(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2011155379
(43)【国際公開日】20111215
【発行日】20160526
(54)【発明の名称】アルミニウム銅クラッド材
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/04 20060101AFI20160422BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20160422BHJP
   C22F 1/04 20060101ALI20160422BHJP
   C22F 1/08 20060101ALI20160422BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20160422BHJP
【FI】
   !B23K20/04 B
   !B32B15/20
   !C22F1/04 D
   !C22F1/08 B
   !C22F1/00 627
   !C22F1/00 623
   !C22F1/00 661A
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 601
   !C22F1/00 604
   !C22F1/00 630M
   !C22F1/00 691C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
【出願番号】2011549362
(21)【国際出願番号】JP2011062651
(22)【国際出願日】20110602
(11)【特許番号】4961512
(45)【特許公報発行日】20120627
(31)【優先権主張番号】2010130699
(32)【優先日】20100608
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW
(71)【出願人】
【識別番号】304051908
【氏名又は名称】株式会社NEOMAXマテリアル
【住所又は居所】大阪府吹田市南吹田二丁目19番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100101395
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 龍雄
(72)【発明者】
【氏名】織田 喜光
【住所又は居所】大阪府吹田市南吹田2丁目19番1号 株式会社NEOMAXマテリアル内
(72)【発明者】
【氏名】石尾 雅昭
【住所又は居所】大阪府吹田市南吹田2丁目19番1号 株式会社NEOMAXマテリアル内
(72)【発明者】
【氏名】橋本 彰夫
【住所又は居所】大阪府吹田市南吹田2丁目19番1号 株式会社NEOMAXマテリアル内
(72)【発明者】
【氏名】池内 建二
【住所又は居所】京都府京都市右京区嵯峨広沢南野町73−1
【テーマコード(参考)】
4E167
4F100
【Fターム(参考)】
4E167AA06
4E167AA08
4E167AA29
4E167BC03
4E167BC07
4E167CA13
4E167CA14
4E167CC01
4E167CC09
4E167DA04
4E167DB11
4F100AA02B
4F100AB10C
4F100AB17A
4F100AB31C
4F100BA03
4F100BA07
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100GB46
4F100JL11
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
本発明に係るクラッド材は、アルミニウム層(1)と銅層(2)とがAl−Cu系金属間化合物層(3)を介して拡散接合されたものである。前記銅層(2)の厚さ方向の中心部C1における結晶粒の平均結晶粒径をDccとし、前記銅層(2)と金属間化合物層(3)との界面から0.5μm離れた銅層内の界面近傍部C2の平均結晶粒径をDcsとするとき、Dcs≦0.5×Dccとされる。かつ前記金属間化合物層(3)の平均厚さは0.5μm〜10μmとされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム層と銅層とがAl−Cu系金属間化合物層を介して拡散接合されたアルミニウム銅クラッド材であって、
前記銅層の厚さ方向の中心部における結晶粒の平均結晶粒径をDccとし、前記銅層と金属間化合物層との界面から0.5μm 離れた銅層内の界面近傍部の平均結晶粒径をDcsとするとき、Dcs≦0.5×Dccとされ、かつ前記金属間化合物層の平均厚さが0.5μm 〜10μm とされた、アルミニウム銅クラッド材。
【請求項2】
前記界面近傍部の平均結晶粒径Dcsが、Dcs≦0.4×Dccとされた、請求項1に記載したアルミニウム銅クラッド材。
【請求項3】
