該接着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、スチレンブタジエンゴム系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、シリコーンゴム系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、デンプン系接着剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載のグレーズ材キット。
【背景技術】
【0002】
セラミックス材料の歯科用補綴物(例えば、被覆冠、歯冠、クラウン、差し歯等)における基材としては、酸化ジルコニウム(ジルコニア)や酸化アルミニウム(アルミナ)、長石系ガラス、二ケイ酸ガラス等が使用されている。最近では、これらの素材を歯科用CAD/CAMシステムを用いて加工し、歯科用補綴物として使用する機会が増えており、特にジルコニアについては使用される頻度が高くなっている。従来、ジルコニアの強度的な優位性は知られていたが、長石系ガラス、二ケイ酸ガラス等は天然歯とほぼ同等の透明性であったのに対し、ジルコニアはそれらに比べて不透明であった。しかし、近年はジルコニアの透明性がそれらに近づいてきており、強度的な優位性を含めて臨床での評価が高まっている。
【0003】
歯科用補綴物は、口腔内に装着される前に必ずその表面を艶出し作業によって仕上げる必要がある。これは天然歯表面が滑沢であることから、歯科用補綴物表面の状態を同じ艶状態に合わせることで、周囲の天然歯に馴染みやすいことと、艶のない粗造面のままの歯科用補綴物によって口腔内の周囲組織を傷つけないことを目的とするものである。
【0004】
歯科用補綴物の一般的な艶出し手法の一つとして、基材たる歯科用補綴物の表面を機械的に研磨する方法がある。長石系ガラス、二ケイ酸ガラス等は一般的な歯科用研磨材を用いて磨くことができる程度の硬さである。一方、ジルコニアについてはそれらよりも非常に硬い素材であることが知られており、磨く場合はダイヤモンド砥粒の入った高価な歯科用研磨材を使用する必要がある。また、天然歯の表面を覆うエナメル質は長石系ガラス、二ケイ酸ガラス等と屈折率が近いため、研磨後の光学特性として口腔内で調和しやすい。一方、ジルコニアについては屈折率が天然歯エナメル質とは大きく離れているため、光学特性の違いから口腔内での光沢の不調和をきたすことがある。
【0005】
歯科用補綴物表面をガラスのグレーズ材によって覆う方法も一般的な艶出し手法の一つである。他にもレジンによって覆ったうえで重合して艶出しを行うこともあるが、一般的には焼成の必要なガラスが用いられる。これらの場合、基材がジルコニアであっても表面に屈折率の低いグレーズガラス層ができることから前記のような口腔内での光学特性的な不調和は起こりにくい。
基材が長石系ガラス、二ケイ酸ガラス等であれば、歯科用陶材焼成炉で、それぞれの素材の表面が溶ける温度付近で焼成を行うことで、その素材自体が光沢を発する(セルフグレーズする)ことが可能である。その際、特許文献1に記載されるように、グレーズ材を薄く塗布して使用することで基材である長石系ガラス、二ケイ酸ガラス等の変形を防ぐことができる。また、特許文献2に記載されるように、グレーズ材用のガラス粒子を細かくして低溶化することにより基材のセルフグレーズと相まって艶を出しやすくすることができる。
また、前記の通り、長石系ガラス、二ケイ酸ガラス等の基材では、基材の屈折率が天然歯エナメル質の屈折率と近いため、歯科用補綴物表面のグレーズガラス層が薄くなりすぎ、長石系ガラス、二ケイ酸ガラス等の一部が露出した状態すなわちグレーズガラス層自体から艶を得られない状態となったとしても、光学特性としては残存する天然歯や同じ素材の歯科用補綴物との調和が得られ、かつセルフグレーズとの相乗効果で歯科用補綴物の艶が不足する問題もおこらない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では透光性が高くなったジルコニアが開発され、強度的にも審美的にも歯科用補綴物の材料としてジルコニアが使用されることが多くなっている。
【0008】
一方で、ジルコニアの基材は長石系ガラス、二ケイ酸ガラス等の基材に比べて融点が非常に高く、最高でも1100〜1200℃で使用される一般的な歯科陶材用焼成炉で焼成を行っても、基材そのものにセルフグレーズの効果は得られないため、艶の相乗効果が得られない。また、歯科陶材用焼成炉の焼成温度でジルコニアの基材が変形することはなく、グレーズ陶材用ガラスの粒子を細かくして低溶化する必要はない。また、ジルコニアの基材は屈折率が極めて高く、そのままの状態、あるいは研磨を行った状態では天然歯のエナメル質との光学特性の差が大きく異なるため、口腔内では周囲に残存する天然歯や、長石系ガラス、二ケイ酸ガラス等の歯科用補綴物に対して口腔内において光学特性的に調和しにくい、という課題を持つ。
