(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2019204969
(43)【公開日】20191128
(54)【発明の名称】発光素子、発光素子パッケージおよび発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/38 20100101AFI20191101BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20191101BHJP
【FI】
   !H01L33/38
   !H01L33/48
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】2019143257
(22)【出願日】20190802
(62)【分割の表示】2017239550の分割
【原出願日】20130225
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
【住所又は居所】京都府京都市右京区西院溝崎町21番地
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤盛 敬雄
【住所又は居所】京都市右京区西院溝崎町21番地 ローム株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】松井 宣明
【住所又は居所】京都市右京区西院溝崎町21番地 ローム株式会社内
【テーマコード(参考)】
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
5F142CA02
5F142CA13
5F142CD02
5F142CD16
5F142CE03
5F142CE16
5F142CG04
5F142CG05
5F142DA02
5F142DA12
5F142DA73
5F142GA11
5F142GA22
5F142GA29
5F241AA42
5F241CA40
5F241CA73
5F241CA74
5F241CA88
5F241CA92
5F241CA93
5F241CB11
(57)【要約】
【課題】製造工程を簡略化でき、製造工程に耐え得る発光素子、これを含む発光素子パッケージおよび発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】発光素子は、第1半導体層と、前記第1半導体層の表面の第1領域に形成された第1ITO層と、前記第1ITO層上に形成された第1メタル層と、前記第1半導体層の表面における前記第1領域以外の第2領域に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第2半導体層と、前記第2半導体層上に形成された第2ITO層と、前記第2ITO層上に形成された第2メタル層とを含む。前記第1メタル層は、前記第1ITO層上に積層された第1Cr層と、前記第1Cr層上に積層された第1Au層とを含む。前記第2メタル層は、前記第2ITO層上に積層された第2Cr層と、前記第2Cr層上に積層された第2Au層とを含む。前記第1ITO層および第2ITO層は、Crを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の表面の第1領域に形成された第1ITO層と、
前記第1ITO層上に形成された第1メタル層と、
前記第1ITO層から離間して前記第1半導体層の表面における前記第1領域以外の第2領域に形成された発光層と、
前記発光層上に形成され、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層上に形成された第2ITO層と、
前記第2ITO層上に形成された第2メタル層とを含み、
前記第1メタル層は、前記第1ITO層上に積層された第1Cr層と、前記第1Cr層上に積層された第1Au層とを含み、
前記第2メタル層は、前記第2ITO層上に積層された第2Cr層と、前記第2Cr層上に積層された第2Au層とを含み、
前記第1ITO層および第2ITO層は、Crを含む、発光素子。
【請求項2】
前記第1ITO層は、前記第1半導体層にオーミック接触していて、
前記第2ITO層は、前記第2半導体層にオーミック接触している、請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第1ITO層と、前記第2ITO層とは、同じ厚さを有する、請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第1メタル層と、前記第2メタル層とは、同一構造を有する、請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記第1Cr層と前記第2Cr層とは同じ厚さを有し、前記第1Au層と前記第2Au層とは同じ厚さを有する、請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
