
は電位を、接続部687を介して供給することができる。
【0294】
接続体686としては、例えば導電性の粒子を用いることができる。導電性の粒子として
は、有機樹脂またはシリカなどの粒子の表面を金属材料で被覆したものを用いることがで
きる。金属材料としてニッケルや金を用いると接触抵抗を低減できるため好ましい。また
ニッケルをさらに金で被覆するなど、2種類以上の金属材料を層状に被覆させた粒子を用
いることが好ましい。また接続体686として、弾性変形、または塑性変形する材料を用
いることが好ましい。このとき導電性の粒子である接続体686は、図18に示すように
上下方向に潰れた形状となる場合がある。こうすることで、接続体686と、これと電気
的に接続する導電層との接触面積が増大し、接触抵抗を低減できるほか、接続不良などの
不具合の発生を抑制することができる。
【0295】
接続体686は、接着層641に覆われるように配置することが好ましい。例えば、硬化
前の接着層641に、接続体686を分散させておけばよい。
【0296】
図18では、回路659の例としてトランジスタ601が設けられている例を示している
【0297】
図18では、トランジスタ601及びトランジスタ605の例として、チャネルが形成さ
れる半導体膜653を2つのゲートで挟持する構成が適用されている。一方のゲートは導
電膜654により、他方のゲートは絶縁膜682を介して半導体膜653と重なる導電膜
623により構成されている。このような構成とすることで、トランジスタのしきい値電
圧を制御することができる。このとき、2つのゲートを接続し、これらに同一の信号を供
給することによりトランジスタを駆動してもよい。このようなトランジスタは他のトラン
ジスタと比較して電界効果移動度を高めることが可能であり、オン電流を増大させること
ができる。その結果、高速駆動が可能な回路を作製することができる。さらには、回路部
の占有面積を縮小することが可能となる。オン電流の大きなトランジスタを適用すること
で、表示パネルを大型化、または高精細化したときに配線数が増大したとしても、各配線
における信号遅延を低減することが可能であり、表示ムラを抑制することができる。
【0298】
なお、回路659が有するトランジスタと、表示部662が有するトランジスタは、同じ
構造であってもよい。また回路659が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造であ
ってもよいし、異なる構造のトランジスタを組み合わせて用いてもよい。また、表示部6
62が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造であってもよいし、異なる構造のトラ
ンジスタを組み合わせて用いてもよい。
【0299】
各トランジスタを覆う絶縁膜682、絶縁膜683のうち少なくとも一方は、水や水素な
どの不純物が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。すなわち、絶縁膜682または
絶縁膜683はバリア膜として機能させることができる。このような構成とすることで、
トランジスタに対して外部から不純物が拡散することを効果的に抑制することが可能とな
り、信頼性の高い表示パネルを実現できる。
【0300】
基板661側において、着色層631、遮光膜632を覆って絶縁膜621が設けられて
いる。絶縁膜621は、平坦化層としての機能を有していてもよい。絶縁膜621により
、導電膜613の表面を概略平坦にできるため、液晶層612の配向状態を均一にできる
【0301】
表示パネル600を作製する方法の一例について説明する。例えば剥離層を有する支持基
板上に、導電膜635、導電膜663、絶縁膜620を順に形成し、その後、トランジス
タ605、トランジスタ606、発光素子660等を形成した後、接着層642を用いて
基板651と支持基板を貼り合せる。その後、剥離層と絶縁膜620、及び剥離層と導電
膜635のそれぞれの界面で剥離することにより、支持基板及び剥離層を除去する。また
これとは別に、着色層631、遮光膜632、導電膜613等をあらかじめ形成した基板
661を準備する。そして基板651または基板661に液晶を滴下し、接着層641に
より基板651と基板661を貼り合せることで、表示パネル600を作製することがで
きる。
【0302】
剥離層としては、絶縁膜620及び導電膜635との界面で剥離が生じる材料を適宜選択
することができる。特に、剥離層としてタングステンなどの高融点金属材料を含む層と当
該金属材料の酸化物を含む層を積層して用い、剥離層上の絶縁膜620として、窒化シリ
コンや酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン等を複数積層した層を用いることが好ましい
。剥離層に高融点金属材料を用いると、これよりも後に形成する層の形成温度を高めるこ
とが可能で、不純物の濃度が低減され、信頼性の高い表示パネルを実現できる。
【0303】
導電膜635としては、金属酸化物、または金属窒化物等の酸化物または窒化物を用いる
ことが好ましい。金属酸化物を用いる場合には、水素、ボロン、リン、窒素、及びその他
の不純物の濃度、並びに酸素欠損量の少なくとも一が、トランジスタに用いる半導体層に
比べて高められた材料を、導電膜635に用いればよい。
【0304】
<各構成要素について>
以下では、上記に示す各構成要素について説明する。なお、先の実施の形態に示す機能と
同様の機能を有する構成についての説明は省略する。
【0305】
〔接着層〕
接着層としては、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤
、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としてはエ
ポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミド
樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、EV
A(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が
低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シート等を用
いてもよい。
【0306】
また、上記樹脂に乾燥剤を含んでいてもよい。例えば、アルカリ土類金属の酸化物(酸化
カルシウムや酸化バリウム等)のように、化学吸着によって水分を吸着する物質を用いる
ことができる。または、ゼオライトやシリカゲル等のように、物理吸着によって水分を吸
着する物質を用いてもよい。乾燥剤が含まれていると、水分などの不純物が素子に侵入す
ることを抑制でき、表示パネルの信頼性が向上するため好ましい。
【0307】
また、上記樹脂に屈折率の高いフィラーや光散乱部材を混合することにより、光取り出し
効率を向上させることができる。例えば、酸化チタン、酸化バリウム、ゼオライト、ジル
コニウム等を用いることができる。
【0308】
〔接続層〕
接続層としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conduc
tive Film)や、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Co
nductive Paste)などを用いることができる。
【0309】
〔着色層〕
着色層に用いることのできる材料としては、金属材料、樹脂材料、顔料または染料が含ま
れた樹脂材料などが挙げられる。
【0310】
〔遮光層〕
遮光層として用いることのできる材料としては、カーボンブラック、チタンブラック、金
属、金属酸化物、複数の金属酸化物の固溶体を含む複合酸化物等が挙げられる。遮光層は
、樹脂材料を含む膜であってもよいし、金属などの無機材料の薄膜であってもよい。また
、遮光層に、着色層の材料を含む膜の積層膜を用いることもできる。例えば、ある色の光
を透過する着色層に用いる材料を含む膜と、他の色の光を透過する着色層に用いる材料を
含む膜との積層構造を用いることができる。着色層と遮光層の材料を共通化することで、
装置を共通化できるほか工程を簡略化できるため好ましい。
【0311】
以上が各構成要素についての説明である。
【0312】
<作製方法例>
ここでは、可撓性を有する基板を用いた表示パネルの作製方法の例について説明する。
【0313】
ここでは、表示素子、回路、配線、電極、着色層や遮光層などの光学部材、及び絶縁層等
が含まれる層をまとめて素子層と呼ぶこととする。例えば、素子層は表示素子を含み、表
示素子の他に表示素子と電気的に接続する配線、画素や回路に用いるトランジスタなどの
素子を備えていてもよい。
【0314】
また、ここでは、表示素子が完成した(作製工程が終了した)段階において、素子層を支
持し、可撓性を有する部材のことを、基板と呼ぶこととする。例えば、基板には、厚さが
10nm以上300μm以下の、極めて薄いフィルム等も含まれる。
【0315】
可撓性を有し、絶縁表面を備える基板上に素子層を形成する方法としては、代表的には以
下に挙げる2つの方法がある。一つは、基板上に直接、素子層を形成する方法である。も
う一つは、基板とは異なる支持基板上に素子層を形成した後、素子層と支持基板を剥離し
、素子層を基板に転置する方法である。なお、ここでは詳細に説明しないが、上記2つの
方法に加え、可撓性を有さない基板上に素子層を形成し、当該基板を研磨等により薄くす
ることで可撓性を持たせる方法もある。
【0316】
基板を構成する材料が、素子層の形成工程にかかる熱に対して耐熱性を有する場合には、
基板上に直接、素子層を形成すると、工程が簡略化されるため好ましい。このとき、基板
を支持基板に固定した状態で素子層を形成すると、装置内、及び装置間における搬送が容
易になるため好ましい。
【0317】
また、素子層を支持基板上に形成した後に、基板に転置する方法を用いる場合、まず支持
基板上に剥離層と絶縁層を積層し、当該絶縁層上に素子層を形成する。続いて、支持基板
と素子層の間で剥離し、素子層を基板に転置する。このとき、支持基板と剥離層の界面、
剥離層と絶縁層の界面、または剥離層中で剥離が生じるような材料を選択すればよい。こ
の方法では、支持基板や剥離層に耐熱性の高い材料を用いることで、素子層を形成する際
にかかる温度の上限を高めることができ、より信頼性の高い素子を有する素子層を形成で
きるため、好ましい。
【0318】
例えば剥離層として、タングステンなどの高融点金属材料を含む層と、当該金属材料の酸
化物を含む層を積層して用い、剥離層上の絶縁層として、酸化シリコン、窒化シリコン、
酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどを複数積層した層を用いることが好ましい。
【0319】
素子層と支持基板とを剥離する方法としては、機械的な力を加えることや、剥離層をエッ
チングすること、または剥離界面に液体を浸透させることなどが、一例として挙げられる
。または、剥離界面を形成する2層の熱膨張の違いを利用し、加熱または冷却することに
より剥離を行ってもよい。
【0320】
また、支持基板と絶縁層の界面で剥離が可能な場合には、剥離層を設けなくてもよい。
【0321】
例えば、支持基板としてガラスを用い、絶縁層としてポリイミドなどの有機樹脂を用いる
ことができる。このとき、レーザ光等を用いて有機樹脂の一部を局所的に加熱する、また
は鋭利な部材により物理的に有機樹脂の一部を切断、または貫通すること等により剥離の
起点を形成し、ガラスと有機樹脂の界面で剥離を行ってもよい。また、上記の有機樹脂と
しては、感光性の材料を用いると、開口部などの形状を容易に作製しやすいため好適であ
る。また、上記のレーザ光としては、例えば、可視光線から紫外線の波長領域の光である
ことが好ましい。例えば波長が200nm以上400nm以下の光、好ましくは波長が2
50nm以上350nm以下の光を用いることができる。特に、波長308nmのエキシ
マレーザを用いると、生産性に優れるため好ましい。また、Nd:YAGレーザの第三高
調波である波長355nmのUVレーザなどの固体UVレーザ(半導体UVレーザともい
う)を用いてもよい。
【0322】
または、支持基板と有機樹脂からなる絶縁層の間に発熱層を設け、当該発熱層を加熱する
ことにより、当該発熱層と絶縁層の界面で剥離を行ってもよい。発熱層としては、電流を
流すことにより発熱する材料、光を吸収することにより発熱する材料、磁場を印加するこ
とにより発熱する材料など、様々な材料を用いることができる。例えば発熱層としては、
半導体、金属、絶縁体から選択して用いることができる。
【0323】
なお、上述した方法において、有機樹脂からなる絶縁層は、剥離後に基板として用いるこ
とができる。
【0324】
以上が可撓性を有する表示パネルを作製する方法についての説明である。
【0325】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み
合わせて実施することができる。
【0326】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様である金属酸化物について説明する。
【0327】
本発明の一態様の金属酸化物は、In(インジウム)と、M(MはAl、Ga、Y、また
はSnを表す。)と、Zn(亜鉛)と、を有する。特に、MはGa(ガリウム)であると
好ましい。以下では、MをGaとして説明する。
【0328】
ここで、In−Ga−Zn酸化物中に、不純物としてシリコン(Si)、ボロン(B)、
または炭素(C)が存在した場合について、説明する。
【0329】
<計算モデルと計算方法>
まず、基準となる不純物を有さないIn−Ga−Zn酸化物のアモルファス状態のモデル
と、基準となるモデルに対して1個のSi原子を追加したモデル、1個のB原子を追加し
たモデル、および1個のC原子を追加したモデルと、を用いて計算を行った。
【0330】
具体的には、基準となる結晶モデルとして、図19(A)に示す、[In]:[Ga]:
[Zn]:[O]=1:1:1:4のモデル700を用いた。なお、モデル700は、1
12個の原子で構成した。
【0331】
なお、CAC構成を有するIn−M−Zn酸化物は、厳密には、アモルファス状態ではな
い。一方で、CAC構成を有するIn−M−Zn酸化物は、CAAC構造からなるIn−
M−Zn酸化物よりも結晶性が低い。従って、結晶構造の影響を低減し、結合状態を確認