【0009】
上記の事情から、ジルコニアが歯科用補綴物の基材である場合は、表層を被覆するグレーズ材のみで歯科用補綴物に艶を付与しなければならない。また、ジルコニアの基材が露出しないよう歯科用補綴物の表面を厚く覆ったうえでグレーズ材が焼成できる温度で焼成を行う必要がある。
【0010】
グレーズ材の歯科用補綴物への被覆作業は、粒子の細かいガラスの粉状態の陶材を水、またはアルコールなどの塗布剤で練和してスラリー化し、それを筆で基材に塗布したのちに焼成するのが一般的である。歯科用補綴物は本来そこに存在していた形状に沿って作製され、前歯や臼歯といった部位ごとの違いの他、頬舌側・近遠心、咬合面のように極めて複雑な形状であるため、その形状に沿ってスラリーを厚く塗布し、グレーズ材の層を厚くする必要がある。
【0011】
一方で、ただ厚くすればよいわけでは無く、グレーズ材の厚みが不均一だと、歯科用補綴物周囲の歯との位置関係がずれてしまい、かみ合わせが悪くなるなどの支障をきたすほか、かみ合わせる反対側の歯に対しても異常接触から歯列全体のバランスが崩れる咬合崩壊につながり、顎関節に対しても悪影響を与える。これらは口腔内への装着時、又は装着後に調節することも可能だが、患者にとっては治療時間の増大となり歯科医療従事者双方にとって負担となる。
また、筆による塗布作業中、補綴物の内面にスラリーが流れ込むことがあるが、焼成後にそのまま口腔内に装着しようとすると、支台歯との間隙が発生し、適合精度が大きく低下することから経年的に2次齲蝕に罹患する危険性が高まってしまう。
【0012】
以上のことから、グレーズ材は歯科用補綴物の表層のみを被覆し、かつ均一な厚みが求められるが、現状では熟練した歯科技工士による技術によってこの作業が行われている。特にジルコニアの基材に関しては、塗布するスラリーの厚みについて1回の焼成で艶が得られるようにするために、より厚く、かつ均一な厚みでコントロールしなければならず、それは歯科技工士の熟練次第であった。
【0013】
従って、本発明は、熟練した技術がなくとも、ジルコニア基材と均一な厚みのグレーズガラス層とを有する歯科用補綴物を製造するためのグレーズ材キット、及び該歯科用補綴物とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究をした結果、特定の強熱残分の条件を満たす接着性成分及び/又は粘着性成分である塗布剤と、特定の平均粒子径を有するグレーズガラス材とからなるキットを用いることにより、陶材焼成炉による焼成を行った後にも均一な厚みのグレーズガラス層を有する歯科用補綴物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]塗布剤(A)とグレーズガラス材(B)から構成され、
該塗布剤(A)の700℃×1分での強熱残分が0.50%以下であり、
該塗布剤(A)が接着性成分及び/又は粘着性成分であり、かつ、
該グレーズガラス材(B)の平均粒子径が5μm以上である、グレーズ材キット。
[2]該粘着性成分の25℃における粘度が1.0Pa・s以上である、[1]に記載のグレーズ材キット。
[3]該粘着性成分の25℃における粘度が5.0Pa・s以上である、[1]又は[2]に記載のグレーズ材キット。
[4]該接着性成分が接着剤である、[1]〜[3]のいずれかに記載のグレーズ材キット。
[5]該接着剤が、エポキシ樹脂系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、スチレンブタジエンゴム系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、シリコーンゴム系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、デンプン系接着剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[4]に記載のグレーズ材キット。
[6]該グレーズガラス材(B)の平均粒子径が50μm以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載のグレーズ材キット。
[7]該グレーズガラス材(B)の適正焼成温度が1000℃未満である、[1]〜[6]のいずれかに記載のグレーズ材キット。
[8]ジルコニア基材とグレーズガラス層を有し、該グレーズガラス層の平均厚みが30μm以上であり、かつ該グレーズガラス層の厚みが均一である、歯科用補綴物。
[9]該グレーズガラス層の厚みの標準偏差が1〜11である、[8]に記載の歯科用補綴物。
[10][1]〜[7]のいずれかに記載のグレーズ材キットを使用する、[8]又は[9]に記載の歯科用補綴物の製造方法。
[11]塗布剤(A)をジルコニア基材の表面に塗布する工程(1)、
