(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021046716
(43)【公開日】20210325
(54)【発明の名称】上下階高さ調整方法および上下階高さ調整用治具
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20210226BHJP
   E04G 21/18 20060101ALI20210226BHJP
【FI】
   !E04B1/348 N
   !E04G21/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】2019169541
(22)【出願日】20190918
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区西天満2丁目4番4号
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南部 雅彦
【住所又は居所】茨城県つくば市和台32番地 積水化学工業株式会社内
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174DA22
2E174DA38
(57)【要約】
【課題】上層階の建物ユニットの床板同士の高さが異なっている場合に、段差を無くし床板の高さを揃えることを可能とする。
【解決手段】上下階高さ調整用治具40を用いて、隙間101を介して水平方向に隣り合う建物ユニット1の高さを調整する上下階高さ調整方法である。そして、隙間101を挟んで水平方向に隣接する上層階の建物ユニット1b、1dの床板17A、17Bの高さが異なる場合に、隙間101の下端からロッド部材41を挿入して、他端部を床板17A、17Bの間の隙間101の他端から突出させるステップと、ロッド部材41の他端部の雄ねじ部41aに上側板部材43とワッシャ44とを装着し、さらに、雄ねじ部41aにナット45を締結する締結力で、低い方の桁屋根大梁13Bを下側板部材42により上昇させ、隙間101を挟む高い方の床板17Aを上側板部材43により間接的に下降させるステップとを実行する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四隅の柱材と、前記柱材の下端部同士を連結する床梁と、前記柱材の上端部同士を連結する屋根梁とによって骨組みが形成された建物ユニットを水平方向の隙間を介して隣接させて形成された下層階の上に、前記隙間を介して水平方向に前記建物ユニットを隣接させて形成された上層階を載せて構成され、前記上層階の前記建物ユニットでは、前記隙間を挟む端部まで床板が設けられているユニット建物において、上下階高さ調整用治具を用いて、前記隙間を介して水平方向に隣り合う前記建物ユニットの高さを調整する上下階高さ調整方法であって、
前記上下階高さ調整用治具は、
前記下層階の前記隣り合う前記建物ユニット間の隙間を挟んだ両側の前記屋根梁の下面に差し渡し可能な大きさの下側部材と、
前記上層階の前記隙間を挟んだ両側の前記床板の上面に架け渡し可能な大きさの上側部材と、
前記隙間に挿通可能な太さの棒状で、前記下側部材と前記上側部材との一方に一端部が結合され、他端部が、前記下側部材と前記上側部材との他方に挿通可能であり、結合された前記下側部材と前記上側部材との前記一方を、前記屋根梁の下面と前記床板の上面とのいずれかに当接させて他端部を前記隙間に挿入させたときに、前記他端部が前記隙間から突出可能な長さを有し、少なくとも前記他端部にねじ部が形成されたロッド部材と、
前記ロッド部材の前記ねじ部に締結可能な締結部材と、
を備え、
前記隙間を挟んで水平方向に隣接する前記上層階の前記建物ユニットの前記床板同士の高さが異なる場合に、
前記隙間の上下の一端から前記ロッド部材の前記他端部を挿入して、前記他端部を前記隙間の他端から突出させるステップと、
前記ロッド部材の前記他端部に前記下側部材と前記上側部材との前記一方を装着し、さらに、前記ねじ部に前記締結部材を締結する締結力で、低い方の前記屋根梁を前記下側部材により上昇させ、前記隙間を挟む前記上層階の前記床板のうち、高い方の前記床板を前記上側部材により下降させるステップと、
を実行する上下階高さ調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載の上下階高さ調整方法において、
前記ロッド部材の前記他端部を前記隙間から突出させるステップの後に、さらに、前記床梁の上面に沿って所定間隔で設けられて前記床板の端部を支持する床受材の複数に跨る長さを有する一対の当材を、前記隙間を挟む両側の前記床板の上に、前記隙間から突出させた前記ロッド部材を間に挟んで載置するステップを有し、
前記締結部材を締結するステップでは、前記上側部材を介して前記当材により前記床板を下方に押し下げる上下階高さ調整方法。
【請求項3】
請求項2に記載の上下階高さ調整方法において、
前記当材として、非金属製のものを用い、前記当材を前記床板の上に載置するステップの実行後、さらに、両当材の高い方の当材と前記上側部材との間に、前記上側部材と前記当材との接触面積よりも広い面積の金属製の板材を介在させるステップと、
前記下側部材と低い方の前記屋根梁との間に、前記下側部材と低い方の前記屋根梁との接触面積よりも広い面積の金属製の板材を介在させるステップと、
を備える上下階高さ調整方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の上下階高さ調整方法において、
前記締結部材を締結するステップの実行により、前記隙間を挟んで隣接する前記床梁同士の高さ、および、前記屋根梁同士の高さを略一致させた後に、
両床梁の上面と前記屋根梁の下面とを挟んで、前記床梁と前記屋根梁とをジョイント部材により本締結するステップと、
前記締結部材による締結を解除して、前記ロッド部材から前記上側部材および前記締結部材を取り外し、前記下側部材と共に、前記ロッド部材を隙間から下方に引き出して、前記上下階高さ調整用治具を取り外すステップと、
を備える上下階高さ調整方法。
【請求項5】
