(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2012035827
(43)【国際公開日】20120322
【発行日】20160526
(54)【発明の名称】インクジェット印刷用インクの製造方法及び印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/00 20140101AFI20160422BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20160422BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   !C09D11/00
   !B41M5/00 E
   !B41J3/04 101Y
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
【出願番号】2011553182
(21)【国際出願番号】JP2011061847
(22)【国際出願日】20110524
(11)【特許番号】5029931
(45)【特許公報発行日】20120919
(31)【優先権主張番号】2010209239
(32)【優先日】20100917
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
【住所又は居所】東京都板橋区坂下3丁目35番58号
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】永浜 定
【住所又は居所】大阪府高石市高砂一丁目3番地 DIC株式会社 堺工場内
(72)【発明者】
【氏名】北田 満
【住所又は居所】大阪府高石市高砂一丁目3番地 DIC株式会社 堺工場内
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA13
2C056FC01
2H186BA11
2H186DA12
2H186FA18
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2H186FB30
2H186FB48
2H186FB54
4J039AE04
4J039AE05
4J039BD02
4J039BE33
4J039CA06
4J039EA36
4J039EA40
4J039EA44
4J039GA24
(57)【要約】
本発明が解決しようとする課題は、インクの良好な吐出安定性や保存安定性等を損なうことなく、非常に優れた耐擦過性や耐アルカリ性等の耐久性を備えた印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インク用バインダー及び該バインダーを含むインクジェット印刷用インクを提供することである。
本発明は、ポリウレタン(a1)とエポキシ化合物(a2)とが反応し形成した複合樹脂粒子(A)が、水性媒体(B)に分散したインクジェット印刷インク用バインダー、それを含むインクジェット印刷用インク及び印刷物に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン(a1)とエポキシ化合物(a2)とが反応し形成した複合樹脂粒子(A)が、水性媒体(B)に分散したものであることを特徴とするインクジェット印刷インク用バインダー。
【請求項2】
前記複合樹脂粒子(A)が、前記ポリウレタン(a1)の有する官能基[X]と前記エポキシ化合物(a2)の有するエポキシ基[Y]とを反応させて得られるものである、請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダー。
【請求項3】
前記ポリウレタン(a1)の有する官能基[X]が、カルボキシル基、カルボキシレート基またはアミノ基である、請求項2に記載のインクジェット印刷インク用バインダー。
【請求項4】
前記複合樹脂粒子(A)が、1mgKOH/g〜50mgKOH/gの酸価を有するものである、請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダー。
【請求項5】
前記複合樹脂粒子(A)を構成する、前記ポリウレタン(a1)の有する官能基[X]と前記エポキシ化合物(a2)の有するエポキシ基[Y]とのモル比[エポキシ基[Y]/官能基[X]]が1/20〜1/1の範囲である、請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダー。
【請求項6】
前記複合樹脂粒子(A)が、10nm〜1000nmの範囲の平均粒子径を有するものである、請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダー。
【請求項7】
前記ポリウレタン(a1)が5000〜200000の範囲の重量平均分子量を有するものである、請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダー。
【請求項8】
前記エポキシ化合物(a2)が、100〜2000のエポキシ当量を有する化合物である、請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダー。
【請求項9】
前記エポキシ化合物(a2)が脂肪族ポリグリシジルエーテルまたはビスフェノール系ジグリシジルエーテルである、請求項1に記載のインクジェット印刷インク用バインダー。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載のインクジェット印刷インク用バインダーと、顔料または染料とを含有するインクジェット印刷用インク。
【請求項11】
請求項11に記載のインクジェット印刷用インクによって印刷の施された印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷に使用可能なインクのバインダー及びそれを含むインクジェット印刷用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、成長が著しいインクジェット印刷関連業界では、インクジェットプリンターの高性能化やインクの改良等が飛躍的に進み、一般家庭でも容易に銀塩写真並みの高光沢で高精細な画像を得ることが可能となりつつある。
【0003】
なかでもインクについては、従来の染料インクから顔料インクへの移行や、溶剤系から水系への移行等の、高画質化と環境負荷低減とを目的とした改良が急速に進められており、現在は、水系の顔料インクをベースとしたインク開発が積極的に行われている。
【0004】
また、前記インクには、インクジェットプリンター等の高性能化に伴って、年々、一層高いレベルの性能が要求されるようになっており、例えば、インクの良好な吐出安定性や保存安定性等を損なうことなく、印刷画像表面に外力が加わった場合に生じうる摩擦等によって、顔料の欠落に起因した印刷画像の色落ちや劣化等を防止できるレベルの耐擦過性や、ガラスクリーナーをはじめとする各種洗浄剤が印刷画像表面に付着した場合に印刷画像のにじみや色落ちを引き起こさないレベルの耐薬品性等の耐久性が、近年強く求められている。
【0005】
前記耐擦過性に優れたインクとしては、例えば、顔料、水性樹脂及び水性媒体を含むインクジェット記録用インクにおいて、前記水性樹脂が有機ジイソシアネートと、ポリオキシエチレン構造を有するジオールとを反応させて得られるポリウレタン樹脂であって、前記ポリウレタン樹脂がカルボキシル基を有し、かつ特定の酸価、数平均分子量、及び特定量の前記ポリオキシエチレン構造を有するものであるインクジェット記録用インクが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
前記インクジェット記録用インクを用いて印刷して得られた画像は、例えば紙間の擦れ等に起因した顔料の脱落を防止できる等、ある程度の耐擦過性を有するものであった。
【0007】
しかし、インクジェット印刷物の使用分野が広範となるのに伴い、より一層の高いレベルの耐擦過性が求められるなかで、前記インクジェット記録用インクを用いて形成された印刷画像は、例えば極所的に強い外力が加わった場合等に、依然として顔料の脱落等に起因した印刷画像の色落ちや劣化や損傷を引き起こす場合があった。また、前記インクジェット記録用インクを用いて印刷して得られた画像は、その表面に、例えばアルカリ性洗浄剤等が付着した場合に、印字表面に浮きやにじみが発生するという問題があった。
【0008】
以上のように、インクの良好な吐出安定性や保存安定性等を損なうことなく、非常に優れた耐擦過性と優れた耐アルカリ性とを両立した印刷画像を形成できるインクジェット印刷用インクが産業界から求められているものの、それらを備えたインクジェット印刷用インク及びその製造に使用可能なインクジェット印刷インク用バインダーは、未だ見いだされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−1639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、インクの良好な吐出安定性や保存安定性等を損なうことなく、非常に優れた耐擦過性や耐アルカリ性等の耐久性を備えた印刷画像を形成可能なインクジェット印刷インク用バインダー及び該バインダーを含むインクジェット印刷用インクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討するなかで、前記耐擦過性の向上は、インクジェット印刷インク用バインダーとして、従来よりも高分子量の樹脂を使用することによって実現できるのではないかと考えた。
【0012】
しかし、前記バインダーとして高分子量の樹脂を使用すると、前記樹脂が水性媒体を吸収し膨潤することで、インクの吐出安定性や保存安定性を著しく低下させ、インク吐出ノズルの詰まりやインクの吐出方向の異常、凝集物の発生等を引き起こす場合があった。
【0013】
一方、前記吐出安定性や保存安定性の向上は、前記バインダーとして比較的低分子量のものを使用することによって実現可能であったが、かかる場合には、耐擦過性や耐アルカリ性等の低下を引き起こす場合があった。
【0014】
このように、インクの吐出安定性や保存安定性と、前記耐擦過性や耐アルカリ性とを両立することが困難ななかで、本発明者等は、前記バインダーとして粒子内で架橋し高分子量化された樹脂粒子を使用することによって、前記課題を解決できるのではないかと考え検討を進めた。
【0015】
その結果、ポリウレタンとエポキシ化合物とを反応させることによって、粒子内架橋が進行した複合樹脂粒子が水性媒体に分散したインクジェット印刷インク用バインダーを用いた場合に、インクの良好な吐出安定性や保存安定性を損なうことなく、耐擦過性や耐アルカリ性を向上できることを見出した。
【0016】