ジルコニア基材の塗布剤(A)が塗布された部分にグレーズガラス材(B)をまぶす工程(2)、
及び、グレーズガラス材(B)を焼成する工程(3)、
を含む、[10]に記載の歯科用補綴物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のグレーズ材キット及びそれを用いた歯科等補綴物の製造方法によれば、熟練の技術が無くとも、ジルコニア基材と均一な厚みのグレーズガラス層とを有する歯科用補綴物を簡便に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のグレーズ材キットは、塗布剤(A)とグレーズガラス材(B)から構成され、該塗布剤(A)の700℃×1分での強熱残分が0.50%以下であり、該塗布剤(A)が接着性成分及び/又は粘着性成分であり、かつ、該グレーズガラス材(B)の平均粒子径が5μm以上であることを特徴とする。
【0019】
本発明における塗布剤(A)の700℃×1分での強熱残分が0.50%以下であることが重要であり、0.30%以下であることが好ましく、0.15%以下であることがさらに好ましい。該強熱残分が0.50%より大きい場合は焼成後のグレーズガラス材(B)が黒変する等の不具合が発生し、歯科用補綴物として使用することができない。本発明における塗布剤(A)の強熱残分は、以下の方法にて測定できる。まず、ジルコニアからなる板を用意し、その質量(質量(a))を計測する。その後、板の上に塗布剤(A)を0.1g塗布し、そのまま700℃×1分にて焼成を行った後に再度、板の質量(質量(b))を計測する。得られた質量(a)と質量(b)を用い、以下の式にて強熱残分を算出できる。
(強熱残分(%))=100×(質量(b)−質量(a))/0.1
【0020】
本発明の塗布剤(A)が沸点を有する材料である場合、その沸点が後述するグレーズガラス材(B)の適正焼成温度以下であることが好ましい。これにより、グレーズガラス材(B)を焼成する工程において歯科用補綴物から焼失させることができる。そのため、該適正焼成温度よりも低い温度に沸点を持つことがより好ましく、焼成後のグレーズガラス材(B)に目視できる残留物が無く焼却されるような温度範囲に沸点を有することが特に好ましい。そのような塗布剤(A)を選択するために、残留なく焼却される塗布剤を判断する方法としては、例えばジルコニアからなる板を用意し、その質量を計測する。その後、板の上に塗布剤を塗布し、そのままグレーズガラス材の焼成温度で焼成を行った後に再度板の質量を計測し、焼成前の質量と比較することで、残留の有無が判断できる。塗布剤(A)の沸点は、具体的には750℃以下であることが好ましく、500℃以下であることがより好ましい。なお、該沸点は、従来公知の方法により測定することができる。また、グレーズガラス材(B)の適正焼成温度の詳細については後述する。
【0021】
本発明において、塗布剤(A)としては前述の強熱残分の条件を満たす、接着性成分及び/又は粘着性成分であることが重要であり、例えば、以下のものを使用されることが好ましい。
【0022】
本発明における塗布剤(A)が粘着性成分である場合、塗布剤(A)の粘度は、25℃において1.0Pa・s以上であることが好ましい。該範囲を満たすことにより、簡便に、グレーズガラス材(B)が焼成するまで基材表面から離脱することなく保持できる。該粘度は、4.0Pa・s以上であることがより好ましく、2.5Pa・s以上であることがさらに好ましい。また、該粘度の上限は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、容易に基材に付着させることが可能であることから、例えば120Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましく、50Pa・s以下であることがさらに好ましい。なお、本発明における粘度は、JIS K 7117−1:1999に準拠して測定することができる。
【0023】
本発明における塗布剤(A)が接着性成分である場合、接着剤を好適に使用できる。例えば、接着剤を塗布剤(A)として使用する場合、一般的に次のようなものが例示される。接着剤は、具体的には熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム・エラストマー系に分けることができる。さらに具体的にはエポキシ樹脂系、ポリ酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系、ニトリルゴム系、フェノール樹脂系、酢酸ビニル系、酢酸ビニル樹脂エマルジョン系、クロロプレンゴム系、スチレンブタジエンゴム系、アクリル樹脂系、シリコーンゴム系、シアノアクリレート系、デンプン系などから適宜選択して使用することができる。接着剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
