【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るイメージセンサの光学素子及び受光素子を個別に示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るイメージセンサの光学素子及び受光素子を重ねた状態で示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るイメージセンサの概略を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るイメージセンサの概略を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るイメージセンサの光学素子を受光素子に対して第1方向にずらした状態の平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るイメージセンサの光学素子を受光素子に対して第2方向にずらした状態の平面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るイメージセンサの光学素子を受光素子に対して第1方向及び第2方向にずらした状態の平面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るイメージセンサの受光素子及び光学素子を個別に示す平面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るイメージセンサの概略を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るイメージセンサの受光素子及び光学素子を個別に示す平面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るイメージセンサの概略を示す平面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るイメージセンサの画素回路を示す回路構成図である。
【図13】本発明の一実施形態に係るイメージセンサの撮像異常判定における動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎない。つまり、当業者が、発明の主旨を保ちつつ適宜変更することで容易に想到し得る構成は、当然に本発明の範囲に含有される構成である。図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、これらはあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号の後に大文字のアルファベットを付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0018】
本明細書および特許請求の範囲において、第1構造体の上に第2構造体が配置された態様を表現する際に、単に「上」又は「上方」と表記する場合、特に断りの無い限りは、第1構造体に接するように、第1構造体の直上に第2構造体が配置される場合と、第1構造体の上方に、さらに別の第3構造体を介して第2構造体が配置される場合と、の両方を含むものと定義される。なお、以下の説明において、受光素子から光学素子に向かう方向を「上」又は「上方」といい、その逆の方向を「下」又は「下方」という。
【0019】
以下の説明において、受光素子として、光によって起電力が発生する光電変換素子が用いられた構成について例示するが、この構成に限定されない。例えば、受光素子として、光によって電気伝導度が変化する光電変換素子が用いられてもよい。又は、受光素子として、受光した光の特性(例えば、光の波長)を電気的な信号に変換するタイプの光電変換素子が用いられてもよい。又は、受光素子として、受光した光を電気的な情報ではない情報に変換する素子が用いられてもよい。
【0020】
本明細書において「αはA、B又はCを含む」、「αはA,B及びCのいずれかを含む」、「αはA,B及びCからなる群から選択される一つを含む」、といった表現は、特に明示が無い限り、αがA〜Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0021】
なお、以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0022】
〈第1実施形態〉
[イメージセンサ10の構成]
