(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021106566
(43)【公開日】20210729
(54)【発明の名称】オフフレーバーが低減された緑茶飲料
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20210702BHJP
【FI】
   !A23F3/16
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】2020146532
(22)【出願日】20200901
(11)【特許番号】6806947
(45)【特許公報発行日】20210106
(31)【優先権主張番号】2019237807
(32)【優先日】20191227
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区堂島浜二丁目1番40号
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】武藤 麻里
【住所又は居所】神奈川県川崎市中原区今井上町13−2 サントリー商品開発センター内
(72)【発明者】
【氏名】柳田 晃伸
【住所又は居所】神奈川県川崎市中原区今井上町13−2 サントリー商品開発センター内
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB01
4B027FB13
4B027FC01
4B027FK02
4B027FP85
(57)【要約】
【課題】本発明は、オフフレーバーである2−メトキシ−4−ビニルフェノールをマスキングされた緑茶飲料を提供することを目的とする。
【解決手段】緑茶飲料に0.1〜8ppmのファゴミンを含有させることによって、容器詰緑茶飲料におけるオフフレーバーをマスキングする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1〜8ppmのファゴミンを含有させることを特徴とする、緑茶飲料において2−メトキシ−4−ビニルフェノールに起因するオフフレーバーをマスキングする方法。
【請求項2】
10ppb以下の2−メトキシ−4−ビニルフェノールを含有し、0.1〜8ppmのファゴミンが配合されている緑茶飲料。
【請求項3】
0.1〜8ppmのファゴミンを配合する工程を含む、2−メトキシ−4−ビニルフェノール濃度が10ppb以下である緑茶飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフフレーバーがマスキングされた緑茶飲料およびその製造方法に関する。また本発明は、緑茶飲料のオフフレーバーをマスキングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶飲料は、加熱による香気の変化が大きいことが知られている。特に、常温で長期保存可能な容器詰緑茶飲料(本明細書中、「加熱殺菌済容器詰茶飲料」とも表記する)の製造では過酷な加熱殺菌を必要とするため、加熱臭(レトルト臭ともいわれる)を生じる。
そこで、加熱殺菌による緑茶飲料の香気変化を抑制する方法が種々提案されている。例えば、アスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウムを添加し、容器に充填する際のヘッドスペースの空気を窒素ガスと置換して、緑茶飲料の製造過程中や製造後の褐変及び褐変に伴う不快味や不快臭の発生を防止する方法(特許文献1、非特許文献1)、緑茶等の天然物由来のフラボノイドを緑茶飲料に添加して、緑茶飲料の褐変及び褐変に伴う香味劣化を抑制する方法(特許文献2)、サイクロデキストリンを緑茶抽出液に添加して加熱処理時に発生するレトルト臭をサイクロデキストリンの環状内に包接させることにより、レトルト臭を無臭化する方法(特許文献3、非特許文献2)、配糖体分解酵素を緑茶抽出液に添加することにより、加熱臭の生成を抑制する方法(特許文献4)、煎茶に焙じ茶を混合して香気変化を目立たなくする方法(非特許文献1)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平1−48737号公報
【特許文献2】特開平1−289446号公報
【特許文献3】特開平1−174328号公報
【特許文献4】特開2004−147606号公報606号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「茶業研究報告」、64巻、p.35−38(1986)