また接着剤以外の接着性成分及び/又は粘着性成分であっても、グレーズガラス材(B)が焼成するまで基材表面から離脱することなく保持できるものであればよく、具体的には、炭化水素、脂肪酸、糖類についても使用することができる。炭化水素としては、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、及びこれらの混合物などが挙げられる。前記飽和炭化水素としては、炭素数10〜17が好ましく、例えば、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン及びこれらの混合物などが挙げられる。前記不飽和炭化水素としては、炭素数6〜28が好ましく、12〜24がより好ましく、例えば、ノネン、デセン、ドデセン、トリデセン、オクタデセン、スチレン、キシレン及びこれらの混合物などが挙げられる。脂肪酸としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、及びこれらの混合物などが挙げられる。より粘度が高い点から、飽和脂肪酸が好ましい。前記脂肪酸としては、炭素数2〜28が好ましく、エタン酸、プロパン酸、ジメチル酢酸、ブタン酸、3−メチルブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、乳酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ペラルゴン酸等、各種飽和脂肪酸及びこれらの混合物などが挙げられる。前記不飽和脂肪酸としては、炭素数8〜28が好ましく、炭素数8〜24がより好ましく、α−リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサヘキサエン酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、パウリン酸、オレイン酸及びこれらの混合物などが挙げられる。糖類としては、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、アルギン酸、アルギン酸塩、カラギーナン、グアーガム、キタンサンガム、セルロースガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、ペクチン、ペクチン塩、キチン、キトサン等の多糖類;アルギン酸プロピレングリコールエステル等の酸性多糖類エステルが挙げられる。塗布剤(A)は、接着性成分及び/又は粘着性成分を1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の混合物として、各種食用油を使用することができる。
【0025】
本発明における塗布剤(A)は、前述の強熱残分の条件を満たす接着性成分及び/又は粘着性成分である限り、接着性成分と粘着性成分の性質を兼ねるものであってもよく、さらに各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、着色材であってもよい。着色材によって塗布剤(A)が着色されている場合には、基材表面において塗布剤(A)の付着している部分が視認しやすくなる。
【0026】
本発明におけるグレーズガラス材(B)の平均粒子径は、5μm以上であることが重要である。該範囲を満たすことにより、焼成後の基材表面に十分な艶を持ちと厚みが均一な層を形成させることが可能となる。ジルコニアが基材である場合、より厚い層の形成が好ましいことから、平均粒子径が10μm以上であることが好ましく、10μmを超えていることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましく、50μm以上であることがよりさらに好ましい。また、該平均粒子径は、焼成後の粒子同士の融着、及び厚みが均一な表面を得る観点から、400μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折散乱法により求めることができる。レーザー回折散乱法は、具体的に例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2300:株式会社島津製作所製)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて測定することができる。
【0027】
本発明において、グレーズガラス材(B)としては前述の平均粒子径の条件を満たすことが重要であり、基材に焼き付き得るガラスであれば公知のものを用いることができる。グレーズガラス材(B)の組成としては、歯科用途に適用できるものであれば特に限定されず、例えば、酸化リチウム、酸化ホウ素、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛および一般的に微量元素として歯科用途において用いられるもの等を含む少なくとも2種を使用することができ、例えば、特開2017−122064号公報に記載の組成物(例えば、69〜76mol%のSiO
