(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021066686
(43)【公開日】20210430
(54)【発明の名称】ジメチロールアルカン酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/27 20060101AFI20210402BHJP
   C07C 59/10 20060101ALI20210402BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20210402BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
   !C07C51/27
   !C07C59/10
   !C09J175/04
   !C09D175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】27
(21)【出願番号】2019192158
(22)【出願日】20191021
(71)【出願人】
【識別番号】000105648
【氏名又は名称】コニシ株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区道修町1丁目6番10号
(74)【代理人】
【識別番号】100101085
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 健至
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 知理
(74)【代理人】
【識別番号】100185258
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 宏理
(72)【発明者】
【氏名】前田 真也
【住所又は居所】埼玉県さいたま市桜区西堀5−3−35 コニシ株式会社材料科学研究所内
(72)【発明者】
【氏名】乾 純
【住所又は居所】埼玉県さいたま市桜区西堀5−3−35 コニシ株式会社材料科学研究所内
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 剛
【住所又は居所】福岡県北九州市戸畑区仙水町1−1 九州工業大学分子工学研究所内
【テーマコード(参考)】
4H006
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC46
4H006BA93
4H006BB17
4H006BE44
4H006BN10
4H006BS10
4J038DG081
4J038DG232
4J040EF081
4J040EF262
(57)【要約】
【課題】ポリウレタン樹脂の原料として有用なジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸などを含むジメチロールアルカン酸を簡便、高収率及び低コストに製造し、ウレタン樹脂及び/又はその水分散体や、接着剤・塗料・コーティング材及び/又は補修剤を製造する。
【解決手段】トリメチロールアルカンにシクロアルカノンを添加して脱水保護を行った化合物を得る第1の工程、次いで前記化合物にニトロキシラジカル誘導体化合物を添加して酸化反応を行った化合物を得る第2の工程、次いで第2の工程で得た化合物に対して脱保護反応を行いジメチロールアルカン酸を得る第3の工程により、ジメチロールアルカン酸を製造し、さらに、該ジメチロールアルカン酸を用いてウレタン樹脂及び/又はその水分散体や、接着剤・塗料・コーティング材及び/又は補修剤を製造する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
(式中、Rはアルキル基を示す。)で表されるトリメチロールアルカンに一般式(2):
【化2】
(式中、nは1、2または3を示す。)で表されるシクロアルカノンを添加して脱水保護を行い、一般式(3):
【化3】
(式中、Rはアルキル基、nは1、2または3を示す。)で表される化合物を得る第1の工程、
該一般式(3)で表される化合物にニトロキシラジカル誘導体化合物を添加して酸化反応を行い、一般式(4):
【化4】
(式中、Rはアルキル基、nは1、2または3を示す。)で表される化合物を得る第2の工程、
及び該一般式(4)で表される化合物に対して脱保護反応を行い、一般式(5):
【化5】
(式中、Rはアルキル基を示す。)で表されるジメチロールアルカン酸を得る第3の工程
を有する、ジメチロールアルカン酸の製造方法。
【請求項2】
前記トリメチロールアルカンが、トリメチロールエタン及び/又はトリメチロールプロパンであることを特徴とする、請求項1に記載のジメチロールアルカン酸の製造方法。
【請求項3】
前記シクロアルカノンが、シクロヘキサノンであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のジメチロールアルカン酸の製造方法。
【請求項4】
前記ニトロキシラジカル誘導体化合物が、TEMPO、TEMPO誘導体、AZADOL及び/又はAZADOL誘導体であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のジメチロールアルカン酸の製造方法。
【請求項5】
前記第1の工程の脱水保護が、トリメチロールアルカン1モルに対してシクロアルカノン0.001モルから100モルで行われることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のジメチロールアルカン酸の製造方法。
【請求項6】
一般式(1):
【化1】
(式中、Rはアルキル基を示す。)で表されるトリメチロールアルカンに一般式(2):
【化2】
(式中、nは1、2または3を示す。)で表されるシクロアルカノンを添加して脱水保護を行い、一般式(3):
【化3】
(式中、Rはアルキル基、nは1、2または3を示す。)で表される化合物を得る第1の工程、
該一般式(3)で表される化合物にニトロキシラジカル誘導体化合物を添加して酸化反応を行い、一般式(4):
【化4】
(式中、Rはアルキル基、nは1、2または3を示す。)で表される化合物を得る第2の工程、