図1〜7を用いて、第1実施形態に係るイメージセンサ10の概要について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るイメージセンサの光学素子及び受光素子を個別に示す平面図である。図1に示すように、イメージセンサ10は、光学素子100及び受光素子200を有する。光学素子100及び受光素子200はそれぞれ複数設けられている。複数の光学素子100及び受光素子200は、それぞれ同じ間隔で配置されている。換言すると、光学素子100の大きさと受光素子200の大きさは略同一である。図1の例では、複数の光学素子100及び複数の受光素子200の各々は、マトリックス状に同じピッチで配置されている。
【0023】
光学素子100は、互いに異なる光学特性を備えた第1領域101、第2領域103、第3領域105、及び第4領域107を有する。第1領域101は、偏光フィルタが設けられていない領域である。なお、本実施形態では、第1領域101には光学的なフィルタは設けられておらず、光学素子100の反射又は吸収などの影響を除き、第1領域101に入射された光は光学素子100を透過する。第2領域103は、D1方向に延びた第1偏光フィルタが設けられた領域である。第3領域105は、D2方向に延びた第2偏光フィルタが設けられた領域である。
【0024】
第1偏光フィルタ及び第2偏光フィルタは偏光特性が異なる。本実施形態では、D2方向はD1方向に直交する方向である。つまり、第1偏光フィルタ及び第2偏光フィルタは偏光軸が異なる偏光フィルタである。なお、D1方向とD2方向とは交差する方向であればよく、直交する方向でなくてもよい。本実施形態では、第1偏光フィルタ及び第2偏光フィルタの各々が直線偏光のフィルタである構成を例示したが、円偏光フィルタなどの他の偏光フィルタが用いられてもよい。
【0025】
第4領域107は、光を遮光する遮光フィルタが設けられた領域である。第1偏光フィルタは、D2方向の偏光を遮蔽し、D1方向の偏光だけを透過する。第2偏光フィルタは、D1方向の偏光を遮蔽しD2方向の偏光だけを透過する。換言すると、光学素子100は、互いに異なる光学特性を備えた複数のフィルタ(第1偏光フィルタ、第2偏光フィルタ、及び遮光フィルタ)を有する。
【0026】
受光素子200は受光部201及び遮光部203を有する。受光部201は遮光部203から露出された領域である。受光部201に入射した光の強度によって起電力が生成される。遮光部203は、受光素子200を構成する回路の上に遮光部材が設けられた領域であり、遮光部203に入射した光が反射して受光部201に入射されることを抑制する。詳細は後述するが、受光素子200はトランジスタ及び容量素子などの複数の機能素子、並びにこれらの機能素子を接続する配線を含む。遮光部203は、機能素子及び配線を構成する金属層による反射を抑制する。
【0027】
第1領域101、第2領域103、第3領域105、及び第4領域107の大きさは略同一である。受光部201の大きさは、上記の4つの領域の各々より小さい。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態に係るイメージセンサの光学素子及び受光素子を重ねた状態で示す平面図である。図2は、イメージセンサ10の使用時の一態様における光学素子100及び受光素子200の位置関係を示す図である。上記のように光学素子100及び受光素子200は同じピッチで配置されているので、ある光学素子100の第1領域101が受光部201に重なっているとき、他の光学素子100の第1領域101も、それぞれに対応する受光部201に重なる。上記のように受光部201の大きさは第1領域101の大きさより小さいため、図2に示す状態において、受光部201の外縁は第1領域101の外縁によって囲まれている。図2の状態は、受光部201と偏光フィルタ又は遮光フィルタとが重なっていないため、フィルタがかけられていない状態である。図2のように受光部201と第1領域101とが重なる状態を「第1状態」という場合がある。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態に係るイメージセンサの概略を示す断面図である。図3は、イメージセンサ10の使用時の一態様における光学素子100及び受光素子200の位置関係を示す図である。図3に示すように、イメージセンサ10は光学素子100及び受光素子200に加えて、プリント配線基板110、カラーフィルタ120、マイクロレンズアレイ130、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ユニット300を有している。光学素子100は受光素子200の上に設けられている。受光素子200はプリント配線基板110の上に設けられている。受光素子200とプリント配線基板110とはワイヤボンディング111で接続されている。受光素子200の上にカラーフィルタ120及びマイクロレンズアレイ130が設けられている。受光素子200の上にMEMSユニット300が設けられている。
