(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021067947
(43)【公開日】20210430
(54)【発明の名称】導電性部材、プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20210402BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20210402BHJP
   G03G 21/18 20060101ALI20210402BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
   !G03G15/02 101
   !G03G15/00 551
   !G03G21/18 142
   !F16C13/00 A
   !F16C13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】87
(21)【出願番号】2020174641
(22)【出願日】20201016
(31)【優先権主張番号】2019191549
(32)【優先日】20191018
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山田 真樹
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】菊池 裕一
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 健二
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】日野 哲男
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】山内 一浩
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】古川 匠
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
【テーマコード(参考)】
2H171
2H200
3J103
【Fターム(参考)】
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2H171FA13
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(57)【要約】
【課題】高速プロセスにおいても高画質、高耐久性を維持できる導電性部材を提供する。
【解決手段】導電性支持体、導電層、表面層をこの順で有し、導電層は第1のゴムの架橋物を含むマトリックスとマトリックス中に分散された複数個のドメインとを有し、ドメインは第2のゴムの架橋物及び電子導電剤を含み、該導電層の外表面での特定の環境下及び条件で測定されたインピーダンスについて周波数を横軸、インピーダンスを縦軸に両対数プロットしたときの、高周波数側の傾きが、−0.8〜−0.3であり、かつ、低周波数側におけるインピーダンスが、1.0×10〜1.0×1011Ωであり、さらに該導電性部材の外表面での特定の環境下及び条件で測定された低周波数側におけるインピーダンスが、1.0×10〜1.0×1011Ωである導電性部材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の外表面を有する支持体と、該支持体の外表面上に設けられた導電層と、該導電層の外表面上に設けられた表面層とを有する電子写真用の導電性部材であって、
該導電層は、第1のゴムの架橋物を含むマトリックスと、該マトリックス中に分散された複数個のドメインとを有し、
該ドメインは、第2のゴムの架橋物及び電子導電剤を含み、
該導電層の外表面に直接白金電極を設け、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、該支持体の該外表面と該白金電極との間に振幅が1Vの交流電圧を、周波数1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzの間で変化させながら印加することによってインピーダンスを測定し、周波数を横軸、インピーダンスを縦軸に両対数プロットしたときの、周波数1.0×10Hz〜1.0×10Hzにおける傾きが、−0.8以上、−0.3以下であり、かつ、周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスが、1.0×10〜1.0×1011Ωであり、かつ、
該導電性部材の外表面に直接白金電極を設け、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、該支持体の該外表面と該白金電極との間に振幅が1Vの交流電圧を、周波数1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzの間で変化させながら印加することによってインピーダンスを測定し、周波数を横軸、インピーダンスを縦軸に両対数プロットしたときの、周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスが、1.0×10〜1.0×1011Ωである、
ことを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記導電層が、前記支持体の前記外表面上に直接設けられている請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記導電層と、前記支持体の前記外表面との間に導電性の樹脂層をさらに有し、該樹脂層の外表面に直接白金電極を設け、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、該支持体の外表面と該白金電極との間に振幅が1Vの交流電圧を、周波数1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzの間で変化させながら印加することによってインピーダンスを測定し、周波数を横軸、インピーダンスを縦軸に両対数プロットしたときの、周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスが、1.0×10−5〜1.0×10Ωである請求項1に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記マトリックスの体積抵抗率が1.0×1012Ωcmより大きく、1.0×1017Ωcm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項5】
隣接する前記ドメイン間の距離の算術平均値Dmが0.2μm以上、2.0μm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記導電層の長手方向の長さをL、導電層の厚さをTとしたとき、該導電層の長手方向の中央、及び該導電層の両端から中央に向かってL/4の3か所における、該導電層の厚さ方向の断面の各々について、該導電層の外表面から深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所に15μm四方の観察領域を置いたときに、全9個の該観察領域の各々で観察されるドメインのうちの80個数%以上が、下記要件(1)及び要件(2)を満たす請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性部材:
(1)ドメインの断面積に対する該ドメインが含む該電子導電剤の断面積の割合が、20%以上であること;
(2)ドメインの周囲長をA、該ドメインの包絡周囲長をBとしたとき、A/Bが、1.00以上、1.10以下であること。
【請求項7】
前記導電層の厚み方向の断面に現れるドメインの各々の断面積に対する該ドメインの各々が含む前記電子導電剤の断面積の割合の平均値をμとし、該割合の標準偏差をσとしたとき、σ/μが、0以上、0.4以下であり、該μが、20%以上、40%以下であり、かつ、該導電層の任意の9箇所からサンプリングされる、一辺が9μmの立方体形状のサンプル立方体のうち、少なくとも8個のサンプル立方体は、下記要件(3)を満たす請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性部材:
(3)1個のサンプル立方体を、27個の、一辺が3μmの単位立方体に区分し、該単位立方体の各々に含まれる前記ドメインの体積Vdを求めたとき、Vdが2.7μm〜10.8μmである単位立方体の数が少なくとも20個であること。
【請求項8】
前記表面層は、バインダー樹脂の少なくとも1種と、電子導電剤及びイオン導電剤の少なくとも1種を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項9】
前記バインダー樹脂がウレタン樹脂である請求項8に記載の導電性部材。
【請求項10】
前記ウレタン樹脂のウレタン基濃度が、1.5%以上、6.5%以下である請求項9に記載の導電性部材。
【請求項11】
前記ウレタン樹脂が構造式(1)〜(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも一つの構造を有する、請求項9又は10に記載の導電性部材。
【化1】
構造式(1)〜(3)中、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数4以上8以下の直鎖または分岐を有する2価の炭化水素基を表す。
【請求項12】
前記表面層が、バインダー樹脂、及び、電子導電剤を含み、表面が該電子導電剤の露出部に由来する凸部を有し、表面から深さ1μmの位置でのユニバーサル硬度が1.0N/mm以上、7.0N/mm以下である請求項1〜11のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項13】
前記表面層の体積抵抗率が、1.0×10Ω・cm以上、1.0×1015Ω・cm以下である請求項1〜7、請求項12のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項14】
前記表面層は、個数平均粒子径が3μm以上、30μm以下の粗し粒子を含み、その表面に該粗し粒子由来の凸部を有する請求項1〜13のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項15】
電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであって、請求項1〜14のいずれか1項に記載の導電性部材を具備することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の導電性部材を具備することを特徴とする電子写真画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真画像形成装置に用いられる導電性部材、該導電性部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置(以下、「電子写真装置」とも称す)において、現像ローラ、トナー供給ローラ、帯電ローラ、転写ローラ、及び現像ブレードの如き導電性部材を有する。このような導電性部材として、例えば、1×10〜1×1012Ωの如き電気抵抗値(以降、「抵抗値」という)を有する導電層を備えた導電性部材が用いられている。従来、導電層に導電性を付与し、安定な導電機構の形成のために、カーボンブラックのような電子導電剤や、第4級アンモニウム塩等のイオン導電剤が使用されてきた。
導電性部材には電子写真感光体(以降、「感光体」という)へのトナー搬送、感光体への帯電、トナーへの電荷付与、表面汚染のしにくさなど、様々な機能が求められ、これらを達成するため種々の対策手段が開示されている。
【0003】
中でも現像剤担持体としては、10〜1010Ω・cmの電気抵抗を有する弾性ローラが一般に用いられている。また、現像剤担持体へのより一層の高耐久化、及び、電子写真画像へのより一層の高画質化への要求に鑑み、弾性層の表面に表面層を設けた現像剤担持体が用いられるようになっている。
【0004】
特許文献1では、表面に連続相と非連続相を有するロール状の現像剤担持体を用いることによりトナー離型性や摩耗性を向上させる方法が開示されている。
導電/非導電の連続相と非連続相を有することにより低硬度かつ低ヘタリで帯電性に優れる電子写真機器用導電性部材が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、導電性部材の表面層が非導電性の海部と電子導電剤を含む島部からなるマトリックス−ドメイン構造を有することで、放電ムラを低減する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−15800号公報
【特許文献2】特開2011−22410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、電子写真装置には、過酷な環境での高速プロセスにおいても高画質、高耐久性を維持できることが求められている。
例えばカーボンブラックのような電子導電剤を導電層中に分散させると、導電性支持体から導電性部材表面まで電子導電剤が連結した導電パスの中を、電荷が移動することで導電性が発現する。したがって、この導電パスが通電で消費する電荷の輸送を担うため、次の通電のための電荷の供給までに一定の時間を要する。
現像部材の場合、高速プロセスにおいては、トナーに与える電荷の供給がプロセス速度に追随できない場合に、トナーに与える電荷量のばらつきが生じる。これにより均一な現像を実現することが難しくなり、例えば、帯電量の乏しいトナーに起因するカブリ画像が発生する場合があった。
【0008】
また、導電層中にイオン導電剤を分散させて導電性を発現する導電性部材は、第4級アンモニウムのようなアニオンとカチオンが移動することによって導電性が発現する。したがって、高速プロセスにおいては、アニオンやカチオンの移動速度が遅い場合、プロセス速度に追随できず、上記と同様に、次の現像のためのトナーへの電荷供給が不足し、カブリ画像が発生することがあった。
【0009】
本開示の一態様は、高速プロセスにおいても高画質、高耐久性を維持できる電子写真用導電性部材の提供に向けたものである。また、本開示の他の態様は、高品位な電子写真画像を安定して出力できる電子写真画像形成装置及びそれに用いられるプロセスカートリッジの提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様によれば、
導電性の外表面を有する支持体と、該支持体の外表面上に設けられた導電層と、該導電層の外表面上に設けられた表面層とを有する電子写真用の導電性部材であって、
該導電層は、第1のゴムの架橋物を含むマトリックスと、該マトリックス中に分散された複数個のドメインとを有し、
該ドメインは、第2のゴムの架橋物及び電子導電剤を含み、該導電層の外表面に直接白金電極を設け、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、該支持体の該外表面と該白金電極との間に振幅が1Vの交流電圧を、周波数1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzの間で変化させながら印加することによってインピーダンスを測定し、周波数を横軸、インピーダンスを縦軸に両対数プロットしたときの、周波数1.0×10Hz〜1.0×10Hzにおける傾きが、−0.8以上、−0.3以下であり、かつ、周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスが、1.0×10〜1.0×1011Ωであり、
かつ、該導電性部材の外表面に直接白金電極を設け、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、該支持体の外表面と該白金電極との間に振幅が1Vの交流電圧を、周波数1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzの間で変化させながら印加することによってインピーダンスを測定し、周波数を横軸、インピーダンスを縦軸に両対数プロットしたときの、周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスが、1.0×10〜1.0×1011Ωである導電性部材が提供される。
【0011】
また、本開示の他の態様によれば、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであって、上記の導電性部材を具備するプロセスカートリッジが提供される。
さらに、本開示の他の態様によれば、上記の導電性部材を具備する電子写真画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、高速プロセスにおいても高画質、高耐久性を維持できる電子写真用の導電性部材が得られる。また、本開示の他の態様によれば、高品位な電子写真画像を安定して出力できる電子写真画像形成装置及びそれに用いられるプロセスカートリッジが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示の一実施形態に係る電子写真用導電性ローラの概略断面図である。
【図2】本開示の一実施形態に係る電子写真用現像ブレードの概略断面図である。
【図3】インピーダンス特性のグラフの説明図である。
【図4】インピーダンスの挙動の説明図である。
【図5】マトリックス−ドメイン構造の模式図である。
【図6】包絡周囲長の説明図である。
【図7】断面切り出し方向の説明図である。
【図8】プロセスカートリッジの概要図である。
【図9】電子写真装置の概要図である。
【図10】導電性ローラ(導電層表面)に測定電極を形成した状態の概要図である。
【図11】導電性ローラ(表面層表面)に測定電極を形成した状態の断面図である。
【図12】表面層の凸部のサイズを説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
従来の現像部材における導電層の導電パス内の電荷の動きと、トナーへの電荷付与のプロセスは次のように推測される。
まず、電源に接続された導電性支持体に電圧が印加され、電荷が供給される。この電荷は、導電性部材の導電層を通って、現像部材の表面まで輸送(供給)される。
この状態で現像部材の表面がトナーと接触すると、現像部材の表面の電荷が、トナーに移動する、すなわち電荷がトナーに供給される。
トナーに移動した分だけ、現像部材の表面の電荷が減少するが、現像部材の導電性支持体が電源に接続されている限り、導電性支持体を通じて、新たな電荷が現像部材の表面に供給される。
このように、新たな電荷が連続的に現像部材に供給されることにより、トナーへの電荷供給を連続的に行うことができる。
【0015】
一方、現像ローラまたは現像スリーブと現像ブレードを用いる現像プロセスにおいて、トナー粒子はトナー担持体表面に、2〜3個分程度の厚みのトナー層を形成し、感光体へと現像される。
【0016】
導電層上に表面層を設けた2層系現像部材において、トナー粒子への帯電付与は、主に現像部材の表面層とトナー粒子との摩擦帯電により行われる。
【0017】
トナー担持体表面において、トナーは転動しながら、トナー担持体と現像ブレードの間を通過する非常に短い時間内に、トナー担持体から電荷の供給を受け、帯電付与される。そのため、トナーへの摩擦帯電付与により表面層から失われた電荷は、速やかに弾性層から供給されなければならない。
【0018】
したがって、弾性層での電荷の供給が停滞し、現像部材表面層への電荷移動速度が遅いと、現像部材の表面への新たな電荷の供給量が制限されてしまう。単位時間あたりに多くのトナーに電荷を供給する必要がある高速プロセスにおいては、現像部材の表面層への新たな電荷の供給量が制限されると、トナーへの電荷供給不足が発生する。その結果、現像部材表面との接触及び転動時に受けた電荷量にばらつきが生じ、トナーの帯電量分布が大きくなる。さらに、現像部(感光体と現像部材とが対向する位置)において制御されずに感光体に移動するトナーができ、いわゆるカブリが表れやすくなる。
【0019】
本発明者らは、現像部材表面層への導電層の電荷移動速度を高めるために、導電層に導電剤を多量に配合し、導電層の低抵抗化を図った。
しかし、イオン導電剤、電子導電剤のどちらを用いた場合であっても、高速プロセスの現像部において、十分に帯電されていないトナーの割合を低減する効果は小さく、期待するほどのカブリ低減効果は得られなかった。
上記のように、高速プロセスにおいても高品位な画像を形成しうる現像部材を提供することは容易ではない。本発明者らの検討によれば、特許文献1に係る導電性ロールや特許文献2に係る導電性ローラは、高速プロセスでの画像評価において、電荷供給量の不足と思われる、カブリ画像を発生する場合があった。
本発明者らは、上記したような課題の解決に向けて検討を重ねた。トナーへの電荷付与に用いる現像部材の場合、トナーへの電荷付与する導電機構が、従来は上記の通り、カーボンブラックのような電子導電剤の導電パスや、イオン導電剤の導電パスである。
電圧の印加により、現像部材表面まで導電パスを経由して電荷が輸送され、トナーと現像部材との間に、電界が発生する。さらに現像部材表面とトナーの接触面において、電界により現像部材表面から電荷がトナーに移動する。トナーは通常2〜3個分の厚みを有するトナー層として現像部材表面に担持され、転動しながら現像部材との接触時に電荷の供給を受ける。
【0020】
また、トナーと現像部材との接触領域はある一定の面積を有する。この面積内でトナーへの電荷付与は複数回発生している。例えば、現像装置が現像ローラと現像ブレードを有する場合では、トナーが、現像ローラの回転、及びトナーの転動によって、現像ブレードとの接触領域を通過する間に、トナーへの電荷付与は複数回発生している。
電荷付与が一度発生すると、現像部材表面から供給される電荷付与は一定時間持続し、現像部材表面まで輸送された電荷が消費される。電荷付与が終了すると、再び現像部材内部の導電パスから現像部材表面まで、消費された電荷が供給され、次の電荷付与が発生する。従って最終的なトナーの有する電荷量は、この複数回の付与電荷量の積算と考えられる。
上記に述べたように、トナーの環境や現像の履歴は、現像部材表面との接触部における付与電荷量に影響を与えるため、通常の場合、トナーの電荷量は分布を有する。特に、高速プロセスの場合、トナーへの最初の電荷付与が生じたあとに、次の電荷付与のための電荷量の供給が追随できなくなる場合がある。特に、現像ブレードと現像部材によって形成される現像ニップ領域に侵入してすぐの1回目の電荷付与は十分な量の電荷量を有したものになるが、その後の電荷付与のための電荷供給が追随できない場合がある。
【0021】
そこで、本発明者らは、十分な電荷を短時間で蓄積でき、且つ、当該電荷を速やかに供給し得る導電性部材を得るべく検討を重ねた。その結果、以下の構成の導電性部材は、上記の要求に良く応え得ることを見出した。
【0022】
導電性部材は、導電性の外表面を有する支持体と、該支持体の外表面上に設けられた導電層と、該導電層の外表面上に設けられた表面層とを有し、
該導電層が、第1のゴムの架橋物を含むマトリックスと、該マトリックス中に分散された複数個のドメインとを有し、該ドメインは、第2のゴムの架橋物及び電子導電剤を含む。
