(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021045926
(43)【公開日】20210325
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置及びインクジェット方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20210226BHJP
   C09D 11/328 20140101ALI20210226BHJP
   D06P 7/00 20060101ALI20210226BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20210226BHJP
   D06B 11/00 20060101ALI20210226BHJP
   D06C 23/00 20060101ALI20210226BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20210226BHJP
【FI】
   !B41J2/01 501
   !C09D11/328
   !D06P7/00
   !B41M5/00 114
   !B41M5/00 120
   !D06B11/00 A
   !D06C23/00
   !B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】2019170791
(22)【出願日】20190919
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区新宿四丁目1番6号
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100080953
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 克郎
(72)【発明者】
【氏名】黄木 康弘
【住所又は居所】長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコーエプソン株式会社内
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
3B154
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056KB16
2H186AB02
2H186AB05
2H186AB06
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4J039BC37
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4J039EA47
4J039EA48
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】目詰まり回復性に優れ、にじみの少ない高濃度画像を形成可能なインクジェット装置を提供することを目的とする。
【解決手段】捺染インク組成物と、該捺染インク組成物を吐出するノズルを有する液体噴射ヘッド10と、を備えるインクジェット記録装置であって、前記捺染インク組成物が、水溶性染料と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有し、前記水溶性染料の含有量が、前記捺染インク組成物の総量に対して、10質量%以上であり、前記液体噴射ヘッドが、前記捺染インク組成物を吐出する前記ノズルと、前記捺染インク組成物が供給される圧力室2と、前記圧力室の前記捺染インク組成物を循環可能とする循環流路3とを有する、インクジェット記録装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捺染インク組成物と、該捺染インク組成物を吐出するノズルを有する液体噴射ヘッドと、を備えるインクジェット記録装置であって、
前記捺染インク組成物が、水溶性染料と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有し、
前記水溶性染料の含有量が、前記捺染インク組成物の総量に対して、10質量%以上であり、
前記液体噴射ヘッドが、前記捺染インク組成物を吐出する前記ノズルと、前記捺染インク組成物が供給される圧力室と、前記圧力室の前記捺染インク組成物を循環可能とする循環流路とを有する、
インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記水溶性染料が、酸性染料、反応性染料、又は直接染料である、
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記水溶性染料の含有量が、前記捺染インク組成物の総量に対して、20質量%以上である、
請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記水溶性有機溶剤が、20℃における蒸気圧が1Pa以上の第1水溶性有機溶剤と、20℃における蒸気圧が1Pa未満の第2水溶性有機溶剤と、を含む、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記第1水溶性有機溶剤に対する前記第2水溶性有機溶剤の含有量比が、質量基準で、0.02〜2である、
請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記捺染インク組成物が、尿素を含有する、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記水溶性染料に対する前記尿素の含有量比が、質量基準で、0.1〜0.3である、