【0030】
MEMSユニット300は、第1可動ユニット310、第2可動ユニット320、第3可動ユニット330(図4参照)、及びカバー部材390を有する。カバー部材390は受光素子200に対して平面視における位置が固定されている。カバー部材390として、例えば樹脂で形成された枠部材を用いることができる。カバー部材390の上面側において、上方から見て光学素子100、カラーフィルタ120、及びマイクロレンズアレイ130と重なる位置にカバーガラス391が設けられている。カバーガラス391はカバー部材390の上方に接着されている。なお、カバーガラス391の代わりに、例えば樹脂や石英など、ガラス以外の材料を用いたカバーが用いられてもよい。カバー部材390の内側には第1可動ユニット310、第2可動ユニット320、及び第3可動ユニット330(図4参照)が設けられている。第1可動ユニット310はカバー部材390に固定されている。第2可動ユニット320は光学素子100に接続されており、第1可動ユニット310及びカバー部材390に対して、光学素子100と共に移動する。第1可動ユニット310及び第2可動ユニット320はMEMSによって構成されている。なお、MEMSを用いた可動ユニットとして一般的なMEMSを用いることができるので、詳細な説明は省略する。
【0031】
図4は、本発明の一実施形態に係るイメージセンサの概略を示す平面図である。図4は、イメージセンサ10の使用時の一態様における光学素子100及び受光素子200の位置関係を示す図である。図4に示すように、第3可動ユニット330は光学素子100に固定されている。第1可動ユニット310と第2可動ユニット320とが相互作用することによって、光学素子100、第2可動ユニット320、及び第3可動ユニット330がカバー部材390(又は光学素子100)に対してD2方向に動く。第2可動ユニット320と第3可動ユニット330とが相互作用することによって、光学素子100及び第3可動ユニット330がカバー部材390(又は受光素子200)に対してD1方向に動く。上記のように、光学素子100は、MEMSユニット300によって受光素子200に対してD1方向及びD2方向にシフトする。MEMSユニット300は光学素子100の動きを制御するため、MEMSユニット300を制御機構という場合がある。
【0032】
なお、本実施形態では、制御機構としてMEMSユニット300が用いられた構成を例示するが、この構成に限定されない。制御機構は、受光素子200に対する光学素子100の位置を可動に制御できる機構であればよく、MEMS以外の構成が用いられてもよい。
【0033】
図5は、本発明の一実施形態に係るイメージセンサの光学素子を受光素子に対して第1方向にずらした状態の平面図である。図3及び図4に示したMEMSユニット300を用いて光学素子100をD1方向に移動させることで、受光部201と第2領域103(第1偏光フィルタ)とを重ねる。本実施形態では、図4の第2可動ユニット320と第3可動ユニット330とが相互作用することによって光学素子100をD1方向に移動させることができる。図5の状態において、D2方向に偏光した光は第1偏光フィルタによって遮蔽され、受光部201にD1方向に偏光した光だけが入射される。図5のように受光部201と第2領域103とが重なる状態を「第2状態」という場合がある。
【0034】
自動車の車載カメラに搭載されたイメージセンサにおいて、例えば夜間の運転中に他の自動車のライトからの光によって白飛びが発生する場合がある。このような場合において、イメージセンサに入射される光は横方向(D2方向)に入射されるので、入射される光の偏光成分はD2方向の偏光成分が主である。このような場合、第1偏光フィルタによってD2方向に偏光した光を遮蔽することで、白飛びを抑制することができる。
【0035】
図6は、本発明の一実施形態に係るイメージセンサの光学素子を受光素子に対して第2方向にずらした状態の平面図である。図3及び図4に示したMEMSユニット300を用いて光学素子100をD2方向に移動させることで、受光部201と第3領域105(第2偏光フィルタ)とを重ねる。本実施形態では、図4の第1可動ユニット310と第2可動ユニット320とが相互作用することによって光学素子100をD2方向に移動させることができる。図6の状態において、D1方向に偏光した光は第2偏光フィルタによって遮蔽され、受光部201にD2方向に偏光した光だけが入射される。図6のように受光部201と第3領域105とが重なる状態を「第3状態」という場合がある。
