(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021067946
(43)【公開日】20210430
(54)【発明の名称】導電性部材、プロセスカートリッジ、及び電子写真画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20210402BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20210402BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20210402BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20210402BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20210402BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
   !G03G15/02 101
   !G03G15/16 103
   !F16C13/00 A
   !C08L21/00
   !C08K3/04
   !C08L69/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【全頁数】58
(21)【出願番号】2020174640
(22)【出願日】20201016
(31)【優先権主張番号】2019191551
(32)【優先日】20191018
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 健二
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】山内 一浩
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】西岡 悟
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】菊池 裕一
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】古川 匠
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】山田 真樹
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
【テーマコード(参考)】
2H200
3J103
4J002
【Fターム(参考)】
2H200FA02
2H200FA03
2H200FA08
2H200FA18
2H200FA19
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2H200MB02
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2H200NA03
3J103AA02
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3J103HA53
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4J002FD150
4J002FD170
4J002GQ02
(57)【要約】
【課題】高速の電子写真画像形成プロセスに適用した場合にも、高品位な画像形成を長期にわたって可能とする帯電部材、現像部材または転写部材に用い得る導電性部材の提供。
【解決手段】導電性の支持体と、該支持体上の導電層と、該導電層上の表面層とを有し、該導電性部材の外表面でのインピーダンスが、1.0×10〜1.0×10Ωであり、該表面層は電子導電剤が分散され、該導電層は、第1のゴムの架橋物を含むマトリックスと、第2のゴムの架橋物及び導電性粒子を含むドメインと、を有し、所定の観察領域の各々で観察されるドメインのうちの80個数%以上が、要件(1)及び(2)を満たす電子写真用の導電性部材:
(1)ドメインに対する導電性粒子の断面積の割合が、20%以上;
(2)ドメインの周囲長Aと該ドメインの包絡周囲長Bの比A/Bが、1.00〜1.10。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の外表面を有する支持体と、該支持体の外表面上に設けられた導電層と、該導電層の外表面上に設けられた表面層とを有する電子写真用の導電性部材であって、
該導電性部材の外表面に直接白金電極を設け、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、該支持体の該外表面と該白金電極との間に振幅が1V、周波数1.0Hzの交流電圧を印加したときのインピーダンスが、1.0×10〜1.0×10Ωであり、該表面層は、電子導電剤が分散されており、
該導電層は、第1のゴムの架橋物を含むマトリックスと、第2のゴムの架橋物及び導電性粒子を含むドメインと、を有し、
該導電層の長手方向の長さをL、該導電層の厚さをTとしたとき、該導電層の長手方向の中央、及び該導電層の両端から中央に向かってL/4の3か所における、該導電層の厚さ方向の断面の各々について、該導電層の外表面から深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所に15μm四方の観察領域を置いたときに、全9個の該観察領域の各々で観察されるドメインのうちの80個数%以上が、下記要件(1)及び要件(2)を満たすことを特徴とする電子写真用の導電性部材:
(1)ドメインの断面積に対する該ドメインが含む該導電性粒子の断面積の割合が、20%以上であること;
(2)ドメインの周囲長をA、該ドメインの包絡周囲長をBとしたとき、A/Bが、1.00以上、1.10以下であること。
【請求項2】
前記導電層が、導電性粒子および第2のゴムを含む第2のゴム組成物と、第1のゴムと、を含むゴム組成物の層を硬化することによって形成されたものである、請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記マトリックスの体積抵抗率ρmが、1.0×10Ωcm以上、1.0×1017Ωcm以下である請求項1または2に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記要件(1)及び要件(2)を満たしている前記ドメインの各々に含まれる前記ドメインの最大フェレ径Dfの平均が、0.1〜5.0μmの範囲内である請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記観察領域に存在する前記ドメインの平均個数が20〜300個である請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記ドメインの断面積に対する導電性粒子の断面積の割合が30%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記導電性粒子が導電性カーボンブラックである請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項8】
前記導電性カーボンブラックのDBP吸収量は、40cm/100g以上80cm/100g以下であることを特徴とする請求項7に記載の導電性部材。
【請求項9】
前記要件(1)及び要件(2)を満たしている前記ドメインの各々に含まれる前記導電性カーボンブラック間の算術平均距離Dcが、110nm以上130nm以下であり、かつ該導電性カーボンブラック間の距離の分布の標準偏差をσmとしたときに、該導電性カーボンブラック間の距離のσm/Dcが0.0以上0.3以下であることを特徴とする請求項7または8に記載の導電性部材。
【請求項10】
前記第1のゴムの溶解度パラメーターと、前記第2のゴムの溶解度パラメーターとの絶対値の差が0.4(J/cm0.5以上4.0(J/cm0.5以下である請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項11】
該マトリックスの体積抵抗率ρmが、1.0×1010Ωcm以上1.0×1017Ωcm以下である請求項1〜10のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項12】
該マトリックスの体積抵抗率ρmが、1.0×1012Ωcm超過1.0×1017Ωcm以下である請求項1〜11のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項13】
前記表面層が、バインダー樹脂、及び、該バインダー樹脂中に分散されてなる電子導電剤を含み、前記表面層の表面が該電子導電剤の露出部に由来する凸部を有し、前記表面層の表面から深さ1μmの位置でのユニバーサル硬度が1.0N/mm以上、7.0N/mm以下である請求項1〜12のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項14】
前記電子導電剤が導電性カーボンブラックである請求項13に記載の導電性部材。
【請求項15】
前記表面層の表面における縦2.0μm、横2.0μmの領域を、走査型電子顕微鏡を用いて観察したとき、前記凸部の数が、50個以上、500個以下である請求項13または14に記載の導電性部材。
【請求項16】
前記バインダー樹脂がポリカーボネート構造を有する請求項1〜15のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項17】
前記表面層の体積抵抗率が、1.0×1010Ω・cm以上、1.0×1016Ω・cm以下である請求項1〜16のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項18】
前記表面層は、個数平均粒子径が3μm以上、30μm以下の粗し粒子を含む請求項1〜17のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項19】
前記表面層は、イオン導電剤を含む請求項1〜18のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項20】
前記表面層がウレタン樹脂を含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の導電性部材。
【請求項21】
前記ウレタン樹脂のウレタン基濃度が、1.5%以上 6.5%以下である請求項20に記載の導電性部材。
【請求項22】
前記ウレタン樹脂が、構造式(1)の構造、構造式(2)の構造、および構造式(3)の構造からなる群から選ばれる少なくとも一つの構造を有する請求項20または21に記載の導電性部材。
【化1】
構造式(1)〜(3)中、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数4以上8以下の直鎖または分岐を有する2価の炭化水素基を表す。
【請求項23】
電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであって、請求項1〜22のいずれか1項に記載の導電性部材を具備することを特徴とする電子写真用のプロセスカートリッジ。
【請求項24】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の導電性部材を具備することを特徴とする電子写真画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真方式で使用される導電性部材、プロセスカートリッジ、及び電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置(以下、「電子写真装置」とも称す)には、帯電部材、転写部材、現像部材として導電性部材が使用されている。導電性部材としては、導電性の支持体と、支持体上に設けられた導電層を有する構成の導電性部材が知られている。導電性部材は、導電性の支持体から導電性部材表面まで電荷を輸送し、当接物体に対して、放電、あるいは摩擦帯電によって電荷を与える役割を担う。
帯電部材は、電子写真感光体との間に放電を発生させ、電子写真感光体表面を帯電させる部材である。現像部材は、その表面に被覆された現像剤の電荷を摩擦帯電によって制御し、均一な帯電量分布を与え、次いで、印加された電界にしたがって、現像剤を電子写真感光体の表面に均一に転写する部材である。また、転写部材は、電子写真感光体から、印刷媒体、あるいは中間転写体に現像剤を転写させると同時に、放電を発生させて転写後の現像剤を安定化させる部材である。
これらの導電性部材は、それぞれ電子写真感光体や、中間転写体、印刷媒体などの当接物体に対して、均一な帯電を達成する必要がある。
特許文献1では、電子導電性であるポリマー粒子相をイオン導電性の半導電性のポリマー連続相に分散させた弾性体層を有する、均一な帯電を達成するための帯電部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−3651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの検討によれば、特許文献1に係る帯電部材は、被帯電体に対する均一帯電性に優れていることを確認した。しかしながら、近年の画像形成プロセスの高速化には、未だ改善の余地があるとの認識を得た。具体的には、特許文献1に係る帯電部材と電子写真感光体とを当接させ、一般的な回転数よりも高い回転数とする高速システムにて長期間画像形成させることを試みた。その結果、例えば、従来帯電部材上のトナーや外添剤の堆積(汚れ)が問題とならなかった印字枚数においても汚れ堆積が顕著と成り、その箇所に該当する画像上で、過剰放電による白ポチが形成されることがあった。
【0005】
本開示の一態様は、高速の電子写真画像形成プロセスに適用した場合にも、高品位な画像形成を長期にわたって可能とする帯電部材、現像部材または転写部材に用い得る導電性部材の提供に向けたものである。
また、本開示の他の態様は、高品位な電子写真画像の形成に資するプロセスカートリッジの提供に向けたものである。さらに本開示の他の態様は、高品位な電子写真画像を形成することのできる電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、導電性の外表面を有する支持体と、該支持体の該外表面上に設けられた導電層と、該導電層の外表面上に設けられた表面層とを有する電子写真用の導電性部材であって、
該導電性部材の外表面に直接白金電極を設け、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、該支持体の該外表面と該白金電極との間に振幅が1V、周波数1.0Hzの交流電圧を印加したときのインピーダンスが、1.0×10〜1.0×10Ωであり、
該表面層は、電子導電剤が分散されており、
該導電層は、第1のゴムの架橋物を含むマトリックスと、第2のゴムの架橋物及び導電性粒子を含むドメインと、を有し、
該導電層の長手方向の長さをL、該導電層の厚さをTとしたとき、該導電層の長手方向の中央、及び該導電層の両端から中央に向かってL/4の3か所における、該導電層の厚さ方向の断面の各々について、該導電層の外表面から深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所に15μm四方の観察領域を置いたときに、全9個の該観察領域の各々で観察されるドメインのうちの80個数%以上が、下記要件(1)及び要件(2)を満たす電子写真用の導電性部材が提供される。
(1)ドメインの断面積に対する該ドメインが含む該導電性粒子の断面積の割合が、20%以上であること;
(2)ドメインの周囲長をA、該ドメインの包絡周囲長をBとしたとき、A/Bが、1.00以上、1.10以下であること。
【0007】
また、本開示の他の態様によれば、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであって、上記の現像部材を具備するプロセスカートリッジが提供される。
さらに、本開示の他の態様によれば、上記のプロセスカートリッジを具備する電子写真画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、高速プロセスにおいても高画質を長期にわたり維持できる電子写真用の導電性部材が得られる。また、本開示の他の態様によれば、高品位な電子写真画像を安定して出力できる電子写真画像形成装置及びそれに用いられるプロセスカートリッジが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本開示の一実施形態に係る導電性部材の長手方向に対して垂直な方向の断面図である。
【図2】本開示の一実施形態に係る導電性部材の導電層の長手方向に対して垂直な方向の断面図である。
【図3A】本態様に係る導電層のインピーダンス測定系の概要図である。
【図3B】本態様に係る導電層のインピーダンス測定系の概要図である。
【図4】本態様に係るドメインの最大フェレ径を説明する概念図である。
【図5】本態様に係るドメインの包絡周囲長を説明する概念図である。
【図6A】本態様に係るドメイン形状を測定する切片の概念図である。
【図6B】本態様に係るドメイン形状を測定する切片の概念図である。
【図7】本開示の一実施形態に係るプロセスカートリッジの断面図である。
【図8】本開示の一実施形態に係る電子写真画像形成装置の断面図である。
【図9】表面層の凸部のサイズを説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX〜YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0011】
本発明者らは、特許文献1に係る帯電部材が、プロセス速度を高めたときに、従来画像上に問題とならなかった印字枚数において部材上にトナーや外添剤といった汚れの堆積が顕著となり電子写真画像上に白ポチを生じた理由について検討した。
