(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2019146327
(43)【公開日】20190829
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/08 20060101AFI20190802BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20190802BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20190802BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20190802BHJP
   B62D 137/00 20060101ALN20190802BHJP
【FI】
   !H02P27/08
   !B62D5/04
   !B62D6/00
   !B62D119:00
   !B62D137:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】2018027164
(22)【出願日】20180219
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区南船場3丁目5番8号
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松久 浩一郎
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区南船場3丁目5番8号 株式会社ジェイテクト内
(72)【発明者】
【氏名】須増 寛
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区南船場3丁目5番8号 株式会社ジェイテクト内
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
5H505
【Fターム(参考)】
3D232CC27
3D232DA15
3D232DA63
3D232DA64
3D232DA65
3D232DC08
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5H505HA01
5H505HA03
5H505HA09
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ12
5H505JJ24
5H505LL01
5H505LL22
5H505LL38
5H505LL41
5H505LL58
5H505PP01
(57)【要約】
【課題】コモンモードノイズを低減させることができるモータ制御装置を提供する。
【解決手段】モータ制御装置12は、電動モータ18に電力を供給するためのモータ駆動回路31と、ノイズキャンセル回路32と、制御部35とを含む。ノイズキャンセル回路32は、RLC回路41と、スイッチ素子42と、プルダウン抵抗43とを含む。RLC回路41の一端は、スイッチ素子42を介して、電源100の正極側端子に電気的に接続され、RLC回路41の他端はフレームグランド130に電気的に接続されている。RLC回路41とスイッチ素子42との接続点は、プルダウン抵抗43を介して電源100の負極端子に電気的に接続されている。制御部35は、モータ駆動回路31から出力される相電圧の立下りタイミングで、スイッチ素子42を所定時間だけオンさせる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源の負極端子が接続されたフレームグランドに接続された筐体を有する電動モータを制御するためのモータ制御回路であって、
前記電源に対してそれぞれ並列に接続され、複数の相毎に設けられた上段側スイッチング素子と下段側スイッチング素子との直列回路を含み、前記電動モータに電力を供給するための駆動回路と、
ノイズキャンセル回路と、
制御部とを含み、
前記ノイズキャンセル回路は、抵抗、コイルおよびコンデンサの直列回路からなるRLC回路と、スイッチ素子と、プルダウン抵抗とを含み、
前記RLC回路の一端は、前記スイッチ素子を介して、前記電源の正極側端子に電気的に接続され、前記RLC回路の他端は前記フレームグランドに電気的に接続されており、
前記RLC回路と前記スイッチ素子との接続点は、前記プルダウン抵抗を介して前記電源の負極端子に電気的に接続されており、
前記制御部は、前記駆動回路から出力される相電圧の立下りタイミングで、前記スイッチ素子を所定時間だけオンさせる、モータ制御回路。
【請求項2】
電源の負極端子が接続されたフレームグランドに接続された筐体を有する電動モータを制御するためのモータ制御回路であって、
前記電源に対してそれぞれ並列に接続され、複数の相毎に設けられた上段側スイッチング素子と下段側スイッチング素子との直列回路を含み、前記電動モータに電力を供給するための駆動回路と、
ノイズキャンセル回路と、
制御部とを含み、
前記ノイズキャンセル回路は、抵抗、コイルおよびコンデンサの直列回路からなるRLC回路と、スイッチ素子と、プルアップ抵抗とを含み、
前記RLC回路の一端は、前記スイッチ素子を介して、前記電源の負極側端子に電気的に接続され、前記RLC回路の他端は前記フレームグランドに接続されており、
前記RLC回路と前記スイッチ素子との接続点は、前記プルアップ抵抗を介して前記電源の正極端子に電気的に接続されており、
前記制御部は、前記駆動回路から出力される相電圧の立上りタイミングで、前記スイッチ素子を所定時間だけオンさせる、モータ制御回路。
【請求項3】
電源の負極端子が接続されたフレームグランドに接続された筐体を有する電動モータを制御するためのモータ制御回路であって、
