(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021004590
(43)【公開日】20210114
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 13/02 20060101AFI20201211BHJP
   F01L 1/356 20060101ALI20201211BHJP
【FI】
   !F02D13/02 H
   !F01L1/356 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】2019119643
(22)【出願日】20190627
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】玉野 篤央
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】西村 悠太
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】田端 健吾
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】後藤 洋介
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
【テーマコード(参考)】
3G018
3G092
【Fターム(参考)】
3G018AB02
3G018AB17
3G018BA33
3G018BA36
3G018CA09
3G018CA19
3G018CA20
3G018DA18
3G018DA24
3G018DA60
3G018DA72
3G018DA73
3G018DA74
3G018EA21
3G018EA31
3G018EA32
3G018FA01
3G018FA07
3G018FA16
3G018GA11
3G092AA01
3G092AA05
3G092AA11
3G092AB02
3G092DA03
3G092EA13
3G092FA14
3G092FA31
(57)【要約】
【課題】機関停止時においてロック機構による可変機構部の固定をより確実に行うことのできる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関は、吸気バルブタイミングを変更する可変機構部と可変機構部のハウジングロータ及びベーンロータを規定の固定位相にて固定するロック機構とを有する油圧駆動式の可変動弁機構を備える。制御装置は、固定位相からのバルブタイミングの変更量がガード値を超えないように制限する。制御装置は、運転中の内燃機関が運転停止するまでに要する最短時間である機関停止時間を算出する停止時間算出処理M20と、ロック機構による固定を開始してから固定が完了するまでに要する時間であるロック時間を算出するロック時間算出処理M40と、機関停止時間からロック時間を減じた値に可変機構部の動作速度を乗算した値をガード値として設定するガード値算出処理M80とを実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングロータとベーンロータとの相対回転を通じて内燃機関の吸気バルブ又は排気バルブのバルブタイミングを変更する可変機構部と、前記ハウジングロータ及び前記ベーンロータを規定の固定位相にて固定するロック機構とを有する油圧駆動式の可変動弁機構を備える内燃機関に適用されて、機関運転中には前記固定位相からの前記バルブタイミングの変更量がガード値を超えないように制限するガード処理と、機関停止時には機関停止する前に前記バルブタイミングを前記固定位相に戻して前記ロック機構による前記固定を実行する停止時処理とを実行する制御装置であって、
運転中の内燃機関が運転停止するまでに要する最短時間である機関停止時間を算出する停止時間算出処理と、
前記ロック機構による前記固定を開始してから当該固定が完了するまでに要する時間であるロック時間を算出するロック時間算出処理と、
前記機関停止時間から前記ロック時間を減じた値に前記可変機構部の動作速度を乗算した値を前記ガード値として設定するガード値算出処理とを実行する