アルミニウム層と銅層とがAl−Cu系金属間化合物層を介して接合されたアルミニウム銅クラッド材であって、
前記アルミニウム層の厚さ方向の中心部における結晶粒の平均結晶粒径をDacとし、前記アルミニウム層と金属間化合物層との界面から0.5μm 離れたアルミニウム層内の界面近傍部の平均結晶粒径をDasとするとき、Das≦0.5×Dacとされ、かつ前記金属間化合物層の平均厚さが0.5μm 〜10μm とされた、アルミニウム銅クラッド材。
【請求項4】
前記界面近傍部の平均結晶粒径Dasが、Das≦0.4×Dacとされた、請求項3に記載したアルミニウム銅クラッド材。
【請求項5】
前記金属間化合物層の厚さが1.0μm 〜5.0μm とされた、請求項1から4のいずれか一項に記載したアルミニウム銅クラッド材。
【請求項6】
前記アルミニウム層は純アルミニウム又は導電率が10%IACS以上のアルミニウム合金で形成され、前記銅層は純銅又は導電率が10%IACS以上の銅合金で形成された、請求項1から5のいずれか一項に記載したアルミニウム銅クラッド材。
【請求項7】
前記アルミニウム層および銅層の厚さがそれぞれ0.1mm〜2mmである、請求項1から6のいずれか一項に記載したアルミニウム銅クラッド材。
【請求項8】
アルミニウム層と銅層とがAl−Cu系金属間化合物層を介して接合されたアルミニウム銅クラッド材の製造方法であって、
前記アルミニウム層の元になるアルミニウム板と前記銅層の元になる銅板とを準備する準備工程と、準備したアルミニウム板と銅板とを重ね合わせて圧接する圧接工程と、圧接した圧接材を拡散焼鈍する拡散焼鈍工程を備え、
前記銅板の圧接側表面の平均表面硬度をHc (Hv)とし、前記銅板の完全焼鈍材の平均表面硬度をHca(Hv)とするとき、Hc ≧1.6×Hcaとし、
前記拡散焼鈍は、焼鈍温度T(℃)を150℃〜550℃とし、焼鈍時間t(min )を下記式を満足する範囲とする、アルミニウム銅クラッド材の製造方法。
tmin ≦t≦tmax
tmax =−1.03×T+567
−0.19×T+86<0.5のとき、tmin =0.5
−0.19×T+86≧0.5のとき、tmin =−0.19×T+86
【請求項9】
アルミニウム層と銅層とがAl−Cu系金属間化合物層を介して接合されたアルミニウム銅クラッド材の製造方法であって、
前記アルミニウム層の元になるアルミニウム板と前記銅層の元になる銅板とを準備する準備工程と、準備したアルミニウム板と銅板とを重ね合わせて圧接する圧接工程と、圧接した圧接材を拡散焼鈍する拡散焼鈍工程を備え、
前記アルミニウム板の圧接側表面の平均表面硬度をHa (Hv)とし、前記アルミニウム板の完全焼鈍材の平均表面硬度をHaa(Hv)とするとき、Ha ≧1.6×Haaとし、
前記拡散焼鈍は、焼鈍温度T(℃)を150℃〜550℃とし、焼鈍時間t(min )を下記式を満足する範囲とする、アルミニウム銅クラッド材の製造方法。
tmin ≦t≦tmax
tmax =−1.03×T+567
−0.19×T+86<0.5のとき、tmin =0.5
−0.19×T+86≧0.5のとき、tmin =−0.19×T+86
【請求項10】
焼鈍温度T(℃)を300℃〜550℃とし、焼鈍時間t(min )を下記式を満足する範囲とする、請求項8又は9に記載したアルミニウム銅クラッド材の製造方法。
tmin ≦t≦tmax
tmax =−0.90×T+478
−0.36×T+168<1.0のとき、tmin =1.0
−0.36×T+168≧1.0のとき、tmin =−0.36×T+168
【請求項11】
前記焼鈍温度T(℃)を450℃以上、550℃以下とする、請求項8から10のいずれか一項に記載したアルミニウム銅クラッド材の製造方法。
【請求項12】
前記アルミニウム板は純アルミニウム又は導電率が10%IACS以上のアルミニウム合金で形成され、前記銅板は純銅又は導電率が10%IACS以上の銅合金で形成された、請求項8から11のいずれか一項に記載したアルミニウム銅クラッド材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム層と銅層とが拡散接合されたアルミニウム銅クラッド材に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリット車や各種電子機器に搭載されるリチウムイオン電池パックは、必要に応じてリチウムイオン電池が直列に接続され、さらに直列接続された電池群が並列に接続されて使用される。このため、電池同士を接続する配線材が多数使用される。リチウムイオン電池は、正極端子がアルミニウム材で、負極端子が銅材で形成される。このため、直列接続に供される配線材は、その素材としてアルミニウム材と銅材とが接合されたアルミニウム銅クラッド材が好適に用いられる。すなわち、前記クラッド材から製作された配線材(リード線)のアルミニウム層が一方の電池の正極端子に、その銅層が他方の負極端子に接続される。このような接続を行うことで、電極端子部での電気的腐食を防止することができ、また電極端子と配線材とを抵抗溶接や超音波溶接等により容易に接合することができるようになる。
