(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021067452
(43)【公開日】20210430
(54)【発明の名称】熱間等方圧加圧装置および等方圧加圧処理方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 17/00 20060101AFI20210402BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20210402BHJP
   F27D 7/04 20060101ALI20210402BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20210402BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
   !F27B17/00 301K
   !F27B17/00 301B
   !F27D7/06 C
   !F27D7/04
   !F27D7/02 Z
   !F27D19/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】2020173184
(22)【出願日】20201014
(31)【優先権主張番号】2019190715
(32)【優先日】20191018
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通二丁目2番4号
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】中井 友充
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通二丁目2番4号 株式会社神戸製鋼所内
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一也
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通二丁目2番4号 株式会社神戸製鋼所内
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 克充
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通二丁目2番4号 株式会社神戸製鋼所内
【テーマコード(参考)】
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
4K056AA18
4K056CA01
4K056CA10
4K056FA01
4K056FA11
4K063AA05
4K063AA15
4K063BA02
4K063BA03
4K063BA04
4K063CA09
4K063DA13
4K063DA26
4K063DA32
4K063DA33
(57)【要約】
【課題】高圧容器内の圧力を所定の目標圧力に設定するための圧縮機の負荷を低減することが可能な熱間等方圧加圧装置および等方圧加圧処理方法を提供する。
【解決手段】HIP装置100は、高圧容器100Sと、断熱体Rと、サイドヒータ81と、圧力検出器85と、温度検出器86と、撹拌ファン84と、ヒータ制御部92と、ファン制御部94と、を備える。ヒータ制御部92は、温度検出器86が検出する加熱領域Pの温度を一定に維持するようにサイドヒータ81を制御する。ファン制御部94は、圧力検出器85が検出する本体内部空間100Tの圧力が予め設定された目標圧力範囲よりも低い場合に、撹拌ファン84を制御してガス流を発生させることによって断熱体Rを介して加熱領域Pから非加熱領域NPに伝わる熱量を増大させ、非加熱領域NPの温度上昇に伴って本体内部空間100Tの圧力を増大させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物に対して圧媒ガスを用いて等方圧加圧処理を行う熱間等方圧加圧装置であって、
内周面を有する高圧容器であって、前記内周面によって画定される本体内部空間が内部に形成されている高圧容器と、
前記本体内部空間を、前記被処理物に前記等方圧加圧処理を施すための加熱領域と前記加熱領域の外側の非加熱領域とに仕切る断熱体であって、前記加熱領域を画定する断熱体内周面と前記非加熱領域を画定する断熱体外周面とを含むガス不透過性の断熱体と、
前記加熱領域に配置され、発熱することが可能な少なくとも一つのヒータと、
前記本体内部空間の圧力を検出することが可能な圧力検出部と、
前記加熱領域の温度を検出することが可能な温度検出部と、
前記断熱体の前記断熱体内周面および前記断熱体外周面のうちの少なくとも一方に沿って流れる圧媒ガスのガス流を発生させることが可能なガス流発生部と、
前記温度検出部によって検出される前記加熱領域の温度が、前記被処理物に前記等方圧加圧処理を施すために予め設定された目標温度範囲に含まれるように、前記少なくとも一つのヒータを制御するヒータ制御部と、
前記圧力検出部によって検出される前記本体内部空間の圧力が予め設定された目標圧力範囲よりも低い場合に、前記ガス流発生部を制御して前記ガス流を発生させることによって前記断熱体を介して前記加熱領域から前記非加熱領域に伝わる熱量を増大させ、前記非加熱領域の温度上昇に伴って前記本体内部空間の圧力を増大させるガス流制御部と、
を備える熱間等方圧加圧装置。
【請求項2】
前記ガス流制御部は、前記圧力検出部によって検出される前記本体内部空間の圧力が前記目標圧力範囲に含まれると、前記ガス流発生部による前記ガス流の発生を停止させる、請求項1に記載の熱間等方圧加圧装置。
【請求項3】
前記ガス流発生部は、回転することで前記ガス流を発生させることが可能なファンを含む、請求項1または2に記載の熱間等方圧加圧装置。
【請求項4】
前記ガス流制御部は、前記圧力検出部によって検出される前記本体内部空間の圧力に応じて前記ファンの回転数を制御することが可能である、請求項3に記載の熱間等方圧加圧装置。
【請求項5】
前記ファンによって発生された前記ガス流を前記断熱体の前記断熱体内周面および前記断熱体外周面のうちの少なくとも一方に沿って案内する案内部を更に備える、請求項3または4に記載の熱間等方圧加圧装置。
【請求項6】
前記断熱体は、上下方向に沿って延びる断熱体周壁部と、前記断熱体周壁部の上面部を塞ぐように前記断熱体周壁部に接続される断熱体上壁部と、を有し、
前記案内部は、
前記加熱領域に配置され前記圧媒ガスの通路を挟んで前記断熱体周壁部に対向するように上下方向に沿って延びるガス不透過性の内側周壁部を有する内側ケーシングであって、前記圧媒ガスの透過を許容する内側開口部が前記内側ケーシングの上面部に開口されている、内側ケーシングと、
前記本体内部空間において前記断熱体を囲むように配置される外側ケーシングであって、前記圧媒ガスの通路を挟んで前記断熱体周壁部を囲むように上下方向に沿って延びるガス不透過性の外側周壁部を有し、前記圧媒ガスの透過を許容する外側開口部が前記外側ケーシングの上面部に開口されている、外側ケーシングと、
を有し、
前記断熱体周壁部を貫通して前記断熱体周壁部と前記外側周壁部との間の空間と前記断熱体周壁部と前記内側周壁部との間の空間とを互いに連通させる前記圧媒ガスの通路をそれぞれ形成する複数の第1連通部と、
前記内側周壁部と前記断熱体周壁部との間の空間に対して遮断され、かつ、前記断熱体周壁部を貫通して前記断熱体周壁部と前記外側周壁部との間の空間と前記加熱領域の下端部とを互いに連通させる前記圧媒ガスの通路をそれぞれ形成する複数の第2連通部と、
を更に備え、
前記ガス流発生部は、前記ファンが発生する前記ガス流を、前記断熱体周壁部と前記内側周壁部との間の前記空間に流入させる複数のガス流入部を更に有し、
前記ガス流制御部は、前記加熱領域における前記等方圧加圧処理の終了後に前記ガス流発生部の前記ファンを制御して前記ガス流を発生させることが更に可能であり、
前記圧力検出部によって検出される前記本体内部空間の圧力が前記目標圧力範囲よりも低い場合に前記ガス流制御部が前記ファンを制御して前記ガス流を発生させることに対応して、前記複数のガス流入部から流入した前記ガス流が前記複数の第1連通部を通じて前記断熱体周壁部と前記外側周壁部との間の空間に流入する一方、前記加熱領域における前記等方圧加圧処理の終了後に前記ガス流制御部が前記ファンを制御して前記ガス流を発生させることに対応して、前記複数のガス流入部から流入した前記ガス流が前記内側周壁部および前記断熱体周壁部に沿って上昇するとともに、前記内側開口部から前記加熱領域に流入した後、前記加熱領域を下降し、更に、前記複数の第2連通部を通じて、前記外側周壁部と前記断熱体周壁部との間の空間に流入するように、前記複数の第1連通部と前記複数の第2連通部との間で前記ガス流の流れを切り換えることが可能なガス流切換部を更に備える、請求項5に記載の熱間等方圧加圧装置。
