(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021066014
(43)【公開日】20210430
(54)【発明の名称】電子機器及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 19/18 20060101AFI20210402BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20210402BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
   !B41J19/18 L
   !B41J2/01 303
   !B41J2/01 401
   !B41J2/01 451
   !B41J2/01 107
   !G05B11/36 503A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】2019190458
(22)【出願日】20191017
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 功
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
【テーマコード(参考)】
2C056
2C480
5H004
【Fターム(参考)】
2C056EB11
2C056EB36
2C056EC11
2C480CA01
2C480CA11
2C480CA31
2C480CA45
2C480CB02
2C480CB35
2C480DA01
2C480EA02
2C480EA05
2C480EA06
2C480EA22
5H004GA09
5H004KA74
5H004KB01
5H004MA12
(57)【要約】
【課題】複数の駆動条件下でも最適なフィードバック制御を提供することである。
【解決手段】対象物の移動を制御する電子機器において、対象物の移動を検出し、その検出信号に基づいて、第1の周期で対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する。一方、その検出信号に基づき、第1の周期より短い第2の周期で対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために対象物の第1状態量を推定し、その推定量から高周波成分を除去し、高周波成分が除去された第1状態量を時間微分して第2状態量を推定する。次に、推定された制御量に基づいて、第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する。一方、推定された第1状態量と第2状態量とに基づいて、第2のフィードバック制御のための第2操作量を生成する。そして、第1操作量と第2操作量から対象物への操作量を生成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の移動を制御する電子機器であって、
前記対象物の移動を検出する検出手段と、
前記検出手段から出力される検出信号に基づいて、第1の周期で前記対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する第1の推定手段と、
前記検出手段から出力される検出信号に基づいて、前記第1の周期より短い第2の周期で前記対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、前記対象物の第1状態量を推定し、該第1状態量から高周波成分を除去し、該高周波成分が除去された第1状態量を時間微分して得られる第2状態量を推定する第2の推定手段と、
前記第1の推定手段により推定された制御量に基づいて、前記第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する第1の生成手段と、
前記第2の推定手段により推定された前記第1状態量と前記第2状態量とに基づいて、前記第2のフィードバック制御のための第2操作量を生成する第2の生成手段と、
前記第1操作量と前記第2操作量から前記対象物への操作量を生成する合成手段とを有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記第2の推定手段は、
前記第1状態量に含まれる高周波成分を除去するフィルタ回路と、
前記フィルタ回路により高周波成分が除去された第1状態量を時間微分する微分演算回路とを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1状態量と前記第2状態量の組み合わせは、前記対象物の速度と加速度であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1状態量と前記第2状態量の2つの変数で定義される2次元空間を2つの空間に分割し、前記第1状態量と前記第2状態量が該分割された2つの空間のいずれに位置するのかに従って、前記第2操作量の符号が決定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記2つの空間への分割は、前記第1状態量と前記第2状態量との関係を一次関数で定義した関数を用いてなされることを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記電子機器は、記録ヘッドを搭載したキャリッジを往復移動させて前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置であり、