即ち、本発明は、ポリウレタン(a1)とエポキシ化合物(a2)とが反応し形成した複合樹脂粒子(A)が、水性媒体(B)に分散したものであることを特徴とするインクジェット印刷インク用バインダー、それを含むインクジェット印刷用インク及び印刷物に関するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のインクジェット印刷インク用バインダーを含むインクジェット印刷用インクであれば、インクの良好な吐出安定性や保存安定性等を損なうことなく、強い外力が加わった場合であっても顔料の脱落等を引き起こすことなく、高精細な印刷画像を維持することが可能となり、銀塩写真並みの耐擦過性、優れた耐アルカリ性を付与できることから、例えば、インクジェット印刷による写真印刷や、インクジェット印刷による高速印刷によって得られた印刷物を、屋外広告等をはじめとする様々な場面で使用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、ポリウレタン(a1)とエポキシ化合物(a2)とが反応し形成した複合樹脂粒子(A)が、水性媒体(B)に分散したものであることを特徴とするインクジェット印刷インク用バインダーである。
【0019】
本発明で使用する複合樹脂粒子(A)は、前記ポリウレタン(a1)とエポキシ化合物(a2)とが架橋反応することで形成されたものである。
【0020】
前記ポリウレタン(a1)とエポキシ化合物(a2)との架橋反応は、具体的には、前記ポリウレタン(a1)が有する官能基[X]と前記エポキシ化合物(a2)が有するエポキシ基[Y]との反応である。
【0021】
前記ポリウレタン(a1)の有する官能基[X]は、前記エポキシ基[Y]と反応しうる官能基であればいずれであってもよく、例えばカルボキシル基、カルボキシレート基、アミノ基等が挙げられる。なかでも、カルボキシル基またはカルボキシレート基であることが、耐アルカリ性等の耐久性に優れた印刷物を得るうえで好ましい。
【0022】
前記複合樹脂粒子(A)としては、より一層優れた耐擦過性等を付与する観点から、粒子内部で高密度に架橋した複合樹脂粒子を使用することが好ましい。前記複合樹脂粒子であれば、粒子内で架橋構造を形成しているため、水性媒体等に起因した粒子の膨潤を引き起こしにくく、その結果、インクの吐出安定性を損なうことなく、優れた耐擦過性等を付与することが可能である。
【0023】
前記複合樹脂粒子(A)内の架橋の程度は、前記複合樹脂粒子(A)のゲル分率によって評価することができ、前記ゲル分率が70質量%以上のものを使用することが、より一層優れた耐擦過性を付与するうえで好ましく、85質量%〜100質量%であることがより好ましい。
【0024】
ここで、前記ゲル分率は、前記複合樹脂粒子(A)を用いて形成されたフィルムを、25℃のメチルエチルケトン中へ24時間浸漬した場合に、前記浸漬前のフィルムの質量に対する、該フィルムからメチルエチルケトン中に溶出せず残存したフィルムの残渣の質量の割合により示すことができる。
【0025】
具体的には、複合樹脂粒子(A)を用いて縦3cm、横3cm及び厚さ150μmのフィルムを作製し、その質量(M)を測定する。次いで、該フィルムを25℃に調整したメチルエチルケトン中に24時間浸漬した後、メチルエチルケトンに溶解しなかったフィルムの残渣を300メッシュ金網で濾過することで分離し、前記残渣を108℃で1時間、乾燥したものの質量(N)を測定する。次いで、前記質量(M)及び(N)の値を用い、[(N)/(M)]×100の式に基づいて算出することによって、前記ゲル分率を算出することができる。
【0026】
前記複合樹脂粒子(A)としては、水性媒体(B)中に安定して分散する観点から、前記したとおり親水性基を有するものを使用することが好ましい。
【0027】
前記親水性基としては、アニオン性基、カチオン性基、及びノニオン性基を使用できるが、なかでもアニオン性基を使用することがより好ましい。
【0028】
前記アニオン性基としては、例えばカルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基等を使用することができ、なかでも、前記カルボキシル基やスルホン酸基の一部または全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが、良好な水分散安定性を付与するうえで好ましい。また、前記カチオン性基としては、例えば3級アミノ基等を使用することができ、前記ノニオン性基としては、例えばポリエチレンオキサイド鎖等を使用することができる。
【0029】
前記親水性基は、前記複合樹脂粒子(A)全体に対して1mmol/kg〜2000mmol/kgの範囲で存在することが好ましく、15mmol/kg〜1500mmol/kgの範囲であることが良好な保存安定性や吐出安定性を備えたインクジェット印刷インク用バインダーを得るうえでより好ましい。
【0030】
また、前記複合樹脂粒子(A)は、良好な保存安定性と吐出安定性とを維持する観点から、10nm〜1000nmの範囲の平均粒子径を有するものであることが好ましく、10nm〜300nmの平均粒子径を有するものであることがより好ましい。なお、前記平均粒子径は、後述する実施例でも述べるが、動的光散乱法により測定した体積基準での平均粒子径を指す。
【0031】
また、前記複合樹脂粒子(A)としては、良好な保存安定性や吐出安定性を保持する観点から1mgKOH/g〜50mgKOH/gの酸価を有するものを使用することが好ましい。とりわけ、良好な保存安定性や吐出安定性を保持し、かつ耐アルカリ性を向上する観点から、1mgKOH/g〜35mgKOH/gの酸価を有するものを使用することがより好ましい。なお、前記酸価は、ポリウレタン(a1)が有する酸基に由来するものであることが好ましい。
【0032】
前記複合樹脂粒子(A)を製造する方法としては、ポリオールとポリイソシアネートと、必要に応じて鎖伸長剤とを反応させることによってポリウレタン(a1)を製造する工程(I)、及び、前記ポリウレタン(a1)と前記エポキシ化合物(a2)とを反応させ複合樹脂粒子(A)を製造する工程(II)を含む方法が挙げられる。
【0033】
はじめに、前記工程(I)、及び、工程(I)で得られるポリウレタン(a1)について説明する。
【0034】
前記ポリウレタン(a1)としては、例えば前記ポリオールとポリイソシアネートと、必要に応じて鎖伸長剤等とを反応させることによって得られるポリウレタンのうち、前記エポキシ化合物(a2)のエポキシ基[Y]と反応性を備えた官能基[X]を有するものを使用することができる。
【0035】
官能基[X]としては、前記したとおり例えばカルボキシル基、カルボキシレート基、アミノ基等を使用することができる。
前記官能基[X]を有するポリウレタン(a1)を製造する方法としては、具体的には、官能基[X]を有さないポリオール(a1−1)やポリイソシアネート(a1−2)と、官能基[X]含有化合物と、必要に応じ鎖伸長剤とを反応させることによってポリウレタン(a1)を製造する方法が挙げられる。
【0036】
前記官能基[X]をポリウレタン(a1)中に導入する際に使用する官能基[X]含有化合物としては、例えば官能基[X]を有するポリオールや、官能基[X]を有するポリイソシアネート等を使用することができる。なお、前記官能基[X]を有するポリオールや官能基[X]を有するポリイソシアネートを使用する場合には、官能基[X]を有さないポリオール(a1−1)やポリイソシアネート(a1−2)を必ずしも使用する必要はない。しかし、水性媒体中における良好な保存安定性や印刷画像の優れた耐擦過性等の諸特性を付与する観点から、官能基[X]を有するポリオールや官能基[X]を有するポリイソシアネートを使用する場合であっても、その他のポリオール(a1−1)やポリイソシアネート(a1−2)を組み合わせ使用することが好ましい。
前記官能基[X]を有するポリオールや官能基[X]を有するポリイソシアネートを使用し前記ポリウレタン(a1)を製造する方法としては、例えば、前記官能基[X]を有するポリオールや官能基[X]を有するポリイソシアネートと、必要に応じて官能基[X]を有さないポリオール(a1−1)やポリイソシアネート(a1−2)や鎖伸長剤を適宜組み合わせ反応させる方法が挙げられる。これにより、分子側鎖や分子末端に官能基[X]の導入されたポリウレタン(a1)を得ることができる。
【0037】
前記官能基[X]を有するポリオールとしては、例えば2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸を使用することができる。なかでも2,2’−ジメチロールプロピオン酸を使用することが、分散安定性の優れた複合樹脂粒子(A)を得るうえで好ましい。
【0038】
前記官能基[X]を有するポリオールは、前記ポリウレタン(a1)の製造に使用可能な原料の合計質量、具体的には前記ポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a1−2)と前記官能基[X]含有化合物と、鎖伸長剤を使用した場合には鎖伸長剤を含む合計質量に対して、0.5質量%〜35質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0039】
また、前記官能基[X]含有化合物としては、ポリアミン等を使用することができる。具体的には、前記ポリオール(a1−1)やポリイソシアネート(a1−2)を反応させることによって分子末端にイソシアネート基または水酸基を有するウレタンプレポリマーを製造し、次いで、該ウレタンプレポリマーの分子末端に存在するイソシアネート基または水酸基と、前記ポリアミン等の官能基[X]を有する化合物とを反応させることによって、前記ポリウレタン(a1)の分子末端に官能基[X]を導入することができる。
【0040】
前記官能基[X]含有化合物として使用可能なポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジッド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジッド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等を使用することができる。
【0041】
前記官能基[X]がカルボキシル基またはカルボキシレート基等の酸基である場合、前記酸基は、前記ポリウレタン(a1)の酸価が1mgKOH/g〜70mgKOH/gとなる範囲で存在することが好ましい。
【0042】
前記ポリウレタン(a1)の製造に使用可能な前記ポリオール(a1−1)としては、前記官能基[X]を有するポリオール以外の、各種ポリオールを使用することができる。
【0043】
また、前記ポリウレタン(a1)としては、前記複合樹脂粒子(A)の水性媒体(B)中における良好な保存安定性等を付与する観点から、親水性基を有するものを使用することが好ましい。
【0044】
前記親水性基は、前記ポリオール(a1−1)として親水性基含有ポリオールを使用することによって、ポリウレタン(a1)中に導入することができる。
【0045】
前記親水性基含有ポリオールとしては、例えばアニオン性基含有ポリオールやカチオン性基含有ポリオール、ノニオン性基含有ポリオール等を使用することができ、なかでもアニオン性基含有ポリオールを使用することが、良好な保存安定性を維持するうえで好ましい。
