車両に装備された燃料タンクにその一端が接続され、他端が給油口側に位置する筒状のフィラーパイプの該他端に、直接的又は間接的に接続される接続筒部材に装着される、エアフィルタ装置であって、
前記エアフィルタ装置は外気を濾過するエアフィルタと該エアフィルタを収容するフィルタ収容部を有するフィルタケースとを備え、
前記フィルタケースは、前記接続筒部材の外周を取り囲む筒状形状を有し、前記フィルタ収容部よりも前記給油口側に配設されつつ前記車両の車体に固定された環状の固定部材に挿入される筒状部を有し、
前記筒状部の外周には、該筒状部の軸方向に前記フィルタ収容部と間隔をおいて位置し、該筒状部の径方向外方に向かって延在したフランジ部が形成されている、エアフィルタ装置。
【背景技術】
【0002】
一般にガソリンエンジン等の内燃機関を有する車両(例えば自動車)は、燃料タンク内で発生した蒸発燃料の大気への放出を防ぐことを目的として、燃料タンクと大気に連通する大気連通口との間に配設されたキャニスタを有する。これにより、燃料タンク内で発生した蒸発燃料は、キャニスタ内の吸着材に吸着される。そして、キャニスタ内に保持された蒸発燃料は、内燃機関の稼働時に、内燃機関へ通じる吸気通路に向けて脱着される。キャニスタは、燃料タンクからの蒸発燃料を吸着する際は大気連通口から空気を排出し、吸気通路へ向けて蒸発燃料を脱着する際は大気連通口から空気を吸入する。
【0003】
キャニスタへの塵やごみ等の混入を防ぐには、大気連通口を地面から離して配置することが好ましい。特許文献1では、大気連通口(特許文献1中ではエア導入部178に相当する)が、燃料タンクに燃料を供給するための給油口を取り囲むように配設されているカバーにより形成される燃料給油装置が開示されている。また、上記カバーには、大気連通口から導入された空気に含まれる塵やごみ等を遮断するエアフィルタを収容するエアフィルタ収容部(特許文献1中ではフィルタ収納容器200に相当する)が装着されている。該フィルタ収容部は、フィラーパイプ(特許文献1ではインレットパイプIPに相当する)と接続されているフィラーパイプ接続筒部の外周に配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の燃料給油装置のように、大気連通孔が給油口を取り囲むように構成されている燃料給油装置において、フィラーパイプが、例えば樹脂により形成されることが想定される。この場合、外気温度によってはフィラーパイプが軸方向に伸長する。この伸長に伴い、エアフィルタ収容部が、燃料給油装置を車体に固定する固定部材(特許文献1中では固定具に相当する)に接触し、破損する虞がある。
【0006】
而して、本明細書に開示の技術が解決しようとする課題は、上述した点に鑑みて創案されたものであって、エアフィルタ装置が備えるエアフィルタ収容部及び該収容部に収容されるエアフィルタの破損を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本明細書に開示のエアフィルタ装置は次の手段をとる。
【0008】
第1の手段は、車両に装備された燃料タンクにその一端が接続され、他端が給油口側に位置する筒状のフィラーパイプに装着される、エアフィルタ装置であって、前記エアフィルタ装置は外気を濾過するエアフィルタと該エアフィルタを収容するフィルタ収容部を有するフィルタケースとを備え、前記フィルタケースは、前記フィラーパイプの前記他端において該フィラーパイプの外周を取り囲む筒状形状を有し、前記フィルタ収容部よりも前記給油口側に配設されつつ前記車両の車体に固定された環状の固定部材に挿入される筒状部を有し、前記筒状部の外周には、該筒状部の軸方向に前記フィルタ収容部と間隔をおいて位置し、該筒状部の径方向外方に向かって延在したフランジ部が形成されている、エアフィルタ装置である。
【0009】
上記手段によれば、フィルタ収容部が固定部材に当接することは回避される。その結果、フィルタ収容部及びエアフィルタの破損を防止できる。
【0010】