するために、便宜上アモルファス状態のモデルを用いた。
【0332】
また、モデル700において、不純物としてSi原子、B原子、またはC原子が存在する
とし、モデル700の格子間サイトに、1個のSi原子、1個のB原子、または1個のC
原子を配置した。なお、112個の原子で構成したモデル700に対し、1個の不純物を
追加した。従って、モデル内の不純物濃度は約7×1020[個/cm]に相当する。
【0333】
図20(A)に、Siが不純物として存在する場合において、1個のSi原子が、4個の
O原子と結合したモデルからSi近傍を抜き出した局所構造702を示す。また、図20
(C)に、1個のSi原子が、3個のO原子、および1個のGa原子と結合したモデルか
らSi近傍を抜き出した局所構造704を示す。
【0334】
Bが不純物として存在する場合において、1個のB原子が、3個のO原子と結合したモデ
ルから、B原子近傍を抜き出した局所構造706を図21(A)に、モデルからB原子近
傍を抜き出した局所構造708を、図21(C)を示す。
【0335】
Cが不純物として存在する場合において、1個のC原子が、2個のO原子、および1個の
Ga原子と結合したモデルから、C原子近傍を抜き出した局所構造710を図22(A)
に、1個のC原子が、1個のO原子、および1個のGa原子と結合したモデルからC原子
近傍を抜き出した局所構造712を、図22(C)を示す。
【0336】
具体的な計算内容を以下に示す。また、原子緩和計算には、第一原理電子状態計算パッケ
ージVASP(Vienna ab initio simulation packa
ge)を用いて行った。計算条件を下表に示す。
【0337】
【表1】
【0338】
<状態密度について>
図19(B)に、図19(A)における状態密度図を示す。なお、図19(B)は、フェ
ルミ準位(電子が占有した準位のなかで最高の準位のエネルギー)が、横軸0eVとなる
よう調整した。図19(B)より、電子は価電子帯上端まで占有しており、ギャップ内準
位が存在しないことを確認できた。
【0339】
また、不純物として、1個のSi原子を追加した場合の状態密度図を図20(B)、およ
び図20(D)に示す。なお、図20(B)には、図20(A)で示す局所構造702を
有する場合の状態密度図を示す。図20(D)には、図20(C)で示す局所構造704
を有する場合の状態密度図を示す。
【0340】
図20(B)、および図20(D)ともに、Si原子が混入すると、フェルミ準位が伝導
帯内に位置することが分かった。従って、Si原子により、In−Ga−Zn酸化物中に
キャリアが生成される(n化するともいう)ことが示唆された。
【0341】
さらに、不純物として、1個のB原子を追加した場合の状態密度図を図21(B)、およ
び図21(D)に示す。なお、図21(B)には、図21(A)で示す局所構造706を
有する場合の状態密度図を示す。図21(D)には、図21(C)で示す局所構造708
を有する場合の状態密度図を示す。
【0342】
図21(B)、および図21(D)ともに、B原子が混入すると、フェルミ準位が伝導帯
内に位置することが分かった。従って、B原子により、In−Ga−Zn酸化物中にキャ
リアが生成される(n化するともいう)ことが示唆された。
【0343】
また、不純物として、1個のC原子を追加した場合の状態密度図を図22(B)、および
図22(D)に示す。なお、図22(B)には、図22(A)で示す局所構造710を有
する場合の状態密度図を示す。図22(D)には、図22(C)で示す局所構造712を
有する場合の状態密度図を示す。
【0344】
図22(B)、および図22(D)ともに、C原子が混入すると、フェルミ準位が伝導帯
内に位置することが分かった。従って、C原子により、In−Ga−Zn酸化物中にキャ
リアが生成される(n化するともいう)ことが示唆された。
【0345】
これは、Si、およびBの電気陰性度は、Oよりも、In、Ga、およびZnに近いため
、Si原子、およびB原子は、In−Ga−Zn酸化物中では、カチオンとして存在する
蓋然性が高い。従って、キャリアを生成すると推測される。
【0346】
また、Cの電気陰性度は、In、Ga、ZnとOの中間に位置するため、金属およびOと
結合するが、基本的にはカチオンとして存在し易いと推測される。
【0347】
また、Si原子、B原子、およびC原子は、In原子、Ga原子、およびZn原子よりも
、O原子との結合が強い。そのため、Si原子、B原子、およびC原子が、混入すると、
In原子、Ga原子、およびZn原子と結合していたO原子が、Si原子、B原子、およ
びC原子に奪われる。そのため、酸素欠損に相当する深い準位が形成されると推測される
【0348】
以上、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み合
わせて用いることができる。
【実施例1】
【0349】
本実施例では、各種測定方法を用い、基板上に成膜した本発明の一態様である金属酸化物
について測定を行った結果について説明する。なお、本実施例においては、試料1A、試
料1B、試料1C、試料1D、試料1E、試料1F、試料1G、試料1H、および試料1
Jを作製した。
【0350】
<試料の構成と作製方法>
以下では、本発明の一態様に係る試料1A、試料1B、試料1C、試料1D、試料1E、
試料1F、試料1G、試料1H、および試料1Jについて説明する。試料1A乃至試料1
Jは、基板と、基板上の金属酸化物と、を有する。
【0351】
なお、試料1A乃至試料1Jは、それぞれ、金属酸化物の成膜時の温度、および酸素流量
比を異なる条件で作製した。下表に、試料1A乃至試料1Jにおける金属酸化物の成膜時
の温度、および酸素流量比を示す。
【0352】
【表2】
【0353】
次に、各試料の作製方法について、説明する。
【0354】
まず、基板として、ガラス基板を用いた。続いて、スパッタリング装置を用いて、基板上
に金属酸化物として、厚さ100nmのIn−Ga−Zn酸化物を形成した。成膜条件は
、チャンバー内の圧力を0.6Paとし、ターゲットには、金属酸化物ターゲット(In
:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いた。また、スパッタリング装置内に
設置された金属酸化物ターゲットに2500WのAC電力を供給することで、金属酸化物
を成膜した。
【0355】
なお、金属酸化物を成膜する際の条件として、上記表に示した成膜温度、および酸素流量
比とすることで、試料1A乃至試料1Jとした。
【0356】
以上の工程により、本実施例の試料1A乃至試料1Jを作製した。
【0357】
<X線光電子分光法による解析>
本項目では、試料1A、試料1D、および試料1Jに対し、X線光電子分光法(XPS:
X−ray Photoelectron Spectroscopy)測定を行った結
果について説明する。なお、PHI社製QuanteraSXMを用いた。また、条件は
、X線源を単色化Al(1486.6eV)とし、検出領域を直径100μmの円形領域
とし、検出深さは、取出角45°とした場合に4nm〜5nmとした。また、測定スペク
トルは、In3d5/2ピーク、Ga3dピーク、Zn3pピーク、O1sピーク、をそ
れぞれ補正基準として検出した。検出されたピークを元に、各原子の割合[atomic
%]を算出した。
【0358】
図52に、XPS分析を行った結果を示す。なお、図52に示す円グラフは、Inの原子
数比を4として、規格化した。
【0359】
図52より、Inの原子数比を整数として規格化した場合、Ga、およびZnの原子数比
は、いずれも整数とはならなかった。つまり、Inの原子数比を整数として規格化した場
合、Ga、およびZnの原子数比は、非整数となることがわかった。
【0360】
また、試料1A、試料1D、および試料1Jにおいて、成膜された金属酸化物におけるG
aの原子数比は、ターゲットに用いた金属酸化物におけるGaの原子数比よりも、小さく
なることがわかった。例えば、試料1Jでは、成膜された金属酸化物におけるZnの原子
数比は[Zn]=3.21となり、ターゲットに用いた金属酸化物におけるZnの原子数
比である[Zn]=4.1よりも、小さくなることがわかった。また、成膜された金属酸
化物におけるZnの原子数比は、試料1Aでは[Zn]=3.70、試料1Dでは[Zn
]=3.62となり、小さくなることがわかった。従って、成膜温度が最も高い試料1J
において、成膜された金属酸化物におけるZnの割合が少ない傾向が確認できた。これは
、加熱成膜することで、Znが揮発したと考えられる。
【0361】
<X線回折による解析>
本項目では、ガラス基板上の金属酸化物を、X線回折(XRD:X−ray diffr
action)測定を行った結果について説明する。なお、XRD装置として、Bruk
er社製D8 ADVANCEを用いた。また、条件は、Out−of−plane法に
よるθ/2θスキャンにて、走査範囲を15deg.乃至50deg.、ステップ幅を0
.02deg.、走査速度を3.0deg./分とした。
【0362】
図23に、Out−of−plane法を用いてXRDスペクトルを測定した結果を示す
【0363】
図23に示すXRDスペクトルは、成膜時の基板温度を高くする、または、成膜時の酸素
ガス流量比の割合を大きくすることで、2θ=31°付近のピーク強度が高くなった。な
お、2θ=31°付近のピークは、被形成面または上面に略垂直方向に対してc軸に配向
した結晶性IGZO化合物(CAAC−IGZOともいう。)であることに由来すること
が分かっている。
【0364】
また、図23に示すXRDスペクトルは、成膜時の基板温度が低い、または、酸素ガス流
量比が小さいほど、明確なピークが現れなかった。従って、成膜時の基板温度が低い、ま
たは、酸素ガス流量比が小さい試料は、測定領域のa−b面方向、およびc軸方向の配向
は見られないことが分かった。
【0365】
<TEM像および電子回折>
本項目では、試料1A、試料1D、および試料1Jを、HAADF(High−Angl
e Annular Dark Field)−STEM(Scanning Tran
smission Electron Microscope)によって観察、および解
析した結果について説明する(以下、HAADF−STEMによって取得した像は、TE
M像ともいう。)。
【0366】
また、本項目では、試料1A、試料1D、および試料1Jをプローブ径が1nmの電子線
(ナノビーム電子線ともいう。)を照射することで、電子回折パターンを取得した結果に
ついて説明する。
【0367】
なお、平面TEM像は、球面収差補正機能を用いて観察した。また、HAADF−STE
M像の撮影には、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM−ARM200F
を用いて、加速電圧200kV、ビーム径約0.1nmφの電子線を照射して行った。
【0368】
また、電子回折パターンの観察は、電子線を照射しながら0秒の位置から35秒の位置ま
で一定の速度で移動させながら行った。
【0369】
図24(A)に試料1Aの断面TEM像を、図24(B)に試料1Aの電子回折パターン
を取得した結果を示す。図24(C)に試料1Dの断面TEM像を、図24(D)に試料
1Dの電子回折パターンを取得した結果を示す。図24(E)に試料1Jの断面TEM像
を、図24(F)に試料1Jの電子回折パターンを取得した結果を示す。
【0370】
ここで、例えば、InGaZnOの結晶を有するCAAC−OSに対し、試料面に平行
にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、InGaZnOの結晶の(009
)面に起因するスポットが含まれる回折パターンが見られることが分かっている。つまり
、CAAC−OSは、c軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向
いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプローブ径が300nm
の電子線を入射させると、リング状の回折パターンが確認される。つまり、CAAC−O
Sは、a軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる。
【0371】
また、微結晶を有する金属酸化物(特に、半導体と同等の機能を有する場合に、nano
crystalline oxide semiconductorとする。以下、n
c−OSという。)に対し、大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる
電子回折を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。また、微結晶を
有する金属酸化物に対し、小さいプローブ径の電子線(例えば50nm未満)を用いるナ
ノビーム電子回折を行うと、輝点(スポット)が観測される。また、微結晶を有する金属
酸化物に対しナノビーム電子回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領
域が観測される場合がある。さらに、リング状の領域に複数の輝点が観測される場合があ
る。
【0372】
試料1Aは、図24(A)に示すように、断面TEM観察結果より、微結晶(nano
crystal。以下、ncともいう)が観察された。また、図24(B)に示すように
、試料1Aに対する電子回折パターンの結果は、円を描くように(リング状に)輝度の高
い領域が観測できた。また、リング状の領域に複数のスポットが観測できた。
【0373】
試料1Dは、図24(C)に示すように、断面TEM観察結果より、CAAC構造、およ
び微結晶が観察された。また、図24(D)に示すように、試料1Dに対する電子回折パ
ターンの結果は、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測できた。また、リ
ング状の領域に複数のスポットが観測できた。また、(009)面に起因するスポットが
含まれる回折パターンもわずかに見られた。
【0374】
一方、試料1Jは、図24(E)に示すように、断面TEM観察結果より、CAAC構造
を示す層状の配列が明瞭に確認された。また、図24(F)に示すように、試料1Jに対
する電子回折パターンの結果は、(009)面に起因するスポットがはっきりと観測でき
た。
【0375】
なお、上述したような断面TEM像および平面TEM像において観察される特徴は、金属
酸化物の構造を一面的に捉えたものである。
