(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021068997
(43)【公開日】20210430
(54)【発明の名称】スピーカ装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20210402BHJP
   H04R 1/28 20060101ALI20210402BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
   !H04R1/02 101F
   !H04R1/28 310E
   !H04R1/00 318Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】2019192318
(22)【出願日】20191021
(11)【特許番号】6664695
(45)【特許公報発行日】20200313
(71)【出願人】
【識別番号】597152870
【氏名又は名称】有限会社サワキ
【住所又は居所】千葉県千葉市中央区末広5−11−17
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】佐脇 史郎
【住所又は居所】千葉県千葉市末広5−11−17有限会社サワキ内
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敬守
【住所又は居所】千葉県千葉市末広5−11−17有限会社サワキ内
【テーマコード(参考)】
5D017
5D018
【Fターム(参考)】
5D017AC20
5D017AD36
5D018AD01
5D018AD08
(57)【要約】
【課題】 振動が発生しにくいスピーカ装置を提供する。
【解決手段】
本発明のスピーカ装置100は、対向する左右2面が吹き抜けとなっているエンクロージャー10と、エンクロージャー10の背面に取り付けられるスピーカユニット30と、エンクロージャー10の前面に取り付けられるコーン20と、エンクロージャー10のうちの吹き抜けとなっている左右2面を塞ぐように取り付けられたパッシブラジエーター40と、エンクロージャー10を内部に収容可能なアタッチメント50と、を含むことを特徴とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体形状で対向する左右2面が吹き抜けとなっているエンクロージャーと、
前記エンクロージャーの背面に取り付けられ、電気信号を振動に変換するスピーカユニットと、
前記エンクロージャーの前面に取り付けられ、前記スピーカユニットの振動に連動して音声を発生させるコーンと、
前記エンクロージャーのうちの吹き抜けとなっている左右2面を塞ぐように取り付けられたパッシブラジエーターと、を含むスピーカ装置。
【請求項2】
前記エンクロージャーを内部に収容可能なアタッチメントをさらに含み、
前記アタッチメントは、前記エンクロージャーの前面を露出させつつ当該前面以外の5面に近接して配置された収容部と、前記収容部の前側端部から外側に延びる取付部とを有する請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記エンクロージャーと前記収容部との間に隙間が設けられていて互いに接していないことを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記エンクロージャーの背面に円形のスピーカ取付穴が設けられており、当該スピーカ取付穴に前記スピーカユニットが嵌め込まれることにより、前記エンクロージャーの背面と前記スピーカユニットとが面一になっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記エンクロージャーの左右の長さは、前記スピーカユニットの左右の長さと前記パッシブラジエーターの最大振幅の2倍との和よりも僅かに長く設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のスピーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置に関し、より詳細には、外形は小型でありながら密閉空間で高音質の音声を楽しむことができる密閉空間設置用スピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音楽を再生するための再生機器はここ20年で大きく変化している。20年前はカセットテープが主流にあったが、今や音楽再生機器は使用されなくなりつつあり、スマートフォンのストリーミング配信で音楽を楽しむ形態が主流になっている。このように音楽の再生機器はここ20年で激変を遂げたが、音楽を聴くためのツールは、20年前から大きく変化しておらず、イヤフォンとスピーカの2種のままである。
【0003】
