(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021046360
(43)【公開日】20210325
(54)【発明の名称】腫瘍抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4545 20060101AFI20210226BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20210226BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210226BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20210226BHJP
【FI】
   !A61K31/4545
   !A61P31/12
   !A61P35/00
   !A61P35/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】2019168668
(22)【出願日】20190917
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)公開の事実1 編集発行者:第66回日本ウイルス学会学術集会 刊行物名:第66回日本ウイルス学会学術集会 プログラム・抄録集 頁数:第297頁 発行日:平成30年9月18日 (2)公開の事実2 集会名:第66回日本ウイルス学会学術集会 開催日:平成30年10月28日 開催場所:京都テルサ(京都府京都市南区東九条下殿田町70)
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【住所又は居所】京都府京都市左京区吉田本町36番地1
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】萩原 正敏
【住所又は居所】京都府京都市左京区吉田本町36番地1 国立大学法人京都大学内
(72)【発明者】
【氏名】網代 将彦
【住所又は居所】京都府京都市左京区吉田本町36番地1 国立大学法人京都大学内
(72)【発明者】
【氏名】阪本 哲紀
【住所又は居所】京都府京都市左京区吉田本町36番地1 国立大学法人京都大学内
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】腫瘍ウイルス性腫瘍に対する医薬組成物又は治療方法を提供する。
【解決手段】一態様において、腫瘍ウイルスに起因する腫瘍を予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療するための医薬組成物であって、前記腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分を有効成分として含有する医薬組成物。前記有効成分がN−[5-フルオロ−2−(1−ピペリジニル)フェニル]−4−ピリジンチオアミド又はその製薬上許容される塩である、医薬組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍ウイルスに起因する腫瘍を予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療するための医薬組成物であって、
前記腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分を有効成分として含有する、医薬組成物。
【請求項2】
腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分が、腫瘍ウイルスの遺伝子産物の発現及び/又は機能を抑制する成分である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記遺伝子産物が、腫瘍ウイルスのライフサイクルに関与する遺伝子産物である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記遺伝子産物が、腫瘍ウイルスの溶解感染の開始又はその期間に発現が誘導される若しくは亢進する遺伝子産物である、請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分が、腫瘍ウイルスのコピー数の増加を抑制する成分である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分が、下記式(I):
【化1】
で表される化合物又はその製薬上許容される塩であり、
式(I)において、
1は、水素原子、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、置換若しくは無置換のC2-6アルケニル基、置換若しくは無置換のC2-6アルキニル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、
Xは、−C(=O)−、−C(=S)−、−SO2−、−C(=S)NHC(=O)−、又は−C(=O)NHC(=S)−を示し、
2は、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、置換若しくは無置換のC2-6アルケニル基、置換若しくは無置換のC2-6アルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素ヘテロアリール基を示し、
3は、水素原子、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、ハロゲン原子、−CN、−NH2、又は−NO2を示し、
4は、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、置換若しくは無置換のC2-6アルケニル基、置換若しくは無置換のC2-6アルキニル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、
5は、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、又はアジ基を示し、
6は、水素原子、−CSO2NR1011、又は−CSO212を示し、ここで、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、置換若しくは無置換のC2-6アルケニル基、置換若しくは無置換のC2-6アルキニル基、置換若しくは無置換のC1-4アルコキシC1-4アルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは無置換の芳香族環、若しくは置換若しくは無置換のヘテロアリール基を示すか、R10及びR11はこれらが結合する窒素原子とともにヘテロシクロアルキル基を形成するか、又はR10及びR11はこれらが結合する窒素原子及び窒素原子が結合する硫黄原子とともにヘテロシクロアルキル基を形成し、
7は、水素原子、ハロゲン原子、ジエチルアミノ基、置換若しくは無置換の含窒素ヘテロシクロアルキル基、又は置換若しくは無置換の含窒素ヘテロアリール基を示す、
請求項1から5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分が、下記式(II):
【化2】