【0003】
また、前記アルミニウム銅クラッド材は、電池接続用の配線材のほか、キャパシターの配線材、半導体素子を搭載する銅部と放熱器などのアルミニウム部とを接続するための中間部品などの素材として好適に用いられる。
【0004】
前記アルミニウム銅クラッド材は、通常、アルミニウム層の元になるアルミニウム板と、銅層の元になる銅板とを重ね合わせ、その重ね合わせ材を圧延ロールに通して圧接し、さらに得られた圧接材に拡散焼鈍を施すことによって製造される。前記アルミニウム板、銅板は圧接性を向上させるため、通常、焼鈍材が用いられる。前記拡散焼鈍の際、アルミニウム層と銅層との境界には、Al−Cu系金属間化合物で形成された脆い金属間化合物層が不可避的に生成する。焼鈍温度が350℃以上になると、前記金属間化合物層の生成、成長が著しくなるため、保持時間の調整による金属間化合物層の厚さ制御が困難になり、アルミニウム層と銅層との接合強度が劣化する。このため、従来、アルミニウム層と銅層とを直に接合する場合、拡散焼鈍は300℃以下の低温で、数時間保持する焼鈍条件の下で実施されていた。
【0005】
しかし、上記のように、低温での拡散焼鈍によりアルミニウム層と銅層とを拡散接合したアルミニウム銅クラッド材は、十分な接合強度が得られないという問題がある。このため、高温で拡散焼鈍することができ、アルミニウム層と銅層との接合強度も良好なアルミニウム銅クラッド材が特公昭62−46278号公報(特許文献1)や特開平11−156995号公報(特許文献2)で提案されている。このクラッド板は、アルミニウム層と銅層とをニッケル層を介して一体的に圧接し、拡散焼鈍が施されたものである。銅とニッケル、ニッケルとアルミニウムは拡散焼鈍の際に金属間化合物が生成し難いため、アルミニウム層、ニッケル層及び銅層が積層された圧接材は、高温で拡散焼鈍されることができ、また拡散焼鈍されたクラッド材の接合強度も改善される。
【0006】
【特許文献1】特公昭62−46278号公報
【特許文献2】特開平11−156995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記ニッケル層を設けたアルミニウム銅クラッド材は、拡散焼鈍温度が500℃程度の高温でも保持時間が適切であれば、良好なアルミニウム層と銅層との接合強度が得られる。しかし、本来不要なニッケル層を設ける必要があり、ニッケルはアルミニウムや銅に比べて導電性、熱伝導性が劣り、また高価である、という問題がある。
【0008】
本発明はかかる問題に鑑みなされたものであり、高温での拡散焼鈍が可能であり、またニッケル層を設けることなく、アルミニウム層と銅層との接合性に優れたアルミニウム銅クラッド材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、アルミニウム層と銅層とを直接圧接し、低温で拡散接合したクラッド材について、そのアルミニウム層と銅層との界面部の組織を電子顕微鏡を用いて詳細に観察することによって、前記アルミニウム層と銅層との接合強度が十分でない理由を調べた。その結果、低温で拡散焼鈍した場合、金属間化合物層を比較的薄く形成することができるものの、金属間化合物層の中に接合界面に沿って極薄い酸化アルミニウムの連続膜が存在すること、またアルミニウム層と銅層とがこの連続膜に沿って剥離し易いことが見出された。前記酸化アルミニウム膜は、クラッド材の製造の際に、アルミニウム層の素材として用いられたアルミニウム板の表面に自然酸化によって生成した酸化アルミニウムに起因するものと推測された。本発明は、前記知見に基づき、前記酸化アルミニウムの連続膜を分断、分散させることにより接合強度を向上させることができる、との着想に得て、完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明のアルミニウム銅クラッド材は、アルミニウム層と銅層とがAl−Cu系金属間化合物層を介して拡散接合されたアルミニウム銅クラッド材であって、前記銅層の厚さ方向の中心部における結晶粒の平均結晶粒径をDccとし、前記銅層と金属間化合物層との界面から0.5μm 離れた銅層内の界面近傍部の平均結晶粒径をDcsとするとき、Dcs≦0.5×Dcc、好ましくはDcs≦0.4×Dccとされ、かつ前記金属間化合物層の平均厚さが0.5μm 〜10μm 、好ましくは1.0μm 〜5.0μm とされたものである。
【0011】
前記銅層界面部の平均結晶粒径Dcsの規定に代えて、前記アルミニウム層の厚さ方向の中心部における結晶粒の平均結晶粒径をDacとし、前記アルミニウム層と金属間化合物層との界面から0.5μm 離れたアルミニウム層内の界面近傍部の平均結晶粒径をDasとするとき、Das≦0.5×Dac、好ましくはDas≦0.4×Dacとすることができる。
【0012】
