前記第1の可変位相板および前記第2の可変位相板の位相差をそれぞれ変えて3回以上撮影し、得られた3枚以上の画像から偏光状態による輝度変化を取得することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の撮像装置。
固体撮像素子と前記偏光取得手段との間に、偏光状態に応じて光線分離する光学ローパスフィルタを有し、該光学ローパスフィルタの最も偏光取得手段側における偏光分離方向と、該偏光板の透過偏光方向は略45degをなすことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の撮像装置。
固体撮像素子と前記偏光取得手段との間に、偏光状態に応じて光線分離する光学ローパスフィルタを有し、該光学ローパスフィルタと該偏光取得手段との間に、さらに第3のλ/4板が配置され
該第3のλ/4板の進相軸または遅相軸と、偏光板の透過偏光方向のなす角度は略45degをなすことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の撮像装置
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の撮像装置100の簡易的な構成を示す概略図である。
【0011】
撮像装置100は被写体からの光を結像させる光学系10と、偏光取得手段20と、撮像素子30からなる。偏光取得手段20は、少なくとも、第1のλ/4板1と第1の可変位相板2とλ/2板3と第2の可変位相板4と第2のλ/4板5、偏光板6からなる。ここで、図中のz方向は光軸方向を示し、xおよびy方向はz方向と垂直な面内における、直交方向を示す。
【0012】
図2に、偏光取得手段20の構成要素1〜6の軸方向の1例を示す。図2は光学系1側から見たxy平面内での各素子を示しており、各素子の軸方向は図2中の太線矢印と平行な方向に配置されている。ここで、各要素の軸方向は、位相板の場合、その進相軸もしくは遅相軸方向を指し、偏光板の場合は透過軸方向を指す。また、各素子の軸方向をx軸となす角度(0°以上180°未満)で表わすと、第1のλ/4板1および第2のλ/4板5の軸方向は0°、λ/2板3および偏光板6は90°、第1の可変位相板2は135°、第2の可変位相板4は45°である。
【0013】
なお、以下の説明では透過軸方向および偏光方向は、特に指定がない場合、0°以上180未満で表記するものとする。
【0014】
偏光取得手段20は、第1の可変位相板および第2の可変位相板の位相差を変化させるとで、透過する偏光方向を変えることができる。ここで、第1の可変位相板および第2の可変位相板は液晶素子からなり、電圧制御によってxy平面内の位相差を制御する。これにより、偏光取得手段20を構成する各素子を回転させることなく透過偏光方向を変えることができ、各素子を回転させる場合より、高速に駆動することできる。
【0015】
以下、偏光取得手段20において、位相差制御により透過偏光方向を変える原理を示す。
【0016】
なお、以下の説明における位相差χλ(χは実数)は、波長550nmでの位相差とする。
【0017】
図3に、第1の可変位相板および第2の可変位相板の位相差が1/4λのとき、直線偏光が入射した場合の透過光の状態を示す。なお、図3(a)(b)(c)(d)はそれぞれ、入射する直線偏光が90°、45°、0°、135°方向の場合をそれぞれ示す。また、図3中の軸方向は矢印で表わす。なお、ここでいう位相板(すなわち第1および第2のλ/4、λ/2、第1および第2の可変位相板)の軸方向は遅相軸の方向とする。さらに、図3中において、各素子を透過した光の偏光状態を破線と矢印を用いて示す。
【0018】
図3(a)に示す場合、つまり入射光が90°の直線偏光の場合、第1のλ/4板の軸方向と偏光方向が垂直方向のため、第1のλ/4板1に入射した光は、直線偏光のまま第1のλ/4板1を通過する。その後、第1の可変位相板2(位相差1/4λ)を通過する際、左回り偏光に変換され、さらにλ/2板3を通過する際、右回り偏光に変換される。その後、第2の可変位相板4(位相差1/4λ)を通過する際、0°の直線偏光に変換され、第2のλ/4板5をそのまま透過するため、偏光板6を通過する光は0%となる。
【0019】
