(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021002622
(43)【公開日】20210107
(54)【発明の名称】電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20201204BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20201204BHJP
   H01L 21/50 20060101ALI20201204BHJP
【FI】
   !H01L21/02 B
   !B32B17/10
   !H01L21/50 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】2019116545
(22)【出願日】20190624
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目5番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100121393
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】山田 和夫
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目5番1号 AGC株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】照井 弘敏
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目5番1号 AGC株式会社内
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AG00A
4F100AH06B
4F100AK49C
4F100AK52B
4F100AT00D
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CB00B
4F100EH46
4F100EH66
4F100EJ42
4F100EJ52
4F100EJ85
4F100GB41
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】省エネルギー性に優れた電子デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス製の支持基材と、シリコーン樹脂層またはシランカップリング剤層である接着層と、ポリイミド樹脂基板と、電子デバイス用部材とをこの順に備える電子デバイス用部材付き積層体を準備し、上記電子デバイス用部材付き積層体に上記支持基材側からレーザー光を照射することにより、上記電子デバイス用部材付き積層体から、上記ポリイミド樹脂基板および上記電子デバイス用部材を有する電子デバイスを得て、上記レーザー光の照射エネルギー密度が、80mJ/cm未満である、電子デバイスの製造方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製の支持基材と、シリコーン樹脂層またはシランカップリング剤層である接着層と、ポリイミド樹脂基板と、電子デバイス用部材とをこの順に備える電子デバイス用部材付き積層体を準備し、
前記電子デバイス用部材付き積層体に前記支持基材側からレーザー光を照射することにより、前記電子デバイス用部材付き積層体から、前記ポリイミド樹脂基板および前記電子デバイス用部材を有する電子デバイスを得て、
前記レーザー光の照射エネルギー密度が、80mJ/cm未満である、電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記レーザー光の照射エネルギー密度が、55mJ/cm未満である、請求項1に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記レーザー光の照射エネルギー密度が、50mJ/cm以下である、請求項2に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記レーザー光の照射エネルギー密度が、20mJ/cm以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記レーザー光の照射エネルギー密度が、25mJ/cm以上である、請求項4に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記接着層が、前記シリコーン樹脂層である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記シリコーン樹脂層の厚さが、100μm以下である、請求項6に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記ポリイミド樹脂基板に前記シリコーン樹脂層を形成し、形成した前記シリコーン樹脂層に前記支持基材を積層することにより積層体を得て、
前記積層体における前記ポリイミド樹脂基板に前記電子デバイス用部材を形成することにより、前記電子デバイス用部材付き積層体を得る、請求項6または7に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記支持基材の厚さが、1.0mm以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
エキシマレーザーから前記レーザー光を発生させる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池(PV);液晶パネル(LCD);有機ELパネル(OLED);電磁波、X線、紫外線、可視光線、赤外線などを感知する受信センサーパネル;等の電子デバイスに、ポリイミド樹脂基板が用いられている。
近年、ポリイミド樹脂基板のハンドリング性を良好にするため、ガラス製の支持基材上にポリイミド樹脂基板を配置する技術が提案されている(特許文献1)。
この技術においては、ポリイミド樹脂基板上に電子デバイス用部材を形成し、その後、いわゆるレーザーリフトオフ方法によって、電子デバイス(ポリイミド樹脂基板および電子デバイス用部材)を、支持基材から剥離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−185807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特許文献1に記載された技術に基づいて、レーザーリフトオフ方法を検討した。