2、3〜7mol%のAl
2O
3、0.3〜2mol%のLi
2O、3〜8mol%のNa
2O、3〜7mol%のK
2O、0.7〜2mol%のCaO、0.2〜1mol%のCeO
2、0〜1mol%のMgO、0〜3mol%のBaO、0〜1mol%のZnO、0〜15mol%のB
2O
3、及び0〜8mol%のF
2であるグレーズ材組成物)や、特開平8−157319号公報に記載の組成物(例えば、SiO
2 66〜73質量%、B
2O
3 6.0〜15.5質量%、Al
2O
3 4.0〜5.5質量%、Li
2O 0〜5.5質量%、Na
2O 1.0〜8.0質量%、K
2O 0.2〜1.1質量%、CaO 0.1〜4.0質量%、BaO 0.1〜5.5質量%、ZnO 0〜2.0質量%およびTiO
2 0〜5.0質量%であるグレーズ材組成物)等が挙げられる。
【0028】
本発明におけるグレーズガラス材(B)はさらに、天然歯の色調を再現するための顔料又は乳濁材を含有してもよい。前記のガラスとして例示されるものを顔料として使用できる他、例えば、酸化プラセオジウム、酸化バナジウム、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化クロム、酸化マンガン、酸化セリウム、酸化スズ等を使用することが知られている。また、乳濁材としては、例えば、ケイ酸ジルコニウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム等を使用することが知られている。
【0029】
本発明におけるグレーズガラス材(B)に用いるガラス粒子の形状は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されるものではないが、基材への均一な付着のために球状であることが好ましい。平均粒子径を揃えて球状化する方法としては、例えば空気を伴う燃焼ガス中に一定量のガラス微粒子を投入し加熱することにより、所定の粒径にて球状化する方法などが知られている。
【0030】
本発明におけるグレーズガラス材(B)の適正焼成温度としては、特に限定されないが、1000℃未満が好ましく、950℃未満がより好ましい。
【0031】
前述の塗布剤(A)とグレーズガラス材(B)をグレーズ材キットとして用いることにより、均一な厚みを有するグレーズガラス層を有する歯科用補綴物を得ることができる。すなわち、本発明の歯科用補綴物は、ジルコニア基材とグレーズガラス層を有する歯科用補綴物であって、グレーズガラス層の平均厚みが30μm以上であり、かつ厚みが均一であることを特徴とする。以下、詳細を説明する。
【0032】
本発明の歯科用補綴物において、基材のジルコニアとしては、酸化ジルコニウム(ジルコニア;ZrO
2)の粉末から作製されたものを用いてもよく、歯科用途向けに市販されているものを用いてもよい。市販されているものとしては、歯科用ジルコニアブロック、及び歯科用ジルコニアディスク等の形態で一般的に供されるジルコニアが挙げられる。
【0033】
該ジルコニアは、ジルコニアに安定化剤を添加した部分安定化ジルコニアからなるジルコニア仮焼体を用いることが好ましい。該安定化剤としては、例えば、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化チタン(TiO
2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(マグネシア;MgO)、酸化セリウム(セリア;CeO
2)、酸化アルミニウム(アルミナ;Al
2O
3)、酸化スカンジウム(Sc
2O
3)、酸化ランタン(La
2O
3)、酸化エルビウム(Er
2O
3)、酸化プラセオジム(Pr
6O
11)、酸化サマリウム(Sm
2O
3)、酸化ユウロピウム(Eu
2O
3)及び酸化ツリウム(Tm
2O
3)等の酸化物が挙げられる。特に、安定化剤としてイットリアを用いることが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
ジルコニア基材は、通常歯科用補綴物の形状に加工されており、加工を行うジルコニアは仮焼体の状態であり、加工後に本焼成することにより、ジルコニア焼結体からなる基材を有する歯科用補綴物が得られる。
【0035】
また、ジルコニア基材は歯科用CAD/CAMを用いてデザインされるが、その際にのちの工程であるグレーズガラス層の厚みの分を引いておく(オフセットしておく)ことで、焼成後に咬合面や隣接面の接触部位を大きく修正する必要がなくなる。
【0036】
