(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2012086179
(43)【国際公開日】20120628
【発行日】20160526
(54)【発明の名称】高Cr−高Ni合金からなる継目無管用丸鋼片の製造方法、およびその丸鋼片を用いた継目無管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 1/02 20060101AFI20160422BHJP
   B21B 19/04 20060101ALI20160422BHJP
   B21B 3/02 20060101ALI20160422BHJP
   C22C 19/05 20060101ALI20160422BHJP
【FI】
   !B21B1/02 B
   !B21B19/04
   !B21B3/02
   !C22C19/05 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
【出願番号】2011553216
(21)【国際出願番号】JP2011007098
(22)【国際出願日】20111220
(11)【特許番号】5056990
(45)【特許公報発行日】20121024
(31)【優先権主張番号】2010285738
(32)【優先日】20101222
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN
(71)【出願人】
【識別番号】000002118
【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号
(74)【代理人】
【識別番号】100103481
【弁理士】
【氏名又は名称】森 道雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134957
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 英幸
(72)【発明者】
【氏名】平瀬 直也
【住所又は居所】日本国大阪府大阪市中央区北浜四丁目5番33号 住友金属工業株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴則
【住所又は居所】日本国大阪府大阪市中央区北浜四丁目5番33号 住友金属工業株式会社内
【テーマコード(参考)】
4E002
【Fターム(参考)】
4E002AA07
4E002AB06
4E002BC05
4E002BD08
4E002CB03
(57)【要約】
Crを20〜30質量%、Niを30〜50質量%、ならびにMoおよびWの1種以上をMo+0.5Wで1.5質量%以上含有する高合金からなり、横断面が矩形の連続鋳造鋳片を分塊圧延し、継目無管の素材となる直径が150〜400mmの丸鋼片を製造する際、鋳片の横断面の短辺長さをH(mm)、および丸鋼片の直径をD(mm)とした場合に、1.3≦H/D≦1.8の関係を満足する条件で分塊圧延する。これにより、丸鋼片を穿孔圧延して中空素管に成形し、この中空素管を延伸圧延しさらに定径圧延して、高Cr−高Ni合金からなる継目無管を製造するに際し、穿孔圧延時に、管端割れの発生を防止することができ、継目無管を歩留り良く製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Crを20〜30質量%、Niを30〜50質量%、ならびにMoおよびWの1種以上をMo+0.5Wで1.5〜10質量%含有する高Cr−高Ni合金からなり、横断面が矩形の連続鋳造鋳片を分塊圧延し、継目無管の素材となる直径が150〜400mmの丸鋼片を製造する方法であって、
当該継目無管用丸鋼片の製造方法は、
鋳片の横断面の短辺長さをH(mm)、および丸鋼片の直径をD(mm)とした場合に、1.3≦H/D≦1.8の関係を満足する条件で分塊圧延する
ことを特徴とする継目無管用丸鋼片の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の丸鋼片を穿孔機により穿孔圧延して中空素管に成形し、この中空素管を延伸圧延機により延伸圧延し定径圧延機により定径圧延する
