回路基板に搭載されるパワーモジュールと、前記パワーモジュールから延設された素子側接続端子と、前記素子側接続端子と電気的に接続される相手側接続端子を備える電子制御装置において、
前記パワーモジュールから延びる前記素子側接続端子は、
前記相手側接続端子の延設方向に対して交わる方向に延びる第1接続端子片と、
前記第1接続端子片が前記相手側接続端子に至る手前から前記相手側接続端子の延設方向に対して斜交する方向に弾性力を付与されて折り曲げられ、前記相手側接続端子に所定の角度を有して弾性的に接触する第2接続端子片から構成されていると共に、
この状態で前記相手側接続端子の先端側と前記第2接続端子片の先端側が電気的に接合されている
ことを特徴とする電子制御装置。
機械系制御要素を駆動する電動モータと、前記電動モータが収納されたモータハウジングと、前記電動モータの回転軸の出力部とは反対側の前記モータハウジングの端面部の側に配置された、前記電動モータを駆動するための電子制御部とを備えた電動駆動装置であって、
前記電子制御部が、電源の生成を主たる機能とする電源回路部と、前記電動モータの駆動を主たる機能とする電力変換回路部と、前記電力変換回路部の制御を主たる機能とする制御回路部とから構成され、前記電力変換回路部の素子側接続端子から前記電動モータのモータ側接続端子に電力が供給されると共に、
前記電源回路部から延びる前記素子側接続端子は、
前記電動モータの巻線に接続されたモータ側接続端子の延設方向に対して交わる方向に延びる第1接続端子片と、
前記第1接続端子片が前記モータ側接続端子に至る手前から前記モータ側接続端子の延設方向に対して斜交する方向に弾性力を付与されて折り曲げられ、前記モータ側接続端子に所定の角度を有して弾性的に接触する第2接続端子片から構成されていると共に、
この状態で前記モータ側接続端子の先端側と前記第2接続端子片の先端側が電気的に接合されている
ことを特徴とする電動駆動装置。
【背景技術】
【0002】
一般的な産業機械分野においては、電動モータによって機械系制御要素を駆動することが行われているが、最近では電動モータの回転速度や回転トルクを制御する半導体素子等からなる電子制御部を電動モータに一体的に組み込む、いわゆる機電一体型の電動駆動装置が採用され始めている。
【0003】
機電一体型の電動駆動装置の例として、例えば自動車の電動パワーステアリング装置においては、運転者がステアリングホィールを操作することにより回動するステアリングシャフトの回動方向と回動トルクとを検出し、この検出値に基づいてステアリングシャフトの回動方向と同じ方向へ回動するように電動モータを駆動し、操舵アシストトルクを発生させるように構成されている。この電動モータを制御するため、電子制御部(ECU:Electronic Control Unit)がパワーステアリング装置に設けられている。
【0004】
従来の電動パワーステアリング装置としては、例えば、特開2015−134598号公報(特許文献1)に記載のものが知られている。特許文献1には、電動モータと電子制御装置とにより構成された電動パワーステアリング装置が記載されている。そして、電動モータは、アルミ合金等から作られた筒部を有するモータハウジングに収納され、電子制御装置は、モータハウジングの軸方向の出力軸とは反対側に配置されたECUハウジングに収納されている。
【0005】
ECUハウジングの内部に収納される電子制御装置は、電源回路部と、電動モータを駆動制御するMOSFETのようなパワースイッチング素子を有するパワーモジュールと、パワースイッチング素子を制御する制御回路部とを備え、パワーモジュールの出力端子と電動モータの入力端子とは、一般的にはTIG溶接によって夫々の端子の先端部が溶接されて電気的に接続されている。
【0006】
ところで、パワーモジュールの出力端子と電動モータの入力端子の接続は、例えば、特開2014-160717号公報(特許文献2)のような構成の接続端子を使用して行われている。図14に示しているように、基板60の上に合成樹脂で囲繞されたパワーモジュール61を載置し、このパワーモジュール61の接続端子62に「U」字状の折り曲げ部63を形成して弾性機能を与え、この折り曲げ部63を境にして先端側端子64を折り曲げ方向に沿って延設している。
【0007】
一方、相手側接続端子(例えば、電動モータ側の入力端子)65は、ガイド66によって支持され、相手側接続端子65は先端側端子64の延設方向と同じ方向に延設されている。更に、パワーモジュール61の先端側端子64の先端部64Tと相手側接続端子65の先端部65Tは重ね合されて、TIG溶接によって接合されている。
【0008】
尚、この他に電子制御装置を一体化した電動駆動装置としては、電動ブレーキや各種油圧制御用の電動油圧制御器等が知られている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明が適用される一例としての操舵装置の全体斜視図である。