上記のように音響機器が変化したことに伴って、20年前のカセットテープでは再現できなかったような高音質の音楽を再現することが技術的に可能になっている。このため、ユーザも、単に音楽を発信するだけのスピーカ装置では満足できず、アーティストの制作した原音に忠実な音を再生発信できるスピーカ装置の登場を求めている。このようなニーズに応えるべく、各社がより高音質の音声を再現できるスピーカ装置を開発している。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2016−127416号公報)には、高周波数帯域用スピーカを備えたスピーカ装置が開示されている。特許文献1に開示のスピーカ装置は、高周波数帯域用スピーカが3個以上用いられ、隣接する3個の高周波数帯域用スピーカの中心を結んで得られる3角形が、その少なくとも2辺が等しい二等辺三角形となるように配置されている。このように各高周波数帯域用スピーカを配置することにより、角スピーカ配置密度が適切なものとなり、広い指向特性を持つこととなり全帯域で均一な指向特性を得ることができる。さらに周波数特性についても特性の乱れが少なく且つ試聴位置の違いによる周波数特性の変化も少なくできる。
【0005】
また別の先行技術文献として、例えば特許文献2(特開2012−44352号公報)に開示のスピーカは、磁気回路体と、磁気回路体のギャップに嵌め込まれたボイスコイルと、磁気回路体に結合されたフレームと、コーン形振動板と、を有し、コーン形振動板の内周部分がボイスコイルと結合し、コーン形振動板の外周部分がフレームにエッジを介して結合され、コーン形振動板の外周部分が長円又は楕円形を呈しており、コーン形振動板にはその内周近傍に前記長円又は楕円の長軸方向に伸びる平坦部があり、平坦部は前記長円又は楕円を含む平面と平行であることを特徴としている。このような内部形状のスピーカとすることにより、高音域の音圧向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−127416号公報
【特許文献2】特開2012−044352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1および特許文献2に開示のスピーカ装置は、高周波数帯域用スピーカの配置位置を工夫したり、またコーンの内部形状を工夫したり、することで、音質向上の努力がなされてきた。ここ20年で、このようなスピーカ装置の内部形状およびその配置手法については開発されつくされており、もはやこのような従来のアプローチでは音質の抜本的改善は望めない状況にあった。
【0008】
本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、音声を発生させる際に振動が発生しにくいスピーカ装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、スピーカ装置の音を発生するメカニズムに着目し、従来とは全く異なる手法で音質向上を図ることを検討した。すなわち、スピーカ装置は、コーンを振動させることによって音を発生させるが、コーンの振動に伴ってスピーカ装置そのものも振動してしまう。このスピーカ装置の振動がスピーカ装置に接している周辺部位に伝播し、周辺部位からも微弱な音が発生してしまう。本発明者らは、このような周辺部位から発せられる音が、コーンの振動から発せられる本来聞こえるべき音を阻害する雑音となってしまうのではないかと疑念を抱き、当該疑念に基づいてさらに鋭意検討を重ね、スピーカ装置そのものの振動が生じにくくなる構造とすることにより高音質の音声を発することができることを見出し、以下の本発明を完成させた。
【0010】
本発明の密閉空間設置用スピーカ装置は、略直方体形状の対向する左右2面が吹き抜けとなっているエンクロージャーと、前記エンクロージャーの背面に取り付けられ、電気信号を振動に変換するスピーカユニットと、前記エンクロージャーの前面に取り付けられ、前記スピーカユニットの振動に連動して音声を発生させるコーンと、前記エンクロージャーのうちの吹き抜けとなっている左右2面を塞ぐように取り付けられたパッシブラジエーターと、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明において、エンクロージャーの左右2面にパッシブラジエーターが取り付けられていることにより、中低音の音量を増強することができる。また2枚のパッシブラジエーターが対向に配置されていることにより、相互の振動が相殺されてエンクロージャーの振動を低減することができる。エンクロージャーの振動が低減されることで、エンクロージャーからの固体伝播による部品の振動共鳴を低減することができるので、スピーカからの音以外の付帯音を大幅に減少させることができる。
【0012】
エンクロージャーを内部に収容可能なアタッチメントをさらに含み、前記アタッチメントは、前記エンクロージャーの前面を露出させつつ当該前面以外の5面に近接して配置された収容部と、前記収容部の前側端部から外側に延びる取付部とを有することが好ましい。