四隅の柱材と、前記柱材の下端部同士を連結する床梁と、前記柱材の上端部同士を連結する屋根梁とによって骨組みが形成された建物ユニットを水平方向の隙間を介して隣接させて形成された下層階の上に、前記隙間を介して水平方向に前記建物ユニットを隣接させて形成された上層階を載せて構成され、前記上層階の前記建物ユニットでは、前記隙間を挟む端部まで床板が設けられているユニット建物において、前記隙間を介して水平方向に隣り合う前記建物ユニットの高さを調整するのに用いる上下階高さ調整用治具であって、
前記下層階の前記隣り合う前記建物ユニット間の隙間を挟んだ両側の前記屋根梁の下面に差し渡し可能な大きさの下側部材と、
前記上層階の前記隙間を挟んだ両側の前記床板の上面に架け渡し可能な大きさの上側部材と、
前記隙間に挿通可能な太さの棒状で、前記下側部材と前記上側部材との一方に一端部が結合され、他端部が、前記下側部材と前記上側部材との他方に挿通可能であり、前記下側部材と前記上側部材との前記一方を、前記屋根梁の下面と前記床板の上面とのいずれかに当接させて前記他端部を前記隙間に挿入させたときに、前記他端部が前記隙間から突出可能な長さを有し、少なくとも前記他端部にねじ部が形成されたロッド部材と、
前記ロッド部材の前記ねじ部に締結可能な締結部材と、
を備える上下階高さ調整用治具。
【請求項6】
請求項5に記載の上下階高さ調整用治具において、
前記ロッド部材は、前記上側部材と前記下側部材との間隔が、前記床板の押圧用の当材を前記床板の上に載置したときの前記当材の上面と前記屋根梁の下面との間隔以上とすることが可能な長さを有する上下階高さ調整用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の建物ユニットを水平方向に並べた下層階の上に、複数の建物ユニットを水平方向に並べた上層階を重ねたユニット建物における上下階高さ調整方法および上下階高さ調整用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場で製作された複数の建物ユニットを水平方向に並べて設置するとともに、上下に重ねて設置するユニット建物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1には、建物ユニットの水平方向の隙間を狭くしたユニット建物にあっても、平板型の防振部材を充分に機能させることができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−44465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、水平方向に並べて設けられた一対の建物ユニットの下層階の屋根梁と上層階の床梁とに接続治具の上下部材を係合させ、ナットの締結により上下部材の間隔を狭めて、接続治具を両大梁の間に固定する構造となっている。
【0006】
しかしながら、建物ユニットを設置した際に、水平方向で隣り合う屋根梁同士、および、床梁同士の高さが異なる場合があり、上層階の建物ユニットにおいて、端部まで床板が設けられていると、隙間を挟んで床板同士の間に段差が生じる。
【0007】
このような場合、接続治具のナットの締結による上下部材の位置規制力により、異なる高さの屋根梁同士、および、床梁同士の位置を矯正することが可能であるものの、十分な矯正力が得られない場合には、床板同士の間の段差を無くすことができなかった。
【0008】
本開示は、上述の従来の問題点に着目したもので、上層階の建物ユニットの床板同士の高さが異なっている場合に、段差を無くし床板の高さを揃えることを可能とする上下階高さ調整方法および上下階高さ調整用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の上下階高さ調整用方法は、四隅の柱材と、前記柱材の下端部同士を連結する床梁と、前記柱材の上端部同士を連結する屋根梁とによって骨組みが形成された建物ユニットを水平方向の隙間を介して隣接させて形成された下層階の上に、前記隙間を介して水平方向に前記建物ユニットを隣接させて形成された上層階を載せて構成され、前記上層階の前記建物ユニットでは、前記隙間を挟む端部まで床板が設けられているユニット建物において、上下階高さ調整用治具を用いて、前記隙間を介して水平方向に隣り合う前記建物ユニットの高さを調整する上下階高さ調整方法である。
【0010】
また、前記上下階高さ調整用治具は、前記下層階の前記隣り合う前記建物ユニットの隙間を挟んだ両側の前記屋根梁の下面に差し渡し可能な大きさの下側部材と、前記上層階の前記隣り合う前記建物ユニット間の隙間を挟んだ両側の前記床板の上面に架け渡し可能な大きさの上側部材と、前記隙間に挿通可能な太さの棒状で、前記下側部材と前記上側部材との一方に一端部が結合され、前記下側部材と前記上側部材との前記一方を、前記屋根梁の下面と前記床板の上面とのいずれかに当接させて他端部を前記隙間に挿入させたときに、前記他端部が前記隙間から突出可能な長さを有し、少なくとも前記他端部にねじ部が形成されたロッド部材と、前記ロッド部材の前記ねじ部に締結可能な締結部材と、を備える。
【0011】
そして、本開示の上下階高さ調整用方法は、前記隙間を挟んで水平方向に隣接する前記上層階の前記建物ユニットの床板同士の高さが異なる場合に、以下のステップを実行する上下階高さ調整用方法である。
最初のステップでは、前記隙間の上下の一端から前記ロッド部材の前記他端部を挿入して、前記他端部を前記隙間の他端から突出させる。
次のステップでは、前記ロッド部材の前記他端部に前記下側部材と前記上側部材との前記一方を装着し、さらに、前記ねじ部に前記締結部材を締結する締結力で、低い方の前記屋根梁を前記下側部材により上昇させ、前記隙間を挟む前記上層階の前記床板のうち、高い方の前記床板を前記上側部材により下降させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の上下階高さ調整方法および上下階高さ調整用治具では、上層階の建物ユニットの床板同士の高さが異なっている場合に、段差を無くし床板の高さを揃えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態1の上下階高さ調整用治具および上下階高さ調整方法を適用したユニット建物を構築する建物ユニットの骨格構造を示す斜視図である。
【図2】前記ユニット建物の防振構造を示す断面図である。