【図2】本発明の実施形態になる電動パワーステアリング装置の全体形状を示す斜視図である。
【図3】図2に示す電動パワーステアリング装置の分解斜視図である。
【図4】図3に示すモータハウジングの斜視図である。
【図5】図4に示すモータハウジングを軸方向に断面した断面図である。
【図6】図4に示すモータハウジングに電力変換回路部を載置、固定した状態を示す斜視図である。
【図7】図6に示すモータハウジングに電源回路部を載置、固定した状態を示す斜視図である。
【図8】図7に示すモータハウジングに制御回路部を載置、固定した状態を示す斜視図である。
【図9】図8に示すモータハウジングに樹脂製コネクタ組立体を載置、固定した状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施形態になる電動パワーステアリング装置の電子制御部の付近を軸方向に断面した要部断面図である。
【図11】電力変換回路部の第1の形状の接続端子と電動モータのモータ巻線の接続端子を接合する前の状態を示す断面図である。
【図12】電力変換回路部の第1の形状の接続端子と電動モータのモータ巻線の接続端子をTIG溶接する時の状態を示す断面図である。
【図13】電力変換回路部の第2の形状の接続端子と電動モータのモータ巻線の接続端子をTIG溶接する時の状態を示す断面図である。
【図14】従来のパワーモジュールの接続端子と電動モータのモータ巻線の接続端子を接続した後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0017】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明が適用される一例としての操舵装置の構成について図1を用いて簡単に説明する。
【0018】
まず、自動車の前輪を操舵するための操舵装置について説明する。操舵装置1は図1に示すように構成されている。図示しないステアリングホイールに連結されたステアリングシャフト2の下端には図示しないピニオンが設けられ、このピニオンは車体左右方向へ長い図示しないラックと噛み合っている。このラックの両端には前輪を左右方向へ操舵するためのタイロッド3が連結されており、ラックはラックハウジング4に覆われている。そして、ラックハウジング4とタイロッド3との間にはゴムブーツ5が設けられている。
【0019】
ステアリングホイールを回動操作する際のトルクを補助するため、電動パワーステアリング装置6が設けられている。即ち、ステアリングシャフト2の回動方向と回動トルクとを検出するトルクセンサ7が設けられ、トルクセンサ7の検出値に基づいてラックにギヤ10を介して操舵補助力を付与する電動モータ部8と、電動モータ部8に配置された電動モータを制御する電子制御部(ECU)9とが設けられている。電動パワーステアリング装置6の電動モータ部8は、出力軸側の外周部の3箇所が図示しないねじを介してギヤ10に接続され、電動モータ8部の出力軸とは反対側に電子制御部9が設けられている。
【0020】
電動パワーステアリング装置6においては、ステアリングホイールが操作されることによりステアリングシャフト2がいずれかの方向へ回動操作されると、このステアリングシャフト2の回動方向と回動トルクとをトルクセンサ7が検出し、この検出値に基づいて制御回路部が電動モータの駆動操作量を演算する。この演算された駆動操作量に基づいて電力変換回路部のパワースイッチング素子により電動モータが駆動され、電動モータの出力軸はステアリングシャフト1を操作方向と同じ方向へ駆動するように回動される。出力軸の回動は、図示しないピニオンからギヤ10を介して図示しないラックへ伝達され、自動車が操舵されるものである。これらの構成、作用は既によく知られているので、これ以上の説明は省略する。
【0021】
次に、本発明の実施形態になる電動パワーステアリング装置の具体的な構成について、図2乃至図13を用いて詳細に説明する。
【0022】
図2は本実施形態になる電動パワーステアリング装置の全体的な構成を示した図面であり、図3は図2に示す電動パワーステアリング装置の構成部品を分解して斜め方向から見た図面であり、図4から図9は各構成部品の組み立て順序にしたがって各構成部品を組み付けていった状態を示す図面である。したがって、以下の説明では、各図面を適宜引用しながら説明を行うものとする。
【0023】
図2に示すように、電動パワーステアリング装置を構成する電動モータ部8は、アルミニウム、或いはアルミ合金等のアルミ系金属から作られた筒部を有するモータハウジング11及びこれに収納された図示しない電動モータとから構成され、電子制御部9は、モータハウジング11の軸方向の出力軸とは反対側に配置された、アルミニウム、或いはアルミ合金等のアルミ系金属、或いは鉄系の金属で作られた金属カバー12及びこれに収納された図示しない電子制御組立体から構成されている。