【0013】
エンクロージャーの前面以外の5面をアタッチメントの収容部が近接していることにより、密閉空間設置用スピーカの背面側(つまりエンクロージャーの背面側)からの音漏れを防ぐことができる。また、アタッチメントがエンクロージャーの前面を露出させる構造であることにより、コーンから発生される音声が前側に集中して発せられるので、密閉空間設置用スピーカから発せられる音がクリアに聞こえるようになる。
【0014】
本発明において、エンクロージャーと収容部との間に隙間が設けられていて互いに接していないことが好ましい。
【0015】
エンクロージャーと収容部との間に隙間ができていることで、エンクロージャーの振動をアタッチメントに伝達しにくくなるので、エンクロージャーからの固体伝播による部品の振動共鳴を低減することができる。これによりスピーカからの音以外の付帯音を大幅に減少させることができ、スピーカ装置から発せられる音声がさらにクリアに聞こえるようになる。
【0016】
本発明において、エンクロージャーの背面に円形のスピーカ取付穴が設けられており、当該スピーカ取付穴にスピーカユニットが嵌め込まれてエンクロージャーの背面とスピーカユニットとが面一になっていることが好ましい。
【0017】
このような形状でスピーカユニットを取り付けることにより、エンクロージャーが直方体形状となっていることで取り扱いやすくなるし、密閉空間設置用スピーカ装置を小型化することができ、例えば、自動車用のスピーカとして利用することができる。
【0018】
本発明において、エンクロージャーの左右の長さは、前記スピーカユニットの左右の長さと前記パッシブラジエーターの最大振幅の2倍との和よりも僅かに長く設定されていることが好ましい。
【0019】
上記エンクロージャーの構造とされていることで、パッシブラジエーターが最大振幅で振動したときであっても、パッシブラジエーターとスピーカユニットとが接触することがないし、パッシブラジエーターによる中低音の音量を増強させることができる。また、このような形状のエンクロージャーとすることによりエンクロージャー全体の小型化を図ることができ、例えば、自動車用のスピーカとして利用しやすくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスピーカ装置によれば、音声を発生させる際に振動が発生しにくいという優れた効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は、本発明の密閉空間設置用スピーカを正面から見た正面図であり、(b)はb−b断面図であり、(c)はc−c断面図である。
【図2】本発明の密閉空間設置用スピーカに用いられるアタッチメントの正面図である。
【図3】アタッチメントに取り付けられるエンクロージャーの上側斜視図である。
【図4】図3のfig4−fig4線断面図である。
【図5】83Hzの振動数の音波を発したときのエンクロージャーの振動量の対比を示すグラフ(左側がシールドBOX、右側が本発明)である。
【図6】150Hzの振動数の音波を発したときのエンクロージャーの振動量の対比を示すグラフ(左側がシールドBOX、右側が本発明)である。
【図7】本発明の密閉空間設置用スピーカを自動車に取り付けた場合の設置例である。
【図8】(a)本発明の密閉空間設置用スピーカを自動車に取り付けた場合の断面図である。(b)従来のスピーカを自動車に取り付けた場合の断面図である。
【図9】本発明の密閉空間設置用スピーカ装置2つを組み合わせた形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について図面を参照しつつ実施形態を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明では、図面を用いて説明しているが、本願の図面において同一の参照符号を付したものは、同一部分または相当部分を示している。
【0023】
<実施形態1:密閉空間設置用スピーカ装置>
図1(a)は、本発明の密閉空間設置用スピーカ装置を正面から見た正面図であり、図1(b)はb−b断面図であり、図1(c)はc−c断面図である。また図2は、アタッチメントの正面図である。本発明の密閉空間設置用スピーカ装置100は、自動車、電車、部屋等の密閉空間で使用する場合に適したスピーカであり、本発明の密閉空間設置用スピーカ装置100を用いることにより、密閉空間外に音漏れしにくく、かつ密閉空間で高品質な音声を楽しむことができる。本発明の密閉空間設置用スピーカ装置100は、図1に示すように、アタッチメント50と、アタッチメント50の内側に収容されたエンクロージャー10とが主な構成要素となっている。
【0024】
アタッチメント50は、本発明の密閉空間設置用スピーカ装置100を密閉空間の一部に取り付けるために用いられるものであり、密閉空間設置用スピーカ装置100から発せられる音が密閉空間外に漏洩することを防止するものでもある。アタッチメント50は、エンクロージャー10を内部に収容するための収容部51と、収容部51の前側端部から外側に延びる取付部52とを有している。