【0376】
続いて、試料1Aに、プローブ径が1nmの電子線(ナノビーム電子線ともいう。)を照
射することで、電子回折パターンを取得した結果について、図25に示す。
【0377】
図25(A)に示す、試料1Aの平面TEM像において、黒点a1、黒点a2、黒点a3
、黒点a4、および黒点a5で示す電子回折パターンを観察した。なお、電子回折パター
ンの観察は、電子線を照射しながら0秒の位置から35秒の位置まで一定の速度で移動さ
せながら行った。黒点a1の結果を図25(C)、黒点a2の結果を図25(D)、黒点
a3の結果を図25(E)、黒点a4の結果を図25(F)、および黒点a5の結果を図
25(G)に示す。
【0378】
図25(C)、図25(D)、図25(E)、図25(F)、および図25(G)より、
リング状に輝度の高い領域が観測できた。また、リング状の領域に複数のスポットが観測
できた。
【0379】
また、図25(B)に示す、試料1Aの断面TEM像において、黒点b1、黒点b2、黒
点b3、黒点b4、および黒点b5で示す電子回折パターンを観察する。黒点b1の結果
を図25(H)、黒点b2の結果を図25(I)、黒点b3の結果を図25(J)、黒点
b4の結果を図25(K)、および黒点b5の結果を図25(L)に示す。
【0380】
図25(H)、図25(I)、図25(J)、図25(K)、および図25(L)より、
リング状に輝度の高い領域が観測できた。また、リング状の領域に複数のスポットが観測
できた。
【0381】
つまり、試料1Aは、nc構造を有し、アモルファス構造の金属酸化物とも、単結晶構造
の金属酸化物とも明確に異なる性質を有することが分かった。
【0382】
以上より、試料1A、および試料1Dの電子回折パターンは、リング状に輝度の高い領域
と、該リング領域に複数の輝点を有する。従って、試料1Aは、電子回折パターンが、微
結晶を示す金属酸化物であり、平面方向、および断面方向において、配向性は有さないこ
とが分かった。また、試料1Dは、nc構造とCAAC構造との混合材であることがわか
った。
【0383】
一方、試料1Jの電子回折パターンは、InGaZnOの結晶の(009)面に起因す
るスポットを有する。従って、試料1Jは、c軸配向性を有し、c軸が被形成面または上
面に略垂直な方向を向いていることがわかった。
【0384】
<TEM像の画像解析>
本項目では、試料1A、試料1C、試料1D、試料1F、試料1Gを、HAADF−ST
EMによって観察、および解析した結果について説明する。
【0385】
平面TEM像の画像解析を行った結果について説明する。なお、平面TEM像は、球面収
差補正機能を用いて観察した。なお、平面TEM像の撮影には、日本電子株式会社製原子
分解能分析電子顕微鏡JEM−ARM200Fを用いて、加速電圧200kV、ビーム径
約0.1nmφの電子線を照射して行った。
【0386】
図26には、試料1A、試料1C、試料1D、試料1F、試料1G、および試料1Jの平
面TEM像、および、平面TEM像を画像処理した像である。なお、図26に示す表にお
いて、左図に平面TEM像、右図に左図の平面TEM像を画像処理した像を示す。
【0387】
画像処理、および画像解析の方法について説明する。まず、画像処理として、図26に示
す平面TEM像を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transf
orm)処理することでFFT像を取得した。次に、取得したFFT像を、2.8nm
から5.0nm−1の範囲を残してマスク処理を行った。次に、マスク処理したFFT
像を、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier T
ransform)処理することでFFTフィルタリング像を取得した。
【0388】
画像解析として、まず、FFTフィルタリング像から格子点を抽出した。格子点の抽出は
、以下の手順で行った。まず、FFTフィルタリング像のノイズを除去する処理を行った
。ノイズを除去する処理として、半径0.05nmの範囲における輝度を下式によって平
滑化した。
【0389】
【数1】
【0390】
ここで、S_Int(x,y)は座標(x,y)における平滑化された輝度を示し、rは
座標(x,y)と座標(x’,y’)との距離を示し、Int(x’,y’)は、座標(
x’,y’)における輝度を示す。なお、rが0のときは、rを1として計算した。
【0391】
次に、格子点の探索を行った。格子点の条件は、半径0.22nm内の全ての格子点候補
よりも輝度が高い座標とした。ここでは、格子点候補が抽出された。なお、半径0.22
nm内であれば、ノイズによる格子点の誤検出の頻度を小さくすることができる。また、
TEM像では格子点間に一定の距離があるため、半径0.22nm内には二つ以上の格子
点が含まれる可能性は低い。
【0392】
次に、抽出された格子点候補を中心に、半径0.22nm内で最も輝度の高い座標を抽出
し、格子点候補を更新した。格子点候補の抽出を繰り返し、新たな格子点候補が現れなく
なったときの座標を格子点として認定した。同様に、認定された格子点から0.22nm
よりも離れた位置において、新たな格子点の認定を行うことで、全ての範囲で格子点を認
定した。得られた複数の格子点は、まとめて格子点群と呼ぶ。
【0393】
次に、抽出した格子点群から六角形格子の角度を導出する方法について、図27(A)、
図27(B)および図27(C)に示す模式図、ならびに図27(D)に示すフローチャ
ートを用いて説明する。まず、基準格子点を定め、その最近接である6点の近接格子点を
結び、六角形格子を形成した(図27(A)、図27(D)ステップS101参照。)。
その後、該六角形格子の中心点である基準格子点から頂点である各格子点までの距離の平
均値Rを導出した。算出したRを各頂点までの距離とし、基準格子点を中心点とした正六
角形を形成した(図27(D)ステップS102参照。)。このとき、正六角形の各頂点
と、それぞれに最も近い近接格子点との距離を距離d1、距離d2、距離d3、距離d4
、距離d5および距離d6とする(図27(B)、図27(D)ステップS103参照。
)。次に、正六角形を、中心点を基準に0.1°刻みで0°から60°まで回転させ、回
転した正六角形と六角形格子との平均のずれ[D=(d1+d2+d3+d4+d5+d
6)/6]を算出した(図27(D)ステップS104参照。)。そして、平均のずれD
が最小となるときの正六角形の回転角度θを求め、六角形格子の角度とした(図27(C
)、図27(D)ステップS105)。
【0394】
次に、平面TEM像の観察範囲において、六角形格子の角度が30°となる割合が最も高
くなるように調整した。ここで、半径1nmの範囲において、六角形格子の角度の平均値
を算出した。続いて、画像処理を経て得られた平面TEM像を、領域が有する六角形格子
の角度に応じ、色、または濃淡で表示した。図26に示す平面TEM像を画像処理した像
は、図26に示す平面TEM像を上述の方法により画像解析し、六角形格子の角度に応じ
た濃淡を示した像である。つまり平面TEM像を画像処理した像は、平面TEM像のFF
Tフィルタリング像において、特定波数領域を色分けすることにより、各特定波数領域の
格子点の向きを抽出した画像である。
【0395】
図26より、ncが観察される試料1A、試料1Dでは、六角形の向きがランダムであり
、モザイク状に分布していることがわかった。また、断面TEM像で、層状構造が観察さ
れた試料1Jでは、六角形の向きが同じ向きを示す領域が数十nmの広範囲にわたって存
在することがわかった。試料1Dはランダムなモザイク状のncと、試料1Jと同様の同
じ向きが広領域に観測される領域とがあることが分かった。
【0396】
また、図26により、成膜時の基板温度が低い、または、酸素ガス流量比が小さいほど、
六角形の向きがランダムであり、モザイク状に分布している領域が表れやすい傾向がある
ことが分かった。
【0397】
このように、平面TEM像を画像解析することによって、CAAC−OSの六角形格子の
角度が変化する境界部を評価することが可能となる。
【0398】
次に、試料1Aの格子点群からボロノイ図を作成した。ボロノイ図は、格子点群を含む領
域で分割した図である。それぞれの格子点は、格子点を囲む領域から最も近い。以下では
、図28(A)、図28(B)、図28(C)および図28(D)に示す模式図、ならび
に図28(E)に示すフローチャートを用いて、ボロノイ図の作成方法の詳細を説明する
【0399】
まず、図27に示した方法などによって格子点群を抽出した(図28(A)および図28
(E)ステップS111参照。)。次に、近接する格子点間を線分で結んだ(図28(B
)および図28(E)ステップS112参照。)。次に、各線分の垂直二等分線を引いた
(図28(C)および図28(E)ステップS113参照。)。次に、3つの垂直二等分
線が交わる点を抽出した(図28(E)ステップS114参照。)。この点をボロノイ点
と呼ぶ。次に、近接するボロノイ点間を線分で結んだ(図28(D)および図28(E)
ステップS115参照。)。このとき、線分に囲まれた多角形領域をボロノイ領域と呼ぶ
。以上の方法によって、ボロノイ図を作成することができた。
【0400】
図29に、試料1A、試料1C、試料1D、試料1F、試料1G、および試料1Jにおけ
るボロノイ領域の形状が、四角形乃至九角形のいずれかである割合を示す。棒グラフに、
各試料のボロノイ領域の形状が四角形乃至九角形のいずれかである個数を示した。また、
表に各試料のボロノイ領域の形状が四角形乃至九角形のいずれかである割合を示した。
【0401】
図29より、結晶化の高い試料1Jでは六角形を示す割合が高く、結晶化が低い試料1A
では六角形の割合が低くなる傾向を示すことが確認できた。試料1Dの六角形の比率は、
試料1Jと試料1Aの間の値であった。従って、図29より、成膜条件の違いにより、金
属酸化物の結晶状態は大きく異なることが確認された。
【0402】
従って、図29より、成膜時の基板温度が低い、または、酸素ガス流量比が小さいほど、
結晶化が低く、六角形の割合が低くなる傾向を示すことが確認できた。
【0403】
<元素分析>
本項目では、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersiv
e X−ray spectroscopy)を用い、EDXマッピングを取得し、評価
することによって、試料1Aの元素分析を行った結果について説明する。なお、EDX測
定には、元素分析装置として日本電子株式会社製エネルギー分散型X線分析装置JED−
2300Tを用いる。なお、試料から放出されたX線の検出にはSiドリフト検出器を用
いる。
【0404】
EDX測定では、試料の分析対象領域の各点に電子線照射を行い、これにより発生する試
料の特性X線のエネルギーと発生回数を測定し、各点に対応するEDXスペクトルを得る
。本実施例では、各点のEDXスペクトルのピークを、In原子のL殻への電子遷移、G
a原子のK殻への電子遷移、Zn原子のK殻への電子遷移及びO原子のK殻への電子遷移
に帰属させ、各点におけるそれぞれの原子の比率を算出する。これを試料の分析対象領域
について行うことにより、各原子の比率の分布が示されたEDXマッピングを得ることが
できる。
【0405】
図30には、試料1Aの断面、および平面におけるTEM像、およびEDXマッピングを
示す。なお、EDXマッピングは、範囲において、測定元素が多いほど明るくなり、測定
元素が少ないほど暗くなるように、明暗で元素の割合を示した。また、図30に示すED
Xマッピングの倍率は720万倍とした。
【0406】
図30(A)は断面TEM像、図30(E)は平面TEM像である。図30(B)は断面
、および図30(F)は平面におけるIn原子のEDXマッピングである。なお、図30
(B)に示すEDXマッピングにおける全原子に対するIn原子の比率は、9.28乃至
33.74[atomic%]の範囲とした。図30(F)に示すEDXマッピングにお
ける全原子に対するIn原子の比率は、12.97乃至38.01[atomic%]の
範囲とした。
【0407】
また、図30(C)は断面、および図30(G)は平面におけるGa原子のEDXマッピ
ングである。なお、図30(C)に示すEDXマッピングにおける全原子に対するGa原
子の比率は1.18乃至18.64[atomic%]の範囲とした。図30(G)に示
すEDXマッピングにおける全原子に対するGa原子の比率は1.72乃至19.82[
atomic%]の範囲とした。
【0408】
また、図30(D)は断面、および図30(H)は平面におけるZn原子のEDXマッピ
ングである。なお、図30(D)に示すEDXマッピングにおける全原子に対するZn原
子の比率は6.69乃至24.99[atomic%]の範囲とした。図30(H)に示
すEDXマッピングにおける全原子に対するZn原子の比率は9.29乃至28.32[
atomic%]の範囲とした。
【0409】
なお、図30(A)、図30(B)、図30(C)、および図30(D)は、試料1Aの
断面において、同範囲の領域を示した。図30(E)、図30(F)、図30(G)、お
よび図30(H)は、試料1Aの平面において、同範囲の領域を示した。
【0410】
図31には、試料1Aの断面、および平面におけるEDXマッピングを拡大した図を示す
。図31(A)は、図30(B)の一部を拡大した図である。図31(B)は、図30(
C)の一部を拡大した図である。図31(C)は、図30(D)の一部を拡大した図であ
る。図31(D)は、図30(F)の一部を拡大した図である。図31(E)は、図30
(G)の一部を拡大した図である。図31(F)は、図30(H)の一部を拡大した図で
ある。
【0411】
図31(A)、図31(B)、および図31(C)に示すEDXマッピングでは、画像に
相対的な明暗の分布が見られ、試料1Aにおいて、各原子が分布を持って存在している様
子が確認できた。ここで、図31(A)、図31(B)、および図31(C)に示す実線
で囲む範囲と破線で囲む範囲に注目した。
【0412】
図31(A)では、実線で囲む範囲は、相対的に明るい領域を多く含み、破線で囲む範囲
は、相対的に暗い領域を多く含むことが確認できた。また、図31(B)では実線で囲む
範囲は、相対的に暗い領域を多く含み、破線で囲む範囲は、相対的に明るい領域を多く含
むことが確認できた。
【0413】
つまり、実線で囲む範囲はIn原子が相対的に多い領域であり、破線で囲む範囲はIn原
子が相対的に少ない領域であることが確認できた。ここで、図31(C)では、実線で囲