該導電層は、インピーダンスを測定するため、その外表面に直接白金電極を設け、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、該支持体の外表面と該白金電極との間に振幅が1Vの交流電圧を印加する。その際、周波数1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzの間で変化させながら電圧を印加する。測定結果について、周波数を横軸、インピーダンスを縦軸に両対数プロットしたときに、本態様に係る導電層は、以下の第一の要件及び第二の両方の要件を満たす。
【0023】
<第一の要件>
周波数1.0×10Hz〜1.0×10Hzにおける傾きが、−0.8以上、−0.3以下である。
<第二の要件>
周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスが、1.0×10〜1.0×1011Ωである。
【0024】
さらに、該導電性部材の外表面、すなわち、表面層の外表面に直接白金電極を設け、上記と同じ条件で該支持体の外表面と該白金電極との間インピーダンスを測定する。測定結果について、周波数を横軸、インピーダンスを縦軸に両対数プロットしたときの、周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスが、1.0×10〜1.0×1011Ωである。
【0025】
すなわち、本態様に係る導電性部材によれば、トナーの電荷量のバラつきが非常に小さい現像プロセスが可能になる。さらに本開示に係る導電性部材は最外層として表面層を有するため、トナーの電荷量のバラつきが非常に小さい現像プロセスを長期に亘って維持することが可能になる。
なお、本開示において、1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzの周波数の領域を「低周波数域」ということがある。
【0026】
以下、本態様に係る導電性部材について、現像ローラの態様を例に説明する。なお、本態様に係る導電性部材は、現像ローラに限定されるものでなく、例えば、帯電ローラ、定着ローラ、現像ブレード、トナー供給ローラにも適用し得る。
本態様に係る導電性部材は、導電性の外表面を有する支持体、及び、該支持体の外表面上に設けられた導電層と、該導電層の外表面上に設けられた表面層を有する。該導電層は、導電性を有する。ここで、導電性とは体積抵抗率が1.0×10Ωcm未満であると定義する。そして、該導電層は、第1のゴムの架橋物を含むマトリックスと、該マトリックス中に分散された複数個のドメインとを有し、該ドメインは、第2のゴムの架橋物及び電子導電剤を含む。また、該導電性部材の導電層は、上記の<第一の要件>及び<第二の要件>を満たす。
【0027】
<第一の要件>
第一の要件は、高周波数側で導電性部材内での電荷の停滞が発生し難いことを規定している。
従来の導電性部材の導電層のインピーダンスを測定すると、高周波数側で、必ず傾きが−1となる。ここで、傾きとは、図3に示すように、導電性部材のインピーダンス特性を周波数に対して両対数プロットした際の、横軸に対する傾きのことである。
導電性部材における導電層の等価回路は、電気抵抗値Rと静電容量値Cの並列回路で表され、インピーダンスの絶対値|Z|は下記式(1)で表現できる。このとき、式(1)内のfは周波数を示す。
【0028】
【数1】
【0029】
高周波数側で、インピーダンスの傾き−1の直線になるのは、高周波の電圧に対して電荷の動きが追随できず、停滞するため、電気抵抗値Rが大きく増大した、いわば絶縁の静電容量を計測している状態であると推測できる。電荷が停滞した状態は、式(1)でRを無限大に近似した状態であると、推定することができる。このとき、式(1)の分母の要素(R−2+(2πf))において、R−2が(2πf)に対して非常に小さい値をとる近似が可能になる。したがって、式(1)はR−2を除去した式(2)のような近似を施した式変形が可能となる。最後に、式(2)に対して両辺対数をとる式変形を行うと、式(3)となり、logfの傾きが−1になる。
【0030】
【数2】
【0031】
上記式(1)〜(3)の意味を、図4を用いて説明する。図4において、縦軸は、インピーダンスの絶対値の対数(log|Z|)、横軸は、測定振動電圧の周波数の対数(logf)を示す。図4に、式(1)で表現されるインピーダンスの挙動を示す。まず、上記で説明してきたように、式(1)を満たすインピーダンスは、周波数が大きくなると、ある周波数でその絶対値が低下してくる。そして低下する挙動は、図4のような両対数プロットにおいては、式(3)で示したように、傾きが導電性部材の電気抵抗値や静電容量などに依存せずに、−1の傾きの直線となる。
絶縁性の樹脂層のインピーダンス特性を測定すると、傾きが−1の直線となることから、導電性部材の導電層のインピーダンス測定において、傾きが−1になる状態は、高周波数側で電荷の動きが停滞している特性が現れていると推測される。高周波数側での電荷の動きが停滞すると、高速プロセスにおける表面層への電荷供給の周波数に追随できなくなる。その結果、電荷供給のできないタイミングが生じ、トナー帯電量のバラつきが生じていると推測される。
【0032】
一方、本態様に係る導電性部材において、導電層のインピーダンスの傾きが、1.0×10Hz〜1.0×10Hzの高周波数の領域において、−0.8以上、−0.3以下であるため、高周波数側で電荷の供給が停滞し難い。その結果、インピーダンスが一定値をとる低周波数域から高周波数域までの周波数の電荷供給、特に電荷の動きが停滞しやすい高周波数側で、電荷の供給を可能にする。
電荷の供給が広い周波数領域において潤沢に実現できるために、表面層への電荷供給のバラつきを抑制し、トナー帯電量の総量を向上させることができる。当該高周波数領域の範囲は、導電性部材から発生する電荷供給の周波数のうちで、最も周波数が大きい領域の通電であるため、表面層への電荷供給のバラつきが発生しやすい領域であると考えられる。このような周波数領域において傾きが−1よりも大きい上記の範囲の値を示すことで、当該周波数領域より低い高周波数領域においても−1よりも大きい傾きを得ている。その結果、表面層への電荷供給のバラつきの発生を抑制し、表面層を介してトナー帯電量の総量を向上させることができる。
より高速プロセスになるにしたがって、電荷供給の周波数をより高くして電荷供給の回数を増大させる必要があるため、上記範囲の中でも特に、1.0×10Hz〜1.0×10Hzの如き高周波数域における電荷供給及び導電機構の制御が重要である。
【0033】
以上のように、表面層を介してトナーへ電荷供給の回数を増大させるためには、導電層の高周波数領域におけるインピーダンスの傾きを−1から逸脱させることが有効である。これにより、トナーへの電荷供給とその次の電荷供給のための電荷の供給を迅速に行う特性を良く達成させ得る。インピーダンスの傾きが−1から逸脱することは、導電性部材内の電荷の供給が停滞していないことを意味するため、かかる導電性部材は、トナーへの電荷供給のバラつきを抑制する方向の特性を得られる。
【0034】
<第二の要件>
第二の要件にかかる低周波数域でのインピーダンスは、電荷の停滞が発生し難いという特性を表しているものである。
これは、低周波数側のインピーダンスの傾きが−1ではない領域であることからもわかる。そして、前記式(1)において、周波数fをゼロに近似すると、電気抵抗値Rに近似できることから、電気抵抗値Rは、電荷が単一方向に移動する際の能力を表すことが分かる。従って、低周波数の電圧を印加しながらの測定では、電圧の振動に電荷の動きが追随できた状態での電荷の移動量を模擬していると想定できる。
低周波数における電荷の移動量は、導電性部材の導電層から測定電極(白金電極)との間での電荷の移動しやすさの指標であり、更に、導電性部材の導電層から表面層に対して、界面での通電によって電荷を移動させられる電荷量の指標とすることができる。
また、第一及び第二の要件にかかるインピーダンスの測定に用いられる交流電圧は振幅が1Vである。この測定用の振動電圧は、実際に電子写真方式の画像形成装置の中で導電性部材に印加される電圧が数100V〜数1000Vであるのに対し大幅に低い。従って、第一及び第二の要件にかかるインピーダンスの測定によって、導電性部材の導電層表面からの電荷の出やすさをより高次元で評価できると考えている。
【0035】
また、第二の要件を満たすことで、電荷の出やすさを適切な範囲に制御可能である。インピーダンスが1.0×10Ωより低くなると、一回の供給電荷の量が大きくなりすぎて、次の電荷供給のための電荷の供給が追随できなくなり、電荷供給のバラつきが発生する方向に働き、カブリを抑制することが難しくなる。一方で、インピーダンスが1.0×1011Ωを超えると、電荷の出やすさが低下し、電荷供給のバラつきを埋めるまでの通電量に達しない。
なお、図4で説明したように導電性部材の導電層においては、低周波数域でのインピーダンスの絶対値は一定値をとる。そのため、1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスは、例えば1Hzの周波数におけるインピーダンスの値で代用することができる。
第一要件と第二要件とを両立する導電層は、低周波数側から高周波数側までの周波数域において表面層への電荷供給のバラつきを抑制して、カブリを低減することが可能となる。第一要件を満たすことで、高周波数側での電荷供給のバラつきを抑制することができる。また、第二要件を満たすことで、供給電荷量がより一層向上し、カブリの発生を効果的に抑制することができる。
【0036】
<インピーダンスの測定方法>
インピーダンスは次のような方法によって測定することができる。
インピーダンスの測定に際し、導電層と測定電極との間の接触抵抗の影響を排除する必要がある。そのために、低抵抗な薄膜形態の白金を導電層の外表面に直接堆積させ、当該薄膜を電極として使用する。また、導電性の支持体を接地電極として2端子でインピーダンスを測定することが好ましい。
当該電極の形成方法としては、金属蒸着、スパッタリング、金属ペーストの塗布、金属テープを貼付するなどの形成方法を挙げることができる。これらの中でも、導電層外表面との接触抵抗の低減という観点で、白金薄膜を蒸着によって電極として形成する方法が好ましい。
導電層の外表面に直接白金薄膜を形成する場合、その簡便さ及び薄膜の均一性を考慮すると、真空蒸着装置に対して導電性部材を把持できる機構を付与することが好ましい。また、断面が円柱状の導電性部材に対しては、さらに回転機構を付与した、真空蒸着装置を使用することが好ましい。
導電性部材の長手方向で10mm程度の幅の白金薄膜電極を形成し、当該白金薄膜電極に対して隙間なく長手方向に対して交差する方向に巻き付けた金属シートを測定装置から出ている測定電極と接続して測定を行うことが好ましい。円柱状の導電性部材の場合では、導電層の周方向に隙間なく巻き付けた金属シートを用いることが好ましい。これにより、導電層の長手方向に直交する断面での外縁のサイズ(円柱状の導電性部材では外径)の振れや、表面形状に影響されずに、インピーダンス測定を実施することができる。金属シートとしては、アルミホイルや金属テープ等を用いることができる。
インピーダンスの測定装置は、インピーダンスアナライザ、ネットワークアナライザ、スペクトルアナライザ等、10Hzオーダーまでの周波数領域におけるインピーダンスを測定できる装置であればよい。これらの中でも導電性部材の電気抵抗域から、インピーダンスアナライザによって測定することが好ましい。
インピーダンスの測定条件に関して述べる。
インピーダンス測定の装置を使用し、1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzの周波数領域におけるインピーダンスを測定する。測定は、温度23℃、相対湿度50%の環境下で行う。測定ばらつきを低減するために、周波数1桁あたり5点以上の測定点を設け、振動電圧は1Vppである。
測定電圧に関しては、電子写真装置内の導電性部材に印加される分担電圧を考慮して直流電圧を印加しながら測定してもよい。具体的には、10V以下の直流電圧を振動電圧と重畳印加しながらの測定が電荷の輸送と蓄積の特性を定量化するために好適である。
【0037】
次に、インピーダンスの傾きの算出方法について述べる。
上記の条件で測定した測定結果に対し、市販の表計算ソフトを使用して、インピーダンスの絶対値を、測定周波数に対して両対数グラフにプロットする。この両対数プロットで得られたグラフの、1.0×10〜1.0×10Hzの周波数領域におけるインピーダンスの絶対値の傾きを、1.0×10〜1.0×10Hzの周波数領域の測定点を利用して求めればよい。具体的には、当該周波数範囲のグラフのプロットに対し、一次関数の近似直線を最小二乗法で算出し、その傾きを算出すればよい。
次いで、当該両対数グラフ内の1.0×10−2〜1.0×10Hzの低周波数域における測定点での算術平均値を算出し、得られた値を低周波数側のインピーンダンスとすればよい。
インピーダンスの傾きの測定では、導電性部材の長手方向を5等分した際のそれぞれの領域内の任意の場所で測定を5か所行い、5か所の傾きの測定値の算術平均を算出すればよい。
【0038】
さらに本態様の導電性部材は、該導電性部材の外表面での周波数が1.0×10−2Hz〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスが、1.0×10〜1.0×1011Ωであることを特徴とする。該導電性部材の外表面でのインピーダンスは、導電層の外表面におけるインピーダンスと同様の方法で測定され、同様に両対数プロットされる。
【0039】
前述のように、本態様の導電性部材は、導電層が第一の要件と第二の要件を満たすことにより、電荷の動きが停滞しにくく、かつ十分な電荷を表面層に供給することが可能である。
前述の、導電層の第二の要件と同様に、前記式(1)において、周波数fをゼロに近似すると、電気抵抗値Rに近似できることから、電気抵抗値Rは、電荷が単一方向に移動する際の能力を表す。従って、導電性部材の外表面に白金電極を設けた状態での低周波数の電圧を印加しながらの測定では、電圧の振動に電荷の動きが追随できた状態での電荷の移動量を模擬していると想定できる。低周波数における電荷の移動量は、導電性部材の表面層から測定電極との間での電荷の移動しやすさの指標であり、更に、導電性部材の表面層からトナーに対して、接触によって電荷を移動させられる電荷量の指標とすることができる。
【0040】
導電性部材の外表面で測定される上記低周波数域のインピーダンスが、1.0×10〜1.0×1011Ωであることは、導電層から停滞なく供給された電荷が、表面層を介してトナーに対しても停滞なく電荷が供給されていることを表す。
導電層から供給される電荷を、表面層から停滞なくトナーへ再供給するためには、表面層の体積抵抗率を好適な範囲に調整することが必要である。
適正な体積抵抗率を有する表面層材料を用いることで、上記低周波数域におけるインピーダンスを、1.0×10〜1.0×1011Ωとすることができる。
【0041】
(表面層)
トナーに対し、摩擦帯電付与により失われた表面層の電荷は、前述の<第一の要件>及び<第二の要件>を満たす導電層から停滞なく供給される。
導電層から供給される電荷を、表面層から停滞なくトナーへ再供給するためには、表面層の体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上、1.0×1015Ω・cm以下であることが好ましい。
表面層の体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上である場合、トナーとの摩擦によって生じた電荷が表面層側にリークすることにより、トナーへの電荷供給が不十分になることを抑制できる。また表面層の体積抵抗率が1.0×1015Ω・cm以下である場合、表面層での電荷の移動量が十分に確保でき、トナーへの電荷供給が不十分になることがない。
いずれの場合においても、導電性部材外表面で測定される低周波数域におけるインピーダンスを、1.0×10〜1.0×1011Ωとすることが可能となる。
【0042】
<体積抵抗率の測定方法>
導電性部材の表面層の体積抵抗率は次のような方法によって測定することができる。
表面層の体積抵抗率は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、導電性モードによって測定した測定値を採用することができる。先ず、導電性部材の表面層を、マニュピレーターを用いてシート片に切り出し、表面層の片面に金属蒸着を施す。金属蒸着を施した面に直流電源を接続し、電圧を印加し、表面層のもう一方の面にはカンチレバーの自由端を接触させ、AFM本体を通して電流像を得る。無作為に選んだ100箇所の表面における電流値を測定し、測定された低電流値の上位10箇所の平均電流値と、平均膜厚とカンチレバーの接触面積から、体積抵抗率を算出できる。
【0043】
(1)導電性部材
本態様に係る電子写真用の導電性部材は、導電性の支持体と、支持体上の少なくとも一層の導電層と、該導電層の外表面上に設けられた表面層とを有する。
【0044】
一例として、ローラ形状の導電性部材(現像ローラ)を図1に示す。図1(a)に示す現像ローラ1Aは、導電性の支持体2と、その外周面(外表面)に設けられた導電層3、及び導電層3の外周面に、表面層4とを有する。
なお、現像ローラ1Aの層の構成は、図1(a)に示される形態に限定されるものではない。現像ローラ1の他の形態としては、図1(b)に示すように支持体2とその外周面に設けられた導電層3の間に、下地層(樹脂層)5を有する現像ローラ1A’であってもよい。さらに現像ローラ1A及び1A’の導電層3と表面層4の間に中間層(不図示)を有するものなどが挙げられる。
【0045】
また、導電性部材の他の例として、ブレード形状の部材(現像ブレード)が挙げられる。図2は、現像ブレード1Bの概略断面図である。図2に示す現像ブレード1Bは、導電性の支持体2と、支持体2の外表面の端部を含む一部の領域に設けられた導電層3、及び導電層3の外周面に設けられた表面層4とから構成されている。
現像ブレード1Bは、導電層3を、支持体の一部となる導電性のステンレス鋼製シートの先端部に被覆し、ステンレス鋼製シートの後端部を導電性の支持体2に溶接する構成とすることもできる。
本開示に係る導電性部材は、例えば、現像ローラ、帯電ローラ、現像スリーブ、定着ローラ、現像ブレード、及びトナー供給ローラの如き電子写真用部材として用いることが可能である。
以下、本開示の一実施形態に係る導電性部材の構成を詳細に説明する。
【0046】
<導電性の支持体>
導電性の支持体2は、導電性部材の支持部材、及び場合によっては電極として機能する。支持体の具体例について、導電性部材がローラ形状である場合、支持体2は、中実円柱状または中空円筒状であり、導電性部材がブレード形状である場合、支持体2は、薄板形状である。
導電性の支持体を構成する材料としては、電子写真用の導電性部材の分野で公知なものや、かかる現像部材として利用できる材料から適宜選択して用いることができる。一例として、アルミニウム、ステンレスに代表される金属、炭素鋼合金、導電性を有する合成樹脂、鉄、銅合金などの金属または合金が挙げられる。更に、これらに対して、酸化処理やクロム、ニッケルなどで鍍金処理を施しても良い。鍍金の種類としては電気鍍金、無電解鍍金のいずれも使用することができる。寸法安定性の観点から無電解鍍金が好ましい。ここで使用される無電解鍍金の種類としては、ニッケル鍍金、銅鍍金、金鍍金、その他各種合金鍍金を挙げることができる。鍍金厚さは、0.05μm以上が好ましく、作業効率と防錆能力のバランスを考慮すると、鍍金厚さは0.1〜30μmであることが好ましい。支持体と導電層の間に、中抵抗層、あるいは絶縁層が存在すると、通電による電荷の消費後の電荷の供給を迅速にできなくなる。よって、導電層は、支持体に直接設けるか、あるいは、プライマーのごとき、薄膜、かつ、導電性の樹脂層からなる下地層のみを介して支持体の外周に導電層を設けることが好ましい。
プライマーとしては、導電層形成用のゴム材料及び支持体の材質等に応じて公知のものを選択して用いることができる。プライマーの材料としては、例えば熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、フェノール系樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂の如き材料を用い得る。
該導電性の樹脂層の外表面に上記導電層と同様にして白金電極を設けて測定したインピーダンスは、低周波数域において、1.0×10−5〜1.0×10Ωの範囲であることが好ましい。
低周波数域におけるインピーダンスが上記範囲の樹脂層付きの支持体であれば、導電層に対し、十分な電荷の供給を実施できる。また、導電層に含まれるマトリックス−ドメイン構造の、第一の要件と第二の要件による電荷供給の抜けを抑制する機能が阻害されないため好ましい。
樹脂層外表面でのインピーダンスは、その表面に存在する導電層及び表面層を剥離して行うこと以外は、上記のインピーダンスの傾きの測定と同様の方法によって測定することができる。また、支持体のインピーダンスは、樹脂層または導電層を被覆する前の状態で、あるいは、導電性部材の形成後は、導電層、あるいは樹脂層と導電層等からなる被覆層を剥離した状態で、上記のインピーダンスの測定と同様の方法により測定することができる。
【0047】
<導電層>
前記<第一の要件>及び<第二の要件>を満たす導電性部材の導電層としては、例えば、以下の構成(i)〜構成(iii)のうちの少なくとも1つの構成を満たす導電層が好ましい。
構成(i)該マトリックスの体積抵抗率が、1.0×1012Ωcmより大きく1.0×1017Ωcm以下であること。
構成(ii)該ドメインの体積抵抗率が、1.0×10Ωcm以上、1.0×10Ω・cm以下であること。
構成(iii)隣接するドメイン間の距離が、0.2μm以上、2.0μm以下の範囲内であること。
なお、ドメイン間の距離とは、一つのマトリックス−ドメイン界面(ドメインの壁面ともいう)から最短の別のドメインの壁面間の距離を意味する。
【0048】
以下、上記構成(i)〜(iii)について説明する。
図5に、導電性ローラの長手方向に対して垂直な方向の導電層の部分断面図を示す。導電層は、マトリックス6aとドメイン6bとを有するマトリックス−ドメイン構造を有する。そして、ドメイン6bは、カーボンブラックなどの電子導電剤6cを含む。
このように電子導電剤6cを含むドメイン6bがマトリックス6a中に分散されている導電層を具備する導電性部材に導電性支持体と他部材との間にバイアス電圧が印加されたときの導電層内において、電荷は以下のように移動すると考えられる。すなわち、まず電荷は、ドメイン中のマトリックスとの界面近傍に蓄積される。そして、その電荷は、導電性支持体側に位置するドメインから、導電性支持体の側とは反対側に位置するドメインに順次受け渡されていき、導電層の導電性支持体の側とは反対側の表面(以降、「導電層の外表面」ともいう)に到達する。このとき、1回の電荷供給工程で全てのドメインの電荷が導電層の外表面側に移動すると、次の電荷供給工程に向けて、導電層中に電荷を蓄積するために時間を要することとなる。すなわち、高速の電子写真画像形成プロセスに対応することが困難となる。従って、バイアス電圧が印加されてもドメイン間の電荷の授受が同時的に生じないようにすることが好ましい。また、電荷の動きが制約される高周波数領域においても、1回の電荷供給で十分な量の電荷を供給させるためには、ドメインに十分な量の電荷を蓄積させることが有効となる。
