(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021066618
(43)【公開日】20210430
(54)【発明の名称】多孔質炭素材料、多孔質炭素材料の製造方法、複合体、複合体の製造方法、リチウム硫黄電池用の正極、及びリチウム硫黄電池
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/348 20170101AFI20210402BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20210402BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
   !C01B32/348
   !H01M4/36 A
   !H01M4/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】28
(21)【出願番号】2019191235
(22)【出願日】20191018
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区有楽町一丁目1番2号
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
【住所又は居所】大阪府吹田市山手町3丁目3番35号
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】松井 由紀子
【住所又は居所】大阪府吹田市山手町3丁目3番35号 学校法人 関西大学内
(72)【発明者】
【氏名】石川 正司
【住所又は居所】大阪府吹田市山手町3丁目3番35号 学校法人 関西大学内
(72)【発明者】
【氏名】殿納屋 剛
【住所又は居所】大阪府吹田市山手町3丁目3番35号 学校法人 関西大学内
(72)【発明者】
【氏名】日名子 英範
【住所又は居所】東京都千代田区有楽町一丁目1番2号 旭化成株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】小島 綾一
【住所又は居所】東京都千代田区有楽町一丁目1番2号 旭化成株式会社内
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA06
4G146AA15
4G146AC04A
4G146AC04B
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4G146BB11
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4G146CB32
4G146DA05
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA11
5H050CB02
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5H050CB12
5H050GA02
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5H050GA14
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA07
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】硫黄質量当たりの放電容量が大きく、正極材料当たりの放電容量が大きく、かつ優れたサイクル特性が実現可能な、リチウム硫黄電池用の多孔質炭素材料、当該多孔質炭素材料と硫黄の複合体、当該複合体を用いたリチウム硫黄電池用の正極、及び当該正極を用いたリチウム硫黄電池を得る。
【解決手段】窒素含有量が0.2〜2.0質量%であり、窒素吸脱着法のBET法で得られる比表面積が1000〜1800m2/gであり、窒素吸脱着法の急冷固相密度関数法(QSDFT)により得られる細孔容積が0.50〜0.80cm3/gである、多孔質炭素材料。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有量が0.2〜2.0質量%であり、
窒素吸脱着法のBET法で得られる比表面積が1000〜1800m2/gであり、
窒素吸脱着法の急冷固相密度関数法(QSDFT)により得られる細孔容積が0.50〜0.80cm3/gである、
多孔質炭素材料。
【請求項2】
波数800〜1900cm-1のレーザーラマンスペクトル図において、
1250〜1385cm-1の間にピークP1を有し、
1550〜1620cm-1の間にピークP2を有し、
前記P1とP2の間の、最小点Mのベースラインからの高さLと、P1のベースラインからの高さH1の比(L/H1)が0.25〜0.54である、請求項1に記載の多孔質炭素材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多孔質炭素材料の製造方法であって、
窒素含有炭素材料を薬品賦活する工程と、
前記薬品賦活後に、不活性ガス中で熱処理する工程を有する、
多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項4】
前記不活性ガス中での熱処理の温度が、900℃以上である、請求項3に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項5】
前記薬品賦活において、
下記式(I):
窒素含有量の減少率(質量%)=((B−A)/B)×100 (I)
(式(I)において、Aは前記多孔質炭素材料中のXPSで測定される窒素含有量(質量%)であり、Bは前記窒素含有炭素材料中のXPSで測定される窒素含有量(質量%)である。)
で定義される窒素含有量の減少率が、70〜99質量%である、請求項3又は4に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項6】
前記窒素含有炭素材料中の窒素含有量が2〜45質量%である、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項7】
薬品賦活がアルカリ賦活である、
請求項3乃至6のいずれか一項に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の多孔質炭素材料と硫黄との複合体。
【請求項9】
硫黄含有量が40〜70質量%である、請求項8に記載の複合体。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の複合体の製造方法であって、
前記多孔質炭素材料と、融点以上の温度に加熱した硫黄とを混合する混合工程を有する、
複合体の製造方法。
【請求項11】
請求項8又は9に記載の複合体を含有するリチウム硫黄電池用の正極。
【請求項12】
請求項11に記載の正極を具備するリチウム硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質炭素材料、多孔質炭素材料の製造方法、複合体、複合体の製造方法、リチウム硫黄電池用の正極、及びリチウム硫黄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭に代表される多孔質炭素材料は、その吸着分離性能を利用して、液相での排水処理・脱色・精製や、気相での空気浄化・脱臭・ガス分離・溶剤回収等に使用されている。
また、多孔質炭素材料は、その多孔性を利用して、触媒担体としての用途、又は電気二重層キャパシタの活物質としての用途にも使用されている。
【0003】
一方、リチウム二次電池は、非水電解質としてリチウム塩の有機電解液を用いており、軽量でエネルギー密度が高く、携帯電話又はノートパソコンの電源として利用されており、今後はハイブリッド車に代表される電動自動車等の移動体用の電源としての利用も期待されている。
そのため、近年では、容量密度がより高く、しかも低コストである電池に対する要求がますます高まっている。
【0004】
一般に、リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、Co、Ni、Mn、Fe等とLiとを含む金属酸化物が用いられているが、近年、これらの正極活物質に代えて、理論的な容量密度が極めて高く、しかも低コストである硫黄を正極活物質に用いるリチウム硫黄電池の開発が行われている。
【0005】
リチウム硫黄電池は、硫黄系化合物を正極活物質として用い、リチウムのようなアルカリ金属又はリチウムイオン等の金属イオンの挿入脱離が起こる物質、例えばシリコンを負極活物質として用いる二次電池である。
硫黄の酸化還元反応は可逆的であり、反応電子数が多いことから、1672mAh/gという金属酸化物正極の約10倍の高い理論容量を持っている。
【0006】
しかしながら、リチウムと硫黄から成る正極活物質には、下記の問題点が存在する。
まず、リチウムと硫黄から成る正極活物質は、電気伝導性に乏しいため、表面に近い部分のみでしか電子の授受を行えず、電気化学的酸化還元反応に関与する硫黄の利用率が低くなるため、電池容量が低くなってしまうという問題点を有している。
また、充放電中の反応によって、式Li2x(式中、xは4〜8)で表されるリチウムポリスルフィドが電解液へ溶出してしまい、正極上に存在する硫黄を損失してしまう原因となり、これに伴い、リチウム硫黄電池の容量が低下する、という問題点を有している。かかるリチウム硫黄電池の容量低下を防ぐためには、Li2xの溶出を止めることが望ましい。
