【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る試薬容器が適用される自動分析システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1の自動分析システムの分析装置の構成の一例を示す斜視図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る試薬容器の構成の一例を示す斜視図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係る試薬容器の構成の一例を示す斜視図である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係る試薬容器の構成の一例を示す断面図である。
【図6】図6は、第1の実施形態に係る試薬容器の構成の一例を示す断面図である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係る試薬容器の構成の一例を示す断面図である。
【図8】図8は、第2の実施形態に係る試薬容器の筒部の構成の一例を示す断面図である。
【図9】図9は、第2の実施形態に係る試薬容器の筒部の構成の一例を示す断面図である。
【図10】図10は、第2の実施形態に係る試薬容器の筒部の構成の一例を示す断面図である。
【図11】図11は、第2の実施形態に係る試薬容器の筒部の構成の一例を示す断面図である。
【図12】図12は、変形例における試薬容器として、試薬カートリッジの構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、試薬容器が適用される自動分析システムの実施形態について詳細に説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る試薬容器が適用される自動分析システム100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示す自動分析システム100は、分析装置70と、駆動装置80と、処理装置90とを備えている。
【0009】
分析装置70は、各検査項目の標準試料や被検体から採取された被検試料(血液や尿などの生体試料)と、各検査項目の分析に用いる試薬との混合液を測定して、標準データや被検データを生成する。分析装置70は、試料の分注、試薬の分注等を行う複数のユニットを備え、駆動装置80は、分析装置70の各ユニットを駆動する。処理装置90は、駆動装置80を制御して分析装置70の各ユニットを作動させる。
【0010】
処理装置90は、入力装置50と、出力装置40と、処理回路30と、記憶回路60とを有する。
【0011】
入力装置50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、各検査項目の分析パラメータを設定するための入力、被検試料の被検識別情報及び検査項目を設定するための入力等を行う。
【0012】
出力装置40は、プリンタと、ディスプレイとを備えている。プリンタは、処理回路30で生成された検量データや分析データの印刷を行う。ディスプレイは、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶パネルなどのモニタであり、処理回路30で生成された検量データや分析データの表示を行う。
【0013】
記憶回路60は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置などである。
【0014】
処理回路30は、システム全体を制御する。例えば、処理回路30は、図1に示すように、データ生成機能31及び分析制御機能32を実行する。分析制御機能32は、駆動装置80を制御して分析装置70の各ユニットを作動させる。データ生成機能31は、分析装置70で生成された標準データや被検データを処理して各検査項目の検量データや分析データを生成する。
【0015】
ここで、例えば、処理回路30の構成要素であるデータ生成機能31及び分析制御機能32が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路60に記録されている。処理回路30は、各プログラムを記憶回路60から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路30は、図1の処理回路30内に示された各機能を有することとなる。ここで、データ生成機能31は、データ生成部の一例である。分析制御機能32は、分析制御部の一例である。
