(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021004158
(43)【公開日】20210114
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法、複合材料の製造方法及び複合材料
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/174 20170101AFI20201211BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20201211BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20201211BHJP
   C08J 5/06 20060101ALI20201211BHJP
   C01B 32/159 20170101ALI20201211BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20201211BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20201211BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20201211BHJP
【FI】
   !C01B32/174
   !C08J3/20 BCER
   !C08J5/00CEZ
   !C08J5/06
   !C01B32/159
   !C08L101/00
   !C08K3/04
   !C08K5/053
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】33
(21)【出願番号】2019119810
(22)【出願日】20190627
(71)【出願人】
【識別番号】311012044
【氏名又は名称】株式会社富山環境整備
【住所又は居所】富山県富山市婦中町吉谷3−3
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
【住所又は居所】長野県松本市旭三丁目1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】新原 健一
【住所又は居所】富山県富山市婦中町吉谷3−3 株式会社富山環境整備内
(72)【発明者】
【氏名】鹿嶋 渡
【住所又は居所】富山県富山市婦中町吉谷3−3 株式会社富山環境整備内
(72)【発明者】
【氏名】前川 康二
【住所又は居所】富山県富山市婦中町吉谷3−3 株式会社富山環境整備内
(72)【発明者】
【氏名】野口 徹
【住所又は居所】長野県長野市若里四丁目17番1号 国立大学法人信州大学工学部内
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4F072
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【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】 本発明は、大量の有機溶剤を用いることなくカーボンナノチューブを高分子物質に複合化することができるカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 カーボンナノチューブ含有組成物80の製造方法は、平均直径が0.4nm〜15.0nmのカーボンナノチューブと多価アルコールとを含む混合物を、加圧して圧縮した後、圧力を解放または減圧して元の体積に復元する混合工程を含む。カーボンナノチューブ含有組成物80の製造方法における多価アルコールの配合量は、カーボンナノチューブ1.0質量部に対して1.0質量部以上10.0質量部未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均直径が0.4nm〜15.0nmのカーボンナノチューブと多価アルコールとを含む混合物を、加圧して圧縮した後、圧力を解放または減圧して元の体積に復元してカーボンナノチューブ含有組成物を得る混合工程を含み、
前記多価アルコールの配合量は、前記カーボンナノチューブ1.0質量部に対して1.0質量部以上10.0質量部未満である、カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記多価アルコールは、2価アルコール及び3価アルコールの少なくとも一方を含む、カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2で得られる前記カーボンナノチューブ含有組成物を用いて複合材料を製造する方法であって、
前記混合工程は、第1混合工程であり、
前記第1混合工程で得られる前記カーボンナノチューブ含有組成物を高分子物質と混合して複合材料を得る第2混合工程をさらに含み、
前記複合材料における前記カーボンナノチューブの含有量は、前記高分子物質100質量部に対して5.0質量部以上40.0質量部以下である、複合材料の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2で得られる前記カーボンナノチューブ含有組成物を用いて複合材料を製造する方法であって、
前記混合工程は、第1混合工程であり、
前記第1混合工程で得られる前記カーボンナノチューブ含有組成物を第1高分子物質と混合して前駆体を得る第2混合工程と、
前記前駆体を、さらに前記第2高分子物質と混合して前記複合材料を得る第3混合工程と、
をさらに含む、複合材料の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1高分子物質及び前記第2高分子物質は、熱可塑性樹脂であり、
前記前駆体における前記多価アルコールの含有量は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して400.0質量部未満であり、
前記複合材料における前記カーボンナノチューブの含有量は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上15.0質量部以下である、複合材料の製造方法。
【請求項6】
請求項4において、
前記第1高分子物質及び前記第2高分子物質は、ゴム成分であり、
前記複合材料における前記カーボンナノチューブの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上40.0質量部以下である、複合材料の製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂中に平均直径が0.4nm〜15.0nmのカーボンナノチューブを含む複合材料であって、
前記複合材料は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記カーボンナノチューブを0.1質量部以上40.0質量部未満含み、
前記複合材料は、最大幅が1μm以上の前記カーボンナノチューブバンドル又は凝集塊を含まない、複合材料。
【請求項8】
請求項7において、
前記複合材料は、JIS K 6251に準拠して測定した破断伸びの変動係数(標準
偏差/平均値)が0.4以下であり、かつ、前記熱可塑性樹脂単体における破断伸びに対する前記破断伸びの変化率が−99.0%以上である、複合材料。
【請求項9】
請求項7又は請求項8において、
前記複合材料は、JIS K 6251に準拠して測定した引張試験において降伏現象を示し、かつ、前記熱可塑性樹脂単体における降伏応力に対する複合材料における降伏応力の変化率が1.0%以上である、複合材料。
【請求項10】
請求項7〜請求項9のいずれか一項において、
動的ひずみ±0.05%、周波数1HzでJIS K 7244に準拠した動的粘弾性試験における室温での前記複合材料の貯蔵弾性率(E’)が、前記熱可塑性樹脂単体における同試験の貯蔵弾性率(E’)よりも0.5%以上大きい、複合材料。
【請求項11】
請求項7〜請求項10のいずれか一項において、
前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱した前記複合材料が直径0.2mmのノズルから押出することが可能である、複合材料。
【請求項12】
ゴム成分中に平均直径が0.4nm〜15.0nmのカーボンナノチューブを含む複合材料であって、
前記複合材料は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記カーボンナノチューブを0.1質量部以上20.0質量部未満含み、
前記複合材料は、最大幅が1μm以上の前記カーボンナノチューブバンドル又は凝集塊を含まない、複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法、複合材料の製造方法及び複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、非常に軽量でありながら、電気的特性や熱伝導性、機械的性質に優れた材料である。そのため、カーボンナノチューブは、他の材料と複合化するための工業材料として注目されている。
【0003】
特に平均直径の細いカーボンナチューブは、比表面積が大きく、少量でも優れた補強等の効果が得られる。しかしながら、このようなカーボンナノチューブは、ファンデルワールス力によって凝集しやすく、太い束状(バンドル)のまま例えば凝集塊として複合材料中に存在する。このような太いバンドルや凝集塊があると、カーボンナノチューブの比表面積の大きさが活かせないばかりか、複合材料の破壊の起点となりやすい。
【0004】
