(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2019146469
(43)【公開日】20190829
(54)【発明の名称】双方向DC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20190802BHJP
【FI】
   !H02M3/155 H
   !H02M3/155 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】26
(21)【出願番号】2018173351
(22)【出願日】20180918
(31)【優先権主張番号】2018030417
(32)【優先日】20180223
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
【住所又は居所】京都府京都市中京区烏丸通御池上る二条殿町551番地
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直久
【住所又は居所】京都府京都市中京区烏丸通御池上る二条殿町551番地 ニチコン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】岡田 裕之
【住所又は居所】京都府京都市中京区烏丸通御池上る二条殿町551番地 ニチコン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】小田 義雄
【住所又は居所】京都府京都市中京区烏丸通御池上る二条殿町551番地 ニチコン株式会社内
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS08
5H730BB06
5H730BB11
5H730BB57
5H730BB61
5H730DD04
5H730DD16
5H730FG01
(57)【要約】
【課題】ARCP回路を備えた双方向DC/DCコンバータにつき、変換効率のさらなる改善を図る。
【解決手段】第1の平滑コンデンサC1、第2の平滑コンデンサC2、ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1、ローサイドのメインスイッチング素子Qm2、出力用のリアクトルLoutに加えて、転流制御回路11と整流回路12を含むARCP回路10を有し、さらに、共振用のリアクトルLr、ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1、ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2、ハイサイドの一次巻線NH1と二次巻線NH2からなるハイサイドのトランスT1、ローサイドの一次巻線NL1と二次巻線NL2からなるローサイドのトランスT2を有し、ハイサイドのトランスT1とローサイドのトランスT2とが磁気結合なしの状態で互いに分離配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端側のハイサイド入出力端子とローサイド入出力端子との間に接続された第1の平滑コンデンサと、
他方端側のハイサイド入出力端子とローサイド入出力端子との間に接続された第2の平滑コンデンサと、
前記一方端側のハイサイド入出力端子と前記他方端側のハイサイド入出力端子とを接続するハイサイドラインに挿入されたハイサイドのメインスイッチング素子と出力用のリアクトルとの直列回路と、
前記一方端側のローサイド入出力端子と前記他方端側のローサイド入出力端子とを接続するローサイドラインと、前記ハイサイドのメインスイッチング素子と前記出力用のリアクトルを接続する第1の接続ノードとの間に挿入されたローサイドのメインスイッチング素子と、
前記ハイサイドラインと前記ローサイドラインとの間に接続されたARCP回路とを備え、
前記ARCP回路は転流制御回路と整流回路からなり、
前記転流制御回路は、
前記第1の接続ノードに一端が接続された共振用のリアクトルと、前記共振用のリアクトルの他端に接続されたトランスと、前記トランスの一次巻線と前記ハイサイドラインとの間に接続されたハイサイドの転流用スイッチング素子と、前記トランスの一次巻線と前記ローサイドラインとの間に接続されたローサイドの転流用スイッチング素子とを有し、
前記整流回路は、前記トランスの二次巻線に誘起される電力を受電可能な状態で前記ハイサイドラインと前記ローサイドラインとの間に接続され、前記第1の平滑コンデンサに対して前記ハイサイドライン側から前記ローサイドライン側に向けた一方向にのみ電流を供給するように構成され、
前記トランスは、
前記ハイサイドの転流用スイッチング素子に一次巻線が接続されたハイサイドのトランスと、前記ローサイドの転流用スイッチング素子に一次巻線が接続されたローサイドのトランスとを有し、前記ハイサイドのトランスと前記ローサイドのトランスとが実質的に磁気結合することなく互いに分離配置されていることを特徴とする双方向DC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記ハイサイドの一次巻線と前記ローサイドの一次巻線とを接続する第2の接続ノードが前記共振用のリアクトルの他端に接続され、
前記ハイサイドラインと前記第2の接続ノードとの間に前記ハイサイドの転流用スイッチング素子と前記ハイサイドの一次巻線との直列回路が接続されるとともに、前記ハイサイドの一次巻線にハイサイドの二次巻線が磁気結合した状態で前記整流回路に接続されている一方、
前記ローサイドラインと前記第2の接続ノードとの間に前記ローサイドの転流用スイッチング素子と前記ローサイドの一次巻線との直列回路が接続されるとともに、前記ローサイドの一次巻線にローサイドの二次巻線が磁気結合した状態で前記整流回路に接続されている請求項1に記載の双方向DC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記ハイサイドおよびローサイドの二次巻線はいずれもセンタータップ方式の巻線に構成され、
前記ハイサイドのセンタータップ方式の二次巻線は、その一端および他端がそれぞれ整流ダイオードを介して前記ハイサイドラインに接続され、そのセンタータップが前記ローサイドラインに直接に接続され、
前記ローサイドのセンタータップ方式の二次巻線は、その一端および他端がそれぞれ整流ダイオードを介して前記ローサイドラインに接続され、そのセンタータップが前記ハイサイドラインに直接に接続されている請求項2に記載の双方向DC/DCコンバータ。
【請求項4】
一方端側のハイサイド入出力端子とローサイド入出力端子との間に接続された第1の平滑コンデンサと、
他方端側のハイサイド入出力端子とローサイド入出力端子との間に接続された第2の平滑コンデンサと、
前記一方端側のハイサイド入出力端子と前記他方端側のハイサイド入出力端子とを接続するハイサイドラインに挿入されたハイサイドのメインスイッチング素子と出力用のリアクトルとの直列回路と、
前記一方端側のローサイド入出力端子と前記他方端側のローサイド入出力端子とを接続するローサイドラインと、前記ハイサイドのメインスイッチング素子と前記出力用のリアクトルを接続する第1の接続ノードとの間に挿入されたローサイドのメインスイッチング素子と、
前記ハイサイドラインと前記ローサイドラインとの間に接続されたARCP回路とを備え、
前記ARCP回路は転流制御回路と整流回路からなり、
前記転流制御回路は、
前記第1の接続ノードに一端が接続された共振用のリアクトルと、前記共振用のリアクトルの他端に接続されたトランスと、前記トランスの一次巻線と前記ハイサイドラインとの間に接続されたハイサイドの転流用スイッチング素子と、前記トランスの一次巻線と前記ローサイドラインとの間に接続されたローサイドの転流用スイッチング素子とを有し、
前記整流回路は、前記トランスの二次巻線に誘起される電力を受電可能な状態で前記ハイサイドラインと前記ローサイドラインとの間に接続され、前記第1の平滑コンデンサに対して前記ハイサイドライン側から前記ローサイドライン側に向けた一方向にのみ電流を供給するように構成され、
前記トランスは、
前記一次巻線がセンタータップを境にハイサイド一次巻線部分とローサイド一次巻線部分とからなり、前記センタータップが前記共振用のリアクトルに接続され、前記ハイサイド一次巻線部分が前記ハイサイドの転流用スイッチング素子と接続され、前記ローサイド一次巻線部分が前記ローサイドの転流用スイッチング素子に接続されているとともに、前記ハイサイド一次巻線部分と前記ローサイド一次巻線部分とは互いに逆方向に巻かれていることを特徴とする双方向DC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記二次巻線はセンタータップ方式の巻線に構成され、このセンタータップ方式の二次巻線はその一端および他端がそれぞれ整流ダイオードを介して前記ハイサイドラインに接続されている請求項4に記載の双方向DC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電システムなどに用いられるARCP(Auxiliary Resonant Commutated Pole:補助共振転流ポール)回路を備えた双方向DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
夜間に価格の安い電力をバッテリに蓄電しておき、昼間にバッテリからの放電で機器を運転する蓄電システムは、系統電源に接続される双方向インバータ、双方向DC/DCコンバータ、バッテリなどを備えて構成される。図11は蓄電システムにおける従来の双方向DC/DCコンバータの構成を示す回路図である。