【非特許文献2】日本農芸化学会誌、Vol63、No.1、pp29−35、1989
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱臭の原因の一つとして知られているリナロールやベンジルアルコール等は、緑茶抽出液中に溶け出しているその前駆体である配糖体が、加熱殺菌中に加水分解を受けることにより生成する。このような配糖体による香気変化は、配糖体分解酵素の利用により、ある程度は制御することが可能である。
しかし、緑茶飲料のオフフレーバーとなる2−メトキシ−4−ビニルフェノールは、フェルラ酸の脱炭酸により生成すると考えられており、この香気をマスキングする有効な方法や、この香気の生成を抑制する方法は未だ知られていない。
本発明は、緑茶飲料のオフフレーバーとなる2−メトキシ−4−ビニルフェノールのマスキング方法を提供することを目的とする。また、本発明は、2−メトキシ−4−ビニルフェノールを含有しながらも該オフフレーバーがマスキングされた緑茶飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、2−メトキシ−4−ビニルフェノールの香気を選択的にマスキングできる成分を鋭意検討した結果、所定量のファゴミンに優れた効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、これに限定されるものではないが、以下の態様を包含する。
(1) 0.1〜8ppmのファゴミンを含有させることを特徴とする、緑茶飲料において2−メトキシ−4−ビニルフェノールに起因するオフフレーバーをマスキングする方法。
(2) 10ppb以下の2−メトキシ−4−ビニルフェノールを含有し、0.1〜8ppmのファゴミンが配合されている緑茶飲料。
(3) 0.1〜8ppmのファゴミンを配合する工程を含む、2−メトキシ−4−ビニルフェノール濃度が10ppb以下である緑茶飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、2−メトキシ−4−ビニルフェノールの香気が選択的にマスキングされるので、オフフレーバーが知覚されない、急須で淹れた高級緑茶のように風味良好な容器詰緑茶飲料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(マスキング方法)
本発明は、緑茶飲料のオフフレーバーのマスキング方法に関する。ここで、オフフレーバーとは、JIS Z 8144:2004に記載の「製品又は試料に本来備わっていない異質な風味」をいい、本発明における緑茶飲料のオフフレーバーの主な原因は、緑茶飲料中で木クレオソート様の香気と知覚される2−メトキシ−4−ビニルフェノール(2-Methoxy-4-vinylphenol、CAS登録番号:7786−61−0)である。2−メトキシ−4−ビニルフェノールは、4-ビニルグアイアコール(4-Vinylguaiacol)とも称され、穀物(特にトウモロコシ)のアルコール発酵物などに含まれる成分であり、甘いスパイシーな香気を有する。2−メトキシ−4−ビニルフェノールの匂いの閾値は、0.25〜0.3mg/L程度と報告されている(www.nihs.go.jp/hse/food-info/chemical/kanshi/table3.xls)が、本発明者らの検討によると、0.02ppbという極微量であっても緑茶飲料中ではオフフレーバーとして知覚される。本発明に係るマスキング方法が効果的に作用するのは、2−メトキシ−4−ビニルフェノールを0.02〜10ppb程度の濃度で含有する緑茶飲料である。
【0009】
(ファゴミン)
本発明に係る緑茶飲料のオフフレーバーのマスキング方法としては、緑茶飲料に対して、マスキング剤としてファゴミンを添加する。ここで、ファゴミン(Fagomine)とは、、ソバ(Fagopyrum esculentum)の種などから単離されるアルカロイドで、1,2,5−トリデオキシ−1,5−エピミノ−D-xylo−ヘキシトール(1,2,5-Trideoxy-1,5-epimino-D-xylo-hexitol)とも称される(CAS登録番号:53185−12−9)。
【0010】