【0007】
上述した問題点を解決する技術として、導電性材料である炭素材料と硫黄とを複合化する技術が提案されている。
前記導電性材料としては、炭素材料以外に導電性高分子も知られているが、炭素材料は、導電性高分子と比較して高い導電性を有すること、構造安定性に優れること、及び難燃性であることから、注目されている。
【0008】
炭素材料と硫黄を複合化した複合体を得、これを正極材料とする技術としては、例えば、粒子径75μm以下の硫黄及び/又は硫黄化合物の粒子、並びに、中空構造を有する所定の炭素微粒子を原料とし、これらをメカノフュージョンにより複合化して形成された、硫黄及び/又は硫黄化合物の粒子を核とし、かつその表面に炭素微粒子層を有する構成の複合体を得、これを正極材料として用いる技術が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0009】
また、チオ硫酸ナトリウムを水に溶解させ、無水酢酸を添加し水溶液とし、カーボンブラックを添加して混合し、水溶液のままメカノケミカル法で混合し、遠心分離と濾過で上澄みを除去し、濾残をカーボンブラック−硫黄ナノ粒子複合体として得、当該複合体を、リチウム硫黄電池の正極材料として用いる技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
かかる技術は、強力なずり応力及び遠心力を加えることで反応させて、炭素材料と硫黄を複合化し、複合体を得る技術である。
【0010】
さらに、硫黄と活性炭を155℃で5時間加熱することによって、硫黄を31%含む活性炭から成る複合材料を作製する技術が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0011】
さらにまた、窒素含有炭素材料を薬品賦活して、窒素含有の多孔質炭素材料を炭素材料として用い、硫黄と複合化する技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0012】
上記特許文献4では、窒素含有の多孔質炭素材料を用いて得られた「炭素材料と硫黄の複合材料」は、硫黄の担持量が54〜62質量%と大きく、リチウム硫黄電池の正極活物質として用いた場合、硫黄質量当たりの容量、及び硫黄と炭素材料を含む正極材料当たりの容量が大きく、かつサイクル特性に優れている、という利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−92881号公報
【特許文献2】特開2006−92883号公報
【特許文献3】特開2012−204332号公報
【特許文献4】特開2018−39685号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Progress in Natural Science: Materials International, 25, 612−621(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の、メカノフュージョンにより複合化して形成した硫黄及び/又は硫黄化合物の粒子を核とし、表面に炭素微粒子層を有する構成の複合体を正極材料として用いたリチウム硫黄電池は、硫黄のほとんどが、炭素材料の外表面に堆積するか、又は遊離の硫黄として存在するために、硫黄の利用率が低く、硫黄質量当たりの容量が小さい、という問題点を有しており、さらには硫黄が溶出するためにサイクル特性が著しく低いという問題点を有している。
【0016】
また、特許文献3に記載されている技術は、硫黄質量当たりの容量が小さく、また、硫黄含有量が22.9質量%と低いため、硫黄と炭素材料を含む正極材料の質量当たりの容量が小さい、という問題点を有している。また、特許文献3に記載されている技術によって得られた複合体を正極材料として含むリチウム硫黄電池のサイクル特性も実用上不十分である、という問題点を有している(特許文献3の図10参照)。
【0017】
さらに非特許文献1に記載されている正極材料を用いたリチウム硫黄電池は、硫黄質量当たりの容量は比較的大きいが、硫黄含有量が31質量%であるため、硫黄と炭素材料を含む正極材料の質量当たりの容量が低いという問題点を有している。また、非特許文献1に記載の正極材料の製造方法は複雑である、という問題点も有している。
【0018】
さらにまた、特許文献4に記載されている技術により得られる複合体は、特許文献1〜3や非特許文献1に記載されている技術により得られる複合体に比べて、硫黄の担持量が大きく、これをリチウム硫黄電池の正極活物質として用いた場合、硫黄質量当たりの容量、及び硫黄と炭素材料を含む正極材料当たりの容量が大きい。また、テトラグライム(G4)溶媒を電解液に用いたサイクル特性は優れている、という利点を有している。
しかしながら、サイクル特性は不十分である、という問題点を有している。また汎用的に用いられる溶媒であるカーボネート溶媒を用いたサイクル特性は開示されていない。
【0019】
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑み、硫黄質量当たりの放電容量、硫黄と炭素材料を含む正極材料当たりの放電容量が大きく、優れたサイクル特性を有する正極材料としての多孔質炭素材料、当該多孔質炭素材料と硫黄との複合体、当該複合体を用いたリチウム硫黄電池用の正極、及び当該正極を用いたリチウム硫黄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、特定の窒素含有量を有し、かつ特定の構造を有する多孔質炭素材料により上述した従来技術の問題点を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記のとおりである。
【0021】
〔1〕
窒素含有量が0.2〜2.0質量%であり、
窒素吸脱着法のBET法で得られる比表面積が1000〜1800m2/gであり、
窒素吸脱着法の急冷固相密度関数法(QSDFT)により得られる細孔容積が0.50〜0.80cm3/gである、
多孔質炭素材料。
〔2〕
波数800〜1900cm-1のレーザーラマンスペクトル図において、
1250〜1385cm-1の間にピークP1を有し、
1550〜1620cm-1の間にピークP2を有し、
前記P1とP2の間の、最小点Mのベースラインからの高さLと、P1のベースラインからの高さH1の比(L/H1)が0.25〜0.54である、前記〔1〕に記載の多孔質炭素材料。
〔3〕
前記〔1〕又は〔2〕に記載の多孔質炭素材料の製造方法であって、
窒素含有炭素材料を薬品賦活する工程と、
前記薬品賦活後に、不活性ガス中で熱処理する工程を有する、
多孔質炭素材料の製造方法。
〔4〕
前記不活性ガス中での熱処理の温度が、900℃以上である、前記〔3〕に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
〔5〕
前記薬品賦活において、
下記式(I):
窒素含有量の減少率(質量%)=((B−A)/B)×100 (I)
(式(I)において、Aは前記多孔質炭素材料中のXPSで測定される窒素含有量(質量%)であり、Bは前記窒素含有炭素材料中のXPSで測定される窒素含有量(質量%)である。)
で定義される窒素含有量の減少率が、70〜99質量%である、前記〔3〕又は〔4〕に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
〔6〕
前記窒素含有炭素材料中の窒素含有量が2〜45質量%である、前記〔3〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
〔7〕
薬品賦活がアルカリ賦活である、前記〔3〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の多孔質炭素材料の製造方法。
〔8〕
前記〔1〕又は〔2〕に記載の多孔質炭素材料と硫黄との複合体。
〔9〕
硫黄含有量が40〜70質量%である、前記〔8〕に記載の複合体。
〔10〕
前記〔8〕又は〔9〕に記載の複合体の製造方法であって、
前記多孔質炭素材料と、融点以上の温度に加熱した硫黄とを混合する混合工程を有する、
複合体の製造方法。
〔11〕
前記〔8〕又は〔9〕に記載の複合体を含有するリチウム硫黄電池用の正極。
〔12〕
前記〔11〕に記載の正極を具備するリチウム硫黄電池。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、多孔質炭素材料と硫黄とを組み合わせた複合体を用いたリチウム硫黄電池用の正極を具備するリチウム硫黄電池において、硫黄質量当たりの放電容量が大きく、正極材料当たりの放電容量が大きく、かつ優れたサイクル特性が実現できる。
本発明によれば、上記特性を有するリチウム硫黄電池用の多孔質炭素材料、当該多孔質炭素材料と硫黄の複合体、当該複合体を用いたリチウム硫黄電池用の正極、及び当該正極を用いたリチウム硫黄電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】多孔質炭素材料のレーザーラマンスペクトル図から、ピークからの高さ(H1、H2)、最小値Mからの高さ(L)を算出する方法についての説明図である。
【図2】実施例1の多孔質炭素材料と硫黄との複合体の硫黄含有量を測定したときの熱重量分析(TG)のグラフである。
【図3】比較例1、実施例1〜3で得られた多孔質炭素材料の細孔分布を示すグラフである。
【図4】比較例1、実施例1〜3で得られた多孔質炭素材料のレーザーラマンスペクトル図である。
