本体内にシャフトとともに回転可能に支持されたシリンダバレルと、前記シリンダバレルに軸方向に摺動可能に挿入された複数個のピストンの頭部を摺動可能に保持する斜板と、を有する斜板式可変容量形ピストンポンプであって、
前記本体に摺動自在に嵌挿され、前記斜板を押圧して前記斜板の前記シリンダバレルに対する傾転角を変更するコントロールピストンと、
前記斜板に組み付けられるとともに、前記コントロールピストンに接触する湾曲面を有する突起を備えたリテーナピンと、
前記コントロールピストンに形成されて前記突起に接触する、前記コントロールピストンの摺動方向に垂直な平面部と、
前記斜板において前記コントロールピストンに対向する面に形成された座面部と、
前記リテーナピンに形成され、前記座面部に合致する接合面部と、
前記斜板と前記リテーナピンとの間に介在し、前記接合面部を前記座面部に付勢する付勢部材と、
を有することを特徴とする斜板式可変容量形ピストンポンプ。
前記斜板に、前記リテーナピンと嵌合することによって、前記接合面部が前記座面部に対して摺動して前記リテーナピンが回転することを防止する回転止め部を設けたことを特徴とする請求項1記載の斜板式可変容量型ピストンポンプ。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械や産業機械に用いられる斜板式可変容量型ピストンポンプまたはモータは、吐出容量を決定する斜板の傾転角を制御するためのコントロールピストンを有し、該コントロールピストン先端の曲面が、斜板の平面に形成された接触部に直接または間接的に点または線で接触していた。
【0003】
このようなピストンポンプまたはモータにおいて、コントロールピストンには、ピストンの移動方向以外の荷重、すなわち偏荷重が作用し、コントロールピストンのハウジングが摩耗したり、かじりを発生するおそれがあった。
【0004】
この問題について、特許文献1には、斜板に一体的に組み付けたリテーナピンの先端に断面半円形状の突起を形成し、この突起をコントロールピストンの先端の平面部に線接触させることにより、接触面圧を低減させるとともに、斜板の傾転角にかかわらずコントロールピストンの偏荷重を低減するピストンポンプが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のピストンポンプでは、リテーナピンが斜板を前後に貫通する円筒部を有し、この円筒部の径方向に円筒部および斜板を貫通するスプリングピンによって、リテーナピンが斜板に固定されていた。そのため、スプリングピンが貫通するピン孔の径や形成位置が不正確に形成されてしまった場合には、スプリングピンがピン孔の中で動いてしまい摩耗するおそれや、コントロールピストンから受ける荷重がスプリングピンに集中してしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は前記の問題点を解決するためになされたものであり、部品の加工精度に左右されず、部品の摩耗や破損を防止することができる斜板式可変容量型ピストンポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の斜板式可変容量型ピストンポンプは、本体内にシャフトとともに回転可能に支持されたシリンダバレルと、シリンダバレルに軸方向に摺動可能に挿入された複数個のピストンの頭部を摺動可能に保持する斜板と、を有する斜板式可変容量形ピストンポンプであって、
本体に摺動自在に嵌挿され、斜板を押圧して斜板のシリンダバレルに対する傾転角を変更するコントロールピストンと、
斜板に組み付けられるとともに、コントロールピストンに接触する湾曲面を有する突起を備えたリテーナピンと、
コントロールピストンに形成されて突起に接触する、コントロールピストンの摺動方向に垂直な平面部と、
斜板においてコントロールピストンに対向する面に形成された座面部と、
リテーナピンに形成され、座面部に合致する接合面部と、
斜板とリテーナピンとの間に介在し、接合面部を座面部に付勢する付勢部材と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の斜板式可変容量型ピストンポンプによれば、部品の加工精度に左右されず、部品の摩耗や破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るピストンポンプを示す断面図である。
【図2】同ピストンポンプのリテーナピンを単体で示す斜視図である。
【図3】同ピストンポンプのリテーナピン付近を示す部分拡大断面図である。
【図4】同ピストンポンプのリテーナピン付近を示す部分拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る斜板式可変容量型ピストンポンプについて、図面を用いて説明する。図1に示すように、ピストンポンプ100は、本体102と、本体の内部に回転自在に支持されたシャフト104と、シャフト104にスプライン結合されてシャフト104とともに回転するシリンダバレル106と、斜板108とを有する。
【0012】
シリンダバレル106の回転軸を中心とする同一円周上には、複数個のボア110が形成され、ボア110の内部にはピストン112が摺動自在に挿入されている。ピストン112の先端部は、ボア110の開口から突出し、シュー114を介して斜板108の表面に摺動自在に当接している。
【0013】
斜板108は、本体102に結合されたすべり軸受116に当接するとともに、スプリング118の弾発力によってすべり軸受116に付勢されている。そのため、斜板108は、すべり軸受116を摺動することにより傾転角を変化させることができる。なお、本明細書において、傾転角とは、シリンダバレル106の回転軸に垂直な平面を基準としたときの斜板108の角度をいう。また、斜板108においてシリンダバレル106およびコントロールピストン120に対向する面を前面といい、その反対側の面を背面という。さらに、斜板108の前面側を前方といい、背面側を後方という。