【0036】
自動車の車載カメラに搭載されたイメージセンサにおいて、例えばトンネルの中から外に出たときに、外光によって白飛びが発生する場合がある。このような場合において、イメージセンサに入射される光は縦方向(D1方向)に入射されるので、入射される光の偏光成分はD1方向の偏光成分が主である。このような場合、第1偏光フィルタによってD1方向に偏光した光を遮蔽することで、白飛びを抑制することができる。
【0037】
図7は、本発明の一実施形態に係るイメージセンサの光学素子を受光素子に対して第1方向及び第2方向にずらした状態の平面図である。図3及び図4に示したMEMSユニット300を用いて光学素子100をD1方向及びD2方向に移動させることで、受光部201と第4領域107(遮光フィルタ)とを重ねる。本実施形態では、図4の第2可動ユニット320と第3可動ユニット330とが相互作用することによって光学素子100をD1方向に移動させることができ、第1可動ユニット310と第2可動ユニット320とが相互作用することによって光学素子100をD2方向に移動させることができる。図7の状態において、遮光フィルタによって光が遮蔽されるため、受光部201に光は入射しない。図7のように受光部201と第4領域107とが重なる状態を「第4状態」という場合がある。
【0038】
上記の遮光フィルタは、イメージセンサの黒レベルを較正するためなどに用いられる。
【0039】
上記のように、MEMSユニット300(制御機構)は、光学素子100をシフトさせ、上記の第1状態、第2状態、及び第3状態に制御する。
【0040】
以上のように、本実施形態のイメージセンサ10によると、MEMSユニット300によって光学素子100の位置が制御され、受光部201に異なるフィルタを重ねることで、状況に応じて白飛びなどの撮像異常を抑制することができる。
【0041】
〈第2実施形態〉
図8を用いて、第2実施形態に係るイメージセンサ10Aの概要について説明する。図8は、本発明の一実施形態に係るイメージセンサの受光素子及び光学素子を個別に示す平面図である。第2実施形態に係るイメージセンサ10Aは、第1実施形態に係るイメージセンサ10に類似しているが、イメージセンサ10Aの光学素子100A及び受光素子200Aの構成がイメージセンサ10の光学素子100及び受光素子200の構成と相違する。
【0042】
光学素子100Aは、第1領域101A、第2領域103A、第3領域105A、第4領域107A、第5領域141A、第6領域143A、第7領域145A、第8領域147A、及び第9領域149Aを有する。第1領域101A〜第4領域107Aは、図1の第1領域101〜第4領域107と同様なので、説明を省略する。
【0043】
第5領域141Aは、第1ND(Neutral Density)フィルタが設けられた領域である。第6領域143Aは、第2NDフィルタが設けられた領域である。第7領域145Aは、第3NDフィルタが設けられた領域である。第2NDフィルタは第1NDフィルタよりも高濃度のフィルタである。第3NDフィルタは第2NDフィルタよりも高濃度のフィルタである。つまり、第2NDフィルタは第1NDフィルタよりも光量の減少量が大きく、第3NDフィルタは第2NDフィルタよりも光量の減少量が大きい。上記のように、光学素子100Aは、異なる濃度のNDフィルタを備えている。
【0044】
第8領域147Aは、右上から左下に延びる斜め方向の第3偏光フィルタが設けられた領域である。第9領域149Aは、左上から右下に延びる斜め方向の第4偏光フィルタが設けられた領域である。第4偏光フィルタの偏光方向は第3偏光フィルタの偏光方向と直交する。
【0045】
図8に示すように、受光素子200Aの受光部201Aは、第1領域101Aに対応する位置に設けられている。偏光フィルタが設けられていない第1領域101Aを中心に、各偏光フィルタ、各NDフィルタ、及び遮光フィルタが設けられていることで、光学素子100AがD1方向及びD2方向の各々のプラス方向又はマイナス方向に移動するだけで8種類のフィルタを受光部201Aに重ねることができる。
【0046】
以上のように、本実施形態のイメージセンサ10Aによると、第1実施形態のイメージセンサ10と同様の効果を得ることができる。また、第1実施形態のイメージセンサ10よりも多くの種類のフィルタを用いることができる。
【0047】
〈第3実施形態〉