具体的には、まず、ガラス製の支持基材と、ポリイミド樹脂基板と、電子デバイス用部材(薄膜トランジスタ)とをこの順に備える電子デバイス用部材付き積層体を作製した。次いで、作製した電子デバイス用部材付き積層体に、支持基材側から、レーザー光を照射した。これにより、支持基材から、電子デバイス(ポリイミド樹脂基板および電子デバイス用部材)は剥離した。
しかし、省エネルギー性の観点からは、低い照射エネルギー密度のレーザー光を使用することが望まれる。
【0005】
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、省エネルギー性に優れた電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により上記目的を達成できることを見出した。
【0007】
[1]ガラス製の支持基材と、シリコーン樹脂層またはシランカップリング剤層である接着層と、ポリイミド樹脂基板と、電子デバイス用部材とをこの順に備える電子デバイス用部材付き積層体を準備し、上記電子デバイス用部材付き積層体に上記支持基材側からレーザー光を照射することにより、上記電子デバイス用部材付き積層体から、上記ポリイミド樹脂基板および上記電子デバイス用部材を有する電子デバイスを得て、上記レーザー光の照射エネルギー密度が、80mJ/cm未満である、電子デバイスの製造方法。
[2]上記レーザー光の照射エネルギー密度が、55mJ/cm未満である、上記[1]に記載の電子デバイスの製造方法。
[3]上記レーザー光の照射エネルギー密度が、50mJ/cm以下である、上記[2]に記載の電子デバイスの製造方法。
[4]上記レーザー光の照射エネルギー密度が、20mJ/cm以上である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の電子デバイスの製造方法。
[5]上記レーザー光の照射エネルギー密度が、25mJ/cm以上である、上記[4]に記載の電子デバイスの製造方法。
[6]上記接着層が、上記シリコーン樹脂層である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の電子デバイスの製造方法。
[7]上記シリコーン樹脂層の厚さが、100μm以下である、上記[6]に記載の電子デバイスの製造方法。
[8]上記ポリイミド樹脂基板に上記シリコーン樹脂層を形成し、形成した上記シリコーン樹脂層に上記支持基材を積層することにより積層体を得て、上記積層体における上記ポリイミド樹脂基板に上記電子デバイス用部材を形成することにより、上記電子デバイス用部材付き積層体を得る、上記[6]または[7]に記載の電子デバイスの製造方法。
[9]上記支持基材の厚さが、1.0mm以下である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の電子デバイスの製造方法。
[10]エキシマレーザーから上記レーザー光を発生させる、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、省エネルギー性に優れた電子デバイスの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】電子デバイス用部材付き積層体を模式的に示す断面図である。
【図2】電子デバイス用部材付き積層体にレーザー光を照射した状態を模式的に示す断面図である。
【図3】接着層付き支持基材と電子デバイスとに分離した状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図1〜図3を参照して説明する。
ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0011】
[電子デバイスの製造方法]
まず、図1に示すように、電子デバイス用部材付き積層体22を準備する。
電子デバイス用部材付き積層体22は、ガラス製の支持基材12と、シリコーン樹脂層またはシランカップリング剤層である接着層14と、ポリイミド樹脂基板16と、電子デバイス用部材20とをこの順に備える。
【0012】
次に、図2に示すように、電子デバイス用部材付き積層体22に、支持基材12側からレーザー光30を照射する。レーザー光30の照射エネルギー密度は、後述する。
レーザー光30は、支持基材12および接着層14を透過して、ポリイミド樹脂基板16(ポリイミド樹脂基板16と接着層14との界面)に照射される。
レーザー光30は、ポリイミド樹脂基板16(ポリイミド樹脂基板16と接着層14との界面)に全面的に照射されることが好ましい。
【0013】
レーザー光30の照射によって、図3に示すように、ポリイミド樹脂基板16と接着層14とを剥離する。すなわち、支持基材12および接着層14からなる接着層付き支持基材18と、ポリイミド樹脂基板16および電子デバイス用部材20を有する電子デバイス24とに分離する。
これは、レーザー光30の照射によって、ポリイミド樹脂基板16を構成するポリイミドが破壊されることにより、ポリイミド樹脂基板16と接着層14との化学的または物理的な結合が解消されるためと考えられる。
こうして、電子デバイス用部材付き積層体22から、ポリイミド樹脂基板16および電子デバイス用部材20を有する電子デバイス24が得られる。
【0014】
本実施形態において、レーザー光30の照射エネルギー密度は、80mJ/cm未満であり、比較的低い。このため、省エネルギー性に優れる。
上述したように、従来は、接着層14が無く、ポリイミド樹脂基板16は支持基材12に直接接触していた(特許文献1)。
これに対して、本実施形態においては、接着層14を設けており、ポリイミド樹脂基板16は、接着層14に接している。これにより、従来よりも、ポリイミド樹脂基板16の剥離に必要なレーザー光30の照射エネルギー密度を低減できると推測される。
【0015】
ところで、照射エネルギー密度が高いレーザー光30をポリイミド樹脂基板16に照射すると、ポリイミド樹脂基板16に焦げによる着色が生じる場合がある。
このため、ポリイミド樹脂基板16の着色(焦げ)を抑制する観点からも、レーザー光30の照射エネルギー密度は低いことが好ましい。
