(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021046478
(43)【公開日】20210325
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体溶液、ポリイミド膜の製造方法、及びリチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20210226BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20210226BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20210226BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20210226BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20210226BHJP
【FI】
   !C08L79/08 A
   !C08L101/00
   !C08K5/17
   !C08G73/10
   !H01M2/16 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】31
(21)【出願番号】2019169127
(22)【出願日】20190918
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
【住所又は居所】東京都港区赤坂九丁目7番3号
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 保伸
【住所又は居所】神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼロックス株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】吉村 耕作
【住所又は居所】神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼロックス株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】中田 幸佑
【住所又は居所】神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼロックス株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 英一
【住所又は居所】神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼロックス株式会社内
【テーマコード(参考)】
4J002
4J043
5H021
【Fターム(参考)】
4J002BC022
4J002BG052
4J002BG062
4J002CF002
4J002CF052
4J002CF072
4J002CM041
4J002EN026
4J002EN036
4J002EN046
4J002EN106
4J002EU046
4J002EU076
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4J002FA082
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4J043YA06
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4J043ZB13
4J043ZB47
5H021BB12
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE06
5H021EE08
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH07
(57)【要約】
【課題】膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液を提供すること。
【解決手段】重量平均分子量が20000以上80000以下であるポリイミド前駆体と、粒子と、有機アミン化合物(A)(ただし、下記水溶性有機溶剤(B)を除く)と、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミドからなる群から選択される少なくとも1つを含む水溶性有機溶剤(B)と、水(C)と、を含有し、前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の含有比〔(A):(B):(C))〕が質量比で、0.02以上0.07以下:0.02以上0.05以下:0.88以上0.96以下である水性溶剤と、を含有するポリイミド前駆体溶液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が20000以上80000以下であるポリイミド前駆体と、
粒子と、
有機アミン化合物(A)(ただし、下記水溶性有機溶剤(B)を除く)と、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミドからなる群から選択される少なくとも1つを含む水溶性有機溶剤(B)と、水(C)と、を含有し、前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の含有比〔(A):(B):(C))〕が質量比で、0.02以上0.07以下:0.02以上0.05以下:0.88以上0.96以下である水性溶剤と、
を含有するポリイミド前駆体溶液。
【請求項2】
前記有機アミン化合物(A)が、トリエチルアミン、N−アルキルピペリジン、2−ジメチルアミノエタノール、及び3級環状アミン化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含有する請求項1に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項3】
前記3級環状アミン化合物が、モルホリン系化合物である請求項2に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項4】
前記モルホリン系化合物が、N−メチルモルホリンである請求項3に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項5】
前記粒子は、前記ポリイミド前駆体の固形分、及び前記粒子の合計体積に対して、体積割合で40%以上85%以下含有されている請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項6】
前記体積割合が50%以上80%以下である請求項5に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項7】
前記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が30000以上80000以下である請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項8】
前記粒子が樹脂粒子である請求項1〜請求項7のいずれか一項のポリイミド前駆体溶液。
【請求項9】
前記樹脂粒子が、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1つである請求項8に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項10】
前記ポリイミド前駆体に対する前記水(C)の含有割合が900質量%以上5000質量%以下である請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項11】
前記含有比〔(A):(B):(C))〕が質量比で、0.02以上0.03以下:0.03以上0.05以下:0.92以上0.96以下である請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体溶液を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥させて、前記ポリイミド前駆体と前記粒子とを含む被膜を形成する工程と、
前記被膜に含まれる前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド膜を形成する工程と、
を有するポリイミド膜の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載のポリイミド膜の製造方法により製造されたポリイミド膜から前記粒子を除去する工程、
を有するリチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体溶液、ポリイミド膜の製造方法、及びリチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、機械的強度、化学的安定性、耐熱性に優れた特性を有する材料であ
り、これらの特性を有するポリイミド膜が注目されている。
ポリイミド膜は、フィルターの用途(濾過フィルター、オイルフィルター、燃料フィルターなど)、二次電池の用途(リチウム二次電池のセパレータ、全固体電池における固体電解質の保持体など)等に適用される場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、水及びN−メチル−2−ピロリドンからなり、水の割合が10〜90質量%である混合溶媒に、特定の繰返し単位からなるポリアミック酸と、イミダゾール類、及びアミン化合物からなる群より選択される塩基性化合物とを溶解してなるポリイミド前駆体組成物が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、水および水溶性アルコールからなる群より選択される少なくとも一種を含む水性溶剤に、二つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を有する第1テトラカルボン酸二無水物、および前記第1テトラカルボン酸二無水物以外の第2テトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との縮重合体からなるポリイミド前駆体と、3級アミン化合物と、が溶解しているポリイミド前駆体組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−17145号公報
【特許文献2】特開2016−30760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリイミド前駆体と粒子と水性溶媒とを含む前駆体溶液において、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の分子量が高いと、得られるポリイミド膜は、膜厚が不均一となることがある。
【0007】
本発明の課題は、重量平均分子量が20000以上80000以下であるポリイミド前駆体と、粒子と、有機アミン化合物(A)(ただし、下記水溶性有機溶剤(B)を除く)と、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルホルムアミド、及びジメチルアセトアミドからなる群から選択される少なくとも1つを含む水溶性有機溶剤(B)と、水(C)と、を含有する水性溶剤と、を含有するポリイミド前駆体溶液において、前記含有比〔(A):(B):(C))〕が質量比で0.02以上0.07以下:0.02以上0.05以下:0.88以上0.96以下であることを満たさない場合に比べ、膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