【図5】比較例1、実施例1〜3の放電容量のサイクル特性を示すグラフである。
【図6】実施例1の多孔質炭素材料の走査型電子顕微鏡(SEM)像である
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。すなわち、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0025】
〔(A)多孔質炭素材料〕
本実施形態の多孔質炭素材料は、
窒素含有量が0.2〜2.0質量%であり、
窒素吸脱着法のBET法で得られる比表面積が1000〜1800m2/gであり、
窒素吸脱着法の急冷固相密度関数法(QSDFT)により得られる細孔容積が0.50〜0.80cm3/gである。
本実施形態の多孔質炭素材料が、上述の構成を有していることにより、当該多孔質炭素材料と硫黄とを組み合わせた複合体を用いたリチウム硫黄電池用の正極を具備するリチウム硫黄電池においては、硫黄質量当たりの放電容量が大きく、正極材料当たりの放電容量が大きく、かつ優れたサイクル特性が実現できる。
【0026】
(多孔質炭素材料の製造方法)
本実施形態の多孔質炭素材料の製造方法は、窒素含有炭素材料を薬品賦活する工程と、前記薬品賦活後に、不活性ガス中で熱処理する工程を有する。
窒素含有炭素材料とはCuKα線をX線源として得られるX線回折図(XRD)において、回折角(2θ)のピーク位置について、(002)面に由来する22.5〜26.8°の位置にメインピークを有する材料であり、また43.0〜46.0°の位置、通常は44.0〜45.5°の位置に弱いピークが観察される。
例えば、有機化合物を原料にして600℃以上の熱履歴を与えることで、窒素含有炭素材料を得ることができる。
本実施形態において用いる窒素含有炭素材料は、炭素及び窒素以外に、酸素・水素等の他の原子も含んでもよい。
【0027】
本発明者らは、窒素含有炭素材料を薬品賦活し、薬品賦活後に不活性ガス中で熱処理することによって、窒素含有量が0.2〜2.0質量%であり、窒素吸脱着法のBET法で得られる比表面積が1000〜1800m2/gであり、かつ窒素吸脱着法の急冷固相密度関数法(QSDFT)により得られる細孔容積が0.50〜0.80cm3/g、である多孔質炭素材料が得られること、及び当該多孔質炭素材料と硫黄との複合体を、リチウム硫黄電池の正極材料として用いることにより、硫黄質量当たりの放電容量、硫黄と炭素材料を含む正極材料当たりの放電容量が大きく、かつ優れたサイクル特性を有することを見出した。
優れたサイクル特性を有するとは、100サイクル充放電したときの放電容量が大きいことである。
この理由は定かではないが、以下のように推測される。ただし、この推測により本発明は何ら限定されない。窒素含有炭素材料に対して薬品賦活及び熱処理を行うことによって細孔を形成すると、窒素部分が優先して除去されるため、ミクロ孔が優先して形成され、薬品賦活を行ったときに生じた可能性のある欠陥構造が、薬品賦活後の不活性ガス中で熱処理によって減少する。これらの効果がリチウム硫黄電池の正極材料として用いた場合に優れた効果を発現していると考えられる。
【0028】
本明細書において、「細孔容積」の「細孔」とは、急冷固相密度関数法(QSDFT)により一義的に定まり、当該方法により得られる細孔分布図において、細孔径が2nm以下の細孔をミクロ孔といい、細孔径が2nm超50nm以下の細孔をメソ孔といい、細孔径が50nm超の細孔をマクロ孔というものとする。
【0029】
薬品賦活と不活性ガス中での熱処理で得られる窒素含有炭素材料から多くの窒素原子が抜けたことにより生成した細孔を有する多孔質炭素材料と硫黄との複合体は、前記メソ孔が少ないため細孔内に充填された硫黄の電解液への溶出が抑制され、また、細孔に硫黄が充填されて、電子授受が可能な硫黄の量が増えることにより硫黄の利用率が上がり、容量が増大し、かつサイクル特性が向上する、という効果が得られる。
【0030】
<窒素含有炭素材料、及びその製造方法>
本実施形態の多孔質炭素材料の製造方法においては、上述のように、窒素含有炭素材料を薬品賦活する工程と、当該薬品賦活後に不活性ガス中で熱処理する工程を有する。
本実施形態において用いる窒素含有炭素材料とは、窒素を含む炭素材料である。
窒素含有炭素材料は、例えば、低分子の窒素含有有機化合物を原料として重合させ、得られたポリマーを炭化処理して製造する方法、低分子の窒素含有有機化合物を原料として化学気相蒸着(CVD)させて製造する方法、ポリマーに低分子の窒素含有有機化合物を含浸又は反応させた後に炭化処理して製造する方法、窒素を含む天然物を炭化処理して製造する方法、炭化物にアンモニア処理、アンモ酸化処理等の後処理を行うことによって製造する方法等によって得られる。
具体的には、ピロール、アセトニトリル、2,3,6,7−テトラシアノ−1,4,5,8−テトラアザナフタレン等の窒素含有有機化合物を化学気相蒸着させる方法、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、ポリアクリロニトリル、アズルミン酸、メレム(melem)重合体、ポリピロール、ポリイミド等、又はこれらを他のポリマーと混合して得られた前駆体を炭化させる方法、豆類等を炭化させる方法、活性炭等の炭素材料にアンモニアガスと酸素含有ガスを反応させる方法、等によって窒素含有炭素材料を製造することができる。
【0031】
窒素含有炭素材料としては、窒素含有量の多い窒素含有炭素材料であることが好ましい。
窒素含有炭素材料中の窒素含有量は、CHN分析によって測定される。
本実施形態においては、窒素含有炭素材料の窒素含有量は、2〜45質量%であることが好ましい。
窒素含有量の下限値は、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上がさらにより好ましい。
窒素含有量の上限値は、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下がさらにより好ましい。
窒素含有量が2質量%以上の窒素含有炭素材料を用いると、ミクロ孔が発達し易い。窒素含有量が45質量%以下の窒素含有炭素材料は炭素構造が発達し易い。
【0032】
窒素含有炭素材料の窒素含有量は、原料として用いるポリマーの窒素含有量を適宜選択する方法により制御することができる。
例えば、窒素含有量の多い窒素含有炭素材料の製造する方法としては、窒素含有量の多いポリマーを炭化する方法を例示できる。
具体的には、アズルミン酸、メレム重合体、ポリアクリロニトリルを炭化して製造された窒素含有炭素材料等が挙げられ、好ましくはアズルミン酸を炭化して製造された窒素含有炭素材料である。
アズルミン酸とは青酸又は青酸オリゴマーを重合して得られるポリマーである。青酸オリゴマーとは青酸の2量体以上である。
ポリマーの炭化処理の条件は、例えば回転炉、トンネル炉、管状炉、ボックス炉、流動焼成炉等を用い、不活性ガス雰囲気下で加熱処理を施すことである。加熱処理の温度は、特に限定されないが、好ましくは600〜1200℃、より好ましくは700〜1000℃、さらに好ましくは750〜900℃である。
上記不活性ガスとしては、以下のガスに限定されないが、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等の不活性ガスが挙げられる。また、不活性ガス雰囲気が減圧下、つまり大気圧よりも低い圧力環境であってもよい。これらの中では、不活性ガスとして窒素ガスを用いることが好ましい。不活性ガス雰囲気は、不活性ガスが静止していても流通していてもよいが、流通しているのが好ましい。その不活性ガス中の酸素濃度は、5%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、1000ppm以下が特に好ましい。
炭化処理の時間としては、好ましくは10秒間〜100時間、より好ましくは5分間〜10時間、さらに好ましくは15分間〜5時間、さらにより好ましくは30分間〜2時間である。
また、炭化処理の際の圧力は、不活性ガスを用いる場合、好ましくは0.01〜5MPa、より好ましくは0.05〜1MPa、さらに好ましくは0.08〜0.3MPa、さらにより好ましくは0.09〜0.15MPaである。
【0033】
<窒素含有炭素材料を薬品賦活する工程>
次に、窒素含有炭素材料を薬品賦活する工程について説明する。
薬品賦活工程は、窒素含有炭素材料を薬品と混合して加熱処理することにより行われる。
薬品賦活に用いる薬品とは、25℃、大気圧において固体である薬品、及びその水和物、水溶液を指す。
薬品としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等のアルカリ金属の硫酸塩;塩化亜鉛、塩化カルシウム、硫化カリウム、燐酸等であり、その水溶液又は水和物を挙げることができる。
これらの1種類を単独で用いてもよく、又は2種類以上を混合して使用してもよい。
【0034】
薬品賦活は、比表面積と細孔容積を所望の範囲に制御する観点から、好ましくは、アルカリ金属を含む薬品を用いたアルカリ賦活であり、具体的には水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等による賦活である。
【0035】
薬品賦活工程における、窒素含有炭素材料に対する薬品の使用量は、特に限定されないが、薬品/窒素含有炭素材料(質量比)は0.1〜10が好ましい。
