(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】2021107695
(43)【公開日】20210729
(54)【発明の名称】圧縮機制御方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20210702BHJP
   F04B 49/10 20060101ALI20210702BHJP
   H02P 21/05 20060101ALI20210702BHJP
【FI】
   !F04B49/06 331
   !F04B49/10 331D
   !H02P21/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】2019238422
(22)【出願日】20191227
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区中崎西2丁目4番12号 梅田センタービル
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 稔
【住所又は居所】大阪府大阪市北区中崎西二丁目4番12号 梅田センタービル ダイキン工業株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】小沢 仁
【住所又は居所】大阪府大阪市北区中崎西二丁目4番12号 梅田センタービル ダイキン工業株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】樋口 順英
【住所又は居所】大阪府大阪市北区中崎西二丁目4番12号 梅田センタービル ダイキン工業株式会社内
【テーマコード(参考)】
3H145
5H505
【Fターム(参考)】
3H145AA02
3H145AA12
3H145AA27
3H145AA31
3H145AA42
3H145BA38
3H145CA22
3H145CA23
3H145DA04
3H145DA47
5H505AA06
5H505BB04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE07
5H505EE41
5H505EE55
5H505GG04
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ04
5H505JJ06
5H505JJ09
5H505JJ17
5H505JJ24
5H505JJ25
5H505JJ26
5H505KK06
5H505LL01
5H505LL22
5H505LL32
(57)【要約】
【課題】特定の運転エリアで圧縮機の振動を抑制可能な圧縮機制御方法を提案すること。
【解決手段】モータを備える圧縮機の振動振幅を前記モータで制御する圧縮機制御方法であって、前記圧縮機は前記モータによって駆動される機器であり、特定の運転エリアでは、前記モータが受ける負荷および前記モータの回転数の変化に関わらず、前記振動振幅を略一定に制御する、圧縮機制御方法。例えば、予め設定されるテーブルから読み出されるデータに基づいて、前記変化に関わらず前記振動振幅を略一定に制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを備える圧縮機の振動振幅を前記モータで制御する圧縮機制御方法であって、
前記圧縮機は前記モータによって駆動される機器であり、
特定の運転エリアでは、前記モータが受ける負荷および前記モータの回転数の変化に関わらず、前記振動振幅を略一定に制御する、圧縮機制御方法。
【請求項2】
予め設定されるテーブルから読み出されるデータに基づいて、前記変化に関わらず前記振動振幅を略一定に制御する、請求項1に記載の圧縮機制御方法。
【請求項3】
前記モータが受ける負荷が前記モータの回転数毎に設定される第1閾値以下に低下すると、前記振動振幅を第1レベルに制御し、
前記モータが受ける負荷が前記モータの回転数毎に設定される第2閾値よりも上昇すると、前記振動振幅を第2レベルに制御し、
前記第1閾値は、前記第2閾値以下であり、
前記第2レベルは、前記第1レベルよりも低い、請求項2に記載の圧縮機制御方法。
【請求項4】
前記振動振幅を、前記第1レベルと前記第2レベルとの間に制御するモードをもつ、請求項3に記載の圧縮機制御方法。
【請求項5】
前記振動振幅に応じて増減する変数に基づいて、前記変化に関わらず前記振動振幅を略一定に制御する、請求項1に記載の圧縮機制御方法。
【請求項6】
前記モータが受ける負荷が前記モータの回転数毎に設定される第1閾値以下に低下すると、前記振動振幅を第1レベルに制御し、
前記モータが受ける負荷が前記モータの回転数毎に設定される第2閾値よりも上昇すると、前記振動振幅を第2レベルに制御し、
前記第1閾値は、前記第2閾値以下であり、
前記第2レベルは、前記第1レベルよりも低い、請求項5に記載の圧縮機制御方法。
【請求項7】
前記振動振幅を、前記第1レベルと前記第2レベルとの間に制御するモードをもつ、請求項6に記載の圧縮機制御方法。
【請求項8】
前記変数は、前記モータが受ける負荷トルクと前記モータが発生するモータトルクとの差によって発生する加振トルク、前記モータの磁極位置の変動の大きさ、又は、前記モータの回転速度の変動の大きさであり、
前記加振トルク、前記磁極位置の変動の大きさ、又は、前記回転速度の変動の大きさは、前記モータの回転数に応じて変化する、請求項5から7のいずれか一項に記載の圧縮機制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機の振動を抑制する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6103125号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示では、特定の運転エリアで圧縮機の振動を抑制可能な圧縮機制御方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様に係る圧縮機制御方法は、
モータを備える圧縮機の振動振幅を前記モータで制御する圧縮機制御方法であって、
前記圧縮機は前記モータによって駆動される機器であり、
特定の運転エリアでは、前記モータが受ける負荷および前記モータの回転数の変化に関わらず、前記振動振幅を略一定に制御する。
【0006】
第1の態様に係る圧縮機制御方法によれば、特定の運転エリアでは、前記モータが受ける負荷および前記モータの回転数の変化に関わらず、前記振動振幅が略一定に制御されるので、圧縮機の振動を抑制できる。
【0007】
第2の態様に係る圧縮機制御方法は、第1の態様において、
予め設定されるテーブルから読み出されるデータに基づいて、前記変化に関わらず前記振動振幅を略一定に制御する。
【0008】
第2の態様に係る圧縮機制御方法によれば、予め設定されるテーブルから読み出されるデータに基づいて、前記変化に関わらず前記振動振幅が略一定に制御されるので、圧縮機の振動を抑制できる。
【0009】
第3の態様に係る圧縮機制御方法は、第2の態様において、
前記モータが受ける負荷が前記モータの回転数毎に設定される第1閾値以下に低下すると、前記振動振幅を第1レベルに制御し、
前記モータが受ける負荷が前記モータの回転数毎に設定される第2閾値よりも上昇すると、前記振動振幅を第2レベルに制御し、
前記第1閾値は、前記第2閾値以下であり、
前記第2レベルは、前記第1レベルよりも低い。
【0010】
前記モータが受ける負荷が大きくなるほど、圧縮機の振動振幅は増大する傾向がある。第3の態様に係る圧縮機制御方法によれば、前記モータが受ける負荷が前記第2閾値よりも上昇すると、圧縮機の振動振幅は第1レベルよりも低い第2レベルに制御されるので、圧縮機の振動振幅の増大を抑制できる。
