(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021046861
(43)【公開日】20210325
(54)【発明の名称】エンジン、特に圧縮比が可変かつ/又は排気量が可変であるエンジンのための伝動装置
(51)【国際特許分類】
   F01B 9/08 20060101AFI20210226BHJP
   F01B 31/14 20060101ALI20210226BHJP
   F02B 75/04 20060101ALI20210226BHJP
   F02B 75/32 20060101ALI20210226BHJP
   F02D 15/02 20060101ALI20210226BHJP
   F16H 19/04 20060101ALI20210226BHJP
   F16H 37/12 20060101ALI20210226BHJP
【FI】
   !F01B9/08
   !F01B31/14
   !F02B75/04
   !F02B75/32 A
   !F02D15/02 Z
   !F16H19/04 E
   !F16H19/04 J
   !F16H37/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】2020195936
(22)【出願日】20201126
(62)【分割の表示】2017531360の分割
【原出願日】20151209
(31)【優先権主張番号】1462389
(32)【優先日】20141212
(33)【優先権主張国】FR
(71)【出願人】
【識別番号】512297549
【氏名又は名称】エムシーイー−5 ディベロップメント
【氏名又は名称原語表記】MCE−5 DEVELOPMENT
【住所又は居所】フランス, エフ−69100 ビルールバンヌ,リュー ドゥ ラ ソア, 34
(71)【出願人】
【識別番号】501211925
【氏名又は名称】ラビー,ヴィアニー
【氏名又は名称原語表記】RABHI Vianney
【住所又は居所】フランス国 F−69006 リヨン,ケ ド セルビー 14
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ユゴン, ロドルフ
【住所又は居所】フランス, 69720 サン ボネ ド ミュール, ルー ド ラマルティーン 8
(72)【発明者】
【氏名】ビゴット, シルヴァイン
【住所又は居所】フランス, 64000 ポー, ルー ジュスタン ブラン 7
(72)【発明者】
【氏名】デュークミン, マシュー
【住所又は居所】フランス, 69120 ヴォー アン ヴラン, ルー エテル エ ジュリュ ロゼンベルグ 22
(72)【発明者】
【氏名】デロブレ, ギョーム
【住所又は居所】フランス, 69500 ブロン, ルー ド ラ パジェール 7
(72)【発明者】
【氏名】シュウェンク, ブノア
【住所又は居所】フランス, 69007 リヨン, ルー グスターヴ ナドー 15
【テーマコード(参考)】
3G092
3J062
【Fターム(参考)】
3G092AA12
3G092DD04
3G092FA11
3G092FA25
3J062AB05
3J062AB29
3J062AC07
3J062CA16
3J062CA17
3J062CG18
3J062CG66
3J062CG85
3J062CG95
(57)【要約】      (修正有)
【課題】クランクシャフトとシリンダハウジングとの膨張差の結果として、ピストンの裾部及び/又はロッドの軸受に生じる摩擦を回避又は制限すること。
【解決手段】圧縮比が可変かつ/又は排気量が可変なエンジンのための伝動装置1は、シリンダハウジング100内に、エンジンの燃焼シリンダ110内で動くことができ、かつ伝動部材3に固定された燃焼ピストン2と、伝動部材3の第1のラックと係合し、かつエンジンの燃焼ピストン2とクランクシャフト9との間の運動を伝達するギヤ5と、第1の端部でギヤ5に、第2の端部でクランクシャフト9に係合するコンロッド6と、ギヤ5に係合し、かつ制御ピストン12に固定された制御部材7とを備える。伝動装置1は、燃焼ピストン2及び伝動部材3が、主方向においてシリンダハウジング100に摺動可能に連結されていることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に圧縮比が可変でありかつ/又は排気量が可変であるエンジンのための伝動装置(1)であって、シリンダハウジング(100)内に、
前記エンジンの燃焼シリンダ(110)内で動くことができ、伝動部材(3)に固定された燃焼ピストン(2)と、
前記伝動部材(3)の第1のラックと係合し、前記エンジンの前記燃焼ピストン(2)とクランクシャフト(9)との間の運動を伝達するギヤ(5)と、
第1の端部で前記ギヤ(5)に係合し、第2の端部で前記クランクシャフト(9)に係合するコンロッド(6)と、
前記ギヤ(5)に係合し、制御ピストン(12)に固定された制御部材(7)と
を備える伝動装置(1)において、
前記燃焼ピストン(2)及び前記伝動部材(3)が、主方向において前記シリンダハウジング(100)に摺動可能にリンクされている(A)ことを特徴とする伝動装置(1)。
【請求項2】
摺動可能な前記リンク(A)が、
主方向における前記燃焼ピストン(2)と前記燃焼シリンダ(110)との間の線形環状リンク(A1)であって、前記燃焼ピストン(110)によって形成される中心を有する線形環状リンク(A1)と、
前記伝動部材(3)と前記シリンダハウジング(100)との間の前記長手方向における精密リンク(A22)及び長手方向における直線状線形リンク(A21)と、
から構成される、請求項1に記載の伝動装置(1)。
【請求項3】
前記伝動部材(3)と前記シリンダハウジング(100)との間の前記直線状線形リンク(A21)が、前記シリンダハウジング(100)のプレート(41)と前記伝動部材(3)とに接して位置するローラ(40)によって形成されている、請求項2に記載の伝動装置(1)。
【請求項4】
前記伝動部材(3)と前記シリンダハウジング(100)との間の前記精密リンク(A22)が、リブ(43)と、前記リブ(43)を受け止めるのに適した案内溝(31)とを備え、一方が前記ローラ(40)に配置され、他方が前記伝動部材(3)に配置されている、請求項3に記載の伝動装置(1)。
