番組を編成するために必要な情報である番組編成情報、前記番組において使用される素材の情報である素材情報、および前記番組の放映のための操作に関する情報である操作情報から第一の放送データを生成する放送マスターシステムから、前記番組編成情報、前記素材情報、および前記操作情報を取得するとともに、前記放送マスターシステムが生成する前記第一の放送データと同様の第二の放送データを生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された前記第二の放送データを、運用テストとして表示する表示手段と、
を備えた運用テスト支援装置。
【背景技術】
【0002】
従来、24時間稼働し続けるシステムなどでは、システムの信頼性向上のため、同じ構成の機器などを複数系統分用意する冗長化が施されている。それにより、システム障害発生時には、1系統目(現用系)から2系統目(予備系)に自動的に切り替わり、システムの停止が防止されている。
【0003】
放送マスターシステムにおいても、障害発生時の放送事故を未然に防ぐため、システムが2重化されている。
【0004】
図3は、このような、2重化された放送マスターシステムの一例を示す一般的な機能構成図である。
【0005】
放送マスターシステム30は、制御卓32、ビデオサーバ34、データサーバ36、メイン系統(系統1)38(#1)、メイン系統(系統2)38(#2)、系統出力制御装置40を備えて構成される。制御卓32、ビデオサーバ34、およびデータサーバ36はそれぞれ、メイン系統38(#1)とメイン系統38(#2)との両方とネットワーク接続されており、メイン系統38(#1)とメイン系統38(#2)との両方と通信することが可能である。
【0006】
制御卓32は、例えば、VTR機器、VTR機器エミュレータ、CG機器、天気機器、緊急地震速報装置等を含む。
【0007】
ビデオサーバ34は、放送用のビデオデータ等の素材を記憶している。
【0008】
データサーバ36は、放送用の素材以外の、放送のために必要なデータ情報等の番組編成情報を記憶している。
【0009】
メイン系統38(#1)は、制御卓32から操作情報aを、ビデオサーバ34から素材情報bを、およびデータサーバ36から番組編成情報cを、それぞれ受け取り、これらを使用して放送データd1を生成する。操作情報aは、番組の放映のための操作に関する情報であり、素材情報bは、ビデオデータ等のように、番組において使用される素材の情報であり、番組編成情報cは、データ情報等のように、番組を編成するために必要な情報である。
【0010】
メイン系統38(#2)も同様に、制御卓32から操作情報aを、ビデオサーバ34からビデオデータ等の素材情報bを、およびデータサーバ36からデータ情報等の番組編成情報cを、それぞれ受け取り、これらを使用して放送データd2を生成することができる。
【0011】
制御卓32には、系統選択ボタン33(#1)、33(#2)が備えられており、系統選択ボタン33(#1)が選択されると、操作情報aが、メイン系統(系統1)38(#1)へ送られ、系統選択ボタン33(#2)が選択されると、操作情報aが、メイン系統(系統2)38(#2)へ送られる。
【0012】
ビデオサーバ34にも、系統選択ボタン35(#1)、35(#2)が備えられており、系統選択ボタン35(#1)が選択されると、素材情報bが、メイン系統(系統1)38(#1)へ送られ、系統選択ボタン35(#2)が選択されると、素材情報bが、メイン系統(系統2)38(#2)へ送られる。
【0013】
データサーバ36にも、系統選択ボタン37(#1)、37(#2)が備えられており、系統選択ボタン37(#1)が選択されると、番組編成情報cが、メイン系統(系統1)38(#1)へ送られ、系統選択ボタン37(#2)が選択されると、番組編成情報cが、メイン系統(系統2)38(#2)へ送られる。
【0014】
メイン系統38(#1)は系統1ともよばれ、通常時に動作し、メイン系統38(#2)は系統2とも呼ばれ、系統1の故障時や、系統1のメンテナンス時に動作し、系統1のバックアップとして機能する。
【0015】
メイン系統38(#1)とメイン系統38(#2)とはともに系統出力制御装置40に接続されており、系統出力制御装置40へ放送データd1、d2を出力することが可能である。
【0016】