【0024】
モータハウジング11と金属カバー12は、その対向端面に形成され外周方向の固定領域部において、加締め固定によって一体的に固定される。金属カバー12の内部に収納された電子制御組立体は、必要な電源を生成する電源回路部や、電動モータ部8の電動モータを駆動制御するMOSFET或いはIGBT等からなるパワースイッチング素子を有するパワーモジュール(以下、電力変換回路部と表記する)や、このパワースイッチング素子を制御する制御回路部からなり、パワースイッチング素子の出力端子と電動モータのモータ巻線入力端子とは電気的に接続されている。
【0025】
モータハウジング11とは反対側の金属カバー12の端面には、金属カバー12に形成した孔部から樹脂製コネクタ組立体13が露出している。また、樹脂製コネクタ組立体13は、モータハウジング11に形成した固定部に固定ねじによって固定されている。樹脂製コネクタ組立体13には電力供給用のコネクタ端子形成部13A、検出センサ用のコネクタ端子形成部13B、制御状態を外部機器に送出する制御状態送出用のコネクタ端子形成部13Cを備えている。
【0026】
そして、金属カバー12に収納された電子制御組立体は、合成樹脂から作られた電力供給用のコネクタ端子形成部13Aを介して電源から電力が供給され、また検出センサ類から運転状態等の検出信号が検出センサ用のコネクタ形成端子部13Bを介して供給され、現在の電動パワーステアリング装置の制御状態信号が制御状態送出用のコネクタ端子形成部13Cを介して送出されている。
【0027】
図3に電動パワーステアリング装置6の分解斜視図を示している。モータハウジング11には内部に円環状の鉄製のサイドヨーク(図示せず)が嵌合されており、このサイドヨーク内に電動モータ(図示せず)が収納されているものである。電動モータの出力部14はギヤを介してラックに操舵補助力を付与している。尚、電動モータの具体的な構造は良く知られているので、ここでは説明を省略する。
【0028】
モータハウジング11はアルミ合金から作られており、電動モータで発生した熱や、後述する電源回路部や電力変換回路部で発生した熱を外部大気に放出するヒートシンク部材として機能している。電動モータとモータハウジング11で電動モータ部8を構成している。
【0029】
電動モータ部8の出力部14の反対側のモータハウジング11の端面部15には電子制御部ECが取り付けられている。電子制御部ECは、電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18、樹脂製コネクタ組立体13から構成されている。モータハウジング11の端面部15は、モータハウジング11と一体的に形成されているが、この他に端面部15だけを別体に形成し、ねじや溶接によってモータハウジング11と一体化しても良いものである。
【0030】
ここで、電力変換回路部16、電力変換回路部17、制御回路部18は冗長系を構成するものであり、主電子制御部と副電子制御部の二重系を構成している。そして、通常は主電子制御部によって電動モータが制御、駆動されているが、主電子制御部に異常や故障が生じると、副電子制御部に切り換えられて電動モータが制御、駆動されるようになるものである。
【0031】
したがって、後述するが、通常は主電子制御部からの熱がモータハウジング11に伝えられ、主電子制御部に異常や故障が生じると、主電子制御部が停止して副電子制御部が作動し、モータハウジング11には副電子制御部からの熱が伝えられるものである。
【0032】
また、主電子制御部と副電子制御部を合せて正規の電子制御部として機能させ、一方の電子制御部に異常、故障が生じると、他方の電子制御部で半分の能力によって電動モータを制御、駆動することも可能である。この場合、電動モータの能力は半分となるが、いわゆる「パワーステアリング機能」は確保されるようになっている。したがって、通常の場合は、主電子制御部と副電子制御部の熱がモータハウジング11に伝えられるものである。
【0033】
電子制御部ECは制御回路部18、電源回路部17、電力変換回路部16、樹脂製コネクタ組立体13から構成されており、端面部15側から離れる方向に向かって、電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18、樹脂製コネクタ組立体13の順序で配置されている。制御回路部18は電力変換回路部16のスイッチング素子を駆動する制御信号を生成するもので、マイクロコンピュータ、周辺回路等から構成されている。電源回路部17は、制御回路部18を駆動する電源及び電力変換回路部16の電源を生成するもので、コンデンサ、コイル、スイッチング素子等から構成されている。電力変換回路部16は、電動モータのモータ巻線に流れる電力を調整するもので、3相の上下アームを構成するスイッチング素子等から構成されている。