<1>
重量平均分子量が20000以上80000以下であるポリイミド前駆体と、粒子と、有機アミン化合物(A)(ただし、下記水溶性有機溶剤(B)を除く)と、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミドからなる群から選択される少なくとも1つを含む水溶性有機溶剤(B)と、水(C)と、を含有し、前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の含有比〔(A):(B):(C))〕が質量比で、0.02以上0.07以下:0.02以上0.05以下:0.88以上0.96以下である水性溶剤と、を含有するポリイミド前駆体溶液。
<2>
前記有機アミン化合物(A)が、トリエチルアミン、N−アルキルピペリジン、2−ジメチルアミノエタノール、及び3級環状アミン化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含有する<1>に記載のポリイミド前駆体溶液。
<3>
前記3級環状アミン化合物が、モルホリン系化合物である<2>に記載のポリイミド前駆体溶液。
<4>
前記モルホリン系化合物が、N−メチルモルホリンである<3>に記載のポリイミド前駆体溶液。
<5>
前記粒子は、前記ポリイミド前駆体の固形分、及び前記粒子の合計体積に対して、体積割合で40%以上85%以下含有されている<1>〜<4>のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体溶液。
<6>
前記体積割合が50%以上80%以下である<5>に記載のポリイミド前駆体溶液。
<7>
前記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が30000以上80000以下である<1>〜<6>のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体溶液。
<8>
前記粒子が樹脂粒子である<1>〜<7>のいずれか一項のポリイミド前駆体溶液。
<9>
前記樹脂粒子が、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1つである<8>に記載のポリイミド前駆体溶液。
<10>
前記ポリイミド前駆体に対する前記水(C)の含有割合が900質量%以上5000質量%以下である<1>〜<9>のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体溶液。
<11>
前記含有比〔(A):(B):(C))〕が質量比で、0.02以上0.03以下:0.03以上0.05以下:0.92以上0.96以下である<1>〜<9>のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体溶液。
<12>
<1>〜<11>のいずれか一項に記載のポリイミド前駆体溶液を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜を乾燥させて、前記ポリイミド前駆体と前記粒子とを含む被膜を形成する工程と、前記被膜に含まれる前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド膜を形成する工程と、を有するポリイミド膜の製造方法。
<13>
<12>に記載のポリイミド膜の製造方法により製造されたポリイミド膜から前記粒子を除去する工程、を有するリチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
<1>、<7>に係る発明によれば、
前記含有比〔(A):(B):(C))〕が質量比で0.02以上0.07以下:0.02以上0.05以下:0.88以上0.96以下であることを満たさない場合に比べ、膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
<2>〜<4>に係る発明によれば、
有機アミン化合物(A)が1級アミン化合物である場合に比べ、膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
<5>に係る発明によれば、
粒子は、前記ポリイミド前駆体の固形分、及び前記粒子の合計体積に対して、体積割合で40%未満又は85%超えである場合に比べ、膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
<6>に係る発明によれば、
体積割合が50%未満又は80%超えである場合に比べ、膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
<8>、<9>に係る発明によれば、
粒子が無機粒子である場合に比べ、膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
<10>に係る発明によれば、
ポリイミド前駆体に対する前記水(C)の含有割合が900質量%未満又は5000質量%超えである場合に比べ、膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
<11>に係る発明によれば、
前記含有比〔(A):(B):(C))〕が質量比で0.02以上0.03以下:0.03以上0.05以下:0.92以上0.96以下であることを満たさない場合に比べ、膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
<12>に係る発明によれば、
前記含有比〔(A):(B):(C))〕が質量比で0.02以上0.07以下:0.02以上0.05以下:0.88以上0.96以下であることを満たさない場合に比べ、膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜の製造方法が提供される。
<13>に係る発明によれば、
前記含有比〔(A):(B):(C))〕が質量比で0.02以上0.07以下:0.02以上0.05以下:0.88以上0.96以下であることを満たさない場合に比べ、膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜を使用したリチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態のポリイミド膜の形態の一例である多孔質ポリイミド膜を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法により製造されたリチウムイオン二次電池用セパレータが適用されたリチウムイオン二次電池の一例を表す部分断面模式図である。
【図3】本実施形態のポリイミド膜が適用された全固体電池の一例を示す部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態において、「膜」は、一般的に「膜」と呼ばれているものだけでなく、一般的に「フィルム」及び「シート」と呼ばれているものをも包含する概念である。
【0012】
<ポリイミド前駆体溶液>
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液は、重量平均分子量が20000以上80000以下であるポリイミド前駆体と、粒子と、有機アミン化合物(A)(ただし、下記水溶性有機溶剤(B)を除く)と、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルホルムアミド、及びジメチルアセトアミドからなる群から選択される少なくとも1つを含む水溶性有機溶剤(B)と、水(C)と、を含有し、前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の含有比〔(A):(B):(C))〕が質量比で、0.02以上0.07以下:0.02以上0.05以下:0.88以上0.96以下である水性溶剤と、を含有する。
【0013】
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液を上記構成とすることで、膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜が得られる。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0014】
ポリイミド前駆体と粒子と水性溶媒とを含むポリイミド前駆体溶液において、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の分子量が高いと、ポリイミド前駆体の分子鎖が長くなり、含有される粒子が長い分子鎖に絡まれやすくなるため、粒子の流動性が低下し、ポリイミド前駆体溶液の粘度が上昇することが考えられる。そのため、従来、そのようなポリイミド前駆体溶液を使用すると、均一な膜厚のポリイミド膜が得られない傾向があった。
一方、本実施形態では、まず、水溶性有機溶剤(B)が含まれることによりポリアミド前駆体溶液の粘度が低下する。更に、ポリイミド前駆体溶液に含まれる水性溶媒中に、適量の有機アミン化合物(A)及び水溶性有機溶剤(B)が含有されることで、それらがポリイミド前駆体の長い分子鎖と粒子との間に介在して、粒子が分子鎖に絡まることが抑制されるため、粒子の凝集が抑制され、また、ポリイミド前駆体溶液の粘度の上昇が抑制される。
したがって、本実施形態のポリイミド前駆体溶液では、重量平均分子量が20000以上80000以下という分子量が高いポリイミド前駆体が含まれているにも拘わらず、膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜が得られるものと考えられる。
また、ポリイミド前駆体溶液の粘度の上昇が抑制された結果、ポリイミド膜中の気泡痕及びひび割れの発生が低減される。
【0015】
〔ポリイミド前駆体溶液〕
<ポリイミド前駆体>
本実施形態のポリイミド前駆体溶液は、重量平均分子量が20000以上80000以下であるポリイミド前駆体を含む。
ポリイミド前駆体は、一般式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂(ポリイミド前駆体)である。
【0016】
【化1】
【0017】
(一般式(I)中、Aは4価の有機基を示し、Bは2価の有機基を示す。)
【0018】
ここで、一般式(I)中、Aが表す4価の有機基としては、原料となるテトラカルボン酸二無水物より4つのカルボキシル基を除いたその残基である。
一方、Bが表す2価の有機基としては、原料となるジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基である。
【0019】
つまり、一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体である。
【0020】
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も挙げられるが、芳香族系の化合物であることがよい。つまり、一般式(I)中、Aが表す4価の有機基は、芳香族系有機基であることがよい。
【0021】
芳香族系テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げられる。