ファゴミンの添加方法は、特に制限されない。上述のオフフレーバーを含む緑茶飲料に対してファゴミンを添加してもよいし、オフフレーバーを発生する加熱殺菌工程前の緑茶抽出液に予めファゴミンを添加しておいてもよい。ファゴミンは、オフフレーバーがマスキングできる程度の量を添加すればよい。通常、緑茶飲料全量に対して0.1ppm以上の濃度となるように添加する。マスキング効果の顕著さから、0.2ppm以上が好ましく、0.3ppm以上がより好ましい。マスキング剤としてのファゴミン量に上限はないが、ファゴミン自体が緑茶飲料の香味に影響を及ぼすことがあることから、8ppm以下であることが好ましく、7ppm以下がより好ましく、4ppm以下であることがさらに好ましい。緑茶飲料中のファゴミンの含有量は、HPLCを用いて測定することができる。
【0011】
本発明のマスキング方法で使用されるファゴミンは、飲食品の分野において通常使用されているものであれば由来は特に限定されず、例えば、化学合成品でも、ファゴミンを含有する植物から抽出したものを用いてもよい。植物抽出物を用いる場合、緑茶飲料の香味への影響を最小化するために、精製品(粗精製品を含む)を用いることが好ましい。
【0012】
(緑茶飲料)
本発明は、オフフレーバーがマスキングされた緑茶飲料に関する。本発明に係る緑茶飲料は、マスキング剤としてファゴミンを含有する緑茶飲料であり、具体的には、0.1〜8ppmのファゴミンを含み、2−メトキシ−4−ビニルフェノールの含有量が10ppb以下である。
本発明でいう緑茶飲料とは、緑茶葉の抽出物を配合して調製した飲料を意味し、具体的には、Camellia属(例えば、C. sinensis var. sinensis(やぶきた種を含む)、C. sinensis var. assamica等のCamellia sinensis等)及びそれらの雑種から選択される茶葉で、不発酵茶に分類される茶葉(例えば、煎茶、番茶、碾茶、釜入り茶、茎茶、棒茶、芽茶等)から水や熱水、抽出助剤を添加した水溶液で抽出した緑茶葉抽出物を配合した飲料の総称をいう。なお、抽出方法としては、例えば、ニーダー抽出、攪拌抽出(バッチ抽出)、向流抽出(ドリップ抽出)、カラム抽出等の公知の方法を採用することができる。また、抽出条件は特に限定されず、抽出方法により適宜選択することができる。例えば、水の温度:60〜100℃(好ましくは、70〜90℃)、水の量:茶葉の重量に対して5〜100倍量(好ましくは20〜60倍量)、抽出時間:約1分〜40分(好ましくは1〜20分間)である。必要に応じて1回〜数回攪拌して、常圧又は加圧下で抽出できる。
【0013】
本発明の緑茶飲料の好適な一つの態様として、緑茶抽出物を主成分とする飲料が挙げられる。ここで、緑茶抽出物を主成分とする飲料とは、食品表示法(平成27年4月施行)で表記される原材料表示において、「緑茶」「緑茶抽出物」などの緑茶に関する表記が上位に記載される飲料をいう。好ましくは、原材料表示で緑茶に関する表記が1番目又は2番目に表記される飲料であり、より好ましくは1番目に表記される飲料である。
【0014】
上述の不醗酵茶に分類される茶葉を、強い火で焙じた焙じ茶葉で調製される焙じ茶飲料は、焙じることでオフフレーバーの前駆体が分解されるためオフフレーバーが生成され難い。また、焙じ茶飲料は、独特の香ばしさを有するためオフフレーバーが知覚され難い。このように、焙じ茶飲料は本発明の課題が顕在化し難いことから、好ましくは本発明の緑茶飲料から除外される。焙じ茶飲料としては、例えば、焙じ茶葉の抽出物のみからなる液体、焙じ茶葉の抽出物を主体として焙煎していない緑茶葉の抽出物を混合した液体、又はこれらの液体に添加物を加えた液体などを挙げることができる。なお、「焙じ茶葉の抽出物を主体」とは、抽出物全体の固形分濃度に対して、焙じ茶抽出物由来の固形分濃度が80質量%以上、好ましくは90質量%以上であることをいう。
【0015】
本発明の緑茶飲料では、オフフレーバーをマスキングすることにより、好ましい香気である青葉アルコール(緑の香り)が相対的に強く知覚できる。ここで、「緑の香り」とは、緑茶を感じさせるグリーンな香り成分をいう。本発明の緑茶飲料では、青葉アルコールの中でも、特に1−ヘキサノール(1-Hexanol)の香気を増強できることから、1−ヘキサノールを所定量含有する緑茶飲料は、本発明の好適な態様の一例である。具体的には、1−ヘキサノールを0.70〜2.00ppb、好ましくは0.75〜1.80ppbの濃度で含有する緑茶飲料である。
【0016】