【請求項7】
前記本体内部空間に圧媒ガスを供給することが可能な圧縮機と、
前記圧縮機から前記本体内部空間に圧媒ガスを供給する供給状態と、前記圧縮機から前記本体内部空間への圧媒ガスの供給を停止する供給停止状態との間で、前記圧縮機を切り換えることが可能な圧縮機制御部と、
を更に備え、
前記圧力検出部によって検出される前記本体内部空間の圧力が前記目標圧力範囲よりも低い場合に前記ガス流制御部が前記ガス流を発生させることに対応して、前記圧縮機制御部は前記圧縮機を前記供給停止状態に設定する、請求項1乃至6の何れか1項に記載の熱間等方圧加圧装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の熱間等方圧加圧装置を用いて、被処理物に対して等方圧加圧処理を行う等方圧加圧処理方法であって、
前記圧力検出部によって検出される前記本体内部空間の圧力が前記目標圧力範囲よりも低い場合に、前記加熱領域の温度が前記目標温度範囲に含まれるように前記少なくとも一つのヒータを制御しながら、前記断熱体の前記断熱体内周面および前記断熱体外周面のうちの少なくとも一方に沿って流れる圧媒ガスのガス流を発生させることによって前記断熱体を介して前記加熱領域から前記非加熱領域に伝わる熱量を増大させ、前記非加熱領域の温度上昇に伴って前記本体内部空間の圧力を増大させることで、前記本体内部空間の圧力を前記目標圧力範囲に維持しながら、前記等方圧加圧処理を実行する、等方圧加圧処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間等方圧加圧装置および等方圧加圧処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、HIP法(Hot Isostatic Pressing法:熱間等方圧加圧装置を用いたプレス方法)では、数10 〜 数100MPaの高圧に設定された雰囲気の圧媒ガスのもと、焼結製品(セラミックス等)や鋳造製品等の被処理物が、その再結晶温度以上の高温に加熱され処理される。当該方法では、被処理物中の残留気孔を消滅させることができるという特徴がある。
【0003】
このような従来の熱間等方圧加圧装置は、高圧容器と、当該高圧容器内に配置された逆コップ形状の断熱層と、断熱層内に配置されたヒータと、を有する。ヒータが発熱することで、断熱層内に処理物を処理するホットゾーン(加熱領域)が形成される。処置中の断熱層の上面部は塞がれており、断熱層の下面部は開口されている。この結果、加圧処理中のホットゾーン内は、熱気球のように高温に維持される。
【0004】
特許文献1には、高圧容器内にガスを供給する加圧手段と、前記高圧容器内を加熱する加熱手段と、前記加熱手段によって加熱される加熱領域と前記加熱領域から前記高圧容器の内壁までの非加熱領域とを断熱する断熱手段と、前記高圧容器内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記高圧容器の加熱領域の温度を検出する加熱領域温度検出手段とを備え、前記加圧手段及び前記加熱手段によって前記高圧容器内を昇圧することにより前記高圧容器内の処理品を等方的に加圧する熱間等方圧加圧装置が開示されている。また、当該熱間等方圧加圧装置は、前記加圧手段によるガスの供給を停止した後、前記加熱手段による加熱によって前記高圧容器の加熱領域の温度が予め設定された目標温度に到達したときに、前記高圧容器内が予め設定された目標圧力となるように、前記加圧手段によるガスの供給を停止させるときの圧力及び温度に関する条件を前記目標圧力及び前記目標温度に基づいて予め設定する停止条件設定手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5539645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術では、加圧処理中に高圧容器内の圧力が低下するたびに、圧縮機の作動が必要となり、圧縮機の負荷が増大するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、高圧容器内の圧力を所定の目標圧力に設定するための圧縮機の負荷を低減することが可能な熱間等方圧加圧装置および等方圧加圧処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の局面に係る熱間等方圧加圧装置は、被処理物に対して圧媒ガスを用いて等方圧加圧処理を行う熱間等方圧加圧装置であって、内周面を有する高圧容器であって、前記内周面によって画定される本体内部空間が内部に形成されている高圧容器と、前記本体内部空間を、前記被処理物に前記等方圧加圧処理を施すための加熱領域と前記加熱領域の外側の非加熱領域とに仕切る断熱体であって、前記加熱領域を画定する断熱体内周面と前記非加熱領域を画定する断熱体外周面とを含むガス不透過性の断熱体と、前記加熱領域に配置され、発熱することが可能な少なくとも一つのヒータと、前記本体内部空間の圧力を検出することが可能な圧力検出部と、前記加熱領域の温度を検出することが可能な温度検出部と、前記断熱体の前記断熱体内周面および前記断熱体外周面のうちの少なくとも一方に沿って流れる圧媒ガスのガス流を発生させることが可能なガス流発生部と、前記温度検出部によって検出される前記加熱領域の温度が、前記被処理物に前記等方圧加圧処理を施すために予め設定された目標温度範囲に含まれるように、前記少なくとも一つのヒータを制御するヒータ制御部と、前記圧力検出部によって検出される前記本体内部空間の圧力が予め設定された目標圧力範囲よりも低い場合に、前記ガス流発生部を制御して前記ガス流を発生させることによって前記断熱体を介して前記加熱領域から前記非加熱領域に伝わる熱量を増大させ、前記非加熱領域の温度上昇に伴って前記本体内部空間の圧力を増大させるガス流制御部と、を備える。
【0009】
本構成によれば、圧力検出部によって検出される本体内部空間の圧力が予め設定された目標圧力範囲よりも低い場合には、ガス流制御部がガス流発生部を制御してガス流を発生させることによって、断熱体を介して加熱領域から非加熱領域に伝わる熱量を増大させる。この結果、非加熱領域の温度上昇に伴って本体内部空間の圧力を増大させ、目標圧力範囲に近づけることが可能となる。この際、ヒータ制御部によってヒータが制御され、加熱領域の温度をほぼ一定に維持することができる。この結果、等方圧加圧処理の準備段階では、高圧容器に必要最低限の圧縮ガスを供給すれば、以後の圧縮ガスの供給を停止したとしても本体内部空間の圧力を所定の目標圧力範囲まで上昇させることができる。一方、等方圧加圧処理中には、圧力変動によって本体内部空間の圧力が一時的に低下したとしても、上記の圧力制御によって本体内部空間の圧力を所定の目標圧力範囲まで上昇させることができる。したがって、高圧容器内の圧力を所定の目標圧力に設定するための圧縮機の負荷を低減することが可能となる。
【0010】
上記の構成において、前記ガス流制御部は、前記圧力検出部によって検出される前記本体内部空間の圧力が前記目標圧力範囲に含まれると、前記ガス流発生部による前記ガス流の発生を停止させることが望ましい。
【0011】
本構成によれば、本体内部空間の圧力が目標圧力範囲に含まれると、不必要なガス流の発生を抑制し、本体内部空間の過剰な圧力上昇を抑止することができる。
【0012】
上記の構成において、前記ガス流発生部は、回転することで前記ガス流を発生させることが可能なファンを含むことが望ましい。
【0013】
本構成によれば、ファンの回転によって、断熱体の断熱体内周面および断熱体外周面のうちの少なくとも一方に沿って流れる圧媒ガスのガス流を容易に発生することができる。
【0014】
上記の構成において、前記ガス流制御部は、前記圧力検出部によって検出される前記本体内部空間の圧力に応じて前記ファンの回転数を制御することが可能であることが望ましい。
【0015】
本構成によれば、ファンの回転数を制御することで圧媒ガスのガス流の流量を変化させ、断熱体を介して加熱領域から非加熱領域に伝わる熱量を調整することができる。
【0016】
