水酸基モノマーとカルボキシル基含有モノマーとアミド基含有モノマーを含む共重合性成分を共重合してなるアクリル系樹脂(A)とイオン性化合物(B)とイソシアネート系架橋剤(C)を含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層(X)を有する粘着剤層付偏光板であり、
粘着剤層(X)/保護フィルム(Y)/偏光子/保護フィルム(Z)の層構成を有し、
保護フィルム(Y)がトリアセチルセルロール系フィルム、
保護フィルム(Z)がシクロオレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルム及びアクリル系フィルムから選ばれる1種であることを特徴とする粘着剤層付偏光板。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。また、アクリル系樹脂とは、少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマーを含む重合成分を重合して得られる樹脂である。
【0018】
本発明で用いられる偏光板用粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)、イオン性化合物(B)及びイソシアネート系架橋剤(C)を必須成分として含有するものである。
【0019】
<アクリル系樹脂(A)>
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、ノルマルブチルアクリレート(a1)57.5〜74.6重量%、水酸基含有モノマー(a2)6〜15重量%、カルボキシル基含有モノマー(a3)0.1〜1重量%、アミド基含有モノマー(a4)0.5〜2.5重量%、芳香環含有モノマー(a5)19〜25重量%を含有するモノマー成分[I]を共重合して得られるものである。
モノマー成分[I]は、必要に応じてその他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a6)を含有してもよい。
【0020】
上記ノルマルブチルアクリレート(a1)の含有割合は、モノマー成分[I]全体に対して57.5〜74.6重量%であり、好ましくは60〜72重量%、特に好ましくは62.5〜70重量%である。かかる含有割合が少なすぎると、アクリル系樹脂のガラス転移温度が高くなりすぎるためリワーク性が低下することとなり、多すぎると耐湿熱白化性や耐表示ムラ性が低下するため、本発明の目的を達成することができない。
【0021】
上記水酸基含有モノマー(a2)(ただし、後述の(a4)を除く。)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の1級のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有アクリレート;2,2−ジメチル−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有アクリレートが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、親水性が高く耐湿熱白化性に優れる点で、1級水酸基含有アクリレートが好ましく、さらには、アクリル系樹脂のガラス転移温度が高くなりすぎない点で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、特にはアクリル系樹脂(A)のガラス転移点が高くなりすぎない点で2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートが好ましい。
【0022】
上記水酸基含有モノマー(a2)の含有割合は、モノマー成分[I]全体に対して6〜15重量%であり、好ましくは7〜13重量%、特に好ましくは8〜12重量%である。かかる含有割合が少なすぎると耐湿熱白化性が低下し、多すぎると親水性が高くなりすぎるために長期リワーク性が低下するため、本発明の目的を達成することができない。
【0023】
上記カルボキシル基含有モノマー(a3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレートなどのアクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、N−グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、汎用品として入手が可能でありコストの点、重合時の安定性の点、アクリル系樹脂のガラス転移温度が上がりすぎない点でアクリル酸が好ましい。
【0024】
上記カルボキシル基含有モノマー(a3)の含有割合は、モノマー成分[I]全体に対して0.1〜1重量%であり、好ましくは0.2〜1重量部、特に好ましくは0.5〜1重量部である。かかる含有割合が少なすぎると、エージングに時間がかかったり、偏光板中のアルコールや水分により架橋阻害を引き起こして耐久性が低下し、多すぎると粘着剤層付偏光板とした際に、保護フィルムであるTACフィルムの加水分解を促進したり、被着体が透明電極等の金属の場合金属を腐食しやすくなるため、本発明の目的を達成することができない。
【0025】
上記アミド基含有モノマー(a4)としては、例えば、(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド等の水酸基含有アクリルアミドモノマー;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、樹脂溶液の安定性の点や、帯電防止剤の移行を抑制する点、湿熱環境下での結晶の析出を抑制する効果が大きい点で、(メタ)アクリルアミド、N−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドが好ましく、特には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミドが他のモノマーとの共重合性の点で好ましく、更には、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドが好ましい。
【0026】
上記アミド基含有モノマー(a4)の含有割合は、モノマー成分[I]全体に対して0.5〜2.5重量%であり、好ましくは0.5〜1.5重量%、特に好ましくは0.5〜1重量%である。かかる含有割合が少なすぎると、湿熱環境下での結晶の析出抑制効果が得られにくくなり、多すぎると耐表示ムラ性が低下したり、樹脂が硬くなりジッピングが発生するため、本発明の目的を達成することができない。
【0027】