前記第1ITO層は、前記発光層よりも前記基板側に位置している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の発光素子と、
前記発光素子を覆うパッケージとを含む、発光素子パッケージ。
【請求項8】
基板上に第1導電型の第1半導体層を形成する工程と、
前記第1半導体層上に発光層を形成する工程と、
前記発光層上に第2導電型の第2半導体層を形成する工程と、
前記発光層および前記第2半導体層の一部を除去して、前記第1半導体層を露出させる工程と、
前記第1半導体層上および前記第2半導体層上にそれぞれ第1ITO層および第2ITO層を形成する工程と、
前記第1ITO層および前記第2ITO層の形成後に、前記第1ITO層および前記第2ITO層に対して、第1加熱温度による第1加熱処理を施す工程と、
前記第1ITO層上および前記第2ITO層上にそれぞれ第1メタル層および第2メタル層を形成する工程と、
前記第1メタル層および前記第2メタル層の形成後に、前記第1メタル層、前記第2メタル層、前記第1ITO層および前記第2ITO層に対して、前記第1加熱温度よりも低い第2加熱温度による第2加熱処理を施す工程とを含み、
前記第1メタル層を形成する工程は、前記第1ITO層上に第1Cr層を形成する工程と、前記第1Cr層上に第1Au層を形成する工程とを含み、
前記第2メタル層を形成する工程は、前記第2ITO層上に第2Cr層を形成する工程と、前記第2Cr層上に第2Au層を形成する工程とを含み、
前記第2加熱処理を施す工程は、前記第1Cr層、前記第2Cr層、前記第1Au層、前記第2Au層、前記第1ITO層および前記第2ITO層に対して、前記第2加熱温度として300℃以上350℃以下の温度で前記第2加熱処理を施す工程を含む、発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記第2加熱温度は、330℃以上である、請求項8に記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記第1加熱温度は、600℃以上700℃以下である、請求項8または9に記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子、これを含む発光素子パッケージおよび発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1つの先行技術に係る半導体発光素子が特許文献1に開示されている。この半導体発光素子では、サファイア基板上に、低温バッファ層、高温バッファ層、n形層、超格子層、活性層、p形層、透光性導電層が、サファイア基板側からこの順番で積層されている。透光性導電層は、ZnOからなり、その上の一部に、TiとAuとの積層構造によるp側電極が形成されている。また、n形層において露出した部分には、AlとNiとAuとの積層構造によるn側電極が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−354040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、製造工程を簡略化できる発光素子、これを含む発光素子パッケージおよび発光素子の製造方法を提供する。
また、本発明の別の目的は、製造工程に耐え得る発光素子、これを含む発光素子パッケージおよび発光素子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、基板と、前記基板上に形成された第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層の表面の第1領域に形成された第1ITO層と、前記第1ITO層上に形成された第1メタル層と、前記第1ITO層から離間して前記第1半導体層の表面における前記第1領域以外の第2領域に形成された発光層と、前記発光層上に形成され、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層と、前記第2半導体層上に形成された第2ITO層と、前記第2ITO層上に形成された第2メタル層とを含み、前記第1メタル層は、前記第1ITO層上に積層された第1Cr層と、前記第1Cr層上に積層された第1Au層とを含み、前記第2メタル層は、前記第2ITO層上に積層された第2Cr層と、前記第2Cr層上に積層された第2Au層とを含み、前記第1ITO層および第2ITO層は、Crを含む、発光素子である。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記第1ITO層は、前記第1半導体層にオーミック接触していて、前記第2ITO層は、前記第2半導体層にオーミック接触している、請求項1に記載の発光素子である。