【0025】
収容部51は、図2および図3に示すように、エンクロージャー10の外形よりも一回り大きく、エンクロージャー10を内部に収容可能な窪み形状をしている。この収容部51にエンクロージャー10を収容した状態では、エンクロージャー10の前面11が収容部51から外部に露出し、かつ当該前面11以外の5面が収容部51に覆われている。そして、収容部51にエンクロージャー10を収容した状態で、エンクロージャー10の外側が収容部51に接しないように僅かな空間を設けて固定されている。このように僅かな隙間が設けられていることによりエンクロージャー10の振動が収容部51に伝わりにくくなるので、エンクロージャーの振動による固体伝播を防ぐことができる。
【0026】
図2には、収容部51の形状がエンクロージャー10よりも一回り大きい直方体形状を例示しているが、このような形状の収容部51のみに限られず、エンクロージャー10を内部に収容することができ、かつエンクロージャー10の前面11以外の5面が近接に配置される収容部51の形状である限り、収容部51の形状は特に限定されず、例えば、収容部51の形状が球形、楕円球形、多角柱形等であってもよい。
【0027】
取付部52は、収容部51の前側端部から外側に延びている平板状の部位であり、この取付部52を通じて密閉空間にアタッチメント50が取り付けられる。また、取付部52は、図1(a)に示す通り、エンクロージャー10の前面11と上下2本ずつ合計4本のビスで固定されている。したがって、エンクロージャー10の前面11と取付部52とをビス止め固定した状態では、エンクロージャー10の前面11と取付部52とが面一になっている。
【0028】
図1(b)と図1(c)を比較して明らかなように、エンクロージャー10の左右面と収容部51との間隔は、エンクロージャー10の上面および下面と収容部51との間隔と比べて広めに設定されている。これは、パッシブラジエーター40が振動したときにパッシブラジエーター40が収容部51に接しないようにするためである。つまり、エンクロージャー10の左右面と収容部51との間隔は、パッシブラジエーター40の最大振幅よりも大きくなるように固定されている。
【0029】
図3は、アタッチメントに取り付けられるエンクロージャーの上側斜視図であり、図4は、図3のfig4−fig4線断面図である。本発明の密閉空間設置用スピーカ装置100は、図4に示す通り、アタッチメント50にエンクロージャー10が取り付けられており、当該エンクロージャー10の前面側にはコーン20、背面側にはスピーカユニット30が取り付けられ、左右両面には1枚ずつ合計2枚のパッシブラジエーター40が取り付けられている。
【0030】
エンクロージャー10は、外観が略直方体形状(例えば、縦58mm、幅66cm、奥行き38mm)であり、対向する左右2面が吹き抜けとなっている。この吹き抜けとなっている左右2面を塞ぐようにパッシブラジエーター40が取り付けられている。ここで、「略直方体形状」とは、直方体の頂点の一部が面取り加工されているもの、および部分的に欠落しているもの等も含むという趣旨である。また、このエンクロージャー10の前面にはコーン取付穴13が設けられており、コーン取付穴13にコーン20が嵌め込むようにして取り付けられている。同様に、エンクロージャー10の背面11にはスピーカユニット取付穴14が設けられており、スピーカユニット取付穴14にスピーカユニット30が嵌め込むように取り付けられている。図4に示す通り、スピーカ取付穴14にスピーカユニット30が嵌め込まれることにより、エンクロージャー10の背面12とスピーカユニット30とが面一になっている。
【0031】
エンクロージャー10の左右の長さは、スピーカユニット30の左右の長さとパッシブラジエーター40の最大振幅の2倍との和よりも僅かに長く設定されている。このようにエンクロージャー10の左右の長さを設定することにより、パッシブラジエーター40が最大幅で振動したときにもスピーカユニット30に接することがなく、かつエンクロージャー10の大きさを最小にすることができる。
【0032】
コーン20は、スピーカユニット30からの振動により前後に振動して空気圧の変化を作り音声を発生させるものである。このコーン20は、エンクロージャー10の前面に取り付けられており、具体的には、コーン取付穴13にコーン20が嵌め込むようにして取り付けられている。コーン20は、従来からスピーカにおいて一般的に用いられているものを適宜用いることができる。
【0033】
スピーカユニット30は、電気信号を振動に変換するものであり、エンクロージャー10の背面12にあるスピーカユニット取付穴14に取り付けられている。このスピーカユニット30は、図4に示すように、スピーカユニット取付穴14に嵌め込まれ、全帯域に亘って低歪化をもたらすショートリング31と、超強力の磁力を有するリング状のマグネット35と、マグネット35の磁力を引き出すリング状のボトムヨーク34と、超大型ボイスコイル32と、ボイスコイル32の頭部に取り付けられているセンターキャップ33とを有している。