【図3】前記防振構造の構築過程を示す分解斜視図である。
【図4】前記防振構造の構築過程を示す図であって、上下階防振ジョイントのロッド部材の回転前の状態を示す斜視図である。
【図5】上前記防振構造の構築過程を示す図であって、上下階防振ジョイントのロッド部材の回転後の状態を示す斜視図である。
【図6A】第1の上下階高さ調整用治具を用いた第1の上下階高さ調整方法の実行過程を示す断面図である。
【図6B】第1の上下階高さ調整用治具を用いた第1の上下階高さ調整方法の実行過程を示す図であって、床板の上面に当材を設置した状態を示す断面図である。
【図6C】第1の上下階高さ調整用治具を用いた第1の上下階高さ調整方法の実行過程を示す図であって、ナットを締結する状態を示す断面図である。
【図7】第1の上下階高さ調整用治具を用いた第1の上下階高さ調整方法の実行過程を示す図であって、図6Cのナット締結状態を図6Aの矢印Y7の方向から見た断面図である。
【図8】第1の上下階高さ調整用治具の分解状態を示す正面図である。
【図9】第1の上下階高さ調整用治具の下側板部材を示す平面図である。
【図10】第1の上下階高さ調整用治具の上側板部材を示す平面図である。
【図11】第2の上下階高さ調整用治具の分解状態を示す正面図である。
【図12】第2の上下階高さ調整用治具の上側係止部材を示す平面図である。
【図13】第2の上下階高さ調整用治具の下側板部材を示す斜視図である。
【図14A】第2の上下階高さ調整用治具を用いた第2の上下階高さ調整方法の実行過程を示す図であって、ロッド部材を隙間に差し込んだ状態の断面図である。
【図14B】第2の上下階高さ調整用治具を用いた第2の上下階高さ調整方法の実行過程を示す図であって、ロッド部材を差し込み後に回転させた状態を示す断面図である。
【図15】第2の上下階高さ調整用治具を用いた第2の上下階高さ調整方法の実行過程を示す図であって、ロッド部材の回転過程を示す平面図である。
【図16】第2の上下階高さ調整用治具を用いた第2の上下階高さ調整方法の実行過程を示す図であって、図14Bの矢印A方向から見た断面図である。
【図17】第2の上下階高さ調整用治具を用いた第2の上下階高さ調整方法の実行過程を示す図であって、ロッド部材の廻り止めを説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(ユニット建物および建物ユニットの構成)
まず、本実施の形態1の上下階高さ調整用治具および上下階高さ調整方法を適用するユニット建物を構築する建物ユニット1について説明する。
【0016】
建物ユニット1は、図1に示すように、ボックス形のラーメン構造体である。すなわち、建物ユニット1は、矩形の四隅に配置される柱材11と、柱材11の下端同士を連結する一対の桁床大梁12aおよび一対の妻床梁12bと、柱材11上端同士を連結する一対の桁屋根大梁13aおよび一対の妻屋根梁13bとにより矩形の骨組構造体を備える。
【0017】
なお、柱材11は、角形鋼管により形成されている。また、桁床大梁12a、妻床梁12b、桁屋根大梁13a、妻屋根梁13bは、断面形状が略コ字形の溝形鋼材によって形成されている。そして、柱材11と各梁12a、12b、13a、13bとは、接合枠材14を介して溶接接合されている。
【0018】
さらに、一対の桁床大梁12a、12aの間には、複数の床小梁15が平行に架け渡されて結合されている。また、床小梁15は、取付金具15aを介して桁床大梁12aに固定されている。そして、建物ユニット1の下部の全面が、床小梁15の上方位置で床板17により覆われている。
【0019】
同様に、一対の桁屋根大梁13a、13aの間には、複数の天井根太16が平行に架け渡され、結合されている。さらに、建物ユニット1の上部の全面が、天井根太16の下方位置で天井板18により覆われている。
【0020】
上述した建物ユニット1は、工場で製作される。そして、複数の建物ユニット1を建築現場に搬送し、建物ユニット1同士を結合してユニット建物が構築される。
この場合、複数の建物ユニット1を水平方向に並べて下層階(例えば、1階)を形成し、さらに、下層階の上に、複数の建物ユニット1を載せ、建物ユニット1同士を上下方向および横方向に結合して上層階(例えば、2階)を形成する。これにより、複数階層のユニット建物を構築することができる。
【0021】
<上下階防振構造>
次に、下層階と上層階との間の防振構造について説明する。
図2は、下層階の水平方向に隣り合う建物ユニット1、1の桁屋根大梁13A、13Bと、上層階の水平方向に隣り合う建物ユニット1、1の桁床大梁12A、12Bとの間で構築される防振構造を示す。なお、図示のように、水平方向に隣り合う建物ユニット1、1の間には、隙間101が形成されている。
【0022】
この上下階防振構造は、上下階防振ジョイント2と防振プレート3とを備える。
防振プレート3は、隙間101を挟んで隣り合う桁屋根大梁13A、13Bの上面と、桁床大梁12A、12Bの下面との間で、水平方向に跨り、上下方向で介在されている。この防振プレート3は、平板状の防振部材であり、一般構造用圧延鋼材などの鋼板と粘弾性体との積層板などが使用できる。また、積層板の粘弾性体には、ゴム系、アスファルト系、シリコン系、アクリル系などの材料が使用できる。
【0023】
さらに、防振プレート3は、その幅寸法が、桁屋根大梁13A、13Bの上面および桁床大梁12A、12Bの下面を形成するフランジの幅の2倍の寸法に隙間101の幅寸法を加えた寸法の帯板状に形成されている。また、防振プレート3は、桁屋根大梁13A、13Bおよび桁床大梁12A、12Bの長手方向の中央位置を挟んで、略対称となる2か所に設置されている。
【0024】
上下階防振ジョイント2は、桁屋根大梁13A、13Bおよび桁床大梁12A、12Bの長手方向の略中央であって、一対の防振プレート3、3の間の略中央に配置されている。
【0025】
以下に、上下階防振ジョイント2について説明する。
上下階防振ジョイント2は、図3に示すように、上側部材21と下側部材22とロッド部材23とを備える。
【0026】
上側部材21は、隙間101よりも広い幅の平面視で長方形の鋼板によって形成されており、下面には一対のブチルテープ21a,21aが長手方向に分割して貼り付けられている。このブチルテープ21aは、粘着性を帯びた加硫ゴムシートで、上側部材21を桁床大梁12aの上面に密着させる機能と、振動を吸収する緩衝材としての機能とを有している。
