(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2019146029
(43)【公開日】20190829
(54)【発明の名称】バス通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20190802BHJP
   H04B 3/00 20060101ALI20190802BHJP
【FI】
   !H04Q9/00 321E
   !H04B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】2018028737
(22)【出願日】20180221
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 寿明
【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会社デンソー内
【テーマコード(参考)】
5K046
5K048
【Fターム(参考)】
5K046AA01
5K046CC21
5K048BA42
5K048DA03
5K048DA05
5K048DC04
(57)【要約】
【課題】1線式のRZ信号送受方式におけるバス通信システムの通信速度の低下を抑制しレセッシブとなる期間を確保できるようにしたバス通信システムを提供する。
【解決手段】モニタ回路7,7a等は、信号送出元のマスタ2又はスレーブ3a…3zがバスNに信号を送出してからバスNの電圧が所定電圧になるまでの時間、又は、バスNに信号を送出してから所定時間経過後のタイミングにおけるバスNの電圧、を検出する。調整回路8,8a等は、モニタ回路7,7a等の検出結果に基づいて前記バスに送出される信号の立上り遅延に係るスルーレートを上げるように調整する(t2以降)。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ(2;302)及びスレーブ(3a…3z;203a…203z)の間が1線式のRZ(Return to Zero)信号送受方式にてバス(N)を通じて通信するバス通信システム(1,201,301)であって、
信号送出元の前記マスタ又は前記スレーブが前記バスに信号を送出してから前記バスの電圧が所定電圧になるまでの時間、若しくは、信号送出元の前記マスタ又は前記スレーブが前記バスに信号を送出してから所定時間経過後のタイミングにおける前記バスの電圧、を検出する検出部(7,7a…7z,107,107a…107z、207,207a…207z)と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記バスに送出される信号の立上り/立下り遅延に係るスルーレートを上げるように調整する調整部(8,8a…8z,108,108a…108z、208,208a…208z,308,308a…308z、407,408a…408z)と、を備えるバス通信システム。
【請求項2】
前記検出部及び前記調整部は、前記マスタ及び前記スレーブに共に設けられる請求項1記載のバス通信システム。
【請求項3】
前記マスタの調整部が前記スルーレートを調整した後、前記スレーブの検出部が前記バスの信号を検出した検出結果に基づいて前記スレーブの調整部がさらに前記スルーレートを調整する請求項2記載のバス通信システム。
【請求項4】
前記検出部及び前記調整部は、前記マスタだけに設けられる請求項1記載のバス通信システム。
【請求項5】
前記検出部及び前記調整部は、前記スレーブだけに設けられる請求項1記載のバス通信システム。
【請求項6】
前記調整部は、前記マスタが前記バスを通じて前記スレーブに送出する同期信号を用いて前記スルーレートを調整する請求項1から5の何れか一項に記載のバス通信システム。
【請求項7】
前記調整部は、前記マスタが前記バスを通じて前記スレーブに送出するデータを含む通信信号を用いて前記スルーレートを調整する請求項1から6の何れか一項に記載のバス通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バス通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、バス通信システムは、マスタとスレーブとの間でバスを通じて信号を授受する。マスタは、バスを通じてスレーブにドミナント「L」/レセッシブ「H」信号を送信するが、ドミナントからレセッシブに移行するときに高調波、高周波を生じることがある。この高周波はノイズ成分となることから当該高周波を抑制する提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1記載の技術によれば、出力バッファ制御信号生成部が、バスに接続されるトランジスタのインピーダンスを徐々に高くしている。これにより、ドミナント「L」からレセッシブ「H」へ変化したときの通信波形に含まれる高周波を低減でき、通信波形のリンギングを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−250282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