前記電源に対してそれぞれ並列に接続され、複数の相毎に設けられた上段側スイッチング素子と下段側スイッチング素子との直列回路を含み、前記電動モータに電力を供給するための駆動回路と、
第1ノイズキャンセル回路と、
第2ノイズキャンセル回路と、
制御部とを含み、
前記第1ノイズキャンセル回路は、第1抵抗、第1コイルおよび第1コンデンサの直列回路からなる第1RLC回路と、第1スイッチ素子と、プルダウン抵抗とを含み、
前記第1RLC回路の一端は、前記第1スイッチ素子を介して、前記電源の正極側端子に電気的に接続され、前記第1RLC回路の他端は前記フレームグランドに電気的に接続されており、
前記第1RLC回路と前記第1スイッチ素子との接続点は、前記プルダウン抵抗を介して前記電源の負極端子に電気的に接続されており、
前記第2ノイズキャンセル回路は、第2抵抗、第2コイルおよび第2コンデンサの直列回路からなる第2RLC回路と、第2スイッチ素子と、プルアップ抵抗とを含み、
前記第2RLC回路の一端は、前記第2スイッチ素子を介して、前記電源の負極側端子に電気的に接続され、前記第2RLC回路の他端は前記フレームグランドに接続されており、
前記第2RLC回路と前記第2スイッチ素子との接続点は、前記プルアップ抵抗を介して前記電源の正極端子に電気的に接続されており、
前記制御部は、
前記駆動回路から出力される相電圧の立下りタイミングで、前記第1スイッチ素子を所定時間だけオンさせる手段と、
前記駆動回路から出力される相電圧の立上りタイミングで、前記第2スイッチ素子を所定時間だけオンさせる手段とを含む、モータ制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動モータをPWM(Pulse Width Modulation)駆動するためのモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三相電動モータをベクトル制御するモータ制御装置においては、電流制御周期毎に、二相電流指令値が演算される。この二相電流指令値と二相電流検出値との偏差に基づいて二相電圧指令値が演算される。この二相電圧指令値が電動モータの回転角を用いて二相・三相変換されることにより、U相、V相およびW相の相電圧指令値(三相電圧指令値)が演算される。そして、このU相、V相およびW相の相電圧指令値にそれぞれ対応するデューティのU相PWM信号、V相PWM信号およびW相PWM信号が生成されて、三相インバータ回路に供給される。
【0003】
この三相インバータ回路を構成する6個のスイッチング素子が、U相PWM信号、V相PWM信号およびW相PWM信号によって制御されることにより、三相電圧指令値に相当する電圧が三相電動モータに印加されることになる。これにより、三相電動モータに流れるモータ電流が二相電流指令値に等しくなるように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−50766号公報
【特許文献2】特開2016−100952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のようなモータ制御装置においては、各PWM周期において各相の出力電圧(相電圧)の立上り時点と立下り時点において、電源の負極端子が接続されるフレームグランドと三相電動モータとの間に存在する浮遊容量に電流が流れる。この電流がフレームグランドに流れるため、フレームグランドからノイズが放射されるおそれがある。また、車両に搭載される電動パワーステアリング装置(EPS)に搭載されるモータ制御装置の場合、車両電源(バッテリー)からEPSへの正負電源供給ラインが長いため、フレームグランドを流れたノイズ電流が、正負電源供給ラインとフレームグランドとの間にできる浮遊容量を通じて、車両電源の近傍で正負電源供給ラインに混入し、コモンモードノイズとなる。
【0006】
この発明の目的は、コモンモードノイズを低減させることができるモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、電源(100)の負極端子が接続されたフレームグランド(130)に接続された筐体を有する電動モータ(18)を制御するためのモータ制御回路(12)であって、前記電源に対してそれぞれ並列に接続され、複数の相毎に設けられた上段側スイッチング素子と下段側スイッチング素子との直列回路を含み、前記電動モータに電力を供給するための駆動回路(31)と、ノイズキャンセル回路(32)と、制御部(35)とを含み、前記ノイズキャンセル回路は、抵抗(R1)、コイル(L1)およびコンデンサ(C1)の直列回路からなるRLC回路(41)と、スイッチ素子(42)と、プルダウン抵抗(43)とを含み、前記RLC回路の一端は、前記スイッチ素子を介して、前記電源の正極側端子に電気的に接続され、前記RLC回路の他端は前記フレームグランドに電気的に接続されており、前記RLC回路と前記スイッチ素子との接続点は、前記プルダウン抵抗を介して前記電源の負極端子に電気的に接続されており、前記制御部は、前記駆動回路から出力される相電圧の立下りタイミングで、前記スイッチ素子を所定時間だけオンさせる、モータ制御回路である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
【0008】
この構成では、相電圧の立下りタイミングにおいて、フレームグランドから正負電源ラインに流れるコモンモード電流と逆位相の電流をノイズキャンセル回路から発生させることができるので、コモンモードノイズを抑制することができる。