平均直径の細い単層カーボンナノチューブを大量の有機溶剤に分散させたCNT分散液と、フッ素ゴムを有機溶剤に溶解させたマトリックス溶液とを混合攪拌した後、乾燥して有機溶剤を除去して1wt%CNTゴムを製造する方法が提案されている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−196246号公報
【特許文献2】特開2016−175836号公報
【特許文献3】特開2018−39722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3の方法は、複合化する際に大量の有機溶剤を除去しなければならず、工業的に実用化しにくい。また、CNT分散液と混合するために、マトリックスとなる材料が有機溶剤に溶解するものに限定されてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、大量の有機溶剤を用いることなくカーボンナノチューブを高分子物質に複合化することができるカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法及び複合材料の製造方法を提供する。また、本発明は、平均直径の細いカーボンナノチューブを用いても、最大幅が1μm以上のバンドル又は凝集塊がない複合材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明に係るカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法の一態様は、
平均直径が0.4nm〜15.0nmのカーボンナノチューブと多価アルコールとを含む混合物を、加圧して圧縮した後、圧力を解放または減圧して元の体積に復元してカーボンナノチューブ含有組成物を得る混合工程を含み、
前記多価アルコールの配合量は、前記カーボンナノチューブ1.0質量部に対して1.0質量部以上10.0質量部未満であることを特徴とする。
【0009】
[2]前記カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法の一態様において、
前記多価アルコールは、2価アルコール及び3価アルコールの少なくとも一方を含むことができる。
【0010】
[3]本発明に係る複合材料の製造方法の一態様は、前記カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法の一態様で得られる前記カーボンナノチューブ含有組成物を用いて複合材料を製造する方法であって、
前記混合工程は、第1混合工程であり、
前記第1混合工程で得られる前記カーボンナノチューブ含有組成物を高分子物質と混合して複合材料を得る第2混合工程をさらに含み、
前記複合材料における前記カーボンナノチューブの含有量は、前記高分子物質100質量部に対して5.0質量部以上40.0質量部以下であることを特徴とする。
【0011】
[4]本発明に係る複合材料の製造方法の一態様は、前記カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法の一態様で得られる前記カーボンナノチューブ含有組成物を用いて複合材料を製造する方法であって、
前記混合工程は、第1混合工程であり、
前記第1混合工程で得られる前記カーボンナノチューブ含有組成物を第1高分子物質と混合して前駆体を得る第2混合工程と、
前記前駆体を、さらに前記第2高分子物質と混合して前記複合材料を得る第3混合工程と、
をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
[5]前記複合材料の製造方法の一態様において、
前記第1高分子物質及び前記第2高分子物質は、熱可塑性樹脂であり、
前記前駆体における前記多価アルコールの含有量は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して400.0質量部未満であり、
前記複合材料における前記カーボンナノチューブの含有量は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上15.0質量部以下であることができる。
【0013】
[6]前記複合材料の製造方法の一態様において、
前記第1高分子物質及び前記第2高分子物質は、ゴム成分であり、
前記前駆体における前記多価アルコールの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して200.0質量部以下であり、
前記複合材料における前記カーボンナノチューブの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上30.0質量部以下であることができる。
【0014】
[7]本発明に係る複合材料の一態様は、
熱可塑性樹脂中に平均直径が0.4nm〜15.0nmのカーボンナノチューブを含む複合材料であって、
前記複合材料は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記カーボンナノチューブを0.1質量部以上40.0質量部以下含み、
前記複合材料は、最大幅が1μm以上の前記カーボンナノチューブのバンドル又は凝集塊を含まないことを特徴とする。
【0015】
[8]前記複合材料の一態様において、
前記複合材料は、JIS K 6251に準拠して測定した破断伸びの変動係数(標準偏差/平均値)が0.4以下であり、かつ、前記熱可塑性樹脂単体における破断伸びに対する前記破断伸びの変化率が−99.0%以上であることができる。
【0016】
[9]前記複合材料の一態様において、
前記複合材料は、JIS K 6251に準拠して測定した引張試験において降伏現象を示し、かつ、前記熱可塑性樹脂単体における降伏応力に対する複合材料における降伏応力の変化率が1.0%以上であることができる。
【0017】
[10]前記複合材料の一態様において、
動的ひずみ±0.05%、周波数1HzでJIS K 7244に準拠した動的粘弾性試験における室温での前記複合材料の貯蔵弾性率(E’)が、前記熱可塑性樹脂単体における同試験の貯蔵弾性率(E’)よりも0.5%以上大きくてもよい。
【0018】
[11]前記複合材料の一態様において、
前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱した前記複合材料が直径0.2mmのノズルから押出することが可能であってもよい。
【0019】
[12]本発明に係る複合材料の一態様は、
ゴム成分中に平均直径が0.4nm〜15.0nmのカーボンナノチューブを含む複合材料であって、
前記複合材料は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記カーボンナノチューブを0.1質量部以上40.0質量部以下含み、
前記複合材料は、最大幅が1μm以上の前記カーボンナノチューブのバンドル又は凝集塊を含まないことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、第1混合工程を模式的に示す図である。
【図2】図2は、第2混合工程を模式的に示す図である。
【図3】図3は、第3混合工程を模式的に示す図である。
【図4】図4は、実施例1のサンプルにおけるDMA測定結果(貯蔵弾性率E’の温度依存性)を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例2の複合材料の光学顕微鏡写真である。
【図6】図6は、実施例11の複合材料の光学顕微鏡写真である。
【図7】図7は、比較例2の複合材料の光学顕微鏡写真である。
【図8】図8は、比較例6の複合材料の光学顕微鏡写真である。
【図9】図9は、比較例20の複合材料の光学顕微鏡写真である。
【図10】図10は、実施例5の複合材料の電子顕微鏡写真である。
【図11】図11は、比較例4の複合材料の電子顕微鏡写真である。
【図12】図12は、比較例8の複合材料の電子顕微鏡写真である。
【図13】図13は、実施例21の複合材料の電子顕微鏡写真である。
【図14】図14は、比較例31の複合材料の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
1.カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法
本実施形態に係るカーボンナノチューブ含有組成物の製造方法は、平均直径が0.4nm〜15.0nmのカーボンナノチューブと多価アルコールとを含む混合物を、加圧して圧縮した後、圧力を解放または減圧して元の体積に復元してカーボンナノチューブ含有組成物を得る混合工程を含む。
【0023】
以下の説明において、後述する第2混合工程等と明確に区別するため、カーボンナノチューブ含有組成物の製造方法における混合工程は、「第1混合工程」と呼ぶ。
【0024】
1.1.第1混合工程
第1混合工程は、カーボンナノチューブと多価アルコールとを含む混合物を、加圧して圧縮した後、圧力を解放または減圧して元の体積に復元する工程である。第1混合工程で混合物を体積変化させると擬似的に弾性変形するように混合物が流動し、凝集するカーボンナノチューブの間に多価アルコールを浸透させることができると推測できる。第1混合工程は、多価アルコールが蒸発しない比較的低い温度で行うことが好ましい。
【0025】
第1混合工程に先立って、カーボンナノチューブと多価アルコールとを含む混合物を作製することができる。例えば、当該混合物は、容器内にカーボンナノチューブと多価アルコールとを所定量入れて攪拌し、混合する。多価アルコール単体では弾性及び粘性が小さいが、カーボンナノチューブを含む混合物は弾性及び粘性が大きくなる。
【0026】
第1混合工程の具体例について図1を用いて説明する。