で表される化合物又はその製薬上許容される塩であり、
式(II)において、
4は、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、置換若しくは無置換のC2-6アルケニル基、置換若しくは無置換のC2-6アルキニル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、
5は、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、又はアジ基を示し、
7は、水素原子、ハロゲン原子、ジエチルアミノ基、置換若しくは無置換の含窒素ヘテロシクロアルキル基、又は置換若しくは無置換の含窒素ヘテロアリール基を示し、
8は、酸素原子又は硫黄原子を示し、
9は、水素原子、C1-6アルキル基、又はC2-6アルキニル基を示す、
請求項1から5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分が、下記式:
【化3】
で表される化合物又はその製薬上許容される塩である、請求項1から5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
腫瘍が、肝細胞癌、子宮頚上皮異形成、子宮頸癌、口腔咽頭癌、成人T細胞白血病、悪性リンパ腫、メルケル細胞癌、原発性滲出性リンパ腫、及びカポジ肉腫を含むウイルス関連腫瘍からなる群から選択される、請求項1から8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
腫瘍ウイルスが、EBウイルス(EBV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒトTリンパ白血病ウイルス1型(HTLV−1)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、及びメルケル細胞ポリオ―マウイルス(MCV)からなる群から選択される、請求項1から9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
腫瘍ウイルスに起因する腫瘍を予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療する方法であって、前記腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分を対象に有効投与することを含む、方法。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載の医薬組成物を対象に有効投与することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
腫瘍ウイルスに起因する腫瘍を予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療する方法又はそのための医薬組成物の製造における、前記腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、腫瘍ウイルスに起因する腫瘍の、予防、改善、進行抑制、治療、並びに、医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍形成に関わるウイルスは、腫瘍ウイルス、又はがんウイルスと呼ばれる。
ヒトの腫瘍ウイルスとしては、肝細胞癌におけるB型肝炎ウイルス(HBV)及びC型肝炎ウイルス(HCV)、カポジ肉腫や原発性滲出性リンパ腫(PEL)等に関連するカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、子宮頸がんにおけるヒトパピローマウイルス(HPV)、成人T細胞白血病に関連するヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV−1)、メルケル細胞がんにおけるメルケル細胞ポリオ―マウイルス(MCV)、バーキットリンパ腫等と関連するエプスタン・バールウイルス(EBV)などが知られている。
【0003】
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、パルボウイルス科に属し、環状の二本鎖DNAをゲノムとして持つDNAウイルスである。HPVは、接触感染により伝播する。HPVは、上皮や粘膜に感染し、感染した宿主細胞においてHPV非構造タンパク質であるE6タンパク質及びE7タンパク質を発現し、宿主細胞のp53遺伝子やpRB遺伝子等のがん抑制遺伝子を分解することにより、ウイルスの複製を行う。
【0004】
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)は、エイズに合併したカポジ肉腫から発見されたウイルスであり、HHV−8とも呼ばれる。KSHVは、大きなエンベロープを有する二本鎖DNAウイルスであり、γ―2ヘルペスウイルス亜科(rhadinovirus属)に分類される。カポジ肉腫以外にも、PELのようなリンパ増殖性疾患の発症に関与する。
【0005】
ヒトパピローマウイルス等のウイルスに対して抗ウイルス作用を示す化合物として、N−[5-フルオロ−2−(1−ピペリジニル)フェニル]−4−ピリジンチオアミドが知られている(特許文献1及び2、並びに非特許文献1)。N−[5-フルオロ−2−(1−ピペリジニル)フェニル]−4−ピリジンチオアミドは、宿主細胞のリン酸化酵素を標的とし、HPVのE6遺伝子及びE7遺伝子の発現を抑制し、かつ、p53遺伝子を安定化させることにより抗ウイルス作用を発揮すると知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2005/063293
【特許文献2】WO2009/020198
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Yamamoto M et al., J Clin Invest, 2014, 124(8), 3479-3488
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
腫瘍ウイルスが関与する腫瘍に対する医薬組成物又は治療方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、一態様において、腫瘍ウイルスに起因する腫瘍を予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療するための医薬組成物であって、前記腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分を有効成分として含有する医薬組成物に関する。
本開示は、その他の一態様において、腫瘍ウイルスに起因する腫瘍を予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療する方法であって、前記腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分を対象に有効投与することを含む方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、一態様において、腫瘍ウイルスが関与する腫瘍に対する医薬組成物又は治療方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、KSHVのライフサイクルを説明する概略図である。