【0003】
図11において、C1は第1の平滑コンデンサ、C2は第2の平滑コンデンサ、Qm1はハイサイドのメインスイッチング素子、Qm2はローサイドのメインスイッチング素子、Dm1,Dm2は逆並列接続のダイオード(寄生ダイオード)、Cr1,Cr2は共振用のコンデンサ(寄生コンデンサ)、Loutは出力用のリアクトル、10はARCP回路、11は転流制御回路、12は整流回路、Lrは共振用のリアクトル、Qt1,Qt2は転流用スイッチング素子、T0は充放電兼用トランス、NL1,NH1は一次巻線、NHL2は二次巻線、DH1,DH2,DL1,DL2は整流ダイオード、DG1,DG2は逆流防止用のダイオードである。
【0004】
次に、上記のように構成された従来の双方向DC/DCコンバータの動作を説明する。〔A〕放電モードと〔B〕充電モードに分けてそれぞれ説明する。
【0005】
〔A〕放電モード
〔A1〕出力用のリアクトルLoutの放電(図12(a)参照)
ハイサイドおよびローサイドのメインスイッチング素子Qm1,Qm2、ハイサイドおよびローサイドの転流用スイッチング素子Qt1,Qt2のいずれもがオフ状態にあって、出力用のリアクトルLoutがエネルギーを放出し、第2の平滑コンデンサC2に並列接続されたバッテリB→出力用のリアクトルLout→ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1の逆並列接続の寄生ダイオードDm1→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→バッテリBの経路で電流が流れる。ここで、第1の平滑コンデンサC1間の印加電圧、すなわち、端子Tp1と端子Tn1間の電圧は当該端子間に接続された双方向インバータに出力され、双方向インバータを介して端子Tp1から端子Tn1に向けて電流が流れる。これは、転流動作以前の定常状態である。転流前にあっては、転流制御回路11には電流は流れず、整流回路12にも電流は流れない。
【0006】
〔A2〕転流開始(図12(b)参照)
転流制御回路11におけるローサイドの転流用スイッチング素子Qt2がターンオンされる。すると、上記〔A1〕でハイサイドのメインスイッチング素子Qm1の逆並列接続の寄生ダイオードDm1を流れていた電流が徐々にローサイドの転流用スイッチング素子Qt2の側に転流し、バッテリB→出力用のリアクトルLout→共振用のリアクトルLr→ローサイドの一次巻線NL1→逆流防止用のダイオードDG2→ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2→バッテリBの経路で電流が流れる。
【0007】
ローサイドの一次巻線NL1から二次巻線NHL2に誘起された電力により、整流回路12において、二次巻線NHL2→整流ダイオードDH1→ハイサイドラインL1→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→整流ダイオードDL1→二次巻線NHL2の経路と、二次巻線NHL2→整流ダイオードDH2→ハイサイドラインL1→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→整流ダイオードDL2→二次巻線NHL2の経路とに電流が流れ、バッテリBの放電によって第1の平滑コンデンサC1に対する充電が行われる。
【0008】
ローサイドの一次巻線NL1に電流が流れることにより、磁気結合を介して二次巻線NHL2に電流が誘起され、さらにこの二次巻線NHL2に流れる電流が磁気結合による電磁誘導によってハイサイドの一次巻線NH1に上向きの逆起電力E(太い上向き矢印参照)を発生させる。それに起因して転流制御回路11に逆流が生じることを回避するために、転流制御回路11のハイサイド部分に逆流防止用のダイオードDG1を挿入している。
【0009】
整流回路12において導通状態となっている整流ダイオードはDH1,DH2,DL1,DL2の4つすべてである。
【0010】
〔A3〕LC共振(図13(a)参照)
上記〔A2〕の状態で共振用のリアクトルLrを流れる電流が出力用のリアクトルLoutを流れる電流を超えると、共振用のコンデンサCr1,Cr2が充放電を開始する。すなわち、共振用のコンデンサCr1→共振用のリアクトルLr→ローサイドの一次巻線NL1→逆流防止用のダイオードDG2→ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2→ローサイドラインL2→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→ハイサイドラインL1→共振用のコンデンサCr1の経路と、共振用のコンデンサCr2→共振用のリアクトルLr→一次巻線NL1→逆流防止用のダイオードDG2→ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2→ローサイドラインL2→共振用のコンデンサCr2の経路で電流が流れ、共振動作が開始される。
【0011】
この場合も、図12(b)の場合と同様にハイサイドの一次巻線NH1に上向きの逆起電力Eを発生させる。
【0012】
整流回路12での電流の流れは上記〔A2〕と同様のものとなる(図12(b)参照)。この場合も、整流回路12において導通状態となっている整流ダイオードはDH1,DH2,DL1,DL2の4つすべてである。
【0013】
〔A4〕定常状態への遷移(図13(b)参照)
そして、共振用のコンデンサCr2の両端電圧つまりローサイドのメインスイッチング素子Qm2の印加電圧が0レベルになった時点でそのメインスイッチング素子Qm2がターンオンする。このメインスイッチング素子Qm2のターンオンは、高周波共振現象によるソフトスイッチング(ゼロ電圧スイッチング(ZVS))を利用するものであり、スイッチングロスが軽減されている。
【0014】
ローサイドのメインスイッチング素子Qm2がターンオンした時点から共振用のリアクトルLrに流れる電流が徐々に減少し、それまでバッテリB→出力用のリアクトルLout→共振用のリアクトルLr→ローサイドの一次巻線NL1→逆流防止用のダイオードDG2→ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2→バッテリBの経路で流れていた電流が、バッテリB→出力用のリアクトルLout→ローサイドのメインスイッチング素子Qm2→バッテリBの経路の流れへと遷移する。
【0015】
この場合も、上記同様にハイサイドの一次巻線NH1に上向きの逆起電力Eを発生させる。
【0016】
整流回路12での電流の流れは上記〔A2〕,〔A3〕と同様のものとなる(図12(b)、図13(a)参照)。この場合も、整流回路12において導通状態となっている整流ダイオードはDH1,DH2,DL1,DL2の4つすべてである。
【0017】
〔A5〕定常状態(図14(a)参照)
共振用のリアクトルLrの電流が無くなり、ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2がターンオフする。この転流用スイッチング素子Qt2のターンオフはソフトスイッチング(ゼロ電流スイッチング(ZCS))を利用するものであり、スイッチングロスが軽減されている。この定常状態では、電流は、バッテリB→出力用のリアクトルLout→ローサイドのメインスイッチング素子Qm2→バッテリBの経路のみを流れることになる。したがって、出力用のリアクトルLoutがエネルギーを蓄積する。
【0018】
ローサイドの一次巻線NL1には電流が流れないので、整流回路12では電流が停止する。
【0019】
〔A6〕転流開始(図14(b)参照)
ローサイドのメインスイッチング素子Qm2がターンオフされる。その瞬間から電流が共振用のコンデンサCr2へ転流し、共振用のコンデンサCr2へ充電が行われる。メインスイッチング素子Qm2の両端電圧がゆっくり上昇するのに対し、電流は素早く共振用のコンデンサCr2へ転移するため、スイッチングロスはほとんど生じない。
【0020】
ARCP回路10を装備させた理由は次のとおりである。
【0021】
放電モードの場合に図12(a)の状態と図14(a)の状態を突き合わせることで大局的に昇圧チョッパの構成を見ると、第2の平滑コンデンサC2の両端子間に出力用のリアクトルLoutとメインスイッチング素子Qm2との直列回路が接続され、さらにメインスイッチング素子Qm2の両端子間にダイオードDm1(ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1の逆並列接続の寄生ダイオード)と第1の平滑コンデンサC1との直列回路が接続されていて、これは昇圧チョッパの機能を有している。
【0022】
ローサイドのメインスイッチング素子Qm2のスイッチングによって昇圧チョッパの機能を発揮させるのであるが、そのメインスイッチング素子Qm2をターンオンさせるに際して、その前段階で、ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2をオンにすることでローサイドのメインスイッチング素子Qm2をソフトスイッチング方式でターンオンさせることができ、変換効率を向上させることができる。
【0023】
〔B〕充電モード
〔B1〕出力用のリアクトルLoutの蓄電(図15(a)参照)
ハイサイドおよびローサイドのメインスイッチング素子Qm1,Qm2、ハイサイドおよびローサイドの転流用スイッチング素子Qt1,Qt2のいずれもがオフ状態にあって、出力用のリアクトルLoutがエネルギーを蓄積し、バッテリB→ローサイドのメインスイッチング素子Qm2の逆並列接続の寄生ダイオードDm2→出力用のリアクトルLout→バッテリBの経路で電流が流れ、バッテリBに対し充電が行われる。これは、転流動作以前の定常状態である。転流前にあっては、転流制御回路11には電流は流れず、整流回路12にも電流は流れない。