上記の構成において、前記ファンによって発生された前記ガス流を前記断熱体の前記断熱体内周面および前記断熱体外周面のうちの少なくとも一方に沿って案内する案内部を更に備えることが望ましい。
【0017】
本構成によれば、案内部によってガス流を断熱体の断熱体内周面および断熱体外周面のうちの少なくとも一方に沿って確実に移動させることができるため、断熱体を介して加熱領域から非加熱領域に伝わる熱量を安定して増大させることができる。
【0018】
上記の構成において、前記断熱体は、上下方向に沿って延びる断熱体周壁部と、前記断熱体周壁部の上面部を塞ぐように前記断熱体周壁部に接続される断熱体上壁部と、を有し、前記案内部は、前記加熱領域に配置され前記圧媒ガスの通路を挟んで前記断熱体周壁部に対向するように上下方向に沿って延びるガス不透過性の内側周壁部を有する内側ケーシングであって、前記圧媒ガスの透過を許容する内側開口部が前記内側ケーシングの上面部に開口されている、内側ケーシングと、前記本体内部空間において前記断熱体を囲むように配置される外側ケーシングであって、前記圧媒ガスの通路を挟んで前記断熱体周壁部を囲むように上下方向に沿って延びるガス不透過性の外側周壁部を有し、前記圧媒ガスの透過を許容する外側開口部が前記外側ケーシングの上面部に開口されている、外側ケーシングと、を有し、前記断熱体周壁部を貫通して前記断熱体周壁部と前記外側周壁部との間の空間と前記断熱体周壁部と前記内側周壁部との間の空間とを互いに連通させる前記圧媒ガスの通路をそれぞれ形成する複数の第1連通部と、前記内側周壁部と前記断熱体周壁部との間の空間に対して遮断され、かつ、前記断熱体周壁部を貫通して前記断熱体周壁部と前記外側周壁部との間の空間と前記加熱領域の下端部とを互いに連通させる前記圧媒ガスの通路をそれぞれ形成する複数の第2連通部と、を更に備え、前記ガス流発生部は、前記ファンが発生する前記ガス流を、前記断熱体周壁部と前記内側周壁部との間の前記空間に流入させる複数のガス流入部を更に有し、前記ガス流制御部は、前記加熱領域における前記等方圧加圧処理の終了後に前記ガス流発生部の前記ファンを制御して前記ガス流を発生させることが更に可能であり、前記圧力検出部によって検出される前記本体内部空間の圧力が前記目標圧力範囲よりも低い場合に前記ガス流制御部が前記ファンを制御して前記ガス流を発生させることに対応して、前記複数のガス流入部から流入した前記ガス流が前記複数の第1連通部を通じて前記断熱体周壁部と前記外側周壁部との間の空間に流入する一方、前記加熱領域における前記等方圧加圧処理の終了後に前記ガス流制御部が前記ファンを制御して前記ガス流を発生させることに対応して、前記複数のガス流入部から流入した前記ガス流が前記内側周壁部および前記断熱体周壁部に沿って上昇するとともに、前記内側開口部から前記加熱領域に流入した後、前記加熱領域を下降し、更に、前記複数の第2連通部を通じて、前記外側周壁部と前記断熱体周壁部との間の空間に流入するように、前記複数の第1連通部と前記複数の第2連通部との間で前記ガス流の流れを切り換えることが可能なガス流切換部を更に備えることが望ましい。
【0019】
本構成によれば、等方圧加圧処理の準備段階や等方圧加圧処理中に、本体内部空間の圧力が不足している場合には、複数のガス流入部から流入したガス流を第1連通部を通じて断熱体周壁部と外側周壁部との間の空間に流入させることで、断熱体周壁部から非加熱領域への熱の移動を促進し、本体内部空間の圧力を所定の目標圧力範囲まで上昇させることができる。一方、加熱領域における等方圧加圧処理の終了後には、複数のガス流入部から流入したガス流を加熱領域の上方から降下させたのち、第2連通部を通じて断熱体周壁部と外側周壁部との間の空間に流入させることで、加熱領域を急速に冷却することができる。したがって、第1連通部と第2連通部におけるガス流の流れの切り換えによって、本体内部空間の圧力調整機能と急冷却機能とを両立させることが可能となる。
【0020】
上記の構成において、前記本体内部空間に圧媒ガスを供給することが可能な圧縮機と、前記圧縮機から前記本体内部空間に圧媒ガスを供給する供給状態と、前記圧縮機から前記本体内部空間への圧媒ガスの供給を停止する供給停止状態との間で、前記圧縮機を切り換えることが圧縮機制御部と、を更に備え、前記圧力検出部によって検出される前記本体内部空間の圧力が前記目標圧力範囲よりも低い場合に前記ガス流制御部が前記ガス流を発生させることに対応して、前記圧縮機制御部は前記圧縮機を前記供給停止状態に設定することが望ましい。
【0021】
本構成によれば、等方圧加圧処理の準備段階や等方圧加圧処理中に、本体内部空間の圧力が不足している場合には、圧縮機の作動を停止させた状態で、本体内部空間の圧力を所定の目標圧力範囲まで上昇させることができる。この結果、高圧容器内の圧力を所定の目標圧力に設定するための圧縮機の負荷を確実に低減することが可能となる。
【0022】
本発明の他の局面に係る等方圧加圧処理方法は、上記の何れか1に記載の熱間等方圧加圧装置を用いて、被処理物に対して等方圧加圧処理を行う等方圧加圧処理方法であって、前記圧力検出部によって検出される前記本体内部空間の圧力が前記目標圧力範囲よりも低い場合に、前記加熱領域の温度が前記目標温度範囲に含まれるように前記少なくとも一つのヒータを制御しながら、前記断熱体の前記断熱体内周面および前記断熱体外周面のうちの少なくとも一方に沿って流れる圧媒ガスのガス流を発生させることによって前記断熱体を介して前記加熱領域から前記非加熱領域に伝わる熱量を増大させ、前記非加熱領域の温度上昇に伴って前記本体内部空間の圧力を増大させることで、前記本体内部空間の圧力を前記目標圧力範囲に維持しながら、前記等方圧加圧処理を実行する。
【0023】
本方法によれば、等方圧加圧処理の準備段階や等方圧加圧処理中において、高圧容器内の圧力を所定の目標圧力に設定するための圧縮機の負荷を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高圧容器内の圧力を所定の目標圧力に設定するための圧縮機の負荷を低減することが可能であり、かつ当該圧縮機の性能によらず目的のHIP処理が達成できる熱間等方圧加圧装置および等方圧加圧処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る熱間等方圧加圧装置の側断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る熱間等方圧加圧装置の制御部のブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る熱間等方圧加圧装置の作動中の高圧容器内の圧力および温度の時間推移を示すグラフである。
【図4】本発明の第1実施形態に係る熱間等方圧加圧装置の断熱体の周辺の温度分布を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る熱間等方圧加圧装置の側断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る熱間等方圧加圧装置の側断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る熱間等方圧加圧装置の水平断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る熱間等方圧加圧装置の制御部のブロック図である。
【図9】本発明の変形実施形態に係る熱間等方圧加圧装置の側断面図である。
【図10】本発明の変形実施形態に係る熱間等方圧加圧装置の制御部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るHIP装置100(熱間等方圧加圧装置)について説明する。HIP装置100は、被処理物Wに対して圧媒ガスを用いて等方圧加圧処理を行う。図1は、本実施形態に係るHIP装置100の側断面図である。
【0027】
HIP装置100は、円筒状の高圧容器100Sと、圧縮機80と、開放バルブ83と、ガスストレージ容器95と、を備える。
【0028】