【0034】
電子制御部ECで発熱量が多いのは、主に電力変換回路部16、電源回路部17であり、電力変換回路部16、電源回路部17の熱は、アルミ合金からなるモータハウジング11から放熱されるものである。この詳細な構成については、図4乃至図9を用いて後述する。
【0035】
制御回路部18と金属カバー12の間には、合成樹脂からなる樹脂製コネクタ組立体13が設けられており、車両バッテリ(電源)や外部の図示しない他の制御装置と接続されている。もちろん、この樹脂製コネクタ組立体13は、電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18と接続されていることはいうまでもない。
【0036】
金属カバー12は、電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18を収納してこれらを液密的に封止する機能を備えているものであり、本実施形態では加締め固定によってモータハウジング11に固定されている。
【0037】
次に、図4から図9に基づき各構成部品の構成と組み立て方法について説明する。先ず、図4はモータハウジング11の外観を示しており、図5はその軸方向断面を示している。
【0038】
図4、図5において、モータハウジング11は、筒状の形態に形成されて側周面部11Aと、側周面部11Aの一端を閉塞する端面部15と、側周面部11Aの他端を閉塞する端面部19とから構成されている。本実施形態では、モータハウジング11は有底円筒状であり、側周面部11Aと端面部15は一体的に形成されている。また、端面部19は、蓋の機能を備えており、側周面部11Aに電動モータを収納した後に側周面部11Aの他端を閉塞するものである。
【0039】
また、端面部15の全周面には径方向外側に拡開して形成された環状溝部35が設けられており、このモータハウジング側環状溝部35に、図9に示す金属カバー12の開口端37が収納されるものである。そして、モータハウジングの環状溝部35と金属カバー12の開口端37(図9参照)の間の部分は、いわゆる液状シール剤によって液密的に接合されている。
【0040】
図5にあるように、モータハウジング11の側周面部11Aの内部には、鉄心にモータ巻線20が巻回されたステータ21が嵌合されており、このステータ21の内部に、永久磁石を埋設したロータ22が回転可能に収納されている。ロータ22には回転軸23が固定されており、一端は出力部14となり、他端は回転軸23の回転位相や回転数を検出するための回転検出部24となっている。回転検出部24には永久磁石が設けてあり、端面部15に設けた貫通孔25を貫通して外部に突き出している。そして、図示しないGMR素子等からなる感磁部によって回転軸23の回転位相や回転数を検出するようになっている。
【0041】
図4に戻って、回転軸23の出力部14とは反対側に位置する端面部15の面には電力変換回路部16(図3参照)、電源回路部17(図3参照)の放熱部15A、15Bが形成されている。端面部15の四隅には、基板/コネクタ固定凸部26が一体的に植立されており、内部にねじ穴26Sが形成されている。
【0042】
基板/コネクタ固定凸部26は後述する制御回路部18の基板、及び樹脂製コネクタ組立体13を固定するために設けられている。また、後述する電力変換用放熱領域15Aから植立した基板/コネクタ固定凸部26には、これも後述する電源用放熱領域15Bと軸方向で同じ高さの基板受け部27が形成され、基板受け部27には、ねじ孔27Sが形成されている。この基板受け部27は後述する電源回路部17を構成する基板であるガラスエポキシ基板31を載置、固定するためのものである。
【0043】
端面部15を形成する、回転軸23と直交する径方向の平面領域は2分割されている。1つはMOSFET等のスイッチング素子よりなる電力変換回路部16が取り付けられる電力変換用放熱領域15Aを形成し、もう1つは電源回路部17が取り付けられる電源用放熱領域15Bを形成している。本実施形態では、電力変換用放熱領域15Aの方が電源用放熱領域15Bより面積が大きく形成されている。これは、上述したように二重系を採用しているため、電力変換回路部16の設置面積を確保するためである。
【0044】
そして、電力変換用放熱領域15Aと電源用放熱領域15Bは、軸方向(回転軸23が延びる方向)に向けて高さが異なる段差を有している。つまり、電源用放熱領域15Bは、電動モータの回転軸23の方向で見て、電力変換用放熱領域15Aに対して離れる方向に段差を有して形成されている。この段差は、電力変換回路部16を設置した後に電源回路部17を設置した場合に、電力変換回路部16と電源回路部17が夫々干渉しない長さに設定されている。