【0034】
パッシブラジエーター40は、エンクロージャー10内の空気振動に連動して振動し、主に中低音域の音声の増幅および補強を行うものであり、エンクロージャー10の左右2面のそれぞれを塞ぐように左右に1枚ずつ取り付けられている。本発明では、2枚のパッシブラジエーター40を対向して平行に配置することで、中低音域の音量を増大させることができるとともに、パッシブラジエーター40自体の振動を互いに相殺することができ、エンクロージャー10の振動を大幅に低減することが可能となる。
【0035】
対向配置した2枚のパッシブラジエーター40による振動低減効果を検証した結果を示す。図5および図6は、左右面が吹き抜けとなっていないエンクロージャー(つまり、パッシブラジエーター40を設けないシールドBOX)と、本発明(パッシブラジエーター40の2枚を対向して平行に配置する形態)との振動量の対比を示した実験結果である。図5は、83Hzの振動数の音波を発したときのエンクロージャーの振動量の対比を示すグラフであり、左側がシールドBOXの振動量を示し、右側が本発明のエンクロージャー10の振動量を示している。また図6は、図5の実験における振動数を150Hzに変更したことが異なる他は同一の実験結果である。
【0036】
図5および図6に示す通り、パッシブラジエーター40を対向配置することで、シールドBOXの場合と比べて振動量が顕著に減少している。このことから、本発明の密閉空間設置用スピーカ装置100は、従来のそれと比べて音波を発したときの振動量を大幅に低減できることが明らかである。
【0037】
本発明の密閉空間設置用スピーカ装置100は、従来のそれと比べて、音波を発したときの振動量を大幅に低減することができ、しかも、エンクロージャー10の前面以外の5面が収容部51で覆われていることで、背面に音波が漏れることを防ぎつつ前面にクリアな音波を発することができる。本発明の密閉空間設置用スピーカ装置100を用いることで、上述の優れた効果が相まって、密閉空間において雑音が極めて少量でクリアな音声を楽しむことができる。
【0038】
以下においては、本発明の密閉空間設置用スピーカ装置100をカースピーカとして用いる場合を説明する。
【0039】
図7は、本発明の密閉空間設置用スピーカ装置を自動車に取り付けた場合の設置例である。図7では、本発明の密閉空間設置用スピーカ装置100が自動車の前座席の下側および後ろ座席の上側に取り付けられている。密閉空間設置用スピーカ装置100から音声が発せられるときには密閉空間設置用スピーカ装置100が微弱ではあるが振動する。特に、密閉空間設置用スピーカ装置100を固定する金属製の構造物を伝わる振動(固体伝播)の速度は、コーン20から発せられる空気を伝わるの音速の秒速341m/sよりも圧倒的に早いので(例えば鉄の固体伝播の速度は5290m/s、図7中の黒色矢印)、密閉空間設置用スピーカ装置100から発せられた音波(図7中の白抜き矢印)よりもスピーカの振動で伝わる固体伝播の雑音の方が耳に速く届く。またスピーカの振動が車両全体に伝播して雑音を生じるので、これらの雑音によって密閉空間設置用スピーカ装置100から発せられた音声の明瞭度が低下する。
【0040】
本発明は、上述の固体伝播の問題を避けるべく、密閉空間設置用スピーカ装置100そのものの振動を減らす構造としていることに加え、振動が外部に伝播しにくい構造にし、さらにスピーカ装置100からの音声を前側のみに集中して発せられるようにしている。これによりスピーカ装置100に由来する固体伝播を抑制することができ、従来とは比べ物にならないくらいのクリアな音声を自動車内で楽しむことができる。
【0041】
図8(a)は、図7の密閉空間設置用スピーカ装置が取り付けられた部分の断面図であり、図8(b)は、従来のスピーカ装置の一例である。本発明の密閉空間設置用スピーカ装置100は、図8(a)に示す通り、アタッチメント50は自動車の外装(外装部72)に接触しないように内張71に取り付けられる。また内張71と外装部72の間に位置する固定部73にアタッチメント50を固定してもよいし、図8(a)に示すように、内張71と固定部73の2点でアタッチメント50を固定することが好ましい。本発明の密閉空間設置用スピーカ装置100はそもそも小型であるため、内張71から外装部72までのスペースが狭い車種の自動車にも適合可能である。
【0042】
図8(b)に示す従来のスピーカ装置101は、外側にむき出しの状態で内張71に取り付けられているため、スピーカ装置101から発せられる音波が外部に漏れることもあった。その点、本発明の密閉空間設置用スピーカ装置100は、図8(a)に示す通り、アタッチメント50で外周が覆われているので、従来のスピーカ装置101と比べて外部への音漏れをより少なくすることができる。