及び該一般式(4)で表される化合物に対して脱保護反応を行い、一般式(5):
【化5】
(式中、Rはアルキル基を示す。)で表されるジメチロールアルカン酸を得る第3の工程によりジメチロールアルカン酸を製造し、次いで、該ジメチロールアルカン酸を用いてウレタン樹脂及び/又はその水分散体を得る工程を有することを特徴とする、ウレタン樹脂及び/又はその水分散体を製造する方法。
【請求項7】
一般式(1):
【化1】
(式中、Rはアルキル基を示す。)で表されるトリメチロールアルカンに一般式(2):
【化2】
(式中、nは1、2または3を示す。)で表されるシクロアルカノンを添加して脱水保護を行い、一般式(3):
【化3】
(式中、Rはアルキル基、nは1、2または3を示す。)で表される化合物を得る第1の工程、
該一般式(3)で表される化合物にニトロキシラジカル誘導体化合物を添加して酸化反応を行い、一般式(4):
【化4】
(式中、Rはアルキル基、nは1、2または3を示す。)で表される化合物を得る第2の工程、
及び該一般式(4)で表される化合物に対して脱保護反応を行い、一般式(5):
【化5】
(式中、Rはアルキル基を示す。)で表されるジメチロールアルカン酸を得る第3の工程によりジメチロールアルカン酸を製造し、次いで、該ジメチロールアルカン酸を用いて接着剤・塗料・コーティング材及び/又は補修剤を得る工程を有することを特徴とする、接着剤・塗料・コーティング材及び/又は補修剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジメチロールアルカン酸の製造方法、具体的には、高収率及び低コストに製造するジメチロールアルカン酸の製造方法と、該製造方法により製造されたジメチロールアルカン酸を用いたウレタン樹脂及び/又はその水分散体や接着剤・塗料・コーティング材及び/又は補修剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂及び/又はその水分散体や接着剤・塗料・コーティング材及び/又は補修剤の製造において、ジメチロールアルカン酸(例えば、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸など)は原料として極めて有用であり、大量に生産され用いられている。そこで、ジメチロールアルカン酸を合成する方法として、従来より様々な手法が提唱されている。
【0003】
例えば、トリメチロールアルカンをアセトンで保護する工程を行い、その後、酸化する方法が提案されている(特許文献1を参照。)。
【0004】
また、トリメチロールアルカンをそのまま酸化反応を行い、副生成物を除去する方法が提案されている(特許文献2を参照。)。
【0005】
さらに、対応するアルデヒドとホルムアルデヒドとさらに反応させることによりジメチロールアルカナールに変換し、さらに当該ジメチロールアルカナールを酸化することにより、ジメチロールアルカン酸を製造する方法が提案されている(特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−286951号公報
【特許文献2】特開平06−192169号公報
【特許文献2】特許第5839249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ジメチロールアルカン酸の合成において、複雑な合成経路を経ることなく、安定的かつ簡便な手順で、工業的に大量合成することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、ジメチロールアルカン酸を量産するものとして従来提案されている特許文献1の方法を検討したところ、トリメチロールアルカンをアセトンで脱水保護する第1の工程から得られる化合物が僅か20.1%と非常に低い収率でしか得られないものであった。そのため、ジメチロールアルカン酸を量産する場合、上記方法では、極めて大量のアセトンが必要となり、試薬の安全管理、製造および廃棄に係るコストが多大なものとなることが明らかとなった。さらに、上記方法ではジメチロールアルカン酸を得る工程において逐次的に減圧脱水を行わなければならず、量産化においては特殊な専用の製造装置を新たに準備する必要があり、大量生産には適したものとはいえないものであった。このように上記提案の方法は、改善が求められるものであることが判明した。また、特許文献2にて提案の方法は、ホルマリン及び硝酸といった安全性に特に配慮が求められる試薬を要するとともに加圧水添反応工程を実施する専用設備が必要で、試薬の安全管理、製造および廃棄に係るコストが多大であり大量生産には適さないものであった。さらに、特許文献3にて提案の対応するアルデヒドとホルムアルデヒドとさらに反応させることによりジメチロールアルカナールに変換し、さらに当該ジメチロールアルカナールを酸化することにより、ジメチロールアルカン酸を製造する方法は、工程が複雑であり、かつ、反応工程の途中で生成されるアクロレインが不安定なため、バッチ式の製造にするとその収率が大幅に減少するという問題が生じるものであった。
【0009】
そこで本願出願人は、上記課題を解決するために様々な試行錯誤を行う中で、トリメチロールアルカンにシクロアルカノンを添加して室温で脱水保護を行うことにより、意外にも安定的かつ高収率にトリメチロールアルカン由来のアセタール化合物を取得することが可能であることを新たに見出した。また、該トリメチロールアルカン由来のアセタール化合物にニトロキシラジカル誘導体化合物を添加して低温条件下で酸化反応を行わせることにより、意外にもトリメチロールアルカン由来のアセタール化合物を脱水保護されたままに酸化反応を行うことができるものであることについても新たに見出した。そしてさらに、当該反応に引き続きさらに脱保護反応を行うことにより、ジメチロールアルカン酸の結晶を安価で効率良く大量生産出来得るものであることを新たに見出した。そして、これら一連の工程を行うものとして本願発明を完成させた。本願発明は以下の構成の手段を採用したものである。
【0010】
上記課題を解決するための第1の手段は、一般式(1):
【化1】
(式中、Rはアルキル基を示す。)で表されるトリメチロールアルカンに一般式(2):
【化2】
(式中、nは1、2または3を示す。)で表されるシクロアルカノンを添加して脱水保護を行い、一般式(3):