内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、ハウジングロータとベーンロータとの相対回転を通じて内燃機関の吸気バルブや排気バルブのバルブタイミングを変更する可変機構部と、ハウジングロータ及びベーンロータを規定の固定位相にて固定するロック機構とを有する油圧駆動式の可変動弁機構を備える内燃機関が知られている。この内燃機関の機関停止時には、機関停止前にバルブタイミングが機関始動に適した上記固定位相に戻されるとともに、ハウジングロータとベーンロータとの固定がロック機構によって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−160065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、機関停止する前にバルブタイミングを固定位相に戻せない場合には、ハウジングロータ及びベーンロータを備える可変機構部をロック機構で固定できない。そのため、次回の機関始動時には、例えば可変機構部の固定不良に起因した異音が発生したり、機関始動性が悪化したりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する内燃機関の制御装置は、ハウジングロータとベーンロータとの相対回転を通じて内燃機関の吸気バルブ又は排気バルブのバルブタイミングを変更する可変機構部と、前記ハウジングロータ及び前記ベーンロータを規定の固定位相にて固定するロック機構とを有する油圧駆動式の可変動弁機構を備える内燃機関に適用される。この制御装置は、機関運転中には前記固定位相からの前記バルブタイミングの変更量がガード値を超えないように制限するガード処理と、機関停止時には機関停止する前に前記バルブタイミングを前記固定位相に戻して前記ロック機構による前記固定を実行する停止時処理とを実行する。そして、この制御装置は、運転中の内燃機関が運転停止するまでに要する最短時間である機関停止時間を算出する停止時間算出処理と、前記ロック機構による前記固定を開始してから当該固定が完了するまでに要する時間であるロック時間を算出するロック時間算出処理と、前記機関停止時間から前記ロック時間を減じた値に前記可変機構部の動作速度を乗算した値を前記ガード値として設定するガード値算出処理と、を備えている。
【0006】
同構成によれば、固定位相からのバルブタイミングの変更量はガード値にて制限される。ここで、そのガード値は、上記機関停止時間から上記ロック時間を減じた値に可変機構部の動作速度を乗じて算出されるため、このガード値は、内燃機関が運転停止するまでの間において固定位相に戻ることのできるバルブタイミングの最大変更量になる。従って、機関運転中のバルブタイミングは、運転停止したときに固定位相に戻ることのできる範囲内で変更されるようになり、機関停止時にはロック機構による可変機構部の固定がより確実に行えるようになる。また、これにより可変機構部の固定不良に起因した機関始動時の異音発生や機関始動性の悪化なども抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施形態にかかる内燃機関の制御装置を示す模式図。
【図2】同実施形態における可変動弁機構の構造を示す模式図。
【図3】図2の3−3線に沿った可変動弁機構の断面図。
【図4】同実施形態の制御装置が実行するガード値算出処理を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、内燃機関の制御装置を具体化した一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
図1に示すように、内燃機関10は、シリンダブロック20を備えている。シリンダブロック20の下端には、図示しない複数のクランクキャップが固定されている。これらシリンダブロック20とクランクキャップとの間には、クランクシャフト33が回転可能に支持されている。
【0009】
シリンダブロック20の内部には、円筒状の気筒21が複数区画されている。気筒21は、クランクシャフト33の回転軸が延びる方向に沿って並ぶように配置されている。
各気筒21の内部には、ピストン22が当該気筒21内を往復移動可能に収容されている。ピストン22は、コネクティングロッド34を介してクランクシャフト33に連結されている。
【0010】
シリンダブロック20の下端には、クランクケース31が固定されている。クランクケース31の下端には、貯留ケース32が固定されている。これらクランクケース31及び貯留ケース32によってオイルパン30が構成されている。
【0011】
オイルパン30の内部には、内燃機関10の各部を潤滑したり、各機構を作動させたりするためのオイルが貯留されている。オイルパン30の内部には、当該オイルパン30に貯留されているオイルを圧送するオイルポンプ38が配設されている。オイルポンプ38は、図示しないオイルチェーンを介してクランクシャフト33の回転が伝達されることによって駆動される。
【0012】