【0011】
第4の態様に係る圧縮機制御方法は、第3の態様において、
前記振動振幅を、前記第1レベルと前記第2レベルとの間に制御するモードをもつ。
【0012】
第4の態様に係る圧縮機制御方法によれば、圧縮機の振動振幅を前記第2レベルに何らかの要因で制御できなくても、圧縮機の振動振幅は前記第1レベルと前記第2レベルとの間で制御されるので、圧縮機の振動を抑制できる。
【0013】
第5の態様に係る圧縮機制御方法は、第1から第4のいずれかの一態様において、
前記振動振幅に応じて増減する変数に基づいて、前記変化に関わらず前記振動振幅を略一定に制御する。
【0014】
第5の態様に係る圧縮機制御方法によれば、前記振動振幅に応じて増減する変数に基づいて、前記変化に関わらず前記振動振幅が略一定に制御されるので、圧縮機の振動振幅を抑制できる。
【0015】
第6の態様に係る圧縮機制御方法は、第5の態様において、
前記モータが受ける負荷が前記モータの回転数毎に設定される第1閾値以下に低下すると、前記振動振幅を第1レベルに制御し、
前記モータが受ける負荷が前記モータの回転数毎に設定される第2閾値よりも上昇すると、前記振動振幅を第2レベルに制御し、
前記第1閾値は、前記第2閾値以下であり、
前記第2レベルは、前記第1レベルよりも低い。
【0016】
前記モータが受ける負荷が大きくなるほど、圧縮機の振動振幅は増大する傾向がある。第6の態様に係る圧縮機制御方法によれば、前記モータが受ける負荷が前記第2閾値よりも上昇すると、圧縮機の振動振幅は第1レベルよりも低い第2レベルに制御されるので、圧縮機の振動振幅の増大を抑制できる。
【0017】
第7の態様に係る圧縮機制御方法は、第6の態様において、
前記振動振幅を、前記第1レベルと前記第2レベルとの間に制御するモードをもつ。
【0018】
第7の態様に係る圧縮機制御方法によれば、圧縮機の振動振幅を前記第2レベルに何らかの要因で制御できなくても、圧縮機の振動振幅は前記第1レベルと前記第2レベルとの間で制御されるので、圧縮機の振動を抑制できる。
【0019】
第8の態様に係る圧縮機制御方法は、第5から第7のいずれかの一態様において、
前記変数は、前記モータが受ける負荷トルクと前記モータが発生するモータトルクとの差によって発生する加振トルク、前記モータの磁極位置の変動の大きさ、又は、前記モータの回転速度の変動の大きさであり、
前記加振トルク、前記磁極位置の変動の大きさ、又は、前記回転速度の変動の大きさは、前記モータの回転数に応じて変化する。
【0020】
第8の態様に係る圧縮機制御方法によれば、前記変数は、前記加振トルク、前記磁極位置の変動の大きさ、又は、前記回転速度の変動の大きさであり、それらは、前記モータの回転数に応じて変化するので、圧縮機の振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】圧縮機の振動を抑制する制御(振動抑制制御)を説明するための図である。
【図2】モータの各回転数における、加振トルクの振幅と圧縮機の振動振幅との関係を例示する図である。
【図3】圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御するための、モータの回転数と加振トルクの振幅との関係を例示する図である。
【図4】第1の実施形態における圧縮機制御方法を説明するための図である。
【図5】第2の実施形態における圧縮機制御方法を説明するための図である。
【図6】第3の実施形態における圧縮機制御方法を説明するための図である。
【図7】電動機制御装置の構成及びその周辺装置を例示するブロック図である。
【図8】第1の実施形態におけるγc軸電流補正部の第1の構成例を示すブロック図である。
【図9】補正量計算部の構成を例示するブロック図である。
【図10】第1の実施形態におけるγc軸電流補正部の第2の構成例を示すブロック図である。
【図11】第1の実施形態におけるγc軸電流補正部の第3の構成例を示すブロック図である。
【図12】第1の実施形態におけるγc軸電流補正部の第4の構成例を示すブロック図である。
【図13】第2の実施形態におけるγc軸電流補正部の第1の構成例を示すブロック図である。
【図14】第2の実施形態におけるγc軸電流補正部の第2の構成例を示すブロック図である。
【図15】第3の実施形態におけるγc軸電流補正部の第1の構成例を示すブロック図である。
【図16】第3の実施形態におけるγc軸電流補正部の第2の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態を説明する。
【0023】
図1は、圧縮機の振動を抑制する制御(振動抑制制御)を説明するための図である。圧縮機は、冷媒を圧縮する機器である。圧縮機は、モータによって駆動され、例えば、空気調和機に使用される。冷媒の圧縮工程では、圧縮機のモータが受ける負荷(例えば、負荷トルク)は、図1に示すように、大きく変動する。加振トルクは、モータが出力するトルク(モータトルク)とモータが受ける負荷トルクとの差により発生するトルクを表す。この加振トルクによって、圧縮機は振動する。
【0024】
振動抑制制御は、制御可能なモータトルクを負荷トルクの変化に追従するように変化させる。これにより、加振トルクが小さくなるので、圧縮機の振動を抑制できる。しかしながら、加振トルクを低減するようにモータトルクを変動させると、モータに流す電流が大きくなるので、モータの損失が増大し、圧縮機及びモータの効率が低下する場合がある。
【0025】
本実施形態における圧縮機制御方法は、特定の運転エリアで圧縮機の振動抑制制御を行うことで、圧縮機の振動が実用上問題とならない範囲において、圧縮機の振動を抑制するとともに、圧縮機等の効率の低下を抑制するものである。
【0026】
図2は、モータの各回転数(18,28,40,47,57rps)における、加振トルクの振幅と圧縮機の振動振幅との関係を例示する図である。rpsは、回転毎秒の略であり、モータの回転が1秒間に繰り返される回数を表す単位である。rpsは、s−1とも表記される。なお、図2等に示す具体的な数値は、単なる例示にすぎず、本開示の技術は、これらの数値に限定されなくてよい。
【0027】
圧縮機の振動振幅を、一定のレベル(図2の場合、300μm)に制御することが、圧縮機の振動抑制と効率低下の抑制とを両立させる点で好ましい。圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御する加振トルクの振幅は、図2に示すように、モータの回転数(回転速度)に応じて異なる。
【0028】
図3は、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御するための、モータの回転数と加振トルクの振幅との関係を例示する図である。図3に示す関係に基づきモータの回転数に対応する振幅値に、加振トルクの振幅値を変化させる振動抑制制御を実行することによって、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御できる。例えば、図3に示す近似直線(近似曲線)を表すテーブルに基づきモータの回転数に対応する加振トルクの指令値を導出し、導出した指令値に対応する操作量に応じてモータトルクを調整する。このような振動抑制制御を特定の運転エリアで実行することで、モータが受ける負荷およびモータの回転数に変化に関わらず、圧縮機の振動振幅は略一定のレベルに制御されるので、特定の運転エリアにおいて圧縮機の振動抑制と効率低下の抑制とを実現できる。
【0029】
なお、特定の運転エリアは、例えば、モータが受ける負荷が変動し得る所定の負荷変動領域と、モータの回転数が変動し得る所定の回転数領域との少なくとも一方の領域によって決まるエリアを表す。特定の運転エリアは、圧縮機の振動抑制と効率低下の抑制とを実現したい領域に応じて、適宜設定されてよい。
【0030】
