(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021003453
(43)【公開日】20210114
(54)【発明の名称】内視鏡治療システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20201211BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20201211BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20201211BHJP
【FI】
   !A61B1/045 614
   !A61B1/00 620
   !G06T7/00 612
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】2019119645
(22)【出願日】20190627
(71)【出願人】
【識別番号】592019213
【氏名又は名称】学校法人昭和大学
【住所又は居所】東京都品川区旗の台1丁目5番8号
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 武雅
【住所又は居所】東京都品川区旗の台1−5−8 学校法人昭和大学内
(72)【発明者】
【氏名】工藤 進英
【住所又は居所】東京都品川区旗の台1−5−8 学校法人昭和大学内
(72)【発明者】
【氏名】森 悠一
【住所又は居所】東京都品川区旗の台1−5−8 学校法人昭和大学内
(72)【発明者】
【氏名】三澤 将史
【住所又は居所】東京都品川区旗の台1−5−8 学校法人昭和大学内
【テーマコード(参考)】
4C161
5L096
【Fターム(参考)】
4C161AA00
4C161BB02
4C161CC06
4C161DD03
4C161HH51
4C161HH57
4C161JJ11
4C161JJ17
4C161NN05
4C161SS21
4C161WW08
4C161WW11
5L096BA06
5L096BA13
5L096CA02
5L096DA03
5L096HA08
5L096JA03
5L096JA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】術者の技量に影響されることなく穿孔の発生を防ぐことができる内視鏡治療システムを提供する。
【解決手段】被検体内を撮像しながら処置装置によって被検体に対して処置を行うための内視鏡治療システム1である。
そして、被検体内を撮像して撮像データを取得する内視鏡部2と、内視鏡部によって取得された撮像データに基づいて判定を行う判定部3と、撮像データに基づいた映像を表示させるモニタ部4と、被検体の切開が可能な電気メス装置5とを備えている。
この判定部では、撮像データに映った電気メス装置の状況から危険か否かを判定し、危険と判定された場合には、モニタ部及び電気メス装置の少なくとも一方に危険信号を送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内を撮像しながら処置装置によって被検体に対して処置を行うための内視鏡治療システムであって、
被検体内を撮像して撮像データを取得する内視鏡部と、
前記内視鏡部によって取得された前記撮像データに基づいて判定を行う判定部と、
前記撮像データに基づいた映像を表示させるモニタ部と、
被検体の切開が可能な処置装置とを備え、
前記判定部では、前記撮像データに映った前記処置装置の状況から危険か否かを判定し、前記危険と判定された場合には、前記モニタ部及び前記処置装置の少なくとも一方に危険信号を送信することを特徴とする内視鏡治療システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記被検体内と前記処置装置との両方の状況が映った撮像データに対して危険か否かの判定結果を付したタグ付き学習用データによって機械学習をした成果により判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡治療システム。
【請求項3】
前記処置装置は電気メス装置であって、前記危険信号は前記電気メス装置の出力を停止させる信号であることを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡治療システム。
【請求項4】
前記モニタ部には、前記危険信号によって危険な状況であることの報知がされることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の内視鏡治療システム。