系統出力制御装置40は、メイン系統38(#1)および/またはメイン系統38(#2)から出力された放送データd1および/または放送データd2を受信すると、所定の放送スケジュールに従って、放送データd1または放送データd2を、送信機42から配信させる。
【0017】
なお、制御卓32、ビデオサーバ34、およびデータサーバ36と、メイン系統38(#1)およびメイン系統38(#2)との間の接続は、有線に限定されるものではなく、無線であっても良い。同様に、メイン系統38(#1)およびメイン系統38(#2)と、系統出力制御装置40との間の接続も、有線に限定されるものではなく、無線であっても良い。さらには、系統出力制御装置40と送信機42との間の接続も、有線に限定されるものではなく、無線であっても良い。放送局では、このようなシステム構成の放送マスターシステム30を用いて放送業務を行うのが一般的である。
【0018】
ところで、放送局では、映像や音声が、放送スケジュールに従って正しく出力されることを確認するための運用テストも、このような放送マスターシステム30を用いてなされている。
【0019】
しかしながら、この種の運用テストのための設備対応としては、各放送局によってまちまちであり、例えば、キー局などでは、運用者の教育や番組編成データのシミュレーションなどの運用テストを行う「テスト系」として3系統目(すなわち、メイン系統(系統3))も導入している場合もある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、図3と同一部分については、以下の記載では、同一符号を付して示すことにより、重複説明を避ける。
【0026】
図1は、図3に示すような放送マスターシステム30に、本実施形態に係る運用テスト支援装置10を適用した一例を示す機能ブロック図である。
【0027】
運用テスト支援装置10は、仮想系統12と、仮想系統12と通信可能に接続された映像/音声ビューア14とを備えてなる。
【0028】
仮想系統12は、例えばPC等のコンピュータによって実現され、メイン系統(系統1)38(#1)およびメイン系統(系統2)38(#2)と同様の機能を有する。すなわち、仮想系統12もまた、放送マスターシステム30と通信可能であり、制御卓32から操作情報aを、ビデオサーバ34からビデオデータ等の素材情報bを、およびデータサーバ36からデータ情報等の番組編成情報cを、それぞれ受け取り、これらを使用して放送データd3を生成する。
【0029】
これを実現するために、制御卓32には、系統選択ボタン33(#1)、33(#2)に加えて、系統選択ボタン33(#3)を追加して設ける。そして、系統選択ボタン33(#3)が選択されると、操作情報aが、仮想系統12へ送られるようにしている。
【0030】
同様に、ビデオサーバ34にも、系統選択ボタン35(#1)、35(#2)に加えて、系統選択ボタン35(#3)を追加して設ける。そして、系統選択ボタン35(#3)が選択されると、素材情報bが、仮想系統12へ送られるようにしている。
【0031】
データサーバ36にもまた、系統選択ボタン37(#1)、37(#2)に加えて、系統選択ボタン37(#3)を追加して設ける。そして、系統選択ボタン37(#3)が選択されると、番組編成情報cが、仮想系統12へ送られるようにしている。
【0032】
このように、仮想系統12は、メイン系統(3系)として見なすことができる。
【0033】
なお、制御卓32、ビデオサーバ34、およびデータサーバ36と、仮想系統12との間の接続形態は限定されず、有線でも無線でも良い。
【0034】
仮想系統12は、放送データd3を、映像/音声ビューア14へ出力する。なお、仮想系統12と映像/音声ビューア14との間の接続形態もまた限定されず、有線でも無線でも良い。
【0035】
なお、仮想系統12の上流側(制御卓32、ビデオサーバ34、およびデータサーバ36側)および下流側(系統出力制御装置40側)の接続ともに、イーサネット(登録商標)等のLAN、あるいは公衆回線や専用回線を介して複数のLANが接続されるWAN等から構成されても良い。LANの場合には、必要に応じてルータを介した多数のサブネットから構成され、WANの場合には、公衆回線に接続するためのファイアウォール等を適宜備え得るが、ここではその図示及び詳細説明を省略する。
【0036】