【0022】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物がよく、具体的には、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がよく、更に、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がよく、特に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物がよい。
【0024】
なお、テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。
また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族テトラカルボン酸二無水物、又は脂肪族テトラカルボン酸を各々併用しても、芳香族テトラカルボン酸二無水物と脂肪族テトラカルボン酸二無水物とを組み合わせてもよい。
【0025】
一方、ジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物である。ジアミン化合物としては、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も挙げられるが、芳香族系の化合物であることがよい。つまり、一般式(I)中、Bが表す2価の有機基は、芳香族系有機基であることがよい。
【0026】
ジアミン化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0027】
これらの中でも、ジアミン化合物としては、芳香族系ジアミン化合物がよく、具体的には、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンがよく、特に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンがよい。
【0028】
なお、ジアミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族ジアミン化合物、又は脂肪族ジアミン化合物を各々併用しても、芳香族ジアミン化合物と脂肪族ジアミン化合物とを組み合わせてもよい。
【0029】
本実施形態に用いられるポリイミド前駆体の重量平均分子量は、好ましくは30000以上80000以下であり、より好ましくは30000以上70000以下であり、より好ましくは40000以上60000以下である。
本実施形態のポリイミド前駆体溶液は、重量平均分子量が上記範囲であるポリイミド前駆体を含有しているにも拘わらず、本実施形態のポリイミド前駆体溶液を使用すると、膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜が得られる。
【0030】
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、下記測定条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法で測定される。
・カラム:東ソーTSKgelα−M(7.8mm I.D×30cm)
・溶離液:DMF(ジメチルホルムアミド)/30mMLiBr/60mMリン酸
・流速:0.6mL/min
・注入量:60μL
・検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0031】
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液に含まれるポリイミド前駆体の含有量は、ポリイミド前駆体溶液の全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることがよく、好ましくは0.5質量%以上8質量%以下である。
【0032】
<粒子>
本実施形態のポリイミド前駆体溶液は、粒子を含む。
粒子は、本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液中に、粒子が溶解せず分散している状態であり、粒子の材質は特に限定されない。本実施形態において、粒子は、ポリイミド前駆体溶液を使用して作製されたポリイミド膜に含有させたままでもよいし、作製されたポリイミド膜から粒子を除去してもよい。粒子は、後述する樹脂粒子および無機粒子に大別される。
【0033】
ここで、本実施形態において、「粒子が溶解しない」とは、25℃において、粒子が、対象となる液体に対して溶解しないことに加え、対象となる液体に対して3質量%以下の範囲内で溶解することも含む。
【0034】
粒子の体積平均粒径D50vは、特に限定されない。粒子の体積平均粒径D50vは、例えば、0.1μm以上10μm以下であることがよい。粒子の体積平均粒径は、0.2μm以上であってもよく、0.3μm以上であってもよく、0.4μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよい。また、粒子の体積平均粒径は、7μm以下であってもよく、5μm以下であってもよく、3μm以下であってもよく、2μm以下であってもよい。粒子の体積粒度分布指標(GSDv)は、1.30以下が好ましく、1.25以下がより好ましく、1.20以下が最も好ましい。粒子の体積粒度分布指標は、粒子分散ポリイミド前駆体溶液中の粒子の粒度分布から、(D84v/D16v)1/2として算出される。
【0035】
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液中の粒子の粒度分布は、次のようにして測定する。測定対象となる溶液を希釈してコールターカウンターLS13(ベックマン・コールター社製)を用いて、液中の粒子の粒度分布を測定する。測定される粒度分布を基にして、分割された粒度範囲(チャンネル)に対して、小径側から体積累積分布を描いて粒度分布を測定する。
そして、小径側から描いた体積累積分布のうち、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積84%となる粒径を体積粒径D84vとする。
【0036】
なお、本実施形態のポリイミド前駆体溶液中の粒子の体積粒度分布が、上記方法で測定し難い場合、動的光散乱法等の方法にて測定される。
【0037】
粒子の形状は球状であることがよい。球状の粒子を用いて、ポリイミド膜から粒子を除去して多孔質ポリイミド膜を作製すると、球状の空孔を備えた多孔質ポリイミド膜が得られる。
なお、本実施形態において、粒子における「球状」とは、球状、及びほぼ球状(球状に近い形状)の両者の形状を包含するものである。具体的には、長径と短径の比(長径/短径)が1以上1.5未満である粒子の割合が80%を超えて存在することを意味する。長径と短径の比(長径/短径)が1以上1.5未満である粒子の割合は、90%以上であることが好ましい。長径と短径の比が1に近づくほど真球状に近くなる。
【0038】
粒子としては、樹脂粒子および無機粒子のいずれを用いてもよいが、樹脂粒子を使用することが好ましい。
樹脂粒子は、後述するように乳化重合などの公知の製造法により、球状に近い粒子を作製しやすくなる。さらに、樹脂粒子およびポリイミド前駆体は有機材料なので、無機粒子を使用する場合と比較し、塗膜中の粒子分散性やポリイミド前駆体との界面密着が向上しやすくなる。また、多孔質ポリイミド膜を作製するときに、空孔および空孔径がより均一に近い多孔質ポリイミド膜が得られやすくなる。これらの理由で樹脂粒子を用いることが好ましい。
【0039】
無機粒子としては、例えばシリカ粒子が挙げられる。シリカ粒子は、球状に近い粒子であるものが入手可能である点で好適な無機粒子である。例えば、球状に近いシリカ粒子を用いたポリイミド前駆体溶液を用いて、空孔が球状に近い状態となる多孔質ポリイミド膜を得ることができる。しかし、粒子として、シリカ粒子を用いた場合、イミド化工程において、体積収縮を吸収し難いため、イミド化後のポリイミド膜に細かな亀裂が生じやすい傾向がある。この点でも、粒子としては樹脂粒子を用いることが好ましい。
【0040】
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液において、粒子は、前記ポリイミド前駆体の固形分、及び前記粒子の合計体積に対して、体積割合で40%以上85%以下含有されていることが好ましく、体積割合で50%以上80%以下含まれていることがより好ましく、体積割合で50%以上70%以下含まれていることが更に好ましい。
なお、上記の体積割合の測定方法は次に示すとおりである。
【0041】
ポリイミド前駆体の固形分、及び前記粒子の合計体積に対する粒子の体積割合は、本実施形態に係るポリイミド前駆体を使用して作製されたポリイミド膜に占める粒子の体積割合のことを示す。ポリイミド膜に占める粒子の体積割合は、ポリイミド膜の膜厚方向に沿って切断した切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、下記の方法により求める。
SEM画像において、ポリイミド膜について任意の面積Sを特定し、面積Sに含まれる粒子の総面積Aを求める。ポリイミド膜が均質であると仮定し、粒子の総面積Aを面積Sで除算した値を百分率(%)に換算し、ポリイミド膜に占める粒子の体積割合とする。面積Sは、粒子の大きさに対して十分大きい面積とする。例えば、粒子が100個以上含まれる大きさとする。面積Sは、複数個の切断面の合計でもよい
【0042】
以下、樹脂粒子および無機粒子の具体的な材料について説明する。
【0043】
−樹脂粒子−
樹脂粒子としては、具体的には、例えば、ポリスチレン類、ポリ(メタ)アクリル酸類、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテルなどに代表されるビニル系ポリマー;ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミドなどに代表される縮合系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンなどに代表される炭化水素系ポリマー;ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルフルオリドなどに代表されるフッ素系ポリマー;などの樹脂粒子が挙げられる。
ここで、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」のいずれをも含むことを意味する。また、(メタ)アクリル酸類とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドを含む。
【0044】
樹脂粒子は、架橋されていても架橋されていなくてもよい。架橋する場合は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ノナンジアクリレート、デカンジオールジアクリレートなどの二官能単量体、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能単量体を併用してもよい。
【0045】