薬品/窒素含有炭素材料(質量比)の下限値は、0.3以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましい。
また、薬品/窒素含有炭素材料(質量比)の上限値は、5以下がより好ましく、3以下が特に好ましい。
薬品/窒素含有炭素材料(質量比)が0.1以上であると細孔の発達が十分に行われ、10以下であると過賦活を防止でき細孔壁の破壊を抑制できる。
【0036】
薬品賦活の雰囲気は、不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等のガスが挙げられる。
薬品賦活処理は、特に限定されるものではないが、例えば、500〜1100℃、より好ましくは600℃〜1000℃、さらに好ましくは700℃〜900℃の温度で行われる。
薬品賦活処理の温度が500℃以上であると、賦活の進行が十分なものとなり、1100℃以下であると、賦活の過度の進行を抑制でき、また賦活装置の腐食の発生を防止することができる。
薬品賦活処理の時間は、特に限定されるものではないが、10分〜50時間が好ましく、より好ましくは30分〜10時間、特に好ましくは1〜5時間である。
薬品賦活処理の圧力は、通常、常圧であるが、加圧または減圧で行うことも可能である。
賦活炉としては、回転炉、トンネル炉、管状炉、ボックス炉、流動焼成炉等を用いることができる。
【0037】
薬品賦活終了後は、賦活した窒素含有炭素材料を水洗して、薬品賦活に用いた金属成分等を洗浄し、塩酸、硫酸、硝酸等で中和して、再度水洗して酸を洗浄する洗浄工程を設けることが好ましい。
洗浄工程を行った後に、洗浄された生成物を濾過等の固液分離処理を行い、乾燥処理を行う。
【0038】
<薬品賦活後に熱処理する工程>
前記薬品賦活後に、不活性ガス中で熱処理することによって、本実施形態の多孔質炭素材料が得られる。
前記不活性ガスとしては、以下に限定されないが、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等の不活性ガスが挙げられる。
また、不活性ガス雰囲気が減圧下、つまり大気圧よりも低い圧力環境であってもよい。これらの中では、不活性ガスとして窒素ガスを用いることが好ましい。
不活性ガス雰囲気は、不活性ガスが静止していても流通していてもよいが、流通していることが好ましい。
その不活性ガス中の酸素濃度は、5%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、1000ppm以下がさらに好ましい。
【0039】
前記熱処理の温度は、比表面積と細孔容積を所望の範囲に制御する観点から、900℃以上であることが好ましい。より好ましくは1000℃以上であり、さらに好ましくは1100℃以上であり、さらにより好ましくは1200℃以上であり、よりさらに好ましくは1300℃以上である。また1800℃以下が好ましく、1600℃以下がより好ましい。
【0040】
熱処理の時間としては、好ましくは10秒間〜100時間、より好ましくは5分間〜10時間、さらに好ましくは15分間〜5時間、さらにより好ましくは30分間〜2時間である。
また、熱処理の際の圧力は、不活性ガスを用いる場合、好ましくは0.01〜5MPa、より好ましくは0.05〜1MPa、さらに好ましくは0.08〜0.3MPa、さらにより好ましくは0.09〜0.15MPaである。
熱処理は、上述した賦活炉で行うことができる。
【0041】
薬品賦活工程における窒素含有量の減少率は、下記式(I)で定義される。
窒素含有量の減少率(質量%)=((B−A)/B)×100 (I)
(式(I)式において、Aは前記多孔質炭素材料中のXPSで測定される窒素含有量(質量%)であり、かつBは前記窒素含有炭素材料中のXPSで測定される窒素含有量(質量%)である。)
本実施形態では、窒素含有量の減少率は70〜99質量%であることが好ましい。
窒素含有量の減少率の下限値は、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
上限は98質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましい。
窒素含有量の減少率が70質量%以上であればミクロ孔が発達するので好ましい。
窒素含有量の減少率が99質量%以下であれば、比表面積と細孔容積を所望の範囲に制御する観点から好ましい。
賦活工程に要する時間が短いという観点と窒素を残留させるという観点から98質量%以下であることが好ましい。
【0042】
<多孔質炭素材料の物性>
本実施形態の多孔質炭素材料は、窒素含有量が0.2〜2.0質量%、窒素吸脱着法のBET法で得られる比表面積が1000〜1800m2/g、かつ窒素吸脱着法の急冷固相密度関数法(QSDFT)により得られる細孔容積が0.50〜0.80cm3/g、である多孔質炭素材料である。
本実施形態の多孔質炭素材料の窒素含有量は、X線光電子分光分析(XPS)によって下記の条件で測定される。
[測定条件]
X線源:Mg管球(Mg‐Kα線)、管電圧:12kV、エミッション電流:50mA、分析面積:Φ600μm、取り込み領域:N1s、C1s、O1s Pass‐Energy:10eV
得られたスペクトルは、C1sのピーク位置でエネルギー補正を行う。
窒素含有量は、好ましくは0.3〜1.7質量%であり、より好ましくは0.4〜1.5質量%であり、さらに好ましくは0.5〜1.0質量%である。
【0043】
本実施形態の多孔質炭素材料は、窒素含有炭素材料の薬品賦活工程中に、窒素含有炭素材料から窒素原子を抜いて、窒素原子を特定の割合で残すことにより形成することができる。
理論に拘束されることを望まないが、窒素原子は、その不対電子効果によって、炭素原子と比較して、硫黄原子との親和性に優れるので、薬品賦活工程後に得られた多孔質炭素材料中の窒素含有量が0.2質量%以上に調整されていると、多孔質炭素材料と硫黄との複合体を形成するときに、硫黄を細孔中に効果的に担持することができると考えられる。
また窒素含有量が2.0質量%以下に調整されていると、前述のように、多くの窒素原子が抜けたことにより生成した細孔を有する多孔質炭素材料が得られると考えられる。そのためリチウム硫黄電池用の正極材料として好適であると考えられる。
【0044】
本実施形態の多孔質炭素材料の酸素含有量は、好ましくは2〜11質量%であり、より好ましくは5〜10質量%であり、さらに好ましくは6〜9質量%である。
【0045】
本実施形態の多孔質炭素材料の比表面積は、1000〜1800m2/gであり、好ましくは1100〜1680m2/gであり、より好ましくは1150〜1600m2/gであり、さらに好ましくは1200〜1400m2/gである。
硫黄質量当たりの放電容量及び正極材料当たりの放電容量を大きく、更には優れたサイクル特性を実現する観点からから1000〜1800m2/gであるものとする。
多孔質炭素材料の比表面積は、窒素含有炭素材料の薬品賦活条件、及び不活性ガス中での熱処理条件を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0046】
窒素吸脱着法の急冷固相密度関数法(QSDFT)により得られる細孔容積は、0.50〜0.80cm3/gであるものとし、好ましくは0.54〜0.73cm3/gであり、より好ましくは0.56〜0.70cm3/gであり、さらに好ましくは0.58〜0.68cm3/gである。
硫黄質量当たりの放電容量及び正極材料当たりの放電容量を大きく、更には優れたサイクル特性を実現する観点から0.50〜0.80cm3/gであるものとする。
多孔質炭素材料の細孔容積は、窒素含有炭素材料の薬品賦活条件、及び不活性ガス中での熱処理条件を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0047】
窒素吸脱着法の急冷固相密度関数法(QSDFT)により得られる細孔分布図において、細孔径0.6〜1.1nmの細孔容積が0.150〜0.290cm3/gであることが好ましく、0.160〜0.270cm3/gであることがより好ましく、0.170〜0.240cm3/gであることがさらに好ましい。
細孔径0.6〜1.5nmの細孔容積が0.200〜0.420cm3/gであることが好ましく、0.240〜0.410cm3/gであることがより好ましく、0.260〜0.350cm3/gであることがさらに好ましい。
細孔径0.6〜2.0nmの細孔容積が0.300〜0.570cm3/gであることが好ましく、0.350〜0.510cm3/gであることがより好ましく、0.370〜0.480cm3/gであることがさらに好ましい。
【0048】
本実施形態の多孔質炭素材料は、波数800〜1900cm-1のレーザーラマンスペクトル図において、1250〜1385cm-1の間にピークP1と、1550〜1620cm-1の間にピークP2という少なくとも2つの主要なピークを有し、前記P1とP2の間の最小点Mのベースラインからの高さLと、P1のベースラインからの高さH1の比(L/H1)は、硫黄質量当たりの放電容量及び正極材料当たりの放電容量を一層大きく、更には一層優れたサイクル特性を実現する観点から0.25〜0.54であることが好ましい。
【0049】
本実施形態では、レーザーラマンスペクトルは、以下の条件で測定される。
[測定条件]
LD励起固体レーザー λ:532nm 47mW測定条件 532nm 照射2.34 mW 露光時間10秒 積算10回 グレーテング600G/mm
【0050】