【0024】
〔B2〕転流開始(図15(b)参照)
転流制御回路11におけるハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1がターンオンする。すると、上記〔B1〕でローサイドのメインスイッチング素子Qm2の逆並列接続の寄生ダイオードDm2→出力用のリアクトルLout→バッテリBの経路を流れていた電流が徐々に転流し、第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1→ハイサイドの一次巻線NH1→共振用のリアクトルLr→出力用のリアクトルLout→バッテリB→第1の平滑コンデンサC1の経路での電流に遷移する。すなわち、双方向インバータから端子Tp1と端子Tn1間に出力された電圧が第1の平滑コンデンサC1間に印加され、バッテリBを充電しつつ双方向DC/DCコンバータを介して端子Tp1から端子Tn1に向けて電流が流れる。ハイサイドの一次巻線NH1から二次巻線NHL2に誘起された電力により、整流回路12において、二次巻線NHL2→整流ダイオードDH1→第1の平滑コンデンサC1→整流ダイオードDL1→二次巻線NHL2の経路と、二次巻線NHL2→整流ダイオードDH2→第1の平滑コンデンサC1→整流ダイオードDL2→二次巻線NHL2の経路とに電流が流れ、バッテリBへの充電とともに第1の平滑コンデンサC1に対する充放電が行われる。
【0025】
ハイサイドの一次巻線NH1に電流が流れることにより、磁気結合を介して二次巻線NHL2に電流が誘起され、さらにこの二次巻線NHL2に流れる電流が磁気結合による電磁誘導によってローサイドの一次巻線NL1に上向きの逆起電力Eを発生させる。それに起因して転流制御回路11に逆流が生じることを回避するために、転流制御回路11のローサイド部分に逆流防止用のダイオードDG2を挿入している。
【0026】
整流回路12において導通状態となっている整流ダイオードはDH1,DH2,DL1,DL2の4つすべてである。
【0027】
〔B3〕LC共振(図16(a)参照)
上記〔B2〕の状態で共振用のリアクトルLrを流れる電流が出力用のリアクトルLoutを流れる電流を超えると、共振用のコンデンサCr1,Cr2が充放電を開始する。すなわち、共振用のコンデンサCr1→ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1→ハイサイドの一次巻線NH1→共振用のリアクトルLr→共振用のコンデンサCr1の経路と、共振用のコンデンサCr2→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1→ハイサイドの一次巻線NH1→共振用のリアクトルLr→共振用のコンデンサCr2の経路で電流が流れ、共振動作が開始される。
【0028】
この場合も、図15(b)の場合と同様にローサイドの一次巻線NL1に上向きの逆起電力Eを発生させる。
【0029】
整流回路12での電流の流れは上記〔B2〕と同様のものとなる(図15(b)参照)。この場合も、整流回路12において導通状態となっている整流ダイオードはDH1,DH2,DL1,DL2の4つすべてである。
【0030】
〔B4〕定常状態への遷移(図16(b)参照)
そして、共振用のコンデンサCr1の両端電圧つまりハイサイドのメインスイッチング素子Qm1の印加電圧が0レベルになった時点でそのメインスイッチング素子Qm1がターンオンする。このメインスイッチング素子Qm1のターンオンは、高周波共振現象によるソフトスイッチング(ゼロ電圧スイッチング(ZVS))を利用するものであり、スイッチングロスが軽減されている。
【0031】
ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1がターンオンした時点から共振用のリアクトルLrに流れる電流が徐々に減少し、それまで第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1→ハイサイドの一次巻線NH1→共振用のリアクトルLr→出力用のリアクトルLout→バッテリB→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)の経路で流れていた電流が、第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1→出力用のリアクトルLout→バッテリB→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)の経路の流れへと遷移する。
【0032】
この場合も、上記同様にローサイドの一次巻線NL1に上向きの逆起電力Eを発生させる。
【0033】
整流回路12での電流の流れは上記〔B2〕,〔B3〕と同様のものとなる(図15(b)、図16(a)参照)。この場合も、整流回路12において導通状態となっている整流ダイオードはDH1,DH2,DL1,DL2の4つすべてである。
【0034】
〔B5〕定常状態(図17(a)参照)
共振用のリアクトルLrの電流が無くなり、ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1がターンオフする。この転流用スイッチング素子Qt1のターンオフはソフトスイッチング(ゼロ電流スイッチング(ZCS))を利用するものであり、スイッチングロスが軽減されている。この定常状態では、電流は、第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1→出力用のリアクトルLout→バッテリB→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)の経路のみを流れることになる。したがって、出力用のリアクトルLoutがエネルギーを放出する。
【0035】
ハイサイドの一次巻線NH1には電流が流れないので、整流回路12では電流が停止する。
【0036】
〔B6〕転流開始(図17(b)参照)
ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1がターンオフされる。その瞬間から電流が共振用のコンデンサCr1へ転流し、共振用のコンデンサCr1へ充電が行われる。メインスイッチング素子Qm1の両端電圧がゆっくり上昇するのに対し、電流は素早く共振用のコンデンサCr1へ転移するため、スイッチングロスはほとんど生じない。この状態では、電流は、第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→共振用のコンデンサCr1→出力用のリアクトルLout→バッテリB→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)の経路のみを流れることになる。
【0037】
上記の〔B1〕〜〔B6〕のように推移する動作において、転流制御回路11から整流回路12への磁気結合による電磁誘導の状態は次のようになっている。
【0038】
充電モードの場合に図15(a)の状態と図17(a)の状態を突き合わせることで大局的に降圧チョッパの構成を見ると、第1の平滑コンデンサC1の両端子間にメインスイッチング素子Qm1とダイオードDm2(ローサイドのメインスイッチング素子Qm2の逆並列接続の寄生ダイオード)との直列回路が接続され、さらにダイオードDm2の両端子間に出力用のリアクトルLoutと第2の平滑コンデンサC2との直列回路が接続されていて、これは降圧チョッパの機能を有している。
【0039】
ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1のスイッチングによって降圧チョッパの機能を発揮させるのであるが、そのメインスイッチング素子Qm1をターンオンさせるに際して、その前段階で、ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1をオンにすることでハイサイドのメインスイッチング素子Qm1をソフトスイッチング方式でターンオンさせることができ、変換効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0040】
【非特許文献1】“高効率・双方向絶縁型DCDCコンバータ”、[online]、2014年、ポニー電機株式会社、[平成30年1月11日検索]、インターネット<URL:http://pony-e.jp/High_efficiency_bi-directional_insulated_DCDCconverter.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
上記の従来例にあっては、ARCP回路10における転流制御回路11と整流回路12とを磁気結合するトランスを充放電兼用のトランスとしている。すなわち、トランスの一次巻線を、ハイサイドの一次巻線NH1とローサイドの一次巻線NL1とを直結したセンタータップ方式の巻線としている。二次巻線NHL2はセンタータップ方式の一対の一次巻線NH1,NL1に共通の巻線となっている。鉄心がハイサイドの一次巻線NH1、ローサイドの一次巻線NL1および二次巻線NHL2の3つの巻線で共有されているため、上記したように、放電モードにおいては、ローサイドの一次巻線NL1に電流が流れることに起因してハイサイドの一次巻線NH1に上向きの逆起電力Eが発生し、また、充電モードにおいては、ハイサイドの一次巻線NH1に電流が流れることに起因してローサイドの一次巻線NL1に上向きの逆起電力Eが発生することになる。そこで、転流制御回路11に逆流が生じることを回避するために、逆流防止用のダイオードDG1,DG2を挿入している。
