(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021046508
(43)【公開日】20210325
(54)【発明の名称】水溶液、その製造方法及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20210226BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20210226BHJP
   C09D 129/04 20060101ALI20210226BHJP
   C09D 197/00 20060101ALI20210226BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20210226BHJP
【FI】
   !C08L29/04 B
   !C08L97/00
   !C09D129/04
   !C09D197/00
   !C09D5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】2019170776
(22)【出願日】20190919
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【住所又は居所】岡山県倉敷市酒津1621番地
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】特許業務法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香春 多江子
【住所又は居所】岡山県倉敷市玉島乙島7471番地 株式会社クラレ内
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4J002AH002
4J002BE021
4J002BE031
4J002GH00
4J002HA04
4J038BA251
4J038CE021
4J038MA08
4J038NA04
4J038NA26
4J038PB03
4J038PB04
4J038PC08
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】粘度安定性に優れ、かつ乾燥させたときの耐水性に優れた樹脂組成物を得ることのできる水溶液を提供する。
【解決手段】ポリビニルアルコール(A)及びクラフトリグニン(B)を水(C)に溶解させてなる水溶液であって;ポリビニルアルコール(A)の粘度平均重合度が200〜4500であり、けん化度が65〜99.9モル%であり、水(C)に溶解しているクラフトリグニン(B)の量が、ポリビニルアルコール(A)100質量部に対して0.1〜30質量部であり、水(C)の量が、ポリビニルアルコール(A)100質量部に対して250〜100000質量部である水溶液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール(A)及びクラフトリグニン(B)を水(C)に溶解させてなる水溶液であって;
ポリビニルアルコール(A)の粘度平均重合度が200〜4500であり、けん化度が65〜99.9モル%であり、
水(C)に溶解しているクラフトリグニン(B)の量が、ポリビニルアルコール(A)100質量部に対して0.1〜30質量部であり、
水(C)の量が、ポリビニルアルコール(A)100質量部に対して250〜100000質量部である水溶液。
【請求項2】
ポリビニルアルコール(A)が、エチレン単位を主鎖に含有し、該エチレン単位の含有量が10モル%未満である請求項1に記載の水溶液。
【請求項3】
クラフトリグニン(B)の量が、ポリビニルアルコール(A)100質量部に対して1〜5質量部である請求項1又は2に記載の水溶液。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の水溶液からなるコーティング剤。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の水溶液を乾燥させてなる樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4に記載のコーティング剤を基材表面に塗工してなる塗工物。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の水溶液の製造方法であって;
ポリビニルアルコール(A)、クラフトリグニン(B)及び水(C)を含み、pHが8〜14の水溶液を調製する工程1を有する、水溶液の製造方法。
【請求項8】
工程1の後に前記水溶液に酸を添加する工程2をさらに有する請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール(A)及びクラフトリグニン(B)を水(C)に溶解させてなる水溶液に関する。また本発明は、その水溶液の製造方法に関する。さらにまた本発明は、その水溶液の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記することがある)を溶解させてなる水溶液は造膜性に優れているため、バリアフィルム、バリア紙、耐油紙、剥離紙のシリコーン歩留まり剤などに使用されている。しかしながら、PVA水溶液は時間が経過すると粘度が変化するという問題があった。また、PVA自体が水溶性であるため、PVA水溶液を塗工して得られた皮膜は耐水性が低いという問題もあった。