一般的に、帯電部材(帯電ローラ)に直流電圧を印加するため、帯電ローラに印加する直流電圧と感光体の表面電位間に電位差が生じる。一方、絶縁性を有するトナー、外添剤等の汚れ物質は、電子写真画像形成装置内において摺擦等の影響を受けることにより、その一部が正、或いは負の電荷を帯びている。よって帯電ローラと感光体の表面電位間に電位差が生じている以上、正(+)、又は負(−)に帯電した汚れ物質のいずれか一方は、電位差の関係より帯電ローラに静電的に付着する。例えば、導電性部材が、電子写真装置において感光体に当接して配置され、当該感光体を帯電させる帯電ローラの場合、正に帯電した汚れ物質は、帯電ローラと感光体ドラム間の電位差の関係より、帯電ローラ側に積極的に静電付着する。
トナーが帯電ローラに付着した場合、帯電ローラへの印加バイアスが負又は正であることにより、トナーへ徐々に印加バイアスと同一極性の電荷が外表面から付与される。汚れに電荷が十分に蓄積されると、帯電ローラ表面から感光体ドラムに向かって形成される電界で静電気力が働き、帯電ローラ表面と汚れとの付着力を上回ることで、表面から汚れが剥離し感光体側に移動する「吐出し」現象が起こる。すなわち、大部分の汚れに対し、十分に電荷が蓄積され、吐出し現象が効率的に起これば、汚れの堆積を防ぐことができる。
最終的に汚れに到達することとなる、負又は正の電荷の支持体から帯電ローラの表面に至るまでの輸送工程に関して、特許文献1に係る帯電部材の内部において電子導電ゴム材料から成るポリマー粒子相の役割に着目した。本発明者らの観察によれば、該ポリマー粒子相は、いずれの形状も真球から大きく外れた形状を示しており、相境界が凹や凸形状となる部分が多く存在していた。このようなポリマー粒子相間では、電子の授受がポリマー粒子相の凸部に集中する。電子の授受が集中する箇所ができると、同時に授受が十分でない箇所も発生する。すなわち、前記輸送工程において電荷移動が不均一となる。特に高速プロセスにおいては、単位時間当たりに接触するトナー等の汚れの量が増加し、汚れへの電荷付与に最も寄与する、汚れ付着から次の別汚れの付着までの時間が短くなる。このため、汚れへの電荷供給量の低下が更に顕著となる。
以上より、プロセス速度を高めたときの汚れ堆積による画像上の白ポチ発生は、ポリマー粒子相間での電子授受の粗密発生が原因で、帯電ローラ表面で吐出し現象が不十分な箇所が現れ、その箇所で汚れ蓄積が促進される。その結果、電子写真画像に白ポチ発生が起こるものと推測した。
【0012】
そこで、本発明者らは、ポリマー粒子相間の電子の授受の集中点をなくし、且つ表面で汚れへの均一な電荷供給を確実に行うことが、吐出し効果の促進及び汚れ蓄積の抑制となり、画像上の白ポチ発生の改善に有効であると認識した。かかる認識に基づき、更なる検討を重ねた結果、導電性の外表面を有する支持体と、該支持体の該外表面上に設けられた導電層と、該導電層の外表面上に設けられた表面層とを有する電子写真用の導電性部材であって、
下記の要件(A)、(B)、(C)及び(D)を満たす導電性部材によれば、高速プロセスにおいても長期にわたって、汚れ蓄積による白ポチの発生を抑制し得ることを見出した。
【0013】
・要件(A)
該導電性部材の外表面に直接白金電極を設け、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、該支持体の該外表面と該白金電極との間に振幅が1V、周波数1.0Hzの交流電圧を印加したときのインピーダンスが、1.0×10〜1.0×10Ωであること。
【0014】
・要件(B)
該導電層は、第1のゴムの架橋物を含むマトリックスと、第2のゴムの架橋物及び導電性粒子を含むドメインと、を有すること。
【0015】
・要件(C)
該導電層の長手方向の長さをL、該導電層の厚さをTとする。該導電層の長手方向の中央、及び該導電層の両端から中央に向かってL/4の3か所における、該導電層の厚さ方向の断面の各々について、該導電層の外表面から深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所に15μm四方の観察領域を置く。全9個の該観察領域の各々で観察されるドメインのうちの80個数%以上が、下記要件(1)及び要件(2)を満たす。
(1)ドメインの断面積に対する該ドメインが含む該導電性粒子の断面積の割合が、20%以上であること;
(2)ドメインの周囲長をA、該ドメインの包絡周囲長をBとしたとき、A/Bが、1.00以上、1.10以下であること。
【0016】
・要件(D)
該表面層は、電子導電剤が分散されていること。
【0017】
<要件(A)>
要件(A)は、導電性部材の導電性の程度を表すものである。このようなインピーダンスの値を示す導電性部材は、過度に放電電流量が増加することを抑制し、その結果、異常放電に起因する電位ムラの発生を防ぐことができる。また、放電電荷量の総量の不足、汚れに供給する注入電荷の不足の発生を抑制し得る。
【0018】
要件(A)に係るインピーダンスは次のような方法によって測定することができる。
まず、インピーダンスの測定に際し、導電性部材と測定電極との間の接触抵抗の影響を排除するために、白金の薄膜を導電性部材の外表面に形成し、当該薄膜を電極として使用し、導電性の支持体を接地電極として2端子でインピーダンスを測定する。
当該薄膜の形成方法としては、金属蒸着、スパッタリング、金属ペーストの塗布、金属テープで貼付するなどの方法が挙げられる。中でも、導電性部材との接触抵抗を低減し得る観点から、蒸着で形成する方法が好ましい。
導電性部材の表面に白金薄膜を形成する場合、その簡便さ及び薄膜の均一性を考慮すると、真空蒸着装置に対して導電性部材を把持できる機構を付与することが好ましい。さらに、断面が円柱状の導電性部材に対しては、さらに回転機構を付与した真空蒸着装置を使用することが好ましい。
断面が円柱状の導電性部材に対しては、円柱状形状の軸方向としての長手方向で10mm程度の幅の白金薄膜電極を形成し、当該白金薄膜電極に対して隙間なく巻き付けた金属シートを測定装置から出ている測定電極と接続して測定を行うことが好ましい。これにより、導電性部材の外径の振れや、表面形状に影響されずに、インピーダンス測定を実施することができる。金属シートとしては、アルミホイルや金属テープ等を用いることができる。
インピーダンスの測定装置の例としては例えば、インピーダンスアナライザ、ネットワークアナライザ、スペクトルアナライザが挙げられる。中でも帯電部材の電気抵抗域から、インピーダンスアナライザを好適に用い得る。
図3A及び図3Bに導電性部材に測定電極を形成した状態の概要図を示す。図3A及び図3Bにおいて、31が支持体、32が導電層及び表面層、33が測定電極である白金蒸着層、34がアルミシートである。図3Aは斜視図、図3Bは断面図を示す。同図のように、支持体31と、測定電極33によって導電層及び表面層32を挟む状態にすることが重要である。
【0019】
そしてインピーダンス測定装置(例えば、商品名「ソーラトロン1260」、96W型誘電体インピーダンス測定システム ソーラトロン社製、不図示)に、当該アルミシート34から測定電極33と、支持体31に接続して、インピーダンス測定を行う。
インピーダンスの測定は、温度23℃、相対湿度50%環境において、振動電圧(振幅)1Vpp、周波数1.0Hzで測定し、インピーダンスの絶対値を得る。
導電性部材を長手方向に5個の領域に5等分し、それぞれの領域内から任意に1回ずつ、計5回の、上記測定を行う。その平均値を、導電性部材のインピーダンスとする。
【0020】
<要件(B)>
該導電層の第1のゴムの架橋物を含むマトリックスと、第2のゴムの架橋物及び導電性粒子を含むドメインの構成に関しては後の<導電層>部分で詳述する。
【0021】
<要件(C)>
要件(C)中、要件(1)は、該導電層が含むドメインの各々が含む導電性粒子の量を規定している。また、要件(2)は、ドメイン形状が真球に近く、ドメイン外周面において凸部や凹部となる部分が少ない(以下、ドメインの外周面に凹凸が少ない、又は凹凸がない、と表現する)ことを規定している。
要件(1)に関して、本発明者らは、1個のドメインに着目したときに、該ドメインに含まれる導電性粒子の量が、ドメインの形状に影響を与えているとの知見を得た。すなわち、1個のドメインの導電性粒子の充填量が増えるにつれて、該ドメインの形状がより球体に近くなるとの知見を得た。球体に近いドメインの数が多いほど、ドメイン間での電子の授受の集中点を少なくすることができる。
そして、1つのドメインの断面の面積を基準として、当該断面において観察される導電性粒子の断面積の総和の割合について着目した。本発明者らの検討によれば、その理由は明らかでないが、該割合が20%以上であるドメインは、ドメイン間での電子の授受の集中を有意に緩和し得る外形形状を取り得る。具体的には、より、球体に近い形状を取り得る。
要件(2)は、ドメインの外周面における、電子の授受の集中点となり得るような凹凸の存在の程度を規定している。すなわち、ドメインの周囲長をA、該ドメインの包絡周囲長をBとしたとき、A/Bが、1.00のドメインは、その外周に凹凸が存在しない。そして、本発明者らの検討によれば、A/Bが、1.00以上、1.10以下であるドメインは、ドメイン間で電子の授受の集中点となり得るような凹凸を実質的に有しないものであるとの認識を得た。なお、包絡周囲長とは、図5に示したように、観察領域内で観察されるドメイン51の凸部同士を結び、凹部の周長を無視したときの周囲長(破線52)である。
そして、要件(C)においては、導電層中のドメイン群のうち、上記要件(1)、及び要件(2)を満たすドメインが80個数%以上という大多数を占めることを規定している。
要件(C)において、ドメインの観察対象を、導電層の厚み方向の断面における、導電層の外表面から深さ0.1T〜0.9Tの範囲内とした意味は、次の通りである。すなわち、導電層中を支持体側から該導電層の外表面側に向かう電子の移動は、主に当該範囲内に存在するドメインによって主に支配されていると考えられるためである。
【0022】
<要件(D)>
要件(D)を満たす表面層により、要件(C)を満たした導電層側から均一に供給される電荷を、更に汚れの接触形態に関わらず確実に汚れへ付与することが可能となる。例えば、要件(D)を満たす表面層がなくトナーと導電層との接触面積が微小であり、且つ接触部分が導電層のマトリックス部分である場合、汚れへ電荷付与が十分でないことがありうる。電子導電剤の分散した表面層が存在することで、電荷付与を更に均質に行うことが可能となる。導電剤の中でも応答性の速さから、電子導電剤であることが必要である。
【0023】
本開示に係る電子写真用の導電性部材の一態様として、特にローラ形状を有する導電性部材(以降、「導電性ローラ」ともいう)について図を用いて説明する。
図1は、導電性ローラ11の長手方向に対して垂直な断面図である。導電性ローラ11は、円柱状または中空円筒状の支持体12、該支持体の外周面上に形成された導電層13、更に表面層14を有している。
図2は、導電性ローラの長手方向に対して垂直な方向の導電性ローラの支持体を除く断面図を示す。導電層23は、マトリックス23aと、ドメイン23bとを有する構造(以降、「マトリックス−ドメイン構造」ともいう)を有する。そして、ドメイン23bは、導電性粒子23cを含む。導電層23の外表面に電子導電剤(不図示)を含む表面層24が形成されている。
なお、図1、図2の導電層におけるドメインやマトリックス、表面層は、わかりやすくするために概略を示したものであり、その大きさや比率などを特定するものではない。
【0024】
<支持体>
支持体を構成する材料としては、電子写真用の導電性部材の分野で公知なものや、導電性部材として利用できる材料から適宜選択して用いることができる。一例として、アルミニウム、ステンレス、導電性を有する合成樹脂、鉄、銅合金などの金属又は合金が挙げられる。
さらに、これらに対して、酸化処理やクロム、ニッケルなどで鍍金処理を施してもよい。鍍金の種類としては電気鍍金、無電解鍍金のいずれも使用することができる。寸法安定性の観点から無電解鍍金が好ましい。ここで使用される無電解鍍金の種類としては、ニッケル鍍金、銅鍍金、金鍍金、その他各種合金鍍金を挙げることができる。
鍍金厚さは、0.05μm以上が好ましく、作業効率と防錆能力のバランスを考慮すると、鍍金厚さは0.10μm〜30.00μmであることが好ましい。支持体の形状としては、円柱状または中空円筒状を挙げることができる。支持体の円柱状の形状は、中実の円柱状でも、中空の円柱状(円筒状)でもよい。また、支持体の外径は、3mm〜10mmの範囲が好ましい。更に、必要であれば電子写真装置へ装着するために部分的な加工を施す。
支持体と導電層の間に、中抵抗層又は絶縁層が存在すると、放電による電荷の消費後の電荷の供給を迅速にできなくなる場合がある。よって、導電層は、支持体に直接設けるか、又はプライマーなどの薄膜かつ導電性の樹脂層からなる中間層のみを介して支持体の外周に導電層を設けることが好ましい。
プライマーとしては、導電層形成用のゴム材料及び支持体の材質等に応じて公知のものを選択して用いることができる。プライマーの材料としては、例えば熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、フェノール系の樹脂、ウレタン系の樹脂、アクリル系の樹脂、ポリエステル系の樹脂、ポリエーテル系の樹脂、エポキシ系の樹脂のような公知の材料を用いることができる。
【0025】
<導電層>
導電層は、マトリックス及びマトリックス中に分散された複数のドメインを有する。そしてマトリックスは、第一のゴムを含有し、ドメインは第二のゴム及び電子導電剤を含有する。
<マトリックス>
マトリックスは、第1のゴムの架橋物を含む。マトリックスの体積抵抗率ρmは1.0×10Ωcm以上1.0×1017Ωcm以下が好ましい。マトリックスの体積抵抗率を1.0×10Ωcm以上とすることで、マトリックスが、導電性のドメインの間での電荷の授受を乱すことを抑制できる。また、体積抵抗率ρmを1.0×1017Ωcm以下とすることで、支持体と被帯電部材との間に帯電バイアスを印加したときの導電性部材からの被帯電部材への放電を円滑に行い得る。マトリックス体積抵抗率ρmは、特には、1.0×1010Ωcm以上1.0×1017Ωcm以下、さらには、1.0×1012Ωcm超過1.0×1017Ωcm以下が好ましい。
【0026】
マトリックスの体積抵抗率ρmは、例えば、導電層から、マトリクスドメイン構造が含まれている所定の厚さ(例えば、1μm)の薄片を切り出し、当該薄片中のマトリクスに走査型プローブ顕微鏡(SPM)や原子間力顕微鏡(AFM)の微小探針を接触させることによって計測することができる。
弾性層からの薄片の切り出しは、例えば、図6Aに示したように、導電性部材の長手方向をX軸、導電層の厚み方向をZ軸、周方向をY軸とした場合において、薄片が、XZ平面と平行な断面62aの少なくとも一部を含むように切り出す。または、図6Bに示すように、薄片が、導電性部材の軸方向に対して垂直なYZ平面(例えば、63a、63b、63c)の少なくとも一部を含むように切り出す。例えば、鋭利なカミソリや、ミクロトーム、収束イオンビーム法(FIB)などが挙げられる。
【0027】
体積抵抗率の測定は、導電層から切り出した薄片の片面を接地する。次いで、当該薄片の接地面とは反対側の面のマトリクスの部分に走査型プローブ顕微鏡(SPM)や原子間力顕微鏡(AFM)の微小探針(カンチレバーの先端)を接触させ、50VのDC電圧を5秒間印加し、接地電流値を5秒間測定した値から算術平均値を算出し、その算出した値で印加電圧を除することで電気抵抗値を算出する。最後に薄片の膜厚を用いて、抵抗値を体積抵抗率に変換する。このとき、SPMやAFMは、抵抗値と同時に当該薄片の膜厚も計測できる。
円柱状の帯電部材におけるマトリックスの体積抵抗率の値は、例えば、導電層を周方向に4分割、長手方向に5分割した領域のそれぞれから各1つずつ薄片サンプルを切り出し、上記の測定値を得た後に、合計20サンプルの体積抵抗率の算術平均値を算出することによって求める。
【0028】
<第1のゴム>
第1のゴムは、導電層形成用のゴム組成物中、最も配合割合が多い成分であり、第1のゴムの架橋物は導電層の機械的強度を支配する。従って、第1のゴムは、架橋後において、導電層に、電子写真用の導電性部材に要求される強度を発現するものが用いられる。
第1のゴムの好ましい例は、以下に挙げる。
天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、NBRの水素添加物(H−NBR)及びシリコーンゴム。
【0029】
マトリックスを形成する第1のゴムには、必要に応じて、ゴムの配合剤として一般に用いられている充填剤、加工助剤、加硫助剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、軟化剤、分散剤、着色剤等を添加してもよい。
【0030】
<ドメイン>
ドメインは第2のゴムの架橋物、及び、導電性粒子を含む。ここで導電性とは体積抵抗率が1.0×10Ωcm未満であると定義する。
【0031】
<第2のゴム>
第2のゴムの具体例としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クルルプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、シリコーンゴム、及びウレタンゴム(U)からなる群から選択される少なくとも一つが好ましい。
【0032】
<導電性粒子>
導電性粒子としては、導電性カーボンブラック、グラファイト等の炭素材料;酸化チタン、酸化錫等の導電性酸化物;Cu、Ag等の金属;導電性酸化物または金属が表面に被覆され導電化された粒子等の電子導電剤の粒子が例として挙げられる。これらの導電性粒子の2種類以上を適宜量配合して使用してもよい。
そして、導電性粒子は、要件(C)(1)で規定したように、ドメインの断面積に対する導電性粒子の断面積の割合が少なくとも20%となるように含有されることが好ましい。このようにドメイン中に導電性粒子を高密度に充填することで、ドメインの外形形状を球体に近づけることができると共に、前記要件(C)(2)に規定したように凹凸が小さいものとすることができる。ドメインの断面積に対する導電性粒子の断面積の割合の上限については特に限定されないが、30%以下であることが好ましい。
【0033】
