(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2019146463
(43)【公開日】20190829
(54)【発明の名称】回転電機のロータ、回転電機、及び回転電機のロータ製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20190802BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20190802BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20190802BHJP
【FI】
   !H02K1/27 501B
   !H02K15/02 K
   !H02K15/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】2018031362
(22)【出願日】20180223
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】八釼 学
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内
(72)【発明者】
【氏名】久保田 芳永
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内
【テーマコード(参考)】
5H615
5H622
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615SS19
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CB05
5H622PP10
5H622PP20
(57)【要約】
【課題】トルク密度を向上可能な回転電機のロータ及び回転電機を提供する。
【解決手段】第1回転電機11は、回転軸方向に延在する永久磁石31を収容する磁石スロット29が周方向に沿って複数設けられたロータコア25と、ロータコア25の回転軸方向端部にそれぞれ設けられた一対の端面板27と、を備える。第1回転電機11において、ロータコア25の磁石スロット29に対する永久磁石31の位置決めは、端面板27に設けられた穴部37に、永久磁石31の一方の端部に接合された中間部材35が嵌り合うことで、永久磁石31の一方の端部を、中間部材35を介して端面板27に位置決めすることで遂行される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸方向に延在する永久磁石を収容する磁石スロットが周方向に沿って複数設けられたロータコアと、