請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記染料が、アシッドブルー138、アシッドブルー290、アシッドバイオレット54、アシッドオレンジ116、リアクティブイエロー15、リアクティブレッド123、又はリアクティブブルー222の少なくともいずれかである、
請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置を用いたインクジェット方法であって、
捺染インク組成物を、液体噴射ヘッドで吐出して記録媒体に付着させる吐出工程を有し、
前記捺染インク組成物が、水溶性染料と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有し、
前記水溶性染料の含有量が、前記捺染インク組成物の総量に対して、10質量%以上であり、
前記液体噴射ヘッドが、前記捺染インク組成物を吐出する前記ノズルと、前記捺染インク組成物が供給される圧力室と、前記圧力室の前記捺染インク組成物を循環可能とする循環流路とを有する、
インクジェット方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及びインクジェット方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。その中で、画質等について種々の検討がなされている。例えば、特許文献1には、染色濃度が高く、染色ムラを生じない酸性染料インク及びそれを用いる繊維の捺染方法の提供を目的として、酸性染料と、2種類のノニオン界面活性剤と、水と、を含有するインクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-110096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のように染色濃度の向上を目的として染料濃度を高くした場合には、相対的にインク中の溶剤の含有量が低下する。そのため、インクが固まりやすくなり、目詰まり回復性に劣るという課題が生じることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、捺染インク組成物と、該捺染インク組成物を吐出するノズルを有する液体噴射ヘッドと、を備えるインクジェット記録装置であって、前記捺染インク組成物が、水溶性染料と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有し、前記水溶性染料の含有量が、前記捺染インク組成物の総量に対して、10質量%以上であり、前記液体噴射ヘッドが、前記捺染インク組成物を吐出する前記ノズルと、前記捺染インク組成物が供給される圧力室と、前記圧力室の前記捺染インク組成物を循環可能とする循環流路とを有するインクジェット記録装置である。
【0006】
上記インクジェット記録装置は、前記水溶性染料が、酸性染料、反応性染料、又は直接染料であることが好ましい。
【0007】
上記インクジェット記録装置は、前記水溶性染料の含有量が、前記捺染インク組成物の総量に対して、20質量%以上であることが好ましい。
【0008】
上記インクジェット記録装置は、前記水溶性有機溶剤が、20℃における蒸気圧が1Pa以上の第1水溶性有機溶剤と、20℃における蒸気圧が1Pa未満の第2水溶性有機溶剤と、を含むことが好ましい。
【0009】
上記インクジェット記録装置は、前記第1水溶性有機溶剤に対する前記第2水溶性有機溶剤の含有量比が、質量基準で、0.02〜2であることが好ましい。
【0010】
上記インクジェット記録装置は、前記捺染インク組成物が、尿素を含有することが好ましい。
【0011】
上記インクジェット記録装置は、前記水溶性染料に対する前記尿素の含有量比が、質量基準で、0.1〜0.3であることが好ましい。
【0012】
上記インクジェット記録装置は、前記染料が、アシッドブルー138、アシッドブルー290、アシッドバイオレット54、アシッドオレンジ116、リアクティブイエロー15、リアクティブレッド123、又はリアクティブブルー222の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0013】
また、本発明のインクジェット方法は、上記インクジェット記録装置を用いたインクジェット方法であって、捺染インク組成物を、液体噴射ヘッドで吐出して記録媒体に付着させる吐出工程を有し、前記捺染インク組成物が、水溶性染料と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有し、前記水溶性染料の含有量が、前記捺染インク組成物の総量に対して、10質量%以上であり、前記液体噴射ヘッドが、前記捺染インク組成物を吐出する前記ノズルと、前記捺染インク組成物が供給される圧力室と、前記圧力室の前記捺染インク組成物を循環可能とする循環流路とを有するインクジェット方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に用い得る液体噴射ヘッドの構成を説明するための概略図である。
【図2】本実施形態のシリアル方式のインクジェット記録装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0016】
1.インクジェット記録装置