【請求項5】
前記撮像データは動画であり、前記被検体内と前記処置装置との位置関係は逐次、変化していくことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の内視鏡治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内を撮像しながら処置装置によって被検体に対して処置を行うための内視鏡治療システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD: Endoscopic Submucosal Dissection)により、大腸腫瘍の大きさに関係なく、すべての早期癌の内視鏡的切除が可能となった。特許文献1には、内視鏡と電気メスとを組み合わせた医療システムが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された医療システムでは、電気メス装置が高周波電流を出力する際に発するノイズの影響によって、タッチパネルの誤動作や内視鏡ビデオプロセッサと周辺機器との間で生じる通信不良を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−167021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ESDは、粘膜層及び粘膜筋板を切開後、粘膜下層を剥離していく方法となるが、粘膜下層を剥離している最中には、電気メスの先端を内視鏡画面によって視認することができない。すなわち、電気メスの先端を視認できないことにより、粘膜下層を剥離しているつもりでも、術者の技量によっては筋層を損傷又は切断して穿孔を引き起こす可能性がある。穿孔は、腹膜炎の原因となるため、未然に防がなければならない。
【0006】
そこで、本発明は、術者の技量に影響されることなく穿孔の発生を防ぐことができる内視鏡治療システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の内視鏡治療システムは、被検体内を撮像しながら処置装置によって被検体に対して処置を行うための内視鏡治療システムであって、被検体内を撮像して撮像データを取得する内視鏡部と、前記内視鏡部によって取得された前記撮像データに基づいて判定を行う判定部と、前記撮像データに基づいた映像を表示させるモニタ部と、被検体の切開が可能な処置装置とを備え、前記判定部では、前記撮像データに映った前記処置装置の状況から危険か否かを判定し、前記危険と判定された場合には、前記モニタ部及び前記処置装置の少なくとも一方に危険信号を送信することを特徴とする。
【0008】
ここで、前記判定部は、前記被検体内と前記処置装置との両方の状況が映った撮像データに対して危険か否かの判定結果を付したタグ付き学習用データによって機械学習をした成果により判定を行う構成とすることができる。
【0009】
また、前記処置装置は電気メス装置であって、前記危険信号は前記電気メス装置の出力を停止させる信号とすることができる。さらに、前記モニタ部には、前記危険信号によって危険な状況であることの報知がされる構成とすることができる。そして、前記撮像データは動画であり、前記被検体内と前記処置装置との位置関係は逐次、変化していくものとなる。
【発明の効果】
【0010】
このように構成された本発明の内視鏡治療システムは、被検体内を撮像する内視鏡部によって取得された撮像データに基づいて判定を行う判定部と、被検体の切開が可能な処置装置とを備えている。そして、判定部では、撮像データに映った処置装置の状況から危険か否かを判定し、危険と判定された場合には、モニタ部及び処置装置の少なくとも一方に危険信号を送信する。
【0011】
このように穿孔が起きるような危険な状況を判定部が判定し、危険信号によってモニタ部に警告が出たり、処置装置の動作が制限されたりするように構成されていれば、術者の技量に影響されることなく穿孔の発生を防ぐことができる。
【0012】
そして、このような判定部による判定が、予めタグ付き学習用データによって機械学習をした成果に基づいて行われるのであれば、判定が難しい状況の撮像データに対しても、高い精度で判定を行うことができるようになる。
【0013】
また、処置装置が電気メス装置であって、危険信号が電気メス装置の出力を停止させる信号であれば、術者が誤って操作をした場合でも、穿孔が起きるのを防ぐことができる。さらに、モニタ部に危険信号によって危険な状況であることの報知がされる構成であっても、術者に適切な操作を促すことができるようになる。