高圧容器100Sは、上蓋1と、容器胴2と、下蓋3と、を備える。容器胴2は、上下方向に沿った中心軸CL回りに円筒状に形成されている。容器胴2は、中心軸CL回りに配置される円筒状の内周面2Sを有する。上蓋1は、容器胴2の上側の開口を塞ぎ、下蓋3は、容器胴2の下側の開口を塞いでいる。高圧容器100Sの内部には外部から気密的に隔離された本体内部空間100T(空洞)が形成されている。容器胴2の内周面2Sは、本体内部空間100Tを画定する。圧縮機80は、高圧容器100Sの本体内部空間100Tに圧媒ガスを供給することが可能とされている。図1に示すように、高圧容器100Sには供給配管や排出配管が連結されており、これらの供給配管および排出配管を通じて圧縮機80から圧媒ガス(昇圧されたアルゴンガスや窒素ガス)が高圧容器100Sに対して供給および排出可能とされている。開放バルブ83は、通常は閉止されており、高圧容器100S内から圧媒ガスを排出する際に開放される。また、ガスストレージ容器95は、圧縮機80において圧縮される上記のガスを貯留している。
【0029】
更に、HIP装置100は、内側ケーシング5(案内部)と、断熱体Rと、底壁部20と、複数のサイドヒータ81と、ボトムヒータ82と、撹拌ファン84と、圧力検出器85と、温度検出器86と、を備える。
【0030】
内側ケーシング5は、高圧容器100Sの本体内部空間100Tにおいて、断熱体Rの内部に配置された円筒状の部材であり、上方に向かって開口したコップ状の部材からなる。内側ケーシング5には、ガス不透過性の耐熱材料が用いられる。内側ケーシング5は、中心軸CL回りに形成され上下方向に沿って延びる円筒状の部材であって、断熱体Rに対して径方向内側に間隔をおいて配置される。また、図1に示すように、内側ケーシング5は、被処理物を加圧処理する加熱領域Pを囲むように配置されている。更に、内側ケーシング5の底面には、撹拌ファン84が配置されるための開口部が形成されている。なお、内側ケーシング5は、撹拌ファン84によって発生されたガス流を断熱体Rに沿って案内する機能を有している。
【0031】
断熱体Rは、図1に示すように、本体内部空間100Tにおいて、内側ケーシング5の径方向外側で、内側ケーシング5を囲むように配置されている。断熱体Rは、下方に向かって開口した逆コップ状の構造を備えている。断熱体Rは、前記本体内部空間100Tを、被処理物Wに等方圧加圧処理を施すための加熱領域Pと、加熱領域Pの外側の非加熱領域NPとに仕切る。本実施形態では、断熱体Rは、ガス不透過性の特性を備えている。断熱体Rは、断熱体周壁部RSと、断熱体上壁部RTと、を備える。断熱体周壁部RSは、内側ケーシング5の径方向外側において中心軸CL回りに配置される円筒状の部分である。また、断熱体周壁部RSは、圧媒ガスの通路を挟んで内側ケーシング5を囲むように上下方向に沿って延びている。断熱体上壁部RTは、断熱体周壁部RSの上面部を塞ぐように断熱体周壁部RSの上端部に接続される円板状の蓋部である。
【0032】
更に、本実施形態では、断熱体Rは、以下のような構造を備えている。図1に示すように、断熱体Rは、断熱体外筒6(断熱体外周面)と、断熱体内筒7(断熱体内周面)と、を有する。断熱体外筒6および断熱体内筒7は、いずれも、下方に向かって開口した逆コップ状の部材からなる。断熱体外筒6および断熱体内筒7には、ガス不透過性の耐熱材料が用いられる。断熱体外筒6は、前記非加熱領域NPを画定し、断熱体内筒7は、前記加熱領域Pを画定する。断熱体外筒6と断熱体内筒7との間には、径方向において隙間が形成されていてもよい。また、断熱体外筒6の上面部と断熱体内筒7の上面部との間にも上下方向において隙間が形成されていてもよい。これらの隙間に、断熱性のガスが流通することで断熱層が形成されてもよい。なお、当該断熱層には、カーボンファイバを編み込んだ黒鉛質材料やセラミックファイバなどの多孔質材料、繊維質材料などが充填されてもよい。
【0033】
図1に示すように、径方向において内側ケーシング5と断熱体Rの断熱体内筒7との間には、圧媒ガスが流通可能な円筒状の空間(断熱体内側流路L1)が形成されている。断熱体内側流路L1の上端部および下端部は、加熱領域Pの上端部および下端部にそれぞれ連通している。また、容器胴2の内周面2Sと断熱体Rの断熱体外筒6との間には、圧媒ガスが流通可能な円筒状の空間(断熱体外側流路L2)が形成されている。
【0034】
底壁部20は、断熱体Rの径方向内側において、内側ケーシング5を下方から支持するように配置されている。また、底壁部20は、撹拌ファン84を回転可能に支持するとともに、撹拌ファン84を回転させるモーターMを収容している。
【0035】
サイドヒータ81およびボトムヒータ82(少なくとも一つのヒータ)は、加熱領域Pに配置され、発熱することが可能とされている。サイドヒータ81は、内側ケーシング5と断熱体Rの断熱体内筒7との間に配置され、発熱することで加熱領域P内の圧媒ガスを加熱する。同様に、ボトムヒータ82は、内側ケーシング5の径方向内側の下端部、換言すれば、加熱領域Pの下端部に配置され、発熱することで加熱領域P内の圧媒ガスを加熱する。サイドヒータ81およびボトムヒータ82は、後記の制御部90のヒータ制御部92によって制御される。本実施形態では、図1に示すように、サイドヒータ81は、上下4つのエレメントに分割されている。各エレメントは、円筒形状を備えている。また、ボトムヒータ82は、円環形状を備えている。
【0036】
撹拌ファン84(ファン)は、サイドヒータ81の下方であって、内側ケーシング5の底面部に開口された開口部に配置されている。撹拌ファン84は、モーターMによって軸心CL回りに回転することで、加熱領域P内にガス流を発生させる。なお、撹拌ファン84を回転させるモーターMは、後記の制御部90のファン制御部94によって制御される。
【0037】
圧力検出器85(圧力検出部)は、本体内部空間100Tの圧力を検出することが可能であり、当該圧力に応じた信号を制御部90に入力する。本実施形態では、圧力検出器85は、断熱体Rの外側であって本体内部空間100Tの上端部の圧力を検出する。
【0038】
温度検出器86(温度検出部)は、加熱領域Pの温度を検出することが可能であり、当該温度に応じた信号を制御部90に入力する。本実施形態では、温度検出器86は、断熱体Rの断熱体上壁部RTの下面部に配置されている。
【0039】
更に、HIP装置100は、制御部90を備える。図2は、本実施形態に係るHIP装置100の制御部90のブロック図である。制御部90は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。また、制御部90には、圧縮機80、サイドヒータ81、ボトムヒータ82、開放バルブ83、撹拌ファン84、圧力検出器85、温度検出器86などが電気的に接続されている。制御部90は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、運転切換部91、ヒータ制御部92、バルブ制御部93およびファン制御部94を備えるように機能する。
【0040】
運転切換部91は、HIP装置100の運転動作を切り換える。運転切換部91は、不図示の操作部から入力される指令信号に応じて、加圧動作(加圧処理)のオン、オフを切り換える。加圧動作では、運転切換部91は、加熱領域Pに配置された被処理物Wに等方圧加圧処理を行う。また、運転切換部91は、加圧動作の準備段階で圧縮機80を制御して、高圧容器100S内に圧縮ガスを供給する。このため、運転切換部91は、圧縮機制御部として、圧縮機80から本体内部空間100Tに圧媒ガスを供給する供給状態と、圧縮機80から本体内部空間100Tへの圧媒ガスの供給を停止する供給停止状態との間で、圧縮機80を切り換えることが可能とされている。
【0041】
ヒータ制御部92は、運転切換部91が制御する加圧動作に応じて、サイドヒータ81、ボトムヒータ82に対する投入電力の供給を切り換える。この結果、サイドヒータ81およびボトムヒータ82が発熱する、または当該発熱が停止される。また、ヒータ制御部92は、サイドヒータ81およびボトムヒータ82の発熱量を調整することができる。
【0042】
バルブ制御部93は、開放バルブ83の開弁動作を切り換えることで、高圧容器100Sからの圧縮ガスの排出を制御する。
【0043】
ファン制御部94(ガス流制御部)は、撹拌ファン84の回転動作を切り替えることで、高圧容器100S内の圧媒ガス流の発生を制御する。本実施形態では、ファン制御部94によって撹拌ファン84の回転数が切換可能とされており、高圧容器100Sの加熱領域P内を流れる圧媒ガスの流量が調整可能とされる。
【0044】
図3は、本実施形態に係るHIP装置100の作動中の高圧容器100S内の圧力Prおよび温度TKの時間推移を示すグラフである。図4は、本実施形態に係るHIP装置100の断熱体R(断熱層)の周辺の温度分布を示す拡大断面図である。