本発明の歯科用補綴物におけるグレーズガラス層としては、グレーズガラス材(B)として例示したガラスを用いることができる。該グレーズガラス層の平均厚みは30μm以上であり、ジルコニア基材に艶を得る観点から、30〜130μmが好ましく、30〜140μmがより好ましい。また、該グレーズガラス層の厚みの標準偏差は、1〜14であることが好ましく、1〜11であることがより好ましく、1〜9であることがさらに好ましい。本発明におけるグレーズガラス層の平均厚み、及び厚みの標準偏差の測定方法は、後述の実施例で詳細を記載する。
【0037】
本発明の歯科用補綴物の製造方法としては、前記グレーズ材キットを使用することが重要であり、具体的には、塗布剤(A)をジルコニア基材の表面に塗布する工程(1)、塗布剤(A)が塗布された部分にグレーズガラス材(B)をまぶす工程(2)、及び、グレーズガラス材(B)を焼成する工程(3)、を含むことが好ましい。以下、詳細を説明する。
【0038】
工程(1)において、塗布剤(A)を塗布するジルコニア基材としては、支台歯との適合精度に影響を与えることから基材内面については塗布剤(A)の塗布を行わないことが好ましい。塗布剤(A)が内面に付着していなければ、仮に後の工程(2)においてグレーズガラス材(B)が意図せずまぶされてしまっても付着はせず、振動を与えることによって容易に除去することが可能である。一方で、口腔内に露出する領域は光沢が必要な部分であり、その部分がグレーズガラス材(B)をまぶす部分となるため、その部分にあらかじめ塗布剤(A)が付着するよう塗布を行うことが必要である。工程(1)におけるジルコニア基材は、ジルコニア焼結体であることが好ましく、ジルコニア仮焼体であってもよい。
【0039】
工程(1)において、塗布剤(A)をジルコニア基材に塗布する(付着させる)方法としては、例えば筆や刷毛を用いて行うことができる。また、塗布剤(A)の種類に応じてスプレーを用いて行うこともできる。さらに、塗布剤(A)で満たされた容器にジルコニア基材を浸漬して行うこともでき、その際は基材内面に塗布剤が流れ込まないようあらかじめ封鎖しておくことが好ましい。
【0040】
工程(2)において、塗布剤(A)が塗布された部分にグレーズガラス材(B)をまぶす方法としては、ジルコニア基材に塗布した塗布剤(A)にグレーズガラス材(B)が付着した状態となる限り限定されず、例えば、ジルコニア基材が埋まる程度の容器をグレーズガラス材(B)で満たしておき、そこに塗布剤(A)が塗布された状態のジルコニア基材を埋没させる方法や、ジルコニア基材を保持して回転させながら、基材の上方からまんべんなく振りかける方法などを用いることができる。前記工程(2)の後、工程(3)の前に、最終的に振動を与えて余剰なグレーズガラス材(B)を振るい落とすことで、ジルコニア基材に付着するグレーズガラス材(B)の量を均一にすることができる。また、振るい落とされたグレーズガラス材(B)は回収して再度使用することもできる。
【0041】
工程(3)において、グレーズガラス材(B)を焼成する。焼成温度は、グレーズガラス材(B)の種類に応じて決定することができるが、その適正焼成温度以上であることが好ましい。焼成温度は例えば、750〜1000℃とすることができる。工程(3)において、前記焼成温度を最高温度とする焼成を行う。焼成は、公知の歯科用陶材焼成炉を用いて行うことができる。歯科用陶材焼成炉としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、プロプレス100、プロプレス200(商品名、以上ウィップミックス社(米国))製)等が挙げられる。焼成工程としては、例えば、前記焼成温度で、歯科用陶材焼成炉内に保持する係留時間は、グレーズガラス材(B)の種類に応じて決定することができるが、例えば、30秒〜2分程度であってもよい。
【0042】
本発明における適正焼成温度は以下の方法により評価し決定した。
直径約13mm、厚さ約1.5mmの金型に離型剤としてワセリンを塗布し、グレーズガラス材(B)を敷き詰め、シアノアクリレート系接着剤(「アロンアルフア601」、東亜合成株式会社)を垂らして円柱状の固形物の試料を作製した。作製した固形物の試料は歯科用陶材焼成炉(プロプレス100、ウィップミックス社)を使用して焼成を行った。円柱状の焼成後のグレーズガラス材(B)の外観を、株式会社ハイロックス製「デジタルマイクロスコープKH−7700」を用いて観察した。表面が滑沢で、透明度が高く背景が透過する状態は、グレーズガラス材(B)が十分に焼成されているとみなすことができる。一方、表面が粗造で透明度の低い状態は、焼成不足と判断できる。本発明において、十分に焼成されているとみなすことができる最低の温度を、グレーズガラス材(B)の適正焼成温度と判断した。
【0043】