【0027】
図1に示すオープンロール2に混合物80を投入し、混合物80を第1ロール10に巻き付かせる。第1ロール10及び第2ロール20のロール間隔dは、例えば0.0mmを超え0.5mm以下に設定することができる。第1ロール10及び第2ロール20の表面温度は、ロールが結露しにくい温度であって多価アルコールが蒸発しにくい温度に設定され、例えば10℃以上50℃以下であることができ、20℃以上30℃以下であることができる。第1混合工程の混練り時間は、例えば5分以上20分以下であることができる。第1混合工程を実施することで、凝集したカーボンナノチューブの間に多価アルコールを十分に浸透させ、第2混合工程において、カーボンナノチューブを解繊させやすい状況を作ることができる。混合物は弾性及び粘性が大きくなっているため、ロール間で混合物が圧縮された後に、圧力が開放されると弾性による復元力が発生する。この復元力による多価アルコールの移動と共にカーボンナノチューブが移動し、バンドルを構成するカーボンナノチューブの隙間に多価アルコールが入り込むと推測できる。
【0028】
第1混合工程としてオープンロール2を用いる例について説明したが、混合物の体積を圧縮した後に復元することができる混合方法であれば、他の方法を採用することができる。例えば、セラミックロールを備える3本ロール、液体を加圧して流動させながら圧縮し、キャビテーションや乱流を発生させた後、急激に減圧する分散装置(ホモジナイザー)を用いてもよい。
【0029】
1.2.カーボンナノチューブ
第1混合工程に用いるカーボンナノチューブは、平均直径が0.4nm〜15.0nmである。さらに、カーボンナノチューブは、平均直径が1.0nm〜15.0nmであることができる。特にカーボンナノチューブを解繊することが難しい平均直径が1.0nm〜5.0nmの単層カーボンナノチューブであってもよい。カーボンナノチューブの平均直径は、電子顕微鏡による観察によって計測することができる。カーボンナノチューブは、後述する高分子物質との反応性を向上させるために、公知の表面処理を施してもよい。なお、本発明の詳細な説明においてカーボンナノチューブの平均直径は、電子顕微鏡による例えば50,000倍の撮像(カーボンナノチューブのサイズによって適宜倍率は変更できる)から200箇所以上の直径を計測し、その算術平均値として計算して得ることができる。
【0030】
カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラファイトの1枚面(グラフェンシート)を巻いて筒状にした形状を有する単層カーボンナノチューブ(SWNT:シングルウォールカーボンナノチューブ)、多層カーボンナノチューブ(MWNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)であることができる。多層カーボンナノチューブには、2層カーボンナノチューブ(DWNT:ダブルウォールカーボンナノチューブ)を含む。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボ
ンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブ、気相成長炭素繊維といった名称で称されることもある。
【0031】
カーボンナノチューブは、公知の製造方法により得ることができ、また、市販のカーボンナノチューブを用いてもよい。例えば、カーボンナノチューブは、気相成長法によって得ることができる。気相成長法は、触媒気相合成法(Catalytic Chemical Vapor Deposition:CCVD)とも呼ばれ、炭化水素等のガスを金属系触媒の存在下で気相熱分解させて未処理のカーボンナノチューブを製造する方法である。より詳細に気相成長法を説明すると、例えば、ベンゼン、トルエン等の有機化合物を原料とし、フェロセン、ニッケルセン等の有機遷移金属化合物を金属系触媒として用い、これらをキャリアーガスとともに高温例えば400℃〜1000℃の反応温度に設定された反応炉に導入し、浮遊状態あるいは反応炉壁にカーボンナノチューブを生成させる浮遊流動反応法(Floating Reaction Method)や、あらかじめアルミナ、酸化マグネシウム等のセラミックス上に担持された金属含有粒子を炭素含有化合物と高温で接触させてカーボンナノチューブを基板上に生成させる触媒担持反応法(Sub strate Reaction Method)等を用いることができる。
【0032】
1.3.多価アルコール
カーボンナノチューブ含有組成物中の多価アルコールは、カーボンナノチューブ含有組成物を高分子物質に複合化する際にカーボンナノチューブを解繊しやすくする。具体的には、第1混合工程によって多価アルコールが凝集するカーボンナノチューブの間に浸透することで、後述する第2混合工程においてカーボンナノチューブのバンドルや凝集塊を解しやすくすることができる。
【0033】
多価アルコールは、2価アルコール及び3価アルコールの少なくとも一方を含むことができる。2価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。2価及び3価以外の多価アルコールとして例えばペンタエリスリトール、ジグリセリン、ポリグリセリン等を含んでもよい。
【0034】
多価アルコールの配合量は、カーボンナノチューブ1.0質量部に対して1.0質量部以上10.0質量部未満である。多価アルコールが1.0質量部より少ないと、第2混合工程でカーボンナノチューブを解繊する効果が低くなる。また、多価アルコールが10.0質量部以上配合されると、第2混合工程における加工性が低下する傾向がある。さらに、多価アルコールの配合量は、好ましくはカーボンナノチューブ1.0質量部に対して1質量部以上8.0質量部以下であることができる。
【0035】
1.4.カーボンナノチューブ含有組成物
第1混合工程により得られたカーボンナノチューブ含有組成物は、カーボンナノチューブと多価アルコールとを含むペースト状の物質である。カーボンナノチューブ含有組成物におけるカーボンナノチューブと多価アルコールとの質量比は、1.0:1.0〜1.0:10.0である。カーボンナノチューブ含有組成物は、高分子物質や金属等のマトリックス材料と混合して、カーボンナノチューブをマトリックス材料と複合化する原料として用いることができる。
【0036】
2.複合材料の製造方法
本実施形態に係る複合材料の製造方法は、第1混合工程で得られるカーボンナノチューブ含有組成物を高分子物質と混合して複合材料を得る第2混合工程を含む。当該複合材料
の製造方法は、第1混合工程で得られるカーボンナノチューブ含有組成物を第1高分子物質と混合して前駆体を得る第2混合工程と、当該前駆体を、さらに第2高分子物質と混合して複合材料を得る第3混合工程と、をさらに含んでもよい。
【0037】
2.1.第2混合工程
第2混合工程は、高分子物質に高いせん断力を与え、高分子物質の弾性による復元力を利用してカーボンナノチューブを解繊し高分子物質中に分散させた複合材料を製造することができる。上述したカーボンナノチューブ含有組成物を用いるため、従来のような大量の有機溶剤を用いることなくカーボンナノチューブを高分子物質に複合化することができる。
【0038】
複合材料におけるカーボンナノチューブの含有量は、高分子物質100質量部に対して5.0質量部以上40.0質量部以下である。カーボンナノチューブの含有量が5.0質量部以上であれば、カーボンナノチューブが高分子物質を拘束することにより弾性による復元力を利用して混合することができる。また、カーボンナノチューブの含有量が40.0質量部以下であれば、第2混合工程を実施することができる。また、複合材料におけるカーボンナノチューブの含有量は、高分子物質100質量部に対して5.0質量部以上30.0質量部以下であってもよい。その場合、第2混合工程は、より容易に実施できる。
【0039】
高分子物質としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム成分の中から少なくとも一種以上を選択することができる。混合工程は、マトリクスとなる高分子物質によって条件が異なる。
【0040】
第2混合工程により得られる複合材料は、後述する第3混合工程において前駆体(マスターバッチ)として用いてもよい。
【0041】
2.1.1.熱可塑性樹脂を用いる第2混合工程
高分子物質が熱可塑性樹脂である場合の第2混合工程について詳細に説明する。
【0042】
第2混合工程は、熱可塑性樹脂100質量部に対してカーボンナノチューブが5.0質量部以上40.0質量部以下となるように、熱可塑性樹脂とカーボンナノチューブ含有組成物とが混合される。第2混合工程は、熱可塑性樹脂100質量部に対してカーボンナノチューブが10.0質量部以上30.0質量部以下であることができ、さらに、熱可塑性樹脂100質量部に対してカーボンナノチューブが15.0質量部以上20.0質量部以下であることができる。
【0043】
第2混合工程は、熱可塑性樹脂の融点(Tm℃)付近における複合材料の貯蔵弾性率における加工領域発現温度から当該貯蔵弾性率における平坦領域発現温度(T3℃)の1.06倍(T3℃×1.06)の温度までの範囲の混練温度で混練する低温混練工程を含むことができる。融点を有しない熱可塑性樹脂の場合には、融点の代わりにガラス転移点を用いて貯蔵弾性率から混練温度を設定することができる。
【0044】
低温混練工程は、熱可塑性樹脂を溶融して成形加工するための装置、例えば、オープンロール、密閉式混練機、押出機、射出成形機などを用いることができる。図2に示すようなオープンロール2を用いる方法について説明する。
【0045】