【0027】
下側部材22は、鋼板により形成され、底板部22bと一対の補強リブ22a,22aとにより略コの字断面形状に形成されている。そして、底板部22bは、平面視で上側部材21と略同じ大きさの帯板状に形成されている。補強リブ22a、22aは、底板部22bの長辺側の両側縁を下方に向けて折り曲げて形成されている。
【0028】
さらに、底板部22bの略中央に中央孔22dが貫通して形成され、かつ、中央孔22dを挟んで底板部22bの長手方向の両端付近に一対の取付孔22e、22eが貫通して形成されている。取付孔22e、22eは、下側部材22を桁屋根大梁13A、13Bの下フランジのねじ孔にドリルねじ22cを締結する際に、これを貫通させるのに用いる。
【0029】
ロッド部材23は、丸棒状に形成され、隙間101に挿通可能であるとともに、中央孔22dに挿通可能な外径に形成され、かつ、桁床大梁12Aおよび桁屋根大梁13Aとを足し合わせた上下方向寸法よりも長い軸方向寸法を有する。そして、ロッド部材23の上端部が、上側部材21に埋め込まれて溶接で接合されており、下端部の所定の範囲には、雄ねじが形成された雄ねじ部23bが設けられている。また、中央孔22dを挿通して底板部22bから下方に突出された雄ねじ部23bに、座金23dを装着しナット23cを締結することで、上側部材21が桁床大梁12A、12Bに上方から押し付けられるようになっている。
【0030】
なお、ロッド部材23の上端部23aの上側部材21への固定位置は、上側部材21の長手方向の中央であって、長手方向に直交する幅方向では、一端の近傍に配置されている。したがって、上側部材21は、ロッド部材23を回転変位させることにより、図4に示すように、一対の桁床大梁12A、12Bの一方のみの上方に配置された状態と、図5に示すように、一対の桁床大梁12A、12Bの両方に跨って上方に配置された状態とに変位可能となっている。
【0031】
<上下階防振構造の構築手順>
次に、上下階防振構造の構築手順について説明する。
建築現場では、図3に示すように、下層階の建物ユニット1、1を隙間101を挟んで水平方向に並べて設置する。そして、下層階の建物ユニット1、1の隙間101を挟んで配置された一対の桁屋根大梁13A、13Bの上面に複数の防振プレート3、3を、長手方向に間隔を空けて設置する。
【0032】
さらに、下層階の建物ユニット1、1の上に、上層階の建物ユニット1を設置する。この上層階の建物ユニット1において、隙間101を挟んで配置される一対の建物ユニット1、1の一方の桁床大梁12Bの側面に上下階防振ジョイント2のロッド部材23を仮固定しておく。
【0033】
この仮固定は、上側部材21が、下面のブチルテープ21a、21aが桁床大梁12Bの上面(上フランジ)から上方に離隔し、かつ、上面が図3では図示を省略した床板17B(図7参照)よりも下方に配置した状態で、接着テープ23eにより接着する。
【0034】
したがって、上下階防振ジョイント2を仮固定した建物ユニット1を下層階の建物ユニット1の上に設置した際には、仮固定されたロッド部材23が、隙間101に上方から挿入され、隙間101から下層階の桁屋根大梁13A、13Bの間の下方に突出する。そして、そのロッド部材23の雄ねじ部23bに、中央孔22dを挿通させて下側部材22を装着する。続いて下側部材22を、ドリルねじ22c、22cによって桁屋根大梁13A、13Bの下フランジに固定する。さらに、座金23dとナット23cとを、ロッド部材23の下端の雄ねじ部23bに装着する。
【0035】
次に、先に設置した上層階の建物ユニット1の隣に、別の建物ユニット1を設置する。図4は、この時点での上層階の建物ユニット1、1の桁床大梁12A、12Bを、斜め上方から見た斜視図である。この時点では、上下階防振ジョイント2の上側部材21は、一方の建物ユニット1の桁床大梁12Bのみの上方に配置されている。
【0036】
上層階の建物ユニット1、1の設置後、作業者は、下層階の桁屋根大梁13A、13Bから下方に突出したロッド部材23の下端部を摘んで90度回転させ、図5に示すように、上側部材21を、一対の桁床大梁12A、12Bの両方に跨ってその上方に配置させる。
【0037】
次に、ロッド部材23を下方に引き下げ、ブチルテープ21a、21aを桁床大梁12A、12Bの上面に密着させる。その後、ナット23cを締結し、上側部材21と下側部材22とにより、上層階の一対の桁床大梁12A、12Bと、下層階の一対の桁屋根大梁13A、13Bとを上下から挟み防振プレート3、3に圧着させた状態とする。
【0038】
<上下階防振構造の作用>
上下階防振ジョイント2により、桁床大梁12A、12Bの下面と桁屋根大梁13A、13Bの上面との間隔が広がるような変形が生じにくくなり、床振動などが発生した際に防振プレート3を桁床大梁12A、12Bに密着させて機能させ続けることができる。
【0039】
したがって、上層階の建物ユニット1の床板17A、17Bの上を走ったり、物を落下させたりして鉛直荷重が床面に作用し、床小梁15や桁床大梁12A、12Bが撓んだ際には、桁床大梁12A、12Bにあっては、長手方向の略中央の変位が最も大きくなる。このような挙動に対して、上下階防振ジョイント2の上下の両部材21、22によって桁床大梁12A、12Bとその下方の桁屋根大梁13A,13Bとを挟持し、両者の上下方向の間隔を一定に抑えることができる。したがって、桁床大梁12A、12Bとその下方の桁屋根大梁13A,13Bとの長手方向の略中央に配置した防振プレート3、3を一定の形状に保ち、所定の防振性能を得ることができる。
【0040】
(上下階高さ調整用治具および上下階高さ調整方法の説明)
まず、上層階の隣り合う建物ユニット1、1の床板17A,17Bの高さの違いについて説明する。
上述したように、下層階の建物ユニット1、1の上に、上層階の建物ユニット1、1を設置した際に、水平方向に隣り合う建物ユニット1、1の高さがずれる場合がある。そして、上層階の建物ユニット1,1において、図6Aに示すように、端縁まで床板17が敷設されている場合、建物ユニット1の高さがずれると、床板17A、17B同士の間に段差が生じる。
【0041】