【0042】
しかし、これら2つの逆流防止用のダイオードDG1,DG2に電流が流れる期間は全期間の約半分ほどもあり(図12(b)、図13(a),(b)、図15(b)、図16(a),(b)参照),大きな損失を招いていた。
【0043】
近時の蓄電システムにあっては、コスト低減のために蓄電池の直列数を減らす傾向にある。しかし、蓄電池の直列数を減らすと電池電圧も低下するため、双方向DC/DCコンバータにおける昇降圧チョッパの昇降圧比を増加させなければならず、それが原因で変換効率の悪化を招いていた。
【0044】
上記したARCP回路を備えた双方向DC/DCコンバータは、ARCP回路を備えないものに比べて変換効率が優れているものの、上記した逆流防止に起因する損失のため、近時の昇降圧チョッパの昇降圧比の増加に伴う変換効率の悪化を補う観点からは、さらなる改良の余地が残されていた。
【0045】
本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、双方向DC/DCコンバータに関して、変換効率のさらなる改善を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0046】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
【0047】
本発明による双方向DC/DCコンバータは、
一方端側のハイサイド入出力端子とローサイド入出力端子との間に接続された第1の平滑コンデンサと、
他方端側のハイサイド入出力端子とローサイド入出力端子との間に接続された第2の平滑コンデンサと、
前記一方端側のハイサイド入出力端子と前記他方端側のハイサイド入出力端子とを接続するハイサイドラインに挿入されたハイサイドのメインスイッチング素子と出力用のリアクトルとの直列回路と、
前記一方端側のローサイド入出力端子と前記他方端側のローサイド入出力端子とを接続するローサイドラインと、前記ハイサイドのメインスイッチング素子と前記出力用のリアクトルを接続する第1の接続ノードとの間に挿入されたローサイドのメインスイッチング素子と、
前記ハイサイドラインと前記ローサイドラインとの間に接続されたARCP回路とを備え、
前記ARCP回路は転流制御回路と整流回路からなり、
前記転流制御回路は、
前記第1の接続ノードに一端が接続された共振用のリアクトルと、前記共振用のリアクトルの他端に接続されたトランスと、前記トランスの一次巻線と前記ハイサイドラインとの間に接続されたハイサイドの転流用スイッチング素子と、前記トランスの一次巻線と前記ローサイドラインとの間に接続されたローサイドの転流用スイッチング素子とを有し、
前記整流回路は、前記トランスの二次巻線に誘起される電力を受電可能な状態で前記ハイサイドラインと前記ローサイドラインとの間に接続され、前記第1の平滑コンデンサに対して前記ハイサイドライン側から前記ローサイドライン側に向けた一方向にのみ電流を供給するように構成され、
前記トランスは、
前記ハイサイドの転流用スイッチング素子に一次巻線が接続されたハイサイドのトランスと、前記ローサイドの転流用スイッチング素子に一次巻線が接続されたローサイドのトランスとを有し、前記ハイサイドのトランスと前記ローサイドのトランスとが実質的に磁気結合することなく互いに分離配置されていることを特徴とする。
【0048】
上記した従来例との比較において本発明の特徴を記述すると、転流制御回路と整流回路との磁気結合のための構成要素について、従来、充放電兼用トランスとしていたところ、本発明では、放電用トランスと充電用トランスとに分離した構成とすることを特徴としている。
【0049】
このように転流制御回路と整流回路との磁気結合のためのトランスについて、従来の充放電兼用トランスに代えて、放電用トランスと充電用トランスとに分離してあるので、ARCP回路でソフトスイッチングの共振動作をさせるに際し、ローサイドの一次巻線に対する励磁がハイサイドの一次巻線に逆起電力を発生させることがなく、またハイサイドの一次巻線に対する励磁がローサイドの一次巻線に逆起電力を発生させることもない。その結果、ARCP回路のハイサイド部分にもローサイド部分にも従来例のように逆流防止用のダイオードを挿入する必要がなくなり、その逆流防止用のダイオードで消費される電力を節約することが可能となる。
【0050】
また、整流回路において第1の平滑コンデンサへ充電を行わせるために備える整流ダイオードの回路構成を簡素化して、その整流ダイオードでの損失を低減することが可能となる。
【0051】
上記構成の本発明の双方向DC/DCコンバータには、次のような好ましい態様がある。すなわち、
前記ハイサイドおよびローサイドの二次巻線はいずれもセンタータップ方式の巻線に構成され、
前記ハイサイドのセンタータップ方式の二次巻線は、その一端および他端がそれぞれ整流ダイオードを介して前記ハイサイドラインに接続され、そのセンタータップが前記ローサイドラインに直接に接続され、
前記ローサイドのセンタータップ方式の二次巻線は、その一端および他端がそれぞれ整流ダイオードを介して前記ローサイドラインに接続され、そのセンタータップが前記ハイサイドラインに直接に接続されている、という態様がある。このように構成すれば、放電モードと充電モードの両モードですべての整流ダイオードを導通させる必要がなく、各モード専用の整流ダイオードの状態で配線すればよいので、整流ダイオードでの損失を低減する構成が簡単になる。
【0052】
また、本発明による別の双方向DC/DCコンバータは、
一方端側のハイサイド入出力端子とローサイド入出力端子との間に接続された第1の平滑コンデンサと、
他方端側のハイサイド入出力端子とローサイド入出力端子との間に接続された第2の平滑コンデンサと、
前記一方端側のハイサイド入出力端子と前記他方端側のハイサイド入出力端子とを接続するハイサイドラインに挿入されたハイサイドのメインスイッチング素子と出力用のリアクトルとの直列回路と、
前記一方端側のローサイド入出力端子と前記他方端側のローサイド入出力端子とを接続するローサイドラインと、前記ハイサイドのメインスイッチング素子と前記出力用のリアクトルを接続する第1の接続ノードとの間に挿入されたローサイドのメインスイッチング素子と、
前記ハイサイドラインと前記ローサイドラインとの間に接続されたARCP回路とを備え、
前記ARCP回路は転流制御回路と整流回路からなり、
前記転流制御回路は、
前記第1の接続ノードに一端が接続された共振用のリアクトルと、前記共振用のリアクトルの他端に接続されたトランスと、前記トランスの一次巻線と前記ハイサイドラインとの間に接続されたハイサイドの転流用スイッチング素子と、前記トランスの一次巻線と前記ローサイドラインとの間に接続されたローサイドの転流用スイッチング素子とを有し、
前記整流回路は、前記トランスの二次巻線に誘起される電力を受電可能な状態で前記ハイサイドラインと前記ローサイドラインとの間に接続され、前記第1の平滑コンデンサに対して前記ハイサイドライン側から前記ローサイドライン側に向けた一方向にのみ電流を供給するように構成され、
前記トランスは、
前記一次巻線がセンタータップを境にハイサイド一次巻線部分とローサイド一次巻線部分とからなり、前記センタータップが前記共振用のリアクトルに接続され、前記ハイサイド一次巻線部分が前記ハイサイドの転流用スイッチング素子と接続され、前記ローサイド一次巻線部分が前記ローサイドの転流用スイッチング素子に接続されているとともに、前記ハイサイド一次巻線部分と前記ローサイド一次巻線部分とは互いに逆方向に巻かれていることを特徴とする。
【0053】
転流制御回路と整流回路との磁気結合のための構成要素であるトランスについて、センタータップ方式の一次巻線を有するタイプのトランスであっても、その一次巻線におけるハイサイド一次巻線部分とローサイド一次巻線部分との巻き方向を互いに逆にすることで、動作上、使用していない側の巻線に発生する電圧によって電流が流れるルートが存在しない。具体的には、ARCP回路でソフトスイッチングの共振動作をさせるに際し、ローサイドの転流用スイッチング素子を導通させた際にハイサイド一次巻線部分に電圧が発生しても当該発生した電圧により電流が流れるルートが存在しない。また、ハイサイドの転流用スイッチング素子を導通させた際にローサイド一次巻線部分に電圧が発生しても当該発生した電圧により電流が流れるルートが存在しない。その結果、ARCP回路のハイサイド部分にもローサイド部分にも従来例のように逆流防止用のダイオードを挿入する必要がなくなり、その逆流防止用のダイオードで消費される電力を節約することが可能となる。
【0054】
また、整流回路において第1の平滑コンデンサへ充電を行わせるために備える整流ダイオードの回路構成を簡素化して、その整流ダイオードでの損失を低減することが可能となる。
【0055】
上記の磁気結合を相殺する方式の本発明の双方向DC/DCコンバータには、次のような好ましい態様がある。すなわち、前記二次巻線はセンタータップ方式の巻線に構成され、このセンタータップ方式の二次巻線はその一端および他端がそれぞれ整流ダイオードを介して前記ハイサイドラインに接続されている、という態様がある。このように構成すれば、第1の平滑コンデンサに対してハイサイドライン側からローサイドライン側に向けた一方向にのみ電流を供給する整流回路について、その回路構成を簡素化することが可能となる。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、ARCP回路でソフトスイッチングの共振動作において、ローサイドの一次巻線とハイサイドの一次巻線との励磁の相互干渉をなくして、あるいはハイサイド一次巻線部分とローサイド一次巻線部分どうし間の二次巻線を介しての磁気結合を実質的に相殺することにより逆起電力の発生を防止するので、従来必要とした逆流防止用のダイオードを省略でき、電力消費の節約を図ることができる。また、第1の平滑コンデンサを充電するための整流ダイオードの回路構成を簡素化して、ダイオード損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例における双方向DC/DCコンバータの構成を示す回路図