上記芳香環含有モノマー(a5)としては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のフェノキシジアルキレングリコール(メタ)アクリレート;フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;フェノキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、アクリル系樹脂の複屈折を効率よく調整できる点、アクリル系樹脂のガラス転移温度が高くなり過ぎない点で、ベンジルアクリレート、フェノキシアルキルアクリレート、フェノキシジアルキレングリコールアクリレートが好ましく、重合時に残存したモノマーが粘着剤組成物を乾燥する際に粘着剤層中に残留せず臭気やアウトガスの原因とならない点でベンジル(メタ)アクリレートが特に好ましく、殊にはアクリル樹脂(A)のガラス転移点が上がりすぎない点でベンジルアクリレートが好ましい。
【0028】
上記芳香環含有モノマー(a5)の含有割合は、モノマー成分[I]全体に対して19〜25重量%であり、好ましくは20〜24重量%、特に好ましくは20.5〜23.5重量%である。かかる含有割合が上記範囲よりも少なくても多くても耐表示ムラ性が悪化し、多すぎる場合にはアクリル系樹脂のガラス転移温度が高くなりすぎるためにリワーク性が低下したりセパレーターを剥離する際にジッピングが生じたりするため、本発明の目的を達成することができない。
【0029】
上記その他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a6)としては種々のエチレン性不飽和基含有モノマーが挙げられるが、本発明の効果の観点からその含有割合はモノマー成分[I]全体に対して2重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下である。
【0030】
上記その他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a6)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が通常1〜24(好ましくは1〜20、特に好ましくは1〜18、更に好ましくは1〜12)である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(ただし、n−ブチルアクリレートを除く。);シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレンリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基およびオキシアルキレン基を含有する(メタ)アクリル酸エステル;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、上記モノマー(a1)〜(a5)をモノマー成分[I]中に下記割合で含有することが、種々の保護フィルムを用いてなる偏光板に対して好適に用いることができる粘着剤組成物が得られる点でより好ましい。(a1)61.5〜71.5重量%(a2)7〜13重量%(a3)0.5〜1重量%(a4)0.5〜1重量%(a5)20.5〜23.5重量%
各モノマーの含有割合が多すぎても少なすぎても、種々の保護フィルムを用いてなる偏光板に対して用いた際に、全ての要求性能を満足することができず、いずれかの性能に劣る傾向がある。
【0032】
上記アクリル系樹脂(A)の重合方法としては、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の従来公知の方法を用いることができ、例えば、有機溶媒中に、モノマー成分[I]、重合開始剤を混合あるいは滴下し所定の重合条件にて重合する。なかでも、溶液ラジカル重合、塊状重合が好ましく、特に好ましくは安定にアクリル系樹脂を得られる点で溶液ラジカル重合である。
【0033】
上記重合反応に用いられる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等があげられる。
これらの溶剤の中でも、重合反応のしやすさや連鎖移動の効果や粘着剤塗工時の乾燥のしやすさ、安全上から、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、トルエン、メチルイソブチルケトンが好ましく、特に好ましくは、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトンである。
【0034】
また、かかるラジカル重合に用いられる重合開始剤としては、例えば、通常のラジカル重合開始剤である2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(メチルプロピオン酸)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロリルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられ、使用するモノマーに合わせて適宜選択して用いることができる。これらの溶剤は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0035】
上記アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、80万〜200万であり、好ましく100万〜180万、特に好ましくは120万〜160万である。かかる重量平均分子量が小さすぎると耐久性やリワーク性が低下し、大きすぎると重合時にゲル化しやすくなったり、希釈時に大量の溶剤が必要となり作業性が低下したりするため、本発明の目的を達成することができない。
【0036】
また、アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、15以下であることが好ましく、特に好ましく10以下、更に好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。かかる分散度が高すぎると凝集力が低下し耐久性が低下したりリワーク性が低下したりする傾向にある。
【0037】
なお、上記のアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×10
7、分離範囲:100〜2×10
7、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で測定することができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。
【0038】
上記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、−55〜−20℃であることが好ましく、特に好ましくは−50〜−25℃、更に好ましくは−47.5〜−32.5℃である。かかるガラス転移温度が高すぎるとタックが低下して貼り合わせし難くなったり、離形フィルムや被着体からリワークする際にジッピングが発生し、粘着剤層にストップマークがついたり、離型フィルムを剥離する工程で張力バランスや振動が発生する傾向があり、低すぎると耐熱性が低下する傾向がある。