シリンダブロック20の上面には、シリンダヘッド40が固定されている。シリンダヘッド40の下面は、気筒21の軸線方向から視て円形の凹部41が形成されている。凹部41の直径は、気筒21の直径と略同一になっている。凹部41は、気筒21に対向配置されている。凹部41の内壁、気筒21の内壁及びピストン22の頂面によって、燃焼室42が区画形成されている。
【0013】
シリンダヘッド40には、燃料を点火する点火プラグ50が取り付けられている。点火プラグ50の先端は、燃焼室42に突出している。
シリンダヘッド40には、気筒21内に吸気を供給するための吸気ポート43が形成されている。吸気ポート43の一方端は凹部41に開口しており、他端の開口には吸気通路44が接続されている。吸気通路44には、吸気ポート43内に向かって燃料を噴射する燃料噴射弁45が取り付けられている。
【0014】
シリンダヘッド40には、気筒21内から排気を排出するための排気ポート47が形成されている。排気ポート47の一端は凹部41に開口しており、他端の開口には排気通路48が接続されている。
【0015】
シリンダヘッド40の上部には、吸気側カムシャフト60及び排気側カムシャフト70が回転可能に支持されている。吸気側カムシャフト60及び排気側カムシャフト70は、図示しないチェーンを介してクランクシャフト33に駆動連結されており、クランクシャフト33の回転に同期して回転する。吸気側カムシャフト60及び排気側カムシャフト70は、クランクシャフト33の回転軸が延びる方向に対して平行に延びている。吸気側カムシャフト60には、当該吸気側カムシャフト60の回転運動を往復直線運動に変換するための吸気カム61が取り付けられている。排気側カムシャフト70には、当該排気側カムシャフト70の回転運動を往復運動に変換するための排気カム71が取り付けられている。
【0016】
シリンダヘッド40には、吸気ポート43における凹部41側の開口を開閉するための吸気バルブ46が取り付けられている。また、シリンダヘッド40には、排気ポート47における凹部41側の開口を開閉するための排気バルブ49が取り付けられている。吸気バルブ46には、吸気カム61及び吸気側アーム62を介して、吸気側カムシャフト60の回転運動が往復直線運動に変換されて伝達される。同様に、排気バルブ49には、排気カム71及び排気側アーム72を介して、排気側カムシャフト70の回転運動が往復直線運動に変換されて伝達される。吸気側カムシャフト60の端部には、クランクシャフト33に対する吸気側カムシャフト60の相対位相を変更することにより吸気バルブ46の開閉時期であるバルブタイミングを変更する油圧駆動式の可変動弁機構100が設けられている。なお、以下では、吸気バルブ46のバルブタイミングを吸気バルブタイミングという。
【0017】
図2及び図3に、可変動弁機構100の構造を示す。
図2に示すように、可変動弁機構100は、ハウジングロータ115とベーンロータ111との相対回転を通じて吸気バルブタイミングを変更する可変機構部110と、ハウジングロータ115及びベーンロータ111の相対位相を規定の固定位相にて固定するロック機構150とに大別される。
【0018】
可変機構部110のハウジングロータ115は、全体として円筒形状の筒状部116を備えている。筒状部116の外壁には、円環状の外歯スプロケットであって当該筒状部116と一体回転するカムスプロケット101が固定されている。このカムスプロケット101には、クランクシャフト33の回転トルクを伝達するためのチェーンが巻き掛けられる。筒状部116の内壁からは、複数の区画壁117が径方向内側に向けて突出している。区画壁117の突出長は、いずれも同じになっている。そして、周方向において互いに隣り合う区画壁117の間には、収容室118が区画されている。なお、区画壁117の突出側の先端部には、区画シール部117Sが設けられている。
【0019】
ハウジングロータ115の内部には、吸気側カムシャフト60と一体回転するベーンロータ111が配置されている。ベーンロータ111において径方向の中心部を構成するボス112は、吸気側カムシャフト60の端部に固定されている。ボス112の外周面からは、上述した区画壁117の数に対応した複数のベーン113が、径方向の外側に向かって突出している。各ベーン113の突出長は、区画壁117の突出長と同一になっている。各ベーン113は、ハウジングロータ115において隣り合う区画壁117の間に位置している。なお、ベーン113の突出側の先端部には、ベーンシール部113Sが設けられており、ベーン113と筒状部116との隙間がシールされている。また、ボス112の外周面には、各区画壁117の区画シール部117Sが接触しており、ボス112と各区画壁117との隙間がシールされている。
【0020】