【図2】実施例の双方向DC/DCコンバータの動作説明図(その1)
【図3】実施例の双方向DC/DCコンバータの動作説明図(その2)
【図4】実施例の双方向DC/DCコンバータの動作説明図(その3)
【図5】実施例の双方向DC/DCコンバータの動作説明図(その4)
【図6】実施例の双方向DC/DCコンバータの動作説明図(その5)
【図7】実施例の双方向DC/DCコンバータの動作説明図(その6)
【図8】本発明の別の実施例における双方向DC/DCコンバータの構成を示す回路図
【図9】本発明のさらに別の実施例における双方向DC/DCコンバータの構成を示す回路図
【図10】本発明のさらに別の実施例における双方向DC/DCコンバータの構成を示す回路図
【図11】従来の双方向DC/DCコンバータの構成を示す回路図
【図12】従来の双方向DC/DCコンバータの動作説明図(その1)
【図13】従来の双方向DC/DCコンバータの動作説明図(その2)
【図14】従来の双方向DC/DCコンバータの動作説明図(その3)
【図15】従来の双方向DC/DCコンバータの動作説明図(その4)
【図16】従来の双方向DC/DCコンバータの動作説明図(その5)
【図17】従来の双方向DC/DCコンバータの動作説明図(その6)
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、上記構成の本発明の双方向DC/DCコンバータにつき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。
【0059】
〔実施例〕
図1は本発明の実施例における双方向DC/DCコンバータの構成を示す回路図である。図1において、Tp1はインバータ側(本発明の「一方端側」)のハイサイド入出力端子、Tn1はインバータ側のローサイド入出力端子、Tp2はバッテリ側(本発明の「他方端側」)のハイサイド入出力端子、Tn2はバッテリ側のローサイド入出力端子、L1はハイサイド入出力端子Tp1とハイサイド入出力端子Tp2とを接続するハイサイドライン、L2はローサイド入出力端子Tn1とローサイド入出力端子Tn2とを接続するローサイドライン、C1はインバータ側のハイサイド入出力端子Tp1とローサイド入出力端子Tn1との間に接続された第1の平滑コンデンサ、C2はバッテリ側のハイサイド入出力端子Tp2とローサイド入出力端子Tn2との間に接続された第2の平滑コンデンサ、Qm1はハイサイドのメインスイッチング素子(NMOSトランジスタ)、Qm2はローサイドのメインスイッチング素子(NMOSトランジスタ)、Dm1はハイサイドのメインスイッチング素子Qm1の両端子間(ドレイン・ソース間)の逆並列接続のダイオード(寄生ダイオード)、Cr1は同じ両端子間の共振用のコンデンサ、Dm2はローサイドのメインスイッチング素子Qm2の両端子間(ドレイン・ソース間)の逆並列接続のダイオード(寄生ダイオード)、Cr2は同じ両端子間の共振用のコンデンサ、Loutは出力用のリアクトルである。
【0060】
ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1と出力用のリアクトルLoutとの直列回路がハイサイドラインL1に挿入されている。ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1はそのドレインがインバータ側のハイサイド入出力端子Tp1に接続され、そのソースが出力用のリアクトルLoutの一端に接続され、出力用のリアクトルLoutの他端がバッテリ側のハイサイド入出力端子Tp2に接続されている。ローサイドのメインスイッチング素子Qm2は、そのドレインがハイサイドのメインスイッチング素子Qm1と出力用のリアクトルLoutとの接続点である第1の接続ノードN1に接続され、そのソースがローサイドラインL2に接続されている。
【0061】
10はハイサイドラインL1とローサイドラインL2との間に接続されたARCP(補助共振転流ポール)回路であり、転流制御回路11と整流回路12を備えている。
【0062】
転流制御回路11の構成要素として、Lrは共振用のリアクトル、Qt1はハイサイドの転流用スイッチング素子(NMOSトランジスタ)、Qt2はローサイドの転流用スイッチング素子(NMOSトランジスタ)である。共振用のリアクトルLrの一端は第1の接続ノードN1に接続され、共振用のリアクトルLrの他端はトランス(後述する第2の接続ノードN2)に接続されている。整流回路12の構成要素として、DH1,DH2,DL1,DL2は整流ダイオードである。ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1は、トランスの一次巻線とハイサイドラインL1との間に接続され、ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2は、トランスの一次巻線とローサイドラインL2との間に接続されている。トランスは、転流制御回路11と整流回路12を磁気結合するハイサイドのトランスT1と、同じく転流制御回路11と整流回路12を磁気結合するローサイドのトランスT2とを有し、ハイサイドのトランスT1はハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1に接続されたハイサイドの一次巻線NH1とセンタータップ構成のハイサイドの二次巻線NH2を有し、ローサイドのトランスT2はローサイドの転流用スイッチング素子Qt2に接続されたローサイドの一次巻線NL1とセンタータップ構成のローサイドの二次巻線NL2を有している。
【0063】
ハイサイドラインL1とローサイドラインL2との間で、ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1とハイサイドのトランスT1の一次巻線NH1とローサイドの一次巻線NL1とローサイドの転流用スイッチング素子Qt2との直列回路が接続されている。ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1のドレインはハイサイドラインL1に接続され、ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2のソースがローサイドラインL2に接続されている。
【0064】
ARCP回路10における転流制御回路11の共振用のリアクトルLrとハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1の直列回路は、第1の接続ノードN1とハイサイドラインL1との間に接続されている。共振用のリアクトルLrは、ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1、ローサイドのメインスイッチング素子Qm2および出力用のリアクトルLoutを共通に接続する第1の接続ノードN1と、ハイサイドの一次巻線NH1とローサイドの一次巻線NL1とを接続する第2の接続ノードN2との間に接続されている。
【0065】
ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1のソースと第2の接続ノードN2との間にハイサイドの一次巻線NH1が接続され、ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2のドレインと第2の接続ノードN2との間にローサイドの一次巻線NL1が接続されている。すなわち、ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1とローサイドの転流用スイッチング素子Qt2との間に挿入されるトランスの一次巻線として、第2の接続ノードN2を間に挟む状態で、ハイサイドの一次巻線NH1とローサイドの一次巻線NL1とが分離された状態に配置されている。これら一次巻線NH1,NL1は、ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1とローサイドの転流用スイッチング素子Qt2とを直列に繋ぐラインに挿入されている。このように、ハイサイドラインL1と第2の接続ノードN2との間にハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1とハイサイドの一次巻線NH1との直列回路が接続されるとともに、ローサイドラインL2と第2の接続ノードN2との間にローサイドの転流用スイッチング素子Qt2とローサイドの一次巻線NL1との直列回路が接続されている。
【0066】
整流回路12において、カソードがハイサイドラインL1に接続された整流ダイオードDH1と整流ダイオードDH2は、それぞれのアノードがハイサイドの二次巻線NH2の一端と他端に接続され、その二次巻線NH2のセンタータップがローサイドラインL2に接続されている。また、アノードがローサイドラインL2に接続された整流ダイオードDL1と整流ダイオードDL2は、それぞれのカソードがローサイドの二次巻線NL2の一端と他端に接続され、その二次巻線NL2のセンタータップがハイサイドラインL1に接続されている。整流回路12は、ハイサイドおよびローサイドのトランスT1,T2の二次巻線NH2,NL2に誘起される電力を受電可能な状態でハイサイドラインL1とローサイドラインL2との間に接続されている。整流回路12における整流ダイオードDH1,DH2,DL1,DL2のいずれも、第1の平滑コンデンサC1に対してハイサイドラインL1側からローサイドラインL2側に向けた一方向にのみ電流を供給する。