【0039】
なお、ガラス転移温度は下記のFoxの式より算出されるものである。
Tg:共重合体のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wn:モノマーNの重量分率
(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
即ち、アクリル系樹脂を構成するそれぞれのモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度および重量分率をFoxの式に当てはめて算出した値である。
なお、アクリル系樹脂を構成するモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものであり、JIS K7121−1987や、JIS K 6240に準拠した方法で測定することができる。
【0040】
かくして本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)が得られる。
【0041】
<イオン性化合物(B)>
本発明においては、帯電防止剤としてイオン性化合物(B)を用いる。本発明で用いられるイオン性化合物(B)は有機カチオンとアニオンからなり、アニオンが下記一般式(1)で示されるものである。
(C
nF
2n+1SO
2)
2N
−・・・式(1)
〔式中、nは1〜10の整数である。〕
【0042】
上記一般式(1)のnは1〜3であることが帯電防止性能と結晶の析出抑制のバランスに優れる点で特に好ましい。n数が大きすぎると帯電防止性能が低下する傾向にある。
【0043】
本発明においては、共役酸とした時の酸解離定数が高すぎるアニオンからなるイオン性化合物を用いると、湿熱環境下での結晶析出抑制効果が低下する傾向がある。
【0044】
本発明で用いられるイオン性化合物(B)のアニオンとしては、例えば、N、N−ビストリフルオロメタンスルホニルイミド(n=1)、N,N−ビスペンタフルオロエタンスルホニルイミド(n=2)、N,N−ビスへプタフルオロプロパンスルホニルイミド(n=3)、N,N−ビスノナフルオロブタンスルホニルイミド(n=4)、等が挙げられる。
【0045】
また、本発明で用いられるイオン性化合物(B)の有機カチオンとしては、アンモニウム系カチオン、ピリジニウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン、ピペリジニウム系カチオン、イミダゾリウム系カチオン等が挙げられる。
【0046】
上記アンモニウム系カチオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラペンチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、テトラヘプチルアンモニウムカチオン等の、アルキル基のアルキル鎖長が全て等しいテトラアルキルアンモニウムカチオン;
トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルプロピルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン等の、アルキル鎖長が異なるアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウムカチオン;
その他、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン等の、芳香環を有する置換基やエーテル結合を有する置換基を持つアンモニウムカチオンが挙げられる。
【0047】
ピリジニウム系カチオンとしては、例えば、1−エチルピリジニウムカチオン、1−ブチルピリジニウムカチオン、1−へキシルピリジニウムカチオン、1−エチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−へキシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−オクチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン等が挙げられる。
【0048】
ピロリジニウム系カチオンとしては、例えば、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ブチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ペンチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−へキシルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−ヘプチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−ブチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−ペンチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−へキシルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−へプチルピロリジニウムカチオン、1,1−ジプロピルピロリジニウムカチオン、1−プロピル−1−ブチルピロリジニウムカチオン、1,1−ジブチルピロリジニウムカチオン等が挙げられる。
【0049】
ピペリジニウム系カチオンとしては、例えば、1−プロピルピペリジニウムカチオン、1−ペンチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−エチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−ブチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−ペンチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−ヘキシルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−へプチルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−プロピルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−ブチルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−ペンチルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−ヘキシルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−へプチルピペリジニウムカチオン、1−プロピル−1−ブチルピペリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピペリジニウムカチオン、1,1−ジプロピルピペリジニウムカチオン、1,1−ジブチルピペリジニウムカチオン等が挙げられる。