要件(C)(1)で規定したような、導電性粒子が高密度に充填されたドメインを得るために、導電性粒子として、導電性カーボンブラックを用いることが好ましい。導電性カーボンブラックの具体例を以下に挙げる。
ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック。
中でも、DBP吸収量が40cm/100g以上80cm/100g以下であるカーボンブラックを特に好適に用い得る。DBP吸収量(cm/100g)とは、100gのカーボンブラックが吸着し得るジブチルフタレート(DBP)の体積であり、日本産業規格(JIS) K 6217−4:2017(ゴム用カーボンブラック−基本特性−第4部:オイル吸収量の求め方(圧縮試料を含む))に従って測定される。一般に、カーボンブラックは、平均粒径10nm以上50nm以下の一次粒子がアグリゲートした房状の高次構造を有している。この房状の高次構造はストラクチャーと呼ばれ、その程度はDBP吸収量(cm/100g)で定量化される。
一般的に、ストラクチャーが発達したカーボンブラックは、ゴムに対し補強性が高く、ゴムへのカーボンブラックの取り込みが悪くなり、また、混練時のシェアトルクが非常に高くなる。そのため、ドメイン中に充填量を多くすることが困難である。
一方、DBP吸収量が上記範囲内にある導電性カーボンブラックは、ストラクチャー構造が未発達のため、カーボンブラックの凝集が少なく、ゴムへの分散性が良好である。そのため、ドメイン中への充填量を多くでき、その結果として、ドメインの外形形状を、より球体に近いものを得られやすい。
さらに、ストラクチャーが発達したカーボンブラックは、カーボンブラック同士が凝集し易く、また、凝集体は、大きな凸凹構造を有する塊となりやすい。このような凝集体がドメインに含まれると、要件(C)(2)に係るドメインが得られにくい。形状にまで影響を与え凹凸構造を形成する場合がある。一方、DBP吸収量が、上記した範囲内にある導電性カーボンブラックは、凝集体を形成し難いため、要件(C)(2)に係るドメインを得る上で有効である。
導電性のカーボンブラック等の電子導電剤の含有量は、ドメインに含まれる第二のゴム100質量部に対して、20質量部以上150質量部以下が好ましい。より好ましくは、50質量部以上100質量部以下である。
【0034】
ドメインの体積抵抗率は1.0×10Ωcm以下にすることが好ましい。1.0×10Ωcm以下であれば、安定してマトリックス−ドメイン構造を形成するドメインの体積分率で導電化することができるためである。なおドメインの体積抵抗率の測定は、全記のマトリックスの体積抵抗率の測定方法に対して、測定箇所をドメインに相当する場所に変更し、電流値の測定の際の印加電圧を1Vに変更した以外は同様の方法で実施すればよい。
【0035】
要件(A)で規定したような導電性部材を得るために、本態様に係るドメインは、特定の観察領域内にドメインが20〜300個存在することがより好ましい。本開示においては、導電層の厚みをTとしたとき、該導電層の厚み方向の断面における該導電層の外表面から深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の位置に15μm四方の観察領域を置く。そして、当該観察領域内に含まれるドメインの個数は20個以上であることが好ましい。これにより、導電性部材としての十分な導電性を確保でき、より高速な電子写真画像形成プロセスにおいても十分な電荷供給を達成することができる。また、当該観察領域内のドメインの個数は300個以下であることが好ましい。これにより、ドメイン間に十分な距離を形成し得るため、長期の使用によってもドメイン同士が凝集することを防止し得る。その結果、均一な放電を長期に亘り達成し得る。
【0036】
本態様に係るドメインは、要件(C)(1)及び要件(C)(2)を満たしているドメイン41の最大フェレ径Df(図4参照、以降、単に「ドメイン径」ともいう)の平均が、0.1〜5.0μmの範囲内であることが好ましい。この範囲であれば、現像剤と同様以下のサイズとなるため、細かい放電が可能となり、均一放電を達成することが容易となる。
【0037】
<導電層の製造方法>
本態様に係る導電性部材の導電層は、例えば、下記工程(i)〜(iv)を含む方法を経て形成することができる。
【0038】
工程(i):カーボンブラック及び第2のゴムを含む、ドメイン形成用ゴム組成物(以降、「CMB」とも称する)を調製する工程;
工程(ii):第1のゴムを含むマトリックス形成用ゴム組成物(以降、「MRC」とも称する)を調製する工程;
工程(iii):CMBとMRCとを混練して、マトリックス−ドメイン構造を有するゴム組成物を調製する工程。
工程(iv):工程(iii)で調製したゴム組成物の層を、支持体上に直接または他の層を介して形成し、該ゴム組成物の層を硬化させて、本態様に係る導電層を形成する工程。
【0039】
そして、要件(C)を満たすドメインを得るためには、CMBの調製に用いる導電性粒子として、DBP吸収量が40cm/100g以上170cm/100g以下、好ましくは、前述したDBP吸収量が40cm/100g以上80cm/100g以下であるカーボンブラックを、第2のゴムに対して多量に添加して混練してCMBを調製することが有効である。この場合、CMB中における第2のゴムに対するカーボンブラックの配合量としては、例えば、第2のゴムの100質量部に対して、40質量部以上200質量部以下の配合量が好ましい。特には、50質量部以上100質量部以下である。
また、ドメイン中の導電性粒子の含有量としては、ドメイン中の導電性粒子間の距離の算術平均であるDcが、110nm以上130nm以下となる量が含まれていることが好ましい。
ドメイン中の導電性粒子のDcが110nm以上130nm以下であれば、トンネル効果による導電性粒子間の電子の受け渡しが、ドメイン内のほぼすべての導電性粒子間で可能となる。すなわち、ドメイン内の導電パスの偏在を抑制できるため、ドメイン内での電界集中を抑制できる。その結果、ドメイン形状に加え、ドメイン内での電界集中を抑制できる。
さらには導電性粒子としてカーボンブラックを分散させたゴム中に架橋ゴム的な性質を示すカーボンゲルが増え、形状を維持しやすくなり、成形時ドメインを球形状に維持しやすくなる。その結果、電界集中が抑制される。
さらに、導電性粒子のDcが110nm以上130nm以下であり、かつ、導電性粒子間の距離の分布の標準偏差をσmとしたときに、導電性粒子の粒子間距離の変動係数σm/Dcが0.0以上0.3以下であることがさらに好ましい。変動係数は、導電性粒子間の距離のばらつきを示す値であり、導電性粒子間の距離がすべて同じである場合、0.0となる。
この変動係数σm/Dcが、0.0以上0.3以下を満たす場合、カーボンブラックの粒子間距離のばらつきが少ないため、カーボンブラック粒子が均一に分散されていることを意味する。その結果、カーボンブラック粒子の凝集体(二次粒子)に起因するドメインの凸凹形状を抑制することができるためである。その結果、電界集中を抑制できる。
【0040】
ドメイン内の導電性粒子のDc及びドメイン断面積に対する導電性粒子断面の割合は次のようにして測定すればよい。まず、導電層の薄片を作製する。マトリックス−ドメイン構造の観察を好適に実施するために、染色処理、蒸着処理など、導電性の相と絶縁性の相とのコントラストが好適に得られる前処理を施してもよい。
破断面の形成、前処理を行った薄片に対して、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察することができる。これらの中でも、導電相であるドメインの面積の定量化の正確性から、SEMで1,000倍〜100,000倍で観察を行うことが好ましい。得られた観察画像に対し画像解析装置等を用いて、2値化し解析することで上記算術平均距離Dc及び上記割合が得られる。
【0041】
また、ドメイン間での電界集中のより一層の軽減を図る上では、ドメインの外形形状をより球体に近づけることが好ましい。そのためには、ドメイン径を、前記した範囲内でより小さくすることが好ましい。その方法としては、例えば、MRCとCMBとを混練して、MRCとCMBとを相分離させて、MRCのマトリックス中にCMBのドメインを形成されたゴム組成物を調製する工程において、CMBのドメイン径を小さくするように制御する方法が挙げられる。CMBのドメイン径を小さくすることでCMBの総比表面積が増大し、マトリックスとの界面が増加するため、CMBのドメインの界面には張力を小さくしようとする張力が作用する。その結果、CMBのドメインは、その外形形状が、より球体に近づく。
ここで、非相溶のポリマー2種を溶融混練させたときに形成されるマトリックス−ドメイン構造におけるドメイン径Dを決定する要素に関して、Taylorの式(式(4))、Wuの経験式(式(5)、(6))、及びTokitaの式(式(7))が知られている。(住友化学 技術誌 2003-II、42)
【0042】
・Taylorの式
D=[C・σ/ηm・γ]・f(ηm/ηd) (4)
【0043】
・Wuの経験式
γ・D・ηm/σ=4(ηd/ηm)0.84・ηd/ηm>1 (5)
γ・D・ηm/σ=4(ηd/ηm)−0.84・ηd/ηm<1 (6)
【0044】
【数1】
【0045】
式(4)〜(7)において、DはCMBのドメイン径(最大フェレ径Df)、Cは定数、σは界面張力、ηmはマトリックスの粘度、ηdはドメインの粘度を表す。また、式(7)において、γはせん断速度、ηは混合系の粘度、Pは衝突合体確率、φはドメイン相体積、EDKはドメイン相切断エネルギーを表す。
【0046】
そして、上記式(4)〜(7)から、CMBのドメイン径Dを小さくするためには、たとえば、CMB及びMRCとの物性、並びに工程(iii)における混練条件を制御することが有効である。具体的には、下記の(a)〜(d)の4つを制御することが有効である。
(a)CMB、及びMRCの各々の界面張力σの差;
(b)CMBの粘度(ηd)、及びMRCの粘度(ηm)の比(ηm/ηd);
(c)工程(iii)における、CMBとMRCとの混練時のせん断速度(γ)、及びせん断時のエネルギー量(EDK);
(d)工程(iii)における、CMBとMRCの混練物に対するCMBの体積分率。
【0047】
(a)CMBとMRCとの界面張力差
一般的に二種の非相溶のゴムを混合した場合、相分離する。これは、異種高分子間の相互作用よりも、同一高分子間の相互作用が強いため、同一高分子同士で凝集し、自由エネルギーを低下させ安定化しようとするためである。相分離構造の界面は異種高分子と接触するため、同一分子同士の相互作用で安定化されている内部より、自由エネルギーが高くなる。その結果、界面の自由エネルギーを低減させるために、異種高分子と接触する面積を小さくしようとする界面張力が発生する。この界面張力が小さい場合、エントロピーを増大させるために異種高分子でもより均一に混合しようとする方向に向かう。均一に混合した状態とは溶解であり、溶解度の目安となるSP値と界面張力は相関する傾向にある。つまり、CMBとMRCとの界面張力差は、CMBとMRCとのSP値差と相関すると考えられる。そのため、MRCとCMBとの組み合わせ、特に第1のゴムと第2のゴムの組み合わせで制御することが可能である。
MRC中の第1のゴムと、CMB中の第2のゴムとしては、溶解度パラメーター(SP値)の差の絶対値が、0.4(J/cm0.5以上4.0(J/cm0.5以下、特には、0.4(J/cm0.5以上3.0(J/cm0.5以下となるようなゴムを選択することが好ましい。この範囲であれば安定した相分離構造を形成でき、また、CMBのドメイン径Dを小さくすることができる。
【0048】
<SP値の測定方法>
MRC、及びCMBの各々が含む第1のゴム及び第2のゴムのSP値は、SP値が既知の材料を用いて、検量線を作成することで、精度良く算出することが可能である。この既知のSP値は、材料メーカーのカタログ値を用いることもできる。例えば、NBR及びSBRは、分子量に依存せず、アクリロニトリル又はスチレンの含有比率でSP値がほぼ決定される。従って、マトリックス及びドメインを構成するゴムを、熱分解ガスクロマトグラフィー(Py−GC)及び固体NMR等の分析手法を用いて、アクリロニトリル又はスチレンの含有比率を解析する。そして、SP値が既知の材料から得た検量線から、含有比率に基づいてSP値を算出することができる。また、イソプレンゴムは、1,2−ポリイソプレン、1,3−ポリイソプレン、3,4−ポリイソプレン、及びcis−1,4−ポリイソプレン、trans−1,4−ポリイソプレンなどの、異性体構造でSP値が決定される。従って、SBR及びNBRと同様にPy−GC及び固体NMR等で異性体含有比率を解析し、SP値が既知の材料から、SP値を算出することができる。
SP値が既知の材料のSP値は、Hansen球法で求めたものである。
【0049】
(b)CMBとMRCとの粘度比
CMBとMRCとの粘度比(ηd/ηm)は、1に近い程、ドメインの最大フェレ径を小さくできる。CMBとMRCの粘度比は、CMB及びMRCのムーニー粘度の選択や、充填剤の種類や量の配合によって調整が可能である。また、相分離構造の形成を妨げない程度に、パラフィンオイルなどの可塑剤を添加することでも可能である。また混練時の温度を調整することで、粘度比の調整を行うことができる。なおCMBやMRCの粘度は、JIS K6300−1:2013に基づきムーニー粘度ML(1+4)を混練時のゴム温度で測定することで得られる。
【0050】
(c)MRCとCMBとの混練時のせん断速度、及びせん断時のエネルギー量
MRCとCMBとの混練時のせん断速度は速いほど、また、せん断時のエネルギー量は大きいほど、ドメインの最大フェレ径Dfを小さくすることができる。
せん断速度は、混練機のブレードやスクリュウといった撹拌部材の内径を大きくし、撹拌部材の端面から混練機内壁までの間隙を小さくすることや、回転数を大きくすることで上げることができる。またせん断時のエネルギーを上げるには、撹拌部材の回転数を上げることや、CMB中の第1のゴムとMRC中の第2のゴムの粘度を上げることで達成できる。
【0051】
(d)ドメインの体積分率(CMBとMRCの混練物に対するCMBの体積分率)
CMBとMRCの混練物に対するCMBの体積分率は、MRCに対するCMBの衝突合体確率と相関する。具体的には、CMBとMRCの混練物に対するCMBの体積分率を低減させると、CMBとMRCの衝突合体確率が低下する。つまり必要な導電性を得られる範囲において、導電層中におけるドメインの体積分率を減らすことでドメインのサイズを小さくできる。
【0052】
<マトリックス−ドメイン(M−D)構造の確認方法>
本態様に係るマトリックス−ドメイン構造は、例えば、以下の如き方法によって確認することができる。すなわち、導電層から、導電層の薄片を切り出して観察試料を作製する。薄片の切り出し手段としては、例えば、カミソリや、ミクロトーム、FIBが挙げられる。
該観察試料について、必要に応じて、マトリックスとドメインとの区別を容易とすることができる処理(例えば、染色処理、蒸着処理)を施す。そして、該観察試料を、レーザー顕微鏡、SEMやTEMによって観察する。
【0053】
<ドメインの周囲長、包絡周囲長、最大フェレ径及びその平均、及びドメイン個数及び平均個数の測定方法>
本態様に係るドメインの周囲長、包絡周囲長、最大フェレ径及びドメイン個数の測定方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。
まず、前述のマトリックスの体積抵抗率の測定における方法と同様の方法で切片を作製する。次いで、下凍結破断法、クロスポリッシャー法、収束イオンビーム(FIB)法等の手段で破断面を有する薄片を形成することができる。破断面の平滑性と、観察のための前処理を考慮すると、FIB法が好ましい。また、マトリックス−ドメイン構造の観察を好適に実施するために、染色処理、蒸着処理など、導電性の相と絶縁性の相とのコントラストが好適に得られる前処理を施してもよい。
破断面の形成、前処理を行った薄片に対して、SEMやTEMによって観察することができる。これらの中でも、ドメインの周囲長、包絡周囲長、最大フェレ径の定量化の正確性から、SEMで1,000倍〜100,000倍で観察を行うことが好ましい。
ドメインの周囲長、包絡周囲長、最大フェレ径、及びドメイン個数の測定は、上記で撮影画像を定量化することによって得ることができる。SEMでの観察により得られた破断面画像に対し、商品名:Image−Pro Plus(プラネトロン社製)の如き画像処理ソフトを使用して、8ビットのグレースケール化を行い、256諧調のモノクロ画像を得る。次いで、破断面内のドメインが白くなるように、画像の白黒を反転処理し、2値化を実施する。次いで、画像内のドメイン群のそれぞれから、周囲長、包絡周囲長、最大フェレ径、及びドメイン個数を算出すればよい。
上記の測定のためにサンプルは、導電性部材の該導電層の長手方向の長さをLとしたとき、導電層の長手方向の中央、及び該導電層の両端から中央に向かってL/4の2か所の計3か所から切片を切り出す。切片を切り出す方向としては、導電層の長手方向に対して垂直な断面となる方向である。
【0054】
上記のように導電層の長手方向に対して垂直な断面におけるドメインの形状を評価する理由は下記である。図6A及び図6Bでは、導電性部材61を、3軸、具体的にはX、Y、Z軸の3次元としてその形状を示した図を示す。図6A及び図6BにおいてX軸は導電性部材の長手方向(軸方向)と平行な方向、Y軸、Z軸は導電性部材の軸方向と垂直な方向を示す。
【0055】
図6Aは、導電性部材に対して、XZ平面62と平行な断面62aで導電性部材を切り出すイメージ図を示す。XZ平面は導電性部材の軸を中心として、360°回転することができる。導電性部材が感光体ドラムに対して当接されて回転し、感光体ドラムとの隙間を通過する際に放電することを考慮すると、当該XZ平面62と平行な断面62aは、あるタイミングに同時に放電が起きる面を示していることになる。したがって、一定量の断面62aに相当する面が通過することによって、感光体ドラムの表面電位が形成される。
