(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021047305
(43)【公開日】20210325
(54)【発明の名称】低誘電感光性樹脂組成物、及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/033 20060101AFI20210226BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20210226BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20210226BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20210226BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20210226BHJP
【FI】
   !G03F7/033
   !G03F7/004 512
   !G03F7/004 501
   !G03F7/038 501
   !G03F7/031
   !H05K3/28 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】28
(21)【出願番号】2019170108
(22)【出願日】20190919
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区有楽町一丁目1番2号
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】渋井 智史
【住所又は居所】東京都千代田区有楽町一丁目1番2号 旭化成株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真由紀
【住所又は居所】東京都千代田区有楽町一丁目1番2号 旭化成株式会社内
【テーマコード(参考)】
2H225
5E314
【Fターム(参考)】
2H225AC19
2H225AC21
2H225AC31
2H225AC34
2H225AC35
2H225AC54
2H225AC63
2H225AD06
2H225AD14
2H225AD24
2H225AE07P
2H225AE08P
2H225AE15P
2H225AM13P
2H225AM23P
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2H225AM62P
2H225AM82P
2H225AM90P
2H225AM94P
2H225AN47P
2H225AN62P
2H225AN79P
2H225AN80P
2H225AN82P
2H225BA09P
2H225BA22P
2H225BA38P
2H225CA13
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
5E314AA24
5E314AA27
5E314CC15
5E314DD07
5E314FF06
5E314GG03
5E314GG11
(57)【要約】
【課題】低誘電性であり、現像性が良好であり、かつ導体上への高い密着性と絶縁信頼性を両立した感光性樹脂組成物の提供。
【解決手段】カルボキシル基含有アルカリ可溶性樹脂を含む高周波回路基板の絶縁膜形成用の感光性樹脂組成物が、次の(1)〜(4)を満たす:
(1)該感光性樹脂組成物の硬化物が、1GHz〜28GHzの範囲において、誘電正接(Df)が0.01未満である。
(2)該感光性樹脂組成物の硬化物が、1GHz〜28GHzの範囲において、高周波になるにつれて、誘電正接が低下する。
(3)該感光性樹脂組成物から成る膜厚25μmの感光性樹脂積層体が、1%炭酸ナトリウム現像液で、70μm以下の円孔パターンが解像する。
(4)赤外分光法による赤外吸収スペクトルにおいて、芳香族由来のスペクトルピーク強度(I)と、脂肪族由来のスペクトルピーク強度(II)とのピーク強度比I/IIが2.9以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波回路基板の絶縁膜形成用の感光性樹脂組成物であって、アルカリ可溶性樹脂を含み、かつ下記の条件(1)〜(4):
(1)該感光性樹脂組成物の硬化物が、1GHz〜28GHzの範囲において、誘電正接(Df)が0.0100未満である;
(2)該感光性樹脂組成物の硬化物が、1GHz〜28GHzの範囲において、高周波になるにつれて、誘電正接が低下する;
(3)該感光性樹脂組成物から成る厚み25μmの感光性樹脂層を含む積層体が、1質量%炭酸ナトリウム現像液で、70μm以下の円孔パターンを解像する;及び
(4)該感光性樹脂組成物から成る厚み8μmの感光性樹脂層を含む積層体の赤外分光法による赤外吸収スペクトルにおいて、波数700cm−1付近のスペクトルのピーク強度(I)と、波数1450cm−1付近のスペクトルのピーク強度(II)とのピーク強度比(I/II)が、2.9以上である;
を満たすことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記感光性樹脂組成物が、以下の成分:
(A)アルカリ可溶性樹脂;
(B)光重合開始剤;
(C)少なくとも1つエチレン性不飽和基を有する重合性化合物;
(D)架橋剤;及び
(E)少なくとも2つのアルコール性水酸基を有する化合物
を含み、前記(A)成分であるアルカリ可溶性樹脂が:
(A−1)芳香族環を有する構造単位を70質量%以上有し、かつアクリル酸の構造単位を20質量%以上有する樹脂と、
(A−2)前記(A−1)成分以外の光架橋性を有するカルボキシル基含有樹脂;
を含むことを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)成分が、窒素原子を含有する化合物である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)成分が、ブロックイソシアネートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(E)成分が、芳香族基をさらに有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(F)リン原子を有し、23℃で固体状である難燃剤をさらに含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)成分が、オキシムエステルである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
高周波回路基板の絶縁膜形成用の転写フィルムであって、
仮支持体と、
前記仮支持体の上に設けられた、請求項1〜7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層と、
を備える積層体である、転写フィルム。
【請求項9】
前記高周波回路基板が、プリント配線板である、請求項8に記載の転写フィルム。
【請求項10】
前記高周波回路基板が、フレキシブルプリント配線板(FPC)である、請求項9に記載の転写フィルム。
【請求項11】
基板上に、請求項8〜10のいずれか1項に記載の転写フィルムをラミネートし、露光処理及び/又は加熱処理して得られた硬化膜。
【請求項12】
高周波回路基板の絶縁膜形成用の転写フィルムであって、
仮支持体と、
前記仮支持体の上に設けられた、感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層と、
を備え、
前記感光性樹脂組成物が、以下の成分:
(A)アルカリ可溶性樹脂;
(B)光重合開始剤;
(C)少なくとも1つエチレン性不飽和基を有する重合性化合物;
(D)架橋剤;及び
(E)少なくとも2つのアルコール性水酸基を有する化合物
を含み、前記(A)成分であるアルカリ可溶性樹脂が:
(A−1)芳香族環を有する構造単位を70質量%以上有し、かつアクリル酸の構造単位を20質量%以上有する樹脂と、
(A−2)前記(A−1)成分以外の光架橋性を有するカルボキシル基含有樹脂と、
を含むことを特徴とする
積層体である、転写フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、積層体、及び硬化膜に関し、より詳しくは高速無線通信用のモジュールに好適な感光性樹脂組成物、積層体及び硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のモバイル端末機器の高性能化及びネットワーク技術の進歩に伴い、世界で使用される情報量が、爆発的に増加しており、情報通信で使用する電気信号は、高速・大容量伝送が可能である高周波数へシフトしてきている。現在の無線通信では、IEEE802.11規格が整備されており、2.4GHz帯の電波を使用し、11Mbpsの伝送速度を達成しているIEEE802.11bが基準となっている。使用する電子情報量の増大とともに更なる高速化が進められ、5GHz帯の電波を使用したIEEE802.11n又はIEEE802.11ac等も規格化されてきた。近年では、全てのモノをつなぐIoT(Internet оf Things)という考え方から、従来以上の無線通信の高速化を図る必要があり、3GHz以上の周波数を使用した第5世代通信(5G)、又はより広い周波数帯域幅を確保し易い準ミリ波帯(20GHz〜30GHz)〜ミリ波帯(30GHz以上)の超高周波帯での通信への移行を余儀なくされている。
【0003】
このような通信の変化に伴い、使用されるプリント配線基板において、高周波信号の伝送又は処理を行う際に課題となる伝送損失を低減可能な低誘電材料(例えば、低誘電率、低誘電正接などを有する材料)に対する要求が高まってきている。また、高周波電流が導体を流れる際、導体内の相互インダクタンスによって導体の表面近傍に電流が多く流れるため、導体表面の粗度が大きく影響する。導体粗度が小さくなると導体上への密着性が低下するという問題が生じる。
【0004】
このような高速無線通信用のモジュールでは、伝送損失を小さくするだけではなく、モジュール内に組み込まれているデバイスの信頼性を満たすことが非常に重要である。長期信頼性の観点からは、金属配線を絶縁材料で保護することが一般的であり、信頼性を向上させるための要求特性は、様々であり、例えば、密着性又は低透湿性、また寸法安定等が挙げられる。絶縁材料については、ポリイミド又はエポキシ樹脂といった材料が層間絶縁樹脂又はカバーレイとして用いられている。この絶縁材料には、非感光性のタイプと感光現像性のタイプが存在しており、近年では、生産性の観点から、感光現像性が必要とされるケースが、見られるようになってきている。例えば、感光現像性を有する低誘電材料という観点から、特許文献1〜3が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−068242号公報
【特許文献2】特開2018−021978号公報