前記対象物は前記キャリッジであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記第1状態量は、前記キャリッジの速度であり、
前記第2状態量は、前記キャリッジの加速度であることを特徴とする請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記検出手段は、前記キャリッジの位置を検出するエンコーダセンサを備え、
前記エンコーダセンサから出力されるエンコーダ信号のパルス信号をカウントすることで前記キャリッジの位置を推定し、前記パルス信号のパルス幅を計測することで前記キャリッジの速度を推定することを特徴とする請求項6又は7に記載の電子機器。
【請求項9】
前記第1の生成手段は、プログラムをCPUが実行することにより実現され、
前記第1の推定手段と、前記第2の推定手段と、前記第2の生成手段と、前記合成手段とはASICにより実現されることを特徴とする請求項4乃至8のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記電子機器は、CIS又はCCDセンサを搭載したスキャナユニットを移動させて前記スキャナユニットにより原稿の画像を読取るスキャナ装置、又は、記録ヘッドを搭載したキャリッジを往復移動させて前記記録ヘッドにより記録媒体に記録を行う記録装置に該スキャナ装置を備えた多機能プリンタであり、
前記対象物は前記スキャナユニットであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項11】
対象物の移動を制御する電子機器における制御方法であって、
前記対象物の移動を検出する検出工程と、
前記検出工程において出力される検出信号に基づいて、第1の周期で前記対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する第1の推定工程と、
前記検出工程において出力される検出信号に基づいて、前記第1の周期より短い第2の周期で前記対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、前記対象物の第1状態量を推定し、該第1状態量から高周波成分を除去し、該高周波成分が除去された第1状態量を時間微分して得られる第2状態量を推定する第2の推定工程と、
前記第1の推定工程において推定された制御量に基づいて、前記第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する第1の生成工程と、
前記第2の推定工程において推定された前記第1状態量と前記第2状態量とに基づいて、前記第2のフィードバック制御のための第2操作量を生成する第2の生成工程と、
前記第1操作量と前記第2操作量から前記対象物への操作量を生成する合成工程とを有することを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器及びその制御方法に関し、特に、例えば、シリアル型の記録装置のキャリッジ等の移動物体の駆動制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シリアル型プリンタにおいてモータにより往復移動するキャリッジの駆動はエンコーダを用いたPID制御などのフィードバック制御が一般的である。シリアル型のインクジェットプリンタにおいて、インクを吐出する記録ヘッドを搭載するキャリッジの走査を行う駆動部では、インク着弾位置の安定化のためにキャリッジ走査時の速度変動が重視されている。
【0003】
しかしながら構成部品のばらつきによりキャリッジの速度変動がプリンタ個体ごとに異なることがある。特に、キャリッジモータの構造上、コギングトルクと呼ばれるトルク変動などは、速度変動を悪化させる要因であった。コギングトルクはキャリッジモータ個体でそれぞれ大きさなどが異なり、さらにその他の部品ばらつきの影響を受けるため、各プリンタで安定した速度変動を実現することが困難であった。
【0004】
特許文献1では、スライディングモード制御を適用し、外乱抑圧性を向上させ、指令に対して追従性の良い制御性能向上を確保する制御方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−134758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1が提案する制御方法では、第1状態量と第1状態量を時間に関して1回微分して得られる第2状態量に基づいて制御演算を行うが、第2状態量を第1状態量から推定することがある。この場合、ASICで第1状態量を取込み第2状態量を算出する際に、取込みサンプリングや算出分解能の影響で意図しない演算結果となり、その結果、制御性能が低下することがあった。一つの駆動条件であれば最適な取込みサンプリングや算出分解能を選択することで制御性能の低下を回避することもできるが、プリンタでは複数の駆動条件があり、各駆動条件下でサンプリングや算出分解能を変更することは困難である。
【0007】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、複数の駆動条件下でも第2状態量を正確に推定し最適なフィードバック制御が可能な電子機器とその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の電子機器は、以下の構成を備える。
【0009】