以上述べたように、バイアス電圧印加時のドメイン間での同時的な電荷の授受の発生を抑制し、かつ、ドメイン内に十分な電荷を蓄積させるために、上記構成(i)〜構成(iii)のうちの少なくとも一つを満たすことが好ましい。
【0049】
<構成(i)>
・マトリックスの体積抵抗率;
マトリックスの体積抵抗率を、1.0×1012Ωcmより大きく、1.0×1017Ωcm以下とすることで、電荷が、ドメインを迂回してマトリックス内を移動することを抑制できる。また、ドメインに蓄積された電荷が、マトリックスに漏洩することによって、あたかも導電層内を連通する導電経路が形成されているかの如き状態となることを防止できる。
前記<第一の要件>に関し、高周波数のバイアス印加下でも導電層中を、ドメインを介して電荷を移動させることが肝要である。そのため、電荷が十分に蓄積された導電性の領域(ドメイン)が、電気的に絶縁性の領域(マトリックス)で分断されている構成が有効であると本発明者らは考えている。そして、マトリックスの体積抵抗率を上記したような高抵抗領域の範囲とすることで、各ドメインとの界面において十分な電荷を留めることができ、また、ドメインからの電荷漏洩を抑制できる。
また、前記<第二の要件>を満たす導電層とするためには、電荷の移動経路を、ドメインを介在した経路に限定することが効果的であることを見出した。ドメインからのマトリックスへの電荷の漏洩を抑制し、電荷の輸送経路を複数のドメインを介した経路に限定することにより、ドメインに存在する電荷の密度を向上させることができるため、各ドメインにおける電荷の充填量をより増大させることができる。
これにより、通電の起点である導電相としてのドメインの表面において、通電に関与できる電荷の総数を向上させることができ、結果、導電性部材の表面からの電荷の出やすさを向上させることができると考えられる。
【0050】
<マトリックスの体積抵抗率の測定方法>
マトリックスの体積抵抗率は、例えば、導電層から、マトリクスドメイン構造が含まれている所定の厚さ(例えば、1μm)の薄片を切り出し、当該薄片中のマトリクスに走査型プローブ顕微鏡(SPM)や原子間力顕微鏡(AFM)の微小探針を接触させることによって計測することができる。
弾性層からの薄片の切り出しは、例えば、図7(a)に示したように、導電性部材の長手方向をX軸、導電層の厚み方向をZ軸、周方向をY軸とした場合において、薄片が、XZ平面と平湖な断面82aの少なくとも一部を含むように切り出す。または、図7(b)に示すように、薄片が、導電性部材の軸方向に対して垂直なYZ平面(例えば、83a、83b、83c)の少なくとも一部を含むように切り出す。例えば、鋭利なカミソリや、ミクロトーム、収束イオンビーム法(FIB)などが挙げられる。
体積抵抗率の測定は、導電層から切り出した薄片の片面を接地する。次いで、当該薄片の接地面とは反対側の面のマトリクスの部分に走査型プローブ顕微鏡(SPM)や原子間力顕微鏡(AFM)の微小の美装探針を接触させ、50VのDC電圧を5秒間印加し、接地電流値を5秒間測定した値から算術平均値を算出し、その算出した値で印加電圧を除することで電気抵抗値を算出する。最後に薄片の膜厚を用いて、抵抗値を体積抵抗率に変換する。このとき、SPMやAFMは、抵抗値と同時に当該薄片の膜厚も計測できる。
円柱状の帯電部材におけるマトリックスの体積抵抗率の値は、例えば、導電層を周方向に4分割、長手方向に5分割した領域のそれぞれから各1つずつ薄片サンプルを切り出し、上記の測定値を得た後に、合計20サンプルの体積抵抗率の算術平均値を算出することによって求める。
【0051】
<構成(ii)>
・ドメインの体積抵抗率;
ドメインの体積抵抗率は1.0×10Ωcm以上1.0×10Ωcm以下にすることが好ましい。ドメインの体積抵抗率をより低い状態にすることで、マトリックスで目的としない電荷の移動を抑制しつつ、電荷の輸送経路を、より効果的に複数のドメインを介する経路に限定することができる。
更に、ドメインの体積抵抗率は、1.0×10Ωcm以下であることがより好ましい。ドメインの体積抵抗率を当該範囲まで下げることで、ドメイン内で移動する電荷の量を飛躍的に向上できる。それにより、低周波数域における導電層のインピーダンスを、1.0×10Ω以下の更に低い範囲に制御でき、更に効果的に電荷の輸送経路をドメイン経由に限定することができる。
ドメインの体積抵抗率は、ドメインのゴム成分に対し、電子導電剤を使用することによって、その導電性を所定の値にすることで調整する。
ドメイン用のゴム材料としては、マトリックス用としてのゴム成分を含むゴム組成物を用いることができる。しかし、マトリックス−ドメイン構造を形成するためにマトリックスを形成するゴム材料との溶解度パラメータ(SP値)の差を以下の範囲とすることが好ましい。すなわち、SP値の差を、0.4(J/cm0.5以上、5.0(J/cm0.5以下、特には、0.4(J/cm0.5以上2.2(J/cm0.5以下にすることがより好ましい。
ドメインの体積抵抗率は、電子導電剤の種類、及びその添加量を適宜選択することによって調整することができる。ドメインの体積抵抗率を1.0×10Ωcm以上1.0×10Ωcm以下に制御するために使用する電子導電剤としては、分散する量によって高抵抗から低抵抗まで体積抵抗率を大きく変化させることができる電子導電剤が好ましい。ドメインに配合される電子導電剤については、カーボンブラック、グラファイト等の炭素材料;酸化チタン、酸化錫等の導電性酸化物;Cu、Ag等の金属;導電性酸化物または金属が表面に被覆され導電化された粒子等を例として挙げられる。また、必要に応じて、これらの電子導電剤の2種類以上を適宜量配合して使用してもよい。
以上の様な電子導電剤のうち、ゴムとの親和性が大きく、電子導電剤間の距離の制御が容易な、導電性のカーボンブラックを使用することが好ましい。ドメインに配合されるカーボンブラックの種類については、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。
中でも、高い導電性をドメインに付与し得る、DBP吸油量が40cm/100g以上170cm/100g以下である導電性カーボンブラックを好適に用いることができる。
【0052】
導電性のカーボンブラック等の電子導電剤は、ドメインに含まれるゴム成分の100質量部に対して、20質量部以上150質量部以下でドメインに配合されることが好ましい。特に好ましい配合割合は、50質量部以上100質量部以下である。これらの割合での電子導電剤の配合は、一般的な電子写真用の導電性部材と比較して、電子導電剤が多量に配合されていることが好ましい。これにより、ドメインの体積抵抗率を1.0×10Ωcm以上1.0×10Ωcm以下の範囲に容易に制御することができる。ドメインに用いる導電剤としてイオン導電剤を電子導電剤と併用してもよい。
イオン導電剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩などを使うことができる。イオン導電剤のアニオンとしては、過塩素酸アニオン、フルオロアルキルスルホニルイミドアニオン、フルオロスルホニルイミドアニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン、テトラフルオロボレートアニオンなどが挙げられる。これらの少なくとも1種を用いることができる。
また、必要に応じて、ゴムの配合剤として一般に用いられている添加剤を本開示に係る効果を阻害しない範囲でドメイン用のゴム組成物に添加してもよい。該添加剤としては、例えば、充填剤、加工助剤、架橋剤、架橋助剤、架橋促進剤、老化防止剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、軟化剤、分散剤、着色剤等を挙げることができる
【0053】
・ドメインの体積抵抗率の測定方法;
ドメインの体積抵抗率の測定は、前記<マトリックスの体積抵抗率の測定方法>に対して、測定箇所をドメインに相当する場所に変更し、電流値の測定の際の印加電圧を1Vに変更した以外は同様の方法で実施すればよい。
ここで、ドメインの体積抵抗率は、均一であることが好ましい。ドメインの体積抵抗率の均一性を向上させるためには、各ドメイン内の電子導電剤の量を均一化することが好ましい。これにより、導電性部材の外表面からの、トナーへの電荷供給をより安定化させることができる。
【0054】
<構成(iii)>
・隣接ドメイン間の距離(以降、「ドメイン間距離」ともいう)
ドメイン間距離の算術平均値Dmは、0.2μm以上、2.0μm以下であることが好ましい。
構成(i)に係る体積抵抗率を有するマトリックス中に、構成(ii)に係る体積抵抗率のドメインが分散されている導電層が、前記<第二の要件>を満たすようにするために、Dmを2.0μm以下、特には、1.0μm以下とすることが好ましい。一方、ドメイン同士を絶縁領域で確実に分断することで、十分な電荷をドメインに蓄積させるためには、Dmを、0.2μm以上、特には、0.3μm以上とすることが好ましい。
【0055】
・ドメイン間距離の測定方法;
ドメイン間距離は、以下のようにして測定することができる。
まず、前述のマトリックスの体積抵抗率の測定における方法と同様の方法で切片を作製する。該切片は、マトリックスドメイン構造の観察を好適に実施するために、染色処理、蒸着処理など、導電相と絶縁相とのコントラストが好適に得られる前処理を施してもよい。次いで、該切片を、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察して、マトリックス−ドメイン構造の存在を確認する。これらの中でも、ドメインの面積の定量化の正確性から、SEMで1000倍〜100000倍で観察を行うことが好ましい。
ドメイン間距離は、切片の、マトリックス−ドメイン構造が現れている面のSEM画像を定量化することによって測定することができる。SE画像を、画像処理ソフト(例えば、「Luzex」(商品名、ニレコ社製))を使用して、8ビットのグレースケール化を行い、256諧調のモノクロ画像を得る。次いで、該モノクロ画像内のドメインが白くなるように、画像の白黒を反転処理し、2値化像を得る。次いで、2値化像内のドメインサイズ群の壁面間距離を算出する。このときの壁面間距離は、近接したドメイン間の最短距離である。
円柱形状の導電性部材の場合では、導電層の長手方向の長さをL、導電層の厚さをTとしたとき、導電層の長手方向の中央、及び導電層の両端から中央に向かってL/4の3か所における、図7(b)に示されるような導電層の厚さ方向の断面を取得する。得られた断面の各々について、導電層の外表面から支持体方向への深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所に50μm四方の観察領域を置き、この全9個の観察領域の各々で観察される各ドメイン間距離を測定すればよい。切片は、電荷の移動方向である支持体から導電層外表面を含む面を観察することが必要であることから、支持体の中心軸を起点とする法線を含む断面を観察することができる方向で切り出す。
【0056】
・ドメイン間距離の均一性;
上記構成(iii)に関して、ドメイン間距離の分布は均一であることが、より好ましい。ドメイン間の距離の分布が均一であることで、導電層内で局所的にドメイン間距離が長い箇所が一部できることによって電荷の供給が周囲比べて滞る箇所が生じた場合などに、電荷の出やすさが抑制される現象を低減できる。
電荷が輸送される断面、すなわち、図7(b)に示されるような導電層の厚さ方向の断面において、観察領域内のドメイン間距離の算術平均値Dm及びドメイン間距離のばらつきσmを用いてσm/Dmが0以上0.4以下であることが好ましい。観察領域としては、導電層の外表面から支持体方向への深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所における、50μm四方の観察領域を取得する。
【0057】
<ドメイン間距離の制御方法>
ドメイン間距離の制御法について以下に説明する。
非相溶のポリマー2種を溶融混練させた場合のドメイン間距離(1/τ)について、Taylorの式(式(4))及びWuの経験式(式(5)〜(6))を基にしたTokitaの理論式(7)が提案されている。
・Taylorの式
D=[C・σ/ηm・γ]・f(ηm/ηd) (4)
・Wuの経験式
γ・D・ηm/σ=4(ηd/ηm)0.84・ηd/ηm>1 (5)
γ・D・ηm/σ=4(ηd/ηm)−0.84・ηd/ηm<1 (6)
【0058】
【数3】
【0059】
式(4)〜(7)における各パラメータは以下のとおりである。
式(4)〜(7)において、DはCMBのドメイン径(最大フェレ径Df)、Cは定数、σは界面張力、ηmはマトリックスの粘度、ηdはドメインの粘度を表す。また、式(7)において、γはせん断速度、ηは混合系の粘度、Pは衝突合体確率、φはドメイン相体積、EDKはドメイン相切断エネルギーを表す。
上記式に示す通りに、ドメイン間距離は、主に、
(A)ドメイン相の体積比、
(B)ドメインとマトリックスの粘度比、
(C)せん断速度、
(D)ドメイン相切断エネルギーの大きさ
で制御することが可能である。
【0060】
具体的に、ドメイン間距離を短縮するには以下の手法で制御が可能である。
・ドメインとマトリックス間の界面張力を小さくする。
・ドメインとマトリックス間の粘度差を低減する。
・混練時のせん断速度を上げる/せん断時のエネルギーを上げる。
・ドメイン相の体積比を上げる。
・衝突合体確率を下げる。
【0061】
上述の通りに、ドメイン間距離の制御は、ドメインサイズの制御と同時に進行するが、ドメイン相の体積比や衝突合体確率、即ち、混練時間やせん断速度の制御によって、独立にドメイン間距離の制御が可能である。
高速プロセス下でも導電パスにおける電荷の移動をより効率的に行うためには、電気抵抗値の揃った導電性のドメインを三次元的に均等かつ密に導電層マトリックス中に配置させることがより好ましい。このような配置によって、極めて均一でムラのない導電パスを有する構成とすることが可能となる。
具体的には、該導電層の厚み方向の断面に現れるドメインの各々の断面積に対する該ドメインの各々が含む電子導電剤の粒子からなる部分の断面積の割合の平均値をμとし、該割合の標準偏差をσとしたとき、σ/μが、0以上、0.4以下であることが好ましい。また、μが20%以上、40%以下であることが好ましい。これらのσ及びμの条件に加えて、導電層の任意の9箇所からサンプリングされる、合計9個の一辺が9μmの立方体形状のサンプル立方体のうち、少なくとも8個のサンプル立方体は、下記要件(B1)を満たすことが特に好ましい。
【0062】
要件(B1):
「1個のサンプル立方体を、27個の、一辺が3μmの単位立方体に区分し、該単位立方体の各々に含まれる前記ドメインの体積Vdを求めたとき、Vdが2.7μm〜10.8μmである単位立方体の数が少なくとも20個であること。」
【0063】
本発明者らは、電子写真用の導電性部材において、高速プロセス下でも導電パスにおける電荷の移動をより効率的に行うことが可能となる要因として、以下のメカニズムを推定している。該導電パスは、電気抵抗の揃った導電性のドメインが三次元的に均等かつ密に導電層中に配置された、極めて均一でムラのない導電パスと仮定する。
バイアスを付加する方式の現像部材においては、電荷密度の異なるトナーに対して、ブレードニップ内で現像・除電を行い均一な電荷密度に現像させる事が望ましく、そのため現像ブレードの表面電位をトナーサイズで均一に保ち続ける必要がある。よって導電パスが導電性支持体から現像部材表面に亘って厚み方向ならびに面内方向に均質にかつ、高密度に形成されていることが好ましい。
上記μとσの関係が、σ/μが、0以上、0.4以下であると、各ドメイン中に含まれる導電剤からなる部分(例えば導電性粒子)の数・量にバラつきがなくなる。その結果、電気抵抗の揃ったドメインとなる。特に、上記μとσの関係が、『σ/μが、0以上、0.25以下』の場合にはさらに電気抵抗の揃ったドメインとなるため、より本開示に係る効果が高まる傾向があるため特に好ましい。
σ/μを低い値にするためには、各ドメイン中に含まれる導電性粒子からなる部分数・量を増加させることが好ましく、またドメインのサイズを揃えることも好ましい。
なお、ここでμは、20%以上、40%以下が好ましい。後述するように、μが20%未満である場合には、導電性粒子の量が必然的に少なく、ドメイン内での導電性粒子の電気的な繋がりがパーコレーション的に不安定になる場合などがある。一方、μが40%よりも多い場合には、ドメイン内の導電性粒子の量が多くなるため導電性粒子をドメイン内に閉じ込めにくくなる場合などがある。また、後述するとおり、ドメイン内の導電性粒子の充填量が増すと、本開示に係る効果が高まることを見出しており、より好ましくは、μは、23%以上、さらに好ましくは28%以上である。
【0064】
加えて、上記の一辺が3μmの単位立方体中にドメインが10〜40体積%含まれ、かつサンプル立方体が導電層全体に均質に存在するため、導電性のドメインが三次元的に均等かつ密に導電層中に配置された構成となる。なお、後述するように、ドメインの総体積を増加させた場合にも、導電層全体に均質に存在する割合が高まる傾向がある。また、ドメインの総体積が同じでも、ドメインサイズを小さくし、個数を増加させることで、ドメインが該導電層全体に均質に存在する割合が飛躍的に高まる傾向がある。
つまり、上記要件(B1)を満たす一辺が3μmの単位立方体の個数が増加すると、必然的に本開示に係る効果が高まる。従って、27個の単位立方体のうちの、Vdが2.7〜10.8μmである単位立方体の数が20個以上であることが好ましく、22個以上であることがより好ましく、25個以上であることがさらに好ましい。
なお、導電支持体から導電層の表面まで導電パスが繋がって形成されるためには3次元的にドメインを配置する必要がある。言い換えると、ある二次元断面でのドメイン配置の制御だけでは、導電支持体から導電層の表面までの導電パスの繋がりを正確に構築することができない。ここで「導電パスが繋がっている」とは、所望の印加電圧に伴い、該導電パスを形成しているドメイン間を電荷が効率よく移動(ホッピング伝導やトンネル伝導やバンド伝導性など)できる状態を指す。用いる印加電圧や導電層の厚み、さらにはドメインやマトリックスの電気抵抗によるが、3次元的な評価において、ドメインの隣接壁面間距離が2.0μm以下であることが特に好ましい。
【0065】
本態様に係る導電性部材は、例えば、下記工程(i)〜(iv)を含む方法を経て形成することができる。
工程(i):カーボンブラック及び第二のゴムを含む、ドメイン形成用ゴム組成物(以降、「CMB」とも称する)を調製する工程;
工程(ii):第一のゴムを含むマトリックス形成用ゴム組成物(以降、「MRC」とも称する)を調製する工程;
工程(iii):CMBとMRCとを混練して、マトリックス−ドメイン構造を有するゴム組成物を調製する工程。
工程(iv):工程(iii)で調製したゴム組成物の層を、導電性支持体上に直接または他の層を介して形成し、該ゴム組成物の層を硬化(架橋)させて、本態様に係る導電層を形成する工程。
【0066】
そして、構成(i)〜構成(iii)は、例えば、上記各工程に用いる材料の選択、製造条件の調整により制御することができる。以下説明する。
まず、構成(i)に関して、マトリックスの体積抵抗率は、MRCの組成によって定まる。MRCに用いる第一のゴムとしては、導電性の低い、天然ゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴムの如きゴムの少なくとも1種を用い得る。また、MRCには、マトリックスの体積抵抗率を上記範囲内にすることができることを前提として、必要に応じて、充填剤、加工助剤、架橋剤、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、老化防止剤、軟化剤、分散剤、着色剤を添加してもよい。一方、MRCには、マトリックスの体積抵抗率を上記範囲内とするために、カーボンブラックの如き電子導電剤は含有させないことが好ましい。
【0067】
また、構成(ii)は、CMB中の電子導電剤の量によって調整し得る。例えば、電子導電剤として、DBP吸油量が、40cm/100g以上、170cm/100g以下である導電性カーボンブラックを用いる場合を例に挙げる。すなわち、CMBの全質量を基準として、40質量%以上、200質量%以下の導電性カーボンブラックを含むようにCMBを調製することで構成(ii)を達成し得る。
【0068】
さらに、構成(iii)に関しては、下記(a)〜(d)の4つを制御することが有効である。
(a)CMB、及びMRCの各々の界面張力σの差
(b)CMBの粘度(ηd)、及びMRCの粘度(ηm)の比(ηm/ηd)
(c)工程(iii)における、CMBとMRCとの混練時のせん断速度(γ)、及びせん断時のエネルギー量(EDK)
(d)工程(iii)における、CMBのMRCに対する体積分率
【0069】
(a)CMBとMRCとの界面張力差
一般的に二種の非相溶のゴムを混合した場合、相分離する。これは、異種高分子間の相互作用よりも、同一高分子間の相互作用が強いため、同一高分子同士で凝集し、自由エネルギーを低下させ安定化しようとするためである。相分離構造の界面は異種高分子と接触するため、同一分子同士の相互作用で安定化されている内部より、自由エネルギーが高くなる。
その結果、界面の自由エネルギーを低減させるために、異種高分子と接触する面積を小さくしようとする界面張力が発生する。この界面張力が小さい場合、エントロピーを増大させるために異種高分子でもより均一に混合しようとする方向に向かう。均一に混合した状態とは溶解であり、溶解度の目安となるSP値(溶解度パラメータ)と界面張力は相関する傾向にある。
つまり、CMBとMRCとの界面張力差は、CMB及びMRCの界面張力は、各々が含むゴムのSP値差と相関すると考えられる。MRC中の第1のゴムと、CMB中の第2のゴムとしては、溶解度パラメータの絶対値の差が次のような範囲となるゴムを選択することが好ましい。好ましくは、0.4(J/cm0.5以上、5.0(J/cm0.5以下、特には、0.4(J/cm0.5以上2.2(J/cm0.5以下。この範囲であれば安定した相分離構造を形成でき、また、CMBのドメイン径Dを小さくすることができる。
ここで、CMBに用い得る第二のゴムの具体例としては、例えば、以下の如きゴム材料が挙げられる。天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、クルルプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、シリコーンゴム、及びウレタンゴム(U)。これらの少なくとも1種を用いることができる。
導電層の厚みは、目的とする導電性部材の機能及び効果が得られるものであれば特に限定されない。導電層の厚みは、少なくとも100μm(0.1mm)以上とすることが好ましく、特には、0.3mm以上、更には、1.0mm以上とすることが好ましい。また、4.5mm以下とすることが好ましい。
【0070】
<SP値の測定方法>