【請求項5】
前記ギヤ(5)と前記コンロッドとの間の前記リンク(B)が、前記長手方向における環状線形リンクを備え、
前記ギヤ(5)と前記伝動部材(3)との間の前記リンク(C)が、主方向における環状線形リンクを備え、
前記ギヤ(5)と前記制御部材(7)との間の前記リンク(D)が、主方向における環状線形リンクを備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の伝動装置(1)。
【請求項6】
前記ギヤ(5)が中心穴(53)を有し、孔(50)が、伝動シャフト(62)によりコンロッドアイ(61)を配置するために開いており、
前記ギヤ(5)と前記コンロッド(6)との間の前記環状線形リンク(B)が、
前記伝動シャフト(62)において前記コンロッドが並進運動するための、前記ギヤ(5)の前記中心穴(53)の内面と、前記コンロッド(61)の側面との間の空間と、
前記中心穴(53)において前記コンロッド(6)が旋回するための、前記コンロッドアイ孔(61)の円形の外形と
によって得られる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の伝動装置(1)。
【請求項7】
前記ギヤ(5)と前記伝動部材(3)との間の前記環状線形リンク(C)が、前記伝動部材(3)の軌道(30)に接触している前記ギヤ(5)のロールバンド(55)をそれぞれ備え、前記ロールバンド(55)及び前記軌道(30)の張り出し部及びU字形状部が、互いに係合している、請求項5又は6に記載の伝動装置(1)。
【請求項8】
前記ギヤ(5)と前記制御部材(7)との間の前記環状線形リンク(D)が、前記制御部材(7)の軌道(70)に接触している前記ギヤ(5)のロールバンド(55)をそれぞれ備え、前記ロールバンド(55)及び前記軌道(70)の張り出し部及びU字形状部が、互いに係合している、請求項5〜7のいずれか一項に記載の伝動装置(1)。
【請求項9】
前記制御ピストン(12)と前記シリンダハウジング(100)との間の前記リンクが、前記主方向における環状線形リンク(E2、E’2)であって、前記制御ピストン(12)によって形成される中心を有する環状線形リンク(E2、E’2)を含む、請求項5〜8のいずれか一項に記載の伝動装置(1)。
【請求項10】
前記制御部材(7)と前記シリンダハウジング(100)との間の前記リンクが、前記長手方向における直線状線形リンク(E1)を備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の伝動装置(1)。
【請求項11】
前記制御部材(7)と前記シリンダハウジング(100)との間の前記直線状線形リンク(E1)が、前記制御部材(7)の軸受表面と前記シリンダハウジング(100)の表面との接触によって提供され、一方の表面が円筒状で長手方向軸線を有し、他方の表面が平坦である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の伝動装置(1)。
【請求項12】
前記制御部材(7)と前記シリンダハウジング(100)との間の前記リンクが、前記主方向における環状線形リンク(E’1)を備える、請求項10に記載の伝動装置(1)。
【請求項13】
前記制御部材(7)と前記シリンダハウジング(100)との間の前記環状線形リンク(E’1)が、前記シリンダハウジング(100)の合わせ穴に収まる球面部分から構成される本体(91)によって提供され、前記本体(91)が、前記球面部分とは反対の面に、前記制御部材の溝又はタブとそれぞれ係合するタブ又は溝を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の伝動装置(1)。
【請求項14】
前記シリンダハウジング(100)が、ランニングクリアランスを補償するための押圧装置(90)を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の伝動装置(1)。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン、特に圧縮比が可変かつ/又は排気量が可変なエンジンのための伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、欧州特許第1407125号明細書、仏国特許第2867515号明細書、又は仏国特許第2810696号明細書から知られている。その装置は、シリンダハウジング内に、
エンジンのシリンダ内で動くことができ、かつ伝動部材に固定された燃焼ピストンと、
伝動部材の第1のラックと係合し、エンジンの燃焼ピストンとクランクシャフトとの間の運動を伝達するギヤと、
第1の端部でギヤに係合し、第2の端部でクランクシャフトに係合するコンロッドと
を備える。
【0003】
また、ギヤに係合する制御部材により、エンジン内のギヤの位置を調整し、シリンダにおけるピストンのストロークの終点を移動させることが可能になる。したがって、エンジンは、可変な圧縮比、及び必要に応じて可変な排気量を有する。
【0004】
シリンダハウジングの要素は、エンジンの性能を落とすことなくエンジンの全重量を最適化するために、互いに異なる材料から作られていてもよい。したがって、鋼鉄のクランクシャフトが選ばれ使用されることが多く、一方でアルミニウムから作られたシリンダハウジングが選択されることが多い。この場合、エンジン稼働中のエンジン部品が加熱された結果、部品の様々な材料間の膨張差により、伝動装置の可動部材が互いに対して動くようになる。
【0005】
したがって、エンジンの稼働中、伝動装置の可動部材は、元の望ましい設計位置から逸脱している場合がある釣り合いの位置に位置することになる。この釣り合いの位置は、最新の知られている伝動装置では制御されない。この釣り合いの位置は、伝動装置を構成する様々な可動部材間のリンクの性格によって課される自由の度合い及びブロックの度合いに由来するものである。この釣り合いの位置は、制御されない場合、可動部材の構成部分における過度の摩耗につながる恐れがあり、稼働中の騒音の発生源になる恐れもある。いくつかの安定した釣り合いの位置が存在する場合がある。それらの位置では、可動部材が、影響を受ける外乱の性格に従って位置する可能性があり、それらの位置は、可動部材を可動部材の設計位置から移動させる。
