(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2019146277
(43)【公開日】20190829
(54)【発明の名称】リニアモータおよびリニアモータを搭載した圧縮機
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/16 20060101AFI20190802BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20190802BHJP
【FI】
   !H02K33/16 A
   !H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】2016087639
(22)【出願日】20160426
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目6番6号
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】松家 大介
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目6番6号 株式会社 日立製作所内
(72)【発明者】
【氏名】小山 昌喜
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目6番6号 株式会社 日立製作所内
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尚礼
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目6番6号 株式会社 日立製作所内
(72)【発明者】
【氏名】永田 修平
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目6番6号 株式会社 日立製作所内
(72)【発明者】
【氏名】岡本 賢一
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目6番6号 株式会社 日立製作所内
【テーマコード(参考)】
5H633
5H641
【Fターム(参考)】
5H633BB08
5H633BB10
5H633GG03
5H633GG06
5H633GG09
5H633GG17
5H633HH03
5H633HH06
5H633JA02
5H641BB06
5H641BB14
5H641BB18
5H641BB19
5H641GG03
5H641GG05
5H641GG08
5H641HH03
(57)【要約】
【課題】二つの駆動周波数で効率的な動作ができるリニアモータ及びこれを搭載した圧縮機を提供する。
【解決手段】永久磁石又はコイルの一方を有する第一の可動部と、永久磁石又はコイルの他方を有する第二の可動部と、固定部と、第一の可動部と第二の可動部とを繋ぐ第一のばねと、第二の可動部と固定部とを繋ぐ第二のばねと、を備え、第一の可動部及び第二の可動部が略同じ方向に往復動するリニアモータであって、低域側共振モード周波数近傍の周波数の交流電流をコイルに流す低域モードと、高域側共振モード周波数近傍の周波数の交流電流をコイルに流す高域モードと、を実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石又はコイルの一方を有する第一の可動部と、
永久磁石又はコイルの他方を有する第二の可動部と、
固定部と、
前記第一の可動部と前記第二の可動部とを繋ぐ第一のばねと、
前記第二の可動部と前記固定部とを繋ぐ第二のばねと、を備え、
前記第一の可動部及び第二の可動部が略同じ方向に往復動するリニアモータであって、
低域側共振モード周波数近傍の周波数の交流電流を前記コイルに流す低域モードと、
高域側共振モード周波数近傍の周波数の交流電流を前記コイルに流す高域モードと、を実行することを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
前記第一の可動部の質量をm、前記第二の可動部の質量をm、前記第一のばねのばね定数をk、前記第二のばねのばね定数をk、としたとき、次の数1の関係式を満たすことを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【数1】
但し、Aは、0.6以上1.4以下。
【請求項3】
前記第一の可動部の質量をm、前記第二の可動部の質量をm、前記第一のばねのばね定数をk、前記第二のばねのばね定数をk、としたとき、関係式m<mと、関係式k<kと、が成立することを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記高域モードにおける前記第一の可動部及び前記第二の可動部の往復動方向は、互いに逆方向であることを特徴とする請求項1乃至3何れか一項に記載のリニアモータ。