【0050】
イミダゾリウム系カチオンとしては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
【0051】
本発明においては、有機カチオンとして窒素原子を一つ有するカチオンを用いることが好ましく、また、総炭素数が10以上のカチオンがアクリル系樹脂との相溶性や結晶の析出抑制の点で好ましい。
【0052】
また、上記有機カチオンの中でも、アンモニウム系カチオンが好ましく、特には樹脂との相溶性や結晶の析出を抑制できる点で4級アンモニウムカチオンが好ましく、更には4つの置換基がそれぞれアルキル基で置換されているテトラアルキルアンモニウムカチオンであることが好ましく、殊にはアルキル鎖長が異なるアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウムカチオンが好ましい。
【0053】
本発明に用いられるイオン性化合物(B)は、上記有機カチオンとアニオンの組合せから適宜選択して用いることができる。具体的には、トリブチルメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリオクチルメチルビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ヘキシル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0054】
さらに、本発明のイオン性化合物(B)の融点は100℃以下であることが好ましく、特に好ましくは0℃〜80℃、更に好ましくは20℃〜50℃である。かかる融点が高すぎると、低温で析出しやすい傾向がある。なお、融点が低すぎると、湿熱環境下でブリードアウトしたり偏光度が低下しやすくなったりする傾向がある。
なお、イオン性化合物(B)の融点は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定され、各社のカタログ等に記載されている。
【0055】
イオン性化合物(B)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、2〜5重量部であることが好ましく、特に好ましくは2.5〜4.5重量部、更に好ましくは3〜4重量部である。かかる含有量が少なすぎると、十分な帯電防止性能が得られない傾向があり、多すぎると、保護フィルムとしてPETフィルムを使用した偏光板の貼り合せに用いた時に、粘着剤層中に結晶が析出しやすくなる傾向がある。
【0057】
本発明においては、架橋剤の中でも、上記イソシアネート系架橋剤(C)を用いることが、基材との密着性を向上させる点やアクリル系樹脂(A)との反応性の点で重要である。
【0058】
かかるイソシアネート系架橋剤(C)とアクリル系樹脂(A)の水酸基が反応することによりウレタン結合を形成し、湿熱条件下での結晶析出を効果的に抑制することができる。
【0059】
上記イソシアネート系架橋剤(C)としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系化合物;1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系化合物;1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族イソシアネート系化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;およびこれらのイソシアネート系化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体;これらイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
上記イソシアネート系架橋剤(C)の中でも、トリレンジイソシアネート系架橋剤がポットライフや、樹脂との相溶性、耐久性のバランスに優れる点から好ましく、2,4−トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとのアダクト体が特に好ましい。
【0061】
上記イソシアネート系架橋剤(C)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.05〜3重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜1重量部、特に好ましくは0.15〜0.5重量部である。かかる含有量が少なすぎると、耐久性が低下しやすかったり、リワーク時に糊残りが発生したりする傾向があり、多すぎると応力緩和性が低下して液晶セルが反りやすくなり液晶ディスプレイの表示ムラがおこりやすくなる傾向がある。
【0062】
本発明においては、架橋剤としてこれらイソシアネート系架橋剤(C)の他に本発明の効果を失わない範囲で、その他の架橋剤を添加してもよく、例えば、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、キレート系架橋剤などを含んでいてもよい。
【0063】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0064】
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N′−ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N′−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0065】
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0066】
上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0067】
上記アミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
【0068】
上記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等が挙げられる。
【0069】
<シランカップリング剤(D)>
本発明においては、上記のアクリル系樹脂(A)、イオン性化合物(B)、イソシアネート系架橋剤(C)の他に、湿熱環境下での耐久性を向上させる点でシランカップリング剤(D)を含有することが好ましい。
かかるシランカップリング剤(D)は、構造中に反応性官能基と、ケイ素原子と結合したアルコキシ基をそれぞれ1つ以上含有する有機ケイ素化合物である。