ことを特徴とするマンネスマン製管法による継目無管の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高Cr−高Ni合金の継目無管の素材である丸鋼片(以下、「丸ビレット」ともいう)の製造方法、およびその丸鋼片を用いた継目無管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油井管、ボイラー管などの使用環境はますます過酷なものとなっている。このため、それらの管に使用する継目無管への要求特性が高度化している。例えば、高深度化、高腐食性環境化が進む油井に使用される油井管には、より高強度で、より優れた耐食性を有することが求められる。また、原子力発電設備、化学プラントなどで用いられる管には、高温の純水や塩素イオン(Cl)を含む高温水に晒される環境において、耐食性、特に耐応力腐食割れ性に優れることが求められる。これらの要求から、油井管などには、CrおよびNi、さらにはMoを多量に含有する高Cr−高Ni合金(以下、単に「高合金」ともいう)からなる継目無管が適用されつつある。
【0003】
高合金の継目無管は、マンネスマン・マンドレルミル方式、マンネスマン・プラグミル方式、マンネスマン・アッセルミル方式などのマンネスマン製管法により製造することができる。この製管法は次のステップからなる:
(1)穿孔機(ピアサ)により、所定温度に加熱された丸ビレットを穿孔圧延し、中空素管(ホローシェル)に成形する;
(2)延伸圧延機(例:マンドレルミル、プラグミル)により、中空素管を延伸圧延する;
(3)定径圧延機(例:サイザ、ストレッチレデューサ)により、延伸圧延された素管を所定の外径と肉厚に定径圧延し、製品管に仕上げる。
【0004】
高合金継目無管の製造に用いられる丸ビレットは、溶製工程で適切な成分組成に調整された溶湯を連続鋳造工程で横断面が矩形の鋳片に鋳造し、その連続鋳造鋳片を分塊圧延工程で孔型ロールを用いて所望の直径に圧延することにより、製造される。
【0005】
ところで、高Cr−高Ni合金は、例えば、炭素鋼と比較して変形抵抗が2.4倍程度高く、13%Cr鋼やBBS鋼と比較しても2倍近く変形抵抗が高いことから、熱間加工によるせん断変形に伴って加工発熱が顕著に生じる。また、高合金の丸ビレットを穿孔圧延する際、ビレットの両端部では中央部に比べてせん断変形が大きい。このため、穿孔圧延時、高合金ビレットの両端部は、大きなせん断変形が与えられると同時に、加工発熱が著しく生じ、ビレット温度が著しく上昇する。これにより、穿孔圧延で得られる高合金の中空素管は、端面に円周方向に沿って粒界溶融割れ(以下、「管端割れ」という)が発生し易い。
【0006】
この管端割れは、中空素管の肉厚中で管軸方向にも伸展しており、残存したままでは、後工程の延伸圧延および定径圧延で管軸方向にさらに伸展し、製品不良を引き起こす。このため、管端割れが発生した場合、その割れが存在する中空素管の端部を不良部として切り落とす必要がある。その結果、製品に使用されない不良部が増加することから、製品歩留りが低下し、これに伴って製造コストが悪化する。
【0007】
したがって、高Cr−高Ni合金の継目無管の製造では、穿孔圧延時に管端割れの発生を防止することが強く望まれる。この要求に対し、管端割れの発生する一因として穿孔圧延時の加工発熱に伴うビレット端部の温度上昇があることから、予めビレットの加熱温度を低下させて穿孔圧延を行うことにより、ビレット端部の結晶粒界で溶融が生じるのを抑える方策が考えられる。しかし、ビレットの加熱温度を低下させると、ビレットの変形抵抗が増大するため、穿孔機への負荷が増加し、操業に支障を来たすという問題が顕在化する。このため、ビレットの加熱温度を低下させる方策は、高合金ビレットの場合は実用的でない。
【0008】
このような実情に対し、関連する従来技術は下記のものがある。
【0009】
特許文献1には、Cを0.7〜1.5質量%、およびCrを0.9〜2.0質量%含有する高炭素クロム鋼の軸受用継目無管を製造するに際し、連続鋳造鋳片を丸ビレットに分塊圧延するときに発生する外面疵に着目し、そのビレットの外面疵の発生防止を図り、表面品質に優れた継目無管を製造する技術が開示されている。同文献に開示される技術は、高炭素クロム鋼を対象とし、鋳片の横断面の長辺長さW(mm)、その短辺長さH(mm)、および丸ビレットの直径D(mm)の相互の関係を規定した条件で分塊圧延を行うこととしている。
【0010】
特許文献2には、13%Cr鋼(マルテンサイト系ステンレス鋼)の継目無管を製造するに際し、連続鋳造鋳片の中心偏析部に生成したδ−フェライトに起因して継目無管の内面疵が発生することに着目し、その内面疵の発生防止を図る技術が開示されている。同文献に開示される技術は、13%Cr鋼を対象とし、その成分組成を規定するとともに、穿孔圧延時のビレットの加熱温度を規定し、さらに鋳片の扁平比(鋳片横断面の長辺長さ/短辺長さ)を1.8以上に規定することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−160363号公報