前記ロータコアの回転軸方向端部にそれぞれ設けられた一対の端面板と、を備える回転電機のロータであって、 前記磁石スロットのうち前記永久磁石の内径側壁部が対面する部位には、該内径側壁部の形状に沿う連続壁部が形成され、
前記永久磁石の回転軸方向端部の少なくとも一方には、前記ロータコアに係る比透磁率と比べて低い比透磁率を呈する中間部材が接合され、
前記一対の端面板のうち、前記永久磁石の回転軸方向端部の少なくとも一方に対面する側の端面板には、前記中間部材が嵌り合う穴部が設けられ、
前記磁石スロットの連続壁部に前記永久磁石の内径側壁部が当接した状態で前記磁石スロットに前記永久磁石が収容されると共に、前記穴部に前記中間部材が嵌り合うことで、前記永久磁石の前記一方の回転軸方向端部が、前記中間部材を介して当該一方に対面する側の端面板に位置決めされる
ことを特徴とする回転電機のロータ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機のロータであって、
前記永久磁石の回転軸方向端部の両方には、前記中間部材がそれぞれ接合され、
前記一対の端面板のそれぞれには、前記中間部材が嵌り合う穴部が設けられ、
前記穴部に前記中間部材が嵌り合うことで、前記永久磁石の両方の回転軸方向端部が、前記中間部材を介して前記一対の端面板のそれぞれに位置決めされる
ことを特徴とする回転電機のロータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機のロータであって、
前記磁石スロットに前記永久磁石が収容された際に前記磁石スロットと前記永久磁石との間に生じる空隙には、耐熱性樹脂が充填されている
ことを特徴とする回転電機のロータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転電機のロータであって、
前記中間部材の材質は、アルミニウム、芳香族ポリエーテルケトン、PA6樹脂のいずれか一又はこれらの組み合わせに係る材質が選択される
ことを特徴とする回転電機のロータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転電機のロータと、
コイルが設けられたステータコアを有する円筒状のステータと、を備える
ことを特徴とする回転電機。
【請求項6】
回転軸方向に延在する永久磁石を収容する磁石スロットが、周方向に沿って複数設けられたロータコアと、前記ロータコアの回転軸方向端部にそれぞれ設けられた一対の端面板と、を備える回転電機のロータ製造方法であって、
前記磁石スロットのうち前記永久磁石の内径側壁部が対面する部位には、該内径側壁部の形状に沿う連続壁部が形成され、
前記永久磁石の回転軸方向端部の少なくとも一方には、前記ロータコアに係る比透磁率と比べて低い比透磁率を呈する中間部材が接合され、
前記一対の端面板のうち、前記永久磁石の回転軸方向端部の少なくとも一方に対面する側の端面板には、前記中間部材が嵌り合う穴部が設けられており、
前記ロータコアに備わる前記磁石スロットと、前記一方に対面する側の端面板に設けられた前記穴部との相対位置関係を整合させる工程と、
前記相対位置関係を整合させる工程の後、前記磁石スロットの連続壁部に前記永久磁石の内径側壁部を当接させた状態で、前記中間部材が接合された永久磁石を、当該中間部材の側を先頭に向けて前記磁石スロットに挿通させると共に、当該中間部材を前記穴部に嵌め込む工程と、
前記中間部材を前記穴部に嵌め込む工程の後、前記磁石スロットに前記永久磁石が収容された際に前記磁石スロットと前記永久磁石との間に生じる空隙に耐熱性樹脂を充填する工程と、を有し、
前記穴部に前記中間部材が嵌り合うことで、前記永久磁石の前記一方の回転軸方向端部が、前記中間部材を介して当該一方に対面する側の端面板に位置決めされた状態で、前記磁石スロットと前記永久磁石との間に生じる空隙に耐熱性樹脂を充填することで、前記磁石スロットに対して前記永久磁石が固定される、
ことを特徴とする回転電機のロータ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク密度を向上可能な回転電機のロータ、回転電機、及び回転電機のロータ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会の実現に向けた取り組みとして、車両の駆動源である内燃機関に加えて又は代えて、回転電機を搭載した車両が普及している。ハイブリッド自動車(Hybrid Electric Vehicle)や電気自動車(Electric Vehicle)と呼ばれる車両がそれである。
【0003】
回転電機は、例えば、円環状のステータ、及び円筒状のロータを備えて構成されている。ステータは、ステータコアに備わる複数のスロットに、ステータコイルをそれぞれ設けて構成される。ロータは、ステータの内周面に対して僅かな空隙を隔てて回動自在に設けられる。ロータには、回転軸が設けられる。ロータに備わるロータコアには、周方向に等しい間隔を置いて複数の磁石挿入孔が設けられている。
【0004】
複数の磁石挿入孔のそれぞれには、例えば特許文献1に示すように、矩形棒状の永久磁石が埋設される。永久磁石は、磁石挿入孔に備わる位置決め部によって長手方向に直交する方向への設置位置が規制される。
【0005】
回転電機では、その運転時に、銅損(ステータコイルの電気抵抗による損失)、鉄損(ステータコア等の磁性材料の磁気特性による損失)、機械損(摩擦等の機械的要因による損失)を含む様々な損失が生じて発熱する。回転電機が発熱すると、ロータコア及び永久磁石の線膨張係数の相違に基いて、永久磁石の角部に応力が働く。また、回転電機が高速回転した際にも、永久磁石に作用する遠心力によって、永久磁石の角部に応力が働く。
【0006】
こうした永久磁石の角部に働く応力を緩和するために、永久磁石の角部に対応する磁石挿入孔の部位(位置決め部)には、R形状の逃げ部(特許文献1の段落番号0039に記載の「穴空間257b1,257b2」、及び特許文献1の図5参照)が設けられている。
【0007】
特許文献1に係る回転電機(永久磁石の角部に対応する磁石挿入孔の部位に、R形状の逃げ部が備わる)のロータ構造によれば、永久磁石の角部に働く応力を緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2015/076045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に係る回転電機のロータ構造(R形状の逃げ部)を採用した場合、次のような不具合が生じる。すなわち、永久磁石の角部付近では、R形状の逃げ部によって、永久磁石とロータコアとの間に空隙が生じている。こうした空隙が永久磁石とロータコアとの間に介在していると、この空隙の影響によって磁気抵抗が増大して、トルク密度の減少を招くおそれがあった。
【0010】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、トルク密度を向上可能な回転電機のロータ及び回転電機を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、トルク密度を向上可能な回転電機のロータ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、回転軸方向に延在する永久磁石を収容する磁石スロットが周方向に沿って複数設けられたロータコアと、前記ロータコアの回転軸方向端部にそれぞれ設けられた一対の端面板と、を備える回転電機のロータであって、前記磁石スロットのうち前記永久磁石の内径側壁部が対面する部位には、該内径側壁部の形状に沿う連続壁部が形成され、前記永久磁石の回転軸方向端部の少なくとも一方には、前記ロータコアに係る比透磁率と比べて低い比透磁率を呈する中間部材が接合され、前記一対の端面板のうち、前記永久磁石の回転軸方向端部の少なくとも一方に対面する側の端面板には、前記中間部材が嵌り合う穴部が設けられ、前記磁石スロットの連続壁部に前記永久磁石の内径側壁部が当接した状態で前記磁石スロットに前記永久磁石が収容されると共に、前記穴部に前記中間部材が嵌り合うことで、前記永久磁石の前記一方の回転軸方向端部が、前記中間部材を介して当該一方に対面する側の端面板に位置決めされることを最も主要な特徴とする。
【0013】
請求項1に係る発明では、磁石スロットの連続壁部に永久磁石の内径側壁部が当接した状態で永久磁石が磁石スロットに収容される。永久磁石とロータコア(の磁石スロット)との間には、実質的に空隙が生じていない。ロータコアに対する永久磁石の位置決めは、端面板に設けられた穴部に、永久磁石の一方の端部に設けた中間部材が嵌り合うことで、永久磁石の一方の端部を、中間部材を介して端面板に位置決めすることによって遂行される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トルク密度を向上可能な回転電機のロータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】本発明の第1実施形態に係る第1回転電機の全体構成を表す正面図である。
【図1B】図1Aに示す第1回転電機のうち、ロータコアの磁石スロットに設けた永久磁石の周辺を拡大して表す図である。
【図2】第1回転電機の一部を表す縦断面図である。
【図3A】第1回転電機のロータに備わる端面板に設けられた穴部と、中間部材との相対位置関係を整合させた状態を表す斜視図である。
【図3B】図3Aに示す端面板に設けられた穴部と、中間部材と、中間部材が接合される永久磁石との相対位置関係を概念的に拡大して表す斜視図である。
【図4】第1回転電機11のロータ製造方法を表す工程図である。
【図5A】本発明の第2実施形態に係る第2回転電機の全体構成を表す正面図である。
【図5B】図5Aに示す第2回転電機のうち、ロータコアの磁石スロットに設けた永久磁石の周辺を拡大して表す図である。
【図6】第2回転電機のロータに備わる端面板に設けられた穴部と、中間部材との相対位置関係を整合させた状態を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る回転電機のロータ、回転電機、及び回転電機のロータ製造方法について、適宜の図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
なお、以下に示す図面において、同一の部材又は対応する部材間には同一の参照符号を付するものとする。また、部材のサイズ及び形状は、説明の便宜のため、変形または誇張して模式的に表す場合がある。
〔本発明の第1実施形態に係る第1回転電機11の構成〕
はじめに、本発明の第1実施形態に係る第1回転電機11について、図1A,図1B,図2を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る第1回転電機11の全体構成を表す正面図である。図1Bは、図1Aに示す第1回転電機11のうち、ロータコア25の磁石スロットに設けた永久磁石の周辺を拡大して表す図である。図2は、第1回転電機11の一部を表す縦断面図である。
【0019】
本発明の第1実施形態に係る第1回転電機11は、図1A,図2に示すように、円環状のステータ13と、回転軸15に設けられたロータ17と、を備えて構成されている。
【0020】
円筒状の外周面を有するステータ13は、図2に示すように、円筒状の内部空間を有する筐体19の内周面に取り付けられる。筐体19の側壁19a,19bには、一対の軸受20a,20bをそれぞれ介して、ロータ17の回転軸15が軸支される。ステータ13は、ステータコア21と、ステータコア21に設けられたステータコイル23とを有して構成される。
【0021】
ステータコア21は、図1A,図2に示すように、全体として円筒状に形成される。ステータコア21は、例えば、円環状に形成された複数の電磁鋼鈑を軸方向に積層して構成される。図1A,図1Bに示すように、ステータコア21に備わる複数のスロット22の各々には、ステータコイル23が設けられている。
【0022】
ロータ17は、図1A,図2に示すように、ステータ13の内径側に存する中空部に、僅かな空隙G(図2参照)を介して回転自在に設けられる。ロータ17は、図2に示すように、ロータコア25と、一対の端面板(第1端面板27a及び第2端面板27b)27と、を有する。第1端面板27a及び第2端面板27bは、例えば、非磁性ステンレス鋼(SUS305)、アルミニウム等の非磁性金属材料によって形成される。
【0023】
以下において、第1端面板27a及び第2端面板27bを総称する際には、単に「端面板27」と呼ぶ場合がある。
【0024】
ロータコア25は、図1A,図2に示すように、全体として円筒状に形成されている。ロータコア25は、例えば、円環状に形成された複数の電磁鋼鈑25a(図2参照)を軸方向に積層して構成すればよい。
【0025】
ロータコア25には、図1A,図1B,及び図2に示すように、軸方向(図1A,図2参照)に貫通する複数組の磁石スロット29が、周方向(図1A参照)に等しい間隔を置いて設けられている。磁石スロット29には、永久磁石31が挿入固定される。一組の磁石スロット29の横断面は、例えば、ロータコア25の径方向(図1A,図1B参照)外側に向かって開く略V字状に形成されている。
【0026】
第1回転電機11では、ステータコイル23にモータ電流を流すと、ステータ13に回転磁界が発生する。こうしてステータ13に発生した回転磁界と、ロータコア25の磁石スロット29に設けた永久磁石31(図1B参照)による磁界と、が相互作用することによって、ロータ17が回転駆動される。
【0027】
一組の磁石スロット29は、図1Bに示すように、3つのスロット(第1スロット29a,第2スロット29b,第3スロット29c)を組み合わせて構成されている。以下において、第1スロット29a,第2スロット29b,及び第3スロット29cを総称する際には、単に「磁石スロット29」と呼ぶ場合がある。
【0028】
磁石スロット29を構成する第1スロット29a,第2スロット29b,第3スロット29cのそれぞれには、図1Bに示すように、矩形棒状の一組の永久磁石(第1磁石31a,第2磁石31b,第3磁石31c)が挿入されている。以下において、第1磁石31a,第2磁石31b,及び第3磁石31cを総称する際には、単に「永久磁石31」と呼ぶ場合がある。
【0029】
永久磁石31としては、特に限定されないが、高トルク密度化を狙って、例えば、高磁気特性を有するネオジム磁石等の希土類磁石を好適に用いることができる。
【0030】
永久磁石31の長さは、ロータコア25の軸方向(図2参照)全長と同等の長さに設定されている。
【0031】
ロータコア25では、一組の磁石スロット29及び永久磁石31によって、磁極部33が構成されている。