【0006】
図1a及び図1bは、従来技術の圧縮比が可変なエンジンにおける伝動装置のいくつかの可動部材の設計位置及び釣り合いの位置をそれぞれ概略的に示している。
【0007】
クランクシャフト9は、図1a及び図1bでは、シリンダa、シリンダb、シリンダcと定められた3本のシリンダを有するシリンダハウジング100の軸受に配置されている。各シリンダでは、燃焼ピストン2a、2b、2cが、伝動部材3a、3b、3cに固定されている。コンロッド6a、6b、6cが、ギヤ5a、5b、5cのそれぞれと、クランクシャフト9とに連結されている。
【0008】
鋼鉄で作られたクランクシャフトは、アルミニウムで作られたシリンダハウジングより膨張しない。したがって、コンロッドが関連付けられたクランクシャフトのクランクピンは、シリンダのそれぞれと完璧には整列しない。したがって、シリンダa、シリンダbに関連付けられた可動部材が、図1aの設計位置から逸脱した釣り合いの位置に位置していることが図1bから見て取れる。図1aでは、同じシリンダ組立体の可動部材が、互いに対して、シリンダの主軸線に平行に整列している。シリンダcは、設計上の位置にある。
【0009】
この釣り合いの位置が制御されないことにより、特に、図1bに見ることができるように特に強い摩擦を受けるコンロッドの軸受のレベルI及びレベルIIと、ピストンの裾部とにおいて、可動部材の摩耗が加速することになる。摩擦は一般に、エンジンの効率及び/又は伝達される力を大幅に低下させる恐れがある。
【0010】
説明した膨張差の現象に加えて、他の現象により、伝動装置の可動部材を設計上の位置とは異なる釣り合いの位置に配置することにつながる狂いが引き起こされる場合がある。この現象は、例えば部材の摩耗、部材の負荷による変形、又は過度のランニングクリアランスの存在である可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、伝動装置が狂いの影響を受ける場合に、可動部材によって占められる稼働位置を制御するために、エンジンの伝動システムのいくつかの可動部材間におけるリンクの性格を決定することである。
【0012】
本発明は特に、クランクシャフトとシリンダハウジングとの膨張差の結果として、ピストンの裾部及び/又はロッドの軸受に生じる摩擦を回避又は制限することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目標を達成するために、本発明の目的は、圧縮比が可変かつ/又は排気量が可変であるエンジンのための伝動装置であって、シリンダハウジング内に、
エンジンの燃焼シリンダ内で動くことができ、かつ伝動部材に固定された燃焼ピストンと、
伝動部材の第1のラックと係合し、かつエンジンの燃焼ピストンとクランクシャフトとの間の運動を伝達するギヤと、
第1の端部でギヤに、第2の端部でクランクシャフトに係合するコンロッドと、
ギヤに係合し、かつ制御ピストンに固定された制御部材と
を備える伝動装置を提供することである。
【0014】
本発明によれば、伝動装置は、燃焼ピストン及び伝動部材が、主方向においてシリンダハウジングに摺動可能にリンクないしは連結されていることを特徴とする。
【0015】
したがって、燃焼ピストンの裾部で摩擦が生じることが、狂いがある場合でさえ、ピストンの稼働位置を完璧に制御することによって回避又は制限される。
【0016】
ギヤとコンロッドとの間のリンクは、長手方向における環状線形リンクからなり、ギヤと伝動部材との間のリンクは、主方向における環状線形リンクからなり、ギヤと制御部材との間のリンクは、主方向における環状線形リンクからなることが有効である。
【0017】
したがって、ギヤは、エンジンの長手方向において伝動部材と整列して配置され得る。コンロッドは、長手方向に動くことができ、クランクシャフトの膨張差の結果である狂い等を調整することができる。したがって、コンロッドの軸受における摩擦及び摩耗が、回避又は低減される。
【0018】
制御ピストンとシリンダハウジングとの間のリンクは、主方向における環状線形リンクであって、制御ピストンによって形成される中心を有する環状線形リンクからなることが好ましい。
【0019】
制御部材及び制御ピストンにより、ギヤとシリンダハウジングとの間の運動力学的なリンクを閉じることが可能になる。このようなリンクにより、コンロッドに対するギヤの主軸線に沿った角度位置を改善することができ、したがってギヤとコンロッドとの間、特にコンロッドの軸受における摩擦をよりよく制御することにつながる。
【0020】
第1の実施形態によれば、制御部材の回転運動の制御を向上させるために、制御部材とシリンダハウジングとの間のリンクは、長手方向における直線状線形リンクを備える。この第1の実施形態の代替的な解決策では、制御部材とシリンダハウジングとの間のリンクは、主方向における環状線形リンクを含む。
【0021】
単一で又は組み合わせて用いられる本発明の他の有効でありかつ非制限的な特性によれば、
摺動リンクは、
主方向における燃焼ピストンと燃焼シリンダとの間の環状線形リンクであって、燃焼ピストンによって形成される中心を有する環状線形リンクと、
伝動部材とシリンダハウジングとの間の長手方向における精密リンク及び長手方向における直線状線形リンクと
から構成される。
【0022】
伝動部材とシリンダハウジングとの間の直線状線形リンクは、シリンダハウジングのプレートと伝動部材とに接して位置するローラによって提供される。
【0023】
伝動部材とシリンダハウジングとの間の精密リンクは、リブと、リブを受けるのに適した案内溝とを備え、一方がローラに配置され、他方が伝動部材に配置されている。
【0024】
ギヤが中心穴を有し、孔が、伝動シャフトによりコンロッドアイを配置するために、ギヤとコンロッドとの間の環状線形リンクは、
伝動シャフトにおいてコンロッドが並進運動することを可能にする、ギヤの中心穴の内面と、コンロッドアイの側面との間の空間と、
中心穴においてコンロッドが旋回するための、コンロッドアイ孔の円形の外形と
によって得られる。
【0025】
ギヤと伝動部材との間の環状線形リンクは、伝動部材の軌道に接触しているギヤのロールバンドをそれぞれ備え、ロールバンド及び軌道の張り出し部及びU字形状部が、互いに係合している。