樹脂粒子がビニル樹脂粒子である場合、単量体を重合して得られる。ビニル樹脂の単量体としては、以下に示す単量体が挙げられる。例えば、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン等)、ハロゲン置換スチレン(例えば2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン等)、ビニルナフタレン等のスチレン骨格を有するスチレン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸、ビニルスルホン酸等の酸類;エチレンイミン、ビニルピリジン、ビニルアミン等の塩基類;等の単量体を重合体させたビニル樹脂単位が挙げられる。
その他の単量体として、酢酸ビニルなどの単官能単量体を併用してもよい。
また、ビニル樹脂は、これらの単量体を単独で用いた樹脂でもよいし、2種以上の単量体を用いた共重合体である樹脂であってもよい。
【0046】
樹脂粒子としては、製造性、後述する粒子除去工程の適応性の観点から、ポリスチレン類(「スチレン系樹脂」ともいう。)、ポリ(メタ)アクリル酸類(「(メタ)アクリル系樹脂」ともいう。)、ポリエステル類(「ポリエステル系樹脂」ともいう。)の樹脂粒子であることが好ましい。具体的には、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸類共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸類の樹脂粒子がさらに好ましく、ポリスチレンおよびポリ(メタ)アクリル酸エステル類の樹脂粒子が最も好ましい。これらの樹脂粒子は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
なお、スチレン系樹脂とは、スチレン系単量体(スチレン骨格を有する単量体)を構成単位として含むものであり、ポリマー中の組成の合計を100モル%としたとき、前記構成単位を、好ましくは30モル%以上、更に好ましくは50モル%以上含むものである。
また、(メタ)アクリル系樹脂とは、メタクリル系樹脂及びアクリル系樹脂を意味し、(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリロイル骨格を有する単量体)を構成単位として含むものであり、例えば、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計割合を、ポリマー中の組成の合計を100モル%としたとき、好ましくは30モル%以上、更に好ましくは50モル%以上含むものである。
また、ポリエステル系樹脂とは、分子鎖中にエステル結合を有する高分子化合物である。
【0048】
樹脂粒子は、本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液の作製の過程、およびポリイミド膜を作製するときのポリイミド前駆体溶液の塗布、塗膜の乾燥(樹脂粒子除去の前)の過程で粒子の形状が保持されていることが好ましい。この観点から、樹脂粒子のガラス転移温度としては、60℃以上であることがよく、70℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。
【0049】
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0050】
−無機粒子−
無機粒子としては、例えば、具体的には、シリカ(二酸化ケイ素)粒子、酸化マグネシウム粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、炭酸カルシウム粒子、酸化カルシウム粒子、二酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化セリウム粒子などの無機粒子が挙げられる。粒子の形状は、上述した通り、球状であることがよい。この観点で、無機粒子としては、シリカ粒子、酸化マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子、酸化マグネシウム粒子、アルミナ粒子の無機粒子が好ましく、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子の無機粒子がより好ましく、シリカ粒子がさらに好ましい。これらの無機粒子は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
なお、無機粒子のポリイミド前駆体溶液の溶媒への濡れ性および分散性が不十分である場合は、必要により、無機粒子の表面を修飾してもよい。表面修飾の方法としては、例えば、シランカップリング剤に代表される有機基を有するアルコキシシランで処理する方法;シュウ酸、クエン酸、乳酸などの有機酸でコーティングする方法;などが挙げられる。
【0052】
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液に含まれる粒子の含有量は、ポリイミド前駆体溶液の全質量に対して、0.1質量%以上40質量%以下であることがよく、好ましくは0.5質量%以上25質量%以下、より好ましくは1質量%以上20質量%以下である。
【0053】
<水性溶剤>
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液は、有機アミン化合物(A)(ただし、下記水溶性有機溶剤(B)を除く)と、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミドからなる群から選択される少なくとも1つを含む水溶性有機溶剤(B)と、水(C)と、を含有し、前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の含有比〔(A):(B):(C))〕が質量比で、0.02以上0.07以下:0.02以上0.05以下:0.88以上0.96以下である。
【0054】
−有機アミン化合物(A)−
本実施形態に用いられる水性溶剤は、有機アミン化合物(A)(以下、単に「有機アミン化合物」又は「(A)」ともいう。)を含む。ただし、有機アミン化合物(A)は、下記で示される水溶性有機溶剤(B)を除く。
有機アミン化合物は、ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)をアミン塩化して、その水性溶剤に対する溶解性を高めると共に、イミド化促進剤としても機能する化合物である。具体的には、有機アミン化合物は、分子量170以下のアミン化合物であることがよい。有機アミン化合物は、ポリイミド前駆体の原料となるジアミン化合物を除く化合物であることがよい。
なお、有機アミン化合物は、水溶性の化合物であることがよい。水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
【0055】
有機アミン化合物としては、1級アミン化合物、2級アミン化合物、3級アミン化合物が挙げられる。
これらの中でも、有機アミン化合物としては、2級アミン化合物、及び3級アミン化合物から選択される少なくとも一種(特に、3級アミン化合物)がよい。有機アミン化合物として、3級アミン化合物又は2級アミン化合物を適用すると(特に、3級アミン化合物)、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が高まり易くなり、製膜性が向上し易くなり、また、ポリイミド前駆体溶液の保存安定性が向上し易くなる。
【0056】
また、有機アミン化合物としては、1価のアミン化合物以外にも、2価以上の多価アミン化合物も挙げられる。2価以上の多価アミン化合物を適用すると、ポリイミド前駆体の分子間に疑似架橋構造を形成し易くなり、また、ポリイミド前駆体溶液の保存安定性が向上し易くなる。
【0057】
1級アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、2−エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、などが挙げられる。
2級アミン化合物としては、例えば、ジメチルアミン、2−(メチルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、モルホリンなどが挙げられる。
3級アミン化合物としては、例えば、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノプロパノール、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、N−アルキルピペリジン(例えば、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン等)などが挙げられる。
膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜を得る観点で、3級アミン化合物が好ましい。この点で、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノプロパノール、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジンからなる群から選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。特にN-アルキルモルホリンが好ましく用いられる。
【0058】
ここで、有機アミン化合物としては、膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜を得る観点から、窒素を含有する複素環構造を有する脂肪族環状構造または芳香族環状構造のアミン化合物(以下、「含窒素複素環アミン化合物」と称する)も好ましい。含窒素複素環アミン化合物としては、3級アミン化合物であることがより好ましい。すなわち、3級環状アミン化合物であることがより好ましい。
3級環状アミン化合物としては、例えば、イソキノリン類(イソキノリン骨格を有するアミン化合物)、ピリジン類(ピリジン骨格を有するアミン化合物)、ピリミジン類(ピリミジン骨格を有するアミン化合物)、ピラジン類(ピラジン骨格を有するアミン化合物)、ピペラジン類(ピペラジン骨格を有するアミン化合物)、トリアジン類(トリアジン骨格を有するアミン化合物)、イミダゾール類(イミダゾール骨格を有するアミン化合物)、モルホリン類(モルホリン骨格を有するアミン化合物)、ポリアニリン、ポリピリジンなどが挙げられる。
【0059】
3級環状アミン化合物としては、膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜を得る観点から、モルホリン類、ピリジン類、ピペリジン類、およびイミダゾール類よりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、モルホリン類(モルホリン骨格を有するアミン化合物)であること(すなわち、モルホリン系化合物であること)がより好ましい。これらの中でも、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、ピリジン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、およびピコリンよりなる群から選択される少なくとも一種であることがより好ましく、N−メチルモルホリンであることがより好ましい。
【0060】
上記の有機アミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0061】
本実施形態に用いられる有機アミン化合物(A)の含有割合は、ポリイミド前駆体溶液に含まれる水性溶剤の全質量に対して、1質量%以上であってもよく、1.5質量%以上であってもよい。
【0062】