P1、P2は、レーザーラマンスペクトル図におけるラマンシフトが1200〜1700cm-1の間の主要な2つのピークである。P1は1250〜1385cm-1の間のピークであり、P2は1550〜1620cm-1の間のピークである。
【0051】
(L/H1)は、好ましくは0.30〜0.50であり、より好ましくは0.33〜0.48である。
(L/H2)は、硫黄質量当たりの放電容量及び正極材料当たりの放電容量を一層大きく、更には一層優れたサイクル特性を実現する観点から、好ましくは0.35〜0.54であり、より好ましくは0.40〜0.51であり、さらに好ましくは0.42〜0.50である。
【0052】
ピークP1の半値幅としては、30〜120cm-1が好ましく、50〜110cm-1がより好ましく、さらに好ましくは70〜100cm-1である。
ピークP2の半値幅としては、20〜70cm-1が好ましく、30〜65cm-1がより好ましく、さらに好ましくは40〜60cm-1である。
【0053】
図1は、本実施形態の多孔質炭素材料のレーザーラマンスペクトル図であり、かかるスペクトルからH1、H2、Lを算出する方法についての説明図である。
なお、図1は、本実施形態の多孔質炭素材料から得られるレーザーラマンスペクトル図を何ら限定するものではない。
図1中、B1は、800〜1250cm-1の最小の強度値であり、B2は1700〜1900cm-1の間の最小の強度値である。
本実施形態で用いるレーザーラマンスペクトル図におけるベースラインは、B1、B2を結んだ直線である。
次に、図1に示すC1、C2は、それぞれ、ピークP1及びP2からラマンシフト軸(横軸)に下ろした垂線とベースラインの交点である。
Dは、ピークP1及びP2との間における最小の強度値Mからラマンシフト軸(横軸)に下ろした垂線とベースラインの交点であり、高さLは、前記Mからラマンシフト軸に下ろした垂線とベースラインの交点までの長さである。具体的には、図1に例示するレーザーラマンスペクトル図では線分MDの長さである。
一方、高さH1は、P1からラマンシフト軸に下ろした垂線とベースラインの交点までの長さである。図1に例示するレーザーラマンスペクトル図では、線分P1C1の長さが高さH1に相当する。
高さH2は、P2からラマンシフト軸に下ろした垂線とベースラインの交点までの長さである。図1に例示するレーザーラマンスペクトル図では線分P2C2の長さが高さH2に相当する。
【0054】
〔(B)複合体〕
本実施形態の複合体は、上述した本実施形態の多孔質炭素材料と硫黄との複合体である。
【0055】
(複合体の製造方法)
多孔質炭素材料と硫黄との複合体の製造方法は、多孔質炭素材料と、融点以上の硫黄とを混合する工程を含む。
複合体の製造方法としては、以下の方法が例示できる。
まず多孔質炭素材料と硫黄の粉末を混合する。
次いで、硫黄の融点以上に加熱して硫黄を溶融させて毛細管現象によって多孔質炭素材料の細孔内へ硫黄を含浸させる。
溶融温度は、硫黄の融点である107℃以上であればよいが、好ましくは130℃以上であり、より好ましくは150℃以上である。また、溶融温度は、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは180℃以下であり、さらに好ましくは170℃以下である。
硫黄の揮発を抑制する観点から、細孔内への硫黄の含浸は密閉容器中で行うことが好ましい。反応時間は0.1〜100時間が好ましく、より好ましくは0.5〜20時間であり、さらに好ましくは1〜10時間である。
雰囲気は空気でもよいし、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等の不活性ガスでもよい。
【0056】
次いで、細孔に含浸されなかった硫黄を除去するために、硫黄の含浸処理をした多孔質炭素材料を加熱する。加熱温度は250℃以上が好ましく、270℃以上がより好ましく、290℃以上がさらに好ましい。
加熱温度は500℃以下が好ましく、400℃以下が好ましく、330℃以下がさらに好ましい。
容器は密閉容器でも開放容器でもよい。密閉容器の場合は、容器の上部は加熱部よりも温度が低いことが好ましい。雰囲気は空気でもよいし、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等の不活性ガスでもよいが、操作の容易さという観点から空気が好ましい。
【0057】
多孔質炭素材料と硫黄を混合するときの質量比率は、多孔質炭素材料1部に対して、硫黄は0.3部以上が好ましく、0.9部以上がより好ましく、1.1部以上がさらに好ましい。質量比率については、多孔質炭素材料1部に対して、硫黄は20部以下が好ましく、8部以下がより好ましく、5部以下がさらに好ましい。
【0058】
多孔質炭素材料と硫黄との複合体は、多孔質炭素材料に硫黄が含有されている。本実施形態の複合体の硫黄含有量は、40〜70質量%が好ましい。
硫黄含有量の下限値は、正極材料当たりの放電容量を一層大きくする観点から、40質量%以上が好ましく、より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。
硫黄含有量の上限値は、多孔質炭素材料の製造の観点から70質量%以下であり、67質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましい。
ここで硫黄含有量とは、下記式:
硫黄含有量=(硫黄の質量)/(多孔質炭素材料と硫黄との複合体の質量)×100
により算出される値である。
本実施形態の多孔質炭素材料と硫黄との複合体中の硫黄の含有量は、微細孔に取り込まれた硫黄は蒸発し難く、微細孔外の硫黄は蒸発し易いことを利用して、サンプルを以下の方法で調製し、熱重量分析(TG)により測定することができる。
多孔質炭素材料と硫黄を混合した後、密閉容器中で、155℃で5時間保持し、硫黄を融解させ、毛細管現象によって多孔質炭素材料の細孔内へ充填させる。その後、そのまま300℃まで昇温し、2時間保持し、多孔質炭素材料の表面に残留した硫黄を蒸発させて除去し、室温まで空冷し、容器を開放して多孔質炭素材料と硫黄との複合体を取り出しサンプルとする。
続いて、熱重量分析(TG)を用いて、多孔質炭素材料と硫黄との複合体中の硫黄含有量を測定する。具体的には、島津製作所社製、DTG−60AHを用い、セルに試料を10mg入れ、測定ガスAr、流量50ml/min、開始温度30℃、昇温速度5℃/min.、及び上限温度600℃の条件下で測定を行う。
【0059】
便宜上、後述する実施例中の実施例1で製造した多孔質炭素材料と硫黄との複合体について、上記条件下に測定して得たTGの図2を用いて、得られたTGから硫黄含有量の算出方法を説明する。
図2に示すTGのグラフにおいて、昇温とともに質量が減少していくが、300℃〜500℃の領域に、グラフの接線の傾きが不連続に変化する点が出現する。
初期値の質量%を100、グラフの接線の傾きが不連続に変化する点の質量%がXであるとすると、硫黄含有量Yは、Y=100−X、と定義される。
【0060】
本実施形態の多孔質炭素材料と硫黄との複合体は、CuKα線をX線源として得られるX線回折図(XRD)において、回折角(2θ)のピーク位置について、下記の条件(1)及び(2)を満たすことが好ましい。
(1)多孔質炭素材料に特徴的なピークとして、22.5〜26.0°の位置にピークP1を有すること。
(2)硫黄に特徴的なピークを実質的に有さないこと。
XRDは、管電圧:20kV、管電流:40mA、分光結晶:あり、散乱スリット:8.0mm、発散スリット:2/3°、受光スリット:開放、スキャン速度:40.0°/分、サンプリング幅:0.02°、スキャン法:2θ/θ法で測定される。
条件(1)について、複合体は、23.0〜25.0°の位置にピークP1を有することがより好ましく、23.2〜24.5°にピークP1を有することがさらに好ましい。また、複合体は、43.0〜46.0°の位置にピークを有してもよく、好ましくは44.0〜45.5の位置にピークを有する。43.0〜46.0°の位置のピークは強度が弱く観測されないことも多いが、XRDの縦軸を拡大するとピークが観察されることもある。さらに、22.5〜26.0°の位置のピークP1は、43.0〜46.0°の位置のピークよりも強度が大きいことが好ましい。
条件(2)について、硫黄の特徴的なピークは、23.0°±0.3°の位置に強いピーク(P2)を有する。硫黄の特徴的なピークは、その他に、15.3°±0.3°、25.8°±0.3°、26.7°±0.3°、及び27.7°±0.3°の位置にピークを有する。
【0061】
本実施形態の多孔質炭素材料と硫黄との複合体は、硫黄に特徴的なピークを実質的に有さないことが好ましい。本明細書では、「硫黄に特徴的なピークを実質的に有さない」とは、硫黄に由来するピーク強度が、炭素材料に由来するピーク強度に対して小さいことであり、具体的には、ピークP2の強度をI(P2)とし、ピークP1の強度をI(P1)としたときに、I(P2)/I(P1)が、0.2以下であることである。I(P2)/I(P1)は、好ましくは0.1以下であり、さらに好ましくは0.05以下である。
【0062】
〔(C)リチウム硫黄電池用の正極〕
本実施形態のリチウム硫黄電池用の正極は、以上のようにして得られた多孔質炭素材料と硫黄との複合体を含有する。
本実施形態のリチウム硫黄電池の正極は、本実施形態の多孔質炭素材料と硫黄との複合体と、必要に応じて、結着材と、導電助剤と、集電体とを備える。
多孔質炭素材料と硫黄との複合体は、主に活物質として機能するが、本実施形態のリチウム硫黄電池の正極は、本実施形態の多孔質炭素材料と硫黄との複合体以外の活物質を含んでもよい。