請求項3記載の発明は、前記第1ITO層と、前記第2ITO層とは、同じ厚さを有する、請求項1または2に記載の発光素子である。請求項4記載の発明は、前記第1メタル層と、前記第2メタル層とは、同一構造を有する、請求項3に記載の発光素子である。請求項5記載の発明は、前記第1Cr層と前記第2Cr層とは同じ厚さを有し、前記第1Au層と前記第2Au層とは同じ厚さを有する、請求項4に記載の発光素子である。請求項6記載の発明は、前記第1ITO層は、前記発光層よりも前記基板側に位置している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発光素子である。請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発光素子と、前記発光素子を覆うパッケージとを含む、発光素子パッケージである。
【0007】
請求項8記載の発明は、基板上に第1導電型の第1半導体層を形成する工程と、前記第1半導体層上に発光層を形成する工程と、前記発光層上に第2導電型の第2半導体層を形成する工程と、前記発光層および前記第2半導体層の一部を除去して、前記第1半導体層を露出させる工程と、前記第1半導体層上および前記第2半導体層上にそれぞれ第1ITO層および第2ITO層を形成する工程と、前記第1ITO層および前記第2ITO層の形成後に、前記第1ITO層および前記第2ITO層に対して、第1加熱温度による第1加熱処理を施す工程と、前記第1ITO層上および前記第2ITO層上にそれぞれ第1メタル層および第2メタル層を形成する工程と、前記第1メタル層および前記第2メタル層の形成後に、前記第1メタル層、前記第2メタル層、前記第1ITO層および前記第2ITO層に対して、前記第1加熱温度よりも低い第2加熱温度による第2加熱処理を施す工程とを含み、前記第1メタル層を形成する工程は、前記第1ITO層上に第1Cr層を形成する工程と、前記第1Cr層上に第1Au層を形成する工程とを含み、前記第2メタル層を形成する工程は、前記第2ITO層上に第2Cr層を形成する工程と、前記第2Cr層上に第2Au層を形成する工程とを含み、前記第2加熱処理を施す工程は、前記第1Cr層、前記第2Cr層、前記第1Au層、前記第2Au層、前記第1ITO層および前記第2ITO層に対して、前記第2加熱温度として300℃以上350℃以下の温度で前記第2加熱処理を施す工程を含む、発光素子の製造方法である。請求項9記載の発明は、前記第2加熱温度は、330℃以上である、請求項8に記載の発光素子の製造方法である。請求項10記載の発明は、前記第1加熱温度は、600℃以上700℃以下である、請求項8または9に記載の発光素子の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る発光素子の模式的な平面図である。
【図2】図2は、図1の切断面線II−IIにおける断面図である。
【図3】図3は、発光素子パッケージの構造を図解的に示す断面図である。
【図4】図4は、発光素子の製造方法を示したフローチャートである。
【図5A】図5Aは、図2に示す発光素子の製造方法を示す図解的な断面図である。
【図5B】図5Bは、図5Aの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図5C】図5Cは、図5Bの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図5D】図5Dは、図5Cの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図5E】図5Eは、図5Dの次の工程を示す図解的な断面図である。
【図6】図6は、第1加熱温度と発光素子1の電気的特性との関係を示すグラフである。
【図7】図7は、第2加熱温度と発光素子1の電気的特性との関係を示すグラフである。
【図8】図8は、第2加熱温度と発光素子1の電気的特性との別の関係を示すグラフである。
【図9】図9は、第2加熱温度と発光素子1(発光素子パッケージ50)の強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る発光素子の模式的な平面図である。図2は、図1の切断面線II−IIにおける断面図である。
図2を参照して、この発光素子1は、基板2と、第1導電型半導体層3と、発光層4と、第2導電型半導体層5と、第1ITO層6と、第2ITO層7と、第1メタル層8と、第2メタル層9とを含んでいる。
【0010】
