(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021107486
(43)【公開日】20210729
(54)【発明の名称】テトラアザポルフィリン化合物、インキ組成物、フィルム、光学材料、光学フィルム、ディスプレイ表面フィルム、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09B 47/12 20060101AFI20210702BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20210702BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20210702BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20210702BHJP
【FI】
   !C09B47/12CSP
   !C09D11/02
   !C09B67/20 G
   !G02B5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】30
(21)【出願番号】2019238798
(22)【出願日】20191227
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号
(71)【出願人】
【識別番号】000179904
【氏名又は名称】山本化成株式会社
【住所又は居所】大阪府八尾市弓削町南1丁目43番地
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 政人
【住所又は居所】東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号 大日本印刷株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】木下 智之
【住所又は居所】大阪府八尾市弓削町南1丁目43番地 山本化成株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】垣尾 大輔
【住所又は居所】大阪府八尾市弓削町南1丁目43番地 山本化成株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】平井 裕太郎
【住所又は居所】大阪府八尾市弓削町南1丁目43番地 山本化成株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】吉田 高史
【住所又は居所】大阪府八尾市弓削町南1丁目43番地 山本化成株式会社内
【テーマコード(参考)】
2H148
4J039
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA14
2H148CA18
2H148CA19
4J039AD10
4J039BE02
4J039CA04
4J039EA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】波長570〜620nm付近の極大吸収波長よりも短波長側(550nm付近)の副吸収が低減されるテトラアザポルフィリン化合物の提供。
【解決手段】式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物。

(RとR、RとR、RとR、及びRとRの2つの置換基のうち、いずれか一方の置換基は各々独立に、H又はC1〜C12の脂肪族炭化水素基;他方の置換基は各々独立に、−OH、−SH、又は−NH基を有する芳香族炭化水素基;Mは2価の金属原子又はオキシ金属)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物。
【化1】
[一般式(1)中、RとR、RとR、RとR、及びRとRの2つの置換基のうち、いずれか一方の置換基はそれぞれ独立に、下記グループAから選ばれる基を表し、他方の置換基はそれぞれ独立に、下記グループBから選ばれる基を表し、Mは2価の金属原子又はオキシ金属を表す。
グループA:水素原子、及び炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基
グループB:下記一般式(2)で表される1価の基
【化2】
(一般式(2)中、Arは(n+1)価の芳香族炭化水素基を表し、Qは、−OH、−SH、又は−NHを表す。nは1〜7の整数であり、*はテトラアザポルフィリン骨格との結合位置を示す。)]
【請求項2】
前記一般式(2)の芳香族炭化水素基において、テトラアザポルフィリン骨格と結合する炭素原子の隣の炭素原子の少なくとも1つに、Qが結合している、請求項1に記載のテトラアザポルフィリン化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のテトラアザポルフィリン化合物と、バインダー成分とを含有する、インキ組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のインキ組成物及びその硬化物の少なくとも一方を含有する、フィルム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のテトラアザポルフィリン化合物を含有する、光学材料。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のテトラアザポルフィリン化合物を含有する、光学フィルム。
【請求項7】
請求項6に記載の光学フィルムを備える、表示装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のテトラアザポルフィリン化合物と、バインダー成分とを含有する、ディスプレイ表面フィルム用インキ組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のテトラアザポルフィリン化合物を含有する、ディスプレイ表面フィルム。
【請求項10】
請求項9に記載のディスプレイ表面フィルムを備える、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、テトラアザポルフィリン化合物、及び当該テトラアザポルフィリン化合物を含有するインキ組成物、フィルム、光学材料、光学フィルム、ディスプレイ表面フィルム、並びに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明装置や表示装置の光源として、白色LED(Light Emitting Diode)が用いられることが多くなっている。
白色LEDの光源にはいくつかの種類があり、例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)のそれぞれ単色発光の3つのLEDを組み合わせて混色させる光源、青色発光LEDの青色光と黄色発光の蛍光体の組合せによる光源、及び青色発光LEDと緑色および赤色発光の蛍光体の組合せによる光源がある。
【0003】
これらのうち、青色発光LEDの青色光と黄色発光の蛍光体の組合せや、青色発光LEDと緑色および赤色発光の蛍光体の組合せにより白色光を得る方式を使用した場合、得られる白色光のスペクトルには、590nm付近の領域にオレンジ色や490nm付近のシアン色を示す光が含まれており、この領域の光の発光強度が高いと色純度が低下することが知られている。
【0004】
このような点を改良するために、例えば特許文献1には、570〜620nm付近の波長域に吸収極大を有するテトラアザポルフィリン化合物を含有させた色補正フィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5706097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光源、光学部材、又は外光反射に起因した不要な波長領域の光を抑制するために、不要な波長領域の光を選択的に吸収する色素化合物を用いることが有効と考えられる。
特許文献1に記載されているテトラアザポルフィリン化合物は波長570〜620nm付近に吸収極大を1つ有するものの、その極大吸収波長よりも短波長側に副吸収があるために、色再現性(色純度)や明るさを低下させたりする問題があった。
【0007】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、波長570〜620nm付近の極大吸収波長よりも短波長側(550nm付近)の副吸収が低減されるテトラアザポルフィリン化合物、当該テトラアザポルフィリン化合物を含有するインキ組成物、フィルム、光学材料、光学フィルム、ディスプレイ表面フィルム、並びに表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1実施態様は、下記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物を提供する。
【0009】
【化1】
[一般式(1)中、RとR、RとR、RとR、及びRとRの2つの置換基のうち、いずれか一方の置換基はそれぞれ独立に、下記グループAから選ばれる基を表し、他方の置換基はそれぞれ独立に、下記グループBから選ばれる基を表し、Mは2価の金属原子又はオキシ金属を表す。
グループA:水素原子、及び炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基
グループB:下記一般式(2)で表される1価の基
【0010】
【化2】
(一般式(2)中、Arは(n+1)価の芳香族炭化水素基を表し、Qは、−OH、−SH、又は−NHを表す。nは1〜7の整数であり、*はテトラアザポルフィリン骨格との結合位置を示す。)]
【0011】