【0014】
そして、判定部が判定を行う撮像データが動画であれば、治療中に目まぐるしく変化する被検体内と処置装置との位置関係から、的確に危険な状況を判定して、穿孔の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態の内視鏡治療システムの構成を説明するブロック図である。
【図2】本実施の形態の内視鏡治療システムの構成を模式的に示した説明図である。
【図3】消化管壁の断面を模式的に示した説明図である。
【図4】判定部にAI技術を適用する際の処理の流れを説明するフローチャートである。
【図5】被検体内と電気メスの柄部との両方の状況が映った動画データの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の内視鏡治療システム1の構成を説明するブロック図で、図2は内視鏡治療システム1の構成を模式的に示した説明図である。
【0017】
本実施の形態の内視鏡治療システム1は、人の食道や胃や大腸などの消化器内、胆道内、気管支内、膀胱内などの被検体内を撮像する内視鏡部2と、被検体内の腫瘍やポリープなどの病変を切除する電気メス装置5などの処置装置とを備えている。
【0018】
内視鏡部2は、被検体の外部から被検体内を観察するための装置である。内視鏡部2は、被検体内に挿入される撮像部21と、撮像部21によって撮像された撮像データを処理する映像処理部22とを備えている。
【0019】
撮像部21は、CCD(Charge-Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を有している。この撮像素子によって被検体内の部位の光学像を撮像すると、その光学像に応じた電気信号が出力される。
【0020】
内視鏡部2には、被検体内に挿入する部分が曲がる軟性内視鏡と、曲がらない硬性内視鏡とがある。軟性内視鏡を使用する場合は、先端のCCDなどで撮像された撮像データを電気的にモニタ部4まで導いて表示させる。硬性内視鏡を使用する場合は、先端からレンズ系を繋いで体外の接眼部まで導き、接眼部にカメラヘッドなどを接続することで撮像データを取得することになる。
【0021】
映像処理部22では、被検体内を撮像した撮像データの信号処理を行う。ここで、信号処理とは、撮像部21によって入力される被検体内を撮像した撮像データである電気信号を、映像信号に変換して出力する処理をいう。
【0022】
撮像データから変換された映像信号は、モニタ部4に動画の映像として表示される。また、撮像データから変換された映像信号は、記憶部6に記録される。記憶部6は、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブ(SSD : Solid State Drive)等の大容量記憶媒体、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリなどによって構成することができる。
【0023】
内視鏡部2は、図示しない操作部や制御部などを備えていて、術者などが撮像の開始と終了の操作をしたり、映像処理部22による変換の調整をしたりすることができる。また、撮像データに基づく映像をモニタ部4に映し出したり、記憶部6への記録と停止の操作をしたりすることができる。
【0024】
電気メス装置5は、被検体内の対象とする部位(病変)に対して、切開や止血などの処置を行う処置装置である。電気メス装置5は、電気メス51と、それを制御する操作部52とを備えている。
【0025】
操作部52は、電気メス51から高周波電流を出力させるなどの指示を術者が行うための機構で、フットペダルやボタンなどによって構成される。例えば、術者がフットペダル(52)を踏むと出力スイッチ53が入って、電気メス51の柄部511の先の先端部512から、高周波電流が出力される(図2参照)。
【0026】
例えば、術者がフットペダルを踏んでいる間だけ電気メス51の先端部512から高周波電流が出力されて、被検体内の対象とする部位の切開や止血等の処置が行われる。ここで、起動後の電気メス装置5には、高周波電流の出力直前、出力中及び出力直後の高出力状態と、高周波電流の出力が停止された待機状態とがある。
【0027】
そして、本実施の形態の内視鏡治療システム1は、内視鏡部2によって取得された撮像データに基づいて判定を行う判定部3を備えている。判定部3では、内視鏡部2から得られる被検体内の撮像データに基づいて、電気メス51などによる処置に危険があるか否かを判定する。
【0028】