【0014】
ピストンポンプ100では、回転するシリンダバレル106に内蔵されたピストン112が斜板108に係合して摺動することにより、シャフト104の軸方向に沿って往復動し、図示しないアクチュエータに圧力流体を吐出する。そして、斜板108の傾転角が大きくなるほど、ピストン112の往復距離も大きくなり、吐出容量が増加する。
【0015】
斜板108は、傾動用のばね部材130の弾発力により傾転角を増大させる方向に付勢されている。ばね部材130の基端は本体102に当接し、ばね部材130の先端には、斜板108側に弾発力を伝えるためのスプリングホルダ132が装着されている。
【0016】
また、ピストンポンプ100は、本体102に穿設された孔に摺動自在に挿嵌されたコントロールピストン120を有する。斜板108の前方に配置されたコントロールピストン120が、ばね部材130の付勢力に抗して斜板108の傾転角を減少させる方向に押圧し、斜板108に所要の傾転角を付与してピストンポンプ100の吐出容量を制御する。コントロールピストン120の先端は、後述するリテーナピン140の突起142と同じ左右幅を有する凹溝122を有しており、突起142に接触する凹溝122の底面は、コントロールピストン120の摺動方向に対して垂直な平面である平面部120となっている。
【0017】
図2および図3に示すように、本実施形態のピストンポンプ100は、斜板108に一体的に組み付けられて、コントロールピストン120に接触するリテーナピン140を有する。リテーナピン140は断面半円形状の湾曲面を有する突起142を有しており、突起142はコントロールピストン120の凹溝122に嵌入し、平面部120に線接触する。突起142の湾曲面としては断面半円形状が好ましいが、斜板108の傾動範囲において平面部120に線接触できる他の形状でもよい。突起143の左右の側面部143a,143bは、平面状に形成されている。突起142の背面には、斜板108の前面に設けられた座面部160に合致する接合面部144が形成されている。座面部160および接合面部144は、いずれも平面として形成されているが、コントロールピストン120からの荷重を実質的に分散して受けることができれば曲面であってもよい。
【0018】
リテーナピン140は、接合面部144から延びて斜板108を前後に貫通する円筒部146を有するとともに、円筒部146の後端内周面には、スプリングホルダ132を保持する略円すい形状のくぼみ148が形成されている。円筒部146は、斜板108に形成された孔109に内接する外周面を有している。
【0019】
斜板108の背面から後方に突出する円筒部146の外周面には、環状溝150が刻設されている。この環状溝150にはスナップリング152が装着され、スナップリング152は円筒部146から径方向に突出する。このスナップリング152と斜板108の背面との間には、付勢部材である皿ばね154が挟持される。斜板108の背面では、皿ばね154がちょうど収容されるように形成された溝によって、皿ばね154が位置決めされる。皿ばね154の弾発力はスナップリング152を斜板108の背面から軸方向に遠ざけるように作用するため、接合面部144が座面部160に接合するように付勢されるとともに、リテーナピン140が斜板108に組み付けられる。リテーナピン140の前方への移動は皿ばね154の弾発力によって防止され、後方への移動は接合面部144と座面部160との接合によって防止され、上下左右方向への移動は円筒部146が斜板108の孔109に内接することによって防止される。
【0020】
また、図4に示すように、リテーナピン140の回転は、斜板108との嵌合によって防止されている。斜板108における座面部160の左右両側には、前方に突出する回転止め部162a,162bがそれぞれ設けられている。リテーナピン140を斜板108に組み付けると、突起142の側面部143a,143bが左右から回転止め部162a,162bに挟持されるため、接合面部144が座面部160に対して摺動しリテーナピン140が円筒部146の軸周りに回転することが防止される。
【0021】
本実施形態のピストンポンプ100によれば、接合面部144と座面部160とでコントロールピストン120からの荷重を受けることができるため、荷重が局所的に集中することによる摩耗や破損を防止することができる。また、接合面部144を座面部160に付勢する皿ばね154によって、円筒部146が前後方向に摺動することが防止され、摺動部分の摩耗を防止することができる。さらに、皿ばね154によってリテーナピン140を斜板108に組み付けたことにより、高度な加工精度を必要とせずに低コストで部品の摩耗を防止することができる。
【0022】
また、回転止め部162a,162bによってリテーナピン140の回転が防止されることにより、突起142が正しい姿勢で保持されるため、斜板108の傾動範囲において突起142を常にコントロールピストン120の平面部124に線接触させることができる。
【0023】
さらに、リテーナピン140とコントロールピストン120との接触が線接触となることで、点接触に比べて接触面圧が低減される。また、コントロールピストン120がリテーナピン140に接触する際、断面半円形状すなわち円柱の外周面との接触となり、接戦の垂直方向に荷重が作用するため、コントロールピストン120には、その移動方向の荷重しか作用しない。これにより、コントロールピストン120に偏荷重が作用しないため、コントロールピストン120と摺動する本体102の摩耗を低減することができる。
【0024】
以上では、斜板式可変容量型ピストンポンプ100の構造について説明したが、ピストンモータにも同様の構造を適用することができる。