【0063】
本実施形態の正極に用いられる結着材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニル、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴムなどのビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル系フッ素ゴム、熱可塑性フッ素ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、水系バインダー等が挙げられる。
なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
結着材の含有割合は、活物質に対して1〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。結着材の含有割合が1質量%以上であると正極の強度が十分になり、結着材の含有割合が20質量%以下であると電気抵抗の増大又は容量の低下を更に抑制できる。
【0064】
本実施形態の正極に用いられる導電助剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、及びカーボンナノチューブが挙げられる。
なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。導電助剤の含有割合は、活物質に対して1〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。
【0065】
本実施形態の正極に用いられる集電体としては、電極の電気的接続を可能にするものであれば特に限定されず、その材質として、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、及びこれらの金属を含む合金等が挙げられる。これらの中で、アルミニウム、チタン、タンタル、及びこれらの金属を含む合金から成る群より選ばれるものが好ましく、特にアルミニウムが好ましい。これらの金属又は合金を、箔状、穴開け箔状、メッシュ状等にしたものを正極の集電体として用いることができる。
【0066】
次に、本実施形態のリチウム硫黄電池の正極の製造方法を説明する。
本実施形態のリチウム硫黄電池の正極の製造方法は、活物質として多孔質炭素材料と硫黄との複合体を用いる以外は、公知の方法であれば特に限定されない。例えば、多孔質炭素材料と硫黄との複合体に、結着材、導電助材及び溶媒を加えてスラリーとし、そのスラリーを集電体に塗布や充填し、乾燥した後にプレスして高密度化することにより、リチウム硫黄電池の正極を製造する方法が挙げられる。
集電体に積層する正極層の厚みは、20〜400μm程度が好ましい。正極層の厚みが20μm以上であると、電池全体に対する活物質量の割合が多くなり、エネルギー密度も多くなる傾向があるため好ましい。一方で、正極層の厚みが400μm以下であると、電極内部の抵抗が小さくなり、出力密度が上がる傾向があるため好ましい。
【0067】
本実施形態のリチウム硫黄電池の正極の製造に用いる溶媒は、水系、非水系のいずれでもよい。
非水系の溶媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N−メチルピロリドン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチル等が挙げられる。
上記スラリーは、撹拌機、加圧ニーダー、ボールミル及びスーパーサンドミル等の分散装置により混練して調製される。
また、上記スラリーに、粘度を調整するための増粘剤を添加してもよい。増粘剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、酸化スターチ、リン酸化スターチ及びカゼインが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0068】
〔(D)リチウム硫黄電池〕
以下、本実施形態のリチウム硫黄電池用の正極を備えるリチウム硫黄電池の一例を説明する。
なお、リチウム硫黄電池に用いられ得る材料、リチウム硫黄電池の製造方法等は、下記の具体例に限定されるものではない。
本実施形態のリチウム硫黄電池は、正極として、本実施形態のリチウム硫黄電池の正極を備え、その他の構成については特に限定されず、リチウム硫黄電池の正極以外は公知のものであってもよい。
例えば、本実施形態のリチウム硫黄電池は、セパレータと、そのセパレータを介して対向して配置された本実施形態のリチウム硫黄電池用の正極と、負極と、それらに接触した電解液と外装体とを備える。
本実施形態のリチウム硫黄電池は、上述のように配置された負極及び正極を含む電極体と、当該電極体を収納する外装体とを有し、外装体内の空間に電解液を注入し、シールすることにより得ることができる。
【0069】
負極は、正極と同様にして、集電体上に負極活物質を含有する負極層を形成することにより、製造することができる。
負極の集電体としては、電極の電気的接続を可能にするものであれば特に限定されず、その材質としては、以下に限定されるものではないが、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン及びステンレスが挙げられる。これらの内、薄膜に加工し易いという観点及びコストの観点から、銅が好ましい。集電体の形状としては、例えば、箔状、穴開け箔状及びメッシュ状が挙げられる。また、集電体として、多孔性材料、例えばポーラスメタル(発泡メタル)及びカーボンペーパー等も用いることができる。
負極活物質としては、リチウムを含む材料であればよく、金属リチウム又はリチウム合金の他に、リチウム酸化物、リチウム複合酸化物、リチウム硫化物、リチウム複合硫化物などが挙げられる。リチウム合金としては、例えば、アルミニウム又はシリコン、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム等とリチウムとの合金が挙げられる。負極活物質は、金属リチウム、又はシリコンとリチウムとの合金であることが好ましい。
負極としては、金属リチウム又はリチウム合金そのものでもよいし、例えば、負極活物質とグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。
【0070】
電解液は、リチウム含有電解質を非水溶媒に溶解して調製することができる。
リチウム含有電解質としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiCF(CF35、LiCF2(CF34、LiCF3(CF33、LiCF4(CF32、LiCF5(CF3)、LiCF3(C253、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiN(C25CO)2、LiI、LiAlCl4、LiBC48、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、LiPF6、LiFSI、LiTFSIが好ましく、LiTFSIがより好ましい。
さらに、これらのリチウム塩濃度は、好ましくは0.1〜3.0mol/L、より好ましくは0.5〜2.0mol/Lである。
【0071】
前記非水溶媒としては、例えば、カーボネート類、エーテル類、ケトン類、ラクトン類、ニトリル類、アミン類、アミド類、硫黄化合物、ハロゲン化炭化水素類、エステル類、ニトロ化合物、リン酸エステル系化合物、スルホラン系炭化水素類、及びイオン性液体から適宜選択することができる。
特に、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等のカーボネート類;ジメトキシエタン(DME)、トリグライム(G3)及びテトラグライム(G4)等のエーテル類;ジオキソラン(DOL)、テトラヒドロフラン等の環状エーテル;1,1,2,2−テトラフルオロ−3−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)−プロパン(HFE)、及びそれらの混合物が好適である。より好ましくはカーボネート類を含む溶媒であり、さらに好ましくは(FEC)と(HFE)との混合物である。
【0072】
セパレータは、通常のリチウム硫黄電池に用いられるものであれば、材質又は形状は特に制限されない。このセパレータは、正極と負極とが物理的に接触しないように分離するものであり、イオン透過性が高いものであることが好ましい。
セパレータとしては、例えば、合成樹脂微多孔膜、織布、不織布等が挙げられ、合成樹脂微多孔膜が好ましい。合成樹脂微多孔膜の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン;さらにはポリアミド、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。
これらの中ではポリエチレン及びポリプロピレンが好ましい。なお、作製するリチウム硫黄電池の正極と負極とを直接接触させない構造にした場合は、セパレータを用いる必要はない。
【0073】
本実施形態のリチウム硫黄電池の電極体の構造は、特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレータとを、扁平渦巻状に巻回して巻回式極板群としたり、これらを平板状として積層して積層式極板群としたりすることによって、これら極板群を外装体中に封入した構造とすることが一般的である。