【0045】
図3を参照して、加熱領域P内に配置された被処理物Wに対する加圧処理が実行されるにあたって、まず、最終到達温度、最終到達圧力に必要な最低限のガスが高圧容器100S内に充填される。本実施形態では、制御部90の運転切換部91が圧縮機80を制御して、所定の初期充填圧力Pr1(MPa)まで高圧容器100S内が昇圧される(図3の時刻T1)。次に、圧縮機80の動作が停止され、ヒータ制御部92がサイドヒータ81およびボトムヒータ82を制御して、加熱領域P内を加熱する。この結果、加熱領域P内の昇温および昇圧が行われ、高圧容器100S内の圧力が所定の処理圧力Pr2(MPa)、加熱領域Pの温度が所定の処理温度TK1(℃)まで上昇する(図3の時刻T2)。この結果、被処理物Wに対する加圧処理が開始される。加圧処理中は、温度検出器86が検出する加熱領域P内の温度が予め設定された目標温度範囲内に維持されるように、ヒータ制御部92がサイドヒータ81およびボトムヒータ82の発熱量を制御する。被処理物Wへの加圧処理が終了すると(時刻T3)、サイドヒータ81、ボトムヒータ82の発熱が停止されるとともに開放バルブ83が開放されることで、高圧容器100S内の圧力および温度が低下され、高圧容器100Sから被処理物Wが取り出される。
【0046】
なお、加圧処理中に、高圧容器100Sから僅かなガスが漏れることなどによって、高圧容器100S内の圧力が変動すると、被処理物Wに対する加圧処理が不安定となる。このため、圧力検出器85が検出する圧力が目標圧力範囲における予め設定された上限値を超えると、制御部90のバルブ制御部93が開放バルブ83を制御して、高圧容器100Sから圧縮ガスの一部を放出する。一方、圧力検出器85が検出する圧力が低下し(図3の圧力Pr’参照)、目標圧力範囲における予め設定された下限値を下回ると、ファン制御部94が撹拌ファン84を回転させ、加熱領域P内にガス流を発生させる。本実施形態では、この際、運転切換部91は圧縮機80を前記供給停止状態に設定する。
【0047】
図4では、断熱体Rの一部を介して、断熱体内側流路L1側から断熱体外側流路L2側に温度が伝わる様子が示されており、温度分布TK1、TK2がそれぞれ図示されている。前述のように加圧処理中加熱領域P内の温度は一定に維持されている。そして、断熱体Rの断熱体内筒7近傍には、境界伝熱層K1が形成されており、加熱領域Pから断熱体内筒7への熱伝達が行われる。更に、熱は断熱体R内を伝わり、断熱体外筒6近傍に形成された境界伝熱層K2を介して、断熱体外筒6から非加熱領域NPへの熱伝達が行われる。この結果、非加熱領域NP(断熱体外側流路L2)のガスが昇温される。図4の温度分布TK1は、加熱領域P内に積極的なガス流が発生されていない場合の上記の熱の移動に伴う温度分布を示している。
【0048】
一方、撹拌ファン84の回転に伴って、加熱領域P内にガス流が発生すると、図1に示すように、内側ケーシング5の内周面に沿ってガス流が加熱領域Pを上昇した後、内側ケーシング5と断熱体Rとの間の断熱体内側流路L1を下降する。この際、断熱体Rの断熱体内筒7近傍の境界伝熱層K1を流れるガス流は、断熱体内側流路L1から断熱体内筒7への境膜伝熱係数(熱伝達係数)を増大させる。この結果、図4の温度分布TK2に示すように、温度分布TK1と比較して、断熱体R内の熱伝導量が増大し、非加熱領域NP(断熱体外側流路L2)の温度が相対的に高くなる。このように、加熱領域P内の温度が一定に維持されながら、断熱体Rを介して加熱領域Pから非加熱領域NP(断熱体外側流路L2)に伝わる熱量(熱流束)が増大すると、非加熱領域NPのガス温度が上昇する。すなわち、断熱体Rの見かけの断熱性能が低下する。この結果、本体内部空間100T内の平均温度が上昇し、ボイルシャルルの法則に従って本体内部空間100Tの圧力(平均圧力)が上昇する。したがって、圧力検出器85によって検出される圧力の低下に応じて、撹拌ファン84が回転されることで、本体内部空間100Tの圧力を上昇させ前記目標圧力範囲に復帰させることができる。そして、ファン制御部94は、圧力検出器85によって検出される本体内部空間100Tの圧力が前記目標圧力範囲に含まれると、撹拌ファン84による前記ガス流の発生を停止させる。
【0049】
なお、断熱体内側流路L1から断熱体Rへの境膜伝熱係数は、断熱体Rの断熱体内筒7に沿って流れるガス流の流量に応じて変化する。このため、撹拌ファン84の回転数を大きくすると断熱体外側流路L2のガス温度の上昇量は大きくなり、撹拌ファン84の回転数を小さくすると断熱体外側流路L2のガス温度の上昇量は小さくなる。したがって、ファン制御部94は、圧力検出器85によって検出される圧力に応じて、撹拌ファン84の回転数を制御することで、本体内部空間100T内の圧力を速やかに目標圧力範囲に設定することができる。
【0050】
このように本実施形態では、撹拌ファン84が、ガス流発生部として機能する。ガス流発生部は、断熱体Rの断熱体内筒7に沿って流れる圧媒ガスのガス流を発生させることが可能とされている。また、ヒータ制御部92は、温度検出器86によって検出される加熱領域Pの温度が、被処理物Wに等方圧加圧処理を施すために予め設定された目標温度範囲に含まれるように、サイドヒータ81およびボトムヒータ82の発熱を制御する。更に、ファン制御部94は、圧力検出器85によって検出される本体内部空間100Tの圧力が予め設定された目標圧力範囲よりも低い場合に、撹拌ファン84を制御してガス流を発生させることによって断熱体Rを介して加熱領域Pから非加熱領域NPに伝わる熱量を増大させ、非加熱領域NPの温度上昇に伴って本体内部空間100Tの圧力を増大させる。
【0051】
そして、上記のような構成によれば、非加熱領域NPの温度上昇に伴って本体内部空間100Tの圧力を増大させ目標圧力範囲に近づけることが可能となる。この結果、等方圧加圧処理の準備段階では、高圧容器100Sに必要最低限の圧縮ガスを供給すれば、以後の圧縮ガスの供給を停止したとしてもファン制御部94の制御によって本体内部空間100Tの圧力を所定の目標圧力範囲まで上昇させることができる。一方、等方圧加圧処理中には、圧力変動によって本体内部空間100Tの圧力が低下しても、ファン制御部94の制御によって本体内部空間100Tの圧力を所定の目標圧力範囲まで上昇させることができる。したがって、高圧容器100S内の圧力を所定の目標圧力に設定するための圧縮機80の負荷を低減することが可能となる。
【0052】
なお、前述のように、ファン制御部94は、圧力検出器85によって検出される本体内部空間100Tの圧力が前記目標圧力範囲に含まれると、撹拌ファン84によるガス流の発生を停止させることが望ましい。このような構成によれば、本体内部空間100Tの圧力が目標圧力範囲に含まれると、不必要なガス流の発生を抑制し、本体内部空間100Tの過剰な圧力上昇を抑止することができる。
【0053】
また、本実施形態では、回転することで前記ガス流を発生させることが可能な撹拌ファン84が備えられているため、撹拌ファン84の回転によって、断熱体Rの断熱体内筒7に沿って流れる圧媒ガスのガス流を容易に発生することができる。
【0054】
また、本実施形態では、前述のように、ファン制御部94が撹拌ファン84の回転数を制御することで圧媒ガスのガス流の流量を変化させ、断熱体Rを介して加熱領域Pから非加熱領域NPに伝わる熱量を容易かつ精度良く調整することができる。
【0055】
また、本実施形態では、内側ケーシング5によってガス流を断熱体Rの断熱体内筒7に沿って確実に移動させることができるため、断熱体Rを介して加熱領域Pから非加熱領域NPに伝わる熱量を安定して増大させることができる。なお、後記のとおり、断熱体Rの外側に配置される外側ケーシング4によって、ガス流が断熱体内筒7に沿って案内される態様でもよい。
【0056】
更に、本実施形態では、等方圧加圧処理の準備段階や等方圧加圧処理中に、本体内部空間100Tの圧力が不足している場合には、圧縮機80の作動を停止させた状態で、本体内部空間100Tの圧力を所定の目標圧力範囲まで上昇させることができる。この結果、高圧容器100S内の圧力を所定の目標圧力に設定するための圧縮機80の負荷を確実に低減することが可能となる。更に、圧縮機80として被処理物への加圧処理に必要な最大到達圧力まで運転可能な昇圧能力を備えるものが必要とされず、圧縮機80の低出力化および低コスト化が可能となる。すなわち、本実施形態では、装備される圧縮機80の能力(昇圧可能圧力)がHIP処理に必要な圧力より低くとも、目的のHIP処理が可能となり、備えるべき圧縮機の仕様を抑えることができる。