【0067】
ハイサイドの一次巻線NH1は、ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1と、第2の接続ノードN2とハイサイドラインL1との間に挿入されている。また、ローサイドの一次巻線NL1は、ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2と、第2の接続ノードN2との間に挿入されている。ハイサイドの二次巻線NH2は、ハイサイドの一次巻線NH1に磁気結合した状態で整流回路12に接続されている。また、ローサイドの二次巻線NL2は、ローサイドの一次巻線NL1に磁気結合した状態で整流回路12に接続されている。
【0068】
次に、上記のように構成された実施例の双方向DC/DCコンバータの動作を説明する。
【0069】
(A)放電モード
(A1)出力用のリアクトルLoutの放電(図2(a)参照)
ハイサイドおよびローサイドのメインスイッチング素子Qm1,Qm2、ハイサイドおよびローサイドの転流用スイッチング素子Qt1,Qt2のいずれもがオフ状態にあって、出力用のリアクトルLoutがエネルギーを放出し、第2の平滑コンデンサC2に並列接続されたバッテリB→出力用のリアクトルLout→ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1の逆並列接続の寄生ダイオードDm1→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→バッテリBの経路で電流が流れる。ここで、第1の平滑コンデンサC1間の印加電圧、すなわち、端子Tp1と端子Tn1間の電圧は当該端子間に接続された双方向インバータに出力され、双方向インバータを介して端子Tp1から端子Tn1に向けて電流が流れる。これは、転流動作以前の定常状態である。転流前にあっては、転流制御回路11には電流は流れず、整流回路12にも電流は流れない。
【0070】
(A2)転流開始(図2(b)参照)
転流制御回路11におけるローサイドの転流用スイッチング素子Qt2がターンオンされる。すると、上記(A1)でハイサイドのメインスイッチング素子Qm1の逆並列接続の寄生ダイオードDm1を流れていた電流が徐々にローサイドの転流用スイッチング素子Qt2の側に転流し、バッテリB→出力用のリアクトルLout→共振用のリアクトルLr→ローサイドの一次巻線NL1→ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2→バッテリBの経路で電流が流れる。
【0071】
ローサイドの一次巻線NL1からローサイドの二次巻線NL2に誘起された電力により、整流回路12において、二次巻線NL2の上半分→センタータップ→ハイサイドラインL1→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→整流ダイオードDL1→二次巻線NL2の上半分の経路と、二次巻線NL2の下半分→センタータップ→ハイサイドラインL1→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→整流ダイオードDL2→二次巻線NL2の下半分の経路とに電流が流れ、バッテリBの放電によって第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)に対する充電が行われる。この場合、整流回路12において導通状態となっている整流ダイオードはDL1,DL2の2つのみであり、DH1,DH2の2つには電流が流れない
【0072】
(A3)LC共振(図3(a)参照)
上記(A2)の状態で共振用のリアクトルLrを流れる電流が出力用のリアクトルLoutを流れる電流を超えると、共振用のコンデンサCr1,Cr2が充放電を開始する。すなわち、共振用のコンデンサCr1→共振用のリアクトルLr→ローサイドの一次巻線NL1→ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2→ローサイドラインL2→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→ハイサイドラインL1→共振用のコンデンサCr1の経路と、共振用のコンデンサCr2→共振用のリアクトルLr→一次巻線NL1→ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2→ローサイドラインL2→共振用のコンデンサCr2の経路で電流が流れ、共振動作が開始される。
【0073】
なお、整流回路12での電流の流れは上記(A2)と同様のものとなる(図2(b)参照)。この場合も、整流回路12において導通状態となっている整流ダイオードはDL1,DL2の2つのみであり、DH1,DH2の2つには電流が流れない。
【0074】
(A4)定常状態への遷移(図3(b)参照)
そして、共振用のコンデンサCr2の両端電圧つまりローサイドのメインスイッチング素子Qm2の印加電圧が0レベルになった時点でそのメインスイッチング素子Qm2がターンオンする。このメインスイッチング素子Qm2のターンオンは、高周波共振現象によるソフトスイッチング(ゼロ電圧スイッチング(ZVS))を利用するものであり、スイッチングロスが軽減されている。
【0075】
ローサイドのメインスイッチング素子Qm2がターンオンした時点から共振用のリアクトルLrに流れる電流が徐々に減少し、それまでバッテリB→出力用のリアクトルLout→共振用のリアクトルLr→ローサイドの一次巻線NL1→ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2→バッテリBの経路で流れていた電流が、バッテリB→出力用のリアクトルLout→ローサイドのメインスイッチング素子Qm2→バッテリBの経路の流れへと遷移する。
【0076】
なお、整流回路12での電流の流れは上記(A2),(A3)と同様のものとなる(図2(b)、図3(a)参照)。この場合も、整流回路12において導通状態となっている整流ダイオードはDL1,DL2の2つのみであり、DH1,DH2の2つには電流が流れない。
【0077】
(A5)定常状態(図4(a)参照)
共振用のリアクトルLrの電流が無くなり、ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2がターンオフする。この転流用スイッチング素子Qt2のターンオフはソフトスイッチング(ゼロ電流スイッチング(ZCS))を利用するものであり、スイッチングロスが軽減されている。この定常状態では、電流は、バッテリB→出力用のリアクトルLout→ローサイドのメインスイッチング素子Qm2→バッテリBの経路のみを流れることになる。したがって、出力用のリアクトルLoutがエネルギーを蓄積する。
【0078】
ローサイドの一次巻線NL1には電流が流れないので、整流回路12では電流は流れない。
【0079】
(A6)転流開始(図4(b)参照)
ローサイドのメインスイッチング素子Qm2がターンオフされる。その瞬間から電流が共振用のコンデンサCr2へ転流し、共振用のコンデンサCr2へ充電が行われる。メインスイッチング素子Qm2の両端電圧がゆっくり上昇するのに対し、電流は素早く共振用のコンデンサCr2へ転移するため、スイッチングロスはほとんど生じない。
【0080】
上記の(A1)〜(A6)のように推移する動作において、転流制御回路11から整流回路12への磁気結合による電磁誘導の状態は次のようになっている。
【0081】
上記において、ARCP回路10における転流制御回路11と整流回路12との間を磁気結合するトランスとして、ハイサイドの充電用トランスT1とローサイドの放電用トランスT2とに画然と分離し、相互に一方の動作が他方に影響を与えることがないようにしている。
【0082】
放電モードにおいて、ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2をオンにすることでローサイドの放電用トランスT2の一次巻線NL1に電流を流すとき、磁気結合によって整流回路12でセンタータップ方式の二次巻線NL2に電流が誘起されるが、ハイサイドのトランスT1とローサイドの放電用トランスT2とが実質的に磁気結合することなく互いに分離配置されていることから、この二次巻線NL2に流れる電流が従来例のようにハイサイドの一次巻線NH1に上向きの逆起電力Eを発生させるということは起こらない。すなわち、転流制御回路11に逆流が生じることはないので、転流制御回路11のハイサイド部分に従来例のような逆流防止用のダイオードDG1を挿入する必要がない。
【0083】
(B)充電モード
(B1)出力用のリアクトルLoutの蓄電(図5(a)参照)
ハイサイドおよびローサイドのメインスイッチング素子Qm1,Qm2、ハイサイドおよびローサイドの転流用スイッチング素子Qt1,Qt2のいずれもがオフ状態にあって、出力用のリアクトルLoutがエネルギーを蓄積し、バッテリB→ローサイドのメインスイッチング素子Qm2の逆並列接続の寄生ダイオードDm2→出力用のリアクトルLout→バッテリBの経路で電流が流れ、バッテリBに対し充電が行われる。これは、転流動作以前の定常状態である。転流前にあっては、転流制御回路11には電流は流れず、整流回路12にも電流は流れない。
【0084】