【0070】
上記反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基含、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イソシアネート基が挙げられ、これらの中でも、耐久性とリワーク性のバランスの点からメルカプト基、エポキシ基が好ましい。
【0071】
上記ケイ素原子と結合したアルコキシ基としては、耐久性と保存安定性の点から炭素数1〜8のアルコキシ基を含有することが好ましく、特に好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
【0072】
シランカップリング剤(D)のケイ素原子と結合したアルコキシ基の含有量は、1〜80重量%であることが好ましく、特に好ましくは5〜60重量%、更に好ましくは7.5〜30重量%である。かかるケイ素原子と結合したアルコキシ基の含有量が少なすぎると、液晶セルとの密着性が低下し、耐久性が低下する傾向があり、多すぎるとリワーク性が低下する傾向がある。
【0073】
また、シランカップリング剤(D)の反応性官能基当量は、50〜1000g/molであることが好ましく、特に好ましくは200〜800g/mol、更に好ましくは300〜600g/molである。かかる反応性官能基当量が小さすぎるとリワーク性が低下する傾向があり、大きすぎると湿熱条件下での耐久性が低下する傾向がある。
【0074】
なお、シランカップリング剤(D)は、反応性官能基及びケイ素原子と結合したアルコキシ基以外の有機置換基、例えば、アルキル基、フェニル基等を有していてもよい。
【0075】
シランカップリング剤(D)の重量平均分子量は、2,000以上であることが好ましく、特に好ましくは2,500〜25,000、更に好ましくは5,000〜20,000である。かかる重量平均分子量が小さすぎると、長期リワーク性が低下する傾向があり、大きすぎると相溶性が低下してブリードアウトしやすく、耐久性が低下する傾向がある。
【0076】
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、下記の方法により測定したものである。
装置:ゲル浸透クロマトグラフィー
検出器:示差屈折率検出器RI(東ソー社製 RI−8020型、感度32)
カラム:東ソー社製 TSKguardcolumn HHR−H(1本)(φ6mm×4cm)、(TSKgelGMHHR−N(2本)(φ7.8mm×30cm)、充填剤
材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
カラム温度:23℃
流速:1.0mL/min
【0077】
本発明で用いられるシランカップリング剤(D)としては、例えば、
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のシラン化合物であるモノマー型のエポキシ基含有シランカップリング剤や、上記シラン化合物の一部が加水分解縮重合したり、上記シラン化合物とメチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有シラン化合物が共縮合したシラン化合物であるオリゴマー型エポキシ基含有シランカップリング剤;
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物であるモノマー型のメルカプト基含有シランカップリング剤や、上記シラン化合物の一部が加水分解縮重合したり、上記シラン化合物とメチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有シラン化合物が共縮合したシラン化合物であるオリゴマー型メルカプト基含有シランカップリング剤;
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;
3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;などが挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
これらのなかでも、耐久性とリワーク性のバランスに優れる点から、エポキシ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤が好ましく用いられ、エポキシ基含有シランカップリング剤とメルカプト基含有シランカップリング剤を併用することも、湿熱耐久性の向上と粘着力が上がり過ぎない点で好ましい。
【0079】
また、シランカップリング剤(D)は、モノマー型のシランカップリング剤でも、一部が加水分解し重縮合したオリゴマー型シランカップリング剤でもよいが、耐久性やリワーク性に優れる点や、粘着剤の塗工後の乾燥時に揮発しにくい点で、オリゴマー型シランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0080】
本発明で用いられるシランカップリング剤(D)として、具体的には、下記市販品のものが挙げられる。
例えば、信越化学工業株式会社製、「X−41−1059A」(重量平均分子量:2,270、含有官能基;エポキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;メトキシ基及びエトキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基量;42重量%、官能基当量;350g/mol)、「X−41−1805」(重量平均分子量:3,450、含有官能基;メルカプト基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;メトキシ基及びエトキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基量;50重量%、官能基当量;800g/mol)、「X−24−9579A」(重量平均分子量:2,370、含有官能基;メルカプト基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;メトキシ基、官能基当量;510g/mol)、「X−24−9589」(重量平均分子量:4,700、含有官能基;エポキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;エトキシ基、官能基当量;680g/mol)、「X−24−9590」(重量平均分子量:13,700、含有官能基;エポキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;メトキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基量;9.5重量%、官能基当量;592g/mol)、「X−41−1818」(重量平均分子量:2,350、含有官能基;メルカプト基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;エトキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基量;60重量%、官能基当量;850g/mol)等が挙げられる。これらの中でも耐久性の点から「X−41−1059A」、「X−24−9579A」、「X−24−9590」が好ましい。