本発明のクラッド材によると、金属間化合物層は接合強度が劣化しない所定の厚さに設定されている。さらに銅層界面近傍部の平均結晶粒径DcsがDcs≦0.5×Dcc、好ましくはDcs≦0.4×Dccとされ、あるいはアルミニウム層界面近傍部の平均結晶粒径DasがDas≦0.5×Dac、好ましくはDas≦0.4×Dacとされている。すなわち、銅層と金属間化合物層あるいはアルミニウム層と金属間化合物層との界面部において結晶粒が銅層あるいはアルミニウム層の中心部の結晶粒に比して所定の割合で微細化されている。その結果、拡散焼鈍の際に、銅層あるいはアルミニウム層の界面部に存在する、微細で結晶方位がランダムな結晶粒からその結晶粒が微細で、結晶方位もランダムなAl−Cu系金属間化合物が生成する。このため、アルミニウム層の素材表面に存在した酸化アルミニウムの連続膜が、微細でランダムな方位に成長する金属間化合物によって分断、分散される。それ故、前記酸化アルミニウムの連続膜に起因する剥離が抑制され、前記アルミニウム層と銅層との接合強度が向上する。また拡散焼鈍の際に、金属間化合物は、銅層あるいはアルミニウム層の界面部の微細な結晶粒を起点として成長するため、金属間化合物の生成に寄与する原子の拡散がある程度抑制される。このため、拡散焼鈍が450℃〜550℃程度の高温で行われても保持時間を適切に制御することにより所定厚さの金属間化合物層を容易に形成することができる。従って、拡散焼鈍の際の焼鈍温度は低温に制約されない。
【0013】
上記クラッド材において、前記アルミニウム層を純アルミニウム又は導電率が10%IACS以上のアルミニウム合金で形成し、前記銅層を純銅又は導電率が10%IACS以上の銅合金で形成することができる。このようなアルミニウム材、銅材を用いることにより、クラッド材の導電性を良好にすることができる。また、前記アルミニウム層および銅層の厚さをそれぞれ0.1〜2mmとすることができる。かかる厚さのクラッド材を加工することにより、汎用性のある配線材を提供することができる。
【0014】
また、本発明の製造方法は、上記アルミニウム銅クラッド材の製造方法であって、前記アルミニウム層の元になるアルミニウム板と前記銅層の元になる銅板とを準備する準備工程と、準備したアルミニウム板と銅板とを重ね合わせて圧接する圧接工程と、圧接した圧接材を拡散焼鈍する拡散焼鈍工程を備え、前記銅板の圧接側表面の平均表面硬度をHc (Hv)とし、前記銅板の完全焼鈍材の平均表面硬度をHca(Hv)とするとき、Hc ≧1.6×Hca、好ましくはHc ≧1.7×Hcaとし、前記拡散焼鈍は、焼鈍温度T(℃)を150℃〜550℃とし、焼鈍時間t(min )を下記式を満足する範囲とするものである。
tmin ≦t≦tmax
tmax =−1.03×T+567
−0.19×T+86<0.5のとき、tmin =0.5
−0.19×T+86≧0.5のとき、tmin =−0.19×T+86
【0015】
前記拡散焼鈍の条件は、前記焼鈍温度T(℃)を300℃〜550℃とし、焼鈍時間t(min )は下記式を満足する範囲とすることが好ましい。
tmin ≦t≦tmax
tmax =−0.90×T+478
−0.36×T+168<1のとき、tmin =1.0
−0.36×T+168≧1.0のとき、tmin =−0.36×T+168
【0016】
前記銅層の圧接側表面の平均表面硬度の規定に代えて、前記アルミニウム板の圧接側表面の平均表面硬度をHa (Hv)とし、前記アルミニウム板の完全焼鈍材の平均表面硬度をHaa(Hv)とするとき、Ha ≧1.6×Haa、好ましくはHa ≧1.7×Haaとすることができる。
【0017】
このクラッド材の製造方法によると、銅板あるいはアルミニウム板の圧接側表面硬度をHc ≧1.6×HcaあるいはHa ≧1.6×Haaにしておくので、上記所定条件で拡散焼鈍を施すことにより、銅層およびアルミニウム層の界面近傍部に前記Dcs≦0.5×DccあるいはDas≦0.5×Dacを満足するように微細な結晶粒が生成し、かつ厚さが0.5μm 〜10μm の金属間化合物層を形成することができる。
【0018】
上記クラッド材の製造方法において、焼鈍温度T(℃)は450℃以上、550℃以下とすることが生産性の点でより好ましい。このような比較的高温の焼鈍温度に設定することによって、焼鈍時間を短縮することができ、生産性を向上させることができる。また、前記アルミニウム板を純アルミニウム又は導電率が10%IACS以上のアルミニウム合金で形成し、前記銅板を純銅又は導電率が10%IACS以上の銅合金で形成することができ、これによって導電性の良好なクラッド材を製造することができる。
【0019】