具体的には、レーザー光30の照射エネルギー密度は、接着層14の種類にもよるが、55mJ/cm未満が好ましく、50mJ/cm以下がより好ましく、45mJ/cm以下が更に好ましい。
【0016】
更に、レーザー光30の照射エネルギー密度が低いことにより、レーザー光30による電子デバイス用部材20の損傷が抑制される。すなわち、得られる電子デバイス24の損傷も抑制される。
【0017】
もっとも、レーザー光30の照射エネルギー密度が低すぎると、ポリイミド樹脂基板16の剥離が困難になる場合がある。
ポリイミド樹脂基板16の剥離しやすさの観点からは、レーザー光30の照射エネルギー密度は、接着層14の種類にもよるが、例えば20mJ/cm以上であり、25mJ/cm以上が好ましく、30mJ/cm以上がより好ましく、35mJ/cm以上が更に好ましい。
【0018】
ポリイミド樹脂基板16の着色を抑制しつつ、かつ、電子デバイス24を完全に剥離できるレーザー光30の照射エネルギー密度について、下限値に対する上限値の割合を、エネルギー有効率(単位:%)と呼ぶ。
本実施形態においては、エネルギー有効率の値が大きい。
エネルギー有効率の値が大きいほど、レーザー光30の出力変動による剥離性および着色性の変化が少ないことを意味し、剥離性および着色性の場所依存性が小さい。
すなわち、エネルギー有効率の値が大きい場合には、電子デバイス用部材付き積層体22(特に、大面積の電子デバイス用部材付き積層体22)にレーザー光30を照射した際に、レーザー光30の照射場所ごとに剥離性および着色性が異なることが少ない。
具体的には、エネルギー有効率の値は、120%以上が好ましく、130%以上がより好ましく、140%以上が更に好ましい。
【0019】
レーザー光30の照射エネルギー密度(単位:mJ/cm)は、レーザー光30を発生させる装置において設定される値である。
【0020】
レーザー光30を発生させる装置としては、例えば、希ガスやハロゲンなどの混合ガスを用いてレーザー光を発生させるエキシマレーザーが挙げられる。
エキシマレーザーの具体例としては、ArFエキシマレーザー(発振波長:193nm)、KrFエキシマレーザー(発振波長:248nm)、XeClエキシマレーザー(発振波長:308nm)が挙げられ、XeClエキシマレーザーが好ましい。
レーザー光30の照射条件は、特に限定されないが、例えば、レーザー光30の繰返し周波数は5〜400Hzが好ましく、レーザー光30の照射形状のオーバーラップ率(重なり率)は5〜90%が好ましい。
【0021】
本実施形態においては、レーザー光30を発生させる装置のランニングコストを低減する効果も得られる。例えば、レーザー光30の出力は同じでも、1ショットの照射面積を増やせるため、ショット数が減り、その結果、ガス交換の回数を減らしたり、ダウンタイムを減らしたり(タクトタイムを向上させたり)できる。
【0022】
[電子デバイス用部材付き積層体]
次に、図1に基づいて、電子デバイス用部材付き積層体22を詳細に説明する。
図1に示すように、電子デバイス用部材付き積層体22は、積層体10を含む。
積層体10は、支持基材12と、接着層14と、ポリイミド樹脂基板16と、をこの順で備える。換言すれば、積層体10は、支持基材12およびポリイミド樹脂基板16と、それらの間に配置された接着層14とを含む。
接着層14は、一方の面が支持基材12に接し、他方の面(表面14a)がポリイミド樹脂基板16の第1主面16aに接している。
支持基材12および接着層14からなる接着層付き支持基材18は、ポリイミド樹脂基板16を補強する補強板として機能する。
電子デバイス用部材付き積層体22は、積層体10におけるポリイミド樹脂基板16の第2主面16b上に、電子デバイス用部材20を有する。
【0023】
積層体10を含む電子デバイス用部材付き積層体22を上面から見たときの形状は、例えば、四角形である。この場合、電子デバイス用部材付き積層体22の大きさは、短辺850mm以上、長辺1100mm以上が好ましく、短辺1200mm以上、長辺1300mm以上がより好ましく、短辺1400mm以上、長辺1700mm以上が更に好ましい。電子デバイス用部材付き積層体22の大きさの上限は、例えば、3000mm×3000mmである。
【0024】
<支持基材>
支持基材12は、ポリイミド樹脂基板16を支持して補強するガラス製の部材である。
ガラスの種類は特に限定されないが、無アルカリホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスが好ましい。酸化物系ガラスとしては、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40〜90質量%のガラスが好ましい。
ガラス板の製造方法は特に限定されず、通常、ガラス原料を溶融し、溶融ガラスを板状に成形して得られる。このような成形方法は、一般的なものであってよく、例えば、フロート法、フュージョン法、スロットダウンドロー法等が挙げられる。
支持基材12の厚さは、ポリイミド樹脂基板16よりも厚くてもよいし、薄くてもよい。積層体10の取り扱い性の点からは、支持基材12の厚さはポリイミド樹脂基板16よりも厚いことが好ましい。
支持基材12は、フレキシブルでないことが好ましい。そのため、支持基材12の厚さは、0.3mm以上が好ましい。
一方、支持基材12の厚さは、1.0mm以下が好ましい。
【0025】
<ポリイミド樹脂基板>
ポリイミド樹脂基板16は、ポリイミド樹脂からなる基板であり、例えば、ポリイミドフィルムが用いられ、その市販品としては、東洋紡社製の「ゼノマックス」、宇部興産社製の「ユーピレックス25S」などが挙げられる。
ポリイミド樹脂基板16の厚さは、ハンドリング性の観点から、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましい。柔軟性の観点からは、1mm以下が好ましく、0.2mm以下がより好ましい。
ポリイミド樹脂基板16の上に高精細な配線等を形成するために、ポリイミド樹脂基板16の表面は平滑であることが好ましい。具体的には、ポリイミド樹脂基板16の表面粗さRaは、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、10nm以下が更に好ましい。
積層体10の反りを抑制できるという理由から、ポリイミド樹脂基板16と支持基材12との熱膨張係数の差は、0〜90×10−6/℃が好ましく、0〜30×10−6/℃がより好ましい。
