【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、気液分離装置において、捕捉した油分や塵埃等がフィルタに蓄積することによってフィルタの目詰まりが生じると、フィルタを通過する空気量が減少する。そのため、気液分離装置の下流の空気圧システムに送られる空気が不足することがある。或いは、フィルタの目詰まりにより下流に空気が送られないことで、気液分離装置よりも上流側の圧力が上昇し、気液分離装置の上流側の装置の作動に影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
尚、こうした課題は、車両に搭載された空気圧システムに限らず、気液分離装置が適用される空気圧システムにおいては概ね共通したものである。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルタの目詰まりが発生した場合においてもその下流に空気を送ることのできる気液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する気液分離装置は、吸気ポート、排気ポート、及びドレン液を貯留する空間を有する筐体と、前記筐体内に設けられたフィルタ部と、前記吸気ポート及び前記フィルタ部を接続する接続流路から分岐し、前記吸気ポート側及び前記排気ポート側を連通するバイパス流路と、前記バイパス流路に設けられ、前記フィルタ部よりも上流側の圧力が所定値以上であるときに開く弁機構と、を備え、前記フィルタ部よりも上流側の圧力が所定値以上である場合には、前記吸気ポートから供給された空気が、前記バイパス流路を通過して前記排気ポートから排出されることを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、フィルタ部に詰まりが生じた場合、フィルタ部よりも上流側の圧力が所定値以上となることにより弁機構が開く。これにより、フィルタ部よりも上流側の空気がバイパス流路を介して排気ポートに供給される。したがって、フィルタ部に詰まりが生じた場合に、気液分離装置よりも下流において空気が不足することを防ぐことができる。また、弁機構が設けられるバイパス流路は、フィルタ部よりも上流側の流路であって、フィルタの目詰まりがない正常状態のときに空気が通過する流路から分岐し、正常状態のときには閉じている。そのため、弁機構の開弁圧を、独立して設定することができるので、振動や一時的な空気供給量の増加に対して開弁することを抑制し、弁機構に閉弁状態を維持させることができる。
【0010】
上記気液分離装置の一実施形態では、前記バイパス流路は、前記筐体に形成され、前記接続流路と前記空間とを連通し、前記弁機構は、前記バイパス流路の内周面を摺動する弁体と、前記バイパス流路に嵌合するばね座と、一方の端部が前記弁体に接続し、他方の端部が前記ばね座に接続し、前記弁体を閉位置に付勢する付勢ばねとを備えてよい。
【0011】
上記構成によれば、バイパス流路は筐体に形成されるため、バイパス流路を含む気液分離装置を小型化することができる。また、弁体は、付勢ばねによって付勢力が直接的に付与される。このため、弁機構を、振動や一時的な空気供給量の増加に耐えて閉弁状態を維持可能な構成とすることができる。
【0012】
上記気液分離装置の一実施形態では、前記弁体は外周面に突部を備え、前記突部は前記バイパス流路の内周面を摺動してよい。
上記構成によれば、突部の大きさや数を調整することにより、バイパス流路の内周面と弁体との摩擦力を調整しやすくなる。
【0013】
上記気液分離装置の一実施形態では、前記弁機構は、前記空間のうちドレン液が貯留される貯留空間よりも鉛直方向上方に位置してよい。
上記構成によれば、弁機構は、ドレン液の液面よりも上方にあるため、ドレン液の跳ね等により汚れにくい。そのため、ドレン液が弁機構に付着することによる弁機構の作動不良が生じにくい。
【0014】
上記気液分離装置の一実施形態では、前記フィルタ部の底部に、ドレン液が前記フィルタ部に付着することを抑制するカバーを備えてよい。
上記構成によれば、カバーにより、フィルタ部がドレン液の跳ね等により汚れることを抑制することができる。
【0015】