第2の手段は、車両に装備された燃料タンクにその一端が接続され、他端が給油口側に位置する筒状のフィラーパイプの該他端に、直接的又は間接的に接続される接続筒部材に装着される、エアフィルタ装置であって、前記エアフィルタ装置は外気を濾過するエアフィルタと該エアフィルタを収容するフィルタ収容部を有するフィルタケースとを備え、前記フィルタケースは、前記接続筒部材の外周を取り囲む筒状形状を有し、前記フィルタ収容部よりも前記給油口側に配設されつつ前記車両の車体に固定された環状の固定部材に挿入される筒状部を有し、前記筒状部の外周には、該筒状部の軸方向に前記フィルタ収容部と間隔をおいて位置し、該筒状部の径方向外方に向かって延在したフランジ部が形成されている、エアフィルタ装置である。
【0011】
上記手段によれば、第1の手段と同様の効果を得られる。
【0012】
第3の手段は、第1又は第2の手段のエアフィルタ装置であって、前記筒状部の、前記フランジ部と前記フィルタ収容部との間隔形成位置には、水抜き孔が形成されている、エアフィルタ装置である。
【0013】
上記手段によれば、水抜き孔が固定部材により閉塞されることを回避できる。これにより、筒状部内に混入した水等の液体を、外部へと排出することができる。
【0014】
第4の手段は、第1乃至第3の手段のいずれかのエアフィルタ装置であって、前記筒状部の前記給油口側の端部には、該筒状部の径方向に関して前記固定部材と前記筒状部との間に、前記筒状部に嵌合する金属製のリング部材が装着されており、前記リング部材と前記筒状部とには、これらに跨って、前記リング部材の嵌合装着状態において該リング部材の抜け止め及び回転止めを行う固定手段が配設されている、エアフィルタ装置である。
【0015】
上記手段によれば、金属製のリング部材により筒状部の保護を図ることができる。また、固定手段によりリング部材の筒状部への嵌合装着状態を、維持することができる。
【0016】
第5の手段は、第4の手段のエアフィルタ装置であって、前記固定手段は、前記筒状部に互いに隣り合うよう配設された、突起及び弾性変形可能な爪部と、前記リング部材の燃料タンク側の端部から前記リング部材の軸方向に延在する切り欠きと、前記切り欠きの前記給油口側の端部から、前記リング部材の周方向に延在する横孔と、を備え、前記リング部材の前記筒状部への装着は、前記切り欠きから前記突起を突出させつつ該切り欠きの前記給油口側の端部に該突起を当接させるとともに、前記リング部材の壁面により前記爪部を弾性変形させた後、前記切り欠きと前記爪部の周方向位置が一致するまで前記リング部材を前記筒状部に対して周方向に相対移動させ、前記爪部を弾性変形状態から復帰させつつ、前記横孔から前記突起を突出させることによりなされる、エアフィルタ装置である。
【0017】
上記手段によれば、リング部材の筒状部への装着を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本明細書に開示のエアフィルタ装置は、上述の手段をとることによりエアフィルタ収容部及び該収容部に収容されるエアフィルタの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本開示の第1の実施形態に係るエアフィルタ装置を備えた自動車の模式図である。
【図2】図1に示すエアフィルタ装置の正面図である。
【図3】図1及び2に示すエアフィルタ装置の右側面図である。
【図4】図1乃至3に示すエアフィルタ装置の分解斜視図である。
【図5】図2に示す第1固定手段の第1の組付け工程を示す、拡大正面図である。
【図6】図2に示す第1固定手段の第2の組付け工程を示す拡大正面図である。
【図7】図3に示す第2固定手段を示す拡大左側面図である。
【図8】第2の実施形態に係るエアフィルタ装置を示す分解斜視図である。
【図9】第2の実施形態の変形例に係るエアフィルタ装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示に係るエアフィルタ装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態のエアフィルタ装置は自動車に備えられた場合である。
【0021】
[第1の実施形態]
(自動車)
図1を参照して、自動車1に備えられるエアフィルタ装置の配置構成を説明する。燃料タンク12は、その上壁にはカットオフバルブ14が配設され、その内部には燃料ポンプ16が配設されている。燃料ポンプ16により燃料通路18へと導入された燃料、すなわちガソリンは、インジェクタ20によってエンジン10へと供給される。エンジン10は周知のガソリンエンジンであり、各シリンダ(図示略)が吸気通路22及び排気通路24と連通している。吸気通路22は、エンジン10と反対側の端がエアクリーナ26を介して大気と連通している。排気通路24の、エンジン10と反対側の端は、消音器(マフラー)や触媒コンバータ28を介して大気と連通している。