【化3】
(式中、Rはアルキル基、nは1、2または3を示す。)で表される化合物を得る第1の工程、
該一般式(3)で表される化合物にニトロキシラジカル誘導体化合物を添加して酸化反応を行い、一般式(4):
【化4】
(式中、Rはアルキル基、nは1、2または3を示す。)で表される化合物を得る第2の工程、
及び該一般式(4)で表される化合物に対して脱保護反応を行い、一般式(5):
【化5】
(式中、Rはアルキル基を示す。)で表されるジメチロールアルカン酸を得る第3の工程を有する、ジメチロールアルカン酸の製造方法である。
【0011】
上記課題を解決するための第2の手段は、前記トリメチロールアルカンが、トリメチロールエタン及び/又はトリメチロールプロパンであることを特徴とする、本発明の第1の手段に記載のジメチロールアルカン酸の製造方法である。
【0012】
上記課題を解決するための第3の手段は、前記シクロアルカノンが、シクロヘキサノンであることを特徴とする、本発明の第1の手段又は第2の手段に記載のジメチロールアルカン酸の製造方法である。
【0013】
上記課題を解決するための第4の手段は、前記ニトロキシラジカル誘導体化合物が、TEMPO、TEMPO誘導体、AZADOL及び/又はAZADOL誘導体であることを特徴とする、本発明の第1の手段〜第3の手段のいずれか1の手段に記載のジメチロールアルカン酸の製造方法である。
【0014】
上記課題を解決するための第5の手段は、前記第1の工程の脱水保護が、トリメチロールアルカン1モルに対してシクロアルカノン0.001モルから100モルで行われることを特徴とする、本発明の第1の手段〜第4の手段のいずれか1の手段に記載のジメチロールアルカン酸の製造方法である。
【0015】
上記課題を解決するための第6の手段は、一般式(1):
【化1】
(式中、Rはアルキル基を示す。)で表されるトリメチロールアルカンに一般式(2):
【化2】
(式中、nは1、2または3を示す。)で表されるシクロアルカノンを添加して脱水保護を行い、一般式(3):
【化3】
(式中、Rはアルキル基、nは1、2または3を示す。)で表される化合物を得る第1の工程、
該一般式(3)で表される化合物にニトロキシラジカル誘導体化合物を添加して酸化反応を行い、一般式(4):
【化4】
(式中、Rはアルキル基、nは1、2または3を示す。)で表される化合物を得る第2の工程、
及び該一般式(4)で表される化合物に対して脱保護反応を行い、一般式(5):
【化5】
(式中、Rはアルキル基を示す。)で表されるジメチロールアルカン酸を得る第3の工程によりジメチロールアルカン酸を製造し、次いで、該ジメチロールアルカン酸を用いてウレタン樹脂及び/又はその水分散体を得る工程を有することを特徴とする、ウレタン樹脂及び/又はその水分散体を製造する方法である。
【0016】
上記課題を解決するための第7の手段は、一般式(1):
【化1】
(式中、Rはアルキル基を示す。)で表されるトリメチロールアルカンに一般式(2):
【化2】
(式中、nは1、2または3を示す。)で表されるシクロアルカノンを添加して脱水保護を行い、一般式(3):
【化3】
(式中、Rはアルキル基、nは1、2または3を示す。)で表される化合物を得る第1の工程、
該一般式(3)で表される化合物にニトロキシラジカル誘導体化合物を添加して酸化反応を行い、一般式(4):
【化4】
(式中、Rはアルキル基、nは1、2または3を示す。)で表される化合物を得る第2の工程、
及び該一般式(4)で表される化合物に対して脱保護反応を行い、一般式(5):
【化5】
(式中、Rはアルキル基を示す。)で表されるジメチロールアルカン酸を得る第3の工程によりジメチロールアルカン酸を製造し、次いで、該ジメチロールアルカン酸を用いて接着剤・塗料・コーティング材及び/又は補修剤を得る工程を有することを特徴とする、接着剤・塗料・コーティング材及び/又は補修剤の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る手段の方法によって、トリメチロールプロパン(TMP)などの安価なトリメチロールアルカンを出発原料として、シクロヘキサノンなどのシクロアルカノンで保護の後、2−ヒドロキシ−2−アザアダマンタン(AZADOL(登録商標))や4−アセトアミド TEMPOなどを始めとするニトロキシラジカル誘導体化合物を添加して保護状態を保持したままに酸化反応を行い、その後加水分解することで、ジメチロールブタン酸を始めとするジメチロールアルカン酸を、高品質、低コストかつ効率良く得ることが可能になる。また、本発明に係る手段の方法であれば、安全な0℃〜80℃程度の温度範囲で高品質なジメチロールアルカン酸を製造することが可能であり、ホルマリンや硝酸を使用したり高圧にするなどの特殊な条件を要する製造設備を整える必要がなく、量産化も容易である。
【0018】
そして、上記の本発明に係る手段の方法によって高品質、低コストかつ効率良く製造したジメチロールブタン酸を始めとするジメチロールアルカン酸を原材料として用いることで、ウレタン樹脂及び/又はその水分散体を、高品質かつ低コストにて製造することが可能になる。
【0019】
また、上記の本発明に係る手段の方法によって高品質、低コストかつ効率良く製造したジメチロールブタン酸を始めとするジメチロールアルカン酸を原材料として用いることで、接着剤・塗料・コーティング材及び/又は補修剤を、高品質かつ低コストにて製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の手段のジメチロールアルカン酸の製造方法を説明する図である。
【図2】本発明の手段の一実施態様としてのジメチロールブタン酸の製造方法を説明する図である。
【図3】本発明の手段のジメチロールアルカン酸の製造方法により得られたDMBA前駆体であるDPC結晶と、逆合成で得られたDPCとのIRスペクトルを示す図である。
【図4】本発明の手段のジメチロールアルカン酸の製造方法により得られたDMBA前駆体であるDPC結晶を13C各磁気共鳴(NMR)で分析したスペクトルを示す図である。
【図5】(a)本発明の手段のジメチロールアルカン酸の製造方法により得られたDMBAのIRスペクトルと、(b)市販購入品であるDMBAのIRスペクトルを示す図である。