−水溶性有機溶剤(B)−
本実施形態に用いられる水性溶剤は、水溶性有機溶剤(B)(以下、単に「水溶性有機溶剤」又は「(B)」ともいう。)を含む。ここで、水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
水溶性有機溶剤は、非プロトン性極性溶剤を含むものである。
【0063】
非プロトン性極性溶剤は、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド(DEAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチレンホスホルアミド(HMPA)、N−メチルカプロラクタム、N−アセチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリドンからなる群から選択される少なくとも一つを含むものである。
【0064】
上記水溶性有機溶剤は、1種単独で用いてもよいが、2種以上併用してもよい。
【0065】
本実施形態に用いられる水溶性有機溶剤(B)の含有割合は、ポリイミド前駆体溶液に含まれる水性溶剤の全質量に対して、1質量%以上であってもよく、2質量%以上であってもよい。
【0066】
なお、水溶性有機溶剤は、沸点が270℃以下であることがよく、好ましくは60℃以上250℃以下、より好ましくは80℃以上230℃以下である。水溶性有機溶剤の沸点を上記範囲とすると、水溶性有機溶剤がポリイミド膜に残留し難くなり、また、機械的強度の高いポリイミド膜が得られ易くなる。
【0067】
−水(C)−
本実施形態に用いられる水性溶剤は、水(C)(以下、単に「水」又は「(C)」ともいう。)を含む。
水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、限外濾過水、純水等が挙げられる。
【0068】
本実施形態に用いられる水(C)の含有割合は、ポリイミド前駆体溶液に含まれる水性溶剤の全質量に対して、85質量%以上であってもよく、88質量%以上であってもよく、91質量%以上であってもよい。
【0069】
本実施形態に用いられる水性溶剤は、前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の含有比〔(A):(B):(C))〕が質量比で、0.02以上0.07以下:0.02以上0.05以下:0.88以上0.96以下であり、この含有比を満たすことで膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜が得られる。また、膜厚のばらつきが抑制されたポリイミド膜を得る観点から、前記含有比は好ましくは0.02以上0.03以下:0.03以上0.05以下:0.92以上0.96以下である。
【0070】
本実施形態に用いられる水性溶剤は、前記(A)、前記(B)、及び前記(C)の含有量の合計が、水性溶剤の全質量に対して100質量%となることが好ましい。前記含有量の合計が100質量%に満たない場合は、他の水性溶剤を配合してもよい。他の水性溶剤の含有量は、水性溶剤の全質量に対して5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0071】
他の水性溶剤としては、水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、水溶性アルコール系溶剤等が挙げられる。
【0072】
水溶性エーテル系溶剤は、一分子中にエーテル結合を持つ水溶性の溶剤である。水溶性エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、トリオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、水溶性エーテル系溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンが好ましい。
【0073】
水溶性ケトン系溶剤は、一分子中にケトン基を持つ水溶性の溶剤である。水溶性ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらの中でも、水溶性ケトン系溶剤としては、アセトンが好ましい。
【0074】
水溶性アルコール系溶剤は、一分子中にアルコール性水酸基を持つ水溶性の溶剤である。水溶性アルコール系溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールのモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールのモノアルキルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。これらの中でも、水溶性アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールのモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールのモノアルキルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルが好ましい。
【0075】
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液に含まれる水性溶剤の含有量は、ポリイミド前駆体溶液の全質量に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることがよく、好ましくは1質量%以上5質量%以下である。
【0076】
−その他の添加剤−
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液において、イミド化反応促進のための触媒や、製膜品質向上のためのレベリング材などを含んでもよい。
イミド化反応促進のための触媒には、酸無水物など脱水剤、フェノール誘導体、スルホン酸誘導体、安息香酸誘導体などの酸触媒などを使用してもよい。
【0077】
また、ポリイミド前駆体溶液には、ポリイミド膜の使用目的に応じて、例えば、導電性付与のために添加される導電材料(導電性(例えば、体積抵抗率10Ω・cm未満)もしくは半導電性(例えば、体積抵抗率10Ω・cm以上1013Ω・cm以下))を含有していてもよい。
導電剤としては、例えば、カーボンブラック(例えばpH5.0以下の酸性カーボンブラック);金属(例えばアルミニウムやニッケル等);金属酸化物(例えば酸化イットリウム、酸化錫等);イオン導電性物質(例えばチタン酸カリウム、LiCl等);等が挙げられる。これら導電材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0078】
また、ポリイミド前駆体溶液には、ポリイミド膜の使用目的に応じて、機械強度向上のため添加される無機粒子を含有していてもよい。無機粒子としては、シリカ粉、アルミナ粉、硫酸バリウム粉、酸化チタン粉、マイカ、タルクなどの粒子状材料が挙げられる。また、リチウムイオン電池の電極として用いられるLiCoO、LiMnOなどを含んでもよい。
【0079】
(ポリイミド膜の特性)
−平均膜厚−
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液を用いて作製されたポリイミド膜の平均膜厚は、特に限定されず、用途に応じて選択される。平均膜厚としては、例えば10μm以上1000μm以下であってもよい。平均膜厚は、20μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、また、500μm以下であってもよく、400μm以下であってもよい。
本実施形態におけるポリイミド膜の平均膜厚は、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR−1500Eを使用し、5点のポリイミド膜の膜厚を測定し、その算術平均で算出する。
【0080】
〔ポリイミド膜の製造方法〕
本実施形態に係るポリイミド膜の製造方法は、既述のポリイミド前駆体溶液を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜を乾燥させて、前記ポリイミド前駆体と前記粒子とを含む被膜を形成する工程と、前記被膜に含まれる前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド膜を形成する工程と、を有する。
【0081】
ポリイミド膜に含有するポリイミドは、具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合してポリイミド前駆体を生成し、ポリイミド前駆体の溶液を得て、イミド化反応させて得られる。より具体的には、本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液を用いてイミド化反応させて得られる。例えば、水性溶剤中で、有機アミン化合物の存在下、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して樹脂(ポリイミド前駆体)を生成してポリイミド前駆体溶液を得る方法が挙げられる。
【0082】
なお、有機アミン化合物の存在下、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して樹脂(ポリイミド前駆体)を生成してポリイミド前駆体溶液を得ることを挙げたが、この例に限定されるものではない。
【0083】
−ポリイミド前駆体溶液の製造方法−
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す製造方法が挙げられる。
【0084】
一例としては、水性溶剤中で、有機アミン化合物の存在下、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して樹脂(ポリイミド前駆体)を生成してポリイミド前駆体溶液を得る方法が挙げられる。
この方法によれば、水性溶剤を適用するため、生産性も高く、ポリイミド前駆体溶液が1段階で製造される点で工程の簡略化の点で有利である。
【0085】
他の例としては、非プロトン性極性溶剤等(例えば、N−メチルピロリドン(NMP)等)の有機溶剤中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して樹脂(ポリイミド前駆体)を生成した後、水や、アルコール等の水性溶剤に投入して樹脂(ポリイミド前駆体)を析出させる。その後、水性溶剤に、ポリイミド前駆体と有機アミン化合物とを溶解させポリイミド前駆体溶液を得る方法が挙げられる。
【0086】
以下、本実施形態に係るポリイミド膜の好適な製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係るポリイミド膜の製造方法は、下記に挙げる第1の工程、第2の工程、及び第3の工程を有することが好ましい。
なお、製造方法の説明において、参照する図1中では、同じ構成部分には、同じ符号を付している。図1中の符号において31は基板、51は剥離層、10Aは空孔、及び10は多孔質ポリイミド膜(「ポリイミド膜」の一例)を表す。
【0087】
第1の工程は、本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液を基板上に塗布して塗膜を形成する工程である。
【0088】
第2の工程は、前記塗膜を乾燥させて、前記ポリイミド前駆体と前記粒子とを含む被膜を形成する工程である。