【0003】
特許文献1には、(A)20℃における4%水溶液粘度が2mPa・s以上である水溶性ポリビニルアルコール系樹脂100重量部、(B)カオチン性基含有水溶性合成高分子1〜100重量部、(C)アルデヒド系化合物1〜20重量部からなるポリビニルアルコール系耐水性樹脂組成物が記載されている。これによれば、水溶液状態での粘度安定性に優れており、また、比較的低温領域で組成物水溶液を乾燥しても優れた耐水性を発揮する皮膜を得ることができるとされている。
【0004】
特許文献2には、(A)エチレン単位を1〜24モル%含有する変性ポリビニルアルコール、(B)1重量%水溶液の20℃における粘度70センチポイズ以下及びグルコース単位当たりのアミノ基(アミノ基が酸によってアンモニウム基に変換されているものを含む)含有量40モル%以上のキトサン系化合物ならびに(C)多価アルデヒド化合物の混合水溶液からなり、(A)成分と(B)成分の重量配合比率[(A)/(B)]が99/1〜10/90であり、(C)成分の重量配合比率{[(A)+(B)]/(C)}が100/1〜100/20である耐水性組成物が記載されている。この耐水性組成物は、造膜性、皮膜強度および耐水性に優れているとされている。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の組成物を溶解させてなる水溶液の粘度安定性は不十分であった。また、当該水溶液を用いて得られた皮膜の耐水性も不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−263670号公報
【特許文献2】特開平8−269289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、粘度安定性に優れ、かつ乾燥させたときの耐水性に優れた樹脂組成物を得ることのできる水溶液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、ポリビニルアルコール(A)及びクラフトリグニン(B)を水(C)に溶解させてなる水溶液であって;ポリビニルアルコール(A)の粘度平均重合度が200〜4500であり、けん化度が65〜99.9モル%であり、水(C)に溶解しているクラフトリグニン(B)の量が、ポリビニルアルコール(A)100質量部に対して0.1〜30質量部であり、水(C)の量が、ポリビニルアルコール(A)100質量部に対して250〜100000質量部である水溶液を提供することによって解決される。
【0009】
このとき、ポリビニルアルコール(A)が、エチレン単位を主鎖に含有し、該エチレン単位の含有量が10モル%未満であることが好ましい。クラフトリグニン(B)の量が、ポリビニルアルコール(A)100質量部に対して1〜5質量部であることも好ましい。
【0010】
上記課題は、上記水溶液の製造方法であって;ポリビニルアルコール(A)、クラフトリグニン(B)及び水(C)を含み、pHが8〜14の水溶液を調製する工程1を有する、水溶液の製造方法を提供することによっても解決される。このとき、工程1の後に前記水溶液に酸を添加する工程2をさらに有することが好ましい。
【0011】
上記水溶液からなるコーティング剤が本発明の好適な実施態様である。当該コーティング剤を基材表面に塗工してなる塗工物も本発明の好適な実施態様である。また、上記水溶液を乾燥させてなる樹脂組成物も本発明の好適な実施態様である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、粘度安定性に優れ、かつ乾燥させたときの耐水性に優れた樹脂組成物を得ることができる水溶液を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ポリビニルアルコール(A)(以下、「PVA(A)」と略記することがある)及びクラフトリグニン(B)を水(C)に溶解させてなる水溶液に関する。本発明者は、水溶液の粘度安定性と、その水溶液を乾燥させてなる樹脂組成物の耐水性を両立させるべく鋭意検討した。その結果、PVA(A)を含む水溶液にクラフトリグニン(B)を溶解させることによって、水溶液の粘度安定性が向上し、その水溶液を乾燥させてなる樹脂組成物の耐水性も向上することを見出した。このメカニズムの詳細は不明であるが、PVA(A)とクラフトリグニン(B)との相互作用(例えば水素結合)によるものではないかと本発明者は推測している。
【0014】
本発明の水溶液は水(C)にPVA(A)が溶解してなる。水(C)の量は、PVA(A)100質量部に対して250〜100000質量部である。水(C)の量がこの範囲にあることによって、水溶液をコーティング剤として用いたとき、優れた塗工性を得ることができる。水の量は、350質量部以上であることが好ましい。一方、水の量は、50000質量部以下であることが好ましく、10000質量部以下であることがより好ましい。このとき、水(C)に加えたPVA(A)はすべて溶解している。
【0015】