導電性部材内の電界集中による局所的に大きな放電によって、感光体ドラム表面上が局所的に増大し、かぶりとなるため、一定量の断面62aが1枚ではなく、断面62aの集合が通過して形成する、感光体ドラム表面電位と相関する評価が必要である。したがって、断面62aのようなある一瞬において同時に放電が発生する断面の解析ではなく、一定量の断面62aを含むドメイン形状の評価ができる導電性部材の軸方向と垂直なYZ平面63と平行な断面(63a〜63c)での評価が必要である。断面63a〜63cは、該導電層の長手方向の長さをLとしたとき、導電層の長手方向の中央での断面63bと、及び該導電層の両端から中央に向かってL/4の2か所の断面(63a及び63c)の計3か所を選択する。
また、当該断面63a〜63cのそれぞれの切片断面の観察位置に関しては、導電層の厚さTに対し、各切片のそれぞれ外表面から深さ0.1T以上0.9T以下までの厚み領域の任意の3か所で15μm四方の観察領域を置き、合計9か所で測定を行えばよい。各値の平均値は該9か所の観察領域の平均値を示す。
【0056】
<表面層>
表面層は電子導電剤を含む。該電子導電剤は、バインダー樹脂中に分散されて含まれる形で表面層が形成されると、分散が十分に進み、表層の物理的な耐久性の点でも好ましい。表面層は必要に応じて、粗し粒子、表面離型剤などを含有してもよい。
【0057】
<電子導電剤>
表面層に含まれる電子導電剤としては、導電性カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物系導電性粒子、アルミニウム、鉄、銅、銀等の金属系導電性粒子等の導電性粒子を挙げることができる。これらの導電性粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、導電性粒子として、シリカ粒子を導電性粒子で被覆した複合粒子を用いることもできる。表面層に用いる導電性粒子としては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックは比重が低く、かつ、導電性が高いため、バインダー樹脂に対して少量の添加で、表面層として十分な導電性を確保することが可能となる。本開示では、表面層の硬度を低硬度に保つことが好ましいため、少量添加に適したカーボンブラックが好適である。
【0058】
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂としては、公知のバインダー樹脂を用いることができる。例えば、各種合成樹脂、天然ゴムやこれを加硫処理したもの、合成ゴムなどのゴム等を挙げることができる。バインダー樹脂としては、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体及びオレフィン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体等が使用できる。なお、本開示のバインダー樹脂としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のエーテル結合を含有しないことが好ましい。エーテル系ウレタン樹脂は、ユニバーサル硬度を低減可能であるが、樹脂の体積抵抗率が低下するため、本開示のバインダー樹脂としては適さないからである。前記バインダー樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。バインダー樹脂としては、これらの中でも、表面層のユニバーサル硬度を低減することによる柔軟性と、表面層の高抵抗化を両立させるためには、特に、ポリカーボネート構造を含む樹脂であることが好ましい。ポリカーボネート構造は、極性が低いため、バインダー樹脂自身の体積抵抗率を高く維持できる。具体的には、ポリカーボネートポリオールと、ポリイソシアネートを共重合させたポリカーボネート系ポリウレタンが好ましい。
【0059】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば以下のものが挙げられる。ポリノナメチレンカーボネートジオール、ポリ(2−メチル−オクタメチレン)カーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリ(3−メチルペンタメチレン)カーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリトリメチレンカーボネートジオール、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、ポリ(2−エチル−2−ブチル−トリメチレン)カーボネートジオール、及びこれらのランダム/ブロック共重合体。
【0060】
ポリイソシアネートは一般的に用いられる公知のものから選ばれ、例えば以下のものが挙げられる。トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンポリイソシアネート、水添MDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等。これらの中でもトルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンポリイソシアネートの如き芳香族イソシアネートがより好適に用いられる。
【0061】
<表面層のユニバーサル硬度>
汚れ物質の発生自体を抑制するうえでは、トナーに割れや変形を生じさせないことが有効である。そのためには、表面層が柔軟であることが好ましい。本開示の導電性部材の硬度の目安は、表面層の表面から深さ1μmの位置での「ユニバーサル硬度(t=1μm位置)」が1.0N/mm以上、7.0N/mm以下であることが好ましい。外添剤やトナーは、そのサイズがサブミクロンから数ミクロンのオーダであるため、表面層の外添剤やトナーとの接触面である外表面の極近傍の硬度を制御することが好ましい。具体的には、表面層の外表面から圧子を1μm押し込んだ時点での表面のユニバーサル硬度を1.0N/mm以上とすることで、長期間静止状態で、帯電ローラと電子写真感光体とを当接させた場合に生じる帯電ローラの変形由来の画像濃度ムラの発生を抑制できる。また、該ユニバーサル硬度を7.0N/mm以下にすることで、トナーの変形・割れを抑制できるため、感光体に残存する異型トナー、微粉化したトナーの絶対量をより確実に抑制できる。さらに、該ユニバーサル硬度を5.0N/mm以下にすることで、汚れ物質に対して、表面層が追従して変形するため、表面層の表面に露出した導電性粒子による凸部と、汚れ物質の接触点が増加し、該凸部から汚れ物質への電子の注入効率が向上する。
【0062】
なお、帯電ローラとしての表面層の表面のユニバーサル硬度は、例えば、ユニバーサル硬度計(商品名:フィッシャースコープHM2000XYp、フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定される。ユニバーサル硬度とは、圧子を、荷重をかけながら測定対象物に押し込むことにより求められる物性値であり、「(試験荷重)/(試験荷重下での圧子の表面積)(N/mm)」として求められる。四角錐などの圧子を、所定の比較的小さい試験荷重をかけながら被測定物に押し込み、所定の押し込み深さに達した時点でのその押し込み深さから圧子が接触している表面積を求め、上記式よりユニバーサル硬度を求める。
【0063】
<電子導電剤に由来する表面層凸部>
汚れ物質に電荷を注入するため、表面層の表面に電子導電剤(導電性粒子)の露出部に由来する凸部が存在することが好ましい。導電性粒子の露出部に由来する凸部のサイズとしては、5.0nm以上、100.0nm以下であることが好ましい。5.0nm以上にすることで、汚れ物質に対して電荷をより効率的に注入するための起点としての凸部として機能できる。また、100.0nm以下にすることで感光体へ過度に電荷を注入することを抑制できる。なお、凸部のサイズとは、図9に示すように、バインダー樹脂302から露出した部分の導電性粒子301の粒子径303の平均値(個数平均粒子径)を意味する。この凸部サイズの測定方法としては、SEMを用い、任意の2μm四方の領域の画像を撮影し、得られた画像から無作為に選択した20個の粒子について粒子径を測定し、算術平均粒子径を求める。
また、導電性微粒子に由来する凸部を利用し、汚れ物質に電荷を注入するためには、凸部の数の制御が有効である。導電性微粒子の露出部に由来する凸部の数としては、縦2.0μm、横2.0μmの領域(4.0μmの領域)において50個以上、500個以下であることが好ましい。50個以上にすることで、汚れ物質に対して電荷を注入する起点としての凸部の数を確保できる。また500個以下にすることで感光体への電荷の注入を抑制できる。該凸部の数の算出は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、任意の2μm四方の領域の画像を撮影し、2値化後の画像より、導電点数を算出することによって行うことができる。
【0064】
次に、表面層の表面に導電性微粒子を露出させる手法について説明する。導電性部材の導電層の上にディッピング塗布法によって表面層を形成する場合、表面層の最表面に必ずスキン層が形成される。このため、導電性粒子が表面層の表面に露出させて、その露出部によって表面層の表面に凸部を生じさせるためには、最表面のスキン層を除去することが有効である。例えば、紫外線処理、研磨法、電解研磨法、化学研磨法、イオンミリング法等を行うことで、バインダー樹脂による表面スキン層を除去し、導電性粒子を表面層の表面に露出させることが可能となる。本開示においては、表面層の硬度が低いため、紫外線処理を行うことでも、十分にスキン層を除去し、導電性微粒子を表面層の表面に露出させることができる。紫外線処理は、研磨法等と比較し、表面層へのダメージを最小限に抑えた上で、導電性粒子を表面層の表面に露出させることができるため、好ましい。
導電性微粒子の露出状態は、電子間力顕微鏡(AFM)を用いて確認できる。AFMのタッピングモードで高さ像を取得する。この場合、導電性微粒子の露出部に由来する部分が凸部として確認される。ディップコーティング後のスキン層が存在した状態で、高さ像を取得した場合には、前記凸部が確認されない。さらに、AFMのタッピングモードで位相像を取得する。この場合、導電性微粒子の位相ズレが少なく、かつ、バインダー樹脂と導電性微粒子との硬度差のため、濃淡コントラスト差が非常に大きな画像が得られる。ディップコーティング後のスキン層が存在した状態で位相像を取得した場合には、位相差が非常に数少なく、コントラスト差の低い画像が取得される。
【0065】
<粗し粒子>
表面層には、本開示の効果を損なわない範囲で粗し粒子を含有してもよい。粗し粒子としては、例えば以下のものが挙げられる。アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂及びシリコーン樹脂等の有機系絶縁性粒子;酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、マイカ、ゼオライト及びベントナイト等の粒の無機系絶縁性粒子。本開示においては、外添剤、トナー等の汚れ物質に対して、表面層が変形することで接触機会を増大させるため、柔軟性を有する有機系絶縁性粒子を粗し粒子として用いることが好ましい。これらの粒子は1種を使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。粗し粒子の個数平均粒子径は、特に限定されないが、3μm以上、30μm以下程度である。
【0066】
<イオン導電剤>
表面層には、本開示の効果を損なわない範囲でイオン導電剤を含んでもよい。付着した汚れに供給する電荷を導電層から輸送する上で、表面層に応答性良好な電子導電剤が含まれることが必要であるが、応答性が比較的低い(遅い)イオン導電剤が補助的に添加されていてもよい。これにより、ある瞬間において、表面で汚れに供給できる電荷が、電子導電剤により導電層から瞬時に輸送されたものと、少し前に導電層を出てイオン導電剤により遅れて輸送されたものと合算となる。よって、電子導電剤が主体で電荷輸送するに当たり、電荷供給不足の可能性が更に減少する。イオン導電剤としては、イオン導電性を示すイオン導電剤であれば特に限定されず、例えば以下のものが挙げられる。
過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウム等の無機イオン物質;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、過塩素酸テトラブチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩;トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム等の有機酸無機塩など。
これらを単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
イオン導電剤の中でも、表面層を構成する材料と結合を形成しやすい官能基を有する場合、表面層内部にてイオン導電剤が固定化するため、長期で特性を維持しやすく好ましい。例として、表面層内でウレタン結合を有する場合にはOH基を有するイオン導電剤である。更に好ましくは、イオン導電剤の構造中にイミダゾリウム構造を有することが好ましい。イミダゾリウム環上において電荷を非局在化しやすく、構造内での電荷偏在を生みにくいため、表面層内での均質な電荷移動、そして汚れへより均質な電荷供給が期待できる。イオン導電剤は電子導電剤の補助的役割で使用するため、表面層を構成する電子導電剤よりも少なく、バインダー樹脂100質量部に対し0.01質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。更に好ましくは0.01質量部以上2.0質量部以下である。
【0067】
<その他の添加物>表面層中には、本開示の効果が損なわれないことを前提として、必要に応じてその他添加剤を加えてもよい。添加剤としては、鎖延長剤、架橋剤、顔料、シリコーン添加剤、触媒としてアミン類、スズ錯体等を加えてもよい。シリコーン添加剤を表面層に添加した場合、表面層の高抵抗化や、表面層に滑り性を付与し、感光体への電荷の注入の抑制や表面層の耐摩耗性を向上させるため、シリコーン添加剤の添加が特に好ましい。
【0068】
<表面層の層厚>
表面層は、0.1μm以上100μm以下の厚さを有することが好ましい。より好ましくは、1μm以上50μm以下である。なお、表面層の膜厚は、ローラ断面を鋭利な刃物で切り出して、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察することにより測定できる。
【0069】
<表面層の体積抵抗率>
帯電ローラとしての表面層の体積抵抗率は1.0×1010Ω・cm以上、1.0×1016Ω・cm以下が好ましい。帯電ローラとして用いる場合、表面層の体積抵抗率を大きい値にすることが好ましい。表面層の体積抵抗率が小さい場合、汚れ物質が感光体に戻りにくく、帯電ローラに堆積する汚れ物質の付着量が増大することが確認された。これは、負帯電した汚れ物質が、表面層、特に導電性粒子が表面に露出していないバインダー樹脂と直接接触した場合に、汚れ物質の負電荷が帯電ローラの表面層側に移動し、汚れ物質の負電荷が減衰することを示唆していると、本発明者等は考えている。汚れ物質の負電荷の減衰を抑制するためには、表面層が高抵抗であることが好ましく、そのためには、表面層の体積抵抗率を1.0×1010Ω・cm以上にする。また、表面層の体積抵抗率が低い場合、帯電ローラから感光体へ電荷が注入されることを確認している。この現象は表面層の硬度が低い場合、さらに、帯電ローラと感光体との間に周速差を設けた場合に顕著となる。実際の画像出力時は、放電による帯電量に、注入帯電量が加算されるため、注入帯電量が多い場合は、感光体の表面電位を安定に保つことが困難となる。安定した画像濃度で出力を維持するための注入帯電量の目安としては、50V以下であり、そのためには、表面層の体積抵抗率を1.0×1012Ω・cm以上にすることが好ましい。
また、表面層の体積抵抗率が高い場合は、帯電ローラとして放電が不安定となるため、表面層の体積抵抗率を1.0×1016Ω・cm以下とする。帯電ローラから感光体への注入帯電量は、例えば、次のようにして見積もることができる。注入帯電量が増加する高温高湿環境下(温度30℃、相対湿度80%)にて、帯電ローラが放電しない条件で帯電ローラに電圧を印加した際(例えば、DC−500V)の感光体の表面電位を測定する。表面層の体積抵抗率の測定は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、導電性モードによって測定した測定値を採用することができる。帯電ローラの表面層から、マニュピレーターを用いてシートを切り出し、表面層の片面に金属蒸着を施す。金属蒸着を施した面に直流電源を接続し、電圧を印加し、表面層のもう一方の面にはカンチレバーの自由端を接触させ、AFM本体を通して電流像を得る。無作為に選んだ100箇所の表面における電流値を測定し、測定された低電流値の上位10箇所の平均電流値と、平均膜厚とカンチレバーの接触面積から、体積抵抗率を算出できる。
【0070】
<表面層の製造方法>
表面層の形成方法としては特に限定されるものではないが、原材料に溶媒を加えた塗料によるスプレー、浸漬(ディッピング塗布法)、又はロールコートが挙げられる。ディッピング塗布法は、表面層を形成する方法として簡便で生産安定性に優れている。また塗工後に必要に応じて、加熱など追加処理を行う。
【0071】
<現像部材としての利用>
電子写真用の導電性部材は、現像部材として使用する場合にも有効である。
高速プロセスにおいて、特許文献1に関わる導電性部材を現像部材として用いた場合、支持体から導電性部材表面への電荷移動が不均一となり、トナーに与える電荷量のばらつきが生じる。これにより均一な現像を実現することが難しくなり、例えば、帯電量の乏しいトナーが画像に現れるカブリ画像が発生する場合があった。本開示により、トナーの電荷量のバラつきが非常に小さい現像プロセスを長期に亘って維持することが可能になる。
【0072】