磁石スロット29の一部を構成する第1スロット29aのうち、第1磁石31aの内径側壁部31a1が対面する部位には、図1Bに示すように、該内径側壁部31a1の形状に沿う第1連続壁部29a1が形成されている。また、第1磁石31aの磁化方向(径方向)において、第1磁石31aの寸法は、第1スロット29aの最小寸法と同等か、又は僅かに小さい値に設定されている。
【0032】
これにより、第1スロット29aに収容された際に、第1磁石31aの内径側壁部31a1は、第1スロット29aの第1連続壁部29a1に対し、実質的に密着するように構成されている。
【0033】
前記と同様、磁石スロット29の一部を構成する第2スロット29bのうち、第2磁石31bの内径側壁部31b1が対面する部位には、図1Bに示すように、該内径側壁部31b1の形状に沿う第2連続壁部29b1が形成されている。また、第2磁石31bの磁化方向において、第2磁石31bの寸法は、第2スロット29bの最小寸法と同等か、又は僅かに小さい値に設定されている。
【0034】
同様に、磁石スロット29の一部を構成する第3スロット29cのうち、第3磁石31cの内径側壁部31c1が対面する部位には、図1Bに示すように、該内径側壁部31c1の形状に沿う第3連続壁部29c1が形成されている。また、第3磁石31cの磁化方向において、第3磁石31cの寸法は、第3スロット29cの最小寸法と同等か、又は僅かに小さい値に設定されている。
【0035】
これにより、第2スロット29bに収容された際の第2磁石31bの内径側壁部31b1、第3スロット29cに収容された際の第3磁石31cの内径側壁部31c1のそれぞれは、第2スロット29bの第2連続壁部29b1、第3スロット29cの第3連続壁部29c1に対し、実質的に密着するように構成されている。
【0036】
一方、第1磁石31aの磁化方向(径方向)と直交する磁化直交方向において、第1磁石31aの寸法は、第1スロット29aの最小寸法と比べてさらに小さい値に設定されている。
【0037】
これにより、第1スロット29aに収容された際の第1磁石31aは、前記磁化直交方向では、第1スロット29aの内壁部に対して空隙を有して配置されている。なお、第1スロット29aに収容された際において、第1スロット29aの内壁部と、第1磁石31aの外壁部との間に生じる空隙には、耐熱性樹脂(不図示)が充填される。これにより、第1スロット29aに対して第1磁石31aが固定される。これについて、詳しくは後記する。
【0038】
同様に、第2磁石31bの磁化方向と直交する磁化直交方向において、第2磁石31bの寸法は、第2スロット29bの最小寸法と比べてさらに小さい値に設定されている。また、第3磁石31cの磁化方向と直交する磁化直交方向において、第3磁石31cの寸法は、第3スロット29cの最小寸法と比べてさらに小さい値に設定されている。
【0039】
これにより、第2スロット29bに収容された際の第2磁石31b、第3スロット29cに収容された際の第3磁石31cのそれぞれは、前記磁化直交方向では、第2スロット29b、第3スロット29cの内壁部に対して空隙を有して配置されている。
【0040】
なお、第2スロット29bに収容された際において、第2スロット29bの内壁部と、第2磁石31bの外壁部との間に生じる空隙には、耐熱性樹脂が充填される。同様に、第3スロット29cに収容された際において、第3スロット29cの内壁部と、第3磁石31cの外壁部との間に生じる空隙には、耐熱性樹脂が充填される。
【0041】
これにより、第2スロット29bに対して第2磁石31bが固定されると共に、第3スロット29cに対して第3磁石31cが固定される。
〔第1回転電機11に用いられる永久磁石31の位置決め固定構造〕
次に、第1回転電機11に用いられる永久磁石31の位置決め固定構造について、図3A,図3Bを参照して詳細に説明する。