【図6】本発明の手段のジメチロールアルカン酸の製造方法により得られたDMBAを13C各磁気共鳴(NMR)で分析したスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0022】
[トリメチロールアルカンについて]
本発明に係るトリメチロールアルカンは、一般式(1):
【化1】
(式中、Rはアルキル基である。)で表される。上記一般式(1)のジメチロールアルカン酸における式中Rのアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基またはデシル基などからなり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、より好ましくはメチル基またはエチル基、さらに好ましくはエチル基からなる。
【0023】
[ジメチロールアルカン酸について]
本発明に係るジメチロールアルカン酸は、一般式(5):
【化5】
(式中、Rはアルキル基である。)で表される。上記一般式(4)のジメチロールアルカン酸における式中Rのアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などからなり、好ましくは、メチル基、エチル基またはプロピル基、より好ましくはエチル基からなる。
【0024】
[シクロアルカノンについて]
本発明に係るシクロアルカノンは、一般式(2):
【化2】
(式中、nは1、2または3を示す。)で表される。
そして、本発明に係るシクロアルカノンは、好ましくは、式(6):
【化6】
で表されるシクロヘキサノン、式(7):
【化7】
で表されるシクロペンタノン、及び/又は式(8):
【化8】
で表されるシクロヘプタノンから選択され、より好ましくはシクロヘキサノン及び/又はシクロヘキサノンから選択され、さらに好ましくはシクロヘキサノンである。
【0025】
[ニトロキシラジカル誘導体化合物について]
本発明に係るニトロキシラジカル誘導体化合物は、TEMPO、TEMPO誘導体、AZADOL及び/又はAZADOL誘導体から選択される。TEMPO、TEMPO誘導体、AZADOL及び/又はAZADOL誘導体は、より好ましくは、式(9):
【化9】
で表されるAZADOL(登録商標)(2−ヒドロキシ−2−アザアダマンタン)、式(10):
【化10】
で表される4−アセトアミド TEMPO(4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル)、式(11):
【化11】
で表される4−メトキシ TEMPO(4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル)、式(12):
【化12】
で表される4−オキソ TEMPO(4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル)、及び/又は、式(13):
【化13】
で表されるTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル)から選択される。
【0026】
[ジメチロールアルカン酸の製造方法について]
【0027】
本発明の手段の製造方法においては、以下の工程によりジメチロールアルカン酸を製造する。
【0028】
(1)一般式(1):
【化1】
(式中、Rはアルキル基である。)で表されるトリメチロールアルカンおよび一般式(2):
【化2】
(式中、nは1、2または3を示す。)で表されるシクロアルカノンをそれぞれ量り取り、容器に入れ、撹拌しながら加温して80℃とする。そして、80℃の条件を保持して撹拌し、トリメチロールアルカンとシクロアルカノンとを均一に溶解させる。
【0029】
ここで、トリメチロールアルカンおよびシクロアルカノンの比率は、トリメチロールアルカン1モルに対してシクロアルカノン0.001モルから100モルとする。
【0030】
そして、トリメチロールアルカンおよびシクロアルカノンの比率は、好ましくはトリメチロールアルカン1モルに対してシクロアルカノン0.01モルから50モル、より好ましくはトリメチロールアルカン1モルに対してシクロアルカノン0.1モルから10モル、さらに好ましくはトリメチロールアルカン1モルに対してシクロアルカノン1〜5モル、特に好ましくはトリメチロールアルカン1モルに対してシクロアルカノン2モルとする。
【0031】
(2)トリメチロールアルカンとシクロアルカノンが均一に溶解したら、容器を冷却して室温に戻す。
【0032】
(3)p−トルエンスルホン酸を0.001〜100mol%量り取って容器内へ添加し、24時間撹拌する。
【0033】
(4)酢酸エチルおよび飽和炭酸水素ナトリウムを容器内へ添加し、分液操作を行う。
【0034】
(5)分液操作で得られた有機層を蒸留水で2回洗浄し、容器から有機層を回収する。回収した有機層を濃縮し、さらに冷却して、トリメチロールアルカンが脱水保護された一般式(3):
【化3】
(式中、Rはアルキル基、nは1、2または3を示す。)で表される化合物を得る。
【0035】
(6)一般式(3):
【化3】
(式中、Rはアルキル基、nは1、2または3を示す。)で表される化合物、NaHCO、ニトロキシラジカル誘導体化合物を0.01mol%〜1mol%となるよう量り取って容器内へ入れる。この容器に、さらに酢酸エチルおよび水を添加し、0〜5℃で冷却しながら撹拌して、容器内へ投入した試薬を溶解させる。
【0036】
(7)さらに、容器へ約30分おきに4回、NaOClを添加し、0〜5℃で冷却しながら24時間激しく撹拌する。容器へHClを添加して撹拌後、有機層を回収する。回収した有機層を濃縮して、有機層から溶媒を除去し、その後さらに冷却し、一般式(4):
【化4】
(式中、Rはアルキル基、nは1、2または3を示す。)で表される化合物を得る。
【0037】
(8)上記一般式(4)の化合物を量り取り、容器に入れる。この容器に、エタノール及び水を添加し、撹拌しながら80℃に加熱して均一に溶解させる。この容器に、さらにp−TsOHを3mol%添加し、80℃で一日静置する。その後、エバポレーターにより濃縮、冷却することで、目的の一般式(5):
【化5】