発明で用いられるPVA(A)の粘度平均重合度(以下、「重合度」と略記することがある)は200〜4500である。重合度が200未満の場合、水溶液を乾燥させてなる樹脂組成物の耐水性が低下する。重合度は600以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましい。一方、重合度が4500を超える場合、水溶液の粘度が高くなり、水溶液を基材に塗工することが難しくなる。重合度は4000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2500以下であることがさらに好ましい。重合度はJIS−K6726(1994年)に準じて測定して得られる値である。
【0016】
本発明で用いられるPVA(A)のけん化度は65〜99.9モル%である。けん化度が65モル%未満の場合、水溶液を乾燥させてなる樹脂組成物の耐水性が低下する。けん化度は、75モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。一方、けん化度は、99.5モル%以下であることが好ましく、99モル%以下であることがより好ましい。けん化度はJIS−K6726(1994年)に準じて測定して得られる値である。
【0017】
PVA(A)は、従来公知の方法に従い、ビニルエステルモノマーを重合し、得られた重合体を常法によりけん化することによって得ることができる。ビニルエステルモノマーを重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、従来公知の方法を適用することができる。重合触媒としては、重合方法に応じて、アゾ系触媒、過酸化物系触媒、レドックス系触媒などが適宜選ばれる。けん化反応は、従来公知のアルカリ触媒または酸触媒を用いる加アルコール分解、加水分解などを適用することができる。
【0018】
重合に用いることができるビニルエステルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどを挙げることができ、これらの中でも酢酸ビニルが工業的観点から好ましい。ビニルエステルモノマーの重合に際して、本発明の趣旨を損なわない範囲であればビニルエステルモノマーを他の単量体と共重合させても差し支えない。このような単位としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類もしくはその塩又はモノもしくはジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有のビニルエーテル類;アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類;オキシアルキレン基を有する単量体;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類;酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有のα−オレフィン類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等に由来するスルホン酸基を有する単量体またはその塩;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、3−(N−メタクリルアミド)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等に由来するカチオン基を有する単量体が挙げられる。これらの単量体の含有量は、使用される目的や用途等によって異なるが、好ましくは10モル%以下であり、より好ましくは5.0モル%未満であり、さらに好ましくは1.0モル%未満であり、0.5モル%未満であってもよい。
【0019】
水溶液を乾燥させてなる樹脂組成物の耐水性をより向上させる観点から、PVA(A)が、エチレン単位を主鎖に有していてもよい。ここで、エチレン単位を主鎖に有するとは、PVA(A)が、エチレンモノマーに由来する構造単位(-(CH2-CH2)-)を主鎖に有することをいう。
【0020】
エチレン単位の含有量は10モル%未満であることが好ましい。エチレン単位の含有量が10モル%以上の場合、PVA(A)の水溶性が低下するおそれがある。エチレン単位の含有量は8モル%以下であることがより好ましい。一方、樹脂組成物の耐水性をより向上させる観点からは、エチレン単位の含有量は、1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましく、2.5モル%以上であることがさらに好ましい。なお、エチレン単位の含有量とは、PVA(A)の主鎖を構成する単量体単位のモル数に対するエチレンに由来する構造単位のモル数を表す。
【0021】
主鎖にエチレン単位を有するPVA(エチレン−ビニルアルコール共重合体)を、PVA(A)として用いることができる。エチレン単位を有するPVAは、ビニルエステルモノマーとエチレンとを共重合させてエチレン−ビニルエステル共重合体を得てから、当該エチレン−ビニルエステル共重合体をけん化することによって得ることができる。
【0022】
本発明の水溶液においては、前述の通り、クラフトリグニン(B)を水(C)に溶解させてなることが重要である。ここでクラフトリグニンとは、クラフト法(水酸化ナトリウム水溶液と硫化ナトリウム水溶液を蒸解液とする方法)によってパルプを製造する際に排出される黒液に含まれる、リグニンを主成分とする固形物である。
【0023】