ポリイミド樹脂基板16の面積(第1主面16aおよび第2主面16bの面積)は、特に限定されないが、電子デバイス24の生産性の点から、300cm以上が好ましい。
ポリイミド樹脂基板16の形状も特に限定されず、矩形状であっても、円形状であってもよい。
【0026】
<接着層>
接着層14は、シリコーン樹脂層またはシランカップリング剤層である。
以下、シリコーン樹脂層およびシランカップリング剤層を順に説明する。
【0027】
《シリコーン樹脂層》
シリコーン樹脂層の厚さは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。一方、下限に関して、シリコーン樹脂層の厚さは、1μm以上が好ましく、1μm超がより好ましく、4μm以上が更に好ましい。
上記厚さは、5点以上の任意の位置におけるシリコーン樹脂層の厚さを、接触式膜厚測定装置を用いて測定し、それらを算術平均したものである。
【0028】
(シリコーン樹脂)
シリコーン樹脂層は、主に、シリコーン樹脂からなる。
一般的に、オルガノシロキシ単位には、M単位(1官能オルガノシロキシ単位)、D単位(2官能オルガノシロキシ単位)、T単位(3官能オルガノシロキシ単位)、および、Q単位(4官能オルガノシロキシ単位)がある。Q単位はケイ素原子に結合した有機基(ケイ素原子に結合した炭素原子を有する有機基)を有しない単位であるが、本発明においてはオルガノシロキシ単位(含ケイ素結合単位)とみなす。
全オルガノシロキシ単位とは、M単位、D単位、T単位、および、Q単位の合計を意味する。M単位、D単位、T単位、および、Q単位の数(モル量)の割合は、29Si−NMRによるピーク面積比の値から計算できる。
【0029】
M単位とは、(R)3SiO1/2で表されるオルガノシロキシ単位を意味する。
D単位とは、(R)2SiO2/2(Rは、水素原子または有機基を表す)で表されるオルガノシロキシ単位を意味する。
T単位とは、RSiO3/2(Rは、水素原子または有機基を表す)で表されるオルガノシロキシ単位を意味する。
Q単位とは、SiO2で表されるオルガノシロキシ単位を意味する。
有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;ハロゲン化アルキル基(例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基)などのハロゲン置換の一価の炭化水素基;等が挙げられる。有機基としては、炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜10程度)の、非置換またはハロゲン置換の一価の炭化水素基が好ましい。
【0030】
シリコーン樹脂は、M単位およびT単位からなる群から選択される少なくとも1種のオルガノシロキシ単位(以下、「特定オルガノシロキシ単位」ともいう)を含むことが好ましい。
特定オルガノシロキシ単位の割合は、全オルガノシロキシ単位に対して、60モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、100モル%以下の場合が多い。
【0031】
(硬化性シリコーン)
シリコーン樹脂は、硬化性シリコーンを硬化(架橋硬化)して得られる。つまり、シリコーン樹脂は、硬化性シリコーンの硬化物に相当する。
硬化性シリコーンとしては、縮合反応型シリコーン、付加反応型シリコーン、紫外線硬化型シリコーン、電子線硬化型シリコーンが挙げられ、いずれも使用できる。
以下、代表的に、縮合反応型シリコーンおよび付加反応型シリコーンを説明する。
【0032】
縮合反応型シリコーンとしては、モノマーである加水分解性オルガノシラン化合物もしくはその混合物(モノマー混合物)、または、モノマーもしくはモノマー混合物を部分加水分解縮合反応させて得られる部分加水分解縮合物(オルガノポリシロキサン)を好適に使用できる。
縮合反応型シリコーンを用いて、加水分解・縮合反応(ゾルゲル反応)を進行させることにより、シリコーン樹脂を形成できる。
縮合反応型シリコーンとしては、反応の制御や取り扱いの面から、加水分解性オルガノシラン化合物から得られる部分加水分解縮合物(オルガノポリシロキサン)が好ましい。
加水分解性オルガノシラン化合物としては、アルコキシシランが好適に挙げられる。
【0033】
付加反応型シリコーンは、主剤および架橋剤を含み、白金触媒等の触媒の存在下で硬化する。すなわち、主剤と架橋剤の架橋点が付加反応をすることにより硬化する。付加反応型シリコーンの硬化は、加熱により促進される。
付加反応型シリコーン中の主剤は、ケイ素原子に結合したアルケニル基(ビニル基等)を有するオルガノポリシロキサン(すなわち、オルガノアルケニルポリシロキサン。直鎖状が好ましい)が好ましい。
付加反応型シリコーン中の架橋剤は、ケイ素原子に結合した水素原子(ハイドロシリル基)を有するオルガノポリシロキサン(すなわち、オルガノハイドロジェンポリシロキサン。直鎖状が好ましい)が好ましい。
オルガノアルケニルポリシロキサンのアルケニル基に対する、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子に結合した水素原子のモル比は、0.5〜2が好ましい。
【0034】
硬化性シリコーンの重量平均分子量(Mw)は、溶媒への溶解性、塗布性の観点から、5,000〜60,000が好ましく、5,000〜30,000がより好ましい。
【0035】
(硬化性組成物)
シリコーン樹脂層の製造方法としては、ポリイミド樹脂基板16の第1主面16aに硬化性シリコーンを含む硬化性組成物を塗布して、必要に応じて溶媒を除去して、塗膜を形成して、塗膜中の硬化性シリコーンを硬化させて、シリコーン樹脂層とする方法が好ましい。
【0036】
硬化性シリコーンとして付加反応型シリコーンを用いる場合、硬化性組成物は、金属化合物として、白金触媒を含んでいてもよい。
【0037】
硬化性組成物には溶媒が含まれていてもよい。その場合、硬化性組成物中における硬化性シリコーンの含有量は、1〜80質量%が好ましく、1〜50質量%がより好ましい。
溶媒としては、具体的には、例えば、酢酸ブチル、2−ヘプタノン、1−メトキシ−2−プロパノールアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
更に、溶媒としては、「Isoper G」(東燃ゼネラル石油社製)などの市販品も使用できる。
