(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021046501
(43)【公開日】20210325
(54)【発明の名称】クロロプレンゴム系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 111/00 20060101AFI20210226BHJP
   C09J 161/06 20060101ALI20210226BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210226BHJP
【FI】
   !C09J111/00
   !C09J161/06
   !C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】2019170462
(22)【出願日】20190919
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
【住所又は居所】愛知県清須市西堀江2288番地
(72)【発明者】
【氏名】中溝 隆太郎
【住所又は居所】群馬県伊勢崎市富塚町字千本杭1021番地1 アイカ工業内
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040CA141
4J040EB052
4J040HA166
4J040HB26
4J040KA16
4J040KA23
(57)【要約】
【課題】
接着前の液の状態で、フェノール樹脂の酸化劣化によると考えられる黄変を防止すること。
【解決手段】
クロロプレン系ゴムとフェノール樹脂と、フェノール樹脂の添加量に対し、0.001〜3倍量のマロン酸を含むクロロプレンゴム系接着剤組成物を提供することである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレン系ゴムとフェノール樹脂と、フェノール樹脂の添加量に対し、0.001〜3倍量のマロン酸を含むクロロプレンゴム系接着剤組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂を含むクロロプレンゴム系接着剤組成物に関し、組成物の経時での黄変防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴム系接着剤組成物は、被着体に対する広い接着性、速い初期接着力の発現、耐熱性などの優れた特徴により、木工用、建築用、車両用などの用途に広く採用されている。
【0003】
クロロプレンゴム系接着剤組成物は、クロロプレンゴム、粘着付与成分としてのフェノール樹脂、ならびに加硫剤としての酸化マグネシウム等の配合剤と、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、エチルアセテート、2−ブタノンなど溶剤を混合するなどして調製されている。
クロロプレンゴム系組成物は接着前の液の状態で、フェノール樹脂の酸化劣化によると考えられる黄変が起こり易く、この黄変を防止することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1は、クロロプレンゴム系組成物公報であるが、課題としてホルムアルデヒドの放散量が極めて少なく、かつ相分離安定性に優れたクロロプレン系接着性組成物を提供することと挙げてあり、組成物の黄変に関しては全く考慮されていない。
【0005】
【特許文献1】特開2005−350627
【特許文献2】特開2008−138172
【特許文献3】特開2003−176328
【特許文献4】特開2018−517047
【特許文献5】特開2006−316372
【0006】
特許文献2は、クロロプレンラテックスに関する公報で、各種酸性化合物を用いて、水溶液の25℃における酸解離定数(Ka)の負の常用対数値(pKa)が7以下に調整することによって、クロロプレンゴムの析出を防止している。この公報は、粘着付与樹脂として各種フェノール樹脂が明細書中挙げてあるが、実際に添加した例は示されていない。
【0007】
特許文献3は、酸硬化型フェノールフォームの製造に有用な発泡用フェノール樹脂に関するものであり、水系で、且つレゾール樹脂合成反応停止時に、多価カルボン酸類が添加してあるが、発泡性、臭気に主眼を置いた公報で、クロロプレンゴム系接着剤組成物用のフェノール樹脂としては不向きであった。
特許文献4は、ポリウレタンコールドボックス及び/又はノーベーク法に用いるフェノール樹脂組成物並びに対応する二成分結合剤系、使用、及び方法であって、遊離ホルムアルデヒドと、マロン酸ジエチル等との間の反応が起こったことが示唆されていると記載があるが、フェノール樹脂とマロン酸が反応していて、クロロプレンゴム系接着剤組成物用のフェノール樹脂としては不向きであった。
【0008】
特許文献5は、セルロース系繊維の洗濯変色防止加工方法に関する公報で、各種有機酸が挙げてあるが、変色を起こす対象はセルロース系繊維で洗濯変色防止加工方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