また、圧縮機の振動振幅に応じて増減する変数は、加振トルクに限られず、モータの磁極位置の変動の大きさでもよいし、モータの回転速度の変動の大きさでもよい。変動の大きさとは、極大値と極小値との差(変動量)を表す。加振トルクの場合と同様に、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御する磁極位置の変動の大きさ(又は、回転速度の変動の大きさ)は、モータの回転数に応じて異なる。つまり、図3の縦軸の加振トルクは、磁極位置の変動の大きさ、又は、回転速度の変動の大きさに置換可能である。
【0031】
したがって、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御するための、モータの回転数と磁極位置の変動の大きさとの関係に基づいて、モータの回転数に応じた値に磁極位置の変動の大きさを変化させることによって、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御できる。同様に、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御するための、モータの回転数と回転速度の変動の大きさとの関係に基づいて、モータの回転数に応じた値に回転速度の変動の大きさを変化させることによって、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御できる。
【0032】
次に、複数の実施形態をより詳細に説明する。
【0033】
図4は、第1の実施形態における圧縮機制御方法を説明するための図である。第1の実施形態における圧縮機制御方法は、特定の運転エリアでは、モータが受ける負荷およびモータの回転数の変化に関わらず、圧縮機の振動振幅を第1レベルに制御する。これにより、特定の運転エリアにおいて、圧縮機の振動抑制と効率低下の抑制とを実現できる。
【0034】
第1の実施形態における圧縮機制御方法は、例えば、モータが受ける負荷およびモータの回転数によって決められる第1運転エリアで圧縮機が運転している場合、モータが受ける負荷およびモータの回転数の変化に関わらず、圧縮機の振動振幅を第1レベルに制御する。一方、第1の実施形態における圧縮機制御方法は、第1運転エリアより圧縮機の振動振幅が小さい第2運転エリアで圧縮機が運転している場合、圧縮機の振動振幅を第1レベルに制御することを禁止する。これにより、第2運転エリアで圧縮機の振動振幅を第1レベルに制御する(上昇させる)ことによる振動悪化を抑制できる。
【0035】
図5は、第2の実施形態における圧縮機制御方法を説明するための図である。第2の実施形態における圧縮機制御方法は、モータが受ける負荷がモータの回転数毎に設定される第1閾値(図5の場合、閾値L1a,L2a,L3aから構成)以下に低下すると、圧縮機の振動振幅を第1レベルに制御する第1のモードをもつ。一方、第2の実施形態における圧縮機制御方法は、モータが受ける負荷がモータの回転数毎に設定される第2閾値(図5の場合、閾値L1b,L2b,L3bから構成)よりも上昇すると、圧縮機の振動振幅を、第1レベルよりも低い第2レベルに制御する第2のモードをもつ。第1閾値は、第2閾値以下に設定されている。モータが受ける負荷が大きくなるほど、圧縮機の振動振幅は増大する傾向がある。第2の実施形態における圧縮機制御方法によれば、モータが受ける負荷が第2閾値よりも上昇すると、圧縮機の振動振幅は第1レベルよりも低い第2レベルに制御されるので、圧縮機の振動振幅の増大を抑制できる。
【0036】
図5には、R1からR2までの回転数領域に設定される閾値L2a,L2bと、R2からR3までの回転数領域に設定される閾値L1a,L1bと、R3からR4までの回転数領域に設定される閾値L3a,L3bとが例示されている。閾値の個数、及び、複数の閾値の大小関係は、任意であり、適宜設定されてよい。図5の場合、閾値L1aは閾値L1bよりも低く、閾値L2aは閾値L2bよりも低く、閾値L3aは閾値L3bよりも低い。第1閾値と第2閾値との間にこのようなヒステリシスが設けられることで、モータを受ける負荷が第1閾値又は第2閾値の近傍で上下動しても、振動振幅が制御されるレベルが第1レベル又は第2レベルに頻繁に切り替わることを抑制できる。なお、第1閾値と第2閾値とを同一値にすることでヒステリシスを設けなくてもよい。R1からR2までの回転数領域に、単一の閾値L2(L2a=L2b)が、R2からR3までの回転数領域に、単一の閾値L1(L1a=L1b)が、R3からR4までの回転数領域に、単一の閾値L3(L3a=L3b)がそれぞれ設定されてもよい。
【0037】
また、第2の実施形態における圧縮機制御方法によれば、モータが受ける負荷が第1閾値以下の運転エリアでは、圧縮機の振動振幅が第2レベルよりも高い第1レベルに許容されるので、振動の抑制度合いが緩和する。したがって、モータが受ける負荷が第1閾値以下の運転エリアでは、圧縮機の振動振幅を抑制した状態で、モータが受ける負荷が第2閾値よりも大きい運転エリアに比べて圧縮機等の効率を上げることができる。
【0038】
モータが受ける負荷が所定の閾値L(例えば、第1閾値)以下の運転エリアには、例えば、空気調和機が日本産業規格(JIS)で定められた能力を発揮する運転エリアが設定される。より具体的には、JIS B8616:2015で定められた8つの能力(定格冷房標準能力、中間冷房標準能力、中間冷房中温能力、最小冷房中温能力、定格暖房標準能力、中間暖房標準能力、最小暖房標準能力、最大暖房低温能力)のうち、少なくとも一つの能力が、モータが受ける負荷が所定の閾値L以下の運転エリアに設定されると好適である。これにより、特定の運転エリアでは、圧縮機の振動振幅を抑制した上で圧縮機等の効率を上げることができるので、JIS B8616:2015で定められた通年エネルギー消費効率(APF:Annual Performance Factor)を上げることができる。
【0039】
図6は、第3の実施形態における圧縮機制御方法を説明するための図である。第3の実施形態における圧縮機制御方法は、圧縮機の振動振幅を、第1レベルと第2レベルとの間に制御する第3のモードをもつ。第3の実施形態における圧縮機制御方法によれば、圧縮機の振動振幅を第2レベルに何らかの要因(例えば、インバータのハード上の制約)で制御できなくても、圧縮機の振動振幅は第1レベルと第2レベルとの間で制御されるので、圧縮機の振動を抑制できる。
【0040】
次に、圧縮機制御方法を実行する各実施形態における電動機制御装置の構成例について説明する。
【0041】
図7は、電動機制御装置の構成及びその周辺装置を例示するブロック図である。図7に示す電動機制御装置1は、冷媒を圧縮する機器である圧縮機を駆動するモータの一例である同期電動機3を制御する。
【0042】
同期電動機3は、三相の回転電動機であり、電機子と、界磁である回転子と(いずれも不図示)を備える。技術的な常識として、電機子は、電機子巻線を有し、回転子は、電機子と相対的に回転する。界磁は、例えば界磁磁束を発生させる磁石(界磁磁石:不図示)を備え、例えば埋込磁石型が採用される。
【0043】
電圧供給源2は、例えば電圧制御型インバータ及びその制御部を備え、三相の電圧指令値[V*](記号[]はベクトルであることを示す)に基づいて、三相電圧を同期電動機3に印加する。これにより、同期電動機3には、電圧供給源2から三相電流[I]が流れる。
【0044】
電動機制御装置1は、同期電動機3の一次磁束及び回転速度(以下の例では回転角速度)を制御する。一次磁束は、界磁磁石が発生する界磁磁束Λ0と、同期電動機3に(より具体的には電機子に)流れる電機子電流(これは三相電流[I]でもある)によって発生する電機子反作用の磁束との合成である。一次磁束指令Λδ*は、実際の一次磁束の大きさΛδの指令値である。
【0045】