【図2】図2は、KSHV+ PEL細胞株(BC−3、BCBL−1)に対する溶解感染誘導(lytic induction)のスキーム及びその結果(RT−PCR)の一例を示す。
【図3】図3は、化合物A(Cp.A)が、溶解感染遺伝子(lytic genes)を転写レベルで抑制していることを示す実験のスキームとその結果(RT−PCR及びウエスタンブロット)の一例を示す。
【図4】図4は、化合物A(Cp.A)が、溶解感染におけるウイルスコピー数の増加を抑制することを示す実験のスキームとその結果(リアルタイムPCR)の一例を示す。
【図5】図5は、PELの異種移植マウスモデルにおける化合物A(Cp.A)のin vivoにおける腫瘍抑制効果を確認する実験のスキームとその結果(マウス比較写真及び腹水量を示すグラフ)の一例を示す。
【図6】図6は、化合物A(Cp.A)を投与したPELマウスモデルの腹水中及び血漿中のウイルスコピー数を測定したグラフの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、一態様において、ウイルス性腫瘍の増殖が、ウイルスの遺伝子産物の発現を抑制することで顕著に抑制できる、という知見に基づく。
一般的な悪性腫瘍の治療方法としては、手術、薬物療法、放射線治療、これらの組み合わせが挙げられる。
薬物療法には、化学療法(抗がん剤治療)、ホルモン療法(内分泌療法)、分子標的療法、分化誘導療法などがある。
そして、抗がん剤や分子標的薬は、ウイルス性腫瘍であっても、腫瘍が形成されてしまうと腫瘍細胞及び/又は腫瘍細胞のタンパク質を標的とするものが一般的である。
それに対して、本開示は、一態様において、腫瘍ウイルスが関与する腫瘍においては、該ウイルスの遺伝子産物の発現を抑制することで腫瘍の増殖を抑制できる、という知見に基づいている。
【0013】
すなわち、本開示は、一態様において、腫瘍ウイルスに起因する腫瘍を予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療するための医薬組成物であって、前記腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分を有効成分として含有する医薬組成物に関する。
【0014】
〔有効成分〕
本開示に係る医薬組成物は、腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分を有効成分として含有する。
本開示において、「腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分」は、一又は複数の実施形態において、腫瘍ウイルスの遺伝子産物の発現及び/又は機能を抑制する成分である。一又は複数の実施形態において、腫瘍ウイルスのゲノムの遺伝子の転写及び/又は翻訳を抑制する成分が挙げられる。
あるいは、「腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分」は、一又は複数の実施形態において、腫瘍ウイルスのコピー数の増加を抑制する成分である。
【0015】
〔標的となる遺伝子産物〕
「腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分」により標的とされる遺伝子産物としては、一又は複数の実施形態において、腫瘍ウイルスのライフサイクルに関与する遺伝子の産物が挙げられる。
ライフサイクルに関与する遺伝子としては、一又は複数の実施形態において、腫瘍ウイルスの潜伏感染から溶解感染へのスイッチに関与するタンパク質をコードする遺伝子、及び/又は、腫瘍ウイルスの溶解感染フェーズにおいて発現が誘導される遺伝子若しくは発現が亢進する遺伝子が挙げられる。
したがって、「腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分」により標的とされる遺伝子産物としては、一又は複数の実施形態において、腫瘍ウイルスの溶解感染の開始に発現が誘導される若しくは亢進する遺伝子産物、又は腫瘍ウイルスの溶解感染の期間に発現が誘導される若しくは亢進する遺伝子産物が挙げられる。
限定されない例としてカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)の例を挙げるとすると、溶解感染の開始に発現が誘導される又は亢進する遺伝子産物は、RTA(ORF50とも呼ばれる)である。RTAは、KSHVの溶解感染スイッチタンパク質である。
また、KSHVの溶解感染フェーズで発現が誘導される又は亢進する遺伝子産物としては、ORF57、K−bZIP、ORF59、vIL−6等が挙げられる。
【0016】
〔腫瘍ウイルスに起因する腫瘍〕
本開示において、治療等の対象である腫瘍は、腫瘍ウイルスに起因する腫瘍であって、一又は複数の実施形態において、悪性腫瘍である。
一般的に治療等が困難な悪性腫瘍に対して、本開示に係る医薬組成物は新たな治療等の手段を提供しうる。
「腫瘍ウイルスに起因する腫瘍」とは、一又は複数の実施形態において、腫瘍ウイルスが腫瘍形成に関わっている腫瘍、腫瘍からウイルスが検出される腫瘍、腫瘍形成の原因がウイルスである腫瘍をいう。
「腫瘍ウイルス」とは、一又は複数の実施形態において、腫瘍形成に関わるウイルス、腫瘍形成の原因であるウイルスをいう。
「腫瘍ウイルスに起因する腫瘍」としては、一又は複数の実施形態において、肝細胞癌、子宮頚上皮異形成、子宮頸癌、口腔咽頭癌、成人T細胞白血病、悪性リンパ腫、メルケル細胞癌、原発性滲出性リンパ腫、及びカポジ肉腫を含むウイルス関連腫瘍などが挙げられる。
「腫瘍ウイルス」としては、一又は複数の実施形態において、EBウイルス(EBV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒトTリンパ白血病ウイルス1型(HTLV−1)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、及びメルケル細胞ポリオ―マウイルス(MCV)が挙げられる。
【0017】
本開示に係る医薬組成物における「腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分」としては、一又は複数の実施形態において、低分子化合物が挙げられる。
腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする低分子化合物、腫瘍ウイルスのゲノムの遺伝子の転写及び/又は翻訳を抑制する低分子化合物、又は、DNA腫瘍ウイルスのゲノムの遺伝子の転写及び/又は翻訳を抑制する低分子化合物として、一又は複数の実施形態において、下記式(I)で表される化合物又はその製薬上許容される塩が挙げられる。
【0018】
【化1】
【0019】
式(I)において、
1は、水素原子、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、置換若しくは無置換のC2-6アルケニル基、置換若しくは無置換のC2-6アルキニル基、又は置換若しくは無置換の5〜8員のアリール基を示し、
Xは、−C(=O)−、−C(=S)−、−SO2−、−C(=S)NHC(=O)−、又は−C(=O)NHC(=S)−を示し、