【特許文献3】特表2017−525785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の硬化性樹脂組成物としては、無機フィラーを多量に用いた感光現像性組成物を提案している。特許文献1は、無機フィラーを多量に用いながら感光現像性又は密着性を維持することで低誘電正接の改善について言及しているが、測定周波数は1GHzであり、その改善は十分ではなく、また絶縁信頼性に関するデータが記載されていない。
【0007】
特許文献2に記載のソルダーレジスト組成物としては、エポキシ樹脂と活性エステル樹脂を用いた感光現像性組成物を提案している。特許文献2は、活性エステル樹脂を用いることによって、エポキシ基の開環反応後に発生するヒドロキシル基をエステル基へ変え、感光現像性を損なうことなく、密着性又は低誘電正接の改善について言及しているが、測定周波数は1GHzであり、その改善は十分ではなく、また絶縁信頼性に関するデータが記載されていない。
【0008】
特許文献3に記載の光架橋フルオロポリマーを含む保護層については、光架橋可能なフッ素樹脂を提案している。特許文献3は、フッ素樹脂を光架橋させることで、パターニングが可能であり、かつフッ素樹脂の有する低吸水性又は低誘電正接を有する保護層の形成が可能であることを言及しており、その測定周波数は5GHzであり、特許文献1,2と比較し高周波である。しかしながら、特許文献3には、誘電正接の値としては有意に低い値を示せてはおらず、また絶縁信頼性に関するデータが記載されていない。
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、低誘電(すなわち、低誘電率、又は低誘電正接)であり、良好な現像性を有し、かつ導体上への高い密着性と絶縁信頼性を両立した感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、カルボキシル基含有アルカリ可溶性樹脂を含む樹脂組成物の赤外線吸収スペクトルを特定し、それを用いて形成される硬化膜又は積層体について、周波数と誘電正接の関係、及び現像液の円孔パターンを特定することで、低誘電であり、現像性が良好であり、かつ導体上への密着性と絶縁信頼性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
高周波回路基板の絶縁膜形成用の感光性樹脂組成物であって、アルカリ可溶性樹脂を含み、かつ下記の条件(1)〜(4):
(1)該感光性樹脂組成物の硬化物が、1GHz〜28GHzの範囲において、誘電正接(Df)が0.0100未満である;
(2)該感光性樹脂組成物の硬化物が、1GHz〜28GHzの範囲において、高周波になるにつれて、誘電正接が低下する;
(3)該感光性樹脂組成物から成る厚み25μmの感光性樹脂層を含む積層体が、1質量%炭酸ナトリウム現像液で、70μm以下の円孔パターンを解像する;及び
(4)該感光性樹脂組成物から成る厚み8μmの感光性樹脂層を含む積層体の赤外分光法による赤外吸収スペクトルにおいて、波数700cm−1付近のスペクトルのピーク強度(I)と、波数1450cm−1付近のスペクトルのピーク強度(II)とのピーク強度比(I/II)が、2.9以上である;
を満たすことを特徴とする感光性樹脂組成物。
[2]
前記感光性樹脂組成物が、以下の成分:
(A)アルカリ可溶性樹脂;
(B)光重合開始剤;
(C)少なくとも1つエチレン性不飽和基を有する重合性化合物;
(D)架橋剤;及び
(E)少なくとも2つのアルコール性水酸基を有する化合物
を含み、前記(A)成分であるアルカリ可溶性樹脂が:
(A−1)芳香族環を有する構造単位を70質量%以上有し、かつアクリル酸の構造単位を20質量%以上有する樹脂と、
(A−2)前記(A−1)成分以外の光架橋性を有するカルボキシル基含有樹脂;
を含むことを特徴とする項目1に記載の感光性樹脂組成物。
[3]
前記(D)成分が、窒素原子を含有する化合物である、項目1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
[4]
前記(D)成分が、ブロックイソシアネートである、項目1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5]
前記(E)成分が、芳香族基をさらに有する、項目1〜4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6]
(F)リン原子を有し、23℃で固体状である難燃剤をさらに含有する、項目1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[7]
前記(B)成分が、オキシムエステルである、項目1〜6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[8]
高周波回路基板の絶縁膜形成用の転写フィルムであって、
仮支持体と、
前記仮支持体の上に設けられた、項目1〜7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物から成る感光性樹脂層と、
を備える積層体である、転写フィルム。
[9]
前記高周波回路基板が、プリント配線板である、項目8に記載の転写フィルム。
[10]
前記高周波回路基板が、フレキシブルプリント配線板(FPC)である、項目9に記載の転写フィルム。
[11]
基板上に、項目8〜10のいずれかに記載の転写フィルムをラミネートし、露光処理及び/又は加熱処理して得られた硬化膜。
[12]
高周波回路基板の絶縁膜形成用の転写フィルムであって、
仮支持体と、
前記仮支持体の上に設けられた、感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層と、
を備え、
前記感光性樹脂組成物が、以下の成分:
(A)アルカリ可溶性樹脂;
(B)光重合開始剤;
(C)少なくとも1つエチレン性不飽和基を有する重合性化合物;
(D)架橋剤;及び
(E)少なくとも2つのアルコール性水酸基を有する化合物
を含み、前記(A)成分であるアルカリ可溶性樹脂が:
(A−1)芳香族環を有する構造単位を70質量%以上有し、かつアクリル酸の構造単位を20質量%以上有する樹脂と、
(A−2)前記(A−1)成分以外の光架橋性を有するカルボキシル基含有樹脂と、
を含むことを特徴とする
積層体である、転写フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低誘電であり、良好な現像性を有し、かつ導体上への高い密着性と絶縁信頼性に優れ、ひいては5G通信等の高速通信技術の電子部品に好適な感光性樹脂組成物及び積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
[樹脂組成物]
まず、本実施の形態に係る樹脂組成物について説明する。
本発明の樹脂組成物は、高周波回路基板の絶縁膜用の感光性樹脂組成物であって、アルカリ可溶性樹脂を含み、かつ下記の条件(1)〜(4)を満たすことを特徴とする感光性樹脂組成物である。
(1)該感光性樹脂組成物の硬化物が、1GHz〜28GHzの範囲において、誘電正接(Df)が0.0100未満である。
(2)該感光性樹脂組成物の硬化物が、1GHz〜28GHzの範囲において、高周波になるにつれて、誘電正接が低下する。
(3)該感光性樹脂組成物から成る厚み25μmの感光性樹脂層を含む積層体が、1質量%炭酸ナトリウム現像液で、70μm以下の円孔パターンを解像する。
(4)該感光性樹脂組成物から成る厚み8μmの感光性樹脂層を含む積層体の赤外分光法による赤外吸収スペクトルにおいて、芳香族由来の波数700cm−1付近のスペクトルのピーク強度(I)と、脂肪族由来の波数1450cm−1付近のスペクトルのピーク強度(II)と、のピーク強度比(I/II)が2.9以上である。
【0015】
条件(1)及び(2)は、本実施の形態において、現像性、密着性及び絶縁信頼性とのバランスを取ることができる誘電正接(Df)の指標として見出された。条件(1)については、低誘電性と現像性と密着性と絶縁信頼性のバランスを取るという観点から、Df≦0.0099又はDf≦0.0098が好ましい。Dfの下限値は、本技術分野において技術常識から明らかであり、例えば、0を超えることができ、0.001以上又は0.002以上であることができる。本明細書では、1GHz〜28GHzにおいて、所定の値X(GHz)に対して、Xより大きい任意のGHzで測定されるDfが、X(GHz)で測定されたDfより低ければ、条件(2)を満たすものとする。条件(1)及び(2)の合否は、実施例の項目「5.誘電率、及び誘電正接の評価」に従って判定されることができる。
【0016】
条件(3)は、本実施の形態において、低誘電性、密着性及び絶縁信頼性とのバランスを取ることができる現像性の指標として見出された。条件(3)の合否は、実施例の項目「2.現像性評価」に従って判定されることができる。
【0017】
条件(4)については、赤外分光法(IR)による赤外吸収スペクトルの400cm−1〜4000cm−1の波数領域では、波数700cm−1付近のスペクトルは、概ね芳香族に由来し、そして波数1450cm−1付近のスペクトルは、概ね脂肪族に由来する。本明細書では、波数に関する用語「付近」は、±5cm−1を意味する。低誘電性、現像性、密着性及び絶縁信頼性を備える感光性樹脂組成物及びそれを含む積層体の構成が、ピーク強度比(I/II)≧2.9により特定される。I/IIの上限値は、本技術分野の技術常識から明らかであり、例えば、4.5以下、又は4.0以下であることができる。条件(4)の合否は、実施例の項目「6.赤外分光測定」に従って判定されることができる。
【0018】
感光性樹脂組成物の具体的な組成の例としては、以下の成分:
(A)アルカリ可溶性樹脂、但し、(A)成分であるアルカリ可溶性樹脂が:
(A−1)芳香族環を有する構造単位を70質量%以上有し、かつアクリル酸を20質量%以上有する樹脂と、
(A−2)上記(A−1)成分以外の光架橋性を有するカルボキシル基含有樹脂と、
を含む;
(B)光重合開始剤;
(C)重合性化合物;
(D)架橋剤;及び
(E)少なくとも2つのアルコール性水酸基を有する化合物;
を含むことができる。
【0019】
本実施の形態に係る感光性樹脂組成物は、所望により、(F)難燃剤、(G)防錆剤、又は(A)〜(G)成分以外の成分を含んでよい。
【0020】
このような感光性樹脂組成物は、低誘電であり、良好な現像性、及び導体上への高い密着性と優れた絶縁信頼性を実現することができ、高周波回路基板の絶縁膜用の感光性樹脂組成物として特に好適である。
【0021】