【0057】
なお、撹拌ファン84が発生するガス流の流れは、図1の流れとは反対であってもよい。また、サイドヒータ81およびボトムヒータ82は、少なくとも一方が配置されてもよいし、その他のヒータが配置されてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、最初はヒータをオフにした状態で圧縮機のみ運転して圧力Pr1(MPa)(初期充填圧力)まで昇圧し、その後は圧縮機を停止させてヒータをONすることで昇温し、ボイルシャルルの法則によって圧力を更に上昇させ、最終的に目的の圧力Pr2(MPa)以上、温度TK1(℃)以上の状態を達成している(昇圧先行パターン)。
【0059】
上記のような昇圧先行パターンを従来の技術で実施する場合には、HIP処理保持時の処理圧力Pr2を保持するためだけに、処理圧力Pr2の最大出力を有する圧縮機が必要となっていた。一方、本実施形態によれば、昇圧先行パターンを実施する場合、最大出力が初期充填圧力Pr1まで昇圧可能な圧縮機があればよい。
【0060】
なお、本実施形態に基づく変形実施形態として、圧縮機とヒータを同時に運転する同時昇温昇圧パターンが適用されてもよい。このパターンによれば、HIP処理に必要な処理圧力Pr2、温度TK1まで最短時間で達することができる。またこの場合、圧縮機は初期充填圧力に見合ったガス量を送り込める時間だけ運転されると停止される。圧縮機の停止後は、ヒータによって温度も上がっているため、圧力は初期充填圧力Pr1より高くなる。この場合は、初期充填圧力Pr1以上の能力の圧縮機が必要になるが、HIP処理に必要な処理圧力Pr2まで昇圧する能力は不要となるため、この同時昇温昇圧パターンにおいても上記と同様の効果を得ることができる。尚、上記とは逆に、昇温先行パターンも想定可能である(ガラスカプセル処理等に適用可能)。この場合は、処理圧力Pr2まで昇圧可能な圧縮機を備える必要があるが、目的の圧力に達した後は圧縮機に依らず、本実施形態と同様の圧力維持が可能であるため「圧縮機の負荷低減」という効果を奏することができる。
【0061】
次に、本発明の第2実施形態に係るHIP装置100について説明する。図5および図6は、本実施形態に係るHIP装置100の側断面図である。なお、図5と図6とでは、HIP装置100の周方向における断面位置が互いに異なっている。図7は、本実施形態に係るHIP装置100の水平断面図である。図8は、本実施形態に係るHIP装置100の制御部90のブロック図である。なお、以下では、本実施形態における先の第1実施形態との相違点を中心に説明し、共通点の説明を一部省略する。
【0062】
図5を参照して、本実施形態に係るHIP装置100は、高圧容器100Sの本体内部空間100Tに配置された前述の内側ケーシング5および断熱体Rに加え、外側ケーシング4を有している。
【0063】
外側ケーシング4は、高圧容器100Sの本体内部空間100Tに配置された有蓋円筒状の部材であり、下方に向かって開口した逆コップ状の部材からなる。外側ケーシング4は、断熱体Rを囲むように配置されている。外側ケーシング4には、HIP処理の温度条件に合わせてステンレス、ニッケル合金、モリブデン合金またはグラファイトなどのガス不透過性の耐熱材料が用いられる。外側ケーシング4は、外側上壁部41と、外側周壁部42と、を有する。外側周壁部42は、本体内部空間100Tにおいて中心軸CL回りに形成された円筒状の部分であって、高圧容器100Sの内周面2Sに対して径方向内側に間隔をおいて配置される。また、外側周壁部42は、圧媒ガスの通路を挟んで断熱体周壁部RSを囲むように上下方向に沿って延びている。外側上壁部41は、外側周壁部42の上面部を塞ぐように外側上壁部41の上端部に接続される円環形状の蓋部である。外側上壁部41の中央部には、中心軸CLを中心とする円形の外側開口部4Hが開口されている(図5)。外側開口部4Hは、外側ケーシング4の内部と外部との間での圧媒ガスの透過を許容する。なお、本実施形態では、外側上壁部41および外側周壁部42は、一体的に構成されている。
【0064】
一方、本実施形態における内側ケーシング5は、高圧容器100Sの本体内部空間100Tにおいて、外側ケーシング4の内側、更には、断熱体Rの内側に配置された有蓋円筒状の部材であり、下方に向かって開口した逆コップ状の部材からなる。内側ケーシング5にも、外側ケーシング4と同様に、ガス不透過性の耐熱材料が用いられる。内側ケーシング5は、内側上壁部51と、内側周壁部52と、を備える。内側周壁部52は、中心軸CL回りに形成され上下方向に沿って延びる円筒状の部分であって、外側ケーシング4の外側周壁部42、更には、断熱体Rの断熱体内筒7に対して径方向内側に間隔をおいて配置される。内側上壁部51は、内側周壁部52の上面部を塞ぐように内側周壁部52の上端部に接続される円環形状の蓋部である。内側上壁部51は、外側上壁部41の下方、更には、断熱体上壁部RTの下方に間隔をおいて配置される。内側上壁部51の中央部(内側ケーシング5の上面部)には、中心軸CLを中心とする円形の内側開口部5Hが開口されている(図5)。内側開口部5Hは、加熱領域Pと内側ケーシング5の上方の空間との間での圧媒ガスの透過を許容する。また、図5に示すように、内側ケーシング5の内側上壁部51および内側周壁部52は、被処理物を加圧処理する加熱領域Pを囲むように配置されている。なお、内側上壁部51および内側周壁部52は、一体的に構成されている。
【0065】
また、本実施形態における断熱体Rは、図5に示すように、本体内部空間100Tにおいて、外側ケーシング4と内側ケーシング5との間で、内側ケーシング5を囲むように配置されている。断熱体Rは、下方に向かって開口した逆コップ状の構造を備えている。本実施形態でも、断熱体Rは、ガス不透過性の特性を備えている。断熱体Rは、断熱体周壁部RSと、断熱体上壁部RTと、を有する。断熱体周壁部RSは、外側周壁部42と内側周壁部52との間に配置される。断熱体周壁部RSは、外側周壁部42および内側周壁部52に対してそれぞれ間隔をおいて、中心軸CL回りに配置される円筒状の部分である。また、断熱体周壁部RSは、圧媒ガスの通路を挟んで内側周壁部52を囲むように上下方向に沿って延びている。断熱体上壁部RTは、断熱体周壁部RSの上端部に接続される円板状の蓋部である。断熱体上壁部RTは、断熱体周壁部RSの上面部を塞ぐように断熱体周壁部RSの上端部に接続されるとともに、圧媒ガスの通路を挟んで内側開口部5Hの上方に配置される。換言すれば、断熱体上壁部RTは、外側上壁部41の下方かつ内側上壁部51の上方に配置される。なお、断熱体上壁部RTには開口部が開口されていない。このため、断熱体上壁部RTは、外側開口部4Hと内側開口部5Hとの間での上下方向に沿った圧媒ガスの流通を遮断する。
【0066】
図5に示すように、内側ケーシング5の内側周壁部52と断熱体Rの断熱体内筒7(断熱体内周面)との間には、圧媒ガスが流通可能な円筒状の空間(断熱体内側流路L1)が形成されている。断熱体内側流路L1の上端部は、内側開口部5Hを介して加熱領域Pに連通している。また、外側ケーシング4の外側周壁部42と断熱体Rの断熱体外筒6(断熱体外周面)との間には、圧媒ガスが流通可能な円筒状の空間(断熱体外側流路L2)が形成されている。更に、高圧容器100Sの内周面2Sと外側周壁部42との間には、圧媒ガスが流通可能な円筒状の空間(外周流路L3)が形成されている。外周流路L3の上端部は、外側開口部4Hを介して断熱体外側流路L2に連通しており、外周流路L3の下端部は、後記の底壁部20の下方の空間に連通している。本実施形態に係る外側ケーシング4および内側ケーシング5は、本発明の案内部として機能する。
【0067】
更に、HIP装置100は、複数の第1連通管11(第1連通部)と、複数の第2連通管11S(第2連通部)と、複数のガス導管12(ガス流入部)と、複数の循環用バルブ87と、底壁部20と、複数の第1切換バルブ88Aと、複数の第2切換バルブ88Bと、循環ファン89と、を備える(図8)。
【0068】
複数の第1連通管11は、中心軸CL回りの周方向に沿って互いに間隔をおいて配置されており、本実施形態では、図7に示すように4つの第1連通管11が配置されている。各第1連通管11は、断熱体Rの断熱体外筒6に配置される一方の口と、断熱体Rの断熱体内筒7に配置される他方の口とを備える。複数の第1連通管11は、断熱体周壁部RSを貫通して断熱体周壁部RSと外側周壁部42との間の空間(断熱体外側流路L2)と断熱体周壁部RSと内側周壁部52との間の空間(断熱体内側流路L1)とを互いに連通させる前記圧媒ガスの通路をそれぞれ形成する。