図3には、被検体の部位の一例として、消化管壁の断面を模式的に示した。消化管壁は、内腔TI側から腹腔内TOまでの間が5層で構成されている。詳細には、内腔TI側から粘膜層W1、粘膜筋板W2、粘膜下層W3、筋層W4、漿膜W5の積層構造となっている。
【0029】
そして、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)によって早期癌の内視鏡的切除を行う場合には、粘膜層W1及び粘膜筋板W2を切開した後に、粘膜下層W3を剥離していくことになるが、4層目である筋層W4が損傷又は断裂してしまうと、壁構造が破綻してしまい、穿孔へとつながっていく。
【0030】
要するに穿孔とは、消化管の内腔TIと腹腔内TOとが交通してしまう状態を言う。そして、ESDの術中に穿孔腔を内視鏡的に閉鎖(クリッピング)できないときには、緊急外科手術による閉鎖術が必要となる。また内視鏡的に穿孔腔を閉鎖できたとしても、腸液が創部から漏出して腹膜炎が発症することもあり、その場合には緊急手術の適応となる。
【0031】
そこで、判定部3では、電気メス51などによる処置によって穿孔などの危険な状況に至ることが無いかを判定する。要するに、内視鏡部2によって取得された撮像データに映った電気メス51と被検体内との状況から、危険か否かを判定する。
【0032】
例えば、内視鏡部2の撮像部21を消化管の内腔TIに挿入すると、粘膜層W1が映った撮像データが得られる。さらに、電気メス51によって病変の周辺の処置を行っている最中には、粘膜層W1や切開によって露出する粘膜下層W3などの他に電気メス51の柄部511や先端部512などが処置の進捗に応じて映し出される(図5参照)。
【0033】
電気メス51は、消化管壁に挿し込む前には、柄部511と先端部512の両方が映っているが、切開や止血のために消化管壁に先端部512を挿し込むと、撮像データには柄部511と粘膜層W1などしか映っていない撮像データとなる。
【0034】
要するに、粘膜層W1などの被検体内の状況と電気メス51との位置関係が、動画となる撮像データに、逐次、変化しながら映り込んでいく。これらの位置関係の変化から、電気メス51による処置の状況を把握し、危険な状況になっていないかを判定する。
【0035】
この判定部3の判定処理部は、人工知能(AI:Artificial Intelligence)技術によるディープラーニングなどの機械学習によって構築される。図4に、判定部3にAI技術を適用する際の処理の流れを説明するフローチャートを示した。
【0036】
例えばESDは、(1)マーキング、(2)局注、(3)切開、(4)粘膜下層の剥離、(5)病変の切除、(6)止血、(7)病理検査という手順で実施される。そして、これらの手順の中で、電気メス51は、(1)マーキングと(3)切開と(4)粘膜下層の剥離と(5)病変の切除の処置で使用され、高周波電流が出力されることになる。
【0037】
ここで、「(1)マーキング」とは、粘膜層W1の表面を焼いて目印を付けることをいい、「(3)切開」とは、病変の周囲に付けたマーキングを切り囲むように、電気メス51の先端部512で粘膜層W1及び粘膜筋板W2を切る処置をいう。また、「(4)粘膜下層の剥離」とは、電気メス51の先端部512で、病変を粘膜下層W3ごと剥ぎ取る処置をいう。さらに、「(5)病変の切除」とは、電気メス51の先端部512やスネアで病変が切り取られるまで剥離する処置をいう。
【0038】
これらの電気メス51を使用する処置の中で、粘膜下層W3を剥離している最中には、電気メス51の先端部512を内視鏡画面によって視認することができない。すなわち、電気メス51の先端部512を視認できないことにより、粘膜下層W3を剥離しているつもりでも、術者の技量によっては筋層W4を損傷又は切断してしまう現象が発生する。
【0039】
要するに、術者の技量によって、電気メス51の先端部512が視認できない状況でも、穿孔を起こさないケースと穿孔が起きてしまうケースがある。言い換えると、先端部512が映っていなくても、被検体内の状況と電気メス51の柄部511との位置関係が映し出された動画となる映像(撮像データ)をモニタ部4で見ているだけで、技量の高い術者は穿孔を起こすことなく処置を終えることができることが分かる。
【0040】
そこで、ステップS1では、内視鏡治療時の動画データを収集する。例えば1000件から2000件に及ぶ大腸ESD(大腸早期悪性腫瘍内視鏡的粘膜下層剥離術)の術中に内視鏡部2で撮影されて、記憶部6に記録された撮像データに基づく動画の映像データ(動画データ)を利用する。術例毎に記録された動画データは、例えば上述したESDの手順毎に分割する。そして、穿孔が起きる可能性のある処置の状況が記録された動画データのみを抽出する。例えば、(3)切開、(4)粘膜下層の剥離及び(5)病変の切除の処置の状況が記録された動画データを抽出する。