【0016】
なお、図1においては、単一の処理回路30にて、以下に説明する各処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0017】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路60に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路60にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0018】
図2は、図1の自動分析システム100の分析装置70の構成の一例を示す斜視図である。
【0019】
分析装置70は、複数の試料容器11を保持するサンプルディスク5を備えている。試料容器11は、各検査項目の標準試料や被検試料等の試料を収容する。
【0020】
分析装置70は、更に、複数の試薬容器6と、複数の試薬容器6の各々を格納する試薬庫1と、複数の試薬容器7と、複数の試薬容器7の各々を格納する試薬庫2とを備えている。試薬容器6は、試料に含まれる各検査項目の成分と反応する成分を含有する試薬を収容する。例えば、試薬容器6は、1試薬系の試薬又は2試薬系の第1試薬を収容する。試薬庫1は、各検査項目の試薬容器6を回動可能に保持するターンテーブルである試薬ラック1aを備えている。試薬容器7は、各検査項目の2試薬系の試薬容器6内の試薬とは異なる第2試薬を収容する。試薬庫2は、各検査項目の試薬容器7を回動可能に保持するターンテーブルである試薬ラック2aを備えている。
【0021】
ここで、輸送前において、試薬容器6、7に試薬が封入され、試薬容器6、7は閉栓された状態で輸送される。輸送後において、試薬容器6、7は、それぞれ、開栓された状態で試薬庫1、2に格納される。このため、試薬が空気との接触で劣化しないように、試薬容器6、7はそれぞれ試薬庫1、2内で保冷される。
【0022】
分析装置70は、更に、円周上に配置された複数の反応容器3と、複数の反応容器3の各々を回転移動可能に保持する反応ディスク4とを備えている。
【0023】
分析装置70は、更に、試料分注プローブ16と、試料分注アーム10と、試料分注ポンプユニット16aと、試料検出器16bと、洗浄槽16cとを備えている。試料分注プローブ16は、試料の分注を行う。具体的には、試料分注プローブ16は、サンプルディスク5に保持された試料容器11内の試料を検査項目毎に吸引して、当該検査項目の分析パラメータとして設定された量の試料を反応容器3内へ吐出する。試料分注アーム10は、試料分注プローブ16を回動及び上下移動可能に支持する。試料分注ポンプユニット16aは、試料分注プローブ16に試料の吸引及び吐出を行わせる。試料検出器16bは、サンプルディスク5に保持された試料容器11内の試料の液面に、当該液面の上方から下降した試料分注プローブ16の先端部が接触することにより、試料容器11内の試料を検出する。例えば、試料検出器16bは、試料分注プローブ16と電気的に接続され、試料分注プローブ16の先端部が試料容器11内の試料と接触したときの静電容量の変化により、試料容器11内の試料を検出する。洗浄槽16cは、試料分注プローブ16を試料の分注終了毎に洗浄する。
【0024】
分析装置70は、更に、試薬分注プローブ14と、試薬分注アーム8と、試薬分注ポンプユニット14aと、試薬検出器14bと、洗浄槽14cと、撹拌子17と、撹拌アーム18と、洗浄槽17aとを備えている。試薬分注プローブ14は、試薬容器6内の試薬の分注を行う。具体的には、試薬分注プローブ14は、試薬ラック1aに保持された各検査項目の試薬容器6内の試薬を吸引して、当該検査項目の分析パラメータとして設定された量の試薬を、試料が分注された反応容器3内に吐出する。試薬分注アーム8は、試薬分注プローブ14を回動及び上下移動可能に支持する。試薬分注ポンプユニット14aは、試薬分注プローブ14に試薬の吸引及び吐出を行わせる。試薬検出器14bは、液面検知機能として、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の試薬の液面に、当該液面の上方から下降した試薬分注プローブ14の先端部が接触することにより、試薬容器6内の試薬を検出する。例えば、試薬検出器14bは、試薬分注プローブ14と電気的に接続され、試薬分注プローブ14の先端部が試薬容器6内の試薬と接触したときの静電容量の変化により、試薬容器6内の試薬を検出する。洗浄槽14cは、試薬分注プローブ14を試薬の分注毎に洗浄する。撹拌子17は、反応容器3内に分注された試料と試薬との混合液を撹拌する。撹拌アーム18は、撹拌子17を回動及び上下移動可能に支持する。洗浄槽17aは、撹拌子17を混合液の撹拌毎に洗浄する。