現像部材として使用する場合、表面層は、温度23℃、相対湿度50%の環境下における体積抵抗率が1.0×10〜1.0×1015Ωcmであることを特徴とする。表面層はトナーへの摩擦帯電付与する機能を担い、また現像部材の表面を保護し、現像部材表面の摩耗や破壊を抑制する機能を有する。表面層の体積抵抗率は、バインダーとなる樹脂成分に、電子導電剤やイオン導電剤を添加することで調整することができる。バインダー樹脂は、電子導電剤やイオン導電剤、及び充填剤、添加剤の担持体として機能する。
【0073】
バインダー樹脂成分としては公知の樹脂を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、以下のものが挙げられ、これらの1種、あるいは2種以上の組み合を用いることができる。
具体的にはポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはメラミンの如きアミノ樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、アミドイミド樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアルキレンイミン樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0074】
ポリウレタン樹脂は皮膜の強度とトナー帯電性の観点から特に好ましく、中でも熱硬化性ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂は、柔軟性を合わせ持つため好適に用いられる。これらの熱硬化性ポリウレタン樹脂は公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールと、イソシアネート化合物との反応により得られる。
【0075】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
またポリエステルポリオールとしては、以下のものが挙げられる。
エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールの如きジオール成分、トリメチロールプロパンの如きトリオール成分と、コハク酸、アジピン酸、無水フタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロキシフタル酸等のジカルボン酸との縮合反応により得られるポリエステルポリオール。
また、ポリカーボネートポリオールとしては、以下のものが挙げられる。
1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1、9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、の如きジオール成分と、ホスゲン、ジメチルカーボネートの如きジアルキルカーボネート、または、エチレンカーボネートの如き環状カカーボネートとの縮合反応により得られるポリカーボネートポリオール。
【0076】
これらのポリオール成分は必要に応じて、あらかじめ2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、1,4ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の如きイソシアネートにより鎖延長したプレポリマーとしてもよい。
これらのポリオール成分と反応させるイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではないが、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の如き脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネートの如き脂環式ポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートの如き芳香族イソシアネート及びこれらの共重合物やイソシアヌレート体、TMPアダクト体、ビウレット体、そのブロック体を用いることができる。
この中でもトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族イソシアネートがより好適に用いられる。
ポリオール成分と反応させるイソシアネート化合物の混合比は、水酸基1.0に対してイソシアネート基の比率が1.0から2.0の範囲であることが、未反応成分の残存を抑制できるため好ましい。
表面層のバインダー樹脂としてウレタン樹脂を用いる場合、ウレタン基濃度は1.5%以上、6.5%以下であることが好ましい。
電子写真画像形成装置にて、導電性部材(現像部材)を高温高湿環境下と低温低湿環境下で交互に長期耐久試験に供した際、導電性部材表面付近の破壊による画像弊害が起こる場合がある。
本発明者らが検討したところ、この導電性部材表面付近の破壊は、高温高湿環境下と低温低湿環境下に交互に置かれる際、表面層が膨張と収縮とを繰り返し、表面層と導電層の界面付近に微小なクラックを生じる場合があることを確認した。この微小なクラックが、長期耐久試験において、導電性部材表面付近の破壊の原因であると推定される。
【0077】
ウレタン基濃度が1.5%以上の場合、ウレタン基間の相互作用により表面層の膜強度が高く、耐久性の観点で好ましい。また、ウレタン基濃度が6.5%以下の場合、水分子との親和サイトとなる過剰なウレタン基が少ない。このため、高温高湿環境と低温低湿環境で交互に使用した場合も、膨張/収縮による破壊が起こりにくく、過酷な環境での使用においても、高い耐久性が得られる。
【0078】
表面層が、構造式(1)〜(3)の構造を有するウレタン樹脂を含む場合、過酷な環境での使用においても、より高い耐久性が得られるため特に好ましい。
【0079】
【化1】
構造式(1)〜(3)中、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数4以上8以下の直鎖または分岐を有する2価の炭化水素基を表す。
【0080】
構造式(1)〜(3)の構造は、具体的にはそれぞれ炭素数の多いエーテル構造、エステル構造、カーボネート構造を表す。これらの構造を含む樹脂は、炭素数が多いため、単位重量あたり含有するエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合が少なくなる。そのため、樹脂中の水分子との親和性が低下し、高温高湿環境下においても含水率を低く抑えることができる。
特に構造式(1)〜(3)はポリオールとしてイソシアネート化合物と反応させ、所望のウレタン樹脂を得ることが好ましい。
その結果、高温高湿環境と低温低湿環境で交互に使用した場合も、熱膨張/収縮に破壊が起こりにくいため、過酷な環境での使用においても、高い耐久性が得られる。
【0081】
構造式(1)の構造を有するポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコール、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフランの開環共重合ポリオールが挙げられる。
【0082】
構造式(2)の構造を有するポリオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールの如きジオール成分、トリメチロールプロパンの如きトリオール成分と、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸との縮合反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0083】
構造式(3)の構造を有するポリオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールの如きジオール成分と、ホスゲン、ジメチルカーボネートの如きジアルキルカーボネートとの縮合反応により得られるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0084】
イソシアネート化合物を用いた熱硬化反応以外では、前記ポリオールの代わりに末端にビニル基、アクロイル基を導入した化合物を、紫外線、電子線で硬化反応させることもできる。紫外線、電子線を用いる硬化系では、イソシアネートを用いた硬化系に比べ、より短時間での硬化反応が可能である。
【0085】
表面層には、前述の通り電子導電剤が含まれる。これらの中でも、比較的容易に入手でき、良好な導電性が得られる点から、カーボンブラックが好ましい。電子導電剤としてカーボンブラックを用いる場合は、バインダー樹脂100質量部に対してカーボンブラックを2〜50質量部配合することが好ましい。
【0086】
導電剤としてイオン導電剤を上記電子導電剤と併用してもよい。
イオン導電剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などを使うことができる。イオン導電剤のアニオンとしては、過塩素酸アニオン、フルオロアルキルスルホニルイミドアニオン、フルオロスルホニルイミドアニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、ジシアナミドアニオン、チオシアネートアニオン、ジシアノスルホニルイミドアニオンなどが挙げられる。これらの少なくとも1種を用いることができる。
【0087】
表面層には、必要に応じてシリカ、石英粉末、酸化チタン、酸化亜鉛又は炭酸カルシウムの如き非導電性充填剤を含有してもよい。表面層の形成において、塗料をコーティングする方法をとる場合、非導電性充填剤を添加することにより、成膜助剤とすることが可能である。非導電性充填剤の含有率は、表面層を形成する樹脂成分、すなわちバインダー樹脂と構造式(1)で示される構造を有する樹脂を合わせた成分100質量部に対して10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0088】
導電性部材は必要に応じて適正な表面粗さを有する場合がある。導電性部材が現像ローラまたは現像スリーブである場合、表面粗さは十点平均粗さ(Rz)で2.0〜10.0μmの範囲にあることが好ましく、2.0〜4.5μmの範囲にあることが特に好ましい。導電性部材が現像ブレードの場合は、表面粗さは十点平均粗さ(Rz)で0.0〜6.0μmの範囲にあることが好ましく、0.0〜1.5μmの範囲にあることが特に好ましい。表面粗さがこの範囲にあると、トナーとの均一な接触と、適正なトナー搬送量が両立され、トナーへの電荷供給を均一にしやすくすることができる。
導電性部材の表面粗さの形成方法としては、表面層への微粒子の添加、研磨、型転写、レーザー処理が挙げられる。粗さ制御のための微粒子を添加する場合、微粒子としては、体積平均粒径が3〜20μmであることが好ましい。また、表面層に添加する粒子添加量が、表面層の樹脂固形分100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましい。粗さ制御用微粒子には、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂の微粒子を用いることができる。
【0089】
導電性部材がローラ形状である場合は、導電層の成形方法としては、帯電ローラの製造方法と同様の方法が挙げられる。
また、導電性部材がブレード形状である場合は、その成形方法として、型成形、射出成型、押出し成形、遠心成形する方法が挙げられる。
【0090】
表面層の形成方法としては特に限定されるものではないが、塗料によるスプレー、浸漬、又はロールコートが挙げられる。特開昭57−5047号公報に記載されているような浸漬槽上端から塗料をオーバーフローさせる浸漬塗工方法は、表面層を形成する方法として簡便で生産安定性に優れている。
【0091】
<プロセスカートリッジ>
図7は本開示の一実施形態に係る導電性部材を帯電ローラとして具備している電子写真用のプロセスカートリッジ100の概略断面図である。このプロセスカートリッジは、現像装置と帯電装置とを一体化し、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されたものである。現像装置は、少なくとも現像ローラ103とトナー容器106、トナー109、とを一体化したものであり、必要に応じてトナー供給ローラ104、現像ブレード108、攪拌羽110を備えていてもよい。帯電装置は、感光体ドラム101、及び帯電ローラ102を少なくとも一体化したものであり、クリーニングブレード105、廃トナー容器107を備えていてもよい。帯電ローラ102、現像ローラ103、トナー供給ローラ104、及び現像ブレード108は、それぞれ電圧が印加されるようになっている。また、本開示の一実施形態に係る導電性部材は、現像ローラ、現像ブレード、トナー供給ローラとして使用することができる。
【0092】
<電子写真画像形成装置>
図8は、本開示の一実施形態に係る導電性部材を帯電ローラとして用いた電子写真画像形成装置200の概略構成図である。この装置は、前記プロセスカートリッジ100が着脱可能に装着されたカラー電子写真装置である。各プロセスカートリッジには、ブラック、マゼンダ、イエロー、シアンの各色のトナーが使用されている。感光体ドラム201は矢印方向に回転し、帯電バイアス電源から電圧が印加された帯電ローラ202によって一様に帯電され、露光光211により、その表面に静電潜像が形成される。一方トナー容器206に収納されているトナー209は、攪拌羽210によりトナー供給ローラ204へと供給され、現像ローラ203上に搬送される。そして現像ローラ203と接触配置されている現像ブレード208により、現像ローラ203の表面上にトナー209が均一にコーティングされると共に、摩擦帯電によりトナー209へと電荷が与えられる。上記静電潜像は、感光ドラム101に対して接触配置される現像ローラ203によって搬送されるトナー209が付与されて現像され、トナー像として可視化される。
可視化された感光ドラム上のトナー像は、一次転写バイアス電源により電圧が印加された一次転写ローラ212によって、テンションローラ213と中間転写ベルト駆動ローラ214に支持、駆動される中間転写ベルト215に転写される。各色のトナー像が順次重畳されて、中間転写ベルト上にカラー像が形成される。
転写材219は、給紙ローラにより装置内に給紙され、中間転写ベルト215と二次転写ローラ216の間に搬送される。二次転写ローラ216は、二次転写バイアス電源から電圧が印加され、中間転写ベルト215上のカラー像を、転写材219に転写する。カラー像が転写された転写材219は、定着器218により定着処理され、装置外に廃紙されプリント動作が終了する。
一方、転写されずに感光体ドラム上に残存したトナーは、クリーニングブレード205により掻き取られて廃トナー収容容器207に収納され、クリーニングされた感光ドラム201は、上述の工程を繰り返し行う。また転写されずに一次転写ベルト上に残存したトナーもクリーニング装置217により掻き取られる。
なお一例としてカラー電子写真装置を示したが、モノクロ電子写真装置(不図示)では、プロセスカートリッジはブラックのトナー使用品のみである。中間転写ベルトを介さず、プロセスカートリッジと一次転写ローラ(二次転写ローラなし)により、モノクロ像が直接に転写材へ形成される。その後、定着器により定着されて、装置外に排紙されることでプリント動作が終了する。
【実施例】
【0093】
以下に実施例及び比較例に係る電子写真用導電性部材の作製に用いた原材料を示す。
【0094】
<NBR>
・NBR(1)(商品名:JSR NBR N230SV、アクリロニトリル含有量:35%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:32、SP値:20.0(J/cm0.5、JSR社製、略称:N230SV)
・NBR(2)(商品名:JSR NBR N215SL、アクリロニトリル含有量:48%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:45、SP値:21.7(J/cm0.5、JSR社製、略称:N215SL)
・NBR(3)(商品名:Nipol DN401LL、アクリロニトリル含有量:18.0%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:32、SP値:17.4(J/cm0.5、日本ゼオン社製、略称:DN401LL)
【0095】
<イソプレンゴムIR>
・イソプレンゴム(商品名:Nipol 2200L、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:70、SP値:16.5(J/cm0.5、日本ゼオン社製、略称:IR2200L)
【0096】
<ブタジエンゴムBR>
・ブタジエンゴム(1)(商品名:UBEPOL BR130B、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:29、SP値:16.8(J/cm0.5、宇部興産社製、略称:BR130B)
・ブタジエンゴム(2)(商品名:UBEPOL BR150B、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:40、SP値:16.8(J/cm0.5、宇部興産社製、略称:BR150B)
【0097】
<SBR>
・SBR(1)(商品名:アサプレン303、スチレン含有量:46%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:45、SP値:17.4(J/cm0.5、旭化成社製、略称:A303)
・SBR(2)(商品名:タフデン2003、スチレン含有量:25%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:33、SP値:17.0(J/cm0.5、旭化成社製、略称:T2003)
・SBR(3)(商品名:タフデン2100R、スチレン含有量:25%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:78、SP値:17.0(J/cm0.5、旭化成社製、略称:T2100R)