【0022】
燃料タンク12にはフィラーパイプ30が接続されている。フィラーパイプ30は、樹脂及び金属等の任意の素材により形成することができる。フィラーパイプ30の先端には給油口32が形成されている。この給油口32に給油ノズルが接続されガソリンが供給、すなわち給油される。フィラーパイプ30の給油口32近傍の部分にはブリーザパイプ34の一端が連通している。ブリーザパイプ34の他端は燃料タンク12に連通している。
【0023】
カットオフバルブ14は、その一端がキャニスタ36に接続されたベーパ通路38の他端に接続されている。燃料タンク12内で発生した蒸発燃料は、ベーパ通路38を介してキャニスタ36へと導入される。キャニスタ36はその内部に蒸発燃料を吸脱着可能な吸着材(図示略)を収容している。キャニスタ36には、上述したベーパ通路38、パージ通路40及び大気通路42が接続されている。
【0024】
パージ通路40上には、例えば、パージポンプ44、パージ制御弁46が接続されている。パージ通路40は、その一端がキャニスタ36に、他端が吸気通路22に連通している。吸気通路22の、パージ通路40との接続部とエンジン10との間にはスロットルバルブ48が接続されている。大気通路42の、キャニスタ36に接続された端と反対側の端は、フィラーパイプ30の給油口32近傍の部分を取り囲むように取り付けられたエアフィルタ装置60のキャニスタ接続筒部70に連通している。キャニスタ接続筒部70は、図4に示されるフィルタ収容部68、筒状部66を介して大気に連通している。
【0025】
(給油装置)
次に、燃料タンク12への給油装置50を説明する。給油装置50は図1を参照して簡単に説明したエアフィルタ装置60、フィラーパイプ30、ブリーザパイプ34、及び図2及び3に示す金属性のリング部材72等で構成される。以下、図2乃至4を参照して説明する。なお、給油装置50の上下、前後、左右方向は、図2に示す給油装置の向きを基準として定める。また、前後方向は紙面前後方向に相当する。座標系には、右手系の直交座標を採用し、左右方向をX軸に、前後方向をY軸に、上下方向をZ軸にそれぞれ対応づける。
【0026】
(エアフィルタ装置)
エアフィルタ装置60は、不織布等からなるエアフィルタ62及び樹脂製のフィルタケース64を備える。フィルタケース64は、フィラーパイプ30の外周を取り囲む筒状部66、筒状部66の外周面の下部に形成された、フィルタを収容するフィルタ収容部68及び上述したキャニスタ接続筒部70を備える。筒状部66の上端部、すなわち給油口32側の端部には、リング部材72が装着され、フィラーパイプ30及び筒状部66の上端部周辺を衝撃から保護している。筒状部66とリング部材72とは、これらに跨って設けられた第1固定手段74及び第2固定手段76(詳細は後述)により互いに固定されている。
【0027】
筒状部66の外周面の、フィルタ収容部68から上方に離隔した位置には、環状のフランジ部78が筒状部66の径方向外方に延在している。フランジ部78の上面には、上方に突出したリブ(符号は省略)が複数形成されている。リブはフランジ部78の強度補強を目的とする。筒状部66の、フランジ部78とフィルタ収容部68の間に相当する部分には、筒状部66の周方向に沿って水抜き孔80が複数形成されている。図3に良く示すように、給油装置50は、自動車1(図1参照)の車体の壁部84に固定されたゴム製の固定部材82に挿入して自動車1の車体に対して固定される配置構成である。そして、給油装置50は、地平面86に対して傾斜した形態として配置されている。このため、水抜き孔80も本実施形態では、筒状部66の周方向における、図3で見て、下方位置の部位に形成されている。したがって、エアフィルタ装置60の水抜き孔80が形成された部分は、水抜き孔80が形成されていない部分よりも、相対的に地平面86に近くなる。そのため、筒状部66とフィラーパイプ30の間に外気と共に混入した水等の液体を、筒状部66の外部に効果的に排出することができる。
【0028】