ここで、高周波回路基板とは、周波数が1GHz以上の伝送信号を送るための回路基板のことを言う。また、好ましくは伝送信号の周波数が3GHz以上、より好ましくは5GHz以上、より好ましくは8GHz以上、より好ましくは10GHz以上、より好ましくは15GHz以上、より好ましくは18GHz以上、より好ましくは20GHz以上、より好ましくは30GHz以上、より好ましくは38GHz以上、より好ましくは40GHz以上、より好ましくは45GHz以上、より好ましくは48GHz以上、より好ましくは50GHz以上、より好ましくは55GHz以上、より好ましくは58GHz以上である。伝送信号の周波数としては、特に制限はないが、100GHz以下、90GHz以下、80GHz以下、70GHz以下、60GHz以下、50GHz以下、40GHz以下、30GHz以下、20GHz以下、10GHz以下、又は8GHz以下であってよい。本発明において周波数の上限値と下限値は任意に組み合わせることができるものとする。
【0022】
本実施の形態に係る感光性樹脂組成物を構成する各成分について、以下に具体的に説明する。
【0023】
<(A)アルカリ可溶性樹脂>
本実施の形態に係る(A)アルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基を含有する高分子体、又はフェノール性水酸基を含有する高分子体のことであり、その例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、等の共重合体、又はエポキシ樹脂に不飽和カルボン酸化合物を反応させ、さらに多塩基酸無水物を反応させた酸変性エポキシ樹脂、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体等が挙げられる。
【0024】
(A)アルカリ可溶性樹脂のうち、(A−1)は、芳香族環を有する構造単位を70質量%以上有し、かつアクリル酸の構造単位を20質量%以上有する樹脂である。芳香族環を有する構造単位の例としては、スチレン、及びスチレン誘導体等が挙げられる。スチレン誘導体とは、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−クロロスチレン、4−(クロロメチル)スチレン、4−ビニル安息香酸等が挙げられる。共重合体の例としては、既に説明した(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド構成単位に加えて、それらの構成単位と共重合可能な他のモノマーを構成単位として含有していてもよい。他のモノマーとしては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0025】
(A)アルカリ可溶性樹脂のうち、(A−2)成分は、上記で説明された(A−1)成分以外の光架橋性を有するカルボキシル基含有樹脂であれば、特に制限はない。光架橋性を有する反応性基としてはエチレン性不飽和基等が挙げられ、具体的な樹脂としては、(メタ)アクリル酸にグリシジルメタクリレート等を反応させたアクリル樹脂、又はエポキシ樹脂に不飽和カルボン酸化合物を反応させ、さらに多塩基酸無水物を反応させた酸変性エポキシ樹脂(例えば、酸変性ビフェニル型エポキシアクリレート、日本化薬株式会社から入手可能な製品名KAYARAD「ZCR−1797」又は「ZCR−1797H」などである)等が挙げられる。
【0026】
これらの共重合体の中でも、絶縁信頼性と現像性の観点から、(A−2)成分、すなわち(A−1)成分以外の光架橋性を有するカルボキシル基含有樹脂は、酸変性エポキシ樹脂を含むことが好ましい。これにより、硬化前の良好な現像性と硬化後の優れた絶縁信頼性と高い密着性が得られる。
【0027】
(A)アルカリ可溶性樹脂が芳香族構造を有することで、感光性樹脂積層体の硬化後の膜密度が高くなり、絶縁信頼性が向上すると考えられる。芳香族構造は、例えば、置換基を有してもよいフェニル基、フェニレン基、ビフェニル基、ビフェニレン基等、又はビスフェノール構造、及びフルオレン構造等が挙げられる。
【0028】
(A)アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、限定されるものではないが、(A−1)樹脂、(A−2)樹脂ともに2,000以上100,000以下であることが好ましく、4,000以上70,000以下がより好ましく、6,000以上40,000以下がさらに好ましい。(A)アルカリ可溶性高分子の重量平均分子量が2,000以上であれば、硬化膜の機械物性が良好であり、100,000以下であれば、現像性が良好である。現像性の観点からは、重量平均分子量40,000以下が好ましい。重量平均分子量の測定は、実施例に記載の条件に設定された日本分光(株)製ゲルパーミエ−ションクロマトグラフィー(GPC)を用いて行われる。得られた重量平均分子量はポリスチレン換算値となる。
【0029】
絶縁信頼性の観点からは、(A)アルカリ可溶性樹脂中の芳香族構造の比率は高い方が好ましいと考えられるが、現像性の観点からは高すぎると現像性が悪化するため、アルカリ可溶性高分子の酸当量(g/mol)は、280〜860であることが好ましい。酸当量は、絶縁信頼性の観点から、280以上であることが好ましく、現像性の観点から860以下であることが好ましい。酸当量は、防錆性と現像性のバランスの観点から、300〜580であることがより好ましく、340〜500であることが特に好ましい。
【0030】
(A)アルカリ可溶性樹脂に含まれる(A−1)成分のガラス転移温度(Tg)は、絶縁信頼性の観点から、70℃以上であることが好ましく、80℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましい。環状構造又は芳香族構造を導入することでガラス転移温度(Tg)は高くなる。ガラス転移温度(Tg)が70℃以上であることで、高温環境下での硬化膜の軟化を防ぎ、より高い膜密度を保つことが出来るため、絶縁信頼性が向上すると考えられる。
【0031】
本発明における(A)アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、下記FOXの式:
【数1】
{式中、Tgは共重合体のTgを表す。Tg、Tg、…、Tg、…、Tgは各ホモポリマーのTg(K)を表す。W、W、…、W、…、Wは各モノマーの質量%を表す。}で算出する。
【0032】
樹脂組成物中の(A)アルカリ可溶性樹脂の含有量は、樹脂組成物の質量を基準として、30質量%〜70質量%であり、誘電特性と絶縁信頼性の観点から、30質量%〜60質量%であることが好ましく、密着性の観点から、30質量%〜50質量%であることが更に好ましい。(A)アルカリ可溶性樹脂の含有量が30質量%〜70質量%の範囲内であれば、良好な解像性と密着性が得られる。
【0033】
<(B)光重合開始剤>
本実施の形態に係る(B)光重合開始剤とは、活性光線によりラジカルを発生し、エチレン性不飽和基含有化合物等を重合することができる化合物である。
【0034】
(B)光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N,N’,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等の芳香族ケトン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(BASFジャパン(株)製、Irgacure Oxe02)、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−3−シクロペンチルプロパン−1,2−ジオン−2−(o−ベンゾイルオキシム)(上州強力電子材料(株)製、PBG305)、1,2−プロパンジオン,3−シクロヘキシル−1−[9−エチル−6−(2−フラニルカルボニル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,2−(O−アセチルオキシム)(日興ケムテック(株)製TR−PBG−326、製品名)、3−シクロヘキシル−1−(6−(2−(ベンゾイルオキシイミノ)オクタノイル)−9−エチル−9H−カルバゾール−3−イル)−プロパン−1,2−ジオン−2−(O−ベンゾイルオキシム)(日興ケムテック(株)製TR−PBG−371、製品名)等のオキシムエステル化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン等のN−フェニルグリシン誘導体;クマリン化合物;オキサゾール化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。(B)光重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
これらの中でも、絶縁信頼性の観点から、オキシムエステル化合物が好ましく、オキシムエステル化合物の中でも、波長365nmのモル吸光係数が高い化合物がより好ましい。波長365nmにて高い吸光係数を有するオキシム開始剤を用いることで、i線露光にて高感度な保護膜を得ることが出来る。
【0036】
具体的なオキシムエステル化合物としては、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(BASFジャパン(株)製、Irgacure Oxe02)、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−3−シクロペンチルプロパン−1,2−ジオン−2−(o−ベンゾイルオキシム)(日興ケムテック(株)製TR−PBG−305、製品名)、及び1,2−プロパンジオン,3−シクロヘキシル−1−[9−エチル−6−(2−フラニルカルボニル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,2−(O−アセチルオキシム)(日興ケムテック(株)製TR−PBG−326、製品名)、(7−ニトロ−9,9−ジプロピル−9H−フルオレン−2−イル)(オルトトリル)メタノン O−アセチルオキシム(ダイトーケミックス(株)製DFI−020)、1,8−オクタンジオン,1,8−ビス[9−(2−エチルヘキシル)−6ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル]−,1,8−ビス(O−アセチルオキシム)((株)ADEKA社製アデカアークルズNCI−831、製品名)、3−シクロヘキシル−1−(6−(2−(ベンゾイルオキシイミノ)オクタノイル)−9−エチル−9H−カルバゾール−3−イル)−プロパン−1,2−ジオン−2−(O−ベンゾイルオキシム)(日興ケムテック(株)製TR−PBG−371、製品名)等を挙げることができる。
【0037】
(B)光重合開始剤の感光樹脂組成物中の含有量は、感光性樹脂組成物の質量を基準として、0.1質量%〜10質量%であり、感度と解像性の観点から、0.3質量%〜5質量%であることがより好ましい。(B)光重合開始剤の含有量が0.1質量%〜10質量%の範囲内であれば、光感度が充分となるとともに、活性光線を照射する際に組成物の表面での吸収が増大して内部の光硬化が不充分となること、可視光透過率が低下すること等の不具合を抑制することができる。
【0038】
<(C)エチレン性不飽和基を有する重合性化合物>