同様に、入射偏光が45°の直線偏光の場合(図3(b)の場合)は、偏光板6を通過する光は50%、入射偏光が90°の場合(図3(c)の場合)は100%、入射偏光が135°の場合(図3(d)の場合)は50%の光がそれぞれ透過する。よって、第1の可変位相板2および第2の可変位相板4の位相差が1/4λの場合は、偏光取得手段20の透過軸方向は90°とみなせる。なお、上記の説明では第1の可変位相板の位相差と第2の可変位相板の位相差がともに1/4λの場合について示したが、第1の位相差板の位相差Δ
1と第2の位相差板の位相差Δ
2の和Δ
1+Δ
2が1/2λであれば、各素子の位相差に関わらず透過軸方向は90°とみなせる。また上記説明では、各素子の透過率は表面反射や吸収損失等を無視し、位相板では記載の位相差のみが付与され、偏光板では軸方向の偏光が100%透過、軸に垂直な偏光方向は100%吸収される状態(理想状態)であるとしている。
【0020】
図4に、45°の直線偏光が偏光取得手段20に入射する場合の、偏光取得手段20の位相差Δ(deg)と透過光強度I(%)の関係を示す。
【0021】
なお、ここで言う前記可変位相板の位相差Δとは、第1の可変位相板の位相差Δ
1と第
2の可変位相板の位相差Δ2の和Δ
1+Δ
2とする。図4(a)〜(d)はそれぞれ、入射する直線偏光の方向が0°、45°、90°、135°の場合を示す。
【0022】
図4から、位相差Δを変えることで、偏光取得手段を透過する光強度が変化することが分かる。入射する直線偏光の偏光方向が0°の場合、位相差Δ
1+Δ
2が180°(1/2λ)のとき光強度がピークとなる。同様に、偏光方向45°の場合位相差Δ
1+Δ
2が90°(1/4λ)、偏光方向が90°のとき位相差Δ
1+Δ
2が0°(0λ)、偏光方向135°のとき位相差Δ
1+Δ
2が270°(3/4λ)とき、それぞれ光強度がピークとなる。図4に記載した方向以外の直線偏光が入射した場合も同様に考えると、偏光取得手段20を透過する偏光方向(以下、透過軸方向)φ(deg)と第1および第2の可変位相板の位相差Δ
1+Δ
2(deg)は、次式(1)の関係を満たす。
【0023】
φ=−(Δ
1+Δ
2)/2+90°・・・(1)
(1)式および図4より、偏光取得手段20は、第1および第2の可変位相板の位相差を制御することで、偏光取得手段20の透過軸方向φを制御できることが分かる。
なお、実際の系では、表面反射や、吸収損失、消光比等の影響で、光強度の変化が理想状態よりも小さくなる。その場合、事前に各素子の特性(表面反射や吸収損失、消光比など)を評価し、測定後に補正することができる。
【0024】
以上の説明では、偏光取得手段20を構成する各素子の軸が図2に示したものであるとして説明を行ったが、この軸方向は1例に過ぎず、必ずしも図2の通りに配置される必要はない。以下、透過偏光方向を制御し、かつ波長特性を低減するために必要な条件について説明する。
【0025】
偏光取得手段20の透過軸方向を可変位相板の位相差によって制御するためには、偏光取得手段20は、光学系側から撮像素子側に向かって少なくともλ/4板と可変位相板と偏光板が配置される必要がある。また、可変位相板の遅相軸または進相軸方向に対して、λ/4板と偏光板の軸は略45°をなすよう配置する必要がある。この軸配置にすることにより、入射偏光のもつ位相情報の影響を最小限にすることができる。この配置にした場合、完全な円偏光の場合には、透過強度は一様になる。また、楕円偏光の場合にも、入射偏光の強度の方位依存性に応じた値が求められるため、強度の情報を取得することができる。ただし、この配置の場合、可変位相板の位相差に波長分散があると、波長によって異なる方向の偏光を取得することになり、撮影画像に色づきが発生してしまう。この課題を解決するために、本発明では、上記λ/4板、可変位相板、偏光板の構成に、さらにλ/4板、可変位相板およびλ/2を追加することで、波長分散を低減できることを見出した。
【0026】
まず、2つのλ/4板の遅相軸または進相軸方向とλ/2板の遅相軸または進相軸方向を略垂直に配置することで、λ/4由来の波長分散を相殺することができる。また、2つの可変位相板の遅相軸または進相軸方向をλ/2板の遅相軸または進相軸方向に対して対称に配置することで、液晶由来の波長分散を低減することができる。
【0027】