即ち、対象物の移動を制御する電子機器であって、前記対象物の移動を検出する検出手段と、前記検出手段から出力される検出信号に基づいて、第1の周期で前記対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する第1の推定手段と、前記検出手段から出力される検出信号に基づいて、前記第1の周期より短い第2の周期で前記対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、前記対象物の第1状態量を推定し、該第1状態量から高周波成分を除去し、該高周波成分が除去された第1状態量を時間微分して得られる第2状態量を推定する第2の推定手段と、前記第1の推定手段により推定された制御量に基づいて、前記第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する第1の生成手段と、前記第2の推定手段により推定された前記第1状態量と前記第2状態量とに基づいて、前記第2のフィードバック制御のための第2操作量を生成する第2の生成手段と、前記第1操作量と前記第2操作量から前記対象物への操作量を生成する合成手段とを有することを特徴とする。
【0010】
また本発明を別の側面から見れば、対象物の移動を制御する電子機器における制御方法であって、前記対象物の移動を検出する検出工程と、前記検出工程において出力される検出信号に基づいて、第1の周期で前記対象物に対する第1のフィードバック制御を行うための制御量を推定する第1の推定工程と、前記検出工程において出力される検出信号に基づいて、前記第1の周期より短い第2の周期で前記対象物に対する第2のフィードバック制御を行うために、前記対象物の第1状態量を推定し、該第1状態量から高周波成分を除去し、該高周波成分が除去された第1状態量を時間微分して得られる第2状態量を推定する第2の推定工程と、前記第1の推定工程において推定された制御量に基づいて、前記第1のフィードバック制御のための第1操作量を生成する第1の生成工程と、前記第2の推定工程において推定された前記第1状態量と前記第2状態量とに基づいて、前記第2のフィードバック制御のための第2操作量を生成する第2の生成工程と、前記第1操作量と前記第2操作量から前記対象物への操作量を生成する合成工程とを有することを特徴とする制御方法を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、種々の駆動条件下でも正確に第2状態量を推定し、さらに、制御対象物の振動抑制を行い、フィードバック制御を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】記録装置のキャリッジモータの駆動制御部におけるフィードバック制御構成を示すブロック図である。
【図2】第1状態量と第2状態量との関係を示す2次元座標空間の図である。
【図3】制御対象としてキャリッジの速度プロファイルを示す図である。
【図4】本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の主要機構部分を示す斜視図である。
【図5】図4に示す記録装置の制御部を示すブロック図である。
【図6】図4〜図5で示した記録装置におけるキャリッジ駆動制御の詳細を説明するブロック図である。
【図7】A相B相のエンコーダ信号を示す図である。
【図8】キャリッジ走査速度が異なる場合の第1状態量と推定される第2状態量を示す図である。
【図9】図8に示した第1状態量と推定される第2状態量の時間変化を拡大した波形を示す図である。
【図10】キャリッジ走査速度の変化量(振動の大きさ)が異なる場合の第1状態量と推定される第2状態量を示す図である。
【図11】状態量推定部25の詳細な構成を示すブロック図である。
【図12】図11に示した状態量推定部25を用いてキャリッジ走査速度の変化量(振動)の小さい駆動条件(駆動条件D)でキャリッジを駆動して得られる第2状態量の推定結果を示す図である。
【図13】図11に示した状態量推定部25を用いたフィードバック構成におけるキャリッジの微小振動の抑制効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施例について、さらに具体的かつ詳細に説明する。
【0014】
以下の説明においては、電子機器の代表的な例としてシリアル型記録装置のキャリッジを移動させるモータの駆動制御を例に挙げる。しかし、記録装置のキャリッジに限らず、モータの駆動により物体を移動させるものであれば、本発明のモータ制御を適用することが可能である。例えば、その記録装置において、記録用紙などの記録媒体を搬送するために用いる搬送モータの駆動制御に適用することもできる。さらには、CCDラインスキャナやCISなどをモータを駆動して移動させながら原稿の画像を光学的に読取るスキャナ装置なども本発明に含まれる。
【0015】
1.フィードバック制御の説明
図1は記録装置のキャリッジモータの駆動制御部におけるフィードバック制御構成を示すブロック図である。図1において、(a)は一般的な制御構成を示す図であり、(b)はこの実施例において用いられる制御構成を示す図である。
【0016】
まず、図1(a)を参照して一般的なフィードバック制御構成について説明する。
【0017】
図1(a)に示すように、制御対象(例えば、キャリッジ)21の状態を検出した検出信号(キャリッジの位置、速度)が制御量推定部(例えば、CPU)23に出力され、位置・速度情報等の制御量を推定する。その制御量が第1制御部(例えば、キャリッジドライバ)22に出力され、制御対象21を目標値に収束させるための操作量が演算される。操作量が制御対象21に出力されることでフィードバック制御ループが構成される。