上記のとおり、本発明のアルミニウム銅クラッド材によれば、金属間化合物層と銅層あるいは金属間化合物層とアルミニウム層の界面部に、銅層あるいはアルミニウム層の中心部の平均結晶粒径に対して所定の粒径比を満足するように微細な結晶粒が形成される。これによって拡散焼鈍の際に金属間化合物層を構成する結晶粒も微細かつランダムな結晶方位となり、従来金属間化合物中に存在した酸化アルミニウムの連続膜が分断、分散するため、優れた接合強度が得られる。また、本発明の製造方法によれば、拡散焼鈍温度が150℃から550℃の広範囲にわたって上記クラッド材を容易に製造することができる。また、450℃以上の高温側で拡散焼鈍を施すことにより、優れた生産性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係るアルミニウム銅クラッド材の部分断面説明図である。
【図2】実施形態に係るクラッド材の拡大部分断面説明図である。
【図3】銅層界面部に微細な結晶粒が存在しないアルミニウム銅クラッド材の拡大部分断面説明図である。
【図4】実施例における焼鈍温度と焼鈍時間(保持時間)との関係を示すグラフである。
【図5】クラッド材の引張試験片の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 アルミニウム層
2 銅層
3 金属間化合物層
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態にかかるクラッドを説明する。このクラッド材は、図1に示すように、アルミニウム層1と銅層2とが圧接され、拡散焼鈍が施されて拡散接合されたものである。アルミニウム層1と銅層2の間には、拡散接合の際に形成された、Al及びCuを主成分とするAl−Cu系金属間化合物で形成された金属間化合物層3が介在している。前記金属間化合物層3は、平均厚さが0.5μm 〜10μm 、好ましくは1.0μm 〜5.0μm とされている。前記クラッド材の板厚は必要に応じて決定されるが、クラッド材を配線材などの導電性接続材の素材とする場合、アルミニウム層1、銅層2はそれぞれ0.1mm〜2mm程度に設定され、また両層はほぼ同厚に設定される場合が多い。
【0023】
前記銅層2の厚さ方向の中心部を銅層中心部といい、前記銅層2と金属間化合物層3との界面から銅層側に0.5μm 離れた部分を銅層界面近傍部という。また、前記アルミニウム層1の厚さ方向の中心部をアルミニウム層中心部といい、前記アルミニウム層1と金属間化合物層3との界面からアルミニウム層側に0.5μm 離れた部分をアルミニウム層界面近傍部という。また、前記銅層中心部における平均結晶粒径をDccで、前記銅層界面近傍部における平均結晶粒径をDcsで表すこととする。同様に、前記アルミニウム層中心部における平均結晶粒径をDacで、前記アルミニウム層界面近傍部における平均結晶粒径をDasで表すこととする。実施形態に係るクラッド材は、Dcs≦0.5×Dcc、好ましくはDcs≦0.4×Dccを満足する。あるいはDas≦0.5×Dac、好ましくはDas≦0.4×Dacを満足するようにしてもよい。さらに、アルミニウム層1及び銅層2の両層が上記Dcs及びDasの粒径条件を満足するようにしてもよい。前記銅層界面近傍部を界面から0.5μm 離れた位置に設定したのは、結晶粒径の測定に際して界面の影響を避けるためである。また、前記平均結晶粒は、結晶粒の円相当径の平均値から求めることとする。円相当径とは、顕微鏡観察された結晶粒の面積と等しい面積を有する円形粒界の結晶粒を仮定し、その円の直径を意味する。
【0024】
前記平均結晶粒径の測定要領を銅層2の場合を例として以下説明する。クラッド材から幅10mmの観察片を採取し、図2に示すように、銅層2の厚さLの中心線(C1)上に、また銅層2と金属間化合物層3の界面線から0.5μm 隔たったところに設定した界面近傍線(C2)上に、端部を除き、幅方向に等間隔にそれぞれ5箇所の観察部位を設定する。そして、前記中心線C1を含むように、幅が10μm の観察視野を定め、前記中心線C1と交差する粒界を有する結晶粒の粒径を円相当径として求め、全視野に含まれる結晶粒の円相当径の平均値をDccとする。同様に、前記界面近傍線C2を含むように、幅が10μm の観察視野を定め、前記界面近傍線C2と交差する粒界を有する結晶粒の粒径を円相当径として求め、全視野に含まれる結晶粒の円相当径の平均値をDcsとする。また、前記金属間化合物層3の平均厚さは、平均結晶粒径の測定と同様、端部を除き、幅方向に設定した5箇所の観察部位で測定した厚さの平均値とする。前記中心部や界面近傍部の結晶粒の粒径(円相当径)やその平均値は、TEM(透過電子顕微鏡)によって観察した画像をコンピュータソフトを用いて画像解析することによって求めることができる。
【0025】