本開示の1実施態様においては、前記一般式(2)の芳香族炭化水素基において、テトラアザポルフィリン骨格と結合する炭素原子の隣の炭素原子の少なくとも1つに、Qが結合している、テトラアザポルフィリン化合物を提供する。
【0012】
本開示の1実施態様は、前記本開示の1実施形態のテトラアザポルフィリン化合物と、バインダー成分とを含有する、インキ組成物を提供する。
【0013】
本開示の1実施態様は、前記本開示の1実施形態のインキ組成物及びその硬化物の少なくとも一方を含有する、フィルムを提供する。
【0014】
本開示の1実施態様は、前記本開示の1実施形態のテトラアザポルフィリン化合物を含有する、光学材料を提供する。
【0015】
本開示の1実施態様は、前記本開示の1実施形態のテトラアザポルフィリン化合物を含有する、光学フィルムを提供する。
【0016】
本開示の1実施態様は、前記本開示の1実施形態の光学フィルムを備える表示装置を提供する。
【0017】
本開示の1実施態様は、前記本開示の1実施形態のテトラアザポルフィリン化合物と、バインダー成分とを含有する、ディスプレイ表面フィルム用インキ組成物を提供する。
【0018】
本開示の1実施態様は、前記本開示の1実施形態のテトラアザポルフィリン化合物を含有する、ディスプレイ表面フィルムを提供する。
【0019】
本開示の1実施態様は、前記本開示の1実施形態のディスプレイ表面フィルムを備える表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本開示の実施態様によれば、波長570〜620nm付近の極大吸収波長よりも短波長側の副吸収が低減されるテトラアザポルフィリン化合物、当該テトラアザポルフィリン化合物を含有するインキ組成物、フィルム、光学材料、光学フィルム、ディスプレイ表面フィルム及び表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本開示の1実施形態に係るディスプレイ表面フィルムの一例の模式的断面図である。
【図2】図2は、本開示の1実施形態に係る表示装置の一例の模式的断面図である。
【図3】図3は、本開示のテトラアザポルフィリン化合物の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施の形態や実施例などを、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態や実施例等の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
「本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0023】
本開示において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタアクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタクリロイルの各々を表す。
また、本明細書において「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではなく、「フィルム面(板面、シート面)」とは、対象となるフィルム状(板状、シート状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるフィルム状部材(板状部材、シート状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
また、本明細書において数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
以下、本開示のテトラアザポルフィリン化合物、インキ組成物、フィルム、光学材料、光学フィルム、ディスプレイ表面フィルム、及び表示装置について順に詳細に説明する。
【0024】
A.テトラアザポルフィリン化合物
本開示の1実施態様のテトラアザポルフィリン化合物は、下記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物である。
【0025】
【化3】
[一般式(1)中、RとR、RとR、RとR、及びRとRの2つの置換基のうち、いずれか一方の置換基はそれぞれ独立に、下記グループAから選ばれる基を表し、他方の置換基はそれぞれ独立に、下記グループBから選ばれる基を表し、Mは2価の金属原子又はオキシ金属を表す。
グループA:水素原子、及び炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基
グループB:下記一般式(2)で表される1価の基
【0026】
【化4】
(一般式(2)中、Arは(n+1)価の芳香族炭化水素基を表し、Qは、−OH、−SH、又は−NHを表す。nは1〜7の整数であり、*はテトラアザポルフィリン骨格との結合位置を示す。)]
【0027】
前記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物には、4種の異性体が存在する。RとR、RとR、RとR、及びRとRの2つの置換基のうち、いずれか一方の置換基はそれぞれ独立に、前記グループAから選ばれる基を表し、他方の置換基はそれぞれ独立に、前記グループBから選ばれる基を表すので、前記グループAから選ばれる基をG、前記グループBから選ばれる基をGと示すと、下記式(1)−a〜式(1)−dで示す4種の異性体が存在することになる。
前記一般式(1)は、RとR、RとR、RとR、及びRとRの2つの置換基の位置関係が異なる4種類の異性体を全て含むことを意味している。本開示の1実施態様のテトラアザポルフィリン化合物には、これらの異性体のうち1つのみが含まれていても良く、2種以上が混合物として含まれていても良い。
【0028】
なお、前記一般式(1)及び下記式(1)−a〜式(1)−dで表されるテトラアザポルフィリン化合物において、前記グループAから選ばれる基は各々同一であっても異なっていても良く、前記グループBから選ばれる基は各々同一であっても異なっていても良い。
【0029】
【化5】
(一般式(1)−a〜式(1)−d中、Gは前記グループAから選ばれる基を表し、Gは前記グループBから選ばれる基を表し、Mは2価の金属原子又はオキシ金属を表す。)
【0030】
前記グループAから選ばれる基は、水素原子、及び炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基から選ばれる。炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状の飽和若しくは不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられ、直鎖若しくは分岐の脂肪族炭化水素基と、環状の脂肪族炭化水素基の組み合わせであっても良い。
炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、2,4−ジメチルペンチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、2,5−ジメチルヘキシル基、2,5,5−トリメチルヘキシル基、n−ノニル基、2,2−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、4−エチルオクチル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、1,3,5,7−テトラメチルオクチル基、シクロペンチル基、2−メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、2,6−ジメチルシクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルナン基、アダマンチル基等の直鎖、分岐または環状のアルキル基が挙げられる。不飽和脂肪族炭化水素基としては例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキセン基、オクテン基、ドデセン基、シクロヘキセン基、エチニル基、tert−ブチルアセチレン基等が挙げられる。
前記グループAから選ばれる基としては、中でも、化合物の熱安定性の点から、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数3〜10の脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、t−ブチル基、又はシクロヘキシル基であることがより更に好ましい。
【0031】
前記グループBから選ばれる基は、下記一般式(2)で表される1価の基から選ばれる。
【0032】
【化6】
(一般式(2)中、Arは(n+1)価の芳香族炭化水素基を表し、Qは、−OH、−SH、又は−NHを表す。nは1〜7の整数であり、*はテトラアザポルフィリン骨格との結合位置を示す。)]
【0033】
一般式(2)中、Arは(n+1)価の芳香族炭化水素基を表すが、当該芳香族炭化水素としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル等が挙げられ、溶解性の点から、ベンゼンであることが好ましい。
nは1〜7の整数であるが、中でも、化合物の安定性の点から、1〜4の整数であることが好ましく、更に1〜2の整数であることがより好ましい。
Qは、−OH、−SH、又は−NHを表し、nが2以上の場合、一般式(2)におけるQは各々同一であっても異なっていても良い。
Qは、中でも、分子内水素結合形成の点から、−OH、又は−SHが好ましく、更に、−OHであることが好ましい。
【0034】
一般式(2)の芳香族炭化水素基において、Qが結合している位置は、特に限定されるものではない。中でも、副吸収が低減され易い点からは、前記一般式(2)の芳香族炭化水素基において、テトラアザポルフィリン骨格と結合する炭素原子の隣の炭素原子の少なくとも1つに、Qが結合していることが好ましい。この場合、テトラアザポルフィリン骨格と結合する炭素原子の両隣の2つの炭素原子にQが結合していてもよいが、隣の1つの炭素原子にQが結合していればテトラアザポルフィリン骨格と結合する炭素原子からみて、パラ位など、離れた位置に更に他のQが結合していてもよい。