本実施の形態に係る(C)少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、その構造中に少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有することによって重合性を有する化合物である。エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、(C1)分子中に重合性基を3つ以上有する化合物を含むことが好ましく、更に、(C2)分子中に重合性基を1つ有する化合物を含むことがより好ましい。また、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、上記以外の化合物を組み合わせて使用することが出来る。
【0039】
(C1)分子中に重合性基を3つ以上有する化合物を含むことで、保護膜の架橋密度が上がり、水分等が透過し難くなるため、絶縁信頼性が向上する。また、架橋密度が上がることで保護膜のガラス転移温度(Tg)が高くなり、前述したように絶縁信頼性の向上が期待できる。
【0040】
(C1)分子中に重合性基を3つ以上有する化合物は、中心骨格となる多価アルコールのヒドロキシルを(メタ)アクリレートに変換することで得られる。中心骨格になることができる化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、イソシアヌレート環等が挙げられる。中心骨格にエチレンオキシド基、プロピレンオキシド基又はブチレンオキシド基等のアルキレンオキシド基を付加させて得られたアルコールを(メタ)アクリレートに変換することもできるが、絶縁信頼性の観点から、未変性物が好ましい。また誘電特性の観点から、(C1)化合物は、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(例えば、アクリレートの場合には、新中村化学工業株式会社から入手可能な製品名「A−TMMT」等)、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、又はジグリセリン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0041】
(C2)分子中に重合性基を1つ有する化合物を更に含むことで、(C)少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する化合物全体の反応率の向上が見られ、絶縁信頼性の向上が期待できる。また、現像性の向上も見られる場合がある。
【0042】
(C2)分子中に重合性基を1つ有する化合物としては、ポリアルキレンオキシドの片末端に(メタ)アクリル酸を付加した化合物、片末端に(メタ)アクリル酸を付加し、かつ他方の末端をアルキルエーテル又はアリルエーテル化した化合物、等が挙げられる。例えば、m−フェノキシベンジルアクリレート(例えば、共栄社化学株式会社から入手可能な製品名「POB−A」等)、o−フェニルフェノキシエチルアクリレート、4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、EO変性パラクミルフェノールアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、4−ノニルフェニルヘプタエチレングリコールジプロピレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、4−n−オクチルフェノキシペンタプロピレングリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレートが挙げられる。絶縁信頼性、及び誘電特性の観点から、m−フェノキシベンジルアクリレート、o−フェニルフェノキシエチルアクリレート、4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、ノニルフェノキシエチルアクリレートを含むことがより好ましい。
【0043】
また、その他の(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、分子中に重合性基を2つ有する化合物が挙げられ、例えば、ポリアルキレンオキシド鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物、又はポリエチレンオキシド鎖とポリプロピレンオキシド鎖とがランダム若しくはブロックで結合したアルキレンオキシド鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビスフェノールAをアルキレンオキシド変性し、かつ両末端に(メタ)アクリロイル基を有している化合物、脂肪鎖又は脂環式構造を有するジオールの両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物等も挙げられる。その他の(C)化合物としては、具体的には、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均1モルずつのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレート(例えば、アルケマ株式会社から入手可能な製品名「SR−348」等)、及びトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(例えば、新中村化学工業株式会社から入手可能な製品名「DCP」等)を使用してよい。
【0044】
その他にも、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、ジイソシアネート化合物と、一分子中にヒドロキシル基及び(メタ)アクリル基を有する化合物との反応生成物であるウレタン化合物等が挙げられる。
【0045】
(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の感光樹脂組成物中の含有量は、解像性、密着性及び防錆性の観点から、感光性樹脂組成物の質量を基準として、10質量%〜60質量%であることが好ましく、15質量%〜50質量%であることがより好ましい。(C)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の含有量が10質量%〜60質量%の範囲内であれば、光硬化が充分となるとともに、良好な現像性が得られる。
【0046】
<(D)熱架橋剤>
本実施の形態に係る(D)熱架橋剤とは、熱により付加反応、又は縮合重合反応を起こす化合物を意味する。これらの反応は(A)アルカリ可溶性樹脂と(D)熱架橋剤、(D)熱架橋剤同士、及び(D)熱架橋剤と後述されるその他の成分の組み合わせで起き、その反応温度としては、150℃以上が好ましい。感光性樹脂組成物は、(D)熱架橋剤を含むことで、絶縁信頼性と密着性が改善する。
【0047】
(D)熱架橋剤の例としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビスマレイミド化合物、及びブロックイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0048】
エポキシ化合物としては、例えば中心骨格として、フルオレン等のカルド構造を有するエポキシ化合物;ビスフェノールA、ビフェノール等を有するビスフェノールタイプのエポキシ化合物;及びこれらの水添タイプ(例えば、共栄社化学(株)製エポライト4000)等が挙げられる。
【0049】
オキセタン化合物としては、例えば1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ビス[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]ビフェニル(例えば、宇部興産株式会社から入手可能な製品名「OXBP」等)、4,4’−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ビフェニル、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)ジフェノエート、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリ[[3−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]プロピル]シラセスキオキサン]誘導体、オキセタニルシリケート、フェノールノボラック型オキセタン、1,3−ビス[(3−エチルオキセタンー3−イル)メトキシ]ベンゼン、OXT121(東亞合成製、商品名)、OXT221(東亞合成製、商品名)等が挙げられる。
【0050】
ビスマレイミド化合物としては、例えば1,2−ビス(マレイミド)エタン、1,3−ビス(マレイミド)プロパン、1,4−ビス(マレイミド)ブタン、1,5−ビス(マレイミド)ペンタン、1,6−ビス(マレイミド)ヘキサン、2,2,4−トリメチル−1,6−ビス(マレイミド)ヘキサン、N,N’−1,3−フェニレンビス(マレイミド)、4−メチル−N,N’−1,3−フェニレンビス(マレイミド)、N,N’−1,4−フェニレンビス(マレイミド)、3−メチル−N,N’−1,4−フェニレンビス(マレイミド)、4,4’−ビス(マレイミド)ジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチル−4,4’−ビス(マレイミド)ジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(例えば、大和化成株式会社から入手可能な製品名「BMI−5100」等)、又は2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが挙げられる。
【0051】