【請求項5】
請求項1乃至4何れか一項に記載のリニアモータを備え、流体を圧縮する圧縮機であって、
前記高域モードから前記低域モードに切り替える際、前記コイルに流している電流の周波数を、流体によるばね定数が0としたときの低域側共振モード周波数以下に切り替え、その後周波数を増加させることを特徴とする圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータおよびリニアモータを搭載した圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1が挙げられる。
特許文献1は、シリンダを有する基準アッセンブリ、及び基準アッセンブリに対して変位する共振アッセンブリを有し、基準アッセンブリ及びシェル1がスプリング9で接続し、基準アッセンブリ及び共振アッセンブリが共振スプリング3で接続した振動性動システムを開示している(段落0003−0005、図1、図2等)。制動スプリング9の機能は、共振アッセンブリの動作によって生じる振動の伝達を最小限に抑えることである旨の開示がある。
【0003】
また、特許文献1は、シェル1及び基準アッセンブリ20を接続する第1の釣り合い手段30、基準アッセンブリ20及び共振アッセンブリ10を接続する共振スプリング3、並びに、シェル1及び共振アッセンブリ10を接続する第2の釣り合い手段40を開示しており、第1の釣り合い手段30の弾性係数(バネ定数)KSと第2の釣り合い手段40の弾性係数KBとの関係に着目している(段落0024、図8等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004−503717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、制動スプリング9の弾性係数及び共振スプリング3の弾性係数の関係、又は、このような弾性係数の関係に基づいたコンプレッサの駆動制御について、特定の技術的思想を開示するものではない。また、特許文献1は、コンプレッサの振動を抑制するものであり、この場合、シェル1への振動の伝達を抑制すべく、スプリング9のバネ定数は小さく、すなわち、スプリング9を柔らかく設定するのが通常である。
特許文献1のように構成すると、共振制御が可能な周波数領域を確保することについて改善の余地が残る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記事情に鑑みた本発明は、永久磁石又はコイルの一方を有する第一の可動部と、永久磁石又はコイルの他方を有する第二の可動部と、固定部と、前記第一の可動部と前記第二の可動部とを繋ぐ第一のばねと、前記第二の可動部と前記固定部とを繋ぐ第二のばねと、を備え、前記第一の可動部及び第二の可動部が略同じ方向に往復動するリニアモータであって、低域側共振モード周波数近傍の周波数の交流電流を前記コイルに流す低域モードと、高域側共振モード周波数近傍の周波数の交流電流を前記コイルに流す高域モードと、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、共振制御を効果的に行うことができるリニアモータ及びこれを搭載した圧縮機を提供することができる。
上記以外の課題、構成、および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1のリニアモータの概略図
【図2】実施例1に係るリニアモータをバネマスダンパ系として描いた図
【図3】実施例1のコイルを流れる電流から第一の可動部の変位量までの伝達関数の周波数応答特性を示す図
【図4】実施例1のコイルを流れる電流から第二の可動部の変位量までの伝達関数の周波数応答特性を示す図
【図5】実施例2の圧縮機の基本構造を示す図
【図6】実施例2の二つの可動部の相対変位量に関する周波数応答特性図
【図7】実施例2の変位量の時間波形(駆動周波数=f
【図8】実施例2の変位量の時間波形(駆動周波数=f
【図9】比較例1の第一の可動部変位量に関する周波数応答特性図
【図10】比較例1の第二の可動部変位量に関する周波数応答特性図
【図11】比較例2の二つの可動部変位量に関する周波数応答特性図
【図12】比較例2の変位量の時間波形(駆動周波数=f
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を用いて本発明の各実施例を説明するが、本発明は、以下で詳述する各実施例の構成に限定されるものではない。また、本発明の各種の構成要素は必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、或る構成要素が他の構成要素の一部であること、或る構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【実施例1】
【0010】