フィルタケース64は図4に良く示すように、第1ケース部88と第2ケース部90とからなる。エアフィルタ装置60を組み立てる際は、フィラーパイプ30を第1ケース部88と第2ケース部90で挟み込みつつ、第1ケース部88に形成された4つの嵌合爪92を、第2ケース部90に形成された4つの嵌合孔94(図4では、手前に見える2つのみを示す)に、それぞれ嵌合する。この嵌合により、第1ケース部88と第2ケース部90は結合される。そして、エアフィルタ装置60が、その筒状部66内にフィラーパイプ30が収容された状態で組み立てられる。このような状態で、筒状部66を、車体の壁部84(図3参照)に固定された固定部材82に、車体の内側から外側に向かって挿入する。この際、筒状部66を、フランジ部78が固定部材82に当接するまで押し込み、その後引き戻す。その後、筒状部66の、車体の外側に露出した部分にリング部材72を装着する。リング部材72の装着工程については、後述する。
【0029】
第1ケース部88側の筒状部66の内壁には、第1リブ半部96A及び第2リブ半部98Aが形成されている。同様に、第2ケース部90側の筒状部66の内壁には、第1リブ半部96B及び第2リブ半部98Bが形成されている。そのため、第1ケース部88と第2ケース部90を、これらの間にフィラーパイプ30を挟み込みつつ結合すると、第1リブ半部96Aと第1リブ半部96Bにより第1リブ96が、第2リブ半部98A、第2リブ半部98Bにより第2リブ98がそれぞれ形成される。第1リブ96及び第2リブ98のそれぞれは一部が切り欠かれている。第1リブ96の切り欠きと第2リブ98の切り欠きの位置は、筒状部66の周方向に関して互いにずれた位置にある。筒状部66、第1リブ96、第2リブ98、そしてフィラーパイプ30により、筒状部66とフィラーパイプ30の間の空間に、ラビリンス構造が形成される。筒状部66とフィラーパイプ30の間に取り込まれた外気に含有されている塵やごみ等の一部は、筒状部66とフィラーパイプ30の間に形成されたラビリンスを通過する過程で空気と分離し、筒状部66やフィラーパイプ30の壁面や、第1リブ96、第2リブ98の表面に付着する。
【0030】
ラビリンスの最下流は、フィルタ収容部連通口100を介して、フィルタ収容部68内部と連通している。フィルタ収容部68に流入した空気は、エアフィルタ62を通過して、キャニスタ接続筒部70、大気通路42を流れ、キャニスタ36に至る(大気通路42、キャニスタ36は図1参照)。このときエアフィルタ62によってフィルタ収容部68に流入した空気が濾過され、ラビリンス構造では除去しきれなかった塵やごみ等が除去される。
【0031】
図3に示すように、フィルタ収容部68の底板の、車体に固定された際に他の部分よりも地平面86に近くなる部分には、複数の水抜き孔102が形成されている。さらに、フィルタ収容部68の底板の下面には、水抜き孔102を覆うように略四角筒形状のガイド部104が3つ形成されている。このような構成により、水抜き孔80により排出しきれなかった水分を、水抜き孔102からフィルタ収容部68外へ排出することができる。
【0032】
(第1固定手段及び第2固定手段)
第1固定手段74及び第2固定手段76について、図5乃至7を参照して説明する。なお、図5乃至7では、要部を見やすくする目的で、固定部材82の図示を省略している。図5及び6に良く示すように、リング部材72には、切り欠き106と、切り欠き106のリング部材72の軸方向の端部から、周方向に延在する横孔108が形成されている。図4に示すように、リング部材72には、切り欠き106及び横孔108よりなる組が、周方向におよそ90度の間隔をあけて4組形成されている。一方、再び図6に示すように、筒状部66には、突起110及び該突起110の隣に位置する爪部112からなる組が形成されている。爪部112は、筒状部66の径方向外方に突出しているが、径方向内方へ弾性変形可能である。図7に示すように、筒状部66にはさらに、隣に爪部112がない突起110が形成されている。突起110及び該突起110の隣に位置する爪部112の組が2組と、隣に爪部112がない2つの突起110は、筒状部66の周方向に90度の間隔をあけて交互に配設されている。切り欠き106及び該切り欠き106と連続した横孔108と、突起110及び該突起110の隣に位置する爪部112とにより、第1固定手段74が構成される。同様に、切り欠き106及び該切り欠き106と連続した横孔108と、隣に爪部112がない突起110とにより第2固定手段76が構成されている。以上のことから、リング部材72と筒状部66に跨って、2つの第1固定手段74と2つの第2固定手段76が、交互に配設されていることが分かる。なお、第1固定手段74は、本明細書における固定手段に相当する。