ブロックイソシアネート化合物とは、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物にブロック剤を反応させることによって得られる化合物である。イソシアネ−ト化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−水酸化ジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、4,4−ジフェニルジイソシアネ−ト、1,3―ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−フェニレンジイソシアネ−ト、2,6−フェニレンジイソシアネ−ト、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネ−ト、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。ブロック剤としては、例えば、アルコ−ル類、フェノ−ル類、ε−カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン類、メルカプタン類、アミン類、イミド類、酸アミド類、イミダゾ−ル類、尿素類、カルバミン酸塩類、イミン類、及び亜硫酸塩類が挙げられる。ブロックイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、旭化成(株)製デュラネートSBN−70D、SBB−70P、SBF−70E、TPA−B80E、17B−60P、MF−B60B、E402−B80B、MF−K60B、及びWM44−L70G、三井化学(株)製タケネートB−882N、Baxenden社製7960、7961、7982、7991、及び7992など)、トリレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、三井化学(株)製タケネートB−830など)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト系ブロックイソシアネート(例えば、三井化学(株)製タケネートB−815N、大榮産業(株)製ブロネートPMD−OA01、及びPMD−MA01など)、1,3―ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン系ブロックイソシアネート(例えば、三井化学(株)製タケネートB−846N、東ソー(株)製コロネートBI−301、2507、及び2554など)、イソホロンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、Baxenden社製7950、7951、及び7990など)が挙げられる。
【0052】
これらの中で、転写フィルムの保存安定性の観点から、(D)熱架橋剤は、窒素原子を含むことが好ましく、ブロックイソシアネート又はビスマレイミド化合物がより好ましい。(D)熱架橋剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これにより、導体基材との相互作用が高まり、より高い密着性が期待できる。
【0053】
樹脂組成物中の(D)熱架橋剤の含有量は、樹脂組成物の固形分全質量を基準として、1質量%〜40質量%であり、誘電正接と機械物性の観点から、5質量%〜30質量%であることがより好ましく、10質量%〜25質量%であることが更に好ましい。(D)熱架橋剤の含有量が1質量%〜40質量%の範囲内であれば、熱硬化後の誘電特性が良好であり、現像性にも悪影響が観察されない。
【0054】
<(E)アルコール性水酸基を有する化合物>
本実施の形態に係る(E)アルコール性水酸基を有する化合物は、化合物中の構造に水酸基を少なくとも2つ有する化合物である。
【0055】
(E)少なくとも2つのアルコール性水酸基を有する化合物としては、例えば、ポリテトラメチレンジオール(例えば、三菱ケミカル(株)製P4TMG650、PTMG850、PTMG1000、PTMG1300、PTMG1500、PTMG1800、PTMG2000、及びPTMG3000など)、ポリブタジエンジオール(例えば、日本曹達(株)製G−1000、G−2000、及びG−3000など)、水添ポリブタジエンジオール(例えば、日本曹達(株)製GI−1000、GI−2000、及びGO−3000など)、ポリカーボネートジオール(例えば、旭化成(株)製デュラノールT5651、デュラノールT5652、デュラノールT4671、デュラノールG4672、デュラノールG3452、及びデュラノールG3450J、並びにクラレ(株)製クラレポリオールC−590、クラレポリオールC−1090、クラレポリオールC−2090、及びクラレポリオールC−3090など)、ポリカプロラクトンジオール(例えば、ダイセル(株)製プラクセル205PL、プラクセル210、プラクセル220、及びプラクセル220PLなど)、ポリエステルジオール(例えば、クラレ(株)製クラレポリオールP−530、クラレポリオールP−2030、及びクラレポリオールP−2050、並びに豊国製油(株)製HS2N−220Sなど)、ビスフェノール類(例えば、三菱ケミカル(株)製ビスフェノールAなど)、及び水添ビスフェノール類(例えば、新日本理化(株)製リカビノールHBなど)が挙げられる。これらのジオール化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
(E)少なくとも2つのアルコール性水酸基を有する化合物は、絶縁信頼性の観点から、芳香族構造をさらに有することが好ましい。芳香族基と少なくとも2つのアルコール性水酸基を有する化合物としては、上記で説明されたポリエステルジオール(例えば、クラレ(株)製クラレポリオールP−530、クラレポリオールP−2030など)が挙げられる。また、現像性と密着性の両立の観点から、アルコール性水酸基を有する化合物の分子量は500〜3,000が好ましく、1,000〜2,000がより好ましい。(E)アルコール性水酸基を有する化合物は単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
樹脂組成物中の(E)アルコール性水酸基を有する化合物の含有量は、樹脂組成物の固形分全質量を基準として、1質量%〜30質量%であり、密着性と誘電特性の観点から、5質量%〜25質量%であることがより好ましく、10質量%〜20質量%であることが更に好ましい。(E)アルコール性水酸基を有する化合物の含有量が1質量%〜30質量%の範囲内であれば、熱硬化後の誘電特性と密着性が良好であり、現像性にも悪影響が観察されない。
【0058】
<(F)難燃剤>
本実施形態に係る組成物においては、その硬化膜に難燃性を付与する観点から、(F)難燃剤を更に含むことが好ましい。本実施の形態に係る(F)難燃剤は、化合物中の構造にリン原子を有し、23℃で固体状の化合物である。感光性樹脂組成物は、(F)難燃剤を含むことで誘電特性がさらに改善する。
【0059】
(F)難燃剤とは、例えばホスファゼン、リン酸エステル、及び亜リン酸エステルなどが挙げられる。特に、樹脂組成物との相溶性の観点から、ホスファゼン、又はリン酸エステルが好ましく用いられる。ホスファゼンとしては、例えば、シアノ基又はヒドロキシル基などを有する置換ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼン((株)伏見製薬所製のFP100、FP110)等が挙げられる。リン酸エステルとしては、大八化学(株)製のPX200、PX202等が挙げられる。これらの難燃剤は単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
樹脂組成物中の(F)難燃剤の含有量は、樹脂組成物の固形分全質量を基準として、1質量%〜40質量%であり、現像性と誘電特性の観点から、5質量%〜30質量%であることがより好ましく、10質量%〜25質量%であることが更に好ましい。(D)難燃剤の含有量が1質量%〜40質量%の範囲内であれば、熱硬化後の誘電特性が良好であり、現像性にも悪影響が観察されない。
【0061】
<(G)防錆剤>
本実施形態に係る組成物においては、その硬化膜の密着性と絶縁信頼性の観点から、(G)防錆剤を更に含むことが好ましい。本実施の形態に係る(G)防錆剤は、防錆効果を有する化合物をいい、例えば、金属表面に被膜を形成して金属の腐食又は錆を防止する物質等である。
【0062】
防錆剤としては、本実施形態に係る感光性樹脂フィルムへの相溶性及び露光感度の観点から、N、S、O等を含む複素環化合物が好ましく、例えば、テトラゾール及びその誘導体、トリアゾール及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、インダゾール及びその誘導体、イミダゾリン及びその誘導体、チアジアゾール及びその誘導体、チアゾール及びその誘導体、イソチアゾール及びその誘導体等が挙げられる。ここで記載した誘導体には、母体となる構造に置換基を導入した化合物が含まれる。例えば、テトラゾール誘導体であれば、テトラゾールに置換基を導入した化合物が含まれる。置換基としては、特に制限はないが、例えば、炭化水素基(飽和でも不飽和でもよく、直鎖型でも分岐型でもよく、構造中に環状構造を含んでもよい)、又はヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、チオール基及びハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)基等のヘテロ原子を有する官能基を一つ以上含む置換基が挙げられる。具体例を以下に示す。
【0063】
テトラゾールの具体例としては、1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、1−メチル−5−エチル−1H−テトラゾール、1−メチル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−(ジメチルアミノエチル)−5−メルカプト−1H−テトラゾール及び5−フェニル−1H−テトラゾール、5−ベンジル−1H−テトラゾール、1H−テトラゾール−5−酢酸等が挙げられる。
【0064】
トリアゾールの具体例としては、1,2,3−トリアゾール、3−メルカプトトリアゾール、3−アミノ−5−メルカプトトリアゾール、ベンゾトリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−1−アセトニトリル、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1−(2−ジ−n−ブチルアミノメチル)−5−カルボキシベンゾトリアゾール、1−(2−ジ−n−ブチルアミノメチル)−6−カルボキシベンゾトリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−1−メタノール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、5−クロロベンゾトリアゾール、5−ニトロベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0065】
イミダゾールの具体例としては、ウンデシルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、5−カルボキシベンゾイミダゾール、6−ブロモベンゾイミダゾール、5−クロロベンゾイミダゾール、2−ヒドロキシベンゾイミダゾール、2−(1−ヒドロキシメチル)ベンゾイミダゾール、2−メチルベンゾイミダゾール、5−ニトロベンゾイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール、2−アミノベンゾイミダゾール、5−アミノベンゾイミダゾール、5−アミノ−2−メルカプトベンゾイミダゾール等が挙げられる。
【0066】
インダゾールの具体例としては、1H−インダゾール、5−アミノインダゾール、6−アミノインダゾール、1−ベンジル−3−ヒドロキシ−1H−インダゾール、5−ブロモインダゾール、6−ブロモインダゾール、6−ヒドロキシインダゾール、3−カルボキシインダゾール及び5−ニトロインダゾール等が挙げられる。