【0018】
さて、制御対象を安定して動かすためには、制御対象の特性を鑑みつつ制御上の余裕度を確保して、諸々のパラメータ設定を行う必要がある。余裕度が足りないと振動が発生し、発振現象から制御不能に至る場合もある。一方、この余裕度を取りすぎると制御対象の追従性能が低下するが、振動抑制のために追従性能に制限をかけることは避けられない。
【0019】
次に、図1(b)を参照してこの実施例で用いられるフィードバック制御構成について説明する。
【0020】
図1(b)に示されているように、このフィードバック制御では、図1(a)で示したフィードバック制御ループに加えて、制御対象21からの検出信号を用いた別のフィードバック制御ループを形成する。即ち、制御対象21の状態を検出した検出信号が制御量推定部23に出力され、キャリッジの位置・速度情報等の制御量を推定する。その制御量が第1制御部22に出力され、第1制御部22で制御対象21を目標値に収束させるための第1操作量が演算される。次に、第1制御部21から第1操作量が出力され、合成部26を経て制御対象21に至ることで、第1のフィードバックループが形成される。
【0021】
一方、制御対象21の状態を検出した検出信号は状態量推定部25にも出力され、状態量推定部25で第1状態量と第2状態量を推定する。第2状態量は第1状態量を時間微分した関係がある。具体的には、第1状態量と第2状態量は位置と速度の組み合わせ、もしくは速度と加速度の組み合わせからなる値となり、これらが第2制御部24に出力されるものとなる。そして、第2の制御部24で第2操作量が演算される。次に、第2制御部24から第2操作量が出力され、合成部26で第1操作量と第2操作量とが合成されて制御対象21に至る。このように、制御対象21→状態量推定部25→第2制御部24→合成部26→制御対象21という第2のフィードバックループが形成される。
【0022】
さて、第1状態量と第2状態量は、例えば、キャリッジの位置(x)と速度(v)、又は、キャリッジの速度(v)と加速度(a)の関係になるので、これら2つの状態量(2変数)の関係を2次元空間で表現できる。
【0023】
図2は第1状態量と第2状態量との関係を示す2次元座標空間の図である。図2では、横軸に第1状態量を、縦軸に第2状態量を定義している。
【0024】
図2に示されるように、その平面において、予め2分割の領域が定義され、その平面が切り替え線と呼ばれる関数により2つの領域に分割されている状態を示している。この領域分割を領域1、領域2と呼ぶ。この切り替え線を表す関数は、第1状態量をS1、第2状態量をS2とすれば、S2=k×S1という関係で表現される一次関数である。ここで、kは切り替え係数である。
【0025】
図2に示されるように、切り替え線の上部領域(白色)が領域1、下部領域(斜線)が領域2となっている。そして、第1状態量と第2状態量の関係が領域1にある場合には+符号の操作量を出力し、第1状態量と第2状態量の関係が領域2にある場合には−符号の操作量を出力する。なお。動作条件によっては、領域1が−符号、領域2が+符号の場合もありえる。この2つの領域をまたぐ毎に符号が切り替わることで操作量はスイッチング動作に相当する動きを実現するものとなる。この様な操作量が第2操作量として第2制御部24の出力となり、合成部26を経て制御対象21に至る。
【0026】
第1操作量と第2操作量は非同期に更新されるものであり、これらのタイミングを調整しつつ合算するのが合成部26であり、合算値となる第3操作量を制御対象21に出力する。
【0027】
ここで、図1(b)に示したフィードバック制御を、シリアル型記録装置において記録ヘッドを搭載して往復運動するキャリッジの速度制御に適用した例について説明する。
【0028】
図3は制御対象としてキャリッジの速度プロファイルを示す図である。
【0029】
図3において、横軸は時間(t)、縦軸はキャリッジの速度(v)である。図3はキャリッジがホームポジションからt=t1で移動開始し、加速して速度vcに達して定速移動に移行し、その後、減速してt=t2で停止する速度プロファイルを描かれている。しかしながら、現実のキャリッジ運動はそのような理想的なものではなく、定速移動中にも外乱などの影響でその速度は微小変動する。速度が微小変動するとは、非常に短い周期で+の加速度と−の加速度が発生することを意味する。
【0030】
図3には破線で理想的な速度プロファイルを示し、太い実線で定速移動中の微小な速度変動を示している。
【0031】
この実施例におけるフィードバック制御では、第1制御部22が破線で示す速度プロファイルの制御を担当し、制御対象のキャリッジを所望の加速度条件や速度条件に従って目標位置まで移動させる。第1制御部22は一般的に広く使われているPID制御演算を実行し、制御上の余裕度を鑑みつつ諸々のパラメータ設定が行われ、制御帯域が決定され、その制御帯域内において振動を抑えつつ、所望の動きを実現する。
【0032】
一方、第2制御部24が太い実線で示す微小な速度変動を抑える制御を担当する。第2制御部24は、第1制御部22の制御帯域を超えた高周波帯域での微小な振動現象(速度変動)を抑制する。このような速度変動を抑制するためには、発生する+の加速度に対しては−の加速度を操作量として与える一方、発生する−の加速度に対しては+の加速度を操作量として与える動作を速度変動の周期に対応した短い周期で行うことが必要である。従って、その制御性能を実現するために十分に短い制御周期が要求されるので、第2制御部24は少なくとも第1制御部22の制御周期よりも短い制御周期で制御が実行される。