【0043】
図9は、本発明の密閉空間設置用スピーカ装置2つを組み合わせた形態を示す断面図である。図9に示すように、本発明の密閉空間設置用スピーカ装置100の背面を重ね合わせて1つのスピーカ装置として組み付けることにより、中高域の音波によって生じる共振を大幅に低減することができ、1つの密閉空間設置用スピーカ装置100を用いる場合と比べて、さらにクリアな音声を発することができるようになる。本実施形態の場合であっても、図9に示すように、内張71と固定部72との2点でアタッチメント50を固定することが好ましい。なお、図9に示す2つを組み合わせた密閉空間設置用スピーカ装置を用いる場合は、アタッチメント50の収容部51の深さを約2倍にする必要がある。
【0044】
上記の実施形態においては、密閉空間設置用スピーカ装置100を自動車のカースピーカに用いる場合を説明したが、このようなカースピーカの使用形態のみに限られず、電車、バス、部屋、飛行機、船などのあらゆる密閉空間に適宜使用することができる。
【0045】
<実施形態2:スピーカ装置>
上記の実施形態においては、密閉空間設置用スピーカ装置100について述べたが、密閉空間設置用スピーカ装置100のうちのアタッチメント50を除いた構造(つまり図3に示す形状のスピーカ装置)をそのまま用いることもできる。図3に示す形状のスピーカ装置は、従来のそれと比べて小型化が図られて点音源化されているので、音の指向性と広がりが最適化されており、あらゆる位置に配置しても自然な音を楽しむことができる。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
100 密閉空間設置用スピーカ装置
10 エンクロージャー
12 背面
13 コーン取付穴
14 スピーカユニット取付穴
20 コーン
30 スピーカユニット
31 ショートリング
32 超大型ボイスコイル
33 センターキャップ
34 ボトムヨーク
35 ネオジウムマグネット
40 パッシブラジエーター
50 アタッチメント
51 収容部
52 取付部
71 内張
72 外装部
73 固定部
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【手続補正書】
【提出日】20200122
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体の対向する左右2面が吹き抜けとなっているエンクロージャーと、
前記エンクロージャーの背面に取り付けられ、電気信号を振動に変換するスピーカユニットと、
前記エンクロージャーの前面に取り付けられ、前記スピーカユニットの振動に連動して音声を発生させるコーンと、
前記エンクロージャーのうちの吹き抜けとなっている左右2面を塞ぐように取り付けられたパッシブラジエーターと、
前記エンクロージャーを内部に収容可能なアタッチメントと、を含み、
前記アタッチメントは、前記エンクロージャーの前面を露出させつつ当該前面以外の5面に近接して配置された収容部と、前記収容部の前側端部から外側に延びる取付部とを有するスピーカ装置。
【請求項2】
前記エンクロージャーと前記収容部との間に隙間が設けられていて互いに接していないことを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記エンクロージャーの背面に円形のスピーカ取付穴が設けられており、当該スピーカ取付穴に前記スピーカユニットが嵌め込まれることにより、前記エンクロージャーの背面と前記スピーカユニットとが面一になっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記エンクロージャーの左右の長さは、前記スピーカユニットの左右の長さと前記パッシブラジエーターの最大振幅の2倍との和よりも僅かに長く設定されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のスピーカ装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の密閉空間設置用スピーカ装置は、略直方体形状の対向する左右2面が吹き抜けとなっているエンクロージャーと、前記エンクロージャーの背面に取り付けられ、電気信号を振動に変換するスピーカユニットと、前記エンクロージャーの前面に取り付けられ、前記スピーカユニットの振動に連動して音声を発生させるコーンと、前記エンクロージャーのうちの吹き抜けとなっている左右2面を塞ぐように取り付けられたパッシブラジエーターと、エンクロージャーを内部に収容可能なアタッチメントとを含み、前記アタッチメントは、前記エンクロージャーの前面を露出させつつ当該前面以外の5面に近接して配置された収容部と、前記収容部の前側端部から外側に延びる取付部とを有することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】