SP値は、SP値が既知の材料を用いて、検量線を作成することで、精度良く算出することが可能である。この既知のSP値は、材料メーカーのカタログ値を用いることもできる。例えば、NBR及びSBRは、分子量に依存せず、アクリロニトリル又はスチレンの含有比率でSP値がほぼ決定される。従って、マトリックス及びドメインを構成するゴムを、熱分解ガスクロマトグラフィー(Py−GC)及び固体NMR等の分析手法を用いて、アクリロニトリル又はスチレンの含有比率を解析する。そして、SP値が既知の材料から得た検量線から、含有比率に基づいてSP値を算出することができる。また、イソプレンゴムは、1,2−ポリイソプレン、1,3−ポリイソプレン、3,4−ポリイソプレン、及びcis−1,4−ポリイソプレン、trans−1,4−ポリイソプレンなどの、異性体構造でSP値が決定される。従って、SBR及びNBRと同様にPy−GC及び固体NMR等で異性体含有比率を解析し、SP値が既知の材料から、SP値を算出することができる。
【0071】
(b)CMBとMRCとの粘度比
CMBとMRCとの粘度比(ηd/ηm)は、1に近い程、ドメインの最大フェレ径を小さくできる。具体的には、粘度比は1.0以上2.0以下であることが好ましい。CMBとMRCの粘度比は、CMB及びMRCに使用する原料ゴムのムーニー粘度の選択や、充填剤の種類や量の配合によって調整が可能である。また、相分離構造の形成を妨げない程度に、パラフィンオイルなどの可塑剤を添加することでも可能である。また混練時の温度を調整することで、粘度比の調整を行うことができる。なおCMBとMRCの粘度は、JIS K6300−1:2013に基づきムーニー粘度ML(1+4)を混練時のゴム温度で測定することで得られる。
【0072】
(c)MRCとCMBとの混練時のせん断速度、及びせん断時のエネルギー量
MRCとCMBとの混練時のせん断速度は速いほど、また、せん断時のエネルギー量は大きいほど、ドメイン間距離を小さくすることができる。
せん断速度は、混練機のブレードやスクリュウといった撹拌部材の内径を大きくし、撹拌部材の端面から混練機内壁までの間隙を小さくすることや、回転数を大きくすることで上げることができる。またせん断時のエネルギーを上げるには、撹拌部材の回転数を上げることや、CMB中の第一のゴムとMRC中の第二のゴムの粘度を上げることで達成できる。
【0073】
(d)MRCに対するCMBの体積分率
MRCに対するCMBの体積分率は、MRCに対するCMBの衝突合体確率と相関する。具体的には、MRCに対するCMBの体積分率を低減させると、CMBとMRCの衝突合体確率が低下する。つまり必要な導電性を得られる範囲において、マトリックス中におけるドメインの体積分率を減らすことでドメイン間距離を小さくできる。そして、CMBのMRCに対する体積分率は、15%以上、40%以下とすることが好ましい。
【0074】
<ドメインの形状>
ドメインの形状は、円形に近いほうが好ましい。ドメインの面積と、ドメインの最大フェレ径相当の円の面積との比が0.6以上1以下であることが好ましい。この比は1が最大値であり、1である状態は、ドメインが真円であることを示す。これら比が0.6より小さいと、ドメインの形状が異方性を有することとなり、すなわち、電界の異方性が発現する。これにより、電界集中点が形成されるため、電荷の輸送の集中が生じるため、持続性の大きい通電が起きやすい。これらの比が1に近づくほど、当該電界集中が抑制されるため、カブリ画像が発生しにくくなる。
なお、最大フェレ径とは、観察されたドメインの外周を2本の平行線で挟み、その2本の平行線間を垂線で結んだときの長さが最も長くなる時の値である。また、最大フェレ径相当の円とは、この最大フェレ径を直径とする円である。
【0075】
<ドメイン面積S1、最大フェレ径相当円の面積S2の測定方法>
ドメインの形状は、上記のドメインのサイズやドメイン間距離を測定する手法と同様の手法で、断面の作成及び観察を行って得られる画像を使って定量化することが可能である。具体的には、上記ドメインサイズの測定方法と同様の方法で、断面内の2値化を行った後に、画像処理ソフトを用いて、画像内のドメインのそれぞれに対し、ドメイン面積と最大フェレ径を算出する。次いで、実ドメイン面積S1と、最大フェレ径から得られる、最大フェレ径相当円の面積S2との比を求めればよい。
S1及びS2の測定では、現像部材を均等に、好ましくは20区画に均等に分割した領域のそれぞれから各1つずつ薄片サンプルを切り出し、上記の測定値を得た後に、合計20サンプルのS1、S2の算術平均値をS1、S2の測定値とすればよい。
円柱状の現像部材の場合では、円柱状の周方向に4分割、長手方向に5分割した領域のそれぞれから各1つずつ薄片サンプルを切り出し、上記の測定値を得た後に、合計20サンプルのS1,S2の算術平均値を、S1、S2の測定値とすればよい。
【0076】
また電子導電剤の凝集による抵抗変動と電界集中を抑制し、本開示に係る効果をより効率的に奏するために、導電層は、次の要件を満たすことが好ましい。つまり、導電層の長手方向の長さをLとしたとき、導電層の長手方向の中央、及び導電層の両端から中央に向かってL/4の3か所における、導電層の厚さ方向の断面に着目する。導電層の厚さをTとしたとき、この断面の各々について、導電層の外表面から深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所に15μm四方の観察領域を置く。そして、全9個の該観察領域の各々で観察されるドメインのうちの80個数%以上が、下記要件(B2)及び要件(B3)を満たすことが好ましい。
【0077】
要件(B2)
ドメインの断面積に対する該ドメインが含む該導電性粒子の断面積の割合が、20%以上であること
要件(B3)
ドメインの周囲長をA、該ドメインの包絡周囲長をBとしたとき、A/Bが、1.00以上、1.10以下であること。
【0078】
上記要件(B2)及び要件(B3)は、ドメインの形状に係る規定ということができる。「ドメインの形状」とは、導電層の厚さ方向の断面に現れたドメインの断面形状として定義される。円柱形状の導電性部材の場合では、導電層の長手方向の長さをL、導電層の厚さをTとしたとき、導電層の長手方向の中央、及び導電層の両端から中央に向かってL/4の3か所における、図7(b)に示されるような導電層の厚さ方向の断面を取得する。得られた断面の各々について、導電層の外表面から支持体方向への深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所に15μm四方の観察領域を置く。ドメイン形状は、この全9個の観察領域の各々で観察される各ドメインの形状で定義される。
ドメインの形状はその周面に凹凸がない形状であることが好ましい。形状に関する凹凸構造の数を低減することによって、ドメイン間の電界の不均一性を低減でき、つまり、電界集中が生じる箇所を少なくして、マトリックスで必要以上の電荷輸送が起きる現象を低減できる。
本発明者らは、1個のドメインに含まれる電子導電剤(導電性粒子)の量が、当該ドメインの外形形状に影響を与えているとの知見を得た。すなわち、1個のドメインの導電性粒子の充填量が増えるにつれて、該ドメインの形状がより球体に近くなるとの知見を得た。球体に近いドメインの数が多いほど、ドメイン間での電子の授受の集中点を少なくすることができる。そして、本発明者らの検討によれば、その理由は明らかでないが、1つのドメインの断面の面積を基準として、当該断面において観察される導電性粒子の断面積の総和の割合が20%以上であるドメインは、より、球体に近い形状を取り得る。その結果、ドメイン間での電子の授受の集中を有意に緩和し得る外形形状を取り得るため好ましい。具体的には、ドメインの断面積に対する該ドメインが含む該導電性粒子の断面積の割合が、20%以上であることが好ましい。
【0079】
ドメインの周面の凹凸がない形状に関しては、下記式(8)を満たすことが好ましいことを本発明者らは見出した。
1.00≦A/B≦1.10 (8)
(A:ドメインの周囲長、B:ドメインの包絡周囲長)
【0080】
式(8)は、ドメインの周囲長Aと、ドメインの包絡周囲長Bとの比を示している。ここで、包絡周囲長とは、図6に示されるように、観察領域で観察されるドメイン71の凸包絡73の長さである。なお、凸包絡とは、ドメイン71内のすべての点を含む最小の凸集合である。
ドメインの周囲長と、ドメインの包絡周囲長との比は1が最小値であり、1である状態は、ドメインが真円或いは楕円等の断面形状に凹部がない形状であることを示す。これらの比が1.1を超えると、ドメインに大きな凸凹形状が存在することとなり、すなわち、電界の異方性が発現する。
【0081】
要件(B2)で規定したように、ドメイン中に導電性粒子を高密度に充填することで、ドメインの外形形状を球体に近づけることができると共に、前記要件(B3)に規定したように凹凸が小さいものとすることができる。
要件(B2)で規定したような、導電性粒子が高密度に充填されたドメインを得るために、導電性粒子として、DBP吸油量が40cm/100g以上80cm/100g以下であるカーボンブラックを特に好適に用い得る。DBP吸油量(cm/100g)とは、100gのカーボンブラックが吸着し得るジブチルフタレート(DBP)の体積であり、日本産業規格(JIS) K 6217−4:2017(ゴム用カーボンブラック−基本特性−第4部:オイル吸収量の求め方(圧縮試料を含む))に従って測定される。一般に、カーボンブラックは、平均粒径10nm以上50nm以下の一次粒子がアグリゲートした房状の高次構造を有している。この房状の高次構造はストラクチャーと呼ばれ、その程度はDBP吸油量(cm/100g)で定量化される。
【0082】
一般的に、ストラクチャーが発達したカーボンブラックは、ゴムに対し補強性が高く、ゴムへのカーボンブラックの取り込みが悪くなり、また、混練時のシェアトルクが非常に高くなる。そのため、ドメイン中に充填量を多くすることが困難である。
一方、DBP吸収量が上記範囲内にある導電性カーボンブラックは、ストラクチャー構造が未発達のため、カーボンブラックの凝集が少なく、ゴムへの分散性が良好である。そのため、ドメイン中への充填量を多くでき、その結果として、ドメインの外形形状を、より球体に近いものを得られやすい。
さらに、ストラクチャーが発達したカーボンブラックは、カーボンブラック同士が凝集し易く、また、凝集体は、大きな凸凹構造を有する塊となりやすい。このような凝集体がドメインに含まれると、要件(B3)に係るドメインが得られにくい。形状にまで影響を与え凹凸構造を形成する場合がある。一方、DBP吸油量が、上記した範囲内にある導電性カーボンブラックは、凝集体を形成し難いため、要件(B3)に係るドメインを作成するうえで有効である。
【0083】
<ドメインの形状に関する各パラメータの測定方法>
まず、前述のマトリックスの体積抵抗率の測定における方法と同様の方法で切片を作製する。ただし、下記のように、導電性部材の長手方向に対して垂直な断面によって、切片を作成し、当該切片の、導電層の厚み方向の断面に相当する面におけるドメインの形状を評価する。この理由を下記に述べる。
図7では、導電性部材81を、3軸、具体的にはX、Y、Z軸の3次元としてその形状を示した図を示す。図7においてX軸は導電性部材の長手方向(軸方向)と平行な方向、Y軸、Z軸は導電性部材の軸方向と垂直な方向を示す。
図7(a)は、導電性部材に対して、XZ平面82と平行な断面82aで導電性部材を切り出すイメージ図を示す。XZ平面は導電性部材の軸を中心として、360°回転することができる。導電性部材が、その該表面においてトナーと接触した状態で回転し、トナーに電荷供給することを考慮すると、当該XZ平面82と平行な断面82aは、あるタイミングに同時に電荷供給が起きる面を示していることになる。一定量の断面82aに相当する面が通過することによって、トナーへの電荷供給が行われる。
したがって、導電性部材内の電界集中と相関する、ドメインの形状の評価のためには、断面82aのようなある一瞬において同時に電荷供給が発生する断面の解析ではなく、一定量の断面82aを含むドメイン形状の評価ができる導電性部材の軸方向と垂直な図7(b)に示すYZ平面83と平行な断面での評価が必要である。この評価に、該導電層の長手方向の長さをLとしたとき、導電層の長手方向の中央での断面83bと、及び該導電層の両端から中央に向かってL/4の2か所の断面(83a及び83c)の計3か所を選択する。
また、当該断面83a〜83cの観察位置に関しては、導電層の厚さをTとしたとき、各切片のそれぞれ外表面から深さ0.1T以上0.9T以下までの厚み領域の任意の3か所に15μm四方の観察領域を置き、合計9か所の観察領域で測定を行う。
断面の形成は、凍結割断法、クロスポリッシャー法、収束イオンビーム法(FIB)等の手段で断面を形成することができる。断面の平滑性と、観察のための前処理を考慮すると、FIB法が好ましい。また、マトリックスドメイン構造の観察を好適に実施するために、染色処理、蒸着処理など、導電相と絶縁相とのコントラストが好適に得られる前処理を施してもよい。
得られた切片を、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することによって導電層中のマトリックスドメイン構造を観察することができる。具体的には、例えば、ドメインの面積の定量化の正確性から、倍率1000倍〜100000倍でSEM画像を得ることが好ましい。
ドメインに関するパラメータは、SEM画像を定量化することによって測定することができる。すなわち、SEM画像を「ImageProPlus」(商品名、Media Cybernetics社製)の如き画像処理ソフトウェアを使用して、8ビットのグレースケール化を行って256階調のモノクロ画像を得る。次いで、当該モノクロ画像内のドメインが白くなるように画像の白黒を反転させ、画像の輝度分布に対して大津の判別分析法のアルゴリズムに基づいて2値化の閾値を設定し、2値化像を得る。次いで、該2値化像における、導電層の厚さをTとしたとき、導電層の外表面から深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域に相当する領域の任意の3箇所に15μm四方の観察領域を置く。そして、上記画像処理ソフトウェアのカウント機能を用いて各観察領域内のドメインに係るパラメータを測定する。
【0084】
<ドメイン内の電子導電剤の断面積割合μの測定方法>
ドメイン内の電子導電剤の断面積割合は、上記観察領域内のドメインの各々について、上記画像処理ソフトのカウント機能を用いてドメインの断面積S及び、それぞれのドメイン内の導電剤からなる部分の断面積の総和Scを算出する。そして、Sc/Sの算術平均値μ(%)を算出する。
【0085】
<ドメインの周囲長A、包絡周囲長Bの測定方法>
ドメインの周囲長、及び包絡周囲長は、上記観察領域内のドメインの各々について、上記画像処理ソフトのカウント機能を用いて、周囲長A、ドメインの包絡周囲長B、を算出し、ドメインの周囲長比A/Bの算術平均値を算出する。
【0086】
<ドメインサイズ>
本態様に係るドメインは、先に挙げた構成(iv)及び構成(v)を満たしているドメインの各々に含まれるドメインの最大フェレ径(以降、単に「ドメイン径」ともいう)Lの平均を0.1μm以上、5.0μm以下とすることが好ましい。
ドメイン径Lの平均値を、0.1μm以上とすることで、導電層において、電荷の移動する経路を目的とする経路により効果的に限定することができる。また、ドメイン径Lの平均値を5.0μm以下にすることで、ドメインの全体積に対する表面積の割合、すなわち、比表面積を指数関数的に大きくすることができ、ドメインからの電荷の放出効率を飛躍的に向上させ得る。ドメイン径Lの平均値は、上記の理由から、2.0μm以下、更には、1.0μm以下とすることが好ましい。
なお、ドメイン間での電界集中のより一層の軽減を図る上では、ドメインの外形形状をより球体に近づけることが好ましい。そのためには、ドメイン径を、前記した範囲内でより小さくすることが好ましい。その方法としては、例えば、MRCとCMBとを混練して、MRCとCMBとを相分離させて、MRCのマトリックス中にCMBのドメインを形成されたゴム混合物を調製する工程において、CMBのドメイン径を小さくするように制御する方法が挙げられる。CMBのドメイン径を小さくすることでCMBの比表面積が増大し、マトリックスとの界面が増加するため、CMBのドメインの界面には張力を小さくしようとする張力が作用する。その結果、CMBのドメインは、その外形形状が、より球体に近づく。
【0087】
前記構成(iii)に関連して、ドメイン間距離の均一化を図るためには、前記式(4)〜(7)に従って、ドメインサンズを小さくすることが有効である。さらに、マトリックスドメイン構造が混練工程において、ドメインの原料ゴムが分裂し、徐々にその粒系が小さくなっていく過程において、混練工程をどこで止めたかによっても支配される。したがって、そのドメイン間距離の均一性は、混練過程における混練時間及びその混練の強度の指数となる混練回転数によって制御可能であり、混練時間が長いほど、混練回転数が大きいほどドメイン間距離の均一性を向上させることができる。
【0088】
・ドメインサイズの均一性;
ドメインサイズは均一であるほど、つまり、粒度分布が狭い方が好ましい。導電層内の電荷が通るドメインのサイズの分布を均一とすることで、マトリックスドメイン構造内での電荷の集中を抑制し、導電性部材の全面にわたって電荷の出やすさを効果的に増大することができる。ドメインサイズの均一性としては、ドメインサイズの標準偏差σd及びドメインサイズの平均値Dの比σd/Dが0以上0.4以下であることが好ましい。当該ドメインサイズは、電荷が輸送される断面、すなわち、導電層の厚さ方向の断面において、導電層の外表面から支持体方向への深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所における、50μm四方の観察領域から取得する。
【0089】
ドメインサイズの均一性を向上させるためには、前述のドメイン間距離の均一性を向上させる手法と等しく、式(4)〜(7)に従い、ドメインサイズを小さくすればドメインサイズの均一性も向上する。さらに、マトリックスドメイン構造が混練工程において、ドメインの原料ゴムが分裂し、徐々にその粒系が小さくなっていく過程において、混練工程をどこで止めたかによっても支配される。したがって、そのドメインサイズの均一性は、混練過程における混練時間及びその混練の強度の指数となる混練回転数によって制御可能であり、混練時間が長いほど、混練回転数が大きいほどドメインサイズの均一性を向上させることができる。
【0090】
<マトリックス−ドメイン構造の確認方法>
導電層中のマトリックス−ドメイン構造の存在は、導電層から薄片を作製して、薄片に形成した断面の詳細観察により確認することができる。
薄片化する手段としては、例えば、鋭利なカミソリや、ミクロトーム、FIBなどがあげられる。また、マトリックス−ドメイン構造のより正確な観察を実施するために、染色処理、蒸着処理など、導電相としてのドメインと絶縁相としてのマトリックスとのコントラストが好適に得られる前処理を観察用の薄片に施してもよい。
断面の形成、及び必要に応じて前処理を行った薄片に対して、レーザー顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって断面を観察してマトリックス−ドメイン構造の存在を確認することができる。簡易的、かつ正確にマトリックス−ドメイン構造を確認できる手法として、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することが好ましい。
上記のような手法で導電層の薄片を取得し、当該薄片の表面を1000倍〜10000倍で観察して得られる画像を取得した後、「ImageProPlus」(商品名:Media Cybernetics社製)の如き画像処理ソフトウェアを使用して、8ビットのグレースケール化を行い、256諧調のモノクロ画像を得る。次いで、断面内のドメインが白くなるように、画像の白黒を反転処理し、2値化をして解析画像を取得する。ドメイン及びマトリックスを2値化によって区別する状態に画像処理した当該解析画像からマトリックス−ドメイン構造の有無を判断できる。
具体的には例えば、当該解析画像において、図5に示すように、複数のドメインがマトリックス中に孤立した状態で存在する構造が確認できる場合、導電層中にマトリックス−ドメイン構造が存在すると判断することができる。マトリックス中にドメインが孤立した状態で存在するとは、例えば、各ドメインが他のドメインと連結しておらず、マトリックスは画像内で連通しており、ドメインがマトリックスによって分断されている状態が挙げられる。
上記のような確認を、導電性部材の導電層を長手方向に均等に5等分し、周方向に均等に4等分し、それぞれの領域から任意に1点ずつ、合計20点から当該切片を作製して上記測定を行えばよい。
【0091】
本態様において、現像部材として使用する場合、表面層は、温度23℃、相対湿度50%の環境下における体積抵抗率が1.0×10〜1.0×1015Ωcmであることを特徴とする。表面層はトナーへの摩擦帯電付与する機能を担い、また現像部材の表面を保護し、現像部材表面の摩耗や破壊を抑制する機能を有する。表面層の体積抵抗率は、バインダーとなる樹脂成分に、電子導電剤やイオン導電剤を添加することで調整することができる。バインダー樹脂は、電子導電剤やイオン導電剤、及び充填剤、添加剤の担持体として機能する。
【0092】
バインダー樹脂成分としては公知の樹脂を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、以下のものが挙げられ、これらの1種、あるいは2種以上の組み合を用いることができる。
具体的にはポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはメラミンの如きアミノ樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、アミドイミド樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアルキレンイミン樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0093】
ポリウレタン樹脂は皮膜の強度とトナー帯電性の観点から特に好ましく、中でも熱硬化性ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂は、柔軟性を合わせ持つため好適に用いられる。これらの熱硬化性ポリウレタン樹脂は公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールと、イソシアネート化合物との反応により得られる。
【0094】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。またポリエステルポリオールとしては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールの如きジオール成分、トリメチロールプロパンの如きトリオール成分と、コハク酸、アジピン酸、無水フタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロキシフタル酸等のジカルボン酸との縮合反応により得られるポリエステルポリオール。