前記銅層界面近傍部の平均結晶粒径Dcsは、上記のとおり、Dcs≦0.5×Dcc、好ましくはDcs≦0.4×Dccに設定される。すなわち中心部に対する界面近傍部の粒径比Dcs/Dccが0.5以下、好ましくは0.4以下である。これは銅層2の界面近傍部ひいては界面に銅層2の中心部に対して微細化した結晶粒が存在することを意味する。銅層2の界面に微細化した結晶粒が存在すると、拡散焼鈍の際に、互いに圧接されたアルミニウム層と銅層との境界から生成する金属間化合物層の結晶粒も微細化され、ランダムな方位に成長する。このため、拡散焼鈍前にアルミニウム層の界面に自然酸化によって連続膜状に存在した酸化アルミニウム膜は分断されて分散するようになる。その結果、酸化アルミニウムの連続膜に起因する剥離や破断が抑制され、接合強度が向上する。比較のため、銅層3の界面部を微細化しない場合の断面模式図を図3に示す。この場合、銅層2の界面に微細な結晶粒が存在しないため、金属間化合物層3の中に存在した酸化アルミニウムの連続膜Fが分断されずに残存した状態となる。このためアルミニウム層1と銅層2とが剥離し易くなり、接合強度が劣化する。
【0026】
アルミニウム層界面近傍部の平均結晶粒径DasをDas≦0.5×Dac、好ましくはDas≦0.4×Dacに設定した場合も、上記と同様のメカニズムで金属間化合物層3が微細化され、ランダムな結晶方位をとるようになるため、接合強度が向上する。
【0027】
前記金属間化合物層3の厚さも、接合強度に影響を与える。金属間化合物層3の厚さが0.5mm未満と小さいと、拡散焼鈍の際に金属間化合物の成長が不足し、酸化アルミニウムの連続膜が十分に分断されず、接合強度が劣化するようになる。他方、10μm を越えるようになると、金属間化合物は脆い材質であり、金属間化合物層に生じたミクロクラックが連続クラックになり易いため、やはり接合強度が劣化するようになる。このため、金属間化合物層3の厚さは、0.5μm 〜10μm 、好ましくは1.0〜7.5μm 、より好ましくは1.0〜5.0μm に設定される。
【0028】
前記アルミニウム層を形成するアルミニウム材としては、純Alのほか、Alを50mass%以上含むAl合金を用いることができる。クラッド材を導電性材料とする場合、アルミニウム材としては、純Alあるいは導電率が10%IACS以上、好ましくは20%以上のAl合金を用いることが望ましい。以下、導電率の「%IACS(International Annealed Copper Standard)」は単に「%」と表示する。ある材料の導電率(%IACS)は下記式によって算出される。例えば、純Cuは100%、純Alは65%である。
導電率(%IACS)=(A/B)×100
A:標準軟銅(純銅)の体積抵抗率(1.7241μΩ・cm)
B:ある材料の体積抵抗率
【0029】
アルミニウム材のAl含有量が高いほど導電率も高くなるため、良好な導電性を備えたアルミニウム材としては、好ましくは90mass%(以下、単に「%」と表示する。)以上、より好ましくは95%以上の純AlあるいはAl合金が望ましい。具体的には、JISに規定されたA1050、A1060、A1070、A1080、A1100、A1200、A3003、A5005、A5052、A6063、A6101のアルミニウム材を例示することができる。例えば、前記A5005合金は、Al−(0.5〜1.1%)Mnの固溶強化型合金であり、導電率は52%である。その他、適用可能なAl合金として、Al−(4〜5%)Mg合金(JISA5082、導電率約29%)、Al−(5〜6%)Cu合金(JISA2011、導電率約39%)、Al−(3.5〜4.5%)Cu−(0.4〜1.0%)Mn−(0.2〜0.8%)Mg(JISA2017、ジュラルミン、導電率約50%)、Al−(3.9〜5.0%)Cu−(0.5〜1.2%)Si−(0.40〜1.2%)Mn−(0.20〜0.8%)Mg(JISA2014、導電率約50%)、Al−(3.8〜4.9%)Cu−(0.3〜0.9%)Mn−(1.2〜1.8%)Mg(JISA2024、超ジュラルミン、導電率約30%)、Al−(11〜13.5%)Si−(0.8〜1.3%)Mg(JISA4032、導電率約40%)を例示することができる。
【0030】
また、前記銅層2を形成する銅材としては、純Cuのほか、Cuを50mass%以上含むCu合金を用いることができる。クラッド材を導電性材料とする場合、銅材としては、無酸素銅、タフピッチ銅、リン脱酸銅などの純Cu、あるいは導電率が10%以上、好ましくは20%以上のCu合金が好ましい。前記Cu合金は、Cu含有量が高いほど導電率も高くなるため、Cu量が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上のCu合金が望ましい。このようなCu合金としては、JISに規定されたC1020、C1100、C1201、C14500のCu合金のほか、JISZ3234(銅合金電極材)に適合するCu−Be合金,Cu−Cr合金を挙げることができる。その他、適用可能なCu合金として、Cu−2%Ni合金(導電率33%)、Cu−6%Ni合金(導電率17%)、Cu−9.5%Ni合金(導電率11%)、Cu−30%Zn合金(導電率27.4%)、Cu−34%Zn合金(導電率26.5%)、Cu−Fe−P(Fe+P:0.13%)合金(導電率93%)、Cu−Fe−P(Fe+P:2.48%)合金(導電率69%)、Cu−0.2%Zr合金(導電率93%)を例示することができる。
【0031】