【0067】
イミダゾリン又はイミダゾリン誘導体としては、例えば、2−ウンデシルイミダゾリン、2−プロピル−2−イミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等が挙げられる。
【0068】
チアジアゾールの具体例としては、1,2,3−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、4−アミノ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−メチル−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール、5−アミノ−1,2,3−チアジアゾール、2−メルカプト−5−メチル−1,3,4−チアジアゾール等が挙げられる。
【0069】
チアゾールの具体例としては、2−アミノ−4−メチルチアゾール、5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチルチアゾール、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−アミノベンゾチアゾール、2−アミノ−6−メチルベンゾチアゾール、(2−ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸等が挙げられる。
【0070】
イソチアゾール又はイソチアゾール誘導体としては、例えば、3−クロロ−1,2−ベンゾイソチアゾール等が挙げられる。
【0071】
これらの中でも、防錆性と密着性の観点から、5−アミノ−1H−テトラゾール、1H−テトラゾール−5−酢酸、5−フェニル−1H−テトラゾール、5−ベンジル−1H−テトラゾール、5−カルボキシベンゾトリアゾール、5−アミノインダゾール及び5−アミノ−1,2,3−チアジアゾールが特に好ましい。(G)防錆剤は単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
組成物中の(G)防錆剤の含有量は、絶縁信頼性と密着性の観点から、樹脂組成物の質量を基準として、好ましくは0.1質量%〜10質量%、より好ましくは0.2質量%〜5質量%、さらに好ましくは0.3質量%〜3質量%である。(G)防錆剤の含有量が0.1質量%〜10質量%の範囲内であれば、熱硬化後の密着性と絶縁信頼性が良好である。
【0073】
<その他の成分>
本実施の形態において、成分(A)〜(G)に加えて、任意にて、更にシランカップリング剤等の密着性付与剤、重合性化合物、可塑剤等も樹脂組成物に含有させることが出来、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0074】
[転写フィルム]
次に、上記樹脂組成物を用いた転写フィルムについて説明する。転写フィルムは、樹脂組成物から成る樹脂層と仮支持体とを含み、場合によっては樹脂層を保護する保護フィルムを更に含む。具体的には、転写フィルムは、仮支持体上に、上記で説明された感光性樹脂組成物から成る感光性樹脂層が積層されて成る積層体であり、保護フィルムが必要な場合は、感光性樹脂層の支持体側とは反対側の表面に保護フィルムを有する。本実施の形態に係る転写フィルムも、上記で説明された高周波数回路基板の絶縁膜を形成するために使用されることができる。
【0075】
積層体である転写フィルムの一態様では、支持体上に配置された感光性樹脂層は、上記(A)〜(E)成分を含む感光性樹脂組成物で形成され、かつ上記(A)成分であるアルカリ可溶性樹脂が、上記(A−1)樹脂と上記(A−2)樹脂とを含む。
【0076】
転写フィルムの作製方法は、PETフィルム等の仮支持体上に塗布液を塗布して、乾燥する工程を含み、更に必要に応じて樹脂層上に保護層をラミネートする工程を含む。塗布液は、上記で説明された感光性樹脂組成物を溶媒に均一に溶解することにより得ることができる。
【0077】
樹脂組成物を溶解する溶剤は、使用する樹脂により異なるが、例えば、メチルエチルケトン(MEK)に代表されるケトン類;メタノール、エタノール又はイソプロパノールに代表されるアルコール類又は非プロトン性溶媒であるγ−ブチロラクトン(GBL)若しくはN−メチルピロリドン(NMP)等が挙げられる。溶剤は、仮支持体上に塗布する樹脂組成物の溶液の粘度が25℃で10mPa・s〜500mPa・sとなるように、樹脂組成物に添加することが好ましい。
【0078】
塗布方法としては、例えば、ドクターブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ロールコーティング法、スクリーンコーティング法、スピナーコーティング法、インクジェットコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、グラビアコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられる。
【0079】
塗布液の乾燥条件に特に制限はないが、乾燥温度は、50℃〜130℃であることが好ましく、乾燥時間は、30秒〜30分であることが好ましい。
【0080】
樹脂層の膜厚は、用途に応じて異なるが、配線の凹凸に追従するという観点、及び防錆性、透湿性、及び耐薬品性を確保するという観点から、乾燥後の厚みとして5μm以上が好ましく、転写フィルムの経時安定性の観点から50μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましい。
【0081】
本実施の形態に用いられる仮支持体としては、感光現像性を考慮した場合、露光光源から放射される光を透過する透明なものが望ましい。このような仮支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、セルロース及びその誘導体から成るフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、必要に応じて、延伸されたものも使用可能である。仮支持体のヘーズは、5以下であることが好ましい。仮支持体の厚みは、小さいほど解像性及び経済性の面で有利であるが、強度を維持するために10μm〜30μmであることが好ましい。
【0082】
転写フィルムに用いられる保護層の重要な特性は、感光性樹脂層との密着力について、仮支持体よりも保護層の方が充分小さく、容易に剥離できることである。保護層としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が好ましく使用できる。また、保護層として、特開昭59−202457号公報に示された剥離性の優れたフィルムを用いることもできる。保護層の膜厚は10μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。
【0083】
[樹脂パターン及び硬化膜パターン並びにそれらの製造方法]
転写フィルムに感光現像性を付与した場合、その転写フィルムを用いた樹脂パターンの形成は、以下の工程:
基材上に上記で説明された転写フィルム(積層体)をラミネートするラミネート工程;
該ラミネートされた転写フィルムに露光する露光工程;及び
該露光された転写フィルムを現像する現像工程;
を含む樹脂パターンの製造方法によって行うことができる。更に、樹脂パターンを導体部の保護膜として用いるために、現像工程後に、樹脂パターンを後露光処理及び/又は加熱処理に供して、硬化膜パターンを形成する工程を樹脂パターンの製造方法に含むことが好ましい。感光現像性がない場合は、露光工程、及び現像工程が省略され、ラミネート工程と加熱処理により所望の硬化膜を得ることができる。
【0084】
以下、具体的な方法の例を示す。基材としては、フレキシブル銅張積層板に銅配線が形成された基材、又はフレキシブルなフィルム上に銅、ニッケル、銀、銅合金等の金属層が形成されて成る基材が挙げられる。上記フィルムとしては、例えば、ポリイミド、ポリエステル(PET、PEN)、シクロオレフィンポリマー(COP)等のフィルム原料から成るフィルムが挙げられる。上記フィルムの厚みは、10μm〜100μmであることが好ましい。上記の銅合金としては、銅を主成分として含有する合金を使用することができる。ここで「主成分」とは、合金の少なくとも50質量%が銅であることをいう。合金金属としては、例えばニッケル、パラジウム、銀、チタン、モリブデン等と銅との合金を挙げることができる。銅層の厚みは50nm〜2μmであることが好ましい。銅層の均一性の観点から銅層の厚みは100nm以上であることがより好ましい。
【0085】
上記のような基材に対して転写フィルムをラミネートする工程を行うことにより、基材の銅層上に樹脂層を形成する。樹脂層が保護層を有する場合には、保護層を剥離した後、ラミネーターで転写フィルムを基材表面に加熱圧着して積層する。この場合、転写フィルムを基材表面の片面だけに積層してもよいし、両面に積層してもよい。加熱温度は、一般に約40℃〜160℃である。加熱圧着は、二連のロールを備えた二段式ラミネーターを使用して行われてもよいし、転写フィルムと基材を複数回に亘って繰り返してロールに通すことにより行われてもよい。また、真空ラミネーターを用いると、基材上の配線等による凹凸への保護膜の追従性が良好であり、転写フィルムと基材の間にエアーが混入する欠点を防ぐことが出来る。
【0086】
次に、露光機を用いて露光工程を行う。必要ならば転写フィルムから仮支持体を剥離し、フォトマスクを通して活性光により転写フィルムを露光する。露光量は、光源照度及び露光時間により決定される。露光量は、光量計を用いて測定してもよい。露光機としては、超高圧水銀灯を光源とした散乱光露光機、平行度を調整した平行光露光機、マスクとワークの間にギャップを設けるプロキシミティ露光機等を挙げることができる。更に、露光機としては、マスクと画像のサイズ比が1:1の投影型露光機、高照度のステッパー(登録商標)といわれる縮小投影露光機、又はミラープロジェクションアライナ(登録商標)と呼ばれる凹面鏡を利用した露光機を挙げることができる。
【0087】
また、露光工程においては、直接描画露光方法を用いてもよい。直接描画露光とは、フォトマスクを使用せず、基板上に直接描画して露光する方式である。光源としては、例えば、波長350nm〜410nmの固体レーザー、半導体レーザー又は超高圧水銀灯が用いられる。描画パターンはコンピューターによって制御される。この場合の露光量は、光源照度と基板の移動速度によって決定される。
【0088】