請求項2に記載の発明は、電源(100)の負極端子が接続されたフレームグランド(130)に接続された筐体を有する電動モータ(18)を制御するためのモータ制御回路(12)であって、前記電源に対してそれぞれ並列に接続され、複数の相毎に設けられた上段側スイッチング素子と下段側スイッチング素子との直列回路を含み、前記電動モータに電力を供給するための駆動回路(31)と、ノイズキャンセル回路(33)と、制御部(35)とを含み、前記ノイズキャンセル回路は、抵抗(R2)、コイル(L2)およびコンデンサ(C2)の直列回路からなるRLC回路(51)と、スイッチ素子(52)と、プルアップ抵抗(53)とを含み、前記RLC回路の一端は、前記スイッチ素子を介して、前記電源の負極側端子に電気的に接続され、前記RLC回路の他端は前記フレームグランドに接続されており、前記RLC回路と前記スイッチ素子との接続点は、前記プルアップ抵抗を介して前記電源の正極端子に電気的に接続されており、前記制御部は、前記駆動回路から出力される相電圧の立上りタイミングで、前記スイッチ素子を所定時間だけオンさせる、モータ制御回路である。
【0009】
この構成では、相電圧の立上りタイミングにおいて、フレームグランドから正負電源ラインに流れるコモンモード電流と逆位相の電流をノイズキャンセル回路から発生させることができるので、コモンモードノイズを抑制することができる。
請求項3に記載の発明は、電源(100)の負極端子が接続されたフレームグランド(130)に接続された筐体を有する電動モータ(18)を制御するためのモータ制御回路(12)であって、前記電源に対してそれぞれ並列に接続され、複数の相毎に設けられた上段側スイッチング素子と下段側スイッチング素子との直列回路を含み、前記電動モータに電力を供給するための駆動回路(31)と、第1ノイズキャンセル回路(32)と、第2ノイズキャンセル回路(33)と、制御部(35)とを含み、前記第1ノイズキャンセル回路は、第1抵抗(R1)、第1コイル(L1)および第1コンデンサ(C1)の直列回路からなる第1RLC回路(41)と、第1スイッチ素子(42)と、プルダウン抵抗(43)とを含み、前記第1RLC回路の一端は、前記第1スイッチ素子を介して、前記電源の正極側端子に電気的に接続され、前記第1RLC回路の他端は前記フレームグランドに電気的に接続されており、前記第1RLC回路と前記第1スイッチ素子との接続点は、前記プルダウン抵抗を介して前記電源の負極端子に電気的に接続されており、前記第2ノイズキャンセル回路は、第2抵抗(R2)、第2コイル(L2)および第2コンデンサ(C2)の直列回路からなる第2RLC回路(51)と、第2スイッチ素子(52)と、プルアップ抵抗(53)とを含み、前記第2RLC回路の一端は、前記第2スイッチ素子を介して、前記電源の負極側端子に電気的に接続され、前記第2RLC回路の他端は前記フレームグランドに接続されており、前記第2RLC回路と前記第2スイッチ素子との接続点は、前記プルアップ抵抗を介して前記電源の正極端子に電気的に接続されており、前記制御部は、前記駆動回路から出力される相電圧の立下りタイミングで、前記第1スイッチ素子を所定時間だけオンさせる手段と、前記駆動回路から出力される相電圧の立上りタイミングで、前記第2スイッチ素子を所定時間だけオンさせる手段とを含む、モータ制御回路である。
【0010】
この構成では、相電圧の立下りタイミングにおいて、フレームグランドから正負電源ラインに流れるコモンモード電流と逆位相の電流を第1ノイズキャンセル回路から発生させることができ、相電圧の立上りタイミングにおいて、フレームグランドから正負電源ラインに流れるコモンモード電流と逆位相の電流を第2ノイズキャンセル回路から発生させることができる。これにより、コモンモードノイズを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、ECUの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、主としてインバータ制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】図4Aは、PWM信号の周期Tcと電流制御周期Taとの関係を示す模式図であり、図4Bはキャリア波形を示す波形図であり、図4CはPWM信号の生成方法を説明するための模式図である。
【図5】図5は、検出操舵トルクTに対するアシスト電流値Iaの設定例を示すグラフである。
【図6】図6は、PWM周期Tcにおける各部の信号を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、この発明を電動パワーステアリング装置に適用した場合の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
電動パワーステアリング装置(EPS:electric power steering)1は、車両を操向するための操舵部材としてのステアリングホイール2と、このステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
【0013】
ステアリングシャフト6は、ステアリングホイール2に連結された入力軸8と、中間軸7に連結された出力軸9とを含む。入力軸8と出力軸9とは、トーションバー10を介して相対回転可能に連結されている。
トーションバー10の近傍には、トルクセンサ11が配置されている。トルクセンサ11は、入力軸8および出力軸9の相対回転変位量に基づいて、ステアリングホイール2に与えられた操舵トルクTを検出する。この実施形態では、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクTは、たとえば、右方向への操舵のためのトルクが正の値として検出され、左方向への操舵のためのトルクが負の値として検出され、その絶対値が大きいほど操舵トルクの大きさが大きくなるものとする。
【0014】
転舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示略)を介して転舵輪3が連結されている。ピニオン軸13は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸13は、ステアリングホイール2の操舵に連動して回転するようになっている。ピニオン軸13の先端(図1では下端)には、ピニオン16が連結されている。
【0015】
ラック軸14は、自動車の左右方向に沿って直線状に延びている。ラック軸14の軸方向の中間部には、ピニオン16に噛み合うラック17が形成されている。このピニオン16およびラック17によって、ピニオン軸13の回転がラック軸14の軸方向移動に変換される。ラック軸14を軸方向に移動させることによって、転舵輪3を転舵することができる。
【0016】
ステアリングホイール2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して、ピニオン軸13に伝達される。そして、ピニオン軸13の回転は、ピニオン16およびラック17によって、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクを転舵機構4に伝達するための減速機構19とを含む。電動モータ18は、この実施形態では、三相ブラシレスモータである。電動モータ18には、電動モータ18のロータの回転角を検出するための、例えばレゾルバからなる回転角センサ23が配置されている。減速機構19は、ウォーム軸20と、このウォーム軸20と噛み合うウォームホイール21とを含むウォームギヤ機構からなる。
【0017】
ウォーム軸20は、電動モータ18によって回転駆動される。また、ウォームホイール21は、ステアリングシャフト6とは一体的に回転可能に連結されている。ウォームホイール21は、ウォーム軸20によって回転駆動される。
電動モータ18によってウォーム軸20が回転駆動されると、ウォームホイール21が回転駆動され、ステアリングシャフト6が回転する。そして、ステアリングシャフト6の回転は、中間軸7を介してピニオン軸13に伝達される。ピニオン軸13の回転は、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。すなわち、電動モータ18によってウォーム軸20を回転駆動することによって、電動モータ18による操舵補助が可能となっている。
【0018】
車両には、車速Vを検出するための車速センサ24が設けられている。トルクセンサ11によって検出される操舵トルクT、車速センサ24によって検出される車速V、回転角センサ23の出力信号等は、ECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)12に入力される。ECU12は、これらの入力信号に基づいて、電動モータ18を制御する。
【0019】
図2は、ECU12の全体的な電気的構成を示すブロック図である。
ECU12は、モータ駆動回路31と、第1ノイズキャンセル回路32と、第2ノイズキャンセル回路33と、インバータ制御部34と、キャンセル回路制御部35とを含んでいる。モータ駆動回路31は、電動モータ18に電力を供給するための回路である。モータ駆動回路31は、インバータ制御部34によって制御される。
【0020】
第1ノイズキャンセル回路32および第2ノイズキャンセル回路33は、コモンモードノイズを抑制するための回路である。第1ノイズキャンセル回路32および第2ノイズキャンセル回路33は、キャンセル回路制御部35によって制御される。
電動モータ18は、例えば三相ブラシレスモータであり、界磁としてのロータ(図示略)と、U相、V相およびW相のステータコイル18U,18V,18Wを含むステータとを備えている。
【0021】
モータ駆動回路31は、三相インバータ回路である。モータ駆動回路31は、電源(バッテリー)100に直列に接続された平滑コンデンサ101と、複数のスイッチング素子111〜116と、複数のダイオード121〜126とを含む。平滑コンデンサ101は、電源100の両端子間に接続されている。この実施形態では、各スイッチング素子111〜116は、nチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)から構成されている。以下において、スイッチング素子111〜116をFET111〜116という場合がある。
【0022】
複数のFET111〜116は、U相用の上段FET111と、それに直列に接続されたU相用の下段FET112と、V相用の上段FET113と、それに直列に接続されたV相用の下段FET114と、W相用の上段FET115と、それに直列に接続されたW相用の下段FET116とを含む。各スイッチング素子111〜116には、それぞれダイオード121〜126が逆並列接続されている。
【0023】
上段FET111,113,115のドレインは、平滑コンデンサ101の正極側端子に接続されている。上段FET111,113,115のソースは、それぞれ下段FET112,114,116のドレインに接続されている。下段FET112,114,116のソースは、平滑コンデンサ101の負極側端子に接続されている。
U相の上段FET111と下段FET112の接続点は、電動モータ18のU相ステータコイル18Uに接続されている。V相の上段FET113と下段FET114の接続点は、電動モータ18のV相ステータコイル18Vに接続されている。W相の上段FET115と下段FET116の接続点は、電動モータ18のW相ステータコイル18Wに接続されている。各FET111〜116は、後述するPWM出力部48(図3参照)から出力されるPWM信号に基づいて制御される。
【0024】