緑茶飲料のオフフレーバーとなる2−メトキシ−4−ビニルフェノールは、例えば、緑茶抽出液を加熱殺菌することにより生成する。したがって、加熱殺菌済の容器詰緑茶飲料は、本発明の緑茶飲料の好適な態様の一つである。加熱殺菌済容器詰緑茶飲料の加熱殺菌方法は、食品衛生法に定められた条件に適合する方法を、用いる容器によって適宜選択することができる。緑茶飲料を充填する容器は、公知の容器を使用することができ、例えば、樹脂製容器、金属製容器、紙製容器、ガラス製容器などを好適に使用できる。一つの態様において、容器詰緑茶飲料は、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などであり、容量は特に限定されないが、例えば100mL〜3000mLであり、好ましくは350mL〜2000mLであり、500〜1000mLとしてもよい。例えば容器として非耐熱性容器(PETボトル、紙容器等)を用いた場合は、調合液を予めプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌(UHT殺菌)してから一定の温度まで冷却した後に容器に充填する方法を、容器として耐熱性容器(金属缶、ガラス瓶等)を使用する場合には、レトルト殺菌法を用いることができる。加熱殺菌条件としては、例えばPETボトルを用いた場合は、好ましくは60〜150℃にて1秒間〜60分であり、より好ましくは90〜150℃にて1秒間〜30分であり、さらに好ましくは110〜150℃にて1秒間〜30分である。このような条件で加熱殺菌された容器詰緑茶飲料は、0.02ppb以上の2−メトキシ−4−ビニルフェノールを含むことが多く、本発明によってオフフレーバーを効率的にマスキングすることができる。
【0017】
(その他の成分)
本発明の緑茶飲料には、上記成分に加えて、アスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウムなどの酸化防止剤を含有させることができる。酸化防止剤の添加により、緑茶飲料の製造過程中や製造後の褐変及び褐変に伴う不快臭の発生を防止することができるので、本発明のオフフレーバーのマスキング効果と相俟って、緑茶飲料の風味を向上させることができる。酸化防止剤の量は、酸化防止剤の種類によって適宜選択すればよく、例えば、L−アスコルビン酸の場合、0.02〜0.08重量%程度である。
【0018】
また、本発明の緑茶飲料には、サイクロデキストリンを含有させてもよい。オフフレーバーをサイクロデキストリン(環状オリゴ糖ともいう)の環状内に包接させて低減することができるので、本発明のマスキング効果と相加的又は相乗的な作用が期待できる。サイクロデキストリンを含有させる場合、0.1重量%以上添加すると、サイクロデキストリンが茶に必要な苦味や渋味をも包接して減少させてしまう傾向にある(非特許文献2)ことから、サイクロデキストリンの含有量は緑茶飲料全体に対して0.05重量%以下であることが好ましい。本発明者らの検討によると、青葉アルコール等の好ましい香気を包接することもあるので、サイクロデキストリンは含有させないことが、特に好ましい。
【0019】
本発明の飲料が常温で長期間保存可能な容器詰緑茶飲料の場合、通常、保存中におけるpH低下を抑制するために炭酸水素ナトリウムなどのpH調整剤を用いたpH調整がなされている。容器詰緑茶飲料のpHは5.5〜7.0程度が好ましく、5.8〜6.5程度がより好ましい。このようなpHに調整された緑茶飲料は、pH調整されていない緑茶飲料(例えば、急須で淹れた緑茶飲料)と比較してグリーンノートが弱くなりやすい。本発明の緑茶飲料は、オフフレーバーがマスキングされ、相対的に青葉アルコール(緑の香り)が相対的に強くなるので、pH調整された緑茶飲料であっても、淹れたての高級緑茶のような強い緑の香りを知覚することができる。本発明の効果の顕著さから、pH調整された緑茶飲料は本発明の好適な態様の一例である。ここで、本明細書におけるpHとは、液状飲料100mLを300mLのビーカーに量り取り、20℃に温度調整をしてpHメータにより測定する値をいう。
【0020】
その他、本発明の茶飲料には、本発明の所期の目的を逸脱しない範囲であれば、上記成分に加え、必要に応じて各種添加剤が配合されていてもよい。各種添加剤としては、例えば、色素類、乳化剤、保存料、ビタミン、エキス類、香料等を単独で又は併用することができる。本発明の効果を顕著に発揮できるという観点からは、香料不使用の緑茶飲料であることが好ましい。