電動機制御装置1は、同期電動機3の一次磁束を、一次磁束の制御軸となるδc軸において一次磁束指令Λδ*と一致させる方法の制御を行って、同期電動機3を制御する。δc軸は、回転座標系において界磁磁束Λ0の位相を示すd軸に対して、所定の位相差で進相する。実際の一次磁束は、δc軸においてδc軸成分λδcを、γc軸においてγc軸成分λγcをそれぞれ有する。γc軸は、δc軸に対して、90度の電気角で進相する。以下、単に、一次磁束λδc,λγcとの表現を用いることがある。
【0046】
通常、一次磁束の指令値は、そのγc軸成分が零であり、δc軸成分が上述の様に一次磁束指令Λδ*に設定される。つまり、電動機制御装置1は、実際の一次磁束のγc軸成分λγcを零にする制御を行って、所定の位相差を得る。このような制御は、一次磁束制御と通称され、公知である。通常、一次磁束制御での可制御量には、一次磁束と回転速度とが採用される。
【0047】
本実施の形態において、一次磁束は、推定値であっても観測値であってもよい。一次磁束を推定する技術も公知である。
【0048】
電動機制御装置1は、第1座標変換部101と、磁束制御部102と、第2座標変換部104と、速度指令補正装置12とを備える。電動機制御装置1が備えるこれらの各部の機能は、メモリに読み出し可能に記憶されたプログラムによって、プロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit))が動作することにより実現される。
【0049】
第1座標変換部101は、後述するようにして求められる同期電動機3の電気角θeに基づく三相/二相変換を行う。具体的には、三相電流[I]を、一次磁束制御を行うδc−γc回転座標系におけるδc軸電流iδc、γc軸電流iγcに変換する。この際、三相電流はその三相分の和が零となるので、二相分が得られれば、他の一相は当該二相分から推定される。図7における「3(2)」は、検出される電流が三相分であっても二相分であってもよいことを示す。δc軸電流iδc、γc軸電流iγcは、それぞれ同期電動機3に流れる電流のδc軸成分、γc軸成分であると言える。
【0050】
第2座標変換部104は、電気角θeに基づく二相/三相変換を行う。具体的にはδc−γc回転座標系におけるδc軸電圧指令値vδ*、γc軸電圧指令値vγ*を、三相の電圧指令値[V*]へ変換する。
【0051】
なお、三相の電圧指令値[V*]に代えて、他の座標系、例えばd−q回転座標系での電圧指令値へ、δc軸電圧指令値vδ*、γc軸電圧指令値vγ*を変換してもよい。他の座標系としては、αβ固定座標系、uvw固定座標系、極座標系を採用できる。
【0052】
磁束制御部102は、(電気角についての)回転速度指令ωeo*から、これに対応した(機械角についての)回転速度指令ωm*を求める。かかる機能は公知技術で容易に実現できるので、その詳細は省略する。
【0053】
磁束制御部102は、例えば積分機能を具備している。当該積分機能により、回転速度指令ωe*が積分されて電気角θeが得られる。得られた電気角θe及び、一次磁束のd軸に対する負荷角φから式(1)によって、機械角としての回転角θmが得られる。但し、同期電動機3の極対数Pを導入した。
【0054】
θm=(θe−φ)/P ・・・(1)
【0055】
負荷角φは、推定値であっても観測値であってもよい。負荷角φを推定する技術は、公知である。また、回転角θmを求める方法として式(1)以外の、公知技術を採用することができる。
【0056】
磁束制御部102は、δc軸電流iδc、γc軸電流iγc、一次磁束λδc,λγc、一次磁束指令Λδ*、回転速度指令ωe*に基づいて、δc軸電圧指令値vδ*、γc軸電圧指令値vγ*を生成する。かかる機能及び当該機能を実現するための構成、及び一次磁束λδc,λγcを推定する手法は、公知であるので、ここではその詳細を省略する。
【0057】
速度指令補正装置12は、γc軸電流補正部105(図7では「iγc補正部」と記載)、加算器107、減算器109、ハイパスフィルタ110を備える。
【0058】
γc軸電流補正部105は、回転角θm、回転速度指令ωm*、一次磁束λδc,λγc、δc軸電流iδc、γc軸電流iγc、及び次数nに基づいて、第1のγc軸電流補正値Δiγc1を求める。第1のγc軸電流補正値Δiγc1は、回転角θmの基本周波数のn次成分(nは正整数)を低減する量であり、その具体的な意義及び求め方については後述する。
【0059】
加算器107は、γc軸電流iγcに第1のγc軸電流補正値Δiγc1を加算して第1の補正済みγc軸電流iγc1を得る。ハイパスフィルタ110は、第1の補正済みγc軸電流iγc1からその直流分を除去して角速度補正量Δωe*を求める直流分除去部として機能する。図示されるように速度指令補正装置12が定数倍部108を更に備え、ハイパスフィルタ110の出力が定数倍部108で所定ゲインKm倍されたものとして角速度補正量Δωe*が求められてもよい。
【0060】
減算器109は、電気角についての回転速度指令ωeo*から角速度補正量Δωe*を減算し、補正済みの回転速度指令ωe*を得る。
【0061】
図8は、第1の実施形態におけるγc軸電流補正部の第1の構成例を示すブロック図である。図8に示すγc軸電流補正部1105Aは、γc軸電流補正部105(図7参照)の一例である。γc軸電流補正部1105Aは、加振トルク抽出部105A、出力トルク抽出部105B、加算器105g、補正量計算部105hを備える。
【0062】
加振トルク抽出部105Aは、角度脈動抽出部105a、n次成分抽出部105b、トルク換算部105i、按分係数乗算部105cを有する。
【0063】
角度脈動抽出部105aは、回転角θmと回転速度指令ωm*から、回転角差分Δθmを求める。回転角差分Δθmは、回転角θmの、同期電動機3の定速回転時における回転角θmに対する脈動分を表す。
【0064】
n次成分抽出部105bは、回転角差分Δθmのうち回転角θmの基本周波数のn次成分Δθms(n),Δθmc(n)を抽出する。n次成分抽出部105bは、抽出すべき次数の回転角差分Δθmの成分を、正弦値成分Δθms(n)と余弦値成分Δθmc(n)とに分けて取り扱う。n次成分抽出部105bの具体的な動作は後述する。
【0065】
トルク換算部105iは、n次成分Δθms(n),Δθmc(n)をトルクに換算する。具体的には、回転角θmにおける同期電動機3の加振トルクτvの推定値のn次成分τvs(n),τvc(n)を求める。例えば、トルク換算部105iは、回転角差分Δθmのn次成分Δθms(n),Δθmc(n)に対して、機械負荷の慣性モーメントJと回転速度指令ωm*の2乗と次数nの2乗との積(=−n・J・ωm*)を乗じることにより、加振トルクτvのn次成分を求める。具体的には加振トルクτvのn次の正弦値成分τvs(n)と余弦値成分τvc(n)とが求められる。
【0066】
加振トルクτvは、同期電動機3の出力トルクτeから、同期電動機3が駆動する機械負荷(不図示)の負荷トルクτdを引いた値である。
【0067】
τv=τe−τd ・・・(2)
【0068】
負荷トルクτdは周期性を有し、つまり同期電動機3は周期性負荷を駆動する。この機械負荷の例としては、例えば空気調和機に採用される冷媒を圧縮する圧縮機構(圧縮機)を挙げることができる。
【0069】
加振トルクτvは、回転角θmの周期の1/nの周期で変動する成分(上述の「n次成分」)を次数毎に独立した振幅で有している。例えば機械負荷が1シリンダ圧縮機であれば、n=1に対応する1次成分の振幅が主となり、2シリンダ圧縮機であれば、n=2に対応する2次成分の振幅が主となる。
【0070】
出力トルク抽出部105Bは、出力トルク推定部105d、n次成分抽出部105e、按分係数乗算部105fを有する。
【0071】
出力トルク推定部105dは、一次磁束λδc,λγcと、δc軸電流iδc、γc軸電流iγcを用い、式(7)で出力トルクτeの推定値を求める。