【0045】
電力変換用放熱領域15Aには、3個の細長い矩形の突状放熱部28が形成されている。この突状放熱部28は後述する二重系の電力変換回路部16が設置されるものである。また、突状放熱部28は、電動モータの回転軸23の方向で見て電動モータから離れる方向に突出して延びているものである。
【0046】
また、電源用放熱領域15Bは平面状であって、後述する電源回路部17が設置されるものである。したがって、突状放熱部28は電力変換回路部16で発生した熱を端面部15に伝熱する放熱部として機能し、電源用放熱領域15Bは電源回路部17で発生した熱を端面部15に伝熱する放熱部として機能するものである。
【0047】
尚、突状放熱部28は省略することができ、この場合は電力変換用放熱領域15Aが電力変換回路部16で発生した熱を端面部15に伝熱する放熱部として機能する。ただ、本実施形態では、突状放熱部28に電力変換回路部16の金属基板を摩擦撹拌接合によって溶着して確実な固定を図っている。
【0048】
このように、本実施形態になるモータハウジング11の端面部15においては、ヒートシンク部材を省略して軸方向の長さを短くできるようになるものである。また、モータハウジング11は十分な熱容量を有しているので、電源回路部17や電力変換回路部16の熱を効率よく外部に放熱することができるようになるものである。
【0049】
次に、図6は電力変換回路部16を突条放熱部28(図4参照)に設置した状態を示している。図6にある通り、電力変換用放熱領域15Aに形成された突状放熱部28(図4参照)の上部には二重系よりなる電力変換回路部16が設置されている。電力変換回路部16を構成するスイッチング素子は金属基板(ここではアルミ系の金属を使用している)に載置され、放熱されやすく構成されている。そして、金属基板は突状放熱部28に摩擦撹拌接合によって溶着されている。
【0050】
したがって、金属基板は突状放熱部28(図4参照)に強固に固定され、またスイッチング素子で発生した熱を効率良く突状放熱部28(図4参照)に伝熱させることができる。突状放熱部28(図4参照)に伝えられた熱は電力変換用放熱領域15Aに拡散され、更にモータハウジング11の側周面部11Aに伝熱されて外部に放熱されるものである。ここで、上述した通り、電力変換回路部16の軸方向の高さは、電源用放熱領域15Bの高さより低くなっているので、後述する電源回路部17と干渉することはないものである。
【0051】
このように、電力変換用放熱領域15Aに形成された突状放熱部28の上部に電力変換回路部16が設置されている。したがって、電力変換回路部16のスイッチング素子で発生した熱を効率良く突状放熱部28に伝熱させることができる。更に、突状放熱部28に伝えられた熱は電力変換用放熱領域15Aに拡散され、モータハウジング11の側周面部11Aに伝熱されて外部に放熱されるようになる。
【0052】
次に、図7は電力変換回路部16の上から電源回路部17を設置した状態を示している。図7にある通り、電源用放熱領域15Bの上部には電源回路部17が設置されている。電源回路部17を構成するコンデンサ29やコイル30等は、電源回路基板であるガラスエポキシ基板31に載置されている。電源回路部17も二重系が採用されており、図からわかるように、夫々対称にコンデンサ29やコイル30等からなる電源回路が形成されている。尚、ガラスエポキシ基板31には、電力変換回路部16のスイッチング素子以外のコンデンサ等の電気素子が載置されている。
【0053】
このガラスエポキシ基板31の電源用放熱領域15B(図6参照)側の面は、電源用放熱領域15Bと接触するようにして端面部15に固定されている。固定方法は、図7にあるように、基板/コネクタ固定凸部26の基板受け部27に設けられたねじ穴27Sに図示しない固定ねじによって固定されている。また、電源用放熱領域15B(図6参照)に設けられたねじ穴27Sにも図示しない固定ねじによって固定されている。
【0054】
尚、電源回路部17がガラスエポキシ基板31で形成されているため、両面実装が可能となっている。そして、ガラスエポキシ基板31の電源用放熱領域15B(図6参照)側の面には、図示しないGMR素子やこれの検出回路等からなる回転位相、回転数検出部が実装され、回転軸23(図5参照)に設けた回転検出部24(図5参照)と協働して、回転の回転位相や回転数を検出するようになっている。
【0055】
このように、ガラスエポキシ基板31は電源用放熱領域15B(図6参照)に接触するようにして固定されているので、電源回路部17で発生した熱を効率良く電源用放熱領域15B(図6参照)に伝熱させることができる。電源用放熱領域15B(図6参照)に伝えられた熱は、モータハウジング11の側周面部11Aに拡散して伝熱されて外部に放熱されるものである。ここで、ガラスエポキシ基板31と電源用放熱領域15B(図6参照)の間は、熱伝達性の良い接着剤、放熱グリース、放熱シートのいずれか1つを介在させることで、更に熱伝達性能を向上させることができる。