低温混練工程は、第1ロール10と第2ロール20とのロール間隔dを、例えば0.5mm以下、より好ましくは0.0mmを超え0.5mm以下の間隔に設定し、高分子物質(ここでは「熱可塑性樹脂」)30とカーボンナノチューブ含有組成物80とをオープンロール2に投入して混練を行なうことができる。
【0046】
第1ロール10の表面速度をV1、第2ロール20の表面速度をV2とすると、この工程における両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05〜3.00であることができ、さらに1.05〜1.2であることができる。このような表面速度比を用いることにより、所望の高い剪断力を得ることができる。このように狭いロール間から押し出された混合物は、混練温度で適度な弾性を有し、かつ、適度な粘性を有している温度範囲であることから、熱可塑性樹脂の弾性による復元力で大きく変形し、その際の熱可塑性樹脂の変形と共にカーボンナノチューブが大きく移動することができる。ゴム弾性領域については後述する。
【0047】
混練温度は、低温混練工程における混合物の表面温度であり、加工装置の設定温度ではない。混練温度はできるだけ実際の樹脂の表面温度を測定することが望ましいが、測定できない場合は加工装置から複合材料を取り出した直後の樹脂の表面温度を測定してその温度から加工中の混練温度とすることができる。
【0048】
オープンロール2の場合は、図1に示すように、第1ロール10に巻き付いた高分子物質30に対して非接触温度計40を用いて表面温度を測定することができる。非接触温度計40の配置は、ニップを通過した直後の位置以外であればよく、好ましくは第1ロール10の上方である。ニップを通過した直後は、高分子物質の温度が急激に変化する不安定な温度であるため、避けた方が望ましい。
【0049】
また、密閉式混練機や押出機などのように、低温混練工程における複合材料の表面温度を測定することができない場合には、混練した後装置から取り出した直後の複合材料の表面温度を測定し、混練温度の範囲内にあることを確認することができる。また、混合中の樹脂の温度を正確にモニタリングできる混練機を用いる場合には、そのモニタリングした温度で所定の混練温度の範囲内にあることを確認してもよい。
【0050】
複合材料の製造方法によれば、凝集しやすいカーボンナノチューブを相互に分離した状態で熱可塑性樹脂中に分散し、かつ、熱可塑性樹脂中に分散した状態を維持することができる。
【0051】
低温混練工程は、融点付近の温度から平坦領域(動的粘弾性試験(以下、DMA試験という。)の結果において融点を超えても貯蔵弾性率(E’)がほとんど低下しない平坦領域であり、すなわちエラストマーのようなゴム弾性領域)の一部までを利用して、凝集しているカーボンナノチューブをほぐすように解繊して、熱可塑性樹脂中に分散させるものである。混練温度の範囲を設定するためには、その配合の複合材料サンプルについてあらかじめDMA試験を行う必要がある。なお、低温混練温度については特開2017−145406号で詳細に説明されている。
【0052】
まず、所定の配合の複合材料サンプルについてDMA試験を行い、横軸は温度、左側の縦軸は貯蔵弾性率(E’)の対数の値(log(E’))、右側の縦軸は貯蔵弾性率(E’)の対数の値(log(E’))の温度による微分値(d(log(E’))/dT)としてグラフを作成する(例えば図4)。
【0053】
log(E’)のグラフは熱可塑性樹脂の融点付近に変曲点P1を有する。変曲点P1は、d(log(E’))/dTのグラフに極点となって明確に現れる。変曲点はCNT等の配合量を変えることによりわずかに異なる温度で現れる。
【0054】
次に、d(log(E’))/dTのグラフから流動が始まる前の融点未満の領域における傾きが一定の第1の領域W1の温度範囲を求め、その温度範囲におけるlog(E’
)のグラフの外挿接線L2と、変曲点P1におけるlog(E’)のグラフの接線L1との交点P2における温度を加工領域発現温度T2として求める。加工領域発現温度T2は、低温混練工程における混練加工が可能となる下限の温度である。
【0055】
さらに、d(log(E’))/dTのグラフからlog(E’)のグラフにおける傾きが一定の範囲を第2の領域W2とし、第2の領域W2の温度範囲におけるlog(E’)のグラフの外挿接線L3と、変曲点P1におけるlog(E’)のグラフの接線L1との交点P3の温度が平坦領域発現温度T3として求める。
【0056】
なお、傾きが一定である領域(W1,W2)は、log(E’)のグラフの傾きが一定になる領域が少なくとも10℃以上の温度範囲で存在するものとする。平坦領域は、第2の領域W2である。
【0057】
こうして得られた変曲点P1の温度T1より高い温度であって、かつ複合材料サンプルの粘度が低くなって流れ出さない程度の温度、例えば平坦領域発現温度T3の1.06倍(T3℃×1.06)の温度T4を混練温度の上限とする。平坦領域発現温度(T3℃)の1.06倍(T3℃×1.06)の温度T4までであれば、あらゆる熱可塑性樹脂でカーボンナノチューブのバンドルや凝集塊を解繊することができると考えられる。加工領域発現温度T2から平坦領域発現温度(T3℃)の1.06倍(T3℃×1.06)の温度T4までの温度範囲であれば、混合物は適度な弾性と適度な粘性とを有しているため、加工が可能であって、かつ、カーボンナノチューブを解繊することができる。
【0058】
低温混練工程の混練温度の下限は、変曲点P1における変曲点温度T1以上としてもよい。第2の混合物の加工がより容易になるからである。なお、カーボンナノチューブの配合量を変えることにより、温度T2及び温度T4はわずかに異なる温度となる。
【0059】
混練温度は、熱可塑性樹脂の加工温度として採用されない比較的低い温度であり、特に、混合物の加工温度としてはこれまで採用されなかった低い温度範囲となる。
【0060】
本発明において「融点(Tm)」は、示差走査熱量測定(DSC)を用いてJIS K7121に準拠して測定した値をいう。
【0061】
低温混練工程は、多価アルコールが全て揮発するとカーボンナノチューブの再凝集が起こりやすくなるため、カーボンナノチューブの解繊、分散が終わるまで多価アルコールを含んだ状態で行うことが望ましい。そのため、低温混練工程の混練温度の範囲は、多価アルコールの沸点未満であることが望ましい。
【0062】
第2混合工程に用いる熱可塑性樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメチルメタクリルレート(PMMA)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリウレタン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、フッ素樹脂(PFA)などを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上の樹脂を組み合わせて用いる場合には、それらの異なる樹脂の混合物又は異なる樹脂が溶融ブレンドしたもの又は共重合体として用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを選択することができる。熱可塑性樹脂の共重合体の例として一般的に熱可塑性エラストマーと呼ばれる樹脂を含むことができる。熱可塑性エラストマーとしては大きく分けてスチレン系(TPS:SBS(スチレンブチレンスチレンのブロ
ック共重合体)、SEBS(スチレンエチレンブチレンスチレン)、オレフィン系(TPO)、塩ビ系(TPVC)、ウレタン系(TPU)、エステル系(TPEE)、アミド系(TPAE)などを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
熱可塑性樹脂は、利用された後、廃棄されたプラスチックを再生させたリサイクルプラスチックであってもよい。例えば、食品容器、飲料容器、トレー等の廃プラスチックを選別、洗浄、粉砕し、ペレット化された熱可塑性樹脂を用いてもよい。リサイクルプラスチックは、ポリオレフィン系としてはポリオレフィン樹脂成分が80質量%以上であることができ、さらに90質量%以上であることができる。さらにその内の、主となる樹脂が50質量%以上であることができ、さらに70質量%以上であることができ、特に80質量%以上であることができる。
【0064】
熱可塑性樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で酸化防止剤、可塑剤、難燃剤等の公知の添加剤を配合してもよい。
【0065】
2.1.2.ゴム成分を用いる第2混合工程
高分子物質がゴム成分である場合の第2混合工程について詳細に説明する。
【0066】
第2混合工程は、ゴム成分100質量部に対してカーボンナノチューブが5.0質量部以上40.0質量部以下となるように、ゴム成分とカーボンナノチューブ含有組成物とが混合される。第2混合工程は、ゴム成分100質量部に対してカーボンナノチューブが5.0質量部以上35.0質量部以下であることができ、さらに、10.0質量部以上30.0質量部以下であることができる。
【0067】
第2混合工程に先立って、まず、図2に示すように、第1ロール10に巻き付けられた高分子物質(ここでは「ゴム成分」)30の素練りを行なってもよく、ゴム成分を適度に切断してフリーラジカルを生成する。素練りによって生成されたゴム成分のフリーラジカルがカーボンナノチューブと結びつきやすい状態となる。
【0068】
次に、第1ロール10に巻き付けられた高分子物質(ゴム成分)30のバンク34に、カーボンナノチューブ含有組成物80を投入し、混練する。この段階でゴム成分に用いる公知の添加剤をゴム成分に混合してもよい。
【0069】