本発明の歯科用補綴物としては、具体的にはコーピング、フレームワーク、義歯床、歯冠修復物、歯列矯正用製品、インプラント用製品などが挙げられ、例えば、クラウン、ブリッジ、インレー、オンレー、ラミネートベニアなどが挙げられる。歯列矯正用製品としては、例えば、ブラケットなどが挙げられる。歯科インプラント用製品としては、例えば、インプラント、アバットメント、インプラントフィクスチャー、インプラントブリッジ、インプラントバーなどが挙げられる。
【0044】
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的思想の範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた実施形態を含む。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で多くの変形が当分野において通常の知識を有する者により可能である。なお、以下、粒度分布は体積基準で測定した値である。
【0046】
本発明における歯科用補綴物の製造方法について説明するが、方法は患者の口腔環境に応じて適宜選択することができる。
【0047】
[実施例1]
まず、歯冠形状に見立てたジルコニアの基材試料を製作する。市販されているイットリアを含有する歯科用ジルコニア(「ノリタケ カタナ(登録商標)ジルコニア」STML、クラレノリタケデンタル株式会社)を準備し、歯科用CAD/CAMシステムを用いて後述する形状となるように加工を行い、ジルコニア用焼成炉(ノリタケ カタナ(登録商標) F−1N・SKメディカル電子株式会社)を用いて1550℃にてジルコニアを焼成して、基材試料となるジルコニア焼結体を得た。該ジルコニア焼結体の形状は、図1に示すように、側面から見ると等脚台形となるコップ状で、上底側を咬合面、下底側を歯頚部に見立て、下底側は開口している。焼成後は下底側が直径12mm、上底側が直径10mm、高さが10mmとなるよう設計した。また、基材試料の厚みはすべての箇所で1.0mmとなるよう設計した。
【0048】
前記工程完了後、基材試料の内面及び下底面を除いた面全てに、塗布剤(A)としてポリビニルアルコール系接着剤(「アラビックボンド」、ヤマト株式会社)を筆により一層塗布をした。
【0049】
前記工程完了後、塗布剤の付着している基材試料にまぶすためのグレーズガラス材(B)を準備した。グレーズガラス材(B)として、平均粒子径が50μmの球状ガラス(ガラスビーズ(ガラス球)、粒子径(粒度分布):0.037〜0.063mm、「GB−0.05」、株式会社テックジャム)を使用した。基材試料にまんべんなくまぶされるように十分に振りかけを行った。
【0050】
前記工程完了後、歯科用陶材焼成炉(プロプレス100、ウィップミックス社)により最高温度930℃、係留時間1分にてグレーズガラス材(B)の焼成を行い、グレーズガラス材(B)で被覆されている歯科用補綴物試料を得た。
【0051】
グレーズガラス材の焼成における最高温度とは、歯科用補綴物として使用できる光沢が得られる温度である。該最高温度で焼成することによって、歯科用補綴物として、ガラス粒子同士が溶融して基材に焼き付くことで被膜を形成し、その表面に光源の形状を写す程度の光沢が得られる。
【0052】
得られた歯科用補綴物試料について、後述の方法により、艶の状態、及びグレーズガラス層の厚みの均一性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0053】
(1)目視による艶の状態の評価
試料表面を蛍光灯などの光源に近づけて目視で観察し、表面を反射する光源形状の状態を下記基準にて評価した。
○:反射が光源形状を反映して認識できる。
△:反射が光源形状の一部を除き反映して認識できる。
×:反射光が散乱しており、光源形状を認識できない。
【0054】
(2)グレーズガラス層の厚みの均一性の評価
まず、図1(c)のように、内部が空洞であるコップ状の基材試料について、図1(b)に示すように、側面から見たときの台形の脚にあたる側面下部、側面上部の2か所(それぞれ「A1」、「A2」と表記する)について下底側すなわち開口部から直接デジタルノギスを使って側面の厚みの計測を行い、その対角線上の側面上部、側面下部の2か所(それぞれ「A4」、「A3」と表記する)も同様にして厚みの計測を行う。また、側面から見たときの上底から下底までの高さを1か所(「A5」と表記する)測定し、以上の計5か所の厚み(「A5」は底部の高さ)について、計測を行った。計測には「A1」から「A4」までをデジタルノギス(ABSデジマチックスナップキャリパ、株式会社ミツトヨ)を使用し、「A5」は(デジトリックスマイクロメーター・NSK|日本測定)を使用した。
その後、グレーズガラス材の焼成を行い、先に計測を行った部位と同一箇所の厚み(「A´1」、「A´2」、「A´3」、「A´4」、「A´5」とする)を計測し、下記式のように先に計測を行った厚みを引くことで、グレーズガラス層の厚みを算出した。