電源100は車両に搭載されている。電源100の負(−)極は、車両の金属性のフレーム(フレームグランド)130に電気的に接続されている。このため、フレーム130は、電源100の負極と同電位である。電動モータ18が搭載された電動パワーステアリング装置1はフレーム130にボルトなどで取り付けられる。ECUの+電源ライン、−電源ラインはそれぞれ長いラインを通じて電源100の正負極に接続される。電動モータ18の筐体はフレーム130に電気的に接続されている。電動モータ18のステータコイル18U,18V,18Wと筐体との間には、浮遊容量Cs1が存在する。したがって、電動モータ18とフレーム130との間には、浮遊容量Cs1が存在することになる。また、電源100と電動パワーステアリング装置1とを接続する+電源ライン131および−電源ライン132とフレーム130との間には浮遊容量Cs2,Cs3が存在する。
【0025】
第1ノイズキャンセル回路32は、第1RLC回路41と、第1スイッチ素子42と、プルダウン抵抗43とを含む。第1スイッチ素子42は、nチャネル型のMOSFETから構成されている。第1RLC回路41は、第1抵抗R1と第1コイルL1と第1コンデンサC1との直列回路からなる。第1コイルL1の一端に第1抵抗R1が接続され、第1コイルL1の他端に第1コンデンサC1が接続されている。
【0026】
第1RLC回路41の一端(第1抵抗R1側の端)は、第1スイッチ素子42を介して、+電源ライン131に電気的に接続され、第1RLC回路41の他端(第1コンデンサC1側の端)はフレーム130に電気的に接続されている。具体的には、第1スイッチ素子(MOSFET)42のドレインが+電源ライン131に電気的に接続され、第1スイッチ素子42のソースが第1RLC回路41の一端に電気的に接続されている。第1RLC回路41と第1スイッチ素子42との接続点(第1スイッチ素子42のソース)は、プルダウン抵抗43を介して−電源ライン132に電気的に接続されている。
【0027】
第2ノイズキャンセル回路33は、第2RLC回路51と、第2スイッチ素子52と、プルアップ抵抗53とを含む。第2スイッチ素子52は、nチャネル型のMOSFETから構成されている。第2RLC回路51は、第2抵抗R2と第2コイルL2と第2コンデンサC2との直列回路からなる。第2コイルL2の一端に第2抵抗R2が接続され、第2コイルL2の他端に第2コンデンサC2が接続されている。
【0028】
第2RLC回路51の一端(第2抵抗R2側の端)は、第2スイッチ素子52を介して、−電源ライン132に電気的に接続され、第2RLC回路51の他端(第1コンデンサC1側の端)はフレーム130に電気的に接続されている。具体的には、第2スイッチ素子(MOSFET)52のドレインが第2RLC回路51の一端に電気的に接続され、第2スイッチ素子52のソースが−電源ライン132に電気的に接続されている。第2RLC回路51と第2スイッチ素子52との接続点(第2スイッチ素子52のドレイン)は、プルアップ抵抗53を介して+電源ライン131に電気的に接続されている。
【0029】
図3は、主としてインバータ制御部34の構成を示すブロック図である。図3では、第1ノイズキャンセル回路32および第2ノイズキャンセル回路33は、省略されている。
モータ駆動回路31と電動モータ18とを接続するための電力供給線には、2つの電流センサ25,26が設けられている。これらの電流センサ25,26は、モータ駆動回路31と電動モータ18とを接続するための3本の電力供給線のうち、2本の電力供給線に流れる相電流を検出できるように設けられている。
【0030】
インバータ制御部34は、マイクロコンピュータによって構成されている。インバータ制御部34は、アシスト電流値設定部61と、電流指令値設定部62と、電流偏差演算部63と、PI(比例積分)制御部64と、二相・三相変換部65と、PWMデューティ演算部(PWM Duty演算部)66と、PWMカウント設定部67と、PWM出力部68と、三相・二相変換部69と、回転角演算部70と、回転速度演算部71と、回転角推定部72とが含まれる。
【0031】
図4Aに示すように、PWM信号の周期(以下、「PWM周期」という。)Tcは、電流制御周期Taよりも小さい。ここで、電流制御周期Taとは、モータ電流の制御ループの演算周期のことである。この電流制御周期Taはプログラムの規模やインバータ制御部34を構成するマイクロコンピュータの演算能力などを考慮して決まる。この実施形態では、今回の電流制御周期Ta内の最初のタイミングでPWMデューティ演算部66によりPWMデューティが更新され、更新されたPWMデューティCu、Cv、Cwが出力される。この実施形態では、TcはTaの1/10である。言い換えれば、電流制御周期Ta内に10周期分のPWM周期Tcが含まれる。なお、PWM信号の周波数(=1/Tc)は、キャリア周波数と呼ばれる。
【0032】
本実施形態でのPWM波形生成方法を説明する。インバータ制御部34内で、図示しないクロック発生器で生成されるPWMクロック周波数のクロックを図示しないカウンタでアップカウントおよびダウンカウントする。このカウンタのカウント値を、時間を横軸にとり、カウント値を縦軸にとって図示すると、図4Bに示すようになる。ここで、カウント値は符号なし整数と解釈する。また、カウント値をキャリアカウントと呼ぶ場合がある。この実施形態では、図4Bの波形がキャリア波形である。キャリア波形は三角波である。三角波の1周期はTcに等しい。キャリア波形の最大値、つまりカウント値の最大値により、PWM信号の周波数(キャリア周波数)が決定される。本実施形態では、PWMクロック周波数が100[MHz]であり、PWM信号の周波数(以下、「PWM周波数」という。)が100[kHz]と設定しているので、カウント値の最大値は、100,000,000÷100,000÷2=500となる。アップダウンカウントするため、100,000,000/100,000を、2で割っている。
【0033】