本実施形態のインクジェット記録装置は、捺染インク組成物と、捺染インク組成物を吐出する液体噴射ヘッドと、を備える。液体噴射ヘッドは、捺染インク組成物を吐出するノズルと、捺染インク組成物が供給される圧力室と、圧力室の捺染インク組成物を循環可能とする循環流路と、を有する。
【0017】
本実施形態のインクジェット記録装置は、水溶性染料を比較的多く含む捺染インク組成物を吐出するものであり、捺染インク組成物を収容するインク収容体と、該インク収容体と液体噴射ヘッドとを接続するインク流路を有してもよい。本実施形態のインクジェット記録装置は、所定の液体噴射ヘッドを有することにより、水溶性染料を比較的多く含む捺染インク組成物であっても、目詰まりを抑制し、目詰まり回復性を維持することができる。そのため、水溶性染料を比較的多く含む捺染インク組成物により、高い発色性を有する記録物を作成することができる。
【0018】
1.1.液体噴射ヘッド
液体噴射ヘッドは、図1に示すように、ノズル1と、捺染インク組成物が供給される圧力室2と、圧力室2の組成物を循環可能とする循環流路3とを有する。これにより、捺染インク組成物をヘッド内で循環させることが可能となり、ノズル近傍でのインク組成物の固化が抑制され、高発色の記録物を得ることができる。
【0019】
液体噴射ヘッドは、ヘッド内の捺染インク組成物を加熱するための加熱部を有してもよい。このような加熱部は、圧力室2、循環流路3を含む循環経路中の組成物の加熱が可能であればその設置位置は特に制限されないが、例えば、液体噴射ヘッドやインク流路に設けることができる。また、液体噴射ヘッドに加熱部を設ける場合、加熱部は圧力室及び循環流路のいずれに設けてもよい。また、本実施形態のインクジェット記録装置は、捺染インク組成物がインク流路あるいはインクタンクに充填されたものであることが好ましい。
【0020】
インクジェット記録装置の一例として、図2に、シリアルプリンタの斜視図を示す。図2に示すように、シリアルプリンタ20は、搬送部220と、記録部230とを備えている。搬送部220は、シリアルプリンタに給送された記録媒体Fを記録部230へと搬送し、記録後の記録媒体をシリアルプリンタの外に排出する。具体的には、搬送部220は、各送りローラを有し、送られた記録媒体Fを副走査方向T2へ搬送する。また、搬送部としては無端ベルトであってもよく、副走査方向下流側に巻取りローラを有するものであってもよい。
【0021】
また、記録部230は、搬送部220から送られた記録媒体Fに対して組成物を吐出するインクジェットヘッド231と、それを搭載するキャリッジ234と、キャリッジ234を記録媒体Fの主走査方向S1、S2に移動させるキャリッジ移動機構235を備える。
【0022】
シリアルプリンタの場合には、インクジェットヘッド131として記録媒体の幅より小さい長さであるヘッドを備え、ヘッドが移動し、複数パス(マルチパス)で記録が行われる。また、シリアルプリンタでは、所定の方向に移動するキャリッジ234にヘッド231が搭載されており、キャリッジの移動に伴ってヘッドが移動することにより記録媒体上に組成物を吐出する。これにより、2パス以上(マルチパス)で記録が行われる。なお、パスを主走査ともいう。パスとパスの間には記録媒体を搬送する副走査を行う。つまり主走査と副走査を交互に行う。
【0023】
また、本実施形態のインクジェット記録装置は、上記シリアル方式のプリンタに限定されず、上述したライン方式のプリンタであってもよい。
【0024】
1.2.捺染インク組成物
捺染インク組成物は、水溶性染料と、水溶性有機溶剤と、水と、を含有し、必要に応じて、尿素、界面活性剤、pH調整剤、その他の添加剤を含んでもよい。
【0025】
1.2.1.水溶性染料
水溶性染料としては、特に制限されないが、例えば、酸性染料、反応性染料、又は直接染料が挙げられる。染料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
酸性染料としては、特に制限されないが、例えば、C.I.アシッドイエロー、C.I.アシッドレッド、C.I.アシッドブルー、C.I.アシッドオレンジ、C.I.アシッドバイオレット、C.I.アシッドブラックが挙げられる。
【0027】
直接染料としては、特に制限されないが、例えば、C.I.ダイレクトイエロー、C.I.ダイレクトレッド、C.I.ダイレクトブルー、C.I.ダイレクトオレンジ、C.I.ダイレクトバイオレット、C.I.ダイレクドブラックが挙げられる。
【0028】
反応性染料としては、特に制限されないが、例えば、C.I.リアクティブイエロー、C.I.リアクティブレッド、C.I.リアクティブブルー、C.I.リアクティブオレンジ、C.I.リアクティブバイオレット、C.I.リアクティブブラックが挙げられる。
【0029】
このなかでも、水溶性染料として、アシッドブルー138、アシッドブルー290、アシッドバイオレット54、アシッドオレンジ116、リアクティブイエロー15、リアクティブレッド123、又はリアクティブブルー222の少なくともいずれかを用いることが好ましい。このような水溶性染料は、湿潤堅牢性が高く、水への溶解度が比較的低いため、目詰まり回復性が劣りやすい傾向にある。そのため、本発明が特に有用である。
【0030】
水溶性染料の含有量は、捺染インク組成物の総量に対して、10質量%以上であり、好ましくは12質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。水溶性染料の含有量の好ましい下限は、水溶性染料の種類によって異なってもよい。捺染においては繊維の中や裏面まで色材が浸透してしまう。そのため、水溶性染料の含有量が10質量%以上であることにより、高い発色性を有する記録物を作成することができる。特に黒色染料については、水溶性染料の一層の高濃度化が求められる傾向にある。