信号波形の周波数が低ければ、高周波ノイズを低減できるものの、どの程度高周波ノイズを低減できるか把握できず、信号波形の過渡的変化を必要以上に遅くしてしまい、通信速度の低下につながることがある。特に、1線式のRZ(Return to Zero)信号送受方式に適用すると、レセッシブ「H」となる期間を確保できないという不具合を生じる。
【0006】
本発明の目的は、1線式のRZ信号送受方式におけるバス通信システムの通信速度の低下を抑制しレセッシブとなる期間を確保できるようにしたバス通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、マスタ及びスレーブの間が1線式のRZ(Return to Zero)信号送受方式にてバスを通じて通信するバス通信システムを対象としている。請求項1記載の発明によれば、検出部は、信号送出元のマスタ又はスレーブがバスに信号を送出してからバスの電圧が所定電圧になるまでの時間、又は、信号送出元のマスタ又はスレーブがバスに信号を送出してから所定時間経過後のタイミングにおけるバスの電圧、を検出する。そして調整部は、検出部の検出結果に基づいてバスに送出される信号の立上り遅延に係るスルーレートを上げるように調整する。例えば、検出部の検出結果が適正であれば、例えばスルーレートをそのまま保持し調整部は調整しないが、検出部の検出結果が適正でなければ調整部はスルーレートを上げるように調整する。これにより、1線式のRZ信号送受方式におけるバス通信システムに適用した場合であっても、通信速度の低下を抑制してレセッシブとなる期間を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係るバス通信システムの構成図
【図2】モニタ回路の電気的構成図
【図3A】調整回路の電気的構成図のその1
【図3B】調整回路の電気的構成図のその2
【図3C】調整回路の電気的構成図のその3
【図3D】調整回路の電気的構成図のその4
【図4】マスタ側処理を示すフローチャート
【図5】スレーブ側処理を示すフローチャート
【図6】マスタ及びスレーブの処理内容を示すタイミングチャート
【図7】第2実施形態におけるモニタ回路の電気的構成図
【図8】第3実施形態におけるバス通信システムの構成図のその1
【図9】バス通信システムの構成図のその2
【図10】第4実施形態におけるマスタ側処理を示すフローチャート
【図11】スレーブ側処理を示すフローチャート
【図12】調整回路による調整タイミングの説明図のその1
【図13】調整回路による調整タイミングの説明図のその2
【図14】マスタ側からスレーブ側へ調整指示するタイミングの説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、バス通信システムの幾つかの実施形態について図面を参照しながら説明する。各実施形態間で同一又は類似の構成については、第2実施形態以降について同一又は類似の符号を付して説明を必要に応じて省略し、第2実施形態以降では特徴部分を中心に説明を行う。
【0010】
(第1実施形態)
図1から図6は、第1実施形態を示す。図1に車両用のバス通信システム1の構成図を示している。このバス通信システム1は、車両に搭載された複数の通信回路2,3a…3zを備えて構成される。これらの複数の通信回路2,3a…3zは、例えばLINなどのバスNを通じて接続されている。これらの通信回路2,3a…3zは、例えばボディ系ECU(例えばボディワイパECU)又は各種センサ装置に搭載されている。
【0011】
このバス通信システム1は、多数の通信回路2,3a…3zのうち1つをマスタ(以下マスタ2と称す)とし、その他の通信回路3a…3zをスレーブ(以下、スレーブ3a…3zと称す)として動作する。マスタ2は、ロジック回路4、ドライバ回路5、レシーバ回路6、検出部としてのモニタ回路7、及び、調整部としての調整回路8を備える。スレーブ3a…3zは、それぞれロジック回路4a…4z、ドライバ回路5a…5z、レシーバ回路6a…6z、モニタ回路7a…7z、及び調整回路8a…8zを備える。
【0012】
マスタ2のロジック回路4は、例えばCPU、ROM、RAM、I/Oポート等を備えたマイクロコンピュータ(図示せず)を主として構成される。スレーブ3a…3zのロジック回路4a…4zは、例えばCPU、ROM、RAM、I/Oポート等を備えたマイクロコンピュータ(図示せず)を主として構成される。マスタ2のドライバ回路5及びレシーバ回路6はLINトランシーバなどを構成し、スレーブ3a…3zのドライバ回路5a…5z及びレシーバ回路6zもまたLINトランシーバなどを構成する。これによりマスタ2及びスレーブ3a…3zは、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)通信方式により信号を送受信できる。また、これらのマスタ2及びスレーブ3a…3zは、1線式のRZ信号送受方式により信号を送受信する。