【0035】
一般式(2)の芳香族炭化水素基において、Qが結合している位置は、特に限定されるものではない。
前記一般式(2)で表される1価の基としては、例えば2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2,4−ジヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、2,6−ジヒドロキシフェニル基、3,5−ジヒドロキシフェニル基、3,4,5−トリヒドロキシフェニル基、2,3,5,6−テトラヒドロキシフェニル基、2−メルカプトフェニル基、3−メルカプトフェニル基、4−メルカプトフェニル基、2,4−ジメルカプトフェニル基、2,6−ジメルカプトフェニル基、3,5−ジメルカプトフェニル基、2−アミノフェニル基、3−アミノフェニル基、4−アミノフェニル基、2,4−ジアミノフェニル基、2,6−ジアミノフェニル基、3,5−ジアミノフェニル基、2−ヒドロキシ−1−ナフチル基、2−ヒドロキシ−2−ナフチル基、2−メルカプト−1−ナフチル基、2−メルカプト−2−ナフチル基、2−アミノ−1−ナフチル基、2−アミノ−2−ナフチル基、2,3−ジヒドロキシ−1−ナフチル基、2−ヒドロキシビフェニル基、2−メルカプトビフェニル基、2−アミノビフェニル基等が挙げられる。
【0036】
Mは2価の金属原子又はオキシ金属を表す。Mとしては、例えば、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Mn、Mg、Ti、Be、Ca、Ba、Cd、Hg、Pb、Snなどを挙げることができる。
Mで表されるオキシ金属としては、例えば、VO、MnO、TiOなどを挙げることができる。
一般式(1)において、Mは、化合物の安定性の点から、より好ましくは、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Pd、Mn、Mg、VO、及びTiOからなる群から選択される少なくとも1種であり、さらに好ましくは、Cu、Ni、Pd、及びVOからなる群から選択される少なくとも1種であり、特に好ましくは、Cu、又はVOである。
【0037】
前記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物としては、例えば、前記式(1)−a〜式(1)−dで表されるテトラアザポルフィリン化合物において、前記グループAから選ばれる基Gと前記グループBから選ばれる基Gが以下の組み合わせである場合が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、下記化合物(C1)〜(C33)において、一般式(1)−a〜式(1)−d中のMは、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Pd、Mn、Mg、VO、及びTiOからなる群から選択される1種を表し、好ましいものは前記と同様である。
【0038】
【表1】
表1において、例えば、化合物(C7)は、前記式(1)−a〜式(1)−dで表されるテトラアザポルフィリン化合物において、1分子中4つのGがt−ブチル基であり、1分子中2つのGが2−ヒドロキシフェニル基、1分子中2つのGが2,4−ジヒドロキシフェニル基である場合を表す。
【0039】
前記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物は、公知の方法を参考にして製造することができる。公知の製造方法としては、例えば、特開平11−11015号公報、特開平11−43619号公報、特開平11−100520号公報、特開平11−116574号公報、特開平11−130971号公報、特開2002−129052号公報、特開2006−321925号公報等が挙げられる。
前記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物は、例えば、下記一般式(3a)〜一般式(3d)で表される化合物と、金属あるいは金属塩とを、所望により塩基の存在下で反応させることにより製造することができる。
前記金属あるいは金属塩としては、例えば、ハロゲン化金属、カルボン酸金属等が挙げられる。また、前記塩基としては、例えば、モリブデン酸アンモニウム、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、トリアルキルアミン、アンモニア等が挙げられる。
【0040】
【化7】
(一般式(3a)〜一般式(3d)において、R〜Rは一般式(1)と同じ意味を表す。)
【0041】
前記一般式(3a)〜一般式(3d)で表される化合物の環化反応によって得られる一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物は、通常、RとR、RとR、RとR、及びRとRの2つの置換基の位置関係が異なる異性体の混合物となる。
【0042】
前記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物は、表示装置の可視域における色純度向上の点から、吸収スペクトルにおける波長380nm〜750nmの範囲内の最大吸収波長(λmax)、すなわち透過スペクトルにおける波長380nm〜750nmの範囲内の最小透過波長が、570nm〜620nmであることが好ましく、580nm〜610nmであることがより好ましく、585nm〜605nmであることがより更に好ましい。テトラアザポルフィリン化合物の波長380nm〜750nmの範囲内の最大吸収波長乃至最小透過波長は、テトラアザポルフィリン化合物の中心金属や置換基を変更することによって適宜変化させることができる。
また、波長380nm〜750nmの範囲内の最大吸収波長乃至最小透過波長の半値幅は表示装置の不要な光のみをカットする点から、60nm〜20nmであることが好ましく、50nm〜20nmであることがより好ましい。
【0043】
また、前記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物は、吸収スペクトルにおける波長380nm〜750nmの範囲内の最大吸収波長(λmax)、すなわち透過スペクトルにおける波長380nm〜750nmの範囲内の最小透過波長よりも短波長側の530nm〜570nmにおいて、副吸収が低減されたものであることが好ましく、すなわち540nm〜560nmにおける極小透過波長における透過率が78%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0044】
なお、前記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物の前述の透過スペクトルにおける波長380nm〜750nmの範囲内の最小透過波長、及び、530nm〜570nmにおける極小透過波長における透過率は、以下のようにして測定することができる。
具体的には、まず、前記一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物 1質量部に対して、ペンタエリスリトールトリアクリレート(例えば、商品名 M305、東亜合成社製)79質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、商品名イルガキュア184、BASF製)3質量部と、溶媒のメチルエチルケトン296質量部とを混合することにより分光測定用組成物を調製する。次に、当該分光測定用組成物を厚み0.7mmのガラス基板(日本電気硝子製、「OA−10G」)上に、スピンコーターを用いて塗布する。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行い、塗膜を得る。当該塗膜に、超高圧水銀灯を用いて254nm換算で500mJ/cmの紫外線を照射することによって硬化膜を得る。なお、膜厚は、透過スペクトルにおける波長380nm〜750nmの範囲内の最小透過波長の透過率が40%となるように調整する。当該硬化膜の透過分光スペクトルをオリンパス製「顕微分光測定装置OSPSP200」を用いて測定する。
【0045】
本開示の一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物は、RとR、RとR、RとR、及びRとRにおいて、いずれか一方の置換基はそれぞれ独立に、水素原子、及び炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基から選ばれる基を表し、他方の置換基はそれぞれ独立に、前記一般式(2)で表される1価の基を表すことから、波長570〜620nm付近に極大吸収波長を有し、且つ、その極大吸収波長よりも短波長側の副吸収が低減されたものである。そのため、本開示の一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物は、所望の波長領域の光をより選択的に吸収する、すなわち吸収波長領域が狭く、波長選択性が高い色素化合物である。本開示の一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物を用いると、前記副吸収に起因する色純度や明るさの低下が抑制され、色純度や明るさが向上する。
波長570〜620nm付近の極大吸収波長よりも短波長側の副吸収は、テトラアザポルフィリン化合物同士の会合に起因すると推定される。それに対して、本開示の一般式(1)で表されるテトラアザポルフィリン化合物は、RとR、RとR、RとR、及びRとRのうち、一方の4つの置換基として、極性基を有する芳香族炭化水素基を有することにより、その極性と嵩高さから自己会合が抑制されて、また通常塗膜を形成するために使用されるヘテロ原子を含むバインダーへの相溶性が向上して、化合物がより均一に分散されることにより、波長570〜620nm付近の極大吸収波長よりも短波長側の550nm付近の副吸収が低減されると推定される。