【0025】
分析装置70は、更に、試薬分注プローブ15と、試薬分注アーム9と、試薬分注ポンプユニット15aと、試薬検出器15bと、洗浄槽15cと、撹拌子19と、撹拌アーム20と、洗浄槽19aとを備えている。試薬分注プローブ15は、試薬容器7内の試薬の分注を行う。ここで、試薬分注プローブ15、試薬分注アーム9、試薬分注ポンプユニット15a、試薬検出器15b、洗浄槽15c、撹拌子19、撹拌アーム20、洗浄槽19aの機能は、それぞれ、試薬分注プローブ14、試薬分注アーム8、試薬分注ポンプユニット14a、試薬検出器14b、洗浄槽14c、撹拌子17、撹拌アーム18、洗浄槽17aの機能と同じであるため、説明を省略する。
【0026】
分析装置70は、更に、測定部13と、反応容器洗浄ユニット12とを備えている。測定部13は、撹拌子17に撹拌された混合液を収容する反応容器3や、撹拌子19に撹拌された混合液を収容する反応容器3に、光を照射して混合液を測定する。具体的には、測定部13は、回転移動している測定位置の反応容器3に光を照射し、この照射により反応容器3内の試料及び試薬の混合液を透過した光を検出する。そして、測定部13は、検出した信号を処理してデジタル信号で表される標準データや被検データを生成して処理装置90の処理回路30に出力する。反応容器洗浄ユニット12は、測定部13による測定が終了した反応容器3内を洗浄する。
【0027】
駆動装置80は、分析装置70の各ユニットを駆動する。
【0028】
駆動装置80は、分析装置70のサンプルディスク5を駆動する機構を備え、各試料容器11を回動移動させる。また、駆動装置80は、試薬庫1の試薬ラック1aを駆動する機構を備え、各試薬容器6を回動移動させる。また、駆動装置80は、試薬庫2の試薬ラック2aを駆動する機構を備え、各試薬容器7を回動移動させる。また、駆動装置80は、反応ディスク4を駆動する機構を備え、各反応容器3を回転移動させる。
【0029】
また、駆動装置80は、試料分注アーム10を回動及び上下移動させる機構を備え、試料分注プローブ16を試料容器11と反応容器3との間で移動させる。また、駆動装置80は、試料分注ポンプユニット16aを駆動する機構を備え、試料分注プローブ16に試料を分注させる。すなわち、試料分注プローブ16に試料容器11の試料を吸引させ、当該試料を反応容器3に吐出させる。
【0030】
また、駆動装置80は、試薬分注アーム8、9を回動及び上下移動させる機構を備え、試薬分注プローブ14、15をそれぞれ試薬容器6、7と反応容器3との間で移動させる。また、駆動装置80は、試薬分注ポンプユニット14a、15aを駆動する機構を備え、試薬分注プローブ14、15に試薬を分注させる。すなわち、試薬分注プローブ14、15に試薬容器6、7の試薬を吸引させ、当該試薬を反応容器3に吐出させる。また、駆動装置80は、撹拌アーム18、20を駆動する機構を備え、撹拌子17、19を反応容器3内に移動させる。そして、駆動装置80は、撹拌子17、19を駆動する機構を備え、反応容器3内の試料及び試薬の撹拌を行わせる。
【0031】
処理装置90の分析制御機能32は、駆動装置80を制御して分析装置70の各ユニットを作動させる。
【0032】
以上、第1の実施形態に係る試薬容器が適用される自動分析システム100の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る試薬容器は、試薬容器の輸送時や、試薬容器の輸送後に行われるターンテーブル(例えば、試薬庫1、2)の回転動作時などの移動時において、試薬の泡の発生を抑制する。
【0033】
上述のように、試薬には界面活性剤等の泡立ちやすい成分が含まれているものがある。このため、試薬容器6、7の輸送時や、試薬容器6、7の輸送後に行われるターンテーブルの回転動作時などの移動時において、試薬容器6、7内の試薬の液面が波立つことにより、泡が発生する場合がある。そこで、自動分析システム100では、試薬分注プローブ14、15が降下し試薬に突入する際に、静電容量の変化を検知し、プローブ先端が試薬液面から一定の深さで止まるような液面検知機能(例えば、試薬検出器14b、15b)を備えている。自動分析システム100では、試薬の液面の波立ちで泡が発生した場合、液面検知機能が試薬上部の泡を検知し、プローブ先端が液面に届かない、もしくは、浅い深さで停止すると、試薬吸引時に空吸いしたり、必要な試薬量を吸引できないことから、試薬の分注が行われる際に、プローブにより分注に必要な量の試薬を正しく吐出できない可能性がある。そのため、移動時において、試薬の泡の発生を抑制する必要がある。