図3Aは、第1回転電機11のロータ17に備わる端面板27に設けられた穴部37と、中間部材35との相対位置関係を整合させた状態を表す斜視図である。図3Bは、図3Aに示す端面板27に設けられた穴部37と、中間部材35と、中間部材35が接合される永久磁石31との相対位置関係を概念的に拡大して表す斜視図である。
【0042】
永久磁石31の軸方向両端部には、図2,図3Bに示すように、中間部材35が接合される。この接合は、接着剤39(図3B参照;耐熱性樹脂であってもよい)を介して行われる。中間部材35は、ロータコア25に設けた磁石スロット29に対する永久磁石31の位置決めを補助することにより、ロータ17の製造に寄与する役割を果たす。
【0043】
一組の中間部材35は、第1中間部材35a,第2中間部材35b,及び第3中間部材35cの組み合わせによって構成されている。第1中間部材35aは、第1磁石31aの両方の端部にそれぞれ接合される。第2中間部材35bは、第2磁石31bの両方の端部にそれぞれ接合される。第3中間部材35cは、第3磁石31cの両方の端部にそれぞれ接合される。
【0044】
以下において、第1中間部材35a,第2中間部材35b,及び第3中間部材35cを総称する際には、単に「中間部材35」と呼ぶ場合がある。
【0045】
中間部材35の横断面に係る形状・サイズは、図3Bに示すように、例えば、永久磁石31の横断面に係る形状(図3Bの例では矩形状)・サイズと同等に設定されている。また、中間部材35の挿入方向(図3B参照)に係るサイズは、図3Bに示すように、例えば、端面板27に設けられた穴部37の深さ方向に係るサイズと同等に設定されている。
【0046】
中間部材35の材質としては、例えば、電磁鋼板よりなるロータコア25に係る比透磁率と比べて低い比透磁率を呈することに加えて、第1回転電機11が車両用電動機として用いられることを想定すると、耐熱性・耐油性・耐薬品性を有するものが好ましい。具体的には、中間部材35の材質としては、例えば、アルミニウム、芳香族ポリエーテルケトン、PA6樹脂のいずれか一又はこれらの組み合わせに係る材質を適宜選択すればよい。
【0047】
ロータコア25に設けた磁石スロット29に対する永久磁石31の位置決めを補助するために、端面板27のうちロータコア25に対面する側には、図3Aに示すように、中間部材35が嵌り合う一組の穴部37が設けられている。一組の穴部37は、図3Aに示すように、平板上の端面板27の一般面に対して凹むように形成されている。
【0048】
一組の穴部37は、第1穴部37a,第2穴部37b,及び第3穴部37cの組み合わせによって構成されている。第1穴部37aには、第1磁石31aの両方の端部にそれぞれ接合された第1中間部材35aが嵌合する。第2穴部37bには、第2磁石31bの両方の端部にそれぞれ接合された第2中間部材35bが嵌合する。第3穴部37cには、第3磁石31cの両方の端部にそれぞれ接合された第3中間部材35cが嵌合する。
【0049】
以下において、第1穴部37a,第2穴部37b,及び第3穴部37cを総称する際には、単に「穴部37」と呼ぶ場合がある。
【0050】
穴部37の横断面に係る形状・サイズは、図3A,図3Bに示すように、例えば、永久磁石31の横断面に係る形状(図3Bの例では矩形状)・サイズと同等に設定されている。また、穴部37の深さ方向に係るサイズは、図3Bに示すように、例えば、中間部材35の挿入方向に係るサイズと同等に設定されている。
【0051】
第1回転電機11に用いられる永久磁石31の位置決め固定構造では、例えば、第1スロット29aの第1連続壁部29a1に、第1磁石31aの内径側壁部31a1が当接(密着)した状態で、第1スロット29aに第1磁石31aが収容される。第1磁石31aの磁化方向(径方向)において、ロータコア25の第1スロット29a(磁石スロット)と第1磁石31a(永久磁石)との間には、図1Bに示す例では、実質的に空隙が生じていない。

第1回転電機11において、ロータコア25の磁石スロット29に対する永久磁石31の位置決めは、端面板27に設けられた穴部37に、永久磁石31の一方の端部に接合された中間部材35が嵌り合うことで、永久磁石31の一方の端部を、中間部材35を介して端面板27に位置決めすることで遂行される。