図9を用いて、第3実施形態に係るイメージセンサ10Bの概要について説明する。図9は、本発明の一実施形態に係るイメージセンサの概略を示す断面図である。第3実施形態に係るイメージセンサ10Bは、第1実施形態に係るイメージセンサ10に類似しているが、イメージセンサ10Bの光学素子100B及びMEMSユニット300Bの構成がイメージセンサ10の光学素子100及びMEMSユニット300の構成と相違する。
【0048】
図9に示すように、イメージセンサ10Bの光学素子100Bは、第1光学素子150B及び第2光学素子160Bを含む。第1光学素子150Bと第2光学素子160Bとは平面視で重ねて配置される。第1光学素子150B及び第2光学素子160Bの各々の動きは、MEMSユニット300Bによって制御される。詳細は後述するが、第1光学素子150Bは、第1光学特性の第1フィルタを有する。第2光学素子160Bは、第1光学特性とは異なる特性である第2光学特性の第2フィルタを有する。その他の構成は図3に示す構成と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0049】
図10は、本発明の一実施形態に係るイメージセンサの受光素子及び光学素子を個別に示す平面図である。図10に示すように、第1光学素子150Bは第1領域101B−1及び第2領域103Bを有する。第2光学素子160Bは第1領域101B−2及び第3領域105Bを有する。第1領域101B−1、101B−2、第2領域103B、及び第3領域105Bは、それぞれ図1の第1領域101、第2領域103、及び第3領域105と同様の機能を有するので、説明を省略する。
【0050】
図10に示すように、受光素子200Bの受光部201Bは、第1光学素子150Bの第1領域101B−1及び第2光学素子160Bの第1領域101B−2に対応する位置に設けられている。受光部201Bは受光素子200Bの約半分の領域を占めている。第1領域101B−1は第1光学素子150Bの約半分の領域を占めている。第1領域101B−2は第2光学素子160Bの約半分の領域を占めている。
【0051】
第1光学素子150B及び第2光学素子160Bの各々は、MEMSユニット300によってD2方向に移動する。第1光学素子150BだけがD2方向に移動した場合、受光部201Bと第2領域103Bの第1偏光フィルタとが重なる。したがって、D2方向に偏光した光は第1偏光フィルタによって遮蔽され、受光部201BにD1方向に偏光した光だけが入射される。第2光学素子160BだけがD2方向に移動した場合、受光部201Bと第3領域105Bの第2偏光フィルタとが重なる。したがって、D1方向に偏光した光は第2偏光フィルタによって遮蔽され、受光部201BにD2方向に偏光した光だけが入射される。第1光学素子150B及び第2光学素子160Bの両方がD2方向に移動した場合、受光部201Bと第1偏光フィルタ及び第2偏光フィルタの両方が重なる。したがって、受光部201Bに光は入射しない。
【0052】
上記のように、2つの光学素子を重ねて配置し、これらを組み合わせることで偏光フィルタの機能及び遮光フィルタの機能の両方の機能を実現させることができる。このような構成によって、受光部201Bの面積を大きくすることができるため、受光感度を向上させることができる。
【0053】
なお、本実施形態では、光学素子100Bは2つの光学素子が上下に重ねられた構成である例を示したが、この構成に限定されない。例えば、光学素子100Bは3つ以上の光学素子が上下に重ねられた構成であってもよい。また、本実施形態では、光学素子100Bを構成する2つの光学素子(150B、160B)がいずれも偏光フィルタを備えた構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、上記の2つの光学素子又は3つ以上の光学素子として、偏光フィルタ、遮光フィルタ、NDフィルタ、及びカラーフィルタの各々が用いられてもよい。例えば、光学素子100Bが3つの光学素子で構成される場合、上記の第1光学素子150B(第1偏光フィルタ)及び第2光学素子160B(第2偏光フィルタ)に加えてNDフィルタが用いられてもよい。
【0054】
〈第4実施形態〉
図11を用いて、第1実施形態〜第3実施形態に係るイメージセンサの全体構成について説明する。上記の第1実施形態〜第3実施形態に係るイメージセンサ10〜10Bは、以下の第4実施形態に係るイメージセンサ10Cの各画素回路400Cに相当する。
【0055】
[イメージセンサ10Cの回路構成]