基板2は、発光層4の発光波長(たとえば450nm)に対して透明な材料(たとえばサファイア、GaNまたはSiCであり、この実施形態ではサファイア)からなる。「発光波長に対して透明」とは、具体的には、たとえば、発光波長の透過率が60%以上の場合をいう。基板2の厚さ方向(以下では、単に「厚さ方向」という)から見た平面視(以下では、単に「平面視」という)における基板2の形状は、矩形状(この実施形態では略正方形状)である(図1参照)。基板2の厚さは、たとえば、100μmである。基板2では、図2における上面が表面2Aであり、図2における下面が裏面2Bである。表面2Aは、基板2における第1導電型半導体層3との接合面である。表面2Aには、第1導電型半導体層3側へ突出する凸部17が複数形成されている。複数の凸部17は、離散配置されている。具体的には、複数の凸部17は、表面2Aにおいて、互いに間隔を空けて行列状に配置されていてもよいし、千鳥状に配置されていてもよい。各凸部17は、SiNで形成されていてもよい。
【0011】
第1導電型半導体層3は、基板2上に積層されている。第1導電型半導体層3は、基板2の表面2Aの全域を覆っている。第1導電型半導体層3は、n型のGaN(n−GaN)からなり、発光層4の発光波長に対して透明である。第1導電型半導体層3について、図2において基板2の裏面2Bを覆う下面を裏面3Aといい、裏面3Aとは反対側の上面を表面3Bということにする。表面3Bでは、図2における左側の領域が部分的に突出しており、これにより、表面3Bには、厚さ方向に沿う段差3Cが形成されている。表面3Bにおいて、図2で段差3Cより右側にあり、裏面3A側へ向かって低くなった領域を、第1領域3Dといい、図2で段差3Cより左側の突出した領域を、第2領域3Eということにする。平面視において、第1領域3Dは、表面3Bの略4分の1を占めていて、第2領域3Eは、表面3Bの略4分の3を占める略L字形状をなしている(図1参照)。
【0012】
発光層4は、第1導電型半導体層3の第2領域3E上に積層されている。発光層4は、第1導電型半導体層3の表面3Bにおける第2領域3Eの全域を覆っている。そのため、平面視において、発光層4と第2領域3Eとは一致している。発光層4は、Inを含む窒化物半導体(たとえばInGaN)からなる。
第2導電型半導体層5は、発光層4上に積層されている。これにより、発光層4は、第1導電型半導体層3と第2導電型半導体層5とによって厚さ方向から挟まれている。第2導電型半導体層5は、p型のGaN(p−GaN)からなり、発光層4の発光波長に対して透明である。第2導電型半導体層5は、発光層4における第1導電型半導体層3側とは反対側(図2における上側)の表面の全域を覆っており、平面視において、第2導電型半導体層5と発光層4とは一致している。第2導電型半導体層5において、発光層4側とは反対側(図2における上側)の側面を表面5Aということにする。
【0013】
ここで、第1導電型半導体層3、発光層4および第2導電型半導体層5の積層体は、半導体積層構造部90を構成している。
第1ITO層6は、ITO(酸化インジウム錫)からなり、発光層4の発光波長に対して透明である。第1ITO層6の厚さは、たとえば、1000Å〜2000Åである。第1ITO層6は、第1導電型半導体層3の表面3Bの第1領域3D(第1導電型半導体層3において発光層4が積層された第2領域3E以外の領域)に積層されている。第1導電型半導体層3が基板2上に積層されていることから、第1ITO層6は、第1導電型半導体層3に対して基板2とは反対側に積層されている。第1ITO層6は、第1領域3Dの一部の領域に形成されていることから、第1領域3Dの全域を覆っていない。詳しくは、第1ITO層6は、平面視において、第1領域3Dと相似する形状あり、第1領域3Dの輪郭の内側に位置している(図1も参照)。第1ITO層6において、第1導電型半導体層3側とは反対側(図2における上側)の側面を表面6Aということにする。
【0014】
第2ITO層7は、第1ITO層6と同じ材料(ITO)からなり、第1ITO層6と同じ厚さを有する。第2ITO層7は、第2導電型半導体層5の表面5Aに積層されている。第2導電型半導体層5が第1導電型半導体層3および発光層4を介して基板2上に積層されていることから、第2ITO層7は、第2導電型半導体層5に対して基板2とは反対側に積層されている。第2ITO層7は、第2導電型半導体層5の表面5Aの一部の領域に形成されていることから、表面5Aの全域を覆っていない。詳しくは、第2ITO層7は、平面視において、第2導電型半導体層5と相似する形状(換言すれば、第2領域3Eと相似する略L字形状)あり、表面5Aの輪郭の内側に位置している(図1も参照)。第2ITO層7において、第2導電型半導体層5側とは反対側(図2における上側)の側面を表面7Aということにする。
【0015】
第1メタル層8および第2メタル層9は、いわゆるパッドメタルである。第1メタル層8は、第1ITO層6上(第1ITO層6の表面6A)に積層されており、第2メタル層9は、第2ITO層7上(第2ITO層7の表面7A)に積層されている。第1メタル層8と、第2メタル層9とは、同一構造を有している。具体的には、第1メタル層8および第2メタル層9のそれぞれは、第1ITO層6および第2ITO層7において対応するITO層(第1メタル層8の場合は第1ITO層6であり、第2メタル層9の場合は第2ITO層7である)上に積層されたCr層10と、Cr層10上に積層されたAu層11とを含んでいる。つまり、第1メタル層8および第2メタル層9のそれぞれでは、Cr層10が、対応するITO層に接触している。