上記気液分離装置の一実施形態では、前記筐体の上面は、外縁に向かうにつれ鉛直方向下方に位置するように傾斜し、前記筐体の上面には、取付部が設けられ、前記取付部が被取付体に取付けられることにより、吊り下げられた状態で前記筐体が配置されてよい。
【0016】
上記構成によれば、気液分離装置は、吊り下げられた状態で被取付体に対し取付けられる。また、筐体の上面は傾斜面であるため、水が上面に溜まることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フィルタの目詰まりが発生した場合においてもその下流に空気を送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】気液分離装置の一実施形態について、気液分離装置であるオイルミストセパレータが適用される圧縮空気乾燥システムの概略構成を示す図。
【図2】同実施形態のオイルミストセパレータの全体構成を示す斜視図。
【図3】同実施形態のオイルミストセパレータの断面図。
【図4】同実施形態のフィルタ部の断面を示す斜視図。
【図5】同実施形態の弁機構であって、閉弁状態の弁機構の断面図。
【図6】同実施形態の弁機構の分解斜視図。
【図7】同実施形態の弁機構であって、開弁状態の弁機構の断面図。
【図8】同実施形態において、弁機構が開弁状態であるときのオイルミストセパレータの断面図。
【図9】他の実施形態のオイルミストセパレータの底部の断面図。
【図10】他の実施形態の弁機構の断面図。
【図11】他の実施形態のオイルミストセパレータの模式図。
【図12】他の実施形態のオイルミストセパレータの模式図。
【図13】変形例のオイルミストセパレータの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図8を参照して、気液分離装置であるオイルミストセパレータを、車両に搭載された空気圧システムに適用した一実施形態を説明する。
図1を参照して、圧縮空気乾燥システムの構成について説明する。圧縮空気乾燥システムは、コンプレッサ10の下流に設けられ、コンプレッサ10から供給される圧縮空気から油分及び水分等の不純物を分離して、油分及び水分が除去された圧縮空気をシステムタンク13に供給する。システムタンク13は、ブレーキやサスペンション等の空気圧システムに供給する乾燥した清浄度の高い圧縮空気を貯留するタンクである。
【0020】
圧縮空気乾燥システムには、圧縮空気から水分を除去するエアドライヤ11と、圧縮空気から油分を除去するオイルミストセパレータ12とが設けられている。オイルミストセパレータ12は、エアドライヤ11よりも下流であって、エアドライヤ11とシステムタンク13との間に設けられている。エアドライヤ11とコンプレッサ10との間には、逆止弁14が設けられている。なお、オイルミストセパレータ12は、気液分離装置に対応する。
【0021】
エアドライヤ11内には、乾燥剤15が設けられている。なお、エアドライヤ11は、乾燥剤15のほかに、主に油分を捕捉するフィルタを備えていてもよい。エアドライヤ11は、出口側に逆止弁16を備えている。この逆止弁16は、システムタンク13内の圧力が遮断設定値未満であってシステムタンク13に圧縮空気を溜めている間は開く。また、逆止弁16は、システムタンク13内の圧力が遮断設定値まで上昇すると閉じられる。また、エアドライヤ11は、乾燥剤15が捕捉した水分等をドレン液として排出するためのドレン排出弁17を備えている。
【0022】
圧縮空気乾燥システムは、圧縮空気をエアドライヤ11に通過させて水分を除去する通常運転と、乾燥剤15に捕捉された水分等を外部に排出することによって乾燥剤15を再生する再生運転とを行う。通常運転の際は、圧縮空気の供給を停止する停止条件、又は乾燥剤15の再生を行う再生条件が成立するまで、コンプレッサ10から送られた圧縮空気が、エアドライヤ11、オイルミストセパレータ12の順に流れる。エアドライヤ11では、圧縮空気から主に水分を除去する。オイルミストセパレータ12では、圧縮空気から主に油分を除去する。停止条件又は再生条件が成立すると、コンプレッサ10が圧縮空気を送らない非稼動状態となる。
【0023】