【0034】
そこで、第1の実施形態に係る試薬容器は、被検試料と試薬との混合液を測定する自動分析システム100に用いられる試薬容器であって、ケースと、袋部と、取出口とを備える。ケースは、自動分析システム100のターンテーブルに格納される。袋部は、ケースに内蔵され、当該ケースよりも柔軟な部材であり、試薬を収容する。試薬は、取出口から取り出される。具体的には、第1の実施形態に係る試薬容器は、更に、筒部を備えている。筒部は、袋部に取り付けられ、袋部内に収容された試薬を吸引するプローブが、上記取出口である筒部の一端側から挿入される。このとき、袋部は、プローブによる試薬の吸引に伴ってしぼむ。
【0035】
以下、図3〜図6を用いて、第1の実施形態に係る試薬容器200について説明する。ここで、第1の実施形態に係る試薬容器200は、例えば、図2に示す試薬容器6、7に相当する。
【0036】
図3に示すように、第1の実施形態に係る試薬容器200は、ケース210と、ケース210に内蔵された袋部220と、袋部220に取り付けられた筒部230とを備えている。図4に示すように、筒部230の一端230a側に設けられたキャップ240が外された状態において、筒部230は、袋部220内に収容された試薬を吸引するプローブが一端230a側から挿入される。ここで、プローブは、図2に示す試薬分注プローブ14、15に相当する。
【0037】
袋部220は、ケース210よりも柔軟な部材で形成され、例えば、樹脂フィルムによって形成されている。袋部220の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、及び、ポリブチレン等で構成されたグループから選択されたポリマ材料が使用される。袋部220は、当該選択されたポリマ材料のフィルム(樹脂フィルム)によって形成される。
【0038】
袋部220は、例えば、第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムによって形成されている。具体的には、袋部220は、第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムの面が互いに対向するように、第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムを接合することによって構成されている。第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムの接合には、例えば、熱溶着などが用いられる。図3に示すように、袋部220は、第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムを熱溶着することによって形成されたシール部221と、シール部221によって囲われた充填部222とを有する。充填部222は、試薬を収容する容器となる。
【0039】
袋部220には、図3に示すように、折り癖がつけられている。例えば、折り癖は、袋部220の上部220aにつけられている。プローブにより試薬が吸引されたときに、袋部220内に収容された試薬が袋部220から筒部230を介して排出される際、当該試薬が少なくなる。これに伴って、図4に示すように、袋部220内に収容された試薬の液面の位置が下がり、折り癖がついた袋部220は、しぼむ。例えば、折り癖がついた袋部220は、図4の矢印A、A’が示す方向にしぼむ。
【0040】
袋部220には、図5に示すように、試薬の充填時に袋部220内の空気を排出するための大気開放部223が設けられている。例えば、大気開放部223は、袋部220の上部220aに1箇所設けられている。試薬の充填後において、例えば熱溶着により大気開放部223が封止される。具体的には、図6に示すように、袋部220は、大気開放部223が封止された部分224を有する。
【0041】
筒部230は、図3〜図6に示すように、中空の円筒形状であり、樹脂によって形成されている。筒部230の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、及び、ポリブチレン等で構成されたグループから選択されたポリマ材料が使用される。筒部230は、当該選択されたポリマ材料(樹脂)によって形成される。
【0042】