ここで、永久磁石31としてネオジム磁石を採用した場合であって、磁石スロット29に永久磁石31の位置決め部を設けた際に生じる現象について言及する。
【0052】
ネオジム磁石の線膨張係数は、磁化方向(径方向;図1B参照)と磁化垂直方向(周方向)とで異なる。具体的には、ネオジム磁石の線膨張係数は、磁化方向では正の値をとる一方、磁化垂直方向では負の値をとる。
【0053】
そのため、例えば、極低温(例えば摂氏マイナス40度程度)の環境では、磁化垂直方向(周方向)ではネオジム磁石が膨張するのに対し、電磁鋼板よりなるロータコア25は収縮する。その結果、ネオジム磁石と、ロータコア25の磁石スロット29に設けた位置決め部との当接部において応力が発生する。そこで、特許文献1(WO2015/076045号公報)に係る既存技術では、前記当接部に生じる応力を逃がすために、位置決め部の近傍にR形状の逃げ部が備わっている。
【0054】
ところが、特許文献1に係る既存技術では、ロータコア25の磁石スロット29のうち、永久磁石の角部付近にR形状の逃げ部を設けるため、永久磁石とロータコアとの間に空隙が生じてしまう。すると、この空隙の影響によって磁気抵抗が増大して、トルク密度の減少を招くおそれがあった。
【0055】
これに対し、第1回転電機11(のロータ17)では、端面板27に設けられた穴部37に、永久磁石31の一方の端部に接合された中間部材35が嵌り合うことで、ロータコア25の磁石スロット29に対する永久磁石31の位置決めを遂行するため、比較的簡素な構成(磁石スロットにおける永久磁石の位置決め部、及びR形状の逃げ部を排除)をもって、トルク密度を向上することができる。
〔第1回転電機11のロータ製造方法〕
次に、第1回転電機11のロータ製造方法について、図4を参照して説明する。
【0056】
図4は、第1回転電機11のロータ製造方法を表す工程図である。
【0057】
第1回転電機11のロータ製造方法は、図4に示すように、ロータコア25に備わる磁石スロット29と、ロータコア25に対面する一側の端面板27に設けられた穴部37との相対位置関係を整合させる工程(ステップs11)と、前記相対位置関係を整合させる工程の後、磁石スロット29の連続壁部29a1,29b1,29c1(図1B参照)に永久磁石31の内径側壁部31a1,31b1,31c1(図1B参照)を当接させた状態で、中間部材35が接合された永久磁石31を、当該中間部材35の側を先頭に向けて磁石スロット29に挿通させると共に、当該中間部材35を穴部37に嵌め込む工程(ステップs12)と、前記中間部材35を穴部37に嵌め込む工程の後、磁石スロット29に永久磁石31が収容された際に磁石スロット29と永久磁石31との間に生じる空隙に耐熱性樹脂を充填する工程(ステップs13)と、を有する。
【0058】
また、第1回転電機11のロータ製造方法は、図4に示すように、前記耐熱性樹脂を充填する工程の後であって、当該耐熱性樹脂が硬化した後、ロータコア25の磁石スロット29に挿入固定された永久磁石31と、ロータコア25に対面する他側の端面板27に設けられた穴部37との相対位置関係を整合させる工程(ステップs14)と、前記相対位置関係を整合させる工程の後、永久磁石31に接合された中間部材35を、他側の端面板27に設けられた穴部37に嵌め込む工程(ステップs15)と、一対の端面板27にロータコア25を挟んで構成されたロータ17に、回転軸15を取り付ける工程(ステップs16)と、をさらに有する構成を採用してもよい。
【0059】
前記耐熱性樹脂としては、硬化後の機械的強度に優れることに加えて、第1回転電機11が車両用電動機として用いられることを想定すると、耐油性・耐薬品性を有するものが好ましい。前記耐熱性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂を好適に用いることができる。
【0060】
第1回転電機11のロータ製造方法では、ロータコア25の磁石スロット29に対する永久磁石31の位置決めは、端面板27に設けられた穴部37に、永久磁石31の一方の端部に接合された中間部材35が嵌り合うことで、永久磁石31の一方の端部を、中間部材35を介して端面板27に位置決めすることで遂行される。
第1回転電機11のロータ製造方法によれば、永久磁石31の一方の端部を、中間部材35を介して端面板27に位置決めすることによって、ロータコア25の磁石スロット29に対する永久磁石31の位置決めを遂行するため、比較的簡素な工程をもって、トルク密度を向上可能な第1回転電機11のロータ17を製造することができる。
【0061】
〔本発明の第2実施形態に係る第2回転電機41の構成〕
次に、本発明の第2実施形態に係る第2回転電機41について、図5A,図5Bを参照して詳細に説明する。
【0062】
図5Aは、本発明の第2実施形態に係る第2回転電機41の全体構成を表す正面図である。図5Bは、図5Aに示す第2回転電機41のうち、ロータコア47の磁石スロットに設けた永久磁石の周辺を拡大して表す図である。
【0063】
本発明の第1実施形態に係る第1回転電機11と、本発明の第2実施形態に係る第2回転電機41との主な相違点は、図1B、及び図5Bに対比して示すように、磁石スロット56,57,58,59の数量と形状、永久磁石65,66,67,68の数量と形状である。
【0064】
本発明の第2実施形態に係る第2回転電機41は、図5Aに示すように、円環状のステータ43と、回転軸45に設けられたロータ47と、を備えて構成されている。
【0065】
円筒状の外周面を有するステータ43は、図5Aに示すように、ステータコア51と、ステータコア51に設けられたステータコイル53とを有して構成される。
【0066】
ステータコア41は、図5Aに示すように、全体として円筒状に形成される。ステータコア41は、例えば、円環状に形成された複数の電磁鋼鈑を軸方向に積層して構成される。図5Aに示すように、ステータコア41に備わる複数のスロット52の各々には、ステータコイル53が設けられている。
【0067】
ロータ47は、図5Aに示すように、ロータコア55と、一対の端面板71(図6参照)と、を有する。
【0068】
ロータコア55には、図5A,図5Bに示すように、軸方向(図5A参照)に貫通する複数組の磁石スロット56,57,58,59が、周方向(図5A参照)に等しい間隔を置いて設けられている。磁石スロット56,57,58,59のそれぞれには、永久磁石65,66,67,68が挿入固定される。一組の磁石スロット56,57,58,59の横断面は、例えば、全体としてロータコア55の径方向(図5A,図5B参照)外側に向かって2段に開く円弧形状に形成されている。
【0069】
第2回転電機41では、ステータコイル53にモータ電流を流すと、ステータ43に回転磁界が発生する。こうしてステータ43に発生した回転磁界と、ロータコア55の磁石スロット56,57,58,59にそれぞれ設けた永久磁石65,66,67,68(図5B参照)による磁界と、が相互作用することによって、ロータ47が回転駆動される。
【0070】
一組の磁石スロット56,57,58,59は、図5Bに示すように、4つの円弧スロット(第1円弧スロット56,第2円弧スロット57,第3円弧スロット58,第4円弧スロット59)を組み合わせて構成されている。
【0071】
磁石スロット56,57,58,59のそれぞれには、図5Bに示すように、矩形棒状の一組の永久磁石(第1円弧磁石65,第2円弧磁石66,第3円弧磁石67,第4円弧磁石68)が挿入されている。
【0072】
ロータコア55では、一組の磁石スロット56,57,58,59及び永久磁石65,66,67,68によって、磁極部63(図5B参照)が構成されている。