一方、再生条件が成立すると、エアドライヤ11のドレン排出弁17が開放される。ドレン排出弁17が開放されると、システムタンク13から乾燥した清浄度の高い圧縮空気がエアドライヤ11に供給され、エアドライヤ11に流入した圧縮空気が乾燥剤15内を通常運転時とは逆方向に流れる。これより、乾燥剤15に捕捉された水分等が除去される。除去された水分等は、ドレン液として、空気とともにエアドライヤ11のドレン排出口11Aから排出される。このときエアドライヤ11から排出される空気をパージエアという。
【0024】
ドレン排出弁17には、エアドライヤ11の再生に伴い排出されるドレン液を貯留するオイルセパレータ19が接続されている。オイルセパレータ19は、パージエアからドレン液を分離する分離フィルタ19Fを備えている。オイルセパレータ19は、ドレン液を含むパージエアを分離フィルタ19Fに通過させることによって、パージエアをドレン液と清浄空気とに分離する。分離した清浄空気は、排気ポート19Pから大気に排出する。
【0025】
次に図2〜図8を参照してオイルミストセパレータ12の構成について説明する。
図2に示すように、オイルミストセパレータ12は、筐体20を備えている。筐体20は、ボディ21と、貯留ボウル22とを備えている。貯留ボウル22は、ボディ21の鉛直方向下方に取り付けられる。
【0026】
ボディ21は、下端部に開口部23を有し、上端部は閉塞している。ボディ21の上面24には、ポート形成部25が設けられている。ポート形成部25の一方の端部には、オイルミストセパレータ12に圧縮空気を吸入する吸気ポートとしての第1ポート26が設けられている。ポート形成部25の他方の端部には、オイルミストセパレータ12から圧縮空気を排出する排気ポートとしての第2ポート27が設けられている。
【0027】
また、ボディ21の上面24のうち、ポート形成部25で区画されたそれぞれの領域には、2つの取付部28と、1つの取付部28とが設けられている。取付部28は、上面24の周方向に沿って、ほぼ等間隔で設けられ、ボディ21の上面24から突出した形状を有している。また、各取付部28は、開口側と反対側の端部が閉塞した螺子孔29をそれぞれ有している。螺子孔29の内周面には雌螺子が形成されている。この雌螺子には、車両側の被取付部に貫挿されたボルト等が螺合する。これにより、オイルミストセパレータ12は、吊り下げられた状態で車両側に取り付けられる。
【0028】
ボディ21の上面24は、径方向の外側、すなわち外縁に向かうに伴い鉛直方向下方に位置するように傾斜している。このため、上面24に水が溜まりにくい。上面24に水が溜まると、錆等の原因となる。上面24を傾斜面とすることによって、オイルミストセパレータ12を水と接触する場所に取り付けることもできる。
【0029】
ボディ21の開口部23には、フランジ部30が設けられている。フランジ部30には、ボルト42を螺合するための複数の貫通孔31が等間隔に形成されている。貫通孔31の内周面には、雌螺子が形成されている。
【0030】
貯留ボウル22は、円筒状の形状を有し、上端部に開口部40を有し、下端部が閉塞されている。開口部40側には、ボディ21のフランジ部30に連結されるフランジ部41が形成されている。フランジ部41には、ボディ21のフランジ部30に形成された貫通孔31に対応する貫通孔が設けられている。貯留ボウル22のフランジ部41の貫通孔に挿通されたボルト42を、ボディ21の貫通孔31に螺合させることにより、貯留ボウル22がボディ21に固定される。上述したように、オイルミストセパレータ12は吊り下げられた状態で車両側に取り付けられるので、例えばオイルミストセパレータ12が、その外周面において、車両側に設けられた支持板に取り付けられる場合よりも、オイルミストセパレータ12の外周に設けられるスペースが拡大される。そのため、貯留ボウル22の取り外しや、内部のフィルタ部の交換等のメンテナンスが容易となる。
【0031】
図3に示すように、ボディ21と貯留ボウル22とによって、圧縮空気が通過するとともに、下部にドレン液100が貯留される空間45が区画される。また、ボディ21と貯留ボウル22との間には、環状のシール部材43が設けられている。シール部材43は、空間45を密閉している。また、ボディ21の内側には、フィルタ部50がボルト51によって取り付けられている。
【0032】