【0033】
このように制御周期が十分に短いことで、第2制御部24では高速なスイッチング動作が実現でき、第1制御部22の制御帯域を超えた領域まで振動抑制(速度変動抑制)が可能になる。従って、制御対象としてのキャリッジの状態が変化して第1制御部22によるフィードバック制御だけでは振動現象が発生するような場合でも、第2制御部24で振動を抑制することが可能になり、追従性を損なうことなく、安定な制御系を構築することができる。
【0034】
まとめると、加速、定速、減速からなる速度プロファイルをもつ制御対象としてのキャリッジを目標位置に収束させるのが従来のフィードバック制御を行う第1制御部22の役割となる。第1制御部22ではキャリッジの位置と速度の情報からなる制御量を用い、PID制御によるフィードバックループ(第1のフィードバックループ)を構成する。一方、第1制御部22では対応できないキャリッジの微小な速度変動を抑制するのが第2制御部24の役割となる。第2制御部24では、位置と速度、又は、速度と加速度の組み合わせからなる状態量を用い、高速なスイッチング制御によるフィードバックループ(第2のフィードバックループ)を構成する。このため、第2のフィードバックループの制御は、第1のフィードバックループの制御よりも短い演算周期で実行される。
【0035】
2.フィードバック制御の適用例の説明
ここでは、図1(b)を参照して説明したような2つのフィードバックループを形成する制御を適用するシリアル型の記録装置について説明する。
【0036】
<記録装置の説明(図4〜図5)>
図4は本発明の代表的な実施例であるインクジェット方式に従ってインク液滴を吐出するインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を搭載した記録装置の構成を示す外観斜視図である。
【0037】
記録ヘッド2を搭載するキャリッジ(移動物体)3はガイド軸4により摺動自在に支持されて、記録媒体(シート)1の上で往復移動する。キャリッジ3の移動範囲の一端にはプーリ付きのキャリッジモータ(DCモータ)5が配置され、他端にアイドルプーリ6が配置され、これらにタイミングベルト7が掛けまわされ、キャリッジ3とタイミングベルト7が連結されている。
【0038】
また、ガイド軸4を中心としてキャリッジ3が回転するのを防ぐために、ガイド軸4と平行に延びて設置されたサポート部材8が設置され、キャリッジ3はサポート部材8によっても摺動自在に支持されている。また、記録ヘッド2には多数の記録素子が設けられており、記録装置の本体部から記録ヘッド2に記録素子の駆動信号を供給するためのFFC(フレキシブルフラットケーブル)11が配されている。FFC11は細長くかつ薄いフィルム形状をなしており、その内部または表面に駆動信号を伝達するための導体パターンが形成されており、キャリッジ3の移動に伴って屈曲しかつ曲げの中心位置が移動するように可撓性を有している。
【0039】
さらに、キャリッジ3の外にインクタンク(不図示)が配置され、インクタンク内に貯留されたインクを記録ヘッド2に供給するチューブ12が配されている。チューブ12はキャリッジ3の移動に伴って屈曲しかつ曲げの中心位置が移動するように可撓性を有している。これらFFC11とチューブ12からなる接続部材10はキャリッジ3と記録装置本体の固定部9との間に接続されている。
【0040】
また、キャリッジ3の位置情報を取得するために用いられるリニアスケール16は、キャリッジ移動方向(主走査方向)に沿って平行に配置され、キャリッジ3に取り付けられたエンコーダセンサ15で読取る構成となっている。さらに、記録媒体1の幅方向の両外側には記録ヘッド2の予備吐出したインクを回収する為のインク回収口14a、14bが設けられている。この予備吐出とは、記録開始直前もしくは記録実行中にノズル先端部に付着したインクを記録とは無関係な位置で排出する為の動作である。
【0041】
このような構成により、キャリッジ3は矢印A方向(主走査方向)に往復移動する。また、記録媒体1は、搬送モータ(不図示)によってキャリッジ3と垂直に交差する矢印Bの方向(副走査方向)に搬送される。
【0042】
図5は図4に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【0043】
図5に示すように、コントローラ600は、MPU601、ROM602、特殊用途集積回路(ASIC)603、RAM604、システムバス605、A/D変換器606などで構成される。ここで、ROM602は後述する制御シーケンスに対応したプログラム、所要のテーブル、その他の固定データを格納する。
【0044】
ASIC603は、キャリッジモータ5の制御、搬送モータ20の制御、及び、記録ヘッド2の制御のための制御信号を生成する。RAM604は、画像データの展開領域やプログラム実行のための作業用領域等として用いられる。システムバス605は、MPU601、ASIC603、RAM604を相互に接続してデータの授受を行う。A/D変換器606は以下に説明するセンサ群からのアナログ信号を入力してA/D変換し、デジタル信号をMPU601に供給する。
【0045】
また、図6において、ホスト装置610は画像データの供給源となる。ホスト装置610と記録装置1との間ではインタフェース(I/F)611を介して画像データ、コマンド、ステータス等を、例えば、USB規格に基づくプロトコルを用いて送受信する。
【0046】