【0031】
水溶性染料の含有量を多くすると、捺染インク組成物に含まれる水溶性有機溶剤と水の量が相対的に少なくなり、固まりやすくなり、目詰まり回復性が低下する傾向にある。これに対して、本実施形態においては上述した構成を有する液体噴射ヘッドを用い、液体噴射ヘッド内で捺染インク組成物を循環させることで、目詰まり回復性を維持することができる。
【0032】
水溶性染料の含有量の上限は、特に制限されないが、捺染インク組成物の総量に対して、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以下である。水溶性染料の含有量の好ましい上限は、水溶性染料の種類によって異なってもよい。水溶性染料の含有量が35質量%以下であることにより、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。
【0033】
1.2.2.水溶性有機溶剤
水溶性有機溶剤としては、特に制限されないが、例えば、グリセリン;メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、2−メチル−2−プロパノール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、及び1,2−ヘキサンジオールなどの低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びトリプロピレングリコールなどのグリコール類;ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びテトラエチレングリコールジエチルエーテルなどのグリコール類の誘導体;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、及びN−エチル−2−ピロリドン等の環状アミド化合物が挙げられる。水溶性有機溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0034】
水溶性有機溶剤の含有量は、捺染インク組成物の総量に対して、好ましくは15〜60質量%であり、より好ましくは20〜55質量%であり、さらに好ましくは25〜50質量%である。水溶性有機溶剤の含有量が15質量%以上であることにより、比較的水への溶解度の低い水溶性染料を溶解することができ、高濃度の染料を含む捺染インク組成物が得られる傾向にある。また、水溶性有機溶剤の含有量が60質量%以下であることにより、水の揮発による急激な粘度上昇を抑制することができ、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。
【0035】
このなかでも、水溶性有機溶剤は、20℃における蒸気圧が1Pa以上の第1水溶性有機溶剤と、20℃における蒸気圧が1Pa未満の第2水溶性有機溶剤と、を含むことが好ましい。このような第1水溶性有機溶剤は粘度が低いため、第1水溶性有機溶剤を用いることにより、捺染インク組成物の流動性がより向上し、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。また、第2水溶性有機溶剤は揮発性が低いため、第2水溶性有機溶剤を用いることにより、捺染インク組成物の流動性がより向上し、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。
【0036】
このような第1水溶性有機溶剤としては、特に制限されないが、例えば、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ピロリドンが挙げられる。第1水溶性有機溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0037】
第1水溶性有機溶剤の含有量は、捺染インク組成物の総量に対して、好ましくは7〜45質量%であり、より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは10〜30質量%である。第1水溶性有機溶剤の含有量が上記範囲内であることにより、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。
【0038】
また、第2水溶性有機溶剤としては、特に制限されないが、例えば、グリセリン、トリエチレングリコール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、トリエチレングリコ−ルモノブチルエーテルが挙げられる。第2水溶性有機溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0039】
第2水溶性有機溶剤の含有量は、捺染インク組成物の総量に対して、好ましくは0.1〜40質量%であり、より好ましくは5〜35質量%であり、さらに好ましくは10〜30質量%である。第2水溶性有機溶剤の含有量が上記範囲内であることにより、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。
【0040】
第1水溶性有機溶剤に対する第2水溶性有機溶剤の含有量比は、質量基準で、好ましくは0.01〜2.5であり、より好ましくは0.02〜2であり、さらに好ましくは0.5〜2である。ノズル部から水分が微量蒸発したインクが循環することで、捺染インク組成物の粘度が急激に上昇し、目詰まり回復性が損なわれることがある。しかし、第1水溶性有機溶剤に対する第2水溶性有機溶剤の含有量比が上記範囲内であることにより、このような粘度上昇を抑制することができ、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。