【0016】
Cr層10は、Cr(クロム)からなる。Au層11は、Au(金)からなる。第1メタル層8と第2メタル層9とにおいて、Cr層10同士は同じ厚さを有し、Au層11同士は同じ厚さを有する。この実施形態では、Cr層10の厚さが、たとえば300Åであって、Au層11の厚さが、たとえば2μmと比較的厚いことから、Cr層10のCrがAu層11表面に移動することが防止されている。
【0017】
平面視において、第1メタル層8は、第1ITO層6の輪郭の内側にあり、第2メタル層9は、第2ITO層7の輪郭の内側にある(図1も参照)。また、第1メタル層8および第2メタル層9のそれぞれにおいて、Cr層10とAu層11とは、平面視で大きさが一致する円形状である(図1も参照)。
ここで、第1メタル層8および第2メタル層9のそれぞれのAu層11において、Cr層10側とは反対側(図2における上側)の側面を表面11Aということにする。また、Cr層10に接触している第1ITO層6および第2ITO層7は、Cr層10のCrを含んでいてもよい。
【0018】
そして、第1ITO層6および第1メタル層8は、第1電極21を構成している。また、第2ITO層7および第2メタル層9は、第2電極22を構成している。前述したように、第1ITO層6と第2ITO層7とが同じ材料で形成されていて同じ厚さを有し、第1メタル層8と第2メタル層9とが同一構造を有していることから、第1電極21と第2電極22とは同一構造を有している。
【0019】
図3は、発光素子パッケージの構造を図解的に示す断面図である。
図3に示す発光素子パッケージ50は、前述した発光素子1と、支持基板51と、パッケージ52とを含んでいる。
支持基板51は、絶縁性材料で形成された絶縁基板53と、絶縁基板53の両端から露出するように設けられて、発光素子1と外部とを電気的に接続する金属製の一対のリード54とを有している。絶縁基板53は、たとえば平面視矩形に形成されており、その対向する一対の辺に沿って一対のリード54がそれぞれ帯状に形成されている。各リード54は、絶縁基板53の一対の端縁に沿っており、たとえば、上面から側面を渡って下面に至るように折り返され、横向きU字形断面を有するように形成されている。
【0020】
発光素子1では、基板2の裏面2Bが、Ag(銀)や半田等(この実施形態ではAg)のペーストからなる接合層60を介して、支持基板51の主面51Aに接合される。発光素子1の第1電極21および第2電極22のそれぞれは、最寄りのリード54に対してボンディングワイヤ61を介して電気的に接続されている。ボンディングワイヤ61は、第1電極21および第2電極22のそれぞれにおけるAu層11の表面11Aに接続されている。
【0021】
パッケージ52は、樹脂が充填されたリング状のケースであり、その内側に発光素子1を収容して(覆って)側方から包囲して保護した状態で、支持基板51に固定されている。この状態で、発光素子1では、光取出し側となる第1電極21および第2電極22がパッケージ52の外部へ露出されている。パッケージ52の内壁面は、発光素子1から出射された光を反射させて外部へ取り出すための反射面52Aを形成している。この実施形態では、反射面52Aは、内方に向かうに従って支持基板51に近づくように傾斜した傾斜面からなり、発光素子1からの光を光取り出し方向(基板2の厚さ方向)に向かって反射するように構成されている。
【0022】
この発光素子パッケージ50において、発光素子1では、各リード54に通電して第1電極21(第1メタル層8)と第2電極22(第2メタル層9)との間に順方向電圧を印加すると、第2電極22から第1電極21へ向かって電流が流れる。電流は、第2ITO層7において平面視における全域に広がり、その後、第2導電型半導体層5、発光層4、第1導電型半導体層3および第1ITO層6を、この順番で流れる。このように電流が流れることによって、第1導電型半導体層3から発光層4に電子が注入され、第2導電型半導体層5から発光層4に正孔が注入され、これらの正孔および電子が発光層4で再結合することにより、波長440nm〜460nmの青色の光が発生する。この光は、第2導電型半導体層5の表面5Aや、第2ITO層7の表面7A等からパッケージ52の外部に取り出される。なお、図3では、外部へ光が向かう方向が白抜き矢印で示されている。
【0023】