【0041】
続いてステップS2では、抽出された動画データに対してタグを付与する。要するに、電気メス51が粘膜下層W3を剥離している動画データを、筋層W4を切ってしまっている危険な状況と、筋層W4を切っていない安全な状況との2群に分別し、それぞれに「危険」又は「安全」というタグ付けを行う。このようにして作成されたタグ付きの動画データが、タグ付き学習用データとなる。
【0042】
ステップS3では、AI学習部7(図1参照)により機械学習を行う。AI学習部7は、例えばスーパーコンピュータ(NVIDIA社 DGX-station)に設けられる。AI学習部7では、上記ステップS2で作成したタグ付き学習用データを教師データとして、ディープラーニングが行われる。
【0043】
図5に、被検体内となる内腔TIと電気メス51の柄部511との両方の状況が映った動画データの一例を示した。この例示した瞬間においては、粘膜層W1と、切開によって露出した粘膜下層W3と柄部511とが映っているが、これらの位置関係は刻々と変化していく。また、この段階では電気メス51の先端部512は映っていない。
【0044】
このようなタグ付き学習用データの処置中の動画データが、AI学習部7の学習モデルに入力データとして与えられ、タグ付き学習用データに付与された「危険」又は「安全」というタグを教師とした学習が行われる。
【0045】
そして、タグ付き学習用データの動画データを入力したときに、予め付与されたタグと同じ判定結果が出る確率が所定のレベルに到達するまで、AI学習部7によるディープラーニングは続けられる。このようにして得られた学習済みモデルが、機械学習をした成果となる。
【0046】
そこで、ステップS4では、学習成果物となるAI判定処理部(学習済みモデル)を、判定部3に搭載する(図1参照)。判定部3は、一般的なパーソナルコンピュータ又はそれと同程度のCPU(Central Processing Unit)を備えた装置などで構成することができる。
【0047】
このAI判定処理部は、どのような処置状況に対しても高い判定精度が得られるものであれば、最初に搭載したものを使い続けることができる。また、搭載後にも日々、蓄積されていく術例の動画データによって、適宜、AI学習部7により機械学習を行わせることで、AI判定処理部を更新していくこともできる。
【0048】
判定部3にAI判定処理部が搭載されると、AI判定を伴う電気メス装置5による治療が行えるようになる(ステップS5)。そこで、図2を参照しながら、内視鏡部2と電気メス装置5と判定部3とを備えた内視鏡治療システム1によって行われる大腸ESDの治療について説明する。
【0049】
まず大腸の内腔TIに内視鏡部2が挿入されると、先端の撮像部21によって撮像された撮像データが、連続して映像処理部22に送られて、映像信号に変換されてモニタ部4に映し出される。
【0050】
術者は、モニタ部4に映った内腔TIの状況を見ながら、病変のある部位まで内視鏡部2の先端を進める。そして、病変がモニタ部4に映し出された時点で、大腸ESDが開始される。
【0051】
まず、内視鏡部2の先端から突出させた電気メス51によって病変の周辺に切り取る範囲のマーキングを行い、粘膜下層W3に薬剤を注入(局注)して病変を浮かせた状態にする。
【0052】
続いて、マーキングを切り囲むように電気メス51によって病変の周囲の粘膜層W1と粘膜筋板W2とを切開する。電気メス51による切開は、先端部512から高周波電流を出力させることで行われる。
【0053】
そして、この高周波電流は、術者がフットペダル(52)を踏んでいる間だけ出力される。要するに、フットペダル(52)を踏むことで電気メス装置5の出力スイッチ53がオンになり、高周波電流が先端部512から出力される。
【0054】
そして、この切開中の内腔TIと電気メス51との両方の状況(位置関係)は、モニタ部4に映し出されて術者が観察できるだけでなく、判定部3のAI判定処理部で自動的にAI判定が行われる。
【0055】
要するに、映像処理部22で変換された映像信号は、モニタ部4に送信されるだけでなく、判定部3にも同時に送られる。そして、術中の映像信号が判定部3のAI判定処理部に入力されると、その入力された撮像データに基づく映像データに対して、逐次、「危険」又は「安全」の判定がされる。
【0056】