【0046】
また、前記一般式(2)の芳香族炭化水素基において、テトラアザポルフィリン骨格と結合する炭素原子の隣の炭素原子の少なくとも1つに、Qが結合していると、中でも、副吸収が低減され易い傾向がみられた。これは、当該芳香族炭化水素基において、テトラアザポルフィリン骨格と結合する炭素原子の隣の炭素原子に置換されているヒドロキシ基等の極性基が中心金属Mに対して相互作用することで、副吸収を引き起こす振動準位の形成要因であるテトラアザポルフィリン骨格の垂直方向の振幅運動を抑制できるためと推定される(図3)。すなわち、ヒドロキシ基等の極性基が芳香族炭化水素環の2位に置換されたことにより、芳香族炭化水素環の配座がテトラアザポルフィリン骨格平面に対して直行する形で固定化され、ヒドロキシ基等の極性基がテトラアザポルフィリン骨格平面上に位置することによって中心金属に相互作用できるためと推定される。
【0047】
B.インキ組成物
本開示のインキ組成物は、少なくとも前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物と、バインダー成分とを含有する。
本開示のインキ組成物は、前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物と、バインダー成分とを組み合わせて用いることにより、波長570〜620nm付近の極大吸収波長よりも短波長側の副吸収が低減された、色純度や明るさが向上したフィルム乃至成形体を形成することができる。
本開示のインキ組成物は、少なくとも前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物、及びバインダー成分を含有するものであり、必要に応じて他の成分を有してもよいものである。
以下、このような本開示のインキ組成物の各成分について順に詳細に説明する。
【0048】
(本開示のテトラアザポルフィリン化合物)
本開示のインキ組成物に含まれる前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物は、前述と同様であってよいので、ここでの説明を省略する。
本開示のテトラアザポルフィリン化合物は、本開示のインキ組成物において、1種単独であっても良く、2種以上を併用しても良い。また、本開示のテトラアザポルフィリン化合物は、1種の化合物であっても良いし、2種以上の位置異性体からなる混合物であっても良い。これらの位置異性体は通常、相互の吸収ピーク位置に大差がないので、混合物であってもピークは比較的シャープである。必要に応じて、当該位置異性体の混合物から各位置異性体を分離し、位置異性体のうちの1種の化合物を用いることができる。
【0049】
(バインダー成分)
本開示のインキ組成物は、成膜性や成形性、被塗工面に対する密着性を付与するためにバインダー成分を含有する。
バインダー成分は少なくとも樹脂を含有することが好ましい。当該樹脂としては、粘着剤乃至熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のいずれであってもよい。ここでの樹脂は、高分子化合物乃至重合体に限定されることなく、低分子化合物乃至モノマーであっても良い。また、樹脂エマルジョンを構成するような合成樹脂の粒子であっても良い。
バインダー成分は、光透過性を有することが好ましく、バインダー成分だけを用いて膜厚3μmのフィルムにした際に可視光線領域における透過率が80%以上であることが好ましく、84%以上であるものがより好ましい。なお、上記透過率は、JISK7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0050】
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤、ポリビニルエーテル、飽和無定形ポリエステル、メラミン樹脂等の粘着剤が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ニトロセルロース、エチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;熱可塑性ウレタン系樹脂;塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の変性オレフィン系樹脂;酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ブチラール樹脂等のビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;環状ポリオレフィン、ポリオレフィン等のオレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0051】
塗膜に充分な硬度を付与する点からは、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を含む硬化性バインダー成分を含有することが好ましい。硬化性バインダー成分としては、特に限定されず、従来公知の硬化性バインダー成分を適宜用いることができる。
硬化性バインダー成分としては、例えば、可視光線、紫外線、電子線等により重合硬化させることができる光硬化性樹脂を含む光硬化性バインダー成分や、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性樹脂を含む熱硬化性バインダー成分を含むものを用いることができる。
【0052】
熱硬化性バインダーとしては、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物と硬化剤の組み合わせが通常用いられ、更に、熱硬化反応を促進できる触媒を添加しても良い。熱硬化性官能基としては、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、エチレン性不飽和結合等が挙げられる。熱硬化性官能基としてはエポキシ基が好ましく用いられる。熱硬化性バインダー成分の具体例としては、例えば、国際公開第2012/144521号に記載のものを挙げることができる。
【0053】
一方、光硬化性バインダーとしては、1分子中に光硬化性官能基を1個以上有する化合物と光開始剤の組み合わせが通常用いられる。これらの化合物や光開始剤は従来公知のものを適宜選択して用いることができる。光硬化性官能基としては、ラジカル重合性のエチレン性不飽和結合含有基、カチオン重合性のエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。光硬化性官能基としてはエチレン性不飽和結合含有基が好ましく用いられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
光硬化性化合物が1分子中に有する光硬化性官能基の数は、硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーと称される化合物や、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートと称される分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーを好ましく使用でき、またアクリレートポリマーの側鎖に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートポリマーも好ましく使用できる。中でも、硬度を向上する点から、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを好ましく使用できる。
【0054】
また、樹脂エマルジョンとしては、アクリル系エマルジョン、スチレン・アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル系エマルジョン等が挙げられる。
【0055】
また、膜がパターンを有し、膜を形成する際にフォトリソグラフィー工程を用いる場合には、アルカリ現像性を有する感光性バインダー成分が好適に用いられる。
感光性バインダー成分としては、ポジ型感光性バインダー成分とネガ型感光性バインダー成分が挙げられる。ポジ型感光性バインダー成分としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂及び感光性付与成分としてo−キノンジアジド基含有化合物を含んだ系が挙げられ、アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ポリイミド前駆体等が挙げられる。
【0056】
ネガ型感光性バインダー成分としては、アルカリ可溶性樹脂と、多官能性モノマーと、光開始剤を少なくとも含有する系が好適に用いられる。アルカリ可溶性樹脂と、多官能性モノマーと、光開始剤の具体例としては、例えば、国際公開第2012/144521号に記載のものを挙げることができる。
【0057】