【0072】
τe=P・(λδc・iγc−λγc・iδc) ・・・(7)
【0073】
ここでは、出力トルクτeについて推定値と実際の値との差分を取り扱わないので、出力トルクτe及びその推定値のいずれについても便宜的に「出力トルクτe」との表現を用いる。
【0074】
n次成分抽出部105eは、n次成分抽出部105bと同様にして、出力トルクτeのうち回転角θmの基本周波数のn次成分τes(n),τec(n)を抽出する。
【0075】
具体的には、n次成分抽出部105b,105eは、いずれもフーリエ変換を用いることにより、入力した量の正弦値成分及び余弦値成分を得る。回転角差分Δθm及び出力トルクτeは、いずれも回転角θmの関数であって、両者のいずれをも関数F(θm)として表すと、式(8)が成立する。
【0076】
【数1】
【0077】
ここで、値a0は、関数F(θm)の直流成分(0次成分)であり、値anは、関数F(θm)のn次成分の余弦値の振幅であり、値bnは、関数F(θm)のn次成分の正弦値の振幅である。上述のフーリエ変換を行うべく、n次成分抽出部105b,105eには、次数nと回転角θmとが入力される。なお、式(8)において積分変数として回転角θmではなく、時間tを採用してもよい。フーリエ変換で行われる計算において、回転角θmは、角度θmf(=ωma・t)で代用することができる。ωmaは、角速度の平均値(平均角速度)を表す。
【0078】
n次成分抽出部105bは、回転角差分Δθmを関数F(θm)として採用し、値bnを回転角差分Δθmの正弦値成分Δθms(n)として出力し、値anを回転角差分Δθmの余弦値成分Δθmc(n)として出力する。
【0079】
n次成分抽出部105eは、出力トルクτeを関数F(θm)として採用し、値bnを出力トルクτeの正弦値成分τes(n)として出力し、値anを出力トルクτeの余弦値成分τec(n)として出力する。
【0080】
按分係数乗算部105cは、次数n毎に設定される按分係数K(n)を、正弦値成分τvs(n)及び余弦値成分τvc(n)のいずれにも乗じる。按分係数乗算部105fは、按分係数[1−K(n)]を、正弦値成分τes(n)及び余弦値成分τec(n)のいずれにも乗じる。但し、次数nのそれぞれにおいて、0≦K(n)≦1が成立する。よって、按分係数乗算部105c,105fは、所定の按分比K(n)/[1−K(n)]で、正弦値成分τvs(n)と正弦値成分τes(n)とを按分し、当該按分比で余弦値成分τvc(n)と余弦値成分τec(n)とを按分する按分部として機能する。按分係数K(n),[1−K(n)]は、按分係数乗算部105c,105fに対して外部から与えられてもよい。この場合、按分係数乗算部105c,105fは、単なる乗算器で実現される。
【0081】
加算器105gは、次数n毎に、正弦値成分に関する積τvs(n)・K(n),τes(n)・[1−K(n)]同士を加算し、余弦値成分に関する積τvc(n)・K(n),τec(n)・[1−K(n)]同士を加算し、対を成す和を出力する。
【0082】
n次成分抽出部105b,105eにおいて、抽出の対象となる次数nは、複数採用されてもよい。例えば次数nとして値1のみを採用する場合には、加算器105gは、一対の和τvs(1)・K(1)+τes(1)・[1−K(1)],τvc(1)・K(1)+τec(1)・[1−K(1)]を出力する。あるいは、次数nとして値1,2の二つを採用する場合には、加算器105gは、和τvs(1)・K(1)+τes(1)・[1−K(1)],τvc(1)・K(1)+τec(1)・[1−K(1)]の対と、和τvs(2)・K(2)+τes(2)・[1−K(2)],τvc(2)・K(2)+τec(2)・[1−K(2)]の対との二対を出力する。図8において矢印に付されたスラント「/」はこのような対の入出力を示す。
【0083】
負荷トルクτdについてのn次の正弦値成分τds(n)及び余弦値成分τdc(n)を導入すると、式(2)から、式(9)が得られる。
【0084】
τvs(n)=τes(n)−τds(n)
τvc(n)=τec(n)−τdc(n) ・・・(9)
【0085】
よって、加算器105gは、対を成す値τes(n)−K(n)・τds(n),τec(n)−K(n)・τdc(n)を出力できる。
【0086】
図9は、補正量計算部105hの構成を例示するブロック図である。補正量計算部105hは、PI制御部11hと、合成値計算部11yとを有する。ここでは、簡単のため、次数nが1である場合を例示する。
【0087】
PI制御部11hは、いずれも比例積分制御を行うPI制御器11hs,11hcを備える。PI制御器11hsは、正弦値成分に関する値について比例積分制御を行う。PI制御器11hcは、余弦値成分に関する値について比例積分制御を行う。
【0088】
PI制御器11hsは、値τes(n)−K(n)・τds(n)を入力し、これに対して比例積分制御を行った結果を出力する。PI制御器11hcは、値τec(n)−K(n)・τdc(n)を入力し、これに対して比例積分制御を行った結果を出力する。
【0089】
合成値計算部11yは、PI制御器11hsで得られた正弦値成分に関する比例積分制御の結果と、PI制御器11hcで得られた余弦値成分に関する比例積分制御の結果とを以下の様に合成して合成値を求める。
【0090】
合成値計算部11yは、乗算器11j,11k,11pと、正弦値生成部11qと、余弦値生成部11rと、加算器11sとを有している。
【0091】
乗算器11pは、次数nと回転角θmとを入力し、両者の積n・θmを得る。正弦値生成部11qは、積n・θmを入力し、正弦値sin(n・θm)を得る。余弦値生成部11rは、積n・θmを入力し、余弦値cos(n・θm)を得る。
【0092】
乗算器11jは、PI制御器11hsで得られた結果と正弦値sin(n・θm)との積を得る。乗算器11kは、PI制御器11hcで得られた結果と余弦値cos(n・θm)との積を得る。加算器11sは、三角関数の合成を行って合成値を得る。具体的には、加算器11sは、乗算器11jで得られた積と、乗算器11kで得られた積との和として合成値を得る。当該合成値が第1のγc軸電流補正値Δiγc1として合成値計算部11yから出力される。これは、PI制御器11hs,11hcの各々で得られた結果をフーリエ級数の係数とし、そのフーリエ級数の結果から第1のγc軸電流補正値Δiγc1を求めることに相当する。
【0093】
加振トルクτv及び出力トルクτeのn次成分に基づいて求められた第1のγc軸電流補正値Δiγc1は、加算器107(図7参照)によって、γc軸電流iγcに反映される。これにより、結果的に、減算器109において、回転速度指令ωeo*を、加振トルクτvの増加及び/又は出力トルクτeの増加に対応して増加させる方向に補正することになる。このように、第1のγc軸電流補正値Δiγc1は、加振トルクτvや出力トルクτeの脈動に対して比例積分制御を行って得られているので、補正済み回転速度指令ωe*は、加振トルクτvや出力トルクτeの脈動を抑制するように制御される。
【0094】
補正量計算部105h(図8参照)における比例積分制御を行う前に、按分係数K(n),[1−K(n)]で、加振トルクτv及び出力トルクτeの回転速度指令ωeo*への影響を按分する。これは、比例積分制御のゲインによらずに按分比を維持できる観点でも、比例積分制御において機械角の回転速度に応じた周波数帯域は不要である観点でも、好適である。
【0095】
次数nを複数個にて設定する場合、補正量計算部105hは、PI制御部11hと、加算器11sを除いた合成値計算部11yとを、その次数毎に設ける。そして、加算器11sは、次数毎に設けられた合成値計算部11yの出力を、全て加算して第1のγc軸電流補正値Δiγc1として出力する。