【0026】
ギヤと制御部材との間の環状線形リンクは、制御部材の軌道に接触しているギヤのロールバンドをそれぞれ備え、ロールバンド及び軌道の張り出し部及びU字形状部が、互いに係合している。
【0027】
制御部材とシリンダハウジングとの間の直線状線形リンクは、制御部材の軸受表面とシリンダハウジングの表面との接触によって提供され、一方の表面が円筒状で長手方向軸線を有し、他方の表面が平坦である。
【0028】
代替的な手段によれば、制御部材とシリンダハウジングとの間の環状線形リンクは、シリンダハウジングの合わせ穴に収まる球面部分から構成される本体によって提供され、本体(91)が、球面部分とは反対の面に、制御部材の溝又はタブとそれぞれ係合するタブ又は溝を有する。
【0029】
シリンダハウジングは、ランニングクリアランスを補償するための押圧装置を有する。
【0030】
本発明は、添付の図を参照しながら、特定の限定的ではない実施形態についての以下の説明を読む場合によりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1a】従来技術のエンジンにおけるいくつかの可動部材の設計上の位置を示す概略図である。
【図1b】従来技術のエンジンにおけるいくつかの可動部材の釣り合いの位置を示す概略図である。
【図2】圧縮比が可変であるエンジンの基本的な断面図である。
【図3a】本発明の特定の例示的な実施態様による伝動装置の、いくつかの要素の斜視分解図である。
【図3b】本発明の特定の例示的な実施態様による伝動装置の、いくつかの要素の別の斜視分解図である。
【図3c】本発明の特定の例示的な実施態様による伝動装置の、いくつかの要素の側面図である。
【図3d】本発明の特定の例示的な実施態様による伝動装置のいくつかの要素の、図3cの線F−Fに沿った断面図である。
【図4】本発明の特定の例示的な実施態様におけるギヤの斜視分解図である。
【図5】本発明の特定の例示的な実施態様におけるギヤの別の斜視分解図である。
【図6】本発明の特定の例示的な実施態様におけるコンロッドの斜視図である。
【図7】本発明の特定の例示的な実施態様による制御部材及び制御ピストンの線E−Eに沿った断面図である。
【図7bis】本発明の別の特定の例示的な実施態様による制御部材及び制御ピストンの線C−Cに沿った断面図である。
【図8】本発明によるエンジンのいくつかの稼働要素における釣り合いの位置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の説明では、図を参照しながら、慣習により以下の定義が使用される。
即ち、長手方向とは、クランクシャフト9の主軸線によって定められる方向のことであり、
主方向とは、燃焼シリンダ2の主軸線によって定められる方向のことであり、
横断方向とは、上記の2つの方向に対して垂直な方向によって定められる方向のことである。
【0033】
また本出願では「狂い」とは、エンジンが稼働する際に、設計上の位置とは異なる釣り合いの位置に可動部材を配置する傾向があるすべての現象を意味する。狂いとは、例えば網羅的にではないが、部材の正確な設計上の寸法から逸脱した寸法につながる部材の摩耗もしくは製造公差、又はそのような部材間の膨張差、部材の負荷による変形、もしくは過度のランニングクリアランスの存在に関連する運動である場合がある。
【0034】
圧縮比が可変かつ/又は排気量が可変なエンジンの基本的な断面図である図2では、シリンダハウジング100が少なくとも1本の燃焼シリンダ110を含み、燃焼シリンダ110内では燃焼ピストン2が案内され並進して動き、伝動装置1を介してクランクシャフト9を回転させる。
【0035】
伝動装置は、燃焼ピストン2に固定された伝動部材3を備える。伝動部材3は、シリンダハウジング100の壁によって支持される第1の接続装置4にまず係合し、他方ではギヤ5の第1の面に係合している。
【0036】
伝動部材3は、伝動部材3の片面に大ラックを有し、大ラックの歯は、ギヤ5の歯と係合している。
【0037】
ギヤ5は、伝動シャフト62を介してコンロッド6の第1の端部に接続されている。コンロッド6の第2の端部は、運動を伝達するためにクランクシャフト9に接続されている。
【0038】
ギヤ5は、伝動部材3とは反対側の第2の面で、第2の接続装置4’と係合しながら主方向に動くことのできる制御部材7のラックと係合している。
【0039】
制御部材7は、制御ピストン12から構成されるシリンダを備えた制御装置によって制御される。制御ピストン12は、シリンダハウジング100の制御シリンダ112内で案内される。制御装置により、主方向において制御部材7が確実に並進運動する。
【0040】
稼働中、燃焼ピストン2と、燃焼ピストン2と一体化した伝動部材3との並進運動が、燃焼シリンダ110内での混合物の燃焼によって開始され、維持される。このような運動は、燃焼ピストン2と燃焼シリンダ110との間に存在するリンクと、連結装置4とによって案内される。運動は、ギヤ5とコンロッド6とによって形成される組立体に伝達され、クランクシャフト9を動かし回転させる。制御部材7の位置は、制御装置により主方向に調整される。制御部材7の運動は、この主方向において第2の接続装置4’によって案内される。制御装置7の運動によりギヤ5が旋回し、これにより燃焼シリンダ110内の燃焼ピストン2におけるストロークの終点が移動する結果になる。したがってエンジンの圧縮比及び/又は容積が変化する。
【0041】
本発明によれば、いくつかの列挙された可動部材間のリンクの性格は、伝動装置1が狂いの影響を受ける場合に、そのような部材によって占められる稼働位置を制御するように定められる。
【0042】
「稼働位置を制御する」とは、リンクの性格を定める自由の度合い及びブロックの度合いにより、過度の稼働摩擦につながらない位置に向かって設計上の理想的な場所に、可動部材の部品が動きやすくなることを意味する。本出願の範囲内で、自由の度合い又はそのような運動は、この度合いの自由又はこの運動が、必要とされる最小のクリアランスを超える可能性がない程度に「ロックされる」と見なされる。例えば、互いに異なる度合いの機能的自由を有する2つの部品間の並進運動を停止させるために、0.04mm〜0.2mmの最大クリアランスが、ロックされるべき並進の方向において許容される。
【0043】