図4Cに示すように、PWM出力部68は、与えられるPWMカウントとカウンタのカウント値とを比較し、モータ駆動回路31に対して、High信号または Low信号を出力する。PWM出力部68は、例えば、カウンタのカウント値≧PWMカウントが成立している間はHigh信号(またはLow信号)を、それ以外はLow信号(またはHigh信号)を出力する。このHigh信号およびLow信号がPWM信号となる。
【0034】
一般的に、PWM周期Tc内の上段FETと下段FETのオンオフ状態の変化パターン(オンオフパターン)としては、次の2つのパターンがある。
第1オンオフパターン:キャリアカウント開始から見て、上段FETオン状態→下段FETオン状態→上段FETオン状態へと変化するパターン。
第2オンオフパターン:キャリアカウント開始から見て、下段FETオン状態→上段FETオン状態→下段FETオン状態へと変化するパターン。
【0035】
この実施形態では、U相、V相およびW相の上下段FETは、第2オンオフパターンとなるように制御されるものとする。
図3に戻り、回転角演算部70は、回転角センサ23の出力信号に基づいて、電動モータ18のロータの回転角θ(電気角)を電流制御周期Ta毎に演算する。回転角演算部70によって演算されるロータ回転角θは、三相・二相変換部69、回転速度演算部71および回転角推定部72に与えられる。この実施形態では、ロータ回転角θが取得(検出)されるタイミングは、電流制御周期Taの中央時点であるものとする。
【0036】
回転速度演算部71は、回転角演算部70によって演算されるロータ回転角θを時間微分することにより、電動モータ18のロータの回転速度(角速度)ωを演算する。回転速度演算部71によって演算される回転速度ωは、回転角推定部72に与えられる。
回転角推定部72は、前回の電流制御周期Taで取得された前回の電流制御周期Taの中央時点でのロータ回転角θ(m−1)を用いて、次式(1)に基づいて、次回の電流制御周期Taの中央時点でのロータ回転角θ(m+1)を推定する。
【0037】
θ(m+1)=θ(m−1)+ω・2Ta …(1)
回転角推定部72によって推定された次回の電流制御周期Taでのロータ回転角θ(m+1)は、二相・三相変換部65に与えられる。
アシスト電流値設定部61は、トルクセンサ11によって検出される検出操舵トルクTと、車速センサ24によって検出される車速Vとに基づいて、アシスト電流値Iaを電流制御周期Ta毎に設定する。検出操舵トルクTに対するアシスト電流値Iaの設定例は、図5に示されている。検出操舵トルクTは、例えば右方向への操舵のためのトルクが正の値にとられ、左方向への操舵のためのトルクが負の値にとられている。また、アシスト電流値Iaは、電動モータ18から右方向操舵のための操舵補助力を発生させるべきときには正の値とされ、電動モータ18から左方向操舵のための操舵補助力を発生させるべきときには負の値とされる。アシスト電流値Iaは、検出操舵トルクTの正の値に対しては正をとり、検出操舵トルクTの負の値に対しては負をとる。
【0038】
検出操舵トルクTが−T1〜T1(たとえば、T1=0.4N・m)の範囲(トルク不感帯)の微小な値のときには、アシスト電流値Iaは零とされる。そして、検出操舵トルクTが−T1〜T1の範囲外の値である場合には、アシスト電流値Iaは、検出操舵トルクTの絶対値が大きくなるほど、その絶対値が大きくなるように設定される。また、アシスト電流値Iaは、車速センサ24によって検出される車速Vが大きいほど、その絶対値が小さくなるように設定されるようになっている。これにより、低速走行時には操舵補助力が大きくされ、高速走行時には操舵補助力が小さくされる。
【0039】
電流指令値設定部62は、アシスト電流値設定部61によって設定されたアシスト電流値Iaに基づいて、dq座標系の座標軸に流すべき電流値を電流指令値として設定する。具体的には、電流指令値設定部62は、d軸電流指令値Iおよびq軸電流指令値I(以下、これらを総称するときには「二相電流指令値Idq」という。)を設定する。さらに具体的には、電流指令値設定部62は、q軸電流指令値Iをアシスト電流値設定部61によって設定されたアシスト電流値Iaとする一方で、d軸電流指令値Iを零とする。電流指令値設定部62によって設定された二相電流指令値Idqは、電流偏差演算部63に与えられる。
【0040】
三相・二相変換部69は、まず、電流センサ25,26によって検出される2相分の相電流から、U相電流I、V相電流IおよびW相電流I(以下、これらを総称するときは、「三相検出電流IUVW」という。)を演算する。そして、三相・二相変換部69は、UVW座標系の三相検出電流IUVWを、dq座標系の二相検出電流Idqに座標変換する。二相検出電流Idqは、d軸検出電流Iおよびq軸検出電流Iからなる。この座標変換には、回転角演算部70によって演算されるロータ回転角θが用いられる。
【0041】
電流偏差演算部63は、d軸電流指令値Iに対するd軸検出電流Iの偏差およびq軸電流指令値Iに対するq軸検出電流Iの偏差を演算する。これらの偏差は、PI制御部64に与えられる。
PI制御部64は、電流偏差演算部63によって演算された電流偏差に対するPI演算を行なうことにより、電動モータ18に印加すべき二相電圧指令値Vdq(d軸電圧指令値Vおよびq軸電圧指令値V)を生成する。この二相電圧指令値Vdqは、二相・三相変換部65に与えられる。
【0042】
二相・三相変換部65は、今回の電流制御周期TaにおいてPI制御部64によって演算された二相電圧指令値Vdqに対して、今回の電流制御周期Taにおいて回転角推定部72によって演算された次回の電流制御周期Taに対する回転角推定値θ(m+1)を用いて二相・三相変換を行うことにより、次回の電流制御周期Taに対する三相電圧指令値VUVWを演算する。三相電圧指令値VUVWは、U相電圧指令値V、V相電圧指令値VおよびW相電圧指令値Vからなる。これにより、次回の電流制御周期Taに対する三相電圧指令値VUVWが得られる。