(式中、Rはアルキル基を示す。)で表されるジメチロールアルカン酸が固体として析出した。次いで、得られた固体をMIBKにより加熱溶解させ、冷却することで該ジメチロールアルカン酸の結晶を得る。
【0038】
(9)さらに、上記工程で得たジメチロールアルカン酸を用い、ウレタン樹脂及び/又はその水分散体、接着剤・塗料・コーティング材及び/又は補修剤を製造する。ジメチロールアルカン酸を原料として用いるウレタン樹脂及び/又はその水分散体、接着剤・塗料・コーティング材及び/又は補修剤の製造方法は、当該分野において通常用いられる方法が利用し得る。また、本発明に係るウレタン樹脂及び/又はその水分散体中、接着剤・塗料・コーティング材及び/又は補修剤中には、その他の公知の任意成分が配合されていても良い。具体的には、カオリン、クレー、タルク、珪砂、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の充填剤、染料等の顔料、アルコール類,ケトン類,芳香族炭化水素等の有機溶剤,モノ或いはジ或いはトリエポキサイド化合物等の反応性希釈剤、シランカップリング剤、顔料分散剤、消泡剤、チタンカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤が配合されていても良い。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0040】
以下に示す各種試験に用いるため、トリメチロールプロパン(TMP)(三菱ガス化学株式会社、日本)、シクロヘキサノン(山一化学工業株式会社、日本)、シクロペンタノン(東京化成工業株式会社、日本)、シクロヘプタノン(東京化成工業株式会社、日本)、メチルエチルケトン(MEK)(東京化成工業株式会社、日本)、ジエチルケトン(DEK)(東京化成工業株式会社、日本)、AZADOL(登録商標)(2−ヒドロキシ−2−アザアダマンタン)(東京化成工業株式会社、日本)、4−アセトアミド TEMPO(東京化成工業株式会社、日本)、4−オキソ TEMPO(東京化成工業株式会社、日本)、TEMPO(東京化成工業株式会社、日本)、p−トルエンスルホン酸(江南化工株式会社、日本)、酢酸エチル(山一化学工業株式会社、日本)、NaHCO(東京化成工業株式会社、日本)、NaOCl(日本軽金属株式会社、日本)、HCl(富士フイルム和光純薬株式会社、日本)、エタノール(山一化学工業株式会社、日本)、p−TsOH(p-トルエンスルホン酸の略語なので重複)、KBr(富士フイルム和光純薬株式会社、日本)、テトラブチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社、日本)、ヘキサン(富士フイルム和光純薬株式会社、日本)、硝酸(富士フイルム和光純薬株式会社、日本)、発煙硝酸(富士フイルム和光純薬株式会社、日本)、パラジウム5%を含む活性炭(富士フイルム和光純薬株式会社、日本)、Bi(NO・5HO(富士フイルム和光純薬株式会社、日本)、水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社、日本)、メチルイソブチルケトン(MIBK)(東京化成工業株式会社、日本)をそれぞれ購入した。また、3−ヒドロキシメチル−3−エチル−1,5−ジオキサスピロ[5.5]−ウンデカン(TPC)、3−カルボキシ−3−エチル−1,5−ジオキサスピロ[5.5]−ウンデカン(DPC)、ジメチロールブタン酸(DMBA)は、常法に従ってコニシ株式会社にて合成し、IRスペクトル、13C各磁気共鳴(NMR)スペクトルなどによりその構造を確認したものを対照として使用した。
【0041】
また、以下の試験において、IRスペクトルは、Nicolet iS10 FT−IR(ヤマト科学株式会社、日本)を用いて記録した。13C各磁気共鳴(NMR)スペクトルは、AVANCE NEO 500(Bruker BioSpin、マサチューセッツ州、アメリカ)を用いて記録した。
【0042】
実施例1
本発明の手段のジメチロールアルカン酸の製造方法を用い(図1も参照。)、ジメチロールアルカン酸を製造する試験を実施した。上記製造方法の一例として、シクロアルカノンとしてシクロヘキサノンを用いてTPCを得る第一の工程、TPCを酸化してDPCを得る第二の工程、DPCを加水分解してDMBAを得る第三の工程からなる手順により、DMBAを製造する試験を実施した(図2も参照。)。
【0043】
1)シクロヘキサノンによるTMPの保護の工程
【0044】
TMPを10.0g(74.5mmol)およびシクロヘキサノンを14.6g(149mmol)となるようそれぞれ量り取り、それらを50mLフラスコに入れた。このフラスコを撹拌しながら加温して80℃とし、さらに撹拌しながらTMPとシクロヘキサノンとを均一に溶解させた。TMPとシクロヘキサノンが均一に溶解したら、フラスコを冷却して室温まで戻した。その後、p−トルエンスルホン酸0.283g(2mol%)をフラスコ内へ添加し、24時間撹拌した。その後、酢酸エチルを10mLおよび飽和炭酸水素ナトリウムを上記10mLフラスコ内へ添加し、分液操作を行った。次いで、分液操作で得られた有機層を蒸留水で2回洗浄し、フラスコから有機層を回収した。回収した有機層を濃縮し、さらに冷却した。
【0045】
その結果、TPCの白色固体が13.4g(62.5mmol)、収率83.9%で得られた。
【0046】
2)TPCの酸化の工程
【0047】
TPCを5.00g(23.3mmol)、NaHCOを0.500g、AZADOLを35.7mg(1mol%)となるようそれぞれ量り取り、それらを100mLフラスコに入れた。このフラスコに、酢酸エチルを41mLおよび水を4.6 mL添加し、0〜5℃で冷却しながら撹拌して投入した試薬を溶解させた。さらに、上記フラスコへ約30分おきに4回、NaOClを3.04gそれぞれ添加し、0〜5℃で冷却しながら24時間激しく撹拌した。フラスコへHClを5 ml添加して撹拌後、有機層を回収した。回収した有機層を濃縮して、有機層から溶媒を除去した後に、さらに冷却した。
【0048】
その結果、DPCが結晶化した。貧溶媒であるヘキサンで濾過を行うことにより、DPCが3.97g(17.4mmol)、収率74.6%で得られた。
【0049】