接着前の液の状態で、フェノール樹脂の酸化劣化によると考えられる黄変を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、クロロプレン系ゴムとフェノール樹脂と、フェノール樹脂の添加量に対し、0.001〜3倍量のマロン酸を含むクロロプレンゴム系接着剤組成物にて、液の状態の黄変を防止でき、接着強度も低下しないことを見い出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクロロプレンゴム系接着剤組成物は、フェノール樹脂の酸化劣化によると考えられる黄変を防止できるので、安定した接着性を持続的に得ることができると共に、外観上も好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
クロロプレン系ゴムとフェノール樹脂とを含む接着剤組成物であって、フェノール樹脂の添加量に対し、0.001〜3倍量のマロン酸を含むクロロプレンゴム系接着剤組成物を提供する。
【0013】
クロロプレン系ゴムは、市販品を使用することができる。デンカ社より組成物用として、商品名:A−30、商品名:A−70、商品名:A−90、商品名:A−91、商品名:A−100、商品名:A−120、商品名:A−400、商品名:TA−85、商品名:M−40、商品名:M−130L、商品名:M−130H、商品名:DCR−11、商品名:DCR−12L/H等が販売されている。
尚、A−400、M−130L、M−130Hはトルエンカット品であるが、これらを使用しても何ら問題ない。
硬化性、接着性の観点から、好適なクロロプレンゴムは、A−90で、添加量としては5〜30重量部、より好適には10〜25重量部である。
【0014】
フェノール樹脂は、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、何れも使用することができる。より好適には、アルキルフェノール樹脂である。
アルキルフェノール樹脂はアイカ工業より販売されており、レゾール樹脂としては、商品名:ショウノールBKS−307、商品名:ショウノールCKS−380A、商品名:ショウノールCKS−3898、商品名:ショウノールCKM−908、商品名:ショウノールBKS−355、ショウノールBKS−355、ショウノールCKM−947、ノボラック樹脂としては、商品名:ショウノールCKM−5254C、ショウノールADM−8000、ADM−8200が販売されており、より好適なアルキルフェノール樹脂は、ADM−8200である。添加量としては、添加量としては5〜30重量部、より好適には10〜25重量部である。
【0015】
溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、エチルアセテート、2−ブタノンの溶剤が挙げられ、本発明に於ける好適な溶剤としては、2−ブタノン、シクロヘキサン、エチルアセテートを挙げることが出来る。添加量としては、50〜90重量部、より好適には55〜85重量部である。
【0016】
クロロプレンゴム系接着剤組成物の黄変防止に寄与するマロン酸の添加量は、フェノール樹脂の0.001〜3倍量、より好適には0.02〜2倍量である。
【0017】
クロロプレン系組成物には、クロロプレンゴムの加硫の為、フェノール樹脂とキレートを作製させる為、金属酸化物を添加することが好ましい。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化イッテルビウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化エルビウム、酸化オスミウム、酸化カドミウム、酸化カルシウム、酸化銀、酸化クロム、酸化コバルト、酸化サマリウム、酸化ジスプロシウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化タンタル、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ナトリウム、酸化鉛、酸化ニオブ、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化ハフニウム、酸化パラジウム、酸化バリウム、酸化ビスマス、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ユウロピウム、酸化ランタン、酸化ルテチウム、酸化ロジウム等が挙げられる。本発明に於ける好適な金属酸化物は、酸化マグネシウム、酸化亜鉛で、添加量としては両方の合計が0.1〜2重量部、より好適には0.5〜1.5重量部である。
【0018】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。なお、部数は全て重量部である。
【実施例】
【0019】
実施例1のクロロプレンゴム系接着剤組成物の作製