さらに、第2混合工程として、ロール間隙dを、例えば0.5mm以下、より好ましくは0.0mmを超え0.5mm以下に設定し、カーボンナノチューブ含有組成物が混合された高分子物質30を薄通しする。薄通しの回数は、例えば1回〜10回程度行なうことができる。
【0070】
薄通しにおけるロールの表面速度比(V1/V2)は、1.05〜3.00であることができ、さらに1.05〜1.2であることが好ましい。このような表面速度比を用いることにより、所望の剪断力を得ることができる。
【0071】
この第2混合工程では、できるだけ高い剪断力を得るために、ロール温度を例えば0℃〜50℃、より好ましくは5℃〜40℃の比較的低い温度に設定して行われる。高分子物質(ゴム成分)30の実測温度も0℃〜50℃に調整されることができる。
【0072】
オープンロール2の狭いロール間から押し出された複合材料は、ゴム成分の弾性による復元力で大きく変形し、その際にゴム成分と共にカーボンナノチューブが大きく移動する。
【0073】
このようにして得られた剪断力により、ゴム成分に高い剪断力が作用し、凝集していたカーボンナノチューブがゴム分子に引き抜かれるように相互に分離して解繊し、ゴム成分中に分散される。特に、ゴム成分は、弾性と、粘性と、カーボンナノチューブとの化学的相互作用と、を有するため、カーボンナノチューブを容易に分散することができる。そして、カーボンナノチューブの分散性および分散安定性(カーボンナノチューブが再凝集しにくいこと)に優れた複合材料を得ることができる。
【0074】
より具体的には、オープンロールでゴム成分とカーボンナノチューブとを混合すると、粘性を有するゴム成分がカーボンナノチューブの相互に侵入し、かつ、ゴム成分の特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノチューブの活性の高い部分と結合する。カーボンナノチューブの表面の活性が適度に高いと、特にゴム成分分子と結合し易くなることができる。次に、ゴム成分に強い剪断力が作用すると、ゴム成分分子の移動に伴ってカーボンナノチューブも移動し、さらに剪断後の弾性によるゴム成分の復元力によって、凝集していたカーボンナノチューブが分離されて、ゴム成分中に分散されることになる。
【0075】
薄通しは、ゴム成分にカーボンナノチューブを剪断力によって解繊させることができれば、前記オープンロール法に限定されず、密閉式混練法あるいは多軸押出し混練法を用いることもできる。要するに、この工程では、凝集したカーボンナノチューブを分離して解繊できる剪断力をゴム成分に与えることができればよい。特に、オープンロール法は、ロール温度の管理だけでなく、混合物の実際の温度を測定し管理することができるため、好ましい。なお、オープンロール法以外の場合には、混練中の混合物の温度を前記のロールの温度範囲とすることが適切な剪断力を得るために好ましい。
【0076】
薄通しして得られた複合材料は、ロールで圧延されて所定厚さのシート状に分出しされる。
【0077】
第2混合工程に用いるゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FFKM、FEPMなど)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、ウレタンゴム(U)、ポリスルフィドゴム(T)などを採用できる。
【0078】
2.1.3.熱硬化性樹脂を用いる第2混合工程
高分子物質が熱硬化性樹脂である場合の第2混合工程について詳細に説明する。
【0079】
第2混合工程は、熱硬化性樹脂の主剤にカーボンナノチューブ含有組成物を混合し、主剤の軟化点より20℃低い温度から軟化点より10℃高い温度までの範囲の混練温度で混練した後、さらに硬化剤を混合する工程を含むことができる。主剤の軟化点付近の温度であれば、完全に液体状になっておらず、試験結果によれば軟化点より20℃低い温度から軟化点より10℃高い温度までの範囲の混練温度において適度な弾性及び粘性を有することができる。
【0080】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂などの主剤および硬化剤を用いた2液混合型の樹脂を採用できるが、これに限られるものではない。
【0081】
混練工程は、例えば、オープンロール、密閉式混練機、押出機などを用いることができる。
【0082】
基本的な手順は熱可塑性樹脂の場合と同様であるが、ここでは、エポキシ樹脂の場合について、ビスフェノールA型主剤(室温では固形で軟化点64℃)を例に説明する。まず、図2の第1のロール10は60〜70℃及び第2のロール20は50〜60℃の温度として素練りを行う。次に主剤にカーボンナノチューブ含有組成物を徐々に投入し混合する。その後、薄通し工程を、例えば、ロール間隔dを0.0mmを超え0.5mm以下に設定して行うことができる。ロールの表面速度比は熱可塑性樹脂の場合と同様である。第2混合工程の薄通し工程は、主剤の適度な弾性と適度な粘性を利用してカーボンナノチューブを解繊する。
【0083】
主剤とカーボンナノチューブとの混練後、さらに、硬化剤(例えば、ポリアミドアミン)を添加して、再度、主剤の場合と同様の方法、条件で混錬し、硬化剤を均一に混合することができる。その後、成型(プレス加工、圧縮成型、押し出し成型等)を行い、例えば、室温で1日置いて硬化させ、その後、ポストベーク(80℃、15時間)を行い、複合材料を得ることができる。
【0084】
2.1.4.複合材料(前駆体)
第2混合工程により得られる複合材料は、高分子物質中にカーボンナノチューブが解繊した状態で分散している。第2混合工程により得られる複合材料は、最大幅が1μm以上のカーボンナノチューブのバンドル又は凝集塊を含まないことができる。
【0085】
一般に、カーボンナノチューブを解繊する処理を施さなければ、単層カーボンナノチューブは、複数本が束になってバンドルを形成する。また、多層カーボンナノチューブの場合も、繊維が絡まり合って毛玉状の凝集塊を形成する。単層カーボンナノチューブを用いた複合材料は最大幅が1μm以上のバンドルがなく、また、多層カーボンナノチューブを用いた複合材料は最大幅が1μm以上の凝集塊がない。バンドルにおける最大幅は、顕微鏡による観察面において、束になった繊維の長手方向に直交する方向の幅の最大値である。凝集塊における最大幅は、顕微鏡による観察面における塊りの幅の最大値である。
【0086】
第2混合工程により得られる複合材料は、熱可塑性樹脂中又はゴム成分中に平均直径が0.4nm〜15.0nmのカーボンナノチューブを含む複合材料であることができる。当該複合材料は、高分子物質である熱可塑性樹脂100質量部又はゴム成分100質量部に対して、カーボンナノチューブを5.0質量部以上40.0質量部以下含む。
【0087】
2.2.第3混合工程
第3混合工程は、第2工程で得られる複合材料を「前駆体」として、さらに当該前駆体を高分子物質と混合して複合材料を得ることができる。第3混合工程では、第2混合工程における高分子物質を第1高分子物質と呼び、第3混合工程における高分子物質を第2高分子物質と呼ぶ。なお、第1高分子物質と第2高分子物質とは、同じ種類の高分子物質でもよいし、異なる種類の高分子物質でもよい。
【0088】
第3混合工程は、前駆体を第2高分子物質と混合し、複合材料におけるカーボンナノチューブの濃度を調整することができる。第3混合工程は、第2混合工程と同様に、第2高分子物質に高いせん断力を与え、第2高分子物質の弾性による復元力を利用してカーボンナノチューブを解繊し第2高分子物質中に分散させた複合材料を製造することができる。すなわち、第3混合工程は、図3に示すように、図2の高分子物質30の代わりに前駆体32を用いて、カーボンナノチューブ含有組成物80の代わりに第2高分子物質31を用いることで混練りを行う。したがって、第3混合工程の説明では、第2混合工程と重複する説明は省略する。
【0089】
第2高分子物質としては、第2混合工程で挙げた熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム成
分の中から少なくとも一種以上を選択することができる。
【0090】
2.2.1.熱可塑性樹脂を用いる第3混合工程
第1高分子物質及び第2高分子物質が熱可塑性樹脂である場合の第3混合工程について説明する。
【0091】
第3混合工程は、前駆体における多価アルコールの含有量が熱可塑性樹脂100質量部に対して400.0質量部未満であり、複合材料におけるカーボンナノチューブの含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上15.0質量部以下であることができる。第3混合工程は、多価アルコールが400.0質量部未満であれば、加工が可能である。第3混合工程で第2高分子物質により複合材料におけるカーボンナノチューブの含有量を下げることができるため、複合材料の用途に応じて適切なカーボンナノチューブの含有量を設定することができる。
【0092】
2.2.2.ゴム成分を用いる第3混合工程
第1高分子物質及び第2高分子物質がゴム成分である場合の第3混合工程について説明する。
【0093】
第3混合工程は、前駆体における多価アルコールの含有量がゴム成分100質量部に対して200.0質量部以下であり、複合材料におけるカーボンナノチューブの含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上30.0質量部以下であることができる。第3混合工程は、多価アルコールが200.0質量部以下であれば、加工が可能である。第3混合工程で第2高分子物質により複合材料におけるカーボンナノチューブの含有量を下げることができるため、複合材料の用途に応じて適切なカーボンナノチューブの含有量を設定することができる。
【0094】
3.複合材料