2は、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、置換若しくは無置換のC2-6アルケニル基、置換若しくは無置換のC2-6アルキニル基、置換若しくは無置換の5〜8員のアリール基、置換若しくは無置換の含窒素複素環、又は置換若しくは無置換の縮合ヘテロアリール基を示し、
3は、水素原子、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、ハロゲン原子、−CN、−NH2、又は−NO2を示し、
4は、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、置換若しくは無置換のC2-6アルケニル基、置換若しくは無置換のC2-6アルキニル基、又は置換若しくは無置換のC6-10のアリール基を示し、
5は、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、又はアジ基を示し、
6は、水素原子、−CSO2NR1011、又は−CSO212を示し、ここで、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、置換若しくは無置換のC2-6アルケニル基、置換若しくは無置換のC2-6アルキニル基、置換若しくは無置換のC1-4アルコキシC1-4アルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは無置換の芳香族環、若しくは置換若しくは無置換のヘテロアリール基を示すか、R10及びR11はこれらが結合する窒素原子とともにヘテロシクロアルキル基を形成するか、又はR10及びR11はこれらが結合する窒素原子及び窒素原子が結合する硫黄原子とともにヘテロシクロアルキル基を形成し、
7は、水素原子、ハロゲン原子、ジエチルアミノ基、置換若しくは無置換の含窒素ヘテロシクロアルキル基、又は置換若しくは無置換の含窒素ヘテロアリール基を示す。
【0020】
本開示における「C1-6アルキル基」とは、炭素数1〜6個の脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される一価の基である、炭素数1〜6個の直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を意味する。C1-6アルキル基としては、一又は複数の実施形態において、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、2−メチル−1−プロピル基、2−メチル−2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−メチル−1−ブチル基、3−メチル−1−ブチル基、2−メチル−2−ブチル基、3−メチル−2−ブチル基、2,2−ジメチル−1−プロピル基、1−へキシル基、2−へキシル基、3−へキシル基、2−メチル−1−ペンチル基、3−メチル−1−ペンチル基、4−メチル−1−ペンチル基、2−メチル−2−ペンチル基、3−メチル−2−ペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−3−ペンチル基、2,3−ジメチル−1−ブチル基、3,3−ジメチル−1−ブチル基、2,2−ジメチル−1−ブチル基、2−エチル−1−ブチル基、3,3−ジメチル−2−ブチル基、又は2,3−ジメチル−2−ブチル基等が挙げられる。
【0021】
本開示における「C2-6アルケニル基」とは、炭素数2〜6個の直鎖状又は分枝鎖状のアルケニル基を意味する。C2-6アルケニル基としては、一又は複数の実施形態において、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、ペンテニル基、又はヘキセニル基等が挙げられる。
【0022】
本開示における「C2-6アルキニル基」とは、炭素数2〜6個の直鎖状又は分枝鎖状のアルキニル基を意味する。C2-6アルキニル基としては、一又は複数の実施形態において、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、又はヘキシニル基等が挙げられる。
【0023】
本開示における「C1-6アルコキシ基」とは、C1-6アルキル基が結合したオキシ基であることを意味する。C1-6アルコキシ基としては、一又は複数の実施形態において、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、2−メチル−1−プロピルオキシ基、2−メチル−2−プロピルオキシ基、1−ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、1−ペンチルオキシ基、2−ペンチルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、2−メチル−1−ブチルオキシ基、3−メチル−1−ブチルオキシ基、2−メチル−2−ブチルオキシ基、3−メチル−2−ブチルオキシ基、2,2−ジメチル−1−プロピルオキシ基、1−へキシルオキシ基、2−へキシルオキシ基、3−へキシルオキシ基、2−メチル−1−ペンチルオキシ基、3−メチル−1−ペンチルオキシ基、4−メチル−1−ペンチルオキシ基、2−メチル−2−ペンチルオキシ基、3−メチル−2−ペンチルオキシ基、4−メチル−2−ペンチルオキシ基、2−メチル−3−ペンチルオキシ基、3−メチル−3−ペンチルオキシ基、2,3−ジメチル−1−ブチルオキシ基、3,3−ジメチル−1−ブチルオキシ基、2,2−ジメチル−1−ブチルオキシ基、2−エチル−1−ブチルオキシ基、3,3−ジメチル−2−ブチルオキシ基、又は2,3−ジメチル−2−ブチルオキシ基等が挙げられる。
【0024】
本開示における「C1-4アルコキシカルボニル基」とは、C1-4アルコキシ基が結合したカルボニル基を意味する。C1-4アルコキシカルボニル基としては、一又は複数の実施形態において、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、1−プロピルオキシカルボニル基、又は2−プロピルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0025】
本開示における「C1-4アルコキシC1-4アルキル基」とは、C1-4アルコキシ基が結合したC1-4アルキル基を意味する。C1-4アルコキシカルボニル基としては、一又は複数の実施形態において、メトキシエチル基又はエトキシメチル基等が挙げられる。
【0026】
本開示における「シクロアルキル基」とは、脂環式炭化水素基を意味する。シクロアルキル基としては、一又は複数の実施形態において、3〜7員のシクロアルキル基が挙げられる。シクロアルキル基は、一又は複数の実施形態において、単環であってもよいし、二環であってもよい。シクロアルキル基としては、一又は複数の実施形態において、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、又はシクロヘキシルキ等が挙げられる。
【0027】