【0046】
前記アニオン性基含有ポリオールとしては、例えばカルボキシル基含有ポリオールやスルホン酸基含有ポリオール等のアニオン性基含有ポリオールを使用することができる。
【0047】
前記カルボキシル基含有ポリオールとしては、例えば2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等を使用することができ、なかでも2,2’−ジメチロールプロピオン酸を使用することが好ましい。また、前記カルボキシル基含有ポリオールと各種ポリカルボン酸またはラクトンとを反応させて得られるカルボキシル基含有ポリエステルポリオールや、片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体等を使用することもできる。
前記片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体としては、具体的には、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール等のチオグリセリンの存在下でカルボキシル基を含有するビニル単量体を重合して得られるものを好適に使用できる。
【0048】
前記スルホン酸基含有ポリオールとしては、例えば5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等のジカルボン酸、及びそれらの塩と、前記低分子量ポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオールを使用することができる。
【0049】
前記アニオン性基は、それらの一部または全部が塩基性化合物等によって中和されていることが、良好な水分散性を発現するうえで好ましい。
【0050】
前記アニオン性基を中和する際に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、沸点が100℃以上のモノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の有機アミンや、NaOH、KOH、LiOH等を含む金属水酸化物等を使用することができる。前記塩基性化合物は、得られるインクの分散安定性を向上させる観点から、塩基性化合物/アニオン性基=0.2〜3.0(モル比)となる範囲で使用することが好ましく、0.6〜1.5(モル比)となる範囲で使用することがより好ましい。
【0051】
また、前記カチオン性基含有ポリオールとしては、例えば3級アミノ基含有ポリオールを使用することができ、具体的にはN−メチル−ジエタノールアミンや、1分子中にエポキシを2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られるポリオールなどを使用することができる。
【0052】
前記カチオン性基は、その一部または全部が、蟻酸、酢酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酒石酸、アジピン酸等の酸性化合物で中和、または、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、メチルクロライド、エチルクロライド等の四級化剤で四級化されていてもよい。
【0053】
また、前記ノニオン性基含有ポリオールとしては、エチレンオキサイド由来の構造単位を有するポリアルキレングリコール等を使用することができる。
【0054】
前記親水性基含有ポリオールは、前記ポリウレタン(a1)の製造に使用可能な原料である前記ポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a1−2)と官能基[X]含有化合物と鎖伸長剤を使用した場合にはそれらの合計質量に対して、1質量%〜45質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0055】
なお、前記官能基[X]含有化合物としての前記官能基[X]を有するポリオールと、前記親水性基含有ポリオールとは、その例示物が一部重複する。例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸は、親水性基としてのカルボキシル基をポリウレタン(a1)中に導入する一方で、前記官能基[Y]としてのカルボキシル基をポリウレタン(a1)中に導入しうる。
【0056】
前記エポキシ化合物(a2)のエポキシ基[Y]と反応させ粒子内の架橋密度を高めることを目的としてポリウレタン(a1)中に導入されたカルボキシル基は、前記官能基[X]として作用するものであって、反応後は親水性基として作用するものではないから、かかる目的でポリウレタン(a1)中にカルボキシル基を導入するために使用した2,2−ジメチロールプロピオン酸等のポリオールは、前記官能基[X]を有するポリオールとして例示した。
【0057】
一方、前記複合樹脂粒子(A)の水分散安定性を向上するために、アニオン性基として導入されたカルボキシル基であって、前記エポキシ基[Y]と反応せず前記複合樹脂粒子(A)中に残存するカルボキシル基や、更に中和され形成したカルボキシレート基は、親水性基として作用するものであるから、かかる目的でポリウレタン(a1)中にカルボキシル基を導入するために使用した2,2−ジメチロールプロピオン酸等のアニオン性基含有ポリオールは、前記親水性基含有ポリオールとして例示した。前記親水性基含有ポリオールに使用可能なカチオン性基含有ポリオールも、前記アニオン性基含有ポリオールと同様である。
【0058】
前記ポリウレタン(a1)の製造に使用するポリオール(a1−1)としては、前記親水性基含有ポリオールの他に、必要に応じてその他のポリオールを組み合わせ使用することができる。
【0059】
前記その他のポリオールとしては、例えば前記官能基[X]を有するポリオールや前記親水性基含有ポリオール以外の、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を使用することができる。なかでも、前記その他のポリオールとしては、前記ポリエーテルポリオールを使用することが、優れたインクの保存安定性とインク吐出性とを損なうことなく、優れた耐擦過性と耐アルカリ性とを付与するうえで好ましい。
【0060】
前記その他のポリオールとして使用可能なポリエーテルポリオールとしては、例えば活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0061】
前記開始剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
【0062】
また、前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
【0063】
前記ポリエーテルポリオールとしては、インクの優れた吐出安定性を付与可能なインクジェット印刷インク用バインダーを得る観点から、ポリオキシテトラメチレングリコールやポリオキシプロピレングリコールを使用することが好ましい。
【0064】
前記その他のポリオールに使用可能なポリエーテルポリオールとしては、600〜5000の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールを使用することが好ましく、800〜3000の範囲のものを使用することがより好ましい。
【0065】
前記ポリエーテルポリオール、好ましくは前記数平均分子量600〜5000のポリエーテルポリオールは、前記ポリウレタン(a1)の製造に使用可能な原料である前記ポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a1−2)と前記官能基[X]含有化合物と、鎖伸長剤を使用した場合にはそれらの合計質量に対して15質量%〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0066】
また、前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるもの等を使用することができる。
【0067】
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ−ト等を使用することできる。
【0068】
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、4,4’−ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等を使用することができる。
【0069】
また、前記ポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるものや、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0070】
前記低分子量のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコ−ル等を使用することができる。
【0071】
前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及びこれらの無水物またはエステル形成性誘導体などを使用することができる。
【0072】
また、前記その他のポリオールとしては、前記したものの他に、脂肪族環式構造含有ポリオールを使用することが、印刷物の耐擦過性を向上するうえで好ましい。
【0073】
前記脂肪族環式構造含有ポリオールとしては、例えばシクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ〔5,2,1,0,2,6〕デカン−ジメタノール、ビシクロ〔4,3,0〕−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカンジオール、ビシクロ〔4,3,0〕ノナンジメタノール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカン−ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカノール、スピロ〔3,4〕オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、水素添加ビスフェノ−ルA、1,3−アダマンタンジオール等の、概ね100〜500程度の低分子量の脂肪族環式構造含有ポリオールを使用することができる。なお、上記脂肪族環式構造含有ポリオールの分子量は、式量に基づくものである。
【0074】
前記100〜500の分子量を有する脂肪族環式構造含有ポリオールは、前記ポリウレタン(a1)の製造に使用可能な原料である前記ポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a1−2)と前記官能基[X]含有化合物と、鎖伸長剤を使用した場合にはそれらの合計質量に対して0.5〜35質量%の範囲であることが好ましい。