さらに、スイッチ群620は、電源スイッチ621、印刷の開始指示などを行うプリントスイッチ622、回復スイッチ623などから構成される。
【0047】
装置状態を検出するためのセンサ群630は、エンコーダセンサ15、温度センサ632等から構成される。
【0048】
さらに、キャリッジモータドライバ640はキャリッジ3を矢印A方向に往復走査させるためのキャリッジモータ5を駆動させ、搬送モータドライバ642は記録媒体Pを搬送するための搬送モータ20を駆動させる。
【0049】
ASIC603は、記録ヘッドによる記録走査の際に、RAM604の記憶領域に直接アクセスしながら記録ヘッドに対して記録素子(吐出用のヒータ)を駆動するためのデータを転送する。加えて、この記録装置には、ユーザインタフェースとしてLCDやLEDで構成される操作パネル18が備えられている。また、装置実装上は、スイッチ群620が操作パネル18に含まれていても良い。
【0050】
ASIC603は画像処理やアクチュエータ制御を行うため演算処理部として動作し、MPU601から命令を受けて演算処理を実行する。詳細は後述するが、ループバック制御演算の一部はASIC603で実行される。MPU601はキャリッジのフィードバック制御のための演算の一部を担当し、印刷シーケンスに従って、キャリッジモータ5の駆動演算を実行する。インタフェース611を経由してホスト装置610からプリント命令が発行された際、記録動作のためにキャリッジ3が往復動作する。
【0051】
3.記録装置のキャリッジ制御のためのフィードバック制御構成の詳細
ここでは、図1(b)を参照して説明したフィードバック制御構成を、図4〜図5を参照して説明した記録装置のキャリッジ駆動制御への適用について詳細に説明する。
【0052】
図6は図4〜図5で示した記録装置におけるキャリッジ駆動制御の詳細を説明するブロック図である。
【0053】
記録装置のキャリッジ制御には、記録ヘッド2による印刷品位を担保するために正確な位置にインクを着弾させるための精度が求められる。記録ヘッド2からのインク液滴の吐出タイミングはキャリッジ3の移動速度(v)から算出されるものであり、その速度変動を最小化することが重要になる。その為、この実施例に従うフィードバック制御における抑制すべき振動対象は、キャリッジ速度になる。従って、図1(b)を参照して説明したフィードバック制御における第1状態量と第2状態量は、キャリッジの速度と加速度の組み合わせとなり、これらの状態量が第2制御部24に入力される。
【0054】
また、フィードバック制御における制御対象はキャリッジ3となり、エンコーダセンサ15からエンコーダ信号が制御量推定部23と制御量推定部25に出力される。一般的にエンコーダ信号は、A相B相と呼ばれる位相が90度異なる2本のパルス信号が用いられる。この実施例においてもA相B相の2本のパルス信号をエンコーダ信号として用いる。
【0055】
図7はA相B相のエンコーダ信号を示す図である。
【0056】
制御量推定部23はこのパルス信号をカウントすることで位置情報を推定し、パルス信号のパルス幅を計測することで速度情報を推定する。この位置・速度情報等が制御量として、第1制御部22に相当するPID制御演算部36に出力される。
【0057】
目標値演算部35は、キャリッジ3を所望の加速度条件や速度条件に従って目標位置まで移動させるための目標プロファイルを生成し、これを目標値として出力する。PID制御演算部35は、目標値演算部35からの目標値と制御量推定部23からの制御量とを用いてPID制御演算を行い、第1操作量として出力する。
【0058】
エンコーダセンサ15からのエンコーダ信号は状態量推定部25にも出力される。状態量推定部25は、前処理演算部38からの出力となるレジスタ設定値も入力される。レジスタ設定値は、目標値演算部35からの目標値を、前処理演算部38により状態量推定部内で使用する単位系に置換した値である。状態量推定部25は、エンコーダ信号から速度情報と加速度情報とを推定し、動作目標となるレジスタ設定値との誤差量を計算する。そして、その誤差量となる速度誤差量、加速度誤差量の2つが速度次元と加速度次元の状態量の組み合わせとして、第2制御部24に相当するスライディングモード制御演算部39に出力される。
【0059】
スライディングモード制御演算部39では、速度誤差量、加速度誤差量の2変数からなる2次元平面空間が形成される。図2を参照して説明した2次元平面の領域判別は、
S = 切り替え係数 × 加速度誤差量 + 速度誤差量
から求められる。ここで、S>0であれば、現在の状態量は切り替え線の上部となる領域1に位置する。これに対して、S<0であれば、現在の状態量は切り替え線の下部となる領域2に位置する。また、S=0の場合は、S>0かS<0のどちらか一方と定義して扱うものとなる。そして、その領域判別結果に基づき操作量の符号が決定され、第2操作量として出力される。なお、切り替え係数も、前処理演算部38からの出力となるレジスタ設定値により更新される。ただし、特別な場合として位相切り替え線は、加速度誤差量また速度誤差量の両方を使用せずに何れか1方のみであっても良い。
【0060】
ここで、第1操作量と第2操作量の更新タイミングについて説明する。
【0061】
第1操作量はPID制御演算部36が実行される毎に更新される。図1(b)に示したフィードバック制御が適用される記録装置のキャリッジモータ駆動制御部(キャリッジモータドライバ)には、1KHz程度の周期で制御演算が実行されることが多い。これに対して、第2操作量はスライディングモード制御演算部39が実行される毎に更新される。ここでは、エンコーダ信号のパルス変化を想定しており、およそ数KHz〜20KHz程度の周期で制御演算が実行される。このような非同期な関係な入力に対し、合成部26ではタイミングを調整しつつ合算する。合成部26では、操作量の合算結果に基づくPWM信号をモータドライバ640に出力する。そして、モータドライバ640によりキャリッジモータ5が回転し、タイミングベルト7を経由してキャリッジ3が移動する。