む範囲において、下方の領域は相対的に明るい領域であり、上方の領域は相対的に暗い領
域であることが確認できた。従って、実線で囲む範囲は、InX2ZnY2Z2、また
はInOX1などが主成分である領域であることが分かった。
【0414】
また、実線で囲む範囲はGa原子が相対的に少ない領域であり、破線で囲む範囲はGa原
子が相対的に多い領域であることが確認できた。図31(C)では、破線で囲む範囲にお
いて、左方の領域は、相対的に暗い領域であり、右方の領域は、相対的に明るい領域であ
ることが確認できた。従って、破線で囲む範囲は、GaOX3、またはGaX4ZnY4
Z4などが主成分である領域であることが分かった。
【0415】
同様に、図31(D)、図31(E)、および図31(F)に示すEDXマッピングにお
いても、実線で囲む範囲と破線で囲む範囲に注目した。
【0416】
図31(D)では、実線で囲む範囲は、相対的に明るい領域を多く含み、破線で囲む範囲
は、相対的に暗い領域を多く含むことが確認できた。また、図31(E)では実線で囲む
範囲は、相対的に暗い領域を多く含み、破線で囲む範囲は、相対的に明るい領域を多く含
むことが確認できた。
【0417】
つまり、実線で囲む範囲はIn原子が相対的に多い領域であり、Ga原子が相対的に少な
い領域であることが確認できた。ここで、図31(F)では、実線で囲む範囲において、
下方の領域は相対的に暗い領域であり、上方の領域は相対的に明るい領域であることが確
認できた。従って、実線で囲む範囲は、InX2ZnY2Z2、またはInOX1など
が主成分である領域であることが分かった。
【0418】
また、破線で囲む範囲はIn原子が相対的に少ない領域であり、Ga原子が相対的に多い
領域であることが確認できた。図31(F)では、破線で囲む範囲において、右方の領域
は、相対的に暗い領域であり、左方の領域は、相対的に明るい領域であることが確認でき
た。従って、破線で囲む範囲は、GaOX3、またはGaX4ZnY4Z4などが主成
分である領域であることが分かった。
【0419】
また、図31より、In原子の分布は、Ga原子よりも、比較的、均一に分布しており、
InOX1が主成分である領域は、InX2ZnY2Z2が主成分となる領域を介して
、互いに繋がって形成されているようにみえる。このように、InX2ZnY2Z2
またはInOX1が主成分である領域は、クラウド状に広がって形成されていると推測で
きる。
【0420】
このように、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2Z2、またはInO
X1が主成分である領域とが、偏在し、混合している構造を有するIn−Ga−Zn酸化
物を、CAC−IGZOと呼称することができる。
【0421】
また、図31において、GaOX3が主成分である領域、及びInX2ZnY2Z2
またはInOX1が主成分である領域のサイズは、0.5nm以上10nm以下、または
1nm以上3nm以下で観察された。
【0422】
以上より、CAC−IGZOは、金属元素が均一に分布したIGZO化合物とは異なる構
造であり、IGZO化合物と異なる性質を有することが分かった。つまり、CAC−IG
ZOは、GaOX3などが主成分である領域と、InX2ZnY2Z2、またはInO
X1が主成分である領域と、に互いに相分離し、各元素を主成分とする領域がモザイク状
である構造を有することが確認できた。
【0423】
よって、CAC−IGZOを半導体素子に用いた場合、GaOX3などに起因する性質と
、InX2ZnY2Z2、またはInOX1に起因する性質とが、相補的に作用するこ
とにより、高いオン電流(Ion)、高い電界効果移動度(μ)、および低いオフ電流(
off)を実現することが期待できる。また、CAC−IGZOを用いた半導体素子は
、信頼性が高い。従って、CAC−IGZOは、ディスプレイをはじめとするさまざまな
半導体装置に最適である。
【0424】
本実施例は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態、または他の実
施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例2】
【0425】
本実施例では、本発明の一態様である、金属酸化物108を有するトランジスタ150を
作製し、電気特性および信頼性試験を行った。なお、本実施例においては、金属酸化物1
08を有するトランジスタ150として、試料2A、試料2B、試料2C、試料2D、試
料2E、試料2F、試料2G、試料2H、および試料2Jの9種のトランジスタを作製し
た。
【0426】
<試料の構成と作製方法>
以下では、本発明の一態様に係る試料2A、試料2B、試料2C、試料2D、試料2E、
試料2F、試料2G、試料2H、および試料2Jについて説明する。試料2A乃至試料2
Jとして、実施の形態2、および図9乃至図11で説明した作成方法により、図6の構造
を有するトランジスタ150を作製した。
【0427】
なお、試料2A乃至試料2Jは、それぞれ、金属酸化物108の成膜時の温度、および酸
素流量比を異なる条件で作製した。下表に、試料2A乃至試料2Jにおける金属酸化物成
膜時の温度、および酸素流量比を示す。
【0428】
【表3】
【0429】
なお、各試料は、実施の形態2にて説明した作製方法により作製した。また、金属酸化物
108の成膜工程において、ターゲットは、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=
4:2:4.1[原子数比])を用いた。
【0430】
なお、トランジスタ150のチャネル長は2μm、チャネル幅は3μm(以下、L/W=
2/3μmともいう)、またはチャネル長は2μm、チャネル幅は50μm(以下、L/
W=2/50μmともいう)とした。
【0431】
<トランジスタの電気特性>
次に、上記作製した試料2A乃至試料2Jのトランジスタ(L/W=2/3μm)のId
−Vg特性を測定した。なお、トランジスタのId−Vg特性の測定条件としては、第1
のゲート電極として機能する導電膜112に印加する電圧(以下、ゲート電圧(Vg)と
もいう)、及び第2のゲート電極として機能する導電膜106に印加する電圧(以下、バ
ックゲート電圧(Vbg)ともいう)を、−10Vから+10Vまで0.25Vのステッ
プで印加した。また、ソース電極として機能する導電膜120aに印加する電圧(以下、
ソース電圧(V)ともいう)を0V(comm)とし、ドレイン電極として機能する導
電膜120bに印加する電圧(以下、ドレイン電圧(Vd)ともいう)を、0.1V及び
20Vとした。
【0432】
[トランジスタのId−Vg特性]
ここで、トランジスタのドレイン電流−ゲート電圧特性(Id−Vg特性)について説明
する。図34(A)はトランジスタのId−Vg特性の一例を説明する図である。なお、
図34(A)において、理解を簡単にするためにトランジスタの活性層には、多結晶シリ
コンを用いた場合を想定している。また、図34(A)において、縦軸がIdを横軸がV
gをそれぞれ表す。
【0433】
図34(A)に示すように、Id−Vg特性は、大きく分けて3つの領域に分けられる。
1つ目の領域をオフ領域(OFF region)と、2つ目の領域をサブスレッショル
ド領域(subthreshold region)と、3つ目の領域をオン領域(ON
rigion)と、それぞれ呼称する。また、サブスレッショルド領域とオン領域との
境界のゲート電圧をしきい値電圧(Vth)と呼称する。
【0434】
トランジスタの特性としては、オフ領域のドレイン電流(オフ電流またはIoffともい
う)が低く、オン領域のドレイン電流(オン電流またはIonともいう)が高い方が望ま
しい。なお、トランジスタのオン電流については、電界効果移動度を指標とする場合が多
い。電界効果移動度の詳細については後述する。
【0435】
また、トランジスタを低い電圧で駆動させるためには、サブスレッショルド領域でのId
−Vg特性の傾きが急峻である方が望ましい。サブスレッショルド領域のId−Vg特性
の変化の大きさを表わす指標として、SS(subthreshold swing)ま
たはS値などと呼称される。なお、S値は、以下の式(2)で表される。
【0436】
【数2】
【0437】
S値は、サブスレッショルド領域において、ドレイン電流が1桁変化するのに必要なゲー
ト電圧の変化量の最小値である。S値が小さいほど、オンとオフとのスイッチング動作を
急峻に行うことができる。
【0438】
[トランジスタのId−Vd特性]
次に、トランジスタのドレイン電流−ドレイン電圧特性(Id−Vd特性)について説明
する。図34(B)はトランジスタのId−Vd特性の一例を説明する図である。また、
図34(B)において、縦軸がIdを横軸がVdをそれぞれ表す。
【0439】
図34(B)に示すように、オン領域は、さらに2つの領域に分けられる。1つ目の領域
を線形領域(Linear region)と、2つ目の領域を飽和領域(Satura
tion region)と、それぞれ呼称する。線形領域は、ドレイン電流がドレイン
電圧の上昇に伴って放物線状に大きくなる。一方で飽和領域は、ドレイン電圧が変化して
もドレイン電流が大きく変化しない。なお、真空管に準じて、線形領域を3極管領域と、
飽和領域を5極管領域と、それぞれ呼称する場合がある。
【0440】
また、線形領域とは、Vdに対してVgが大きい(Vd<Vg)状態を指す場合がある。
また、飽和領域とは、Vgに対してVdが大きい(Vg<Vd)状態を指す場合がある。
ただし、実際には、トランジスタのしきい値電圧を考慮する必要がある。よって、Vgか
らトランジスタのしきい値電圧を差分したがVdに対して大きい状態(Vd<Vg−Vt
h)を線形領域とする場合がある。同様に、Vgからトランジスタのしきい値電圧を差分
した値がVdに対して小さい(Vg−Vth<Vd)状態を飽和領域とする場合がある。
【0441】
トランジスタのId−Vd特性において、飽和領域の電流が一定であるような特性を、「
飽和性が良い」と表現する場合がある。トランジスタの飽和性の良さは、特に有機ELデ
ィスプレイへの応用で重要である。例えば、飽和性が良いトランジスタを有機ELディス
プレイの画素のトランジスタに用いることで、ドレイン電圧が変化しても画素の明るさの
変化を抑制することができる。
【0442】
[ドレイン電流の解析モデル]
次に、ドレイン電流の解析モデルについて説明する。ドレイン電流の解析モデルとしては
、Gradualchannel近似(GCA)に基づくドレイン電流の解析式が知られ
ている。GCAに基づくとトランジスタのドレイン電流は、以下の式(3)で表される。
【0443】
【数3】
【0444】
数式(3)において、上が線形領域におけるドレイン電流の式であり、下が飽和領域にお
けるドレイン電流の式である。数式(3)において、Idはドレイン電流、μは活性層の
移動度、Lはトランジスタのチャネル長、Wはトランジスタのチャネル幅、Coxはゲー
ト容量、Vgはゲート電圧、Vdはドレイン電圧、Vthはトランジスタのしきい値電圧
を、それぞれ表す。
【0445】
[電界効果移動度]
次に、電界効果移動度について説明する。トランジスタの電流駆動力の指標として、電界
効果移動度が用いられる。上述したように、トランジスタのオン領域は線形領域と飽和領
域に分かれる。それぞれの領域の特性から、GCAに基づくドレイン電流の解析式に基づ
いてトランジスタの電界効果移動度を算出することができる。区別する必要のあるときは
、それぞれ線形移動度(Linear mobility)、飽和移動度(Satura
tion mobility)と呼ばれる。線形移動度は、以下の式(4)で表され、飽
和移動度は、以下の式(5)で表される。
【0446】
【数4】
【0447】
【数5】
【0448】
本明細書等においては、式(4)及び式(5)から算出される曲線を、移動度曲線と呼称
する。図35に、GCAに基づくドレイン電流の解析式から計算した移動度曲線を示す。
なお、図35では、GCAが有効であるとした場合のVd=10VのId−Vg特性と、
線形移動度及び飽和移動度の移動度曲線とを、それぞれ重ねて示している。
【0449】
図35においては、GCAに基づくドレイン電流の解析式からId−Vg特性を計算して
いる。移動度曲線の形状は、トランジスタの内部の様子を理解するための手がかりとなる
【0450】
図32に、試料2A乃至試料2JのId−Vg特性結果、および電界効果移動度をそれぞ
れ示す。実線はVdが20Vの時のId、一点鎖線は、Vdが0.1Vの時のIdを示す
。また、破線は、電界効果移動度を示す。なお、図32において、第1縦軸がId[A]
を、第2縦軸が電界効果移動度(μFE[cm/V])を、横軸がVg[V]を、そ
れぞれ表す。また、電界効果移動度については、Vdを20Vとして測定した値から算出
した。
【0451】
図32に示すように、試料2A乃至試料2Jの特性は、オン電流(Ion)、電界効果移
動度、特に飽和領域における電界効果移動度が異なることが確認できた。特に、電界効果
移動度の形状に関して、最大飽和移動度の値、および0V付近の立ち上がり特性の電界効
果移動度の形状が大きく異なることがわかった。
【0452】
図32より、成膜時の基板温度が低いほど、または成膜時の酸素流量比が小さいほど、高
いオン電流(Ion)を示すことがわかった。また、同様に、0V付近の立ち上がりが非
常に急峻であることが確認できた。特に、試料2Aでは、電界効果移動度の最大値は70
cm/Vに迫る値を示すことが確認された。
【0453】
<ゲートバイアス−熱ストレス試験(GBT試験)>
次に、上記作製した、試料2A乃至試料2Jのトランジスタ(L/W=2/50μm)に
対し、信頼性評価を行った。信頼性評価としては、GBT試験とした。
【0454】
本実施例でのGBT試験条件としては、第1のゲート電極として機能する導電膜112及
び第2のゲート電極として機能する導電膜106に印加される電圧、(以下、ゲート電圧
(Vg)という。)を±30V、とし、ソース電極として機能する導電膜120a及びド
レイン電極として機能する導電膜120bとして機能する導電膜に印加される電圧(以下
、それぞれドレイン電圧(Vd)、ソース電圧(V)という。)を0V(COMMON
)とした。また、ストレス温度を60℃、ストレス印加時間を1時間とし、測定環境をダ
ーク環境及び光照射環境(白色LEDにて約10000lxの光を照射)の2つの環境で
、それぞれ行った。
【0455】
すなわち、トランジスタ150のソース電極として機能する導電膜120aとドレイン電