【0056】
このように、電源用放熱領域15Bの上部には電源回路部17が設置されている。電源回路部17の回路素子が載置されたガラスエポキシ基板31の電源用放熱領域15B側の面は、電源用放熱領域15Bと接触するようにして端面部15に固定されている。したがって、電源回路部17で発生した熱を効率良く電源用放熱領域15Bに伝熱させることができる。電源用放熱領域15Bに伝えられた熱は、モータハウジング11の側周面部11Aに拡散して伝熱されて外部に放熱されるようになる。
【0057】
次に、図8は電源回路部17の上から制御回路部18を設置した状態を示している。図8にある通り、電源回路部17の上部には制御回路部18が設置されている。制御回路部18を構成するマイクロコンピュータ32や周辺回路33は、制御回路基板であるガラスエポキシ基板34に載置されている。制御回路部18も二重系が採用されており、図からわかるように、夫々対象にマイクロコンピュータ32や周辺回路33からなる制御回路が形成されている。尚、マイクロコンピュータ32や周辺回路33は、ガラスエポキシ基板34の電源回路17(図7参照)側の面に設けられていても良いものである。
【0058】
このガラスエポキシ基板34は、図8にあるように、基板/コネクタ固定凸部26(図7参照)の頂部に設けられたねじ穴26Sに樹脂製コネクタ組立体13によって挟まれる形態で図示しない固定ねじによって固定されており、電源回路部17(図7参照)のガラスエポキシ基板31と制御回路部18のガラスエポキシ基板34の間は、図7に示す電源回路部17のコンデンサ29やコイル30等が配置される空間となっている。
【0059】
次に、図9は制御回路部18の上から樹脂製コネクタ組立体13を設置した状態を示している。図9にある通り、制御源回路部18の上部には樹脂製コネクタ組立体13が設置されている。そして、樹脂製コネクタ組立体13は基板/コネクタ固定凸部26の頂部に設けられたねじ穴に制御回路部18を挟み込むようにして固定ねじ36によって固定されている。
【0060】
この状態で、図3に示すように樹脂製コネクタ組立体13が電力変換回路部16、電源回路部17、制御回路部18と接続されている。そして、樹脂製コネクタ組立体13側から金属カバー12が、制御回路部18、電源回路部17、電力変換回路部16を覆うようにして、モータハウジング11の端面部15に固定されるように構成されている。
【0061】
上述したように、この種の電子制御装置においては、パワーモジュールから延びる側接続端子と相手側接続端子とを挟みこみ治具等で挟み込むことなく、双方の接続端子の先端部同士が密着して接合することができる構成が求められている。このような課題に対応するべく、本実施形態では次のような構成を提案するものである。
【0062】
すなわち、本実施形態においては、電力変換回路部から延びる素子側接続端子が、相手側接続端子の延設方向に対して交わる方向に延びる第1接続端子片と、第1接続端子片が相手側接続端子に至る手前から相手側接続端子の延設方向に対して斜交する方向に弾性を付与されて折り曲げられ、相手側接続端子に所定の角度を有して弾性的に接触する第2接続端子片から構成されていると共に、この状態で相手側接続端子の先端側と第2接続端子片の先端側が電気的に接合されている構成とした。
【0063】
これによれば、電力変換回路部から延びる素子側接続端子が、相手側接続端子に所定の角度を有して弾性的に接触する第2接続端子片を備えているので、挟み込み治具等を使用することなく、相手側接続端子の先端側と第2接続端子片の先端側を接合することができる。
【0064】
次に、本実施形態の具体的な構成について説明する。まず、図10は本実施形態によって接続された電動モータのモータ巻線のモータ側接続端子(相手側接続端子)と電力変換回路部16の素子側接続端子が位置する付近の構成を示している。
【0065】
電動モータのステータ21に巻回されたモータ巻線20の入力となるモータ側接続端子38は、合成樹脂製の巻線ガイド39内を挿通されて端面部15Aから、電力変換回路部16側に引き出されている。巻線ガイド39は端面部15Aに形成された収納孔に配置されており、これによってモータ側接続端子38の位置決め、固定が行われている。
【0066】
電力変換回路部16は複数のパワースイッチング素子を備えており、これらは合成樹脂によってモールド成形されている。このため、合成樹脂で囲繞された電力変換回路部16からは、素子側接続端子40が引き出されている。この素子側接続端子40の先端側とモータ側接続端子38の先端側は電気的に接合されており、電力変換回路部16で制御された電力が、素子側接続端子40からモータ側接続端子38に供給されて電動モータが駆動されるものである。ここで、本実施形態では、素子側接続端子40の先端側とモータ側接続端子38の先端側は、TIG溶接によって電気的に接合されている。尚、ハンダによっても、素子側接続端子40の先端側とモータ側接続端子38の先端側を接合することができる。