【0096】
ある次数nにおいて、按分係数K(n)が1であるとする。この場合、按分係数乗算部105fの出力は0となり、出力トルクτeは第1のγc軸電流補正値Δiγc1に寄与せず、加振トルクτvのみが回転速度指令ωeo*の補正に寄与することになる。この場合は、回転速度指令ωeo*の補正が専ら加振トルクτvの抑制に寄与することなる。
【0097】
ある次数nにおいて、按分係数K(n)が0であるとする。この場合、按分係数乗算部105cの出力は0となり、加振トルクτvは第1のγc軸電流補正値Δiγc1に寄与せず、出力トルクτeのみが回転速度指令ωeo*の補正に寄与することになる。この場合は、回転速度指令ωeo*の補正が専ら出力トルクτeの脈動の抑制に寄与することとなり、電流[I]の振幅を一定にし易くする。
【0098】
上述のことから、加算器105g、出力トルク抽出部105B、按分係数乗算部105cを省略して、γc軸電流補正部105を構成してもよい。この構成では、正弦値成分τes(n)及び余弦値成分τec(n)を用いずに正弦値成分τvs(n)及び余弦値成分τvc(n)を用いて(より具体的にはこれらに比例積分制御を行って)、補正量計算部105hが第1のγc軸電流補正値Δiγc1を求める。このような構成でも、回転速度指令ωeo*の補正によって加振トルクτvを抑制できる。
【0099】
同様にして、加算器105g、加振トルク抽出部105A、按分係数乗算部105fを省略して、γc軸電流補正部105を構成してもよい。この構成では、正弦値成分τvs(n)及び余弦値成分τvc(n)を用いずに正弦値成分τes(n)及び余弦値成分τec(n)を用いて(より具体的にはこれらに比例積分制御を行って)、補正量計算部105hが第1のγc軸電流補正値Δiγc1を求める。このような構成でも、回転速度指令ωeo*の補正によって出力トルクτeの脈動を抑制できる。
【0100】
このように、図8に示すγc軸電流補正部1105Aによれば、按分係数K(n)の大きさを調整することによって、圧縮機の振動抑制量を制御できる。γc軸電流補正部1105Aは、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値に応じて、加振トルクの指令値のn次成分(加振トルク指令)を決定する。そして、γc軸電流補正部1105Aは、決定した加振トルク指令に応じて、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御する按分係数K(n)の大きさを決定する。
【0101】
γc軸電流補正部1105Aは、テーブル23と、減算器22と、PI制御器21とを有する。
【0102】
テーブル23は、特定の運転エリアにおいて、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御するための、同期電動機3の回転速度と加振トルクとの関係が予め設定されたものである。テーブル23は、上述の図3に示す近似直線(近似曲線)を表すテーブルに相当する。テーブル23は、近似曲線を表す回帰式又はマップデータにより定義される。γc軸電流補正部1105Aは、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値に応じて、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御する加振トルク指令をテーブル23に基づき決定する。この加振トルク指令は、予め設定されるテーブルから読み出されるデータの一例である。予め設定されるテーブルを使用することで、演算処理の負荷を低減できる。
【0103】
減算器22は、加振トルクの指令値のn次成分と加振トルクの推定値のn次成分との誤差を算出する。加振トルクの推定値のn次成分は、例えば、正弦値成分τvs(n)と余弦値成分τvc(n)である。
【0104】
PI制御器21は、減算器22により算出された誤差をゼロに近づける按分係数K(n)をPI制御により導出する。按分係数K(n)は、PID制御により算出されてもよい。PI制御又はPID制御において、Pは、比例、Iは、積分、Dは、微分を表す。
【0105】
按分係数K(n)がこのように導出されることで、特定の運転エリアでは、同期電動機3が受ける負荷および同期電動機3の回転数の変化に関わらず、圧縮機の振動振幅は略一定のレベルに制御される。よって、特定の運転エリアにおいて圧縮機の振動抑制と効率低下の抑制とを実現できる。
【0106】
図10は、第1の実施形態におけるγc軸電流補正部の第2の構成例を示すブロック図である。図10に示すγc軸電流補正部1105Bは、γc軸電流補正部105(図7参照)の一例である。第2の構成例(図10)のうち第1の構成例(図8)と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。
【0107】
γc軸電流補正部1105Bは、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値に応じて、同期電動機3の磁極位置の変動の大きさの指令値のn次成分(磁極位置変動量指令)を決定する。そして、γc軸電流補正部1105Bは、決定した磁極位置変動量指令に応じて、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御する按分係数K(n)の大きさを決定する。
【0108】
γc軸電流補正部1105Bは、テーブル24と、減算器22と、PI制御器21とを有する。
【0109】
テーブル24は、特定の運転エリアにおいて、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御するための、同期電動機3の回転速度と磁極位置の変動の大きさとの関係が予め設定されたものである。テーブル24は、上述の図3に示す近似直線(近似曲線)を表すテーブルに相当する。テーブル24は、近似曲線を表す回帰式又はマップデータにより定義される。γc軸電流補正部1105Bは、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値に応じて、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御する磁極位置変動量指令をテーブル24に基づき決定する。この磁極位置変動量指令は、予め設定されるテーブルから読み出されるデータの一例である。
【0110】
減算器22は、磁極位置の変動の大きさの指令値のn次成分と磁極位置の変動の大きさの推定値のn次成分との誤差を算出する。磁極位置の変動の大きさの推定値のn次成分は、例えば、正弦値成分Δθms(n)と余弦値成分Δθmc(n)である。PI制御器21は、減算器22により算出された誤差をゼロに近づける按分係数K(n)をPI制御等により導出する。按分係数K(n)がこのように導出されることで、上述の構成例と同様に、特定の運転エリアにおいて圧縮機の振動抑制と効率低下の抑制とを実現できる。
【0111】
図11は、第1の実施形態におけるγc軸電流補正部の第3の構成例を示すブロック図である。図11に示すγc軸電流補正部1105Cは、γc軸電流補正部105(図7参照)の一例である。第3の構成例(図11)のうち第1の構成例(図8)と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。
【0112】
γc軸電流補正部1105Cは、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値に応じて、同期電動機3の回転速度の変動の大きさの指令値のn次成分(回転速度変動量指令)を決定する。そして、γc軸電流補正部1105Cは、決定した回転速度変動量指令に応じて、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御する按分係数K(n)の大きさを決定する。