以上から、本発明の偏光取得素子は、物体側から固体撮像素子側に向かって、少なくとも第1のλ/4、第1の可変位相板、λ/2板、第2の可変位相板、第2のλ/4板を有する必要がある。また、軸配置は、2つのλ/4板の遅相軸または進相軸方向とλ/2板の遅相軸または進相軸方向が略垂直に配置され、2つの可変位相板の遅相軸または進相軸方向がλ/2板の遅相軸または進相軸方向に対して対称に配置される。また、入射光の位相差の影響を最小限にするために、第1のλ/4板の遅相軸または進相軸方向と第1の可変位相板の遅相軸または進相軸方向は略45度方向に配置する必要がある。なお、各素子の軸方向は上記条件から少なくとも±10°の範囲で配置されることが好ましく、±5°の範囲で配置されることがさらに好ましい。
【0028】
本発明の偏光取得素子は、以上の条件を満たせば、各素子の軸方向はその範囲内で自由に設定することができる。なお、本発明の場合、第2の可変位相板と偏光板の間に第2のλ/4板を配置するため、偏光板の透過軸の方向は可変位相板と必ずしも略45度方向に配置する必要はなく、要求に応じて自由に配置することができる。このとき、第1およびの可変位相板の位相差Δ
1+Δ
2(deg)と透過軸方向φ(deg)の関係は(1)式同様、以下(2)式で表現できる。
【0029】
φ=−(Δ
1+Δ
2)/2+D・・・(2)
なお、係数Dは軸配置によって変わるため、軸配置に応じて適宜決定すればよい。
さらに、可変位相板由来の波長特性をより効果的に低減するために、画像取得時はΔ1=Δ2に設定することが好ましく、第1の可変位相板と第2の可変位相板が同じ材料、同じ膜厚で構成されていることがさらに好ましい。
【0030】
また、角度特性と偏光取得精度を考慮すると、第1の可変位相板および第2の可変位相板の位相変化量δは0λより大きくλ/2未満であることが好ましい。ここで、位相変化量δとは、可変位相板における位相差の変化量で、設定可能な位相差状態のうち最大値Δ
MAXと最小値Δ
minの差で定義する。つまり、第1の可変位相板および第2の可変位相板による位相変化量δは、(Δ
1MAX−Δ
1min)+(Δ
2MAX−Δ
2min)と表わせる。位相変化量δが大きくなると、設定可能なφの範囲が広くなり偏光取得精度が向上する。なお、φは180度周期で変化するため、位相変化量δをλ以上に設定しても精度向上の効果は得られない。一方、位相変化量δは、膜厚と液晶の物性(屈折率異方性)によって決まる。ここで、液晶の物性は一定のため、位相変化量δを大きくするためには膜厚を大きくする必要がある。しかし、膜厚を大きくすると角度特性が悪化する。以上から、位相変化量δは0λより大きくλ以下に設定することが好ましい。また、第1の可変位相板、第2の可変位相板の位相変化量(Δ
1MAX−Δ
1min)および(Δ
2MAX−Δ
2min)は、0λより大きくλ/2未満であることが好ましい。また、λ/8以上3λ/8以下であればさらに好ましい。
【0031】
ここで、本発明の撮像装置は、位相差Δ
1+Δ
2を変えて3回以上撮影し、得られた3枚以上の画像から偏光情報を取得する。以下、偏光情報の取得について述べる。
【0032】
図5(a)に示す楕円偏光を、上記偏光取得手段20を用いて撮影したとき、撮影時の透過軸方向φに対して光強度I(φ)をプロットしたものを図5(b)の○に示す。なお、図5(b)は、偏光取得手段20の透過軸方向が0度、45度、90度の撮影画像に対して、ある1画素の輝度I(0)、I(45)、I(90)を透過軸方向φに対してプロットしたものである。また、実線のカーブは3つの測定値から透過軸角度φに対する輝度値I(φ)をフィッティングにより算出したものである。ここで、算出した輝度I(φ)において最大輝度値I
MAX、最小輝度値I
min、および最大輝度値の偏光角度αとすると、透過軸角度φに対する輝度値I(φ)は、次式(3)のように表わされる。
【0033】
I(φ)=(I
MAX−I
min)・cos
2(φ−α)+I
min・・・(3)
そのため、偏光取得素子の位相差Δ
1+Δ
2変えて、3つ以上の異なる透過軸方向φで画像を取得し、輝度値を得ることで、各画素のI
MAX、I
min、αを算出することができる。なお、一般的に偏光は強度と振幅の情報を有するが、本発明では、偏光角度αと輝度I
MAX、I
minの情報を取得するものとする。