図6Aは、その一例を示すもので、隙間101を挟んで、図において左側の建物ユニット1a、1bが、右側の建物ユニット1c、1dよりも高い位置に設置され、建物ユニット1bの床板17Aと、建物ユニット1dの床板17Bとの間に段差が生じている。
【0042】
なお、図では、隙間101の左側に、下層階の建物ユニット1aの桁屋根大梁13Aと、上層階の建物ユニット1bの桁床大梁12Aおよび床板17Aとを示している。一方、図において、隙間101を挟んで、右側に、下層階の建物ユニット1cの桁屋根大梁13Bと、上層階の建物ユニット1dの桁床大梁12Bおよび床板17Bとを示している。
【0043】
また、図7に示すように、床板17A(17B)は、桁床大梁12A(12B)の上面に、複数の板状の桁床受材12cを介して支持されている。この桁床受材12cは、長手方向に所定の間隔を空けて複数設けられており、床板17A(17B)と桁床大梁12A(12B)との間には、空間102が設けられている。
【0044】
このように、隙間101を挟んで、両床板17A、17Bの高さが異なり段差が生じた場合、本実施の形態1では、まず、第1の上下階高さ調整用治具40を用いた第1の上下階高さ調整方法を用いて段差を無くすように調整する。
【0045】
そして、第1の上下階高さ調整用治具40を用いた第1の上下階高さ調整方法を行っても段差が無くならない場合は、さらに、第2の上下階高さ調整用治具50を用いた第2の上下階高さ調整方法を用いて段差を無くすように調整する。
【0046】
ここで、まず、第1の上下階高さ調整用治具40、第2の上下階高さ調整用治具50について説明する。
【0047】
<第1の上下階高さ調整用治具>
図8は、第1の上下階高さ調整用治具40の分解図であり、第1の上下階高さ調整用治具40は、ロッド部材41と下側板部材42と上側板部材43とワッシャ44およびナット45とを備える。
【0048】
ロッド部材41は、丸棒状で隙間101に挿通可能な外径で、上下に重なった建物ユニット1の桁屋根大梁13Aの下面から床板17の上面までの上下方向寸法に後述する作業に必要な寸法を足した軸方向寸法を有する。また、ロッド部材41の上部には、螺旋状のねじ山により形成された雄ねじ部41aが設けられている。なお、雄ねじ部41aには、ナット45が締結可能となっている。
【0049】
下側板部材42は、図9に示すように平面視で長方形を成す鋼板により形成され、中央に中央孔42aが貫通されている。そして、この中央孔42aにロッド部材41の下端部が溶接により結合されている。
【0050】
上側板部材43は、鋼板により、図10に示すように、底板部43aと、上方に立ち上げられた一対の補強リブ43b、43bとにより断面略コの字状に形成されている。そして、底板部43aの中央を貫通して貫通孔43cが形成されている。この貫通孔43cは、その内径がロッド部材41の外径よりも大径に形成されている。なお、この上側板部材43は、上下階防振ジョイント2の下側部材22と同様の形状および大きさであることから、上下階防振ジョイント2の下側部材22と共用するのが望ましい。
【0051】
<第2の上下階高さ調整用治具>
次に、第2の上下階高さ調整用治具50について説明する。
図11は、第2の上下階高さ調整用治具50の分解図であり、第2の上下階高さ調整用治具50は、ロッド部材51と上側係止部材52と下側板部材53とワッシャ54およびナット55とを備える。
【0052】
ロッド部材51は、上下階防振ジョイント2のロッド部材23と同様に、丸棒状で隙間101に挿通可能な外径寸法に形成され、下端部には、ナット55を締結可能な雄ねじ部51aが設けられている。また、ロッド部材51は、図14Aに示すように、桁屋根大梁13Aの下面から桁床大梁12Aの上面までの長さよりも長く、雄ねじ部51aを桁床大梁12Aの下面から突出させた状態で、上端部が、床板17Aの下面よりも上に出ない軸方向寸法となっている。
【0053】
上側係止部材52は、図13に示すように鋼製の角ロッド状のもので、その幅寸法は、図14Aに示すように、隙間101の幅よりも小さく、隙間101に沿って上下方向に移動可能となっている。また、上側係止部材52は、図14Bに示すように、桁床大梁12A、12Bと床板17A,17Bとの間の空間102、102に挿入可能な上下方向寸法であり、かつ、隙間101を挟んで桁床大梁12A、12Bに跨って架け渡し可能な長さを有している。そして、上側係止部材52の長手方向の中央部にロッド部材51の上端部が溶接により結合されている。
【0054】
下側板部材53は、鋼板により、図12に示すように、底板部53aと一対の補強リブ53b、53bとにより断面略コの字状に形成されている。そして、底板部53aの中央を貫通して貫通孔53cが形成されている。この貫通孔53cは、その内径がロッド部材51の外径よりも大径に形成されている。なお、下側板部材53は、上下階防振ジョイント2の下側部材22と同形状かつ同様の大きさであり、共用するのが好ましい。
【0055】
<上下階高さ調整方法の説明>
以下に、図6Aに示すように、水平方向に隣り合う建物ユニット1bの床板17Aと建物ユニット1dの床板17Bとの間に段差が生じている場合に、この段差を無くすための第1の上下階高さ調整方法と、第2の上下階高さ調整方法について説明する。なお、この上下階高さ調整方法の実施の際には、上下階防振ジョイント2は、仮締結状態とし、上下階高さ調整方法を実施して、床板17A、17Bの高さを一致させて段差を無くした後、最終的な締結(本締め)を行う。
【0056】
<第1の上下階高さ調整方法>
第1の上下階高さ調整方法は、第1の上下階高さ調整用治具40を用いた高さ調整方法である。この場合、まず、第1の上下階高さ調整用治具40のロッド部材41を、図6Aに示すように、隙間101の下方から上方へ差し込み、ロッド部材41の上端部を床板17の上に突出させる。
【0057】
なお、第1の上下階高さ調整用治具40を設置する位置は、図7に示すように、桁床大梁12Aおよび桁屋根大梁13Aの長手方向で、上下階防振ジョイント2の設置位置の近傍で、桁床受材12cと干渉しない位置とする。このとき、既に、上下階防振ジョイント2は、仮締結しているため、この上下階防振ジョイント2の下側部材22の設置位置を基準としてロッド部材41を隙間101に挿し込むことができる。
【0058】