【0069】
複数の第2連通管11Sは、中心軸CL回りの周方向に沿って互いに間隔をおいて配置されており、本実施形態では、図7に示すように周方向において4つの第1連通管11の間に4つの第2連通管11Sが順に配置されている。各第2連通管11Sは、内側ケーシング5の内側周壁部52に配置される入口と、断熱体Rの断熱体外筒6に配置される出口とを備える。複数の第2連通管11Sは、断熱体周壁部RSを貫通して断熱体周壁部RSと外側周壁部42との間の空間(断熱体外側流路L2)と加熱領域Pの下端部とを互いに連通させる前記圧媒ガスの通路をそれぞれ形成する。
【0070】
なお、第2連通管11Sの管内空間(通路)は、内側周壁部52と断熱体周壁部RSとの間の空間(断熱体内側流路L1)および断熱体Rの断熱層には連通しておらず、これらの空間から遮断されている。すなわち、第2連通管11Sは、加熱領域Pの下端部と断熱体外側流路L2の下端部とを直接連通させている。このため、内側ケーシング5、断熱体外筒6および断熱体内筒7(断熱体周壁部RS)には、第2連通管11Sが貫通するための開口が形成されており、当該開口部と第2連通管11Sの外周面との間には、不図示のシール部材が配置されている。当該シール部材は、加熱領域Pの圧媒ガスが、第2連通管11Sの周辺から断熱体内側流路L1または断熱体Rの断熱層に直接流入することを防止する。
【0071】
底壁部20は、加熱領域Pを下方から封止する部材である。特に、本実施形態では、底壁部20は、外側ケーシング4の外側周壁部42の下端部よりも径方向内側の領域全体を下方から覆うように配置される。底壁部20は、加熱領域Pの下面部を画定する。また、底壁部20は、被処理物Wが載置される上面部を含む。底壁部20の上面部に載置された被処理物Wは、加熱領域P内に配置される。
【0072】
複数のガス導管12は、中心軸CL回りの周方向に沿って互いに間隔をおいて配置されており、本実施形態では、8つのガス導管12が配置されている。なお、複数のガス導管12の数は、8つに限定されるものではない。各ガス導管12は、底壁部20の下方の空間に配置される入口と、内側ケーシング5の内側周壁部52に配置される出口とを備える。ガス導管12は、内側周壁部52と断熱体周壁部RSとの間の空間(断熱体内側流路L1)の下側部分と底壁部20の下方の空間とを連通させる。
【0073】
複数の循環用バルブ87は、それぞれ、ガス導管12の入口付近に配置される電磁弁である。循環用バルブ87は、ガス導管12における圧媒ガスの流通および当該流通の遮断を切り換える。循環用バルブ87の開閉は、制御部90のバルブ制御部93によって制御される。
【0074】
循環ファン89(ファン)は、底壁部20の下方の空間に配置され、回転することでガス流を発生させる。前述の複数のガス導管12は、循環ファン89が発生するガス流を、断熱体周壁部RSと内側周壁部52との間の空間に流入させる。
【0075】
複数の第1切換バルブ88Aは、複数の第1連通管11の出口付近にそれぞれ配置されている。各第1切換バルブ88Aは、制御部90のバルブ制御部93によって制御されることで、第1連通管11におけるガス流の流れを許容または遮断する。同様に、複数の第2切換バルブ88Bは、複数の第2連通管11Sの出口付近にそれぞれ配置されている。各第2切換バルブ88Bは、制御部90のバルブ制御部93によって制御されることで、第2連通管11Sにおけるガス流の流れを許容または遮断する。
【0076】
図8を参照して、本実施形態では、制御部90に、圧縮機80、サイドヒータ81、開放バルブ83、圧力検出器85、温度検出器86に加えて、循環用バルブ87、第1切換バルブ88A、第2切換バルブ88B、循環ファン89が電気的に接続されている。開放バルブ83、循環用バルブ87、第1切換バルブ88Aおよび第2切換バルブ88Bの開閉は、バルブ制御部93によって制御される。また、循環ファン89の回転は、ファン制御部94によって制御される。
【0077】
本実施形態においても、先の第1実施形態と同様に、加圧処理中に、高圧容器100Sから僅かなガスが漏れることなどによって、高圧容器100S内の圧力が変動すると、被処理物Wに対する加圧処理が不安定となる。このため、圧力検出器85が検出する圧力が目標圧力範囲における予め設定された上限値を超えると、制御部90のバルブ制御部93が開放バルブ83を制御して、高圧容器100Sから圧縮ガスの一部を放出する。一方、圧力検出器85が検出する圧力が低下し(図3の圧力Pr’参照)、目標圧力範囲における予め設定された下限値を下回ると、バルブ制御部93が、循環用バルブ87および第1切換バルブ88Aを開放し、第2切換バルブ88Bを閉止する。そして、ファン制御部94が循環ファン89を回転させ、複数のガス導管12から、断熱体内側流路L1の下端部にガス流を流入させる。本実施形態では、この際、運転切換部91は圧縮機80を前記供給停止状態に設定する。
【0078】
複数のガス導管12から断熱体内側流路L1に流入したガス流は、図5に示すように、複数の第1連通管11から断熱体外側流路L2の下端部に流入する。その後、当該ガス流は、断熱体外側流路L2を上昇し、外側開口部4Hを通じて、外周流路L3の上端部に流入したのち外周流路L3を下降し、底壁部20の下方の空間に戻る。この結果、図5に示すようなガスの循環流が形成される。
【0079】
このようなガス流は、断熱体外側流路L2を上昇する際に、断熱体Rの断熱体外筒6に沿って流れる。この際、断熱体Rの断熱体外筒6近傍の境界伝熱層K2を流れるガス流は、断熱体外筒6から断熱体外側流路L2(非加熱領域NP)への境膜伝熱係数(熱伝達係数)を増大する。この結果、断熱体外側流路L2にガス流が形成されていない場合と比較して、断熱体Rから断熱体外側流路L2側に回収される熱量が増大し、断熱体外側流路L2の温度が相対的に高くなる。このように、加熱領域P内の温度が一定に維持されながら、断熱体Rを介して加熱領域Pから非加熱領域NP(断熱体外側流路L2)に伝わる熱量(熱流束)が増大すると、非加熱領域NPのガス温度が上昇する。すなわち、断熱体Rの見かけの断熱性能が低下する。この結果、本体内部空間100T内の平均温度が上昇し、ボイルシャルルの法則に従って本体内部空間100Tの圧力(平均圧力)が上昇する。したがって、圧力検出器85によって検出される圧力の低下に応じて、各バルブが制御されるとともに循環ファン89が回転されることで、本体内部空間100Tの圧力を上昇させ、前記目標圧力範囲内の圧力値に復帰させることができる。そして、ファン制御部94は、圧力検出器85によって検出される本体内部空間100Tの圧力が前記目標圧力範囲に含まれると、循環ファン89による前記ガス流の発生を停止させる。この際、バルブ制御部93が、循環用バルブ87および第1切換バルブ88Aを閉止することが望ましい。
【0080】
更に、本実施形態では、ファン制御部94は、加熱領域Pにおける等方圧加圧処理の終了後に循環ファン89を制御して前記ガス流を発生させることが可能である。この際、ヒータ制御部92は、サイドヒータ81の発熱を停止させ、バルブ制御部93は、循環用バルブ87および第2切換バルブ88Bを開放し、第1切換バルブ88Aを閉止する。この結果、循環ファン89によって発生されたガス流は、図6に示すように、複数のガス導管12を通じて内側周壁部52と断熱体周壁部RSとの間の断熱体内側流路L1に流入し、内側周壁部52および断熱体周壁部RSに沿って上昇するとともに、内側開口部5Hから加熱領域Pに流入した後、加熱領域Pを下降し、更に、複数の第2連通管11Sを通じて、外側周壁部42と断熱体周壁部RSとの間の断熱体外側流路L2に流入する。
【0081】
更に、図6に示すように、複数の第2連通管11Sを通じて断熱体外側流路L2に流入した圧媒ガスは、断熱体周壁部RSおよび外側周壁部42に沿って上昇した後、外側開口部4Hから外側ケーシング4の外部に流出し、更に高圧容器100Sの内周面2Sと外側周壁部42との間の外周流路L3を通って下降し、底壁部20の下方において循環ファン89によって再び複数のガス導管12に流入する。この結果、高圧容器100Sの本体内部空間100Tに、緩やかな圧媒ガスの循環流が形成される。
【0082】