(B2)転流開始(図5(b)参照)
転流制御回路11におけるハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1がターンオンされる。すると、上記(B1)でローサイドのメインスイッチング素子Qm2の逆並列接続の寄生ダイオードDm2→出力用のリアクトルLout→バッテリBの経路を流れていた電流が徐々に転流し、第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1→ハイサイドの一次巻線NH1→共振用のリアクトルLr→出力用のリアクトルLout→バッテリB→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)の経路での電流に遷移する。すなわち、双方向インバータから端子Tp1と端子Tn1間に出力された電圧が第1の平滑コンデンサC1間に印加され、バッテリBを充電しつつ双方向DC/DCコンバータを介して端子Tp1から端子Tn1に向けて電流が流れる。
【0085】
ハイサイドの一次巻線NH1からハイサイドの二次巻線NH2に誘起された電力により、整流回路12において、二次巻線NH2の上半分→整流ダイオードDH1→第1の平滑コンデンサC1→センタータップ→二次巻線NH2の上半分の経路と、二次巻線NH2の下半分→整流ダイオードDH2→第1の平滑コンデンサC1→センタータップ→二次巻線NH2の下半分の経路とに電流が流れ、バッテリBへの充電とともに第1の平滑コンデンサC1に対する充放電が行われる。この場合、整流回路12において導通状態となっている整流ダイオードはDH1,DH2の2つのみであり、DL1,DL2の2つには電流が流れない。
【0086】
(B3)LC共振(図6(a)参照)
上記(B2)の状態で共振用のリアクトルLrを流れる電流が出力用のリアクトルLoutを流れる電流を超えると、共振用のコンデンサCr1,Cr2が充放電を開始する。すなわち、共振用のコンデンサCr1→ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1→ハイサイドの一次巻線NH1→共振用のリアクトルLr→共振用のコンデンサCr1の経路と、共振用のコンデンサCr2→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1→ハイサイドの一次巻線NH1→共振用のリアクトルLr→共振用のコンデンサCr2の経路で電流が流れ、共振動作が開始される。
【0087】
なお、整流回路12での電流の流れは上記(B2)と同様のものとなる(図5(b)参照)。この場合も、整流回路12において導通状態となっている整流ダイオードはDH1,DH2の2つのみであり、DL1,DL2の2つには電流が流れない。
【0088】
(B4)定常状態への遷移(図6(b)参照)
そして、共振用のコンデンサCr1の両端電圧つまりハイサイドのメインスイッチング素子Qm1の印加電圧が0レベルになった時点でそのメインスイッチング素子Qm1がターンオンする。このメインスイッチング素子Qm1のターンオンは、高周波共振現象によるソフトスイッチング(ゼロ電圧スイッチング(ZVS))を利用するものであり、スイッチングロスが軽減されている。
【0089】
ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1がターンオンした時点から共振用のリアクトルLrに流れる電流が徐々に減少し、それまで第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1→ハイサイドの一次巻線NH1→共振用のリアクトルLr→出力用のリアクトルLout→バッテリB→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)の経路で流れていた電流が、第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1→出力用のリアクトルLout→バッテリB→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)の経路の流れへと遷移する。
【0090】
なお、整流回路12での電流の流れは上記(B2),(B3)と同様のものとなる(図5(b)、図6(a)参照)。この場合も、整流回路12において導通状態となっている整流ダイオードはDH1,DH2の2つのみであり、DL1,DL2の2つには電流が流れない。
【0091】
(B5)定常状態(図7(a)参照)
共振用のリアクトルLrの電流が無くなり、ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1がターンオフする。この転流用スイッチング素子Qt1のターンオフはソフトスイッチング(ゼロ電流スイッチング(ZCS))を利用するものであり、スイッチングロスが軽減されている。この定常状態では、電流は、第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1→出力用のリアクトルLout→バッテリB→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)の経路のみを流れることになる。したがって、出力用のリアクトルLoutがエネルギーを放出する。
【0092】
ハイサイドの一次巻線NH1には電流が流れないので、整流回路12では電流は流れない。
【0093】
(B6)転流開始(図7(b)参照)
ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1がターンオフされる。その瞬間から電流が共振用のコンデンサCr1へ転流し、共振用のコンデンサCr1へ充電が行われる。メインスイッチング素子Qm1の両端電圧がゆっくり上昇するのに対し、電流は素早く共振用のコンデンサCr1へ転移するため、スイッチングロスはほとんど生じない。この状態では、電流は、第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)→共振用のコンデンサCr1→出力用のリアクトルLout→バッテリB→第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)の経路のみを流れることになる。
【0094】
上記の(B1)〜(B6)のように推移する動作において、転流制御回路11から整流回路12への磁気結合による電磁誘導の状態は次のようになっている。
【0095】
充電モードにおいて、ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1をオンにすることでハイサイドの充電用トランスT1の一次巻線NH1に電流を流すとき、磁気結合によって整流回路12でセンタータップ方式の二次巻線NH2に電流が誘起されるが、ハイサイドの充電用トランスT1とローサイドのトランスT2とが実質的に磁気結合することなく互いに分離配置されていることから、この二次巻線NH2に流れる電流が従来例のようにローサイドの一次巻線NL1に上向きの逆起電力Eを発生させるということは起こらない。すなわち、転流制御回路11に逆流が生じることはないので、転流制御回路11のローサイド部分に従来例のような逆流防止用のダイオードDG2を挿入する必要がない。
【0096】
さらに、整流回路12におけるダイオード損失も低減することができる。放電モードにあっては、ローサイドの二次巻線NL2に誘起された電流が第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)へ流入するときに通るダイオードの個数は、整流ダイオードDL1,DL2の2つである(図2(b)、図3(a),(b)参照)。また、充電モードにあっては、ハイサイドの二次巻線NH2に誘起された電流が第1の平滑コンデンサC1(双方向インバータ)へ流入するときに通るダイオードの個数は、整流ダイオードDH1,DH2の2つである(図5(b)、図6(a),(b)参照)。
【0097】
従来例の場合には、放電モードでも充電モードでも、誘起された電流が通るダイオードの個数は整流ダイオードDH1,DH2,DL1,DL2の4つすべてである。したがって、本発明実施例の場合には、整流回路12におけるダイオード損失を半減することができる。
【0098】
なお、ARCP回路10における整流回路12の構成について、本発明の別の実施例として図8の回路図のように構成してもよい。
【0099】
図8において、D1,D2はそれぞれ、カソードコモン型の1パッケージ2素子入りの整流ダイオードである。すなわち、2素子入りの第1の整流ダイオードD1は、1つのパッケージに2つのダイオード素子d11,d12が内蔵され、それぞれのカソードどうしがパッケージ内で接続されている。同様に、第2の整流ダイオードD2も、1つのパッケージに2つのダイオード素子d21,d22が内蔵され、それぞれのカソードどうしがパッケージ内で接続されている。
【0100】
第1の整流ダイオードD1は第1のトランスT1の二次巻線NH2と第2のトランスT2の二次巻線NL2の両方に関連付けられており、第2の整流ダイオードD2も第1のトランスT1の二次巻線NH2と第2のトランスT2の二次巻線NL2の両方に関連付けられている。
【0101】
すなわち、第1の整流ダイオードD1における一方のダイオード素子d11は、そのアノードが第1のトランスT1の二次巻線NH2の一端(上側端部)に接続され、他方のダイオード素子d12は、そのアノードが第2のトランスT2の二次巻線NL2の他端(下側端部)に接続されている。また、第2の整流ダイオードD2における一方のダイオード素子d21は、そのアノードが第1のトランスT1の二次巻線NH2の他端(下側端部)に接続され、他方のダイオード素子d22は、そのアノードが第2のトランスT2の二次巻線NL2の一端(上側端部)に接続されている。