【0075】
また、前記その他のポリオールとしては、前記したものの他に、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール等を使用することができる。
【0076】
また、前記ポリウレタン(a1)の製造に使用可能なポリイソシアネート(a1−2)としては、官能基[X]を有さないものを使用することができ、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートあるいは脂環式構造を有するポリイソシアネートを使用することができる。なかでも、黄変色を防止する観点では脂肪族ポリイソシアネートを使用することが好ましく、前記変色防止とともに、耐擦過性や耐アルカリ性のより一層の向上を図る観点では、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートを使用することが好ましい。
【0077】
前記ポリウレタン(a1)は、例えば無溶剤下または有機溶剤の存在下で、ポリオールとポリイソシアネート等とを混合し反応させることによって製造することができる。具体的には、前記ポリウレタン(a1)は、前記ポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a1−2)と、前記官能基[X]含有ポリオールや官能基[X]含有ポリイソシアネート等の官能基[X]含有化合物とを混合し反応させることによって製造することができる。前記有機溶剤を使用した場合、前記有機溶剤は、前記ポリウレタン(a1)を水性化する際に、蒸留等の方法で除去することが好ましい。
【0078】
また、前記ポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a1−2)とを無溶剤下または有機溶剤の存在下で予め反応させることによって、分子末端に水酸基またはイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、次いで該ウレタンプレポリマーと、前記ポリアミン等の官能基[X]含有化合物とを混合し反応させることによって、分子末端に官能基[X]を有するポリウレタン(a1)を製造することもできる。かかる場合も、前記有機溶剤を使用した場合には、前記有機溶剤は、前記ポリウレタン(a1)を水性化する際に、蒸留等の方法で除去することが好ましい。
【0079】
前記ポリウレタン(a1)の製造に使用するポリオールとポリイソシアネートとの反応は、例えば、前記ポリオールが有する水酸基に対する、前記ポリイソシアネートが有するイソシアネート基の当量割合が、0.8〜2.5の範囲で行うことが好ましく、0.9〜1.5の範囲で行うことがより好ましい。なお、前記ポリオール及びポリイソシアネートは、前記ポリオール(a1−1)やポリイソシアネート(a1−2)や、前記官能基[X]含有ポリオールや官能基[X]含有ポリイソシアネート等を含む意味である。
【0080】
また、前記ポリウレタン(a1)を製造する際に使用可能な有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を、単独で使用または2種以上を使用することができる。
【0081】
前記ポリウレタン(a1)を製造する際には、耐擦過性を向上する観点からその分子量を大きくすることを目的として、必要に応じて前記鎖伸長剤を使用することができる。
前記鎖伸長剤を使用する場合には、例えば無溶剤下または有機溶剤の存在下で、前記ポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a1−2)と官能基[X]含有化合物とを反応させることによってポリウレタンを製造し、次いで、該ポリウレタンと鎖伸長剤とを反応させることによって、ポリウレタン(a1)を製造することができる。前記有機溶剤を使用した場合、前記有機溶剤は、前記ポリウレタン(a1)を水性化する際に、蒸留等の方法で除去することが好ましい。
【0082】
前記ポリウレタン(a1)を製造する際に使用できる鎖伸長剤としては、ポリアミンや、その他活性水素原子含有化合物等を使用することができる。
【0083】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジッド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジッド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンを使用することができ、エチレンジアミンを使用することが好ましい。
【0084】
前記その他活性水素含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類、及び水等を使用することができる。
【0085】
前記鎖伸長剤は、例えば前記鎖伸長剤の有するアミノ基及び活性水素原子含有基の当量が、前記ポリウレタンが有するイソシアネート基の当量に対して、1.9以下(当量比)となる範囲で使用することが好ましく、0.3〜1.0(当量比)の範囲で使用することがより好ましい。
【0086】
前記鎖伸長剤を使用して得られたポリウレタンは、分子中にウレア結合を有するため、耐擦過性に優れた印刷画像を形成するうえで好適に使用できる。一方、前記ポリウレタンは、ウレア結合の影響によって耐アルコール性を低下させる傾向にあるため、前記耐擦過性や耐アルカリ性とともに耐アルコール性に優れた印刷画像を形成する場合には、前記ポリウレタン(a1)として、鎖伸長剤を使用せずに得られたポリウレタンや、その使用量を最小限に制限して得られたポリウレタン、具体的には、前記ポリウレタン中に含まれるウレア結合の割合が10質量%以下であるものを使用することが好ましい。
【0087】
前記方法で得られたポリウレタン(a1)としては、十分な耐アルカリ性、耐擦過性や耐アルコール性を得るためには、10000〜200000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、20000〜80000の範囲のものを使用することがより好ましい。
【0088】
また、前記方法で製造したポリウレタン(a1)の水性媒体(B)中への分散は、例えば前記ポリウレタン(a1)が親水性基含有ポリウレタンである場合、次のような方法で行うことができる。
【0089】
〔方法1〕前記方法で製造したポリウレタン(a1)が有する親水性基の一部又は全てを中和又は4級化した後、水性媒体(B)を投入して水分散せしめ、その後、必要に応じて前記鎖伸長剤を供給し反応させることによってポリウレタン(a1)の水分散体を製造する方法。
【0090】
〔方法2〕ポリオール(a1−1)とポリイソシアネート(a1−2)とを反応させて得られたポリウレタンと、必要に応じて前記鎖伸長剤とを、反応容器中に一括又は分割して仕込み、鎖伸長反応させることでポリウレタン(a1)を製造し、次いで得られたポリウレタン(a1)が有していてもよい親水性基の一部又は全てを中和又は4級化した後、水性媒体(B)を投入し水分散することによってポリウレタン(a1)の水分散体を製造する方法。
前記ポリウレタン(a1)を製造する際に有機溶剤を使用した場合には、前記方法1及び2によってポリウレタン(a1)の水分散体を製造した後、必要に応じて前記有機溶剤を蒸留等の方法で除去することが好ましい。
【0091】
また、前記ポリウレタン(a1)として親水性基を有さないものを使用する場合、前記ポリウレタン(a1)を水性媒体(B)中へ分散する際には、下記の乳化剤等を使用することができる。なお、前記ポリウレタン(a1)として親水性基含有ポリウレタンを使用する場合も、前記〔方法1〕〜〔方法2〕において、必要に応じて乳化剤を使用してもよい。また、水溶解や水分散の際には、必要に応じてホモジナイザー等の機械を使用しても良い。
【0092】
前記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系乳化剤が挙げられる。なかでも本発明のコーティング剤の優れた保存安定性を維持する観点から、基本的にアニオン性又はノニオン性の乳化剤を使用することが好ましい。
【0093】
また、本発明のバインダーを製造する際には、ポリウレタン(a1)の水分散性を助ける助剤として、親水基含有化合物を使用してもよい。
【0094】
かかる親水基含有化合物としては、アニオン性基含有化合物、カチオン性基含有化合物、両性基含有化合物、又はノニオン性基含有化合物を用いることができるが、本発明のインクの優れた保存安定性を維持する観点から、ノニオン性基含有化合物を使用することが好ましい。
【0095】
前記ノニオン性基含有化合物としては、分子内に少なくとも1個以上の活性水素原子を有し、かつエチレンオキシドの繰り返し単位からなる基、及びエチレンオキシドの繰り返し単位とその他のアルキレンオキシドの繰り返し単位からなる基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する化合物を使用することができる。
【0096】
例えば、エチレンオキシドの繰り返し単位を少なくとも30質量%以上含有し、ポリマー中に少なくとも1個以上の活性水素原子を含有する数平均分子量300〜20,000のポリオキシエチレングリコール又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン共重合体グリコール又はそのモノアルキルエーテル等のノニオン基含有化合物又はこれらを共重合して得られるポリエステルポリエーテルポリオールなどの化合物を使用することが可能である。
【0097】
次に、前記で得たポリウレタン(a1)と前記エポキシ化合物(a2)とを反応させ、複合樹脂粒子(A)を製造する工程(II)について説明する。
【0098】
前記ポリウレタン(a1)と前記エポキシ化合物(a2)との反応は、前記ポリウレタン(a1)の有する前記官能基[X]と、前記エポキシ化合物(a2)の有するエポキシ基[Y]との反応である。
【0099】
前記エポキシ化合物(a2)としては、例えば、ノボラック型、クレゾール型、フェノール型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のエポキシ樹脂を使用することができる。
【0100】
前記エポキシ化合物(a2)としては、具体的には脂肪族ポリグリシジルエーテルやビスフェノール系ジグリシジルエーテルを使用することが、インクの吐出安定性を損なうことなく、優れた耐擦過性等を付与できるため好ましい。
【0101】
前記脂肪族ポリグリシジルエーテルとしては、例えばシクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどを使用することができる。
【0102】
また、前記ビスフェノール系ジグリシジルエーテルとしては、例えばビスフェノールA型ジグリシジルエーテルやビスフェノールF型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールS型ジグリシジルエーテル等を使用することができる。
【0103】