図11は、本発明の一実施形態に係るイメージセンサの概略を示す平面図である。図11に示すように、イメージセンサ10Cは、画素回路400C、行選択走査回路500C、読み出し回路600C、及び信号処理回路700Cを有する。イメージセンサ10Cは、撮像領域401C及び周辺領域403Cに区分される。撮像領域401Cは、画素回路400Cが配置された領域である。周辺領域403Cは撮像領域401Cに周辺の領域であり、行選択走査回路500C、読み出し回路600C、及び信号処理回路700Cが配置された領域である。なお、図11の1つの画素回路400Cが図1の1つの受光素子200に相当する。図11では、図1の光学素子100は省略されている。
【0056】
画素回路400Cは、矩形の撮像領域401Cにマトリクス状に配列されている。画素回路400CはN行M列のマトリクス状に配列される。図11の例ではN=M=10であるが、N及びMはこの値に限定されない。画素回路400Cは、光電変換素子を有している。光電変換素子は、撮像した画像によって電力を生成する。画素回路400Cは、生成された電力に対応した信号(例えば階調信号)を生成する。画素回路400Cの詳細な回路構成は後述する。
【0057】
行選択走査回路500Cは、周辺領域403Cのうち撮像領域401Cに対して行方向に隣接する位置に配置されている。行選択走査回路500Cには水平信号線510Cが接続されている。水平信号線510Cは、行選択走査回路500Cから撮像領域401Cに向かって行方向に延びている。水平信号線510Cは、同じ行に配列された複数の画素回路400Cに接続されている。詳細は後述するが、水平信号線510Cには、各画素回路400Cを制御する制御信号が入力される。当該制御信号は、各行の水平信号線510C毎に順次入力される。例えば、当該制御信号は、1行目、2行目、3行目、・・・のように、各行の水平信号線510C毎に順次入力される。ただし、当該制御信号は、上記のように順次的に入力されず、ランダムに入力されてもよい。
【0058】
読み出し回路600Cは、周辺領域403Cのうち撮像領域401Cに対して列方向に隣接する位置に配置されている。読み出し回路600Cには垂直信号線610Cが接続されている。垂直信号線610Cは、読み出し回路600Cから撮像領域401Cに向かって列方向に延びている。垂直信号線610Cは、同じ列に配列された複数の画素回路400Cに接続されている。詳細は後述するが、垂直信号線610Cには、行選択走査回路500Cによって選択された行に配置された画素回路400Cから信号が供給される。具体的には、各画素回路400Cに備えられた光電変換素子によって生成された電力に対応した階調信号(電圧)が垂直信号線610Cに供給される。垂直信号線610Cに供給された階調信号は、読み出し回路600Cによってデジタル信号に変換される。
【0059】
読み出し回路600Cは、比較回路620C、カウンタ回路630C、及び水平転送走査回路640Cを有する。比較回路620C及びカウンタ回路630Cは、各列に対応して設けられている。つまり、比較回路620C及びカウンタ回路630Cは、行方向にM個ずつ配列されている。
【0060】
比較回路620Cは、その入力端子に接続された垂直信号線610Cを介して受信した階調信号とランプ波形623Cとに基づき、出力信号を出力する。ランプ波形623Cはランプ波形発生回路621Cで生成された波形である。図11のように、ランプ波形623Cは三角波形であり、当該三角波形の傾斜部は、一定の傾斜角で傾斜している。比較回路620Cは、当該三角波形と上記階調信号とを比較し、両者の電圧が一致したときに出力信号を切り替える(例えば、出力信号をLowレベルからHighレベルに切り替える)。
【0061】
カウンタ回路630Cは、クロック発生回路631Cで生成されたクロック波形633C及び比較回路620Cからの出力信号に基づき、上記三角波形の開始から比較回路620Cの出力信号の切り替わりまでをカウントする。上記のように、比較回路620Cの出力信号の切り替え及びカウンタ回路630Cのカウントによって、上記階調信号は階調デジタル信号に変換される。換言すると、読み出し回路600CはA/D変換の機能を有する。
【0062】
水平転送走査回路640Cは、カウンタ回路630Cによってカウントされた階調デジタル信号を列毎に順次読み出す。水平転送走査回路640Cが1行分の階調デジタル信号を読み出すことで、行選択走査回路500Cによって選択された行の階調信号を階調デジタル信号として読み出すことができる。
【0063】