【0034】
なお、図5では3つの輝度値(3つの取得画像)から偏光情報を取得したが、本発明はこれに限定されるものではなく、4つ以上の輝度値(取得画像)に対して式(3)をフィッティングすることで偏光情報を算出してもよい。その際には、例えば最小二乗法等の最適化手法を使用することができる。
【0035】
また、偏光情報を取得するために撮影する画像の透過軸方向φに特に制限はない。ただし、偏光情報取得精度を考えると、透過軸方向φは、周期に対してなるべく広く、均等な間隔で画像を得ることが好ましい。つまり、式(3)よりI(φ)の周期は180°であるため、例えば3点撮影する際は、0°、60°、120°、4点撮影する際は0°、45°、90°、135°のように周期に対して均等な間隔で撮影することが好ましい。
【0036】
また、第1の可変位相板および第2の可変位相板の角度特性を考慮すると、第1および第2の可変位相板の位相差が最大値Δ
MAX付近、または最小値Δ
min付近で画像を取得することが好ましい。これは、可変位相板が液晶からなるためである。液晶からなる可変位相板は、光学異方性材料の分子が膜厚方向に積層した構造からなり、電圧に応じて膜厚に対する分子の配向方向を制御することにより位相差を制御する。そのため、位相差が最大値、最小値付近では液晶分子の光学軸方向が膜厚方向(z方向)に対して垂直または水平に近くなり入射角度特性が良好となる。なお、「付近」と記載したのは、厳密に最大値、最小値でなくとも同様に角度特性が良くなる効果を得ることができるためであり、それぞれλ/10程度の誤差は許容される。さらに、駆動時間の点でも、最大値付近、最小値付近に設定するほうが、中間値に設定する場合よりも高速化できる。よって、駆動速度の観点でも、第1の可変位相板および第2の可変位相板の位相差が最大値Δ
MAX付近、または最小値Δ
min付近で画像を取得することが好ましい。
【0037】
以上の観点から、本発明では、偏光情報を取得すために可変位相板の位相差を変えて3回以上撮影するうち、少なくとも1回は、第1の可変位相板および第2の可変位相板の位相差Δ
1、Δ
2が最小値付近または最大値付近であることが好ましい。また、最小値付近および最大値付近をともに含むことがより好ましい。
【0038】
第1の可変位相板および第2の可変位相板を形成する液晶は、とくに限定されないが、例えばVAタイプやTNタイプ、OCBタイプ等を使用することができる。
【0039】
また、従来の一眼レフカメラと交換レンズのような撮像装置に偏光取得手段6を付与するような構成の場合には、光学ローパスフィルタによる弊害を受ける可能性がある。一般にデジタル一眼レフカメラのような撮像装置では、モアレや偽色防止のため撮像素子近傍に光学ローパスフィルタが配置されている。そのような場合における本発明の撮像装置の構成概略図を図15に示す。光学ローパスフィルタ7は通常、撮像素子6の直ぐ前の部分に配置される。ここでは光学ローパスフィルタの動作原理については詳述しないが、一般的には複屈折媒質が複数層積層されたものや偏光回折素子など、偏光特性を利用したものが使われることが多い。ここで偏光取得手段6を単に光学ローパスフィルタ7と光学系1の間に配置すると、偏光取得手段6の影響により光学ローパスフィルタとしての所望の効果が得られない場合がある。またセンサ直前部分に偏光板を敷き詰める方式では、光学ローパスフィルタを透過することで被写体の偏光情報が失われるため偏光情報を取得することができない。
【0040】
それに対して、本発明のような光学系1と撮像素子2の間に偏光取得手段6が配置される系での最も簡易な対策としては、偏光板6と光学ローパスフィルタの間にλ/4板を挿入して円偏光にすれば良い。しかしλ/4板には波長分散があり可視光全域で均一な円偏光とならないため、波長による位相ズレが色の変化として画像に表れる可能性がある。従ってもしλ/4板を使用する場合には、使用波長である可視波長帯域において位相差が最小となるように設計されたアクロマチックλ/4板を使用することが望ましい。またそれ以外の方法として、光学ローパスフィルタの最も光学系側(積層構造となっている場合)における光線分離方向と、偏光板6の透過軸の方向が45degをなすように配置することで、光学ローパスフィルタの特性と偏光取得手段の特性を両立できる。