筒部230は、図3〜図6に示すように、袋部220内でプローブの挿入方向に沿って立設されている。具体的には、筒部230の一端230a側は、袋部220から露出され、筒部230の他端230b側は、袋部220の底部222bの中央部分に配置されている。袋部220の上部220aの中央部分において、筒部230の外周面には、袋部220内で筒部230を取り付けるための取付部231が設けられている。取付部231は、袋部220の樹脂フィルムに沿って延びる板状の部分として構成されている。例えば、取付部231は、筒部230を袋部220に取り付ける際に、袋部220の樹脂フィルムに対して熱溶着される。
【0043】
筒部230には、図3〜図6に示すように、貫通した孔233が設けられている。孔233は、筒部230の他端230b側の側面に形成され、筒部230の内部232と袋部220内とを連通する。筒部230の他端230bは、筒部230の一端230a側とは反対側の端部であり、プローブが挿入されない端部である。試薬は、筒部230の一端230a側から内部232及び孔233を介して、袋部220内に充填される。また、袋部220内に収容された試薬は、内部232を介して、プローブにより吸引される。
【0044】
図3〜図6に示すように、袋部220の底部222bは、筒部230の他端230bに近づくにつれて試薬庫の設置面に近づくように、傾斜している。例えば、袋部220の底部222bは、図5の矢印B、B’が示す方向に傾斜している。すなわち、袋部220の底部222bは、プローブにより試薬が吸引されたときに、試薬が少なくなることに伴って、筒部230の孔233から内部232に試薬が流れるような形状となっている。
【0045】
なお、筒部230が袋部220内でプローブの挿入方向に立設する位置は、袋部220の側面ではなく、袋部220の中央部分付近であることが好ましい。例えば、図2に示す駆動装置80が試薬庫の試薬ラックを駆動することにより、試薬庫の回転軸を中心に試薬容器200を回動移動させた場合、試薬容器200内の試薬の液面は、遠心力により、当該回転軸から遠い径方向外側が一番高くなり、当該回転軸に近い径方向内側が一番低くなる。ここで、筒部230が袋部220の当該径方向外側に配置されている場合、プローブに近い位置ではあるが、遠心力により試薬容器200内の試薬の液面が高くなるため、波立ちによる泡が発生しやすい状態となり、好ましくない。そこで、袋部220の底部222bが傾斜していることにより得られる効果と、筒部230とプローブとの位置関係とを考慮して、筒部230が袋部220の中央部分から径方向外側寄りにシフトして立設されていることが好ましい。
【0046】
ケース210は、袋部220よりも硬い部材で形成されている。例えば、ケース210は、金属又はポリマ材料によって形成される。
【0047】
ケース210は、図3、図6に示すように、その内部に袋部220を内蔵する。例えば、ケース210は、筐体210a、210bによって形成されている。筐体210aは、側面部と当該側面部に一体的に形成された底面部とから構成され、筐体210a内には、筒部230が一体化された袋部220が設けられる。筐体210bは、側面部と当該側面部に一体的に形成された上面部とから構成され、筐体210a上に配置される。筐体210bの上面部の中央部分には、貫通した孔が形成されている。例えば、筒部230が一体化された袋部220が設けられた筐体210aと、筐体210a上に配置された筐体210bとを、図示しないロック機構によりロックした場合、袋部220は、筐体210a、210bに内蔵され、筒部230の一端230a側は、筐体210bの上面部の孔から露出する。露出した筒部230の一端230a側には、着脱可能なキャップ240が設けられる。
【0048】
ここで、図3〜図6において、袋部220の底部222bは、袋部220内で筒部230の他端230b側が試薬庫の設置面に近くなるように、傾斜しているが、これに限定されない。例えば、図7に示すように、ケース210の底面部(この場合、筐体210aの底面部)は、袋部220内で筒部230の他端230bに近づくにつれて試薬庫の設置面に近づくように、傾斜していてもよい。すなわち、ケース210の底面部は、プローブにより試薬が吸引されたときに、試薬が少なくなることに伴って、筒部230の孔233から内部232に試薬が流れるような形状となっている。
【0049】
以上、説明したとおり、第1の実施形態に係る試薬容器200は、試薬容器200の輸送時や、試薬容器200の輸送後に行われるターンテーブルの回転動作時などの移動時において、試薬の泡の発生を抑制する。具体的には、柔軟な部材である樹脂フィルムによって形成された袋部220に試薬を収容しているため、移動時において、試薬の液面の波立ちによる泡が発生しにくい。