【0067】
次に、図11、及び図12に基づき、電動モータのモータ巻線のモータ側接続端子38と電力変換回路部16のパワースイッチング素子の素子側接続端子40の構成を説明する。図11は、素子側接続端子40の先端側とモータ側接続端子38の先端側をTIG溶接で接合する前の状態を示し、図12は、素子側接続端子40の先端側とモータ側接続端子38の先端側をTIG溶接で接合する状態を示している。
【0068】
図11において、モータ側接続端子38は、回転軸23(図10参照)の軸線方向でモータハウジング11の端面部15Aから遠ざかる方向に延びるように延設されている。尚、この「延設」という意味は、接続端子の全部、或いは一部が所定方向に延びている状態を意味している。また、モータ側接続端子38の軸線に直交する断面形状は円形状に形成されており、モータ巻線自体から構成されている。
【0069】
一方、パワースイッチング素子が内蔵された電力変換回路部16から外側に延びる素子側接続端子40の軸線に直交する断面形状は矩形状に形成されており、モータ巻線からなるモータ側接続端子38とは線接触の状態となる。そして、素子側接続端子40は、TIG溶接する前の素子側接続端子40がモータ側接続端子38に接触していない状態では、以下のような形状となっている。
【0070】
つまり、素子側接続端子40は、モータ側接続端子38の延設方向に対して、直交して交わる方向に延びる第1接続端子片40Aと、この第1接続端子片40Aがモータ側接続端子38に至る所定距離Dより手前からモータ側接続端子38の延設方向(端面部15Aから遠ざかる方向)に対して、所定の角度θ1(第1接続端子片40Aと第2接続端子片40Bの折り曲げ側のなす角度)を有して斜交(斜めの角度をもってに交わる)する方向に弾性力を付与されて折り曲げられる第2接続端子片40Bから構成されている。
【0071】
ここで、所定距離Dは、モータ側接続端子38と素子側接続端子40の設置位置のばらつきより長い長さに設定されている。これによって、モータ側接続端子38と素子側接続端子40とが干渉することを避けることができる。尚、第1接続端子片40Aがモータ側接続端子38の延設方向と交わる方向は、厳密に直交する必要はなく、或る程度のばらつきは許容できるものである。したがって、以下では、直交することも含めて「交わる」という表記を使用することもある。
【0072】
ここで、第1接続端子片40Aと第2接続端子片40Bの間には、折り曲げ部40Cが形成されており、この折り曲げ部40Cを介して、第1接続端子片40Aと第2接続端子片40Bが連続して形成されている。したがって、第2接続端子片40Bの先端側40Tが自由状態なので、折り曲げ部40Cによって第2接続端子片40Bには弾性力が付与されることになる。
【0073】
次に、パワースイッチング素子が内蔵された電力変換回路部16から外側に延びる素子側接続端子40は、TIG溶接する時に素子側接続端子40がモータ側接続端子38に接触している状態では、以下のような形状となっている。
【0074】
つまり、素子側接続端子40の第2接続端子片40Bは、折り曲げ部40Cを起点としてモータ側接続端子38から離れる方向に変位するが、第2接続端子片40Bは折り曲げ部40Cによって弾性力を付与されているため、第2接続端子片40Bの先端側40Tは、所定の弾性力によってモータ側接続端子38に、所定の角度θ2(第1接続端子片40Aと第2接続端子片40Bの折り曲げ側のなす角度)を有して接触するようになる。ここで、所定の角度は、θ1>θ2の関係を有している。また、この場合、本実施形態では、第2接続端子片40Bの先端側40Tとモータ側接続端子38の接触部より端面部15A側は空間が形成されることになる。
【0075】
そして、TIG溶接する直前の状態では、素子側接続端子40の第2接続端子片40Bの先端側40Tは、モータ側接続端子38の先端側38Tとは常に所定の弾性力で接触している状態となる。この状態で、TIG溶接機の電極を第2接続端子片40Bの先端側40Tとモータ側接続端子38の先端側38Tの接触部に接近させて、TIG溶接することで、第2接続端子片40Bの先端側40Tとモータ側接続端子38の先端側38Tを接合することができる。
【0076】
このように、電力変換回路部16から延びる素子側接続端子40が、モータ側接続端子38に所定の角度θ2を有して弾性的に接触する第2接続端子片を備えているので、挟み込み治具等を使用することなく、第2接続端子片40Bの先端側40Tとモータ側接続端子38の先端側38Tを確実に接合することができる。