本発明の撮像装置としてはアクロマチックなλ/4板を配置する方法と、光学ローパスフィルタの軸方向と偏光板の軸方向が45degをなすようにする方法がある。どちらの方法であっても良いが、後者の方が簡易である。本発明では、偏光板の透過軸の方向は可変位相板と必ずしも略45度方向に配置する必要はなく要求に応じて自由に配置することができる。よって、ローパスフィルタの軸方向に対して、偏光板の透過軸方向が45degを成すように設置すればよい。また、偏光取得手段20を構成する素子のうち偏光板のみを独立に、光軸に対して垂直な面内で回転可能な機構を具備してもよい。この場合、ローパスフィルタの軸に応じて、調整すればよい。
【0041】
また本発明の偏光取得手段は撮像装置に用いられるため、偏光板は吸収型の偏光板であることが望ましい。不要光を反射するタイプの、例えばワイヤーグリッド偏光子のような偏光板を用いると、カットする側の偏光が反射され、その光が迷光やゴーストとなって画像に悪影響を及ぼすため撮像装置の構成としては望ましくない。そのため不要光を吸収するタイプの吸収型の偏光板を用いることが望ましく、より好ましくは前述のゴーストへの影響を抑えるため、偏光板は使用波長である可視域全域において、透過軸と直交する方向に振動する偏光のうち50%以上を吸収する特性を有することが望ましい。このような偏光板としては、例えばヨウ素化合物を延伸したフィルム等があるが、このような材料に限らず、任意の吸収型偏光板を使用すれば良い。
【0042】
次に、取得した撮影画像とそこから取得した偏光情報の用途について述べる。本発明の撮像装置により得られた画像は、其々が異なる偏光情報を有するものの画像処理等の演算処理を経ることなく、そのまま画像として用いることができる。
【0043】
また、取得した各画素の偏光情報(α、I
MAX、I
min)を用いて、撮影した画像とは質感の異なる画像を形成することができる。なお、ここでの質感とは、被写体からの反射光のことを指す。以下、画像を形成するにあたって、偏光情報と反射光の関係について述べる。
【0044】
物体からの反射光は、表面から直接反射する鏡面反射成分と、内部や表面で散乱して反射する散乱成分に分けられる。鏡面反射成分は、被写体の表面から反射する光で、フレネル反射の条件を満たして反射する。フレネル反射では、一部の条件を除いてs偏光強度がp偏光強度より強くなる。そのため、鏡面反射成分は、偏光強度が方位によって変化する、つまり方向依存性を持つ傾向にある。一方、拡散成分は、被写体に入射した光がさまざまな方向に反射するため、方向依存性はないと考えられる。そこで、取得した偏光情報のうち、φに依存する成分I
MAX−I
minを鏡面反射成分、φに依存しない成分I
minを散乱成分とみなし、鏡面反射成分や散乱成分を奥的に応じて演算し画像を形成する。これにより、撮影時に取得した画像とは反射光が異なる(つまり、質感の異なる)画像を形成することができる。
【0045】
なお、撮影した画像から偏光情報α、I
MAX、I
minを求める処理や、これらの偏光情報を用いて画像を作成する処理は、撮像装置内の情報処理部で実行してもよいが、PC等の外部の情報処理装置を用いて実施してもよい。
【実施例1】
【0046】
本発明の実施例の撮像装置100の構成概略図を図1に示す。撮像装置100は被写体からの光を結像させる光学系10と固体撮像素子30を有する。その間の光路に、延伸フィルムからなる第1のλ/4板1および第2のλ/4板5、VA液晶からなる第1の可変位相板2および第2の可変位相板4、延伸フィルムからなるλ/2板3、延伸フィルムからなる吸収型偏光板6からなる偏光取得手段20が配置された構成からなる。第1の可変位相板と第2の可変位相板は同じ構成の液晶からなり、液晶の屈折率異方性|n
e−n
o|=0.82、液晶層の厚み4.0μmである。第1のλ/4板1および第2のλ/4の遅相軸はx軸と平行に配置されている。また、第1の可変位相板2の遅相軸は135度方向、第2の可変位相板4の遅相軸は45度方向に配置されている。さらにλ/2板5の遅相軸はy軸と平行に配置され、偏光板6の透過軸はx軸と平行に配置されている。
【0047】
また、第1の可変位相差板2および第2の可変位相板4は、それぞれ3つ以上の位相差に設定可能である。例えば、第1の可変位相板の位相差Δ
1と第2の可変位相板の位相差Δ