【0043】
二相・三相変換部65によって得られた次回の電流制御周期Taに対する三相電圧指令値VUVWは、PWMデューティ演算部66に与えられる。
PWMデューティ演算部66は、次回の電流制御周期Taに対する三相電圧指令値VUVWに基づいて、次回の電流制御周期Taに対するU相PWMカウント(PWMデューティ)、V相PWMカウントおよびW相PWMカウントを生成して、PWMカウント設定部67に与える。
【0044】
この実施形態では、各相の上下段FETは第2オンオフパターンとなるように制御される。したがって、U相のPWMカウントは、例えば次のようにして求められる。すなわち、PWMデューティ演算部66は、二相・三相変換部65によって得られたある電流制御周期Taに対するU相電圧指令値Vと、PWM最大カウント数Cmaxとを用いて、次式(2)に基づいて、当該電流制御周期Taに対するU相PWMカウントCuを演算する。
【0045】
Cu=PWMカウントの最大値−{V×(PWMカウントの最大値/Vb)}
=PWMカウントの最大値−{V×(500/Vb)} …(2)
前記式(2)においてVbは、モータ駆動回路31の電源電圧(電源100の出力電圧)である。
V相PWMカウントCvは、前記式(2)の右辺のU相電圧指令値Vの代わりにV相電圧指令値Vを用いることによって演算することができる。また、W相PWMカウントCwは、前記式(2)の右辺のU相電圧指令値Vの代わりにW相電圧指令値Vを用いることによって演算することができる。
【0046】
PWMカウント設定部67は、PWMデューティ演算部66から与えられる次回の電流制御周期Taに対するU相、V相およびW相のPWMカウントCu、CvおよびCwを、次回の電流制御周期Ta内の各PWM周期Tcに対するU相、V相およびW相のPWMカウントCu、CvおよびCwとして設定する。PWMカウント設定部67によって設定された、次回の電流制御周期Ta内の各PWM周期Tcに対するU相PWMカウント、V相PWMカウントおよびW相PWMカウントは、PWM出力部68に与えられるとともに、キャンセル回路制御部35(図2参照)に与えられる。
【0047】
PWM出力部68は、PWMカウント設定部67から与えられる電流制御周期Ta内の各PWM周期Tcに対するU相PWMカウント、V相PWMカウントおよびW相PWMカウントを、複数の電流制御周期分にわたって記憶している。PWM出力部68は、前回の電流制御周期TaにおいてPWMカウント設定部67から与えられた今回の電流制御周期Ta内の各PWM周期Tcに対するU相PWMカウント、V相PWMカウントおよびW相PWMカウントに基づいて、今回の電流制御周期Ta内の各PWM周期Tcに対するU相PWM信号、V相PWM信号およびW相PWM信号を生成して、モータ駆動回路31に供給する。具体的には、PWM出力部68は、今回の電流制御周期Ta内のPWM周期Tc毎に、当該電流制御周期Ta内の各PWM周期Tcに対するU相PWMカウント、V相PWMカウントおよびW相PWMカウントにそれぞれ対応するデューティのU相PWM信号、V相PWM信号およびW相PWM信号を生成して、モータ駆動回路31に供給する。
【0048】
モータ駆動回路31を構成する6つのFET111〜116がPWM出力部68から与えられるPWM信号によって制御されることにより、PWM周期Tc毎の三相電圧指令値VUVWに相当する電圧が電動モータ18の各相のステータコイル18U,18V,18Wに印加されることになる。
電流偏差演算部63およびPI制御部64は、電流フィードバック制御手段を構成している。この電流フィードバック制御手段の働きによって、電動モータ18に流れるモータ電流が、電流指令値設定部62によって設定された二相電流指令値Idqに近づくように制御される。
【0049】
図2に戻り、キャンセル回路制御部35について説明する。
キャンセル回路制御部35は、マイクロコンピュータから構成される。なお、インバータ制御部34およびキャンセル回路制御部35は、1つのマイクロコンピュータから構成されてもよい。キャンセル回路制御部35は、PWMカウント設定部67から与えられる電流制御周期Ta内の各PWM周期Tcに対するU相PWMカウント、V相PWMカウントおよびW相PWMカウントを、複数の電流制御周期分にわたって記憶している。
【0050】
キャンセル回路制御部35は、前回の電流制御周期TaにおいてPWMカウント設定部67から与えられた今回の電流制御周期Ta内の各PWM周期Tcに対するU相PWMカウント、V相PWMカウントおよびW相PWMカウントに基づいて、各相電圧(U相電圧、V相電圧またはW相電圧)の立上りタイミングおよび各相電圧の立下りタイミングを検出する。そして、キャンセル回路制御部35は、今回の電流制御周期Ta内の各PWM周期Tcにおいて、モータ駆動回路31から出力される各相電圧の立上りタイミングで、第2ノイズキャンセル回路33内の第2スイッチ素子52を所定時間だけオンさせる。また、キャンセル回路制御部35は、今回の電流制御周期Ta内の各PWM周期Tcにおいて、モータ駆動回路31から出力される各相電圧の立下りタイミングで、第1ノイズキャンセル回路32内の第1スイッチ素子42を所定時間だけオンさせる。
【0051】
図6は、PWM周期Tcにおける各部の信号を示すタイムチャートである。
以下の説明において、フレーム130に電流を流す方向を+方向といい、フレーム130から電流を引き込む方向を−方向ということにする。
図6の例では、時点t1においてU相電圧Vuが立上り、時点t6においてU相電圧Vuが立下っている(図6(a)参照)。また、時点t2において、V相電圧Vvが立上り、時点t5においてV相電圧Vvが立下っている(図6(b)参照)。また、時点t3において、W相電圧Vwが立上り、時点t4においてW相電圧Vwが立下っている(図6(c)参照)。