前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物は、RとR、RとR、RとR、及びRとRのうち、一方の4つの置換基として、極性基を有する芳香族炭化水素基を有することにより、ヘテロ原子を含むバインダー成分に対して相溶性が向上したものであり、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含むバインダー成分と組み合わせて好適に用いることができる。前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物は、4つの置換基として、極性基を有する芳香族炭化水素基を有することにより、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物と組み合わせても、550nm付近の副吸収が抑制されることから、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物をバインダー成分として好適に用いることができる。中でも、後述するディスプレイ表面フィルム用インキ組成物においては、ディスプレイ表面の硬度を向上させる点から、バインダー成分として、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物を含有することが好ましい。
【0058】
(溶媒)
本開示のインキ組成物は、更に溶媒を含有しても良い。本開示のインキ組成物に用いられる溶媒としては、前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物、及びバインダー成分及び必要に応じて添加されるその他の成分を、溶解乃至分散可能な溶媒を適宜選択して用いることができる。
本開示のインキ組成物に用いられる溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエステル系溶媒、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール系溶剤;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノンなどのケトン系溶剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
(任意添加成分)
本開示のインキ組成物には、本開示の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて他の光吸収化合物や各種添加剤を含むものであってもよい。
他の光吸収化合物としては、例えば、可視光域に所望の吸収を有する化合物を挙げることができ、スクアリリウム化合物、アントラキノン化合物、フタロシアニン化合物、メチン化合物、アゾメチン化合物、オキサジン化合物、アゾ化合物、スチリル化合物、クマリン化合物、ポルフィリン化合物、ジベンゾフラノン化合物、ジケトピロロピロール系化合物、ローダミン化合物、キサンテン化合物、ピロメテン化合物などが挙げられる。
本開示のインキ組成物は、例えば、490nm付近の波長域に吸収極大を有する化合物を更に含むものであっても良い。
【0060】
添加剤としては、例えば、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤、帯電防止剤、フィラーなどが挙げられる。添加剤として更に、硬度や屈折率を調整するための無機又は有機微粒子、防眩剤、防汚剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定化剤、表面改質剤等を含んでいても良い。
【0061】
(組成物における各成分の配合割合)
本開示のインキ組成物において、本開示のテトラアザポルフィリン化合物の含有量は、目的に応じて適宜選択されれば良く、特に限定されない。本開示のテトラアザポルフィリン化合物の含有量は、不要な光を十分にカットして必要な光を透過することで表示装置の色純度を向上する点から、組成物の固形分全量に対して0.5〜5質量%、更に0.8〜3質量%の範囲内であることが好ましい。テトラアザポルフィリン化合物が少なすぎると、不要な波長領域の光に対する所望の吸収性を得ることが困難となる恐れがある。またテトラアザポルフィリン化合物が多すぎると、組成物を支持体へ塗布し乾燥、更に硬化させた際の支持体への密着性、膜の表面荒れ、塗膜硬さ等の塗膜としての特性が不十分となるおそれがある。尚、本開示において固形分は、上述した溶媒以外のもの全てであり、25℃で液状の多官能性モノマー等も含まれる。
バインダー成分の合計の含有量は、任意添加成分に合わせて適宜選択されればよく、特に限定されない。バインダー成分は、その合計の含有量が、組成物の固形分全量に対して80質量%以上、更に85質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であっても良く、97質量%以上であっても良い。一方、上限値は99.5質量%以下であることが好ましく、更に99.2質量%以下であることが好ましい。
また、組成物に溶媒を含有する場合、その含有量は、テトラアザポルフィリン化合物の分散性や、組成物の塗工性等の点から適宜調整すればよい。溶媒は、該溶媒を含む組成物の全量に対して、通常、65〜95質量%の範囲内であることが好ましく、中でも75〜88質量%の範囲内であることがより好ましい。
また、組成物に添加剤を含有する場合、その含有量は、目的に応じて適宜選択されれば良く、特に限定されない。
組成物に他の光吸収化合物を含有する場合、その含有量は、目的に応じて適宜選択されれば良く、特に限定されない。他の光吸収化合物を含有する場合の含有量は、例えば、組成物の固形分全量に対して0.5〜5質量%、更に0.8〜3質量%の範囲内が挙げられる。
【0062】
(組成物の製造)
組成物の製造方法は、特に限定されない。
バインダー成分として、粘着剤や熱可塑性樹脂を用いる場合、粘着剤や熱可塑性樹脂に前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物を添加して、混錬して用いてもよい。
あるいは、溶媒中に、バインダー成分と、所望により用いられる各種添加成分とを添加し、混合したのち、これに前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物を加えて混合する方法などが挙げられる。
【0063】
C.フィルム
本開示の1実施態様のフィルムは、前記本開示の1実施態様のインキ組成物及びその硬化物の少なくとも一方を含有するフィルムである。
本開示の1実施態様のフィルムは、前記本開示の1実施態様のインキ組成物及びその硬化物の少なくとも一方を含有していることにより、波長570〜620nm付近の波長を選択的に吸収可能であり、且つその極大吸収波長よりも短波長側の副吸収が低減された、色純度や明るさが向上したフィルムである。
本開示のフィルムは、パターンを有していてもよく、パターンを有しない膜(平坦膜)であってもよい。また、本開示のフィルムは、支持体上に積層した状態で用いてもよく、本開示のフィルムを支持体から剥離して用いてもよい。
【0064】
本開示のフィルムは、シート、乃至、板と呼称されるものであっても良く、膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。膜厚は、200μm以下であって良く、更に150μm以下であって良い。中でも全光線透過率を確保する点からは、本開示のフィルムは100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
【0065】
本開示のフィルムは、前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物を含有することにより、膜厚3μmにおいて、波長590nmの透過率が好ましくは40%以下であり、より好ましくは30%以下であり、更に好ましくは20%以下である。
なお、ある厚さの透過率の測定値から、異なる厚さの透過率は、ランベルトベールの法則により換算値を求めることができ、それを利用することができる。
具体的には、ランベルトベールの法則によれば、透過率Tは、
Log10(1/T)=kcb
(k=物質固有の定数、c=濃度、b=光路長)で表される。
フィルムの透過率の場合、膜厚が変化しても密度が一定であると仮定するとcも定数となるので、上記式は、定数fを用いて
Log10(1/T)=fb
(f=kc)と表すことができる。ここで、ある膜厚の時の透過率がわかれば、各物質の固有の定数fを求めることができる。従って、T=1/10f・b の式を用いて、fに固有の定数、bに目標の膜厚を代入すれば、所望の膜厚の時の透過率を求めることができる。
【0066】
また、本開示のフィルムは、前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物を含有することにより、波長570〜620nm付近の極大吸収波長よりも短波長側(550nm付近)の副吸収が低減される。具体的には、例えば、透過スペクトルにおける波長380nm〜750nmの範囲内の最小透過波長の透過率T(%)に対する、530nm〜570nmにおける極小透過波長における透過率T(%)の比(T/T)が、1.95以上であることが好ましく、2.00以上であることがより好ましい。
【0067】
本開示の1実施態様のフィルムの製造方法としては、例えば、前記本開示の1実施態様のインキ組成物を用いて支持体上に組成物層を形成する工程と、必要に応じて、更に前記組成物層を硬化する工程とを含む方法が挙げられる。
【0068】
支持体としては、特に限定されるものではなく、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、シクロオレフィンポリマー、セルロースアシレート等の材料からなる支持体の他、表示装置に用いられる他の光学部材であってもよい。
【0069】
支持体へのインキ組成物の適用方法としては、適宜選択して公知の方法を用いることができる。例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法等の塗布方法や、インクジェット、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法、金型等を用いた転写法、ナノインプリント法などが挙げられる。
【0070】
支持体上に適用された組成物層は、適宜必要に応じて溶媒を除去(乾燥)して、フィルムとすることができる。
【0071】