2をΔ
1=Δ
2=0λ、1/8λ、1/4λとすると、偏光取得手段20の透過軸をそれぞれ90°、45°、0°に設定することができる。
【0048】
偏光取得手段20に45°方向の直線偏光が入射したとき、位相差の波長分散を図6に示す。なお、図6には、Δ
1=Δ
2=λ/4の場合を示す。また、比較のため、可変位相板1を単体で用いた場合の位相差の波長分分散(Δ
1=λ/2)を示す。図6より、可変位相板1単体の場合、Δ
1=λ/2に設定した場合には400〜700nmの波長に対して位相差の波長分散が100nm以上発生するのに対して、本発明の実施例では、Δ
1=Δ
2=λ/4で、ほぼ30deg以内に収まっていることが分かる。鋭意検討の結果、取得画像の色づき低減効果を得るためには、400〜700nmにおいて位相差の波長分散が80deg以下であることが好ましく、50deg以下であることがさらに好ましいことが分かった。よって、本実施例は、Δ
1=Δ
2=λ/4で、この基準を下回り、取得画像の色づき低減効果を得られる。
【0049】
[比較例1]
本発明の比較例として、特許文献3に記載されている色消し偏光スイッチを、本発明の偏光取得手段として用いた場合について、説明する。
【0050】
特許文献3には、偏光板と第1の位相差板と第1の液晶セルと、第2の位相板と第2の液晶セルと第3の位相差板からなる色消し偏光スイッチが開示されている。また、偏光スイッチが色消しになるために、各素子の軸θnが満たす条件が満たすべき条件を開示している。色消し偏光スイッチは、投射系で用いられるため、本発明の撮影系とは入射側と射出側が逆方向になる、と考えられる。よって、本比較例では、特許文献3実施例3に開示されている色消し偏光スイッチを入射側と射出側を反転させたて用いるとする。
【0051】
本比較例の偏光取得手段は、光入射側から第1のλ/2板、第1の液晶、第2のλ/2、第2の液晶、第3のλ/2、偏光板から構成される。また、各素子の軸は、特許文献3に開示の条件式においてθ=8°としたときの値を用いている。図8に素子の軸方向この素子に、それぞれ入射偏光方向が0°、90°の入射偏光が入射する場合の、第1の液晶および第2の液晶の位相差に対する光強度を図8に示す。なお、図8では第1の液晶および第2の液晶は、同じ位相差をとるものとし(Δ
1=Δ
2)、Δ=Δ
1=Δ
2に対して透過光強度I(%)をプロットしている。
【0052】
図8より、本比較例の場合、入射偏光が0°、および90°の場合には第1の液晶および第2の液晶の位相差がそれぞれ、180°(すなわちλ/2)および0°(すなわち0λ)の場合に透過光強度にピークを持つことが分かる。
【0053】
次に図9に、入射偏光方向が10°〜80°の場合について示す。図9から、10°〜80°の場合には、位相差に対するピーク位置の移動が見られない。つまり、本比較例では、位相差制御により透過軸方向を制御できていないことが分かる。よって、以上より特許文献3で開示された偏光スイッチを単純に用いただけでは、偏光取得手段を実現できない。
【実施例2】
【0054】
図7に、実施例2の撮像装置の概略図を示す。
【0055】
本発例の撮像装置は、デジタルカメラ31とレンズ11と偏光取得手段を備えるアダプタ21からなる。アダプタ21は、レンズ11およびデジタルカメラ31に着脱可能なマウントを具備し、通常撮影時はレンズ11とデジタルカメラ31のみで撮影を行い、偏光取得時にはさらにアダプタ21を組み合わせて使用することができる。この構成とすることで、共通のマウントを持つさまざまなレンズ11、さまざまなデジタルカメラ40を用いて偏光情報の取得が可能となる。
【0056】
また、本発明のアダプタ21が備える偏光取得手段は、レンズ11側からデジタルカメラ31側に向かって、第1のλ/4板、第1の可変位相板、λ/2板、第2の可変位相板、第2のλ/4、偏光板からなる。ここで、本発明のアダプタ21は最もデジタルカメラ側に位置する偏光板のみを独立に、レンズの光学軸に対して垂直な面内で回転させるための機構を具備している。(不図示)この機構を設けることで、デジタルカメラ40のローパスフィルタの軸の方向に応じて、偏光板を最適な角度に設定することができ、異なる特性のローパスフィルタを含むさまざまなデジタルカメラに対して、弊害なく偏光情報を取得することができる。