第1円弧スロット56のうち、第1円弧磁石65の内径側壁部65aが対面する部位には、図5Bに示すように、該内径側壁部65aの円弧形状に沿う第1円弧連続壁部56aが形成されている。
【0073】
同様に、第2円弧スロット57のうち、第2円弧磁石66の内径側壁部66aが対面する部位には、図5Bに示すように、該内径側壁部66aの円弧形状に沿う第2円弧連続壁部57aが形成されている。
【0074】
同様に、第3円弧スロット58のうち、第3円弧磁石67の内径側壁部67aが対面する部位には、図5Bに示すように、該内径側壁部67aの円弧形状に沿う第3円弧連続壁部58aが形成されている。
【0075】
同様に、第4円弧スロット59のうち、第4円弧磁石68の内径側壁部68aが対面する部位には、図5Bに示すように、該内径側壁部68aの円弧形状に沿う第4円弧連続壁部59aが形成されている。
【0076】
第1円弧スロット56に収容された際の第1円弧磁石65は、円弧方向では、第1円弧スロット56の内壁部に対して空隙を有して配置されている。
【0077】
同様に、第2円弧スロット57に収容された際の第2円弧磁石66は、円弧方向では、第2円弧スロット57の内壁部に対して空隙を有して配置されている。
【0078】
同様に、第3円弧スロット58に収容された際の第3円弧磁石67は、円弧方向では、第3円弧スロット58の内壁部に対して空隙を有して配置されている。
【0079】
同様に、第4円弧スロット59に収容された際の第4円弧磁石68は、円弧方向では、第4円弧スロット59の内壁部に対して空隙を有して配置されている。
【0080】
前記した円弧方向の空隙には、第1実施形態と同様に、エポキシ樹脂が充填される。これにより、第1円弧スロット56に対して第1円弧磁石65を、第2円弧スロット57に対して第2円弧磁石66を、第3円弧スロット58に対して第3円弧磁石67を、第4円弧スロット59に対して第4円弧磁石68を、それぞれ固定する。
〔第2回転電機41に用いられる永久磁石65,66,67,68の位置決め固定構造〕
次に、第2回転電機41に用いられる永久磁石65,66,67,68の位置決め固定構造について、図6を参照して詳細に説明する。

図6は、第2回転電機41のロータ47に備わる端面板71に設けられた穴部75と、中間部材73との相対位置関係を整合させた状態を表す斜視図である。
【0081】
図6に示すように、第1円弧磁石65の軸方向両端部には、第1円弧中間部材73aが、エポキシ樹脂を用いて接合される。同様に、第2円弧磁石66の軸方向両端部には、第2円弧中間部材73bが、エポキシ樹脂を用いて接合される。同様に、第3円弧磁石67の軸方向両端部には、第3円弧中間部材73cが、エポキシ樹脂を用いて接合される。同様に、第4円弧磁石68の軸方向両端部には、第4円弧中間部材73dが、エポキシ樹脂を用いて接合される。 以下において、第1円弧中間部材73a,第2円弧中間部材73b,第3円弧中間部材73c,及び第4円弧中間部材73dを総称する際には、単に「中間部材73」と呼ぶ場合がある。

中間部材73は、ロータコア55に設けた磁石スロット56,57,58,59に対する永久磁石65,66,67,68の位置決めを補助することにより、ロータ47の製造に寄与する役割を果たす。
【0082】
中間部材73の横断面に係る形状・サイズは、第1実施形態と同様、図6に示すように、例えば、永久磁石65,66,67,68の横断面に係る形状・サイズと同等に設定されている。また、中間部材73の挿入方向に係るサイズも、第1実施形態と同様、例えば、端面板71に設けられた穴部75の深さ方向に係るサイズと同等に設定されている。
【0083】
ロータコア55に設けた磁石スロット56,57,58,59に対する永久磁石65,66,67,68の位置決めを補助するために、端面板71のうちロータコア55に対面する側には、図6に示すように、中間部材73が嵌り合う一組の穴部75が設けられている。一組の穴部75は、図6に示すように、平板上の端面板71の一般面に対して凹むように形成されている。
【0084】
一組の穴部75は、第1円弧穴部75a,第2円弧穴部75b,第3円弧穴部75c,及び第4円弧穴部75dの組み合わせによって構成されている。
【0085】
以下において、第1円弧穴部75a,第2円弧穴部75b,第3円弧穴部75c,及び第4円弧穴部75dを総称する際には、単に「穴部75」と呼ぶ場合がある。
【0086】
第1円弧穴部75aには、第1円弧磁石65の両方の端部にそれぞれ接合された第1円弧中間部材73aが嵌合する。
【0087】
同様に、第2円弧穴部75bには、第2円弧磁石66の両方の端部にそれぞれ接合された第2円弧中間部材73bが嵌合する。
【0088】
同様に、第3円弧穴部75cには、第3円弧磁石67の両方の端部にそれぞれ接合された第3円弧中間部材73cが嵌合する。
【0089】
同様に、第4円弧穴部75dには、第4円弧磁石68の両方の端部にそれぞれ接合された第4円弧中間部材73dが嵌合する。
【0090】
穴部75の横断面に係る形状・サイズは、第1実施形態と同様、例えば、永久磁石65,66,67,68の横断面に係る形状・サイズと同等に設定されている。また、穴部75の深さ方向に係るサイズは、図6に示すように、例えば、中間部材73の挿入方向に係るサイズと同等に設定されている。
【0091】
第2回転電機41に用いられる永久磁石65,66,67,68の位置決め固定構造では、例えば、第1円弧スロット56の第1円弧連続壁部56aに、第1円弧磁石65の内径側壁部65aが当接(密着)した状態で、第1円弧スロット56に第1円弧磁石65が収容される。