前記組成物層を硬化する工程としては、組成物に含まれるバインダー成分の硬化性に合わせて、加熱、及び光照射の少なくとも1つを適用するなど、公知の方法を適宜選択して、バインダー成分の硬化を行えばよい。
また、フィルムを製造後、支持体を除去してもよい。
【0072】
本開示の1実施態様のフィルムがパターンを有する場合の製造方法としては、更に、フォトリソグラフィ法またはドライエッチング法により、組成物層に対してパターンを形成する工程を含む方法が挙げられる。
フォトリソグラフィ法またはドライエッチング法については、特に限定されることなく、組成物に含まれるバインダー成分に合わせて公知の方法を適宜選択して適用することができる。
【0073】
本開示の1実施態様のフィルムの他の製造方法としては、例えば、前記本開示の1実施態様のインキ組成物を用いて成形する方法が挙げられる。成形方法としては、インキ組成物に含まれるバインダー成分に合わせて公知の方法を適宜選択して適用することができる。
【0074】
本開示の1実施態様のフィルムは、画像表示装置の他、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子などの各種装置に用いることができる。また、本開示の1実施態様のフィルムは、光線を透過または反射吸収し、様々な効果を与えることを目的とした、光学フィルムに好適に用いられる他、選択的な波長の吸収熱を利用する記録媒体等に用いることができる。
本開示の1実施態様のフィルムは、波長570〜620nm付近の波長を選択的に吸収可能であり、且つ波長570〜620nm付近の極大吸収波長よりも短波長側の副吸収が低減された、色純度や明るさが向上したフィルムであることから、中でも、後述するディスプレイ表面フィルムに好適に用いられる。
【0075】
D.光学材料、光学フィルム、光学フィルタ及びディスプレイ表面フィルム
本開示の1実施態様の光学材料は、前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物を含有する、光学材料である。
また、本開示の1実施態様の光学フィルムは、前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物を含有する、光学フィルムである。
また、本開示の1実施態様の光学フィルタは、前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物を含有する、光学フィルタである。
また、本開示の1実施態様のディスプレイ表面フィルムは、前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物を含有する、ディスプレイ表面フィルムである。
【0076】
本開示の1実施態様の光学材料は、光線を透過または反射吸収し、様々な効果を与えることを目的とした材料をいう。
本開示の光学材料としては、例えばレンズ等が挙げられる。当該レンズとしては、プラスチック眼鏡レンズ、サングラスレンズ、ゴーグル等が挙げられる。
また、本開示の光学材料としては、例えば、光線を透過または反射吸収し、様々な効果を与えることを目的としたフィルムである、光学フィルムが挙げられる。
光学フィルムとしては、具体的には例えば、反射防止フィルム、配向フィルム等が挙げられる。また、当該光学フィルムには、例えば、入射光のうち所定の性質を持つ光(例えば、特定の波長範囲の光)だけを透過し、それ以外の光を透過しない、光学フィルタが包含される。当該光学フィルタとしては、例えば、不要な波長領域の光を選択的に吸収する特定波長吸収フィルタ、色調を調整する色補正フィルタ、紫外線カットフィルタ、赤外線カットフィルタ等が挙げられる。
光学フィルタとしては、例えば、表示装置の他、照明装置、窓材等に適用される。
【0077】
本開示の1実施態様の光学材料は、例えば、前記本開示の1実施態様のインキ組成物を成形することにより製造しても良いし、前述の本開示の1実施態様のフィルムと同様に製造しても良い。
また、本開示の1実施態様の光学フィルタを包含する、本開示の1実施態様の光学フィルムは、前述の本開示の1実施態様のフィルムを含有することが好ましい。
【0078】
本開示の1実施態様の光学フィルムは、前述の本開示の1実施態様のフィルムと同様であって良く、支持体が含まれていても良く、更に、粘着剤層や、剥離可能な剥離フィルムが積層されていても良い。支持体や、粘着剤層や、剥離可能な剥離フィルムとしては、従来公知の構成を適宜選択して適用することができる。粘着剤層や、剥離可能な剥離フィルムの具体例としては、例えば、特開2009−251511号公報に記載のものを挙げることができる。
【0079】
本開示の1実施態様の光学フィルムは、更に他の機能層を有していても良い。
他の機能層としては、例えば、偏光子、保護フィルム、反射防止層、防眩層、防汚層、帯電防止層、ハードコート層、粘着層、接着層等が挙げられる。偏光子、保護フィルム、反射防止層、防眩層、防汚層、帯電防止層、ハードコート層、粘着層、接着層としては、各々、従来公知の構成を採用することができる。
【0080】
また、本開示の1実施態様の光学フィルムにおいて、本開示のテトラアザポルフィリン化合物を含有するフィルムは、波長570〜620nm付近の波長を選択的に吸収するという機能の他に、更に別の機能が付与されていても良い。別の機能としては、例えば、保護フィルム、反射防止層、防眩層、防汚層、帯電防止層、ハードコート層、粘着層、及び接着層からなる群から選択される1種以上が有する機能が挙げられる。
【0081】
本開示の1実施態様の光学フィルムは、従来公知の光学フィルムの構成に、本開示の前記テトラアザポルフィリン化合物を含有させても良い。例えば、前記機能層の少なくとも1つに本開示の1実施態様の前記テトラアザポルフィリン化合物を含有させた光学フィルムが挙げられる。
【0082】
本開示の1実施態様の光学フィルムは、表示装置における表示パネルの観察者側表面に設置される、ディスプレイ表面フィルムであってもよい。
本開示の1実施態様のディスプレイ表面フィルムは、本開示の前記テトラアザポルフィリン化合物を含有するものであり、通常、ディスプレイ表面に必要な表面機能層を有し、更に表面機能層の支持体、及び当該支持体の表面機能層とは反対側の面に粘着層や接着層を有していても良いものである。表面機能層としては、例えば、ハードコート層、反射防止層、防眩層、防汚層、及び帯電防止層の少なくとも1種以上が挙げられる。
表面機能層としては、中でも、ディスプレイ表面フィルムの表面硬度を向上する点及び溶液プロセスで塗膜を形成し得る点から、ハードコート層の機能を有する層であることが好ましく、少なくともハードコート層及び反射防止層の機能を有する層であることがより好ましい。
【0083】
ハードコート層は、一般に保護フィルムよりも硬度が高く、少なくとも耐擦傷性を付与する層である。ハードコート層は、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(4.9N荷重)で、「H」以上の硬度を示すことが好ましい。
ハードコート層は、視認性を向上するための反射防止機能や防眩機能を有していることが好ましく、更に防汚機能や帯電防止機能を有していても良いものである。
ハードコート層は、従来公知の表示装置の光学フィルタ乃至光学フィルムに用いられるハードコート層を適宜選択して用いることができる。ハードコート層としては、例えば、国際公開第2012/018087号、国際公開第2011/065531号、特開2018−51918号公報等に記載されているハードコート層を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
表面機能層に採用される、反射防止層、防眩層、防汚層、及び帯電防止層の構成としても、従来公知の構成を適宜選択して採用することができ、例えば、特許第6070195号、特許第6040936号、特開2017−21293号、特開2013−142817号、特開2011−90301号等を参照することができる。
【0085】
図1は、本開示のディスプレイ表面フィルムの一例を示す模式的断面図である。図1に示されるように、ディスプレイ表面フィルム40は、支持体1の一面側に、表面機能層30を有し、支持体1の他の一面側に、粘着層乃至接着層2を有する積層体が挙げられる。
本開示のディスプレイ表面フィルムは、表面機能層30に相当するフィルムのみからなるものであっても良い。
但し、前記表面機能層30は、1層であっても良いし、2層以上からなる積層体であっても良い。表面機能層30が積層体の場合の構成としては、例えば、ハードコート層、並びに、低屈折率層及び高屈折率層からなる反射防止層がこの順に積層されている構成が挙げられる。
【0086】
本開示のディスプレイ表面フィルムは、本開示のテトラアザポルフィリン化合物を、表面機能層30、支持体1、及び、粘着層乃至接着層2のいずれに含有していても良く、2層以上に含有していても良い。
本開示のテトラアザポルフィリン化合物を含有する、表面機能層30、支持体1、及び、粘着層乃至接着層2は、バインダー成分と、必要に応じて更に必要なその他成分を適宜選択して、前記本開示の1実施態様のフィルムを製造する方法と同様に製造することができる。
支持体1の材料としては、前述の本開示の1実施態様のインキ組成物のバインダー成分のうち熱可塑性樹脂から適宜選択されることが好ましく、また、前述の本開示の1実施態様のフィルムの支持体と同様であって良い。支持体1としては、中でも、光学特性の点から、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)やシクロオレフィンポリマーフィルム等が好適に用いられる。
また、粘着層乃至接着層2の材料としては、前述の本開示の1実施態様のインキ組成物のバインダー成分のうち、粘着剤又は硬化性バインダー成分の中から可視光線領域における透過率が高いバインダー成分を適宜選択して用いればよい。
【0087】