次に、上記クラッド材の製造方法について説明する。先ず前記アルミニウム層1の元になるアルミニウム板と前記銅層2の元になる銅板とを準備する(この工程を準備工程という)。次に、準備したアルミニウム板と銅板とを重ね合わせて、重ね合わせ材を圧延ロールに通して圧下して圧接する(この工程を圧接工程という)。通常、圧接は1回の圧延によって行われ、圧下率は45〜70%程度、好ましくは50〜60%とされる。圧接した後、その圧接材に拡散焼鈍を施す(この工程を拡散焼鈍工程という)。
【0032】
クラッド材の銅層2の接合側界面部の結晶粒をその中心部に対して微細化するには、前記準備工程において準備する銅板の圧接側表面の表面硬度を高くする。すなわち、銅板の接合側表面の平均表面硬度をHc (Hv)、当該銅板の完全焼鈍材の平均表面硬度をHca(Hv)とするとき、Hc ≧1.6×Hca、好ましくはHc ≧1.7×Hca、より好ましくはHc ≧1.8×Hcaとする。Hc が1.6×Hca未満になると、接合側界面部での結晶粒の微細化が不足し、その結果、拡散焼鈍の際に金属間化合物層の微細化が困難になり、クラッド材の接合強度が低下する。
【0033】
前記完全焼鈍材とは、材料に導入された加工歪が再結晶により完全に消失した状態をいい、完全焼鈍は、例えば、焼鈍温度を使用する銅材の融点(液相が生じる温度)の3/4程度とし、保持時間を3分程度とすることにより達成される。前記Hc を完全焼鈍材のHcaに対して規定する理由は、銅板を形成する銅材の種類によって基地の硬度が異なり、確保すべき表面硬度の値も異なるためである。具体的には、銅板の材質が純Cu(Cu≧99.9%)の場合、812℃、3min で完全焼鈍した銅板の平均表面硬度はHv37程度であるため、銅板の平均表面硬度Hc はHv59以上、好ましくはHv63以上、より好ましくはHv67に設定すればよい。なお、Hc の値は、前記不等式の右辺の計算値の少数点以下第一位を四捨五入したものである。
【0034】
クラッド材のアルミニウム層1の接合側界面部の結晶粒をその中心部に対して微細化する場合も、銅層の接合界面部を微細化する場合と同様、アルミニウム板の接合側表面の平均表面硬度をHa (Hv)、当該アルミニウム板の完全焼鈍材の平均表面硬度をHaa(Hv)とするとき、Ha ≧1.6×Haa、好ましくはHa ≧1.7×Haa、より好ましくはHc ≧1.8×Hcaとすればよい。具体的には、アルミニウム板の材質が純Al(Al≧99.5%)の場合、495℃、3min で完全焼鈍したアルミニウム板の平均表面硬度はHv20程度であるため、アルミニウム板の平均表面硬度Ha はHv32以上、好ましくはHv34以上、より好ましくはHv36に設定すればよい。
【0035】
前記銅板、アルミニウム板の接合側表面を硬化するには、通常、材料を圧延することにより容易に実施されるが、その他、ショットピーニングなどの表面硬化方法を適用することができる。銅板、アルミニウム板の圧接側表面の平均表面硬度Hc 、Haの上限は特に規定されないが、圧延により表面硬化する場合、通常、完全焼鈍材の平均表面硬度の4倍程度が限度であろう。
【0036】
前記拡散焼鈍の焼鈍温度は、150℃〜550℃とする。150℃未満では金属間化合物層の生成、成長が著しく低下し、必要な厚さの金属間化合物層が得られないようになる。他方、550℃を越えると、金属間化合物の成長が著しくなるため、厚さの制御が困難になり、やはり所定厚さの金属間化合物層が得られないようになる。また、接合側界面部における結晶粒が粗大化する傾向が生じる。好ましい焼鈍温度は300℃〜550℃、より好ましくは450℃〜550℃である。450℃〜550℃とすることにより短時間で所定厚さの金属間化合物層が得られ、生産性に優れる。
【0037】
前記焼鈍温度(T℃)での保持時間t(min )は下記の式によって与えられる。この式は、アルミニウム板と銅板とを圧接した圧接材を150℃〜550℃の焼鈍温度において種々の保持時間(焼鈍時間)で拡散焼鈍し、得られた金属間化合物層の厚さを調査した結果得られたものである。tmin 未満では金属間化合物層の厚さが不足し、一方tmax を越えると金属間化合物層の厚さが過大になり、また結晶粒の粗大化が生じるようになる。
tmin ≦t≦tmax
tmax =−1.03×T+567
−0.19×T+86<0.5のとき、tmin =0.5
−0.19×T+86≧0.5のとき、tmin =−0.19×T+86
【0038】
さらに、tmax 、tmin は下記式を満足するように設定することが好ましい。この場合、焼鈍温度は好ましくは300℃〜550℃、より好ましくは450℃〜550℃とすることが望ましい。
tmax =−0.90×T+478
−0.36×T+168<1のとき、tmin =1.0
−0.36×T+168≧1.0のとき、tmin =−0.36×T+168
【0039】
以下、本発明に係るクラッド材について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