また、低甘味度の飲料は本発明の緑茶飲料の好適な一態様である。ここで「低甘味度」の飲料とは、具体的には甘味度が2以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.5以下の緑茶飲料をいう。ここで、甘味度とは、甘味の強さを示す尺度であり、ショ糖1重量%(20℃)の甘味を1とした場合の相対比である。飲料の甘味度は、当該飲料に含まれる各甘味成分の量(重量濃度)を、ショ糖の甘味1に対する当該甘味成分の甘味の相対比に基づいて、ショ糖の相当量に換算して、次いで当該飲料に含まれる全ての甘味成分のショ糖甘味換算量を総計することによって求めることができる。なお、ショ糖の甘味1に対する各種甘味成分の甘味の相対比は、公知の砂糖甘味換算表(マクマリー有機化学(第7版)988頁)から求めることができる。低甘味度の緑茶飲料として、好ましくは、甘味成分を配合しない緑茶飲料が挙げられる。甘味料としては、例えば、果糖、砂糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖、麦芽糖、ショ糖、高果糖液糖、糖アルコール、オリゴ糖、はちみつ、サトウキビ搾汁液(黒糖蜜)、水飴、ステビア末、ステビア抽出物、羅漢果末、羅漢果抽出物、甘草末、甘草抽出物、ソーマトコッカスダニエリ種子末、ソーマトコッカスダニエリ種子抽出物などの天然甘味料や、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、アスパルテーム、サッカリンなどの人工甘味料が挙げられる。
【実施例】
【0021】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
各成分の定量
各サンプルにおけるファゴミン、2−メトキシ−4−ビニルフェノール、1−ヘキサノールは、以下の方法にて定量した。
(1)ファゴミン
茶飲料中のファゴミンの分析は、HPLC(高速液体クロマトグラフ)を用いて行った。必要に応じて、茶飲料を減圧濃縮し、分析に供した。
HPLC測定条件
・カラム:TSKgel Amide-80, φ4.6mm×250mm, 粒径5μm
・移動相:水、アセトニトリル及び酢酸の混液
・流量:1.0ml/min
・カラム温度:40℃
・イオン化法:エレクトロスプレー(正イオン検出モード)
・設定質量数(m/z):147.9→85.9
(2)2−メトキシ−4−ビニルフェノール、1−ヘキサノール
試料液をそのまま、または高速液体クロマトグラフ用蒸留水(富士フィルム和光純薬社製)で適宜希釈した希釈液5mlを、ガラス製20ml容クリンプバイアル(直径18mm,AMR社製)に入れ、PTFE製セプタム付きクリンプキャップ(AMR社製)にて密栓し、固相マイクロ抽出法(SPME Arrow)にて香気成分の抽出を行った。定量は、GC/MSの分析結果からMS Rangeを設定してクロマトグラムを描画し、検出されたピークの面積を用いて、標準添加法または内部標準法にて行った。使用した機器及び条件を以下に示す。
ファイバー:SPME Arrow 1.1mm,Phase Carbon WR/PDMS,Thickness 120μm,Length 20mm,(パルシステム社製)
オートサンプラー:TriPlus RSH(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
分析待ちサンプルの冷却保管温度:1〜4℃
予備加温攪拌装置:Agitator
予備加温:45℃3分間
予備加温攪拌:300rpm
揮発性成分抽出装置:Heatex Stirrer
揮発性成分抽出:45℃20分間
揮発性成分抽出時の攪拌:800rpm
揮発性成分の脱着時間:2分間
揮発性成分の脱着時ファイバー深さ:50mm
GCオーブン:Trace1300(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
カラム:DB−WAX UI,60m×0.25mmi.d.×df=0.50μm(アジレントテクノロジーズ社製);ただし不活性化フューズドシリカチューブ(0.25mmi.d.,アジレントテクノロジーズ社製)をプレカラム部(長さ1.5m)、ポストカラム部(長さ1.0m)に接続
GC温度条件:40℃(5分間)→3℃/分→190℃→5℃/分→250℃(15分間)
平衡化待ち時間:0.5分間
キャリアーガス:ヘリウム,1.0ml/分,流量一定モード
インジェクション:スプリットレス法
インレット温度:250℃
クライオフォーカス機能:液体窒素冷却装置およびヒーター(PTVインジェクタを利用、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)をプレカラム部に設置