映像/音声ビューア14は、例えば単体のディスプレイによって実現されるが、スマートフォン、タブレットPC、ノートPCのディスプレイによって実現されることも可能である。したがって、スマートフォン、タブレットPC、ノートPCによって、仮想系統12と映像/音声ビューア14とをあわせて一体的に実現することも可能である。
【0037】
映像/音声ビューア14は、仮想系統12から出力された放送データd3を、ストリーミング再生することによって表示する。映像/音声ビューア14を、スマートフォン、タブレットPC、ノートPCによって実現する場合、スマートフォン、タブレットPC、ノートPCにインストールされた適切なビューアアプリを用いて、放送データd3を、ストリーミング再生するようにしても良い。
【0038】
また、映像/音声ビューア14は、放送データd3に、複数のサービス(チャンネル)が含まれている場合には、画面を分割することによって、複数のサービス(チャンネル)を同時に再生するようにしても良い。例えば、デジタル放送の場合、1つの放送データは、3つのチャンネルを含むことができる。さらに、ワンセグ用のチャンネルを含むこともできる。このような場合、映像/音声ビューア14は、画面を4分割することによって、4つのチャンネルをすべて同時に再生し、表示することができる。
【0039】
次に、以上のように構成した本実施形態に係る運用テスト支援装置10の動作を、図2に示すフローチャートを用いて説明する。
【0040】
まず、放送マスターシステム30において、メイン系統38(#1)またはメイン系統38(#2)によって、放送データd1または放送データd2が生成される。ここでは、メイン系統38(#1)によって放送データd1が生成される場合を例に説明する。
【0041】
すなわち、メイン系統38(#1)によって放送データd1が生成される場合、先ず、制御卓32、ビデオサーバ34、およびデータサーバ36の系統選択ボタンとして、系統選択ボタン33(#1)、系統選択ボタン35(#1)、および系統選択ボタン37(#1)がそれぞれ選択される(S1)。
【0042】
これによって、制御卓32からの操作情報a、ビデオサーバ34からの素材情報b、データサーバ36からの番組編成情報cがそれぞれ、メイン系統38(#1)へ送られる(S2)。
【0043】
メイン系統38(#1)では、操作情報a、素材情報b、および番組編成情報cに基づいて、放送データd1が生成される(S3)。生成された放送データd1は、系統出力制御装置40へ出力される。系統出力制御装置40に出力された放送データd1は、放送スケジュールにしたがって、放送するタイミングになったら送信機42から配信されるが、それまでは、系統出力制御装置40に保持される(S4)。
【0044】
本発明の実施形態に係る運用テスト支援装置10は、このようにして放送データd1が、系統出力制御装置40に保持されると、放送データd1が送信機42から配信される前に、仮想系統12において、放送データd1と同じ手法で放送データd3を生成し、映像/音声ビューア14において、放送データd3を視聴することによって、放送データd1の運用テストを行うための装置である。
【0045】
このような本発明の実施形態に係る運用テスト支援装置10を動作させる場合、先ず、制御卓32、ビデオサーバ34、およびデータサーバ36の系統選択ボタンとして、系統選択ボタン33(#3)、系統選択ボタン35(#3)、および系統選択ボタン37(#3)がそれぞれ選択される(S5)。
【0046】
これによって、制御卓32からの操作情報a、ビデオサーバ34からの素材情報b、データサーバ36からの番組編成情報cがそれぞれ、仮想系統12へ送られる(S6)。
【0047】
仮想系統12は、メイン系統38(#1)およびメイン系統38(#2)と同様の機能を有している。仮想系統12では、操作情報a、素材情報b、および番組編成情報cに基づいて、メイン系統38(#1)およびメイン系統38(#2)と同様にして、放送データd3が生成される(S7)。したがって、方法データd3は、放送データd1または放送データd2と同一のデータとなる。
【0048】
なお、放送データd3を生成するタイミングは、必ずしも、放送データd1(または放送データd2)が系統出力制御装置40に保持された後に限定されず、放送データd1(または放送データd2)の生成と並行して放送データd3を生成しても良い。
