【実施例】
【0014】
実施例に係るロータリーダンパは、ハウジング10、ロータ11、オイル、及び2つのバルブ(第1バルブ12及び第2バルブ13)を有して構成される。
【0015】
図1及び図2に示したように、ハウジング10は、円筒形の周壁14、周壁14の一端側開口部を塞ぐ底壁15、周壁14の他端側開口部を塞ぐ蓋16、周壁14の内周面から突き出る2つの隔壁(第1隔壁17及び第2隔壁18)、及び周壁14の外周面から張り出すフランジ19を有して構成される。
【0016】
図1及び図2に示したように、ロータ11は、シャフト20、及びシャフト20から突き出る2つのベーン(第1ベーン21及び第2ベーン22)を有して構成される。
【0017】
シャフト20の両端にはそれぞれ環状の溝が形成されており、シャフト20は、一端側の溝に蓋16から突出する円筒形の突起16aを挿入し、他端側の溝に底壁15から突出する円筒形の突起15aを挿入することによって支持されている。
【0018】
図1に示したように、ロータリーダンパの内部には、第1隔壁17及び第2隔壁18で仕切られた2つの油室(第1油室23及び第2油室24)が形成されている。
【0019】
第1油室23には、オイルが充填され、また、第1ベーン21が配置されている。第1油室23は、第1ベーン21によって2つの室(第1室25及び第2室26)に区画されている。
【0020】
第2油室24には、オイルが充填され、また、第2ベーン22が配置されている。第2油室24は、第2ベーン22によって2つの室(第3室27及び第4室28)に区画されている。なお、第1油室23及び第2油室24に充填されたオイルの外部への漏出を防止するためにOリング等のシールが設けられるが、図面ではシールが省略されている。
【0021】
図2及び図3に示したように、第1ベーン21には、第1室25と第2室26との間でのオイルの流通を可能にする第1流路29が形成され、第2ベーン22には、第3室27と第4室28との間でのオイルの流通を可能にする第2流路30が形成されている。
【0022】
第1流路29は、第1孔部31、第1室25に開口する第1開口部32(図1参照)、及び第2室26に開口する第2開口部を有する。
【0023】
第2流路30は、第2孔部33、第3室27に開口する第3開口部、及び第4室28に開口する第4開口部34(図1参照)を有する。
【0024】
図1及び図2に示したように、第1ベーン21には、第1バルブ12が設けられている。
【0025】
図3に示したように、第1バルブ12は、第1孔部31の内径よりも大きい内径を有する第1弁室35、及び第1弁室35の中に設けられる球状の第1弁体36を有して構成されるチェックバルブである。
【0026】
第1バルブ12は、第1弁体36が第1弁室35と第1孔部31の境界に形成される弁座に密着することによって第1流路29を閉鎖する。それにより、オイルは第1流路29を通過できなくなる。
【0027】
第1バルブ12は、第1弁体36が弁座から離れることによって第1流路29を開放する。それにより、オイルが第1流路29を通過できる。
【0028】
なお、第1バルブの構造は上記の構造に限定されない。また、第1バルブは、チェックバルブでなくてもよい。第1バルブとして、ロータの一方向への回転時には、第1流路を通過するオイルの流量を制限し、ロータの逆方向への回転時には、第1流路を開放するバルブを採用してもよい。そのようなバルブは、例えば、第1孔部に設けられるコイルスプリングを有し、コイルスプリングの弾性を利用して第1弁体と弁座との距離を変化させ、それにより第1流路を通過するオイルの流量を制限するものであってもよい。また、第1弁体が板バネであり、板バネの弾性を利用して第1弁体と弁座との距離を変化させ、それにより第1流路を通過するオイルの流量を制限するバルブであってもよい。なお、「制限」とは、第1流路を通過するオイルの流量を、第1弁体に付与されるオイルの圧力が大きくなるに従って少なくすることを意味し、この様に制限された流量は、第1流路の開放時に第1流路を通過するオイルの流量よりも少ない。
【0029】
図1及び図2に示したように、第2ベーン22には、第2バルブ13が設けられている。
【0030】
図3に示したように、第2バルブ13は、第2孔部33の内径よりも大きい内径を有する第2弁室37、及び第2弁室37の中に設けられる球状の第2弁体38を有して構成されるチェックバルブである。
【0031】
第2バルブ13は、第2弁体38が第2弁室37と第2孔部33の境界に形成される弁座に密着することによって第2流路30を閉鎖する。それにより、オイルは第2流路30を通過できなくなる。
【0032】
第2バルブ13は、第2弁体38が弁座から離れることによって第2流路30を開放する。それにより、オイルが第2流路30を通過できる。
【0033】