また、前記エポキシ化合物(a2)としては、優れた耐擦過性を付与するうえで十分な架橋点を形成する観点から、100〜2000のエポキシ当量を有するものを使用することが好ましい。さらに優れた耐擦過性を付与するうえで100〜500のエポキシ当量を有するものを使用することがより好ましい。
【0104】
前記官能基[X]と前記エポキシ基[Y]との反応は、例えば前記工程(I)で得たポリウレタン(a1)と前記エポキシ化合物(a2)とを混合することによって行うことができる。具体的には、前記工程(I)で得たポリウレタン(a1)の有機溶剤溶液または水分散液と、前記エポキシ化合物(a2)とを混合する方法が挙げられる。前記混合は、ポリウレタン(a1)が有する親水性基を中和する前後のいずれで行ってもよく、前記有機溶剤を除去する前後のいずれの時期に行っても良い。
【0105】
前記官能基[X]と前記エポキシ基[Y]との反応は、使用するエポキシ化合物(a2)の種類等によって異なるが、好ましくは50℃〜150℃、より好ましくは65℃〜100℃の範囲で、概ね1時間〜10時間程度、攪拌しながら行うことが好ましい。
【0106】
前記ポリウレタン(a1)と前記エポキシ化合物(a2)とは、前記ポリウレタン(a1)の有する官能基[X]と前記エポキシ化合物(a2)の有するエポキシ基[Y]とのモル比〔エポキシ基[Y]/官能基[X]〕が1/20〜1/1となる範囲で混合し反応させることが好ましく、1/5〜4/5の範囲で混合し反応させることが、インクの吐出安定性や保存安定性を損なうことなく、前記複合樹脂粒子(A)内部の架橋密度を高めることで、優れた耐擦過性の印刷物を得るうえでより好ましい。
【0107】
ここで、前記官能基[X]が、前記カルボキシル基やアミノ基等の親水性基としても作用しうるものである場合、得られる複合樹脂粒子(A)の優れた保存安定性を維持する観点から、前記モル比〔エポキシ基[Y]/官能基[X]〕が1/20〜9/10となる範囲で混合し反応させることが好ましく、1/5〜4/5の範囲で混合し反応させることがより好ましい。これにより、前記複合樹脂粒子(A)中に、エポキシ基[Y]と未反応の官能基[X]を親水性基として残存させることができ、水性媒体(B)中における前記複合樹脂粒子(A)の保存安定性を向上することができる。
【0108】
また、本発明のインクジェット印刷インク用バインダーで使用する水性媒体(B)は、前記複合樹脂粒子(A)が分散するものである。
【0109】
前記水性媒体(B)としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類、等が挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0110】
本発明では、前記ポリウレタン(a1)を製造する際に、前記ポリウレタン(a1)と前記水性媒体(B)とを含む水分散体を製造した場合には、かかる水性媒体(B)を引き続き使用することができる。
【0111】
前記水性媒体(B)は、前記インクジェット印刷インク用バインダーの全量に対して、40質量%〜90質量%含まれることが好ましく、50質量%〜85質量%含まれることがより好ましい。
【0112】
本発明のインクジェット印刷インク用バインダーには、保存安定性やインク吐出性を低下させない範囲で、必要に応じて硬化剤や硬化触媒を併用しても良い。
【0113】
前記硬化剤としては、例えばシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有する化合物、ポリエポキシ化合物、ポリオキサゾリン化合物、ポリイソシアネート等を使用することができ、前記硬化触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸カリウム等を使用することができる。
【0114】
以上の方法で得られた複合樹脂粒子(A)と水性媒体(B)とを含むポリウレタン組成物は、印刷物の耐擦過性や耐アルカリ性を飛躍的に向上させることができるため、もっぱらインクジェット印刷向けインク用バインダーに好適に使用することができる。
【0115】
前記複合樹脂粒子(A)は、インクの保存安定性と優れた耐擦過性と耐アルカリ性とを両立する観点から、インクジェット印刷インク用バインダーの全量に対して、10質量%〜50質量%の範囲で含まれることが好ましく、15質量%〜40質量%の範囲で含まれることがより好ましい。
【0116】
次に、本発明のインクジェット印刷用インクについて説明する。
本発明のインクジェット印刷用インクは、前記インクジェット印刷インク用バインダー、顔料や染料、その他必要に応じて各種の添加剤を含有するものである。
【0117】
前記顔料としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
前記無機顔料としては、例えば酸化チタン、アンチモンレッド、ベンガラ、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等を使用することができる。
【0118】
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、アゾ系顔料等の有機顔料を使用することができる。
【0119】
これらの顔料は2種類以上のものを併用することができる。また、これらの顔料が表面処理されており,水性媒体に対して自己分散能を有しているものであっても良い。
【0120】
また、前記染料としては、例えばモノアゾ・ジスアゾ等のアゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノイミン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料、フタロシアニン染料、トリアリルメタン系等を使用することができる。
【0121】
また、前記添加剤としては、例えば高分子分散剤や粘度調整剤、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤、防腐剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤をはじめ、従来のインクジェット印刷用インクのバインダーに使用されていたアクリル樹脂等を使用することができる。
【0122】
前記高分子分散剤としては、例えばアクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂等を使用することができ、それらはランダム型、ブロック型、グラフト型のいずれのものも使用することができる。前記高分子分散剤を使用する際には、高分子分散剤を中和するために酸または塩基を併用しても良い。
【0123】
前記インクジェット印刷用インクは、例えば以下の製造方法によって調製することができる。
【0124】
(1)前記顔料または染料と前記水性媒体と前記インクジェット印刷インク用バインダーと必要に応じて前記添加剤とを、各種の分散装置を用いて一括して混合しインクを調製する方法。
【0125】
(2)前記顔料または染料と前記水性媒体と必要に応じて前記添加物とを、各種の分散装置を用いて混合することで顔料または染料の水系分散体からなるインク前駆体を調製し、次いで、前記顔料または染料の水分散体からなるインク前駆体と前記インクジェット印刷インク用バインダーと、必要に応じて水性媒体と添加剤とを、各種の分散装置を用いて混合しインクを調製する方法。
【0126】
上記(2)に記載したインクの製造方法で使用する顔料を含むインク前駆体は、例えば以下の方法によって調製することができる。
(i)顔料及び高分子分散剤等の添加剤を2本ロールやミキサー等を用いて予備混練して得られた混練物と、水性媒体とを各種の分散装置を用いて混合することによって顔料を含む水系分散体からなるインク前駆体を調製する方法。
(ii)顔料と高分子分散剤を各種の分散装置を用いて混合した後、前記高分子分散剤の溶解性をコントロールすることによって該高分子分散剤を前記顔料の表面に堆積させ、更に分散装置を用いてそれらを混合することで顔料を含む水系分散体からなるインク前駆体を調製する方法。
(iii)顔料と前記添加物とを各種の分散装置を用いて混合し、次いで前記混合物と樹脂エマルジョンとを分散装置を用いて混合することによって顔料を含む水系分散体からなるインク前駆体を調製する方法。
【0127】
前記インクジェット印刷用インクの製造に使用可能な分散装置としては、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザーなどを、単独または、2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0128】
前記方法で得られたインクジェット印刷用インク中には、概ね250nm以上の粒子径を有する粗大粒子が存在する場合がある。前記粗大粒子は、プリンターノズルの詰まり等を引き起こし、インク吐出特性を劣化させる場合があるため、前記顔料の水系分散体の調製後、またはインクの調製後に遠心分離又は濾過処理等の方法によって、粗大粒子を除去することが好ましい。
【0129】
前記で得たインクジェット印刷用インクは、1000nm以下の体積平均粒子径を有するものを使用することが好ましく300nm以下の体積平均粒子径を有するものを使用することが好ましく、特に写真画質のようにより一層高光沢の画像を形成する場合には、80〜120nmの範囲であることがより好ましい。
【0130】
また、前記インクジェット印刷用インクは、インクジェット印刷用インク全体に対して、前記親水性基含有ポリウレタン(A)を0.2質量%〜10質量%、水性媒体(B)を50質量%〜95質量%、顔料または染料を0.5質量%〜15質量%含むことが好ましい。
【0131】
前記方法で得られた本発明のインクジェット印刷用インクは、もっぱらインクジェットプリンターを用いたインクジェット印刷に使用することができ、例えば紙やプラスチックフィルム、金属フィルムまたはシート等の基材に対するインクジェット印刷に使用することができる。インクジェットの方式は特に限定するものではないが、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型など)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式など)などの公知の方式を適用することができる。
【0132】
本発明のインクジェット印刷用インクを用いて印刷された印刷物は、優れた耐擦過性を有することから顔料等の欠落に起因した印刷画像の劣化等を引き起こしにくく、また優れた耐アルカリ性を有することから、アルカリ性洗浄剤等の印刷画像表面への付着によるにじみ等の発生を防止でき、かつ高発色濃度の画像を有するものであるから、例えばインクジェット印刷による写真印刷や、インクジェット印刷による高速印刷によって得られた印刷物など様々な用途に使用することができる。
【実施例】
【0133】
以下、本発明を実施例と比較例により、一層、具体的に説明する。
【0134】