第2回転電機41において、ロータコア55の磁石スロット56,57,58,59に対する永久磁石65,66,67,68の位置決めは、端面板71に設けられた穴部75に、永久磁石65,66,67,68の一方の端部に接合された中間部材73が嵌り合うことで、永久磁石65,66,67,68の一方の端部を、中間部材75を介して端面板71に位置決めすることで遂行される。

ここで、永久磁石31としてネオジム磁石を採用した場合であって、円弧状の磁石スロット56,57,58,59に対して、円弧状の永久磁石65,66,67,68を設けると共に、永久磁石65,66,67,68の位置決め部を設けた際に生じる現象について言及する。
【0092】
ネオジム磁石の線膨張係数は、前記したとおり、磁化方向(径方向)では正の値をとる一方、磁化垂直方向(周方向)では負の値をとる。
【0093】
そのため、例えば、極低温(例えば摂氏マイナス40度程度)の環境では、磁化垂直方向(周方向)ではネオジム磁石が膨張するのに対し、電磁鋼板よりなるロータコア55は収縮する。その結果、ネオジム磁石と、ロータコア55の磁石スロット56,57,58,59に設けた位置決め部との当接部において応力が発生する。そこで、既存技術では、前記当接部に生じる応力を逃がすために、位置決め部の近傍にR形状の逃げ部が備わっている。
【0094】
ところが、前記既存技術では、ロータコア55の磁石スロット56,57,58,59のうち、永久磁石65,66,67,68の角部付近にR形状の逃げ部を設けるため、永久磁石とロータコアとの間に空隙が生じてしまう。すると、この空隙の影響によって磁気抵抗が増大して、トルク密度の減少を招くおそれがあった。
【0095】
これに対し、第2回転電機41(のロータ47)では、端面板71に設けられた穴部75に、永久磁石65,66,67,68の一方の端部に接合された中間部材73が嵌り合うことで、ロータコア55の磁石スロット56,57,58,59に対する永久磁石65,66,67,68の位置決めを遂行するため、第1実施形態と同様に、比較的簡素な構成(磁石スロットにおける永久磁石の位置決め部、及びR形状の逃げ部を排除)をもって、トルク密度を向上することができる。
【0096】
〔本発明に係る回転電機のロータの作用〕
次に、本発明に係る回転電機のロータの作用について、本発明の第1実施形態に係る第1回転電機11のロータ17の作用を例示して説明する。

本発明の第1の観点に基づく第1回転電機11のロータ17では、例えば、第1スロット29aの第1連続壁部29a1に、第1磁石31aの内径側壁部31a1が当接(密着)した状態で、第1スロット29aに第1磁石31aが収容される。
【0097】
また、第1回転電機11において、ロータコア25の磁石スロット29に対する永久磁石31の位置決めは、端面板27に設けられた穴部37に、永久磁石31の一方の端部に接合された中間部材35が嵌り合うことで、永久磁石31の一方の端部を、中間部材35を介して端面板27に位置決めすることで遂行される。
【0098】
第1の観点に基づく第1回転電機11のロータ17によれば、比較的簡素な構成(磁石スロットにおける永久磁石の位置決め部、及びR形状の逃げ部を排除)をもって、トルク密度を向上することができる。
【0099】
さらに、第1の観点に基づく第1回転電機11のロータ17において、永久磁石31の磁化方向(径方向)において、永久磁石31の寸法を、磁石スロット29の最小寸法と同等か、又は僅かに小さい値に設定することにより、永久磁石31の内径側壁部が、磁石スロット29の連続壁部に当接(密着)する構成を採用すれば、下記の作用効果を期待することができる。
【0100】
すなわち、磁石スロット29に収容されている永久磁石31を内径側に引き寄せるために(必要に応じて)設けられるトランスファー成形による樹脂注入穴を排除することができる。その結果、トルク密度が向上すると共に、(パーミアンス係数が高くなるため)減磁耐力を向上することができる。
【0101】
さらに、第1の観点に基づく第1回転電機11のロータ17によれば、ロータコア25に設けた磁石スロット29に対する永久磁石31の位置決め精度を向上することができる。要するに、磁石スロット29の周方向における中心と、永久磁石31の周方向における中心とを重ね合わせる精度を向上することができる。その結果、製造工程において不可避的に生じる性能バラつき(トルク密度・トルクリプル等)を抑制することができる。

また、本発明の第2の観点に基づく第1回転電機11のロータ17では、永久磁石31の回転軸方向端部の両方には、中間部材35がそれぞれ接合され、一対の端面板27のそれぞれには、中間部材35が嵌り合う穴部37が設けられ、穴部37に中間部材35が嵌り合うことで、永久磁石31の両方の回転軸方向端部が、中間部材35を介して一対の端面板27のそれぞれに位置決めされる。

また、本発明の第3の観点に基づく第1回転電機11のロータ17では、磁石スロット29に永久磁石31が収容された際に磁石スロット29と永久磁石31との間に生じる空隙には、耐熱性樹脂が充填されている。