上記で得られた結晶と逆合成で得られたDPC結晶のIRスペクトルをそれぞれ取得して、上記で得られた結晶がDPCであることの確認を行った。その結果、上記で得られた結晶と逆合成で得られたDPC結晶のIRスペクトルにおける各ピークは一致していた(図3を参照。)。上記の製造方法により得られた結晶は、DMBA前駆体であるDPCであることが確認された。
【0050】
さらに、上記で得られた結晶を13C各磁気共鳴(NMR)分析により解析した。13C各磁気共鳴(NMR)で分析したスペクトルから、上記の製造方法により得られた結晶は、DMBA前駆体であるDPCであることが確認された(図4を参照。)。
【0051】
3)DPCの加水分解の工程
【0052】
DPCを3.97g(17.4mmol)を量り取り、50mLフラスコに入れた。このフラスコに、エタノールを4mL、水を15mL添加し、撹拌しながら80℃に加熱して均一に溶解させた。該フラスコへp−TsOHを0.1g(3mol%)を添加し、80℃で一日静置した。その後、エバポレーターにより濃縮、冷却することで、目的のDMBAが固体として析出した。次いで、得られた固体をMIBKにより加熱溶解させ、冷却することで結晶化させた。
【0053】
その結果、DMBAの結晶が2.40g(16.2mmol)、収率93.1%で得られた。
【0054】
購入したDMBA結晶と、上記で得られた結晶とのIRスペクトルをそれぞれ取得して、上記で得られた結晶がDMBAであることの確認を行った。その結果、購入したDMBA結晶のIRスペクトル(図5(a)を参照。)と、上記で得られた結晶のIRスペクトル(図5(b)を参照。)における各ピークは、一致していた。上記の製造方法により得られた結晶は、DMBAであることが確認された。
【0055】
さらに、上記で得られた結晶を13C各磁気共鳴(NMR)分析により解析した。13C各磁気共鳴(NMR)で分析したスペクトルから、上記の製造方法により得られた結晶は、DMBAであることが確認された(図6を参照。)。
【0056】
安価なトリメチロールアルカンであるトリメチロールプロパンを出発原料として、シクロアルカノンであるシクロヘキサノンで保護の後、ニトロキシラジカル誘導体化合物であるAZADOLを添加して保護状態を保持したまま酸化反応を行い、その後加水分解することで、高品質なジメチロールアルカン酸であるジメチロールブタン酸を、低コストで高品質かつ効率良く得ることが可能となることを確認した。
【0057】
実施例2
シクロペンタノンによるTMPの保護の工程
【0058】
シクロペンタノンを用いても、脂環式化合物のシクロアルカノンであるシクロヘキサノンと同様にTMPを脱水保護できるものであることを確認する試験を行った。
TMPを10.0g(74.5mmol)およびシクロペンタノンを12.5g(149mmol)となるようそれぞれ量り取り、それらを50mLフラスコに入れる。このフラスコを撹拌しながら加温して80℃とし、さらに撹拌しながらTMPとシクロヘキサノンとを均一に溶解させた。TMPとシクロペンタノンが均一に溶解したら、上記フラスコを冷却して室温まで戻した。その後、p−トルエンスルホン酸0.283g(2mol%)を該フラスコ内へ添加し、24時間撹拌した。その後、酢酸エチルを10mLおよび飽和炭酸水素ナトリウムを上記10mLフラスコ内へ添加し、分液操作を行った。次いで、分液操作で得られた有機層を蒸留水で2回洗浄し、フラスコから有機層を回収した。回収した有機層を濃縮した。
【0059】
その結果、無色の液体であるアセタール化合物9.46g(計算値で47.2molに相当する量)が得られた。
【0060】
実施例3
シクロヘプタノンによるTMPの保護の工程
【0061】
シクロヘプタノンを用いても、脂環式化合物のシクロアルカノンであるシクロヘキサノンやシクロペンタノンと同様にTMPを脱水保護できるものであることを確認する試験を行った。
TMPを10.0g(74.5mmol)およびシクロペンタノンを16.7g(149mmol)となるようそれぞれ量り取り、それらを50mLフラスコに入れる。このフラスコを撹拌しながら加温して80℃とし、さらに撹拌しながらTMPとシクロヘキサノンとを均一に溶解させた。TMPとシクロヘプタノンが均一に溶解したら、上記フラスコを冷却して室温まで戻した。その後、p−トルエンスルホン酸0.283g(2mol%)を該フラスコ内へ添加し、24時間撹拌した。その後、酢酸エチルを10mLおよび飽和炭酸水素ナトリウムを上記10mLフラスコ内へ添加し、分液操作を行った。次いで、分液操作で得られた有機層を蒸留水で2回洗浄し、フラスコから有機層を回収した。回収した有機層を濃縮した。
【0062】
その結果、無色の液体であるアセタール化合物8.18gが得られた。
比較例4
メチルエチルケトン(MEK)によるTMPの保護
【0063】
鎖式化合物であるMEKが、脂環式化合物のシクロアルカノンのようにTMPの脱水保護ができるか確認する試験を実施した。
TMPを10.0g(74.5mmol)およびMEKを10.7g(149mmol)となるようそれぞれ量り取り、それらを50mLフラスコに入れる。このフラスコを撹拌しながら加温して80℃とし、さらに撹拌しながらTMPとMEKとを均一に溶解させた。TMPとMEKが均一に溶解したら、上記フラスコを冷却して室温まで戻した。その後、p−トルエンスルホン酸0.283g(2mol%)を該フラスコ内へ添加し、24時間撹拌した。24時間撹拌した後、酢酸エチルを10mLおよび飽和炭酸水素ナトリウムを上記10mLフラスコ内へ添加し、分液操作を行った。次いで、分液操作で得られた有機層を蒸留水で2回洗浄し、フラスコから有機層を回収した。回収した有機層を濃縮し、さらに冷却した。
【0064】
その結果、対応するアセタール化合物の無色の液体が得られたが、その量はわずか6.96g(計算値で36.5molに相当する量)とその収率は低いものであった。
【0065】
比較例5
ジエチルケトン(DEK)によるTMPの保護の工程
【0066】
鎖式化合物であるDEKが、脂環式化合物のシクロアルカノンのようにTMPの脱水保護ができるか確認する試験を実施した。