ボディ21には、第1ポート26とフィルタ部50側とを接続する接続流路としての第1通路33と、第1通路33とフィルタ部50との間に設けられた導入室34と、フィルタ部50と第2ポート27とを接続する第2通路35とが設けられている。第1通路33は、第1ポート26からボディ21の径方向内側に向かって水平方向に延びている。導入室34は、環状に形成されている。第2通路35は、鉛直方向に延在する部分と、水平方向に延在する部分とから構成されている。
【0033】
フィルタ部50は、内側筒部52と、外側筒部53と、下側蓋部54と、上側蓋部55とを備えている。下側蓋部54及び上側蓋部55は、板状であって、円環状に形成されている。下側蓋部54は、外側筒部53及び内側筒部52によって区画された環状の空間の下側を閉塞する。上側蓋部55は、外側筒部53及び内側筒部52によって区画された環状の空間の上側を閉塞する。また、上側蓋部55とボディ21との間には、環状のシール部材36が介在し、導入室34とフィルタ部50との間を密閉している。
【0034】
フィルタ部50の底面には、カバー49がボルト51によって取り付けられている。カバー49の形状は、下側からみて円形状である。カバー49は、下側が開口し、上側が閉塞されている。カバー49は、貯留ボウル22に貯留されたドレン液がフィルタ部50、第2通路35等へ跳ね返ることを抑制する。なお、空間45のうち、カバー49よりも鉛直方向下方の空間が、ドレン液100を貯留する貯留空間45Aとして使用される。
【0035】
図4に示すように、内側筒部52及び外側筒部53は、円筒状に形成されている。内側筒部52の周壁部には圧縮空気が通過する多数の孔56が形成されている。外側筒部53の周壁部には圧縮空気が通過する多数の孔57が形成されている。外側筒部53及び内側筒部52は、同心円状に設けられることで、外側筒部53及び内側筒部52の間には環状の空間が区画される。内側筒部52の孔56の直径及び外側筒部53の孔57の直径は同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
外側筒部53及び内側筒部52によって区画され、下側蓋部54及び上側蓋部55によって閉塞された環状の空間には、第1フィルタ58及び第2フィルタ59が収容されている。
【0037】
第1フィルタ58の形状は、円筒状である。第1フィルタ58は、第2フィルタ59の内側に設けられる。第1フィルタ58は、ガラス繊維からなるフィルタである。ガラス繊維は、ブラウン運動する油の微粒子と接触することにより、微粒子を捕捉する。
【0038】
第2フィルタ59の形状は、円筒状である。第2フィルタ59は、第1フィルタ58の外側に設けられる。この第2フィルタ59は、圧縮空気に含まれる油分を慣性衝突させることによって気液分離するフィルタである。慣性衝突によって捕捉できる油の粒子の直径は、ガラス繊維によって捕捉される油の粒子の直径よりも大きい。例えば、第2フィルタ59は、金属材を、細孔を有する構造に加工したものであって、アルミニウム等の金属箔、線材、板材を圧縮加工したもの等である。
【0039】
第1フィルタ58の厚みT1及び第2フィルタ59の厚みT2の比率は、コンプレッサ10から供給される圧縮空気に含まれる油の粒径や含有量に応じて変更することができる。例えば、第1フィルタ58の厚みT1を、第2フィルタ59の厚みT2よりも大きくする(T1>T2)ことによって、比較的小径の油の粒子の捕捉量を多くすることができる。
【0040】
なお、第1フィルタ58及び第2フィルタ59の材料は、互いに異なる材料から形成されていればよく、上述した材料以外のものから形成されていてもよい。例えば、第1フィルタ58は、活性炭、ガラス繊維以外の繊維材、油の粒子との間に作用する静電気力によって油分を捕捉するスポンジ等、慣性衝突以外の作用により油分を捕捉するものであってもよい。これに代えて、第1フィルタ58及び第2フィルタ59の材料は、互いに異なる特性を有する同じ材料であってもよい。
【0041】
図3に示すように、導入室34の圧縮空気は、内側筒部52の孔56を通って第1フィルタ58、第2フィルタ59を順に通過する。第1フィルタ58及び第2フィルタ59は、油分を含む圧縮空気から油分を分離する。第1フィルタ58及び第2フィルタ59を通過した圧縮空気は、外側筒部53の孔57を介して、空間45に供給される。空間45に供給された圧縮空気は、第2通路35を通過して、第2ポート27から排出される。