【0077】
また、このような構成を採用することによって、素子側接続端子40とモータ側接続端子38の設置位置のばらつきをさほど考慮する必要がないので、巻線の引き出し位置の精度を確保するために使用している巻線ガイド39を省略することもでき、製造単価を低減できる効果を奏することができる。
【0078】
次に、素子側接続端子の変形例を図13に基づき説明する。図12に示す素子側接続端子40は1回だけ折り曲げたものであるが、図13に示す素子側接続端子41は、先端側に近づく手前でモータ側接続端子38に向けて再度折り曲げた点で異なっている。
【0079】
図13において、モータ側接続端子38は、回転軸23(図10参照)の軸線方向でモータハウジング11の端面部15Aから遠ざかる方向に延びるように延設されている。一方、素子側接続端子41は、モータ側接続端子38の延設方向に対して、直交して交わる方向に延びる第1接続端子片41Aと、この第1接続端子片41Aがモータ側接続端子38に至る所定距離Dより手前からモータ側接続端子38の延設方向(端面部15Aから遠ざかる方向)に対して、所定の角度を有して斜交する方向に弾性力を付与されて折り曲げられる第2接続端子片41Bから構成されている。
【0080】
ここで、第1接続端子片41Aと第2接続端子片41Bの間には、第1折り曲げ部41Cが形成されており、この第1折り曲げ部40Cを介して、第1接続端子片41Aと第2接続端子片41Bが連続して形成されている。これは図12の構成と同様である。一方、変形例においては、更に、第2接続端子片41Bには、先端側41Tに至る前に、第2折り曲げ部41Dによってモータ側接続端子38の延設方向に向かって、所定の角度を有して折り曲げられた第3接続端子片41Eが形成されている。
【0081】
したがって、第2接続端子片41B、及び第3接続端子片41Eが自由状態なので、第1折り曲げ部41C、第2折り曲げ部41Dによって、第2接続端子片41B、第3接続端子片41Eには弾性力が付与されることになる。このため、第3接続端子片41Eの先端側41Tは、所定の弾性力によってモータ側接続端子38に、所定の角度を有して接触するようになる。この変形例でも、第3接続端子片41Eの先端側41Tとモータ側接続端子38の接触部より端面部15A側は空間が形成されることになる。
【0082】
この状態で、TIG溶接機の電極を第3接続端子片41Eの先端側41Tとモータ側接続端子38の先端側38Tの接触部に接近させて、TIG溶接することで、第3接続端子片41Eの先端側41Tとモータ側接続端子38の先端側38Tを確実に接合することができる。
【0083】
このように、電力変換回路部16から延びる素子側接続端子41が、モータ側接続端子38に所定の角度を有して弾性的に接触する第2接続端子片41B、及び第3接続端子片41Eを備えているので、挟み込み治具等を使用することなく、第3接続端子片41Eの先端側41Tとモータ側接続端子38の先端側38Tを確実に接合することができる。
【0084】
また、電力変換回路部16から引き出されている素子側接続端子41をモータ側接続端子38に接触するまでの間で2回(2回以上でも良い)に亘って折り曲げることで、素子側接続端子41から電力変換回路部16に入る荷重(応力)の影響を小さく抑えることができる。
【0085】
次に、TIG溶接する前の素子側接続端子41の長さの設定について説明する。図13において、第1接続端子片41Aの長さをLaとし、モータ側接続端子38の延設方向で見て、第2接続端子片41Bの長さをLbとし、第3接続端子片41Eの長さをLeとした時、これらは、「Lb>Le>La」の関係を有している。特に、第2接続端子片41Bの長さLbを長くしたので、第3接続端子片41Eからの荷重が第1接続端子片41Aに作用する時の荷重を緩衝することができるようになる。
【0086】
以上述べた通り、本発明は、パワーモジュールから延びる素子側接続端子が、相手側接続端子の延設方向に対して交わる方向に延びる第1接続端子片と、第1接続端子片が相手側接続端子に至る手前から相手側接続端子の延設方向に対して交わる方向に弾性を付与されて折り曲げられ、相手側接続端子に角度を有して弾性的に接触する第2接続端子片から構成されていると共に、この状態で相手側接続端子の先端側と第2接続端子片の先端側が電気的に接合されている構成とした。
【0087】
これによれば、パワーモジュールから延びる素子側接続端子が、相手側接続端子に角度を有して弾性的に接触する第2接続端子片を備えているので、挟み込み治具等を使用することなく、相手側接続端子の先端側と第2接続端子片の先端側を接合することができる。
【0088】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。