【特許文献2】特開平4−224659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の通り、特許文献1に開示される技術は、高炭素クロム鋼を対象とし、ビレットの外面疵に着目したものである。特許文献2に開示される技術は、13%Cr鋼を対象とし、継目無管の内面疵に着目したものである。すなわち、特許文献1、2に開示されるいずれの技術も、高Cr−高Ni合金とは成分組成も特性も全く相違する鋼種を対象としていることから、高Cr−高Ni合金ビレットの穿孔圧延時に発生する管端割れに関して全く着目していない。したがって、特許文献1、2に開示される技術は、いずれも、高Cr−高Ni合金ビレットを穿孔圧延する際に、管端割れの発生を防止する方策になり得ない。
【0013】
本発明の目的は、高Cr−高Ni合金からなる継目無管の製造に用いられ、次の特性を有する継目無管用丸鋼片の製造方法、およびその丸鋼片を用いた継目無管の製造方法を提供することである:
(1)穿孔圧延時に管端割れの発生を防止すること;
(2)継目無管を歩留り良く製造すること。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の要旨は、次の通りである。
【0015】
(I)Crを20〜30質量%、Niを30〜50質量%、ならびにMoおよびWの1種以上をMo+0.5Wで1.5〜10質量%含有する高Cr−高Ni合金からなり、横断面が矩形の連続鋳造鋳片を分塊圧延し、継目無管の素材となる直径が150〜400mmの丸鋼片を製造する方法であって、
当該継目無管用丸鋼片の製造方法は、
鋳片の横断面の短辺長さをH(mm)、および丸鋼片の直径をD(mm)とした場合に、1.3≦H/D≦1.8の関係を満足する条件で分塊圧延する
ことを特徴とする継目無管用丸鋼片の製造方法。
【0016】
(II)上記(I)の丸鋼片を穿孔機により穿孔圧延して中空素管に成形し、この中空素管を延伸圧延機により延伸圧延し定径圧延機により定径圧延する
ことを特徴とするマンネスマン製管法による継目無管の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の継目無管用丸鋼片の製造方法は、下記の顕著な効果を有する:
(1)高Cr−高Ni合金の継目無管を製造する場合であっても、穿孔圧延時に管端割れの発生を防止できること;
(2)管端割れの発生に伴う不良部のロスを抑制し、高Cr−高Ni合金の継目無管を歩留り良く製造できること。
本発明の継目無管用丸鋼片の製造方法の優れた効果は、本発明の継目無管の製造方法によって十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、高Cr−高Ni合金ビレットの表層部における断面ミクロ組織の一例を示す図であり、図1(a)はH(鋳片の短辺長さ)/D(ビレットの直径)が1.3未満の代表例を、図1(b)はH/Dが1.3以上の代表例をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者らは、上記目的を達成するため、高Cr−高Ni合金からなる継目無管をマンネスマン製管法により製造する際、その素材として、横断面が矩形の連続鋳造鋳片を分塊圧延して成る丸ビレットを用いることを前提とし、種々の試験を実施して鋭意検討を重ねた。
【0020】
すなわち、後述する実施例で実証するように、横断面の寸法(短辺長さ、長辺長さ)を種々変更した高Cr−高Ni合金の連続鋳造鋳片を種々の直径の丸ビレットに分塊圧延し、各ビレットを穿孔機で穿孔圧延した後に管端割れの有無を調査する試験を行った。この試験の結果、鋳片の短辺長さをH(mm)、およびビレットの直径をD(mm)とした場合、H/Dが1.3未満のビレットを穿孔圧延したときに管端割れが発生し、H/Dが1.3以上のビレットを穿孔圧延したときには管端割れが発生しないことが判明した。
【0021】
このように1.3≦H/Dの条件を満たせば管端割れが発生しないことが判明したが、その事象が起こる理由を究明するため、上記の穿孔圧延試験に用いた各ビレットと同一の分塊圧延条件の各ビレットについて、各々の端部から試片を採取し、各試片の外周から2.5mm深さの表層位置で断面ミクロ組織観察を実施した。
【0022】