【0062】
スライディングモード制御演算部39をエンコーダ信号のパルス変化に起因した高速演算を実現するため、ここではASIC等のハードウェアで実行することを想定している。
【0063】
図6において、2点鎖線で囲まれた範囲がASIC603において実現される。図6から分かるように、ASIC603は、スライディングモード制御演算部39、状態量推定部23、状態量推定部25、合成部26の機能を担当する。これに対して、図7において、太い点線で囲まれた範囲はMPU601においてプログラムを実行することにより実現される。図6から分かるように、MPU601は、PID制御演算部36、目標値演算部35、前処理演算部38の機能を担当する。
【0064】
このように、MPU601とASIC603とでフィードバック制御を分担するのは、ASIC603で実現される部分で扱われる情報の更新周期が、MPU601で実現される部分で扱われる情報の更新周期よりも短いためである。
【0065】
目標値演算部35により目標値が更新される毎に前処理演算部38も実行され、ASIC603のレジスタ領域に、最新のレジスタ設定値が設定される。前処理部演算部38では、スライディングモード制御演算39で実行する位相切り替え線の演算や状態量推定部25の推定演算で時々刻々と変化する変数値の一部を、PID制御演算部36の演算周期の間のみパラメータ値として管理するための計算を行う。フィードバック制御全てをASICで実行することは集積回路の肥大化を招き、処理の柔軟性や融通性を欠くものとなるので、この実施例では、演算精度と回路規模で折り合いをつけ、計算の一部をMPUの前処理演算部38が更新タイミングで実行する。
【0066】
また、スライディングモード制御演算部39で用いる制御パラメータを、キャリッジ3の動作状態により変更しても良い。その場合、目標値演算部35による目標値から、キャリッジ3が加速状態や定速状態や減速状態のうち、いずれの状態の区間にあるかの判別を行う。そして、その区間ごとに、位相切り替え線の算出に用いる切り替え係数を変更することで、キャリッジ動作条件に応じた適切な切り替え線を選択し、速やかな収束を実現できるようにしても良い。
【0067】
前述したように第2状態量は第1状態量を時間微分した関係であることから、状態量推定部25は初めに第1状態量を推定し、推定された第1状態量に基づいて第2状態量を算出推定することができる。しかしながら、画像を印刷するために用いる画像データが写真か文字であるか否か、また記録媒体の種類によってキャリッジ3の駆動条件を変化させることがある。例えば、写真画像を印刷する場合、高解像度でカラー印刷をするためにキャリッジ移動速度を低速にしたり、文字画像を高速印刷する場合には、記録解像度を低くしてキャリッジ移動速度を高速にする。また、写真印刷用の記録用紙を用いて記録する場合と普通印刷用の記録用紙を用いて記録する場合とでもキャリッジ移動速度が異なる。そのような場合、抑制したいキャリッジ振動の周波数や振幅(大きさ)が変化する。そのため、振動の状態によっては、第2状態量を算出する際のエンコーダ信号の取込みタイミングや取込みの分解能の影響を受け、正しく第2状態量を算出できないことがある。
【0068】
図8は定速移動中でキャリッジ走査速度が異なる場合の第1状態量と推定される第2状態量を示す概念図である。図8において、上段の縦軸が速度、下段の縦軸が加速度であり、また、上段下段ともに横軸は時間である。
【0069】
図8によれば、(a)に示すキャリッジ走査速度が高周波数で変化する駆動条件(駆動条件A)では第2状態量は比較的正しく推定されている。これに対して、(b)に示すキャリッジ走査速度の低周波数で変化する駆動条件(駆動条件B)では第2状態量は正しく推定されていない。
【0070】
図9は図8に示した第1状態量と推定される第2状態量の時間変化を拡大した波形を示す図である。
【0071】
上述したように、第2状態量は第1状態量の時間微分であるため、第1状態量の変化周期に対し読込み周期が遅すぎると正しく微分演算ができず、正しく第2状態量が算出できない。
【0072】
図10はキャリッジ振動の変化量(振動)の大きさが異なる場合の第1状態量と推定される第2状態量を示す図である。
【0073】
図10によれば、(a)に示すキャリッジ振動の変化量(振動)の大きい駆動条件(駆動条件C)では第2状態量は正しく推定されている。これに対して、(b)に示すキャリッジ振動の変化量(振動)の小さい駆動条件(駆動条件D)では第2状態量は正しく推定されていない。
【0074】
このように駆動条件が異なると、第1状態量(速度)から第2状態量(加速度)を正しく算出できない場合がある。このような問題を解決するために、この実施例に従う状態量推定部25は次のような構成を備える。
【0075】
図11は状態量推定部25の詳細な構成を示すブロック図である。
【0076】
図11に示すように、状態量推定部25は、エンコーダセンサ15から出力されるエンコーダ信号のパルス信号のパルス幅を計測することで速度を推定する第1状態量推定部42と、第1状態量(速度)から第2状態量を推定する第2状態量推定部43を備える。第2状態量推定部43は、フィルタ回路44と微分演算回路45とから構成される。この構成により、第2状態量は第1状態量から推定算出される。