【0081】
シランカップリング剤(D)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.005〜0.5重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.015〜0.25、更に好ましくは0.025〜0.20重量部である。かかる含有量が少なすぎると耐久性が低下する傾向があり、多すぎると長期リワーク性が低下したり、シランカップリング剤(D)がブリードして耐久性が低下したり傾向がある。
【0082】
さらに、本発明の粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分として、アクリル系樹脂(A)以外の樹脂成分、アクリルモノマーや、重合禁止剤、酸化防止剤、腐食防止剤、架橋促進剤、ラジカル発生剤、過酸化物、ラジカル補足剤等の各種添加剤、金属及び樹脂粒子等を配合することができる。また、上記の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであってもよい。
【0083】
上記その他の成分の含有量は、アクリル系樹脂(A)に対して5重量部以下であることが好ましく、特に好ましくは1重量部以下、更に好ましくは0.5重量以下である。かかる含有量が多すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下し、耐久性が低下する傾向がある。
【0084】
かくして本発明の偏光板用粘着剤組成物を得ることができる。
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、イソシアネート系架橋剤(C)で架橋することにより粘着剤とすることができ、更に、かかる粘着剤からなる粘着剤層を偏光板(光学積層体)上に積層形成することにより、粘着剤層付偏光板を得ることができる。
上記粘着剤層付偏光板には、粘着剤層の偏光板とは逆の面に、さらに離型フィルムを設けることが好ましい。
【0085】
上記粘着剤層付偏光板の製造方法としては、
〔1〕偏光板上に、粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、離型シートを貼合し、常温または加温状態でのエージングの少なくとも一方による処理を行なう方法、
〔2〕離型シート上に、粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、偏光板を貼合し、常温または加温状態でのエージングの少なくとも一方による処理を行なう方法等がある。
これらの中でも、〔2〕の方法で、常温状態でエージングする方法が、基材を痛めない点、基材密着性に優れる点で好ましい。
【0086】
かかるエージング処理は、粘着剤の化学架橋の反応時間として、粘着物性のバランスをとるために行なうものであり、エージングの条件としては、温度は通常室温〜70℃、時間は通常1日〜30日であり、具体的には、例えば23℃で1日〜20日間、23℃で3〜10日間、40℃で1日〜7日間等の条件で行なえばよい。
【0087】
上記粘着剤組成物の塗布に際しては、この粘着剤組成物を溶剤で希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、加熱残分濃度として、好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。また、上記溶剤としては、粘着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトンが好適に用いられる。
【0088】
また、上記粘着剤組成物の塗布に関しては、例えば、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なわれる。
【0089】
また、得られる粘着剤層付偏光板における粘着剤層の厚みは、5〜100μmが好ましく、特には10〜50μmが好ましく、更には10〜30μmが好ましい。
かかる粘着剤層の厚みが薄すぎると、偏光板用粘着剤として、充分な応力緩和性を有せず、耐久性が低下する傾向にあり、厚すぎると水分の侵入が多くなり湿熱耐久性が低下する傾向がある。
【0090】
上記方法により製造される粘着剤層のゲル分率については、耐久性能と偏光度低下抑制の点から40〜95%であることが好ましく、特に好ましくは60〜90%であり、更に好ましくは70〜85%である。ゲル分率が低すぎると耐久性が十分に得られなかったり、リワーク性が低下したりする傾向にあり、高すぎると浮きや剥がれが生じやすくなる傾向がある。
【0091】
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材に粘着剤層が形成されてなる粘着シートから粘着剤をピッキングにより採取し、粘着剤を200メッシュのSUS製金網で包み酢酸エチル中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。
【0092】
上記方法により製造される粘着剤層は、指で触れたときに程好いタック感があった方が、実際に被着体に貼る際に濡れ性が良いため、作業性が上がる傾向があり好ましい。
【0093】
本発明の粘着剤層付偏光板は、直接あるいは離型シートを有するものは離型シートを剥がした後、粘着剤層面を液晶セルのガラス基材に貼合して、例えば液晶表示板に供され、画像表示装置が製造される。
【0094】
本発明の粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤は、耐久性、耐表示ムラ性、リワーク性、帯電防止性能に加えて、耐湿熱白化性、更には結晶析出抑制性にも優れるものであり、従来のTACフィルムのみを保護フィルムとして用いてなる偏光板との貼り合せはもちろんのこと、TACフィルム以外の各種保護フィルム(アクリル系フィルム、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、シクロオレフィン系フィルム等)を組み合わせて用いてなる偏光板との貼り合せにも好適に用いることができる。例えば、粘着剤層(X)/保護フィルム(Y)/偏光子/保護フィルム(Z)の層構成を有し、保護フィルム(Y)がトリアセチルセルロールフィルム、保護フィルム(Z)がシクロオレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルム及びアクリル系フィルムから選ばれる1種である粘着剤層付偏光板とする場合に本発明の顕著な効果を発揮する。