本発明の水溶液において、水(C)に溶解しているクラフトリグニン(B)の量は、PVA(A)100質量部に対して0.1〜30質量部である。水(C)に溶解しているクラフトリグニン(B)の量が0.1質量部未満の場合、耐水性に優れた樹脂組成物を得ることができない。水(C)に溶解しているクラフトリグニン(B)の量は、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることがさらに好ましい。一方、水(C)に溶解しているクラフトリグニン(B)の量が30質量部を超える場合、水溶液を乾燥させてなる樹脂組成物の皮膜強度が低下する可能性がある。水(C)に溶解しているクラフトリグニン(B)の量は、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることがさらに好ましく、5質量部以下であることが特に好ましい。
【0024】
本発明の水溶液の製造方法は特に限定されないが、好適な製造方法は、PVA(A)、クラフトリグニン(B)及び水(C)を含み、pHが8〜14の水溶液を調製する工程1を有する方法である。この方法において、PVA(A)、クラフトリグニン(B)及び水(C)の含有量は前述の通りである。
【0025】
工程1において、pHの調製方法は特に限定されない。PVA(A)及びクラフトリグニン(B)のみを含む液のpHは、通常6程度であるので、塩基性物質を添加することによって調整することができる。当該塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア、トリエチルアミンなどのアミンなどが挙げられる。中でも、アルカリ金属の水酸化物又はアミンが好適に用いられる。クラフトリグニン(B)を含む水溶液に塩基性物質を添加することによって、当該塩基性物質とクラフトリグニン(B)のフェノール性水酸基とが塩を形成し、水に難溶なクラフトリグニン(B)が水(C)に溶解する。
【0026】
工程1において、水溶液のpHが8未満の場合、クラフトリグニン(B)が水(C)に溶解しないおそれがある。水溶液のpHは10以上であることがより好ましく、11以上であることがさらに好ましい。一方、pHは13以下であることがより好ましい。塩基性物質の添加量は特に限定されず、水溶液のpHが所望の値になるように添加すればよい。
【0027】
上記製造方法において、工程1の後に前記水溶液に酸を添加する工程2をさらに有することが好ましい。工程2で用いられる酸としては、りん酸、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、p-トルエンスルホン酸ナトリウムなどの有機酸などが挙げられる。また、酸の添加量は特に限定されないが、水溶液のpHが10未満となるように添加することが好ましく、8未満となるように添加することがより好ましく、7未満となるように添加することがさらに好ましい。一方、水溶液のpHは2以上とすることが好ましく、3以上とすることがより好ましく、4以上とすることがさらに好ましい。
【0028】
クラフトリグニン(B)がアルカリ性の水(C)に一旦溶解すると、水溶液のpHを中性や酸性に変更してもクラフトリグニン(B)が析出することはない。したがって、本発明の水溶液は用途に応じて、そのpHを幅広い範囲で適宜調整することが可能である。例えば、水溶液のpHを中性に調製すれば、当該水溶液の取り扱い時の安全性が向上する。
【0029】
水溶液は、本発明の効果を損なわない範囲で、PVA(A)、クラフトリグニン(B)、水(C)、pH調整剤以外に、用途に応じて溶媒、各種添加剤、他の水溶性樹脂あるいは高分子水溶性分散体等を含有させることができる。溶媒としては水が用いられるが、これに各種アルコール、ケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の溶媒を併用して用いることもでき、また添加剤としては、各種消泡剤、各種分散剤、ノニオン性あるいはアニオン性界面活性剤、シランカップリング剤あるいは各種架橋剤等が挙げられ、水溶性樹脂としてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリレートまたはその共重合体、ポリアクリルアミド等の(メタ)アクリル系共重合体、ポリビニルピロリドンまたはその共重合体等が挙げられる。更に、高分子水性分散体としてはアクリル重合体および共重合体、エチレンー酢酸ビニル共重合体、ビニルエステル系重合体および共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体等の水分散体が挙げられる。
【0030】
本発明の水溶液の好適な用途は、当該水溶液からなるコーティング剤である。本発明の水溶液を用いることによって粘度安定性に優れたコーティング剤を得ることができる。また、本発明の水溶液を乾燥させてなる樹脂組成物も好適な実施態様である。当該樹脂組成物は耐水性に優れているので、エマルジョンや紙用コーティング等に好適に用いることができる。
【0031】
また、上記コーティング剤を基材表面に塗工してなる塗工物も好適な実施態様である。基材としては、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムなどのフィルムや紙、不織布などが挙げられる。塗工方法は特に限定されず公知の塗工方法を採用することができる。上記塗工物は、各種特殊紙や包装材等に好適に用いられる。
【実施例】