【0013】
モニタ回路7、7a…7zは、それぞれバスNの信号を検出する検出部として機能する。マスタ2のモニタ回路7は、マスタ2が信号送出元となるときに、マスタ2がバスNに信号を送出してからバスNの電圧が所定電圧になるまでの時間を検出するように構成されている。スレーブ3a…3zのモニタ回路7a…7zは、それぞれのスレーブ3a…3zが信号送出元となるときに、スレーブ3a…3zがバスNに信号を送出してからバスNの電圧が所定電圧になるまでの時間を検出するように構成されている。
【0014】
第1実施形態は、図1に示すモニタ回路7、7a…7zとして、それぞれ図2に示すモニタ回路107,107a…107zを用いた例を示す。図2に示すように、モニタ回路107,107a…107zは、それぞれ、コンパレータ9と、分圧回路10と、タイマ11と、を備える。分圧回路10は、所定の直流電源電圧Vccを分圧して所定電圧を生成しコンパレータ9の反転入力端子に参照電圧として出力する。コンパレータ9は、非反転入力端子にバスNの電圧を入力し、このバスNの電圧と前述の参照電圧とを比較し、バスNの電圧が参照電圧以下のときには「L」をタイマ11に出力し、バスNの電圧が参照電圧よりも高いときには「H」をタイマ11に出力する。
【0015】
タイマ11は、ロジック回路4、4a…4zからリセット信号RSTを入力すると、この入力タイミングから別途入力されるクロック信号(図示せず)により時間カウントを開始し、コンパレータ9から立ち上がりエッジ「L」→「H」を入力すると時間カウントをストップし、次のクロック信号の入力タイミングで信号C1として「H」を出力する。すなわち、バスNの電圧が分圧回路10により生成される所定電圧より高くなるとタイマ11が時間カウントをストップすることになる。このため、タイマ11は、リセット信号RSTの入力タイミングからバスNの電圧が所定電圧より高くなるタイミングまでの時間を検出できる。またタイマ11は、ロジック回路4、4a…4zからリセット信号RSTを入力するとタイマカウント値をクリアする。
【0016】
また図3A〜図3Dは、マスタ2及びスレーブ3a…3zの調整回路8,8a…8zの構成例を調整回路108,108a…108z、208,208a…208z、308,308a…308z、408,408a…408zとして示している。以下では、これらの調整回路108,108a…108z、208,208a…208z、308,308a…308z、408,408a…408zを必要に応じて調整回路8,8a…8zと称して説明する。
【0017】
調整回路8,8a…8zの構成は、これらのマスタ2側及びスレーブ3a…3z側で互いに同一であっても異なっていても良い。調整回路8,8a…8zは、それぞれモニタ回路7,7a…7zから入力される制御信号に基づいて、バスNに送出される信号の立上り遅延に係るスルーレートを調整可能に構成されている。
【0018】
図3Aに示す調整回路108,108a…108zは、ダイオード12、複数の抵抗13,14、及び制御スイッチ15を備えている。この調整回路8,8a…8zは、直流電源電圧Vccの直流電源電圧端子Ncから順方向のダイオード12、複数の抵抗13,14を介してバスNに接続されている。この調整回路8,8a…8zは、複数の抵抗13,14の共通接続点とバスNの接続点との間に制御スイッチ15を接続して構成されている。
【0019】
モニタ回路107,107a…107zが、信号C1を「L」として制御スイッチ15にオフ制御信号を出力している間、この制御スイッチ15がオフすることで、バスNのインピーダンスが高い状態に保たれる。逆に、モニタ回路107,107a…107zが、信号C1を「H」としてスイッチ15にオン制御信号を出力すると、スイッチ15がオンすることで直流電源電圧端子NcとバスNとの間の抵抗値が低下し、バスNのインピーダンスを低くできる。このため、このスイッチ15がオフ状態からオンされると、バスNに送出される信号電圧の立上りスルーレートを大きく調整できる。
【0020】
また図3Bに示す調整回路208,208a…208zは、ダイオード12、制御スイッチ16、及び複数の抵抗17,18を備えている。これらの複数の抵抗17,18の抵抗値はそれぞれ異なる値に設定され、特に抵抗17の抵抗値が抵抗18の抵抗値より大きく設定されている。ダイオード12のアノードは、直流電源電圧端子Ncに接続されており、カソードはスイッチ16の可動接点に接続されている。スイッチ16は第1及び第2固定接点を備え、第1固定接点は抵抗17を通じてバスNに接続されており、第2固定接点は前述とは異なる抵抗18を通じてバスNに接続されている。