【0074】
外装体としては、金属缶、ラミネートフィルム等を使用できる。
金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。この場合は、例えば、当該金属缶を負極端子とし、絶縁体を挟んで当該金属缶にかしめられた金属蓋を正極端子とする。電極タブによって電極体と端子とを電気的に接続する。
また、前記ラミネートフィルムとしては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内層樹脂フィルムから成る3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。
金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内層樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、ヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変成ポリオレフィン等が好適に使用できる。
ラミネートフィルム外装体を使用する場合は、電極端子の端部を外装体の外部空間に引き出した状態でラミネートフィルムの周縁部をシールする。シール方法はヒートシールが好ましい。
【0075】
本実施形態のリチウム硫黄電池は、ペーパー型電池、ボタン型電池、コイン型電池、積層型電池、円筒型電池等の形態を有するものとすることができる。
【実施例】
【0076】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本実施形態を更に詳細に説明するが、これらは例示的なものであり、本実施形態は、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
したがって、当業者は以下に示す実施例に様々な変更を加えて本発明を実施することができ、かかる変更は本発明に包含される。
【0077】
〔分析方法〕
(CHN分析法)
窒素含有炭素材料を測定用試料とした。
ジェイサイエンスラボ社製の元素分析装置(商品名「MICRO CORDER JM10」)を用い、2500μgの試料を試料台に充填してCHN分析を行った。
試料炉の温度を950℃、燃焼炉(酸化銅触媒)の温度を850℃、還元炉(銀粒+酸化銅のゾーン、還元銅のゾーンと酸化銅のゾーンとから成る)の温度を550℃に設定した。
また、酸素流量を15mL/分、He流量を150mL/分に設定した。
検出器として熱伝導度検出器(TCD)を用いた。
アンチピリン(Antipyrine)を用いてマニュアルに記載の方法でキャリブレーションを行った。
酸素元素の含有量(質量%)は、100質量%から炭素元素、窒素元素、水素元素の含有量(質量%)を差し引くことによって算出した。
【0078】
(比表面積・細孔容積・細孔分布の測定法)
多孔質炭素材料を測定用試料とした。
Quantachrome社のAUTOSORB iQを用い、BET法により比表面積を、急冷固相密度関数法(QSDFT)により細孔分布及び細孔容積を測定した。
具体的には、試料を100℃で3時間真空脱気して、測定した。
液体窒素温度で窒素の吸着等温線を測定し、比表面積、細孔容積、及び細孔分布の測定を行った。
【0079】
(X線光電子分光分析(XPS)の測定法)
窒素含有炭素材料、及び多孔質炭素材料を測定用試料とした。
JEOL社製JPS−9010MCを用い、粉末用セルに充填して下記の条件で測定した。
X線源:Mg管球(Mg‐Kα線)、管電圧:12kV、エミッション電流:50mA、分析面積:Φ600μm、取り込み領域:N1s、C1s、O1s Pass‐Energy:10eV
得られたスペクトルは、C1sのピーク位置でエネルギー補正を行った。
炭素元素、窒素元素、酸素元素の含有量(質量%)の合計を100質量%とした。
【0080】
(レーザーラマンスペクトルの測定法)
多孔質炭素材料を測定用試料とした。
Tokyo Instruments Inc.社製の3D顕微レーザーラマン分光装置 Nanofinder30を用い、粉末用セルに充填して下記の条件で測定した。
LD励起固体レーザー λ:532nm 47mW測定条件 532nm、照射2.34mW、露光時間10秒、積算10回、グレーテング600G/mm。
1250〜1385cm-1の間のピークをP1とする。
1550〜1620cm-1の間のピークをP2とする。
P1とP2の間の、最小点Mのベースラインからの高さをLとする。
P1のベースラインからの高さをH1とする。
P2のベースラインからの高さをH2とする。
【0081】
(SEMの測定方法)
多孔質炭素材料を測定対象とした。
走査型顕微鏡(日立製 SU−1500、Hitachi High−Tech Solutions)を用い、表面状態の観察を行った。
アルミ製の試料台に導電性カーボンテープを用い、各粉末試料を貼り付け、チャンバー内に取り付けた。
チャンバー内を真空にした後、Working distanceを15mm、加速電圧15kVで試料を観察した。
【0082】
(硫黄含有量の測定方法)
多孔質炭素材料と硫黄との複合体中の硫黄の含有量の測定を行った。
微細孔に取り込まれた硫黄は蒸発し難く、微細孔外の硫黄は蒸発し易いことを利用して、サンプルを以下の方法で調製した。
多孔質炭素材料と硫黄を混合した後、密閉容器中で、155℃で5時間保持し、硫黄を融解させ、毛細管現象によって多孔質炭素材料の細孔内へ充填させた。その後、そのまま300℃まで昇温し、2時間保持し、多孔質炭素材料の表面に残留した硫黄を蒸発させ除去し、室温まで空冷し、容器を開放して多孔質炭素材料と硫黄との複合体を取り出してサンプルとした。
続いて、熱重量分析(TG)を用いて、多孔質炭素材料と硫黄との複合体中の硫黄含有量を測定した。
具体的には、島津製作所社製、DTG−60AHを用い、セルに試料を10mg入れ、測定ガスAr、流量50mL/min、開始温度30℃、昇温速度5℃/min.、および上限温度600℃の条件下で測定を行った。
得られたTGから硫黄含有量の算出方法を、後述する〔実施例1〕である図2を用いて説明する。
TGのグラフにおいて、昇温とともに質量が減少していくが、300℃〜500℃の領域に、グラフの接線の傾きが不連続に変化する点が出現する。
初期値の硫黄含有量(質量%)を100、グラフの接線の傾きが不連続に変化する点の硫黄含有量(質量%)がXであるとすると、硫黄含有量Yは、Y=100−X、と定義される。
実施例1ではX=46であり、Y=54(質量%)であった。
実施例2、3、比較例1においても同様の方法で、硫黄含有量の算出を行った。
【0083】
〔リチウム硫黄電池の作製〕
(リチウム硫黄電池の正極の作製)
水系バインダー(結着材)を純水に溶解させて5質量%の溶液を調製した。
これにアセチレンブラック(導電助剤)を添加し、次いで、活物質(後述する実施例1〜3、比較例1で製造した多孔質炭素材料と硫黄との複合体)を添加し、正極スラリーを調製した。
活物質と導電助剤と結着材との質量比は、活物質:導電助剤:結着材=90:5:5になるようにした。
得られた正極スラリーを、Al多孔質集電体に活物質量として7.0mg/cm2となるように充填した。
その後、大気圧下で40℃のオーブンで1時間乾燥した。
乾燥後、乾燥物をロールプレスに通して加圧成形し、24×24mmのサイズに切り抜き、室温下で真空乾燥して正極を得た。
正極層の厚みは約250μmであった。
【0084】
(リチウム硫黄電池用の負極の作製)
露点−40℃以下の大気雰囲気中において、厚さ30μmのLi箔を、30×30mmに切り抜き、リチウム硫黄電池用の負極とした。
【0085】
(リチウム硫黄電池の作製)
露点−40℃以下の大気雰囲気中において以下の手順でリチウム硫黄電池を作製した。
上記項目(リチウム硫黄電池の正極の作製)により作製した正極、上記項目(リチウム硫黄電池用の負極の作製)により作製した負極、リチウム含有電解質としてビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiTFSI)、非水溶媒としてフルオロエチレンカーボネート(FEC)/1,1,2,2−テトラフルオロ−3−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)−プロパン(HFE)の混合溶媒を用いた。
電解液の調製に関しては、FEC:HFEを1:1のVolumeで混合し、LiTFSIをFECとHFEの混合溶媒に溶かして、1.0mol/LのLiTFSI/FEC:HFEになるようにして電解液を調製した。
添加剤としてビニレンカーボネート(VC)を10質量%加えた。
セパレータとしてポリプロピレン系微多孔膜を用いた。
セルとしてラミネートセルを用い、そのセル内に、正極とセパレータと負極とを順に積層するように収容し、さらに電解液を注入し、リチウム硫黄電池を作製した。
【0086】
〔充放電試験〕
活物質(正極)を作用極とし、定電流充放電試験を行った。
充電時のモードは、C.C.法(C.C.はconstant currentの略称である。)とし、放電時はC.C.モードとした。
設定電流密度は167.2mA/gとした(電流密度1672mA/gを1Cと定義する。以下、167.2mA/gを0.1Cと示す。)。
カットオフ電圧については、下限を1.0V、上限を3.0Vとした。
なお、充放電試験は25℃の環境にて行った。
充電容量、及び放電容量は、硫黄の質量当たりで定義した。
100サイクル目の放電容量(mAh/g−sulfur)を下記表2に示す。