[調製例1]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエーテルポリオール(「エクセノール2020」旭硝子株式会社製のポリプロピレングリコール、数平均分子量2000)601.3質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸48.4質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール80.0質量部及びイソホロンジイソシアネート270.3質量部を、有機溶剤としてのメチルエチルケトン428.6質量部の存在下で5時間反応させた。
【0135】
反応物の重量平均分子量が20000から50000の範囲に達した時点で、メタノール7.8質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン563.7質量部を追加することで、酸価20のポリウレタンの有機溶剤溶液(不揮発分50質量%)2000質量部を得た。なお、前記酸価は、ポリウレタンの製造に使用した2,2−ジメチロールプロピオン酸等の酸基含有化合物の使用量に基づいて算出した理論値である。以下の実施例及び比較例においても、特段の断りがない限り前記と同様の方法で酸価を算出した。
【0136】
[実施例1]
前記調製例1で得たポリウレタンの有機溶剤溶液483.8質量部に20質量%アンモニア水溶液を7.3質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水977.2質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタン(a1−I)の水分散体を得た。
得られたポリウレタン(a1−I)の水分散体にエポキシ樹脂(「エピクロン850」DIC株式会社製のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、エポキシ当量188)8.1質量部を加え、80℃で6時間反応させることで、複合樹脂粒子(A−I)の水分散体を得た。
【0137】
次いで、前記複合樹脂粒子(A−I)の水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、酸価10でゲル分率85〜100質量%で、かつ平均粒子径が10〜70nmの複合樹脂粒子(A−I)が水に分散した不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0138】
[実施例2]
前記調製例1で得たポリウレタンの有機溶剤溶液493.4質量部に20質量%アンモニア水溶液を7.5質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水972.4質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタン(a1−II)の水分散体を得た。
得られたポリウレタン(a1−II)の水分散体にエポキシ樹脂(「エピクロン850」DIC株式会社製のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、エポキシ当量188)3.3質量部を加え、80℃で6時間反応させることで複合樹脂粒子(A−II)の水分散体を得た。
次いで、前記複合樹脂粒子(A−II)の水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、酸価16でゲル分率80〜98質量%で、かつ平均粒子径が10〜70nmの複合樹脂粒子(A−II)が水に分散した不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0139】
[実施例3]
前記調製例1で得たポリウレタンの有機溶剤溶液474.6質量部に20質量%アンモニア水溶液を7.2質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水981.9質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタン(a1−III)の水分散体を得た。
得られたポリウレタン(a1−III)の水分散体にエポキシ樹脂(「エピクロン850」DIC株式会社製のエポキシ樹脂であるビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、エポキシ当量188)12.7質量部を加え、80℃で6時間反応させることで複合樹脂粒子(A−III)の水分散体を得た。
次いで、前記複合樹脂粒子(A−III)の水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、酸価4でゲル分率90〜100質量%で、かつ平均粒子径が10〜70nmの複合樹脂粒子(A−III)が水に分散した不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0140】
[実施例4]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエーテルポリオール(「エクセノール2020」旭硝子株式会社製のポリプロピレングリコール、数平均分子量2000)137.1質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸11.3質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール17.9質量部及びイソホロンジイソシアネート67.8質量部を、有機溶剤としてのメチルエチルケトン100.3質量部の存在下で5時間反応させた。
【0141】
イソシアネート基の95〜100%が消費されたことをNCO滴定によって確認した後、直ちにエチレンジアミン3.2質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン136.9質量部を追加することでポリウレタン(酸価20)の有機溶剤溶液を得た。
【0142】
次いで、前記で得たポリウレタンの有機溶剤溶液の全量に20質量%アンモニア水溶液を7.1質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水976.3質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタン(a1−IV)の水分散体を得た。
得られたポリウレタン(a1−IV)の水分散体にエポキシ樹脂(「エピクロン850」DIC株式会社製のエポキシ樹脂であるビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、エポキシ当量188)12.8質量部を加え、80℃で6時間反応させることで複合樹脂粒子(A−IV)の水分散体を得た。
次いで、前記複合樹脂粒子(A−IV)の水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、酸価16でゲル分率75〜98質量%で、かつ平均粒子径が20〜200nmの複合樹脂粒子(A−IV)が水に分散した不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0143】
[実施例5]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエーテルポリオール(「エクセノール2020」旭硝子株式会社製のポリプロピレングリコール、数平均分子量2000)146.9質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸29.3質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール0.3質量部及びイソホロンジイソシアネート65.4質量部を、有機溶剤としてのメチルエチルケトン103.7質量部の存在下で5時間反応させた。
【0144】
反応物の重量平均分子量が20000から50000の範囲に達した時点で、メタノール1.9質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン136.3質量部を追加することで、ポリウレタン(酸価50)の有機溶剤溶液を得た。
次いで、前記で得たポリウレタンの有機溶剤溶液の全量に20質量%アンモニア水溶液を18.3質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水975.0質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタン(a1−V)の水分散体を得た。
得られたポリウレタン(a1−V)の水分散体にエポキシ樹脂(「エピクロン850」DIC株式会社製のエポキシ樹脂であるビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、エポキシ当量188)8.1質量部を加え、80℃で6時間反応させることで、複合樹脂粒子(A−V)の水分散体を得た。
次いで、前記複合樹脂粒子(A−V)の水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、酸価40でゲル分率80〜98質量%で、かつ平均粒子径が10〜50nmの複合樹脂粒子(A−V)が水に分散した不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バイン
【0145】
[調製例2]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエーテルポリオール(「エクセノール2020」旭硝子株式会社製のポリプロピレングリコール、数平均分子量2000)392.0質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸24.2質量部及びイソホロンジイソシアネート83.7質量部を、有機溶剤としてのメチルエチルケトン214.3質量部の存在下で5時間反応させた。
反応物の重量平均分子量が20000から50000の範囲に達した時点で、メタノール2.4質量部投入することで反応を終了し、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン283.3質量部を追加することで、酸価20のポリウレタンの有機溶剤溶液(不揮発分50質量%)1000.0質量部を得た。
【0146】
[実施例6]
前記調製例2で得たポリウレタンの有機溶剤溶液483.8質量部に20質量%アンモニア水溶液を7.3質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水1977.2質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタン(a1−VI)の水分散体を得た。
得られたポリウレタン(a1−VI)の水分散体にエポキシ樹脂(「エピクロン850」DIC株式会社製のエポキシ樹脂であるビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、エポキシ当量188)8.1質量部を加え、80℃で6時間反応させることで複合樹脂粒子(A−VI)の水分散体を得た。