【0021】
モニタ回路107,107a…107zが、信号C1を「L」として制御スイッチ16に切替制御信号を出力している間、この制御スイッチ16の可動接点が第1固定接点に接続を保持することで直流電源電圧端子NcとバスNとの間の抵抗値を高くできる。逆に、モニタ回路107,107a…107zが、信号C1を「H」として制御スイッチ16に切替制御信号を出力すると、制御スイッチ16の可動接点が第2固定接点に接続切替えされることで直流電源電圧端子NcとバスNとの間の抵抗値を低くでき、バスNのインピーダンスを低くできる。このため、モニタ回路107,107a…107zが、信号C1を「H」にすることで、バスNに送出される信号電圧の立上りスルーレートを大きく調整できる。
【0022】
また図3Cに示す調整回路308,308a…308zは、ダイオード12、複数の定電流源19,20、及び制御スイッチ21を備えている。複数の定電流源19,20は、同一又は互いに異なる値の定電流を出力するように設定されている。ダイオード12のアノードは、直流電源電圧端子Ncに接続されており、カソードはこれらの複数の定電流源19,20に接続されている。一方の定電流源19は、その出力をバスNに出力するように接続されている。また他方の定電流源20は、制御スイッチ21を通じてバスNに接続されている。このため、モニタ回路107,107a…107zが、信号C1を「L」として制御スイッチ21にオフ制御信号を出力している間、制御スイッチ21がオフし、他方の定電流源20によるバスNへの定電流流出を停止し続ける。
【0023】
逆に、モニタ回路107,107a…107zが、信号C1を「H」として制御スイッチ21にオン制御信号を出力すると、制御スイッチ21がオンし、双方の定電流源19,20がバスNに電流出力する。これにより、バスNの通電電流を増加させることができる。このため、モニタ回路107,107a…107zが、信号C1を「H」にすることで、バスNに送出される信号電圧の立上りスルーレートを大きく調整できる。
【0024】
また図3Dに示す調整回路408,408a…408zは、ダイオード12、抵抗14、定電流源20、及び制御スイッチ21を備えている。ダイオード12のアノードは、直流電源電圧端子Ncに接続されており、カソードは抵抗14の一端及び定電流源20の一端に接続されている。抵抗14の他端は、バスNに接続されている。また定電流源20の他端は、制御スイッチ21を通じてバスNに接続されている。モニタ回路107,107a…107zが、信号C1を「L」として制御スイッチ21にオフ制御信号を出力している間、制御スイッチ21がオフし、定電流源20によるバスNへの定電流流出を停止し続ける。これにより、バスNに流れる電流を低下させることができる。
【0025】
またモニタ回路107,107a…107zが、信号C1を「H」として制御スイッチ21にオン制御信号を出力すると、制御スイッチ21がオンし、定電流源20がバスNに定電流を出力する。これにより、バスNに流れる電流を上昇させることができる。このため、モニタ回路107,107a…107zが、信号C1を「H」にすることで、バスNに送出される信号電圧の立上りスルーレートを大きく調整できる。
【0026】
図3A〜図3Dに示した調整回路108,108a…108z、208,208a…208z、308,308a…308z、408,408a…408zは作用が同一であるため、図3A〜図3Dに示した調整回路108,108a…108z、208,208a…208z、308,308a…308z、408,408a…408zを、マスタ2、スレーブ3a…3zのどの調整回路8,8a…8zに用いても良い。
【0027】
上記構成の作用、動作を説明する。
初期状態では、モニタ回路107,107a…107zは、信号C1を「L」とすることで、調整回路8,8a…8zがバスNのインピーダンスを比較的高く保持している。
【0028】
図4は、マスタ2の処理を示すフローチャートであり、図5は、スレーブ3a〜3zの処理を示すフローチャートである。また図6は、タイミングチャートを示している。マスタ2は、図6のタイミングt0において、タイマ11にリセット信号RSTを出力し、タイマ11をリセットしてから同期信号をバスNに送信する。マスタ2は、バスNに同期信号として図6のタイミングt0からt1までの間、ドミナント「L」を出力し、タイミングt1からt2までの間、レセッシブ「H」を出力する。マスタ2は、モニタ回路7によりこのバスNに送出された同期信号の電圧を検出する。モニタ回路7は、タイミングt0からバスNの電圧が所定電圧より高くなるタイミングt4までの時間を、タイミングt4の後に発生するクロックによるタイマ11のカウントタイミングt3にて検出する。これにより、タイミングt0からt3までの時間を検出できる。