【0050】
また、第1の実施形態に係る試薬容器200では、柔軟な部材によって形成された袋部220に試薬を収容しているため、プローブにより試薬が吸引されたときに、試薬が袋部220から筒部230を介して排出されて、袋部220内に収容された試薬の液面の位置が下がる。これに伴い、袋部220がしぼみ、袋部220内へ空気が流入しにくい。その結果、本実施形態では、試薬と空気との接触を避けることができ、試薬の寿命を長くすることができる。
【0051】
また、第1の実施形態に係る試薬容器200では、試薬容器200の輸送後において、ターンテーブルにセッティングしやすい構造を有する。具体的には、試薬容器200の輸送時において、自動分析システム100のターンテーブルに格納されるケース210に、筒部230が一体化され、かつ、試薬が収容された袋部220を内蔵しているため、試薬容器200の輸送後において、ターンテーブルにセッティングしやすい。
【0052】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る試薬容器200では、以下の構成により、袋部220内に収容された試薬の液面の位置が下がることに対して、筒部230内の試薬の液面の位置を維持する。
【0053】
以下、図8〜図11を用いて、第2の実施形態に係る試薬容器200について説明する。
【0054】
図8に示すように、筒部230は、プローブ260の外径よりも小さい内径を有する柔軟性のあるチューブである。ここで、プローブ260は、図2に示す試薬分注プローブ14、15に相当する。筒部230の一端230a側には、プローブ260の挿入方向への流入を防止する一方弁250が設けられている。一方弁250は、閉じている間、一方弁250上で筒部230内の試薬の液面の位置を維持する。例えば、筒部230内において、一方弁250上には、図8に示すような量の試薬261が存在する。例えば、図1、2の処理装置90が駆動装置80を制御することにより、図8に示すように、プローブ260を筒部230の一端230aの上方の所定位置に移動させ、プローブ260の先端部を筒部230の一端230aの上方の所定位置から下降させる。
【0055】
このとき、図9に示すように、プローブ260の先端部が試薬容器200内の試薬と接触することで、検出器により試薬容器200内の試薬(例えば、試薬261)が検出される。ここで、検出器は、図2に示す試薬検出器14b、15bに相当する。そして、試薬が検出される位置で、プローブ260により試薬が吸引される。このとき、図10に示すように、プローブ260の吸引により一方弁250が開き、プローブ260内に、一方弁250上に存在した量の試薬261と、所定量の試薬262とが吸引される。
【0056】
所定量の試薬262は、一方弁250上に存在した量の試薬261よりも多い。また、所定量の試薬262は、検査項目の分析パラメータとして設定された量よりも多い。そして、例えば、図1、2の処理装置90が駆動装置80を制御することにより、図11に示すように、プローブ260の先端部を上昇させ、プローブ260を、図2の反応ディスク4上方の所定位置に移動させる。次いで、図1、2の処理装置90が駆動装置80を制御することにより、プローブ260の先端部を、反応ディスク4上方の所定位置から下降させ、プローブ260に吸引された所定量の試薬262のうち、検査項目の分析パラメータとして設定された量の試薬を、図2の反応容器3内に吐出させる。試薬261と、所定量の試薬262のうち、反応容器3内に吐出されない量の試薬とが破棄され、プローブ260は洗浄槽により洗浄される。ここで、洗浄槽は、例えば、図2に示す洗浄槽14c、15cに相当する。
【0057】
また、図11に示すように、一方弁250は、閉じることにより、一方弁250上で筒部230内の試薬の液面の位置を維持する。例えば、筒部230内において、一方弁250上には、図8の試薬261と同じ量の試薬263が存在する。
【0058】
このように、第2の実施形態に係る試薬容器200では、上記構成により、袋部220内に収容された試薬の液面の位置が下がることに対して、筒部230内の試薬の液面の位置を維持することができる。なお、第2の実施形態に係る試薬容器200では、袋部220の底部222bが傾斜していなくてもよいし、筒部230が立設される位置が袋部220の中央部分付近でなくてもよい。
【0059】