各リンクが研究されなければならないのみではなく、最も好ましい組み合わせを決定するために、自由の度合い及び/又はブロックの度合いのそれぞれ1つに関して、各リンク間の相互作用もまた研究されなければならないため、このような分析は容易ではないことに留意されたい。いくつかの度合いの複数のブロックが部品の制約を強め、これにより部品の摩耗を助長することにつながる恐れがあることにも留意されたい。反対に、(各部材の期待される機能性に対して)過度な度合いの自由が、本出願の導入部分で述べられたように、狂いの影響を受ける場合、装置の誤作動につながる恐れがあることにも留意されたい。
【0044】
したがって、本出願の発明者らによってもたらされた典型、及び徹底的な研究は、説明された伝動装置1のいくつかの主要なリンクが精密に決定されるべきであることを示している。これらの主要なリンクとは即ち、
燃焼ピストン2と伝動部材3とによって形成された組立体と、シリンダハウジング100との間のリンクと、
ギヤ5とコンロッド6との間のリンクと、
ギヤ5と伝動部材3との間のリンクと、
ギヤ5と制御部材7との間のリンクと
のことである。
【0045】
これらのリンクのそれぞれにおける正確な性格については、本明細書の以下の段落で詳細に開示する。
【0046】
燃焼ピストン2と伝動部材3とによって形成された組立体と、シリンダハウジング100との間のリンクA
本発明によれば、燃焼ピストン2と伝動部材3との組立体は、主方向においてシリンダハウジング100に摺動可能にリンクないしは連結される(A)。
【0047】
それ自体知られているように、この摺動リンクにより、5段階のブロックが提供され、1つの並進運動が可能になる。
【0048】
したがって、本発明によれば、主方向における並進とは異なる伝動部材3のいかなる運動もブロックされるはずである。言い換えれば、連結装置4が、主方向における並進とは異なる伝動部材3のいかなる運動もブロックするように構成されている。このことは、より詳細には、シリンダの内壁で摩擦を生じさせる可能性がある、伝動部材3及び燃焼ピストン2のこのシリンダ110内での旋回運動のブロックに関係している。
【0049】
リンクの部品間の摩擦を最小化するために、このような摺動リンクAは、
燃焼ピストン2と燃焼シリンダ110との間の環状線形リンクA1であって、リンクの中心が、主方向においてピストン2によって形成されているリンクA1と、
伝動部材3とシリンダハウジング100との間の長手方向における精密リンクA22と組み合わされた、長手方向における直線状線形リンクA21と
に分解されることが好ましい。
【0050】
環状線形リンクA1は、燃焼ピストン2の長手方向及び横断方向における2つの並進を阻止し、すべての他の運動は自由である。これにより、燃焼ピストン2の接触面と燃焼シリンダ110の接触面との間の摩擦が確実に最小化する。
【0051】
直線状線形リンクA21は、横断方向における伝動部材3の並進と、燃焼シリンダ110の主軸線に沿った伝動部材3の回転とを阻止する。
【0052】
したがって、精密リンクA22により、長手方向における伝動部材3の並進を阻止する、摺動リンクの5段階目のブロックが提供される。
【0053】
これにより確実に、シリンダハウジング100に対する、燃焼ピストン2と伝動部材3とによって形成された組立体の主方向における並進運動のみが、自由であり続ける。したがって、燃焼ピストンの裾部とシリンダとの摩擦が防止又は制限される。このような部材の可能性のある他の5段階の自由がブロックされ、したがって、部品に対するいかなる歪みも回避される。この歪みは、過度の摩擦及び/もしくは騒音を伴う稼働、又は部品の摩耗を生じさせる可能性がある状況を引き起こす場合がある。
【0054】
ギヤ5と伝動部材3との間のリンクC
ギヤ5が伝動部材3に形成された大ラックと係合していることを思い出す必要がある。この点において、ギヤ5と伝動部材3との間のリンクCは、第1のラックピニオンリンクを備える。
【0055】
このラックピニオンリンクは、直線状線形リンクと定義することでき、ギヤの歯は、歯のピッチ円を通るギヤの軸線と実質的に平行な線によって表され、ラックの歯は、一般的に20°の歯の圧力角に沿って向けられた平面によって表される。このリンクは、
ラックの歯を定める平面における2段階の並進の自由と、
線の方向によって定められる軸線に関する自由、及びリンクを特徴付ける平面に対する直角によって定められる他の自由の、2段階の回転の自由と
を有する。
【0056】
本発明によれば、ギヤ5と伝動装置3との間のリンクCは、主方向における環状線形リンクをさらに含む。
【0057】
リンクのこの組み合わせにより、結果として、ギヤ5と伝動部材3との間の長手方向及び横断方向における対応する並進運動がブロックされ、伝動部材3に対するギヤ5の長手方向軸線及び主軸線に沿った回転運動と、主軸線に沿った並進運動とが可能になる。
【0058】
本発明によれば、ギヤ5は、伝動部材3の大ラックに接した状態で中央に維持されなければならず、これによりギヤ5又は制御部材7において重大な制約が生じることがない。ギヤ5及び/又は伝動部材3は、互いに対して中央に維持されるように構成されている。
【0059】
当技術分野から知られている解決策では、伝動部材3に接した状態でのギヤ5の長手方向の摺動運動が可能であったことに留意されたい。このために、ギヤ5の歯の幅は、この摺動運動を可能にするために小さくされていた。
【0060】
本発明によれば、リンクCによってこの並進運動をブロックすることにより、ギヤ5の歯の幅を最適化することができ、したがって伝動装置1によって伝達され得る負荷を最大化することができる。したがって、エンジンの性能が、部品の寸法全体が変更されていない割に向上する(最良のエンジントルク及びより高度な比率)。
【0061】
ギヤ5と制御部材7との間のリンクD
伝動装置はまた、燃焼シリンダ110におけるピストンのストロークの終点を調整するための制御装置7を備える。
【0062】
ギヤ5と制御部材7との間のリンクDは、主方向における環状線形リンクを含む。制御部材7は、ギヤ5と係合する大ラックを有し、このリンクもまた、ラックピニオンリンクを含む。
【0063】
したがってこのリンクの場所は、上で見たリンクCと完全に同様である。したがってギヤ5及び/又は制御部材7もまた、互いに対して中央に維持されるように構成されている。