図1は、高Cr−高Ni合金ビレットの表層部における断面ミクロ組織の一例を示す図であり、図1(a)はH(鋳片の短辺長さ)/D(ビレットの直径)が1.3未満の代表例を、図1(b)はH/Dが1.3以上の代表例をそれぞれ示す。図1(a)に示すように、H/Dが1.3未満の場合は、ビレットの結晶組織が細粒と粗粒の混合組織となっていることがわかる。一方、図1(b)に示すように、H/Dが1.3以上の場合は、分塊圧延時に鋳片を短辺と平行な方向に押し潰す加工度が高いことから、ビレットの結晶組織が微細で均一な組織となっていることがわかる。
【0023】
図1(a)に示すH/Dが1.3未満のビレットは、結晶組織が細粒と粗粒の混合組織であるため、粒径が粗大な結晶粒界にPなどの不純物が濃化し、濃化した不純物により結晶粒界の低融点化が促進する。このことから、H/Dが1.3未満のビレットは、穿孔圧延時の加工発熱に伴って結晶粒界で溶融が起こり易く、せん断変形の大きい両端部に管端割れが発生することを説明できる。一方、図1(b)に示すH/Dが1.3以上のビレットは、結晶組織が均一な微細組織であるため、均一で微細な結晶粒界に不純物が分散し、結晶粒界の低融点化が抑制される。このことから、H/Dが1.3以上のビレットは、穿孔圧延時に加工発熱が生じたとしても、結晶粒界で溶融が起こり難く、管端割れが発生しないことを説明できる。
【0024】
ただし、H/Dがあまりに大きいと、分塊圧延時に加工度が著しく高くなることに起因し、ビレット表面の圧延シワ疵が顕著となる上、ビレット端部の形状も悪化し、切り捨て量が増大する。このため、H/Dは、1.8以下に制限する。
【0025】
本発明は、上記の通りに、高Cr−高Ni合金の継目無管を製造する場合、1.3≦H/D≦1.8の条件を満たすビレットを穿孔圧延すれば管端割れが発生しないという知見に基づき、完成させたものである。すなわち、本発明の継目無管用丸鋼片の製造方法は、上記の通り、Crを20〜30質量%、Niを30〜50質量%、ならびにMoおよびWの1種以上をMo+0.5Wで1.5〜10質量%含有する高Cr−高Ni合金からなり、横断面が矩形の連続鋳造鋳片を分塊圧延し、継目無管の素材となる直径が150〜400mmの丸鋼片を製造する方法であって、鋳片の横断面の短辺長さをH(mm)、および丸鋼片の直径をD(mm)とした場合に、1.3≦H/D≦1.8の関係を満足する条件で分塊圧延することを特徴とする。
【0026】
また、本発明の継目無管の製造方法は、上記の丸鋼片を穿孔機により穿孔圧延して中空素管に成形し、この中空素管を延伸圧延機により延伸圧延し定径圧延機により定径圧延することを特徴とする。
【0027】
以下に、本発明の製造方法を上記のように規定した理由および好ましい態様について説明する。
【0028】
1.高Cr−高Ni合金の成分組成
本発明で採用する高Cr−高Ni合金の具体的な組成は、以下の通りである。以下の記述において、成分含有量の「%」は「質量%」を意味する。
【0029】
Cr:20〜30%
Crは、Niとの共存下において、耐応力腐食割れ性に代表される耐硫化水素腐食性を向上させるのに有効な元素である。しかし、その含有量が20%未満では、その効果が得られない。一方、その含有量が30%を超えると、上記の効果は飽和し、熱間加工性の観点からも好ましくない。そこで、Cr含有量の適正範囲は20〜30%とする。
【0030】
Ni:30〜50%
Niは、耐硫化水素腐食性を向上させる作用を有する元素である。しかし、その含有量が30%未満では、合金の外表面にNi硫化物皮膜が十分に生成しないため、Niを含有させる効果が得られない。一方、50%を超えるNiを含有させても、その効果は飽和するため、合金コストに見合った効果が得られずに経済性を損なう。そこで、Ni含有量の適正範囲は30〜50%とする。
【0031】
Mo+0.5W:1.5〜10%
MoおよびWは、ともに耐孔食性を改善する作用を有する元素であり、いずれか一方または両方を添加することができる。しかし、その含有量が「Mo+0.5W」で1.5%未満では、その効果が得られないので、「Mo+0.5W」で1.5%以上とする。また、これらの元素は必要以上に含有させてもその効果が飽和するだけであり、過度の含有は熱間加工性を低下させる。したがって、「Mo+0.5W」の値が10%以下の範囲内で含有させる。
【0032】
本発明で採用する高Cr−高Ni合金は、上記の合金元素の他に、下記の元素を含有してもよい。
【0033】
C:0.04%以下
Cは、Cr、Mo、Feなどと炭化物を形成するが、その含有量が増加すると延性値と靱性値が低下する。このため、Cの含有量は0.04%以下に制限するのが好ましい。
【0034】
Si:0.5%以下
Siは、σ相の生成を防止し、延性および靱性の低下を抑制するために、できるだけ含有量を少なくする方がよい。したがって、Siの含有量は0.5%以下に制限するのが好ましい。