極として機能する導電膜120bを同電位とし、第1のゲート電極として機能する導電膜
112及び第2のゲート電極として機能する導電膜106には、ソース電極として機能す
る導電膜120a及びドレイン電極として機能する導電膜120bとは異なる電位を一定
時間(ここでは1時間)印加した。
【0456】
また、第1のゲート電極として機能する導電膜112及び第2のゲート電極として機能す
る導電膜106に与える電位がソース電極として機能する導電膜120a及びドレイン電
極として機能する導電膜120bの電位よりも高い場合をプラスストレスとした。また、
第1のゲート電極として機能する導電膜112及び第2のゲート電極として機能する導電
膜106に与える電位がソース電極として機能する導電膜120a及びドレイン電極とし
て機能する導電膜120bの電位よりも低い場合をマイナスストレスとした。したがって
、測定環境と合わせて、プラスGBT(ダーク)、マイナスGBT(ダーク)、プラスG
BT(光照射)、及びマイナスGBT(光照射)の合計4条件にて信頼性評価を実施した
【0457】
なお、プラスGBT(ダーク)をPBTS(Positive Bias Temper
ature Stress)として、以下に記載する。また、マイナスGBT(ダーク)
を、NBTS(Negative Bias Temperature Stress)
とする。プラスGBT(光照射)をPBITS(Positive Bias Illu
mination Temperature Stress)とする。マイナスGBT(
光照射)をNBITS(Negative Bias Illumination Te
mperature Stress)とする。
【0458】
試料2A乃至試料2JのGBT試験結果を図33に示す。また、図33において、縦軸に
トランジスタのしきい値電圧の変化量(ΔVth)を示す。
【0459】
図33に示す結果から、試料2A乃至試料2Jが有するトランジスタは、GBT試験にお
ける、しきい値電圧の変化量(ΔVth)が、±3V以内であった。したがって、試料2
A乃至試料2Jが有するトランジスタは、高い信頼性を有することが分かる。
【0460】
従って、結晶性の低いIGZO膜であっても、結晶性の高いIGZO膜と同様に、欠陥準
位密度が低い膜が作られていると推定される。
【0461】
本実施例は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態、または他の実
施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例3】
【0462】
本実施例では、各種測定方法を用い、基板上に成膜した本発明の一態様である金属酸化物
について測定を行った結果について説明する。なお、本実施例においては、試料3A、試
料3D、および試料3Jを作製した。
【0463】
<試料の構成と作製方法>
以下では、本発明の一態様に係る試料3A、試料3D、および試料3Jについて説明する
。試料3A、試料3D、および試料3Jは、基板と、基板上の金属酸化物と、を有する。
【0464】
なお、試料3A、試料3D、および試料3Jは、それぞれ、金属酸化物の成膜時の温度、
および酸素流量比を異なる条件で作製した。下表に、試料3A、試料3D、および試料3
Jにおける金属酸化物成膜時の温度、および酸素流量比を示す。
【0465】
【表4】
【0466】
次に、各試料の作製方法について、説明する。
【0467】
まず、基板として、ガラス基板を用いた。続いて、スパッタリング装置を用いて、基板上
に金属酸化物として、厚さ100nmのIn−Ga−Zn金属酸化物を形成した。成膜条
件は、チャンバー内の圧力を0.6Paとし、ターゲットには、金属酸化物ターゲット(
In:Ga:Zn=1:1:1.2[原子数比])を用いた。また、スパッタリング装置
内に設置された金属酸化物ターゲットに2500WのAC電力を供給することで、金属酸
化物を成膜した。
【0468】
なお、金属酸化物を成膜する際の条件として、上記表に示した成膜温度、および酸素流量
比とすることで、試料3A、試料3D、および試料3Jとした。
【0469】
以上の工程により、本実施例の試料3A、試料3D、および試料3Jを作製した。
【0470】
<TEM像および電子回折>
本項目では、試料3A、試料3D、および試料3Jを、TEMによって観察、および解析
した結果について説明する。
【0471】
また、本項目では、試料3A、試料3D、および試料3Jをプローブ径が1nmの電子線
(ナノビーム電子線ともいう。)を照射することで、電子回折パターンを取得した結果に
ついて説明する。
【0472】
なお、平面TEM像は、球面収差補正機能を用いて観察した。また、HAADF−STE
M像の撮影には、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM−ARM200F
を用いて、加速電圧200kV、ビーム径約0.1nmφの電子線を照射して行った。
【0473】
また、電子回折パターンの観察は、電子線を照射しながら0秒の位置から35秒の位置ま
で一定の速度で移動させながら行った。
【0474】
図36(A)に試料3Aの断面TEM像を、図36(B)に試料3Aの電子回折パターン
を取得した結果を示す。図36(C)に試料3Dの断面TEM像を、図36(D)に試料
3Dの電子回折パターンを取得した結果を示す。図36(E)に試料3Jの断面TEM像
を、図36(F)に試料3Jの電子回折パターンを取得した結果を示す。
【0475】
試料3Aは、図36(A)に示すように、断面TEM観察結果より、微結晶が観察された
。また、図36(B)に示すように、試料3Aに対する電子回折パターンの結果は、円を
描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測できた。また、リング状の領域に複数の
スポットが観測できた。
【0476】
試料3Dは、図36(C)に示すように、断面TEM観察結果より、CAAC構造、およ
び微結晶が観察された。また、図36(D)に示すように、試料3Dに対する電子回折パ
ターンの結果は、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測できた。また、リ
ング状の領域に複数のスポットが観測できた。また、(009)面に起因するスポットが
含まれる回折パターンもわずかに見られた。
【0477】
一方、試料3Jは、図36(E)に示すように、断面TEM観察結果より、CAAC構造
を示す層状の配列が明瞭に確認された。また、図36(F)に示すように、試料3Jに対
する電子回折パターンの結果は、(009)面に起因するスポットが含まれる回折パター
ンが見られた。
【0478】
なお、上述したような断面TEM像および平面TEM像において観察される特徴は、金属
酸化物の構造を一面的に捉えたものである。
【0479】
以上より、試料3A、および試料3Dの電子回折パターンは、リング状に輝度の高い領域
と、該リング領域に複数の輝点を有する。従って、試料3A、および試料3Dは、電子回
折パターンが、微結晶を有する金属酸化物になり、平面方向、および断面方向において、
配向性は有さないことが分かった。また、試料3Dは、nc構造とCAAC構造との混合
材であることがわかった。
【0480】
一方、試料3Jの電子回折パターンは、InGaZnOの結晶の(009)面に起因す
るスポットを有する。従って、試料3Jは、c軸配向性を有し、c軸が被形成面または上
面に略垂直な方向を向いていることがわかった。
【0481】
<TEM像の画像解析>
本項目では、試料3A、試料3D、および試料3Jを、HAADF−STEMによって観
察、および解析した結果について説明する。
【0482】
平面TEM像の画像解析を行った結果について説明する。なお、平面TEM像は、球面収
差補正機能を用いて観察した。なお、平面TEM像の撮影には、日本電子株式会社製原子
分解能分析電子顕微鏡JEM−ARM200Fを用いて、加速電圧200kV、ビーム径
約0.1nmφの電子線を照射して行った。
【0483】
図37(A)は、試料3Aの平面TEM像、図37(B)は、試料3Aの平面TEM像を
画像処理した像を示す。図37(C)は、試料3Dの平面TEM像、図37(D)は、試
料3Dの平面TEM像を画像処理した像を示す。図37(E)は、試料3Jの平面TEM
像、図37(F)は、試料3Jの平面TEM像を画像処理した像を示す。
【0484】
なお、図37(B)、図37(D)、および図37(F)に示す平面TEM像を画像処理
した像は、図37(A)、図37(C)、および図37(E)に示す平面TEM像を実施
例1で説明した方法により画像解析し、六角形格子の角度に応じた濃淡を示した像である
。つまり平面TEM像を画像処理した像は、平面TEM像のFFTフィルタリング像にお
いて、特定波数領域を分割し、当該領域に濃淡をつけることにより、各特定波数領域の格
子点の向きを抽出した画像である。
【0485】
図37より、ncが観察される試料3A、試料3Dでは、六角形の向きがランダムであり
、モザイク状に分布していることがわかった。また、断面TEM像で、層状構造が観察さ
れた試料3Jでは、六角形の向きが同じ向きを示す領域が数十nmの広範囲にわたって存
在することがわかった。試料3Dはランダムなモザイク状のncと、試料3Jと同様の同
じ向きが広領域に観測される領域とがあることが分かった。
【0486】
また、図37により、成膜時の基板温度が低い、または、酸素ガス流量比が小さいほど、
六角形の向きがランダムであり、モザイク状に分布している領域が表れやすい傾向がある
ことが分かった。
【0487】
このように、平面TEM像を画像解析することによって、CAAC−OSの六角形格子の
角度が変化する境界部を評価することが可能となる。
【0488】
次に、試料3Aの格子点群からボロノイ図を作成した。なお、ボロノイ図は、実施例1で
説明した方法により取得した。
【0489】
図38(A)に試料3A、図38(B)に試料3D、図38(C)におよび試料3Jにお
けるボロノイ領域の形状が、四角形乃至九角形のいずれかである割合を示す。棒グラフに
、各試料のボロノイ領域の形状が四角形乃至九角形のいずれかである個数を示した。また
、表に各試料のボロノイ領域の形状が四角形乃至九角形のいずれかである割合を示した。
【0490】
図38より、結晶化の高い試料3Jでは六角形を示す割合が高く、結晶化が低い試料3A
では六角形の割合が低くなる傾向を示すことが確認できた。試料3Dの六角形の比率は、
試料3Jと試料3Aの間の値であった。従って、図38より、成膜条件の違いにより、金
属酸化物の結晶状態は大きく異なることが確認された。
【0491】
従って、図38より、成膜時の基板温度が低い、または、酸素ガス流量比が小さいほど、
結晶化が低く、六角形の割合が低くなる傾向を示すことが確認できた。
【0492】
<元素分析>
本項目では、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersiv
e X−ray spectroscopy)を用い、EDXマッピングを取得し、評価
することによって、試料3Aの元素分析を行った結果について説明する。なお、EDX測
定には、元素分析装置として日本電子株式会社製エネルギー分散型X線分析装置JED−
2300Tを用いる。なお、試料から放出されたX線の検出にはSiドリフト検出器を用
いる。
【0493】
EDX測定では、試料の分析対象領域の各点に電子線照射を行い、これにより発生する試
料の特性X線のエネルギーと発生回数を測定し、各点に対応するEDXスペクトルを得る
。本実施例では、各点のEDXスペクトルのピークを、In原子のL殻への電子遷移、G
a原子のK殻への電子遷移、Zn原子のK殻への電子遷移及びO原子のK殻への電子遷移
に帰属させ、各点におけるそれぞれの原子の比率を算出する。これを試料の分析対象領域
について行うことにより、各原子の比率の分布が示されたEDXマッピングを得ることが
できる。
【0494】
図39には、試料3Aの断面、および平面におけるTEM像、およびEDXマッピングを
示す。なお、EDXマッピングは、範囲における、測定元素が多いほど明るくなり、測定
元素が少ないほど暗くなるように、明暗で元素の割合を示した。また、図39に示すED
Xマッピングの倍率は720万倍とした。
【0495】
図39(A)は断面TEM像、図39(E)は平面TEM像である。図39(B)は断面
、および図39(F)は平面におけるIn原子のEDXマッピングである。なお、図39
(B)に示すEDXマッピングにおける全原子に対するIn原子の比率は、8.64乃至
34.91[atomic%]の範囲とした。図39(F)に示すEDXマッピングにお
ける全原子に対するIn原子の比率は、5.76乃至34.69[atomic%]の範
囲とした。
【0496】
また、図39(C)は断面、および図39(G)は平面におけるGa原子のEDXマッピ
ングである。なお、図39(C)に示すEDXマッピングにおける全原子に対するGa原
子の比率は2.45乃至25.22[atomic%]の範囲とした。図39(G)に示
すEDXマッピングにおける全原子に対するGa原子の比率は1.29乃至27.64[
atomic%]の範囲とした。
【0497】
また、図39(D)は断面、および図39(H)は平面におけるZn原子のEDXマッピ
ングである。なお、図39(D)に示すEDXマッピングにおける全原子に対するZn原
子の比率は5.05乃至23.47[atomic%]の範囲とした。図39(H)に示
すEDXマッピングにおける全原子に対するZn原子の比率は3.69乃至27.86[
atomic%]の範囲とした。
【0498】
なお、図39(A)、図39(B)、図39(C)、および図39(D)は、試料3Aの
断面において、同範囲の領域を示した。図39(E)、図39(F)、図39(G)、お
よび図39(H)は、試料3Aの平面において、同範囲の領域を示した。
【0499】
図40には、試料3Aの断面におけるEDXマッピングを拡大した図を示す。図40(A
)は、図39(B)の一部を拡大した図である。図40(B)は、図39(C)の一部を
拡大した図である。図40(C)は、図39(D)の一部を拡大した図である。
【0500】
図40(A)、図40(B)、および図40(C)に示すEDXマッピングでは、画像に
相対的な明暗の分布が見られ、試料3Aにおいて、各原子が分布を持って存在している様
子が確認できた。ここで、図40(A)、図40(B)、および図40(C)に示す実線
で囲む範囲と破線で囲む範囲に注目した。
【0501】