信号処理回路700Cは、読み出し回路600Cの水平転送走査回路640Cに接続されている。詳細は後述するが、信号処理回路700Cは、それぞれ異なる状態で撮像された画像に対する第1判定機能、第2判定機能、及び第3判定機能を備えた判定部を有している。また、信号処理回路700Cは第1判定及び第2判定の結果に基づいて光学素子100Cを動作させてフィルタをかける又は切り換える機能を備えている。また、信号処理回路700Cは、水平転送走査回路640Cから受信した、各画素回路400Cに対応する階調デジタル信号に対して、ノイズ除去処理を行う。例えば、信号処理回路700Cは、特定の行又は列の画素回路400Cに対応する階調デジタル信号の値が異常値を示す現象、いわゆる「横筋」又は「縦筋」を除去する処理を行う。その他にも、信号処理回路700Cは、欠陥画素の補正やランダムノイズの低減などの処理を行う。信号処理回路700Cは、ノイズ除去処理が行われた信号を外部機器に送信する。
【0064】
図11では、画素回路が撮像領域401Cだけに配置された構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、画素回路400Cと同じ構成又は類似した構成のダミー画素回路が周辺領域403Cに設けられていてもよい。この場合、当該ダミー画素回路は画素回路400Cに隣接した位置において、画素回路400Cが接続された水平信号線510C又は垂直信号線610Cに接続されていてもよい。なお、ダミー画素回路には光電変換素子が配置されていてもよく、画素回路400Cにおいて光電変換素子が配置される位置に対応するノードがオープン状態であってもよい。ダミー画素回路に光電変換素子が配置される場合は、当該光電変換素子は遮光されてもよい。光学素子100Cがダミー画素回路に対して設けられていてもよい。
【0065】
図11では、画素回路400Cがマトリクス状に配置された構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、画素回路400Cが図11に示すマトリクス状とは異なる周期性を有する形状で配置されていてもよく、不規則に配置されていてもよい。また、図11では、撮像領域401Cが矩形である構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、撮像領域401Cは多角形であってもよく、円形(真円及び楕円を含む)であってもよく、湾曲形状であってもよい。
【0066】
[画素回路及び出力回路の回路構成]
図12を用いて、本実施形態に用いられる画素回路及び出力回路の回路構成について説明する。図12は、本発明の一実施形態に係るイメージセンサの画素回路を示す回路構成図である。以下に詳細を示すが、図12に示す画素回路900Cは、本実施形態の複数の画素回路400Cに共通する回路構成である。以下の説明において、図12の光電変換素子903Cが設けられた領域が図1の受光部201に相当し、光電変換素子903C以外の素子が設けられた領域が図1の遮光部203に相当する。図12に示す出力回路920Cは、各画素回路400Cに対して設けられていてもよく、複数の画素回路400Cに対して設けられていてもよい。なお、図12に示す画素回路は一例であり、本発明はこの画素回路に限定されない。
【0067】
画素回路900Cは、読み出しトランジスタ901C、光電変換素子903C、転送トランジスタ905C、リセットトランジスタ907C、保持容量909C、及び選択トランジスタ913Cを有する。読み出しトランジスタ901Cの第1端子901Caと第1電源線410Cとの間には寄生容量911Cが形成されている。読み出しトランジスタ901Cの第2端子901Cbは第1電源線410Cに接続されている。光電変換素子903Cの第1端子903Caは、転送トランジスタ905Cを介して第1端子901Caに接続されている。光電変換素子903Cの第2端子903Cbは第1電源線410Cとは異なる電圧が供給される第2電源線990Cに接続されている。リセットトランジスタ907Cは第1端子901Caと第1電源線410Cとの間に配置されている。保持容量909Cは第1端子901Caと第2電源線990Cとの間に配置されている。選択トランジスタ913Cは読み出しトランジスタ901Cの第3端子901Ccに接続されている。換言すると、選択トランジスタ913Cは、読み出しトランジスタ901Cと出力端子950Cとの間に配置されている。
【0068】
出力回路920Cは、読み出しトランジスタ901C、選択トランジスタ913C、及び定電流回路921Cを有する。読み出しトランジスタ901C及び選択トランジスタ913Cは、画素回路900C及び出力回路920Cに共通するトランジスタである。定電流回路921Cは第2電源線990Cと出力端子950Cとの間に配置されている。
【0069】
[イメージセンサ10Cの動作フロー]