[リニアモータ100]
図1は、本実施例に係るリニアモータ100の概略図、図2(a)、(b)は本実施例に係るリニアモータ100をバネマスダンパ系として描いた図である。リニアモータ100は、第一の可動部1、第二の可動部2、固定部3、永久磁石4、磁性体であるヨーク6(6a,6b)、ヨーク6に巻回したコイル5(5a,5b)、第一のばね10、第二のばね11及び減衰部12を有する。
【0011】
第一の可動部1は、コイル5に対向可能な永久磁石4を有し、第一のばね10及び減衰部12を介して第二の可動部2に接続している。
第二の可動部2は、コイル5及びヨーク6を有し、第二のばね11を介して固定部3に接続している。コイル5のそれぞれは、第一の可動部1を挟んで互いに対向している。
第一の可動部1及び第二の可動部2はそれぞれ、固定部3に対して略同一方向に往復動可能である。
固定部3は、例えばリニアモータ100の筐体としてもよいし、リニアモータ100とは別に、例えば地面としてもよい。固定部3には、第二のばね11の一端が接続している。
【0012】
第二のばね11の他端には、第二の可動部2が接続している。第二の可動部2について、第二の可動部2を挟んで第二のばね11の伸張方向(図1中の紙面上下方向)の反対側には、第一のばね10の一端及び減衰部12の一端が接続している。第一のばね10の他端及び減衰部12の他端は、第一の可動部1に接続している。第一の可動部1及び第二の可動部2は、第一のばね10及び第二のばね11の略伸張方向に往復動可能である。
【0013】
リニアモータ100は、コイル5に交流電流を流すことで発することができる交流磁界により、第二の可動部2に往復動力を与えることができる。第一の可動部1は、この往復動力の反作用により往復動力を受けることができる。
永久磁石4の磁化方向は、図1の紙面左右方向である。また、コイル5に電流が流れた際に発生する磁界の閉ループは、図1の紙面内である。そのため、コイル5に流す電流によって第一の可動部1と第二の可動部2の間に吸引力又は反発力が生じる。本実施例に係るリニアモータ100では、コイル5に交流電流を流すことで、二つの可動部1,2間の距離を振動させることができる。制御によって可変な交流電流の周波数を動作周波数fopと定義する。なお、図1中の紙面下方向は重力方向にしても良いが、必ずしも重力方向に一致する必要はなく、左右方向の何れかが重力方向に平行であっても良い。この場合、第二の可動部2を地面等に対して支持する別の弾性体を設けても良い。
【0014】
なお、リニアモータ100の停止状態で永久磁石4の図心を図1中の紙面に垂直な方向から観察した場合、永久磁石4の図心は、ヨーク6の図心より下方又は上方に位置することができる。こうすることで、リニアモータ100の起動時に、効果的に往復動力を発することができる。
【0015】
リニアモータ100は、コイル5に流す交流電流の周波数の通常の範囲が存在する。この範囲はリニアモータ100の用途によって異なり得るが、例えば後述する圧縮機の場合、冷蔵庫に搭載されるような小型のものであれば、10Hz以上100Hz以下が用いられ易い。以下、説明するように、二慣性系である本実施例のリニアモータ100の共振モード周波数の両者が、この数値範囲に収まることが好ましい。こうすることで、リニアモータ100は、低域側共振モード周波数f近傍の交流電流にて駆動する低域モードと、高域側共振モード周波数f近傍の交流電流にて駆動する高域モードとを区別して実行可能である。
【0016】
[二慣性系の共振モード周波数]
リニアモータ100は、第一の可動部1及び第二の可動部2が固定部3に対して変位可能な二慣性系である。すなわち、第一の可動部1は、第二のばね11の振動を介して固定部3に対して振動可能であり、第一のばね10を介して第二の可動部2に対して振動可能である。また第二の可動部2は、第一のばね10及び第二のばね11の合成ばねを介して固定部3に対して振動可能である。第一の可動部1及び第二の可動部2の振動方向は、それぞれ略同一方向である。
このようなリニアモータ100は、2つの共振モードを持つ。共振モード周波数fおよびf(f<f)は下記の数1で導出可能である。
【0017】
【数1】
【0018】
なお、説明を簡単にするため、減衰部12の減衰係数cを無視した非減衰系での共振モード周波数を明示しているが、減衰係数cは零でも非零でも、本実施例の要点は維持される。ここで、第一のばね10のばね定数をk、第二のばね20のばね定数をk、第一の可動部質量をm、第二の可動部質量をmとする。第一のばね定数と第一の可動部質量より求まる角速度ω、第二のばね定数と第二の可動部質量より求まる角速度ω、可動部の質量比μは下記の数2に示す通りである。ここで、m1やm2には、可動子に接続しているばねの質量の一部又は全部を加えて計算すると、さらに高精度となる。例えば、m1に第一のばね10の質量の1/3を含ませることができる。また、m2に第一のばね10の質量の全てと、第二のばね11質量の1/3とを含ませることができる。