図40(A)では、実線で囲む範囲は、相対的に暗い領域を多く含み、破線で囲む範囲は
、相対的に明るい領域を多く含むことが確認できた。また、図40(B)では実線で囲む
範囲は、相対的に明るい領域を多く含み、破線で囲む範囲は、相対的に暗い領域を多く含
むことが確認できた。
【0502】
つまり、実線で囲む範囲はIn原子が相対的に多い領域であり、破線で囲む範囲はIn原
子が相対的に少ない領域であることが確認できた。ここで、図40(C)では、実線で囲
む範囲において、上部の領域は相対的に明るい領域であり、下部の領域は相対的に暗い領
域であることが確認できた。従って、実線で囲む範囲は、InX2ZnY2Z2、また
はInOX1などが主成分である領域であることが分かった。
【0503】
また、実線で囲む範囲はGa原子が相対的に少ない領域であり、破線で囲む範囲はGa原
子が相対的に多い領域であることが確認できた。図40(C)の上方の破線で囲む範囲に
おいて、右側の領域は相対的に明るい領域であり、左部の領域は、暗い領域であることが
確認できた。また、図40(C)の下方の破線で囲む範囲において、左上側の領域は相対
的に明るい領域であり、右下部の領域は、暗い領域であることが確認できた。従って、破
線で囲む範囲は、GaOX3、またはGaX4ZnY4Z4などが主成分である領域で
あることが分かった。
【0504】
また、図40(A)、図40(B)、および図40(C)より、In原子の分布は、Ga
原子よりも、比較的、均一に分布しており、InOX1が主成分である領域は、InX2
ZnY2Z2が主成分となる領域を介して、互いに繋がって形成されているようにみえ
る。このように、InX2ZnY2Z2、またはInOX1が主成分である領域は、ク
ラウド状に広がって形成されていると推測できる。
【0505】
このように、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2Z2、またはInO
X1が主成分である領域とが、偏在し、混合している構造を有するIn−Ga−Zn酸化
物を、CAC−IGZOと呼称することができる。
【0506】
また、図40(A)、図40(B)、および図40(C)において、GaOX3が主成分
である領域、及びInX2ZnY2Z2、またはInOX1が主成分である領域のサイ
ズは、0.5nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下で観察された。
【0507】
一方、図41には、試料3Jの断面、および平面におけるTEM像、およびEDXマッピ
ングを示す。なお、EDXマッピングは、範囲において、測定元素が多いほど明るくなり
、測定元素が少ないほど暗くなるように、明暗で元素の割合を示した。また、図41に示
すEDXマッピングの倍率は720万倍とした。
【0508】
図41(A)は断面TEM像、図41(E)は平面TEM像である。図41(B)は断面
、および図41(F)は平面におけるIn原子のEDXマッピングである。なお、図41
(B)に示すEDXマッピングにおける全原子に対するIn原子の比率は、9.70乃至
40.47[atomic%]の範囲とした。図41(F)に示すEDXマッピングにお
ける全原子に対するIn原子の比率は、9.16乃至35.76[atomic%]の範
囲とした。
【0509】
また、図41(C)は断面、および図41(G)は平面におけるGa原子のEDXマッピ
ングである。なお、図41(C)に示すEDXマッピングにおける全原子に対するGa原
子の比率は8.23乃至31.95[atomic%]の範囲とした。図41(G)に示
すEDXマッピングにおける全原子に対するGa原子の比率は8.21乃至28.86[
atomic%]の範囲とした。
【0510】
また、図41(D)は断面、および図41(H)は平面におけるZn原子のEDXマッピ
ングである。なお、図41(D)に示すEDXマッピングにおける全原子に対するZn原
子の比率は5.37乃至25.92[atomic%]の範囲とした。図41(H)に示
すEDXマッピングにおける全原子に対するZn原子の比率は7.86乃至24.36[
atomic%]の範囲とした。
【0511】
なお、図41(A)、図41(B)、図41(C)、および図41(D)は、試料3Jの
断面において、同範囲の領域を示した。図41(E)、図41(F)、図41(G)、お
よび図41(H)は、試料3Jの平面において、同範囲の領域を示した。
【0512】
図41(A)には、横成長をした結晶群が明確に観察され、図41(E)には、ヘキサゴ
ナル構造の120°の角度の結晶が観察された。
【0513】
図41(B)、および図41(D)に示すIn原子、およびZn原子のEDXマッピング
を見ると、白線で示したように、輝度の高い輝点が列をなしている様子が観測された。ま
た、図41(F)、および図41(H)では、これらの線のなす角度はおよそ120°で
ヘキサゴナル構造の特徴を有し、図41(B)、および図41(D)では、図41(A)
と同じ層状配列が観察できた。また、図41(C)、および図41(G)に示すように、
Ga原子に関してはそれらの傾向はみられなかった。
【0514】
なお、EDXの分解能は一般に原子配列の規則性の有無に影響される。単結晶のように原
子配列が規則的であるとき、ビームの入射方向に対して原子が直線上に並んでいるため、
入射電子はチャネリングし伝播する。そのため、原子カラムが分離できる。他方、原子配
列の規則性が低い場合、ビームの入射方向に対して原子列が揺らいでいるため、入射電子
はチャネリングせず拡がる。つまり、空間分解能は悪くなり、得られる像が、ぼやけた状
態で観察される場合がある。
【0515】
つまり、CAACは単結晶ほど結晶性が高くないため、ビームの広がりにより、EDXマ
ッピングではHAADF−STEMほどの分解能はなく、ぼやけた状態で観察されたと考
えられる。また、図39より、CACは、ビームが拡がった状態で見えるため、それぞれ
の原子は、周辺が広がりをもったナノ粒子であると判断できる。
【0516】
以上より、CAC−IGZOは、金属元素が均一に分布したIGZO化合物とは異なる構
造であり、IGZO化合物と異なる性質を有することが分かった。つまり、CAC−IG
ZOは、GaOX3などが主成分である領域と、InX2ZnY2Z2、またはInO
X1が主成分である領域と、に互いに相分離し、各元素を主成分とする領域がモザイク状
である構造を有することが確認できた。
【0517】
従って、CAC−IGZOを半導体素子に用いた場合、GaOX3などに起因する性質と
、InX2ZnY2Z2、またはInOX1に起因する性質とが、相補的に作用するこ
とにより、高いオン電流(Ion)、高い電界効果移動度(μ)、および低いオフ電流(
Ioff)を実現することが期待できる。また、CAC−IGZOを用いた半導体素子は
、信頼性が高い。従って、CAC−IGZOは、ディスプレイをはじめとするさまざまな
半導体装置に最適である。
【0518】
本実施例は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態、または他の実
施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例4】
【0519】
本実施例では、本発明の一態様である、金属酸化物108を有するトランジスタ150を
作製し、電気特性および信頼性試験を行った。なお、本実施例においては、金属酸化物1
08を有するトランジスタ150として、試料4A、試料4B、試料4C、試料4D、試
料4E、試料4F、試料4G、試料4H、および試料4Jの9種のトランジスタを作製し
た。
【0520】
<試料の構成と作製方法>
以下では、本発明の一態様に係る試料4A、試料4B、試料4C、試料4D、試料4E、
試料4F、試料4G、試料4H、および試料4Jについて説明する。試料4A乃至試料4
Jとして、実施の形態2、および図9乃至図11で説明した作成方法により、図6の構造
を有するトランジスタ150を作製した。
【0521】
なお、試料4A乃至試料4Jは、それぞれ、金属酸化物108の成膜時の温度、および酸
素流量比を異なる条件で作製した。下表に、試料4A乃至試料4Jにおける金属酸化物成
膜時の温度、および酸素流量比を示す。
【0522】
【表5】
【0523】
なお、各試料は、実施の形態2にて説明した作製方法により作製した。また、金属酸化物
108の成膜工程において、ターゲットは、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=
1:1:1.2[原子数比])を用いた。
【0524】
なお、トランジスタ150のチャネル長は2μm、チャネル幅は3μm(以下、L/W=
2/3μmともいう)とした。
【0525】
<トランジスタのId−Vg特性>
次に、上記作製した試料4A乃至試料4Jのトランジスタ(L/W=2/3μm)のId
−Vg特性を測定した。なお、トランジスタのId−Vg特性の測定条件としては、第1
のゲート電極として機能する導電膜112に印加する電圧(以下、ゲート電圧(Vg)と
もいう)、及び第2のゲート電極として機能する導電膜106に印加する電圧(以下、バ
ックゲート電圧(Vbg)ともいう)を、−10Vから+10Vまで0.25Vのステッ
プで印加した。また、ソース電極として機能する導電膜120aに印加する電圧(以下、
ソース電圧(V)ともいう)を0V(comm)とし、ドレイン電極として機能する導
電膜120bに印加する電圧(以下、ドレイン電圧(Vd)ともいう)を、0.1V及び
20Vとした。
【0526】
図42に、試料4A乃至試料4JのId−Vg特性結果、および電界効果移動度をそれぞ
れ示す。実線はVdが20Vの時のIdを、一点鎖線は、Vdが0.1Vの時のIdを示
す。また、破線は、Vdが20Vとして測定した値から算出した電界効果移動度を、点線
は、Vdが0.1Vとして測定した値から算出した電界効果移動度を示す。なお、図42
において、第1縦軸がId[A]を、第2縦軸が電界効果移動度(μFE[cm/Vs
])を、横軸がVg[V]を、それぞれ表す。
【0527】
図42より、試料4A乃至試料4Jのトランジスタ150において、ノーマリオフの特性
が得られた。また、図42に示すように、試料4A乃至試料4Jの特性は、オン電流(I
on)、電界効果移動度、特に飽和領域における電界効果移動度が異なることが確認でき
た。特に、電界効果移動度の形状に関して、最大飽和移動度の値、および0V付近の立ち
上がり特性の電界効果移動度の形状が大きく異なることがわかった。
【0528】
図42より、成膜時の基板温度が低いほど、または成膜時の酸素流量比が小さいほど、低
Vgでの電界効果移動度が著しく向上していることが分かった。特に、試料4Aでは、電
界効果移動度の最大値は40cm/Vに迫る値を示すことが確認された。低Vgでの
移動度が高いということは、低電圧での高速駆動に適していることであり、ディスプレイ
をはじめとするさまざまな半導体装置への応用が期待できることが分かった。
【0529】
また、図42より、電界効果移動度において、Vdが20Vとして測定した値(破線)、
Vdが0.1Vとして測定した値(点線)において、異なる挙動が確認できた。Vdが2
0Vとして測定した値(破線)は、Vgが高くなるにつれて、電界効果移動度が上昇した
。これは、トランジスタの発熱による影響であると考えられる。一方、Vdが0.1Vと
して測定した値(点線)において、Vgが高い範囲において、前出の式(5)で算出され
る理想的な飽和移動度曲線とほぼ重なる値を示した。
【0530】
本実施例は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態、または他の実
施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例5】
【0531】
本実施例では、基板上に成膜した本発明の一態様である金属酸化物について、エネルギー
分散型X線分光法(EDX)を用い、EDXマッピングを取得し、評価することによって
、試料の元素分析を行った結果について説明する。なお、EDX測定には、元素分析装置
として日本電子株式会社製エネルギー分散型X線分析装置JED−2300Tを用いた。
なお、試料から放出されたX線の検出にはSiドリフト検出器を用いた。
【0532】
<試料の構成と作製方法>
本実施例においては、試料5Aを作製した。試料5Aは、基板と、基板上の金属酸化物と
、を有する。
【0533】
次に、試料の作製方法について、説明する。
【0534】
まず、基板として、ガラス基板を用いた。続いて、スパッタリング装置を用いて、基板上
に金属酸化物として、厚さ100nmのIn−Ga−Zn酸化物を形成した。成膜条件は
、チャンバー内の圧力を0.6Paとし、スパッタガスとして、流量270sccmのA
r、および流量30sccmのO雰囲気下とし、ターゲットには金属酸化物ターゲット
(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いた。また、スパッタリング装
置内に設置された金属酸化物ターゲットに2500WのAC電力を供給することで、金属
酸化物を成膜した。
【0535】
以上の工程により、本実施例の試料5Aを作製した。
【0536】
<測定結果>
EDX測定では、試料の分析対象領域の各点に電子線照射を行い、これにより発生する試
料の特性X線のエネルギーと発生回数を測定し、各点に対応するEDXスペクトルを得る
。本実施例では、各点のEDXスペクトルのピークを、In原子のL殻への電子遷移、G
a原子のK殻への電子遷移、Zn原子のK殻への電子遷移及びO原子のK殻への電子遷移
に帰属させ、各点におけるそれぞれの原子の比率を算出する。これを試料の分析対象領域
について行うことにより、各原子の比率の分布が示されたEDXマッピングを得ることが
できる。
【0537】
図43には、試料5Aの断面にかかる測定結果を示す。図43(A)は、断面におけるT
EM像、図43(B)、および図43(C)は、断面におけるEDXマッピングを示す。
なお、EDXマッピングは、範囲において、測定元素が多いほど明るくなり、測定元素が
少ないほど暗くなるように、明暗で元素の割合を示した。また、図43に示すEDXマッ
ピングの倍率は720万倍とした。なお、図43(A)、図43(B)、および図43(
C)は、試料5Aの断面において、同範囲の領域を示した。
【0538】
図43(B)は断面におけるIn原子のEDXマッピングである。なお、図43(B)に
示すEDXマッピングにおける全原子に対するIn原子の比率は、12.11乃至40.