また、ポリカーボネートポリオールとしては、以下のものが挙げられる。1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1、9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、の如きジオール成分と、ホスゲン、ジメチルカーボネートの如きジアルキルカーボネート、または、エチレンカーボネートの如き環状カカーボネートとの縮合反応により得られるポリカーボネートポリオール。
【0095】
これらのポリオール成分は必要に応じて、あらかじめ2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、1,4ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の如きイソシアネートにより鎖延長したプレポリマーとしてもよい。これらのポリオール成分と反応させるイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではないが、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の如き脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネートの如き脂環式ポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートの如き芳香族イソシアネート及びこれらの共重合物やイソシアヌレート体、TMPアダクト体、ビウレット体、そのブロック体を用いることができる。
中でもトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族イソシアネートがより好適に用いられる。
ポリオール成分と反応させるイソシアネート化合物の混合比は、水酸基1.0に対してイソシアネート基の比率が1.0から2.0の範囲であることが、未反応成分の残存を抑制できるため好ましい。
【0096】
表面層のバインダー樹脂としてウレタン樹脂を用いる場合、ウレタン基濃度は1.5%以上 6.5%以下であることが好ましい。
ウレタン基濃度が1.5%以上の場合、ウレタン基間の相互作用により表面層の膜強度が高く、耐久性の観点で好ましい。また、ウレタン基濃度が6.5%以下の場合、水分子との親和サイトとなる過剰なウレタン基が少ない。このため、高温高湿環境と低温低湿環境で交互に使用した場合に、表面層の膨張や収縮が生じにくい。その結果、過酷な環境下での使用においても、導電性部材の表面層と導電層の界面での微小なクラックの発生を抑制でき、より一層の耐久性の向上を図ることができる。
【0097】
また、表面層4が、構造式(1)〜(3)の構造を有するウレタン樹脂を含む場合、過酷な環境での使用においても、より一層の耐久性の向上が図られるため特に好ましい。
【0098】
【化1】
構造式(1)〜(3)中、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数4以上8以下の直鎖または分岐を有する2価の炭化水素基を表す。
【0099】
構造式(1)〜(3)の構造は、具体的にはそれぞれ炭素数の多いエーテル構造、エステル構造、カーボネート構造を表す。これらの構造を含む樹脂は、炭素数が多いため、単位重量あたり含有するエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合が少なくなる。そのため、樹脂中の水分子との親和性が低下し、高温高湿環境下においても含水率を低く抑えることができる。
特に構造式(1)〜(3)はポリオールとしてイソシアネート化合物と反応させ、所望のウレタン樹脂を得ることが好ましい。
その結果、高温高湿環境と低温低湿環境で交互に使用した場合も、表面層の膨張や収縮を抑制でき、過酷な環境での使用においても、より一層の高い耐久性が得られる。
【0100】
構造式(1)の構造を有するポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコール、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフランの開環共重合ポリオールが挙げられる。
【0101】
構造式(2)の構造を有するポリオールとしては、例えば、
1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールの如きジオール成分、トリメチロールプロパンの如きトリオール成分と、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸との縮合反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0102】
構造式(3)の構造を有するポリオールとしては、例えば、
1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールの如きジオール成分と、ホスゲン、ジメチルカーボネートの如きジアルキルカーボネートとの縮合反応により得られるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0103】
イソシアネート化合物を用いた熱硬化反応以外では、前記ポリオールの代わりに末端にビニル基、アクロイル基を導入した化合物を、紫外線、電子線で硬化反応させることもできる。紫外線、電子線を用いる硬化系では、イソシアネートを用いた硬化系に比べ、より短時間での硬化反応が可能である。
【0104】
表面層には、導電性を付与するために、電子導電剤が適宜配合される。電子導電剤としては、導電性カーボンブラック;アルミニウム、銅の如き導電性金属;酸化錫、酸化チタンの如き導電性金属酸化物の微粒子を用いることができる。これらの中でも、比較的容易に入手でき、良好な導電性が得られる点から、カーボンブラックが好ましい。電子導電剤としてカーボンブラックを用いる場合は、バインダー樹脂100質量部に対してカーボンブラックを2〜50質量部配合することが好ましい。
【0105】
導電剤としてイオン導電剤を用いてもよく、上記電子導電剤と併用してもよい。
イオン導電剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などを使うことができる。イオン導電剤のアニオンとしては、過塩素酸アニオン、フルオロアルキルスルホニルイミドアニオン、フルオロスルホニルイミドアニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、ジシアナミドアニオン、チオシアネートアニオン、ジシアノスルホニルイミドアニオンなどが挙げられる。これらの少なくとも1種を用いることができる。
【0106】
表面層には、必要に応じてシリカ、石英粉末、酸化チタン、酸化亜鉛又は炭酸カルシウムの如き非導電性充填剤を含有してもよい。表面層の形成において、塗料をコーティングする方法をとる場合、非導電性充填剤を添加することにより、成膜助剤とすることが可能である。非導電性充填剤の含有率は、表面層を形成する樹脂成分、すなわちバインダー樹脂と構造式(1)で示される構造を有する樹脂を合わせた成分100質量部に対して10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0107】
導電性部材は必要に応じて適正な表面粗さを有する場合がある。導電性部材が現像ローラまたは現像スリーブである場合、表面粗さは十点平均粗さ(Rz)で2.0〜10.0μmの範囲にあることが好ましく、2.0〜4.5μmの範囲にあることが特に好ましい。導電性部材が現像ブレードの場合は、表面粗さは十点平均粗さ(Rz)で0.0〜6.0μmの範囲にあることが好ましく、0.0〜1.5μmの範囲にあることが特に好ましい。表面粗さがこの範囲にあると、トナーとの均一な接触と、適正なトナー搬送量が両立され、トナーへの電荷供給を均一にしやすくすることができる。
導電性部材の表面粗さの形成方法としては、表面層への微粒子の添加、研磨、型転写、レーザー処理が挙げられる。粗さ制御のための微粒子を添加する場合、微粒子としては、体積平均粒径が3〜20μmであることが好ましい。また、表面層4に添加する粒子添加量が、表面層4の樹脂固形分100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましい。粗さ制御用微粒子には、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂の微粒子を用いることができる。
【0108】
導電性部材がローラ形状である場合は、導電層の成形方法としては、液状ゴム材料を型成形する方法や、混練ゴム材料を押出し成形する方法が挙げられる。
また、導電性部材がブレード形状である場合は、その成形方法として、型成形、射出成型、押出し成形、遠心成形する方法が挙げられる。
【0109】
表面層の形成方法としては特に限定されるものではないが、塗料によるスプレー、浸漬、又はロールコートが挙げられる。特開昭57−5047号公報に記載されているような浸漬槽上端から塗料をオーバーフローさせる浸漬塗工方法は、表面層を形成する方法として簡便で生産安定性に優れている。
【0110】
本態様に係る導電性部材を帯電部材として使用する場合にもトナーや外添剤への電荷付与が均質に行われる点で有効である。
トナーや外添剤が帯電部材に付着した場合、帯電部材への印加電圧が負/正バイアスにより、トナーへ徐々に同一符号である負/正電荷が外表面から付与することができる。この負/正電荷は、導電性支持体より供給され、帯電部材表面まで輸送された上、そして汚れへいたる。汚れに電荷が十分に蓄積されると、帯電部材表面から感光ドラムに向かって形成される電界で静電気力が働き、部材表面と汚れとの付着力を上回ることで、部材表面から汚れが剥離し感光ドラム側に移動する「吐出し」現象が起こる。従来の帯電部材を苛酷な環境における高速プロセスに適用すると、汚れへの電荷供給が十分に行えず、吐出しが抑制され、結果として帯電部材への汚れ堆積、そしてそれに伴う白ポチ発生などの画像弊害となる。一方、本態様では帯電部材表面までの電荷輸送が効率的に行われ、汚れに対し十分な電荷供給が可能であるため、吐出しが十分に行うことが可能と成り、部材への汚れの堆積、白ポチ発生が抑制される。
【0111】
以下、本態様の導電性部材を帯電部材として使用する場合に好ましい、電子導電剤、バインダー樹脂、表面層のユニバーサル硬度、電子導電剤に由来する表面層凸部、粗し粒子、その他添加物、表面層の層厚について、この順に説明する。
【0112】
<電子導電剤>
表面層は電子導電剤としてカーボンブラックを含むことが好ましい。電子導電剤の応答性の速さが高速プロセスにおいてもトナーへの均質な電荷供給を可能とする。電子導電剤としては前述の電子導電剤(導電性粒子)を挙げることができる。これらの導電性粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、導電性粒子として、シリカ粒子を導電性粒子で被覆した複合粒子を用いることもできる。表面層に用いる導電性粒子としては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックは比重が低く、かつ、導電性が高いため、バインダー樹脂に対しての添加量調整で、表面層に付与する導電性を制御しやすい。更に本態様では、表面層の硬度を低硬度に保つことが必要なため、好適である。
【0113】
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂としては、公知のバインダー樹脂を用いることができる。例えば、樹脂、天然ゴムやこれを加硫処理したもの、合成ゴムなどのゴム等を挙げることができる。樹脂としては、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体及びオレフィン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体等が使用できる。なお、バインダー樹脂としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のエーテル結合を含有しないことが好ましい。エーテル系ウレタン樹脂は、ユニバーサル硬度を低減可能であるが、樹脂の体積抵抗率が低下するため、本態様のバインダー樹脂としては適さない場合があるからである。前記バインダー樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。バインダー樹脂としては、これらの中でも、表面層のユニバーサル硬度を低減することによる柔軟性と、表面層の高抵抗化を両立させるためには、特に、カーボネート構造を含む樹脂であることが好ましい。カーボネート構造は、極性が低いため、バインダー樹脂自身の体積抵抗率を高く維持できる。具体的には、ポリカーボネートポリオールと、ポリイソシアネートを共重合させたポリカーボネート系ポリウレタンが好ましい。
【0114】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば以下のものが挙げられる。ポリノナメチレンカーボネートジオール、ポリ(2−メチル−オクタメチレン)カーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリ(3−メチルペンタメチレン)カーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリトリメチレンカーボネートジオール、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、ポリ(2−エチル−2−ブチル−トリメチレン)カーボネートジオール、及びこれらのランダム/ブロック共重合体。
【0115】
ポリイソシアネートは一般的に用いられる公知のものから選ばれ、例えば以下のものが挙げられる。トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンポリイソシアネート、水添MDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等。これらの中でもトルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックジフェニルメタンポリイソシアネートの如き芳香族イソシアネートがより好適に用いられる。
【0116】
<表面層のユニバーサル硬度>
汚れ物質の発生自体を抑制するうえでは、トナーに割れや変形を生じさせないことが有効である。そのためには、表面層が柔軟であることが好ましい。本開示に係る導電性部材の硬度の目安は、表面層の表面から深さ1μmの位置での「ユニバーサル硬度(t=1μm位置)」が1.0N/mm以上、7.0N/mm以下であることが好ましい。外添剤やトナーは、そのサイズがサブミクロンから数ミクロンのオーダーであるため、表面層の外添剤やトナーとの接触面である外表面の極近傍の硬度を制御することが好ましい。具体的には、表面層の外表面から圧子を1μm押し込んだ時点での表面のユニバーサル硬度を1.0N/mm以上とすることで、長期間静止状態で、帯電ローラと電子写真感光体とを当接させた場合に生じる帯電ローラの変形由来の画像濃度ムラの発生を抑制できる。また、該ユニバーサル硬度を7.0N/mm以下にすることで、トナーの変形・割れを抑制できるため、感光体に残存する異型トナー、微粉化したトナーの絶対量をより確実に抑制できる。さらに、該ユニバーサル硬度を5.0N/mm以下にすることで、汚れ物質に対して、表面層が追従して変形するため、表面層の表面に露出した導電性粒子による凸部と、汚れ物質の接触点が増加し、該凸部から汚れ物質への電子の注入効率が向上する。
【0117】
なお、帯電ローラの表面層の表面のユニバーサル硬度は、例えば、ユニバーサル硬度計(商品名:フィッシャースコープHM2000XYp、フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定される。ユニバーサル硬度とは、圧子を、荷重をかけながら測定対象物に押し込むことにより求められる物性値であり、「(試験荷重)/(試験荷重下での圧子の表面積)(N/mm)」として求められる。四角錐などの圧子を、所定の比較的小さい試験荷重をかけながら被測定物に押し込み、所定の押し込み深さに達した時点でのその押し込み深さから圧子が接触している表面積を求め、上記式よりユニバーサル硬度を求める。
【0118】
<電子導電剤に由来する表面層凸部>
汚れ物質に電荷を注入するため、表面層の表面に電子導電剤(導電性粒子)の露出部に由来する凸部が存在することが好ましい。導電性粒子の露出部に由来する凸部のサイズとしては、5.0nm以上、100.0nm以下であることが好ましい。5.0nm以上にすることで、汚れ物質に対して電荷をより効率的に注入するための起点としての凸部として機能できる。また、100.0nm以下にすることで感光体へ過度に電荷を注入することを抑制できる。なお、凸部のサイズとは、図9に示すように、バインダー樹脂302から露出した部分の導電性粒子301の粒子径303の平均値(個数平均粒子径)を意味する。この凸部サイズの測定方法としては、SEMを用い、任意の2μm四方の領域の画像を撮影し、得られた画像から無作為に選択した20個の粒子について粒子径を測定し、算術平均粒子径を求める。
また、導電性微粒子に由来する凸部を利用し、汚れ物質に電荷を注入するためには、凸部の数の制御が有効である。導電性微粒子の露出部に由来する凸部の数としては、縦2.0μm、横2.0μmの領域(4.0μmの領域)において50個以上、500個以下であることが好ましい。50個以上にすることで、汚れ物質に対して電荷を注入する起点としての凸部の数を確保できる。また500個以下にすることで感光体への電荷の注入を抑制できる。該凸部の数の算出は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、任意の2μm四方の領域の画像を撮影し、2値化後の画像より、導電点数を算出することによって行うことができる。
【0119】
次に、表面層の表面に導電性微粒子を露出させる手法について説明する。導電性部材の導電層の上にディッピング塗布法によって表面層を形成する場合、表面層の最表面に必ずスキン層が形成される。このため、導電性粒子が表面層の表面に露出させて、その露出部によって表面層の表面に凸部を生じさせるためには、最表面のスキン層を除去することが有効である。例えば、紫外線処理、研磨法、電解研磨法、化学研磨法、イオンミリング法等を行うことで、バインダー樹脂による表面スキン層を除去し、導電性粒子を表面層の表面に露出させることが可能となる。本開示においては、表面層の硬度が低いため、紫外線処理を行うことでも、十分にスキン層を除去し、導電性微粒子を表面層の表面に露出させることができる。紫外線処理は、研磨法等と比較し、表面層へのダメージを最小限に抑えた上で、導電性粒子を表面層の表面に露出させることができるため、好ましい。
導電性粒子の露出状態は、電子間力顕微鏡(AFM)を用いて確認できる。AFMのタッピングモードで高さ像を取得する。この場合、導電性粒子の露出部に由来する部分が凸部として確認される。ディップコーティング後のスキン層が存在した状態で、高さ像を取得した場合には、前記凸部が確認されない。さらに、AFMのタッピングモードで位相像を取得する。この場合、導電性粒子の位相ズレが少なく、かつ、バインダー樹脂と導電性粒子との硬度差のため、濃淡コントラスト差が非常に大きな画像が得られる。ディップコーティング後のスキン層が存在した状態で位相像を取得した場合には、位相差が非常に数少なく、コントラスト差の低い画像が取得される。
【0120】
<粗し粒子>
表面層には、本態様の効果を損なわない範囲で粗し粒子を含有してもよい。粗し粒子としては、例えば以下のものが挙げられる。アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂及びシリコーン樹脂等の有機系絶縁性粒子;酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、マイカ、ゼオライト及びベントナイト等の粒の無機系絶縁性粒子。表面層に粗し粒子を含有することで、表面層の外表面には、粗し粒子由来の凸部を有し、表面層の表面形状を大きく変形させることができる。本開示においては、外添剤、トナー等の汚れ物質に対して、表面層が変形することで接触機会を増大させるため、柔軟性を有する有機系絶縁性粒子を粗し粒子として用いることが好ましい。これらの粒子は1種を使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。粗し粒子の個数平均粒子径は、特に限定されないが、3μm以上、30μm以下程度である。
【0121】
<その他の添加物>
本態様において、本態様の効果が損なわれない程度に、表面層中には必要に応じてその他添加剤を加えてもよい。添加剤としては、鎖延長剤、架橋剤、顔料、シリコーン添加剤、触媒としてアミン類、スズ錯体等を加えてもよい。シリコーン添加剤を表面層に添加した場合、表面層の高抵抗化や、表面層に滑り性を付与し、感光体への電荷の注入の抑制や表面層の耐摩耗性を向上させるため、シリコーン添加剤の添加が特に好ましい。
【0122】
<表面層の層厚>
表面層は、0.1μm以上100μm以下の厚さを有することが好ましい。より好ましくは、1μm以上50μm以下である。なお、表面層の膜厚は、導電性部材断面を鋭利な刃物で切り出して、光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察することにより測定できる。
【0123】
(2)電子写真装置
本開示に係る導電性部材は、電子写真用画像形成装置としての電子写真装置における現像ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ、現像スリーブ、転写ローラ、及び現像ブレードとして好適に用いることができる。導電性部材は、磁性一成分トナーや非磁性一成分トナーを用いた非接触型現像装置及び接触型現像装置、ならびに二成分トナーを用いた現像装置、及び帯電装置のいずれにも適用することができる。
図8は、本開示に係る導電性部材を、一成分トナーを用いた接触型現像装置の現像ローラとして搭載した電子写真装置の一例を示す概略断面図である。現像装置22は、一成分トナーとしてトナー15を収容したトナー容器20と、現像ローラ16と、現像ローラ16へトナーを供給するトナー供給ローラ19と、現像ローラ16上のトナー層の厚さを規制する現像ブレード21とを含む。現像ローラ16は、トナー容器20内の長手方向に延在する開口部に位置し、感光体18に対して接触設置されている。なお、感光体18、クリーニングブレード26、廃トナー収容容器25、帯電ローラ24は、電子写真装置本体に配備されていてもよい。現像装置22は、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色トナーに用意されており、カラー印刷を可能としている。
【0124】
以下、電子写真装置のプリント動作を説明する。
感光体18は矢印方向に回転し、感光体18を帯電処理するための帯電ローラ24によって一様に帯電される。次いで、露光手段であるレーザー光23により、感光体18の表面に静電潜像が形成される。該静電潜像は、現像装置22によって、感光体18に対して接触配置される現像ローラ16からトナー15が付与されることにより、トナー像として可視化される(現像)。現像は露光部にトナー像を形成する、いわゆる反転現像である。感光体18上に形成されたトナー像は、転写部材である転写ローラ29によってエンドレスベルト状の中間転写体32に転写される。