本開示における「ヘテロシクロアルキル基」とは、環を構成する炭素の1又は2個以上が窒素原子、酸素原子又は硫黄原子のヘテロ原子で置換されているシクロアルキル基を意味する。ヘテロシクロアルキル基としては、一又は複数の実施形態において、3〜7員のヘテロシクロアルキル基が挙げられる。ヘテロシクロアルキル基は、一又は複数の実施形態において、単環であってもよいし、二環であってもよい。ヘテロシクロアルキル基としては、一又は複数の実施形態において、アジリジニル基、アゼチジニル基、ピロリジニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロ・チオフェニル基、ピペリジニル基、ピペラジジニル基、ピペラジニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロ・チオ・ピラニル基、又はモルホリニル基等が挙げられる。
【0028】
本開示における「アリール基」とは、芳香族性の炭化水素環式基を意味する。アリール基としては、一又は複数の実施形態において、5〜12員のアリール基が挙げられる。アリール基は、単環であってもよいし、二環であってもよい。アリール基としては、一又は複数の実施形態において、フェニル基、1−ナフチル基、又は2−ナフチル基等が挙げられる。
【0029】
本開示における「ヘテロアリール基」とは、環を構成する炭素の1又は2個以上が窒素原子、酸素原子又は硫黄原子のヘテロ原子で置換されているアリール基を意味する。ヘテロアリール基としては、一又は複数の実施形態において、5〜12員のヘテロアリール基が挙げられる。アリール基は、単環であってもよいし、二環であってもよい。ヘテロアリール基としては、一又は複数の実施形態において、フラニル基、チオフェニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、オキソ−ピリジル基、チアジアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピラジニル基、ピリミジル基、キナゾリニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾイミダゾイル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、又はインダゾリル基等が挙げられる。
【0030】
本開示における「含窒素ヘテロアリール基」とは、環を構成する炭素の1又は2個以上が窒素原子で置換されているヘテロアリール基を意味する。含窒素ヘテロアリール基としては、一又は複数の実施形態において、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾイル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、トリアゾイル基、ピラゾイル基、ピリダゾイル基、ピリミジル基、ピラジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、又はベンゾイミダゾイル基等が挙げられる。
【0031】
本開示における「置換若しくは無置換の」とは、置換可能な部位に、任意の組み合わせで1又は複数個の置換基を有するか、又は置換基を有さないことをいう。置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基、ホルミル基、オキソ基、イミノ基、メチレンジオキシ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ベンジルオキシ基、C1-6アルカノイルオキシ基、アミノ基、モノC1-6アルキルアミノ基、ジC1-6アルキルアミノ基、カルバモイル基、C1-6アルキルアミノカルボニル基、ジC1-6アルキルアミノカルボニル基、カルボキシル基、C1-6アルコキシカルボニル基、C1-6アルキルチオ基、C1-6アルキルスルフィニル基、C1-6アルキルスルホニル基、C1-6アルカノイルアミノ基、又はC1-6アルキルスルホンアミド基が挙げられる。ハロゲン原子は、一又は複数の実施形態において、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素が挙げられる。
【0032】
本開示における「ハロゲン原子を置換基に有していてもよいC1-6アルキル基」とは、任意の少なくとも炭素原子がハロゲン原子で置換されたC1-6アルキル基を意味する。ハロゲン原子を置換基に有していてもよいC1-6アルキル基としては、一又は複数の実施形態において、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、及びモノフルオロメチル基等が挙げられる。
【0033】
式(I)で表される化合物としては、一又は複数の実施形態において、式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【化2】
【0035】
式(II)において、
4は、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、置換若しくは無置換のC2-6アルケニル基、置換若しくは無置換のC2-6アルキニル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、
5は、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、又はアジ基を示し、
7は、水素原子、ハロゲン原子、ジエチルアミノ基、置換若しくは無置換の含窒素ヘテロシクロアルキル基、又は置換若しくは無置換の含窒素ヘテロアリール基を示し、
8は、酸素原子又は硫黄原子を示し、
9は、水素原子、C1-6アルキル基、又はC2-6アルキニル基を示す。
【0036】
4は、一又は複数の実施形態において、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換されたC1-6アルキル基を示し、好ましくは水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。
【0037】
5は、一又は複数の実施形態において、水素原子、アミノ基、又はアジ基を示し、好ましくは水素原子を示す。
【0038】
7は、一又は複数の実施形態において、置換若しくは無置換の含窒素ヘテロシクロアルキル基、又は置換若しくは無置換の含窒素ヘテロアリール基を示し、好ましくは置換若しくは無置換の含窒素ヘテロシクロアルキル基を示し、より好ましくは置換若しくは無置換のピペリジニル基を示す。R7としては、一又は複数の実施形態において、以下の基が挙げられる。下記基において、波線を付した結合手は、式(II)で表される化合物との結合部分である。
【0039】
【化3】
【0040】
9は、一又は複数の実施形態において、水素原子、又はエチニル基を示し、好ましくは水素原子を示す。
【0041】
式(II)で表される化合物としては、一又は複数の実施形態において、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0042】
【化4】
【0043】
これらの中でも、一又は複数の実施形態において、式(I)で表される化合物としては、下記式で表されるN−[5-フルオロ−2−(1−ピペリジニル)フェニル]−4−ピリジンチオアミドが好ましい。
【0044】
【化5】
【0045】
本開示における式(I)で表される化合物又はその塩は、一又は複数の実施形態において、公知の製造方法やWO2009/020198を参照して製造することができる。