【0089】
第3の工程は、前記被膜に含まれる前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド膜を形成する工程である。
ここで、第3の工程において、被膜を加熱して、樹脂粒子を除去する処理する工程を更に含んでいてもよい。
なお、粒子を除去する処理が、粒子を溶解する有機溶剤により粒子を除去してもよいし、加熱により除去してもよい。
【0090】
(第1の工程)
第1の工程は、まず、本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液を準備する。次に、ポリイミド前駆体溶液を、基板上に塗布して塗膜を形成する。この塗膜には、ポリイミド前駆体を含む溶液と、粒子と、を含んでいる。そして、この塗膜中の粒子は、凝集が抑制された状態で分布している。その後、基板上に形成された塗膜を乾燥して、ポリイミド前駆体及び前記粒子を含む被膜を形成する。
【0091】
ポリイミド前駆体及び粒子を含む被膜が形成される基板としては、特に制限されない。例えば、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂製基板;ガラス製基板;セラミック製基板;鉄、ステンレス鋼(SUS)等の金属基板;これらの材料が組み合わされた複合材料基板等が挙げられる。また、基板には、必要に応じて、例えば、シリコーン系やフッ素系の剥離剤等による剥離処理を行って剥離層を設けてもよい。また、基材の表面を粒子の粒子径程度の大きさに粗面化し、基材接触面での粒子の露出を促進することも効果的である。
【0092】
基板上に、ポリイミド前駆体溶液を塗布する方法としては、特に限定されない。例えば、スプレー塗布法、回転塗布法、ロール塗布法、バー塗布法、スリットダイ塗布法、インクジェット塗布法等の各種の方法が挙げられる。
【0093】
なお、ポリイミド前駆体溶液を基板上に形成する場合には、粒子が塗膜の表面から露出する量の粒子を加え、形成することがよい。
【0094】
(第2の工程)
第2の工程は、第1の工程で得られた塗膜を乾燥させて、ポリイミド前駆体と粒子とを含む被膜を形成する工程である。
得られたポリイミド前駆体と粒子とを含む塗膜を形成した後、乾燥して、ポリイミド前駆体及び粒子を含む被膜が形成される。
具体的には、ポリイミド前駆体と粒子とを含む塗膜を、例えば、加熱乾燥、自然乾燥、真空乾燥等の方法により乾燥させて、被膜を形成する。より具体的には、被膜に残留する溶剤が、被膜の固形分に対して50%以下(好ましくは30%以下)となるように、塗膜を乾燥させて、被膜を形成する。この被膜は、ポリイミド前駆体が、水に溶解できる状態である。
また、塗膜を得た後、乾燥して被膜を形成する過程で、粒子を露出させる処理を行って、粒子を露出させた状態にしてもよい。この粒子を露出させる処理を行うことによって、多孔質ポリイミド膜の開孔率が高められる。
【0095】
粒子を露出させる処理としては、具体的には、例えば、次に示す方法が挙げられる。
【0096】
ポリイミド前駆体及び粒子を含む塗膜を得た後、塗膜を乾燥して、ポリイミド前駆体及び粒子を含む被膜を形成する過程では、前述のように、被膜は、ポリイミド前駆体が、水に溶解できる状態である。被膜がこの状態のときに、例えば、拭き取る処理、又は水に浸漬する処理等により、粒子を露出させることができる。具体的には、例えば、水拭きにより粒子層を露出させる処理を行うことで、粒子層上に存在していたポリイミド前駆体を含む溶液が除去される。そして、粒子層の上部の領域(つまり、粒子層の基板から離れた側の領域)に存在する粒子が、被膜の表面から露出される。
【0097】
なお、ポリイミド前駆体溶液を用いて基板上に被膜を形成する場合において、粒子が埋没した被膜を形成した場合にも、被膜に埋没している粒子を露出させる処理として、前述の粒子を露出させる処理と同様の処理を採用し得る。
【0098】
ポリイミド前駆体溶液を作製する方法は、前述の作製方法に限られない。工程簡略化の観点で、ポリイミド前駆体を含む溶液に溶解しない粒子が予め水性溶剤に分散されている水性溶剤分散液中で、ポリイミド前駆体を合成するのも好ましい。例えば、具体的には、次の方法が挙げられる。
水を含む水性溶剤中で、粒子を造粒した粒子分散液とする。そして、この粒子分散液中で、有機アミン化合物の存在下、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して樹脂(ポリイミド前駆体)を生成してポリイミド前駆体溶液とする。
【0099】
ポリイミド前駆体溶液の作製方法としては、さらに、例えば、ポリイミド前駆体を含む溶液と乾燥状態の粒子とを混合する方法、ポリイミド前駆体を含む溶液と、粒子が予め水性溶剤に分散されている分散液とを混合する方法等が挙げられる。
なお、粒子が予め水性溶剤に分散されている分散液としては、予め粒子を水性溶剤に分散させた粒子の分散液を作製してもよい。粒子が予め水性溶剤に分散されている市販品の分散液を用意してもよい。
【0100】
そして、上記のようにして得られたポリイミド前駆体溶液を、前述の方法によって基板上に塗布して塗膜を形成する。その後、この塗膜を乾燥して、被膜が基板上に形成される。
【0101】
(第3の工程)
第3の工程は、第2の工程で得られた被膜に含まれる前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド膜を形成する工程である。そして、第3の工程には、粒子を除去する処理を含んでいてもよい。粒子を除去する処理を経て、多孔質ポリイミド膜(「ポリイミド膜」の一例)が得られる。
【0102】
第3の工程において、ポリイミド膜を形成する工程は、具体的に、第1の工程で得られたポリイミド前駆体及び粒子を含む被膜を加熱して、イミド化を進行させ、さらに加熱して、ポリイミド膜が形成される。なお、イミド化が進行し、イミド化率が高くなるにしたがい、有機溶剤に溶解し難くなる。
【0103】
そして、第3の工程において、粒子を除去する処理を行ってもよい。粒子の除去は、被膜を加熱して、ポリイミド前駆体をイミド化する過程において除去してもよく、イミド化が完了した後(イミド化後)のポリイミド膜から除去してもよい。
なお、本実施形態において、ポリイミド前駆体をイミド化する過程とは、第1の工程で得られたポリイミド前駆体及び粒子を含む被膜を加熱して、イミド化を進行させ、イミド化が完了した後のポリイミド膜となるよりも前の状態となる過程を示す。
【0104】
具体的には、第1の工程で得られた粒子が露出した塗膜を加熱し、ポリイミド前駆体をイミド化する過程の被膜(以下、この状態の被膜を「ポリイミド膜」とも称することがある)から、粒子を除去する。又はイミド化が完了した後のポリイミド膜から、粒子を除去してもよい。そして、粒子が除去された多孔質ポリイミド膜が得られる(図1参照)。
【0105】
なお、粒子を除去する過程で、粒子の成分、例えば、粒子が樹脂粒子である場合は樹脂成分が、ポリイミド樹脂以外の樹脂成分として、多孔質ポリイミド膜に含有され場合がある。図示はしないが、多孔質ポリイミド膜には、ポリイミド樹脂以外の成分(例えば、樹脂成分)を含有してもよい。
【0106】
粒子を除去する処理は、粒子の除去性等の点で、ポリイミド前駆体をイミド化する過程において、ポリイミド膜中のポリイミド前駆体のイミド化率が10%以上であるときに行うことが好ましい。イミド化率が10%以上になると、有機溶剤に溶解し難い状態となりやすく、形態を維持しやすい。
【0107】
粒子を除去する処理としては、特に限定されない。例えば、粒子を加熱により分解除去する方法、粒子を溶解する有機溶剤により除去する方法、粒子をレーザ等による分解により除去する方法等が挙げられる。
この粒子の除去は、例えば、イミド化の工程も兼ねて熱による分解除去のみで行ってもよいが、加熱による分解除去と粒子を溶解する有機溶剤による除去とを併用してもよい。残留応力をより緩和しやすくなり、多孔質ポリイミド膜の亀裂の発生を抑制する点から、粒子を溶解する有機溶剤により除去する処理を含む方法が好ましい。なお、この作用は、有機溶剤により除去する処理では、有機溶剤に溶解した成分がポリイミド樹脂中に移行し易くなるためと推測される。
【0108】
例えば、加熱により除去する方法では、粒子の種類によっては、加熱による分解ガスが発生する場合がある。そして、この分解ガスに起因して、多孔質ポリイミド膜には、破断や亀裂等が発生する場合があり得る。そのため、亀裂の発生を抑制する点で、粒子を溶解する有機溶剤により除去する方法を採用するほうが好ましい。
なお、粒子を溶解する有機溶剤により除去した後に、さらに加熱を行い、除去率を上げることも効果的である。
【0109】
また、粒子を溶解する有機溶剤により除去する方法によって粒子を除去する場合、粒子を除去する過程で、有機溶剤に溶解した粒子の成分が、ポリイミド膜中に浸入する場合がある。ポリイミド樹脂以外の成分を含有させる点でも、粒子を溶解する有機溶剤により除去する方法を採用するほうが好ましい。さらに、この方法による粒子の除去は、ポリイミド樹脂以外の樹脂を含有させる点で、ポリイミド前駆体をイミド化する過程の被膜に対して行うことが好ましい。イミド化する過程の被膜の状態で、粒子を溶解する溶剤により、粒子を溶解することで、よりポリイミド膜中に浸入しやすくなる場合がある。
【0110】
粒子を溶解する有機溶剤により除去する方法としては、例えば、粒子が溶解する有機溶剤と接触(例えば、溶剤中に浸漬、又は溶剤蒸気と接触)させ、粒子を溶解して除去する方法が挙げられる。この状態のときに、溶剤中に浸漬すると、粒子の溶解効率が高まる点で好ましい。
【0111】
粒子を除去するための樹脂粒子を溶解する有機溶剤としては、ポリイミド膜、及びイミド化が完了したポリイミド膜を溶解せず、粒子が可溶な有機溶剤であれば、特に限定されるものではない。粒子が樹脂粒子である場合、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族類;アセトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;が挙げられる。
これらの中でも、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族類が好ましく、テトラヒドロフラン、トルエンを用いることがさらに好ましい。
樹脂粒子を溶解する際に水性溶剤が残留している場合には、水性溶剤が非架橋樹脂粒子を溶解する溶剤中に溶解し、ポリイミド前駆体が析出し、いわゆる湿式相転換法と類似の状態となり、空孔径の制御が困難となる場合があるため、残留している水性溶剤量は、ポリイミド前駆体質量に対して20質量%以下、好ましくは10質量%以下に低減した後に有機溶剤で非架橋樹脂粒子を溶解除去することが好ましい。
【0112】
第3の工程において、第2の工程で得た被膜を加熱して、イミド化を進行させてポリイミド膜を得るための加熱方法としては、特に限定されない。例えば、2段階以上の多段階で加熱する方法が挙げられる。例えば、2段階で加熱する場合、具体的には、例えば、以下に示す加熱条件が挙げられる。
【0113】
第1段階の加熱条件としては、例えば粒子が樹脂粒子である場合、樹脂粒子の形状が保持される温度であることが望ましい。具体的には、例えば、50℃以上150℃以下の範囲がよく、60℃以上140℃以下の範囲が好ましい。また、加熱時間としては、10分間以上60分間以下の範囲がよい。加熱温度が高いほど加熱時間は短くてよい。
【0114】