なお、本実施形態では、第1切換バルブ88A、第2切換バルブ88Bおよびバルブ制御部93が、ガス流切換部として機能する。当該ガス流切換部は、前記圧力検出器85によって検出される前記本体内部空間100Tの圧力が前記目標圧力範囲よりも低い場合にファン制御部94が循環ファン89を制御して前記ガス流を発生させることに対応して、前記複数のガス導管12から流入した前記ガス流が前記複数の第1連通管11を通じて断熱体周壁部RSと外側周壁部42との間の空間に流入するように、前記複数の第1連通管11と前記複数の第2連通管11Sとの間で前記ガス流の流れを切り換える。一方、ガス流切換部は、前記加熱領域Pにおける前記等方圧加圧処理の終了後にファン制御部94が循環ファン89を制御して前記ガス流を発生させることに対応して、前記複数のガス導管12から流入した前記ガス流が断熱体周壁部RSおよび内側周壁部52に沿って上昇するとともに、内側開口部5Hから前記加熱領域Pに流入した後、前記加熱領域Pを下降し、更に、前記複数の第2連通管11Sを通じて、断熱体周壁部RSと外側周壁部42との間の空間に流入するように、前記複数の第1連通管11と前記複数の第2連通管11Sとの間で前記ガス流の流れを切り換える。
【0083】
このように、本実施形態では、等方圧加圧処理の準備段階や等方圧加圧処理中に、本体内部空間100Tの圧力が不足している場合には、複数のガス導管12から流入したガス流を、第1連通管11を通じて断熱体周壁部RSと外側周壁部42との間の空間に流入させることで、断熱体周壁部RSから非加熱領域NPへの熱の移動を促進し、本体内部空間100Tの圧力を所定の目標圧力範囲まで上昇させることができる。この際、複数のガス導管12を通じたガス流の流量を循環用バルブ87によって制御することができるため、本体内部空間100Tの圧力調整を精度良く実現することができる。一方、加熱領域Pにおける等方圧加圧処理の終了後には、複数のガス導管12から流入したガス流を断熱体内筒7および内側周壁部52に沿って上昇させ加熱領域Pを降下させたのち、第2連通管11Sを通じて断熱体周壁部RSと外側周壁部42との間の空間に流入させることで、流入したガス流によって加熱領域Pを急速に冷却することができる。したがって、第1連通管11と第2連通管11Sにおけるガス流の流れの切り換えによって、本体内部空間100Tの圧力調整機能と急冷却機能とを両立させることが可能となる。すなわち、圧力調整のための圧媒ガスの流路を利用して、加圧処理後のHIP装置100の急冷却を実行することができる。この結果、被処理物Wの取り出しまでの時間を含む被処理物Wの加圧処理時間を短縮することができる。
【0084】
なお、上記の第1実施形態および第2実施形態では、HIP装置100(熱間等方圧加圧装置)を用いて、被処理物に対して等方圧加圧処理を行う、本発明の等方圧加圧処理方法が適用されている。当該等方圧加圧処理方法では、圧力検出器85によって検出される前記本体内部空間100Tの圧力が前記目標圧力範囲よりも低い場合に、前記加熱領域Pの温度が前記目標温度範囲に含まれるように少なくとも一つのヒータを制御しながら、断熱体Rの断熱体外筒6および断熱体内筒7のうちの少なくとも一方に沿って流れる圧媒ガスのガス流を発生させることによって断熱体Rを介して加熱領域Pから非加熱領域NPに伝わる熱量を増大させる。更に、当該等方圧加圧処理方法では、前記非加熱領域NPの温度上昇に伴って前記本体内部空間100Tの圧力を増大させることで、前記本体内部空間100Tの圧力を前記目標圧力範囲に維持しながら、前記等方圧加圧処理を実行する。また、上記の第1実施形態および第2実施形態並びに後記の変形実施形態に係るHIP装置100のそれぞれの特徴を用いて、上記の等方圧加圧処理方法を実行することが可能である。
【0085】
以上、本発明の各実施形態に係るHIP装置100(熱間等方圧加圧装置)および等方圧加圧処理方法について説明したが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明に係る熱間等方圧加圧装置として、以下のような変形実施形態が可能である。
【0086】
(1)図9は、本発明の変形実施形態に係るHIP装置100(熱間等方圧加圧装置)の側断面図である。図10は、本変形実施形態に係るHIP装置100の制御部90のブロック図である。図9に示すように、本変形実施形態では、第2実施形態に係るHIP装置100(図5)に第1実施形態に係る撹拌ファン84(図1)が更に搭載される。なお、図9は、先の第2実施形態における図6に対応する断面図であるが、本変形実施形態に係るHIP装置100も、第2実施形態の図5と同様の断面構造を有している。等方圧加圧処理の準備段階や等方圧加圧処理中に、本体内部空間100Tの圧力が不足している場合には、図10に示すように、ファン制御部94が、撹拌ファン84および循環ファン89の回転をそれぞれ制御する。この場合、循環ファン89によって発生されたガス流は、複数のガス導管12を介して、図5と同様に、断熱体周壁部RSの断熱体外筒6に沿って上昇し、断熱体外筒6近傍の熱伝達係数を増大させ、加熱領域Pから非加熱領域NPへの熱の移動を促進する。また、撹拌ファン84によって発生されたガス流は、図1と同様に、加熱領域Pを上昇した後、断熱体周壁部RSの断熱体内筒7に沿って下降し、断熱体内筒7近傍の熱伝達係数を増大させ、加熱領域Pから非加熱領域NPへの熱の移動を促進する。したがって、2つのファンによって、断熱体周壁部RSの断熱体外筒6および断熱体内筒7における熱伝達係数を広範囲において増大させることで、非加熱領域NPの温度上昇を促進し、本体内部空間100Tの圧力を早期かつ高い精度で上昇させることができる。一方、本変形実施形態においても、加熱領域Pにおける等方圧加圧処理の終了後には、図9に示すように、複数のガス導管12から流入したガス流を断熱体内筒7および内側周壁部52に沿って上昇させ加熱領域Pを降下させたのち、第2連通管11Sを通じて断熱体周壁部RSと外側周壁部42との間の空間に流入させることで、流入したガス流によって加熱領域Pを急速に冷却することができる。
【0087】
(2)また、上記の第2実施形態では、外側ケーシング4が外側上壁部41を備え、内側ケーシング5が内側上壁部51を備える態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。外側ケーシング4が外側周壁部42のみを備え、外側周壁部42の上端部が開放されていることで、外側ケーシング4に外側開口部4Hが形成されてもよい。また、内側ケーシング5が内側周壁部52のみを備え、内側周壁部52の上端部が開放されていることで、内側ケーシング5に内側開口部5Hが形成されてもよい。
【0088】
(3)また、上記の各実施形態では、内側ケーシング5、断熱体Rおよび外側ケーシング4が、中心軸CLを中心として、それぞれ円筒形状を備える態様にて説明したが、各部材の形状は円筒形状に限定されるものではない。
【0089】
(4)また、上記の各実施形態では、加圧処理中にサイドヒータ81および/またはボトムヒータ82が発熱する態様にて説明したが、加圧処理中の一部において各ヒータの発熱が停止されてもよい。この際、ガス流発生部によって圧媒ガスの循環流が継続して形成されてもよいし、一時的に循環流の形成が停止されてもよい。
【符号の説明】
【0090】
100 HIP装置(熱間等方圧加圧装置)
100S 高圧容器
100T 本体内部空間
11 第1連通管(第1連通部)
11S 第2連通管(第2連通部)
12 ガス導管(ガス流入部)
20 底壁部
4 外側ケーシング(案内部)
41 外側上壁部
42 外側周壁部
4H 外側開口部
5 内側ケーシング(案内部)
51 内側上壁部
52 内側周壁部
5H 内側開口部
6 断熱体外筒(断熱体外周面)
7 断熱体内筒(断熱体内周面)
80 圧縮機
81 サイドヒータ(ヒータ)
82 ボトムヒータ(ヒータ)
83 開放バルブ
84 撹拌ファン(ガス流発生部、ファン)
85 圧力検出器(圧力検出部)
86 温度検出器(温度検出部)
87 循環用バルブ
88A 第1切換バルブ(ガス流切換部)
88B 第2切換バルブ(ガス流切換部)
89 循環ファン(ガス流発生部、ファン)
90 制御部
91 運転切換部(圧縮機制御部)
92 ヒータ制御部
93 バルブ制御部(ガス流切換部)
94 ファン制御部(ガス流制御部)
L1 断熱体内側流路
L2 断熱体外側流路
L3 外周流路
NP 非加熱領域
P 加熱領域
R 断熱体
RS 断熱体周壁部
RT 断熱体上壁部
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】