次いで、前記複合樹脂粒子(A−VI)の水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、酸価10でゲル分率85〜100質量%で、かつ平均粒子径が10〜70nmの複合樹脂粒子(A−VI)が水に分散した不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0147】
[実施例7]
前記調製例1で得たポリウレタンの有機溶剤溶液485.2質量部に20質量%アンモニア水溶液を5.9質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水976.5質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタン(a1−VII)の水分散体を得た。
得られたポリウレタン(a1−VII)の水分散体にエポキシ樹脂(「CR−5L」DIC株式会社製のエポキシ樹脂、脂肪族ポリグリシジルエーテル、エポキシ当量171)7.4質量部を加え、80℃で6時間反応させることで複合樹脂粒子(A−VII)の水分散体を得た。
次いで、前記複合樹脂粒子(A−VII)の水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、酸価10でゲル分率85質量%〜100質量%で、かつ平均粒子径が10nm〜70nmの複合樹脂粒子(A−VII)が水に分散した不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0148】
[比較例1]
前記調製例2で得たポリウレタンの有機溶剤溶液500.0質量部に20質量%アンモニア水溶液を7.6質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水969.1質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタン(a1’−I)の水分散体を得た。
次いで、ポリウレタン(a1’−I)の水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、酸価20でゲル分率45〜85質量%で、かつ平均粒子径が10〜70nmのポリウレタン(a1’−I)を含む不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0149】
[比較例2]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエーテルポリオール(「エクセノール2020」旭硝子株式会社製のポリプロピレングリコール、数平均分子量2000)191.5質量部、2,2―ジメチロールプロピオン酸12.1質量部及びイソホロンジイソシアネート45.4質量部を、有機溶剤としてのメチルエチルケトン106.7質量部の存在下で5時間反応させた。
【0150】
イソシアネート基の95〜100%が消費されたことをNCO滴定によって確認した後、更に希釈溶剤としてメチルエチルケトン142.3質量部を追加することでポリウレタン(酸価20)の有機溶剤溶液(不揮発分50質量%)を得た。
【0151】
前記で得たポリウレタンの有機溶剤溶液の全量に20質量%アンモニア水溶液を7.6質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水965.0質量部を加え、数分間の攪拌を行った後、ジエチレンアミンを1.0質量部を加え十分に攪拌することにより鎖伸長を行い、ポリウレタン(a1’−II)の水分散体を得た。
次いで、ポリウレタン(a1’−II)の水分散体をエージング及び脱溶剤することによって、酸価20でゲル分率45〜85質量%で、かつ平均粒子径が10〜70nmのポリウレタン(a1’−II)を含む不揮発分25質量%のインクジェット印刷インク用バインダーを得た。
【0152】
[ポリウレタン(a1)の重量平均分子量の測定]
前記ポリウレタンの重量平均分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC法)を用いて測定した。具体的には、前記で得たインクジェット印刷インク用バインダーを、ガラス板上に3milアプリケーターで塗工し、常温で1時間乾燥して半乾きの塗膜を作成した。得られた塗膜をガラス板から剥し、前記塗膜の0.4gをテトラヒドロフラン100gに溶解したものを測定試料とした。
【0153】
測定装置としては、東ソー(株)製高速液体クロマトグラフHLC−8220型を用いた。カラムは、東ソー(株)製カラムTSK−GEL(HXL−H、G5000HXL、G4000HXL、G3000HXL、G2000HXL)を組み合わせて使用した。
【0154】
標準試料として昭和電工(株)製及び東洋曹達(株)製の標準ポリスチレン(分子量:448万、425万、288万、275万、185万、86万、45万、41.1万、35.5万、19万、16万、9.64万、5万、3.79万、1.98万、1.96万、5570、4000、2980、2030、500)を用いて検量線を作成した。
【0155】
溶離液、及び試料溶解液としてテトラヒドロフランを用い、流量1mL/min、試料注入量500μL、試料濃度0.4%としてRI検出器を用いて重量平均分子量を測定した。
【0156】
[平均粒子径の測定方法]
複合樹脂粒子(A)の平均粒子径は、体積基準での50%メジアン径であって、動的光散乱法による日機装(株)製マイクロトラックUPA250粒度分布測定装置を用いて測定した。
【0157】
[ゲル分率の測定方法]
実施例及び比較例で得たインクジェット印刷インク用バインダーを用いて縦3cm、横3cm及び厚さ150μmのフィルムを作製し、その質量(M)を測定した。次いで、該フィルムを25℃に調整したメチルエチルケトン中に24時間浸漬した後、メチルエチルケトンに溶解しなかったフィルムの残渣を300メッシュ金網で濾過することで分離し、前記残渣を108℃で1時間、乾燥したものの質量(N)を測定した。次いで、前記質量(M)及び(N)の値を用い、[(N)/(M)]×100の式に基づいて算出することによって、前記ゲル分率を算出した。
【0158】
調製例1(キナクリドン系顔料の水系分散体)
ビニル重合体(スチレン/アクリル酸/メタクリル酸=77/10/13(質量比)であり、重量平均分子量が11000、酸価156mgKOH/g)を1500g、キナクリドン系顔料(クロモフタールジェットマジェンタDMQ、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を4630g、フタルイミドメチル化3,10−ジクロロキナクリドン(1分子あたりの平均フタルイミドメチル基数が1.4)を380g、ジエチレングリコールを2600g、及び34質量%水酸化カリウム水溶液688gを、容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50V(株式会社井上製作所製)に仕込み、4時間、混練を継続した。
【0159】
前記混練物に、2時間で総量8000gの60℃に加温したイオン交換水を加え、不揮発分が37.9質量%の着色樹脂組成物を得た。
【0160】
前記方法で得た着色樹脂組成物の12kgに、ジエチレングリコール744gと、イオン交換水7380gとを少量ずつ添加しながら分散撹拌機で撹拌し、水系顔料分散液の前駆体(分散処理前の水系顔料分散液)を得た。
【0161】
次いで、この水系顔料分散液前駆体の18kgを、ビーズミル(浅田鉄工(株)製ナノミルNM−G2L、ビーズφ;0.3mmのジルコニアビーズ、ビーズ充填量;85%、冷却水温度;10℃、回転数;2660回転/分)を用いて処理し、前記ビーズミルの通過液を13000G×10分の遠心処理した後、有効孔径0.5μmのフィルターにより濾過処理を行うことによってキナクリドン系顔料の水系顔料分散液を得た。この水系顔料分散体中のキナクリドン系顔料濃度は14.9質量%であった。
【0162】
[インクジェット印刷用インクの調製]
キナクリドン系顔料の濃度が4質量%で、かつポリウレタンの濃度が1質量%となるよう、前記実施例1〜7及び比較例1〜2で得たインクジェット印刷インク用のバインダーと、調製例1で得たキナクリドン系顔料と、2−ピロリジノンと、トリエチレングリコールモノブチルエーテルと、グリセリンと、界面活性剤(サーフィノール440、エアープロダクツ社製)とイオン交換水とを、下記配合割合にしたがって混合、攪拌することによって、インクジェット印刷用インクを調製した。
【0163】
(インクジェット印刷用インクの配合割合)
・調製例1で得たキナクリドン系顔料水系分散体(顔料濃度14.9%);26.8g
・2−ピロリジノン;8.0g
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル;8.0g
・グリセリン;3.0g
・界面活性剤(サーフィノール440、エアープロダクツ社製);0.5g
・イオン交換水;48.7g
・前記実施例1〜7及び比較例1〜2で得たインクジェット印刷インク用のバインダー(不揮発分25質量%);4.0g
【0164】
〔インクジェット印刷用インクの保存安定性の評価〕
前記で得たインクジェット印刷用インクの粘度と、該インク中の分散粒子の粒子径に基づいて評価した。前記で得たインクジェット印刷用インクの粘度は、東機産業(株)製のVISCOMETER TV−22を使用して測定した。また、前記インクジェット印刷インク用インク中の分散粒子の粒子径は、日機装(株)社製のマイクロトラック UPA EX150を使用して測定した。
【0165】
次に、前記インクをスクリュー管等のガラス容器に密栓し、70℃の恒温器で4週間の加熱試験を行い、前記加熱試験後の前記インクの粘度と粒子径を前記と同様の方法で測定した。
【0166】
前記加熱試験前のインクの粘度及び粒子径に対する、加熱試験後の粘度及び粒子径の変化を、それぞれ下記式に基づいて算出し、前記インクの保存安定性を評価した。
【0167】
(式I)
[(加熱試験後のインクの粘度)/(加熱試験前のインクの粘度)]×100
【0168】
[判定基準]
○: 粘度の変化の割合が、2%未満
△: 粘度の変化の割合が、2%以上5%未満
×: 粘度の変化の割合が、5%以上
【0169】
(式II)
[(加熱試験後のインク中の分散粒子の粒子径)/(加熱試験前のインク中の分散粒子の粒子径)]×100
【0170】
[判定基準]
○: 粒子径の変化の割合が、5%未満
△: 粒子径の変化の割合が、5%以上10%未満
×: 粒子径の変化の割合が、10%以上
【0171】
〔インク吐出安定性の評価〕
前記のインクジェット印刷用インクを黒色インクカートリッジに充填したPhotosmart D5360(ヒューレットパッカード社製)を用いて診断ページを印刷し、ノズルの状態を確認した。