クライオフォーカス条件:−95℃(2.5分間)→14.5℃/分→250℃(分析終了まで)
質量分析装置:Q Exactive GC Orbitrap MS system(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
イオン化方式:EI(70eV)
測定方式:Orbitrapによるスキャン測定
Runtime:3.5〜80.0分
Polatiry:positive
Resolution:60000
AGC target:3e6
スキャンレンジ:m/z35〜500
定量イオンは以下に示すイオンから、検出感度、ピーク形状、及びピーク分離が良好な
ものを選択する。2−メトキシ−4−ビニルフェノール m/z150.06753、135.04406、又は107.04914;1−ヘキサノール m/z69.06988、55.05423、又は56.06205。MS Rangeは5〜10ppmとし、質量のずれがある場合は、上記定量イオンのm/zを適宜シフトさせることができる。なお、上記イオンのいずれを用いてもピーク形状又は感度が良好でない場合は、AGC targetの変更や、SIMモードを用いてもよい。
【0022】
実験1:緑茶飲料の製造と評価(参考例)
実験1−1
20gの緑茶葉(煎茶)に対し熱水(70〜80℃)1000mLを用いて5分間抽出処理を行った後、茶葉を分離し、さらに200メッシュを通液させ、粉砕組織や茶粒子などの固形分を除去して、緑茶抽出液を得た。この緑茶抽出液が47.5mg/100mLとなるように水を加え緑茶飲料を得た(サンプル1−1、甘味度:2以下)。次いで、2−メトキシ−4−ビニルフェノール含有量が0.01〜1ppbとなるように、サンプル1−1に2−メトキシ−4−ビニルフェノールを加えて緑茶飲料を調整した(サンプル1−2〜1−5)。2−メトキシ−4−ビニルフェノールはToronto Research Chemicals社製の合成品(純度97%)を使用した。
【0023】
得られた緑茶飲料のオフフレーバー(異質な風味)について、専門パネル5名にて評価を実施した。全員がサンプル1−1と比較してオフフレーバーを感じた場合を×、3〜4名が感じた場合を△、2名以下が感じた場合(専門パネル全員が対象と変わらないと評価した場合を含む)を〇とした。
【0024】
官能評価結果を表1に示す。緑茶飲料中の2−メトキシ−4−ビニルフェノール濃度が0.02ppb以上であるとパネルの過半数がオフフレーバーがあると評価し、2−メトキシ−4−ビニルフェノール濃度が0.03ppb以上ではパネル全員がオフフレーバーがあると評価した。
【0025】
【表1-1】
【0026】
実験1−2
実験1−1とは異なる20gの緑茶葉(煎茶)に対し熱水(70〜80℃)1000mLを用いて5分間抽出処理を行った後、茶葉を分離し、さらに200メッシュを通液させ、粉砕組織や茶粒子などの固形分を除去して、緑茶抽出液を得た。この緑茶抽出液が47.5mg/100mLとなるように水を加えた後、2−メトキシ−4−ビニルフェノールを添加して下表に示す緑茶飲料を調製した(サンプル1−6、1−7、甘味度:2以下)。2−メトキシ−4−ビニルフェノールはToronto Research Chemicals社製の合成品(純度97%)を使用した。
得られた緑茶飲料のオフフレーバー(異質な風味)を実験1−1と同様に評価した結果を下表に示す。
【0027】
【表1-2】
【0028】
実験2:緑茶飲料の製造と評価
実験2−1
実験1−1で得られたサンプル1−5(2−メトキシ−4−ビニルフェノール濃度:1ppb)に、ファゴミン含有量が表2の通りになるようにファゴミンを配合して緑茶飲料を製造した。ファゴミンとしてはフナコシ株式会社の合成品(純度98%)を使用した。
【0029】
得られた緑茶飲料のオフフレーバーの強さについて、専門パネル5名にて、1〜5点の5段階評価法にて官能評価した。2−メトキシ−4−ビニルフェノールを1ppb含んでおり、かつファゴミンが含まれていないサンプル1−5を1点とし、2−メトキシ−4−ビニルフェノールを含まないサンプル1−1を5点として評価した。下記の基準に基づいて各専門パネルが評価した結果を再度全員で自由討議し、全員の合意のもとに整数値で表記した。
・5点:オフフレーバーを感じない(サンプル1−1と同等)
・4点:オフフレーバーを僅かに感じる
・3点:オフフレーバーをやや感じる
・2点:オフフレーバーをとても感じる
・1点:オフフレーバーを非常に感じる(サンプル1−5と同等)
【0030】