第2段階の加熱条件としては、例えば、150℃以上450℃以下(好ましくは200℃以上400℃以下)で、20分間以上120分間以下の条件で加熱することが挙げられる。この範囲の加熱条件とすることで、イミド化反応がさらに進行し、ポリイミド膜が形成され得る。加熱反応の際、加熱の最終温度に達する前に、温度を段階的、又は一定速度で徐々に上昇させて加熱することがよい。
【0115】
なお、加熱条件は上記の2段階の加熱方法に限らず、例えば、1段階で加熱する方法を採用してもよい。1段階で加熱する方法の場合、例えば、上記の第2段階で示した加熱条件のみによってイミド化を完了させてもよい。
【0116】
なお、第1の工程で、樹脂粒子を露出させる処理を施さない場合、開孔率を高める点で、第2の工程において、樹脂粒子を露出させる処理を行って樹脂粒子を露出させた状態としてもよい。第2の工程において、樹脂粒子を露出させる処理は、ポリイミド前駆体のイミド化を行う過程、又はイミド化後、且つ、樹脂粒子を除去する処理よりも前で行うことが好ましい。
【0117】
樹脂粒子を露出させる処理は、例えば、ポリイミド膜が次に示す状態であるときに施すことが挙げられる。
ポリイミド膜中のポリイミド前駆体のイミド化率が10%未満であるとき(すなわち、ポリイミド膜が水に溶解できる状態)に樹脂粒子を露出させる処理を行う場合、上記のポリイミド膜中に埋没している樹脂粒子を露出させる処理としては、拭き取る処理、水に浸漬する処理等が挙げられる。
【0118】
また、ポリイミド膜中のポリイミド前駆体のイミド化率が10%以上であるとき(すなわち、有機溶剤に溶解し難い状態)、及びイミド化が完了したポリイミド膜となった状態であるときに樹脂粒子を露出させる処理を行う場合には、紙やすり等の工具類で機械的に切削して樹脂粒子を露出させる方法、ポリイミド樹脂を溶解するアルカリ溶液などでエッチングする方法、レーザ等で分解して樹脂粒子を露出させる方法が挙げられる。
例えば、機械的に切削する場合には、ポリイミド膜に埋没している樹脂粒子層の上部の領域(つまり、樹脂粒子層の基板から離れた側の領域)に存在する樹脂粒子の一部分が、樹脂粒子の上部に存在しているポリイミド膜とともに切削され、切削された樹脂粒子がポリイミド膜の表面から露出される。
【0119】
その後、樹脂粒子が露出されたポリイミド膜から、既述の樹脂粒子の除去処理により樹脂粒子を除去する。そして、樹脂粒子が除去された多孔質ポリイミド膜が得られる。
【0120】
なお、ポリイミド前駆体溶液を用いて基板上に被膜を形成する場合、ポリイミド前駆体溶液を基板上に塗布し、粒子が埋没した塗膜を形成する。この塗膜を乾燥して被膜を形成する過程で、粒子を露出させる処理を行わずに、ポリイミド前駆体及び粒子を含む被膜を形成すると、粒子が埋没した被膜が形成される場合がある。例えば、粒子が樹脂粒子である場合、樹脂粒子が埋没した被膜を加熱すると、イミド化する過程の被膜は、樹脂粒子層が埋没されている状態となる。開孔率を高めるために、第2の工程において行う、樹脂粒子を露出させる処理としては、既述の樹脂粒子を露出させる処理と同様の処理を採用し得る。そして、樹脂粒子の上部に存在しているポリイミド膜とともに切削され、樹脂粒子がポリイミド膜の表面から露出される。
【0121】
その後、樹脂粒子が露出されたポリイミド膜から、既述の樹脂粒子の除去処理により樹脂粒子を除去する。そして、樹脂粒子が除去された多孔質ポリイミド膜が得られる。
【0122】
なお、第3の工程において、第2の工程で使用した上記の被膜を形成するための基板は、乾燥した被膜となったときに剥離してもよく、ポリイミド膜中のポリイミド前駆体が、有機溶剤に溶解し難い状態となったときに剥離してもよく、イミド化が完了したフィルムになった状態のときに剥離してもよい。
【0123】
ここで、ポリイミド前駆体のイミド化率について説明する。
一部がイミド化したポリイミド前駆体は、例えば、下記一般式(I−1)、下記一般式(I−2)、及び下記一般式(I−3)で表される繰り返し単位を有する構造の前駆体が挙げられる。
【0124】
【化2】
【0125】
一般式(I−1)、一般式(I−2)、及び一般式(I−3)中、Aは4価の有機基を示し、Bは2価の有機基を示す。lは1以上の整数を示し、m及びnは、各々独立に0又は1以上の整数を示す。
【0126】
なお、A及びBは、後述の一般式(I)中のA及びBと同義である。
【0127】
ポリイミド前駆体のイミド化率は、ポリイミド前駆体の結合部(テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応部)において、イミド閉環している結合部数(2n+m)の全結合部数(2l+2m+2n)に対する割合を表す。つまり、ポリイミド前駆体のイミド化率は、「(2n+m)/(2l+2m+2n)」で示される。
【0128】
なお、ポリイミド前駆体のイミド化率(「(2n+m)/(2l+2m+2n)」の値)は、次の方法により測定される。
【0129】
−ポリイミド前駆体のイミド化率の測定−
・ポリイミド前駆体試料の作製
(i)測定対象となるポリイミド前駆体溶液を、シリコーンウェハー上に、膜厚1μm以上10μm以下の範囲で塗布して、塗膜試料を作製する。
(ii)塗膜試料をテトラヒドロフラン(THF)中に20分間浸漬させて、塗膜試料中の溶剤をテトラヒドロフラン(THF)に置換する。浸漬させる溶剤は、THFに限定されることなく、ポリイミド前駆体を溶解せず、ポリイミド前駆体溶液に含まれている溶剤成分と混和し得る溶剤より選択できる。具体的には、メタノール、エタノールなどのアルコール溶剤、ジオキサンなどのエーテル化合物が使用できる。
(iii)塗膜試料を、THF中より取り出し、塗膜試料表面に付着しているTHFにNガスを吹き付け、取り除く。10mmHg以下の減圧下、5℃以上25℃以下の範囲にて12時間以上処理して塗膜試料を乾燥させ、ポリイミド前駆体試料を作製する。
【0130】
・100%イミド化標準試料の作製
(iv)上記(i)と同様に、測定対象となるポリイミド前駆体溶液をシリコーンウェハー上に塗布して、塗膜試料を作製する。
(v)塗膜試料を380℃にて60分間加熱してイミド化反応を行い、100%イミド化標準試料を作製する。
【0131】
・測定と解析
(vi)フーリエ変換赤外分光光度計(堀場製作所製、FT−730)を用いて、100%イミド化標準試料、ポリイミド前駆体試料の赤外吸光スペクトルを測定する。100%イミド化標準試料の1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab’(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab’(1780cm−1))の比I’(100)を求める。
(vii)同様にして、ポリイミド前駆体試料について測定を行い、1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab(1780cm−1))の比I(x)を求める。
【0132】
そして、測定した各吸光ピークI’(100)、I(x)を使用し、下記式に基づき、ポリイミド前駆体のイミド化率を算出する。
・式: ポリイミド前駆体のイミド化率=I(x)/I’(100)
・式: I’(100)=(Ab’(1780cm−1))/(Ab’(1500cm−1))
・式: I(x)=(Ab(1780cm−1))/(Ab(1500cm−1))
【0133】
なお、このポリイミド前駆体のイミド化率の測定は、芳香族系ポリイミド前駆体のイミド化率の測定に適用される。脂肪族ポリイミド前駆体のイミド化率を測定する場合、芳香環の吸収ピークに代えて、イミド化反応前後で変化のない構造由来のピークを内部標準ピークとして使用する。
【0134】
〔リチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法〕
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法は、既述の製造方法により製造されたポリイミド膜から前記粒子を除去する工程、を有する。
【0135】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法により得られたリチウムイオン二次電池用セパレータは、多孔質ポリイミド膜を含む。以下、本実施形態のリチウムイオン二次電池について、図2を参照して説明する。
【0136】
図2は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用セパレータが適用されたリチウムイオン二次電池の一例を表す部分断面模式図である。図2に示すように、リチウムイオン二次電池100は、図示しない外装部材の内部に収容された、正極活物質層110と、セパレータ層510と、負極活物質層310と、を備えている。正極活物質層110は、正極集電体130上に設けられており、負極活物質層310は、負極集電体330上に設けられている。セパレータ層510は、正極活物質層110と負極活物質層310とを隔てるように設けられており、正極活物質層110及び負極活物質層310が互いに対向するように、正極活物質層110と負極活物質層310との間に配置されている。セパレータ層510は、セパレータ511とセパレータ511の空孔の内部に充填された電解液513とを備える。セパレータ511は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用セパレータの製造方法により得られた多孔質ポリイミド膜が適用されている。なお、正極集電体130及び負極集電体330は、必要に応じて設けられる部材である。
【0137】
(正極集電体130及び負極集電体330)
正極集電体130及び負極集電体330に用いられる材料としては、特に限定されず、公知の導電性の材料であればよい。例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン等の金属を用いることができる。
【0138】
(正極活物質層110)
正極活物質層110は、正極活物質を含む層である。必要に応じて、導電助剤、結着樹脂等の公知の添加剤を含んでいてもよい。正極活物質としては、特に限定されず、公知の正極活物質が用いられる。例えば、リチウムを含む複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFeMnO、LiV等)、リチウムを含む燐酸塩(LiFePO、LiCoPO、LiMnPO及びLiNiPO等)、導電性高分子(ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等)などが挙げられる。正極活物質は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0139】
(負極活物質層310)
負極活物質層310は、負極活物質を含む層である。必要に応じて、結着樹脂等の公知の添加剤を含んでいてもよい。負極活物質としては、特に限定されず、公知の正極活物質が用いられる。例えば、炭素材料(黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、カーボンナノチューブ、黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等)、金属(アルミニウム、シリコン、ジルコニウム、チタン等)、金属酸化物(二酸化スズ、チタン酸リチウム等)などが挙げられる。負極活物質は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0140】
(電解液513)
電解液513は、例えば、電解質及び非水溶媒を含有する非水電解質溶液を挙げることができる。