・SBR(4)(商品名:タフデン2000R、スチレン含有量:25%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:45SP値:17.0(J/cm0.5、旭化成社製、略称:T2000R)
・SBR(5)(商品名:タフデン1000、スチレン含有量:18%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:45、SP値:16.8(J/cm0.5、旭化成社製、略称:T1000)
【0098】
<クロロプレンゴム(CR)>
・クロロプレンゴム(商品名:SKYPRENE B31、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:40、SP値:17.4(J/cm0.5、東ソー社製、略称:CR B31)
【0099】
<EPDM>
・EPDM(商品名: Esprene505A、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:47、SP値:16.0(J/cm0.5、住友化学社製、略称:E505A)
【0100】
<導電性粒子>
・カーボンブラック(1)(商品名:トーカブラック♯5500、DBP吸収量:155cm/100g、東海カーボン社製、略称:♯5500)
・カーボンブラック(2)(商品名:トーカブラック♯7360SB、DBP吸収量:87cm/100g、東海カーボン社製、略称:♯7360)
・カーボンブラック(3)(商品名:トーカブラック♯7270SB、DBP吸収量:62cm/100g、東海カーボン社製、略称:♯7270)
・カーボンブラック(4)(商品名:Raven 1170、DBP吸収量:55cm/100g、コロンビアケミカル社製、略称:R1170)
・カーボンブラック(5)(商品名:MA100、DBP吸収量:95cm/100g、三菱ケミカル社製、略称:MA100)
【0101】
<加硫剤>
・加硫剤(1)(商品名:SULFAX PMC、硫黄分97.5%、鶴見化学工業社製、略称:硫黄)
【0102】
<加硫促進剤>
・加硫促進剤(1)(商品名:サンセラーTBZTD、テトラベンジルチウラムジスルフィド、三新化学工業社製、略称:TBZTD)
・加硫促進剤(2)(商品名:ノクセラーTBT、テトラブチルチウラムジスルフィド、大内新興化学工業社製、略称:TBT)
・加硫促進剤(3)(商品名:ノクセラーEP−60、加硫促進剤混合物、大内新興化学工業社製、略称:EP−60)
・加硫促進剤(4)(商品名:SANTOCURE−TBSI、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾルスルフェンイミド、FLEXSYS社製、略称:TBSI)
・加硫促進剤(5)(商品名:サンセラー22−C、2−イミダゾリン−2−チオールまたは2−イミダゾリンチオン、三新化学工業社製、略称:サンセラー22)
・加硫促進剤(6)(商品名:ノクセラーTRA、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、大内新興化学工業社製、略称:TRA)
【0103】
<充填剤>
・充填剤(1)(商品名:ナノックス#30、炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製、略称:#30)
【0104】
以下に、実施例及び比較例に係る導電性部材について説明するが、本開示の技術的範囲は実施例に具現化された構成のみに限定されるものではない。
【0105】
<導電ローラ1の作製>
[1−1.ドメイン形成用ゴム組成物(CMB)の調製]
表1に示す種類と量の各材料を加圧式ニーダーで混合しドメイン形成用ゴム組成物(CMB)を得た。混合条件は、充填率70vol%、ブレード回転数30rpm、18分間とした。
【0106】
【表1】
【0107】
[1−2.マトリックス形成用ゴム組成物(MRC)の調製]
表2に示す種類と量の各材料を加圧式ニーダーで混合してマトリックス形成用ゴム組成物(MRC)を得た。混合条件は、充填率70vol%、ブレード回転数30rpm、18分間とした。
【0108】
【表2】
【0109】
[1−3.導電層形成用ゴム組成物1の調製]
表3に示す種類と量の各材料とをオープンロールにて混合し導電性部材成形用ゴム組成物を調製した。混合機は、ロール径12インチのオープンロールを用いた。混合条件は、前ロール回転数10rpm、後ロール回転数8rpmで、ロール間隙2mmとして合計20回左右の切り返しを行った後、ロール間隙を1.0mmとして10回薄通しを行った。
【0110】
【表3】
【0111】
[1−4.導電層の形成]
快削鋼の表面に無電解ニッケルメッキ処理を施した全長252mm、外径6mmの丸棒を用意した。次にロールコーターを用いて、前記丸棒の両端部11mmずつを除く230mmの範囲の全周にわたって、接着剤(商品名:メタロックU−20、東洋化学研究所製)を塗布して支持体を作製した。
次に、支持体の供給機構、及び未加硫ゴムローラの排出機構を有するクロスヘッド押出機の先端に内径10.5mmのダイスを取付け、押出機とクロスヘッドの温度を100℃に、導電性の支持体の搬送速度を60mm/secに調整した。この条件で、押出機から[1−3]で調製した導電層形成用ゴム組成物1を供給して、クロスヘッド内にて支持体の外周部を導電層形成用ゴム組成物1で被覆し、未加硫ゴムローラを得た。
次に、熱風加硫炉中に当該未加硫ゴムローラを投入し、温度170℃で60分間加熱して未加硫ゴム組成物の層を加硫し、支持体の外周部に導電性樹脂層が形成されたローラを得た。その後、導電性樹脂層の両端部を各10mm切除して、導電性樹脂層部の長手方向の長さを232mmとした。
最後に、導電性樹脂層の表面を回転砥石で研磨した。これによって、中央部から両端部側へ各90mmの位置における各直径が9.65mm、中央部直径が9.7mmである導電層1を具備した導電ローラ1を作製した。
【0112】
<導電ローラ2〜28の作製>
[2−1.ドメイン形成用ゴム組成物の調製]
[2−2.マトリックス形成用ゴム組成物の調製]
導電ローラ2〜28の各々の導電層2〜28を形成するためのドメイン形成用ゴム組成物及びマトリックス形成用ゴム組成物を表4−1及び表4−2に示す材料を用いた以外は上記[1−1]及び[1−2]と同様にして調製した。
[2−3.導電層形成用ゴム組成物2〜28の調製]
表4−1に示すCMB、表4−2に示すMRC、及びその他の材料を表4−3に示す配合とした以外は、導電層形成用ゴム組成物1と同様にして導電層形成用ゴム組成物2〜28を調製した。
[2−4.導電ローラ2〜28の作製]
導電層形成用ゴム組成物2〜28を用いた以外は、上記「1−4」と同様にして導電ローラ2〜28を作製した。
【0113】
【表4-1】
【0114】
【表4-2】
【0115】
【表4-3】
【0116】
表4−1〜表4−3中、DBPは、DBP吸収量を表し、単位は(cm/100g)である。表中のムーニー粘度に関し、原料ゴムの値は各社のカタログ値である。ドメイン用CMBの値は、JIS K6300−1:2013に基づくムーニー粘度ML(1+4)であり、ドメイン用CMBを構成する材料すべてを混練している時のゴム温度で測定されたものである。SP値の単位は、(J/cm0.5である。
【0117】
ムーニー粘度に関し、原料ゴムの値は各社のカタログ値である。MRCの値は、JIS K6300−1:2013に基づくムーニー粘度ML(1+4)であり、MRCを構成する材料すべてを混練している時のゴム温度で測定されたものである。SP値の単位は、(J/cm0.5であり、SP値差は、CMB中の第2のゴムと、MRC中の第1のゴムとの差の絶対値である。
【0118】
<3.表面層用塗工液の調製>
[3−1.表面層用塗工液1の調製]
表面層1を形成するための表面層用塗工液1を以下のようにして調製した。
窒素雰囲気下、反応容器内でポリメリックMDI(商品名:ミリオネートMR200、日本ポリウレタン工業社製)27質量部に対し、ポリエステルポリオール(商品名:P3010、クラレ社製)100質量部を反応容器内の温度を65℃に保持しつつ、徐々に滴下した。滴下終了後、温度65℃で2時間反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却し、イソシアネート基含有量4.3%のイソシアネート基末端プレポリマーP−1を得た。
イソシアネート基末端プレポリマーP−1の54.9質量部に対して、同じくポリエステルポリオール(商品名:P2010、クラレ社製)41.52質量部、カーボンブラック(商品名:MA230、三菱ケミカル社製、個数平均粒子径30nm)30質量部をメチルエチルケトン(MEK)に溶解し、固形分が27質量%になるように調整した。以上のように混合液1を作製した。内容量450mLのガラス瓶内に、前記混合液1の270gと、平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gを入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて12時間分散した。分散した後、平均粒子径7.0μmのウレタン粒子(商品名:ダイミックビーズUCN−5070D、大日精化工業社製)を15質量部添加した。その後、15分間さらに分散し、ガラスビーズを除去して、表面層用塗工液1を得た。
【0119】
[3−2.表面層用塗工液2〜16、C1及びC2の調製]
表5に示す材料を表5に示す配合割合で用いた以外は、表面層用塗工液1と同様にして表面層用塗工液2〜16、C1及びC2を調製した。なお、表面層用塗工液12、13は、電子導電剤に加えて、さらにイオン導電剤を添加している。
表面層用塗工液14及び16については、実施例41及び45に詳述する。なお、表中、「phr」とは、ゴム成分100質量部に対する配合量を表す。
【0120】
【表5】
【0121】
表5中のポリオール、イソシアネート、粗し粒子、シリコーン添加剤、イオン導電剤の略称は以下の通り。
A−1:ポリエステルポリオール(商品名:P2010、クラレ社製)
A−2:ポリカーボネート系(商品名:T5652、旭化成ケミカルズ社製)
A−3:アクリルポリオール(商品名:DC2016、ダイセル化学工業社製)
B−1:ポリエステルポリオール/ポリメリックMDI(商品名:P3010、クラレ社製/商品名:ミリオネート MR200、日本ポリウレタン工業社製)
B−2:ポリカーボネート系ポリオール/ポリメリックMDI(商品名:T5652 旭化成ケミカルズ製/商品名:ミリオネートMR200、日本ポリウレタン工業社製)
B−3:イソシアネートA/イソシアネートB=4:3(商品名:ベスタナートB1370 デグザ社製/商品名:デュラネートTPA−880E、旭化成ケミカルズ社製)
C−1:ウレタン粒子(商品名:ダイミックビーズUCN−5070D 平均粒径7.0μm、大日精化工業社製)
CB:導電性カーボンブラック(商品名:MA230、三菱ケミカル社製、個数平均粒子径30nm)
酸化錫:SbドープSnO(商品名:SN−100P、石原産業社製、粒子径10〜30nm(一次粒子径))
D−1:変性ジメチルシリコーンオイル(商品名:SH−28PA、東レ・ダウコーニングシリコーン社製)
E−1:四級アンモニウム塩(商品名:アデカサイザーLV70、ADEKA社製)
E−2:合成品(下記実施例41に記載)
【0122】
<実施例1>
導電ローラ1を、その長手方向を鉛直方向にして、その上端部を把持して、表面層用塗工液1中に浸漬(ディッピング)して、引き上げた。前記ディッピング塗布の浸漬時間は9秒間、ローラの引き上げ速度は、初期速度が20mm/sec、最終速度が2mm/secになるように調整し、20mm/secから2mm/secの間は、時間に対して直線的に速度を変化させた。塗布後、温度23℃で30分間風乾した。次いで、熱風循環乾燥機中で、温度80℃で、1時間乾燥し、温度160℃で1時間乾燥させて、導電層上に表面層用塗工液1の塗膜の乾燥膜を形成した。
【0123】
さらに、波長254nmの紫外線を積算光量が9000mJ/cmになるように当該乾燥膜の表面に照射して、当該乾燥膜の最表面のスキン層を除去して当該乾燥膜中の導電性粒子(導電性カーボンブラック)が外表面に露出してなる表面層を形成した。紫外線の光源としては、低圧水銀ランプ(東芝ライテック社製)を用いた。こうして、実施例1に係る電子写真用ローラ1を作製した。
【0124】
<4.特性評価>
得られた電子写真用ローラ1を下記の評価に供した。
<4−1.電子写真用ローラの特性評価>
<導電性部材のインピーダンスの測定方法>
電子写真用ローラのインピーダンスは、下記の測定方法で行った。
まず、前処理として、電子写真用ローラを回転させながら、電子写真用ローラの外表面に白金を蒸着して測定電極を作成した。このとき、マスキングテープを使用して、幅1.5cm、周方向に均一な電極を作成した。当該電極を形成することによって、導電性部材の表面粗さによって、測定電極と導電性部材の接触面積の寄与を極力低減することができる。次に、当該電極に、アルミシートを隙間なく巻きつけ、図3A及び図3Bに示す測定サンプルを形成した。
そして、当該アルミシートから測定電極に、また支持体にインピーダンス測定装置(商品名:ソーラトロン126096W 東陽テクニカ社製)を接続した。インピーダンスの測定は、温度23℃、相対湿度50%環境において、振動電圧1Vpp、周波数1.0Hzで測定し、インピーダンスの絶対値を得た。
導電性部材(長手方向の長さ:230mm)を長手方向に5個の領域に5等分し、それぞれの領域内から任意に1点ずつ、合計5点に測定電極を形成し、上記測定を行った。その平均値を、導電性部材のインピーダンスとした。
【0125】
<4−2 表面層の特性評価>
<表面層の膜厚の測定>
表面層の膜厚は、表面層の軸方向3箇所、円周方向3箇所、計9箇所における断面を、光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察して測定し、その平均値を表面層の「膜厚」とした。評価結果を表6に示す。
【0126】
<表面層のユニバーサル硬度の測定>
表面層の表面から深さ1μmの位置におけるユニバーサル硬度を、ユニバーサル硬さ計にて測定した。測定には超微小硬度計(商品名:フィッシャースコープ(FISCHERSCOPE)HM−2000、ヘルムートフィッシャー社製)を用いた。具体的な測定条件を以下に示す。
測定圧子:ビッカース圧子(面角136、ヤング率1140、ポアソン比0.07、圧子材料:ダイヤモンド)
測定環境:温度23℃、相対湿度50%
最大試験荷重:1.0mN
荷重条件:最大試験荷重に30秒で達する速度で、時間に比例して荷重を印加した。本評価においては、圧子が、表面層の表面から深さ1μmに押し込まれた時点における荷重Fと、その際の圧子と表面層との接触面積Aとを用いて、下記計算式(1)によりユニバーサル硬度を算出した。
計算式(1)
ユニバーサル硬度(N/mm)=F/A
【0127】
<表面層の体積抵抗率(Ω・cm)の測定>
表面層の体積抵抗率は、原子間力顕微鏡(AFM)(商品名:Q−scope250:、Quesant社)を用いて、導電性モードによって測定した。まず現像ローラ表面層を、マニュピレーターを用いて幅2mm、長さ2mmのシートに切り出し、表面層の片面に白金蒸着を施した。次に白金蒸着を施した面に直流電源(商品名:6614C、Agilent社)を接続して10Vを印加し、表面層のもう一方の面にはカンチレバーの自由端を接触させ、AFM本体を通して電流像を得た。この測定を、表面層の全体において無作為に選ばれた100箇所の表面において行い、低電流値の上位10箇所の平均電流値と、表面層の膜厚の平均値とから「体積抵抗率」を算出した。
測定の条件を以下に示す。
・測定モード:contact
・カンチレバー:CSC17
・測定範囲:10nm×10nm
・スキャンレイト:4Hz
・印加電圧:10V
【0128】
<表面層の表面の電子導電剤の露出部由来の凸部の測定>
表面層の表面の電子導電剤粒子の露出部に由来する凸部の個数の測定方法は以下の通りである。まず、帯電ローラから表面層及び弾性層の部分を含むサンプル切り出した。該サンプルの、該表面層の外表面に相当する面に白金を蒸着した。次いで、該サンプルの白金蒸着面の任意の5か所に、縦2.0μm×横2.0μmの観察領域を置き、各観察領域を走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名:S−4800、日立ハイテクノロジー社製)を用いて、倍率40000倍で観察し、5枚のSEM画像を得た。該SEM画像の各々について、画像処理ソフト(商品名:ImageProPlus、 Media Cybernetics社製)を用いて8ビットのグレースケール変換し、256階調のモノクロ画像を得た。次いで、当該モノクロ画像内の電子導電剤の露出部に起因する凸部が白くなるように、画像の白黒を反転処理し、画像の輝度分布に対して大津の判別分析法のアルゴリズムに基づいて、2値化の閾値を設定し、2値化像を得た。得られた2値化像から、凸部の個数を算出した。5枚のSEM画像から求めた凸部の個数の平均値を導電性部材の電子導電剤の露出部に起因する凸部の個数とした。
【0129】
<表面層中のウレタン樹脂の解析>
表面層中のウレタン樹脂の解析(ウレタン基濃度、部分構造)は、FT−IR及びH−NMRを用いて行った。
【0130】
<4−3 導電層の特性評価>
<(1)マトリックス−ドメイン構造の確認>
導電層におけるマトリックス−ドメイン構造の存在を以下の方法により確認した。
カミソリを用いて導電層の長手方向と垂直な断面が観察できるように切片(厚さ500μm)を切り出した。次いで、該切片の、該導電層の断面に相当する面に白金を蒸着した。該切片の白金蒸着面を走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名:S−4800、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて1000倍で観察し、SEM画像を得た。該SEM画像において、複数のドメインがマトリックス中に分散され、かつ、マトリックスが連通している構造が確認された場合に、マトリックス-ドメイン構造が「有」と判定した。
【0131】