【0064】
したがってリンクのこの組み合わせにより、ギヤ5と制御部材7との間の長手方向及び横断方向における対応する並進運動がブロックされ、伝動部材7に対するギヤ5の長手方向軸線及び主軸線に沿った回転運動と、主軸線に沿った並進運動とが可能になる。
【0065】
したがって、問題は、制約がギヤ5に課され、前述のリンクがギヤ5を保持する平面からギヤ5を動かすようになることを防止することである。
【0066】
リンクA、リンクC、及びリンクDの組み合わせにより、伝動部材3、ギヤ5、及び制御部材7を整列させて、シリンダハウジング100に対する所定の位置に配置することが可能になる。
【0067】
ギヤ5とコンロッド6との間のリンクB
本発明によれば、ギヤ5とコンロッド6との間のリンクBは、長手方向における環状線形リンクを備える。
【0068】
上で見たように、環状線形リンクは、2つの並進運動を阻止する。この場合、問題は、ギヤ5に対するコンロッド6の主方向及び横断方向における並進を阻止することである。すべての他の運動は自由である。
【0069】
ギヤに対するコンロッドの回転は、ギヤの軸線の主方向における並進運動を、長手方向軸線に沿ったクランクシャフト9の回転運動に変換するために必要とされる。
【0070】
ギヤ5に対する長手方向におけるコンロッドアイ61の並進により、シリンダハウジング100に対するクランクシャフト9の膨張差の結果として、ロッドヘッド64が動かされる場合でさえ、コンロッド6を燃焼シリンダ110の軸線に対して平行に保持することが可能になる。伝動装置1におけるリンク6の位置の釣り合いによりまた、コンロッドの軸受の摩耗を防止又は制限することが可能になり、動力の伝達が確実に最大化される。
【0071】
リンクBにより、長手方向軸線、横断方向軸線、及び主軸線を中心とした、コンロッド6とギヤ5との間の自由な回転運動が可能になる。(横断方向軸線及び主軸線を中心とした)これらの最後の2つの回転により、例えば燃焼シリンダ110とクランクシャフト9との間に存在する可能性がある垂直度に関する欠陥が補償され、この場合にはまた、伝動装置1に生じる摩擦が低減される。
【0072】
より一般的には、ギヤ5とコンロッド6との間の環状線形リンクBにより、第1の平面における、伝動装置1の「上部」可動部材(燃焼ピストン2、伝動部材3、ギヤ5、及び制御部材7)の配置を、第1の平面とは異なり、かつ第1の平面に対して実質的に平行な第2の平面における、装置の「下部」可動部材(コンロッド6、クランクシャフト9)の配置から分けて考えることが可能になる。
【0073】
列挙されたリンクA、リンクB、リンクC、及びリンクDの組み合わせにより、エンジンが稼働しており、かつ狂いの影響を受けずに独立している場合に、伝動部材3及び制御部材7と共にギヤ5が整列しやすくなる。ギヤ5とコンロッド6との間のリンクは、上に見られるように、ギヤ5が長手方向軸線に沿ってクランクシャフト9の運動によって駆動されるのを防止するのに十分自由である。
【0074】
言い換えれば、説明された伝動装置1の可動部材はすべて、シリンダハウジング100の壁に関連して長手方向軸線に沿って配置されており、従来技術における説明された解決策でのように、コンロッドを介してクランクシャフト9の位置に対して配置されているものではない。
【0075】
制御部材7とシリンダハウジング100との間のリンクE
制御部材7とシリンダハウジング100との間のリンクEは、リンクEの下部に、長手方向における直線状線形リンクE1を備える。接続要素4’は、このリンクを提供するように構成されている。
【0076】
このリンクは、一方ではシリンダハウジング100に対して制御部材7を維持し、他方では制御部材7の主軸線を中心とした、即ち上に定められた主方向におけるこの部材の回転を防止することを可能にする、2段階のブロックを有する。
【0077】
このリンクによりまた、伝動部材7の主方向におけるエンジンが稼働するのに必要とされる並進運動を、自由に行われるようにしておくことが可能になる。
【0078】
横断方向において可動部材間に存在する可能性がある幾何学的欠陥を緩和するために、リンクE1は、例えば欧州特許第1740810号明細書、欧州特許第1979591号明細書、又は2014年10月13日付けの仏国特許出願公開第14/59791号明細書において説明されているような、ランニングクリアランス補償システムによって支持されてもよい。
【0079】
上で見たように、制御部材7は、制御シリンダ112内で案内される制御ピストン12に固定されている。リンクEはまた、環状で線形の性格を有し、かつ主方向における制御ピストン12によって形成される中心を有する、制御ピストン12と制御シリンダ112との間のリンクE2を備える。
【0080】
しかし、所定の比率調整のためには、即ち制御ピストン12の位置が制御シリンダ112内に固定されている場合には、このリンクE2では、主方向における1段階の並進の自由がブロックされており、このことがリンクE2を単純なボールジョイントに格下げしている。
【0081】
この構成では、制御部材7の先端を通る回転軸線を中心とした横断方向における、シリンダハウジング100に対する制御部材7の回転運動が保たれる。この運動により、伝動装置の稼働中に伝動装置において強まる狂いを吸収することができる。この狂いは、伝動装置の機械的効率を低下させる恐れがある。
【0082】
開示されたリンクA、リンクC、及びリンクDと組み合わせたリンクE1及びリンクE2の組み合わせにより、制御部材7と制御ピストン12とによって形成された組立体と、シリンダハウジング100との間の摺動リンクが確実なものになる。
【0083】
制御部材7とシリンダハウジング100との間のリンクE’
本発明を実施するための好ましい実施形態の変形形態によれば、制御部材7とシリンダハウジング100との間のリンクE’は、リンクE’の下部に、主方向における環状線形リンクE’1を備える。連結要素4は、この実施形態では、このようなリンクを提供するように構成されている。
【0084】
このリンクは、一方ではシリンダハウジング100に対して制御部材7を維持し、他方では長手方向における制御部材7の下側部分の並進を防止することを可能にする、2段階のブロックを有する。
【0085】