次に、鉄板61aを、下層階の低い側の建物ユニット1cの桁屋根大梁13Bと下側板部材42との間に差し込む。さらに、アクリルテープなどの接着テープ71を用いて、第1の上下階高さ調整用治具40と鉄板61aとを桁屋根大梁13Bに仮固定する。
【0059】
次に、図6Bに示すように、上層階の床板17A、17Bから上方に突き出たロッド部材41を、水平方向に挟むようにして長板状の当材62、62を各床板17A、17Bの上に設置する。この当材62は、構造用木材であり厚さ30〜40mm程度で、長さが図7に示すように、一対の桁床受材12c、12cの上方位置に跨って配置可能な寸法であり、例えば、600mm程度である。
さらに、各当材62のうち、高い位置の当材62の上に、鉄板61bを設置する。
【0060】
次に、図6Cに示すように、ロッド部材41の上端の雄ねじ部41aに上側板部材43を、補強リブ43bを上向きにして装着する。さらに、その上から、さらにワッシャ44を装着した上で、ナット45を締め込む。このナット45の締め込みにより、上側板部材43と下側板部材42との間隔を狭めることにより、高い側の桁床大梁12A、桁屋根大梁13Aが相対的に下方に変位し、低い側の桁床大梁12B、桁屋根大梁13Bが相対的に上方に変位する。
【0061】
このナット45の締め込みは、床板17A,17Bに段差がなくなるまで行う。そして、床板17A、17Bに段差が無くなると、上述した上下階防振ジョイント2の本締結を行う。
【0062】
上下階防振ジョイント2の本締結を終えると、第1の上下階高さ調整用治具40を、当材62、62および鉄板61a、61bと共に取り外す。つまり、ナット45を緩めロッド部材41から上側板部材43を取り外し、ロッド部材41を、下側板部材42と共に、隙間101から下方に引き抜く。
【0063】
<第2の上下階高さ調整方法>
上記の第1の上下階高さ調整方法により第1の上下階高さ調整用治具40のナット45の締結を行っても床板17A、17Bの段差が解消しない場合は、さらに、第2の上下階高さ調整方法を実行する。なお、この第2の上下階高さ調整方法の実行の際には、第1の高さ調整方法で用いた第1の上下階高さ調整用治具40は、高さ調整を実施して上述の高さの矯正を行った状態を保持したままで行う。
【0064】
第2の上下階高さ調整方法は、第2の上下階高さ調整用治具50を用いた高さ調整方法である。この場合、まず、第2の上下階高さ調整用治具50の上側係止部材52の下面に両面粘着材52aを張り付け(図12参照)、この両面粘着材52aの下側の離型紙を剥がす。なお、両面粘着材52aとしては、例えば、ブチルテープを用いる。これにより、後述するように上側係止部材52を桁床大梁12A、12Bに接着した際に、振動を吸収する緩衝材として機能して防振性能を得ることができる。
【0065】
次に、第2の上下階高さ調整用治具50を、その上側係止部材52を上にして、図14Aに示すように、ロッド部材51を隙間101の下方から上方へ差し込む。このとき、上側係止部材52は、その長手方向を各大梁12A、12B、13A、13Bの長手方向に沿わせる向きとし、上側係止部材52を、隙間101に沿って上昇させる。
【0066】
なお、第2の上下階高さ調整用治具50の設置位置は、図16に示すように、桁床大梁12Aおよび桁屋根大梁13Aの長手方向で、上下階防振ジョイント2を間に挟んで、第1の上下階高さ調整用治具40とは反対側の位置で、桁床受材12cと干渉しない位置とする。
【0067】
そして、上側係止部材52を、上下方向で、図14Aに示すように、桁床大梁12A、12Bの上面よりも高く、床板17A、17Bの下面よりも低い位置に配置させる。
【0068】
次に、図15に示すように、ロッド部材51を90度回転させる(矢印Rにより示す)。したがって、上側係止部材52は、両桁床大梁12A,12Bに直交する向きとなり、桁床大梁12A、12Bと床板17A、17Bとの間の空間102に差し込まれ、両桁床大梁12A,12Bに跨って配置される。そして、ロッド部材51を下方に下げて、図14Bに示すように、上側係止部材52の下面の両面粘着材52aを両桁床大梁12A、12Bに接着させる。
【0069】
次に、図17に示す共廻り防止治具63により上側係止部材52の回転を規制した上でロッド部材51の雄ねじ部51aにナット55を締結する。
ここで、共廻り防止治具63について説明する。
共廻り防止治具63は、隙間101に差し込み可能な厚さの略長方形の板で、下端縁から上方に向けて矩形の係止溝63aが形成されている。係止溝63aは、その溝幅が上側係止部材52を挿入可能な寸法に形成されている。また、係止溝63aの深さは、図17に示す位置に配置された上側係止部材52を係止溝63aの上端に配置させた際に、共廻り防止治具63の下端を桁床大梁12A、12Bの上面よりも下方に配置させることができる深さに形成されている。なお、共廻り防止治具63は、建築現場において、ありあわせの板材により形成することができる。したがって、その全体形状は、長方形に限られるものではなく、要は、隙間101に挿入し、係止溝63aを備え、上側係止部材52の回転を規制可能であればよい。
【0070】
そこで、共廻り防止治具63の使用時には、床板17A、17Bの隙間101から下方に差し込み、図17において二点鎖線で示すように、係止溝63aの上端に上側係止部材52を配置させる。
【0071】
次に、ロッド部材51の下端部に、下方から下側板部材53を、補強リブ53bを下向きにして装着さ、さらに、ワッシャ54を装着させた後、雄ねじ部51aにナット55を装着する。そして、床板17A、17Bの間に段差がなくなるまで、ナット55を締結する。なお、このナット55の締結時に、摩擦抵抗によりロッド部材51に回転力が作用するが、このロッド部材51の回転は、上述の共廻り防止治具63と上側係止部材52とが係止されていることで規制され、確実にナット55を締結することができる。また、ナット55の締結作業を終了すると、共廻り防止治具63は、隙間101から上方に引き上げる。
【0072】
このようにして床板17A、17Bの間の段差が無くなると、第1の上下階高さ調整用治具40および第2の上下階高さ調整用治具50による桁床大梁12A,12Bと桁屋根大梁13A、13Bに対する矯正状態を維持したまま、上下階防振ジョイント2の本締結を行う。