【0032】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお以下で、「部」および「%」は特に断らない限り「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0033】
実施例1
粘度平均重合度1700、けん化度98.0mol%のPVA(A)100質量部を2400質量部の水に溶解し4%水溶液を調製した。この水溶液に、水酸化カリウムの含有量がPVA(A)100質量部に対して0.5質量部となるように20%水酸化カリウム水溶液を添加して、水溶液のpHを12に調整した。さらに、クラフトリグニン(B)をPVA(A)100質量部に対して1質量部添加し、室温下で攪拌しながら溶解させた。この水溶液のpHは12であった。この水溶液を20℃、65%RH下で、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称する)フィルム上に流延し、7日間室温下で乾燥させることで50μmの乾燥皮膜が形成された塗工物を得た。PET基材から剥がした乾燥皮膜を、20℃の冷水中に20時間浸漬し、下記の式を用い、皮膜の膨潤度と溶出率を測定した。これらの値が小さいほど皮膜の耐水性が優れていると言える。また同様の方法で調製した水溶液を40℃下で7日間放置した後、JIS K 6726(1994年)の回転粘度計法に準じてB型粘度計を用いて、20℃、60rpm下で水溶液の粘度測定を行った。結果を表1に示す。
【0034】
(皮膜の膨潤度と溶出率)
膨潤度(倍)=(水浸漬後のサンプル重量)/(水浸漬後のサンプルの乾燥後の重量) (1)
溶出率(%)=[{(水浸漬前のサンプルの乾燥重量)−(水浸漬後のサンプルの乾燥重量)}/(水浸漬前のサンプルの乾燥重量)]×100 (2)
【0035】
(粘度安定性)
A:変化はなかった。
B:流動性あるが増粘していた。
C:ゲル化していた。
【0036】
実施例2〜3、5〜8
PVA(A)の種類、クラフトリグニン(B)の含有量、塩基(C)の種類及び含有量を表1に示すように変更する以外は実施例1と同様に水溶液を調製し、評価した。結果を合わせて表1に示す。
【0037】
実施例4
粘度平均重合度1700、けん化度98.0mоl%のPVA(A)100質量部を2400質量部の水に溶解し4%水溶液を調製した。この水溶液に、水酸化カリウムの含有量がPVA(A)100質量部に対して2.5質量部となるように20%水酸化カリウム水溶液を添加して、水溶液のpHを12に調整した。さらに、クラフトリグニン(B)をPVA(A)100質量部に対して5質量部添加し、室温下で攪拌しながら溶解させた。クラフトリグニン(B)の溶解を確認後、PVA(A)100質量部に対してりん酸を1.7質量部添加して、水溶液のpHを5に調整した。この水溶液を20℃、65%RH下で、PETフィルム上に流延し、7日間室温下で乾燥させることで50μmの乾燥皮膜が形成された塗工物を得た。得られたPET基材から剥がした乾燥皮膜について実施例1と同様にして皮膜の膨潤度と溶出率を測定した。また同様の方法で調製した水溶液を40℃下で7日間放置した後、JIS K 6726(1994年)の回転粘度計法に準じてB型粘度計を用いて、20℃、60rpm下で水溶液の粘度測定を行った。結果を表1に示す。
【0038】
比較例1
クラフトリグニン(B)及び塩基性物質を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして水溶液を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0039】
比較例2
粘度平均重合度1700、けん化度98.0mol%のPVA(A)100質量部を2400質量部の水に溶解し4%水溶液を調製した。その後、水溶液中のPVA(A)100質量部に対してクラフトリグニン(B)を5質量部添加し、室温下で攪拌しながら溶解させた。このとき、不溶解分が目視で観察されたため、200メッシュ(JIS標準篩のメッシュ換算では、目開き75μm;前記篩の目開きは、JIS Z 8801−1−2006の公証目開きWに準拠)の金網で全量ろ過し、金網ごと105℃で3時間乾燥した。ろ過前後の金網の質量変化より、得られた水溶液中には、PVA(A)100質量部に対してクラフトリグニン(B)が0.05質量部のみ溶解していた。ろ過後の水溶液を20℃、65%RH下で、PETフィルム上に流延し、7日間室温下で乾燥させることで50μmの乾燥皮膜が形成された塗工物を得た。PET基材から剥がした乾燥皮膜について実施例1と同様にして皮膜の膨潤度と溶出率を測定した。また同様の方法で調製した水溶液を40℃下で7日間放置した後、JIS K 6726(1994年)の回転粘度計法に準じてB型粘度計を用いて、20℃、60rpm下で水溶液の粘度測定を行った。結果を表1に示す。
【0040】
比較例3
粘度平均重合度1700、けん化度98.0mol%のPVA(A)100質量部を2400質量部の水に溶解し4%水溶液を調製した。この水溶液に、グリオキザール系架橋剤をPVA100質量部に対して10質量部添加し、室温下で溶液が均一になるように攪拌した。乾燥皮膜が形成された塗工物の作製方法及びその評価については実施例1と同様である。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】