第3の観点に基づく第1回転電機11のロータ17によれば、磁石スロット29に永久磁石31が収容された際に磁石スロット29と永久磁石31との間に生じる空隙には耐熱性樹脂が充填されているため、中間部材35を介して一対の端面板27のそれぞれに位置決めされた永久磁石31を、ロータコア25の磁石スロット29に対して強固に固定することができる。

また、本発明の第4の観点に基づく第1回転電機11のロータ17では、中間部材35の材質は、アルミニウム、芳香族ポリエーテルケトン、PA6樹脂のいずれか一又はこれらの組み合わせに係る材質が選択される。

また、本発明の第5の観点に基づく第1回転電機11は、第1〜第4の観点に基づく第1回転電機11のロータ17と、ステータコイル23が設けられたステータコア21を有する円筒状のステータ13と、を備える。
【0102】
第5の観点に基づく第1回転電機11によれば、比較的簡素な構成(磁石スロットにおける永久磁石の位置決め部、及びR形状の逃げ部を排除)をもって、トルク密度を向上することができる。
【0103】
また、本発明の第6の観点に基づく回転電機11のロータ製造方法は、ロータコア25に備わる磁石スロット29と、ロータコア25に対面する一側の端面板27に設けられた穴部37との相対位置関係を整合させる工程(ステップs11)と、前記相対位置関係を整合させる工程の後、磁石スロット29の連続壁部29a1,29b1,29c1(図1B参照)に永久磁石31の内径側壁部31a1,31b1,31c1(図1B参照)を当接させた状態で、中間部材35が接合された永久磁石31を、当該中間部材35の側を先頭に向けて磁石スロット29に挿通させると共に、当該中間部材35を穴部37に嵌め込む工程(ステップs12)と、前記中間部材35を穴部37に嵌め込む工程の後、磁石スロット29に永久磁石31が収容された際に磁石スロット29と永久磁石31との間に生じる空隙に耐熱性樹脂を充填する工程(ステップs13)と、を有する。
【0104】
第6の観点に基づく回転電機11のロータ製造方法では、ロータコア25の磁石スロット29に対する永久磁石31の位置決めは、端面板27に設けられた穴部37に、永久磁石31の一方の端部に接合された中間部材35が嵌り合うことで、永久磁石31の一方の端部を、中間部材35を介して端面板27に位置決めすることで遂行される。
【0105】
第6の観点に基づく回転電機11のロータ製造方法によれば、永久磁石31の一方の端部を、中間部材35を介して端面板27に位置決めすることによって、ロータコア25の磁石スロット29に対する永久磁石31の位置決めを遂行するため、比較的簡素な工程をもって、トルク密度を向上可能な第1回転電機11のロータ17を製造することができる。
〔その他の実施形態〕
以上説明した複数の実施形態は、本発明の具現化の例を示したものである。したがって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならない。本発明はその要旨またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形態で実施することができるからである。
【0106】
例えば、本発明の第1実施形態に係る第1回転電機11の説明において、中間部材35の横断面に係る形状・サイズを、永久磁石31の横断面に係る形状・サイズと同等に設定する例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0107】
中間部材35の横断面に係る形状・サイズは、永久磁石31の端部との耐熱性樹脂を介した接合を良好に遂行可能であれば、いかなる形状・サイズであっても構わない。
【0108】
また、本発明の第1実施形態に係る第1回転電機11の説明において、中間部材35の挿入方向(図3B参照)に係るサイズを、端面板27に設けられた穴部37の深さ方向に係るサイズと同等に設定する例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0109】
中間部材35の挿入方向に係るサイズは、第1回転電機11の性能を良好に維持可能であれば、いかなるサイズであっても構わない。
【0110】
同様に、本発明の第2実施形態に係る第2回転電機41の説明において、中間部材73の横断面に係る形状・サイズを、永久磁石65,66,67,68の横断面に係る形状・サイズと同等に設定する例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0111】
中間部材73の横断面に係る形状・サイズは、永久磁石65,66,67,68の端部との耐熱性樹脂を介した接合を良好に遂行可能であれば、いかなる形状・サイズであっても構わない。
【0112】
同様に、本発明の第2実施形態に係る第2回転電機41の説明において、中間部材73の挿入方向に係るサイズを、端面板71に設けられた穴部75の深さ方向に係るサイズと同等に設定する例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0113】
中間部材73の挿入方向に係るサイズは、第2回転電機41の性能を良好に維持可能であれば、いかなるサイズであっても構わない。
【0114】
また、本発明は、ひとつの磁極部を構成する永久磁石の配置構造(例えば、永久磁石の数量、多段配置等)、永久磁石の形状(例えば、矩形状、円弧形状)、磁極部それ自体の数量の如何にかかわらず、適用可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0115】
11 第1実施形態に係る第1回転電機
13 ステータ
15 回転軸
17 ロータ
21 ステータコア
23 ステータコイル(コイル)
25 ロータコア
27 端面板
29 磁石スロット
29a1 第1スロットの第1連続壁部(磁石スロットの連続壁部)
29b1 第2スロットの第2連続壁部(磁石スロットの連続壁部)
29c1 第3スロットの第3連続壁部(磁石スロットの連続壁部)
31 永久磁石
31a1 第1磁石の内径側壁部(永久磁石の内径側壁部)
31b1 第2磁石の内径側壁部(永久磁石の内径側壁部)
31c1 第3磁石の内径側壁部(永久磁石の内径側壁部)
35 中間部材
37 穴部
41 第2実施形態に係る第2回転電機
43 ステータ
45 回転軸
47 ロータ
51 ステータコア
53 ステータコイル(コイル)
55 ロータコア
56,57,58,59 磁石スロット
65,66,67,68 永久磁石
71 端面板
73 中間部材
75 穴部
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】