<(2)ドメインの最大フェレ径、周囲長、及び包絡周囲長の測定>
ドメインの最大フェレ径、周囲長、包絡周囲長、及びドメイン数は以下のようにして測定した。まず、電子写真用ローラから、長手方向の長さをLとしたとき、導電層の長手方向の中央、及び導電層の両端から中央に向かってL/4の3か所から図6Bに示されるような導電層の全厚さ方向の断面を含むサンプル(厚さ1μm)をミクロトーム(商品名:Leica EM FCS、ライカマイクロシステムズ社製)を用いて切り出した。
得られた3つのサンプルの各々について、該導電層の全厚さ方向の断面に相当する面に白金を蒸着した。次いで、白金蒸着面を走査型電子顕微鏡(商品名:S−4800、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて倍率5000倍で撮影し、SEM画像を得た。得られたSEM画像の各々を、画像処理ソフト(商品名:ImageProPlus、 Media Cybernetics社製)を用いて8ビットのグレースケール変換し、256階調のモノクロ画像を得た。次いで、当該モノクロ画像内のドメインが白くなるように、画像の白黒を反転処理し、画像の輝度分布に対して大津の判別分析法のアルゴリズムに基づいて、2値化の閾値を設定し、2値化像を得た。得られた2値化像について、導電層の厚さをTとしたときの該導電層の外表面(支持体と対向する面とは反対側の面)から深さ0.1T〜0.9Tの厚み領域の任意の3か所に、一辺が15μmの正方形の観察領域を置いた。そして、該観察領域に存在するドメインから任意に選択した50個のドメインについて、上記画像処理ソフトのカウント機能を用いて、最大フェレ径、周囲長、及び包絡周囲長を算出した。
【0132】
各観察領域で観察したドメインの各々について算出された、周囲長、包絡周囲長を用いて、A/Bの値を算出した。そして、観察した全てのドメインの数に対する、要件(2)を満たしているドメインの数の割合(個数%)を求めた。
【0133】
<(3)マトリックスの体積抵抗率の測定>
マトリックスの体積抵抗率は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)(商品名:Q−Scope250、Quesant Instrument Corporation社製)をコンタクトモードで用いて、以下のようにして測定した。なお、測定環境は、温度23℃、相対湿度50%とした。
まず、上記(2)と同様にして導電層からサンプルを切り出した。次に、該サンプルを金属プレートの表面に、該サンプルの、該弾性層の断面に相当する一方の面が、金属プレートの表面と接するように設置した。そして、該サンプルの、金属プレートに接している側の面とは反対側の面のうち、マトリックスに該当する箇所にSPMのカンチレバーを接触させた。次いで、カンチレバーに50Vの電圧を印加し、電流値を測定した。また、該SPMで当該測定切片の表面形状を測定し、得られた高さプロファイルから測定箇所の厚さを算出した。測定箇所の厚さと電流値とから測定箇所の体積抵抗率を算出した。
なお、測定は、該サンプルのうち、導電層の厚さをTとしたときの該導電層の外表面(支持体と対向する面とは反対側の面)から深さ0.1T〜0.9Tの厚み領域に相当する領域のマトリックス部分の任意の3点において行った。各サンプルから得た合計9点での測定結果から算出した体積抵抗率の算術平均値を、測定対象の導電性部材のマトリックスの体積抵抗率とした。
【0134】
なお、測定位置は、導電層の厚さをTとしたとき、各切片のそれぞれ外表面から深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域のマトリックス部分の任意の3か所、合計9か所で測定を行った。その平均値を、マトリックスの体積抵抗率とした。
【0135】
<(4)カーボンブラックのDBP吸収量の測定方法>
カーボンブラックのDBP吸収量は、日本産業規格(JIS) K 6217に準じて測定した。なお、この値は、カーボンブラックのカタログ値を用いることもできる。
【0136】
<(5)ドメインの断面積に対するドメインが含む該導電性粒子の断面積の割合、ドメイン内の導電性カーボンブラック間の算術平均距離Dc、標準偏差σm、及び変動係数σm/Dcの測定方法>
ドメイン内の、ドメインの断面積に対するドメインが含む該導電性粒子の断面積の割合、導電性カーボンブラック間の算術平均距離Dc、標準偏差σm、及び変動係数σm/Dcは下記のように測定した。
まず、上記(2)で作成したサンプルの白金蒸着面の、上記(2)の評価における2値化像の、一辺が15μmの正方形の観察領域に相当する箇所を走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名:S−4800、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて倍率20,000倍で撮影し、新たなSEM画像を得た。該SEM画像に対し、画像解析装置(製品名:LUZEX−AP、ニレコ社製)を使用して、8ビットのグレースケール化を行い、256諧調のモノクロ画像を得た。次いで、モノクロ画像内のドメインが白くなるように、画像の白黒を反転処理し、画像の輝度分布に対して大津の判別分析法のアルゴリズムに基づいて、2値化の閾値を設定し、2値化画像を得た。次いで、上記の2値化画像から、上記(2)で観察したドメインの各々について、ドメイン内のカーボンブラックの壁面間距離Ciを算出した。そして、各ドメイン内のカーボンブラックの壁面間距離の算術平均値(算術平均壁面間距離C)を算出した。さらに、ドメインの断面積及びドメイン内のカーボンブラックの断面積を算出した。そして、これらの結果から、観察した全てのドメインの数に対する、要件(1)を満たすドメインの数の割合(個数%)、並びに、要件(1)及び要件(2)を満たすドメインの数の割合(個数%)を算出した。
さらに、得られたドメイン内の導電性カーボンブラック壁面間距離とその算術平均Cより標準偏差σmを求めた。そして標準偏差σmを算術平均Cで除すことで変動係数σm/Cを算出した。
また要件(1)及び要件(2)を満たすドメインについて、カーボンブラックの算術平均壁面間距離C、変動係数σm/C及び、ドメインの断面積に対するカーボンブラックの断面積の割合の算術平均値を算出した。さらに、要件(1)及び要件(2)を満たすドメインについて、A/Bの算術平均値、及び、最大フェレ径の算術平均値を算出した。結果を表6−2に示す。
【0137】
<マトリックス及びドメインを構成するゴムのSP値>
SP値は従来の膨潤法を用いて、測定することができる。マトリックス及びドメインを構成するゴムを各々、マニュピレーター等を用いて分取し、SP値の異なる溶媒に浸漬し、ゴムの重量変化から膨潤度を測定する。各溶媒に対する膨潤度の値を用いて解析することで、Hansenの溶解度パラメータ(HSP)を算出することができる。また、SP値が既知の材料を用いて、検量線を作成することで、精度良く算出することが可能である。この既知のSP値の値は、材料メーカーのカタログ値を用いることもできる。上記手法で得られた、マトリックス及びドメインを構成するゴムのSP値より、SP差を計算し絶対値にした。
【0138】
<5.帯電部材としての評価>
電子写真用ローラ1を帯電部材として用いた場合における特性評価を行った。
<トナー帯電量評価>
電子写真用ローラ1を帯電ローラとして用いたときの、汚れ成分(転写残トナーや外添剤などの汚れ成分)への負電荷供給能力を以下のようにして評価した。
電子写真画像形成装置として、レーザープリンタ((商品名:HP LaserJet Pro M203dw、HP社製)を用意した。そして、このレーザープリンタについて、プロセススピードが通常の1.2倍となるようモータを改造した。さらに、帯電ローラへの電圧印加のため外部電源を接続し、本体から帯電ローラに直接電圧が印加されないように改造した。
さらに、このレーザープリンタ用のプロセスカートリッジについては、帯電ローラのクリーニングブレード、感光ドラムに当接する現像容器、転写ローラを取り外す改造を行った。
上記レーザープリンタ及びプロセスカートリッジを、低温低湿(温度15℃、相対湿度10%)環境下に48時間放置した。次いで、上記プロセスカートリッジを上記レーザープリンタに装填した。そして低温低湿環境下で以下の評価を行った。低温低湿環境では、電子写真用部材からトナーへの電荷注入が生じにくい。このような環境下で以下の評価を行うことによって、電子写真用部材のトナーへの電荷注入能力をより正確に評価することができる。
まず、通常の画像出力条件でベタ黒画像を1枚出力させる画像形成工程の途中で本体を停止させ、感光ドラムの全周がトナー層で被覆された状態を形成した。
次いで、本体から、感光ドラムの全周がトナー層で被覆された状態のプロセスカートリッジを取り出した。このプロセスカートリッジの帯電ローラを取り外し、電子写真用ローラ1を帯電ローラとして装着した。このプロセスカートリッジを本体に装着した。
そして、電子写真用ローラ1に、電子写真用ローラ1が放電しない電圧、具体的には−500Vを外部電源から印加してベタ白画像を1枚出力する画像形成工程を実施し、その過程で、電子写真用ローラ1と感光ドラムとのニップ部分を通過する前、及び通過した後における感光ドラム上のトナー層表面のトナーの電位を測定した。電位の測定には、感光ドラム表面から2mm離れた位置に配置した表面電位計プローブ(商品名:MODEL555P−1、トレックジャパン社製)を用いた。
そして、ニップ部の通過前のトナー層の表面の電位と、通過後のトナー層の表面の電位との差を導電性部材による注入帯電量(V)として測定した。
【0139】
<汚れ評価>
電子写真用ローラ1の、汚れ付着量を評価するために、次の評価を実施した。 上記<トナー帯電量評価>と同様に改造したレーザープリンタ及びプロセスカートリッジを用意した。また、評価環境も上記<トナー帯電量評価>と同じとした。
まず、感光ドラムの回転方向と垂直方向に幅2ドット、間隔100ドットの横線を描く画像を500枚出力し、当該プロセスカートリッジから帯電ローラを取り外してテープ着色評価にてその汚れ具体を評価した。 テープ着色評価は以下のようにして行った。帯電ローラの表面にポリエステル粘着テープ(商品名:No.31B、日東電工社製)を貼り付けた後に、帯電ローラの表面に付着したトナーとともに粘着テープを剥がし取り、白紙に貼り付けた。これを帯電ローラの表面の画像印刷領域全域について行った後、粘着テープの反射濃度をフォトボルト反射濃度計(商品名:TC−6DS/A、東京電色社製)により画像印刷領域全域について測定して、最大値を求めた。次に、同じく白紙に貼り付けた新品のポリエステル粘着テープの反射濃度を測定して最小値を求め、反射濃度の増加分を着色濃度の値とした。着色濃度の値が小さいほど、帯電ローラの汚れ量が少なく良好であることから、帯電ローラの汚れ程度の指標とした。
【0140】
<帯電安定性の評価>
前記<汚れ評価試験>と同様の本体、カートリッジ構成において、低温低湿(温度15℃、相対湿度10%)環境下で、A4サイズの紙上にサイズが4ポイントのアルファベット「E」の文字を、印字率が1%となるように印字する画像を20000枚出力した。なお、電子写真画像の出力は、1枚出力する毎に7秒間かけて電子写真感光体の回転を停止させる、いわゆる、間欠モードで行った。間欠モードでの画像出力は、連続して電子写真画像の出力を行う場合と比較して、帯電ローラと電子写真感光体との摺擦回数が多くなるため、帯電ローラにとってより過酷な評価条件と言える。
次いで、ハーフトーン画像を出力し、得られた画像を目視及びルーペを用いた観察し、以下の基準で評価した。
ランクA:ルーペで確認しても白ポチが全くない。
ランクB:目視で白ポチは認められない。
ランクC:目視でわずかに白ポチが認められる。
ランクD:目視で全域にわたって白ポチが認められる。
【0141】
<実施例2〜28>
表4−3に示す導電層形成用ゴム組成物を用いた以外は導電ローラ1と同様にして導電ローラ2〜28を作製した。導電ローラ2〜28を用いた以外は、実施例1と同様にして表面層用塗工液1から形成されてなる表面層を備えた電子写真用ローラ2〜28を作製した。得られた電子写真用ローラ2〜28の各々を、実施例1に記載の評価に供した。
【0142】
<実施例29〜40、42>
表面層用塗工液2〜13、15を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真用ローラ29〜40、42を作製した。得られた電子写真用ローラ29〜40、42を実施例1に記載の評価に供した。
【0143】
<実施例41>
[表面層用塗工液14の調製]
塗工液14を作製するにあたり使用するイオン導電剤E−2を次のように得た。
ジムロートを取り付けたナスフラスコに撹拌子とテトラヒドロフラン(以下THF、関東化学社製)50mlを入れ、水素化ナトリウム(関東化学社製) 12.5g(0.52mol)を分散させ、ナスフラスコを氷浴で冷却する。求核剤であるイミダゾール(東京化成工業社製)8.8g(0.13mol)をTHF 50mlに溶解させた溶液をゆっくり滴下した後、氷浴を取り外し室温で2時間撹拌した。
求電子剤である2−ブロモエタノール(東京化成工業社製)41.3g(0.33mol)を室温で加えた後、70℃で7時間加熱還流した。反応後の反応液をろ過し、不溶分をTHFで洗い流し、得られたろ液の溶媒を減圧留去した。
再びジクロロメタンに溶解させ、ろ過し、ろ液回収後に溶媒を減圧留去した。得られた濃縮物をジエチルエーテルにて洗浄し、減圧下乾燥し、イオン導電剤前駆体を28g得た。続いて、得られたイオン導電剤のアニオンを目的のアニオンに交換させるため、得られたイオン導電剤前駆体の全量を、メタノール100mlに室温で溶解させた。溶液を撹拌させながら、純水50mlに溶解させたイオン交換塩リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学社製)57.4gを添加し、室温で24時間撹拌した。反応後、メタノールを減圧留去し、ジクロロメタン/水で分液後、有機層を回収し、さらに2回水で洗浄し、溶媒を減圧留去し、乾燥後、白色粉末としてイオン導電剤E−2を得た。このイオン導電剤はイミダゾリウム環とOH基を有していた。
このイオン導電剤E−2を、他の材料と共に表5に示す配合量にて、表面層用塗工液1と同様にして表面層用塗工液14を調製した。
[電子写真用ローラ41の作製]
表面層用塗工液14を用いた以外は実施例1と同様にして電子写真用ローラ41を作製した。得られた電子写真用ローラ41を実施例1に記載の評価に供した。
【0144】
<実施例43>
表面層用塗工液1の塗膜の乾燥膜への紫外線照射の積算光量を450mJ/cmとした以外は実施例1と同様にして電子写真用ローラ43を作製した。得られた電子写真用ローラ43を、実施例1に記載の評価に供した。
【0145】
<実施例44>
表面層用塗工液1の塗膜の乾燥膜への紫外線照射を行わなかった以外は実施例1と同様にして電子写真用ローラ44を作製した。得られた電子写真用ローラ44を、実施例1に記載の評価に供した。
【0146】
<実施例45>
[表面層用塗工液16の調製]
ポリスチレン(シグマアルドリッチ製、重量平均分子量 〜350,000)を用いてMEKに12質量%となるよう溶解させた。そこに、カーボンブラック(商品名:MA230、三菱ケミカル社製、個数平均粒子径30nm)を23質量部となるよう加え、分散工程からは表面層用塗工液1と同様にして表面層用塗工液16を調製した。
[電子写真用ローラ45の作製]
表面層用塗工液16を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真用ローラ45を作製した。得られた電子写真用ローラ45を実施例1に記載の評価に供した。
【0147】
実施例1〜45に係る電子写真用ローラ1〜45の評価結果を表6−1〜表6−3に示す。なお、マトリックス及びドメインを構成するゴムのSP値の差の絶対値は表5に示した。また、表6−1には、各塗工液から形成された表面層がウレタン樹脂を含む場合は、ウレタン基濃度、及び、該ウレタン樹脂が、前記した構造式(1)〜(3)で示される構造の少なくとも1つを含む場合にはその構造式の番号を併せて示した。
【0148】
【表6-1】
【0149】
【表6-2】
【0150】
表6-2中、「A/Bの平均値」、「ドメインの最大フェレ径の平均値」、「CBの壁面間距離の平均値Dc」、「変動係数σm/Dc」及び「ドメインの断面積に対するCBの断面積の割合」は、要件(1)及び要件(2)を共に満たすドメインの値から算出したものである。
【0151】
【表6-3】
【0152】
<比較例1〜7>
[6−1.ドメイン形成用ゴム組成物(CMB)C1〜C7の調製]
比較例1〜7に係る導電ローラC1〜C7の各々の導電層C1〜C7を形成するためのドメイン形成用ゴム組成物を調製した。具体的には、表7−1に記載した材料を表7−1に記載の配合量とした以外は、前記[1−1]と同様にして調製した。
【0153】
[6−2.マトリック形成用ゴム組成物(MRC)C3〜C7の調製]
比較例3〜7に係る導電ローラC3〜C7の各々の導電層C3〜C7を形成するためのマトリックス形成用ゴム組成物を調製した。具体的には、表7−2に記載した材料を表7−2に記載の配合量とした以外は前記[1−2]と同様にして調製した。
【0154】
【表7-1】
【0155】
【表7-2】
【0156】
[6−3.導電層形成用ゴム組成物C1〜C7の調製]
表7−1に示すCMB、表7−2に示すMRC、及びその他の材料を表7−3に記載の配合量とした以外は導電性ゴム組成物1と同様にして導電層C1〜C7を形成するための導電層用ゴム組成物C1〜C7を調製した。
【0157】
【表7-3】
【0158】
上記表7−1〜表7−3中の原料は以下の通りである。
・CG102:エピクロルヒドリンゴム(EO−EP−AGE三元共化合物)(商品名:エピクロマーCG102、SP値:18.5(J/cm0.5、大阪ソーダ社製)・ON301:エピクロルヒドリンゴム(EO−EP−AGE三元共化合物)(商品名:エピオン301、SP値:18.5(J/cm0.5、大阪ソーダ社製)・EC300JD:ケッチェンブラック(商品名:ケッチェンブラックEC300JD ケッチェンブラックインターナショナル社製)