【実施例】
【0040】
素板として表1に示した種類のアルミニウム板、銅板を準備し、それぞれ融点の3/4の温度で3min 保持して完全に焼鈍した。完全焼鈍したアルミニウム板及び銅板のいくつかを圧下率10〜70%程度で冷間圧延し、それらの板の圧接側表面の平均表面硬度を種々設定した。そして焼鈍のまま又は圧延した、アルミニウム板と銅板を重ね合わせて、圧延ロールによって圧接し、板厚が2.0mmの圧接材を得た。圧接前のアルミニウム板、銅板の厚さはそれぞれ2.0mm、板幅は50mmであり、圧接の際の圧下率は50%とした。
【0041】
表1に、各試料のクラッド材について、その素板(アルミニウム板、銅板)の材質と共に、圧接前の素板の圧接側の平均表面硬度を示す。表1中、平均表面硬度に「*」の記号を付したものは完全焼鈍材に冷間圧延を施して表面を硬化したものである。平均表面硬度は、端部を除いて板幅方向に等間隔に設けた5箇所の測定部位において測定した表面硬度の平均値である。表面硬度(ビッカース硬度)の測定荷重は300gとした。
【0042】
表1に示した素板のアルミニウム材の記号(数字)はJISに規定する材料記号であり、「A1050」は純Al(Al:99.50mass%)、「A3003」は耐食アルミニウム合金(Al:96.75mass%)、「A5052」は耐食アルミニウム合金(Al:95.75mass%)、「A2014」は高力アルミニウム合金(Al:90.25mass%)である。また、銅材の記号は、「OFC」は無酸素銅、「TPC」はタフピッチ銅、「PDC」はリン脱酸銅、黄銅はZn含有量が30%のものである。
【0043】
次に、前記圧接材に表1に示した条件で拡散焼鈍を施してクラッド材を得た。焼鈍条件を図4のグラフに示した。図中、「○」は発明条件を満足する例、「×」は発明条件を満足しない例を示す。また、同図には、焼鈍温度T(℃)を変数として、下記焼鈍時間t(min )の上限式A1、下限式A2(但し、t≧0.5)、好ましい上限式B1、好ましい下限式B2(但し、t≧1.0)を示す直線も記載した。
A1=−1.03×T+567
A2=−0.19×T+86
B1=−0.90×T+478
B2=−0.36×T+168
【0044】
拡散焼鈍後、各試料のクラッド材からそれぞれ圧延方向に沿って長さ50mm、幅10mmの試験片を採取した。この試験片の断面をTEM(透過電子顕微鏡)により観察し、観察した画像を画像解析して、既述の測定要領に従って金属間化合物層の平均厚さ、アルミニウム層及び銅層の中心部における平均結晶粒径(Dac、Dcc)、アルミニウム層及び銅層の界面近傍部における平均結晶粒径(Das、Dcs)、及び中心部に対する界面近傍部の平均結晶粒径の比(Das/Dac、Dcs/Dcc)を求めた。これらの測定結果を表1に合わせて示す。
【0045】
さらに、各試料から採取した試験片を用いて、図5に示すように、アルミニウム層1と銅層2の長さ方向中央部に両層が接合した積層部分Wの長さが1mmとなるように幅0.25mmのスリットSを入れた引張試験片を製作した。引張試験片が破断するまで速度1mm/min で引っ張り、幅1cm当たりの接合強度と破断部位を調べた。これらの結果を表1に併せて示す。表1において、破断態様の「剥離」は積層部分Wの接合界面部で剥離して破断したもの、「Al破断」はアルミニウム層のスリット部での破断したものを意味する。
【0046】
表1より、アルミニウム板、銅板のいずれも圧接側表面を表面硬化していない試料No. 0及び1は、金属間化合物層の厚さが発明条件を満足しているが、接合側界面部に結晶粒の微細化が生じておらず、Das/Dac、Dcs/Dccが0.5を越えて大きいため、接合強度が不足し、接合界面部でアルミニウム層と銅層とが剥離した。実際、TEM観察画像によると、これらのクラッド材では金属間化合物層中に極薄い連続膜状の酸化アルミニウムが残存していることが確認された。
【0047】
また、試料No. 2は、アルミニウム板の圧接側表面を硬化したものであるが、硬化の程度が過少であるため、Das/Dacが0.5を越えて大きい。このため、やはり良好な接合性が得られず、接合界面部で剥離した。同様に、試料No. 5も銅板の圧接側表面における硬化が過少なため、接合強度が低下し、界面部での剥離が生じた。また、試料No. 16及び17は、銅板の圧接側表面を十分に硬化させたが、拡散焼鈍条件が不適切であるため、金属間化合物層の厚さが過少あるいは過大となり、接合界面部で破断した。
【0048】
他方、発明例に係るクラッド材では、いずれも金属間化合物層の厚さが0.5μm 〜10μm の範囲にあり、またDas/Dac又はDcs/Dcc、あるいはDas/Dac及びDcs/Dccが0.5以下であるため、接合強度が392N/cm以上であり、破断部が全てアルミニウム層に生じており、接合界面部での剥離は生じなかった。
【0049】
【表1】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【国際調査報告】