【0029】
このときロジック回路4は、モニタ回路7による検出電圧が適正であるか否かを判定し(S2)、検出電圧が適正であれば(S2:YES)、このまま、図6のタイミングt2にてリセット信号RSTをタイマ11に出力してから同期信号を再送信し続ける(S4)。しかしロジック回路4は、このタイマ11の検出時間がある所定時間以上になっていれば、モニタ回路7による検出電圧が適正でない(S2:NO)と判定し、S3において調整回路8によりバスNのスルーレートを上げるように調整する。
【0030】
すなわち、ロジック回路4は、タイミングt0〜t3の時間が所定時間以上になるときには、モニタ回路7が信号C1を「H」にすることで調整回路8に指令し、調整回路8がバスNに送出される信号の立上りスルーレートを上げるように調整する。タイミングt2前後のバスNの電圧の立上り信号の勾配K1、K2参照。このように、調整回路8が、バスNの立上りスルーレートを上げてから、ロジック回路4は図4のS4において同期信号を再送信し続ける。
【0031】
マスタ2は、バスNに同期信号として図6のタイミングt5からt6までの間ドミナント「L」を出力し、タイミングt6からt7までの間、レセッシブ「H」を出力する。
【0032】
図5に示すように、スレーブ3の側においては、モニタ回路7a…7zがマスタ2からバスNに送出された同期信号の電圧を検出し、ロジック回路4a…4zはこの検出電圧が適正であるか否かを判定する(S5)。モニタ回路7a…7zは、タイミングt6からバスNの電圧が所定電圧より高くなるタイミングt8までの時間を、タイミングt8の後に発生するタイマ11のカウントタイミングt9にて検出する。これにより、タイミングt5からt9までの時間を検出できる。
【0033】
このとき、ロジック回路4a…4zは、モニタ回路7a…7zによる検出電圧が適正であるか否かを判定し(S5)、検出電圧が適正であれば(S5:YES)、このまま、t7においてリセット信号RSTをタイマ11に出力してから同期信号を受信完了とする(S7)。しかしロジック回路4a…4zは、このタイマ11の検出時間がある所定時間以上になれば、モニタ回路7a…7zによる検出電圧が適正でない(S5:NO)と判定し、S6において調整回路8a…8zによりバスNのスルーレートを上げるように調整する。このとき、スレーブ3a…3zの側の調整回路8a…8zもまた、図3A〜図3Dの何れかの構成を備えているため、これらの調整回路8a…8zによりバスNのスルーレートを上げるように調整できる。タイミングt7前後のバスNの電圧の立上り信号の勾配K2、K3参照。その後、スレーブ3a…3zは、図5のS7において同期信号の受信を完了する。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、マスタ2が、バスNに信号を送出してからバスNの電圧が所定電圧になるまでの時間をマスタ2側又はスレーブ3a…3z側のモニタ回路7,7a…7zにより検出し、当該マスタ2側又はスレーブ3a…3z側の調整回路8,8z…8zが、モニタ回路7,7a…7zの検出結果に基づいてバスNに送出される信号の立上り遅延に係るスルーレートを調整するようにしている。このため、バスNの信号遅延に係る時定数が大きくなったとしても当該時定数を改善できる。
【0035】
したがって、RZ信号送受方式のバス通信システム1においても、高周波ノイズに影響を与えることなく、レセッシブ「H」になる期間を確保でき、通信を高速化できるようになり、信号遅延に係る時定数の大きいネットワークでも対応できる。
【0036】
モニタ回路7,7a…7z及び調整回路8,8a…8zは、マスタ2の側及びスレーブ3a…3zの側に共に設けられているため、当該マスタ2及びスレーブ3a…3zの何れにおいてもスルーレートを調整できる。
【0037】
また本実施形態では、マスタ2側の調整回路8がスルーレートを調整した後、スレーブ3a…3zの側のモニタ回路107a…107zがバスNの信号を検出した検出結果に基づいてスレーブ3の側の調整回路8a…8zがさらにスルーレートを調整するようにしている。このため、スレーブ3a…3zの側で信号を適正状態にて受信するために必要なスルーレートに調整できるようになる。
【0038】
また本実施形態に示すように、マスタ2とスレーブ3a…3zの両者に調整回路8,8a…8zが設けられている場合には、例えばスレーブ3a…3zの側においてスルーレートを調整するタイミングを予め決定し、この予め決定されたタイミングまでの間に、マスタ2がスルーレートを調整できていないときに、スレーブ3a…3zがスルーレートを調整するようにしても良い。
【0039】
また調整回路8,8a…8zは、マスタ2がバスNを通じてスレーブ3a…3zに送出する同期信号を用いてスルーレートを調整するようにしているため、データを含む通信信号を用いて調整する必要がなくなる。