記録媒体である紙34は、給紙ローラ35及び二次転写ローラ36により装置内に給紙され、トナー画像を有する中間転写体32とともに、二次転写ローラ36と従動ローラ33とのニップ部に搬送され、紙34にトナー画像が転写される。中間転写体32は、従動ローラ33、駆動ローラ39、テンションローラ38により稼働している。中間転写体32上に残るトナーはクリーニング装置37によりクリーニングされる。
現像ローラ16、現像ブレード21、転写ローラ29及び二次転写ローラ36には、バイアス電源30から電圧が印加されている。トナー像が転写された紙34は、定着装置27により定着処理され、装置外に排紙されて、プリント動作が終了する。一方、転写されずに感光体18上に残存した転写残トナーは、感光体表面をクリーニングするためのクリーニング部材であるクリーニングブレード26により掻き取られ、廃トナー収容容器25に収納される。クリーニングされた感光体18は、以上のプリント動作を繰り返し行う。
【0125】
(3)プロセスカートリッジ
本開示に係る、上記導電性部材は、プロセスカートリッジにおける現像ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ、現像スリーブ、転写ローラ、及び現像ブレードとして好適に用いることができる。図9は、本開示の一態様に係るプロセスカートリッジの一例の概略断面図である。図9において、上記導電性部材は、現像ローラ16として搭載されている。プロセスカートリッジ17は、図8に示すような電子写真装置の本体に着脱可能に構成されている。プロセスカートリッジ17は、現像ローラ16と現像ブレード21とを備える現像装置22、感光体18、クリーニングブレード26、廃トナー収容容器25、及び帯電ローラ24が一体化されたものである。現像装置22は、さらにトナー容器20を含み、トナー容器20内には、トナー15が充填されている。トナー容器20内のトナー15は、トナー供給ローラ19によって現像ローラ16の表面に供給され、現像ブレード21によって、現像ローラ16の表面に所定の厚みのトナー15の層が形成される。
【実施例】
【0126】
以下に本開示に係る具体的な実施例及び比較例について示す。
なお、以下に示す表中の「phr」とは、「per hundred rubber」の略であり、ゴム100質量部に対する配合量を表す。
【0127】
1.実施例及び比較例に係る導電層の形成に用いる導電層形成用未加硫ゴム組成物の調製
[1−1] 未加硫ドメインゴム組成物(CMB)E−1の調製
表1に示す量の各材料を加圧式ニーダーで混合して未加硫ドメインゴム組成物E−1を調製した。混合機は、6リットル加圧ニーダー(製品名:TD6−15MDX、トーシン社製)を用いた。混合条件は、充填率70vol%、ブレード回転数30rpm、16分間とした。
【0128】
【表1】
【0129】
[1−2] 未加硫マトリックスゴム組成物E−1の調製
表2に示す量の各材料を加圧式ニーダーで混合して未加硫マトリックスゴム組成物E−1を調製した。混合機は、6リットル加圧ニーダー(製品名:TD6−15MDX、トーシン社製)を用いた。混合条件は、充填率70vol%、ブレード回転数30rpm、16分間とした。
【0130】
【表2】
【0131】
[1−3] 導電層形成用の未加硫ゴム組成物E−1の調製
上記[1−1]及び[1−2]で調製した未加硫ドメインゴム組成物E−1及び未加硫マトリックスゴム組成物E−1を、表3に示す割合で加圧式ニーダーを用いて混合して、未加硫ゴム混合物を得た。混合機は、6リットル加圧ニーダー(製品名:TD6−15MDX、トーシン社製)を用いた。混合条件は、充填率70vol%、ブレード回転数30rpm、16分間とした。
【0132】
【表3】
【0133】
上記[1−3]で得た未加硫ゴム混合物及びその他の材料を、表4に示す割合でオープンロールを用いて混合し、導電層形成用の未加硫ゴム組成物E−1を調製した。混合機は、ロール径12インチ(0.30m)のオープンロールを用いた。混合条件は、前ロール回転数10rpm、後ロール回転数8rpmで、ロール間隙2mmとして合計20回左右の切り返しを行った後、ロール間隙を0.5mmとして10回薄通しを行った。
【0134】
【表4】
【0135】
[2−1]ドメイン形成用未加硫ゴム組成物E−2〜E−38の調製
[2−2]マトリックス形成用未加硫ゴム組成物E−2〜E−38の調製
ゴム及び導電剤の種類及び配合量を表5に示す通りとした以外は、ドメイン形成用未加硫ゴム組成物E−1及びマトリックス形成用未加硫ゴム組成物E−1と同様にしてドメイン形成用未加硫ゴム組成物E−2〜E−38及びマトリックス形成用未加硫ゴム組成物E−2〜E−38を調製した。
【0136】
【表5】
【0137】
表5中、DBP吸収量の単位は(cm/100g)である。
ムーニー粘度は、原料ゴムの値は各社のカタログ値であり、ドメイン形成用未加硫ゴム組成物、及びマトリックス形成用未加硫ゴム組成物の値は、日本産業規格(JIS) K6300−1:2013に基づくムーニー粘度ML(1+4)であり、各々のゴム組成物を構成する材料すべてを混練している時のゴム温度で測定されたものであり、単位はムーニー単位(M)である。SP値の単位は、(J/cm0.5である。以下の表についても同様である。
【0138】
[2−3]導電層形成用未加硫ゴム組成物E−2〜E−38の調製
上記[2−1]及び[2−2]で調製したドメイン形成用未加硫ゴム組成、マトリックス形成用未加硫ゴム組成物及びその他の材料を表6に示す割合で配合した以外は、導電層形成用未加硫ゴム組成物E−1と同様にして導電層形成用未加硫ゴム組成物E−2〜E−38を調製した。なお、表6中の「ブレード回転数」は、導電層形成用未加硫ゴム組成物調製に先立って、ドメイン形成用未加硫ゴム組成物及びマトリックス形成用未加硫ゴム組成物を加圧式ニーダーで混合したときのブレード回転数である。
【0139】
【表6】
【0140】
上記表5及び表6中、略称で記載した材料の詳細を表7に示す。表7には、以下の実施例、比較例で使用の材料についても記載している。
【0141】
【表7】
【0142】
3.表面層形成用塗料の調製
[3−1]表面層形成用塗料S−1の調製
下記材料を混合し、撹拌した。
・ポリエーテルポリオール(商品名:PEG−1000、三洋化成工業社製):52.0質量部
・イソシアネート(商品名:ミリオネートMR−400、東ソー社製):48.0質量部
・カーボンブラック(商品名:MA−100、三菱ケミカル社製):15.0質量部
・ウレタン樹脂微粒子(商品名:アートパールC−400T、根上工業社製):20.0質量部
次に、総固形分比が30質量%となるようにメチルエチルケトンを加えた後、サンドミルにて混合した。次いで、さらに、メチルエチルケトンで粘度10〜12cpsに調整して、表面層形成用塗料S−1を調製した。
【0143】
[3−2]表面層形成用塗料S−2〜S−10、14〜16の調製
バインダー樹脂及び導電剤の種類及び配合割合を表8に示す通りとした以外は、表面層形成用塗料S−1と同様にして表面層形成用塗料S−2〜S−16を調製した。
【0144】
[3−3]表面層形成用塗料S−11の調製
下記材料を混合し、撹拌した。
・アクリルポリオール(商品名:アクリディックA817、DIC社製):75.0質量部
・メラミン樹脂(商品名:ユーバン20SB、三井化学社製):25.0質量部
・カーボンブラック(商品名:Printex25、オリオンエンジニアドカーボンズ社製):10.0質量部
・リチウム塩化合物(商品名:エフトップEF−N115、三菱マテリアル電子化成社製):2.0質量部
・ウレタン樹脂微粒子(商品名:アートパールC−400T、根上工業社製):20.0質量部
次に、総固形分比が30質量%となるようにメチルエチルケトンを加えた後、サンドミルにて混合した。次いで、さらに、メチルエチルケトンで粘度10〜12cpsに調整して、表面層形成用塗料S−11を調製した。
【0145】
[3−4]表面層形成用塗料S−12の調製
ポリアミド樹脂(商品名:トレジンEF−30T、帝国化学産業社製)100.0質量部をメタノール2000gに加え、攪拌溶解させた。
次にウレタン樹脂微粒子(商品名:アートパールC−400T、根上工業社製)20.0質量部を加えた後、サンドミルにて混合した。次いで、さらに、メタノールで粘度10〜12cpsに調整して、表面層形成用塗料S−12を調製した。
【0146】
[3−5]表面層形成用塗料S−13の調製
アクリル樹脂(商品名:アルマテックスL1060、三井化学社製)100.0質量部をトルエン300gに加え、攪拌溶解させた。次にウレタン樹脂微粒子(商品名:アートパールC−400T、根上工業社製)11.0質量部を加えた後、サンドミルにて混合した。次いで、さらに、トルエンで粘度10〜12cpsに調整して、表面層形成用塗料S−13を調製した。
【0147】
【表8】
【0148】
※表8中に記載される品名に係る材料種を表9に示す。
【0149】
【表9】
【0150】
[実施例1]電子写真用ローラE−1〜E−38の製造方法
(1)導電層の形成
支持体として、快削鋼の表面に無電解ニッケルメッキ処理を施した全長252mm、外径6mmの芯金を用意した。本芯金を導電性の軸芯体である支持体として使用した。
次に、導電性の支持体の供給機構、及び未加硫ゴムローラの排出機構を有するクロスヘッド押出機の先端に内径16.0mmのダイスを取付け、押出機とクロスヘッドの温度を80℃に、導電性の支持体の搬送速度を60mm/secに調整した。この条件で、押出機より導電層形成用未加硫ゴム組成物E−1を供給して、クロスヘッド内にて導電性の支持体の外周部を未加硫ゴム組成物で被覆し、未加硫ゴムローラを得た。
次に、170℃の熱風加硫炉中に前記未加硫ゴムローラを投入し、60分間加熱することで未加硫ゴム組成物を加硫し、導電性の支持体の外周部に導電層が形成されたローラを得た。その後、導電層の両端部を切除し、導電層の表面を回転砥石で研磨した。これによって、中央部から両端部側へ各90mmの位置における各直径が12.0mm、中央部直径が12.2mmであるクラウン形状を有する導電層を有するローラを得た。
【0151】
(2)表面層の形成
(1)で得た導電層を有するローラの長手方向を鉛直方向にして、上端部を把持して表面層形成用塗料S−1に浸漬して、導電層の表面に当該塗料の塗膜を形成した。浸漬時間は9秒間、ローラの引き上げ速度は、初期速度が20mm/sec、最終速度が2mm/secになるように調整し、20mm/secから2mm/secの間は、時間に対して直線的に速度を変化させた。塗布後、23℃で30分間風乾した。
さらに、温度150℃にて1時間加熱処理することにより、導電層の外周に膜厚15μmの表面層を有する、実施例1に係る電子写真用ローラを作製した。
【0152】
5.特性評価
[5−1]マトリックス−ドメイン(MD)構造の有無の確認
導電層中の、本開示に係るマトリックス−ドメイン構造の有無を以下の方法で確認した。まず、カミソリを用いて導電層の周方向と垂直な断面が観察できるように切片を切り出した。次いで、該切片の、該導電層の断面に相当する面に白金を蒸着した。そして、該切片の白金蒸着面を、走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名:S−4800、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて倍率1,000倍にて観察し、SEM画像を得た。得られたSEM画像から、マトリックス−ドメイン構造の有無を確認した。
この観察を、現像ローラ(長手方向の長さ:230mm)を長手方向に5等分し、周方向に4等分し、それぞれの領域内から任意に1点ずつ、合計20点から採取した切片について行った。結果は、表11−1、20−1、26−1中の「MD構造」の項目に、マトリックスドメイン構造を確認できた場合には「Y」、確認できなかった場合は「N」と記載した。
なお、本評価の結果、実施例1に係る導電層のマトリックス−ドメイン構造は、SEM画像内において、図5に示したように、複数個のドメイン6bがマトリックス6a中に分散され、導電パスが分断されていた。一方、マトリックスは連通していた。
【0153】
[5−2]周波数1×10Hz〜1×10Hzにおけるインピーダンスの傾き、及び周波数1×10−2Hz〜1×10Hzにおけるインピーダンスの算出
インピーダンスの測定は、次のようにして行った。
まず、前処理として、現像ローラを回転させながら、その外表面に白金を蒸着して測定電極を作成した。このとき、マスキングテープを使用して、幅1.5cm、周方向に均一な電極を作成した。当該電極を形成することで、導電性部材の表面粗さによって、測定電極と導電性部材の接触面積の寄与を極力低減することができる。
次に、当該電極に、アルミシートを隙間なく巻きつけ、当該アルミシートから、インピーダンス測定装置(商品名:ソーラトロン1260、及びソーラトロン1296;ソーラトロン社製)の測定電極に接続した。
【0154】
図10に現像ローラに測定電極を形成した状態の概要図を示す。図10の中で、101が導電性の支持体、102がマトリックスドメイン構造を有する導電層、103が白金蒸着層、104がアルミシートである。
図11に導電性部材に測定電極を形成した状態の断面図を示す。111が導電性の支持体、112がマトリックスドメイン構造を有する導電層、113が表面層、114が白金蒸着層、115がアルミシートである。図11のように、導電性の支持体と、測定電極によってマトリックスドメイン構造を有する導電層及び表面層を挟む状態にすることが重要である。
そして、当該アルミシートを、インピーダンス測定装置(ソーラトロン1260、及びソーラトロン1296 ソーラトロン社製)側の測定電極に接続した。導電性の支持体と、アルミシートを測定のための2つの電極にすることで、インピーダンス測定を行った。
【0155】
インピーダンスの測定は、温度23℃、相対湿度50%の環境において、振動電圧1Vpp、直流10V、周波数1×10−2Hz〜10Hz測定(周波数が1桁変化する際に、5点ずつ測定)し、インピーダンスの絶対値を得た。次いで、測定結果を用いて、当該インピーダンスの絶対値と、周波数を両対数プロットしたグラフを作成した。当該グラフから、周波数が1.0×10−2〜1.0×10におけるインピーダンスを求めた。
次いで、現像ローラA1から表面層を剥離し、導電層の表面に直接白金を蒸着して測定電極を作製した。次いで、上記と同様にしてインピーダンスを測定し、グラフを作成した。このグラフから、1×10Hz〜1×10Hzにおける傾きを算出した。また、1.0×10−2〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスを求めた。
現像ローラA1(長手方向の長さ:230mm)を長手方向に5個の領域に5等分し、それぞれの領域内から任意に1点ずつ、合計5点に測定電極を形成し、上記測定を行った。その平均値を、インピーダンスの傾きとした。
さらに、導電性支持体の外表面に白金電極を設けた以外は、上記と同様にして導電性支持体のインピーダンスを測定した。
【0156】
[5−3]マトリックスの体積抵抗率の測定
マトリックスの体積抵抗率は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)(商品名:Q−Scope250、Quesant Instrument Corporation社製)を用い、コンタクトモードで以下のように測定した。なお、測定環境は、温度23℃、相対湿度50%とした。
まず、現像ローラの導電層から、ミクロトーム(商品名:Leica EM FCS、ライカマイクロシステムズ社製)を用いて、切削温度−100℃にて、2μm程度の厚みの切片を切り出した。次に、該切片を金属プレート上に、該切片の、該導電層の断面に相当する一方の面が、金属プレートの表面と接するように設置した。そして、該切片の、金属プレートの表面と接している面とは反対側の面のうち、マトリックスに該当する箇所にSPMのカンチレバーを接触させた。次いで、カンチレバーに50Vの電圧を印加し、電流値を測定した。
また、SPMで当該切片の表面形状を観察して、得られた高さプロファイルから測定箇所の厚さを算出した。さらに、表面形状の観察結果から、カンチレバーの接触部の凹部の面積を算出した。当該厚さと当該凹部面積とから体積抵抗率を算出し、マトリックスの体積抵抗率とした。なお、切片は、実施例1に係る現像ローラ(長手方向の長さ:230mm)を長手方向に5等分し、周方向に4等分し、それぞれの領域内から任意に1点ずつ、合計20点から採取し、各々の切片について、上記の測定を行った。各測定箇所における測定値の平均値を算出した。得られた結果を、「マトリックス」の「体積抵抗率」として表11−1、20−1、26−1に示した。
【0157】
[5−4]ドメインの体積抵抗率の測定
ドメインの体積抵抗率は、カンチレバーの接触位置をドメインに該当する箇所とし、カンチレバーに印加する電圧を1Vとした以外は、上記マトリックスの体積抵抗率の測定方法と同様にして測定した。各測定箇所での値の平均値を算出した。
得られた結果を、「ドメイン」の「体積抵抗率」として表11−1、20−1、26−1に示した。
【0158】
[5−5]マトリックスの体積抵抗率とドメインの体積抵抗率の比
上記マトリックスの体積抵抗率R1の常用対数と、ドメインの体積抵抗率R2の常用対数を叙することで、マトリックスとドメインの体積抵抗率の比(log(R1/R2))を算出した。
得られた結果を、「マトリックスドメイン」の「抵抗比」として表11−1、20−1、26−1に示した。
【0159】
[5−6]ドメインの形状の測定
ドメインのサイズを評価するために、次の測定を行った。
すなわち、上記マトリックスの体積抵抗率の測定において用意した切片の、該導電層の断面に相当する面に白金を蒸着した。次いで白金蒸着面を、SEM(商品名:S−4800、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて1,000倍で撮影し、SEM画像を得た。次いで、当該SEM画像を画像処理ソフト「Image−pro plus」(製品名、Media Cybernetics社製)を用いて8ビットのグレースケール化を行って256階調のモノクロ画像を得た。次いで、当該モノクロ画像内のドメインが白くなるように画像の白黒を反転させ、画像の輝度分布に対して大津の判別分析法のアルゴリズムに基づいて2値化の閾値を設定し、2値化像を得た。次いで、該2値化像について、導電層の厚さをTとしたとき、3つの切片のそれぞれ外表面から深さ0.1T〜0.9Tまでの厚み領域に相当する領域内の任意の3か所、合計9か所に15μm四方の観察領域を置いた。そして、上記画像処理ソフトのカウント機能を用いて、各観察領域内のドメインについて、下記の各項目を算出した。
【0160】
・周囲長:A
・包絡周囲長:B
・AとBの比:A/B
・観察した全てのドメイン個数に対する、要件(B3)を満たすドメイン個数割合(個数%)
【0161】
上記の測定を、現像部材の長手方向を5等分、周方向に4等分し、当該20領域から採取した切片に対して行い、上記の各項目の算出結果の算術平均値をドメインの評価に用いた。
【0162】
なお、要件(B3)にかかる「A」は、図6に示したように、観察領域で観察されるドメイン71の周囲長72である。また、「B」は、当該ドメインの破線で示す凸包絡73の長さ(包絡周囲長)である。得られた結果を、表11−2、20−2、26−2に「周囲長A」、「包絡周囲長B」、「A/B(平均値)」、「要件(B3)を満たすドメイン個数」としてそれぞれ示した。
【0163】
[5−7]ドメイン間距離の測定
画像処理ソフトのドメイン間距離のカウント機能を用いた以外は、これを、現像ローラの長手方向を5等分、周方向に4等分し、当該20領域に対して上記の測定結果の算術平均をドメイン間距離(Dm)とした。得られた結果を、表11−1、20−1、26−1の「マトリックス」の「距離」及び表11−2、20−2、26−2の「ドメイン間距離Dm」として示した。
【0164】
[5−8]体積分率の測定
ドメインの体積分率は、導電層から採取したサンプルの複数枚の断面画像をFIB−SEMを用いて取得し、当該断面画像から再構築した当該サンプルの3次元画像から求めた。なお、FIB−SEMとは、FIB(Focused Ion Beam:集束イオンビーム)装置と、SEM(scanning electron microscope;走査型電子顕微鏡)とからなる複合装置である。
具体的には、導電層の9箇所から一辺が9μmの立方体形状のサンプルを採取した。採取した位置は、ローラ形状の場合には、導電層の長手方向の長さをLとしたとき、一方の端部から(1/4)L、(2/4)L、(3/4)Lの三か所において、ローラの周方向に120度毎の位置から1つずつサンプルを採取した。このとき、各サンプルの重心が、導電層の厚み方向の中点と一致するようにした。次いで、各サンプルについて、FIBを用いた断面の露出と、露出した断面のSEM画像を撮影とを繰り返して、スライス画像群を取得した。なお、サンプルのスライス間隔は60nmとした。得られたスライス画像群を、3D可視化・解析ソフトウェア Avizo(エフ・イー・アイ社製)を用いて3次元画像を再構築した。得られた3次元画像から、一辺が9μmの立方体形状1個のサンプル中に含まれる27個の、一辺が3μmの該単位立方体におけるドメインの体積を算出した。得られた結果を、「ドメイン体積分率」として表11−1、20−1、26−1に示す。
【0165】
[5−9]ドメインの均一分散性
導電層におけるドメインの均一分散性は、ドメインの体積分率の測定と同様にFIB−SEMを用いた3次元での導電層の計測により求めた。
導電性のドメインが三次元的に均等かつ密に導電層中に配置された構成であることは、上記の手法で検証した。ここでは、上述したように、FIB-SEMを用いた3次元測定を行い、一辺が9μmの立方体形状のサンプル(サンプル立方体)のうち、少なくとも8個のサンプルが、以下の要件(B1)を満たすかを評価した。
【0166】
要件(B1):
「1個の立方体サンプルを、27個の、一辺が3μmの単位立方体に区分し、該単位立方体の各々に含まれる前記ドメインの体積Vdを求めたとき、Vdが2.7〜10.8μmである単位立方体の数が少なくとも20個であること。」
先に述べたように、要件(B1)を満たす一辺が9μmのサンプル立方体中の一辺が3μmの単位立方体の個数が増加すると、本開示の効果がより高まる。
得られた結果を「要件(B1)を満たす立方体数」として表11−2、20−2、26−2に示す。
【0167】
[5−10]ドメインの断面積に対するドメインが含む該電子導電剤の断面積の割合