【0046】
本開示において「製薬上許容される塩」とは、薬理上及び/又は医薬上許容される塩であって、無機酸塩、有機酸塩、無機塩基塩、有機塩基塩、酸性アミノ酸塩又は塩基性アミノ酸塩などが挙げられる。無機酸塩としては、一又は複数の実施形態において、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などが挙げられる。有機酸塩としては、一又は複数の実施形態において、酢酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などが挙げられる。無機塩基塩としては、一又は複数の実施形態において、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基塩としては、一又は複数の実施形態において、ジエチルアミン塩、ジエタノールアミン塩、メグルミン塩、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン塩などが挙げられる。酸性アミノ酸塩としては、一又は複数の実施形態において、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などが挙げられる。塩基性アミノ酸塩としては、一又は複数の実施形態において、アルギニン塩、リジン塩、オルニチン塩などが挙げられる。
【0047】
本開示において「化合物の塩」には、化合物が大気中に放置されることにより、水分を吸収して形成されうる水和物が包含され得る。また、本開示において「化合物の塩」には、化合物が他のある種の溶媒を吸収して形成されうる溶媒和物も包含され得る。
【0048】
本開示に係る医薬組成物の有効成分である上記化合物は、プロドラッグの形態で医薬組成物に含有されていてもよい。「プロドラッグ」は、一又は複数の実施形態において、生体内で容易に加水分解され、上記化合物を再生するものが挙げられ、例えばカルボキシル基を有する化合物であればそのカルボキシル基がアルコキシカルボニル基となった化合物、アルキルチオカルボニル基となった化合物、又はアルキルアミノカルボニル基となった化合物が挙げられる。また、例えばアミノ基を有する化合物であれば、そのアミノ基がアルカノイル基で置換されアルカノイルアミノ基となった化合物、アルコキシカルボニル基により置換されアルコキシカルボニルアミノ基となった化合物、アシロキシメチルアミノ基となった化合物、又はヒドロキシルアミンとなった化合物が挙げられる。また例えば水酸基を有する化合物であれば、その水酸基が前記アシル基により置換されてアシロキシ基となった化合物、リン酸エステルとなった化合物、又はアシロキシメチルオキシ基となった化合物が挙げられる。これらのプロドラッグ化に用いる基のアルキル部分としては後述するアルキル基が挙げられ、そのアルキル基は置換(例えば炭素原子数1〜6のアルコキシ基等により)されていてもよい。一又は複数の実施形態において、例えばカルボキシル基がアルコキシカルボニル基となった化合物を例にとれば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどの低級(例えば炭素数1〜6)アルコキシカルボニル、メトキシメトキシカルボニル、エトキシメトキシカルボニル、2−メトキシエトキシカルボニル、2−メトキシエトキシメトキシカルボニル、ピバロイロキシメトキシカルボニルなどのアルコキシ基により置換された低級(例えば炭素数1〜6)アルコキシカルボニルが挙げられる。
【0049】
本開示において「医薬組成物」は、一又は複数の実施形態において、周知の製剤技術を適用し、投与形態に適した剤形とすることができる。その投与形態としては、これらに限定されないが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤等の剤形による経口投与が挙げられる。或いは、注射剤、液剤、エアゾール剤、座剤、貼布剤、パップ剤、ローション剤、リニメント剤、軟膏剤、点眼剤等の剤形による非経口投与を挙げることができる。これらの製剤は、これらに限定されないが、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、矯味矯臭剤、希釈剤などの添加剤を用いて周知の方法で製造されうる。
【0050】
前記賦形剤としては、これらに限定されないがデンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等のデンプン、乳糖、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム等を挙げることができる。前記コーティング剤としては、これらに限定されないが、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セラック、タルク、カルナウバロウ、パラフィン等を挙げることができる。前記結合剤としては、これらに限定されないが、ポリビニルピロリドン、マクロゴール及び前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。前記崩壊剤としては、これらに限定されないが、前記賦形剤と同様の化合物及びクロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる。前記安定化剤としては、これらに限定されないが、メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェエノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及びソルビン酸を挙げることができる。前記矯味矯臭剤としては、これらに限定されないが、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる。
【0051】
また、液剤の製造には、溶媒として、これらに限定されないが、エタノール、フェノール、クロロクレゾール、精製水、蒸留水等を使用することができ、必要に応じて界面活性剤又は乳化剤等も使用できる。前記界面活性剤又は乳化剤としては、これらに限定されないが、ポリソルベート80、ステアリン酸ポリオキシル40、ラウロマクロゴール等を挙げることができる。
【0052】
本開示に係る医薬組成物の使用方法は、症状、年齢、投与方法等により異なりうる。使用方法は、これらに限定されないが、有効成分が上記の低分子化合物である場合、体内濃度が100nM〜1mMの間のいずれかになるように、間欠的若しくは持続的に、経口、経皮、粘膜下、皮下、筋肉内、血管内、脳内、又は腹腔内に投与することができる。限定されない実施形態として、経口投与の場合、対象(ヒトであれば成人)に対して1日あたり、前記一般式(I)で表される化合物に換算して、下限として0.01mg(好ましくは0.1mg)、上限として、2000mg(好ましくは500mg、より好ましくは100mg)を1回又は数回に分けて、症状に応じて投与することが挙げられる。限定されない実施形態として、静脈内投与の場合には、対象(ヒトであれば成人)に対して1日当たり、下限として0.001mg(好ましくは0.01mg)、上限として、500mg(好ましくは50mg)を1回又は数回に分けて、症状に応じて投与することが挙げられる。
本開示に係る医薬組成物の使用方法は、他の医薬と併用してもよい。