【実施例】
【0095】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
また、下記実施例中におけるアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量、分散度は、前述の方法にしたがって測定した。
アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度については、前述のFoxの式を用いて算出し、アクリル系樹脂(A)を構成するモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常DSCにより測定されてなる文献値及びカタログ記載値を用いた。
【0096】
<アクリル樹脂(A)の調製>
〔アクリル系樹脂(A−1)の製造〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコにノルマルブチルアクリレート(a1)69.8部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)8部、アクリル酸(a3)0.7部、ジメチルアクリルアミド(a4)0.5部、ベンジルアクリレート(a5)21部、酢酸エチル54.9部、アセトン42部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.013部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリル酢酸溶液を滴下しながら還流温度で3.25時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−1)(重量平均分子量154万、分散度5.4)溶液(固形分18.8%、粘度4,900mPa・s/25℃)を得た。
【0097】
〔アクリル系樹脂(A’−1)の製造〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコにノルマルブチルアクリレート(a1)70.3部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)8部、アクリル酸(a3)0.7部、ベンジルアクリレート(a5)21部、酢酸エチル54.9部アセトン42部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.013部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリル酢酸溶液を滴下しながら還流温度で3.25時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A’−1)(重量平均分子量159万、分散度4.5)溶液(固形分21.3%、粘度7,400mPa・s/25℃)を得た。
【0098】
各製造例におけるモノマー組成、得られたアクリル樹脂の重量平均分子量、分散度及びガラス転移温度を表1に示した。
【0099】
【表1】
【0100】
<イオン性化合物(B)>
帯電防止剤として以下のイオン性化合物を用意した。
(B−1):トリブチルメチルアンモニウム N,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(スリーエム社製「FC−4400」、分子量482、融点27.5℃)
(B’−1):アンモニウムカチオンとN,N−ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンの塩(第一工業製薬社製「MP−446」)、融点37℃)
【0101】
<イソシアネート系架橋剤(C)>
イソシアネート系架橋剤として以下のものを用意した。
(C−1):トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンのアダクト体(東ソー株式会社製「コロネートL55E」)
【0102】
<シランカップリング剤(D)>
シランカップリング剤として、以下のものを用意した。
(D−1):X−41−1059A:X−24−9590=1:2配合物
X−41−1059A(信越化学社製、エポキシ系オリゴマー型シランカップリング剤)
X−24−9590(信越化学社製、エポキシ系オリゴマー型シランカップリング剤)
【0103】
<実施例1、比較例1〜2>
上記のようにして調製、準備した各配合成分を下記表2の通りに配合し、これを酢酸エチルにて固形分濃度を12.5%に調液し、粘着剤組成物を得た。
【0104】
〔粘着剤層付偏光板の作製〕
得られた粘着剤組成物を38μmポリエステル系離型シート(東レ社製 軽剥離PET セラピールWZ)に乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥したのち、ポリエステルフィルム(PET)とトリアセチルセルロース(TAC)フィルムをそれぞれ積層した偏光板の一方のTACフィルム表面に、離型シートと反対側の粘着剤層面を貼り合わせ、23℃×50%RH環境下で7日間養生し粘着剤層付偏光板[I]を得た(層構成;離型シート/粘着剤層/TACフィルム/偏光子/PETフィルム)。
【0105】
得られた粘着剤層付偏光板を用いて、下記の通り、結晶析出抑制性能およびジッピングについて評価した。
〔結晶析出抑制性能〕
上記粘着剤層付偏光板[I]を16cm×9.5cmにカットし、セパレーターを剥離して粘着剤層面を無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」:厚み0.7mm)に押しつけ2kgローラーにて2往復して貼り合わせたのち、オートクレーブ処理(0.5Mpa×50℃×20分間)を行い、結晶析出抑制性能の試験用サンプルを作製した。
得られた耐湿熱性試験用サンプルを、80℃×90%RH環境下に放置して、結晶状の析出物が発生するまでの時間を測定した。
(評価基準)
○・・・500時間経過時で析出物は発生していなかった。
△・・・400時間以上500時間未満の間に析出物が発生した。
×・・・400時間未満で析出物が発生した。
【0106】
【表2】
【0107】
表2の結果より、アニオンとして特定構造のフッ素含有アニオンを有するイオン性化合物と、アミド基含有モノマーを含有する特定の組成からなるモノマー成分を共重合してなるアクリル系樹脂を用いた実施例1では、TACフィルムよりもガス透過度が低いPETフィルムを保護フィルムの一方に用いた構成の偏光板とガラスとの貼り合せに用いた場合でも、結晶状の析出物が発生しなかった。
【0108】
一方、アミド基含有モノマーを含有するモノマー成分を共重合してなるアクリル系樹脂を用いなかった比較例1及び2では、特定構造のフッ素含有アニオンを有するイオン性化合物を用いた場合であっても、結晶状の析出物が発生した。