【0073】
そして、上下階防振ジョイント2の本締結を終えると、第1の上下階高さ調整用治具40を取り外す。一方、第2の上下階高さ調整用治具50は、矯正状態のまま隙間101に残す。
【0074】
以上のように、第2の上下階高さ調整用治具50は、矯正状態を維持するため、その後、第2の上下階高さ調整用治具50を取り外す場合と比較して、より確実に床板17A,17Bの間の段差を無くすことができる。また、第2の上下階高さ調整用治具50の上側係止部材52は、床板17A、17Bの下方に配置されるため、第2の上下階高さ調整用治具50を各大梁に締結した状態で残しても、外観品質を低下させることはない。
【0075】
このように、上下階防振ジョイント2を間に挟んで、長手方向の両側に配置した第1の上下階高さ調整用治具40および第2の上下階高さ調整用治具50の締結力で、桁床大梁12A、12B同士および桁屋根大梁13A、13B同士の高さを一致させることができる。また、これにより床板17A、17Bの間の段差を無くすことができる。
【0076】
したがって、第1の上下階高さ調整用治具40と第2の上下階高さ調整用治具50との一方のみを用いた場合と比較して、より確実に段差を無くすことができる。
【0077】
また、第1の上下階高さ調整方法は、床板17A、17Bを上側から当材62、62により床板17A、17Bを直接押圧するため、床板17A、17Bに対して高い矯正力を得ることができる。つまり、両桁床大梁12A,12Bの上面と床板17A、17Bとの間に差し込むことが可能な寸法に制限されないため、床板17A,17B間の段差が大きくても、矯正することが可能である。
【0078】
そして、第1の上下階高さ調整方法は、床板17A、17Bの上面と、高さが異なる両桁屋根大梁13A、13Bの低い方(図6Aでは桁屋根大梁13B)の下面とで、締結力を加える。このため、水平方向に隣り合う床板17Aと床板17Bとの段差が大きい場合でも、上下から締結力を加えて上下の高さを矯正することができる。
【0079】
一方、第2の上下階高さ調整方法は、上側係止部材52を、床板17A、17Bと、桁床大梁12A、12Bとの間の空間102に挿入させて、両桁屋根大梁13A、13Bの上面と、両桁床大梁12A、12Bの下面とから締結力を加える。
【0080】
したがって、共廻り防止治具63の差し込みは、床上からの作業になるものの、第2の上下階高さ調整用治具50は、床下に隠れたままであり、矯正力を維持したまま仕上げることができる。よって、第1の上下階高さ調整用治具40のように、矯正後は矯正力を取り除いて上下階防振ジョイント2のみで矯正するものと比較して、矯正効果を確実に維持できる。
【0081】
(実施の形態1の効果)
以下に、実施の形態1の上下階高さ調整方法および上下階高さ調整用治具の効果を列挙する。
1)実施の形態1の上下階高さ調整方法は、四隅の柱材11と、柱材11の下端部同士を連結する桁床大梁12a、妻床梁12bと、柱材11の上端部同士を連結する桁屋根大梁13a、妻屋根梁13bとによって骨組みが形成された建物ユニット1を水平方向に隙間101を介して隣接させて形成された下層階の上に、隙間101を介して水平方向に建物ユニット1を隣接させて形成された上層階を載せて構成され、上層階の建物ユニット1b、1dでは、隙間101を挟む端部まで床板17A,17Bが設けられているユニット建物において、第1の上下階高さ調整用治具40を用いて、隙間101を介して水平方向に隣り合う建物ユニット1の高さを調整する上下階高さ調整方法である。
【0082】
そして、第1の上下階高さ調整用治具40は、下層階の隣り合う建物ユニット1a、1c間の隙間101を挟んだ両側の桁屋根大梁13A、13Bの下面に差し渡し可能な大きさの下側板部材42と、上層階の隣り合う建物ユニット1b、1d間の隙間101を挟んだ両側の床板17A、17Bの上面に架け渡し可能な大きさで貫通孔43cが形成された上側板部材43と、隙間101に挿通可能な太さの棒状で、下側板部材42に一端部が結合され、下側板部材42を桁屋根大梁13A、13Bの下面に当接させ、他端部を隙間101に挿入させたときに、他端部が床板17A、17Bの間の隙間101から突出可能な長さを有し、他端部に雄ねじ部41aが形成されたロッド部材41と、雄ねじ部41aに締結可能な締結部材としてのナット45と、を備える。
【0083】
そして、隙間101を挟んで水平方向に隣接する上層階の建物ユニット1b、1dの床板17A,17B同士の高さが異なる場合に、下記のステップを実行する。
隙間101の下端からロッド部材41を挿入して、他端部を床板17A、17Bの間の隙間101の他端から突出させるステップ。
ロッド部材41の他端部の雄ねじ部41aに上側板部材43とワッシャ44とを装着し、さらに、雄ねじ部41aにナット45を締結する締結力で、低い方の桁屋根大梁13Bを下側板部材42により上昇させ、隙間101を挟む高い方の床板17Aを上側板部材43により間接的に下降させるステップ。
【0084】
したがって、床板17A、17Bの段差の大きさに関わらず、水平方向に隣り合う桁屋根大梁13A、13B、桁床大梁12A、12B、床板17A,17Bの高さを調節し、床板17A,17Bの間の段差を低く抑えることができる。
【0085】
2)実施の形態1の上下階高さ調整方法は、ロッド部材41の他端部(雄ねじ部41a)を隙間101から上方に突出させるステップの後に、さらに、桁床大梁12A、12Bの上面に沿って所定間隔で設けられて床板17A,17Bの端部を支持する桁床受材12cの複数に跨る長さを有する一対の当材62を、隙間101を挟む両側の床板17A,17Bの上に、ロッド部材41を間に挟んで載置するステップを有する。そして、ナット45を締結するステップでは、上側板部材43を介して当材62により床板17Aを下方に押し下げる。
したがって、上側板部材43から伝達される締結力を床板17A、17Bから確実に桁床大梁12A、12Bに伝達し、高さ調整を行うことができる。
【0086】
3)実施の形態1の上下階高さ調整方法は、当材62に木製のものを用い、当材62を床板17A、17Bの上に載置するステップの実行後、さらに、両当材62、62の高い方の当材62と上側板部材43との間に、上側板部材43と当材62との接触面積よりも広い面積の鉄板61bを介在させるステップと、下側板部材42と低い方の桁屋根大梁13Bとの間に、下側板部材42と低い方の桁屋根大梁13Bとの接触面積よりも広い面積の鉄板61aを介在させるステップと、を備える。