【0038】
硬化性組成物には、レベリング剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0039】
硬化性組成物には、添加剤として、金属化合物が含まれていてもよい。
金属化合物に含まれる金属元素としては、3d遷移金属、4d遷移金属、ランタノイド系金属、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、および、スズ(Sn)などが挙げられる。
3d遷移金属としては、周期表第4周期の遷移金属、すなわち、スカンジウム(Sr)〜銅(Cu)の金属が挙げられる。具体的には、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、および、銅(Cu)が挙げられる。
4d遷移金属としては、周期表第5周期の遷移金属、すなわち、イットリウム(Y)〜銀(Ag)の金属が挙げられる。具体的には、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、および、銀(Ag)が挙げられる。
ランタノイド系金属としては、ランタン(La)〜ルテチウム(Lu)の金属が挙げられる。具体的には、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロジウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、および、ルテチウム(Lu)が挙げられる。
金属化合物は、錯体が好ましい。錯体とは、金属元素の原子またはイオンを中心として、これに配位子(原子・原子団・分子またはイオン)が結合した集団体である。錯体中に含まれる配位子の種類は特に限定されないが、例えば、β−ジケトン、カルボン酸、アルコキシド、および、アルコールからなる群から選択される配位子が挙げられる。
β−ジケトンとしては、例えば、アセチルアセトン、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、ベンゾイルアセトンが挙げられる。
カルボン酸としては、例えば、酢酸、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸、ネオデカン酸が挙げられる。
アルコキシドとしては、例えば、メトキシド、エトキシド、ノルマルプロポキシド(n−プロポキシド)、イソプロポキシド、ノルマルブトキシド(n−ブトキシド)が挙げられる。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールが挙げられる。
硬化性組成物中における金属化合物の含有量は、特に限定されず、適宜調整される。
【0040】
《シランカップリング剤層》
シランカップリング剤層は、シランカップリング剤を支持基材12の表面上に塗布し、乾燥(加熱)することにより、形成される。
【0041】
シランカップリング剤層の厚さは、50nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。ただし、シランカップリング剤層の厚さが1nm未満である場合、シランカップリング剤層の剥離強度が低下したり、シランカップリング剤層が部分的に付かなかったりするおそれがある。このため、シランカップリング剤層の厚さは、1nm以上が好ましい。
シランカップリング剤層の厚さは、エリプソメトリー法により、または、塗布するカップリング剤の濃度および塗布量から計算することにより、求められる。
【0042】
シランカップリング剤としては、アルコキシシランが好適に用いられる。
アルコキシシランが有するアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜5のアルコキシ基が挙げられ、その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基などが挙げられる。
アルコキシシランは、例えば、アルキル基、フェニル基、エポキシ基、ビニル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基などの官能基を有していてもよい。複数の官能基は組み合わせられていてもよい(例えば、アミノアルキル基)。アルキル基としては、例えば、炭素数1〜8の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が挙げられる。
【0043】
アルコキシシランとしては、具体的には、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン;トリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
[電子デバイス用部材付き積層体の製造方法]
次に、電子デバイス用部材付き積層体22を製造する方法を説明する。
まず、以下では、電子デバイス用部材付き積層体22に用いる積層体10を製造する方法を説明する。
【0045】
<積層体の製造(接着層がシリコーン樹脂層である場合の1)>
まず、ポリイミド樹脂基板16の第1主面16aに接着層14としてシリコーン樹脂層を形成し、次いで、接着層14(シリコーン樹脂層)の表面に支持基材12を積層して積層体10を得ることが好ましい。
【0046】
《シリコーン樹脂層の形成》
硬化性シリコーンの層をポリイミド樹脂基板16の第1主面16aに形成することが好ましい。硬化性シリコーンの層を形成するためには、上述した硬化性組成物を、ポリイミド樹脂基板16の第1主面16aに塗布する。塗布方法は特に限定されず、例えば、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、グラビアコート法が挙げられる。
次いで、硬化性シリコーンの層に対して硬化処理を施すことによりシリコーン樹脂層を形成することが好ましい。
硬化処理は特に限定されず、使用される硬化性シリコーンの種類によって適宜最適な処理が実施される。例えば、縮合反応型シリコーンおよび付加反応型シリコーンを用いる場合は、硬化処理としては熱硬化処理が好ましい。
熱硬化処理の条件は、ポリイミド樹脂基板16の耐熱性の範囲内で実施され、例えば、熱硬化させる温度条件は、50〜400℃が好ましく、100〜300℃がより好ましい。加熱時間は、通常、10〜300分が好ましく、20〜120分がより好ましい。