ハウジングロータ115における収容室118は、ベーン113によって2つの油圧室に区画されている。収容室118においてベーン113よりも吸気側カムシャフト60の回転方向後側の油圧室は、進角用の油圧室である進角室119になっている。収容室118においてベーン113よりも吸気側カムシャフト60の回転方向前側の油圧室は、遅角用の油圧室である遅角室120になっている。
【0021】
図3に示すように、ハウジングロータ115の一方側の開口(図3では下側の開口)は、第1カバー190によって閉塞されている。一方、ハウジングロータ115の他方側の開口(図3では上側の開口)は、第2カバー191によって閉塞されている。
【0022】
ベーン113において第1カバー190側の面には、ロック機構150の収容穴152が形成されている。収容穴152は有底の円柱状となっており、この収容穴152には、円柱状のロックピン151が収容されている。ロックピン151の先端には受圧面となるテーパ部が形成されている。また、ロックピン151の末端には窪み部159が形成されており、この窪み部159には、ロックピン151を第1カバー190側に付勢するロックスプリング155が収容されている。
【0023】
第1カバー190の内壁には、ロック穴153が窪んで形成されている。ロック穴153は、クランクシャフト33に対する吸気側カムシャフト60の相対位相が最遅角位相となったときに、ベーン113から突出したロックピン151が係合する位置に配置されている。この最遅角位相は、ロック機構150の上記固定位相になっており、機関始動に適した吸気バルブタイミングである。
【0024】
ベーン113において第1カバー190に対向する面には、連通路157が設けられている。ロック穴153にロックピン151が嵌まっている状態において、ロック穴153は、連通路157を介して進角室119と連通することにより解除室として機能する。そして、進角室119にオイルが供給されることにより当該解除室内の油圧が昇圧されると、ロックピン151の上記テーパ部に作用する油圧によって当該ロックピン151はロック穴153から押し出される。
【0025】
図1に示すように、オイルポンプ38によってオイルパン30から吸い込まれたオイルが、オイルコントロールバルブ80を通じて可変動弁機構100に供給される。詳細は省略するが、オイルコントロールバルブ80は、複数のポートが設けられたハウジングや、このハウジング内に設けられたスプールや、このスプールを一方向に付勢するスプリングなどを有している。オイルコントロールバルブ80には、図示しない電磁ソレノイドが取り付けられている。電磁ソレノイドによる電磁力とスプリングによる付勢力とに基づきハウジング内部のスプールが軸方向に変位することで、可変動弁機構100の進角室119や遅角室120に対するオイルの給排態様が制御される。
【0026】
可変動弁機構100では、遅角室120にオイルが供給されるとともに、進角室119からオイルが排出されると、遅角室120の油圧が進角室119の油圧よりも高くなる。この場合、ベーンロータ111がハウジングロータ115に対して吸気側カムシャフト60の回転方向とは反対の方向(図2における反時計回り方向)に相対回転する。このようにハウジングロータ115に対するベーンロータ111の相対位相が変位すると、吸気バルブタイミングは遅角方向に変化する。一方、進角室119にオイルが供給されるとともに、遅角室120からオイルが排出されると、進角室119の油圧が遅角室120の油圧よりも高くなる。この場合、ベーンロータ111がハウジングロータ115に対して吸気側カムシャフト60の回転方向(図2における時計回り方向)に相対回転する。このようにハウジングロータ115に対するベーンロータ111の相対位相が変位すると、吸気バルブタイミングは進角方向に変化する。
【0027】
ロック機構150の動作について説明する。ロック機構150において、クランクシャフト33に対する吸気側カムシャフト60の相対位相が最遅角位相となっており、かつ進角室119からはオイルが排出されているとする。この場合、ロックピン151には、第1カバー190の方向に作用する力が、第2カバー191の方向に作用する力よりも大きくなるため、ロックピン151がロック穴153に嵌め込まれる。これにより、ハウジングロータ115及びベーンロータ111が上記固定位相にて互いに固定される。つまり、ロック機構150にて可変機構部110が固定されて、吸気バルブタイミングは最遅角位相に保持される。なお、ロックピン151がロック穴153に進入していく過程では、ロック穴153内のオイルが連通路157を介して進角室119側に排出される。
【0028】