図13は、本発明の一実施形態に係るイメージセンサの撮像異常判定における動作フローを示す図である。上記のように、信号処理回路700Cの判定部は、それぞれ異なる状態で撮像された画像に対する第1判定機能、第2判定機能、及び第3判定機能を備えている。図13に示すように、撮像が開始されると、まず第1判定が行われる(ステップS701)。
【0070】
第1判定機能は、図2に示す状態(偏光フィルタが受光部201に重なっていない状態)で、撮像した画像において白を示す画素の数がしきい値を超えるか否かを判定する機能である。信号処理回路700Cは、当該第1判定によって白を示す画素の数がしきい値を超えると判断した場合(ステップS701の「NG」の場合)、光学素子100Cを動作させて受光部201Cに1番目のフィルタ(例えば、図5に示すように第1領域103の第1偏光フィルタ)を重ねるように設定する(ステップS703)。一方、信号処理回路700Cは、上記第1判定によって白を示す画素の数がしきい値を超えないと判断した場合(ステップS701の「OK」の場合)、当該判定機能を終了する。
【0071】
第2判定機能は、図5に示す状態で撮像した画像において白を示す画素の数がしきい値を超えるか否かを判定する機能である。信号処理回路700Cは、当該第2判定によって白を示す画素の数がしきい値を超えると判断した場合(ステップS705の「NG」の場合)、光学素子100Cを動作させて受光部201Cに2番目のフィルタ(例えば、図6に示すように第2領域105の第2偏光フィルタ)を重ねるように設定する(ステップS707)。一方、信号処理回路700Cは、上記第2判定によって白を示す画素の数がしきい値を超えないと判断した場合(ステップS705の「OK」の場合)、ステップS711の撮像異常判定に進む。
【0072】
第3判定機能は、図6に示す状態で撮像した画像において白を示す画素の数がしきい値を超えるか否かを判定する機能である。信号処理回路700Cは、当該第3判定によって白を示す画素の数がしきい値を超えるか否かの判定(ステップS709)の結果に基づいて、ステップS711の撮像異常判定を行う。
【0073】
上記の動作フローにおいて、ステップS701の第1判定において「OK」の判定がなされた場合、撮像した画像に白飛びのような撮像異常はないと判定され、当該判定機能は終了する。一方、ステップS701の第1判定において「NG」の判定がなされた場合は、一方向からの外光による白飛びが発生している又は白い対象物を撮像している、のいずれかであることが予想される。上記のような白飛びによって白を示す画素の数がしきい値を超えた場合、上記の第1偏光フィルタが設定された状態での第2判定、又は第2偏光フィルタが設定された状態での第3判定によって「OK」の判定がなされる。一方、白い対象物を撮像することによって白を示す画素の数がしきい値を超えた場合、第2判定及び第3判定のいずれの判定でも「NG」の判定がなされる。つまり、第2判定及び第3判定に基づいてステップS711において白飛び発生(撮像異常)の有無を判定することができる。
【0074】
上記の撮像異常の有無の判定は、1フレーム全体に対してなされてもよく、1フレームの一部の領域に対してなされてもよい。
【0075】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、各実施形態のイメージセンサを基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、上述した各実施形態は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、各実施形態に共通する技術事項については、明示の記載がなくても各実施形態に含まれる。
【0076】
また、上記の実施形態において、光学素子に設けられた各領域にフィルタが配置された構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、各領域に液晶を用いたシャッタなど、フィルタ以外の機能部材が配置されてもよい。また、上記の実施形態では、各実施形態における光学素子の各領域に偏光フィルタ、遮光フィルタ、及びNDフィルタが用いられた構成を例示したが、例えばカラーフィルタなど、上記以外のフィルタが用いられた構成であってもよい。また、上記の実施形態において、光学素子の下方又は上方に、例えば格子状部材、スリット、及びマイクロレンズアレイなどの構造物が設けられていてもよい。
【0077】
また、上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。