形成されるシリコーン樹脂層の態様は、上述した通りである。
【0047】
《支持基材の積層》
接着層14(シリコーン樹脂層)の表面に支持基材12を積層することにより積層体10を得る。
支持基材12を接着層14(シリコーン樹脂層)の表面に積層する方法は特に限定されず、公知の方法が挙げられる。
例えば、常圧環境下で接着層14(シリコーン樹脂層)の表面上に支持基材12を重ねる方法が挙げられる。接着層14(シリコーン樹脂層)の表面上に支持基材12を重ねた後、ロールやプレスを用いて接着層14(シリコーン樹脂層)に支持基材12を圧着させてもよい。ロールまたはプレスによる圧着により、接着層14(シリコーン樹脂層)と支持基材12との間に混入している気泡が比較的容易に除去されるので好ましい。
真空ラミネート法や真空プレス法により圧着すると、気泡の混入が抑制され、かつ、量良好な密着が実現でき、好ましい。
【0048】
<積層体の製造(接着層がシリコーン樹脂層である場合の2)>
まず、支持基材12の表面上に接着層14としてシリコーン樹脂層を形成し、次いで、形成した接着層14(シリコーン樹脂層)の表面に、ポリイミドまたはポリイミド前駆体が溶剤中に溶解または分散した溶液を用いてポリイミド樹脂基板16を形成してもよい。これにより、積層体10が得られる。
【0049】
《シリコーン樹脂層の形成》
硬化性シリコーンの層を支持基材12の表面上に形成することが好ましい。硬化性シリコーンの層を形成するためには、上述した硬化性組成物を、支持基材12の表面に塗布する。塗布方法としては、特に限定されず、例えば、ポリイミド樹脂基板16の表面に塗布する方法として挙げた方法と同じ方法が挙げられる。
次いで、硬化性シリコーンの層に対して硬化処理を施すことによりシリコーン樹脂層を形成することが好ましい。硬化処理としては、特に限定されず、例えば、ポリイミド樹脂基板16上の硬化性シリコーンの層に施す硬化処理と同じ硬化処理が挙げられる。
【0050】
《ポリイミド樹脂基板の形成》
次に、シリコーン樹脂層の表面14aに、ポリイミド前駆体の溶液(以下、本段落において、単に「溶液」ともいう)を塗布し、得られる塗膜を加熱してポリイミド樹脂基板16を形成することが好ましい。
ポリイミドは、例えば、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸をイミド化して得られる。ポリアミック酸は、原料であるジアミンと、テトラカルボン酸二無水物および/またはトリカルボン酸無水物とを、実質的に等モル使用し、有機溶媒中で反応させることによって得ることが好ましい。具体的には、例えば、窒素気流下において、N,N−ジメチルアセトアミドなどの有機極性溶媒にジアミンを溶解させた後、テトラカルボン酸二無水物および/またはトリカルボン酸無水物を加えて、室温で5時間程度反応させることにより得られる。得られるポリアミック酸の重量平均分子量は、1万〜30万が好ましい。
溶液の塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコーター、スプレーコーター、バーコーター、ロールコーター、ナイフコーター、スリットダイコーターなどを用いる方法;インクジェット印刷法;スクリーン印刷法;スリット状ノズルから押し出す方法;等が挙げられる。
塗膜の加熱温度は、500℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましい。このような加熱により、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)をイミド化し、ポリイミドに変換する。加熱時間は、例えば1分〜5時間であり、2分〜90分が好ましい。段階的に温度を上げてもよい。加熱雰囲気は、大気雰囲気であってもよく、窒素雰囲気であってもよい。
【0051】
<積層体の製造(接着層がシランカップリング剤層である場合)>
まず、支持基材12の表面上に接着層14としてシランカップリング剤層を形成し、次いで、接着層14(シランカップリング剤層)の表面にポリイミド樹脂基板16を積層して積層体10を得ることが好ましい。
【0052】
《シランカップリング剤層の形成》
支持基材12の表面上に、シランカップリング剤として、上述したアルコキシシランを塗布することが好ましい。塗布方法は特に限定されず、例えば、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、グラビアコート法が挙げられる。
次いで、塗布したシランカップリング剤(アルコキシシラン)を乾燥(加熱)することが好ましい。乾燥条件は、50〜300℃が好ましく、100〜200℃がより好ましい。乾燥時間は、1〜60分が好ましく、1〜10分がより好ましい。
こうして、支持基材12の表面上に、接着層14として、シランカップリング剤層が形成される。
【0053】
《ポリイミド樹脂基板の積層》
接着層14(シランカップリング剤層)の表面にポリイミド樹脂基板16を積層することにより積層体10を得る。
ポリイミド樹脂基板16を接着層14(シランカップリング剤層)の表面に積層する方法は特に限定されず、公知の方法が挙げられる。
例えば、常圧環境下で接着層14(シランカップリング剤層)の表面上にポリイミド樹脂基板16を重ねる方法が挙げられる。接着層14(シランカップリング剤層)の表面上にポリイミド樹脂基板16を重ねた後、ロールやプレスを用いて接着層14(シランカップリング剤層)にポリイミド樹脂基板16を圧着させてもよい。ロールまたはプレスによる圧着により、接着層14(シランカップリング剤層)とポリイミド樹脂基板16との間に混入している気泡が比較的容易に除去されるので好ましい。
なお、接着層14(シランカップリング剤層)の表面に、上述した樹脂溶液を塗布し、得られる塗膜を加熱してポリイミド樹脂基板16を形成してもよい。
【0054】
<電子デバイス用部材の形成>
次に、積層体10を用いて、電子デバイス用部材付き積層体22を得る。
図1に示すように、ポリイミド樹脂基板16の第2主面16b上に電子デバイス用部材20を形成し、電子デバイス用部材付き積層体22を得ることが好ましい。
【0055】
電子デバイス用部材20としては、特に限定されず、LTPSなどの表示装置用部材、太陽電池用部材、薄膜2次電池用部材、電子部品用回路、受信センサー用部材などが挙げられる。