【0035】
Mn:0.01〜3.0%
Mnは、熱間加工性の向上に寄与する。このため、Mnを0.01%以上含有させるのが好ましい。しかし、その含有量が過剰になると、耐食性が劣化する場合があるので、3.0%以下とするのが好ましい。したがって、Mnを含有させる場合には、その含有量を0.01〜3.0%の範囲とするのがよい。特に、σ相の生成が問題となる場合には、その含有量を0.01〜1.0%とするのがより好ましい。
【0036】
P:0.03%以下
Pは、通常は不純物として合金中に含まれるが、熱間加工性などに悪影響を及ぼす元素である。また、Pは、結晶粒界に集積し、程度によっては管端割れを助長することから、その含有量を少なくする方がよい。このため、Pの含有量は0.03%以下に制限するのが好ましい。
【0037】
S:0.03%以下
Sも不純物として合金中に含まれるが、靱性などに悪影響を及ぼす元素である。また、Sも、結晶粒界に集積し、程度によっては管端割れを助長することから、その含有量を少なくする方がよい。このため、Sの含有量は0.03%以下に制限するのが好ましい。
【0038】
Cu:0.01〜1.5%
Cuは、クリープ破断強度を向上させるのに有効な元素であり、0.01%以上含有させるのが好ましい。しかし、その含有量が1.5%を超えると、合金の延性が低下する場合がある。したがって、Cuの含有量は0.01〜1.5%の範囲とするのが好ましい。
【0039】
Al:0.20%以下
Alは、脱酸剤として有効であるが、σ相等の金属間化合物の生成を助長する。このため、Alの含有量は0.20%以下に制限するのが好ましい。
【0040】
N:0.0005〜0.2%
Nは、固溶強化元素であり、高強度化に寄与するとともに、σ相等の金属間化合物の生成を抑制して、靱性の向上に寄与する。このため、Nは0.0005%以上含有させるのが好ましい。しかし、その含有量が0.2%を超えると、耐孔食性が劣化するおそれがある。このため、Nの含有量は0.0005〜0.2%の範囲とするのが好ましい。
【0041】
Ca:0.005%以下
Caは、熱間加工性を阻害するSを硫化物として固着するが、その含有量が過剰な場合、かえって熱間加工性を劣化させる。このため、Caの含有量は0.005%以下に制限するのが好ましい。
【0042】
2.継目無管の製造条件
本発明において、高Cr−高Ni合金の継目無管は、上記の必須含有元素を含有し、さらに必要に応じて任意含有元素を含有し、残部がFeおよび不純物からなる高合金により製造される管であり、工業的に慣用される製造設備および製造方法により製造することができる。例えば、高合金の溶製には、電気炉、アルゴン−酸素混合ガス底吹き脱炭炉(AOD炉)や真空脱炭炉(VOD炉)などを利用することができる。
【0043】
上記の成分組成に溶製された溶湯は、連続鋳造法により横断面が矩形の鋳片に鋳造され、この連続鋳造鋳片は、孔型ロールを用いて横断面が円形の丸ビレットに分塊圧延される。この丸ビレットを素材とし、マンネスマン製管法を採用することにより、すなわち、穿孔機により穿孔圧延して中空素管を成形し、この中空素管を延伸圧延機により延伸圧延し定径圧延機により定径圧延することにより、高合金継目無管を製造することができる。
【0044】
本発明では、高合金継目無管を製造するに際し、連続鋳造鋳片を直径が150〜400mmの丸ビレットに分塊圧延する。高合金継目無管を製造する場合、その素材として、直径が150〜400mmの範囲の丸ビレットを採用するのが一般的であり、この直径の範囲内であれば実用的に十分であるからである。
【0045】
このとき、鋳片の横断面の短辺長さをH(mm)、および丸ビレットの直径をD(mm)とした場合に、1.3≦H/D≦1.8の関係を満足する条件で分塊圧延する。これは以下の理由による。H/Dが1.3以上であると、分塊圧延時に鋳片を短辺と平行な方向に押し潰す加工度が高いことから、ビレットの結晶組織が微細で均一な組織となり、Pなどの不純物がその均一で微細な結晶粒界に分散する。これにより、結晶粒界の低融点化が抑制されるため、穿孔圧延時、ビレットの両端部にせん断変形に伴う加工発熱が生じたとしても、結晶粒界で溶融が起こり難く、粒界の溶融に起因する管端割れの発生を防止することができる。一方、H/Dが1.8を超えると、分塊圧延時にビレット表面の圧延シワ疵が顕著となる上、ビレット端部の形状も悪化し、切り捨て量が増大するからである。
【0046】