次に、現像装置を用いて現像工程を行う。露光後、感光性樹脂層上に仮支持体がある場合には、必要に応じて仮支持体を除き、続いてアルカリ水溶液の現像液を用いて未露光部を現像除去して、樹脂パターンを得る。アルカリ水溶液としては、NaCO又はKCOの水溶液(アルカリ水溶液)を用いることが好ましい。アルカリ水溶液は、感光性樹脂層の特性に合わせて適宜選択されるが、約0.2質量%〜2質量%の濃度、約20℃〜40℃のNaCO水溶液が一般的である。アルカリ水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。基材への影響を考慮して、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液等のアミン系アルカリ水溶液を用いることもできる。現像速度に応じて、水溶液中のアルカリ化合物の濃度を適宜選択することができる。臭気が少なく、取扱い性に優れ、かつ管理及び後処理が簡便であるという観点から、特に1質量%、30℃〜35℃のNaCO水溶液が好ましい。現像方法としては、アルカリ水スプレー、シャワー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の既知の方法が挙げられる。
【0089】
現像後、樹脂パターンに残存したアルカリ水溶液の塩基を、有機酸、無機酸又はこれらの酸水溶液を用いて、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の既知の方法により酸処理(中和処理)することができる。更に、酸処理(中和処理)の後、水洗する工程を行うこともできる。
【0090】
上記の各工程を経て樹脂パターンを得ることができるが、更に後露光工程及び/又は加熱工程を実施してもよい。後露光工程及び/又は加熱工程を実施することにより、更に防錆性が向上する。後露光処理での露光量としては、200mJ/cm〜1000mJ/cmが好ましく、加熱工程では40℃〜200℃での処理を行うことが好ましく、製造プロセスの観点から、加熱処理時間は60分以下が好ましい。加熱処理の方式としては、熱風、赤外線、遠赤外線等の適宜の方式の加熱炉を用いることができ、加熱処理の雰囲気としては、N雰囲気下、又はN/O雰囲気下が挙げられる。
【0091】
本実施の形態によれば、防錆性と密着性がともに良好である、フレキシブルプリント配線板(FPC)の被覆材料、プリント配線板の絶縁層に好適な低誘電樹脂組成物及び転写フィルムを提供し得る。
【実施例】
【0092】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
<アルカリ可溶性樹脂溶液A1>
撹拌機、還流冷却器、不活性ガス導入口及び温度計を備えた2Lフラスコに、エチルメチルケトンを100質量%仕込み、窒素ガス雰囲気下で75℃に昇温し、アクリル酸20質量%、スチレン75質量%、メタクリル酸シクロヘキシル5質量%、及びアゾ系重合開始剤(和光純薬社製、V−601)を2時間掛けて均一に滴下した。滴下後、75℃で10時間撹拌を続け、反応終了後に、エチルメチルケトンを用いて得られた樹脂溶液を希釈し、酸当量が430、重量平均分子量(Mw)が約27,000であるアルカリ可溶性樹脂溶液(固形分50質量%)(A1)を得た。
【0094】
<アルカリ可溶性樹脂溶液A2>
撹拌機、還流冷却器、不活性ガス導入口及び温度計を備えた2Lフラスコに、エチルメチルケトンを100質量%仕込み、窒素ガス雰囲気下で75℃に昇温し、アクリル酸22質量%、スチレン75質量%、メタクリル酸シクロヘキシル3質量%、及びアゾ系重合開始剤(和光純薬社製、V−601)を2時間掛けて均一に滴下した。滴下後、75℃で10時間撹拌を続け、反応終了後に、エチルメチルケトンを用いて得られた樹脂溶液を希釈し、酸当量が391、重量平均分子量(Mw)が約32,000であるアルカリ可溶性樹脂溶液(固形分50質量%)(A2)を得た。
【0095】
<アルカリ可溶性樹脂溶液A3>
撹拌機、還流冷却器、不活性ガス導入口及び温度計を備えた2Lフラスコに、エチルメチルケトンを100質量%仕込み、窒素ガス雰囲気下で75℃に昇温し、アクリル酸24質量%、スチレン74質量%、アクリル酸−n−ブチル2質量%、及びアゾ系重合開始剤(和光純薬社製、V−601)を2時間掛けて均一に滴下した。滴下後、75℃で10時間撹拌を続け、反応終了後に、エチルメチルケトンを用いて得られた樹脂溶液を希釈し、酸当量が358、重量平均分子量(Mw)が約27,000であるアルカリ可溶性樹脂溶液(固形分50質量%)(A3)を得た。
【0096】
<アルカリ可溶性樹脂溶液A1’>
撹拌機、還流冷却器、不活性ガス導入口及び温度計を備えた2Lフラスコに、エチルメチルケトンを100質量%仕込み、窒素ガス雰囲気下で75℃に昇温し、メタクリル酸25質量%、スチレン55質量%、メタクリル酸メチル20質量%、及びアゾ系重合開始剤(和光純薬社製、V−601)を2時間掛けて均一に滴下した。滴下後、75℃で10時間撹拌を続け、反応終了後に、エチルメチルケトンを用いて得られた樹脂溶液を希釈し、酸当量が344、重量平均分子量(Mw)が約31,000であるアルカリ可溶性樹脂溶液(固形分50質量%)(A1’)を得た。
【0097】
<アルカリ可溶性樹脂溶液A2’>
撹拌機、還流冷却器、不活性ガス導入口及び温度計を備えた2Lフラスコに、エチルメチルケトンを100質量%仕込み、窒素ガス雰囲気下で75℃に昇温し、メタクリル酸28質量%、スチレン62質量%、アクリル酸−n−ブチル10質量%、及びアゾ系重合開始剤(和光純薬社製、V−601)を2時間掛けて均一に滴下した。滴下後、75℃で10時間撹拌を続け、反応終了後に、エチルメチルケトンを用いて得られた樹脂溶液を希釈し、酸当量が307、重量平均分子量(Mw)が約20,000であるアルカリ可溶性樹脂溶液(固形分50質量%)(A2’)を得た。
【0098】
<GPC>
上記で説明された重量平均分子量(Mw)を測定するためのGPCの分析条件を以下に記す。
GPC装置:日本分光(株)製
カラム:昭和電工(株)製Shodex(登録商標)(KF−807、KF−806M、KF−806M、KF−802.5)4本直列、
溶離液:テトラヒドロフラン
検量線:ポリスチレン標準サンプルを用いて規定された検量線{ポリスチレン標準サンプル(昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM−105)による検量線使用}
【0099】
1.評価用フィルムの作製
実施例及び比較例における評価用フィルムは、次のようにして作製した。
<転写フィルムの作製>
下記表1に示す組成に従って、複数の成分をそれぞれ250mlのプラスチックボトルに量り取り、固形分濃度が47質量%となるようにエチルメチルケトンを投入し、撹拌機を用いて溶解・混合を行って、感光性樹脂組成物調合液(実施例1〜12、及び比較例1〜6)を調製した。
【0100】
樹脂組成物調合液を、仮支持体である16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、FB40)の表面に、ブレードコーターを用いて均一に塗布し、95℃の乾燥機中で7分間乾燥して、仮支持体上に均一な感光性樹脂層を形成した。感光性樹脂層の厚みは25μm又は8μmとした。次いで、感光性樹脂層の表面上に、保護フィルムとして33μm厚のポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製、GF−858)を貼り合わせることにより、転写フィルムを得た。また、以下の評価結果を表1に示す。表1における略語で表した感光性樹脂組成物調合液中の材料成分の名称を表2、及び表3に示す。
【0101】
2.現像性評価
<サンプル作製法>
上記で作製した感光性樹脂層の厚みが25μmの感光性樹脂積層体の保護フィルムを剥がしながら、サイズ:10cm×15cmのフレキシブル銅張積層板(メタロイヤル(登録商標)、Toray Advanced Materials Korea Inc製品名)上に、ホットロールラミネーター(大成ラミネーター(株)製、VA−400III)を用いて、ラミネートを行い、上から順に仮支持体フィルム/感光性樹脂層/フレキシブル銅張積層板の3層構造から成る積層体を得た(ラミネート条件はロール温度85℃、エアー圧力0.2MPa、及び速度2.0m/分であった)。15分静置後、仮支持体フィルムの上にPETマスクとストゥーファー21段ステップタブレット(光学密度0.00を1段目とし、1段毎に光学密度が0.15ずつ増加するステップタブレット)を並べて置き、PETマスク及びステップタブレット側から各組成の最適露光量を決定し、平行光露光機((株)オーク製作所社製、HMW―801)により露光した。PETマスクとしては、未露光部分が円孔となるパターンを有するものを使用した。その後、15分以上静置した後、仮支持体を剥がし、(株)フジ機工製現像装置を用い、フルコーンタイプのノズルにて現像スプレー圧0.12MPaで、30℃の1質量%NaCO水溶液を感光性樹脂層が完全に溶解するまでの時間(ブレークポイント)の2倍の現像時間に亘ってスプレーして現像し、感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去した。その際、水洗工程は、フラットタイプのノズルにて水洗スプレー圧0.06MPaで、現像工程と同じ時間に亘って行い、水洗されたサンプルをエアーブローにより乾燥させて、現像性評価用のサンプルを作製した。上記最適露光量とは、ストゥーファー21段ステップタブレットを介して露光した場合に残膜する段数が8〜9段となるような露光量を意味する。
【0102】
<評価方法>
作製した保護膜付き基板の感光性樹脂層を除去した円孔70μm部分の基材表面状態を顕微鏡で観察し、以下のように判定した。
A:基材表面に変化なし。
B:基材表面の銅がわずかに赤く変色するが、現像残さなし。
C:基材表面の銅が赤く変色し、現像残さが発生する。
現像性評価においては、Bランク以上が実用上良好な結果であると考えられる。
【0103】
3.密着性評価(ピール強度試験)
<サンプル作製法>
上記で作製した感光性樹脂層の厚みが25μmの感光性樹脂積層体の保護フィルムを剥がしながら、サイズ:10cm×15cmのフレキシブル銅張積層板(メタロイヤル(登録商標)、Toray Advanced Materials Korea Inc製品名)上に、ホットロールラミネーター(大成ラミネーター(株)製、VA−400III)を用いて、ラミネートを行い、上から順に仮支持体フィルム/感光性樹脂層/フレキシブル銅張積層板の3層構造から成る積層体を得た(ラミネート条件はロール温度85℃、エアー圧力0.2MPa、及び速度2.0m/分であった)。15分静置後、仮支持体フィルムの上にPETマスクとストゥーファー21段ステップタブレット(光学密度0.00を1段目とし、1段毎に光学密度が0.15ずつ増加するステップタブレット)を並べて置き、PETマスク及びステップタブレット側から各組成の最適露光量(定義は2.現像性評価と同様)を決定し、平行光露光機((株)オーク製作所社製、HMW―801)により露光した。PETマスクとしては、未露光部分が円孔となるパターンを有するものを使用した。その後、15分以上静置した後、仮支持体を剥がし、(株)フジ機工製現像装置を用い、フルコーンタイプのノズルにて現像スプレー圧0.12MPaで、30℃の1質量%NaCO水溶液を感光性樹脂層が完全に溶解するまでの時間(ブレークポイント)の2倍の現像時間に亘ってスプレーして現像し、感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去した。その際、水洗工程は、フラットタイプのノズルにて水洗スプレー圧0.06MPaで、現像工程と同じ時間に亘って行い、水洗されたサンプルをエアーブローにより乾燥させた。その後、散乱光露光機にて感光層側から300mJ/cmの露光量で露光し、続いて、露光後の熱風循環式オーブンにて175℃、60分間の条件で加熱し、サンプルを作製した。