また、第2の実施形態に係る試薬容器200は、第1の実施形態と同様に、二重構造であり、内部が袋である。例えば、図3と同様に、試薬容器200は、ケース210と、ケース210に内蔵された袋部220とを備え、袋部220は、ケース210よりも柔軟な部材で形成されている。このように、第2の実施形態に係る試薬容器200は、柔軟な部材で形成された袋部220に試薬を収容しているため、試薬容器200の輸送時や、試薬容器200の輸送後に行われるターンテーブルの回転動作時などの移動時において、試薬の液面の波立ちによる泡が発生しにくい。また、第2の実施形態に係る試薬容器200は、柔軟な部材で形成された袋部220に試薬を収容しているため、プローブにより試薬が吸引されたときに、試薬が袋部220から筒部230を介して排出されて、袋部220内に収容された試薬の液面の位置が下がる。これに伴い、袋部220がしぼみ、袋部220内へ空気が流入しにくい。その結果、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、試薬と空気との接触を避けることができ、試薬の寿命を長くすることができる。
【0060】
(その他の実施形態)
これまで第1、第2の実施形態について説明したが、上述した第1、第2の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0061】
上述した実施形態では、試薬が取り出される取出口として、試薬容器200から突出した筒部230の一端側が用いられる場合について説明したが、実施形態は、これに限定されるものではない。取出口は、試薬容器から突出していなくてもよく、例えば、上述した実施形態は、図12に示すような分注機構を備えた場合であっても適用可能である。
【0062】
図12に示すように、変形例における試薬容器として、試薬カートリッジ300は、ケース340と、ケース340に内蔵された試薬供給プローブ310及び試薬供給ユニット320とを備えている。試薬供給ユニット320は、容器321と、シリンダー322と、一方弁323、324と、容器325と、電磁弁326とを備えている。試薬供給プローブ310、シリンダー322、一方弁323、324は、分注機構に相当する。
【0063】
容器321は、試薬を収容する。ここで、容器321は、上述した実施形態における試薬容器200に相当し、例えば、上述した実施形態におけるケース210と、ケース210に内蔵された袋部220とを備えている。言い換えれば、容器321は、上述した実施形態における筒部230を備えていない。
【0064】
一方弁323は、シリンダー322の先端322a側の側面と、容器321の底面部321a側の側面との間に設けられている。一方弁324は、シリンダー322の先端322aと、試薬供給プローブ310の先端部310aとは反対側の他端部側との間に設けられている。シリンダー322の先端322aとは反対側の終端322bは、容器325の底面部325aを貫通して容器325の内部に収納されている。電磁弁326は、容器325の底面部325aと容器321の側面部321bとが交わる領域に設けられ、開放時に容器325と容器321とを繋げる。
【0065】
図12を用いて、試薬カートリッジ300を用いた処理の一例を説明する。
【0066】
まず、試薬の分注が行われる場合、試薬供給ポンプユニット330の端子330bは、試薬供給ポンプユニット330を移動可能に支持するアームと接続される。例えば、処理装置90の分析制御機能32は、試薬を吐出させる試薬カートリッジ300と試薬供給ポンプユニット330とを接続させる制御信号を駆動装置80に出力する。この場合、駆動装置80は、当該制御信号に応じて、試薬供給ポンプユニット330を移動可能に支持するアームを移動させて、図12に示すように、当該試薬カートリッジ300の試薬供給ユニット320の容器325の上面部325bと試薬供給ポンプユニット330のポンプヘッド330aとを接続させる。具体的には、ケース340の上面部には開口部が形成され、容器325の上面部325bは、当該開口部から露出する。また、露出した上面部325bには貫通した孔が形成され、当該孔の周辺には、例えば、ゴム製のオーリングが設けられている。そして、当該オーリングをポンプヘッド330aが覆う又は掴むことにより、容器325の上面部325bとポンプヘッド330aとが接続される。ケース340の上面部に形成された開口部は、取出口の一例である。
【0067】