一方、ロック機構150において、クランクシャフト33に対する吸気側カムシャフト60の相対位相が最遅角位相にあり、かつ進角室119にオイルが供給されているとする。この場合、ロックピン151には、第2カバー191の方向に作用する力が、第1カバー190の方向に作用する力よりも大きくなるため、ロックピン151がロック穴153から離脱する。これにより、ロック機構150は解除されて、ハウジングロータ115とベーンロータ111との相対回転が許容されるようになる。
【0029】
図1に示すように、制御装置300は、内燃機関10の各種制御を実行する。制御装置300は、中央処理装置(以下、CPUという)300Aや、制御用のプログラムやデータが記憶されたメモリ300Bなどを備えている。そして、制御装置300は、メモリ300Bに記憶されたプログラムをCPU300Aが実行することにより各種制御に関する処理を実行する。
【0030】
制御装置300には、クランクシャフト33のクランク角を検出するクランク角センサ310、吸気側カムシャフト60の位相を検出するカム角センサ311、内燃機関10の吸入空気量GAを検出するエアフロメータ312、内燃機関10の冷却水の温度である冷却水温THWを検出する水温センサ313が接続されている。また、制御装置300には、可変動弁機構100に供給されるオイルの油圧PLを検出する圧力センサ314、内燃機関10を搭載した車両の車速SPを検出する車速センサ315、アクセルペダルの操作量であるアクセル操作量ACCPを検出するアクセルポジジョンセンサ316が接続されている。また、制御装置300には、車両の車室内に設けられる自動変速機のシフトレバーの操作位置であるシフト位置SFTを検出するシフト位置センサ317が接続されている。シフトレバーの操作位置としては、車両を走行させないときに選択される非走行位置であるパーキング位置(P位置)やニュートラル位置(N位置)や、車両を走行させるときに選択される走行位置であるドライブ位置(D位置)やリバース位置(R位置)がある。そして、それら各種センサからの信号が制御装置300に入力される。また、制御装置300には、内燃機関10を搭載した車両の運転者によって操作される運転スイッチ318が接続されている。車両運転者がこの運転スイッチ318を操作することにより内燃機関10の始動要求や運転停止要求が検出される。制御装置300は運転停止要求を検出すると、各種制御を実行した後、燃料噴射や点火プラグ50の点火を停止することにより、内燃機関10の運転を停止させる。
【0031】
なお、制御装置300は、クランク角センサ310の出力信号Scrに基づいて機関回転速度NEを算出するとともに、クランク角センサ310の出力信号Scr及びカム角センサ311の出力信号Scaに基づいて実際の吸気バルブタイミングVTrを算出する。ちなみに、本実施形態における吸気バルブタイミングは、上記固定位相を「0」とし、この固定位相からの吸気バルブタイミングの進角量となっている。
【0032】
そして、制御装置300は、上記各種センサの検出信号に基づいて機関運転状態を把握し、その把握した機関運転状態に応じて燃料噴射弁45の燃料噴射制御、点火プラグ50の点火時期制御、吸気バルブタイミング制御等といった各種の機関制御を実施する。
【0033】
制御装置300は、上記吸気バルブタイミング制御として、機関回転速度NE及び機関負荷率KLなどに基づいて吸気バルブタイミングの目標値である目標吸気バルブタイミングVTpを算出する。そして、実吸気バルブタイミングVTrが目標吸気バルブタイミングVTpとなるように可変動弁機構100を制御する。
【0034】
ここで、制御装置300は、後述の処理にてガード値VTgdを算出する。そして、機関回転速度NE及び機関負荷率KLなどに基づいて算出した上記目標吸気バルブタイミングVTpがガード値VTgdを超える場合には、そのガード値VTgdを目標吸気バルブタイミングVTpとして設定するガード処理を実行する。このガード処理によって、上記固定位相からの吸気バルブタイミングの変更量はガード値VTgdで制限されることにより、可変動弁機構100の動作範囲が規定される。
【0035】
また、制御装置300は、内燃機関10の運転停止が要求されることにより機関停止を行うときには、機関停止する前に実吸気バルブタイミングVTrを最遅角位相、つまり上記固定位相に戻すとともに、ロック機構150による固定が行われるように可変動弁機構100を駆動する停止時処理を実施する。そしてこれにより、実吸気バルブタイミングVTrを次回の機関始動に備えたタイミングにする。
【0036】