この際、発光層4から第1導電型半導体層3側に向かう光も存在し、この光は、第1導電型半導体層3および基板2をこの順で透過する。そして、この光は、基板2と接合層60との界面で反射され、基板2および第1導電型半導体層3を透過した後、第1導電型半導体層3の表面3B(第1領域3D)や、第2導電型半導体層5の表面5Aや、第1ITO層6の表面6Aや、第2ITO層7の表面7A等から外部に取り出される。ここで、基板2の表面2Aに形成された複数の凸部17は、基板2から第1導電型半導体層3へ向かって様々な角度から第1導電型半導体層3の裏面3Aに入射される光が裏面3Aで基板2側へ全反射することを抑制できる。また、各凸部17は、基板2内で乱反射することでとどまっている光を第1導電型半導体層3側へ導くこともできる。よって、光の取り出し効率が向上する。
【0024】
なお、リング状のパッケージ52の内側には、封止樹脂62を充填してもよい。封止樹脂62は、発光素子1の発光波長に対して透明な透明樹脂(たとえば、シリコーンやエポキシなど)からなり、発光素子1およびボンディングワイヤ61などを封止している。また、封止樹脂62を構成する樹脂には、蛍光体や反射剤が含有されているものがある。例えば発光素子1が青色光を発光する場合、当該樹脂に黄色蛍光体を含有させることで発光素子パッケージ50は白色光を発光することができる。
【0025】
なお、発光素子パッケージ50は、多数が集まることによって、電球などの照明機材に用いることもでき、また液晶テレビのバックライトや自動車等のヘッドランプに用いることもできる。
図4は、発光素子の製造方法を示したフローチャートである。図5A〜図5Eは、図2に示す発光素子の製造方法を示す図解的な断面図である。
【0026】
次に、図4および図5A〜図5Eを参照しながら、図2に示す発光素子の製造方法を説明する。
まず、図5Aに示すように、基板2(厳密には、基板2の元となるウエハ)を作製する。
次いで、基板2の表面2Aに、SiNからなる層(SiN層)を形成し、レジストパターン(図示せず)をマスクとするエッチングにより、このSiN層を、図5Bに示すように、複数の凸部17に分離する。
【0027】
次いで、基板2の表面2A上に、前述した半導体積層構造部90(第1導電型半導体層3、発光層4および第2導電型半導体層5の積層体)を形成する(図4のステップS1)。具体的には、図5Bに示すように、基板2の表面2A上に、n型のGaNからなる層(n−GaN層)を形成する。n−GaN層は、第1導電型半導体層3となって基板2上に積層され、全ての凸部17を覆う。次に、図5Cに示すように、第1導電型半導体層3の表面3B上に、Inを含む窒化物半導体層(たとえばInGa1−XN層)を形成する。このInGa1−XN層が、第1導電型半導体層3上に積層される発光層4になる。発光層4における発光の波長は、InおよびGaの組成を調整することで、440nm〜460nmに制御される。次に、図5Cに示すように、発光層4上に、第2導電型半導体層5として、p型のGaNからなる層(p−GaN層)を形成する。
【0028】
次いで、メサ部(第1導電型半導体層3を露出させるための段差3C)を形成する(図4のステップS2)。具体的には、レジストパターン(図示せず)をマスクとするエッチングにより、図5Dに示すように、第1導電型半導体層3の表面3Bの第1領域3Dが露出されるように、第1導電型半導体層3、発光層4および第2導電型半導体層5のそれぞれの一部を選択的に除去する。メサ部が完成すると、半導体積層構造部90が完成する。
【0029】
次いで、完成した半導体積層構造部90上(つまり、第1導電型半導体層3および第2導電型半導体層5に対して基板2とは反対側)に、ITOからなる層(ITO層)を形成する(図4のステップS3)。ITO層は、第1導電型半導体層3の表面3Bの第1領域3Dと、第2導電型半導体層5の表面5Aと、第1導電型半導体層3の段差3Cにおける第1導電型半導体層3、発光層4および第2導電型半導体層5のそれぞれの端面とを連続して覆っている。
【0030】
次いで、たとえばエッチオフ法により、ITO層を、図5Eに示すように、第1導電型半導体層3の第1領域3D上の第1ITO層6と、第2導電型半導体層5上の第2ITO層7とに分離する(図4のステップS4)。
次いで、少なくとも第1ITO層6および第2ITO層7に対して、第1加熱温度(600℃から700℃であり、ここでは650℃)による第1加熱処理を施す(図4のステップS5)。なお、ステップS5は、ステップS4よりも先に行われてもよい。要は、ITO層を形成した後に、ITO層(分離後であれば第1ITO層6および第2ITO層7)に対して第1加熱処理を施せばよい。ここでの第1加熱処理によって、第1導電型半導体層3および第2導電型半導体層5の少なくとも一方(特に、p型の第2導電型半導体層5)とITO層(特に、第2ITO層7)との間におけるオーミック特性を向上することができる。ここでのオーミック特性の向上を確認するため、第1加熱温度を変更したウエハ(発光素子1が形成されたウエハであり、以下同じ)を複数準備した。そして、異なる第1加熱温度毎のウエハ面内において、周期的に並んでいる発光素子1のチップを等間隔で抜き取り、個々のチップに20mAを通電して、各チップにおける順方向電圧(VF)を測定した。各第1加熱温度における個々の発光素子1におけるVFの測定結果は、図6のグラフに示されている。このグラフでは、各第1加熱温度におけるVFの分布(範囲)が縦線で示されており、各第1加熱温度におけるVFの平均値が菱形のドットで示されている。VFが低いほど、オーミック特性が良好であることを示している。このグラフより、第1加熱温度が600℃から700℃の間(600℃以上700℃以下)であれば、600℃未満の場合に比べて、VFが低下し、オーミック特性が向上していることが分かる。