次いで、1ページあたり18cm×25cmの領域の印字濃度設定100%のベタ印刷を連続で20ページ実施した後、再度診断ページを印刷しノズルの状態を確認した。連続ベタ印刷の前後でのノズルの状態変化をインク吐出性として評価した。評価基準を以下に記す。
【0172】
[判定基準]
◎:ノズルの状態に変化がなく、吐出異常が発生していないもの
○:ノズルへの若干のインクの付着が確認されたものの、インクの吐出方向の異常は発生していないもの
△:前記ベタ印刷を連続で20ページ実施した後に、インクの吐出方向の異常やインクの不吐出が生じたもの
×:印刷途中でインクの吐出方向の異常やインクの不吐出が生じ、連続して20ページのベタ印刷を完了できなかったもの
【0173】
〔インクジェット印刷用インクの印刷性能評価〕
(耐擦過性)
写真印刷用紙(光沢)[HPアドバンスフォト用紙 ヒューレットパッカード社製]の印刷面に、市販のサーマルジェット方式インクジュットプリンター(Photosmart D5360;ヒューレットパッカード社製)を用い、前記インクを黒色インクカートリッジに充填し、印字濃度設定100%のベタ印刷を行うことで評価用印刷物を得た。
【0174】
前記評価用印刷物を常温下で10分間乾燥した後、該印刷面を、約5kgの荷重をかけて爪で擦過し、該印刷面の色等のこすれ具合を下記評価基準にしたがって目視で評価した。なお、インクの吐出安定性が不十分であるため、前記評価用印刷物が得られず、本評価を行うことができなかったものについては表中に「−」と記した。
【0175】
[判定基準]
A: 印刷面に傷は全くなく、印材の剥離等もみられなかった。
B: 印刷面に若干の傷が発生したものの実用上問題ない程度であり、色材の剥離等もみられなかった。
C: 印刷面に若干の傷が発生し、かつ、色材の剥離等もみられた。
D: 印刷面の約50%以上の範囲で著しい傷が発生し、かつ、色材の剥離等もみられた。
【0176】
[耐薬品性]
(耐アルカリ性)
前記評価用印刷物を常温下で10分間乾燥した後、印刷面に、0.5質量%KOH水溶液をスポイトで3滴滴下し、10秒後に印刷面を指で擦過し、該印刷面の表面状態を目視で評価した。評価基準を以下に記す。なお、インクの吐出安定性が不十分であるため、前記評価用印刷物が得られず、本評価を行うことができなかったものについては表中に「−」と記した。
【0177】
[判定基準]
A: 印刷面に色材等の剥がれは全くみられず、印刷面の変色もみられなかった。
B: 印刷面に色材等の剥がれはみられなかったが、印刷面の変色が僅かに発生した。
C: 印刷面に色材等の若干の剥がれが発生し、かつ、印刷面の変色も発生した。
D: 印刷表面の約50%以上の範囲にわたって色材等の著しい剥がれが発生し、かつ、印刷面の変色も発生した。
【0178】
(耐アルコール性)
前記評価用印刷物を常温下で10分間乾燥した後、印刷面に、5質量%エタノール水溶液をスポイトで3滴滴下し、10秒後に印刷面を指で擦過し、該印刷面の表面状態を目視で評価した。評価基準を以下に記す。なお、インクの吐出安定性が不十分であるため、前記評価用印刷物が得られず、本評価を行うことができなかったものについては表中に「−」と記した。
【0179】
[判定基準]
A: 印刷面に色材等の剥がれは全くみられず、印刷面の変色もみられなかった。
B: 印刷面に色材等の剥がれはみられなかったが、印刷面の変色が僅かに発生した。
C: 印刷面に色材等の若干の剥がれが発生し、かつ、印刷面の変色も発生した。
D: 印刷表面の約50%以上の範囲にわたって色材等の著しい剥がれが発生し、かつ、印刷面の変色も発生した。
【0180】
【表1】
【0181】
【表2】
【0182】
表1〜2中の「E850」は、DIC株式会社製のエポキシ樹脂であるビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、エポキシ当量188(エピクロン850)を示す。「CR−5L」は、DIC株式会社製のエポキシ樹脂である脂肪族ポリグリシジルエーテル、エポキシ当量171を示す。

【手続補正書】
【提出日】20111216
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷用インク用バインダーと、顔料または染料とを含有するインクジェット印刷用インクであって、
前記インクジェット印刷用インク用バインダーは、ポリエーテル系ポリウレタン(a1)とエポキシ化合物(a2)とが反応し形成した複合樹脂粒子(A)が、水性媒体(B)に分散したものであることを特徴とするインクジェット印刷用イン
【請求項2】
前記複合樹脂粒子(A)が、前記ポリエーテル系ポリウレタン(a1)の有する官能基[X]と前記エポキシ化合物(a2)の有するエポキシ基[Y]とを反応させて得られるものである、請求項1に記載のインクジェット印刷用イン
【請求項3】
前記ポリエーテル系ポリウレタン(a1)の有する官能基[X]が、カルボキシル基、カルボキシレート基またはアミノ基である、請求項2に記載のインクジェット印刷用イン
【請求項4】
前記複合樹脂粒子(A)が、1mgKOH/g〜50mgKOH/gの酸価を有するものである、請求項1に記載のインクジェット印刷用イン
【請求項5】
前記複合樹脂粒子(A)を構成する、前記ポリエーテル系ポリウレタン(a1)の有する官能基[X]と前記エポキシ化合物(a2)の有するエポキシ基[Y]とのモル比[エポキシ基[Y]/官能基[X]]が1/20〜1/1の範囲である、請求項1に記載のインクジェット印刷用イン
【請求項6】
前記複合樹脂粒子(A)が、10nm〜1000nmの範囲の平均粒子径を有するものである、請求項1に記載のインクジェット印刷用イン
【請求項7】
前記ポリエーテル系ポリウレタン(a1)が5000〜200000の範囲の重量平均分子量を有するものである、請求項1に記載のインクジェット印刷用イン
【請求項8】
前記エポキシ化合物(a2)が、100〜2000のエポキシ当量を有する化合物である、請求項1に記載のインクジェット印刷用イン
【請求項9】
前記エポキシ化合物(a2)が脂肪族ポリグリシジルエーテルまたはビスフェノール系ジグリシジルエーテルである、請求項1に記載のインクジェット印刷用イン
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載のインクジェット印刷用インクによって印刷の施された印刷物。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
その結果、ポリエーテル系ポリウレタンとエポキシ化合物とを反応させることによって、粒子内架橋が進行した複合樹脂粒子が水性媒体に分散したインクジェット印刷インク用バインダーを用いた場合に、インクの良好な吐出安定性や保存安定性を損なうことなく、耐擦過性や耐アルカリ性を向上できることを見出した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
即ち、本発明は、インクジェット印刷用インク用バインダーと、顔料または染料とを含有するインクジェット印刷用インクであって、前記インクジェット印刷用インク用バインダーは、ポリエーテル系ポリウレタン(a1)とエポキシ化合物(a2)とが反応し形成した複合樹脂粒子(A)が、水性媒体(B)に分散したものであることを特徴とするンクジェット印刷用インク及び印刷物に関するものである。

【手続補正書】
【提出日】20120404
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷インク用バインダーと、顔料または染料と、スチレン−アクリル樹脂とを含有するインクジェット印刷用インクであって、前記インクジェット印刷インク用バインダーは、ポリエーテル系ポリウレタン(a1)と、脂肪族ポリグリシジルエーテルまたはビスフェノール系グリシジルエーテルを含むエポキシ化合物(a2)とが反応し形成した複合樹脂粒子(A)が水性媒体(B)に分散したものであることを特徴とするインクジェット印刷用インク。
【請求項2】
前記複合樹脂粒子(A)が、前記ポリエーテル系ポリウレタン(a1)の有する官能基[X]と前記エポキシ化合物(a2)の有するエポキシ基[Y]とを反応させて得られるものである、請求項1に記載のインクジェット印刷用インク。
【請求項3】
前記ポリエーテル系ポリウレタン(a1)の有する官能基[X]がアミノ基である、請求項2に記載のインクジェット印刷用インク。
【請求項4】
前記複合樹脂粒子(A)が、1mgKOH/g〜50mgKOH/gの酸価を有するものである、請求項1に記載のインクジェット印刷用インク。
【請求項5】
前記複合樹脂粒子(A)を構成する、前記ポリエーテル系ポリウレタン(a1)の有する官能基[X]と前記エポキシ化合物(a2)の有するエポキシ基[Y]とのモル比[エポキシ基[Y]/官能基[X]]が1/20〜1/1の範囲である、請求項1に記載のインクジェット印刷用インク。
【請求項6】
前記複合樹脂粒子(A)が、10nm〜1000nmの範囲の平均粒子径を有するものである、請求項1に記載のインクジェット印刷用インク。
【請求項7】
前記ポリエーテル系ポリウレタン(a1)が5000〜200000の範囲の重量平均分子量を有するものである、請求項1に記載のインクジェット印刷用インク。
【請求項8】
前記エポキシ化合物(a2)が、100〜2000のエポキシ当量を有する化合物である、請求項1に記載のインクジェット印刷用インク。
【請求項9】
顔料または染料と、スチレン−アクリル樹脂とを含有するインク前駆体、及び、ポリエーテル系ポリウレタン(a1)と、脂肪族ポリグリシジルエーテルまたはビスフェノール系グリシジルエーテルを含むエポキシ化合物(a2)とが反応し形成した複合樹脂粒子(A)が水性媒体(B)に分散したインクジェット印刷用インク用バインダーを混合することを特徴とするインクジェット印刷用インクの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜の何れか1項に記載のインクジェット印刷用インクによって印刷の施された印刷物。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
即ち、本発明は、インクジェット印刷インク用バインダーと、顔料または染料と、スチレン−アクリル樹脂とを含有するインクジェット印刷用インクであって、前記インクジェット印刷インク用バインダーは、ポリエーテル系ポリウレタン(a1)と、脂肪族ポリグリシジルエーテルまたはビスフェノール系グリシジルエーテルを含むエポキシ化合物(a2)とが反応し形成した複合樹脂粒子(A)が水性媒体(B)に分散したものであることを特徴とするインクジェット印刷用インク及び印刷物に関するものである。
また、本発明は、顔料または染料と、スチレン−アクリル樹脂とを含有するインク前駆体、及び、ポリエーテル系ポリウレタン(a1)と、脂肪族ポリグリシジルエーテルまたはビスフェノール系グリシジルエーテルを含むエポキシ化合物(a2)とが反応し形成した複合樹脂粒子(A)が水性媒体(B)に分散したインクジェット印刷用インク用バインダーを混合することを特徴とするインクジェット印刷用インクの製造方法に関するものである。
【国際調査報告】