TMPを10.0g(74.5mmol)およびDEKを12.8g(149mmol)となるようそれぞれ量り取り、それらを50mLフラスコに入れる。このフラスコを撹拌しながら加温して80℃とし、さらに撹拌しながらTMPとDEKとを均一に溶解させた。TMPとDEKが均一に溶解したら、上記フラスコを冷却して室温まで戻した。その後、p−トルエンスルホン酸0.283g(2mol%)を該フラスコ内へ添加し、24時間撹拌した。24時間撹拌した後、酢酸エチルを10mLおよび飽和炭酸水素ナトリウムを上記10mLフラスコ内へ添加し、分液操作を行った。次いで、分液操作で得られた有機層を蒸留水で2回洗浄し、フラスコから有機層を回収した。回収した有機層を濃縮し、さらに冷却した。
【0067】
その結果、対応するアセタール化合物の無色の液体が得られたが、その量はわずか5.89g(計算値で28.9molに相当する量)とその収率は低いものであった。
【0068】
実施例1〜実施例3および比較例4〜比較例5の試験結果を、表1に記載した。
【0069】
【表1】
【0070】
実施例1〜3の試験により、シクロヘキサノン、シクロペンタノンおよびシクロヘプタノンなどの、安価な脂環式化合物であるシクロアルカノンをトリメチロールアルカンの脱水保護に用いる新たな手法を採用することにより、トリメチロールアルカンを脱水保護したアセタール化合物を低コスト、簡便かつ効率良く実施できるものであることが確認された。
【0071】
一方、比較例4〜比較例5の試験により、トリメチロールアルカンの脱水保護に、脂環式化合物であるシクロアルカノンではなく、鎖式化合物であるMEKやDEKを用いる方法では、トリメチロールアルカンを脱水保護したアセタール化合物が僅かしか得られず、トリメチロールアルカンの脱水保護の効率が、トリメチロールアルカンの脱水保護にシクロヘキサノン、シクロペンタノンおよびシクロヘプタノンなどの脂環式化合物であるシクロアルカノンを用いる本願発明の手段の方法に比して低くなるという問題が生じるものであることが明らかとなった。この方法では原料ロスが大量に発生するため、所期を生産を達成するためには製造コストが高くなるなどの問題を有することが明らかとなった。
【0072】
トリメチロールアルカンの脱水保護に鎖式化合物であるMEKやDEKを用いる比較例4〜比較例5の方法とは異なる手法についても検討を加える。そこで、鎖式化合物であるMEKやDEKを用いてトリメチロールアルカンの脱水保護する際に加熱脱水し、トリメチロールアルカンを脱水保護したアセタール化合物が得られるか確認する試験を行った。
【0073】
比較例6
MEKを用いた加熱脱水によるTMPの保護試験
【0074】
比較例4とは異なる方法にて、鎖式化合物であるMEKが脂環式化合物のシクロアルカノンのようにTMPの脱水保護ができるかを確認する試験を施した。
TMPを10.0g(74.5mmol)、MEKを21.5g(298mmol)およびp−トルエンスルホン酸を0.283g(2mol%)となるようそれぞれ量り取り、それらを50mLフラスコに入れる。このフラスコをディーンスターク管を用いて80℃で加熱脱水を行い反応させた。その結果、アセタール化合物が4.10g(21.5mmol)、収率28.9%で得られた。
【0075】
比較例7
DEKを用いた加熱脱水によるTMPの保護試験
【0076】
比較例5とは異なる方法にて、鎖式化合物であるDEKが脂環式化合物のシクロアルカノンのようにTMPの脱水保護ができるかを確認する試験を実施した。
TMPを10.0g(74.5mmol)、DEKを25.7g(298mmol)およびp−トルエンスルホン酸を0.283g(2mol%)となるようそれぞれ量り取り、それらを50mLフラスコに入れる。このフラスコをディーンスターク管を用いて80℃で加熱脱水を行い反応させた。その結果、アセタール化合物が6.91g(33.6mmol)、収率45.1%で得られた。
【0077】
上記比較例6〜7の試験結果から、鎖式化合物であるMEKやDEKを用いるトリメチロールアルカンの脱水保護においてトリメチロールアルカンを脱水保護したアセタール化合物が僅かしか得られず、比較例4〜5とは工程を異にする加熱脱水する工程を経たとしても、トリメチロールアルカンの脱水保護の効率がトリメチロールアルカンの脱水保護にシクロヘキサノン、シクロペンタノンおよびシクロヘプタノンなどの脂環式化合物であるシクロアルカノンを用いる本願発明の手段の方法に比して低くなるという問題が生じるものであることが明らかとなった。トリメチロールアルカンを脱水保護したアセタール化合物を得る工程において、鎖式化合物の使用は好ましくないことが理解される。
【0078】
次に、安価なトリメチロールアルカンを出発原料としてシクロアルカノンで保護の後、ニトロキシラジカル誘導体化合物であるAZADOL以外のニトロキシラジカル誘導体化合物を添加しても同様に、保護状態を保持したまま酸化反応を行えるものであることを確認する試験を行った。ニトロキシラジカル誘導体化合物の一例として、4−アセトアミド TEMPO、4−オキソ TEMPO、TEMPOを用いた。また、ニトロキシラジカル誘導体化合物以外の以外の酸化反応を触媒するものである硝酸、発煙硝酸およびPd/C(パラジウムを活性炭に担持させた触媒)においても、保護状態を保持したまま酸化反応を行えるものであることを確認する試験を行った。
【0079】
実施例8
4−アセトアミド TEMPOを用いたTPCの酸化の工程
【0080】
TPCを5.00g(23.3mmol)、NaHCOを0.500g、4−アセトアミド TEMPOを49.7mg(1mol%)、KBrを277mg(2.33mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミドを374mg(1.16mmmol)となるようそれぞれ量り取り、それらを100mLフラスコに入れた。このフラスコに、酢酸エチルを41mLおよび水を4.6 mL添加し、10℃で冷却しながら撹拌し、溶解させた。さらに、約30分おきに上記フラスコへNaOClを3.04gを4回添加し、10℃で冷却しながら24時間激しく撹拌した。その後、フラスコへHClを5ml添加して撹拌後、有機層を回収した。回収した有機層を濃縮して、有機層から溶媒を除去した後に、さらに冷却した。
【0081】
その結果、DPCが結晶化した。貧溶媒であるヘキサンで濾過を行うことにより、DPCが3.08g(13.5mmol)、収率57.9%で得られた。