【0031】
次いで、たとえばリフトオフ法により、Crからなる層(Cr層)と、Auからなる層(Au層)とを、この順番で、半導体積層構造部90上に形成する。具体的には、第1ITO層6および第2ITO層7の上部で開口したレジストパターニングの後に、Cr層およびAu層の成膜を行い、レジストパターンを除去すると、残ったCr層およびAu層によって、図2に示すように、第1メタル層8と第2メタル層9とが同時に形成される(図4のステップS6)。つまり、第1ITO層6上および第2ITO層7上のそれぞれにメタル層(第1メタル層8と第2メタル層9)が同時に形成され、第1電極21と第2電極22とが同時に完成する。
【0032】
次いで、第1電極21(第1ITO層6および第1メタル層8)と第2電極22(第2ITO層7および第2メタル層9)とに対して、第1加熱温度よりも低い第2加熱温度(300℃から350℃であり、ここでは350℃)による第2加熱処理を施す(図4のステップS7)。ここでの第2加熱処理によって、第1ITO層6と第1導電型半導体層3との界面の電気特性が向上するので、n型の第1導電型半導体層3と第1ITO層6との間におけるオーミック特性を向上することができる。ここでのオーミック特性の向上を確認するため、第1加熱温度の場合と同様に、第2加熱温度を変更したウエハを複数準備した。そして、異なる第2加熱温度毎のウエハ面内において、周期的に並んでいる発光素子1のチップを等間隔で抜き取り、個々のチップに20mAを通電して、各チップにおけるVFを測定した。各第2加熱温度における個々の発光素子1におけるVFの測定結果は、図7のグラフに示されている。このグラフでは、各第2加熱温度におけるVFの分布(範囲)が縦線で示されており、各第2加熱温度におけるVFの平均値が菱形のドットで示されている。VFが低いほど、オーミック特性が良好であることを示している。このグラフより、第2加熱温度が300℃から350℃の間であれば、300℃未満(特に250℃未満)の場合に比べて、VFが低下し、オーミック特性が向上していることが分かる。
【0033】
また、第2加熱温度に関するオーミック特性の向上を確認するため、別の評価も実施した。第2加熱温度に関するオーミック特性について、第1電極21と第1導電型半導体層3との界面でのVF上昇が懸念される。そこで、ウエハ上で隣り合う(分離前の)2つの発光素子1の第1電極21(図2参照)同士の間に通電した場合における電気特性(I−Vカーブ)を、異なる第2加熱温度毎に測定した。その結果が、図8に示されている。図8のグラフでは、第2加熱処理を行う前の場合(点線参照)、第2加熱温度が200℃である場合(1点鎖線参照)、第2加熱温度が250℃である場合(2点鎖線参照)のそれぞれでは、第1電極21と第1導電型半導体層3とがショットキー接触しており、抵抗が高いことが分かる。一方、第2加熱温度が300℃である場合(実線参照)では、第1電極21と第1導電型半導体層3とがオーミック接触しており、抵抗が急激に低下していることが分かる。つまり、第2加熱温度が300℃以上の第2加熱処理を行うことにより、第1電極21と第1導電型半導体層3との接触がショットキー接触からオーミック接触へと変化し、抵抗値が飛躍的に低下することが分かる。
【0034】
なお、第2加熱温度の(前述した)350℃という値は、第1ITO層6と第1メタル層8との密着性、第2ITO層7と第2メタル層9との密着性、第1ITO層6と第1導電型半導体層3との密着性、および、第2ITO層7と第2導電型半導体層5との密着性に影響を与えないように考慮して設定されている。また、第2加熱処理によって、第1メタル層8におけるCr層10のCrが第1ITO層6に混入したり、第2メタル層9におけるCr層10のCrが第2ITO層7に混入したりするので、前述したように第1ITO層6および第2ITO層7がCrを含むことになる。なお、第1ITO層6や第2ITO層7におけるCrの有無は、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いた元素分析によって判別できる。
【0035】
第1ITO層6および第2ITO層7に含まれるITOは、本来オーミック特性が良好ではないのだが、このように第1加熱処理および第2加熱処理を施すことによって、オーミック特性を劇的に向上させることができる。