なお、サイクル効率は下記式によって算出した。
サイクル効率(%)=((充電容量(mAh/g−sulfur))/(放電容量(mAh/g−sulfur)))×100
【0087】
〔窒素含有炭素材料の製造例〕
(アズルミン酸の製造)
水350gに青酸150gを溶解させた水溶液を容器中で調製し、この水溶液を攪拌しながら、25%アンモニア水溶液120gを10分かけて添加し、得られた混合液を35℃に加熱した。すると、青酸の重合が始まり黒褐色の重合物が析出し始め、温度は徐々に上昇し45℃となった。
重合が始まってから2時間後、30質量%青酸水溶液を200g/時間の速度で添加し始め、4時間かけて800g添加した。
青酸水溶液の添加中は容器を冷却して反応温度が50℃を維持するように制御した。この温度で重合反応液を100時間攪拌した。
得られた黒色沈殿物をろ過によって分離した。このときの沈殿物の収率は、用いた青酸の全量に対して96質量%であった。分離後の沈殿物を水洗した後、乾燥器にて120℃で4時間乾燥させて、アズルミン酸を得た。
得られたアズルミン酸について、ジェイサイエンスラボ社製の元素分析装置(商品名「MICRO CORDER JM10」)を用い、2500μgのアズルミン酸試料を試料台に充填してCHN分析を行った。
試料炉の温度を950℃、燃焼炉(酸化銅触媒)の温度を850℃、還元炉(銀粒+酸化銅のゾーン、還元銅のゾーンと酸化銅のゾーンとから成る)の温度を550℃に設定した。また、酸素流量を15mL/分、He流量を150mL/分に設定した。検出器としてTCDを用いた。
アンチピリン(Antipyrine)を用いてマニュアルに記載の方法でキャリブレーションを行った。
その結果、上記のようにして得られたアズルミン酸の組成は、炭素元素40.0質量%、窒素元素29.8質量%、水素元素4.1質量%であった。
ここで、上述の乾燥条件では吸着水が残存するため、差分は主に吸着水中の酸素元素と水素元素とに由来するものと考えられる。
【0088】
(窒素含有炭素材料の製造)
上述のようにして得られたアズルミン酸6.7gを内径25mmの石英管に充填し、大気圧下、500Ncc/min.の窒素気流中で1時間20分かけて800℃まで昇温し、800℃で1時間ホールドして炭化処理をして、続いて遊星ボールミルにて粉砕して、窒素含有炭素材料を得た。
<CHN分析法>
窒素含有炭素材料のCHN分析結果を下記表1に示す。
<XPS分析法>
窒素含有炭素材料のXPS分析結果を下記表1に示す。
【0089】
〔比較例1〕
(賦活方法、及び多孔質炭素材料の製造)
上述した〔窒素含有炭素材料の製造例〕で得られた窒素含有炭素材料2gを、水酸化カリウム4gと純水の混合溶液20mLに加え、沈殿を防ぐために撹拌させながら、100℃で水を除去した。
その後、石英ボートに試料を移し、横型管状炉の石英管に入れ、アルゴンガスを流量500Ncc/minで流し、5分間放置することでガス交換を行った。交換後、15分かけて150℃まで昇温し、150℃で1時間加熱処理することで、内容物を乾燥させた。
その後、800℃まで1時間かけて昇温し、1時間加熱処理を行い、その後に降温して内容物を回収した。
内容物を0.3Lの水で水洗し、さらに1mol/Lの塩酸水溶液0.5Lで水洗し、その後、水で炉液がほぼ中性になるまで水洗し、濾過で回収し、乾燥させて多孔質炭素材料を得た。
本操作を反復して多孔質炭素材料を量産した。
【0090】
<XPS分析>
多孔質炭素材料のXPS分析結果を下記表2に示す。
窒素含有量の減少率は85質量%であった。
【0091】
<比表面積・細孔容積・細孔分布の測定>
多孔質炭素材料の比表面積、及び細孔容積の測定結果を下記表2に示す。
細孔分布の分析結果を図3に示す。
【0092】
<ラマン分析>
多孔質炭素材料のラマン分析結果を図4、解析結果を表2に示す。
【0093】
<多孔質炭素材料と硫黄との複合体の製造方法、及び硫黄含有量の測定>
上述のようにして製造した多孔質炭素材料0.43gを用いて、多孔質炭素材料:硫黄=35:65の質量比で混合した後、内径20mm、高さ60mmの密閉容器中で、155℃で5時間保持することで、硫黄を融解させ、毛細管現象によって多孔質炭素材料の細孔内へ充填させた。
その後、そのまま300℃まで昇温し、2時間保持し、多孔質炭素材料の表面に残留した硫黄を蒸発させて除去し、室温まで空冷し、容器を開放して多孔質炭素材料と硫黄との複合体を得た。
複合化の工程は全て大気下で行った。
得られた多孔質炭素材料と硫黄との複合体の硫黄含有量を熱重量分析(TG)で測定した。測定結果を表2に示す。
【0094】
<充放電試験>
上述の〔充放電試験〕を0.1Cで実施した。サイクル特性の評価結果を図5に示す。100サイクル目の放電容量を表2に示す。
【0095】
〔実施例1〕
(多孔質炭素材料の製造)
上述した〔比較例1〕で製造した多孔質炭素材料2gを石英ボートに入れボックス炉に設置した。
ボックス炉を真空脱気したのちに窒素ガスで置換した。
この操作を2回繰り返したのちに、窒素流量1000Ncc/minで流し、10℃/min.で1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保持した。
その後に降温して内容物を回収し、多孔質炭素材料を得た。
【0096】
<XPS分析>
多孔質炭素材料のXPS分析結果を下記表2に示す。
【0097】
<比表面積・細孔容積・細孔分布の測定>
多孔質炭素材料の比表面積、及び細孔容積の測定結果を下記表2に示す。
細孔分布の分析結果を図3に示す。
【0098】
<ラマン分析>
多孔質炭素材料のラマン分析結果を図4、解析結果を下記表2に示す。
【0099】
<SEMの測定>
測定結果を図6に示す。
【0100】
<多孔質炭素材料と硫黄との複合体の製造方法、及び硫黄含有量の測定>
多孔質炭素材料:硫黄=35:65の質量比に代えて43:57にした。その他の条件は、比較例1の(多孔質炭素材料と硫黄との複合体の製造方法)を反復して、多孔質炭素材料と硫黄との複合体を得た。
得られた多孔質炭素材料と硫黄との複合体の硫黄含有量を熱重量分析(TG)で測定した。測定結果を表2に示す。
【0101】
<充放電試験>
上述の〔充放電試験〕を0.1Cで実施した。サイクル特性の評価結果を図5に示す。100サイクル目の放電容量を表2に示す。
【0102】
〔実施例2〕
(多孔質炭素材料の製造)
昇温の温度条件を、1000℃代えて1200℃にした。その他の条件は〔実施例1〕の熱処理方法を反復して多孔質炭素材料を得た。
【0103】
<XPS分析>
多孔質炭素材料のXPS分析結果を下記表2に示す。
【0104】
<比表面積・細孔容積・細孔分布の測定>
多孔質炭素材料の比表面積、及び細孔容積の測定結果を下記表2に示す。
細孔分布の分析結果を図3に示す。
【0105】
<ラマン分析>
多孔質炭素材料のラマン分析結果を図4、解析結果を下記表2に示す。
【0106】
<多孔質炭素材料と硫黄との複合体の製造方法、及び硫黄含有量の測定>
多孔質炭素材料:硫黄=35:65の質量比に代えて43:57にした。その他の条件は、比較例1の(多孔質炭素材料と硫黄との複合体の製造方法)を反復して、多孔質炭素材料と硫黄との複合体を得た。
得られた多孔質炭素材料と硫黄との複合体の硫黄含有量を熱重量分析(TG)で測定した。測定結果を表2に示す。
【0107】
<充放電試験>
上述の〔充放電試験〕を0.1Cで実施した。サイクル特性の評価結果を図5に示す。100サイクル目の放電容量を表2に示す。
【0108】
〔実施例3〕
(多孔質炭素材料の製造)
昇温の温度条件を、1000℃代えて1400℃にした。その他の条件は〔実施例1〕の熱処理方法を反復して多孔質炭素材料を得た。
【0109】
<XPS分析>
多孔質炭素材料のXPS分析結果を下記表2に示す。
【0110】
<比表面積・細孔容積・細孔分布の測定>
多孔質炭素材料の比表面積、及び細孔容積の測定結果を下記表2に示す。
細孔分布の分析結果を図3に示す。
【0111】
<ラマン分析>
多孔質炭素材料のラマン分析結果を図4、解析結果を下記表2に示す。
【0112】
<多孔質炭素材料と硫黄との複合体の製造方法、及び硫黄含有量の測定>
多孔質炭素材料:硫黄=35:65の質量比に代えて、46:54にした。その他の条件は、比較例1の(多孔質炭素材料と硫黄との複合体の製造方法)を反復して、多孔質炭素材料と硫黄との複合体を得た。
得られた多孔質炭素材料と硫黄との複合体の硫黄含有量を熱重量分析(TG)で測定した。測定結果を表2に示す。
【0113】
<充放電試験>
上述の〔充放電試験〕を0.1Cで実施した。サイクル特性の評価結果を図5に示す。100サイクル目の放電容量を表2に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
図5から、実施例1〜3の多孔質炭素材料と硫黄との複合体は、リチウム硫黄電池の正極として使用した場合、硫黄質量当たりの放電容量、硫黄と炭素材料を含む正極材料当たりの放電容量が大きく、かつ繰り返し充放電しても放電容量が大きく、優れたサイクル特性を有することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の多孔質炭素材料と硫黄との複合体はリチウム硫黄電池の正極として、産業上の利用可能性がある。
また、本発明の多孔質炭素材料は、上記リチウム硫黄電池の正極の原料として産業上の利用可能性がある。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】