【0033】
(リング部材72の装着)
次に、上述したリング部材72の筒状部66への装着について説明する。リング部材72の装着は、リング部材72を、筒状部66の、車体の外側に露出した部分に、その上方から嵌める。この際、リング部材72の切り欠き106から筒状部66の突起110が突出するようリング部材72と筒状部66との周方向位置をそろえる。その後、切り欠き106の上端が突起110の上端に当接するまでリング部材72を筒状部66に対して押し下げる。このとき、図5に示すように、爪部112は、リング部材72の壁面によって筒状部66の径方向内方へ押圧され、同じく径方向内方へ弾性変形している。その後、突起110が横孔108の周方向端部に当接するまで、リング部材72を筒状部66に対して反時計回り(図5中、矢印Y1にて示す)に回転させる。すると、切り欠き106が爪部112に重なり、爪部112は弾性変形状態から復帰する。上述したリング部材72の装着手順により、第1固定手段74が組付けられる(図6の状態)。同時に、第2固定手段76もまた組付けられる。第2固定手段76は、爪部112を備えず、上述の装着手順により、突起110が横孔108の周方向端部に当接した状態となる(図7の状態)。
【0034】
第1固定手段74及び第2固定手段76において、突起110と横孔108は、リング部材72が筒状部66の軸方向、すなわち上下方向に相対移動することを抑制する。すなわち、リング部材72を抜け止めする。また、図6に示すように、第1固定手段74において、爪部112と切り欠き106は、リング部材72が筒状部66の周方向に関して、時計回り方向(図6中にて矢印Y2により示す)に回転することを抑制する。すなわち回転止めする。
【0035】
(第1の実施形態の利点)
フィラーパイプ30が樹脂等の温度変化による寸法変化が比較的大きい材料により形成されている場合、軸方向に伸長することが考えられる。これに伴い、フィラーパイプ30を筒状部66内部に収容しているエアフィルタ装置60が、固定部材82に対して接近し得る。ここで、フィルタ収容部68が固定部材82に当接すると、フィルタ収容部68及びフィルタ収容部68に収容されているエアフィルタ62が破損する虞がある。一方、本実施形態では、フランジ部78は、筒状部66の軸方向に関してフィルタ収容部68と間隔をおいて位置している。そのため、フィラーパイプ30が軸方向に伸長し、エアフィルタ装置60が固定部材82に対して接近する場合においても、フランジ部78が固定部材82に当接するため、エアフィルタ装置60は更に固定部材82に接近することはない。そのため、フィルタ収容部68が固定部材82に当接することは回避される。このような構成により、フィルタ収容部68及びエアフィルタ62の破損を防止できる。
【0036】
また、筒状部66の、フランジ部78とフィルタ収容部68との間隔形成位置には、水抜き孔80が形成されている。上述したように、フィラーパイプ30が軸方向に伸長し、エアフィルタ装置60が固定部材82に対して接近する場合においても、フランジ部78が固定部材82に当接している状態よりも更に接近することはない。そのため、水抜き孔80が固定部材82により閉塞されることを回避できる。これにより、筒状部66内に混入した水等の液体を、外部へと排出することができる。
【0037】
また、リング部材72と筒状部66は、これらに跨って配設された、第1固定手段74と第2固定手段76を備える。第1固定手段74及び第2固定手段76はリング部材72が筒状部66に嵌合装着された状態において、抜け止めを行う。また、第1固定手段74は、同じくリング部材72の装着状態において回転止めを行う。このような構成により、リング部材72の筒状部66への嵌合装着状態を、維持することができる。
【0038】
また、リング部材72の筒状部66への装着は、まず、切り欠き106から突起110を突出させつつ切り欠き106の給油口32側の端部に該突起110を当接させるとともに、リング部材72の壁面により爪部112を弾性変形させる。その後、切り欠き106と爪部112の周方向位置が一致するまでリング部材72を筒状部66に対して周方向に相対移動させ、爪部112を弾性変形状態から復帰させつつ、横孔108から突起110を突出させることによりなされる。