【0049】
生成された放送データd3は、仮想系統12から、映像/音声ビューア14へ送られ、映像/音声ビューア14において再生される。これによって、放送データd3の内容がオペレータによって視聴される(S8)。
【0050】
これによって、オペレータは、放送データd3の映像や音声が、放送スケジュールに従って正しく出力されているか否かを、放送データd1が送信機42から配信される前に確認することができる。
【0051】
放送データd3は、ステップS3において生成された放送データd1と同様の手法で生成される。したがって、放送データd3は、ステップS3において生成された放送データd1と同一となる。よって、放送データd1が送信機42から配信される前に放送データd3の内容を確認することは、放送データd1の内容を、配信前に確認することに相当する。
【0052】
このように、オペレータは、放送データd3を視聴することによって、放送データd1の内容を、放送データd1が送信機42から配信される前に、事前に表示し、確認することができる。すなわち、放送データd1の映像や音声が、放送スケジュールに従って正しく再生されるか否かを、送信機42から配信される前に予め確認するための運用テストを実施することが可能になる。
【0053】
そして、放送データd3が、正しく再生されていることを確認した場合には、系統出力制御装置40に保持されている放送データd1も正しいと確認することができる。一方、放送データd3が、正しく再生されない場合には、系統出力制御装置40に保持されている放送データd1も正しくないと判定し、放送マスターシステム30において、放送データd1を再度生成することになる。
【0054】
本実施形態に係る運用テスト支援装置10は、仮想系統12をPCによって、映像/音声ビューア14をディスプレイによって実現することができる。あるいは、仮想系統12と映像/音声ビューア14を一体化し、スマートフォン、タブレットPC、ノートPC単体によって実現することができる。したがって、本実施形態に係る運用テスト支援装置10は、低価格かつ省スペースでの実現が可能である。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、放送マスターシステム30の運用テストを、低価格および省スペースで実現することが可能な運用テスト支援装置10を提供することが可能となる。
【0056】
なお、仮想系統12は、請求項における生成手段に対応し、映像/音声ビューア14は、請求項における表示手段に対応する。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0058】
例えば、図1に例示する放送マスターシステム30は、2つのメイン系統38(#1)、(#2)しか備えていないが、3つ以上のメイン系統を備えている放送マスターシステム30に対しても、本発明の実施形態に係る運用テスト支援装置10を適用することが可能である。
【0059】
また、図1に例示する放送マスターシステム30は、メイン系統38に情報を送る構成要素として、制御卓32、ビデオサーバ34、およびデータサーバ36を例示しているが、さらに、他の構成要素(例えば、別の制御卓、別のビデオサーバ、別のデータサーバ等)をそなえていても良く、そのような放送マスターシステム30に対しても、本発明の実施形態に係る運用テスト支援装置10を適用することが可能である。この場合、他の構成要素からの情報は、メイン系統38のみならず、仮想系統12にも同様に送られ、仮想系統12は、これら他の構成要素からの情報をも使用して、放送データd3を生成する。
番組を編成するために必要な情報である番組編成情報、前記番組において使用される素材の情報である素材情報、および前記番組の放映のための操作に関する情報である操作情報から第一の放送データを生成する放送マスターシステムから、前記番組編成情報、前記素材情報、および前記操作情報を取得するとともに、前記放送マスターシステムが前記第一の放送データを生成する処理をコンピュータにより処理して、第二の放送データを生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された前記第二の放送データを、運用テストとして表示する表示手段と、
を備えた運用テスト支援装置。