そして、「安全」という判定結果が出続けている間は、フットペダル(52)を踏んだ通りに高周波電流が先端部512から出力される。これに対して、「危険」という判定結果が出た場合には、判定部3によって危険信号が生成されて、モニタ部4と出力スイッチ53とに送信される。
【0057】
映像処理部22を介してモニタ部4に送信された危険信号によって、モニタ部4には術者に注意喚起を促す警報画面や音声が出力される。一方、出力スイッチ53に送信された危険信号によって、出力スイッチ53は強制的にオフの状態になる。すなわち、危険信号が送信されている間は、術者がフットペダル(52)を踏んでも、高周波電流が先端部512から出力されることはない。
【0058】
このようにモニタ部4に表示される警報や出力スイッチ53の強制オフによって、穿孔という現象が起きるのを防ぐことができる。なお、警報と強制オフとは、両方が作動する構成であってもよいし、いずれか一方が作動する構成であってもよい。
【0059】
このような判定部3による自動認識の監視は、病変を粘膜下層W3から剥ぎ取って剥離し、病変を切除し、止血の処置が終わるまで続けられる。なお、切除された病変は、回収されて病理検査に出される。
【0060】
次に、本実施の形態の内視鏡治療システム1の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の内視鏡治療システム1は、被検体内を撮像する内視鏡部2によって取得された撮像データに基づいて判定を行う判定部3と、被検体の切開が可能な電気メス装置5とを備えている。そして、判定部3では、撮像データに映った電気メス51の状況から危険か否かを判定し、危険と判定された場合には、モニタ部4及び電気メス装置5の少なくとも一方に危険信号を送信する。
【0061】
このように穿孔が起きるような危険な状況を判定部3が判定し、危険信号によってモニタ部4に警告が出たり、電気メス装置5の動作が制限されたりするように構成されていれば、術者の技量に左右されることなく穿孔の発生を防ぐことができる。
【0062】
そして、このような判定部3による判定が、予めタグ付き学習用データによって機械学習をした成果に基づいて行われるのであれば、判定が難しい状況の撮像データに対しても、高い精度で判定を行うことができるようになる。
【0063】
また、処置装置が電気メス装置5であって、危険信号が電気メス装置5の出力を停止させる信号であれば、術者が誤ってフットペダル(52)を操作をした場合でも、穿孔が起きるのを防ぐことができる。
【0064】
さらに、モニタ部4に危険信号によって危険な状況であることの報知がされる構成があるだけでも、術者に注意喚起を行い、そのまま処置を続けてよいか否かなどを確認させるなどの適切な操作を促すことができる。
【0065】
そして、判定部3が判定を行う撮像データが動画であれば、治療中に目まぐるしく変化する被検体内と電気メス51との位置関係から、的確に危険な状況を判定して、穿孔の発生を防ぐことができる。
【0066】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0067】
例えば、前記実施の形態では、処置装置として電気メス装置5を例に説明したが、これに限定されるものではなく、高周波スネア、ホットバイオプシ鉗子などの処置装置であっても本発明を適用することができる。
【0068】
また、前記実施の形態では、AI判定処理部が搭載された判定部3について説明したが、これに限定されるものではなく、画像認識によって危険な状況を判定する判定部であってもよい。
【0069】
さらに、前記実施の形態では、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)による処置を例に説明したが、これに限定されるものではなく、内視鏡的粘膜切除術(EMR: Endoscopic Mucosal Resection)や腹腔鏡による内視鏡を使用するすべての術式にも本発明を適用することができる。例えば前記実施の形態では、電気メス51で切ってはならない対象が消化管壁内の筋層W4であるという説明をしたが、この対象を腹腔内の神経、血管、気管支、消化管外壁などに置き換えて、危険か否かを判定させることもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 :内視鏡治療システム
2 :内視鏡部
21 :撮像部
3 :判定部
4 :モニタ部
5 :電気メス装置(処置装置)
51 :電気メス
7 :AI学習部
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】