ところで、例えば低温時であってオイルの粘度が高くなっており可変機構部110の動作速度が遅くなる場合などには、機関停止する前に実吸気バルブタイミングVTrを上記固定位相に戻せなくなるおそれがあり、この場合には、ハウジングロータ115及びベーンロータ111を備える可変機構部110をロック機構150にて固定できない。そのため、次回の機関始動時には、例えば可変機構部110の固定不良に起因した異音が発生したり、機関始動性が悪化したりするおそれがある。そこで本実施形態では、上記ガード値VTgdを以下のようにして算出することにより、そうした不都合の発生を抑えるようにしている。
【0037】
図4に、制御装置300が実行する上記ガード値VTgdの算出処理を示す。なお、制御装置300は、ガード値VTgdを機関運転中において所定周期毎に繰り返し算出する。
【0038】
減速時間算出処理M10は、現在の車速SPが「0」になるまでに要する時間である減速時間TMaを算出する処理を行う。この減速時間算出処理M10は、車両に対する制動力が最大となるように車両のブレーキ装置が作動したと仮定したときに得られる最大減速速度と現在の車速SPとに基づいて減速時間TMaを算出する。このようにして算出される減速時間TMaは、現在の車速SPが「0」になるまでに要する最短時間を示す値になる。なお、最大減速速度には、予め調べておいた適合値が設定されている。
【0039】
キーオフ時間設定処理M11は、キーオフ時間TMbを設定する。このキーオフ時間TMbは、車両が停止することにより車速SPが「0」になった時点から、車両運転者がシフト位置SFTを走行位置から非走行位置に切り替えるまでに要する時間と、車両運転者がシフト位置SFTを非走行位置に切り替えた時点から内燃機関10の運転停止を要求するために運転スイッチ318を操作するまでに要する時間との和であり、予め調べておいた適合値が設定されている。なお、キーオフ時間設定処理M11は、シフト位置SFTを読み込む。そして、読み込んだシフト位置SFTが非走行位置である場合には、車両運転者が内燃機関10の運転停止を要求するために運転スイッチ318をすでに操作している可能性があるため、キーオフ時間TMbを「0」に設定する。一方、キーオフ時間設定処理M11は、読み込んだシフト位置SFTが走行位置である場合には、キーオフ時間TMbとして上述した適合値を設定する。
【0040】
停止準備時間取得処理M12は、停止準備時間TMcを取得する。この停止準備時間TMcは、次の値である。すなわち、車両運転者が内燃機関10の運転停止を要求してから実際に内燃機関10の運転停止を開始するまでの間に実施される各種の機関制御であって、上記停止時処理を除く機関制御を停止準備制御とする。そして、車両運転者が内燃機関10の運転停止を要求した時点から同停止準備制御が終了するまでに要する時間を終了時間としたときに、停止準備時間取得処理M12は、例えば現状の機関運転状態から実施が予測される停止準備制御のうちで最も長い終了時間を停止準備時間TMcとして取得する。なお、各停止準備制御の終了時間としては、例えば予め調べておいた適合値が設定されている。また、停止準備制御が実施されないと予測される場合には、停止準備時間取得処理M12は、停止準備時間TMcを「0」に設定する。
【0041】
回転落ち時間算出処理M13は、回転落ち時間TMdを算出する。この回転落ち時間TMdは、アイドル運転中の内燃機関10が運転停止されることにより、内燃機関10のアイドル回転速度NEidが「0」になるまでに要する時間である。回転落ち時間算出処理M13は、シフト位置SFT及び冷却水温THWに基づいてアイドル回転速度NEidの目標値を取得する。そして、取得したアイドル回転速度NEidの目標値が高いほど回転落ち時間TMdは長くなるように当該回転落ち時間TMdを可変設定する。
【0042】
停止時間算出処理M20は、減速時間TMa及びキーオフ時間TMb及び停止準備時間TMc及び回転落ち時間TMdを読み込む。そして、運転中の内燃機関10が運転停止するまでに要する最短時間である機関停止時間TMesを次式(1)に基づいて算出する。
【0043】
TMes=TMa+TMb+TMc+TMd …(1)
TMes:機関停止時間
TMa:減速時間
TMb:キーオフ時間
TMc:停止準備時間
TMd:回転落ち時間TMd
油温算出処理M30は、冷却水温THWを読み込む。そして、油温算出処理M30は、読み込んだ冷却水温THWに基づき、可変動弁機構100に供給されるオイルの温度である油温THLを算出する。
【0044】
ロック時間算出処理M40は、ロック時間TMfを算出する。このロック時間TMfは、吸気バルブタイミングが最遅角位相になってから上記ロックピン151がロック穴153に嵌まるまでに要する時間、つまりロック機構150による可変機構部110の固定を開始してから当該固定が完了するまでに要する時間である。このロック時間TMfは、解除室として機能するロック穴153からのオイル排出時間に影響される。そして、このオイル排出時間は、油温THLが高くオイルの粘度が低いほど短くなる。そこで、ロック時間算出処理M40は、油温THLを読み込む。そして、読み込んだ油温THLが高いほどロック時間TMfが短くなるように当該ロック時間TMfを算出する。