【0052】
したがって、各相電圧の立ち上がりタイミングt1,t2,t3では、電動モータ18とフレーム130との間に存在する浮遊容量Cs1(図2参照)に、図6(d)に示すようなコモンモード電流(+方向の電流)が流れる。
キャンセル回路制御部35によって、各相電圧の立上りタイミングt1,t2,t3に、第2ノイズキャンセル回路33内の第2スイッチ素子52が所定時間だけオンされる。つまり、図6(h)に示すように、各相電圧の立上りタイミングt1,t2,t3に、第2スイッチ素子52のゲートにゲート電圧が所定時間だけ印可される。これにより、第2スイッチ素子52のドレイン電圧は、図6(i)のように変化する。すなわち、第2スイッチ素子52のドレイン電圧は、各相電圧の立上りタイミングt1,t2,t3で立下り、所定時間後に緩やかに立上る。第2スイッチ素子52のオフ時に第2スイッチ素子52のドレイン電圧が緩やかに立下るのは、第2スイッチ素子52のオフ時に、プルアップ抵抗53を介して第2コンデンサC2が充電されるためである。
【0053】
これにより、時点t1,t2,t3で電動モータ18から浮遊容量Cs1を介してフレーム130に流れる+方向の電流は、フレーム130から第2RLC回路51を介して流れる−方向の電流となり、さらに第2スイッチ素子52を介して電動モータ18に流れる。これにより、電源ライン131,132とフレーム130との間の浮遊容量Cs2,Cs3に流れるコモンモード電流を抑制することができる。また、第2スイッチ素子52のオフ時には、第2スイッチ素子52のドレイン電圧は緩やかに立上るため、第2スイッチ素子52のオフ時にノイズが発生するのを抑制できる。
【0054】
言い換えれば、各相電圧の立上りタイミングt1,t2,t3において、フレーム130から正負電源ライン131,132に流れるコモンモード電流と逆位相のノイズキャンセル電流(図6(e)参照)が、第2ノイズキャンセル回路33から発生する。これにより、コモンモードノイズが抑制される。
一方、各相の立下りタイミングt4,t5,t6では、電動モータ18とフレーム130との間に存在する浮遊容量Cs1(図2参照)に、図6(d)に示すようなコモンモード電流(−方向の電流)が流れる。
【0055】
キャンセル回路制御部35によって、各相電圧の立下りタイミングt4,t5,t6に、第1ノイズキャンセル回路32内の第1スイッチ素子42が所定時間だけオンされる。つまり、図6(f)に示すように、各相電圧の立下りタイミングt4,t5,t6に、第1スイッチ素子42のゲートにゲート電圧が所定時間だけ印可される。これにより、第1スイッチ素子42のソース電圧は、図6(g)のように変化する。すなわち、第1スイッチ素子42のソース電圧は、各相電圧の立下りタイミングt4,t5,t6で立上り、所定時間後に緩やかに立下がる。第1スイッチ素子42のオフ時に第1スイッチ素子42のソース電圧が緩やかに立下るのは、第1スイッチ素子42のオフ時に、第1コンデンサC1の電荷がプルダウン抵抗43を介して放電されるためである。
【0056】
これにより、時点t4,t5,t6でフレーム130から浮遊容量Cs1を介して電動モータ18に流れた−方向の電流は、モータ駆動回路31、第1スイッチ素子42、第1RLC回路41を介してフレーム130に+方向の電流となって流れる。これにより、電源ライン131,132とフレーム130との間の浮遊容量Cs2,Cs3に流れるコモンモード電流を抑制することができる。また、第1スイッチ素子42のオフ時には、第1スイッチ素子42のドレイン電圧は緩やかに立下るため、第1スイッチ素子42のオフ時にノイズが発生するのを抑制できる。
【0057】
言い換えれば、各相電圧の立下りタイミングt4,t5,t6において、フレーム130から正負電源ライン131,132に流れるコモンモード電流と逆位相のノイズキャンセル電流(図6(e)参照)が、第1ノイズキャンセル回路32から発生する。これにより、コモンモードノイズが抑制される。
なお、電流制御周期内の各PWM周期において、U相電圧、V相電圧およびW相電圧のうち、2以上の相電圧の立上りタイミングまたは立下りタイミングが重なるような場合には、それらが重ならないように、PWMカウントを調整することが好ましい。例えば、電流制御周期単位のU相のPWMカウントと、V相のPWMカウントとが同じ場合には、これらの相電圧の立上りタイミングおよび立下りタイミングが重なることになる。そこで、このような場合には、例えば、当該電流制御周期内でのPWM周期単位のU相のPWMカウントの合計値を変更することなく、当該電流制御周期内での各PWM周期単位でのU相のPWMカウントをV相のPWMカウントとは異なる値となるように調整すればよい。
【0058】
前記実施形態では、この発明を電動パワーステアリング装置のモータ制御装置に適用した場合について説明したが、この発明は、電動パワーステアリング装置以外に用いられるモータ制御装置にも適用することができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…電動パワーステアリング装置、12…ECU、18…電動モータ、31…モータ駆動回路、32…第1ノイズキャンセル回路、33…第2ノイズキャンセル回路、34…インバータ制御部、35…キャンセル回路制御部、41…第1RLC回路、42…第1スイッチ素子、43…プルダウン抵抗、51…第2RLC回路、52…第2スイッチ素子、53…プルアップ抵抗、100…電源、111〜116…スイッチング素子、130…フレーム(フレームグランド)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】