したがって、上側板部材43から当材62への締結力の入力、および、下側板部材42から桁屋根大梁13Bへの締結力の入力を円滑に行うことができる。
【0087】
4)実施の形態1の上下階高さ調整方法は、さらに、以下のステップを実行する。
ナット45を締結するステップの実行により、隙間101を挟んで隣接する桁床大梁12A、12B同士の高さ、および、桁屋根大梁13A、13B同士の高さを略一致させた後に、桁床大梁12A、12Bの上面と桁屋根大梁13A、13Bの下面とを挟んで、桁床大梁12A、12Bと桁屋根大梁13A、13Bとを上下階防振ジョイント2により本締結するステップ。
ナット45による締結を解除して、ロッド部材41から上側板部材43およびナット45を取り外し、下側板部材42と共に、ロッド部材41を隙間101から下方に引き出して、第1の上下階高さ調整用治具40を取り外すステップ。
【0088】
したがって、建物ユニット1a〜1dの設置後であっても、隙間101を挟む、桁床大梁12A、12Bおよび桁屋根大梁13A、13Bの高さの調整が可能である。そして、矯正後は、上下階防振ジョイント2により、桁床大梁12A、12Bおよび桁屋根大梁13A、13Bを連結するため、第1の上下階高さ調整用治具40を取り外しても、矯正後の状態に維持できる。
【0089】
5)実施の形態1の上下階高さ調整方法は、第1の上下階高さ調整方法を実行して、床板17A、17Bの間の段差を解消できない場合には、第2の上下高さ調整方法を実行する。
したがって、床板17A、17Bの間の段差をより確実に無くすことができる。
【0090】
6)実施の形態1の上下階高さ調整用治具40は、四隅の柱材11と、柱材11の下端部同士を連結する桁床大梁12a、妻床梁12bと、柱材11の上端部同士を連結する桁屋根大梁13a、妻屋根梁13bとによって骨組みが形成された建物ユニット1を水平方向に隙間101を介して隣接させて形成された下層階の上に、隙間101を介して水平方向に建物ユニット1を隣接させて形成された上層階を載せて構成されるユニット建物において、隙間101を介して水平方向に隣り合う建物ユニット1の高さを調整するのに用いる。
【0091】
そして、上下階高さ調整用治具40は、下記の下側板部材42と、上側板部材43と、ロッド部材41と、ナット45とを備える。
下側板部材42は、下層階の隣り合う建物ユニット1a、1c間の隙間101を挟んだ両側の桁屋根大梁13A、13Bの下面に差し渡し可能な大きさを有する。
上側板部材43は、上層階の隣り合う建物ユニット1b、1d間の隙間101を挟んだ両側の床板17A、17Bの上面に架け渡し可能な大きさを有する。
ロッド部材41は、隙間101に挿通可能な太さの棒状で、下側板部材42に一端部が結合され、下側板部材42を、桁屋根大梁13A、13Bの下面に当接させて他端部を隙間101に挿入させたときに、他端部が隙間101から突出可能な長さを有し、少なくとも他端部に雄ねじ部41aが形成されている。
ナット45は、ロッド部材41の雄ねじ部41aに締結可能である。
【0092】
したがって、上記の第1の上下階高さ調整用治具40を用いて、実施の形態1の第1の上下階高さ調整方法を実行することができる。
【0093】
7)実施の形態1の上下階高さ調整用治具40は、
ロッド部材41は、上側板部材43と下側板部材42との間隔が、床板17A、17Bの押圧用の当材62、62を床板17A、17Bの上に載置したときの当材62の上面と桁屋根大梁13A、13Bの下面との間隔以上とすることが可能な長さを有する。
したがって、床板17A,17Bの押圧を、当材62を用いて行うことが可能となり、ナット45による締結力を効率的に床板17A、17Bおよび各大梁12A,12B、13A、13Bに伝達することが可能となる。
【0094】
以上、本開示の上下階高さ調整方法および上下階高さ調整用治具を実施の形態に基づいて説明してきた。しかし、本開示の上下階高さ調整方法および上下階高さ調整用治具の具体的な構成については、これらの実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項の要旨を逸脱しない限り、各実施の形態の組み合わせ、設計の変更や追加などは許容される。
【0095】
例えば、実施の形態では、上下階高さ調整用治具40では、下側部材、上側部材として、板状の下側板部材42、上側板部材43を示したが、これらは板状のものに限られない。すなわち、上側部材として、当材62相当の大きさのものを用いてもよい。
【0096】
また、実施の形態では、下側部材(下側板部材42)をロッド部材41に固定して上側部材(上側板部材43)をナット45の締結によりロッド部材41に沿って移動する構造の物を示したが、上下逆にしてもよい。つまり、上側部材をロッド部材に固定し、隙間の上方からロッド部材を下方に挿入し、下方から締結部材により締結して下側部材をロッド部材に対して上方に移動させるようにしてもよい。また、締結部材としては、ロッド部材のねじ部に締結可能なものであれば、ナット45に限定されない。
【0097】
また、実施の形態では、桁側の床梁と屋根梁とが上下に重なる位置に適用した例を示したが、妻側の床梁と屋根梁とに適用することも可能である。
さらに、実施の形態では、第1の上下階高さ調整方法と第2の上下階高さ調整方法とを実行したが、第1の上下階高さ調整方法のみを実行してもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 建物ユニット
2 上下階防振ジョイント(ジョイント部材)
11 柱材
12A 桁床大梁
12B 桁床大梁
12c 桁床受材
13A 桁屋根大梁
13B 桁屋根大梁
17A 床板
17B 床板
40 第1の上下階高さ調整用治具
41 ロッド部材
41a 雄ねじ部
42 下側板部材(下側部材)
43 上側板部材(上側部材)
45 ナット(締結部材)
61a 鉄板(金属製の板材)
61b 鉄板(金属製の板材)
62 当材
101 隙間

【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】