この場合、得られる電子デバイス24(ポリイミド樹脂基板16および電子デバイス用部材20)としては、表示装置用部材を有する表示装置用パネル、太陽電池用部材を有する太陽電池、薄膜2次電池用部材を有する薄膜2次電池、受信センサー用部材を有する受信センサーパネルなどが挙げられる。
表示装置用パネルは、液晶パネル、有機ELパネル、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションパネルなどを含む。
受信センサーパネルは、電磁波受信センサーパネル、X線受光センサーパネル、紫外線受光センサーパネル、可視光線受光センサーパネル、赤外線受光センサーパネルなどを含む。
【0056】
電子デバイス用部材20は、ポリイミド樹脂基板16の第2主面16bに最終的に形成される部材の全部(全部材)ではなく、全部材の一部(部分部材)であってもよい。
電子デバイス用部材20が部分部材である場合も、電子デバイス用部材付き積層体22得られるものを電子デバイス24と呼ぶ。
【0057】
電子デバイス用部材20を形成する方法としては、特に限定されず、電子デバイス用部材20の種類に応じて、従来公知の方法にて、積層体10のポリイミド樹脂基板16の第2主面16b上に、電子デバイス用部材20を形成する。
例えば、OLEDを製造する場合は、透明電極を形成する、更に透明電極を形成した面上にホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層等を蒸着する、裏面電極を形成する、封止板を用いて封止する、等の各種の層形成や処理を行なう。これらの層形成や処理として、例えば、成膜処理、蒸着処理、封止板の接着処理等が挙げられる。
例えば、TFT−LCDを製造する場合は、LTPS等の材料を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、別の積層体10のポリイミド樹脂基板16に、レジスト液を用いてカラーフィルタ(CF)を形成し、TFT付き積層体とCF付き積層体とを積層(貼合わせ)する。
例えば、マイクロLEDディスプレイを製造する場合は、LTPS等の材料を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、形成したTFT上に、LEDチップを実装する。それ以外に、平坦化、配線形成、封止などを実施してもよい。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0059】
以下、例1〜例8は実施例であり、例9〜例13は比較例である。
【0060】
<硬化性シリコーン1および硬化性組成物1の調製>
《硬化性シリコーン1の調製》
オルガノハイドロジェンシロキサンとアルケニル基含有シロキサンとを混合することにより、硬化性シリコーン1を得た。硬化性シリコーン1の組成は、M単位、D単位、T単位のモル比が9:59:32、有機基のメチル基とフェニル基とのモル比が44:56、全アルケニル基と全ケイ素原子に結合した水素原子とのモル比(水素原子/アルケニル基)が0.7、平均OX基数が0.1であった。平均OX基数は、Si原子1個に平均で何個のOX基(Xは水素原子または炭化水素基)が結合しているかを表した数値である。
【0061】
《硬化性組成物1の調製》
硬化性シリコーン1に、Platinum(0)-1,3-divinyl-1,1,3,3-tetramethyldisiloxane(CAS No. 68478-92-2)を白金元素の含有量が60ppmとなるように加えて、混合物Aを得た。混合物A(200g)と、2−エチルヘキサン酸ビスマス(「プキャット25」、日本化学産業社製、金属含有率25%)(0.08g)と、溶媒としてジエチレングリコールジエチルエーテル(「ハイソルブEDE」、東邦化学工業社製)(84.7g)とを混合し、得られた混合液を、孔径0.45μmのフィルタを用いてろ過することにより、硬化性組成物1を得た。
【0062】
<硬化性シリコーン2および硬化性組成物2の調製>
《硬化性シリコーン2の調製》
1Lのフラスコに、トリエトキシメチルシラン(179g)、トルエン(300g)、および、酢酸(5g)を加えて混合物を得た。得られた混合物を、25℃で20分間撹拌し、その後、60℃に加熱して12時間反応させることにより、反応粗液1を得た。得られた反応粗液1を25℃に冷却後、水(300g)を用いて、反応粗液1を3回洗浄した。洗浄された反応粗液1にクロロトリメチルシラン(70g)を加えて、25℃で20分間撹拌し、その後、50℃に加熱して12時間反応させて反応粗液2を得た。得られた反応粗液2を25℃に冷却後、水(300g)を用いて、反応粗液2を3回洗浄した。洗浄された反応粗液2からトルエンを減圧留去し、スラリーを得た。得られたスラリーを、真空乾燥機を用いて終夜乾燥することにより、白色のオルガノポリシロキサン化合物である硬化性シリコーン2を得た。硬化性シリコーン2は、M単位、T単位のモル比が13:87、有機基は全てメチル基、平均OX基数が0.02であった。
【0063】
《硬化性組成物2の調製》
硬化性シリコーン2(50g)と、金属化合物としてジルコニウムテトラノルマルプロポキシド(「オルガチックスZA−45」、マツモトファインケミカル社製、金属含有率21.1%)(0.24g)と、2−エチルヘキサン酸セリウム(III)(Alfa Aesar社製、金属含有率12%)(0.42g)と、溶媒としてIsoperG(東燃ゼネラル石油社製)(75g)とを混合し、得られた混合液を、孔径0.45μmのフィルタを用いてろ過することにより、硬化性組成物2を得た。
【0064】
<例1〜例4>
《積層体の作製》
ポリイミド樹脂基板として、厚さ0.015mmのポリイミドフィルム(「ゼノマックス」、東洋紡社製)を準備した。
調製した硬化性組成物1を、ポリイミド樹脂基板に塗布し、ホットプレートを用いて140℃で10分間加熱することにより、厚さ8μmのシリコーン樹脂層を形成した。
続いて、支持基材として、200mm×200mm、厚さ0.5mmのガラス板(「ANWizus」、AGC社製)を準備した。準備した支持基材を、水系ガラス洗浄剤(「PK−LCG213」、パーカーコーポレーション社製)を用いて洗浄し、その後、純水で洗浄した。
洗浄した支持基材を、ポリイミド樹脂基板上に形成したシリコーン樹脂層上に置き、貼合装置を用いて貼り合わせ、積層体を作製した。
【0065】
《電子デバイス用部材付き積層体の作製》