【0104】
<評価方法>
上記で作製した感光性樹脂層/フレキシブル銅張積層板から成る積層体を1cm幅×15cmのサイズに加工し、加工したサンプルの感光性樹脂層面にポリオレフィンプライマー:セメダインPPX−3(セメダイン株式会社製品名)を用いて表面処理を行い、自然乾燥させた。別途、2cm幅に加工したガラエポ基板上に瞬間接着剤:セメダインPPX(セメダイン株式会社製品名)を塗り、処理を行った感光性樹脂層面をガラエポ基板側に向けた状態でゴムローラーを用いて張り合わせ、ピール強度評価用サンプルを作製した。ピール強度評価用サンプルは温度23℃/湿度50%の条件で24時間静置後に下記の条件でピール強度の測定を行った。
(条件)
測定装置:引張試験機 テンシロンRTM−500(ORIENTEC製)
引張速度:50mm/分
引張荷重:5kgf
剥離モード:90°剥離
【0105】
ピール強度試験の結果を以下の基準に従って判定した。
(基準)
A:ピール強度が0.5N/cm以上
B:ピール強度が0.25N/cm以上、0.5N/cm未満
C:ピール強度が0.25N/cm未満
なお、ピール強度評価においては、Bランク以上が実用上良好な結果であると考えられる。
【0106】
4.絶縁信頼性試験
<サンプル作製法>
あらかじめL/S=50/50μmでイオンマイグレーション評価用の櫛形配線をパターニングしたフレキシブル銅張積層板(エスパネックス:MC12−25−00HRM、日鉄ケミカル&マテリアル製品名)の導体上に、上記で作製した感光性樹脂層の厚みが25μmの感光性樹脂積層体の保護フィルムを剥がしながら、ロール式熱真空ラミネーター(エム・シー・ケー社製、MVR−250)を用いてラミネートを行い、上から順に仮支持体フィルム/感光性樹脂層/フレキシブル銅張積層板の3層構造から成る積層体を得た(ラミネート条件は、ロール温度80℃、エアー圧力0.4MPa、真空度=100Pa、及び速度2.0m/分であった)。15分静置後、支持フィルムの上にPETマスクとストゥーファー21段ステップタブレット(光学密度0.00を1段目とし、1段毎に光学密度が0.15ずつ増加するステップタブレット)を並べて置き、PETマスク及びステップタブレット側から各組成の最適露光量(定義は2.現像性評価と同様)を決定し、平行光露光機((株)オーク製作所社製、HMW―801)により露光した。PETマスクとしては、未露光部分が円孔となるパターンを有するものを使用した。その後、15分以上静置した後、仮支持体を剥がし、(株)フジ機工製現像装置を用い、フルコーンタイプのノズルにて現像スプレー圧0.12MPaで、30℃の1質量%NaCO水溶液を感光性樹脂フィルム層が完全に溶解するまでの時間(ブレークポイント)の2倍の現像時間に亘ってスプレーして現像し、感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去した。その際、水洗工程は、フラットタイプのノズルにて水洗スプレー圧0.06MPaで、現像工程と同じ時間に亘って行い、水洗されたサンプルをエアーブローにより乾燥させた。その後、散乱光露光機にて感光層側から3000mJ/cmの露光量で露光し、続いて、露光後の熱風循環式オーブンにて150℃、60分間の条件で加熱し、キュアを行い、フレキシブルプリント配線板の積層体を得た。その後、電磁波シールドフィルム(SF−PC5600−C、タツタ電線株式会社製)をフレキシブルプリント配線板の感光性樹脂層の陰極側電極と一部接続するように位置合わせを行い、真空プレス(北川精機製)を用いて、170℃、3MPa、及び5分の条件下で積層した後、熱風循環式オーブンにて150℃、及び60分間の条件下で加熱し、キュアを行った。
【0107】
<評価方法>
上記の方法で作製した電磁場シールドフィルム付きのプリント配線板を、下記の装置と条件を用いて、絶縁抵抗値を測定し、絶縁抵抗値の値が低下するまでの時間を確認することで絶縁信頼性を評価した。
下記の装置を用いて下記の条件下で電圧50VDCをプリント配線板に1000時間連続して印加した。
イオンマイグレーション装置:AMI−050−U−5(エスペック社製)
恒温恒湿オーブン:PR−2KT(エスペック社製)
温湿度条件:85℃/85%RH
電圧:50VDC
【0108】
絶縁信頼性試験の結果を以下のように判定した。
A:絶縁抵抗値が変化するまでの時間が500hr以上
B:絶縁抵抗値が変化するまでの時間が250hr以上500hr未満
C:絶縁抵抗値が変化するまでの時間が250hr未満
絶縁信頼性試験の結果においては、Bランク以上が実用上良好な結果であると考えられる。
【0109】
5.誘電率、及び誘電正接の評価
<サンプル作製法>
上記で作製した感光性樹脂層の厚みが25μmの感光性樹脂積層体の保護フィルムを剥がしながら、サイズ:10cm×15cmの易剥離PET(X−25、リンテック株式会社製品名)上に、ホットロールラミネーター(大成ラミネーター(株)製、VA−400III)を用いて、ラミネートを行い、上から順に仮支持体フィルム/感光性樹脂層/易剥離PETの3層構造から成る積層体を得た(ラミネート条件はロール温度85℃、エアー圧力0.2MPa、及び速度2.0m/分であった)。15分静置後、仮支持体フィルムの上にPETマスクとストゥーファー21段ステップタブレット(光学密度0.00を1段目とし、1段毎に光学密度が0.15ずつ増加するステップタブレット)を並べて置き、PETマスク及びステップタブレット側から各組成の最適露光量(その定義は、上記「2.現像性評価」と同様である)を決定し、平行光露光機((株)オーク製作所社製、HMW―801)により露光した。PETマスクとしては、未露光部分が円孔となるパターンを有するものを使用した。その後、15分以上静置した後、仮支持体を剥がし、(株)フジ機工製現像装置を用い、フルコーンタイプのノズルにて現像スプレー圧0.12MPaで、30℃の1質量%NaCO水溶液を感光性樹脂層が完全に溶解するまでの時間(ブレークポイント)の2倍の現像時間に亘ってスプレーして現像し、感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去した。その際、水洗工程は、フラットタイプのノズルにて水洗スプレー圧0.06MPaで、現像工程と同じ時間に亘って行い、水洗されたサンプルをエアーブローにより乾燥させた。その後、散乱光露光機にて感光層側から300mJ/cmの露光量で露光し、続いて、露光後の熱風循環式オーブンにて175℃、及び60分間の条件下で加熱し、サンプルを作製した。
【0110】
<評価方法>
上記で作製した誘電正接評価用サンプルを、下記の測定機器を用い、空洞共振器法(JIS−C−2565規格準拠)に基づき、周波数2.45GHz、及び10GHzにおける誘電正接をそれぞれ測定した。測定結果を以下のように判定した。
ネットワークアナライザ:PNA Network Analyzer E8362B(KEYSIGHT TECHNOLOGIES社製)
共振器:空洞共振器
(判定基準)
A:誘電正接0.008未満
B:誘電正接0.008以上、0.01未満
C:誘電正接0.01以上
誘電正接測定結果においては、Bランクまでが実用上良好な結果であると考えられる。
【0111】
6.赤外分光測定
<サンプル作製法>
感光性樹脂層の厚みが8μmの感光性樹脂積層体を5cm×5cmにカットし、仮支持体側から各組成の最適露光量で露光し、そして15分以上静置した後、保護フィルムを剥離し、(株)フジ機工製現像装置を用い、フルコーンタイプのノズルにて現像スプレー圧0.12MPaで、33℃の1質量%NaCO水溶液を45秒間に亘ってスプレーして現像し、感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去した。その際、水洗工程は、フラットタイプのノズルにて水洗スプレー圧0.12MPaで、現像工程と同じ時間に亘って行い、水洗されたサンプルをエアーブローにより乾燥させた。現像後15分以上静置した後、散乱光露光機にて感光性樹脂層側から350mJ/cmの露光量で露光した。15分以上静置した後、続いて、熱風循環式オーブンにて150℃で30分間処理を行い、5cm×5cmサイズのサンプルを作製した。最適露光量は、上記「2.現像性評価」用サンプル作製方法と同様の定義である。
【0112】
<評価方法>
上記方法で作製したサンプルを赤外分光光度計(Thermo Fisher SCIENTIFIC社製、CONTINUμM FT/IR Microscope)を用いてATR法で400cm−1〜4000cm−1の波数領域を測定した。得られたIRスペクトルから、芳香族由来のピーク(I)(700cm−1付近)と脂肪族由来のピーク(II)(1450cm−1付近)のそれぞれのピーク強度を求めた。ピーク強度比は上記計算式(2)に示す計算式を用いて算出した。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
表1に示した結果から、本発明で規定されている感光性樹脂組成物を用いた実施例1〜12のいずれも現像性、密着性、絶縁信頼性、及び低誘電正接のバランスに優れており、高周波デバイスの導体保護膜としての性能を満たしている。
また、実施例1と実施例3の対比より、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)少なくとも1つエチレン性不飽和基を有する重合性化合物、(D)架橋剤、及び(E)少なくとも2つのアルコール性水酸基を有する化合物から成る感光性樹脂組成物に、(F)リン原子を有し、かつ23℃で固体状である難燃剤をさらに加えることで、密着性、絶縁信頼性、及び低誘電正接がさらに改善されることが確認された。
【0117】
他方、比較例のいずれも、本発目の解決しようとする課題(現像性、密着性、絶縁信頼性、又は低誘電正接)のいずれかが劣る結果であることが示されている。比較例1と比較例2では、(D)架橋剤と(E)少なくとも2つのアルコール性水酸基を有する化合物の両方または一方を含まないことから、密着性及び絶縁信頼性が悪く、比較例3〜6では、(A)アルカリ可溶性樹脂において、アクリル酸の代わりにメタクリル酸を用いることで、低誘電正接となるものの、現像性、及び密着性が悪くなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明による感光性樹脂組成物及び感光性樹脂積層体を用いることで、低誘電であり、良好な現像性、及び導体上への高い密着性と絶縁信頼性に優れ、5G通信等の高速通信技術の電子部品に好適な感光性樹脂組成物及び積層体を提供することができる。