上記[5-6.ドメインの形状の測定」で作成した、白金を蒸着した切片の白金蒸着面の、上記5-6.の評価における2値化像上に置いた15μm四方の観察領域に対応する箇所を走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名:S−4800、日立ハイテクノロジー社製)を用いて倍率20000倍で撮影し、SEM画像を得た。得られたSEM画像を、画像解析装置(製品名:LUZEX−AP、ニレコ社製)を使用して、8ビットのグレースケール化を行い、256諧調のモノクロ画像を得た。次いで、モノクロ画像内のドメインが白くなるように、画像の白黒を反転処理し、画像の輝度分布に対して大津の判別分析法のアルゴリズムに基づいて2値化の閾値を設定し、2値化像を得た。次いで、得られた2値化像からドメイン1個が収まる大きさの観察領域を抽出した。そして、1個のドメインの断面積Sd、及び、該ドメイン内の電子導電剤(カーボンブラック)の断面積Scを算出した。得られた、電子導電剤(カーボンブラック)の断面積Sc、ドメインの断面積Sdより、μ=Sc/Sdを求めることで、ドメインの断面積に対するドメインが含む該電子導電剤の断面積の割合を得た。これを観察領域各々のドメインについて行った。得られた結果から、電子導電剤の断面積の割合の平均値「μ」、電子導電剤の断面積の割合の標準偏差「σ」、要件(B2)断面積割合(平均)「μ/σ」、及び「要件(B2)を満たすドメイン個数%」を求めた。これらを、表11−2、20−2、26−2に示す。
【0168】
[5−11]表面層の体積抵抗率
表面層の体積抵抗率は、原子間力顕微鏡(AFM)(Q−scope250:Quesant社)を用いて、導電性モードによって測定した。まず現像ローラ表面層を、マニュピレーターを用いて幅2mm、長さ2mmのシートに切り出し、表面層の片面に白金蒸着を施した。次に白金蒸着を施した面に直流電源(6614C:Agilent社)を接続して10Vを印加し、表面層のもう一方の面にはカンチレバーの自由端を接触させ、AFM本体を通して電流像を得た。この測定を、表面層の全体において無作為に選ばれた100箇所の表面において行い、低電流値の上位10箇所の平均電流値と、表面層の膜厚の平均値とから「体積抵抗率」を算出した。評価結果を表8に示す。
測定の条件を以下に示す。
・測定モード:contact
・カンチレバー:CSC17
・測定範囲:10nm×10nm
・スキャンレイト:4Hz
・印加電圧:10V
【0169】
[実施例2〜実施例5]
導電層形成用未加硫ゴム組成物及び表面層形成用塗料を、表10に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜5の電子写真用ローラを得た。
【0170】
[実施例6]
導電層形成用未加硫ゴム組成物E−6を用いた以外は実施例1と同様にして、導電層を作成した。次いで、表面層形成用塗料S−11を導電層の表面に浸漬塗布し、温度140℃にて30分加熱処理して導電層の外周に膜厚15μmの表面層を有する実施例6の電子写真用ローラを作製した。
【0171】
[実施例7]
導電層形成用未加硫ゴム組成物E−7を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電層を作成した。表面層形成用塗料S−12を導電層の表面に浸漬塗布して、温度120℃にて30分加熱処理することにより、導電層の外周に膜厚15μmの表面層を有する実施例7の電子写真用ローラを作製した。
【0172】
[実施例8]
導電層形成用未加硫ゴム組成物E−8を用いた以外は、実施例1と同様にして、導電層を作成した。
表面層形成用塗料S−13に導電層の表面に浸漬塗布して、温度140℃にて1時間加熱処理することにより、導電層の外周に膜厚15μmの表面層を有する実施例8の電子写真用ローラを作製した。
【0173】
[実施例9〜実施例34]
導電層形成用未加硫ゴム組成物、及び表面層形成用塗料を表10に示す組合せで用いた以外は実施例1と同様にして、実施例9〜実施例34に係る電子写真用ローラを得た。
【0174】
[実施例35]
快削鋼の表面に無電解ニッケルメッキ処理を施した外径6mmの芯金を用意した。次にロールコーターを用いて、前記芯金の両端部15mmずつを除く範囲の全周にわたって、接着剤として「メタロックU−20」(商品名、東洋化学研究所製)を塗布して本実施例に係る支持体を作製した。
この支持体を用い、かつ、表10に示す導電層形成用未加硫ゴム組成物及び表面層形成用塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例35の電子写真用ローラを得た。なお、本実施例における導電性支持体のインピーダンスの測定は、芯金上の接着剤層(樹脂層)の表面に設けた白金電極を設けることにより行った。
【0175】
[実施例36]
導電性熱可塑樹脂(商品名:トレカTLP1060;東レ社製)を用い、射出成型により、外径8mmの丸棒を成形した。次に丸棒を研磨し、実施例1で用いた快削鋼製のものと同じ形状の、外径6mmの導電性樹脂からなる支持体を用意した。
この支持体を用い、かつ、表10に示す導電層形成用未加硫ゴム組成物及び表面層形成用塗料を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例36の電子写真用ローラを得た。
【0176】
[実施例37]
実施例36で用いた導電性樹脂芯金を用意した。次にロールコーターを用いて、前記芯金の両端部15mmずつを除く範囲の全周にわたって、接着剤としてメタロックU−20(商品名、東洋化学研究所製)を塗布した。これを支持体として用い、且つ、表10に示す導電層形成用未加硫ゴム組成物及び表面層形成用塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例37の電子写真用ローラを得た。なお、本実施例における導電性支持体のインピーダンスの測定は、芯金上の接着剤層(樹脂層)の表面に設けた白金電極を設けることにより行った。
【0177】
[実施例38]
PPS樹脂(商品名:トレリナA503−X05;東レ社製)を用い、射出成型により、外径8mmの丸棒を成形した。次に丸棒を研磨し、実施例1で用いた快削鋼製のものと同じ形状の、外径6mmのPPS樹脂芯金(絶縁性樹脂芯金)を用意した。得られたPPS樹脂芯金の外表面の全面に白金蒸着を施し、軸芯体とした。次に実施例37と同様にして、軸芯体に接着剤を塗布した。これを支持体として用い、且つ表10に示す導電層形成用未加硫ゴム組成物及び表面層形成用塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例38の電子写真用ローラを作製した。
【0178】
【表10】
【0179】
実施例1〜38に係る導電性ローラの、評価[5−1]〜[5−10]についての結果を表11−1〜11−2に示す。また、評価[5−11]の結果を表8に示す。
【0180】
【表11-1】
【0181】
【表11-2】
【0182】
6.現像ローラとしての評価
得られた実施例1〜38に係る電子写真用ローラの現像ローラとしての評価を以下のようにして行った。
【0183】
[6−1] 画像(カブリ)評価
各実施例及び比較例に係る電子写真用ローラを、図9に示す構成を有するレーザープリンタ(商品名:HP Color Laserjet Enterprise CP4515dn、HP社製)用のマゼンタトナーカートリッジに現像ローラとして装填して、かぶり画像の評価を行った。高速プロセスにおける評価とするために、当該レーザープリンタを、単位時間当たりの出力枚数が、オリジナルの出力枚数よりも多い、A4サイズの用紙で、50枚/分となるように改造した。
各現像ローラを装填したマゼンタトナーカートリッジを、上記レーザープリンタに装填し、気温32℃、相対湿度85%RHの高温高湿環境中に設置した後、6時間放置した。次いで、サイズが4ポイントのアルファベットの「E」の文字が、A4サイズの紙の面積に対し被覆率が1%となるように印字されるような画像(以下、「E文字画像」ともいう)を所定枚数のコピー用紙に対して連続出力した。その後、新しいコピー用紙に白ベタ画像を出力し、白ベタ画像の出力中にプリンターを停止した。この時、感光体上に付着したトナーをテープ(商品名:CT18、ニチバン社製)ではがし取り、反射濃度計(商品名:TC−6DS/A、東京電飾社製)にて反射率を測定した。テープの反射率を基準としたときの反射率の低下量(%)を測定し、これをかぶり値とした。これらのカブリ値に基づき、以下の基準で評価した。
・ランクA:カブリ値が1.5%未満である。
・ランクB:カブリ値が1.5%以上3.0%未満である。
・ランクC:カブリ値が3.0%以上5.0%未満である。
・ランクD:カブリ値が5.0%以上である。
【0184】
[6−2] トナー帯電量
トナーに対する電子写真用ローラの帯電付与性を評価するために、帯電量を測定した。
上記かぶり画像評価の際に、電子写真用ローラの、トナー規制ブレードと感光体当接位置に挟まれた部分のうち範囲が狭い部分に担持されたトナーを、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集した。その際、金属円筒管を通じてコンデンサに蓄えられた電荷量と、吸引されたトナーの質量を測定した。なお、電荷量の測定は、エーディーシー社製の測定機(商品名:8252)を用いて行った。そして、これらの値から、単位質量あたりの電荷量(μC/g)を算出した。負帯電性のトナーを用いる場合、単位質量あたりの電荷量の符号が負であり、絶対値が大きいほど、現像ローラの帯電付与性が高いといえる。測定により得られた値をトナー帯電量とした。
【0185】
[6−3] トナー帯電量分布
トナーの帯電量の広がりを評価するために、帯電量分布を測定した。
帯電量分布は、粉体測定 帯電量・粒子径分布測定機(商品名:E−spart Analyzer Model EST−III、ホソカワミクロン社製)を用いて測定した。それ以外は、トナーの帯電量測定と同様にして、帯電量分布を測定した。なお、測定粒子個数は3000個程度とした。得られた帯電量分布から、標準偏差を算出し、得られた値をトナーの初期帯電量分布とした。
【0186】
[6−4] 高温高湿/低温低湿サイクル試験
高温高湿環境と低温低湿環境で交互に評価する試験(以下、環境サイクル試験)は以下のように行った。始めに画像(カブリ)評価で用いたものと同様にして、各電子写真用ローラを装填したマゼンタトナーカートリッジを、上記レーザープリンタに装填し、気温32℃、相対湿度85%の高温高湿環境(以下H/H)中に設置した後、30分間放置した。
次に本環境で、サイズが4ポイントのアルファベットの「E」の文字が、A4サイズの紙の面積に対し被覆率が1%となるように印字されるような画像(以下、「E文字画像」ともいう)を500枚のコピー用紙に対して連続出力した。次に、本トナーカートリッジ、及びレーザープリンタを、気温15℃、相対湿度10%の低温低湿環境(以下L/L)中に設置した後、30分間放置した。次に本環境で、サイズが4ポイントのアルファベットの「E」の文字が、A4サイズの紙の面積に対し被覆率が1%となるように印字されるような画像(以下、「E文字画像」ともいう)を500枚のコピー用紙に対して連続出力した。
このH/H、L/Lでの画像出力を1サイクルとして、合計5サイクル繰り返した。
【0187】
次にトナー帯電量、及びトナー帯電量分布を、環境サイクル試験前の測定と同様にして測定した。さらにトナーカートリッジから電子写真用ローラを取り出し、電子写真用ローラ表面層近傍の破壊状態について、以下の基準で評価した。
【0188】
・ランクA:電子写真用ローラ全体に亘って破壊が認められない。
・ランクB:電子写真用ローラ端部(弾性層長手方向最端部から1.5cmの範囲)にのみ、軽微な破壊が認められる。
・ランクC:電子写真用ローラ端部以外の領域に軽微な破壊が認められる。
・ランクD:電子写真用ローラ全体のいずれかに破壊が認められ、画像上に問題が発生している。
【0189】
評価[6−1]〜[6−4]の結果を表11−3に示す。
【0190】
【表11-3】
【0191】
[比較例1]
表12に示す量の各材料を加圧式ニーダーで混合した。混合機は、6リットル加圧ニーダー(製品名:TD6−15MDX、トーシン社製)を用いた。混合条件は、充填率70vol%、ブレード回転数30rpm、16分間とした。得られた未加硫ゴム組成物をそのまま導電層形成用未加硫ゴム組成物として用いた以外は、実施例1と同様にして支持体上に導電層を形成した。次いで、導電層上に表面層用塗料S−1を浸漬塗布し、温度150℃にて1時間加熱処理して導電層の外周に膜厚15μmの表面層を形成して比較例1の電子写真用ローラを作製した。
【0192】
【表12】
【0193】
[比較例2]
表13に示す量の各材料を用いた以外は、比較例1と同様にして比較例2の電子写真用ローラを作製した。
【0194】
【表13】
【0195】
[比較例3]
表14に示す量の各材料を加圧式ニーダーで混合しドメイン形成用未加硫ゴム組成物を得た。混合機は、6リットル加圧ニーダー(製品名:TD6−15MDX、トーシン社製)を用いた。混合条件は、充填率70vol%、ブレード回転数30rpm、16分間とした。
【0196】
【表14】
【0197】
次に、表15に示す量の各材料を加圧式ニーダーで混合しマトリックス形成用未加硫ゴム組成物を得た。混合機は、6リットル加圧ニーダー(製品名:TD6−15MDX、トーシン社製)を用いた。混合条件は、充填率70vol%、ブレード回転数30rpm、16分間とした。
【0198】
【表15】
【0199】
次に、上記で調製したドメイン形成用未加硫ゴム組成物及びマトリックス形成用未加硫ゴム組成物を、表16に示す配合量で混合して未加硫ゴム混合物を得た。混合機には、6リットル加圧ニーダー(製品名:TD6−15MDX、トーシン社製)を用いた。混合条件は、充填率70vol%、ブレード回転数30rpm、16分間とした。
【0200】
【表16】
【0201】
上記で得られた未加硫ゴム混合物100質量部、硫黄(商品名:サルファックPMC、鶴見化学工業社製)3質量部、及びテトラベンジルチウラムジスルフィド(商品名:TBZTD、三新化学工業社製)2質量部を混合して、導電性部材成形用未加硫ゴム組成物EC−3を調製した。混合機には、ロール径12インチ(0.30m)のオープンロールを用いた。混合条件は、前ロール回転数10rpm、後ロール回転数8rpmで、ロール間隙2mmとして合計20回左右の切り返しを行った後、ロール間隙を0.5mmとして10回薄通しを行った。こうして得られた導電層形成用未加硫ゴム組成物EC−3を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の電子写真用ローラを得た。
【0202】
[比較例4〜比較例14]
<ドメイン形成用未加硫ゴム組成物EC−4〜EC−8、EC−11、EC−12の調製>
ゴム及び導電剤として表17−1に示す材料を、表17−1に示す配合割合で用いた以外は比較例3と同様にしてドメイン形成用未加硫ゴム組成物EC−4〜EC−8、EC−11、EC−12を調製した。
【0203】
【表17-1】
【0204】
<マトリックス形成用未加硫ゴム組成物EC−4〜EC−12の調製>
ゴム種及び添加剤として表17−2に示す材料を、表17−2に示す配合割合で用いた以外は比較例3と同様にしてマトリックス形成用未加硫ゴム組成物EC−4〜EC−12を調製した。なお、表17−2には、上記比較例1〜3で調製したマトリックス形成用ゴム組成物の組成も併せて示した。
【0205】
【表17-2】
【0206】
<導電層形成用未加硫ゴム組成物EC−4〜EC−12の調製>
ドメイン形成用未加硫ゴム組成物、マトリックス形成用未加硫ゴム組成物、及びその他の材料を表18に示す配合割合で用いた以外は比較例3と同様にして導電層形成用未加硫ゴム組成物EC−4〜EC−12を調製した。
【0207】
【表18】
【0208】
<比較例4〜比較例10、12〜14に係る電子写真用ローラの作製>
導電層形成用未加硫ゴム組成物EC−4〜EC−10、12を用いた以外は、比較例3と同様にして、支持体上に導電層を形成した。次いで、表面層形成用塗料として、表19に示すものを用いた以外は比較例3と同様にして、比較例4〜比較例10、12〜14に係る電子写真用ローラを作製した。
【0209】
<比較例11に係る電子写真用ローラの作製>
ドメイン形成用未加硫ゴム組成物EC−11を単独で加熱加硫した後に、凍結粉砕したゴム粒子を作製した。このゴム粒子をドメイン形成用材料として用いた以外は、表18に示す配合割合で各種材料を混合し、導電層形成用未加硫ゴム組成物EC−11を調製した。この導電層形成用未加硫ゴム組成物EC−11を用いた以外は、比較例3と同様にして支持体上に導電層を形成した。次いで、表面層形成用塗料として表19に示すものを用いた以外は比較例3と同様にして比較例11の電子写真用ローラを作製した。
比較例11の電子写真用ローラにおいては、導電層が、架橋ゴムを凍結粉砕して形成した、サイズが大きく、異方性のある導電ゴム粒子を含むために、導電層内での導電パスが不均一に形成されており、ドメインの厚みが大きい状態と同義になっている。その結果、インピーダンスの高周波数における傾きが−1となった。
【0210】
<比較例13、14に係る電子写真用ローラの作製>
表面層形成用塗料S−15またはS−16を用いた以外は、比較例5と同様にして比較例13、14に係る電子写真用ローラを作製した。
【0211】
得られた比較例1〜14に係る導電性ローラを評価[5−1]〜[5−10]及び評価[6−1]〜[6−4]に供した。
評価[5−1]〜[5−10]の結果を表20−1〜20−2、評価[6−1]〜[6−4]の結果を表21に示す。
【0212】
【表19】
【0213】
【表20-1】
【0214】
【表20-2】
【0215】
【表21】
【0216】
実施例1〜38に係る現像ローラは、導電層に、本開示の構成を有する。かつ現像ローラ外表面と支持体の外表面間で測定した低周波数域におけるインピーダンスが、1.0×10〜1.0×1011Ωであるため、帯電量分布がシャープであり、カブリの数値も非常に小さい高品位な画像が得られた。
さらに、表面層がウレタン樹脂である実施例1〜5、及び実施例10〜38は、環境サイクル試験後も表面近傍に破壊を生じることなく、シャープな帯電量分布と、良好な画像特性を維持している。
一方、本開示に係る導電層を有さない比較例1〜12、及び現像ローラ外表面と支持体の外表面間で測定した低周波数域におけるインピーダンスが本開示の範囲外となる比較例13、14の現像ローラでは、帯電量分布が大きく、画像品質が良好でなかった。
【0217】
[実施例39]
[現像ブレードの作製]
導電層形成用未加硫ゴム組成物E−2を、幅250mm、長さ150mm、厚さ0.7mmの金型に加圧プレス機で加圧しながら、温度160℃で10分処理して厚さ0.7mmのゴムシート1を得た。得られたゴムシート1を、幅215mm、長さ12mmに切断した。また、後述する電子写真用プロセスカートリッジの現像ブレードに用いられている板金と同形状の板金を用意した。この板金に、接着剤を用いて上記ゴムシートを接着した。この時、ゴムシートの長さ12mmのうち板金と重複する部分の長さを4.5mmとし、残りの7.5mmを板金からはみ出るように接着した。また、接着剤としては、導電性のホットメルトタイプ接着剤を使用した。次に、ゴムシートの表面に表面層形成用塗料S−1に浸漬塗布して風乾後、温度150℃にて1時間加熱処理して、導電層の外周に膜厚15μmの樹脂層を有する、実施例39に係る現像ブレードを得た。
【0218】
7.特性評価
[7−1]
得られた現像ブレードについて、前記評価5−1、5−3〜5−10に供した。
【0219】
[7−2]1×10Hz〜1×10Hzにおける傾き、及び1×10−2Hz〜1×10Hzにおけるインピーダンスの測定
本開示に係るインピーダンスの測定は、次のようにして行った。
まず、前処理として、現像ブレードの外表面に白金を蒸着して測定電極を作成した。このとき、マスキングテープを使用して、現像ブレードの板金を接着しない面の、先端1mmから6mmの部位に、長さ213mmmの長方形の電極を作成した。次に、当該電極に銀ペーストを用いて導線を貼り付け、インピーダンス測定装置(ソーラトロン1260、及び1296 東洋テクニカ社製)の測定電極に接続した。
インピーダンスの測定は、温度23℃、相対湿度50%の環境において、振動電圧1Vpp、直流10V、周波数10−2〜10Hzで測定(周波数が1桁変化する際に、5点ずつ測定)し、インピーダンスの絶対値を得た。次いで、測定結果を用いて、当該インピーダンスの絶対値と、周波数を両対数プロットしたグラフを作成した。当該グラフから、1.0×10−2〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスを算出した。
次いで、現像ブレードから表面層を剥離し、導電層の表面に上記と同様にして白金を蒸着し測定電極を作製した。次いで、上記と同様にしてインピーダンスを測定し、グラフを作成した。このグラフから、周波数が、1.0×10Hz〜1.0×10Hzにおける傾きを算出した。また、1.0×10−2〜1.0×10Hzにおけるインピーダンスを算出した。
【0220】
[7−3] 画像(カブリ)評価
現像ブレードの高速プロセスにおける、持続性のある帯電付与性確認のため、以下の評価を実施した。
まず、実施例39に係る現像ブレードをそして、温度23℃、相対湿度50%の環境に48時間放置した。次いで、この現像ブレードを、レーザープリンタ(商品名:Laserjet M608dn、HP社製)用のプロセスカートリッジの現像ブレードとして実施例39に係る現像ブレードを取り付けた。
一方、上記レーザープリンタについては、高速プロセスにおける評価を行うために、単位時間当たりの出力枚数を、オリジナルの出力枚数よりも多い、A4サイズの用紙で、75枚/分となるように改造した。その際、記録メディアの出力スピードは380mm/秒、画像解像度は1,200dpiとした。また、現像ブレードへの電圧印加電極へ外部電源によって電圧印加可能にする改造を施し、現像スリーブの金属部と現像ブレードの板金を電気的に接続した。このレーザープリンタも、温度23℃、相対湿度50%の環境に48時間放置した。
次いで、上記プロセスカートリッジを上記レーザープリンタに装填し、温度32℃、相対湿度85%の環境下に4時間放置後、同環境下にて印字率0%のベタ白画像を記録用紙に出力するプロセスを実施し、その途中でカラーレーザープリンタの電源を切った。このときの感光体と現像スリーブのニップ通過前の現像スリーブ上のトナーの帯電量Q/M(μC/g)を測定した。
具体的には、トナーの帯電量の測定は、現像ローラの評価と同様である。1本の現像スリーブに対して、上記操作を3回繰り返しトナーの帯電量を3回測定し、それらの相加平均値を求め、評価対象に係る現像ブレードによるトナーの帯電量とした。
さらに、ベタ白画像を出力中にプリンターを停止した際に、転写される前の感光体上に付着した現像剤をテープではがし取り、反射濃度計(商品名:TC−6DS/A;東京電色社製)にてテープの反射率Rを測定した。未使用のテープの反射率R基準に対する反射率の低下量「R−R」(%)を算出し、これカブリ値とした。これらのカブリ値を下記の基準でランク付けした。
・ランクA:カブリ値が1.5%未満である。
・ランクB:カブリ値が1.5%以上3.0%未満である。
・ランクC:カブリ値が3.0%以上5.0%未満である。
・ランクD:カブリ値が5.0%以上である。
【0221】
[7−4] トナー帯電量
トナーに対する現像ブレードの帯電付与性を評価するために、帯電量を測定した。