【0113】
γc軸電流補正部1105Cは、テーブル25と、n次成分抽出部26と、減算器22と、PI制御器21とを有する。
【0114】
テーブル25は、特定の運転エリアにおいて、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御するための、同期電動機3の回転速度と回転速度の変動の大きさとの関係が予め設定されたものである。テーブル25は、上述の図3に示す近似直線(近似曲線)を表すテーブルに相当する。テーブル25は、近似曲線を表す回帰式又はマップデータにより定義される。γc軸電流補正部1105Cは、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値に応じて、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御する回転速度変動量指令をテーブル25に基づき決定する。この回転速度変動量指令は、予め設定されるテーブルから読み出されるデータの一例である。
【0115】
n次成分抽出部26は、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値に基づいて、回転速度の変動の大きさの推定値のn次成分を抽出する。減算器22は、回転速度の変動の大きさの指令値のn次成分と回転速度の変動の大きさの推定値のn次成分との誤差を算出する。PI制御器21は、減算器22により算出された誤差をゼロに近づける按分係数K(n)をPI制御等により導出する。按分係数K(n)がこのように導出されることで、上述の構成例と同様に、特定の運転エリアにおいて圧縮機の振動抑制と効率低下の抑制とを実現できる。
【0116】
図12は、第1の実施形態におけるγc軸電流補正部の第4の構成例を示すブロック図である。図12に示すγc軸電流補正部1105Dは、γc軸電流補正部105(図7参照)の一例である。第4の構成例(図12)のうち第1の構成例(図8)と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。
【0117】
γc軸電流補正部1105Dは、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値に応じて、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御する按分係数K(n)の大きさをテーブル27に基づいて決定する。γc軸電流補正部1105Dは、テーブル27を有する。
【0118】
テーブル27は、特定の運転エリアにおいて、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御するための、同期電動機3の回転速度と加振トルクと按分係数K(n)との関係が予め設定されたものである。テーブル27は、上述の図3に示す近似直線(近似曲線)を表すテーブルに按分係数K(n)を組み合わせて得られるテーブルに相当する。テーブル27は、近似曲線を表す回帰式又はマップデータにより定義される。図3に示す回転数に対する加振トルクの指令値のとおり加振トルクを制御すれば、モータが受ける負荷およびモータの回転数の変化に関わらず、振動振幅を略一定のレベルに制御できる。そのため、図12に示す実施例では、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値と、加振トルクの推定値のn次成分とが、テーブル27に入力され、テーブル27から操作量が出力される構成が採用されている。本実施例では、操作量は按分係数K(n)であり、按分係数K(n)に応じてモータトルクを調整する。また、前記のとおり、図3の縦軸の加振トルクは、磁極位置の変動の大きさ、又は、回転速度の変動の大きさに置換可能であるが、本実施例では、より望ましい加振トルクを用いている。γc軸電流補正部1105Dは、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値と加振トルクの推定値のn次成分とに応じて、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御する按分係数K(n)をテーブル27に基づき決定する。この按分係数K(n)は、予め設定されるテーブルから読み出されるデータの一例である。按分係数K(n)がこのように導出されることで、上述の構成例と同様に、特定の運転エリアにおいて圧縮機の振動抑制と効率低下の抑制とを実現できる。
【0119】
なお、テーブル27において、加振トルクは、磁極位置の変動の大きさ又は回転速度の変動の大きさに置換されてもよい。この場合でも、按分係数K(n)がテーブル27を用いて導出されることで、特定の運転エリアにおいて圧縮機の振動抑制と効率低下の抑制とを実現できる。
【0120】
図13は、第2の実施形態におけるγc軸電流補正部の第1の構成例を示すブロック図である。図13に示すγc軸電流補正部2105Aは、γc軸電流補正部105(図7参照)の一例である。第2の実施形態の第1の構成例(図13)のうち第1の実施形態の第1の構成例(図8)と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。
【0121】
γc軸電流補正部2105Aは、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値に応じて、上述の第1のモードにおける加振トルクの指令値のn次成分(第1の加振トルク指令)をテーブル35に基づいて決定する。同様に、γc軸電流補正部2105Aは、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値に応じて、上述の第2のモードにおける加振トルクの指令値のn次成分(第2の加振トルク指令)をテーブル36に基づいて決定する。
【0122】
γc軸電流補正部2105Aは、テーブル35,36と、減算器33,34と、切替部32と、切替判断部37と、PI制御器31とを有する。
【0123】
テーブル35は、第1のモードにおける特定の運転エリアにおいて、圧縮機の振動振幅を第1レベルに制御するための、同期電動機3の回転速度と加振トルクとの関係が予め設定されたものである。γc軸電流補正部2105Aは、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値に応じて、圧縮機の振動振幅を第1レベルに制御する第1の加振トルク指令をテーブル35に基づき決定する。
【0124】
テーブル36は、第2のモードにおける特定の運転エリアにおいて、圧縮機の振動振幅を第2レベルに制御するための、同期電動機3の回転速度と加振トルクとの関係が予め設定されたものである。γc軸電流補正部2105Aは、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値に応じて、圧縮機の振動振幅を第2レベルに制御する第2の加振トルク指令をテーブル36に基づき決定する。
【0125】
減算器33は、第1のモードにおける加振トルクの指令値のn次成分と加振トルクの推定値のn次成分との第1の誤差を算出する。減算器34は、第2のモードにおける加振トルクの指令値のn次成分と加振トルクの推定値のn次成分との第2の誤差を算出する。
【0126】
切替部32は、切替判断部37による判定結果に応じて、PI制御器31に入力する誤差を、第1の誤差又は第2の誤差に切り替える。切替判断部37は、同期電動機3が受ける負荷が同期電動機3の回転数毎に設定される第1閾値以下に低下すると、PI制御器31に第1の誤差を入力すると判断し、同期電動機3が受ける負荷が同期電動機3の回転数毎に設定される第2閾値よりも上昇すると、PI制御器31に第2の誤差を入力すると判断する。同期電動機3が受ける負荷には、例えば、圧力、温度などがある。圧力や温度などの負荷情報は、圧縮機の外部から供給される。