次に、処理装置90の分析制御機能32は、例えば、所定量の試薬を試薬カートリッジ300に吸引させるための媒体を試薬供給ポンプユニット330に吸引させる制御信号を駆動装置80に出力する。この場合、駆動装置80は、当該制御信号に応じて、試薬供給ポンプユニット330を駆動して、当該媒体をポンプヘッド330aから吸引するように、試薬供給ポンプユニット330を制御する。例えば、試薬供給ポンプユニット330の端子330bには、駆動装置80からアームを介して試薬カートリッジ300に媒体を吐出したり、試薬カートリッジ300からアームを介して駆動装置80に媒体を吸引したりする管が設けられている。また、試薬供給ポンプユニット330の端子330bには、駆動装置80がアームを介して試薬供給ポンプユニット330を制御するための信号線が接続されている。駆動装置80は、当該制御信号に応じて、管を通してポンプヘッド330aから媒体を吸引するように、試薬供給ポンプユニット330を信号線により制御する。この場合、容器325の内部に収納されたシリンダー322の先端322aとは反対側の終端322bにおいて、試薬供給ポンプユニット330により媒体が吸引される。これにより、図12に示すように、容器321から一方弁323を経由してシリンダー322内に試薬が流入する。
【0068】
ここで、所定量の試薬は、検査項目の分析パラメータとして設定された量よりも僅かに多い。そのため、図12に示すように、容器321から一方弁323を経由してシリンダー322内に試薬が流入する際に、シリンダー322内には、検査項目の分析パラメータとして設定された量の試薬が流入すると共に、シリンダー322の終端322bから僅かに溢れた試薬が容器325に収容される。このとき、容器325の底面部325aが傾斜しているため、容器325内において、試薬は容器321の側面部側に流れる。
【0069】
次に、処理装置90の分析制御機能32は、試薬を吐き出すための媒体を試薬供給ポンプユニット330から試薬カートリッジ300に注入させる制御信号を駆動装置80に出力する。この場合、駆動装置80は、当該制御信号に応じて、試薬供給ポンプユニット330を駆動して、当該媒体をポンプヘッド330aから送出するように、試薬供給ポンプユニット330を制御する。例えば、駆動装置80は、当該制御信号に応じて、管を通してポンプヘッド330aから媒体を送出するように、試薬供給ポンプユニット330を信号線により制御する。この場合、容器325の内部に収納されたシリンダー322の終端322bにおいて、試薬供給ポンプユニット330により媒体が送出される。これにより、図12に示すように、シリンダー322内に流入した試薬が一方弁324を経由して試薬供給プローブ310から吐出される。
【0070】
ここで、電磁弁326により、容器325に収容された試薬を容器321に戻すことができる。具体的には、電磁弁326は、本体部と弁とを有し、処理装置90の分析制御機能32は、当該弁を開放するための制御信号を、例えば無線信号により当該本体部に出力する。当該本体部は、処理装置90から出力された制御信号に応じて、当該弁を開放する。このとき、試薬が容器325から電磁弁326を介して容器321に流れる。
【0071】
試薬の分注が完了した場合、処理装置90の分析制御機能32は、例えば、試薬を吐出させた試薬カートリッジ300と試薬供給ポンプユニット330との接続を解除させる制御信号を駆動装置80に出力する。この場合、駆動装置80は、当該制御信号に応じて、当該試薬カートリッジ300の試薬供給ユニット320の容器325の上面部325bと試薬供給ポンプユニット330のポンプヘッド330aとの接続を解除させる。
【0072】
なお、本実施形態において、容器325内の試薬を容器321に戻す処理は、試薬が吐出された後に毎回行われなくてもよい。例えば、当該処理は、試薬が複数回吐出された後に行われるような間欠運転でもよい。また、本実施形態において、試薬カートリッジ300の容器325には、僅かな量の試薬しか収容されないため、容器325内の試薬を容器321に戻す処理は行われなくてもよい。すなわち、容器325に収容される試薬が極微量であれば、容器325内の試薬は廃棄されてもよい。この場合、電磁弁326の設置が不要になる。
【0073】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、試薬の泡の発生を抑制することができ、空気との接触による試薬の劣化を防止することができる。
【0074】
本発明の実施形態を説明したが、本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。本発明の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本発明の実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。