このリンクによりまた、制御部材7の主方向における、エンジンを稼働するのに必要とされる並進運動と、主軸線を中心とした制御部材の回転とが自由に維持されることが可能になる。
【0086】
変形形態Eと同様に、リンクE’1は、ランニングクリアランス補償システムによって支持されてもよい。
【0087】
リンクE’はまた、環状で線形の性格と、主方向において制御ピストン12によって形成される中心とを有する、制御ピストン12と制御シリンダ112との間のリンクE’2を備える。
【0088】
しかし、変形形態Eと同様に、所定の比率調整のために、このリンクE’2では、主方向における1段階の並進の自由がブロックされており、このことがリンクE’2を単純なボールジョイントに格下げしている。
【0089】
この構成では、主方向における制御部材7の先端を通る回転軸線を中心とした、シリンダハウジング100に対する制御部材7の回転運動が保たれる。この運動により、伝動装置の機械的効率を低下させる恐れがある狂いを吸収することができる。
【0090】
開示されたリンクA、リンクC、及びリンクDと組み合わせたリンクE’1、リンクE’2の組み合わせにより、制御部材7と制御ピストン12とによって形成された組立体と、シリンダハウジング100との間の摺動リンクが確実なものになる。
【0091】
本発明の例示的な実施態様
図3a、図3b、図3c、及び図3dは、本発明による伝動装置1の特定の例示的な実施態様を示している。
【0092】
燃焼ピストン2は、案内裾23を有する。案内裾23の高さが燃焼シリンダ110の直径よりも低い場合のように、燃焼ピストン2と燃焼シリンダ110との間のリンクは、燃焼ピストン2と燃焼シリンダ110との間の環状線形リンクA1を形成する。
【0093】
燃焼ピストン2は、それ自体がよく知られている上部圧縮リング、圧縮リング、及びスクレーパリングを受け止めるための溝を有する厚みのあるディスクから作られる場合がある。
【0094】
このリンクの品質は、案内裾23にわずかに張り出した形状を付与し、これにより接触面で生じる摩擦の強度を制限することで向上させることが可能である。
【0095】
伝動部材3とシリンダハウジング100の壁100との間のリンクは、接続装置4によって提供される。接続装置4は、好ましい実施形態において、直線状線形リンクA21及び精密リンクA22を提供する。
【0096】
接続装置4は、筒体によって構成されるローラ40を含み、このローラ40に接した状態で、プレート41の表面48、表面38のそれぞれが支持され、シリンダハウジング100及び伝動部材3に固定されている。ローラ40は、長手方向に直線状線形リンクA21を提供する。燃焼ピストン2の運動とローラ40の運動とを同期させるために、ローラ40は、ローラ40の端部のそれぞれにギヤ44を備えてもよく、ギヤ44は、プレート41の垂直な縁部において、プレート41と関連付けられたラック46に係合している。ローラの第1のピニオン44及び/又は第2のピニオン44はまた、伝動部材3のラック37と係合してもよい。精密リンクA22は、ローラ40の筒体42に案内リブ43を設けることによって形成され得る。この案内リブ43は、2つのピニオン44の間における筒体の中間に配置されてもよい。案内リブ43は、一方ではプレート41に形成された第1の垂直な溝49に収容され、かつ伝動部材3の表面38に形成された第2の垂直な溝31に収容されるように設計されている。
【0097】
代替的な実施形態では、ローラ40の案内リブ43を溝に置き換え、かつ溝49、溝31を2つの案内リブに置き換えることができる。
【0098】
図4及び図5により詳細に示されるギヤ5は、一体に組み立てられる2つのハーフギヤRI及びR2から構成されてもよい。これらのハーフギヤは中心穴53を有し、中心穴53に向かって、伝動シャフト62によりコンロッド61を配置するための孔50が開いている。
【0099】
ギヤ5とコンロッド6との間の環状線形リンクBは、中心穴の内面とコンロッドアイ61の側面との間の空間によって設けられ、伝動軸線62におけるコンロッドの並進運動を可能にする。
【0100】
環状線形リンクBはまた、伝動軸線62を受け止めるコンロッドアイ61の孔63に円形の外形を付与することによって設けられる。この外形により、主方向の回転軸線及び横断方向の回転軸線に沿ったコンロッド6の旋回が可能になる。コンロッド6は図6に示されている。
【0101】
ギヤ51は、伝動部材3の大ラック35の歯34に係合する第1の歯を備える。ギヤ51は、制御部材7の大ラック73と係合する第2の歯52を備える。ギヤ5と、制御部材7及び伝動部材3のそれぞれとの間のこの構成により、上に開示されたラックピニオンリンクが形成される。
【0102】
本発明によれば、このような構成はまた、ギヤ5を大ラック35、大ラック73に接した状態で中央に保つことを可能にする環状線形リンクC、環状線形リンクDを有する。このさらなるリンクは、従来技術の知られている解決策には存在していなかったものである。歯51、歯52のそれぞれは、それぞれの歯の中間に、ギヤ5のピッチ円と同軸の溝54を有する。溝54のそれぞれの内側に、張り出した外形のロールバンド55が固定されている。ロールバンド55は、例えばトロイダル形状のロールバンドであってもよい。伝動部材3及び制御部材7のそれぞれは、軌道30、軌道70をそれぞれ有し、軌道30、軌道70のU字形状は、図3dに見ることができるように、ロールバンド55の張り出し部分のU字形状と合致する。軌道30、軌道70のU字形状は、この張り出し部分に接触してこの張り出し部分を受け止めるように設計されている。
【0103】
代替的な解決策では、伝動部材3の軌道30及び制御部材7の軌道70が張り出し、ギヤ5のロールバンド55がこれに合致するU字形状を有してもよい。
【0104】
図4及び図5では、孔50に配置されるギヤ5の旋回軸線は、ギヤ5のピッチ円の中心に位置している。この構成により、制御部材7のみにより、エンジンの圧縮比を制御することが可能になる。しかし、本発明の範囲に留まりつつ、燃焼ピストン2の運動力学を変化させ、これによりエンジンの排気量の制御を達成するために、ギヤ5のピッチ円の中心における旋回軸線をずらすことも可能である。
【0105】
図7及び図7bisに示されるように、制御要素7は、制御ピストン12に固定されている。制御シリンダ112の内面に接触する制御ピストン12の一部が、張り出した外形を有する場合があり、この部分が、環状線形リンクE2を形成する。