本開示のテトラアザポルフィリン化合物は、表示装置の既存製造工程を使用できる点から、表面機能層30に含有させることが好ましい。
本開示のテトラアザポルフィリン化合物は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物と組み合わせても、550nm付近の副吸収が抑制され、好適に用いることができる。そのため、本開示のディスプレイ表面フィルムは、本開示のテトラアザポルフィリン化合物と1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物の硬化物とを含有する層乃至フィルムを含むことができ、波長570〜620nm付近の波長を選択的に吸収可能であり、且つ波長570〜620nm付近の極大吸収波長よりも短波長側の副吸収が低減されながら、ディスプレイ表面の硬度を向上し、耐擦傷性を向上することができる。
【0088】
本開示のディスプレイ表面フィルムにおいて、表面機能層の合計厚みは、適宜選択されれば良く、例えば、10〜150μmが挙げられるが、通常は20〜100μmとする。
本開示のディスプレイ表面フィルムにおいて、支持体を有する場合の支持体の厚みは、適宜選択されれば良く、例えば、10〜150μmが挙げられるが、通常は20〜100μmとする。
本開示のディスプレイ表面フィルムにおいて、粘着層乃至接着層を有する場合の粘着層乃至接着層の厚みは、適宜選択されれば良く、例えば、10〜150μmが挙げられるが、通常は20〜100μmとする。
【0089】
本開示のディスプレイ表面フィルムは、JISK7361−1に準じて測定される可視光線領域(380nm〜750nm)における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であるものがより好ましい。
【0090】
E.表示装置
本開示の1実施態様の表示装置は、前記本開示の1実施態様の光学フィルムを備える表示装置である。
前記本開示の光学フィルムは、表示装置に組み込まれて用いられればよく、組み込まれ方は特に限定されない。表示装置としては、特に限定されず適用可能である。
表示装置を構成する表示素子としては、液晶表示素子、EL(無機EL、有機EL)表示素子、プラズマ表示素子、電子ペーパー表示素子、LED表示素子(マイクロLEDなど)、量子ドット発光ダイオード(QLED)を用いた表示素子等が挙げられる。すなわち、表示装置としては、液晶表示装置、EL(無機EL、有機EL)表示装置、プラズマ表示装置、電子ペーパー表示装置、LED表示装置(マイクロLEDなど)、量子ドット発光ダイオード(QLED)を用いた表示装置等が挙げられる。
なお、液晶表示装置の場合、表示素子の成形体とは反対側にバックライトを配置することを要する。
中でも、本開示の1実施態様の表示装置は、前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物を含有するディスプレイ表面フィルムを備える表示装置であることが、表示色の色純度が高い点から、好ましい。
【0091】
本開示の1実施態様の表示装置の一例について、図面を用いて説明する。
図2に示されるように、画像表示装置100は、主に、画像を表示するための表示パネル10と、表示パネル10の背面側に配置されたバックライト装置20とを備えている。本実施形態においては、表示パネル10が液晶表示パネルであるので、画像表示装置100がバックライト装置20を備えているが、表示パネル(表示素子)の種類によってはバックライト装置20を備えていなくともよい。
【0092】
(表示パネル)
表示パネル10は、図2に示されるように、バックライト装置20側から観察者側に向けて、保護フィルム11、偏光子12、保護フィルム13、光透過性粘着層14、表示素子15、光透過性粘着層16、保護フィルム17、偏光子18、光透過性粘着層16’、保護フィルム19、表面機能層30の順に積層された構造を有している。図2においては、光透過性粘着層16’、保護フィルム19、及び表面機能層30の積層体が、ディスプレイ表面フィルム40に相当する。
なお、表示パネル10は、表示素子15を備えていればよく、保護フィルム11等は備えていなくともよい。
【0093】
図2の表示素子15は液晶表示素子である。ただし、表示素子15は液晶表示素子に限られず、例えば、前述のような表示素子であってもよい。液晶表示素子は、2枚のガラス基材間に、液晶層、配向膜、電極層、カラーフィルタ等を配置したものである。
保護フィルム、偏光子、光透過性粘着層は従来公知の物を適宜選択して用いることができる。
保護フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)やシクロオレフィンポリマーフィルム等が好適に挙げられる。
光透過性粘着層としては、例えば、OCA(Optical Clear Adhesive)のような粘着シートが好適に挙げられ、OCR(Optically Clear Resin)のような重合性化合物を含む液状の硬化性接着層用組成物の硬化物等であってもよい。
【0094】
図2の表面機能層30は、表示装置における表示パネルの表面に位置し、様々な機能を付与する層であり、1層であっても良いし、2層以上であっても良い。表面機能層30は、ハードコート層、反射防止層、防眩層、防汚層、及び帯電防止層の少なくとも1種の機能を有する層である。表面機能層30としては、前述の本開示の1実施態様のディスプレイ表面フィルムにおいて説明した表面機能層と同様であって良い。
【0095】
(バックライト装置)
バックライト装置20は、表示パネル10の背面側から表示パネル10を照明するものである。バックライト装置20としては、公知のバックライト装置を用いることができ、またバックライト装置20はエッジライト型や直下型のバックライト装置のいずれであってもよい。また、バックライトの光源としては、LED、CCFL(冷陰極蛍光管)等が挙げられ、光源として量子ドットを用いたバックライトは色再現性を高めやすい。
【0096】
本開示の1実施態様の表示装置は、前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物を含有する、光学フィルムを備えることから、白色LEDを光源とする表示装置に好適に使用できる。中でも前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物を含有する、光学フィルムを用いると、590nm付近のオレンジ光を好適に除いて、白色光の色度を好ましいものに補正できる点から、白色LEDが、青色発光LEDの青色光と黄色発光の蛍光体の組合せにより白色光を得る方式や、青色発光LEDと緑色および赤色発光の蛍光体の組合せにより白色光を得る方式の光源を有する表示装置であることが好ましい。
【0097】
本開示の1実施態様の表示装置は、前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物を含有する、光学フィルムを備えるものであり、当該光学フィルムは、前述の本開示の1実施態様のディスプレイ表面フィルムでなくても良い。
光学フィルムの設置位置としては、バックライトとしての光源と表示装置の観察者との間に配置されるものであれば良く、特に限定されるものではない。
本開示の1実施態様の表示装置は、例えば図2において、表示素子15と偏光子12との間に存在する、光透過性粘着層16や保護フィルム17が、前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物を含有する、光学フィルムであっても良く、保護フィルム11、保護フィルム13、又は光透過性粘着層14が、前記本開示のテトラアザポルフィリン化合物を含有する、光学フィルムであっても良い。
【0098】
本開示の1実施態様の表示装置は、前記例示に限られることなく、従来公知の構成を適宜選択して採用されれば良い。
本開示の1実施態様の表示装置は、例えば、図2の表示パネル10よりも観察者側に、例えば光透過性接着層を介して、更にタッチパネルを備えていても良い。
【実施例】
【0099】
以下、本開示について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本開示の実施形態を制限するものではない。
【0100】
(合成例1:化合物1の合成)
(1)中間体1の合成
2,7,12,17−テトラ−tert−ブチル−5,10,15,20−テトラアザポルフィリン銅40g、N−ブロモスクシンイミド(NBS)49.8g、及びジメチルホルムアミド(DMF)400gをトルエン400ml中で、75〜80℃にて4時間加熱した。得られた反応溶液を濃縮し、濃縮後の反応溶液にメタノール300mlを添加し、析出物を析出させた。析出物をろ過、乾燥して青色粉末として下記中間体1を57g得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):915(M+)
・元素分析値:CHN実測値(42.01%、3.80%、12.00%)
;理論値(41.97%、3.96%、12.24%)
【0101】
【化8】
【0102】
(2)中間体2の合成
前記で得られた中間体1 7.25g、2−メトキシフェニルボロン酸 4.93g、炭酸ソーダ 3.44g、及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム 0.92gを、トルエン70ml、水40ml、及びエタノール20mlの混合溶媒に分散し、80〜85℃で30時間反応させた。反応終了後、反応溶液を室温に冷却し、トルエン 200ml、及び水 200mlを加え、トルエンに反応生成物を抽出した。トルエン溶液を減圧濃縮することにより残渣を得た。残渣をメタノールで分散、ろ過、乾燥して青色粉末として下記中間体2を7.3g得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):1024(M+H)、