また、穿孔圧延の際、ビレットの加熱温度は、1150〜1250℃の範囲内であることが好ましい。加熱温度を1150℃未満に低下させた場合、ビレットの変形抵抗が増大するので、穿孔機への負荷が増加し、操業に支障を来たすからである。一方、加熱温度が1250℃を超えた場合、加工発熱の付与とあいまって、粒界の溶融に起因する管端割れが発生するおそれがあるからである。
【0047】
上述の通り、本発明の継目無管用丸鋼片の製造方法によれば、連続鋳造鋳片の短辺長さと丸鋼片の直径から定まる分塊圧延条件を適正化することにより、穿孔圧延時に丸鋼片の加熱温度を低下させなくても、管端割れの発生を防止できる高Cr−高Ni合金の丸鋼片を製造することが可能となる。このため、その丸鋼片を用いた本発明の継目無管の製造方法によれば、本発明の継目無管用丸鋼片の製造方法の優れた効果を十分に発揮させることができ、管端割れの発生に伴う不良部のロスを抑制できることから、高Cr−高Ni合金の継目無管を歩留り良く製造することが可能となる。
【実施例】
【0048】
本発明の効果を確認するため、下記表1に示す通りに、横断面の寸法(短辺長さH、長辺長さW)を種々変更した高Cr−高Ni合金の連続鋳造鋳片を種々の直径Dの丸ビレットに分塊圧延し、各ビレットを穿孔機で穿孔圧延する実機試験を実施した。そして、得られた各中空素管の両端面を目視観察し、管端割れの発生有無を調査した。下記表1に、その調査結果および評価結果も併せて示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1中で、「評価」の欄の記号の意味は次の通りである。
○:良。管端割れが認められなかったことを示す。
×:不可。管端割れが認められたことを示す。
【0051】
また、上記の穿孔圧延試験に加え、上記表1に示す試験番号1〜7の各ビレットについて、各々の端部から試片を採取し、各試片の外周から2.5mm深さの表層位置で断面ミクロ組織観察を実施した。その観察結果の代表として、前記図1(a)に、試験番号1のビレットの断面ミクロ組織を示し、前記図1(b)に、試験番号4のビレットの断面ミクロ組織を示す。
【0052】
表1および図1に示す結果から次のことが示される。
【0053】
表1に示すように、試験番号3、4、6および7は、いずれも本発明で規定する分塊圧延条件(1.3≦H/D≦1.8)を満たし、管端割れが発生しなかった。これは、図1(b)に試験番号4の場合を示すように、ビレットの結晶組織が微細で均一な組織であることから、その均一で微細な結晶粒界に不純物が分散し、穿孔圧延時に加工発熱が生じたとしても、結晶粒界で溶融が起こり難いことによる。
【0054】
一方、試験番号1、2および5は、いずれも本発明で規定する分塊圧延条件を満たさないため、管端割れが発生した。これは、図1(a)に試験番号1の場合を示すように、ビレットの結晶組織が細粒と粗粒の混合組織であることから、粒径が粗大な結晶粒界に不純物が濃化し、穿孔圧延時の加工発熱に伴って結晶粒界で溶融が起こり易いことによる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、マンネスマン製管法による高Cr−高Ni合金の継目無管の製造に有効に利用できる。

【図1】

【手続補正書】
【提出日】20120423
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
Crを20〜30質量%、Niを30〜50質量%、ならびにMoおよびWの1種以上をMo+0.5Wで1.5〜10質量%含有する高Cr−高Ni合金からなり、横断面が矩形の連続鋳造鋳片を分塊圧延し、マンネスマン製管法による継目無管の素材となる直径が150〜400mmの丸鋼片を製造する方法であって、
当該継目無管用丸鋼片の製造方法は、
鋳片の横断面の短辺長さをH(mm)、および丸鋼片の直径をD(mm)とした場合に、1.3≦H/D≦1.8の関係を満足する条件で分塊圧延する
ことを特徴とする継目無管用丸鋼片の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
(I)Crを20〜30質量%、Niを30〜50質量%、ならびにMoおよびWの1種以上をMo+0.5Wで1.5〜10質量%含有する高Cr−高Ni合金からなり、横断面が矩形の連続鋳造鋳片を分塊圧延し、マンネスマン製管法による継目無管の素材となる直径が150〜400mmの丸鋼片を製造する方法であって、
当該継目無管用丸鋼片の製造方法は、
鋳片の横断面の短辺長さをH(mm)、および丸鋼片の直径をD(mm)とした場合に、1.3≦H/D≦1.8の関係を満足する条件で分塊圧延する
ことを特徴とする継目無管用丸鋼片の製造方法。
【国際調査報告】