【0045】
動作可能時間算出処理M50は、機関停止時間TMes及びロック時間TMfを読み込む。そして、機関停止時間TMes内において可変動弁機構100を動作させることが可能な最大時間である動作可能時間TMvvtを次式(2)に基づいて算出する。
【0046】
TMvvt=TMes−TMf …(2)
TMvvt:動作可能時間
TMes:機関停止時間
TMf:ロック時間
アイドル油圧取得処理M60は、アイドル運転時における可変動弁機構100の作動油圧、つまりアイドル運転時において可変動弁機構100に供給される油圧であるアイドル油圧PLidを取得する。アイドル油圧取得処理M60は、機関回転速度NEを読み込む。そして、読み込んだ機関回転速度NEがアイドル回転速度NEidとなっている場合には、現在検出されている油圧PLに基づいてアイドル油圧PLidを取得する。一方、読み込んだ機関回転速度NEがアイドル回転速度NEidになっていない場合には、アイドル油圧取得処理M60は油温THLを読み込む。そして、アイドル油圧取得処理M60は、読み込んだ油温THLに基づいてアイドル運転時の油圧PLを推定し、その推定値に基づいてアイドル油圧PLidを取得する。なお、アイドル油圧取得処理M60は、油温THLが高いほどアイドル運転時の油圧PLの推定値が低くなるように当該推定値を算出する。
【0047】
動作速度算出処理M70は、アイドル油圧PLid及び油温THLを読み込む。そして、動作速度算出処理M70は、アイドル油圧PLid及び油温THLに基づいて可変機構部110の動作速度SRvvtを算出する。この動作速度SRvvtは、可変機構部110の動作によって変化される吸気バルブタイミングの単位時間当たりの最大変化量である。動作速度算出処理M70は、アイドル油圧PLidが高いほど、あるいは油温THLが高いほど、動作速度SRvvtの値が大きくなるように当該動作速度SRvvtを算出する。
【0048】
ガード値算出処理M80は、動作可能時間TMvvt及び動作速度SRvvtを読み込む。そして、ガード値算出処理M80は、読み込んだ動作可能時間TMvvt及び動作速度SRvvtに基づき、次式(3)に基づいて上記ガード値VTgdを算出する。
【0049】
VTgd=TMvvt×SRvvt …(3)
VTgd:ガード値
TMvvt:動作可能時間
SRvvt:動作速度
この式(3)に示されるように、ガード値VTgdは、機関停止時間TMes内において変更可能な吸気バルブタイミングの最大変更量となっている。そしてこの算出されたガード値VTgdを用いて上述した目標吸気バルブタイミングVTpのガード処理が実行される。
【0050】
本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)上記ガード処理を実行することにより、上記固定位相からの吸気バルブタイミングの変更量は、上記ガード値VTgdにて制限される。ここで、そのガード値VTgdは、上述した機関停止時間TMesからロック時間TMfを減じた値である上記動作可能時間TMvvtに、可変機構部110の動作速度SRvvtを乗じることにより算出される。そのため、このガード値VTgdは、内燃機関10が運転停止するまでの間において上記固定位相に戻ることのできる吸気バルブタイミングの最大変更量となる。従って、機関運転中の吸気バルブタイミングは、運転停止したときに上記固定位相に戻ることのできる範囲内で変更されるようになり、機関停止時にはロック機構150による可変機構部110の固定をより確実に行うことができるようになる。また、これにより可変機構部110の固定不良に起因した機関始動時の異音発生や機関始動性の悪化なども抑えることができる。
【0051】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・油温算出処理M30は、冷却水温THWに基づいて油温THLを算出した。この他、油温THLを検出する油温センサが内燃機関10に設けられている場合には、油温算出処理M30を省略する。そして、ロック時間算出処理M40やアイドル油圧取得処理M60は、油温センサの検出値を読み込むようにしてもよい。
【0052】
・ガード値算出処理として、可変動弁機構100に供給されるオイルの粘度Dを算出する粘度算出処理M90を更に備える。そして、ロック時間算出処理M40は、油温THLに加えて算出された粘度Dも読み込む。そして、ロック時間算出処理M40は、油温THLが高いほど、あるいは粘度Dが低いほど、ロック時間TMfが短くなるように当該ロック時間TMfを算出するようにしてもよい。この場合には、ロック時間TMfの推定精度が向上するようになる。