【0082】
実施例9
4−オキソ TEMPOを用いたTPCの酸化の工程
【0083】
TPCを5.00g(23.3mmol)、NaHCOを0.500g、4−オキソ TEMPOを39.6mg(1mol%)、KBrを277mg(2.33mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド を374mg(1.16mmmol)となるようそれぞれ量り取り、それらを100mLフラスコに入れた。このフラスコに、酢酸エチルを41mLおよび水を4.6 mL添加し、10℃で冷却しながら撹拌し、溶解させた。さらに、約30分おきに上記フラスコへNaOClを3.04gを4回添加し、室温で冷却しながら24時間激しく撹拌した。その後、上記フラスコへHClを5 ml添加して撹拌後、有機層を回収した。回収した有機層を濃縮して、有機層から溶媒を除去した後に、さらに冷却した。
【0084】
その結果、DPCが結晶化したことが確認された。
【0085】
実施例10
TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル)を用いたTPCの酸化の工程
【0086】
TPCを5.00g(23.3mmol)、NaHCOを0.500g、TEMPOを36.3mg(1mol%)、KBrを277mg(2.33mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミドを374mg(1.16mmmol)となるようそれぞれ量り取り、それらを100mLフラスコに入れた。このフラスコに、酢酸エチルを41mLおよび水を4.6 mL添加し、0℃〜5℃で冷却しながら撹拌し、溶解させた。さらに、約30分おきに上記フラスコへNaOClを3.04gを4回添加し、0℃〜5℃で冷却しながら24時間激しく撹拌した。その後、上記フラスコへHClを5 ml添加して撹拌し、有機層を回収した。回収した有機層を濃縮して、有機層から溶媒を除去した後に、さらに冷却した。
【0087】
その結果、DPCが結晶化したことが確認された。
【0088】
比較例11
硝酸もしくは発煙硝酸を用いたTPCの酸化の試験
【0089】
TPCを5.00g(23.3mmol)を量り取り100mLフラスコに入れた。このフラスコに、硝酸2.4mLまたは発煙硝酸1.45mLを添加し、80℃になるよう加熱し、その条件にて3時間加熱保持して反応させた。
【0090】
しかし、硝酸または発煙硝酸のいずれを用いた場合であっても、DPCを得ることが出来なかった。反応後のフラスコ内容物をNMRを用いて測定し分析した。その結果、TPCの酸化反応よりも、TPCの脱保護が優先的に進行してしまったことが確認された。そして、DPCは得られなかったことが確認された。
【0091】
比較例12
Pd/C(パラジウムを活性炭に担持させた触媒)を用いたTPCの酸化の試験
【0092】
TPCを5.00g(23.3mmol)を量り取り100mLフラスコに入れた。このフラスコに、1N水酸化ナトリウムを添加してTPCを懸濁させ、パラジウム5%を含む活性炭 0.5gおよびBi(NO・5HO 0.15gの存在下にて酸素をバブリングし、90℃で4時間加熱した。触媒を濾過して水で洗浄後、HClを用いてpHを酸性にし、ジエチルエーテルで抽出した。
【0093】
ジエチルエーテルを除去後、抽出物をIRおよびNMRにて測定して分析した。その結果、原料のTPCが回収されていてDPCを得ることができなかったことが確認された。
【0094】
実施例8〜実施例10および比較例11〜比較例12の試験結果を、表2に記載した。
【0095】
【表2】
【0096】
実施例8〜実施例10の試験により、トリメチロールアルカンをシクロアルカノンで脱水保護した後に、ニトロキシラジカル誘導体化合物である4−アセトアミド TEMPO、4−オキソ TEMPOまたはTEMPOを添加して酸化反応を進行させると、ニトロキシラジカル誘導体化合物であるAZADOLを用いた場合と同様に、トリメチロールアルカンのシクロアルカノンによる脱水保護状態を保持したままに酸化反応を進行させられることが確認された(表2)。
【0097】
一方、比較例11〜比較例12の試験により、ニトロキシラジカル誘導体化合物とは構造や特性が大きく異なる硝酸、発煙硝酸およびPd/C(パラジウムを活性炭に担持させた触媒)を用いた汎用の酸化触媒物質を用いた場合には、トリメチロールアルカンのシクロアルカノンによる脱水保護の状態を維持することができずに、脱保護されて原料である出発物質のトリメチロールアルカンに戻ってしまうことが確認された(表2)。
【0098】
実施例13
上記試験で製造した本発明の手段の方法により得たジメチロールアルカン酸を用い、ウレタン樹脂及びその水分散体、接着剤・塗料・コーティング材及び補修剤を、それぞれ製造した。その結果、購入品を用いる場合と同様に高品質なウレタン樹脂及びその水分散体、接着剤・塗料・コーティング材及び補修剤をそれぞれ得ることができた。また、従来のメチロールアルカン酸を購入して、それを原材料として利用してウレタン樹脂及びその水分散体、接着剤・塗料・コーティング材及び補修剤の製造する方法に比べて、本発明の手段の方法によりジメチロールアルカン酸を製造し、それを原材料として利用してウレタン樹脂及びその水分散体、接着剤・塗料・コーティング材及び補修剤の製造する方法の方が、コストが減少した。
【産業上の利用可能性】
【0099】
安価なトリメチロールプロパンなどのトリメチロールアルカンを出発原料として、シクロヘキサノンなどのシクロアルカノンで保護の後、AZADOLや4−アセトアミド TEMPOなどをはじめとするニトロキシラジカル誘導体化合物を添加して保護状態を保持したまま酸化反応を行い、その後加水分解することで、高品質なジメチロールブタン酸などのジメチロールアルカン酸を、低コストかつ効率良く得ることが可能となる。さらに、そのようにして得たジメチロールアルカン酸を原材料として利用することで、高品質なウレタン樹脂及びその水分散体、接着剤・塗料・コーティング材及び補修剤を製造することが可能になるとともに、その製造コストをも減少させることが可能となる。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】