電解質としては、例えば、リチウム塩の電解質(LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiN(FSO、LiN(CFSO2)、LiN(CSO)、LiC(CFSO等)が挙げられる。電解質は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
非水溶媒としては、環状カーボネート(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネート等)、鎖状カーボネート(ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等)などが挙げられる。非水溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0141】
(リチウムイオン二次電池100の製造方法)
リチウムイオン二次電池100を製造する方法の一例について説明する。
正極活物質を含む正極活物質層110形成用塗布液を、正極集電体130に塗布及び乾燥して、正極集電体130上に設けられた正極活物質層110を備える正極を得る。
同様に、負極活物質を含む負極活物質層310形成用塗布液を、負極集電体330に塗布及び乾燥して、負極集電体330上に設けられた負極活物質層310を備える負極を得る。正極と負極とは、それぞれ必要に応じて圧縮加工を行ってもよい。
次に、正極の正極活物質層110と、負極の負極活物質層310とが、互いに対向するように、正極活物質層110と、負極の負極活物質層310との間にセパレータ511を配置して、積層構造体を得る。積層体構造は、正極(正極集電体130、正極活物質層110)、セパレータ層510、負極(負極活物質層310、負極集電体330)が、この順で積層されている。このとき、必要に応じて圧縮加工を行ってもよい。
次に、積層構造体を外装部材に収容した後、積層構造体の内部に、電解液513が注入される。注入された電解液513は、セパレータ511の空孔にも浸透する。
このようにして、リチウムイオン二次電池100が得られる。
【0142】
以上、図2を参照して、本実施形態のリチウムイオン二次電池用セパレータが適用されたリチウムイオン二次電池を説明したが、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、これに限定されるものではない。本実施形態に係るポリイミド膜の一例である多孔質ポリイミド膜が適用されるのであれば、その形態は特に限定されない。
【0143】
<全固体電池>
次に、本実施形態のポリイミド膜を適用した、全固体電池について説明する。以下、図3を参照して説明する。
【0144】
図3は、本実施形態に係る全固体電池の一例を表す部分断面模式図である。図3に示すように、全固体電池200は、図示しない外装部材の内部に収容された、正極活物質層220と、固体電解質層620と、負極活物質層420と、を備えている。正極活物質層220は、正極集電体240上に設けられており、負極活物質層420は、負極集電体440上に設けられている。固体電解質層620は、正極活物質層220及び負極活物質層420が互いに対向するように、正極活物質層220と負極活物質層420との間に配置されている。固体電解質層620は、固体電解質624と、固体電解質624を保持する保持体622とを備えており、保持体622の空孔の内部に、固体電解質624が充填されている。固体電解質624を保持する保持体622は、本実施形態に係るポリイミド膜が適用されている。なお、正極集電体240及び負極集電体440は、必要に応じて設けられる部材である。
【0145】
(正極集電体240及び負極集電体440)
正極集電体240及び負極集電体440に用いられる材料としては、前述のリチウムイオン二次電池で説明した材料と同様の材料が挙げられる。
【0146】
(正極活物質層220及び負極活物質層420)
正極活物質層220及び負極活物質層420に用いられる材料としては、前述のリチウムイオン二次電池で説明した材料と同様の材料が挙げられる。
【0147】
(固体電解質624)
固体電解質624は、特に限定されず、公知の固体電解質が挙げられる。例えば、高分子固体電解質、酸化物固体電解質、硫化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質、窒化物固体電解質などが挙げられる。
【0148】
高分子固体電解質としては、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の単独重合体、これらを構成単位として持つ共重合体等)、ポリエチレンオキサイド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアクリレート樹脂などが挙げられる。リチウムイオン伝導性に優れる点で、硫化物固体電解質を含むことが好ましい。同様の点で、硫黄と、リチウム及びリンの少なくとも一方とを構成元素として含む硫化物固体電解質を含有することが好ましい。
【0149】
酸化物固体電解質としては、リチウムを含む酸化物固体電解質粒子が挙げられる。例えば、LiO−B−P、LiO−SiOなどが挙げられる。
硫化物固体電解質としては、硫黄と、リチウム及びリンの少なくとも一方とを構成元素として含む硫化物固体電解質が挙げられる。例えば、8LiO・67LiS・25P、LiS、P、LiS−SiS、LiI−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−P、LiI−LiS−P、LiI−LiS−Bなどが挙げられる。
ハロゲン化物固体電解質は、例えば、LiI等が挙げられる。
窒化物固体電解質は、例えば、LiN等が挙げられる。
【0150】
(全固体電池200の製造方法)
全固体電池200を製造する方法の一例について説明する。
正極活物質を含む正極活物質層220形成用塗布液を、正極集電体240に塗布及び乾燥して、正極集電体240上に設けられた正極活物質層220を備える正極を得る。
同様に、負極活物質を含む負極活物質層420形成用塗布液を、負極集電体440に塗布及び乾燥して、負極集電体440上に設けられた負極活物質層420を備える負極を得る。
正極と負極とは、それぞれ必要に応じて圧縮加工を行ってもよい。
次に、固体電解質層620形成用の固体電解質624を含む塗布液を基材上に塗布、乾燥して、層状の固体電解質を形成する。
次に、正極の正極活物質層220上に、固体電解質層620形成用材料として、保持体622としてのポリイミド膜と、層状の固体電解質624とを重ね合わせる。さらに、固体電解質層620形成用材料上に、負極の負極活物質層420が、正極活物質層220側になるように、負極を重ね合わせて、積層構造体とする。積層体構造は、正極(正極集電体240、正極活物質層220)、固体電解質層620、負極(負極活物質層420、負極集電体440)が、この順で積層されている。
次に、積層構造体に圧縮加工を施して、保持体622であるポリイミド膜の空孔内に、固体電解質624を含浸させ、固体電解質624を保持させる。
次に、積層構造体を外装部材に収容する。
このようにして、全固体電池200が得られる。
【0151】
以上、図3を参照して、本実施形態に係る全固体電池を説明したが、本実施形態に係る全固体電池は、これに限定されるものではない。本実施形態に係るポリイミド膜の一例である多孔質ポリイミド膜が適用されるのであれば、その形態は特に限定されない。
【実施例】
【0152】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0153】
(粒子の作製)
−樹脂粒子(1−1)−
スチレン300質量部、界面活性剤Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)11.9質量部、脱イオン水150質量部を混合し、ディゾルバーにより、1,500回転で30分間攪拌、乳化を行い、単量体乳化液を作製した。続いて、Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)0.9質量部、脱イオン水446.8質量部を反応容器に投入した。窒素気流下、75℃に加熱した後、モノマー乳化液のうち24質量部を添加した。その後、過硫酸アンモニウム5.4質量部を脱イオン水25質量部に溶解させた重合開始剤溶液を10分かけて滴下した。滴下後50分間反応させた後に、残りの単量体乳化液を180分かけて滴下し、さらに180分間反応させたのち、冷却して、樹脂粒子分散液(1−1)を得た。樹脂粒子分散液(1−1)の固形分濃度は36.0質量%であった。また、この樹脂粒子の平均粒径は0.38μmであった。
【0154】
−樹脂粒子(1−2)−
スチレンをメタクリル酸メチルに置き換えた以外は、樹脂粒子分散液(1−1)と同様の方法にて樹脂粒子分散液(1−2)を得た。樹脂粒子分散液(1−2)の固形分濃度は36.0質量%であった。この樹脂の平均粒径は0.37μmであった。
【0155】
<実施例1>
(ポリイミド前駆体溶液の作製)
−ポリイミド前駆体分散液(2−1)−
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物31.05g(以下、「BPDA」とも称す。)と、p−フェニレンジアミン11.41g(以下、「PDA」とも称す。)とを添加し、更に、水と、樹脂粒子分散液(1−1)を表1に示す割合となるように添加し、50℃に昇温し攪拌した。ついで、NMPおよびN−メチルモルホリン(以下、「MMO」とも称す。)、及び水の混合液を表1に示す時間をかけて滴下し、24時間攪拌して溶解、反応を行い、ポリイミド前駆体分散液(2−1)を得た。結果を表1に示す。
【0156】
<実施例2〜8、比較例1〜7>
表1に示すものとなるように、水溶性有機溶剤(B)、有機アミン化合物(A)、水(C)を添加し、かつ混合液の滴下時間を調整した以外は、実施例1と同様の方法により、ポリイミド前駆体分散液(2−2)〜(2−8)、及びポリイミド前駆体分散液(3−1)〜(2−7)を得た。結果を表1に示す。
【0157】
<評価>
各例で得られたポリイミド前駆体溶液を用いて製膜を行って、フィルムを作製し、その製膜性について評価した。
【0158】
(製膜方法)
塗布厚500μmとなるようにスペーサーを設置した塗布ブレードを用いたバーコート法で塗布した。
・塗布基材: 1.1mmtガラス板
・乾燥温度: 60℃×10分
・焼成温度: 250℃×30分
【0159】
(製膜性)
製膜フィルムについて、膜厚のばらつきを評価した。
【0160】
製膜フィルムの膜厚のばらつきについて、以下のとおり評価を行った。得られた塗布膜について、塗布膜から1cm×10cmのサンプルを採取し、サンプルの長手方向に7点の膜厚を測定し、その平均値を算出した。また、評価基準は以下のとおりである。結果を表1に示す。
A:平均値と最大値の比、あるいは平均値と最小値の比がいずれも0.9以上1.1未満
B:平均値と最大値の比、あるいは平均値と最小値の比のいずれかが0.8以上0.9未満あるいは1.1以上1.2未満
C:平均値と最大値の比、あるいは平均値と最小値の比のいずれかが0.8未満あるいは1.2以上
【0161】
【表1】
【0162】
表1に示された結果から、本実施例で得られたポリイミド膜は、比較例で得られたものに比べ、膜厚のばらつきが抑制されていることがわかる。
【符号の説明】
【0163】
31 基板
51 剥離層
10A 空孔
10 多孔質ポリイミド膜
100 リチウムイオン二次電池
200 全固体電池
【図1】
【図2】
【図3】