【0042】
フィルタ部50によって分離された油分は、外側筒部53に設けられた孔57からカバー49を伝って貯留空間45Aに落ちる。第1フィルタ58及び第2フィルタ59は、油分の捕捉量が過度に多くなった場合、捕捉した油分の粘度が上昇した場合、油分とともに捕捉した塵埃が多くなった場合等に目詰まりが生じる。そのため、フィルタ部50は所定のタイミングで交換することがユーザに要請されている。
【0043】
しかし、コンプレッサ10から送られる圧縮空気に含まれる油分量が多い場合、オイルミストセパレータ12を通過する空気量が多い場合等、予想に反して第2フィルタ59又は第1フィルタ58の目詰まりが生じることがある。第1フィルタ58又は第2フィルタ59の目詰まりが生じると、オイルミストセパレータ12から送られる圧縮空気の供給量が不足してしまう。このため、ボディ21には、第1フィルタ58又は第2フィルタ59の目詰まりが生じ、第1通路33の圧力が上昇したときに開く弁機構60が設けられている。
【0044】
図5〜図7を参照して、弁機構60について説明する。
図5に示すように、ボディ21には、第1通路33と空間45とを連通する第1連通路61及び第2連通路62が形成されている。第1連通路61及び第2連通路62は、バイパス流路64を構成し、第2通路35の延在方向と直交する方向に延在している。第1連通路61の内径は、第2連通路62の内径よりも小さい。第2連通路62の一端には、第1連通路61と第2連通路62との段差面である弁座63が設けられている。第2連通路62には、弁機構60が収容されている。弁機構60は、バイパス流路64の内周面を摺動する弁体65と、バイパス流路64に嵌合するばね座67と、一方の端部が弁体65に接続し、他方の端部がばね座67に接続し、弁体65を閉位置に付勢する付勢ばね66とを備える。第2連通路62の内周面には、環状の溝62Aが形成されている。
【0045】
図6に示すように、弁体65は、第2連通路62の内周面と向かい合う外周面に4つの突部65Aを備えている。突部65Aは、弁体65の外周面に周方向に等間隔に設けられている。弁体65の移動に伴い、突部65Aは第2連通路62の内周面に対して摺動する。これにより、弁体65の外周面の全体が第2連通路62の内周面に摺動する場合に比べ、摩擦力を低減することができる。弁体65は、弁座63に当接する当接面65Bが第1連通路61の出口を閉塞可能な大きさを有している。また、弁体65のうち、弁座63との当接面65B、及びその反対側の面には、凹部65Cが形成されている。ばね座67は、第2連通路62の溝62Aに嵌合されたリテーナリング68に支持されている。ばね座67の形状は、略円筒状である。ばね座67は、内側に第2連通路62と連通する連通路67Aを備えている。
【0046】
弁機構60は、ドレン液100を貯留する貯留空間45Aよりも鉛直方向上方に配置される。すなわち、弁機構60は、ドレン液100の液面よりも上方にあるため、ドレン液の跳ね等により汚れにくい。そのため、弁機構60の作動不良が生じにくい。
【0047】
第1通路33の圧力が所定値未満の場合には、弁体65は付勢ばね66の付勢力により弁座63に当接して、第1連通路61の出口を閉塞する。これにより、第2連通路62は閉じられ、第2通路35は、フィルタ部50を介してのみ、空間45と連通する。
【0048】
図7に示すように、第1通路33の圧力が所定値以上である場合には、弁体65は付勢ばね66の付勢力に抗して弁座63から離間し、第1連通路61の出口を開放する。これにより、第2連通路62は開かれ、第2通路35は、第1連通路61及び第2連通路62を介して空間45と連通する。そのため、第1通路33の圧縮空気は、第1連通路61及び第2連通路62を介して空間45に送られる。空間45に供給された圧縮空気は、第2通路35を介して第2ポート27から排出される。
【0049】
次に図3及び図8を参照して、オイルミストセパレータ12の作用について説明する。フィルタ部50の目詰まりが生じていない正常な状態である場合と、第2フィルタ59及び第1フィルタ58の少なくとも一方に目詰まりが生じた場合とに分けて説明する。
【0050】