【0040】
(第2実施形態)
図7は第2実施形態の追加説明図を示す。本実施形態では、第1実施形態の図1に示したモニタ回路7、7a…7zとして、それぞれ図7に示すモニタ回路207,207a…207zを用いた形態を示す。第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略し異なる部分を中心に説明する。モニタ回路207,207a…207zは、信号送出元のマスタ2が信号を送出してから所定時間経過後のタイミングにおけるバスNの電圧を検出するように構成されている。
【0041】
モニタ回路207,207a…207zは、それぞれコンパレータ209a〜209cと、分圧回路210と、タイマ211とを備える。分圧回路210は、所定の直流電源電圧Vccを分圧して互いに異なる複数の所定電圧を生成し、それぞれコンパレータ209a〜209cの反転入力端子に参照電圧として出力する。コンパレータ209a〜209cは、それぞれ非反転入力端子にバスNの電圧を入力し、このバスNの電圧と前述の参照電圧とをそれぞれ比較し、バスNの電圧が参照電圧以下のときには信号C1〜C3として「L」を出力し、バスNの電圧が参照電圧よりも高いときには信号C1〜C3として「H」を出力する。
【0042】
タイマ211は、ロジック回路4、4a…4zから信号A1として立上り信号を入力すると、別途入力されるクロック信号(図示せず)により時間カウントを開始し所定時間経過後のタイミングにて立ち上がりエッジ「L」→「H」をコンパレータ209a〜209cのイネーブル端子ENに出力することでコンパレータ209a〜209cを有効化する。コンパレータ209a〜209cは、それぞれの参照電圧と比較した比較結果を出力する。
【0043】
すなわち、このモニタ回路207,207a…207zは、バスNの電圧が分圧回路10により生成されるそれぞれの複数の所定電圧より高くなったか否かを判定し、所定時間の経過後のタイミングにおけるバスNの電圧が、複数の所定電圧の間の何れの電圧範囲に入っているか否かを判定できる。なおタイマ211は、ロジック回路4、4a…4zから信号A1として立下り信号を入力するとタイマ211のカウント値をクリアすることでコンパレータ209a〜209cのイネーブル端子ENに「L」を出力する。これによりコンパレータ209a〜209cの出力をともに「L」にできる。
【0044】
すなわち、マスタ2側又はスレーブ3a…3z側のロジック回路4,4a…4zが、それぞれのモニタ回路207,207a…207zの信号C1,C2,C3を入力することで、所定時間経過後のタイミングにおけるバスNの電圧が、複数の所定電圧の間の何れの電圧範囲に入っているか否かを判定できる。この結果、マスタ2がバスNに信号を送出してから所定時間経過後におけるバスNの電圧を検出できる(検出部としての機能)。所定時間経過後のバスNの電圧が所定の閾値電圧よりも低いときには、マスタ2側又は/及びスレーブ3a…3z側の調整回路8,8a…8zが信号の立上り遅延に係るスルーレートを上げるように調整することで、前述実施形態と同様の作用効果を得られる。
【0045】
すなわち、本実施形態によれば、信号送出元のマスタ2がバスNに信号を送出してから所定時間経過後のタイミングにおけるバスNの電圧をモニタ回路207,207a…207zにより検出し、当該マスタ2側又は/及びスレーブ3a…3z側の調整回路8,8a…8zが、モニタ回路207,207a…207zの検出結果に基づいてバスNに送出される信号の立上り遅延に係るスルーレートを調整するようにしている。このため、バスNの信号遅延に係る時定数が大きくなったとしても当該時定数を改善できる。
【0046】
(第3実施形態)
図8及び図9は第3実施形態の追加説明図を示している。第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略し異なる部分を中心に説明する。図8のバス通信システム201は、マスタ2とスレーブ203a…203zとをバスNを通じて接続することで構成されている。スレーブ203a…203zはモニタ回路及び調整回路を備えていないこと以外、それぞれスレーブ3a…3zと同様の構成である。すなわち、この図8に示すように、モニタ回路7、調整回路8はマスタ2の側だけに設けられていても良い。
【0047】
図9のバス通信システム301は、マスタ302とスレーブ3a,203b…203zとをバスNを通じて接続することで構成されている。マスタ302、スレーブ203b…203zはモニタ回路及び調整回路を備えていないこと以外、それぞれマスタ2、スレーブ3aと同様の構成である。すなわちこの図8に示すように、モニタ回路7、調整回路8は一部のスレーブ3aだけに設けられていても良い。すなわちこの図9に示すように、モニタ回路7a,調整回路8aはスレーブ3aだけに設けられていても良い。