上記カブリ画像評価の際に、現像スリーブの、現像ブレードと感光体当接位置に挟まれた部分のうち範囲が狭い部分に担持されたトナーを、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集した。その際、金属円筒管を通じてコンデンサに蓄えられた電荷量と、吸引されたトナーの質量を測定した。なお、電荷量の測定は、エーディーシー社製の測定機(商品名:8252)を用いて行った。そして、これらの値から、単位質量あたりの電荷量(μC/g)を算出した。負帯電性のトナーを用いる場合、単位質量あたりの電荷量の符号が負であり、絶対値が大きいほど、現像ブレードの帯電付与性が高いといえる。測定により得られた値を帯電量とした。
【0222】
[7−5]トナー帯電量分布
トナーの帯電量の広がりを評価するために、帯電量分布を測定した。
帯電量分布は、E−spart Analyzer Model EST−III(ホソカワミクロン社製)を用いて測定した。それ以外は、トナー帯電量測定と同様にして、帯電量分布を測定した。なお、測定粒子個数は3000個程度とした。得られた帯電量分布から、標準偏差を算出し、得られた値をトナーの初期帯電量分布とした。
評価結果を表24〜表27に示す。
【0223】
[7−6] 高温高湿/低温低湿サイクル試験
高温高湿環境と低温低湿環境で交互に評価する試験(以下、環境サイクル試験)は以下のように行った。始めに画像(カブリ)評価で用いたものと同様にして、各現像ブレードを装填したマゼンタトナーカートリッジを、上記レーザープリンタに装填し、気温32℃、相対湿度85%RHの高温高湿環境(以下H/H)中に設置した後、30分間放置した。
次に本環境で、サイズが4ポイントのアルファベットの「E」の文字が、A4サイズの紙の面積に対し被覆率が1%となるように印字されるような画像(以下、「E文字画像」ともいう)を500枚のコピー用紙に対して連続出力した。次に、本トナーカートリッジ、及びレーザープリンタを、気温15°、相対湿度10%RHの低温低湿環境(以下L/L)中に設置した後、30分間放置した。次に本環境で、サイズが4ポイントのアルファベットの「E」の文字が、A4サイズの紙の面積に対し被覆率が1%となるように印字されるような画像(以下、「E文字画像」ともいう)を500枚のコピー用紙に対して連続出力した。
このH/H、L/Lでの画像出力を1サイクルとして、合計5サイクル繰り返した。
【0224】
次にトナー帯電量、及びトナー帯電量分布を、環境サイクル試験前の測定と同様にして測定した。さらにトナーカートリッジから現像ブレードを取り出し、現像ブレード表面層近傍の破壊状態について、以下の基準で評価した。
・ランクA:現像ブレード全体に亘って破壊が認められない。
・ランクB:現像ブレード端部(弾性層長手方向最端部から1.5cmの範囲)にのみ、軽微な破壊が認められる。
・ランクC:現像ブレード端部以外の領域に軽微な破壊が認められる。
・ランクD:現像ブレード全体のいずれかに破壊が認められ、画像上に問題が発生している。
【0225】
[実施例40〜実施例45]
[ドメイン形成用未加硫ゴム組成物E−39〜E−44の調製]
表22−1に示すゴム及び導電剤を用いた以外は、ドメイン形成用未加硫ゴム組成物E−1と同様にしてドメイン形成用未加硫ゴム組成物を調製した。
【0226】
【表22-1】
【0227】
[マトリックス形成用未加硫ゴム組成物E−39〜E−44の調製]
表22−2に示すゴムを用いた以外はマトリックス形成用未加硫ゴム組成物E−1と同様にしてマトリックス形成用未加硫ゴム組成物を調製した。
【0228】
【表22-2】
【0229】
なお、上記表に記載の「Zeospan」は、日本ゼオン社製のポリエーテル系合成ゴムの商品名である。
【0230】
[導電層形成用未加硫ゴム組成物E−39〜E−44の調製]
ドメイン形成用未加硫ゴム組成物E−39〜E−44、マトリックス形成用未加硫ゴム組成物E−39〜E−44及びその他の材料を表22−3に示す配合割合で混合した以外は、導電層形成用未加硫ゴム組成物E−1と同様にして導電層形成用未加硫ゴム組成物E−39〜E−44を調製した。
【0231】
【表22-3】
【0232】
[現像ブレードの作製]
導電層形成用未加硫ゴム組成物E−39〜E−44を用いた以外は実施例39と同様にしてゴムシートを作製し、作成したゴムシートを板金に接着した。次いで、表23に示す表面層形成用塗料を用いた以外は、実施例39と同様にしてゴムシートの表面に表面層を形成して実施例40〜実施例45に係る現像ブレードを得た。
【0233】
[実施例46〜実施例50]
表面層形成用塗料を表23に示すものに変更した以外は比較例44と同様にして、実施例46〜実施例50に係る現像ブレードを得た。
【0234】
【表23】
【0235】
[比較例15〜比較例19]
[ドメイン形成用未加硫ゴム組成物EC−13〜EC−17の調製]
表24−1に示すゴム及び導電剤を用いた以外は、ドメイン形成用未加硫ゴム組成物E−1と同様にしてドメイン形成用未加硫ゴム組成物を調製した。
【0236】
【表24-1】
【0237】
[マトリックス形成用未加硫ゴム組成物EC−15〜EC−17の調製]
表24−2に示すゴムを用いた以外はマトリックス形成用未加硫ゴム組成物E−1と同様にしてマトリックス形成用未加硫ゴム組成物を調製した。
【0238】
【表24-2】
【0239】
[導電層形成用未加硫ゴム組成物EC−13〜E−17の調製]
ドメイン形成用未加硫ゴム組成物、マトリックス形成用未加硫ゴム組成物及びその他の材料を表24−3に示す配合割合で混合した以外は、導電層形成用未加硫ゴム組成物E−1と同様にして導電層形成用未加硫ゴム組成物EC−13〜EC−17を調製した。
【0240】
【表24-3】
【0241】
[現像ブレードの作製]
導電層形成用未加硫ゴム組成物EC−13〜EC−17を用いた以外は実施例39と同様にしてゴムシートを作製し、作成したゴムシートを板金に接着した。次いで、表25に示す表面層形成用塗料を用いた以外は、実施例39と同様にしてゴムシートの表面に表面層を形成して比較例15〜19に係る現像ブレードを得た。
【0242】
[比較例20、21]
表面層形成用塗料を表25に示すものに変更した以外は実施例39と同様にして、比較例20〜21に係る現像ブレードを得た。
【0243】
【表25】
【0244】
実施例39〜49、比較例15〜22に係る現像ブレードの評価結果を表26−1〜表26−3、表27−1〜表27−3に示す。
【0245】
【表26-1】
【0246】
【表26-2】
【0247】
【表26-3】
【0248】
【表27-1】
【0249】
【表27-2】
【0250】
【表27-3】
【0251】
実施例39〜50に係る現像ブレードは、導電層に本開示に係るマトリックスドメイン構造を有していた。そして現像ブレード外表面と支持体の外表面間で測定した低周波数域におけるインピーダンスが、1.0×10〜1.0×1011Ωであるため、帯電量分布がシャープであり、カブリの数値も非常に小さい高品位な画像が得られた。さらに、表面層がウレタン樹脂である実施例39〜49は、環境サイクル試験後も表面近傍に破壊を生じることなく、シャープな帯電量分布と、良好な画像特性を維持している。
それに対し、本開示の導電層を有しない比較例15〜19、及び現像ブレード外表面と支持体の外表面間で測定した低周波数域でのインピーダンスが本開示の範囲外となる比較例20、21の現像ブレードでは、帯電量分布が大きく、画像品質が良好でなかった。
【0252】
[実施例51]
[表面層形成用塗料17の調製]
窒素雰囲気下、反応容器内でポリメリックMDI(商品名:ミリオネートMR200、日本ポリウレタン工業社製)27質量部に対し、ポリエステルポリオール(商品名:P3010、クラレ株式会社製)100質量部を反応容器内の温度を65℃に保持しつつ、徐々に滴下した。滴下終了後、温度65℃で2時間反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却し、イソシアネート基含有量4.3%のイソシアネート基末端プレポリマーを得た。
【0253】
得られたイソシアネート基末端プレポリマーの54.9質量部に対して、同じくポリエステルポリオール(商品名:P2010、クラレ株式会社製)41.52質量部、カーボンブラック(MA230:三菱化学社製、個数平均粒子径30nm)23質量部をメチルエチルケトン(MEK)に溶解し、固形分が27質量%になるように調整して、混合液1を調製した。
内容量450mLのガラス瓶内に、混合液1の270gと、平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gを入れ、ペイントシェーカー分散機を用いて12時間分散した。次いで、平均粒子径7.0μmのウレタン粒子(ダイミックビーズUCN−5070D:大日精化工業社製)を15質量部添加して、さらに15分間分散した。その後、ガラスビーズを除去して、表面層形成用塗料17を得た。
【0254】
[帯電ローラの作製]
導電層の形状を、中央部から両端部側へ各90mmの位置における各直径が9.65mm、中央部直径が9.70mmであるクラウン形状とした以外は実施例2と同様にして芯金の周面に導電層を形成した。次いで、実施例1と同様にして、該導電層上に表面層形成用塗料17を塗布した。塗布後、温度23℃で30分間風乾し、次いで、熱風循環乾燥機中で温度80℃で1時間乾燥し、更に、温度160℃で1時間乾燥させて、弾性層上に表面層形成用塗料17の塗膜の乾燥膜を形成した。
【0255】
さらに、該乾燥膜の外表面に、波長254nmの紫外線を積算光量が9000mJ/cmになるように照射して、当該乾燥膜の最表面のスキン層を除去して当該乾燥膜中の導電性粒子(カーボンブラック)が外表面に露出した表面層を形成した。紫外線の光源としては、低圧水銀ランプ(東芝ライテック社製)を用いた。こうして、実施例51に係る電子写真用ローラ51を作製した。
【0256】
8.帯電ローラとしての評価
得られた電子写真用ローラ51について、以下の評価を行った。
[8−1]表面層の体積抵抗率の測定
表面層の体積抵抗率は、原子間力顕微鏡(AFM)(商品名:Q−scope250:、Quesant社)を用いて、導電性モードによって測定した。まず、電子写真用ローラ51の表面層を、マニュピレーターを用いて幅2mm、長さ2mmのシートに切り出し、表面層の片面に白金蒸着を施した。次に白金蒸着を施した面に直流電源(商品名:6614C、Agilent社)を接続して10Vを印加し、表面層のもう一方の面にはカンチレバーの自由端を接触させ、AFM本体を通して電流像を得た。この測定を、表面層の全体において無作為に選ばれた100箇所の表面において行い、低電流値の上位10箇所の平均電流値と、表面層の膜厚の平均値とから「体積抵抗率」を算出した。
測定の条件を以下に示す。
・測定モード:contact
・カンチレバー:CSC17
・測定範囲:10nm×10nm
・スキャンレイト:4Hz
・印加電圧:10V
【0257】
[8−2]周波数1×10Hz〜1×10Hzにおけるインピーダンスの傾き、及び周波数1×10−2Hz〜1×10Hzにおけるインピーダンスの値の算出
前記評価[5−2]と同様にして導電層の周波数1×10Hz〜1×10Hzにおけるインピーダンスの傾き、1×10−2Hz〜1×10Hzにおけるインピーダンスの値、および、電子写真用ローラの外表面と支持体の導電性の外表面との間に所定の交流電圧を印加させて測定される周波数1×10−2Hz〜1×10Hzにおけるインピーダンスを求めた。
【0258】
[8−3] 表面層の膜厚の測定
表面層の膜厚は、表面層の軸方向3箇所、円周方向3箇所、計9箇所における断面を、光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察して測定し、その平均値を表面層の「膜厚」とした。
【0259】
[8−4] 表面層のユニバーサル硬度の測定
表面層の表面から深さ1μmの位置におけるユニバーサル硬度を、ユニバーサル硬さ計にて測定した。測定には超微小硬度計(商品名:フィッシャースコープ(FISCHERSCOPE)HM−2000、ヘルムートフィッシャー社製)を用いた。具体的な測定条件を以下に示す。
・測定圧子:ビッカース圧子(面角136、ヤング率1140、ポアソン比0.07、圧子材料:ダイヤモンド)
・測定環境:温度23℃、相対湿度50%
・最大試験荷重:1.0mN
・荷重条件:最大試験荷重に30秒で達する速度で、時間に比例して荷重を印加した。
本評価においては、圧子が、表面層の表面から深さ1μmに押し込まれた時点における荷重Fと、その際の圧子と表面層との接触面積Aとを用いて、下記計算式(1)によりユニバーサル硬度を算出した。
計算式(1)
ユニバーサル硬度(N/mm)=F/A
【0260】
[8−5] 表面層の表面の電子導電剤の露出部由来の凸部の測定
表面層の表面の電子導電剤粒子の露出部に由来する凸部の個数の測定方法は以下の通りである。まず、電子写真用ローラ51から表面層を含む弾性層を切り出し、表面層の最表面に白金蒸着を行い、走査型電子顕微鏡(商品名:S−4800、日立ハイテクノロジー社製)を用いて縦2.0μm×横2.0μmの領域を40000倍で観察し、写真撮影を行った。得られた画像を、画像解析ソフト(商品名:Image−Pro Plus、プラネトロン社製)を用いて解析した。撮影したSEM画像に対して、2値化処理を行い、凸部の個数を算出した。SEM画像を5枚撮影し、算出した粒子数の平均値を、微細凸部の個数とした。
【0261】
[8−6] トナー帯電量評価
電子写真用ローラ1を帯電ローラとして用いたときの、汚れ成分(転写残トナーや外添剤などの汚れ成分)への負電荷供給能力を以下のようにして評価した。
電子写真画像形成装置として、レーザープリンタ((商品名:HP LaserJet P1505 Printer、HP社製)を用意した。当該レーザープリンタのプリントスピードは23枚/分であり、画像解像度は600dpiであるが、本評価に際して、当該レーザープリンタを、プロセススピードが通常の1.2倍となるようモータを改造した。さらに、帯電ローラへの電圧印加のため外部電源を接続し、本体から帯電ローラに直接電圧が印加されないように改造した。
さらに、このレーザープリンタ用のプロセスカートリッジ(商品名:「HP 36A(CB436A)」、HP社製)については、帯電ローラのクリーニングブレード、感光ドラムに当接する現像容器、転写ローラを取り外す改造を行った。
上記レーザープリンタ及びプロセスカートリッジを、低温低湿(温度15℃、相対湿度10%)環境下に48時間放置した。次いで、上記プロセスカートリッジを上記レーザープリンタに装填した。そして低温低湿環境下で以下の評価を行った。低温低湿環境では、電子写真用部材からトナーへの電荷注入が生じにくい。このような環境下で以下の評価を行うことによって、電子写真用部材のトナーへの電荷注入能力をより正確に評価することができる。
まず、通常の画像出力条件でベタ黒画像を1枚出力させる画像形成工程の途中で本体を停止させ、感光ドラムの全周がトナー層で被覆された状態を形成した。
次いで、本体から、感光ドラムの全周がトナー層で被覆された状態のプロセスカートリッジを取り出した。このプロセスカートリッジの帯電ローラを取り外し、電子写真用ローラ1を帯電ローラとして装着した。このプロセスカートリッジを本体に装着した。
そして、電子写真用ローラ1に、電子写真用ローラ1が放電しない電圧、具体的には−500Vを外部電源から印加してベタ白画像を1枚出力する画像形成工程を実施し、その過程で、電子写真用ローラ1と感光ドラムとのニップ部分を通過する前、及び通過した後における感光ドラム上のトナー層表面のトナーの電位を測定した。電位の測定には、感光ドラム表面から2mm離れた位置に配置した表面電位計プローブ(商品名:MODEL555P−1、トレックジャパン社製)を用いた。
そして、ニップ部の通過前のトナー層の表面の電位と、通過後のトナー層の表面の電位との差を導電性部材による注入帯電量(V)として測定した。
本評価は低温低湿(温度15℃、相対湿度10%)で実施した。
電子写真装置として、レーザビームプリンター(商品名:HP LaserJet P1505 Printer、HP社製)を用意した。このレーザビームプリンターは、A4サイズの紙を縦方向に出力可能である。また、プリントスピードは23枚/分であり、画像解像度は600dpiである。本評価では、上記レーザビームプリンターを、プロセススピードが通常の1.2倍となるように改造した。また、帯電ローラへの電圧印加のため外部電源を接続して本体から帯電ローラに直接電圧が印加されないようにした。さらに、転写ローラも取り外した。
上記レーザープリンタ用のプロセスカートリッジ(商品名:「HP 36A(CB436A)」、HP社製)からから、クリーニングブレードを取り外した。このプロセスカートリッジを上記レーザープリンタ本体に装填し、ベタ黒を出力させながら、現像、転写が起こる直前で本体フタを開けて停止させ、感光体ドラム上にトナーを一定量乗せた。次に、プロセスカートリッジをレーザープリンタ本体から取り出し、プロセスカートリッジに付属の帯電ローラを取り外し、感光体ドラムのトナーが乗った部分が隣接する部分で当接するよう、電子写真用ローラ51を装着した。これにより画像出力を開始してすぐに、帯電ローラがドラム上のトナーに接触するようにした。このプロセスカートリッジを再びレーザープリンタ本体に装填した。そして、電子写真用ローラ51の位置から感光体ドラムの周方向に90度回った位置であって感光体ドラムから2mm離れた位置に表面電位計プローブ(商品名:MODEL555P−1、トレックジャパン社製)を配置した。この状態でベタ白画像を出力した。この際、電子写真用ローラから放電が生じないように、−500Vを印加して、電子写真用ローラ51がトナーと接触することで電荷注入する条件とした。電子写真用ローラ51と接触した観光ドラム上のトナーの乗った部分の電位を測定し、帯電量とした。電位の絶対値が大きいほどトナーに注入された電荷量が大きくなる。
【0262】
[8−7] 汚れ評価試験
電子写真用ローラ51に、感光ドラムの回転に対して順方向に110%の周速差を持って回転するギアを帯電ローラに取り付けた。この電子写真用ローラ51を、帯電ローラ及びクリーニングブレードを取り外したプロセスカートリッジ(商品名:「HP 36A(CB436A)」、HP社製)に帯電ローラとして取り付けた。
このプロセスカートリッジを上記レーザビームプリンター本体に装填し、通常の1.2倍のプロセススピードで、感光ドラムの回転方向と垂直方向に幅2ドット、間隔100ドットの横線を描く画像を500枚出力した。次いで、当該プロセスカートリッジから電子写真用ローラ51を取り外して、以下の評価を行った。
取り外した電子写真用ローラ51の外表面にポリエステル粘着テープ(商品名:No.31B、日東電工社製)を貼り付けた後に、帯電ローラの表面に付着したトナーとともに粘着テープを剥がし取り、白紙に貼り付けた。これを帯電ローラの表面の画像印刷領域全域について行った後、粘着テープの反射濃度をフォトボルト反射濃度計(商品名:TC−6DS/A、東京電色社製)により画像印刷領域全域について測定して、最大値を求めた。
次に、同じく白紙に貼り付けた新品のポリエステル粘着テープの反射濃度を測定して最小値を求め、反射濃度の増加分を着色濃度の値とした。着色濃度の値が小さいほど、帯電ローラの汚れ量が少なく良好であることから、帯電ローラの汚れ程度の指標とした。
【0263】
[8−8] 安定帯電性評価試験
8−5と同様の本体、カートリッジ構成において、低温低湿(温度15℃、相対湿度10%)環境下で、A4サイズの紙上にサイズが4ポイントのアルファベット「E」の文字を、印字率が1%となるように印字する画像を20,000枚出力した。なお、電子写真画像の出力は、1枚出力する毎に7秒間かけて電子写真感光体の回転を停止させる、いわゆる、間欠モードで行った。間欠モードでの画像出力は、連続して電子写真画像の出力を行う場合と比較して、帯電ローラと電子写真感光体との摺擦回数が多くなるため、帯電ローラにとってより過酷な評価条件と言える。
次いで、ハーフトーン画像を出力し、得られた画像を以下の基準で評価した。
A:出力画像上、ルーペで確認しても白ポチが全くない。
B:出力画像上、目視で白ポチは認められない。
C:出力画像上、わずかに白ポチが認められる。
D:出力画像上、全域にわたって白ポチが認められる。
【0264】
[実施例52〜実施例56]
[表面層形成用塗料18〜22の調製]
表28に記載の材料を表28に示した配合量で用いた以外は表面層形成用塗料17と同様にして表面層形成用塗料18〜22を調製した。
【0265】
【表28】
【0266】
表28中の記号は、各々下記の材料を表す。
A−1:ポリエステルポリオール(商品名:P2010 クラレ社製)
A−2:ポリカーボネート系(商品名:T5652 旭化成ケミカルズ社製)
A−3:アクリルポリオール(商品名:DC2016 ダイセル化学工業社製)
B−1:ポリエステルポリオール/ポリメリックMDI(商品名:P3010 クラレ社製/商品名:ミリオネートMR200 日本ポリウレタン工業社製)
B−2:ポリカーボネート系ポリオール/ポリメリックMDI(商品名:T5652 旭化成ケミカルズ社製/商品名:ミリオネートMR200 日本ポリウレタン工業社製)
B−3:イソシアネートA/イソシアネートB=4:3(商品名:ベスタナートB1370 デグザ社製/商品名:デュラネートTPA−880E 旭化成ケミカルズ社製)
C−1:ウレタンビーズ(商品名:ダイミックビーズUCN−5070D、大日精化工業社製、平均粒径7.0μm)
D−1:変性ジメチルシリコーンオイル(商品名:SH−28PA 東レ・ダウコーニングシリコーン社製)
【0267】
[電子写真用ローラ52〜56]
表面層形成用塗料18〜22を用いた以外は実施例51と同様にして電子写真用ローラ52〜56を作製し、評価した。
【0268】
[実施例57]
紫外線の積算光量を450mJ/cmとした以外は実施例51と同様にして、実施例57に係る電子写真用ローラ57を作製し、評価した。
【0269】
[実施例58]
紫外線照射を行わなかった以外は実施例51と同様にして、実施例58に係る電子写真用ローラ58を作製し、評価した。
【0270】
[比較例22]
比較例1に係る導電層EC−1の外形形状を、長手方向の中央部から両端部側へ各90mmの位置における各直径が9.65mm、中央部直径が9.70mmであるクラウン形状とした。また、表面層形成用塗料17を用いた。それら以外は比較例1と同様にして比較例22に係る電子写真用ローラを作製し、評価した。当該電子写真用ローラは、導電層が、マトリックス−ドメイン構造を有さない。そして、帯電ローラとしての評価の結果、帯電量が低く、また、汚れ量も多く、白ポチの発生も見られた。
【0271】
[比較例23]
比較例4に係る導電層EC−4の外形形状を、長手方向の中央部から両端部側へ各90mmの位置における各直径が9.65mm、中央部直径が9.70mmであるクラウン形状とした。また、表面層形成用塗料17を用いた。それら以外は、比較例4と同様にして比較例23に係る電子写真用ローラを作製し、評価した。当該電子写真用ローラは、導電層が、マトリックス−ドメイン構造を有するが、導電層の高周波域におけるインピーダンスが本開示の範囲外であった。そして、帯電ローラとしての評価の結果、帯電量が低く、汚れ量も多く、白ポチの発生も見られた。
上記評価8の結果を表29に示す。
【0272】
【表29】
【符号の説明】
【0273】
1A 電子写真用ローラ
1B 電子写真用ブレード
2 支持体
3 導電層
4 表面層
6a ドメイン
6b マトリックス
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】