図3に示すように、フィルタ部50が正常な状態である場合、第1ポート26から入った圧縮空気は、第1通路33を介して導入室34に送られる。第2フィルタ59及び第1フィルタ58に目詰まりが生じていない場合、第1通路33の圧力は所定値未満である。導入室34に送られた圧縮空気は、導入室34内で膨張する。このように膨張することにより、圧縮空気に含まれる油分が液化しやすくなる。導入室34の圧縮空気は、内側筒部52に送られ、放射状の流れとなって内側筒部52の孔56から第1フィルタ58に入る。第1フィルタ58においては、ブラウン運動する油の微粒子とガラス繊維との接触により、比較的小径の粒子が捕捉される。第1フィルタ58に捕捉された多数の微粒子は、集まりながら、第2フィルタ59を通って外側筒部53の孔57からカバー49を伝って貯留空間45Aに落ちる。
【0051】
第1フィルタ58を通過した圧縮空気は、第2フィルタ59に入り、第2フィルタ59内を細孔の壁部に衝突して向きを変更しながら流れる。第2フィルタ59では、圧縮空気に含まれる油の粒子が慣性力によりフィルタ壁面と衝突する。これにより、比較的大径の油の粒子が捕捉される。第2フィルタ59で捕捉された油分は、外側筒部53の孔57からカバー49を伝って貯留空間45Aに落ちる。第2フィルタ59を通過した圧縮空気は、外側筒部53の孔57から空間45に供給される。空間45に供給された圧縮空気は、第2通路35を介して第2ポート27から排出される。
【0052】
このように貯留空間45Aに貯められたドレン液100は、メンテナンスの際に取り除かれる。メンテナンスの際は、ボルト42を貫通孔31から抜き、貯留ボウル22をボディ21から外す。また、ボディ21に取り付けられたフィルタ部50を、ボルト51をボディ21から抜くことで取り外し、新しいフィルタ部50をボルト51によってボディ21に取り付ける。
【0053】
次に図8を参照して、第1フィルタ58及び第2フィルタ59の少なくとも一方に目詰まりが生じた場合について説明する。このように目詰まりが生じた場合、フィルタ部50の空気通過量が少なくなることから、フィルタ部50の上流側、即ち第1通路33及び導入室34の圧力が所定値以上となる。これにより、弁機構60の弁体65が、付勢ばね66の付勢力に抗して弁座63から離間し、第1通路33の圧縮空気がバイパス流路64を介して空間45に供給される。空間45に供給された圧縮空気は、第2通路35を介して、第2ポート27からシステムタンク13に供給される。このため、第2フィルタ59及び第1フィルタ58の少なくとも一方に目詰まりが生じた場合でも、正常な状態に比べ圧縮空気の油分の含有量が多いものの、システムタンク13に送られる圧縮空気が不足することを防ぐことができる。
【0054】
また、バイパス流路64は、筐体20に形成されるため、バイパス流路64を筐体20の外側に設ける場合に比べ、オイルミストセパレータ12を小型化することができる。さらに、弁体65は、付勢ばね66によって付勢力を直接的に付与されるので、車両の振動や、コンプレッサ10からの一時的な空気供給量の増加に耐えて、閉弁状態を維持することができる。このため、第1フィルタ58及び第2フィルタ59の少なくとも一方に目詰まりが生じていない正常状態の動作に弁機構60が悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0055】
また、例えば、コンプレッサ10とエアドライヤ11の間に、オイルミストセパレータ12を配置すると、水分も第1フィルタ58に付着してしまい、オイル捕捉性能を十分に発揮できない。また、粒径の大きなオイルも第1フィルタ58に付着し、目詰まりを速めてしまう。これに対し、上述したように、エアドライヤ11の下流側にオイルミストセパレータ12を配置することによって、オイルミストセパレータ12には、非常に小さい粒径のオイルミストを含み、且つ水分が殆どない圧縮空気が供給される。そのため、ガラス繊維からなる第1フィルタ58の効果で、よりオイルミストを捕捉しやすくすることができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)フィルタ部50に目詰まりが生じた場合、フィルタ部50よりも上流側の圧力が所定値以上となることにより弁機構60が開く。これにより、フィルタ部50よりも上流側の圧縮空気がバイパス流路64を介して第2ポート27に供給される。したがって、フィルタ部50に詰まりが生じた場合に、オイルミストセパレータ12よりも下流において圧縮空気が不足することを防ぐことができる。また、弁機構60は、フィルタ部50に目詰まりが生じていない正常状態には空気が通過しないバイパス流路64に設けられる。そのため、弁機構60の開弁圧を、フィルタ部50や他の流路への影響を考慮することなく独立して設定することができるので、車両の振動や一時的な空気供給量の増加に耐えて、弁機構60に閉弁状態を維持させることができる。