【0127】
PI制御器31は、切替部32から入力される誤差をゼロに近づける按分係数K(n)をPI制御等により導出する。按分係数K(n)がこのように導出されることで、同期電動機3が受ける負荷が第2閾値よりも上昇すると、圧縮機の振動振幅は第1レベルよりも低い第2レベルに制御されるので、圧縮機の振動振幅の増大を抑制できる。
【0128】
なお、テーブル35,36において、加振トルクは、磁極位置の変動の大きさ又は回転速度の変動の大きさに置換されてもよい。この場合でも、同期電動機3が受ける負荷が第2閾値よりも上昇すると、圧縮機の振動振幅は第1レベルよりも低い第2レベルに制御されるので、圧縮機の振動振幅の増大を抑制できる。
【0129】
図14は、第2の実施形態におけるγc軸電流補正部の第2の構成例を示すブロック図である。図14に示すγc軸電流補正部2105Bは、γc軸電流補正部105(図7参照)の一例である。第2の実施形態の第2の構成例(図14)のうち、第1の実施形態の第4の構成例(図12)及び第2の実施形態の第1の構成例(図13)と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。
【0130】
γc軸電流補正部2105Bは、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値に応じて、圧縮機の振動振幅を第1レベルに制御する按分係数K(n)の大きさをテーブル38に基づいて決定する。同様に、γc軸電流補正部2105Bは、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値に応じて、圧縮機の振動振幅を第2レベルに制御する按分係数K(n)の大きさをテーブル39に基づいて決定する。γc軸電流補正部1105Dは、テーブル38,39を有する。
【0131】
テーブル38は、圧縮機の振動振幅を第1レベルに制御するための、同期電動機3の回転速度と加振トルクと按分係数K(n)との関係が予め設定されたものである。γc軸電流補正部2105Aは、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値と加振トルクの推定値のn次成分とに応じて、圧縮機の振動振幅を第1レベルに制御する按分係数K(n)をテーブル38に基づき決定する。テーブル39は、圧縮機の振動振幅を第2レベルに制御するための、同期電動機3の回転速度と加振トルクと按分係数K(n)との関係が予め設定されたものである。γc軸電流補正部2105Aは、同期電動機3の回転速度の検出値又は指令値と加振トルクの推定値のn次成分とに応じて、圧縮機の振動振幅を第2レベルに制御する按分係数K(n)をテーブル39に基づき決定する。
【0132】
切替部32は、切替判断部37による判定結果に応じて、按分係数K(n)を、第1レベルに制御する係数又は第2レベルに制御する係数に切り替える。切替判断部37は、同期電動機3が受ける負荷が同期電動機3の回転数毎に設定される第1閾値以下に低下すると、第1レベルに制御する按分係数K(n)を選択し、同期電動機3が受ける負荷が同期電動機3の回転数毎に設定される第2閾値よりも上昇すると、第2レベルに制御する按分係数K(n)を選択する。按分係数K(n)がこのように導出されることで、同期電動機3が受ける負荷が第2閾値よりも上昇すると、圧縮機の振動振幅は第1レベルよりも低い第2レベルに制御されるので、圧縮機の振動振幅の増大を抑制できる。
【0133】
なお、テーブル38,39において、加振トルクは、磁極位置の変動の大きさ又は回転速度の変動の大きさに置換されてもよい。この場合でも、同期電動機3が受ける負荷が第2閾値よりも上昇すると、圧縮機の振動振幅は第1レベルよりも低い第2レベルに制御されるので、圧縮機の振動振幅の増大を抑制できる。
【0134】
図15は、第3の実施形態におけるγc軸電流補正部の第1の構成例を示すブロック図である。図15に示すγc軸電流補正部3105Aは、γc軸電流補正部105(図7参照)の一例である。第3の実施形態の第1の構成例(図15)のうち第1の実施形態の第1の構成例(図8)と第2の実施形態の第1の構成例(図13)と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。
【0135】
γc軸電流補正部3105Aは、同期電動機3に印加される電圧値と同期電動機3に流れる電流値とに応じて、上述の第3のモードにおける按分係数K(n)を決定する制御部41を有する。
【0136】
制御部41は、圧縮機の振動振幅を第1レベル以下に抑制するように、電圧供給源2内のインバータから同期電動機3に供給される電圧又は電流を制御する。制御部41は、例えば、第2のモードにおいて圧縮機の振動振幅を第2レベルに所定時間以上維持できないことが検出された場合、圧縮機の振動振幅を第1レベル以下に抑制する按分係数K(n)を生成し、圧縮機の動作モードを切替部42により第2のモードから第3のモードに切り替える。制御部41は、同期電動機3に供給される電圧又は電流が、圧縮機の振動振幅を第1レベル以下に抑制する所定値以下に制限されるように、按分係数K(n)を調整する。
【0137】
按分係数K(n)がこのように導出されることで、圧縮機の振動振幅を第2レベルに何らかの要因で制御できなくても、圧縮機の振動振幅は第1レベルと第2レベルとの間で制御されるので、圧縮機の振動を抑制できる。
【0138】
図16は、第3の実施形態におけるγc軸電流補正部の第2の構成例を示すブロック図である。図16に示すγc軸電流補正部3105Bは、γc軸電流補正部105(図7参照)の一例である。第3の実施形態の第2の構成例(図16)のうち第1の実施形態の第1の構成例(図8)と第3の実施形態の第1の構成例(図15)と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。図16の構成は、図15のテーブル35,36を図14のテーブル38,39に置換したものである。図16の構成でも、図15の場合と同様に、圧縮機の振動振幅を第2レベルに何らかの要因で制御できなくても、圧縮機の振動振幅は第1レベルと第2レベルとの間で制御されるので、圧縮機の振動を抑制できる。
【0139】
このように、本開示の圧縮機制御方法によれば、特定の運転エリアでは、モータが受ける負荷およびモータの回転数の変化に関わらず、圧縮機の振動振幅が略一定に制御されるので、圧縮機の振動を抑制できる。
【0140】
従来、振動低減と効率低下抑制を目的として、速度変動を一定あるいは2〜50%に制限する技術(特許第3874865号、特許第4596906号)があるが、いずれも速度変動を一定に制御すると、過剰に振動抑制制御をかけることとなり、効率が低下するおそれがある。また、その制限を回転数と負荷の大きさでともに変更する技術(特許第6364463号)があるが、回転数だけでなく、負荷の大きさによって速度変動の制限幅を変更した場合、圧縮機の振動振幅を略一定のレベルに制御することはできず、同様に効率が低下するおそれがある。本願は、速度変動でなく振動振幅を略一定に制御することに特徴があり、ある振動振幅に制御する為の回転数に対する加振トルクはリニアで簡単にチューニングでき、且つ、過剰に振動抑制制御をかけることなく、振動抑制と効率向上を実現できる。
【0141】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0142】
1 電動機制御装置
3 同期電動機
12 速度指令補正装置
1105A〜1105D,2105A,2105B,3105A,2105B γc軸電流補正部
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】