30[atomic%]の範囲とした。また、図43(C)は断面におけるGa原子のE
DXマッピングである。なお、図43(C)に示すEDXマッピングにおける全原子に対
するGa原子の比率は、0.00乃至13.18[atomic%]の範囲とした。
【0539】
図43(B)、および図43(C)に示すEDXマッピングでは、画像に相対的な明暗の
分布が見られ、試料5Aにおいて、In原子、およびGa原子が分布を持って存在してい
る様子が確認できた。ここで、図43(B)の高輝度から上位25%の範囲において、黒
線で囲む5つの領域(領域901、領域902、領域903、領域904、および領域9
05)を抽出した。また、図43(C)の高輝度から上位25%の範囲において、破線で
囲む5つの領域(領域906、領域907、領域908、領域909、および領域910
)を抽出した。また、図43(B)の高輝度から上位75%以上、上位25%以下の範囲
、かつ図43(C)の高輝度から上位75%以上、上位25%以下の範囲において、白線
で囲む5つの領域(領域911、領域912、領域913、領域914、および領域91
5)を抽出した。
【0540】
つまり、領域901乃至領域905は、比較的In原子が多く含まれる領域である。また
、領域906乃至領域910は、比較的Ga原子が多く含まれる領域である。また、領域
911乃至領域915は、In原子とGa原子とが平均的に含まれる領域である。
【0541】
図43(C)では、Ga原子が相対的に多い領域、つまり、破線で囲む5つの範囲(領域
906、領域907、領域908、領域909、および領域910)は、図43(B)で
は、比較的暗い領域が観察された。つまり、Ga原子が比較的多い領域は、In原子が比
較的少ないことが推測できた。
【0542】
そこで、図43(B)に示す領域901乃至領域915における各元素の割合を図43(
D)に示した。黒線で囲む範囲(領域901、領域902、領域903、領域904、お
よび領域905)はIn原子が相対的に多く、Ga原子は相対的に少ない領域であること
が分かった。また、破線で囲む範囲(領域906、領域907、領域908、領域909
、および領域910)はIn原子が比較的少なく、Ga原子が多い領域であることが確認
できた。
【0543】
次に、図44には、試料5Aの平面にかかる測定結果を示す。図44(A)は、平面にお
けるTEM像、図44(B)、および図44(C)は、平面におけるEDXマッピングを
示す。なお、図44(A)、図44(B)、および図44(C)は、試料5Aの平面にお
いて、同範囲の領域を示した。
【0544】
図44(B)は平面におけるIn原子のEDXマッピングである。なお、図44(B)に
示すEDXマッピングにおける全原子に対するIn原子の比率は、12.11乃至43.
80[atomic%]の範囲とした。また、図44(C)は平面におけるGa原子のE
DXマッピングである。なお、図44(C)に示すEDXマッピングにおける全原子に対
するGa原子の比率は、0.00乃至14.83[atomic%]の範囲とした。
【0545】
図44(B)、および図44(C)に示すEDXマッピングでは、画像に相対的な明暗の
分布が見られ、試料5Aにおいて、In原子、およびGa原子が分布を持って存在してい
る様子が確認できた。ここで、図44(B)の高輝度から上位25%以上の範囲において
、黒線で囲む5つの範囲(領域921、領域922、領域923、領域924、および領
域925)を抽出した。また、図44(C)の高輝度から上位25%以上の範囲において
、破線で囲む5つの範囲(領域926、領域927、領域928、領域929、および領
域930)を抽出した。また、図44(B)の高輝度から上位75%以上、上位25%以
下の範囲、かつ図44(C)の高輝度から上位75%以上、上位25%以下の範囲におい
て、白線で囲む5つの領域(領域931、領域932、領域933、領域934、および
領域935)を抽出した。
【0546】
まず、図44(C)では、Ga原子が相対的に多い領域、つまり、破線で囲む5つの範囲
(領域926、領域927、領域928、領域929、および領域930)は、図44(
B)では、比較的暗い領域が観察された。つまり、Ga原子が比較的多い領域は、In原
子が比較的少ないことが推測できた。
【0547】
そこで、図44(B)に示す領域921乃至領域935における各元素の割合を図44(
D)に示した。黒線で囲む範囲(領域921、領域922、領域923、領域924、お
よび領域925)はIn原子が相対的に多く、Ga原子は相対的に少ない領域であること
が分かった。また、破線で囲む範囲(領域926、領域927、領域928、領域929
、および領域930)はIn原子が比較的少なく、Ga原子が多い領域であることが確認
できた。
【0548】
図43(D)、および図44(D)より、In原子は、25atomic%以上60at
omic%以下の範囲で、分布を有することが分かった。また、Ga原子は、3atom
ic%以上40atomic%以下の範囲で、分布を有することが分かった。
【0549】
In原子が比較的多い領域は、相対的に導電性が高いと推測できる。一方、Ga原子が比
較的多い領域は、相対的に絶縁性が高いと推測できる。従って、In原子が比較的多い領
域を、キャリアが流れることにより、導電性が発現し、高い電界効果移動度(μ)が実現
できたと考えられる。一方、Ga原子が比較的多い領域が、金属酸化物中に分布を有する
ことで、リーク電流を抑制し、良好なスイッチング動作を実現できたと考えられる。
【0550】
つまり、CAC構造を有する金属酸化物を半導体素子に用いた場合、Ga原子などに起因
する絶縁性と、In原子に起因する導電性とが、相補的に作用することにより、高いオン
電流(Ion)、および高い電界効果移動度(μ)を実現することができたといえる。
【0551】
本実施例は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態、または他の実
施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例6】
【0552】
本実施例では、本発明の一態様である、金属酸化物108を有するトランジスタ150を
作製し、欠陥準位密度の測定を行った。なお、本実施例においては、金属酸化物108を
有するトランジスタ150として、試料6A、試料6B、試料6C、試料6D、試料6E
、試料6F、試料6G、試料6H、および試料6Jの9種のトランジスタを作製した。
【0553】
<試料の構成と作製方法>
以下では、本発明の一態様に係る試料6A、乃至試料6Jについて説明する。試料6A、
乃至試料6Jとして、実施の形態2、および図9乃至図11で説明した作成方法により、
図6の構造を有するトランジスタ150を作製した。
【0554】
なお、試料6A、乃至試料6Jは、それぞれ、金属酸化物108の成膜時の温度、および
酸素流量比を異なる条件で作製した。また、金属酸化物108の成膜工程において、ター
ゲットとして、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1.2[原子数比]
)を用いた。下表に、試料6A、乃至試料6Jおける金属酸化物成膜時の温度、および酸
素流量比を示す。
【0555】
【表6】
【0556】
なお、各試料は、実施の形態2にて説明した作製方法により作製した。
【0557】
また、トランジスタ150のチャネル長は2μm、チャネル幅は3μm(以下、L/W=
2/3μmともいう)、またはチャネル長は2μm、チャネル幅は50μm(以下、L/
W=2/50μmともいう)とした。
【0558】
<トランジスタ特性を用いた浅い欠陥準位の評価>
[浅い欠陥準位密度の評価方法]
金属酸化物の浅い欠陥準位(以下、sDOSとも記す)は、金属酸化物を半導体として用
いたトランジスタの電気特性からも見積もることができる。以下ではトランジスタの界面
準位の密度を評価し、その界面準位の密度に加え、界面準位にトラップされる電子数N
rapを考慮した場合において、サブスレッショルドリーク電流を予測する方法について
説明する。
【0559】
界面準位にトラップされる電子数Ntrapは、例えば、トランジスタのドレイン電流−
ゲート電圧(Id−Vg)特性の実測値と、ドレイン電流−ゲート電圧(Id−Vg)特
性の計算値とを比較することによって、評価することができる。
【0560】
図45に、ソース電圧Vs=0V、ドレイン電圧Vd=0.1Vにおける、計算によって
得られた理想的なId−Vg特性と、トランジスタにおける実測のId−Vg特性と、を
示す。なお、トランジスタの測定結果のうち、ドレイン電流Idの測定が容易な1×10
−13A以上の値のみプロットした。
【0561】
計算で求めた理想的なId−Vg特性と比べて、実測のId−Vg特性はゲート電圧Vg
に対するドレイン電流Idの変化が緩やかとなる。これは、伝導帯下端のエネルギー(E
cと表記する。)の近くに位置する浅い界面準位に電子がトラップされたためと考えられ
る。ここでは、フェルミ分布関数を用いて、浅い界面準位へトラップされる(単位面積、
単位エネルギーあたりの)電子数Ntrapを考慮することで、より厳密に界面準位の密
度Nitを見積もることができる。
【0562】
まず、図46に示す模式的なId−Vg特性を用いて界面トラップ準位にトラップされる
電子数Ntrapの評価方法について説明する。破線は計算によって得られるトラップ準
位のない理想的なId−Vg特性を示す。また、破線において、ドレイン電流がId1か
らId2に変化するときのゲート電圧Vgの変化をΔVidとする。また、実線は、実測
のId−Vg特性を示す。実線において、ドレイン電流がId1からId2に変化すると
きのゲート電圧Vgの変化をΔVexとする。ドレイン電流がId1、Id2のときの着
目する界面における電位はそれぞれφit1、φit2とし、その変化量をΔφitとす
る。
【0563】
図46において、実測値は計算値よりも傾きが小さいため、ΔVexは常にΔVidより
も大きいことがわかる。このとき、ΔVexとΔVidの差が、浅い界面準位に電子をト
ラップすることに要した電位差を表す。したがって、トラップされた電子による電荷の変
化量ΔQtrapは以下の式(6)で表すことができる。
【0564】
【数6】
【0565】
tgは面積当たりの絶縁体と半導体の合成容量となる。また、ΔQtrapは、トラッ
プされた(単位面積、単位エネルギーあたりの)電子数Ntrapを用いて、式(7)で
表すこともできる。なお、qは電気素量である。
【0566】
【数7】
【0567】
式(6)と式(7)とを連立させることで式(8)を得ることができる。
【0568】
【数8】
【0569】
次に、式(8)の極限Δφit→0を取ることで、式(9)を得ることができる。
【0570】
【数9】
【0571】
即ち、理想的なId−Vg特性、実測のId−Vg特性および式(9)を用いて、界面に
おいてトラップされた電子数Ntrapを見積もることができる。なお、ドレイン電流と
界面における電位との関係については、上述の計算によって求めることができる。
【0572】
また、単位面積、単位エネルギーあたりの電子数Ntrapと界面準位の密度Nitは式
(10)のような関係にある。
【0573】
【数10】
【0574】
ここで、f(E)はフェルミ分布関数である。式(9)から得られたNtrapを式(1
0)でフィッティングすることで、Nitは決定される。このNitを設定したデバイス
シミュレータを用いた計算により、Id<0.1pAを含む伝達特性を得ることができる
【0575】
次に、図45に示す実測のId−Vg特性に式(9)を適用し、Ntrapを抽出した結
果を図47に白丸印で示す。ここで、図47の縦軸は半導体の伝導帯下端Ecからのフェ
ルミエネルギーEfである。破線を見るとEcのすぐ下の位置に極大値となっている。式
(10)のNitとして、式(11)のテール分布を仮定すると図47の破線のように非
常に良くNtrapをフィッティングでき、フィッティングパラメータとして、伝導帯端
のトラップ密度Nta=1.67×1013cm−2/eV、特性減衰エネルギーWta
=0.105eVが得られた。
【0576】
【数11】
【0577】
次に、得られた界面準位のフィッティング曲線をデバイスシミュレータを用いた計算にフ
ィードバックすることにより、Id−Vg特性を逆算した結果を図48(A)、および図
48(B)に示す。図48(A)に、ドレイン電圧Vdが0.1Vおよび1.8Vの場合