【0057】
(2)バイパス流路64は筐体20に形成されるため、オイルミストセパレータ12を小型化することができる。また、弁体65は、付勢ばね66によって付勢力が直接的に付与される。このため、弁機構60を、車両の振動や一時的な空気供給量の増加に耐えて閉弁状態を維持可能な構成とすることができる。
【0058】
(3)弁体65は、その外周面に突部65Aを備え、突部65Aはバイパス流路64の内周面を摺動する。このため、突部65Aの大きさや数を調整することにより、バイパス流路64の内周面と弁体65との摩擦力を調整しやすくなる。
【0059】
(4)弁機構60は、空間45のうちドレン液100が貯留される貯留空間45Aよりも鉛直方向上方に位置する。すなわち、弁機構60は、ドレン液100の液面よりも上方にあるため、ドレン液100の跳ね等により汚れにくい。そのため、弁機構60の作動不良が生じにくい。
【0060】
(5)フィルタ部50の底部には、ドレン液100がフィルタ部50に付着することを抑制するカバー49が設けられるので、フィルタ部50がドレン液100の跳ね等により汚れることを抑制することができる。
【0061】
(6)オイルミストセパレータ12は、上面24に取付部28を備え、吊り下げられた状態で車両側に取付けられる。また、筐体20の上面24は外縁に向かうに伴い鉛直方向下方に位置する傾斜面であるため、水が溜まりにくい。このため、オイルミストセパレータ12を水と接触する位置に設けることも可能となるので、設置位置の自由度を向上することができる。
【0062】
(他の実施の形態)
なお、上記実施の形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
・図9に示すように、オイルミストセパレータ12は、ドレン液を排出するための排出バルブ70を備えていてもよい。排出バルブ70は、貯留ボウル22の底部に設けられた排出孔22Aに設けられている。排出バルブ70は、円盤状の密閉部70Aと、排出孔22Aに嵌挿される嵌挿部70Bとを備えている。嵌挿部70Bの外周には、雄螺子70Cが形成されている。貯留ボウル22の底部外側には、嵌挿部70Bの雄螺子70Cに螺合する固定部材70Dが設けられている。固定部材70Dの中央には、雌螺子70Eが設けられている。固定部材70Dを嵌挿部70Bに螺合させて締め付けることで、排出バルブ70と固定部材70Dとが貯留ボウル22に固定される。
【0063】
・弁体65は、4つの突部65Aを有する形状以外の形状を有していてもよい。図10に示すように、弁体65は、円柱状の本体部65Dと、本体部65Dの外周に設けられる摺動部65Eとから構成されていてもよい。このようにすると、本体部65Dを密着性や弾性に優れた材料から形成し、摺動部65Eを耐摩擦性に優れた材料から形成する等、本体部65D及び摺動部65Eを互いに異なる材料を用いて形成することができる。
【0064】
また図10に示すように、第2連通路62の内側に、付勢ばね66を支持するガイド69を設けるようにしてもよい。
・図11に示すように、オイルミストセパレータ12にヒータ71を設けるようにしてもよい。ヒータ71は、例えば第1ポート26側を延ばしたポート形成部25の外周面に取付けられる。この構成によれば、寒冷時でも、ヒータ71が、ボディ21を介して圧縮空気を加熱することで、霜の発生等を要因とする第1ポート26の目詰まりを抑制することができる。
【0065】
・例えば図12に示すように、バイパス流路64及び弁機構60は、筐体20の外側に設けられていてもよい。第1ポート26側から分岐し、第1ポート26及び第2ポート27側を接続するバイパス流路80をボディ21の外側に設け、このバイパス流路80の途中に、弁機構60を設けるようにしてもよい。弁機構60は、ケースなどの収容部81に収容される。このようにすると、バイパス流路80が空間45から独立するため、例えばそのバイパス流路80に流量計を設けたり、収容部81の一部に透明材料からなる窓を設けたりする等、弁機構60の開閉状態を外観から判別可能な構成にすることにより、フィルタ部50の目詰まりの有無について把握しやすくすることができる。