作製した積層体のポリイミド樹脂基板上に、プラズマCVDを用いて、膜厚500nmの窒化ケイ素薄膜を形成した。次いで、窒化ケイ素薄膜の上に、LTPS(Low-Temperature Polycrystalline-Silicon)を用いて、TFT(薄膜トランジスタ)を形成した。こうして、電子デバイス用部材付き積層体を作製した。
【0066】
<例5〜例8>
硬化性組成物1に代えて、硬化性組成物2を用いた以外は、例1〜例4と同様にして、電子デバイス用部材付き積層体を作製した。
【0067】
<例9〜例13>
《積層体の作製》
支持基材として、200mm×200mm、厚さ0.5mmのガラス板(「ANWizus」、AGC社製)を準備した。準備した支持基材を、水系ガラス洗浄剤(パーカーコーポレーション社製「PK−LCG213」)を用いて洗浄し、その後、純水で洗浄した。
洗浄した支持基材上に、市販のワニス(「Uワニス−A」、宇部興産社製、溶媒:N−メチル−2−ピロリドン)を塗布し、加熱後の膜厚が10μmとなるように塗膜を形成した。
塗膜を形成した支持基材を、60℃のホットプレート上に載せて、2時間静置することにより、塗膜から溶媒を蒸発させて除去した。続いて、窒素雰囲気のオーブンにて、80℃で0.5時間加熱し、その後、300℃で0.5時間加熱し、更に370℃で0.5時間加熱することにより、塗膜を硬化させた。
こうして、支持基材上にポリイミドからなる薄膜(ポリイミド樹脂基板)を有する積層体を得た。
【0068】
《電子デバイス用部材付き積層体の作製》
得られた積層体を用いて、例1〜例4と同様にして、ポリイミド樹脂基板上にTFTを形成して、電子デバイス用部材付き積層体を得た。
【0069】
<評価>
各例の電子デバイス用部材付き積層体に、支持基材側から、下記表1に示す照射エネルギー密度(単位:mJ/cm)のレーザー光を照射した。
より詳細には、レーザー発振装置として、LIGHTEC社製のエキシマレーザー装置(発振ガス:XeCl、波長:308nm、最大レーザー出力:5W、最大パルスエネルギー:600mJ、パルス幅:20nm)を用いた。
レーザー光の照射条件は、ビームサイズを30mm×0.7mm、レーザー光の繰返し周波数を10Hz、レーザー光の照射形状のオーバーラップ率(重なり率)を50%とした。
レーザー光の照射後、以下の評価を行なった。
【0070】
《省エネルギー性》
電子デバイス用部材付き積層体に照射したレーザー光の照射エネルギー密度(単位:mJ/cm)に基づいて、下記基準にて評価した。
A:レーザー光の照射エネルギー密度が80mJ/cm未満であった。
C:レーザー光の照射エネルギー密度が80mJ/cm以上であった。
【0071】
《剥離性》
電子デバイス(ポリイミド樹脂基板および電子デバイス用部材)の支持基材(シリコーン樹脂層付き支持基材)からの剥離の状態を目視により確認し、下記基準にて評価した。
A:電子デバイスが完全に剥離した。
B:電子デバイスが部分的に剥離した。
C:電子デバイスが剥離しなかった。
【0072】
《着色性》
ポリイミド樹脂基板の着色の有無を、目視により確認し、下記基準にて評価した。
A:ポリイミド樹脂基板に焦げによる着色が生じなかった。
B:ポリイミド樹脂基板に焦げによる着色が生じた。
【0073】
以上の評価結果を、下記表1にまとめた。
下記表1の「ポリイミド樹脂基板」の欄には、ポリイミドフィルム(ゼノマックス)を用いた場合は「1」を、市販のワニス(Uワニス−A)の硬化膜を用いた場合は「2」を記載した。
下記表1の「硬化性組成物」の欄には、硬化性組成物1を用いた場合は「1」を、硬化性組成物2を用いた場合は「2」を記載した。接着層(シリコーン樹脂層)を形成しなかった場合は「なし」を記載した。
【0074】
《エネルギー有効率》
例1〜例4、例5〜例8、および、例9〜例13ごとに、ポリイミド樹脂基板が着色することなく電子デバイスが完全に剥離できたレーザー光の照射エネルギー密度について、下限値に対する上限値の割合(単位:%)を算出し、下記表1に記載した。この割合を、便宜的に、「エネルギー有効率」と表記する。
下記表1における「エネルギー有効率」の列において、「エネルギー有効率」の算出に無関係であった「照射エネルギー密度」に対応するセルには、「−」を記載した。
【0075】
【表1】
【0076】
<評価結果のまとめ>
上記表1に示すように、接着層(シリコーン樹脂層)を設けなかった例9〜例13は、レーザー光の照射エネルギー密度が80mJ/cm以上であり、省エネルギー性が不十分であった。
これに対して、接着層(シリコーン樹脂層)を形成した例1〜例4および例5〜例8は、いずれも、照射エネルギー密度が80mJ/cm未満のレーザー光で電子デバイスが剥離しており、省エネルギー性に優れていた。
【0077】
硬化性組成物1を用いてシリコーン樹脂層を形成した例1〜例4を対比する。
例1は、電子デバイスが部分的にしか剥離しなかったのに対して、例2〜例4は、電子デバイスが完全に剥離した。
例4は、ポリイミド樹脂基板に着色が生じたのに対して、例1〜例3は、ポリイミド樹脂基板に着色が生じなかった。
【0078】
硬化性組成物2を用いてシリコーン樹脂層を形成した例5〜例8を対比する。
例5は、電子デバイスが部分的にしか剥離しなかったのに対して、例6〜例8は、電子デバイスが完全に剥離した。
例8は、ポリイミド樹脂基板に着色が生じたのに対して、例5〜例7は、ポリイミド樹脂基板に着色が生じなかった。
【0079】
例1〜例4、例5〜例8、および、例9〜例13について、エネルギー有効率を対比する。
その結果、例1〜例4では「143%」(下限値:例2、上限値:例3)、例5〜例8では「150%」(下限値:例6、上限値:例7)、例9〜例13では「110%」(下限値:例11、上限値:例12)であった。
例1〜例4および例5〜例8は、例9〜例13よりも、エネルギー有効率の値が大きいため、剥離性および着色性の場所依存性が小さい。すなわち、電子デバイス用部材付き積層体(特に、大面積の電子デバイス用部材付き積層体)にレーザー光を照射した場合に、レーザー光の照射場所ごとに、剥離性および着色性が異なることが少ない。
【符号の説明】
【0080】
10 積層体
12 支持基材
14 接着層
14a 接着層の表面
16 ポリイミド樹脂基板
16a ポリイミド樹脂基板の第1主面
16b ポリイミド樹脂基板の第2主面
18 接着層付き支持基材
20 電子デバイス用部材
22 電子デバイス用部材付き積層体
24 電子デバイス
30 レーザー光
【図1】
【図2】
【図3】