【0019】
【数2】
【0020】
本実施例では、k=50N/mm、k=300N/mm、m=0.5kg、m=4kgの場合、共振モード周波数は38.3Hzおよび57.3Hzとしている。
本実施例は、例えば、ωとωを比較的近い値、好ましくは一致させることで、fとfを近接させることができる。このようにして(f/f)を1に近くすると、共振モード周波数を互いに近づけることができる。具体的には、下記数3の関係が成立するように、各パラメータを設定することが好ましい。
【0021】
【数3】
【0022】
ここで、Aは、0.6以上1.4以下、好ましくは0.8以上1.2以下、より好ましくは0.9以上1.1以下である。値Aをこのような上下限範囲に収めることで、後述するように、二慣性系の共振モード周波数を互いに近いものにしつつ、低域側共振周波数fを或る程度高い値にすることができる。
【0023】
ここで、リニアモータ100は通常、地面に対して大きく往復動する可動部(本実施例では第一の可動部1)の方を、他方の可動部よりも小さい質量となるようにすると好ましい。このため、m<mの場合、k<k(添え字のk及びlは、一方が1、他方が2)とする方が好ましい。
【0024】
なお、リニアモータ100の用途として、非常に低出力のモードと非常に高出力のモードとを使い分けたい場合は、(f/f)が高い値になるようにすればよい。種々の用途に応じて設計することができるが、(f/f)を1超20以下にする機器が多いと考えられる。
【0025】
[可動部の変位]
力及び変位の正方向を、図2中の紙面上向きとする。コイル5に電流を流すことで発生する電磁力Fは、第一の可動部1に作用し、第二の可動部2には、電磁力Fと同じ大きさかつ反対方向の反力が作用する。以下、第一の可動部1の変位量をx、第二の可動部2の変位量をxとし、減衰定数cは0.1とする。
【0026】
図3はコイル5を流れる電流から第一の可動部1の変位量xまでの伝達関数の周波数応答特性を示す図、図4はコイル5を流れる電流から第二の可動部2の変位量xまでの伝達関数の周波数応答特性を示す図である。
可動部1,2の変位量はそれぞれ、共振モード周波数fおよびfで大きなピークを持つ。第一の可動部1は共振モード周波数fとfの間にゲインが大きく低下する反共振点を持つ。第一の可動部1と第二の可動部2の位相関係を見ると、低域側の共振モード周波数f近傍やそれ以下の周波数では同位相であり、可動部1の反共振点を超えた後は逆位相となっている。
【0027】
本実施例に係るリニアモータ100は、コイル5に流す電流の周波数について、低域側の共振モード周波数fを含む範囲とするモードと、高域側の共振モード周波数fを含む範囲とするモードを持つ。前者は第一の可動部1と第二の可動部2が同位相の関係にあり、後者は逆位相の関係にある。つまり、本実施例に係るリニアモータ100では二つの可動部1,2が同じ方向と反対方向に動作する二つの運転モードを持つ。すなわち、低域モードでは、二つの可動部1,2が同じ方向に動作し、高域モードでは、二つの可動部1,2が反対方向に動作する。このように、振動が大きくなりやすい高域モードにおける可動部1,2の動作方向が反対の逆位相であるため、振動の発生を抑制できる。
【実施例2】
【0028】
本実施例の構成は、以下の点を除き、実施例1と同様にできる。本実施例は、リニアモータ100を有する圧縮機200に関する。図5は圧縮機200の縦断面図である。圧縮機200は、リニアモータ100、ピストン21、シリンダケース22、シリンダ室23、吸入口24、吐出口25を備える。
【0029】
リニアモータ100は、実施例1と同様の構成でも良いし、さらにコイル5c,5d、ヨーク6c,6d、を有しても良い。本実施例では、第一の可動部1は、永久磁石4、ピストン21、可動子構成材27を有する。第二の可動部2は、コイル5、ヨーク6、シリンダケース22を有する。
【0030】
吸入口24及び吐出口25には、それぞれ公知の吸入弁(図示せず)と吐出弁(図示せず)が設けられ、それぞれ吸入配管(図示せず)と吐出配管(図示せず)に接続される。吸入弁及び吐出弁それぞれは、弁の前後に生じる圧力差が設定値を上回る(下回る)際に開閉する。まず、吸入弁が閉じた状態でコイル5に一方向の電流を流し、ピストン21が図7中の下方に移動すると、シリンダ室23の容積が増加してシリンダ室23内圧力が低下し、吸入弁が開いてシリンダ室23内に作動流体(図示せず)が流入する。次に、吐出弁が閉じた状態でコイル5に逆方向の電流を流すと、ピストン21が上方に移動してシリンダ室23の容積が減少してシリンダ室23内圧力が上昇し、吐出弁が開き吐出口25より高圧となった作動流体が吐出される。
【0031】