【0066】
・上記実施形態では、第1ポート26を吸気側のポートとして、エアドライヤ11側に接続し、第2ポート27を排気側のポートとして、システムタンク13側に接続した。これに代えて、図13に示すように、第1ポート26を排気側のポートとして、システムタンク13側に接続し、第2ポート27を吸気側のポートとして、エアドライヤ11側に接続してもよい。この構成では、正常状態では、第2ポート27から入った圧縮空気は、第2通路35、内側筒部52、第2フィルタ59、第1フィルタ58、導入室34、及び第1通路33を順に通過して、第1ポート26からシステムタンク13へ供給される。内側筒部52では、圧縮空気が内側筒部52の外側から内側に向かって流れる。また、弁機構60は、第2連通路62側から第1連通路61側への空気の流れを許容するように配置される。つまり、第1連通路61を空間45側に配置し、第2連通路62を第1通路33側に配置して、第1通路33側に弁体65が設けられ、付勢ばね66は、この弁体65を第1連通路61側に付勢する。なお、図13では、第1連通路61を空間45側に配置し、第2連通路62を第1通路33側に配置しているが、弁機構60の構成によっては、ポート形成部25は上記実施形態と同様であってもよい。このようにしても、圧縮空気に含まれる油分を捕捉することができる。
【0067】
・上記実施形態では、オイルミストセパレータ12を、エアドライヤ11の下流に設けた。これに加えて、コンプレッサ10とエアドライヤ11との間に、エアドライヤ11の下流に設けたオイルミストセパレータ12と同様な構成のオイルミストセパレータ12を設けてもよい。このようにすると、エアドライヤ11に供給する圧縮空気に含まれる油分を捕捉することができるので、エアドライヤ11の乾燥剤15に油分が付着するのを抑制することができる。また、オイルミストセパレータ12によってエアドライヤ11の上流側で予め油分が捕捉されることで、システムタンク13に供給する空気をさらに清浄化することができる。
【0068】
・上記実施形態では、圧縮空気乾燥システムは、エアドライヤ11、オイルミストセパレータ12、及びオイルセパレータ19を1つずつ備える構成としたが、圧縮空気乾燥システムはこの構成以外であってもよい。例えば、オイルセパレータ19を省略した構成であってもよい。また、オイルミストセパレータ12を複数備える構成であってもよい。
【0069】
・上記実施形態では、エアドライヤ11は、吸着式のものとしたが、これ以外のものであってもよい。例えば、エアドライヤ11は、冷凍機等によって圧縮空気を常温以下に冷却する冷凍式、高分子製の中空糸膜を用いて水分と空気とを分離する浸透分離膜式、又は、複数の方式を組み合わせたエアドライヤであってもよい。
【0070】
・上記実施形態では、気液分離装置を空気と油分を除去するオイルミストセパレータとして説明したが、これ以外の装置であってもよい。例えば、気液分離装置は、オイルセパレータ19でもよい。オイルセパレータ19に、バイパス流路64及び弁機構を設けることにより、オイルセパレータ19のフィルタに目詰まりが生じた場合であっても、フィルタよりも上流側の圧力上昇を抑制することができる。また、気液分離装置は、エアドライヤ11であってもよい。エアドライヤ11に、バイパス流路64及び弁機構を設けることにより、エアドライヤ11のフィルタに目詰まりが生じた場合であっても、エアドライヤ11よりも下流に圧縮空気を送ることができる。
【0071】
・上記実施形態では、気液分離装置を、車両に搭載された圧縮空気乾燥システムに適用したが、水分又は油分を含む空気(気体)を気液分離する機能を備えるシステムであれば、そのほかのシステムに適用してもよい。例えば、電車、船舶、航空機などの車両以外の移動体に気液分離装置を適用してもよい。
【0072】
・第2フィルタ59を、例えば不織布等、第1フィルタ58に含まれるガラス繊維の繊維埃を捕捉する材料から形成してもよい。これによれば、繊維埃の飛散を防ぐことができる。