なお、第2バルブの構造は上記の構造に限定されない。また、第2バルブは、チェックバルブでなくてもよい。第2バルブとして、ロータの一方向への回転時には、第2流路を開放し、ロータの逆方向への回転時には、第2流路を通過するオイルの流量を制限するバルブを採用してもよい。そのようなバルブは、例えば、第2孔部に設けられるコイルスプリングを有し、コイルスプリングの弾性を利用して第2弁体と弁座との距離を変化させ、それにより第2流路を通過するオイルの流量を制限するものであってもよい。また、第2弁体が板バネであり、板バネの弾性を利用して第2弁体と弁座との距離を変化させ、それにより第2流路を通過するオイルの流量を制限するバルブであってもよい。なお、「制限」とは、第2流路を通過するオイルの流量を、第2弁体に付与されるオイルの圧力が大きくなるに従って少なくすることを意味し、この様に制限された流量は、第2流路の開放時に第2流路を通過するオイルの流量よりも少ない。
【0034】
従来技術では、第1バルブがロータの逆方向への回転時に第1流路を開放する場合、第2バルブは、第1バルブと同様に、ロータの逆方向への回転時に第2流路を開放する。したがって、ロータの逆方向への回転時には、ロータの一方向への回転時に発生するトルクよりも小さいトルクを発生する。
【0035】
従来技術と対照的に、本発明では、第1バルブ12がロータ11の逆方向への回転時に第1流路29を開放する場合、第2バルブ13は、ロータ11の逆方向への回転時に第2流路30を閉鎖し、又は第2流路30を通過するオイルの流量を制限する。したがって、ロータ11の逆方向への回転時には、ロータ11が一方向に回転するときに発生する最小トルクよりも大きいトルクを発生することができる。
【0036】
図1に示したように、底壁15には、第1室25と第2室26との間でのオイルの流通を可能にする第3流路39、及び第3室27と第4室28との間でのオイルの流通を可能にする第4流路40が形成されている。
【0037】
第3流路39及び第4流路40は、弧状の溝であるが、これに限定されない。第3流路39及び第4流路40は、底壁15以外の場所に形成されてもよい。第3流路39は、第1流路29とは別の流路であり、第4流路40は、第2流路30とは別の流路である。
【0038】
図1に示したように、第1ベーン21は、第1油室23の中で、第1ベーン21が第1隔壁17と接する位置から第1ベーン21が第2隔壁18と接する位置まで移動することができる。したがって、第1ベーン21の可動区間S1は、第1ベーン21が第1隔壁17と接する位置と第1ベーン21が第2隔壁18と接する位置との間である。
【0039】
第1ベーン21の可動区間S1の始点P1は、第1ベーン21が第1隔壁17と接する位置である。第1ベーン21の可動区間S1の終点P2は、第1ベーン21が第2隔壁18と接する位置である。
【0040】
図1に示したように、第1ベーン21の可動区間S1には、第1トルク発生区間S2及び第2トルク発生区間S3が含まれている。
【0041】
第1トルク発生区間S2は、第1ベーン21が一方向に移動することによってトルクを発生する区間である。実施例において、第1トルク発生区間S2は、第1ベーン21の可動区間S1の始点P1と第3流路39の一端が存する位置P3との間であり、第1トルク発生区間S2には、第1ベーン21の可動区間S1の始点P1が含まれている。
【0042】
第2トルク発生区間S3は、第1ベーン21が一方向に移動するときにオイルが第3流路39を通過することによって第1ベーン21が第1トルク発生区間S2を一方向に移動するときよりも低減されたトルクを発生する区間である。実施例において、第2トルク発生区間S3は、第3流路39の一端が存する位置P3と第1ベーン21の可動区間S1の終点P2との間であり、第2トルク発生区間S3には、第1ベーン21の可動区間S1の終点P2が含まれている。
【0043】
実施例において、第1ベーン21の可動区間S1における第1トルク発生区間S2と第2トルク発生区間S3の割合は、第1トルク発生区間S2が第1ベーン21の可動区間S1の約85%を占め、第2トルク発生区間S3が第1ベーン21の可動区間S1の約15%を占めるように設定されている。
【0044】
図1に示したように、第2ベーン22は、第2油室24の中で、第2ベーン22が第1隔壁17と接する位置から第2ベーン22が第2隔壁18と接する位置まで移動することができる。したがって、第2ベーン22の可動区間S4は、第2ベーン22が第1隔壁17と接する位置と第2ベーン22が第2隔壁18と接する位置との間である。
【0045】
第2ベーン22の可動区間S4の始点P4は、第2ベーン22が第1隔壁17と接する位置である。第2ベーン22の可動区間S4の終点P5は、第2ベーン22が第2隔壁18と接する位置である。
【0046】
図1に示したように、第2ベーン22の可動区間S4には、第3トルク発生区間S5及び第4トルク発生区間S6が含まれている。