3.1.熱可塑性樹脂を用いた複合材料
第3混合工程によって得られる複合材料は、熱可塑性樹脂中に平均直径が0.4nm〜15.0nmのカーボンナノチューブを含む複合材料である。当該複合材料は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、カーボンナノチューブを0.1質量部以上40.0質量部以下含む。当該複合材料は、熱可塑性樹脂を平均直径の細いカーボンナノチューブを用いて補強し、最大幅が1μm以上の前記カーボンナノチューブのバンドル又は凝集塊を含まない。
【0095】
第2混合工程又は第3混合工程によって得られる複合材料は、JIS K 6251に準拠して測定した破断伸びの変動係数(標準偏差/平均値)が0.4以下であり、かつ、熱可塑性樹脂単体における破断伸びに対する破断伸びの変化率が−99.0%以上であることができる。ここでいう「変動係数」とは、標準偏差(σ)を算術平均(x)で除して[CV=(σ/x)]であらわされるもので、相対的なばらつきを表す単位のない数である。破断伸びの変動係数CVを算出する際のサンプル数(n)は、少なくとも5以上であることが望ましい。
【0096】
また、第2混合工程又は第3混合工程によって得られる複合材料は、JIS K 6251に準拠して測定した引張試験において降伏現象を示し、かつ、熱可塑性樹脂単体における降伏応力に対する複合材料における降伏応力の変化率が1.0%以上であることができる。
【0097】
また、第2混合工程又は第3混合工程によって得られる複合材料は、動的ひずみ±0.05%、周波数1HzでJIS K 7244に準拠した動的粘弾性試験における室温で
の前記複合材料の貯蔵弾性率(E’)が、前記熱可塑性樹脂単体における同試験の貯蔵弾性率(E’)よりも0.5%以上大きくてもよい。
【0098】
また、高分子物質として熱可塑性樹脂を用いた第2混合工程又は第3混合工程によって得られる複合材料は、熱可塑性樹脂の融点以上(融点を有しない熱可塑性樹脂の場合にはガラス転移点以上)の温度に加熱した複合材料が直径0.2mmのノズルから押出することが可能であることができる。複合材料が直径0.2mmのノズルから押し出すことができれば、複合材料を原料に射出成形や押出成形してカーボンナノチューブで補強された製品を成形することができる。
【0099】
3.2.ゴム成分を用いた複合材料
第3混合工程によって得られる複合材料は、ゴム成分中に平均直径が0.4nm〜15.0nmのカーボンナノチューブを含む複合材料である。当該複合材料は、ゴム成分100質量部に対して、カーボンナノチューブを0.1質量部以上40.0質量部未満含む。当該複合材料は、最大幅が1μm以上の前記カーボンナノチューブのバンドル又は凝集塊を含まない。
【0100】
複合材料は、ゴム成分を平均直径の細いカーボンナノチューブを用いて補強し、しかも最大幅が1μm以上のカーボンナノチューブのバンドル又は凝集塊がない。また、複合材料は、細いカーボンナノチューブが解繊されてゴム成分中に分散することにより、疲労耐久性に優れることができる。
【0101】
複合材料は、架橋剤が添加されて、所望形状のゴム製品に架橋成型することができる。
【0102】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【実施例】
【0103】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0104】
(A)実施例1〜12のサンプルの作製
(A−1)第1混合工程
第1混合工程として、表の「CNT含有組成物の配合」の欄に示す配合に従って、容器内にカーボンナノチューブ(表では「CNT−1」〜「CNT−3」)と多価アルコール(表では「DEG」)とを入れてスパチュラで混合して混合物を得た。当該混合物を、オープンロール(二本ロール)に投入し、10分間混練りしてカーボンナノチューブ含有組成物(表では「CNT含有組成物」)を得た。オープンロールは、ロール温度が23℃、ロール間隔が0.1mmに設定され、ロール速度比が1.1に設定された。表の「CNT含有組成物の配合」の欄では、カーボンナノチューブと多価アルコールの質量比で示すため、カーボンナノチューブの配合量を1質量部としたときの多価アルコールの質量部を記載した。第1混合工程を実施した実施例には、表の「第1混合工程」の欄に「〇」を記入した。なお、第1混合工程〜第3混合工程におけるロール間隔は設定値であるため、実際の混練ではわずかにロール間隔が変動することがあるが、実測値としては0.2mm程度であった。
【0105】
(A−2)第2混合工程
第2混合工程として、表の「前駆体の配合」の欄に示す配合に従って、熱可塑性樹脂をオープンロールに巻き付け、第1混合工程で得られたカーボンナノチューブ含有組成物を徐々に投入し、混練して中間混合物を得て、さらに中間混合物を複数回薄通し(ロール温度が160℃、ロール間隔0.1mm、ロール速度比1.1)して前駆体を得た。さらにロール間隔を広げた160℃のオープンロールで前駆体を10分間混練りして、前駆体に含まれる多価アルコールを蒸発させた。第2混合工程を実施した実施例には、表の「第2混合工程」の欄に「〇」を記入した。多価アルコールの除去工程においては一般的な乾燥炉等を用いることもできる。
【0106】
第2混合工程における混練温度は、上述の通りDMA試験を行い、例えば実施例1の試験結果について説明すると、図4のように横軸は温度、左側の縦軸は貯蔵弾性率(E’)の対数の値(log(E’))、右側の縦軸は貯蔵弾性率(E’)の対数の値(log(E’))の温度による微分値(d(log(E’))/dT)としてグラフを作成し、加工領域発現温度T2〜温度T4を求めて設定した。具体的には図4のlog(E’)のグラフは162℃(温度T1)に変曲点P1を有していた。次に、d(log(E’))/dTのグラフから傾きが一定の第1の領域W1の温度範囲を求め、log(E’)のグラフの外挿接線L2と、変曲点P1におけるlog(E’)のグラフの接線L1との交点P2における温度を加工領域発現温度T2(148℃)として求めた。さらにd(log(E’))/dTのグラフから傾きが一定の範囲を第2の領域W2としてこれに対応するlog(E’)の外挿接線L3と、変曲点P1におけるlog(E’)のグラフの接線L1との交点P3の温度を平坦領域発現温度T3(168℃)として求めた。実施例1の前駆体サンプルの平坦領域発現温度T3の1.06倍(T3℃×1.06)の温度T4(178℃)を混練温度の上限とした。
【0107】
図4で求めた温度T1〜温度T4の結果から実施例1〜12の第2混合工程における混練温度を160℃に設定することでいずれの配合においても温度T2〜温度T4の範囲に入ることがわかったため、実施例1〜実施例12における第1混合工程の混練温度は、160℃とした。
【0108】
(A−3)第3混合工程
第3混合工程として、表の「複合材料の配合」の欄に示す配合に従って、熱可塑性樹脂をオープンロールに巻き付け、第2混合工程で得られた前駆体を徐々に投入し、混練して中間混合物を得て、さらに中間混合物を複数回薄通し(ロール温度が160℃、ロール間隔0.1mm、ロール速度比1.1)して複合材料を得た。実施例1,6,8,10の前駆体については、第3混合工程を実施しなかった。第3混合工程を実施した実施例には、表の「第3混合工程」の欄に「〇」を記入した。
【0109】
表1〜表8(表9〜表12においても同様である)において、
「CNT−1」:平均直径(走査型電子顕微鏡の撮像を用いて200か所以上の測定値を算術平均した値であり、以下同じ。)5.0nm(カタログ値では3nm〜5nm)の単層カーボンナノチューブ(ゼオンナノテクノロジーズ社製、グレード名:SG101)、「CNT−2」:平均直径2.1nm(カタログ値では1.5nm)の単層カーボンナノチューブ(OCSiAl社製、グレード名:TUBALL)、
「CNT−3」:平均直径10nm(カタログ値は9.5nm)の多層カーボンナノチューブ(Nanocyl社製、グレード名:NC7000)、
「DEG」:和光純薬工業社製、ジエチレングリコール、特級、
「PP」:プライムポリマー社製ポリプロピレンの「F−300SP」であり、融点が165℃であった。
【0110】
表1〜表8において、複合材料及び前駆体中におけるカーボンナノチューブの配合量は
、熱可塑性樹脂(PP)を100質量部(phr)としたときのカーボンナノチューブの質量部を示した。なお、特に断らない限り表9〜表12の各原料の配合量の記載も表1〜表8と同様である。
【0111】
成型工程:実施例1,6,8,10の前駆体及び実施例2〜5,7,9,11,12の複合材料を、220℃で熱プレスしてシート状に成型した。成型したシートから各試験片を切り抜いた。
【0112】
(B)比較例1〜比較例22のサンプルの作製
比較例1は、原料のPPのペレットを加熱したオープンロールにて160℃で混練り後、220℃で熱プレスしてシート状に成型した。成型したシートから各試験片を切り抜いた。
【0113】
比較例2〜5は、原料のPPのペレットを160℃に加熱したオープンロールに巻き付けて、表に示す種類のカーボンナノチューブを投入して混練した後、ロール間隔を0.1mmに変更し薄通して混合物を取り出した。オープンロールから取り出した混合物を比較例1と同様に熱プレスして試験片を得た。
【0114】
比較例6〜8は、比較例5の複合材料を160℃に加熱したオープンロールに巻き付けて、表に示す「複合材料の配合」になるようにPPのペレットを投入して混練した後、ロール間隔を0.1mmに変更し薄通して混合物を取り出した。オープンロールから取り出した混合物を比較例1と同様に熱プレスして試験片を得た。
【0115】