【0039】
上述したように、リング部材72の筒状部66への装着は、給油装置50を固定部材82に挿入し車体に対して固定した後に行われる。このとき、固定部材82は、その形状によっては、作業者の、筒状部66に形成された突起110及び爪部112への視界を遮ることがある。そのため、目視によってリング部材72と筒状部66の相対位置を確認しつつ、これらの位置を調節することは困難になり得、第1固定手段74の組付けもまた困難になり得る。しかし、本開示のエアフィルタ装置60は、上述の如く構成されているため、第1固定手段74の組付けは、次のようにして手探り作業により容易に行うことができる。組付け作業は、次の3工程からなる。先ず、第1工程として、リング部材72に形成された切り欠き106と、筒状部66の突起110との周方向位置をそろえる工程がある。次に、第2工程として、切り欠き106の給油口32側の端部に突起110が当接するまで押し下げる工程がある。最後に、第3工程として、突起110が横孔108の周方向端部に当接するまで、リング部材72を筒状部66に対して回転させる工程がある。これらの工程を手探りの作業により実現できる。従って、作業者は、リング部材72の筒状部66への装着を容易に行うことができる。
【0040】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、エアフィルタ装置の装着位置が、上述した第1の実施形態のようにフィラーパイプではなく、フィラーパイプの燃料タンク側の端部とは反対側の端部に接続された接続筒部材に装着されている場合である。以下、図8を参照して第2の実施形態を説明する。なお、第2の実施形態は、上記点においてのみ第1の実施形態と異なるので、相違点のみを説明し、共通点については図示及び説明を省略する。
【0041】
第2の実施形態では、エアフィルタ装置60は、フィラーパイプ130の、燃料タンク12(図1参照)側の端部とは反対側の端部に装着された接続筒部材134に装着される。すなわち、接続筒部材134は、筒状部66内に収容される。そして、接続筒部材134が給油口132を形成する。フィラーパイプ130及び接続筒部材134は、樹脂及び金属等の任意の素材により形成することができる。しかし、フィラーパイプが樹脂により形成されている場合、温度によっては軸方向に伸長することが考えられる。これに伴い、接続筒部材134を筒状部66内部に収容しているエアフィルタ装置60が、固定部材82に対して接近し得る。ここで、フィルタ収容部68が固定部材82に当接すると、フィルタ収容部68及びフィルタ収容部68に収容されているエアフィルタ62が破損する虞がある。一方、第2の実施形態においても、エアフィルタ62は、第1の実施形態と共通の構成を有するため、第1の実施形態と同様に、フィルタ収容部68が固定部材82に当接することは回避される。ひいてはフィルタ収容部68及びエアフィルタ62の破損を防止できる。
【0042】
[その他の実施形態]
本明細書に開示のエアフィルタ装置は、上記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。第2の実施形態では、エアフィルタ装置60の筒状部66内に収容されているのは、接続筒部材134のみでなくてもよい。例えば、接続筒部材134とフィラーパイプ130の両方が収容されていてもよい。また、図9に示すように、フィラーパイプ130の燃料タンク12(図1参照)側の端部とは反対側の端部には、2つ以上の(図9では2つを示す)接続筒部材134、136が接続されていてもよい。図9に示す例では、接続筒部材134は、フィラーパイプ130と直接的には接続されておらず、むしろ間接的に接続されているが、第1、第2の実施形態と同様に、フィラーパイプ130が樹脂により形成されている場合、温度によっては軸方向に伸長し得る。そして、これに伴い、接続筒部材134を筒状部66内部に収容しているエアフィルタ装置60が、固定部材82に対して接近し得る。
【0043】
第1及び第2の実施形態ではエアフィルタ装置60は自動車1に搭載されていたが、ガソリンエンジンを搭載した車両であれば、自動車には限定されない。例えば、二輪車、船舶等が挙げられる。また、フィラーパイプが十分な強度を有する場合は、リング部材を省略してもよい。