【0041】
1.2.3.水
水の含有量は、捺染インク組成物の総量に対して、好ましくは15〜75質量%であり、より好ましくは20〜70質量%である。水の含有量が上記範囲内であることにより、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。
【0042】
1.2.4.尿素、
捺染インク組成物が尿素を含有することが好ましい。尿素を含むことにより、捺染インク組成物の湿潤性が向上し、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。
【0043】
尿素の含有量は、捺染インク組成物の総量に対して、好ましくは0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜12.5質量%である。尿素の含有量が上記範囲内であることにより、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。
【0044】
水溶性染料に対する尿素の含有量比は、質量基準で、好ましくは0.05〜1.0であり、より好ましくは0.1〜0.5であり、さらに好ましくは0.1〜0.3である。水溶性染料に対する尿素の含有量比が上記範囲内であることにより、捺染インク組成物の湿潤性がより向上し、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。
【0045】
1.2.5.界面活性剤
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0046】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール及び2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0047】
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。
【0048】
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエステル変性シリコーンまたはポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。ポリエステル変性シリコーンとしては、BYK−347、348、BYK−UV3500、3510、3530(以上、BYK Additives&Instruments社製)等が挙げられ、ポリエーテル変性シリコーンとしては、BYK−3570(BYK Additives&Instruments社製)等が挙げられる。
【0049】
このなかでも、アセチレングリコール系界面活性剤が好ましい。このような界面活性剤を用いることにより、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。
【0050】
界面活性剤の含有量は、捺染インク組成物の総質量に対し、好ましくは0.1〜1質量%であり、より好ましくは0.2〜0.8質量%である。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。
【0051】
1.2.6.pH調整剤、
pH調整剤としては、特に制限されないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等のアミン類;・アジピン酸、クエン酸などのカルボン酸類が挙げられる。これらのpH調整剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0052】
pH調整剤の含有量は、捺染インク組成物の総質量に対し、好ましくは0.1〜1質量%であり、より好ましくは0.2〜0.8質量%である。
【0053】
2.インクジェット方法
本実施形態に係るインクジェット方法は、上記インクジェット記録装置を用いたインクジェット方法であって、上記捺染インク組成物を、液体噴射ヘッドで吐出して記録媒体に付着させる吐出工程を有する。
【0054】
2.1.吐出工程
吐出工程では、捺染インク組成物を液体噴射ヘッドから吐出して記録媒体に付着させる。より具体的には、圧力発生手段を駆動させて、液体噴射ヘッドの圧力発生室内に充填された組成物をノズルから吐出させる。このような吐出方法をインクジェット法ともいう。
【0055】
本実施形態で用いる液体噴射ヘッドについて説明する。図1に、液体噴射ヘッド10の構成を説明するための概略図を示す。図1には、捺染インク組成物を吐出する一つのノズル1と、組成物が供給される圧力室2と、圧力室2の組成物を循環可能とする循環流路3の概略を示す。図1の例においては、ノズル1と圧力室2は、連通路4で連通している。
【0056】
ノズル1は、捺染インク組成物を吐出する貫通孔である。より具体的には、ノズル1は、ノズルプレートに形成された貫通孔である。ノズルプレートには、複数のノズルが形成されており、それらノズルごとに圧力室2が設けられる。圧力室2は、ノズル1毎に個別に形成される。圧力室2には、捺染インク組成物が供給される。圧力発生手段(図示せず)により圧力室2内の圧力が変動すると、連通路4内を流動する組成物のうちの一部がノズル1から外部に噴射され、残りの一部が循環流路3へと流入する。
【0057】