【0077】
ここで、フィルタ回路44には、移動平均フィルタやローパスフィルタなどの高周波成分を除去するフィルタが用いられ、外乱の周波数成分より高い周波数成分が除去される。その結果、微分演算回路45には高周波成分が除去された第1状態量(速度)が入力される。
【0078】
図12は図11に示した状態量推定部25を用いてキャリッジ走査速度の変化量(振動)の小さい駆動条件(駆動条件D)でキャリッジを駆動して得られる第2状態量の推定結果を示す図である。図12では比較のために、(a)には図10(b)で示した従来の手法を用いて推定した第2状態量を示し、(b)に図11に示した状態量推定部25を用いて推定した第2状態量を示す。
【0079】
図12(a)と図12(b)とを比較すると分かるように、この実施例では、キャリッジ振動の変化量(振動)の小さい駆動条件(駆動条件D)でも第2状態量はおおむね正しく推定されている。これは、フィルタによって高周波成分が除去され、信号が鈍った結果、データが補間されたことによる。
【0080】
図13は図11に示した状態量推定部25を用いたフィードバック構成におけるキャリッジの微小振動の抑制効果を示す図である。
【0081】
図13において、横軸は抑制したいキャリッジ振動の大きさ、縦軸は振動低減率であり、振動低減率が0に近いほどキャリッジ振動を抑制できていないことを示す。また、点線は従来のフィードバック制御における振動低減率を、実線はこの実施例の構成で得られた振動低減率を示している。これらを比較すると分かるように、従来の手法では振動が小さいほど振動低減の効果は小さいものであったが、この実施例では振動が小さい場合でも振動を抑制している。
【0082】
従って以上説明した実施例に従えば、第1制御部と第2制御部からなるフィードバック制御構成を記録装置のキャリッジ駆動制御に適用することで、従来は抑制できなかった速度振動を抑制することが可能になる。また、状態量推定部では高周波成分を除去した後の第1状態量(速度)から第2状態量(加速度)を推定するので、種々の駆動条件下でもほぼ正しい第2状態量が推定される。このように、この実施例によれば、制御対象物であるキャリッジ振動抑制を行いつつ、正確なフィードバック制御を行うことができるので、キャリッジ駆動制御をより精確に行うことが可能になり、高品位な画像記録を実現することができる。
【0083】
なお、以上説明したフィードバック制御において、キャリッジ走査速度が速い場合やキャリッジ振動が大きい場合には加速度演算処理を行わず、キャリッジ走査速度が遅い場合やキャリッジ振動が小さい場合には加速度演算処理を行うような構成をとっても良い。
【0084】
また、そのような演算処理を行うか否かは、速度情報の取込みタイミングや取込み分解能と、抑制したい外乱特性によって決定される。例えば、抑制したい外乱の周波数成分がキャリッジ速度情報の取込みタイミングの1/100より低い場合や、抑制したい外乱の振幅が取込み分解能の200倍より小さい場合に加速度演算処理を実行するように決定すればよい。
【0085】
4.フィードバック制御の別の適用例の説明
本発明は上述のように、モータの駆動により物体を移動させるものであれば適用することが可能なので、例えば、多機能プリンタ(MFP)のスキャナユニットや単機能のスキャナ装置のCISやCCDセンサを移動させるスキャナモータの制御に適用できる。
【0086】
スキャナユニットは、画像読取性能を担保するためにCISやCCDセンサの光源点灯タイミングとスキャナユニットの移動量を一致させて画像信号を取得する必要がある。通常、光源点灯タイミングは、スキャナユニットの移動速度が一定であることを前提としているので、スキャナユニットの速度変動を抑制することが重要である。このため、抑制すべき振動対象がスキャナユニットの移動速度になるので、速度と加速度の状態量の組み合わせを上述の第2制御部を適用する。そして、基本的には、図6を参照して説明したキャリッジ制御構成と同じ構成で制御すれば良い。
【0087】
これにより、従来の制御のみでは抑えきれなかったスキャナユニットの高周波数での微小な振動を抑制するとともに、フィードバック制御追従性を改善することができる。その結果、高品位な画像読取が達成できる。
【0088】
さらに本発明は図4〜図5で説明したような記録装置の搬送ローラ駆動制御にも適用できる。記録装置ではキャリッジ走査ごとに搬送ローラを回転させて、記録媒体を間欠搬送するが、このときの搬送量変動を抑制するために本発明のフィードバック制御を適用することができる。この場合、制御対象物は記録媒体の搬送量(位置変動)となるので、搬送ローラの回転量を第1状態量とし、搬送ローラの回転速度を第2状態量として上述の第2制御部に入力すればよい。
【0089】
これにより、より高精度な搬送制御を実現することが可能になる。
【符号の説明】
【0090】
1 記録媒体、2 記録ヘッド、3 キャリッジ、4 ガイド軸、
5 キャリッジモータ、6 アイドルプーリ、7 タイミングベルト、
8 サポート部材、9 固定部、10 接続部材、11 FFC、12 チューブ、
13 サブフレーム、14a、14b インク回収口、15 エンコーダセンサ、
16 リニアスケール、21 制御対象、22 第1制御部、23 制御量推定部、
24 第2制御部、25 状態量推定部、26 合成部、42 第1状態量推定部、
43 第2状態量推定部、44 フィルタ回路、45 微分演算回路
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】