【0102】
図2(b)、図3(a),(b)に相当する動作タイミングではローサイドの二次巻線NL2が励磁されるが、第1の平滑コンデンサC1に対する充電に関与するダイオード素子は、第1の整流ダイオードD1のダイオード素子d12と第2の整流ダイオードD2のダイオード素子d22とであって、充電に関与するダイオード素子が第1の整流ダイオードD1と第2の整流ダイオードD2とに分かれているため、通電に伴う発熱が分散化される。
【0103】
また、図5(b)、図6(a),(b)に相当する動作タイミングではハイサイドの二次巻線NH2が励磁されるが、第1の平滑コンデンサC1に対する充電に関与するダイオード素子は、第1の整流ダイオードD1のダイオード素子d11と第2の整流ダイオードD2のダイオード素子d21とであって、この場合も、充電に関与するダイオード素子が第1の整流ダイオードD1と第2の整流ダイオードD2とに分かれているため、通電に伴う発熱が分散化される。
【0104】
図9はさらに別の実施例における双方向DC/DCコンバータの構成を示す。この実施例では、2つの整流ダイオードD1,D2はそれぞれ、アノードコモン型の1パッケージ2素子入りに構成されている。
【0105】
図2(b)、図3(a),(b)に相当する動作タイミングではローサイドの二次巻線NL2が励磁されるが、第1の平滑コンデンサC1に対する充電に関与するダイオード素子は、第1の整流ダイオードD1のダイオード素子d11と第2の整流ダイオードD2のダイオード素子d21とであって、充電に関与するダイオード素子が第1の整流ダイオードD1と第2の整流ダイオードD2とに分かれているため、通電に伴う発熱が分散化される。
【0106】
また、図5(b)、図6(a),(b)に相当する動作タイミングではハイサイドの二次巻線NH2が励磁されるが、第1の平滑コンデンサC1に対する充電に関与するダイオード素子は、第1の整流ダイオードD1のダイオード素子d12と第2の整流ダイオードD2のダイオード素子d22とであって、この場合も、充電に関与するダイオード素子が第1の整流ダイオードD1と第2の整流ダイオードD2とに分かれているため、通電に伴う発熱が分散化される。
【0107】
さらに、熱分散の別の対策として、図1、図8、図9に符号20で示す熱伝導部材をもって第1のトランスT1と第2のトランスT2との間を機械的に接続するという実施例も好ましい。例えば、第1のトランスT1と第2のトランスT2とを横に2個並べて配置し、互いのトランスのコアどうしを熱伝導シートで接続してもよい。この対策による利点は次のとおりである。
【0108】
上記した本発明実施例においては、第2のトランスT2が動作しているときには第1のトランスT1は不動作であり、逆に、第1のトランスT1が動作しているときには第2のトランスT2は不動作である。つまり、両トランスT1,T2は、一方が動作中は他方は不動作となる。動作中のトランスは発熱するが、不動作のトランスは発熱しない。したがって、動作中のトランスで発生する熱を熱伝導部材20を介して温度の低い他方の不動作のトランスへと逃がすことができ、動作中のトランスの過熱を防止することができる。つまり、一方のトランスの発熱に対して、他方のトランスをヒートシンクとして有効に利用することが可能となる。なお、熱伝導部材20としては、シート状のものが好ましいが、その他の形態であってもよい。
【0109】
図10はさらに別の実施例における双方向DC/DCコンバータの構成を示す。図10において、図1で用いたのと同一符号は同一の構成要素を指すものとし、詳しい説明は省略する。
【0110】
この実施例では、トランスとして、図1の実施例の場合のハイサイドとローサイドとに分離した2つのトランスT1,T2に代えて、一次巻線がセンタータップを境にハイサイド側部分とローサイド側部分とからなるトランスT0′を用いている。換言すれば、ハイサイド一次巻線部分NH1′とローサイド一次巻線部分NL1′とがセンタータップで繋がっている充放電兼用トランスT0′を用いている。この充放電兼用トランスT0′においては、その二次巻線としては、ハイサイド二次巻線部分NH2′とローサイド二次巻線部分NL2′とがセンタータップで繋がったものを用いている。
【0111】
ハイサイド一次巻線部分NH1′とローサイド一次巻線部分NL1′とを繋ぐセンタータップは共振用のリアクトルLrの一端に接続され、ハイサイド一次巻線部分NH1′はハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1と接続され、ローサイド一次巻線部分NL1′はローサイドの転流用スイッチング素子Qt2と接続されている。
【0112】
また、ハイサイド二次巻線部分NH2′とローサイド二次巻線部分NL2′とを繋ぐセンタータップはローサイドラインL2に接続され、ハイサイド二次巻線部分NH2′は整流回路12における整流ダイオードDH1を介してハイサイドラインL1に接続され、ローサイド二次巻線部分NL2′は整流ダイオードDL1を介してハイサイドラインL1に接続されている。
【0113】
そして、ハイサイド一次巻線部分NH1′とローサイド一次巻線部分NL1′とは互いに逆方向に巻かれている。この一次巻線についての逆極性は、巻線部分の脇に記載した巻線の“巻き始め”を示す黒丸の記号「●」の位置によって示されている。ハイサイド一次巻線部分NH1′に対してはその下端に記号「●」が付記されているのに対して、ローサイド一次巻線部分NL1′に対してはその上端に記号「●」が付記されていて、互いに逆極性であることが分かる。
【0114】
バッテリ放電時にローサイドの転流用スイッチング素子Qt2がオン(導通)し、その他のスイッチング素子がオフ(非導通)であると、ローサイド一次巻線部分NL1′に電圧(センタータップ側が高電位)が発生すると同時にハイサイド一次巻線部分NH1′に逆向きの電圧(センタータップ側が高電位)が発生する。ここで、ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1がオフなので、ハイサイド一次巻線部分NH1′に発生した電圧によって電流が流れるルートが存在しない(ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1がオフなので、ハイサイド一次巻線部分NH1′→共振用のリアクトルLr→ハイサイドのメインスイッチング素子Qm1→ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1のルートでは電流が流れない)。電位レベルでみると、ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1のドレイン(ハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1のハイサイドラインL1側の端子)側がプラス電位(高電位)となるため、図11に示す従来の双方向DC−DCコンバータのようにハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1のラインに対して逆流防止用のダイオードDG1を挿入する必要がない。
【0115】
また、バッテリ充電時にハイサイドの転流用スイッチング素子Qt1がオン(導通)し、その他のスイッチング素子がオフ(非導通)であると、ハイサイド一次巻線部分NH1′に電圧(センタータップ側が高電位)が発生すると同時にローサイド一次巻線部分NL1′に逆向きの電圧(センタータップ側が高電位)が発生する。ここで、ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2がオフなので、ローサイド一次巻線部分NL1′に発生した電圧によって電流が流れるルートが存在しない。電位レベルでみると、ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2のドレイン(ローサイドの転流用スイッチング素子Qt2のローサイド一次巻線部分NL1′側の端子)側がプラス電位となるため、図11に示す従来の双方向DC−DCコンバータのようにローサイドの転流用スイッチング素子Qt2のラインに対して逆流防止用のダイオードDG2を挿入する必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、ARCP回路を備えた双方向DC/DCコンバータに関して、変換効率の向上を図る技術として有用である。
【符号の説明】
【0117】
10 ARCP回路
11 転流制御回路
12 整流回路
B バッテリ
C1 第1の平滑コンデンサ
C2 第2の平滑コンデンサ
L1 ハイサイドライン
L2 ローサイドライン
Lout 出力用のリアクトル
Lr 共振用のリアクトル
N1 第1の接続ノード
N2 第2の接続ノード
H1 ハイサイドの一次巻線
L1 ローサイドの一次巻線
H2 ハイサイドの二次巻線
L2 ローサイドの二次巻線
H1′ハイサイド一次巻線部分
L1′ローサイド一次巻線部分
m1 ハイサイドのメインスイッチング素子
m2 ローサイドのメインスイッチング素子
t1 ハイサイドの転流用スイッチング素子
t2 ローサイドの転流用スイッチング素子
p1 インバータ側のハイサイド入出力端子
n1 インバータ側のローサイド入出力端子
p2 バッテリ側のハイサイド入出力端子
n2 バッテリ側のローサイド入出力端子
T1 ハイサイドのトランス
T2 ローサイドのトランス
H1,DH2,DL1,DL2 整流ダイオード
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】