循環流路3の経路は特に制限されないが、循環流路3へと流入した組成物は、圧力室2に供給されるように流路を構成することができる。なお、循環流路3へと流入した組成物は、必ずしも同一の圧力室に再供給される必要はなく、他のノズルに対応する圧力室に供給されてもよい。また、循環流路3はすべての流路が液体噴射ヘッド10の内部にある必要はなく、圧力室3から流出した組成物が再び圧力室3に供給されるように構成されていれば、一部の流路は液体噴射ヘッド10外にあってもよい。
【0058】
このように、本実施形態の液体噴射ヘッド10によれば、圧力室2内の組成物、より具体的には、ノズル1の近傍の組成物をヘッド内で効率的に循環させることができる。これにより、ノズル毎の使用率やノズル位置に違いがあっても、ノズル毎の組成物による目詰まりを抑制することができる。
【0059】
吐出工程において用いる液体噴射ヘッド10としては、ライン方式により記録を行うラインヘッドと、シリアル方式により記録を行うシリアルヘッドが挙げられる。
【0060】
ラインヘッドを用いたライン方式では、例えば、記録媒体の記録幅以上の幅を有する液体噴射ヘッドをインクジェット記録装置に固定する。そして、記録媒体を副走査方向(記録媒体の縦方向、搬送方向)に沿って移動させ、この移動に連動して液体噴射ヘッドのノズルからインク滴を吐出させることにより、記録媒体上に画像を記録する。
【0061】
シリアルヘッドを用いたシリアル方式では、例えば、記録媒体の幅方向に移動可能なキャリッジに液体噴射ヘッドを搭載する。そして、キャリッジを主走査方向(記録媒体の横方向、幅方向)に沿って移動させ、この移動に連動してヘッドのノズル開口からインク滴を吐出させることにより、記録媒体上に画像を記録することができる。
【0062】
2.2.第1加熱工程
本実施形態のインクジェット法は、液体噴射ヘッド内の組成物を加熱する第1加熱工程を有してもよい。より具体的には、圧力室2、循環流路3、連通路4により構成される循環経路内の組成物を加熱する加熱工程を有していてもよい。加熱手段は、特に制限されないが、例えば、圧力室2、循環流路3、又は連通路4に設けることができる。また、そのほかに、ノズルプレートを加熱する加熱手段を設けてもよいし、循環経路3が液体噴射ヘッド10外を経由する場合には、液体噴射ヘッド10外に存在する循環経路3に加熱手段を設けてもよい。さらに、圧力室よりも上流のインク流路に加熱手段を設けてもよい。ここで、インク流路とは、インクを流通させるための流路をいう。インク流路としては、例えば、インクを貯留するインク収容容器からインクジェット式記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給路なども含まれる。
【0063】
加熱工程においては、組成物を40℃以上に加熱することが好ましい。組成物の加熱温度は、より好ましくは40〜60℃であり、さらに好ましくは40〜50℃である。このような加熱工程と組成物を循環させる液体噴射ヘッドを組み合わせることにより、捺染インク組成物による目詰まりを抑制することができる。
【0064】
2.3.第2加熱工程
本実施形態のインクジェット方法は、吐出工程後、捺染インク組成物が付着した記録媒体を加熱する第2加熱工程をさらに有してもよい。加熱することにより、付着した捺染インク組成物の水分及び溶剤分を蒸発させることができ、記録媒体を巻き取ったり重ねたりする場合に、付着した捺染インク組成物が記録媒体の裏面や非付着部に転写するといった不具合を防止することができる。
【0065】
2.4.固着工程
本実施形態のインクジェット方法に於いては、記録媒体に付着した染料を固着させるため、上記工程の後、記録媒体を高温環境下で水蒸気に曝露することで、固着工程(スチーム工程)を行うことが好ましい。使用する布帛の種類や染料種によって好適な範囲は若干異なるが、温度はおおむね100〜110℃の範囲が好ましい。曝露時間は、綿やビスコースレーヨンなどのセルロース系繊維の場合は、10〜20分、絹や羊毛、ナイロンといったアミド系繊維の場合は、20〜40分程度が好ましい。これらの範囲で固着処理を行うことで、染料が繊維に良好に染着する。
【0066】
2.5.洗浄工程
本実施形態のインクジェット方法に於いては、固着工程の後、記録媒体を洗浄し、その後乾燥を行うことが好ましい。具体的な流れとしては、(1)水洗(常温)、(2)湯洗、(3)ソーピング、(4)乾燥となるが、(1)と(2)はどちらか一方でも良い。(1)〜(3)においては、未固着の染料を十分に洗い流すことを目的としており、それぞれ数分程度以上行うことが望ましい。また(2)で使用する湯の温度としては40〜60℃が好ましい。
【0067】
(3)ソーピングは、湯浴で洗浄助剤とともに攪拌する工程を指す。湯温は、用いる染料種によって、酸性染料や直接染料を用いる場合は40〜70℃、反応染料を用いる場合は80℃〜100℃であることが望ましい。また、使用する洗浄助剤は広く市販のものを使用することができ、具体例としては、エスクードM−200、エスクードRZ−30(日華化学製)、ラッコールSTA、ラッコールISF、メイサノールKHM(明成化学製)、クインソープNW−1570、クインソープSHA−50、クインソープSK−D(コタニ化学工業製)、アニゾール300、ノニゾール501(里田化工製)、センカノールC−80、センカノールCW、センカノールGNW(センカ製)等が挙げられる。
【0068】
(4)乾燥については、記録媒体の態様を損なわない範囲で、温風・熱風を記録媒体に吹きつけたり晒したりする温風乾燥、アイロンやホットプレス機を用いて圧熱するプレス乾燥など、任意の方法を用いることができる。
【0069】