の計算によって得られたId−Vg特性と、ドレイン電圧Vdが0.1V及び1.8Vの
場合のトランジスタにおける実測のId−Vg特性とを示す。また、図48(B)は、図
48(A)のドレイン電流Idを対数としたグラフである。
【0578】
計算により得られた曲線と、実測値のプロットはほぼ一致しており、計算値と実測値とで
高い再現性を有することが分かる。したがって、浅い欠陥準位密度を算出する方法として
、上記の方法が十分に妥当であることが分かる。
【0579】
[浅い欠陥準位密度の評価結果]
次に、上述の方法に基づいて、測定した電気特性と理想的な計算値とを比較することによ
り、試料6A、試料6B、試料6C、試料6D、試料6E、試料6F、試料6G、試料6
H、および試料6Jの浅い欠陥準位密度を測定した。
【0580】
図49に試料6A、試料6B、試料6C、試料6D、試料6E、試料6F、試料6G、試
料6H、および試料6Jの浅い欠陥準位密度の平均値を算出した結果を示す。
【0581】
図49に示すように、金属酸化物108の成膜時の酸素流量比が小さいほど、また、成膜
時の温度が低温であるほど、浅い欠陥準位密度のピーク値が極めて低い試料であることが
わかった。
【0582】
このように、試料6A乃至試料6Jは、欠陥準位密度が低い金属酸化物膜が形成されたト
ランジスタであることが分かった。特に、低温かつ低酸素流量比の条件で成膜した金属酸
化物膜とすることで酸素透過性が向上し、トランジスタの作製工程中に拡散する酸素量が
増大することにより、金属酸化物膜中、及び金属酸化物膜と絶縁膜との界面の酸素欠損等
の欠陥が低減しているためだと推測される。
【0583】
本実施例は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態、または他の実
施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例7】
【0584】
本実施例では、本発明の一態様である、金属酸化物108を有するトランジスタ150を
作製し、欠陥準位密度の測定を行った。なお、本実施例においては、金属酸化物108を
有するトランジスタ150として、試料7A、試料7B、試料7C、試料7D、試料7E
、試料7F、試料7G、試料7H、および試料7Jの9種のトランジスタを作製した。
【0585】
<試料の構成と作製方法>
以下では、本発明の一態様に係る試料7A、乃至試料7Jについて説明する。試料7A、
乃至試料7Jとして、実施の形態2、および図9乃至図11で説明した作成方法により、
図6の構造を有するトランジスタ150を作製した。
【0586】
なお、試料7A、乃至試料7Jは、それぞれ、金属酸化物108の成膜時の温度、および
酸素流量比を異なる条件で作製した。また、金属酸化物108の成膜工程において、ター
ゲットとして、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]
)を用いた。下表に、試料7A、乃至試料7Jおける金属酸化物成膜時の温度、および酸
素流量比を示す。
【0587】
【表7】
【0588】
なお、各試料は、実施の形態2にて説明した作製方法により作製した。
【0589】
また、トランジスタ150のチャネル長は2μm、チャネル幅は3μm(以下、L/W=
2/3μmともいう)、またはチャネル長は2μm、チャネル幅は50μm(以下、L/
W=2/50μmともいう)とした。
【0590】
<トランジスタ特性を用いた浅い欠陥準位の評価>
[浅い欠陥準位密度の評価方法]
金属酸化物108の浅い欠陥準位を、金属酸化物を半導体として用いたトランジスタの電
気特性を用いて、見積もった。算出方法は、先の実施例で説明した手法と同様の方法を用
いた。トランジスタの界面準位の密度を評価し、その界面準位の密度に加え、界面準位に
トラップされる電子数Ntrapを考慮した場合において、サブスレッショルドリーク電
流を予測した。
【0591】
[浅い欠陥準位密度の評価結果]
次に、上述の方法に基づいて、測定した電気特性と理想的な計算値とを比較することによ
り、試料7A、試料7B、試料7C、試料7D、試料7E、試料7F、試料7G、試料7
H、および試料7Jの浅い欠陥準位密度を測定した。
【0592】
図50に試料7A、試料7B、試料7C、試料7D、試料7E、試料7F、試料7G、試
料7H、および試料7Jの浅い欠陥準位密度の平均値を算出した結果を示す。
【0593】
図50に示すように、金属酸化物108の成膜時の酸素流量比が小さいほど、また、成膜
時の温度が低温であるほど、浅い欠陥準位密度のピーク値が極めて低い試料であることが
わかった。
【0594】
このように、試料7A乃至試料7Jは、欠陥準位密度が低い金属酸化物膜が形成されたト
ランジスタであることが分かった。特に、低温かつ低酸素流量比の条件で成膜した金属酸
化物膜とすることで酸素透過性が向上し、トランジスタの作製工程中に拡散する酸素量が
増大することにより、金属酸化物膜中、及び金属酸化物膜と絶縁膜との界面の酸素欠損等
の欠陥が低減しているためだと推測される。
【0595】
本実施例は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態、または他の実
施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例8】
【0596】
本実施例では、本発明の一態様である、金属酸化物108を有するトランジスタ150を
作製し、電気特性および信頼性試験を行った。なお、本実施例においては、金属酸化物1
08を有するトランジスタ150として、試料8Aのトランジスタを作製した。
【0597】
<試料の構成と作製方法>
以下では、本発明の一態様に係る試料8Aについて説明する。試料8Aとして、実施の形
態2、および図9乃至図11で説明した作成方法により、図6の構造を有するトランジス
タ150を作製した。
【0598】
下表に、試料8Aにおける金属酸化物108の成膜時の温度、および酸素流量比を示す。
【0599】
【表8】
【0600】
なお、試料8Aは、実施の形態2にて説明した作製方法により作製した。また、金属酸化
物108の成膜工程において、ターゲットは、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn
=5:1:7[原子数比])を用いた。
【0601】
なお、トランジスタ150のチャネル長は3μm、チャネル幅は50μm(以下、L/W
=3/50μmともいう)とした。
【0602】
<トランジスタのId−Vg特性>
次に、上記作製した試料8Aのトランジスタ(L/W=3/50μm)のId−Vg特性
を測定した。なお、トランジスタのId−Vg特性の測定条件としては、第1のゲート電
極として機能する導電膜112に印加する電圧(以下、ゲート電圧(Vg)ともいう)、
及び第2のゲート電極として機能する導電膜106に印加する電圧(以下、バックゲート
電圧(Vbg)ともいう))を、−10Vから+10Vまで0.25Vのステップで印加
した。また、ソース電極として機能する導電膜120aに印加する電圧(以下、ソース電
圧(V)ともいう)を0V(comm)とし、ドレイン電極として機能する導電膜12
0bに印加する電圧(以下、ドレイン電圧(Vd)ともいう)を、0.1V及び20Vと
した。
【0603】
図51に、試料8AのId−Vg特性結果、および電界効果移動度をそれぞれ示す。実線
はVdが20Vの時のId、一点鎖線は、Vdが0.1Vの時のIdを示す。また、破線
は、電界効果移動度を示す。なお、図51において、第1縦軸がId[A]を、第2縦軸
が電界効果移動度(μFE[cm/V])を、横軸がVg[V]を、それぞれ表す。
また、電界効果移動度については、Vdを20Vとして測定した値から算出した。
【0604】
なお、図51において、測定時のIdの上限値を1mAとして測定している。図51にお
けるVd=20Vの条件では、Vg=7.5VでIdがこの上限値を超える値となってい
る。そのため図51では、このId−Vg特性から見積もられる電界効果移動度として、
Vg=7.5V以下の範囲を明示している。
【0605】
図51に示すように、本実施例で作製したトランジスタは、良好な電気特性を有する。こ
こで、図51に示すトランジスタの特性を表9に示す。
【0606】
【表9】
【0607】
このように、本実施例で作製したトランジスタは、電界効果移動度が100cm/Vs
を超えている。これは、低温ポリシリコンを用いたトランジスタに匹敵するほどの高い値
であり、金属酸化物108を用いたトランジスタでは、驚異的な特性であるといえる。
【0608】
表9に示すように、試料8Aは、トランジスタのゲート電圧が0Vより大きく10V以下
の範囲での電界効果移動度の最大値が、60cm/Vs以上150cm/Vs未満で
ある第1の領域と、しきい値電圧が、−1V以上1V以下である第2の領域と、S値が、
0.3V/decade未満である第3の領域と、オフ電流が、1×10−12A/cm
未満である第4の領域と、を有し、トランジスタの電界効果移動度の最大値をμFE(
max)として表し、トランジスタのゲート電圧が2Vの電界効果移動度の値をμFE(
Vg=2V)として表した場合、μFE(max)/μFE(Vg=2V)が1以上2未
満となる。
【0609】
上記のトランジスタの特性としては、先に説明の金属酸化物108を用いることで得られ
る。金属酸化物108をトランジスタの半導体層に用いることで、キャリア移動度が高い
機能と、スイッチング特性が良好である機能と、を同時に兼ね備えることが実現できる。
【0610】
本実施例は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態、または他の実
施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0611】
001 領域
002 領域
100 トランジスタ
102 基板
104 絶縁膜
106 導電膜
108 金属酸化物
108a 金属酸化物
108n 領域
110 絶縁膜
110_0 絶縁膜
112 導電膜
112_0 導電膜
112_1 導電膜
112_2 導電膜
116 絶縁膜
118 絶縁膜
120a 導電膜
120b 導電膜
122 絶縁膜
140 マスク
141a 開口部
141b 開口部
143 開口部
150 トランジスタ
160 トランジスタ
300A トランジスタ
300B トランジスタ
300C トランジスタ
300D トランジスタ
302 基板
304 導電膜
306 絶縁膜
307 絶縁膜
308 金属酸化物
312a 導電膜
312b 導電膜
314 絶縁膜
316 絶縁膜
318 絶縁膜
320a 導電膜
320b 導電膜
341a 開口部
341b 開口部
342a 開口部
342b 開口部
342c 開口部
600 表示パネル
601 トランジスタ
604 接続部
605 トランジスタ
606 トランジスタ
607 接続部
612 液晶層
613 導電膜
617 絶縁膜
620 絶縁膜
621 絶縁膜
623 導電膜
631 着色層
632 遮光膜
633a 配向膜
633b 配向膜
634 着色層
635 導電膜
640 液晶素子
641 接着層
642 接着層
643 導電膜
644 EL層
645a 導電膜
645b 導電膜
646 絶縁膜
647 絶縁膜
648 導電膜
649 接続層
651 基板
652 導電膜
653 半導体膜
654 導電膜
655 開口
656 偏光板
659 回路
660 発光素子
661 基板
662 表示部
663 導電膜
666 配線
672 FPC
673 IC
681 絶縁膜
682 絶縁膜
683 絶縁膜
684 絶縁膜
685 絶縁膜
686 接続体
687 接続部
700 モデル
702 局所構造
704 局所構造
706 局所構造
708 局所構造
710 局所構造
712 局所構造
901 領域
902 領域
903 領域
904 領域
905 領域
906 領域
907 領域
908 領域
909 領域
910 領域
911 領域
912 領域
913 領域
914 領域
915 領域
920 領域
921 領域
922 領域
923 領域
924 領域
925 領域
926 領域
927 領域
928 領域
929 領域
930 領域
931 領域
932 領域
933 領域
934 領域
935 領域
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】