・元素分析値:CHN実測値(70.10%、6.33%、11.00%)
;理論値(70.32%、6.30%、10.93%)
【0103】
【化9】
【0104】
(3)化合物1の合成
前記で得られた中間体2 6.5gをジクロロメタン65ml中に分散し、三臭化ホウ素のジクロロメタン溶液(1mol/L)41.1gを5℃にて滴下、さらに1時間5℃で攪拌後、室温(25℃)にて3時間攪拌した。析出物をろ取、ジクロロメタン20ml、水200mlで洗浄、乾燥して青色粉末として下記化合物1を4.9g得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):968(M+)
・元素分析値:CHN実測値(69.30%、5.75%、11.50%)
;理論値(69.44%、5.83%、11.57%)
【0105】
【化10】
【0106】
(合成例2:化合物2の合成)
(1)中間体3の合成
合成例1の中間体2の合成において、2−メトキシフェニルボロン酸 4.93g、の代わりに、3−メトキシフェニルボロン酸 4.93gを用いた以外は、合成例1の中間体2の合成と同様にして青色粉末として下記中間体3を8.0g得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):1024(M+H)
・元素分析値:CHN実測値(70.30%、6.20%、10.70%)
;理論値(70.32%、6.30%、10.93%)
【0107】
【化11】
【0108】
(2)化合物2の合成
前記合成例1において中間体2 6.5gの代わりに、中間体3 6.5gを用いた以外は、前記合成例1と同様にして青色粉末として下記化合物2を5.5g得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):968(M+)、
・元素分析値:CHN実測値(69.48%、5.80%、11.61%)
;理論値(69.44%、5.83%、11.57%)
【0109】
【化12】
【0110】
(合成例3:化合物3の合成)
(1)中間体4の合成
合成例1の中間体2の合成において、2−メトキシフェニルボロン酸 4.93gの代わりに、4−メトキシフェニルボロン酸 4.93gを用いた以外は、合成例1の中間体2の合成と同様にして、青色粉末として下記中間体4を7.1g得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):1024(M+H)、
・元素分析値:CHN実測値(70.29%、6.35%、10.80%)
;理論値(70.32%、6.30%、10.93%)
【0111】
【化13】
【0112】
(2)化合物3の合成
前記合成例1において中間体2 6.5gの代わりに、中間体4 6.5gを用いた以外は、前記合成例1と同様にして青色粉末として下記化合物3を5.0g得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):968(M+)、
・元素分析値:CHN実測値(69.38%、5.86%、11.62%)
;理論値(69.44%、5.83%、11.57%)
【0113】
【化14】
【0114】
(比較合成例1:比較化合物1の合成)
窒素雰囲気下、n−ペンタノール30mlに2−tert−ブチル−2−マレオニトリル1.34gと塩化第一銅0.33gを加え、90℃に加熱後、混合物に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)1.52gを30分かけて滴下した。滴下後、混合物を125℃で8時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却後、メタノール100mlを加え、その後、さらに水50mlを滴下した。析出した固体を濾別した。この固体をトルエンに溶解した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー〔展開液:トルエン/n−ヘキサン(体積比:2/1)〕にて精製し、青色の固体として下記比較化合物1を0.82g得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):599(M+)、
・元素分析値:CHN実測値(64.06% 6.71%、18.67%)
;理論値(64.03%、6.72%、18.69%)
【0115】
【化15】
【0116】
(比較合成例2:比較化合物2の合成)
1−ペンタノール50gに三塩化バナジウム1.57gを加え、20℃でアンモニアガス1.02gを1時間かけて反応液中へ導入した。20〜30℃で1時間攪拌を行った後、2−tert−ブチル−2−マレオニトリル5.38gを装入し、125℃で6時間攪拌を続けた。次いで、反応混合物から1−ペンタノール約40gを蒸留により
除去し、メタノール水(メタノールと水の重量比は1:1)を装入して攪拌した。析出
をろ取し、メタノールで洗浄、乾燥させ青色の固体として、下記比較化合物2を5.46g得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):603(M+)、
・元素分析値:CHN実測値(63.70% 6.71%、18.55%)
;理論値(63.67%、6.60%、18.56%)
【0117】
【化16】
【0118】
(実施例1)
(1)インキ組成物の調製
合成例1の化合物1を1質量部に対して、ペンタエリスリトールトリアクリレート(商品名 M305、東亜合成社製)79質量部と、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184、BASF製)3質量部と、溶媒のメチルエチルケトン296質量部とを混合し、加圧濾過を行って、実施例1のインキ組成物1を得た。
【0119】
(2)フィルムの製造
(1)で得られたインキ組成物を、厚み0.7mmのガラス基板(日本電気硝子製、「OA−10G」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行い、塗膜を得た。当該塗膜に、超高圧水銀灯を用いて254nm換算で500mJ/cmの紫外線を照射することによって硬化膜を得て、実施例1のフィルム1を製造した。
なお、硬化膜は、後述する硬化膜の透過スペクトルにおける波長380nm〜750nmの範囲内の最小透過波長の透過率が40%となるように膜厚を調整した。
【0120】
(実施例2〜3)
(1)インキ組成物の調製
実施例1の(1)において、化合物1を化合物2〜3とした以外は、実施例1の(1)と同様にして、それぞれ実施例2〜3のインキ組成物2〜3を得た。
【0121】
(2)フィルムの製造
実施例1の(2)において、インキ組成物1をそれぞれインキ組成物2〜3に変更した以外は、実施例1の(2)と同様にして、実施例2〜3のフィルム2〜3を得た。
【0122】
(比較例1〜2)
(1)比較インキ組成物の調製
実施例1の(1)において、化合物1を比較化合物1〜2とした以外は、実施例1の(1)と同様にして、それぞれ比較例1〜2の比較インキ組成物1〜2を得た。
【0123】
(2)フィルムの製造
実施例1の(2)において、インキ組成物1をそれぞれ比較インキ組成物1〜2に変更した以外は、実施例1の(2)と同様にして、比較例1〜2の比較フィルム1〜2を得た。
【0124】
[評価]
<硬化膜の透過スペクトル測定>
実施例及び比較例で得られたフィルムの透過スペクトルをオリンパス製「顕微分光測定装置OSP−SP200」を用いて測定した。
測定した上記透過スペクトルにおいて、波長380nm〜750nmの範囲内の最小透過波長(透過率が最小値をとる波長)の透過率とベースラインの透過率との透過率差:ΔT(%)を求め、そのΔT(%)が1/2となる透過率T1/2(%)を算出した。透過スペクトルの最小透過波長を与える谷において、ベースラインからT1/2(%)を満たす最大の波長と最小の波長の差(谷の幅)により、半値幅を算出した。なお、透過スペクトルにおける最小透過波長は、吸収スペクトルにおける最大吸収波長に相当する。
【0125】
【表2】
【0126】
(結果のまとめ)
実施例1〜3の本開示のテトラアザポルフィリン化合物を含有するフィルムは比較例1、2のテトラアザポルフィリン化合物を含有するフィルムに比べて、副吸収(550nm)の透過率が高く、副吸収が抑制されていることが明らかにされた。実施例1〜3の本開示のテトラアザポルフィリン化合物を含有するフィルムにおいては、本開示のテトラアザポルフィリン化合物の自己会合が抑制され、副吸収が低減できたためと考えられた。本開示のテトラアザポルフィリン化合物は、特定の置換基を有することによって、自己会合し難く、また、光硬化バインダー成分への相溶性が向上し、色素分子がより均一に分散できたためと考えられた。
また実施例1のベンゼン環のオルト位にヒドロキシ基を有するテトラアザポルフィリン化合物を含有するフィルムは、実施例1〜3の中でも550nmの透過率が高く、副吸収が低減されている。これはテトラアザポルフィリン骨格に結合するベンゼン環のオルト位のヒドロキシ基が中心金属に対して相互作用することで、副吸収を引き起こす振動準位の形成要因であるテトラアザポルフィリン骨格の垂直方向の振幅運動を抑制できたためだと推察された。
すなわち、ヒドロキシ基がベンゼン環のオルト位に置換されたことにより、ベンゼン環の配座がテトラアザポルフィリン骨格平面に対して直行する形で固定化され、ヒドロキシ基がテトラアザポルフィリン骨格平面上に位置することによって中心金属に相互作用できたと考えられた(図3)。
【符号の説明】
【0127】
100 画像表示装置
10 表示パネル
11、13、17、19 保護層
12、18 偏光子
14、16、16’ 光透過性粘着層
15 表示素子
20 バックライト装置
30 表面機能層
40 ディスプレイ表面フィルム
1 支持体
2 粘着層乃至接着層
【図1】
【図2】
【図3】