【0047】
第3トルク発生区間S5は、第2ベーン22が逆方向に移動し、かつオイルが第4流路40を通過することによってトルクを発生する区間である。実施例において、第3トルク発生区間S5は、第2ベーン22の可動区間S4の始点P4と第4流路40の一端が存する位置P6との間であり、第3トルク発生区間S5には、第2ベーン22の可動区間S4の始点P4が含まれている。
【0048】
第4トルク発生区間S6は、第2ベーン22が逆方向に移動することによって第2ベーン22が第3トルク発生区間S5を逆方向に移動するときよりも増大したトルクを発生する区間である。実施例において、第4トルク発生区間S6は、第4流路40の一端が存する位置P6と第2ベーン22の可動区間S4の終点P5との間であり、第4トルク発生区間S6には、第2ベーン22の可動区間S4の終点P5が含まれている。
【0049】
実施例において、第2ベーン22の可動区間S4における第4トルク発生区間S6と第3トルク発生区間S5の割合は、第4トルク発生区間S6が第2ベーン22の可動区間S4の約30%を占め、第3トルク発生区間S5が第2ベーン22の可動区間S4の約70%を占めるように設定されている。
【0050】
上記のように構成されるロータリーダンパは、ロータ11が一方向(図1において、反時計回り)に回転する場合には、以下のように動作する。
【0051】
第1ベーン21が第1ベーン21の可動区間S1の始点P1から第1ベーン21の可動区間S1の終点P2に向かって移動することにより、第1室25のオイルが第1開口部32から第1弁室35に流入し、第1弁体36を弁座に密着させる。それにより、第1流路29が閉鎖される。したがって、第1トルク発生区間S2では、第1室25のオイルがロータ11とハウジング10のギャップを通過して第2室26へ移動するため、ロータ11の回転に対するオイルの抵抗が大きい。
【0052】
一方、第1ベーン21が第1トルク発生区間S2を移動するときに、第2ベーン22は、第2ベーン22の可動区間S4の終点P5から第2ベーン22の可動区間S4の始点P4に向かって移動する。それにより、第3室27のオイルが第4開口部から第2孔部33に流入し、第2弁体38を弁座から離す。それにより、第2流路30が開放される。したがって、第3室27のオイルが第2流路30を通過して第4室28へ移動するため、第2油室24では、ロータ11の回転に対するオイルの抵抗が小さい。
【0053】
したがって、第1ベーン21が第1トルク発生区間S2を移動するときには、トルクが発生する。実施例では、このトルクが約25N・mであった。なお、第2バルブ13がない構成では、第2ベーン22が第4トルク発生区間S6を移動する間に、上記のトルク(約25N・m)よりも大きいトルクが発生する。第2バルブ13は、ロータの一方向への回転の開始時にそのような過大なトルクを発生させないために設けられている。
【0054】
第1ベーン21が第2トルク発生区間S3を移動するときは、第1流路29は閉鎖されているが、第1室25のオイルが第3流路39を通過して第2室26へ移動するため、ロータ11の回転に対するオイルの抵抗が小さい。
【0055】
一方、第1ベーン21が第2トルク発生区間S3を移動するときに、第2流路30は開放されており、さらに第2ベーン22は第4流路40の上を移動するため、第3室27のオイルは第2流路30及び第4流路40を通過して第4室28へ移動する。したがって、第2油室24では、ロータ11の回転に対するオイルの抵抗が非常に小さい。
【0056】
したがって、第1ベーン21が第2トルク発生区間S3を移動するときには、第1ベーン21が第1トルク発生区間S2を一方向に移動するときよりも低減されたトルクが発生する。実施例では、このトルクが約8N・mであった。
【0057】
実施例に係るロータリーダンパによれば、上記の通り、ロータ11の一方向への回転時にトルクを変化させることができる。
【0058】
上記のように構成されるロータリーダンパは、ロータ11が逆方向(図1において、時計回り)に回転する場合には、以下のように動作する。
【0059】
第2ベーン22が第2ベーン22の可動区間S4の始点P4から第2ベーン22の可動区間S4の終点P5に向かって移動することにより、第4室28のオイルが第4開口部34から第2弁室37に流入し、第2弁体38を弁座に密着させる。それにより、第2流路30が閉鎖される。しかしながら、第3トルク発生区間S5では、第2ベーン22が第4流路40の上を移動するため、第4室28のオイルは第4流路40を通過して第3室27へ移動する。したがって、ロータ11の回転に対するオイルの抵抗が小さい。
【0060】