【0048】
この図9に示すバス通信システム301において、マスタ側の通信回路302とスレーブ側の通信回路3a,203a…203zとが異なるメーカにより製造されている場合であっても、モニタ回路7a及び調整回路8aがバスNに接続される一部の通信回路3aに搭載されていれば、調整回路8aの機能を達成できるようになるため、バスNに送出される信号の立上り遅延に係るスルーレートを前述実施形態と同様に調整できる。
【0049】
また図9のバス通信システム301においては、調整回路8がマスタ側にないため、スレーブ3aの側でスルーレートの調整タイミングを予め特定しておけばよい。
【0050】
(第4実施形態)
図10から図14は第4実施形態の追加説明図を示している。第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略し異なる部分を中心に説明する。本実施形態では、マスタ2がバスNを通じてスレーブ3a…3zに送出するデータを含む通信信号を用いてスルーレートを調整したり、逆に、例えばスレーブ3aがバスNを通じてマスタ2に送出するデータを含む通信信号を用いてスルーレートを調整する形態を示す。
【0051】
図10にマスタ2の処理内容を示す。マスタ2はスレーブ3a…3zへデータを含む通信信号をバスNに送出する(S11)が、マスタ2は、このバスNに送出された通信信号をモニタ回路7により検出し、この電圧が適正であるか否かを判定し(S12)、適正でなければ(S12でNO)、調整回路8により信号の立上り遅延に係るスルーレートを調整する(S13)。これにより、スルーレートを上げるように調整できる。
【0052】
また図11にスレーブ3aの処理内容を示す。逆に、スレーブ3aが、マスタ2へデータを含む通信信号をバスNに送出する(S15)ときには、スレーブ3aがこのバスNに送出された通信信号をモニタ回路7aにより検出し、この電圧が適正であるか否かを判定し(S16)、適正でなければ(S16でNO)、調整回路8aにより信号の立上り遅延に係るスルーレートを調整する(S17)。その後、必要なデータを送信し終わることで通信完了となる。
【0053】
図12及び図13は、マスタ2の側から通信信号を送信するときに、マスタ2の調整回路8がスルーレートを調整するタイミングの例を示している。例えば、図12に示すように、マスタ2が、2進数表示にて「&B0010」の通信信号を送信するときに、この通信信号の初回の「&B0」を送信したときに、バスHの通信信号の「L」→「H」の変化をモニタ回路7により検出し、調整回路8が、この結果を用いて信号の立上り遅延に係るスルーレートを調整すると良い。
【0054】
また図13に示すように、マスタ2は、この通信信号のうち初回の「&B1」を送信したときからバスNの通信信号の「L」→「H」の変化をモニタ回路7により検出し、調整回路8が、この結果を用いて信号の立上り遅延に係るスルーレートを調整しても良い。これらの調整回路8による調整タイミングは、マスタ2とスレーブ3aとの間の取り決め、すなわち通信プロトコルにより決定すると良い。
【0055】
また図14は、マスタ2の側から通信信号をバスNに送出したときに、スレーブ3aへ調整回路8aによる調整タイミングを指示するための通信信号の例を示している。
【0056】
この図14には通信信号を16進数にて示しており、マスタ2が、&H00を送信したときのバスNの信号波形と共に、マスタ2がスレーブ3aに調整回路8aによる調整タイミングを制御指示する場合の通信信号と、マスタ2がスレーブ3aに調整回路8aによる調整を制御指示しない場合の通信信号と、を合わせて図示している。
【0057】
例えば、この例では、マスタ2とスレーブ3aとの間において、通信信号の6バイト目の最終ビットが「&B1」のときに調整回路8aによりスルーレートを調整、「&B0」のときに調整回路8によるスルーレート調整をしない、という通信プロトコルが決定されているものとする。
【0058】
この場合、マスタ2が、通信信号として図14の上段に示すように、「&H00、&H34、&H80、&H25、&H00、&H17、&H66」を順に送信すると、スレーブ3aがこの通信信号を受信する。
【0059】
スレーブ3aのロジック回路4aは、その通信信号の6バイト目が「&H17」であり、その最終ビットが「&B1」となることを検出する。このため、スレーブ3aのロジック回路4は、マスタ2から調整回路8によりスルーレートを調整制御する旨の指令を入力することになる。
【0060】
この場合、スレーブ3aのモニタ回路7aが、マスタ2により信号送出した後のバスNの電圧が所定電圧に達する時間を検出したり、所定時間経過後のバスNの電圧を検出したりすることで、バスNの電圧が適正であるか否かを判定し、適正でないときには、調整回路8aが信号遅延に係るスルーレートを調整する。
【0061】