2.6.記録媒体
記録媒体としては、特に制限されないが、例えば、布帛を用いることができる。布帛としては、特に限定されないが、例えば、絹、綿、羊毛、ナイロン、レーヨン等の天然繊維又は合成繊維が挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0071】
1.インクジェット組成物の調製
表1〜2に記載の組成となるように、ステンレス製容器である混合物用タンクに、各成分を入れ、混合攪拌して完全に溶解させた後、さらに常温で1時間混合撹拌し、さらに5μmのメンブランフィルターでろ過することにより各例の捺染インク組成物を得た。なお、表中の各例に示す各成分の数値は特段記載のない限り質量%を表す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
<水溶性染料>
・Acid Black 172
・Acid Red 249
・Acid Yellow 79
・Acid Blue 140
・Direct Blue 199
・Acid Orange 33
・Direct Orange 26
・Acid Red 138
・Acid Violet 54
・Acid Orange 116
・Acid Blue 290
・Reactive Black 39
・Reactive Black 5
・Reactive Yellow 95
・Reactive Red 31
・Reactive Red 3:1
・Reactive Blue 49
・Reactive Orange 13
・Reactive Yellow 15
・Reactive Red 123
・Reactive Blue 222
<水溶性有機溶剤>
・プロピレングリコール
・ジエチレングリコール
・1,2−ヘキサンジオール
・1,3−ブタンジオール
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル
・2−メチル−1,3−プロパンジオール
・2−ピロリドン
・グリセリン
・トリエチレングリコール
・3−メチル1,5−ペンタンジオール
・トリエチレングリコ−ルモノブチルエーテル
<pH調整剤>
・トリエタノールアミン(TEA)
・トリイソプロパノールアミン (TPA)
・アジピン酸
・クエン酸
<界面活性剤>
・サーフィノール465(日信化学工業株式会社、アセチレングリコール系界面活性剤)
・サーフィノール104H(日信化学工業株式会社、アセチレングリコール系界面活性剤)
<その他>
・尿素
【0075】
2.評価方法
2.1.目詰まり回復性の評価
インクジェット記録装置2として、Monna-Lisa EVO T16 180(Robustelli社製)を用意した。インクジェット記録装置1として、インクジェット記録装置2を図1に示すような循環流路を有する液体噴射ヘッドを備えるように改造した記録装置を用意した。インクジェット記録装置1とインクジェット記録装置2それぞれを用いて、23℃50%RH条件にて、液体噴射ヘッドから捺染インク組成物を10分間連続吐出させた後、キャッピングなどをせずにそのままの状態で1時間放置した。
【0076】
放置後、写真用紙に捺染インク組成物を吐出し、すべてのノズルから正常に捺染インク組成物が吐出されるようになるまで吐出を行った。この時、正常に吐出されるようになるまでのインク滴数をカウントした。インク滴のカウントに基づいて、下記評価基準により目詰まり回復性を評価した。なお、インクジェット記録装置1とインクジェット記録装置2では、それぞれ吐出される捺染インク組成物の量が同じとなるよう、PZT素子の駆動電圧を調整して使用した。なおC評価までは実用上の問題はない。結果を表3に示す。
(評価基準)
S:500発以下で正常化
A:500発超過2000発以下で正常化
B:2000発超過5000発以下で正常化
C:5000発超過10000発以下で正常化
D:10000発で正常化せず、ノズルクリーニングを行うことで正常化
E:10000発で正常化せず、ノズルクリーニングを行っても一部のノズルで正常化しない
F:10000発で正常化せず、ノズルクリーニングを行っても、殆どのノズルで吐出しない
【0077】
【表3】
【0078】
2.2.印捺布1の作成(インク:A1〜P1,A2,B2,F2,M2)
インクジェット記録装置1を用いて、布帛に対して、捺染インク組成物の付着量が19.3g/m2となるようにべた印刷を行った。なお、布帛としては、絹布(絹羽二重14匁、色染社製)を、アルギン酸ナトリウム1.0質量%、グアガム1.0質量%、硫酸アンモニウム4.0質量%、尿素10.0質量%、水(残量)を含む、前処理液で処理し、マングルにてピックアップ率20%で絞り乾燥させたものを使用した。
【0079】
ベタ印刷後、スチーマー(マチス社製;スチーマーDHe型)を用いて、102℃30分スチーム処理を行い、その後、水洗をして未固着の染料を除去した。さらに湯洗(40℃10分)の後、ラッコールSTA(洗浄助剤;明成化学製)を0.2質量%含む55℃のお湯を用いて10分洗浄し、常温水ですすぎを行い、これを乾燥させて、印捺布を作成した。
【0080】
2.3.印捺布2の作成(インク:A3〜O3,A4,B4,F4,O4)
インクジェット記録装置1を用いて、布帛に対して、捺染インク組成物の付着量が19.3g/m2となるようにべた印刷を行った。なお、布帛としては、綿布(綿ブロード シル付、色染社製)。を、アルギン酸ナトリウム1.0質量%、グアガム1.0質量%、硫酸アンモニウム4.0質量%、尿素10.0質量%、水(残量)を含む、前処理液で処理し、マングルにてピックアップ率20%で絞り乾燥させたものを使用した。