比較例9は、ロール温度23℃、ロール間隔0.1mm、及びロール速度比1.1に設定されたオープンロールにカーボンナノチューブを投入して解砕した。次に、原料のPPのペレットを160℃に加熱したオープンロールに巻き付けて、表に示す種類のカーボンナノチューブ20質量部を投入して混練した後、ロール間隔を0.1mmに変更して薄通して混合物を取り出した。オープンロールから取り出した混合物を比較例1と同様に熱プレスして試験片を得た。
【0116】
比較例10は、比較例9で得られた混合物を160℃に加熱したオープンロールに巻き付けて、表の「複合材料の配合」欄の配合量になるようにPPペレットを投入して混練した後、ロール間隔を0.1mmに変更して薄通して混合物を取り出した。オープンロールから取り出した混合物を比較例1と同様に熱プレスして試験片を得た。
【0117】
比較例11は、表の「CNT含有組成物の配合」に従って、容器にカーボンナノチューブと多価アルコールを入れてスパチュラで混合した。次に、原料のPPのペレットを160℃に加熱したオープンロールに巻き付けて、表の「前駆体の配合」に示す種類のカーボンナノチューブ20質量部を投入して混練した後、ロール間隔を0.1mmに変更して薄通して混合物を取り出した。オープンロールから取り出した混合物を比較例1と同様に熱プレスして試験片を得た。
【0118】
比較例12は、比較例11で多価アルコールを蒸発させた混合物を160℃に加熱したオープンロールに巻き付け、表の「複合材料の配合」欄の配合量になるようにPPペレットを投入して混練した後、ロール間隔を0.1mmに変更して薄通して混合物を取り出した。オープンロールから取り出した混合物を比較例1と同様に熱プレスして試験片を得た。
【0119】
比較例13は、表の「CNT含有組成物の配合」に従って、実施例1と同様の工程によりカーボンナノチューブ含有組成物を得た。次に、原料のPPのペレットを160℃に加
熱したオープンロールに巻き付けて、表の「前駆体の配合」に示す種類のカーボンナノチューブ20質量部を投入して混練して混合物(薄通しをしていない)を取り出した。さらにロール間隔が1.0mm、160℃のオープンロールで混合物を10分間混練りして、混合物に含まれる多価アルコールを蒸発させた。オープンロールから取り出した混合物を比較例1と同様に熱プレスして試験片を得た。
【0120】
比較例14は、比較例13で多価アルコールを蒸発させた混合物を160℃に加熱したオープンロールに巻き付け、表の「複合材料の配合」欄の配合量になるようにPPペレットを投入して混練した後、ロール間隔を0.1mmに変更して薄通して混合物を取り出した。オープンロールから取り出した混合物を比較例1と同様に熱プレスして試験片を得た。
【0121】
比較例15は、表の「CNT含有組成物の配合」に従って、実施例1と同様の工程によりカーボンナノチューブ含有組成物を得た。次に、原料のPPのペレットを160℃に加熱したオープンロールに巻き付けて、表の「前駆体の配合」に示す配合でカーボンナノチューブ含有組成物を投入して混練した後、ロール間隔を0.1mmに変更して薄通して混合物を取り出した。さらにロール間隔を広げた160℃のオープンロールで混合物を10分間混練りして、混合物に含まれる多価アルコールを蒸発させた。オープンロールから取り出した混合物を比較例1と同様に熱プレスして試験片を得た。
【0122】
比較例16は、比較例15で多価アルコールを蒸発させた混合物を160℃に加熱したオープンロールに巻き付け、表の「複合材料の配合」欄の配合量になるようにPPペレットを投入して混練した後、ロール間隔を0.1mmに変更して薄通して混合物を取り出した。オープンロールから取り出した混合物を比較例1と同様に熱プレスして試験片を得た。
【0123】
比較例17は、表の「CNT含有組成物の配合」に従って、実施例1と同様の工程によりカーボンナノチューブ含有組成物を得た。次に、原料のPPのペレットを160℃に加熱したオープンロールに巻き付けて、表の「前駆体の配合」に示す配合でカーボンナノチューブ含有組成物を投入して混練して混合物(薄通しをしていない)を取り出した。さらにロール間隔1.0mm、160℃のオープンロールで混合物を10分間混練りして、混合物に含まれる多価アルコールを蒸発させた。オープンロールから取り出した混合物を比較例1と同様に熱プレスして試験片を得た。
【0124】
比較例18は、比較例17で多価アルコールを蒸発させた混合物を160℃に加熱したオープンロールに巻き付け、表の「複合材料の配合」欄の配合量になるようにPPペレットを投入して混練した後、ロール間隔を0.1mmに変更して薄通して混合物を取り出した。オープンロールから取り出した混合物を比較例1と同様に熱プレスして試験片を得た。
【0125】
比較例19は、比較例1と全く同じ試験片である。
【0126】
比較例20は、表の「複合材料の配合」に従って、比較例2〜4と同様の工程により、試験片を得た。比較例20では、「CNT−1」に替えて「CNT−2」を配合した。
【0127】
比較例21及び比較例22は、表の「複合材料の配合」に従って、比較例2〜4と同様の工程により、試験片を得た。比較例21及び比較例22では、「CNT−1」に替えて「CNT−3」を配合した。
【0128】
(C)評価方法
(C−1)引張試験
実施例及び比較例のサンプルについて、JIS K7161 1BAのダンベル試験片について、島津製作所社製オートグラフAG−Xの引張試験機を用いて、23±2℃、標準線間距離25mm、引張速度50mm/minでJIS K7161に基づいて引張試験を行い、引張強さ(TS(MPa))、切断時伸び(Eb(%))、及び引張降伏応力(σy(MPa))を測定し、n数=5の平均値を表1〜表8に示した。さらに、この平均値から破断伸びの変動係数(「Eb変動係数」)を求めて、その値を表1〜表8の「Eb変動係数」の欄にそれぞれ示した。また、各実施例の破断伸びの平均値からマトリックスとなる熱可塑性樹脂単体(比較例1)の破断伸びの平均値(813%)を減算して得られた値を、熱可塑性樹脂単体の破断伸びの平均値で除算し、その値を表1〜表8の「Eb変化率」の欄にそれぞれ示した。また、各実施例の引張降伏応力の平均値からマトリックスとなる熱可塑性樹脂単体の引張降伏応力の平均値(25.9MPa)を減算して得られた値を、熱可塑性樹脂単体の引張降伏応力の平均値で除算し、その値を表1〜表8の「σy変化率」の欄にそれぞれ示した。なお、第3工程を行わない実施例1,6,8,10及び比較例9,11,13,15,17のサンプルについては引張試験を実施しなかった。
【0129】
(C−2)DMA試験
実施例及び比較例のサンプルについて、短冊形(40×4×プレスシート厚みmm)に切り出した試験片について、日立ハイテクサイエンス社製の動的粘弾性試験機DMS7100を用いて、チャック間距離20mm、測定温度―60〜400℃、昇温ペース1.5℃、動的ひずみ±0.05%、周波数1HzでJIS K 7244に基づいてDMA試験(動的粘弾性試験)を行い、貯蔵弾性率(E’)を測定した。
【0130】
DMA試験結果から測定温度が25℃における貯蔵弾性率(E’)を測定し、n数=5の平均値を表1〜表8に示した。さらに、この平均値から貯蔵弾性率(E’)の変動係数(「E’変動係数」)を求めた。さらに、この平均値から貯蔵弾性率(E’)の変動係数(「E’変動係数」)を求めて、その値を表1〜表8の「E’変動係数」の欄にそれぞれ示した。また、25℃における貯蔵弾性率の平均値について、各実施例の平均値をマトリックスとなる熱可塑性樹脂単体(比較例1)の平均値(1.95GPa)で除算し、その値を表1〜表8の「E’変化率」の欄に示した。なお、第3工程を行わない実施例1,6,8,10及び比較例9,11,13,15,17のサンプルについてはDMA試験を実施しなかった。
【0131】
(C−3)解繊性の評価
実施例及び比較例の厚さ0.5mm〜0.8mmに成形したシート状のサンプルについて、上記複合材における解繊性の評価を行った。光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で各サンプルを観察した。走査型電子顕微鏡観察においてはシート状サンプルを液体窒素にて冷却、割断したときの割断面を観察した。評価結果(「なし」は最大幅が1μm以上のバンドル又は凝集塊なし、「あり」は最大幅が1μm以上のバンドル又は凝集塊ありとした)を表1〜表8に示した。また、「なし」のサンプルとして図5に実施例2の低倍率の光学顕微鏡写真、図6に実施例11の低倍率の光学顕微鏡写真、図10に実施例5の電子顕微鏡写真を示し、「あり」のサンプルとして、図7に比較例2の低倍率の光学顕微鏡写真、図8に比較例6の低倍率の光学顕微鏡写真、図9に比較例20の低倍率の光学顕微鏡写真、図11に比較例4の電子顕微鏡写真、図12に比較例8の電子顕微鏡写真を示した。図7〜図9における黒い部分が凝集塊であり、図11における破線の楕円で囲んだ中に最大幅32μmのバンドルがあり、図12における破線の楕円で囲んだ中に最大幅5μmのバンドルがある。
【0132】
(C−4)押出成形性の評価
実施例及び比較例のサンプルについて、押出成形機を用いて直径2mmのノズルから押
し出すことが可能か否かで押出成形性の評価を行った。押出時のノズル温度は、熱プレスと同じ220℃とした。評価結果として、押出成形できた場合は「可」、押出成形できなかった場合は「不可」と表1〜表8に示した。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
【0137】
【表5】
【0138】
【表6】
【0139】
【表7】
【0140】
【表8】
【0141】
(D)評価
実施例1〜実施例12のサンプルには、最大幅が1μm以上のカーボンナノチューブのバンドル及び凝集塊がなかった。これに対し、比較例2〜18及び比較例20〜22のサンプルには、最大幅が1μm以上のカーボンナノチューブのバンドルがあった。