図6は、k,k,m,mを実施例1と同様の値にした際の、第一の可動部1の変位量と第二の可動部2との相対変位量をΔxとし、コイル5に流す電流からΔxまでの周波数応答特性である。このとき、低域側の共振モード周波数fは38.3Hz、高域側fは57.3Hzである。ここで、mには、シリンダケース22に設けられた吸入弁及び吐出弁の質量の全部、並びにこれら弁に取付けられた配管の質量の一部又は全部が含まれる。配管の質量のどの程度の割合がmに含まれるかは、配管の取付け態様に依存する。シリンダケース22にどの程度の重量が加わるかを考慮して決定すべきであることは当業者に明らかである。
【0032】
図6によれば、シリンダ室23で大きな圧縮力を生じるのは、低域側の共振モード周波数fと高域側の共振モード周波数fの二つある。図7は、駆動周波数をfとした際の第一の可動部1の変位(ピストン21の変位)x、第二の可動部2の変位(シリンダケース22の変位)x、及び相対変位量Δxの時間発展を示す図である。第一の可動部1と第二の可動部2は同位相で振動しており、振動振幅は第一の可動部1が第二の可動部2より大きい。Δxはシリンダ室23の空間の高さの初期値からの変化量に相当し、ピーク高さが高いほど小電流で大きな圧縮力が得られることを意味する。そのため、相対変位量Δxが振動し、シリンダケース22内の作動流体を圧縮できる。
【0033】
図8は、本実施例で駆動周波数をfとした際の第一の可動部1の変位(ピストン21の変位)x、第二の可動部2の変位(シリンダケース22の変位)x、及び相対変位量Δxの時間発展を示す図である。第一の可動部1と第二の可動部2は逆位相で振動しており、振動振幅は第一の可動部1が第二の可動部2より大きい。そのため、相対変位量Δxが振動し、シリンダ室内の作動流体を圧縮できる。
【0034】
つまり、二つのバネ定数や二つの可動部の質量の関係を、実施例1で上述したようなものにすることで、二つの共振モード周波数が近接する。それぞれの共振モード周波数を駆動周波数とする運転モードとすることで、小さな電力で大きな圧力が得られる効率のよい圧縮機200を提供できる。
【0035】
ところで、反共振点は、二つの共振モード周波数の間に存在する。また、圧縮機200は流体を圧縮するため、流体によるばね定数が系に加わるため、二つの共振モード周波数は、高周波側に遷移する。よって、高域モードから低域モードに切り替える際は、駆動中の周波数から、流体によるばね定数が0としたときの低域側共振モード周波数以下に切り替え、その後周波数を増加させるようにすると、反共振点での駆動を回避しやすくなり、好ましい。
【0036】
(比較例1)
比較例1は、リニアモータに関する。パラメータとして、k=50N/mm、k=0.3N/mm、m=0.5kg、m=4kg、すなわちA=33.3の場合のリニアモータである。このとき、共振モード周波数はf=1.3Hzおよびf=53.4Hzとなる。
比較例1は、第二のばね定数が小さく、また、fが動作周波数の下限より十分に小さい。
【0037】
図9、図10は、電流から各可動部1,2の変位量x,xまでの伝達関数の周波数応答特性を示す。各可動部1,2の変位量は、共に共振モード周波数f、fで大きなピークを持つことが分かる。低域側の共振モード周波数fは非常に低く、通常、動作モードから外れる。
【0038】
また可動部1は低域側の共振モード周波数f付近でゲインが大きく低下する反共振点を持つ。可動部1と2の位相関係を見ると、可動部1の反共振点を超えた後は逆位相となっている。比較例1においては、リニアモータが通常駆動する周波数範囲には、共振モード周波数のうち、高域側のfのみが属するため、二つの可動部1,2は反対方向に動作する。
【0039】
(比較例2)
比較例2は、圧縮機に関する。図11は、比較例1のパラメータを採用したもとで、コイル5に流す電流からΔxまでの周波数応答特性を示す図である。このとき、低域側の共振モード周波数fは1.3Hz、高域側の共振モード周波数fは53.4Hzである。
圧縮機が通常駆動する周波数範囲には、共振モード周波数のうち、高域側共振モード周波数fのみが属する。
【0040】
図12は、駆動周波数をfとした際のピストン変位x、シリンダ変位x、及び相対変位量Δxを示す図である。第二の可動部2はほとんど振動せず、第一の可動部1の振動振幅が二つの可動部間距離とおおよそ等しくなる。比較例2の圧縮機は、fより実質的に小さい周波数にて共振駆動しようとすると、圧縮機の作動が困難な周波数にまで低下させなければならないため、低出力を効果的に行うことが困難である。
【0041】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…第一の可動部
2…第二の可動部
3…固定部
4…永久磁石
5・5a・5b・5c・5d…コイル
6・6a・6b・6c・6d…ヨーク
10…第一のばね
11…第二のばね
12…減衰部
21…ピストン
22…シリンダケース
23…シリンダ室
24…吸入口
25…吐出口
27…可動部構成材
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】