A−90を147.9g、酸化マグネシウムを3g、酸化亜鉛を7.4g、2−ブタノンを147.9g、シクロヘキサンを221.9g、エチルアセテートを221.9g、セパラブルフラスコに秤取り、撹拌羽を装着した新東科学社製、商品名:スリーワンモーターBL600にて2〜3時間撹拌を行い溶解させ、ゴム溶液を得た。
これとは別に、ADM−8200を125g、2−ブタノンを125g、セパラブルフラスコに秤取り、撹拌羽を装着した新東科学社製、商品名:スリーワンモーターBL600にて1〜2時間撹拌を行い溶解させ、フェノール樹脂溶液を得た。
別のセパラブルフラスコに、ゴム溶液を75g、フェノール樹脂溶液を25g、マロン酸を0.025g秤取り、撹拌羽を装着した新東科学社製、商品名:スリーワンモーターBL600にて1〜2時間撹拌を行い溶解させ、実施例1のクロロプレンゴム系接着剤組成物の作製を行った。
【0020】
実施例2〜4、比較例1〜10のクロロプレンゴム系接着剤組成物の作製
表1〜表2に示した配合割合で、ゴム溶液、フェノール樹脂溶液、黄変防止剤を実施例1の樹脂組成物の作製と同様の手順で、実施例2〜4、比較例1〜10のクロロプレンゴム系接着剤組成物を作製した。
【0021】
実施例5のクロロプレンゴム系接着剤組成物の作製
DCR−12Lを14.79g、酸化マグネシウムを0.3g、酸化亜鉛を0.74g、2−ブタノンを14.79g、シクロヘキサンを22.19g、エチルアセテートを22.19g、セパラブルフラスコに秤取り、撹拌羽を装着した新東科学社製、商品名:スリーワンモーターBL600にて1〜2時間撹拌を行い溶解させ、ゴム溶液を得た。
これとは別に、ADM−8200を12.5g、2−ブタノンを12.5gセパラブルフラスコに秤取り、撹拌羽を装着した新東科学社製、商品名:スリーワンモーターBL600にて1〜2時間撹拌を行い溶解させ、フェノール樹脂溶液を得た。
フェノール樹脂溶液をゴム溶液の入った容器に移し、マロン酸を2.5g秤取り、撹拌羽を装着した新東科学社製、商品名:スリーワンモーターBL600にて1〜2時間撹拌を行い溶解させ、実施例5のクロロプレンゴム系接着剤組成物の作製を行った。
【0022】
実施例6、実施例7のクロロプレンゴム系接着剤組成物の作製
表1に示す割合で、実施例5のクロロプレンゴム系接着剤組成物の作製に従い、実施例6、実施例7のクロロプレンゴム系接着剤組成物の作製を行った。
【0023】
60℃・7日後液外観確認試験
実施例1〜7、比較例1〜10のクロロプレンゴムゴム系接着剤組成物を60℃・7日間経過させ、初期外観と比較して著しい黄変を起こしていない場合を(○)、初期外観から著しい黄変を起こしている場合を(×)とした。結果を表3〜表5に示す。
【0024】
初期接着強度測定方法
実施例1〜7のクロロプレンゴムゴム系接着剤組成物の初期接着強度をJIS K−6854−1994に準拠して測定した。
クロロプレンゴム接着剤組成物を、25mm×150mmの11号帆布の25mm×75mmの面積に、ハケを用いて0.03g/cm2塗布し、室温にて20分間保管した。この操作を3回繰り返した後、クロロプレンゴム接着剤組成物を塗布した帆布を2枚ずつ貼り合わせ、5kgのハンドロールで片道5回圧着し、25℃/60%RHの恒温恒湿室で1日養生して初期強度測定用試験片を作製した。
その試験片を、エー・アンド・デイ社製、商品名:テンシロンを用いて、25℃雰囲気下、50mm/minの速度でT型剥離接着強さを測定した。なお、測定を5回行い、その平均値を25℃雰囲気下における接着強度とした。測定結果を表3〜5に示す。尚、比較例1〜10は、60℃・7日経過後の液外観確認試験結果が良くなかったので、測定を行っていない。
接着強度の判定基準としては、50N/25mm以上の接着強度であれば、十分な接着強度を示していると判断される。
【0025】
60℃・7日経過後液の接着強度測定方法
実施例1〜7のクロロプレンゴムゴム系接着剤組成物を60℃・7日経過した液の接着強度を初期接着強度測定方法と同様の方法で測定を行った。結果を表3〜5に示す。
尚、比較例1〜10は、60℃・7日経過後の液外観確認試験結果が良くなかったので、測定を行っていない。接着強度の判定基準としては、初期接着強度測定方法に同じである。
【0026】
クロロプレン系ゴムとフェノール樹脂とを含む接着剤組成物であって、フェノール樹脂の添加量に対し、0.001〜3倍量のマロン酸を含むクロロプレンゴム系接着剤組成物である実施例1〜7は、60℃・7日経過しても、初期外観と比較して著しい黄変を起こさなかった。また、初期接着強度および60℃・7日経過した液の接着強度も全て50N/25mm以上を示し、安定した接着強度を示す事が示された。
【0027】
マロン酸を添加していない比較例1は、60℃・7日経過の黄変が著しかった。また、マロン酸以外の黄変防止剤を用いた比較例2〜10は、比較例1同様60℃・7日経過の黄変が著しかった。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
【表5】