一方、第2ベーン22が第3トルク発生区間S5を移動するときに、第1ベーン21は、第1ベーン21の可動区間S1の終点P2から第1ベーン21の可動区間S1の始点P1に向かって移動する。それにより、第2室26のオイルが第2開口部から第1孔部31に流入し、第1弁体36を弁座から離す。それにより、第1流路29が開放される。したがって、第2室26のオイルが第1流路29を通過して第1室25へ移動するため、第1油室23では、ロータ11の回転に対するオイルの抵抗が小さい。
【0061】
したがって、第2ベーン22が第3トルク発生区間S5を移動するときには、第2ベーン22が第4トルク発生区間S6を移動するときよりも低減されたトルクが発生する。実施例では、このトルクが約12N・mであった。
【0062】
但し、第1ベーン21が第3流路39の上を移動するときは、第2室26のオイルが第1流路29及び第3流路39を通過して第1室25へ移動するため、第1油室23では、ロータ11の回転に対するオイルの抵抗が非常に小さい。
【0063】
したがって、第2ベーン22が第3トルク発生区間S5を移動し、かつ第1ベーン21が第2トルク発生区間S3を移動するときには、さらに低減されたトルクが発生する。実施例では、このトルクが約8N・mであった。
【0064】
第2ベーン22が第4トルク発生区間S6を移動するときは、第2流路30が閉鎖されているため、第4室28のオイルがロータ11とハウジング10のギャップを通過して第3室27へ移動する。したがって、第2油室24では、ロータ11の回転に対するオイルの抵抗が大きい。
【0065】
一方、第2ベーン22が第4トルク発生区間S6を移動するときに、第1流路29は開放されているため、第2室26のオイルは第1流路29を通過して第1室25へ移動する。したがって、第1油室23では、ロータ11の回転に対するオイルの抵抗が小さい。
【0066】
したがって、第2ベーン22が第4トルク発生区間S6を移動するときには、第2ベーン22が第3トルク発生区間S5を逆方向に移動するときよりも増大したトルクが発生する。実施例では、このトルクが約25N・mであった。
【0067】
実施例に係るロータリーダンパによれば、上記の通り、ロータ11の逆方向への回転時にトルクを変化させることができる。
【0068】
実施例に係るロータリーダンパは、第1トルク発生区間S2が第1ベーン21の可動区間S1の約85%を占めるように設定されているため、ロータ11が一方向に回転するときは、第1ベーン21の可動区間S1の始点P1から約110度の位置でトルクが約25N・mから約8N・mに変化する。また、実施例に係るロータリーダンパは、第2トルク発生区間S3が第1ベーン21の可動区間S1の約15%を占めるように設定されているため、ロータ11が逆方向に回転するときは、第2ベーン22の可動区間S4の始点P4から約20度の位置でトルクが約8N・mから約12N・mに変化する。さらに、実施例に係るロータリーダンパは、第3トルク発生区間S5が第2ベーン22の可動区間S4の約70%を占めるように設定されているため、ロータ11が逆方向に回転するときは、第2ベーン22の可動区間S4の始点P4から約90度の位置でトルクが約12N・mから約25N・mに変化する。
【0069】
実施例に係るロータリーダンパによれば、上記の通り、ロータ11が一方向に回転するときにトルクを発生する一方で、ロータ11の逆方向への回転時には、ロータ11が一方向に回転するときに発生する最小トルク(約8N・m)よりも大きいトルク(約12N・m又は約25N・m)を発生することができる。また、ロータ11の逆方向への回転時に、ロータ11の一方向への回転時の最大トルク(約25N・m)と同じ大きさのトルクを発生することができる。
【0070】
実施例に係るロータリーダンパによれば、上記の通り、ロータ11が一方向に回転するときにトルクが変化する位置と、ロータ11が逆方向に回転するときにトルクが変化する位置を異ならせることができる。
【0071】
実施例に係るロータリーダンパは、第1ベーン21の可動区間S1の始点P1が第1トルク発生区間S2に含まれ、第1ベーン21の可動区間S1の終点P2が第2トルク発生区間S3に含まれているため、ロータ11の一方向への回転の開始付近では、ロータ11の一方向への回転の終了付近で発生するトルクよりも大きいトルクを発生することができる。
【0072】
なお、第1ベーンの可動区間S1の終点P2が第1トルク発生区間S2に含まれ、第1ベーンの可動区間S1の始点P1が第2トルク発生区間S3に含まれるように構成してもよい。この場合には、ロータ11の一方向への回転の開始付近では、ロータ11の一方向への回転の終了付近で発生するトルクよりも小さいトルクを発生することができる。
【0073】
また、第2トルク発生区間S3に第1ベーンの可動区間S1の始点P1も第1ベーンの可動区間S1の終点P2も含まれない構成であってもよいし、第3トルク発生区間S5に第2ベーンの可動区間S4の始点P4も第2ベーンの可動区間S4の終点P5も含まれない構成であってもよい。