【0053】
[腫瘍ウイルスに起因する腫瘍の予防、改善、進行抑制及び/又は治療]
本開示は、一態様において、腫瘍ウイルスに起因する腫瘍を予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療する方法であって、前記腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分を対象に有効投与することを含む方法に関する。
本態様は、一又は複数の実施形態において、医薬組成物を対象に有効投与することを含む。
腫瘍ウイルスに起因する腫瘍の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療は、一又は複数の実施形態において、該腫瘍の形成の抑制、該腫瘍の増殖の抑制、又は、該腫瘍の増大の抑制が含まれうる。
本開示に係る医薬組成物の投与は、一又は複数の実施形態において、前述の医薬組成物の使用方法に準じることができる。
対象としては、腫瘍ウイルスに起因する腫瘍が検出された対象(患者)が挙げられる。 また、対象としては、ヒト、ヒト以外の動物が挙げられる。
本態様において、腫瘍ウイルス、腫瘍、有効成分、医薬組成物及びその使用方法等については、上述のとおりとすることができる。
【0054】
本開示は、その他の態様において、腫瘍ウイルスに起因する腫瘍の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための、前記腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分の使用に関する。
本開示は、その他の一又は複数の実施形態において、腫瘍ウイルスに起因する腫瘍の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための医薬組成物を製造するための、前記腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分の使用に関する。
【0055】
本開示は以下の一又は複数の実施形態に関しうる。
[1] 腫瘍ウイルスに起因する腫瘍を予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療するための医薬組成物であって、前記腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分を有効成分として含有する、医薬組成物。
[2] 腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分が、腫瘍ウイルスの遺伝子産物の発現及び/又は機能を抑制する成分である、[1]に記載の医薬組成物。
[3] 前記遺伝子産物が、腫瘍ウイルスのライフサイクルに関与する遺伝子産物である、[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
[4] 前記遺伝子産物が、腫瘍ウイルスの溶解感染の開始又はその期間に発現が誘導される又は亢進する遺伝子産物である、[1]から[3]のいずれかに記載の医薬組成物。
[5] 腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分が、腫瘍ウイルスのコピー数の増加を抑制する成分である、[1]記載の医薬組成物。
[6] 腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分が、下記式(I)で表される化合物又はその製薬上許容される塩である、[1]から[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
【化6】
式(I)において、
1は、水素原子、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、置換若しくは無置換のC2-6アルケニル基、置換若しくは無置換のC2-6アルキニル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、
Xは、−C(=O)−、−C(=S)−、−SO2−、−C(=S)NHC(=O)−、又は−C(=O)NHC(=S)−を示し、
2は、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、置換若しくは無置換のC2-6アルケニル基、置換若しくは無置換のC2-6アルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の含窒素ヘテロアリール基を示し、
3は、水素原子、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、ハロゲン原子、−CN、−NH2、又は−NO2を示し、
4は、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、置換若しくは無置換のC2-6アルケニル基、置換若しくは無置換のC2-6アルキニル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、
5は、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、又はアジ基を示し、
6は、水素原子、−CSO2NR1011、又は−CSO212を示し、ここで、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、置換若しくは無置換のC2-6アルケニル基、置換若しくは無置換のC2-6アルキニル基、置換若しくは無置換のC1-4アルコキシC1-4アルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のヘテロシクロアルキル基、置換若しくは無置換の芳香族環、若しくは置換若しくは無置換のヘテロアリール基を示すか、R10及びR11はこれらが結合する窒素原子とともにヘテロシクロアルキル基を形成するか、又はR10及びR11はこれらが結合する窒素原子及び窒素原子が結合する硫黄原子とともにヘテロシクロアルキル基を形成し、
7は、水素原子、ハロゲン原子、ジエチルアミノ基、置換若しくは無置換の含窒素ヘテロシクロアルキル基、又は置換若しくは無置換の含窒素ヘテロアリール基を示す。
[7] 腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分が、下記式(II)で表される化合物又はその製薬上許容される塩である、[1]から[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
【化7】
式(II)において、
4は、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のC1-6アルキル基、置換若しくは無置換のC2-6アルケニル基、置換若しくは無置換のC2-6アルキニル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、
5は、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、又はアジ基を示し、
7は、水素原子、ハロゲン原子、ジエチルアミノ基、置換若しくは無置換の含窒素ヘテロシクロアルキル基、又は置換若しくは無置換の含窒素ヘテロアリール基を示し、