【0053】
また、動作速度算出処理M70は、アイドル油圧PLid及び油温THLに加えて、算出された粘度Dも読み込む。そして、動作速度算出処理M70は、アイドル油圧PLidが高いほど、あるいは油温THLが高いほど、あるいは粘度Dが低いほど、動作速度SRvvtの値が大きくなるように当該動作速度SRvvtを算出するようにしてもよい。この場合には、動作速度SRvvtの推定精度が向上するようになる。
【0054】
なお、粘度算出処理M90による粘度Dの算出は適宜行うことができる。例えば、オイルの温度と機関回転速度(理想的には回転速度が安定するアイドル回転速度がよい)と油圧と粘度Dとの関係性を予め調べておく。そして、その関係性を基にして、オイルの温度及び機関回転速度及び油圧から粘度Dを算出してもよい。また、オイルの温度と油圧と実際の可変機構部110の動作速度と粘度Dとの関係性を予め調べておく。そして、その関係性を基にして、オイルの温度及び油圧及び可変機構部110の動作速度から粘度Dを算出してもよい。
【0055】
・可変動弁機構100のロック機構150の構成は本実施形態に限られない。例えば、ロック穴153がハウジングロータ115の筒状部116に設けられており、ロックピン151が筒状部116の径方向外側方向に突出するように嵌め込まれてもよい。
【0056】
・上記固定位相として、吸気バルブタイミングの最進角位相や、吸気バルブタイミングの最進角位相と吸気バルブタイミングの最遅角位相との間の中間位相を設定してもよい。
・上記可変動弁機構100を排気側カムシャフト70に設けて排気バルブ49のバルブタイミングを変更してもよい。なお、この場合には、機関始動に適した排気バルブ49のバルブタイミングを上記固定位相に設定することが好ましい。
【0057】
・制御装置300は、CPU300Aとメモリ300Bとを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態において実行されるソフトウェア処理の少なくとも一部を処理する専用のハードウェア回路(たとえばASIC等)を備えてもよい。すなわち、制御装置300は、以下の(a)〜(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てをプログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶するメモリ等のプログラム格納装置とを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア処理回路や、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。すなわち、上記処理は、1または複数のソフトウェア処理回路および1または複数の専用のハードウェア回路の少なくとも一方を備えた処理回路によって実行されればよい。
【符号の説明】
【0058】
10…内燃機関、20…シリンダブロック、21…気筒、22…ピストン、30…オイルパン、31…クランクケース、32…貯留ケース、33…クランクシャフト、34…コネクティングロッド、38…オイルポンプ、40…シリンダヘッド、41…凹部、42…燃焼室、43…吸気ポート、44…吸気通路、45…燃料噴射弁、46…吸気バルブ、47…排気ポート、48…排気通路、49…排気バルブ、50…点火プラグ、60…吸気側カムシャフト、61…吸気カム、62…吸気側アーム、70…排気側カムシャフト、71…排気カム、72…排気側アーム、80…オイルコントロールバルブ、100…可変動弁機構、101…カムスプロケット、110…可変機構部、111…ベーンロータ、112…ボス、113…ベーン、113S…ベーンシール部、115…ハウジングロータ、116…筒状部、117…区画壁、117S…区画シール部、118…収容室、119…進角室、120…遅角室、150…ロック機構、151…ロックピン、152…収容穴、153…ロック穴、155…ロックスプリング、157…連通路、159…窪み部、190…第1カバー、191…第2カバー、300…制御装置、300A…中央処理装置(CPU)、300B…メモリ、310…クランク角センサ、311…カム角センサ、312…エアフロメータ、313…水温センサ、314…圧力センサ、315…車速センサ、316…アクセルポジジョンセンサ、317…シフト位置センサ、318…運転スイッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】