・LV:四級アンモニウム塩(商品名:アデカサイザーLV70、ADEKA社製)
・P202:脂肪族ポリエステル系可塑剤(商品名:ポリサイザーP−202、DIC社製)
・AQ:シリカ(商品名:Nipsil AQ、東ソー社製)
・MB:2−メルカプトベンズイミダゾール(商品名:ノクラックMB、大内新興化学工業社製)
・TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド(商品名:ノクセラーTS、大内新興化学工業社製)
・DM:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(DM)(商品名:ノクセラーDM−P(DM)、大内新興化学工業社製)
・PW380:パラフィンオイル(商品名:PW−380 出光興産社製)
・25−B−40:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン(商品名:パーヘキサ25B−40、日本油脂社製)
・TAIC−M60:トリアリルイソシアヌレート(商品名:TAIC−M60、日本化成社製)
【0159】
[6−4.電子写真用ローラC1〜C7の作製]
導電層形成用ゴムC1〜C7を用いた以外は実施例1と同様にして導電ローラC1〜C7を作製した。得られた導電ローラC1〜C7を用いた以外は実施例1と同様にして表面層用塗工液1から形成されてなる表面層を形成して電子写真用ローラC1〜C7を作製した。得られた電子写真用ローラC1〜C7を実施例1に記載の評価に供した。評価結果を表8に示す。なお、比較例1〜2については、導電層中のM−D構造の有無の判定の結果、マトリックス−ドメイン構造を有しなかったため、導電層についての他の評価は行わなかった。
また、比較例5については、導電層が、マトリックス−ドメイン構造を有さず、導電相と絶縁相が共連続構造を形成していたため、同様に導電層についての他の評価は行わなかった。
【0160】
<比較例8>
[7−1.ドメイン形成用ゴム粒子の調製]
比較例2に係る導電層形成用ゴム組成物C2を単独で加熱し加硫した後に凍結粉砕したゴム粒子を作製した。
【0161】
[7−2.マトリックス形成用ゴム組成物の調製]
表7−4に記載の材料を表7−4に示す配合量にて用いた以外は、前記[1−2]と同様にしてマトリックス形成用ゴム組成物(MRC)C8を調製した。
【0162】
【表7-4】
【0163】
[7−3.導電層形成用ゴム組成物C8の調製]
上記[7−1]で調製したゴム粒子、上記[7−2]で調製したMRC、及びその他の材料を表7−5に示す配合量とした以外は、導電層形成用ゴム組成物1と同様にして導電層形成用ゴム組成物C8を調製した。
【0164】
【表7-5】
【0165】
[7−4.電子写真用ローラC8の作製]
導電層形成用ゴム組成物C8を用いた以外は、実施例1と同様にして導電ローラC8を作製した。得られた導電ローラC8を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真用ローラC8を作製した。得られた電子写真用ローラC8を実施例1に記載の評価に供した。
【0166】
<比較例9>
表面層用塗工液1において、カーボンブラックを用いなかった以外は表面層用塗工液1と同様にして表面層用塗工液C1を作製した。塗工液C1を用いた以外は実施例1と同様にして電子写真用ローラC9を作製した。得られた電子写真用ローラC9を実施例1に記載の評価に供した。
【0167】
<比較例10>
表面層用塗工液1において、カーボンブラックに変えてイオン導電剤としてLV:四級アンモニウム塩(商品名:アデカサイザーLV70、ADEKA社製)を7質量部用いた以外は表面層用塗工液1と同様にして表面層用塗工液C2を調製した。表面層用塗工液C2を用いた以外は実施例1と同様にして電子写真用ローラC10を作製した。得られた電子写真用ローラC10を実施例1に記載の評価に供した。
比較例1〜10の評価結果を表8−1〜8−3に示す。
【0168】
【表8-1】
【0169】
【表8-2】
【0170】
【表8-3】
【0171】
比較例1においては、イオン伝導性の導電層を用いていることから、高速プロセスにおいて、支持体から表面層への電荷輸送に時間を要し、トナーへの電荷供給が不十分となってしまっている。したがって、汚れの吐出しが十分でないことによる汚れ堆積が発生し、画像上で白ポチ発生となった。
【0172】
比較例2においては、導電層がマトリックス−ドメイン構造を有さず、ドメイン材料のみの構成のため、導電層中で、電界集中が発生し導電パスに過剰な電荷が流れやすい構成となっている。電荷が流れにくい部分も多く発生し、その箇所で汚れへの電荷供給が不十分となる構成となっている。汚れ堆積と成り、白ポチ発生となった。
【0173】
比較例3においては、マトリックス−ドメイン構造ではあるが、要件(1)及び(2)を満たすドメインが80個数%以下であった。この理由としてドメインに添加されているカーボンブラックが少なく、カーボンゲル量が十分に形成できなかったため、ドメイン形状が凸凹になったと考えられる。その結果、導電層中で電界集中が発生し導電パスに過剰な電荷が流れやすい構成となっている。
ドメイン形状由来の電界集中による電荷の過剰移動が発生する。電荷が流れにくい部分も多く発生し、その箇所で汚れへの電荷供給が不十分となる構成となっている。汚れ堆積と成り、白ポチ発生となった。
【0174】
比較例4においては、マトリックス−ドメイン構造ではあるが、ドメインに導電剤が添加されていないため絶縁であり、マトリックスは導電性粒子が添加されているため、導電性でありかつ連続層である。すなわち、導電性部材として単一の導電パスを持つ構成となっているため、導電層中で電界集中が発生し導電パスに過剰な電荷が流れやすい構成となっている。電荷が流れにくい部分も多く発生し、その箇所で汚れへの電荷供給が不十分となる構成となっている。汚れ堆積と成り、白ポチ発生となった。
【0175】
比較例5においては、マトリックス−ドメイン構造ではなく、導電相と絶縁相が共連続構造である。すなわち、導電性部材として単一の導電パスを持つ構成となっているため、導電層中で電界集中が発生し導電パスに過剰な電荷が流れやすい構成となっている。電荷が流れにくい部分も多く発生し、その箇所で汚れへの電荷供給が不十分となる構成となっている。汚れ堆積と成り、白ポチ発生となった。
【0176】
比較例6においては、マトリックス−ドメイン構造ではあるが、要件(1)及び(2)を満たすドメインが80個数%以下であった。この理由としてドメインに添加されているカーボンブラックが少なく、カーボンゲル量が十分に形成できなかったため、ドメイン形状が円形状にならず、凸凹やアスペクト比が大きくなったと考えられる。その結果、導電層中で電界集中が発生し導電パスに過剰な電荷が流れやすい構成となっている。電荷が流れにくい部分も多く発生し、その箇所で汚れへの電荷供給が不十分となる構成となっている。汚れ堆積と成り、白ポチ発生となった。
【0177】
比較例7においては、マトリックス−ドメイン構造ではあるが、要件(1)及び(2)を満たすドメインが0個数%であった。その結果、導電層中で電界集中が発生し導電パスに過剰な電荷が流れやすい構成となっている。電荷が流れにくい部分も多く発生し、その箇所で汚れへの電荷供給が不十分となる構成となっている。汚れ堆積と成り、白ポチ発生となった。
【0178】
比較例8においては、マトリックス−ドメイン構造ではあるが、要件(1)及び(2)を満たすドメインが0個数%であった。この理由は、凍結粉砕によって形成した、サイズが大きく、異方性のある導電ゴム粒子を分散しているためである。その結果、導電層中で電界集中が発生し導電パスに過剰な電荷が流れやすい構成となっている。電荷が流れにくい部分も多く発生し、その箇所で汚れへの電荷供給が不十分となる構成となっている。汚れ堆積と成り、白ポチ発生となった。
【0179】
比較例9においては、導電性のない表面層を用いていることから、トナーへの電荷供給が不十分となってしまっている。したがって、汚れの吐出しが十分でないことによる汚れ堆積が発生し、画像上で白ポチ発生となった。
【0180】
比較例10においては、イオン伝導性の表面層を用いていることから、高速プロセスにおいて、支持体から表面層への電荷輸送に時間を要し、トナーへの電荷供給が不十分となってしまっている。したがって、汚れの吐出しが十分でないことによる汚れ堆積が発生し、画像上で白ポチ発生となった。
【0181】
<実施例46>
[導電ローラ29の作製>
導電ローラ1の製造に係る導電性樹脂層の研磨工程において、中央部から両端部側へ各90mmの位置における各直径が12.0mm、中央部直径が12.2mmであるクラウン形状に研磨した以外は、導電ローラ1と同様にして導電ローラ29を作製した。
【0182】
[表面層用塗工液17の調製>
下記の材料を混合し、撹拌した。
・ポリエーテルポリオール(商品名:PEG−1000、三洋化成工業社製):52.0質量部
・イソシアネート(商品名:ミリオネートMR−400、東ソー社製):48.0質量部
・カーボンブラック(商品名:MA−100、三菱ケミカル社製):15.0質量部
・ウレタン樹脂微粒子(商品名:アートパールC−400T、根上工業社製):20.0質量部
【0183】
次に、総固形分比が30質量%となるようにメチルエチルケトンを加えた後、サンドミルにて混合した。次いで、さらに、メチルエチルケトンで粘度10〜12cpsに調整して、表面層用塗工液17を調製した。
【0184】
[電子写真用ローラ46の作製]
導電ローラ29及び表面層用塗工液17を用い、熱風乾燥炉中での乾燥条件を温度150℃、1時間とし、UV照射を行わないこと以外は実施例1と同様にして電子写真用ローラ46を作製した。
[評価]
得られた電子写真用ローラ46を実施例1に記載の評価<4−1>、<4−2>および下記評価<7−1>〜<7−4>に供した。なお、評価<4−3>は、導電層の構成が実施例1に係る電子写真用ローラ1と同じであることから行わなかった。
【0185】
<7−1.現像ローラとしての物性評価>
電子写真用ローラ46について、現像ローラとしての特性の評価を以下のようにして行った。
【0186】
<画像(カブリ)評価>
電子写真用ローラ46を現像ローラとして取り付けた、レーザープリンタ(商品名:HP Color Laserjet Enterprise CP4515dn、HP社製)用のマゼンタトナーカートリッジを当該レーザープリンタに装填した。なお、高速プロセスにおける評価とするために、当該レーザープリンタを、単位時間当たりの出力枚数が、オリジナルの出力枚数よりも多い、A4サイズの用紙で、50枚/分となるように改造した。
当該レーザープリンタを気温32℃、相対湿度85%の高温高湿環境中に6時間放置した。
次いで、サイズが4ポイントのアルファベットの「E」の文字が、A4サイズの紙の面積に対し被覆率が1%となるように印字されるような画像(以下、「E文字画像」ともいう)を所定枚数のコピー用紙に対して連続出力した。
その後、新しいコピー用紙に白ベタ画像を出力し、白ベタ画像の出力中にプリンターを停止した。この時、感光体上に付着したトナーをテープ(商品名:CT18、ニチバン社製)ではがし取り、反射濃度計(商品名:TC−6DS/A、東京電飾社製)にて反射率を測定した。テープの反射率を基準としたときの反射率の低下量(%)を測定し、これをかぶり値とした。これらのカブリ値に基づき、以下の基準で評価した。
・ランクA:カブリ値が1.5%未満である。
・ランクB:カブリ値が1.5%以上3.0%未満である。
・ランクC:カブリ値が3.0%以上5.0%未満である。
・ランクD:カブリ値が5.0%以上である。
【0187】
<トナー帯電量>
トナーに対する現像ローラの帯電付与性を評価するために、帯電量を測定した。
上記画像評価の際に、現像ローラの、トナー規制ブレードと感光ドラムとの当接位置に挟まれた部分のうち範囲が狭い部分に担持されたトナーを、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集した。その際、金属円筒管を通じてコンデンサに蓄えられた電荷量と、吸引されたトナーの質量を測定した。なお、電荷量の測定は、エーディーシー社製の測定機(商品名:8252)を用いて行った。そして、これらの値から、単位質量あたりの電荷量(μC/g)を算出した。負帯電性のトナーを用いる場合、単位質量あたりの電荷量の符号が負であり、絶対値が大きいほど、現像ローラの帯電付与性が高いといえる。測定により得られた値をトナー帯電量とした。
【0188】
<トナー帯電量分布>
トナーの帯電量の広がりを評価するために、帯電量分布を測定した。
帯電量分布は、粉体測定帯電量・粒子径分布想定装置(商品名:E−spart Analyzer Model EST−III、ホソカワミクロン社製)を用いて測定した。それ以外は、トナーの帯電量測定と同様にして、帯電量分布を測定した。なお、測定粒子個数は3000個程度とした。得られた帯電量分布から、標準偏差を算出し、得られた値をトナーの初期帯電量分布とした。
【0189】
<高温高湿/低温低湿サイクル試験>
高温高湿環境と低温低湿環境で交互に評価する試験(以下、環境サイクル試験)は以下のように行った。始めに画像(カブリ)評価で用いたものと同様にして、各現像ローラを装填したマゼンタトナーカートリッジを、上記レーザープリンタに装填し、気温32℃、相対湿度85%の高温高湿環境(以下H/H)中に設置した後、30分間放置した。 次に本環境で、サイズが4ポイントのアルファベットの「E」の文字が、A4サイズの紙の面積に対し被覆率が1%となるように印字されるような画像(以下、「E文字画像」ともいう)を500枚のコピー用紙に対して連続出力した。次に、本トナーカートリッジ、及びレーザープリンタを、気温15°、相対湿度10%RHの低温低湿環境(以下L/L)中に設置した後、30分間放置した。次に本環境で、サイズが4ポイントのアルファベットの「E」の文字が、A4サイズの紙の面積に対し被覆率が1%となるように印字されるような画像(以下、「E文字画像」ともいう)を500枚のコピー用紙に対して連続出力した。
このH/H、L/Lでの画像出力を1サイクルとして、合計5サイクル繰り返した。
【0190】
次に、上記した<画像(カブリ)評価>、<トナー帯電量>、及び<トナー帯電量分布>に係る評価を同様にして行った。
さらに、トナーカートリッジから電子写真用ローラを取り出し、電子写真用ローラの表面層近傍の破壊状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
・ランクA:現像ローラ全体に亘って破壊が認められない。
・ランクB:現像ローラ端部(弾性層長手方向最端部から1.5cmの範囲)にのみ、軽微な破壊が認められる。
・ランクC:現像ローラ端部以外の領域に軽微な破壊が認められる。
・ランクD:現像ローラ全体のいずれかに破壊が認められ、画像上に問題が発生している。
【0191】
<実施例47〜50>
[表面層用塗工液18〜21の調製]
バインダー樹脂原料及び導電剤を表9−1に示したように変更した以外は表面層用塗工液17と同様にして表面層用塗工液18〜21を調製した。
【0192】
【表9-1】
【0193】
※表9−1中に記載される材料はそれぞれ以下のものである。
・PEG−1000:三洋化成工業社製 ポリエチレングリコール
・サンニックスPP−1000:三洋化成工業社製 ポリプロピレングリコール
・サンニックスPP−4000:三洋化成工業社製 ポリプロピレングリコール
・PTMG−2000:保土谷化学社製 ポリテトラメチレングリコール
・PTG−L3500:保土谷化学社製 ポリエチレングリコール
・ニッポラン4002:東ソー社製 エチレンアジペート系ポリエステルポリオール
・ニッポラン4010:東ソー社製 ブチレンアジペート系ポリエステルポリオール
・ETERNACOLL PH−300:宇部興産社製 1,6−HD/1,5−PD系ポリカーボネートジオール
・アクリディックA817:DIC社製 アクリルポリオール
・MR−400:東ソー社製(商品名 ミリオネートMR−400) ポリメリックMDI
・コロネート2233:東ソー社製 TDI系ポリイソシアネート
・コロネートL:東ソー社製 TDI系ポリイソシアネート
・ユーバン20SB:三井化学社製 メラミン樹脂
・MA−100:三菱化学社製 カーボンブラック
・Printex25:オリオンエンジニアドカーボンズ社製 カーボンブラック
・CIL−312:日本カーリット社製 イオン液体
【0194】
[電子写真用ローラ47〜50の作製]
表面層用塗工液17〜22を用いた以外は実施例46と同様にして電子写真用ローラ47〜50を作製した。得られた電子写真用ローラ47〜50を実施例46に記載の評価に供した。
【0195】
<実施例51>
[表面層用塗工液22の調製]
下記材料を混合し、撹拌した。
・アクリルポリオール(商品名:アクリディックA817、DIC社製):75.0質量部
・メラミン樹脂(商品名:ユーバン20SB、三井化学社製):25.0質量部
・カーボンブラック(商品名:Printex25、オリオンエンジニアドカーボンズ社製):10.0質量部
・リチウム塩化合物(商品名:エフトップEF−N115、三菱マテリアル電子化成社製):2.0質量部
・ウレタン樹脂微粒子(商品名:アートパールC−400T、根上工業社製):20.0質量部
【0196】
次に、総固形分比が30質量%となるようにメチルエチルケトンを加えた後、サンドミルにて混合した。次いで、さらに、メチルエチルケトンで粘度10〜12cpsに調整して、表面層用塗工液22を調製した。
【0197】
[電子写真用ローラ51の作製]
表面層用塗工液22を用い、熱風乾燥炉中での乾燥条件を温度140℃、30分加熱とした以外は実施例46と同様にして、導電層の外周に膜厚15μmの表面層を有する電子写真用ローラ51を作製した。得られた電子写真用ローラ51を実施例46に記載の評価に供した。
実施例46〜51の評価結果を表9−2〜表9−3に示す。
【0198】
【表9-2】
【0199】
【表9-3】
【符号の説明】
【0200】
1 導電性部材
2 支持体
3 導電層
4 表面層
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】