8は、酸素原子又は硫黄原子を示し、
9は、水素原子、C1-6アルキル基、又はC2-6アルキニル基を示す。
[8] 腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分が、下記式で表される化合物又はその製薬上許容される塩である、[1]から[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
【化8】
[9] 腫瘍が、肝細胞癌、子宮頚上皮異形成、子宮頸癌、口腔咽頭癌、成人T細胞白血病、悪性リンパ腫、メルケル細胞癌、原発性滲出性リンパ腫、及びカポジ肉腫を含むウイルス関連腫瘍からなる群から選択される、[1]から[8]のいずれかに記載の医薬組成物。
[10] 腫瘍ウイルスが、EBウイルス(EBV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒトTリンパ白血病ウイルス1型(HTLV−1)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、及びメルケル細胞ポリオ―マウイルス(MCV)からなる群から選択される、[1]から[9]のいずれかに記載の医薬組成物。
[11] 腫瘍ウイルスに起因する腫瘍を予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療する方法であって、前記腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分を対象に有効投与することを含む、方法。
[12] [1]から[10]のいずれかに記載の医薬組成物を対象に有効投与することを含む、[11]に記載の方法。
[13] 腫瘍ウイルスに起因する腫瘍を予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療する方法又はそのための医薬組成物の製造における、前記腫瘍ウイルスの遺伝子産物を標的とする成分の使用。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本開示はこれら実施例に制限されるものではない。なお、本開示中に引用された文献のその全体は、本開示の一部として組み入れられる。
【0057】
製造例1:
N−[5-フルオロ−2−(1−ピペリジニル)フェニル]−4−ピリジンチオアミド(以下、「化合物A」又は「Cp.A」という)の製造
下記化学式で表される化合物Aを、WO2009/020198の参考例11を参照して製造した。
【0058】
【化9】
【0059】
KSHVのライフサイクル:
KSHVを含むヘルペスウイルスのライフサイクルを図1に基づいて説明する。
まず、ウイルス粒子が宿主細胞に感染してLatent Phase(潜伏感染フェーズ)になる。
次に、サイトカイン刺激等によりLytic phase(溶解感染フェーズ)に移行する。
このLytic phaseでウイルスが複製を繰り返し、最終的には宿主を溶解して多くのウイルス粒子が放出される。
【0060】
原発性滲出性リンパ腫(PEL):
PELは、非ホジキンリンパ腫の一種であり、胸腔内や腹腔内、心膜腔内を原発とするリンパ腫である。著明な腹水が認められる病態を示す。
PELは、免疫力が低下した患者(例えば、HIV感染者)で、HSKVに起因して引き起こされる。予後は非常に悪く、生存期間は4−10か月といわれている。
PELは、化学療法に抵抗性を示すことが多く、また、細胞マーカーCD20を発現しないため、B細胞リンパ腫に著効する抗CD20抗体(リツキシマブ)も効果がない。
【0061】
参考例1:
KSHV+ PEL細胞の溶解感染誘導(lytic induction)と溶解感染遺伝子(lytic genes)の発現
BC−3細胞とBCBL−1細胞はともにKSHV+ PEL細胞の細胞株である。BC−3細胞は、TPA(12−O−テトラデカノイルホルボール 13−アセテート)及びSB(酪酸ナトリウム)がサイトカイン刺激となり溶解感染誘導ができることが知られている。また、BCLB−1細胞は、VPA(バルプロ酸)がサイトカイン刺激となり溶解感染誘導ができることが知られている。
BC−3細胞及びBCBL−1細胞にこれらのサイトカイン刺激を与え、24又は48時間培養して、それらのRNAを回収し、RT−PCRをした。その結果の一例を図2に示す。
図2に示されるように、溶解感染スイッチタンパク質をコードするRTA遺伝子、並びに、RTAにより転写制御される溶解感染遺伝子であるOFR57、K8、及びORF59の3つの遺伝子の発現の亢進が確認され、溶解感染誘導が確認された。
【0062】
実施例1:
化合物Aによる溶解感染誘導の抑制
参考例1と同じBC−3細胞及びBCBL−1細胞を用い、化合物A(製造例1で製造したもの、Cp.Aとも表記する)の効果を確認した。
溶解感染誘導したBC−3細胞及びBCBL−1細胞に化合物Aを加えて48時間培養し、RT−PCR及びウエスタンブロットで解析した。その結果の一例を図3に示す。
図3のRT−PCRの結果からは、化合物Aの添加量が5μM、10μMと増えるにつれ、溶解感染遺伝子の発現量が少なくなっていくことが認められた。
また、図3のウエスタンブロットの結果からは、溶解感染遺伝子は、タンパク質のレベルでも、化合物Aにより発現が抑制されることが認められた。
【0063】
実施例2:
化合物Aによるウイルス複製の抑制
KSHVのコピー数に対する化合物Aの効果をリアルタイムPCRで解析した。
溶解感染誘導したBCBL−1細胞に化合物Aを加えて96時間培養し、DNAサンプルを回収してリアルタイムPCRで解析した。その結果の一例を図4に示す。
図4に示されるように、化合物Aの添加量が5μM、10μMと増えるにつれ、ウイルスのコピー数が減少していくことが認められた。
【0064】
実施例3:
異種移植マウスモデルに対する化合物Aの腹腔内投与
免疫不全マウス(NOD/SCIDマウス)にBCBL−1細胞を腹腔内接種して、PELの感染モデルを作製した。PELとは、上述のとおり、原発性滲出性リンパ腫のことである。
化合物Aの投与群とコントロール群に分けて、週3回化合物Aを腹腔内投与して(300mg/kg bw)、45日間経過観察をした。コントロール群には、化合物Aに代えて週3回PBSを腹腔内投与した、その結果の一例を図5に示す。
図5のマウスの写真は、コントロール群(MOCK)のマウスと、化合物Aの投与群のマウスの対比である。化合物Aを投与しなかったコントロール群のマウスの腹部は、腹水により著しく膨張していることが認められた。
写真の隣のグラフは、腹水の量を比較したものである。化合物Aの投与群の腹水は、コントロール群の腹水に比べて著しく減少していた。
また、コントロール群ではリンパ腫による二次的な肝腫大と脾臓の腫大が確認されが、化合物Aの投与群では、特に秘蔵の腫大が抑制されていた(データ示さず)。
【0065】
上記マウスの腹水中及び血漿中のウイルスを検出した。その結果の一例を図6に示す。
図6に示されるように、化合物Aの投与によって、腹水中及び血漿中のウイルス量が著しく減少した。
【0066】
これらの結果は、化合物AはPELの治療に効果を有することを示している。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】