【0142】
また、実施例1〜実施例12のサンプルは、直径0.2mmのノズルから押出することができた。
【0143】
実施例1〜実施例12のサンプルは、破断伸びの変動係数(標準偏差/平均値)が0.4以下であり、かつ、熱可塑性樹脂単体(比較例1,19)における破断伸びに対する前記破断伸びの変化率が−99.0%以上であった。これに対し、比較例1〜22のサンプルは、破断伸びの変動係数及び破断伸びの変化率の両方を満たすものはなかった。
【0144】
実施例1〜実施例12のサンプルは、動的粘弾性試験における室温での複合材料の貯蔵弾性率(E’)が、熱可塑性樹脂単体(比較例1,19)における同試験の貯蔵弾性率(E’)よりも0.5%以上大きかった。
【0145】
実施例1〜実施例12のサンプルは、引張試験において降伏現象を示し、かつ、熱可塑性樹脂単体(比較例1,19)における降伏応力に対する複合材料における降伏応力の変化率が1.0%以上であった。
【0146】
(E)実施例13〜19及び比較例23〜29のサンプルの作製
実施例13は、表の「CNT含有組成物の配合」及び「前駆体の配合」に従って、実施例1と同様の第1混合工程及び第2混合工程を実施して前駆体を得た。さらにこの試験片を用いて実施例1と同様に成型工程を実施して試験片を得た。なお、実施例13〜17及び比較例23〜27における第2混合工程及び第3混合工程におけるロール温度は、あらかじめ実施したDMA試験により求めた温度T3と温度T4との間の130℃に設定し、
成型工程の金型温度は180℃に設定した。
【0147】
実施例14及び実施例15は、表の「複合材料の配合」に従って、実施例13の前駆体を用いて実施例2と同様に第3混合工程を実施して複合材料を得た。さらに、各実施例の複合材料を用いて実施例2と同様に成型工程を実施して試験片を得た。
【0148】
比較例23は、原料のPEのペレットを加熱したオープンロールにて130℃で混練り後、180℃で熱プレスして試験片を得た。
【0149】
比較例24,25は、原料のPEのペレットを130℃に加熱したオープンロールに巻き付けて、表に示す種類のカーボンナノチューブを投入して混練した後、ロール間隔を0.1mmに変更し薄通して混合物を取り出した。オープンロールから取り出した混合物を比較例23と同様に熱プレスして試験片を得た。
【0150】
実施例16は、表の「CNT含有組成物の配合」及び「前駆体の配合」に従って、実施例1と同様の第1混合工程及び第2混合工程を実施して前駆体を得た。さらにこの試験片を用いて実施例1と同様に成型工程を実施して試験片を得た。
【0151】
実施例17は、表の「複合材料の配合」に従って、実施例16の前駆体を用いて実施例2と同様に第3混合工程を実施して複合材料を得た。さらに、実施例17の複合材料を用いて実施例2と同様に成型工程を実施して試験片を得た。
【0152】
比較例26は、原料のRe−PEのペレットを加熱したオープンロールにて130℃で混練り後、180℃で熱プレスして試験片を得た。
【0153】
比較例27は、原料のRe−PEのペレットを130℃に加熱したオープンロールに巻き付けて、表に示す種類のカーボンナノチューブを投入して混練した後、ロール間隔を0.1mmに変更し薄通して混合物を取り出した。オープンロールから取り出した混合物を比較例26と同様に熱プレスして試験片を得た。
【0154】
実施例18は、表の「CNT含有組成物の配合」及び「前駆体の配合」に従って、実施例1と同様の第1混合工程及び第2混合工程を実施して前駆体を得た。さらにこの試験片を用いて実施例1と同様に成型工程を実施して試験片を得た。なお、実施例18,19及び比較例28,29における第2混合工程及び第3混合工程におけるロール温度は、あらかじめ実施したDMA試験により求めた温度T3と温度T4との間の170℃に設定し、成型工程の金型温度は220℃に設定した。
【0155】
実施例19は、表の「複合材料の配合」に従って、実施例18の前駆体を用いて実施例2と同様に第3混合工程を実施して複合材料を得た。さらに、実施例19の複合材料を用いて実施例2と同様に成型工程を実施して試験片を得た。
【0156】
比較例28は、原料のRe−PPのペレットを加熱したオープンロールにて170℃で混練り後、220℃で熱プレスして試験片を得た。
【0157】
比較例29は、原料のRe−PPのペレットを170℃に加熱したオープンロールに巻き付けて、表に示す種類のカーボンナノチューブを投入して混練した後、ロール間隔を0.1mmに変更し薄通して混合物を取り出した。オープンロールから取り出した混合物を比較例28と同様に熱プレスして試験片を得た。
【0158】
表9〜表11において、
「LLDPE」:Eastern Petrochemical Company製、直鎖状低密度ポリエチレンQAMAR FC21HS、融点122℃、
「Re−PE」:融点が131℃、樹脂成分の90質量%がポリエチレンとポリプロピレン成分であり、かつその内、80質量%がポリエチレンであるリサイクルプラスチック(富山環境整備社にて選別、ペレット化した材料)、
「Re−PP」:融点が163℃、樹脂成分の90質量%がポリエチレンとポリプロピレン成分であり、かつその内、82質量%がポリプロピレンであるリサイクルプラスチック(富山環境整備社にて選別、ペレット化した材料)、
であった。
【0159】
各サンプルの評価は、上記「(C)評価方法」に従って評価し、評価結果を表9〜表11に示した。
【0160】
【表9】
【0161】
【表10】
【0162】
【表11】
【0163】
(F)評価
実施例13〜実施例19のサンプルには、最大幅が1μm以上のカーボンナノチューブのバンドル及び凝集塊がなかった。これに対し、比較例24,25,27,29のサンプルには、最大幅が1μm以上のカーボンナノチューブのバンドルがあった。
【0164】
また、実施例14,15,17,19のサンプルは、直径0.2mmのノズルから押出することができた。
【0165】
実施例14,15,17,19のサンプルは、破断伸びの変動係数(標準偏差/平均値)が0.4以下であり、かつ、熱可塑性樹脂単体における破断伸びに対する前記破断伸びの変化率が−99.0%以上であった。これに対し、比較例23〜29のサンプルは、破断伸びの変動係数及び破断伸びの変化率の両方を満たすものはなかった。
【0166】
実施例14,15,17,19のサンプルは、動的粘弾性試験における室温での複合材料の貯蔵弾性率(E’)が、熱可塑性樹脂単体における同試験の貯蔵弾性率(E’)よりも0.5%以上大きかった。
【0167】
実施例14,15,17,19のサンプルは、引張試験において降伏現象を示し、かつ、熱可塑性樹脂単体における降伏応力に対する複合材料における降伏応力の変化率が1.0%以上であった。
【0168】
(G)実施例20,21及び比較例30,31のサンプルの作製
実施例20のサンプルは、まず、表の「CNT含有組成物の配合」に従って、実施例1と同様の第1混合工程を実施してカーボンナノチューブ含有組成物を得た。次に、第2混合工程として、表の「前駆体の配合」の欄に示す配合に従って、ゴム成分としてNBRをオープンロールに巻き付け、第1混合工程で得られたカーボンナノチューブ含有組成物をNBRに徐々に投入し、5回薄通し(ロール温度が30℃、ロール間隔0.1mm、ロール速度比1.1)して前駆体を得た。さらに、実施例21のサンプルは、第3混合工程として、表の「複合材料の配合」の欄に示す配合に従って、NBRと第2混合工程で得られた前駆体をオープンロールに巻き付けた後、混練して中間混合物を得て、さらに中間混合物を複数回薄通し(ロール温度が30℃、ロール間隔0.1mm、ロール速度比1.1)して複合材料を得た。こうして得られた複合材料を真空乾燥(120℃、8時間)して複合材料から多価アルコールを蒸発させた。さらに、実施例21の複合材料に架橋剤3.2質量部を加えて混練りし、165℃、30分間で架橋して、架橋した複合材料から試験片を切り出した。
【0169】
比較例30のサンプルは、NBRに架橋剤3.2質量部を加えて混練りし、165℃、30分間で架橋して、架橋されたNBRから試験片を切り出した。
【0170】
比較例31のサンプルは、表の「CNT含有組成物の配合」に従って、オープンロールに巻き付けたNBRにカーボンナノチューブを投入して室温で混合し、さらに架橋剤3.2質量部を投入して165℃、30分間で架橋して、架橋した複合材料から試験片を切り出した。
【0171】
表12において、「NBR」:カルボキシ変性アクリロニトリルブタジエンゴム、日本ゼオン社製 Nipol NX775、アクリルニトリル量26.7%であった。
【0172】
各サンプルの評価は、「押出成形性」を除いて上記「(C)評価方法」に従って評価し、評価結果を表12に示した。
【0173】
【表12】
【0174】
(H)評価
実施例20,21のサンプルには、最大幅が1μm以上のカーボンナノチューブのバンドル又は凝集塊がなかった。これに対し、比較例31のサンプルには、最大幅が1μm以上のカーボンナノチューブのバンドルがあった。
【0175】
実施例21のサンプルは、破断伸びの変動係数(標準偏差/平均値)が0.4以下であり、かつ、ゴム成分単体における破断伸びに対する前記破断伸びの変化率が−99.0%以上であった。これに対し、比較例31のサンプルは、破断伸びの変動係数及び破断伸びの変化率の両方を満たすものはなかった。
【符号の説明】
【0176】
2…オープンロール、10…第1ロール、20…第2ロール、30…高分子物質、31…第2高分子物質、32…前駆体、34…バンク、40…非接触温度計、80…カーボンナノチューブ含有組成物
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】