【0081】
ベタ印刷後、スチーマー(マチス社製;スチーマーDHe型)を用いて、102℃12分スチーム処理を行い、その後、水洗をして未固着の染料を除去した。さらに湯洗(50℃10分)の後、ラッコールSTA(洗浄助剤;明成化学製)を0.2質量%含む90℃のお湯を用いて10分洗浄し、常温水ですすぎを行い、これを乾燥させて、印捺布を作成した。
【0082】
2.4.印捺濃度の評価
上記のようにして得られた印捺布1及び2について、分光濃度計 FD−7(コニカミノルタ製)を用いて、印捺布の濃度(OD値)を測定した。なお、測定においては、各色材の色に合わせ偏向フィルタを用い、それぞれの色材に好適な色領域(Dk、Dc、Dm、Dy)の値を求めた。また、測定条件としては、光源:D65、視野角10度、Status−T、UVフィルタ有とした。結果を表4に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
2.5.堅牢度の評価
上記のようにして得られた印捺布について、洗濯堅牢度(JIS L 0844:2011 A−2号)、汗堅牢度(JIS L 848:2004)、水堅牢度(JIS L 846:2004)の各規格に準拠して、堅牢度試験を実施した。なお、試験に使用した添付白布は、インク:A1〜P1についてはJIS L 0803記載の絹(2−1号)を使用した。また、インク:A3〜O3ついてはJIS L 0803記載の綿(3−1号)を使用した。なお、添付白布は日本規格協会より購入したものを用いた。結果を表5に示す。なお、表5中の数値は、各堅牢度試験結果の級数を表す。
【0085】
【表5】
【0086】
2.6.単位面積当たりの染料印加量を合わせた、比較例インクの印捺布の作成評価
インクジェット記録装置1を用いて、比較例のインク組成物(A2、B2、F2、M2)を用いて、単位面積当たりの染料付着量がそれぞれ実施例のインク組成物(A1、B1、F1、M1)と同じになるように印加量を調整して、ベタ印刷を行い、印捺布を作成した。
【0087】
具体的には、A2、B2、F2は、それぞれA1、B1、F1のインクに対し染料含有比率が1/2であることから、19.3mg/m2の印加量で吐出を行いつつ、同一ヶ所に2回重ねで印加するようにし、それ以外は、上記した印捺布の作成方法と同じ手順で行った。また、M2については、M1に対する染料含有比率が1/5であることから、19.3mg/m2の印加量で吐出を行いつつ、同一ヶ所に5回重ねで印加するようにし、それ以外は、A2、B2、F2と同様にした。
【0088】
また、反応性染料を用いた実施例のインク組成物(A3、B3、F3、O3)と比較例のインク組成物(A4、B4、F4、O4)においても同様の記録を行い印捺布を作成した。
【0089】
得られた各印捺布について、印捺濃度の測定を行い、またべた印刷の端部の滲み具合を目視観察にて判定した。その結果に基づいて、以下の評価基準で評価した。結果を表6に示す。
(評価基準)
A: 端部の滲みは無く、輪郭は非常にシャープではっきりしている。
B: やや滲みはあるが、輪郭は識別できる。
C: 色が滲んでしまい、輪郭がぼやけてわかりにくい。
D:滲みが甚大で、輪郭がどこにあるか判別できない。
【0090】
【表6】
【0091】
3.評価結果
表1〜2に、各例で用いた捺染インク組成物の組成を示し、表3〜6に各評価結果を示した。これら表から、水溶性染料を所定量含む捺染インク組成物を、所定の液体噴射ヘッドで吐出する記録装置は、目詰まり回復性に優れ、また、にじみを生じさせずに高濃度印捺が可能であることが分かる。
【0092】
詳しくは、表3において、記録装置1と記録装置2とを比較すると、記録装置1を用いることにより目詰まり回復性に優れることが分かる。一方で、表3に示してはいないが、比較例のインク組成物(A2、B2、F2、M2、A4、B4、F4、O4)を用いた場合には、記録装置1及び2ともに目詰まり回復性に問題はなく、目詰まり回復性の問題は、水溶性染料を所定量含む捺染インク組成物に特有の課題であることもわかる。
【0093】
また、表4において、実施例のインク組成物と比較例のインク組成物(A2、B2、F2、M2、A4、B4、F4、O4)を用いる場合を比較すると、比較例のインク組成物の方が得られる印捺物の光学濃度(OD値)が劣ることが分かる。
【0094】
特に、表6に示されるとおり、実施例のインク組成物と比較例のインク組成物の光学濃度(OD値)をそろえることを目的として、比較例のインクを用いて2倍又は5倍で重ねて印加した場合には、OD値としては近い値となるが、実施例と同じレベルには到達しないことがわかる。これは、色材以外に溶媒も同様に多く印加してしまっているために、色材が布の裏側にまで浸透してしまい、表面に十分残らないためと考えられる。
【0095】
また、表6に示されるとおり、重ねて印加する場合には、実施例と比較して、溶媒を多く布帛に印加することとなる。そのため、比較例で重ねて印加した部分では、印捺部分全体の滲みが悪化し、特に端部は完全にぼやけてしまい、非印捺部との境界部分が完全に崩れる結果となった。
【0096】
さらに、表5に示されるとおり、実施例のインク組成物を用いて得られる印捺物は、いずれも優れた堅牢性を示すことも確認できた。
【符号の説明】
【0097】
1…ノズル、2…圧力室、3…循環流路、4…連通路、10…液体噴射ヘッド、20…シリアルプリンタ、220…搬送部、230…記録部、231…インクジェットヘッド、234…キャリッジ、235…キャリッジ移動機構、F…記録媒体、S1,S2…主走査方向、T1…副走査方向
【図1】
【図2】