【0106】
これらの図では、シリンダハウジング100はまた、押圧装置90を有し、押圧装置90により、エンジンの可動部材間に存在する可能性があるランニングクリアランスを補償することが可能になる。本発明の範囲内で、押圧装置90はシリンダハウジング100の必須の部分であることが想定されている。
【0107】
制御部材7は、シリンダハウジング100の押圧装置90に接続されている。
【0108】
図7は、このリンクの実施態様の好ましい解決策に対応して、長手方向における直線状線形リンクE1の例示的な実施形態を示している。この図では、制御部材7は、押圧装置90のピストンの平坦な表面と接触する、長手方向軸線に沿った円筒状の支持表面を有する。図示されていない代替的な解決策では、長手方向軸線に沿った円筒状の表面が、押圧装置のピストンによって支持され、制御部材7に形成される平坦な表面と接触するようになる場合がある。
【0109】
図7bisは、環状線形リンクE1’の例示的な実施形態を示している。この実施形態は、このリンクの実施態様における好ましい解決策の変形形態に対応する。球面部分から構成される本体91は、主軸線、横断方向軸線、及び長手方向軸線の3つの軸線に沿って回転運動可能なボールジョイントを提供するために、押圧装置90の合わせ穴に係合する。制御部材7は、大ラックの歯とは反対側の制御部材7の面に溝を有する。溝において、本体91のタブが、本体91の球面部分の反対側で摺動することができる。これにより、長手方向軸線に沿った並進がブロックされ、もちろん、横断方向軸線に沿った並進も、押圧装置100のシリンダハウジングに接触する制御部材7によってブロックされる。もちろん、本体91に溝を設け、かつ制御部材7にタブを設けることも好ましい可能性がある。
【0110】
図8は、一例として説明された伝動装置1のいくつかの可動部材が釣り合う位置を概略的に示す。従来技術によるエンジンの場合の図1bに示された要素によってとられる位置とは反対に、エンジンシリンダ組立体のそれぞれに関して、
燃焼ピストン2a、2b、2c、及び伝動部材3a、3b、3cが主方向に向けられており、したがって燃焼シリンダ110との摩擦が制限されることと、
ギヤ5a、5b、5cが、伝動部材3a、3b、3cに接した状態で中央に配置されていることと、
コンロッド6a、6b、6cもまた主方向に向けられており、したがって効率的に力が伝達され、コンロッドの軸受における摩耗が制限されることと
に留意されたい。
【0111】
この図8では、伝動装置1の図示された部材が、この特定の例における膨張に関係した上部可動部材と下部可動部材との間の変位によって引き起こされる狂いにもかかわらず、シリンダハウジング100に対して定められた向きを保っていることが見て取れる。
【0112】
もちろん、本発明は説明された例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、変形形態を本発明の実施形態に適用することが可能である。


【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7bis】
【図8】
【手続補正書】
【提出日】20201203
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮比が可変でありかつ/又は排気量が可変であるエンジンのための伝動装置(1)であって、シリンダハウジング(100)内に、
前記エンジンの燃焼シリンダ(110)内で主方向に沿って動くことができ、伝動部材(3)に固定された燃焼ピストン(2)であって、前記伝動部材は、前記シリンダハウジング(100)の壁によって支持される第1の接続装置(4)と係合し、前記主方向における並進以外の前記伝動部材の運動をブロックする、燃焼ピストン(2)と、
前記伝動部材(3)のラック(35)と係合し、制御ピストン(12)に固定された制御部材(7)のラックと係合するギヤ(5)であって、前記ギヤが中心穴(53)を有し、孔(50)が、コンロッドアイ(61)を配置するために開いている、ギヤ(5)と、
第1の端部で前記ギヤ(5)の中心穴に係合し、第2の端部で前記エンジンのクランクシャフト(9)にリンクされているコンロッド(6)であって、長手方向を定める、コンロッド(6)と、
を備える伝動装置(1)において、
前記ギヤ(5)、前記伝動部材(3)、前記コンロッド(6)は、互いに整列されて前記シリンダハウジング(100)に対する所定の位置に維持され、前記コンロッド(6)は前記長手方向に並進することを特徴とする伝動装置(1)。
【請求項2】
前記第1の接続装置は、前記シリンダハウジングのプレートと前記伝動部材とに接して位置するローラによって提供される、請求項1に記載の伝動装置。
【請求項3】
前記伝動部材および前記シリンダハウジングは、リブと、前記リブを受けるのに適した案内溝を備え、一方が前記ローラに配置され、他方が前記伝動部材に配置される、請求項2に記載の伝動装置。
【請求項4】
前記ギヤが前記中心穴の内面と前記コンロッドアイの側面との間の空間を呈し、前記長手方向の並進を可能にする、請求項1に記載の伝動装置。
【請求項5】
前記ロッドヘッドが円形のロッドアイ孔を呈し、前記ギヤの
【請求項6】
前記ギヤのロールバンドは、前記伝動部材の軌道に接触し、前記ロールバンド及び前記軌道の張り出し部及びU字形状部が互いに係合している、請求項1に記載の伝動装置。
【請求項7】
前記ギヤのロールバンドは、前記制御部材の軌道に接触し、前記ロールバンド及び前記軌道の張り出し部及びU字形状部が互いに係合している、請求項1に記載の伝動装置。
【請求項8】
前記制御部材の軸受表面は、前記シリンダハウジングの表面と接触し、一方の表面が円筒状で長手方向軸線を有し、他方の表面が平坦である、請求項1に記載の伝動装置。
【請求項9】
前記シリンダハウジングは、前記シリンダハウジングの合わせ穴に接触する球面部分から構成される本体を有し、前記球面部分の反対の面に、前記制御部材の溝又はタブとそれぞれ係合するタブ又は溝を有する、請求項1に記載の伝動装置。
【請求項10】
前記シリンダハウジングは、ランニングクリアランスを補償するための押圧装置を有する、請求項1に記載の伝動装置。
【外国語明細書】
2021046861000001.pdf