以上により、図2に示す構造が形成される。最後に、図2の構造が周期配列で形成されている基板2のウエハをダイシングまたはへき開することで、個々の発光素子1が形成される。
【0036】
この発光素子1では、第1導電型半導体層3および第2導電型半導体層5のそれぞれにおける電極部分(第1電極21および第2電極22)は、いずれも、ITO層上にメタル層を積層した同じ構成になっているので、これらの電極部分は同時に形成できる(前述したステップS6)。これにより、発光素子1の製造工程を簡略化できる。
また、第1電極21および第2電極22のそれぞれにおいて、メタル層(第1メタル層8および第2メタル層9)は、ITO層側のCr層10と、Cr層10に積層されたAu層11とを有している。これにより、第1電極21および第2電極22のそれぞれにおいて、ITO層とメタル層との間の密着性を向上させることができるので、メタル層に対してワイヤ(前述したボンディングワイヤ61)をボンディングする場合にITO層からメタル層が剥がれることを防止できる。このことを実証するために、ボンディング後のボンディングワイヤ61を意図的に引っ張る試験を行った。ITO層とメタル層との間の密着性に問題がなければ、ITO層とメタル層とが剥がれることはなく、代わりに、最も強度が弱いボンディングワイヤ61が切れる結果となる。第2加熱温度を変更した発光素子パッケージ50(ボンディングワイヤ61をボンディングしただけの発光素子1でも構わない)を、第2加熱温度毎に複数(準備数と呼ぶこととし、たとえば100〜140個程度)準備し、各発光素子パッケージ50について試験した。そして、第2加熱温度毎において、準備数のうち、第1電極21および第2電極22の少なくともいずれかでITO層とメタル層とが剥がれた発光素子パッケージ50が占める割合(パッドメタル剥れ発生割合と呼ぶことにする)を調べたところ、図9に示す結果が得られた。図9より、第2加熱温度が300℃から500℃の間では、パッドメタル剥れ発生割合が1%未満と極めて低く、さらに、第2加熱温度が330℃から450℃の間では、パッドメタル剥れが全く発生しないことが分かる。前述したオーミック特性の向上と密着性の向上とを両立させる場合には、第2加熱温度が300℃から350℃(300℃以上350℃以下)にあることが望ましい。
【0037】
また、前述した第1加熱処理(前述したステップS5)や第2加熱処理(前述したステップS7)によって、第1導電型半導体層3および第2導電型半導体層5のそれぞれとITO層との間の密着性を向上できるので、ワイヤボンディングにおいて第1導電型半導体層3および第2導電型半導体層5のそれぞれからITO層が剥がれることも防止できる。
よって、製造工程(具体的には、ワイヤボンディングの工程)に耐え得る発光素子1を提供することができる。
【0038】
以上の他にも、この発明は、様々な形態での実施が可能であり、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
たとえば、SiO等からなる透明な絶縁膜(パッシベーション)によって、第1導電型半導体層3の表面3B(露出されている部分)、第2導電型半導体層5の表面5A、第1ITO層6の表面6Aおよび第2ITO層7の表面7Aを保護のために被覆してもよい。ただし、当該絶縁膜は、第1メタル層8および第2メタル層9にかからない(載らない)ようにすることが好ましい。
【0039】
たとえば、SiNからなる凸部17を形成しない構造でもよい。
たとえば、前述の実施形態では、第1導電型がn型で、第2導電型がp型の例について説明したが、第1導電型をp型とし、第2導電型をn型として発光素子を構成してもよい。すなわち、前述の実施形態において、導電型をp型とn型とで反転した構造も、この発明の一つの実施形態である。また、前述の実施形態では、第1導電型半導体層3および第2導電型半導体層5を構成する窒化物半導体としてGaNを例示したが、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)などの他の窒化物半導体が用いられてもよい。窒化物半導体は、一般には、AlxInyGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)と表わすことができる。また、窒化物半導体に限らず、GaAs等の他の化合物半導体や、化合物半導体以外の半導体材料(たとえばダイヤモンド)を用いた発光素子にこの発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 発光素子
2 基板
2D 第1領域
2E 第2領域
3 第1導電型半導体層
4 発光層
5 第2導電型半導体層
6 第1ITO層
7 第2ITO層
8 第1メタル層
9 第2メタル層
10 Cr層
11 Au層
50 発光素子パッケージ
52 パッケージ
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】