(A1の厚み)−(A´1の厚み)=(グレーズガラス層の厚み;「T1」と表記する)
「A2」〜「A5」及び「A´2」〜「A´5」のグレーズガラス層の厚みについて、順に「T2」、「T3」、「T4」、「T5」と表記する。「T1」から「T5」の計5か所の厚みをもとに、グレーズガラス層の平均厚みと厚みの標準偏差を算出した。該標準偏差が小さいほど、歯科用補綴物試料の各部でのグレーズガラス層の被膜が均一に形成されていることを示す。該標準偏差が22.3未満である場合、厚みが均一であると評価することができ、好ましくは1〜14であり、より好ましくは1〜11であり、さらに好ましくは1〜9である。
【0055】
[実施例2]
グレーズガラス材(B)を平均粒子径が110μmの球状ガラス(ガラスビーズ(ガラス球)、粒子径:0.105〜0.125mm、「GB−0.1」、株式会社テックジャム)に変更した以外は実施例1と同様にして、歯科用補綴物試料を得た。評価結果を表1に示す。
【0056】
[実施例3]
グレーズガラス材(B)を平均粒子径が200μmの球状ガラス(ガラスビーズ(ガラス球)、粒子径:0.177〜0.250mm、「GB−0.2」、株式会社テックジャム)に変更した以外は実施例1と同様にして、歯科用補綴物試料を得た。評価結果を表1に示す。
【0057】
[実施例4]
球状ガラス(ガラスビーズ(ガラス球)、粒子径:0.037〜0.063mm、「GB−0.05」、株式会社テックジャム)を粉砕したのちにふるいにかけて得た、平均粒子径が20μmのグレーズガラス材(B)に変更した以外は実施例1と同様にして、歯科用補綴物試料を得た。評価結果を表1に示す。
【0058】
[実施例5]
塗布剤(A)をデンプン系接着剤(「ヤマト糊 ボトル」、ヤマト株式会社)に変更した以外は実施例1と同様にして、歯科用補綴物試料を得た。評価結果を表1に示す。
【0059】
[実施例6]
塗布剤(A)をポリ酢酸ビニル系エマルジョン形接着剤(「ボンド 木工用」、コニシ株式会社)に変更した以外は実施例1と同様にして、歯科用補綴物試料を得た。評価結果を表1に示す。
【0060】
[実施例7]
塗布剤(A)をスチレンブタジエンゴム系接着剤(「Gクリヤー」、コニシ株式会社)に変更した以外は実施例1と同様にして、歯科用補綴物試料を得た。評価結果を表1に示す。
【0061】
[実施例8]
塗布剤(A)をシアノアクリレート系接着剤(「アロンアルフア601」、東亜合成株式会社)に変更した以外は実施例1と同様にして、歯科用補綴物試料を得た。評価結果を表1に示す。
【0062】
[実施例9]
塗布剤(A)を食用油「キューピーマヨネーズ」、キューピー株式会社)に変更した以外は実施例1と同様にして、歯科用補綴物試料を得た。評価結果を表1に示す。
【0063】
[実施例10]
塗布剤(A)をグリセリン(阪本薬品工業株式会社)に変更した以外は実施例1と同様にして、歯科用補綴物試料を得た。評価結果を表1に示す。
【0064】
[比較例1]
従来行われていた方法として、球状ガラス(ガラスビーズ(ガラス球)、粒子径:0.037〜0.063mm、「GB−0.05」、株式会社テックジャム)を粉砕したのちにふるいにかけ、平均粒子径が5μmのグレーズガラス材(B)を得た。このグレーズガラス材(B)と液材(2−フェノキシエタノール(純正化学株式会社))を混和してスラリー化したものを用意した。該スラリーを、筆を使用して実施例1と同じジルコニア基材試料に塗布し、歯科用陶材焼成炉(プロプレス100、ウィップミックス社)にて最高温度930℃、係留時間1分にて焼成を行い、グレーズガラス材で被覆されている歯科用補綴物試料を得た。評価結果を表1に示す。
【0065】
[比較例2]
塗布剤(A)を2−フェノキシエタノール(純正化学株式会社)に変更した以外は実施例1と同様にして、歯科用補綴物試料を得た。評価結果を表1に示す。
【0066】
[比較例3]
塗布剤(A)を水に変更した以外は実施例1と同様にして、歯科用補綴物試料を得た。評価結果を表1に示す。
【0067】
[比較例4]
塗布剤(A)を1,2−プロパンジオール(純正化学株式会社)に変更した以外は実施例1と同様にして、歯科用補綴物試料を得た。評価結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示すように、本発明のグレーズ材キットを用いて作製された実施例1〜10の歯科用補綴物は、いずれも艶の状態が良好で、かつグレーズガラス層の厚みが均一であることが分かる。一方、グレーズガラス材と液材を混和してスラリーとして使用した比較例1はグレーズガラス層の厚みの均一性に劣る結果となり、塗布剤(A)に該当しない塗布剤を用いた比較例2〜4では、艶の状態が不良であり、特に比較例3ではグレーズガラス層の厚みがばらつくという結果となった。