また、マスタ2が通信信号として、図14の下段に示すように、「&H00、&H34、&H80、&H25、&H00、&H16、&H66」を順に送信したとき、スレーブ3aがこの通信信号を受信する。
【0062】
スレーブ3aのロジック回路4は、その通信信号の6バイト目が「&H16」であり、その最終ビットが「&B0」となることを検出する。このため、スレーブ3aのロジック回路4は、マスタ2から調整回路8aによりスルーレートを調整しなくても良い旨の指令を入力することになる。この場合、スレーブ3aは、調整回路8aによるスルーレート調整機能を働かせることなく終了する。
【0063】
すなわち、本形態においては、通信信号のフレーム中の特定ビットに調整指令制御信号を割り当てることで、マスタ2が、スレーブ3aに対し調整回路8aによる調整タイミングを指示できる。このように、マスタ2がスレーブ3aに対しスルーレートの調整タイミングを指示するようにしても良いし、調整回路8aによりスルーレートを調整する同期信号のタイミングを予め設定しておいても良い。
【0064】
複数のスレーブ3a…3zが、それぞれ調整回路8a…8zを備えている場合には、各スレーブ3a…3zに固有の識別番号(ID)を設定することが望ましい。図示していないが、マスタ2及びスレーブ3a…3zのロジック回路4,4a…4zの各内部メモリには、それぞれ、バスNに接続されている各マスタ2、スレーブ3a…3zの識別番号が全て記憶されている。
【0065】
例えば、識別番号「1」がスレーブ3aに割当てられており、識別番号「2」がスレーブ3bに割当てられている場合、識別番号の若い順、すなわち、マスタ2が、スレーブ3a、スレーブ3bの順に指示し、各スレーブ3a、3bが調整回路8a,8bによりスルーレートを調整することが望ましい。この場合、マスタ2、スレーブ3a、スレーブ3b、のように順にスルーレートを調整することになるため、調整しすぎて逆に高周波ノイズを生じさせることはない。
【0066】
また、マスタ2が調整回路8によりスルーレートを調整した後、バスNの電圧を再度検出し、調整を不足と判断したときに限り、マスタ2がスレーブ3a…3zに対しスルーレートを調整指示するようにしても良い。このとき、マスタ2がスレーブ3a…3zに対しスルーレートを調整指示するタイミングを指示することで、スレーブ3a…3zは、それぞれ調整回路8によりスルーレートを調整すれば良い。このような実施形態においても、前述実施形態と同様に、調整回路8が必要なときにスルーレートを調整できるようになり、前述実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0067】
(他の実施形態)
本開示は、前述実施形態に限られるものではなく、例えば、以下に示す変形又は拡張が可能である。前述実施形態に示した構成、処理は必要に応じて組み合わせて適用できる。
立上り遅延に係るスルーレートを上げる形態を示したが、これに限定されるものではなく、同期信号又は通信信号の位相極性を反転したRZ信号送受方式を適用した場合には、立下り遅延に係るスルーレートを上げる形態に適用しても良い。
マスタ2又はスレーブ3a…3zのモニタ回路7,7a…7zがバスNの電圧を検出した結果、立下りスルーレートが小さいと判定されたときに、マスタ2又は/及びスレーブ3a…3zに、バスNから電流を多くグランドに引くように調整回路を構成すると良い。例えば、バスNからグランドに引く電流を引く電流源を設け、当該電流源の機能の有効/無効を切り替えてバスNからグランドに引く電流を調整すると良い。これにより、立下り遅延に係るスルーレートを上げることができる。
【0068】
特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、本発明の一つの態様として前述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。前述実施形態の一部を、課題を解決できる限りにおいて省略した態様も実施形態と見做すことが可能である。また、特許請求の範囲に記載した文言によって特定される発明の本質を逸脱しない限度において、考え得るあらゆる態様も実施形態と見做すことが可能である。
【0069】
また本発明は、前述した実施形態に準拠して記述したが、本発明は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0070】
図面中、1,201,301はバス通信システム、7,7a…7z,107,107a…107z、207,207a…207zはモニタ回路(検出部)、8,8a…8z,108,108a…108z、208,208a…208z,308,308a…308z、407,408a…408zは調整回路(調整部)、Nはバス、を示す。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】