官能評価結果を表2に示す。表から明らかなとおり、ファゴミンを緑茶飲料0.1ppm以上、好ましくは0.3ppm以上配合することで、2−メトキシ−4−ビニルフェノールをマスキングしオフフレーバーを抑制することができた。その結果、グリーンノートが増強して感じられた。
【0031】
また、ファゴミンの含有量が10ppmであるサンプル2−14は、2−メトキシ−4−ビニルフェノールのマスキング効果はあるものの、ファゴミン自体の雑味をやや感じると評価したパネルがいたことから、ファゴミンの上限は8ppm程度とすることが好ましいことが示唆された。
【0032】
【表2-1】
【0033】
実験2−2
実験1−2で得られたサンプル1−7(2−メトキシ−4−ビニルフェノール濃度:1.4ppb)に、ファゴミン含有量が下表の通りになるようにファゴミンを配合して緑茶飲料を製造した。ファゴミンとしてはフナコシ株式会社の合成品(純度98%)を使用した。
サンプル1−7を1点とした以外は、実験2−1と同様にして緑茶飲料のオフフレーバーを評価した。下表から明らかなとおり、ファゴミンを緑茶飲料0.1ppm以上、好ましくは0.3ppm以上配合することで、2−メトキシ−4−ビニルフェノールをマスキングしてオフフレーバーを抑制することができた。その結果、グリーンノートが増強して感じられた。
また、ファゴミンの含有量が10ppmであるサンプルは、2−メトキシ−4−ビニルフェノールのマスキング効果はあるものの、ファゴミン自体の雑味をやや感じると評価したパネルがいた。
【0034】
【表2-2】
【0035】
実験3:緑茶飲料の製造と評価
実験3−1
実験1−1で得られたサンプル1−1に、2−メトキシ−4−ビニルフェノールとファゴミンを配合し、表3に示す配合の緑茶飲料を製造した。
【0036】
得られた緑茶飲料のオフフレーバーについて、専門パネル5名にて、1〜5点の5段階評価法にて官能評価した。各実施例と同量の2−メトキシ−4−ビニルフェノールを含み、ファゴミンを添加していないサンプルを1点とし、サンプル1−1を5点として評価を行った。下記の基準に基づいて各専門パネルが評価した結果を再度全員で自由討議し、全員の合意のもとに整数値で評価した。
・5点:オフフレーバーを感じない(サンプル1−1と同等)
・4点:オフフレーバーを僅かに感じる
・3点:オフフレーバーをやや感じる
・2点:オフフレーバーをとても感じる
・1点:オフフレーバーを非常に感じる(各実施例のファゴミン無添加サンプルと同等)
【0037】
官能評価結果を表3に示す。緑茶飲料にファゴミンを添加することにより、2−メトキシ−4−ビニルフェノールがマスキングされて、オフフレーバーが抑制された。その結果、グリーンノートが増強して感じられた。
なお、2−メトキシ−4−ビニルフェノール含有量が20ppbであるサンプル3−10は、2−メトキシ−4−ビニルフェノールのオフフレーバーが強く、マスキング効果が発揮されなかった。また、2−メトキシ−4−ビニルフェノール含有量が0.03ppbであるサンプル3−3と3−4は、ともに5点であるが比較をすると、サンプル3−4の方がファゴミンの雑味をわずかに感じると評価するパネルもいた。
【0038】
【表3-1】
【0039】
実験3−2
実験1−2で得られたサンプル1−6に、2−メトキシ−4−ビニルフェノールとファゴミンを配合し、下表に示す配合の緑茶飲料を製造した。
実験3−1と同様にして緑茶飲料のオフフレーバーを評価した結果を下表に示す。緑茶飲料にファゴミンを添加することにより、2−メトキシ−4−ビニルフェノールがマスキングされて、オフフレーバーが抑制された。その結果、グリーンノートが増強して感じられた。
【0040】
【表3-2】
【0041】
実験4:緑茶飲料の製造と評価
オフフレーバーを感じられる市販の加熱殺菌済容器詰緑茶飲料を分析したところ、2−メトキシ−4−ビニルフェノールを含有することが分かった。これらの容器詰緑茶飲料に表4の通りファゴミンを添加して緑茶飲料を調製し、ファゴミンを添加していない緑茶飲料を対照としてオフフレーバーを評価した(緑茶飲料のpH:約6.0)。
具体的には、ファゴミンを添加していない緑茶飲料とオフフレーバーが同等である場合を±、オフフレーバーがわずかにある場合を+、オフフレーバーがない場合を++として評価した。
表4から明らかなとおり、市販されている容器詰緑茶飲料においてもファゴミンを添加することで、2−メトキシ−4−ビニルフェノールのオフフレーバーを抑制することが示された。
【0042】
【表4】